JP2021004848A - プローブ、及び腐食環境測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属表面に形成された液膜の厚さ及びその液膜の塩分量を測定することを可能にし、さらに液膜の塩分量と金属の腐食速度との関係を精確に把握することを可能にする、プローブを提供する。【解決手段】プローブ2は、電気化学インピーダンス法による金属の腐食環境測定に用いられる。プローブ2は、本体10と、一対の第1電極11A、11Bと、一対の第2電極12A、12Bと、pH検出器22と、を備える。本体10は、測定時に液膜が形成される表面10aを有する。一対の第1電極11A、11Bは、本体10の表面10aに露出して、第1の間隔L1をあけて配列される。一対の第2電極12A、12Bは、本体10の表面10aに露出して、第1の間隔L1よりも大きい第2の間隔L2をあけて配列される。pH検出器22は、本体10の表面10aに露出する検知面22aを有する。【選択図】図9

Description

本発明は、プローブに関し、より詳細には、電気化学インピーダンス法による金属の腐食環境測定に用いられるプローブに関する。さらに本発明は、そのプローブを備えた腐食環境測定装置に関する。
金属は、機械製品、構造部品等の様々な製品に使用される。一般に、金属製品の使用環境において、金属は大気に曝される。この場合、大気中の液体(例:塩分を含む水等)が金属の表面に付着し、金属表面に液膜が形成される。これにより、大気腐食と称される金属の腐食が起こる。大気腐食が進行すれば、金属の機械特性や疲労特性が低下し、製品の信頼性が低下しかねない。ここで、大気腐食の進行度合い、すなわち金属の腐食速度は、金属表面に形成された液膜の性質に依存する。例えば液膜の塩分量、液膜の厚さ等が、大気腐食をもたらす因子である。したがって、評価対象の金属の表面に形成された液膜の性質を的確に測定して、その金属の腐食環境を把握することは重要である。
腐食環境を把握するための方法として、電気化学インピーダンス法が知られている。基本的な電気化学インピーダンス法では、評価対象の金属からなる一対の電極(以下、「電極対」とも言う。)を用いる。一対の電極が電解質の液体と接触した状態で、電極間に種々の周波数の交流電圧を印加して周波数応答を得る。この周波数応答特性から電極間のインピーダンス(抵抗)を求める。このインピーダンスから液体の性質を算出することができる。インピーダンスから液膜の電気伝導率を算出できた場合、その電気伝導率から液膜の塩分量を換算することができる。
例えば、実開昭62−088952号公報(特許文献1)は、液膜の塩分量を測定する装置を開示する。特許文献1の装置は、冷却可能な絶縁板の上に1つの電極対を備え、さらに絶縁板上の電極同士の間に吸湿材を備える。吸湿材は、絶縁板上に生じた結露(液体)を吸収して拡散させる。これにより、電極同士の間の絶縁板上に吸湿材を含む液膜が形成され、その液膜の塩分量を測定することができる、と特許文献1には記載されている。
また例えば、非特許文献1は、水膜の厚さを測定する装置を開示する。非特許文献1の装置では、2つの電極からなる電極対をプローブ等の表面に格子状に数多く、高密度に配置する。これにより、少ない導線の本数で、水膜の厚さの分布を計測できる、と非特許文献1には記載されている。
実開昭62−088952号公報
新井崇洋、古谷正裕、金井大造著「高密度多点電極法による液膜厚さ計測技術の開発、電力中央研究所報告L09008」財団法人電力中央研究所発行、平成22年6月、P.2−11
しかしながら、特許文献1の装置では、液膜の塩分量を測定することができても、液膜の厚さを測定することはできない。また、非特許文献1のP.5、3.2節に記載のとおり、非特許文献1の装置では、評価対象の液体の組成が予め判明しており、その液膜の厚さを測定しているにすぎない。要するに、特許文献1の装置及び非特許文献1の装置のいずれにおいても、液膜の塩分量及び液膜の厚さのいずれか一方しか得ることができない。とりわけ、実際の大気腐食では、金属表面に形成される液膜の組成は不明である。そのため、大気腐食環境に曝された金属について、液膜の塩分量、すなわち液膜の電気伝導率を把握するとともに、液膜の厚さを把握することは難しい。
ここで、金属製品の使用環境は、海岸地帯、海洋地帯、重工業地帯、都市地帯、田園地帯、山間地帯などのように様々である。使用環境によって、金属表面に形成される液膜に含まれる塩の種類も様々である。液膜に含まれている各種の塩のうち、大気腐食を促進する塩の代表格は、塩化物イオン(Cl)である。つまり、大気腐食の主たる因子の1つは塩化物イオンである。しかしながら、重工業地帯や都市地帯では,硫黄酸化物が大気に多く含まれる傾向にあり、湿気や雨に溶け込んで硫酸が生成され、酸性霧や酸性雨をもたらす。すなわち、酸性度(水素イオン(H)濃度)も大気腐食の主たる因子の1つである。
しかしながら、特許文献1の装置によって得られる液膜の塩分量(電気伝導率)は、液膜に溶けているあらゆる塩の量の総和である。特許文献1の装置では、金属表面に形成された液膜に対して、大気腐食の主たる因子である塩化物イオン及び酸性度(水素イオン(H)濃度)を個別に測定することができない。液膜の酸性度(水素イオン(H)濃度)は、金属の腐食速度に大きな影響を及ぼす。そうすると、特許文献1の装置では、液膜の塩分量と金属の腐食速度との関係を精確に把握することができるとは言えない。
本発明の1つの課題は、金属の腐食環境測定において、金属表面に形成された液膜の性質、特に、液膜の厚さ及び液膜の電気伝導率(塩分量)を測定することを可能にし、さらに液膜の塩分量と金属の腐食速度との関係を精確に把握することを可能にする、プローブを提供することである。また、本発明の他の課題は、金属表面に形成された液膜の性質、特に、液膜の厚さ及び液膜の電気伝導率(塩分量)を測定することができ、さらに液膜の塩分量と金属の腐食速度との関係を精確に把握することができる、腐食環境測定装置を提供することである。
本実施形態のプローブは、電気化学インピーダンス法による金属の腐食環境測定に用いられるプローブである。当該プローブは、本体と、一対の第1電極と、一対の第2電極と、pH検出器と、を備える。本体は、測定時に液膜が形成される表面を有する。一対の第1電極は、本体の内部から本体の表面に露出して、第1の間隔をあけて配列される。一対の第2電極は、本体の内部から本体の表面に露出して、第1の間隔よりも大きい第2の間隔をあけて配列される。pH検出器は、本体の表面に露出する検知面を有する。
本実施形態の腐食環境測定装置は、電気化学インピーダンス法による腐食環境測定装置である。当該装置は、上記本実施形態のプローブと、第1交流電源と、第2交流電源と、pH測定器と、を備える。第1交流電源は、第1電極の各々と接続される。第2交流電源は、第2電極の各々と接続される。pH測定器は、pH検出器に接続される。
本実施形態の腐食環境測定装置によれば、金属表面に形成された液膜の性質、特に、液膜の厚さ及び液膜の電気伝導率(塩分量)の両方を測定することができ、さらに液膜の塩分量と金属の腐食速度との関係を精確に把握することができる。また、本実施形態の腐食環境測定装置は、本実施形態のプローブによって実現できる。
図1は、電気化学インピーダンス法の基本原理を説明するための模式図である。 図2は、図1に示される要素に関する等価回路を示す図である。 図3は、没水環境を示す模式図である。 図4は、薄膜環境を示す模式図である。 図5は、電流密度と電極表面からの距離との関係を示す図である。 図6は、電極同士の間隔が1.00mmである場合の等電位図である。 図7は、電極同士の間隔が0.01mmである場合の等電位図である。 図8Aは、電極同士の間隔が小さい場合の液膜において交流電流が流れる状況を示す模式図である。 図8Bは、電極同士の間隔が大きい場合の液膜において交流電流が流れる状況を示す模式図である。 図9は、第1実施形態のプローブを備えた腐食環境測定装置の一例を示す斜視図である。 図10は、図9に示される腐食環境測定装置の平面図である。 図11は、図10の線XI−XIにおける断面図である。 図12は、図10の線XII−XIIにおける断面図である。 図13は、予備試験用液膜のインピーダンスと電気伝導率との積と、予備試験用液膜の厚さと、の関係の一例を示す図である。 図14は、予備試験用液膜のマスターデータの一例を示す図である。
上記の課題を解決するため、本発明者は、大気腐食が起こる環境を詳細に分析し、電気化学インピーダンス法を利用して金属の腐食環境を測定する手法を検討した。その結果、下記の知見を得た。以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[電気化学インピーダンス法の基本原理]
図1は、電気化学インピーダンス法の基本原理を説明するための模式図である。図1を参照して、電気化学インピーダンス法では、評価対象の金属からなる一対の電極101、102が用いられる。各電極101、102は、絶縁性を有する本体100に埋め込まれている。電極101、102は、互いに一定の間隔Lをあけて対向するように配置されている。つまり、電極101、102は、間隔Lをあけて配列されている。電極101の端面101a及び電極102の端面102aは、本体100の表面100aに露出している。電極101、102各々の端面101a、102aは、本体100の表面100aと同一の平面上にある。
電極101、102の各々は交流電源103と接続されている。測定時、本体100の表面100a、及び電極101、102各々の端面101a、102aの上に、液膜104を形成する。液膜104は、例えば塩分を含む水溶液の膜である。そして、交流電源103によって電極101、102に交流電圧を印加し、液膜104に交流電流を流す。
図2は、図1に示される要素に関する等価回路を示す図である。なお、図2には、図1中の電極101、102のうちの一方の電極101に関する等価回路が示される。他方の電極102に関する等価回路は、その一方の電極101に関する等価回路と同様である。図2を参照して、液膜104は、溶液抵抗RSを有する。特に、液膜104の厚さが薄い場合、溶液抵抗RSが測定結果に与える影響は大きい。液膜104と電極101との境界は、腐食反応抵抗RPとコンデンサCの並列回路で表される。
この等価回路に高周波の交流電圧が印加された場合、腐食反応抵抗RPとコンデンサCの並列回路において、交流電流は全てコンデンサCを通る。この場合、等価回路のインピーダンス(抵抗)は溶液抵抗RSのみとみなされる。一方、等価回路に低周波の交流電圧が印加された場合、腐食反応抵抗RPとコンデンサCの並列回路において、交流電流は腐食反応抵抗RPを通る。この場合、等価回路のインピーダンス(抵抗)には、溶液抵抗RSのみならず腐食反応抵抗RPが影響する。したがって、電極101、102に高周波の交流電圧を印加すれば、電極101、102間のインピーダンスを得ることができる。このインピーダンスから液膜104の厚さ及び液膜104の電気伝導率(塩分量)を求めることができる。
以下に、高周波の電圧印加によって得られたインピーダンスから液膜の厚さ及び液膜の電気伝導率が求まる原理について説明する。
図3は、没水環境を示す模式図である。電極101、102に高周波の交流電圧を印加すれば、一方の電極101から液膜104を通って他方の電極102に流れるという交流電流Iが生じる。交流電流Iの性質上、交流電流Iは、液膜104において電極101、102に近い部分を流れる。
図3を参照して、没水環境では、液膜104の厚さが十分に厚い。この場合、液膜104の厚さ方向において電極101、102から一定の距離以上離れた部分Pには、交流電流Iは流れない。つまり、交流電流Iは、液膜104の厚さ方向において電極101、102に近い部分のみを流れる。要するに、没水環境では、液膜104において交流電流Iが通る部分は、液膜104の厚さ方向において電極101、102に近い部分に限られる。したがって、液膜104の厚さが一定以上である没水環境であれば、液膜104において交流電流Iが通る部分の断面積Aは、液膜104の厚さに依存しないで、一定である、と言える。なお、本明細書において、液膜104において交流電流Iが通る部分の断面積Aとは、電極101、102の配列方向に垂直な断面における断面積を意味する。
高周波の電圧印加によって得られたインピーダンスZは、オームの法則より下記の式(1)を満たす。
Z=(1/σ)・(L/A) (1)
上記式中、σは液膜104の電気伝導率を、Aは液膜104における交流電流Iが通る部分の断面積を、Lは一対の電極101、102同士の間隔をそれぞれ表す。
上述のとおり、没水環境では、液膜104において交流電流Iが通る部分の断面積Aは一定である。一対の電極101、102同士の間隔Lは既知である。没水環境における断面積Aは、予め、測定時に使用する電極101、102の形状及び電極101、102同士の間隔Lに基づいて、予備試験やシミュレーションによって把握することができる。したがって、没水環境では、液膜104の厚さが未知であっても、上記の式(1)より、インピーダンスZから液膜104の電気伝導率σを求めることができる。
図4は、薄膜環境を示す図である。図4を参照して、薄膜環境では、液膜104の厚さが十分に薄い。この場合、液膜104の厚さ方向の全域にわたって交流電流Iが流れる。要するに、液膜104の厚さ方向において電極101、102から離れた領域にも、交流電流Iは流れる。したがって、薄膜環境では、液膜104において交流電流Iが通る部分の断面積Aは、液膜104の厚さに依存し、液膜104の厚さに比例する、と言える。
このように薄膜環境では、液膜104の電気伝導率σが求まっていれば、上記の式(1)より、インピーダンスZから断面積Aを求めることができ、この断面積Aから液膜104の厚さを求めることができる。
上述のとおり、没水環境では、液膜104の厚さにかかわらず、液膜104の電気伝導率σを求めることができ、薄膜環境では、液膜104の電気伝導率σさえわかれば、液膜104の厚さを求めることができる。そうすると、1つの液膜104に対して没水環境と薄膜環境の両方を発現することができれば、液膜104の厚さ及び液膜104の電気伝導率の両方を測定することができる、と言える。しかしながら、一対の電極101、102からなる1つの電極対によって没水環境と薄膜環境の両方を実現することは不可能である。そこで、本発明者は、一対の電極101、102同士の間隔Lに着目し、鋭意検討を重ねた。
[電極同士の間隔Lの検討]
本発明者は数値計算を実施した。数値計算では、電極同士の間隔が異なる2つの電極対のモデルを作製した。そして、各モデルについて、液膜の厚さを一定とし、交流電流が通る部分の断面における電流密度分布を調査した。各モデルの電極同士の間隔はそれぞれ1.00mm、0.01mmであった。
より具体的には、各モデルにおいて、電極の各々を交流電源に接続した。各電極の端面に、一方の電極と他方の電極とを架け渡すように水溶液の液膜を形成した。液膜の厚さは0.100mmであった。各電極の水溶液と接する端面の寸法は、縦10mm、横0.5mmであった。一対の電極は電極の横方向に配列した。液膜は電気的中性条件とし、上記の式(1)のオームの法則が成立することを想定した。電極として鋼材を想定した。各電極と液膜との界面は電気的に短絡することを想定した。電極に高周波の交流電圧を印加することを想定した。さらに、電流密度分布は電極の縦方向(電極の配列方向に垂直な水平方向)に均一であると想定した。つまり、数値計算は、電極の横方向(電極の配列方向)に沿った鉛直断面における2次元計算で行った。
図5は、電流密度と電極表面(端面)からの距離との関係を示す図である。図5中、実線は、電極同士の間隔が1.00mmである場合の計算結果を示し、破線は、電極同士の間隔が0.01mmである場合の計算結果を示す。なお、図5において、電流密度は、電流密度の最大値で規格化して示す。また、電極表面からの距離は、液膜の厚さ方向の距離を意味する。図5を参照して、電極同士の間隔が1.00mmの場合(図5中の実線参照)、電極表面からの距離が大きくなっても、電流密度はほとんど変化しなかった。これは、液膜の厚さ方向の全域にわたって、交流電流が流れることを意味する。つまり、電極同士の間隔が大きい方の1.00mmである場合、薄膜環境が発現した。以下に、より具体的に説明する。
電極同士の間隔が1.00mmである場合、電極の縦方向の単位長さあたりのインピーダンスは10.9(cm/S)であった。上記の式(1)を用いて単位長さあたりの断面積を算出すると、0.092mmであった。単位長さあたりの断面積は、液膜において実質的に電流が流れる厚さを示す。電流が流れる厚さは液膜の厚さとほぼ等しかった。つまり、薄膜環境が発現した。この点についてさらに、電流密度の等位線を調べた。
図6は、電極101、102同士の間隔が1.00mmである場合の等電位図である。図6を参照して、電極101、102同士の間隔が大きい方の1.00mmである場合、交流電流は液膜104の厚さ方向の全域にわたって流れていた。この場合、確かに、薄膜環境が発現した。
一方、図5を参照して、電極同士の間隔が小さい方の0.01mmである場合(図5中の破線参照)、電極表面からの距離が大きくなるにつれて、電流密度が減少した。これは、液膜の厚さ方向において交流電流が流れない部分があることを意味する。つまり、電極同士の間隔が小さい方の0.01mmである場合、没水環境が発現した。以下に、より具体的に説明する。
電極同士の間隔が0.01mmである場合、電極の縦方向の単位長さあたりのインピーダンスは0.81(cm/S)であった。上記の式(1)を用いて単位長さあたりの断面積を算出すると、0.012mmであった。電流が流れる厚さは液膜の厚さに比べ十分に小さかった。つまり、没水環境が発現した。この点についてさらに、電流密度の等位線を調べた。
図7は、電極101、102同士の間隔が0.01mmである場合の等電位図である。図7を参照して、電極101、102同士の間隔が小さい方の0.01mmである場合、交流電流は液膜104の厚さ方向において電極から一定以上離れた部分には、交流電流が流れなかった。この場合、確かに、没水環境が発現した。
以上より、電極同士の間隔が小さい場合と大きい場合とで、液膜の厚さが同じであっても、液膜において交流電流の通る部分が相違することを突き止めた。
図8A及び図8Bは、液膜104において交流電流Iが流れる状況を示す模式図である。これらの図のうち、図8Aは、電極101、102同士の間隔Lが小さい場合の状況を示し、図8Bは電極101、102同士の間隔Lが大きい場合の状況を示す。図8A及び図8Bに示される液膜104の厚さは同じである。
図8A及び図8Bを参照して、一対の電極101、102同士の間隔Lが小さい場合(図8A参照)、電極101、102同士の間隔Lが大きい場合(図8B参照)と比べて、交流電流Iが通る部分の断面積Aが小さい。したがって、液膜104の厚さが十分薄い場合であっても、電極101、102同士の間隔Lがある程度小さければ、液膜104の厚さ方向において電極101、102から離れた部分では、交流電流Iが流れない。この状況は、液膜104の厚さが十分薄い場合に通常発現する薄膜環境ではなくて、没水環境である。
上述したように、薄膜環境では、液膜104の電気伝導率σさえわかれば、液膜104の厚さを求めることができる。一方、没水環境では、液膜104の電気伝導率σを求めることができる。電極101、102同士の間隔Lが互いに異なる2つの電極対によって、1つの液膜104に対してインピーダンスZを測定すれば、間隔Lが小さい電極対では没水環境が発現し、間隔Lが大きい電極対では薄膜環境が発現する。したがって、液膜104の厚さが薄い場合であっても、液膜104の厚さ及び液膜104の電気伝導率σを求めることができる。
要するに、液膜104の厚さが同じであっても、没水環境が発現するか、薄膜環境が発現するかは、電極101、102同士の間隔Lに依存する。以上のことから、本発明者は、2つの電極対を利用することを想起した。そして、一方の電極対の間隔Lを他方の電極対の間隔Lよりも小さくすることにより、その一方の電極対で没水環境が発現し、その他方の電極対で薄膜環境が発現することを見出した。その結果として、液膜104の電気伝導率σ及び液膜104の厚さの両方を求められることを見出した。
[遷移領域の検討]
ところで、一方の電極対で没水環境を発現し、他方の電極対で薄膜環境を発現するには、液膜の厚さによってはその一方の電極対の間隔を極端に小さくし、その他方の電極対の間隔を極端に大きくしなければならない場合がある。しかしながら、電極対の間隔を極端に小さくする場合、その電極対を保持するプローブの製作に時間やコストがかかる。一方、電極対の間隔を極端に大きくする場合、その電極対を保持するプローブの大型化が避けられない。
例えば極めて薄い液膜が形成される場合を仮定する。このような極薄の液膜に対して、電極同士の間隔が特段大きくもなく、小さくもない電極対を接触させれば、完全なる没水環境でもなく、完全なる薄膜環境でもない、これらの中間の状態が発現する。本明細書では、この中間の状態を遷移領域と言う。本発明者は、上述の知見を元に、2つの電極対のうちの一方又は両方の電極対で遷移領域が発現する場合であっても、液膜の電気伝導率及び液膜の厚さを求めることが可能な方法について検討した。
電気化学インピーダンス法による液膜のインピーダンス測定では、液膜において交流電流が流れる部分の断面積Aは、電気伝導率によらず、液膜の厚さ及び電極の形状によって決まる。電極の形状を固定として考えれば、交流電流が流れる断面積Aは液膜の厚さDの関数として考えられる。この関数は、上述したように交流電流が流れる断面積Aは、没水環境であれば液膜の厚さDに依存せず、薄膜環境であれば液膜の厚さDに比例するという制限が付く。この制限を考慮して断面積Aを液膜の厚さDの関数として数式化すると、下記の式(2)が導かれる。
A∝Dα (0≦α≦1) (2)
上記式中、αは没水環境、薄膜環境又は遷移領域を表す環境パラメータである。
式(2)にα=0を代入すればA∝1となる。この場合、断面積Aが液膜の厚さDに依存しない。このため、α=0は没水環境を表す。式(2)にα=1を代入すればA∝Dとなる。この場合、断面積Aが液膜の厚さDに比例する。このため、α=1は薄膜環境を表す。そして、0<α<1は遷移領域を表す。
この式(2)を上記の式(1)に代入すると、次の式(3)が導かれる。
Z∝(1/σ)・D−α (3)
ここで、間隔が異なる2つの電極対それぞれでインピーダンスを測定すると、各電極対で測定されるインピーダンスは異なる。この特性を利用して、2つの電極対それぞれで測定されるインピーダンスの比をとると次の式(4)が導かれる。
Z1/Z2 ∝ Dα2−α1 (4)
上記式中、Z1は一方の電極対(間隔が小さい電極対)によるインピーダンスであり、Z2は他方の電極対(間隔が大きい電極対)によるインピーダンスであり、α1はその一方の電極対の環境パラメータαであり、α2はその他方の電極対の環境パラメータαである。
式(4)を見ると、2つの電極対によるインピーダンスの比(Z1/Z2)は、液膜の厚さD及び環境パラメータαのみの関数となっており、電気伝導率σに依存しないことが分かる。また、式(4)ではα2−α1≠0であることが前提となるが、電極同士の間隔が異なる2つの電極対であれば必然的にα2−α1≠0となる。そうすると、以下の手順を踏むことにより、液膜の厚さDを求めることができる。
予め、厚さ及び電気伝導率が既知である多数の液膜に対して、各電極対によってインピーダンスZ1、Z2を測定し、その比(Z1/Z2)と、液膜の厚さDと、の関係を把握する。その上で、厚さD及び電気伝導率σが未知である液膜に対して、各電極対によってインピーダンスZ1、Z2を測定し、その比(Z1/Z2)を求める。そうすれば、求めた比(Z1/Z2)と、予め把握してあるインピーダンスの比(Z1/Z2)と液膜の厚さDとの関係から、未知の液膜の厚さDを求めることができる。その結果、求めた液膜の厚さDと、未知の液膜に対するインピーダンスZ1、Z2と、から、上記の式(1)より、未知の液膜の電気伝導率を求めることができる。したがって、2つの電極対のうちの一方又は両方の電極対で遷移領域が発現する場合であっても、液膜の厚さ及び電気伝導率を求めることができる。
[大気腐食の因子]
ここで、金属表面に形成された液膜において、大気腐食の主たる因子の1つは塩化物イオン(Cl)である。塩化物イオンは、主に海水に由来する。液膜中の塩化物イオンは、金属(鋼材)の表層の不働態皮膜を破壊し、且つFe(鉄)の溶解反応を促進する。これにより、金属の腐食速度が速まる。また、塩化物イオンは耐候性鋼における安定さびの形成を阻害する。
さらに、液膜中の酸性度(水素イオン(H)濃度)も、大気腐食の主たる因子となる。液膜の酸性化は、主に、重工業地帯における工場排出ガス中の硫黄酸化物(SO)や、都市地帯における自動車排ガス中の硫黄酸化物に由来する。硫黄酸化物の主体は二酸化硫黄(SO)である。SOは、液膜(水膜)中で硫酸(HSO)に変化する。液膜の乾燥に伴い、液膜中の硫酸濃度が高まる。すなわち、酸性度(水素イオン(H)濃度)が上昇する。液膜中の水素イオン(H)は、Fe(鉄)の溶解反応を促進する。これにより、金属の腐食速度が速まる。
液膜中に水素イオン(H)が多ければ、酸性度が上昇する。酸性度を表す1つの指標はpHである。
例えば、重工業地帯や都市地帯では、硫黄酸化物が大気に多く含まれる傾向にある。大気中の硫黄酸化物は、湿気や雨に溶け込んで硫酸に変化し、酸性霧や酸性雨をもたらす。例えば、酸性雨とはpHが5.6よりも低い降雨を指す。酸性雨は、金属表面に降り注ぎ、液膜となる。酸性霧は、金属製品の表面に付着して凝縮し、液膜となる。金属表面において、それら液膜は水分の蒸発とともに濃縮し、その結果、液膜のpHが低くなる。つまり、液膜の酸性度が高くなる。
しかしながら、上記した電気化学インピーダンス法によって得られた液膜の塩分量(電気伝導率)は、液膜に溶けているあらゆる塩の量の総和である。この液膜には、大気腐食の主たる因子である塩化物イオン及び水素イオンが存在し得る。液膜中に水素イオンが多く存在する場合、pHは低い。特に、液膜が薄ければ、pHがより一層低くなる。液膜中の水分の蒸発に伴って、水素イオンが濃縮するからである。このため、液膜のpHは、金属の腐食速度に大きな影響を及ぼす。そこで、電気化学インピーダンス法によって得られた液膜の塩分量及び液膜の厚さに加え、その液膜に対してpHを測定することができれば、実態に即して、液膜の塩分量と金属の腐食速度との関係を精確に把握することができると言える。
本発明は上記の知見に基づいて完成されたものである。
本実施形態のプローブは、電気化学インピーダンス法による金属の腐食環境測定に用いられるプローブである。当該プローブは、本体と、一対の第1電極と、一対の第2電極と、pH検出器と、を備える。本体は、測定時に液膜が形成される表面を有する。一対の第1電極は、本体の内部から本体の表面に露出して、第1の間隔をあけて配列される。一対の第2電極は、本体の内部から本体の表面に露出して、第1の間隔よりも大きい第2の間隔をあけて配列される。pH検出器は、本体の表面に露出する検知面を有する。本明細書では、一対の第1電極を「第1電極対」とも言う。一対の第2電極を「第2電極対」とも言う。
典型的な例では、本体の表面に露出する第1電極各々の端面は、本体の表面と同一の平面上にある。これと同様に、本体の表面に露出する第2電極各々の端面は、本体の表面と同一の平面上にある。
また、本実施形態の腐食環境測定装置は、電気化学インピーダンス法による腐食環境測定装置である。当該装置は、上記本実施形態のプローブと、第1交流電源と、第2交流電源と、pH測定器と、を備える。第1交流電源は、第1電極の各々と接続される。第2交流電源は、第2電極の各々と接続される。pH測定器は、pH検出器に接続される。
本実施形態のプローブを備えた本実施形態の腐食環境測定装置によれば、第1電極対と第2電極対という2つの電極対が用いられる。第2電極対の間隔(第2の間隔)は、第1電極対の間隔(第1の間隔)よりも大きい。つまり、第1電極対は、電極同士の間隔が小さい電極対であり、第2電極対は、電極同士の間隔が大きい電極対である。したがって、プローブの本体の表面、ならびにこの本体の表面に露出する第1電極対及び第2電極対それぞれの端面に液膜を形成し、この1つの液膜に対して、第1電極対では没水環境でインピーダンスを測定することが可能となり、第2電極対では薄膜環境でインピーダンスを測定することが可能となる。これにより、没水環境での第1電極対によるインピーダンスから液膜の電気伝導率を求めることができる。この電気伝導率と、薄膜環境での第2電極対によるインピーダンスに基づけば、液膜の厚さを求めることができる。したがって、電気伝導率及び厚さが未知である液膜に対して、電気伝導率(塩分量)及び厚さの両方を求めることができる。
さらに、本実施形態のプローブを備えた本実施形態の腐食環境測定装置によれば、第1電極対及び第2電極対で測定される液膜と同じ液膜を、pH検出器の検知面に形成し、この1つの液膜に対して、pH測定器で水素イオン濃度による電気的特性を測定することが可能となる。この電気的特性から液膜のpHを求めることができる。したがって、塩化物イオン及び水素イオンが主体的に作用する大気腐食環境(例:重工業地帯、都市地帯、海岸地帯、海洋地帯)において、実態に即して、液膜の塩分量と金属の腐食速度との関係を精確に把握することができる。
上記のプローブにおいて、第1の間隔L1と第2の間隔L2との比(L1/L2)は、0.01以上、0.10以下である、ことが好ましい。比(L1/L2)が0.10以下であれば、液膜の電気伝導率及び液膜の厚さを求めることができる。電極同士の間隔が小さいほど、没水環境が発現しやすい。このため、間隔が小さい第1電極対を構成する第1電極同士の間隔をさらに小さくしても、測定は可能である。したがって、比(L1/L2)の上限は0.10であるのが好ましい。一方、第1電極同士の間隔が第2電極同士の間隔と近すぎれば、プローブの製造が難しくなる。したがって、比(L1/L2)の下限は0.01であるのが好ましい。
上記の腐食環境測定装置を用いた腐食環境測定方法は、例えば、下記の(1)又は(2)の測定方法を採用できる。これにより、液膜の厚さ及び電気伝導率(塩分量)の両方を求めることができる。
(1)腐食環境測定方法は、予備試験工程と、マスターデータ作成工程と、インピーダンス測定工程と、膜厚算出工程と、電気伝導率算出工程と、を備える。予備試験工程では、厚さ及び電気伝導率が既知である予備試験用液膜を本体の表面に形成して、第1電極でインピーダンスを測定するとともに、第2電極でインピーダンスを測定する。マスターデータ作成工程では、予備試験工程で得られた第1電極によるインピーダンスと第2電極によるインピーダンスとの比と、予備試験用液膜の厚さと、の関係を示すマスターデータを作成する。インピーダンス測定工程では、厚さ及び電気伝導率が未知である液膜を本体の表面に形成して、第1電極でインピーダンスを測定するとともに、第2電極でインピーダンスを測定する。膜厚算出工程では、インピーダンス測定工程で得られた第1電極によるインピーダンスと第2電極によるインピーダンスとの比と、マスターデータ作成工程で得られたマスターデータと、に基づいて、液膜の厚さを算出する。電気伝導率算出工程では、膜厚算出工程で得られた液膜の厚さと、インピーダンス測定工程で得られた第1電極によるインピーダンス又は第2電極によるインピーダンスと、から、液膜の電気伝導率を算出する。
(2)腐食環境測定方法は、予備試験工程と、断面積算出工程と、インピーダンス測定工程と、電気伝導率算出工程と、膜厚算出工程と、を備える。予備試験工程では、厚さ及び電気伝導率が既知である予備試験用液膜を本体の表面に形成して、第1電極でインピーダンスを測定する。断面積算出工程では、予備試験工程で得られた第1電極によるインピーダンスから、予備試験用液膜における第1電極からの交流電流の通る部分の断面積を求める。インピーダンス測定工程では、厚さ及び電気伝導率が未知である液膜を本体の表面に形成して、第1電極でインピーダンスを測定するとともに、第2電極でインピーダンスを測定する。電気伝導率算出工程では、インピーダンス測定工程で得られた第1電極によるインピーダンスと、断面積算出工程で得られた断面積と、に基づいて、液膜の電気伝導率を算出する。膜厚算出工程では、電気伝導率算出工程で得られた電気伝導率と、インピーダンス測定工程で得られた第2電極によるインピーダンスと、に基づいて、液膜の厚さを算出する。
以下に、図面を参照しながら、本実施形態のプローブ、腐食環境測定装置、及び腐食環境測定方法の具体例を説明する。
[プローブ及び腐食環境測定装置]
図9は、本実施形態のプローブ2を備えた腐食環境測定装置1の一例を示す斜視図である。図10は、図9に示される腐食環境測定装置1の平面図である。図11は、図10の線XI−XIにおける断面図である。図12は、図10の線XII−XIIにおける断面図である。図11及び図12には、プローブ2の鉛直断面が示される。なお、図11及び図12には、測定時に形成される液膜Fが仮想線で示される。
図9を参照して、腐食環境測定装置1は、プローブ2と、第1交流電源3と、第2交流電源4と、pH測定器20と、を備える。図9〜図12を参照して、プローブ2は、本体10と、一対の第1電極11A、11Bと、一対の第2電極12A、12Bと、pH検出器22と、を備える。
本体10は、測定時に液膜Fが形成される表面10aを有する。第1電極11A、11B及び第2電極12A、12Bは、腐食環境を測定するために評価対象となる金属からなる。第1電極11A、11Bは、それぞれ直方体状であり、互いに同じ形状寸法である。第2電極12A、12Bは、それぞれ直方体状であり、互いに同じ形状寸法である。第1電極11A、11Bの形状寸法は、第2電極12A、12Bの形状寸法と同じである。ただし、第1電極11A、11Bの形状寸法は、第2電極12A、12Bの形状寸法と異なってもよい。
第1電極11A、11Bは、本体10に埋め込まれており、本体10の表面10aから露出している。具体的には、第1電極11A、11Bそれぞれの端面11Aa、11Baが、本体10の表面10aに露出している。第1電極11A、11Bは、第1の間隔L1をあけて配列される。換言すれば、第1電極11A、11Bは、互いに第1の間隔L1をあけて対向するように平行に配置される。第1電極11A、11Bそれぞれの端面11Aa、11Baは、本体10の表面10aと同一の平面上にある。ただし、各端面11Aa、11Baは、本体10の表面10aから極僅かに突出していてもよい。
第2電極12A、12Bは、本体10に埋め込まれており、本体10の表面10aから露出している。具体的には、第2電極12A、12Bそれぞれの端面12Aa、12Baが、本体10の表面10aに露出している。第2電極12A、12Bは、第2の間隔L2をあけて配列される。換言すれば、第2電極12A、12Bは、互いに第2の間隔L2をあけて対向するように平行に配置される。第2電極12A、12Bそれぞれの端面12Aa、12Baは、本体10の表面10aと同一の平面上にある。ただし、各端面12Aa、12Baは、本体10の表面10aから極僅かに突出していてもよい。
第2電極12A、12B同士の間隔L2は、第1電極11A、11B同士の間隔L1よりも大きい。第1の間隔L1と第2の間隔L2との比(L1/L2)は、0.01以上、0.10以下である。
第1交流電源3は、導線5によって第1電極11A、11Bの各々と接続される。導線5は、本体10の内部で第1電極11A、11Bと接続される。ただし、導線5が、本体10の表面10a上で第1電極11A、11Bと接続されてもよい。これにより、第1電極11A、11B同士が電気的に接続される。このため、第1電極11A、11Bからなる第1電極対と、この第1電極対に接触する液膜Fと、の間で、第1交流電源3による電気回路を形成することが可能となる。
第2交流電源4は、導線6によって第2電極12A、12Bの各々と接続される。導線6は、本体10の内部で第2電極12A、12Bと接続される。ただし、導線6が、本体10の表面10a上で第2電極12A、12Bと接続されてもよい。これにより、第2電極12A、12B同士が電気的に接続される。このため、第2電極12A、12Bからなる第2電極対と、この第2電極対に接触する液膜Fと、の間で、第2交流電源4による電気回路を形成することが可能となる。
本体10の材質は、電気的な絶縁性を有し、且つ第1電極対及び第2電極対を安定して保持することができる限り特に限定されない。例えば、本体10の材質は、樹脂である。導線5、導線6の材質は、例えば、鋼、アルミニウム、銅等である。
図9〜図11を参照して、第1電極対は第2電極対と間隔をあけて配置される。第1電極対を構成する第1電極11A、11Bの配列方向は、第2電極対を構成する第2電極12A、12Bの配列方向と一致する。ただし、両者の配列方向は一致しなくてもよい。
図9、図10及び図12を参照して、腐食環境測定装置1は、さらにpH測定器20を備える。プローブ2は、さらに、pH検出器22を備える。pH検出器22はpH測定器20と接続される。pH検出器22としては、pHを検出できる周知の電極式検出器を用いることができる。
pH検出器22は、概ね円柱状であり、その一端に検知面22aを有する。pH検出器22は、本体10に埋め込まれており、その検知面22aが本体10の表面10aに露出している。pH検出器22の検知面22aは、本体10の表面10aと同一の平面上にある。ただし、その検知面22aは、本体10の表面10aから極僅かに突出していてもよいし、本体10の表面10aから極僅かに凹んでいてもよい。
pH検出器22は、第1電極対を構成する第1電極11A、11Bの周辺に配置される。pH検出器22は、第2電極対を構成する第2電極12A、12Bの周辺に配置されてもよい。なお、pH検出器22の検知面22aが本体10の表面10aに露出する限り、pH検出器22の配置位置は特に限定されない。
以下に、pH検出器22の構造の一例を説明する。pH検出器22は、作用電極231と参照電極232を備える。作用電極231及び参照電極232はいずれも棒状である。作用電極231と参照電極232は対をなす。さらに、pH検出器22は、外殻を構成する円筒状の管222を備える。管222には、参照電極232が収容される。作用電極231と管222とは互いに隣接するように配置される。作用電極231の一端面は、pH検出器22の検知面22aに対応する。管222の材質はガラスである。管222の材質は樹脂であってもよい。
作用電極231の材質は、pH感受性を有する金属である。例えば、作用電極231の材質は、W(タングステン)又はSb(アンチモン)である。作用電極231の一端面がpH検出器22の検知面22aに露出する。なお、作用電極231の一端面に、当該作用電極231を構成する金属材料の酸化膜が積層されていてもよい。例えば、作用電極231の材質がタングステンである場合、作用電極231の一端面に酸化タングステン(WO)膜が積層されていてもよい。同様に、作用電極231の材質がアンチモンである場合、作用電極231の一端面に酸化アンチモン(SbO)膜が積層されていてもよい。この場合、作用電極231の金属酸化膜がpH検出器22の検知面22aに露出する。
なお、pH検出器22(作用電極231)としては、pH感受性を有する限り特に限定されず、上記の金属のほかに、ガラスや半導体を用いることも可能である。
管222に収容される参照電極232の材質はAg(銀)である。参照電極232の表面はAgCl(塩化銀)で被覆されている。管222の内部において、本体10の表面10a側から順に、塩橋223、内部液224、及び樹脂(図示省略)が封入されている。つまり、塩橋223が、pH検出器22の検知面22aの傍で、本体10の表面10aに露出する。参照電極232は、管222の長手方向の全域のうち、樹脂の領域から内部液224の領域に延びている。内部液224として、飽和または濃度既知のKCl水溶液を用いることができる。塩橋223として、KCl又はKNOを含む寒天を用いることができる。塩橋223として、イオン液体を含むポリマーゲルを用いてもよい。
なお、管222において、内部液224を塩橋223に置き換えても構わない。この場合、参照電極232が、本体10の表面10aに露出する塩橋223と接触していればよい。
pH測定器20は、導線21によって、pH検出器22の作用電極231及び参照電極232の各々と接続される。これにより、作用電極231と参照電極232が電気的に接続される。このため、作用電極231と、参照電極232と、これらの作用電極231及び参照電極232に接触する液膜Fと、の間で、電気回路を形成することが可能となる。
このように、本実施形態の腐食環境測定装置1は、第1電極対と第2電極対という2つの電極対を備える。第2電極対の間隔(第2の間隔L2)は、第1電極対の間隔(第1の間隔L1)よりも大きい。したがって、プローブ2の本体10の表面10a、ならびに第1電極対及び第2電極対それぞれの端面11Aa、11Ba、12Aa、12Baに液膜Fを形成し、この1つの液膜Fに対して、第1電極対では没水環境でインピーダンスを測定することが可能となり、第2電極対では薄膜環境でインピーダンスを測定することが可能となる。これにより、没水環境での第1電極対によるインピーダンスから液膜Fの電気伝導率を求めることができる。この電気伝導率と、薄膜環境での第2電極対によるインピーダンスとを用いて、液膜Fの厚さを求めることができる。したがって、電気伝導率及び厚さが不明である液膜Fに対して、電気伝導率(塩分量)及び厚さの両方を求めることができる。
また、本実施形態のプローブ2は、pH検出器22を備え、腐食環境測定装置1は、そのpH検出器22に接続されたpH測定器20を備える。第1電極対及び第2電極対で測定される液膜Fと同じ液膜Fを、pH検出器22の検知面22aに形成し、この1つの液膜Fに対して、pH測定器20で水素イオン濃度による電気的特性を測定することが可能となる。この電気的特性から液膜FのpHを求めることができる。
より具体的には、pH測定器20によって、作用電極231と参照電極232と間の電位差を測定する。これにより、液膜FのpHを求めることができる。
このpHに基づいて、大気腐食に対する液膜Fの性質を認識することができる。したがって、塩化物イオン及び水素イオンが主体的に作用する大気腐食環境(例:重工業地帯、都市地帯、海岸地帯、海洋地帯)において、実態に即して、液膜Fの塩分量と金属の腐食速度との関係を精確に把握することができる。
[腐食環境測定方法]
続いて、本実施形態のプローブ及び腐食環境測定装置を用いた腐食環境測定方法について説明する。この測定方法によれば、液膜の厚さ及び電気伝導率(塩分量)の両方を求めることができる。
[測定方法1]
測定方法1は、上記(1)の測定方法に対応する。測定方法1は、第1電極対及び第2電極対のうちの一方又は両方で遷移領域が発現する場合であっても、液膜の電気伝導率及び液膜の厚さを測定することが可能な方法である。なお、測定方法1は、第1電極対(間隔が小さい電極対)で没水環境が発現し、第2電極対(間隔が大きい電極対)で薄膜環境が発現する場合にも適用できる。
測定方法1は、予備試験工程と、マスターデータ作成工程と、インピーダンス測定工程と、膜厚算出工程と、電気伝導率算出工程と、を含む。
[予備試験工程及びマスターデータ作成工程]
予備試験工程は、マスターデータ作成工程と同時に又は先立って行われる工程である。予備試験工程では、本実施形態のプローブ及び腐食環境測定装置を用いて、予備試験用液膜のインピーダンスを測定する。マスターデータ作成工程では、予備試験工程で得られた第1電極対及び第2電極対によるインピーダンスに基づいて、第1電極対及び第2電極対の各特性(インピーダンスと液膜の厚さとの関係)を示すマスターデータを作成する。このマスターデータは、後述する膜厚算出工程で液膜の厚さの算出に用いられる。以下に、予備試験工程及びマスターデータ作成工程を詳しく説明する。
まず、プローブの本体の表面、ならびにこの本体の表面に露出する第1電極対及び第2電極対の各端面に、予備試験用液膜を形成する。予備試験用液膜は、厚さ及び電気伝導率が既知である。その厚さ及び電気伝導率は周知の方法で測定することによって把握できる。次に、第1電極対を構成する第1電極に交流電圧を印加して、インピーダンスを測定する。これにより、予備試験用液膜についての厚さ及び電気伝導率と、第1電極対(第1電極)によるインピーダンスと、の関係が求められる。
ここで、上記の式(1)を参照して、第1電極同士の間隔Lは定数であり、予備試験用液膜において交流電流が通る部分の断面積Aは定数となる。第1電極同士の間隔L、第1電極の形状、及び予備試験用液膜の厚さが既知であるためである。したがって、第1電極対によるインピーダンスZは、予備試験用液膜の電気伝導率σに反比例する。換言すれば、第1電極対によるインピーダンスZと、予備試験用液膜の電気伝導率σと、の積は、定数となる。このインピーダンスZと電気伝導率σとの積を、種々の予備試験用液膜の厚さ(すなわち断面積A)について求める。このような工程を、第2電極対(第2電極)についても行う。
図13は、予備試験用液膜のインピーダンスと電気伝導率との積と、予備試験用液膜の厚さと、の関係の一例を示す図である。図13中、実線は、電極同士の間隔が0.10mmである第1電極対(間隔が小さい電極対)の結果を示し、破線は、電極同士の間隔が1.00mmである第2電極対(間隔が大きい電極対)の結果を示す。種々の予備試験用液膜の厚さについて、第1電極対及び第2電極対のそれぞれでインピーダンスZと電気伝導率σとの積を求める。これにより、図13に示すように各電極対についてのインピーダンスZと電気伝導率σとの積と、液膜の厚さと、の関係が求められる。
続いて、第1電極対についてのインピーダンスZ1と電気伝導率σとの積と、第2電極対についてのインピーダンスZ2と電気伝導率σとの積と、の比を計算する。このとき、第1電極対及び第2電極対による電気伝導率σは同じである。第1電極対及び第2電極対によって同じ予備試験用液膜に対して測定するためである。そうすると、第1電極対についてのインピーダンスZ1と電気伝導率σとの積と、第2電極対についてのインピーダンスZ2と電気伝導率σとの積と、の比は、インピーダンスZ1とインピーダンスZ2との比(Z1/Z2)に相当する。本明細書では、この比(Z1/Z2)をインピーダンス比(Z1/Z2)とも言う。このインピーダンス比(Z1/Z2)を、予備試験用液膜の厚さ毎に算出することで、インピーダンス比(Z1/Z2)と、液膜の厚さと、の関係が得られる。これがマスターデータとなる。
図14は、予備試験用液膜のマスターデータの一例を示す図である。図14中のグラフ曲線を見ると、液膜の厚さが0.001mm近傍であるとき、グラフ曲線に傾きが無く、液膜の厚さによらずインピーダンス比(Z1/Z2)が一定であることがわかる。これは、液膜の厚さが0.001mmである場合、第1電極対及び第2電極対の両方で薄膜環境が発現するためである。つまり、上記の式(4)においてα1=α2=1となっているためである。一方、液膜の厚さが10mm近傍のとき、グラフ曲線に傾きが無く、液膜厚さによらずインピーダンス比(Z1/Z2)が一定であることがわかる。これは、液膜の厚さが10mmである場合、第1電極対及び第2電極対の両方で没水環境が発現するためである。つまり、上記の式(4)においてα1=α2=0となっているためである。
これに対し、液膜の厚さが0.1mm近傍であるとき、グラフ曲線に傾きが有り、その近傍での傾きの変化は小さい。これは、液膜の厚さが0.1mm近傍である場合、第2電極対(間隔が大きい電極対)で薄膜環境が発現し、第1電極対(間隔が小さい電極対)で没水環境が発現するためである。つまり、上記の式(4)においてα2−α1≒1となっているためである。
また、液膜の厚さが0.01mm近傍であるとき、グラフ曲線に傾きがあり、その近傍での傾きの変化は大きい。これは、液膜の厚さが0.01mm近傍である場合、第1電極対及び第2電極対のうちの一方又は両方で遷移領域が発現するためである。つまり、上記の式(4)において0<α2−α1<1となっているためである。
上述したように、式(4)においてα2−α1≠0であれば、すなわち第1電極対及び第2電極対の両方で薄膜環境又は没水環境が発現するという状況でなければ、測定は可能である。したがって、マスターデータにおいてグラフ曲線の傾きが0でない点で液膜の厚さが測定可能となる。
なお、マスターデータ作成工程は、数値計算で行ってもよいし、実試験で行ってもよい。
[インピーダンス測定工程]
インピーダンス測定工程では、上記の予備試験用液膜ではなく、実際の評価対象である液膜のインピーダンスを測定する。液膜のインピーダンス測定には、予備試験工程及びマスターデータ作成工程で用いた腐食環境測定装置を用いる。
まず、プローブの本体の表面、ならびにこの本体の表面に露出する第1電極対及び第2電極対の各端面に、評価対象の液膜を形成する。この液膜は、厚さ及び電気伝導率が未知である。次に、第1電極対を構成する第1電極、及び第2電極対を構成する第2電極に、それぞれ交流電圧を印加して、第1電極対で液膜のインピーダンスを測定するとともに、第2電極対で液膜のインピーダンスを測定する。インピーダンスの測定は、電気化学インピーダンス法で行う。第1電極対及び第2電極対に印加する交流電圧は高周波の交流電圧である。第1電極対に印加する交流電圧は、第2電極対に印加する交流電圧と同じであってもよいし、異なってもよい。
ここで、図2を参照して、印加する交流電圧の周波数が十分に高ければ、交流電流は溶液抵抗RSのみをインピーダンスとして受ける。つまり、交流電流が全てコンデンサCを通る。このような状況を実現するための周波数は、電極の材料、電極の形状、液膜の組成等によって適宜設定すればよい。例えば、大気に曝された鋼材に付着した液膜が評価対象である場合、印加する交流電圧の周波数は10kHz程度である。
なお、マスターデータ作成工程(予備試験工程を含む)と、インピーダンス測定工程とは、どちらを先に実施してもよく、その順序は特に限られない。最終的に、マスターデータ作成工程及びインピーダンス測定工程は、次の膜厚算出工程の前に実施されていればよい。
[膜厚算出工程]
膜厚算出工程では、まず、インピーダンス測定工程で得られた第1電極対によるインピーダンスZ1と第2電極対によるインピーダンスZ2との比(Z1/Z2)を算出する。次に、算出されたインピーダンスの比(Z1/Z2)をマスターデータ(図14のグラフ曲線)と照合して、該当する液膜の厚さをグラフ曲線から抽出する。これにより、インピーダンス測定工程で評価対象とした未知の液膜の厚さが求められる。
[電気伝導率算出工程]
電気伝導率算出工程では、膜厚算出工程で得られた液膜の厚さと、インピーダンス測定工程で得られた第1電極対によるインピーダンスとを、上記の式(1)に代入して、評価対象の液膜の電気伝導率σを算出する。式(1)に代入するインピーダンスの値は、第2電極対によって測定されたものでもよい。ただし、第1電極対によるインピーダンスを採用する場合、電極同士の間隔Lとして、第1電極同士の間隔(第1の間隔)を採用する。第2電極対によるインピーダンスを採用する場合、電極同士の間隔Lとして、第2電極同士の間隔(第2の間隔)を採用する。
[測定方法2]
測定方法2は、上記(2)の測定方法に対応する。上述のとおり、測定方法1は、第1電極対及び第2電極対のうちの少なくとも一方で遷移領域が発現する場合であっても、液膜の電気伝導率及び液膜の厚さを測定することが可能な方法である。これに対し、測定方法2は、第1電極対(間隔が小さい電極対)で没水環境が発現し、第2電極対(間隔が大きい電極対)で薄膜環境が発現する場合に、液膜の厚さ及び液膜の電気伝導率を測定することが可能な方法である。
測定方法2は、予備試験工程と、断面積算出工程と、インピーダンス測定工程と、電気伝導率算出工程と、膜厚算出工程とを含む。
[予備試験工程及び断面積算出工程]
予備試験工程は、断面積算出工程と同時に又は先立って行われる工程である。予備試験工程では、本実施形態のプローブ及び腐食環境測定装置を用いて、予備試験用液膜のインピーダンスを測定する。断面積算出工程では、予備試験工程で得られた第1電極対によるインピーダンスに基づいて、没水環境での第1電極からの交流電流が通る部分の断面積を求める。この断面積は、後述する電気伝導率算出工程で液膜の電気伝導率の算出に用いられる。以下に、予備試験工程及び断面積算出工程を詳しく説明する。
まず、プローブの本体の表面、ならびにこの本体の表面に露出する第1電極対及び第2電極対の各端面に、十分な厚さの予備試験用液膜を形成する。これにより、第1電極対(間隔が小さい電極対)では、没水環境が発現する。予備試験用液膜は、厚さ及び電気伝導率が既知である。その厚さ及び電気伝導率は周知の方法で測定することによって把握できる。次に、第1電極対を構成する第1電極に交流電圧を印加して、インピーダンスZを測定する。
ここで、上述したように、没水環境では、液膜(予備試験用液膜)において交流電流が通る部分の断面積Aは、液膜の厚さに依存しない。第1電極同士の間隔L、及び予備試験用液膜の電気伝導率σは既知である。このため、上記の式(1)において、第1電極同士の間隔Lは定数であり、予備試験用液膜の電気伝導率σは定数となる。したがって、第1電極対によるインピーダンスZを式(1)に代入すれば、第1電極からの交流電流が通る部分の断面積Aが求められる。
なお、断面積算出工程は、数値計算で行ってもよいし、実試験で行ってもよい。
[インピーダンス測定工程]
インピーダンス測定工程では、実際の評価対象である液膜のインピーダンスを測定する。液膜のインピーダンス測定には、予備試験工程及び断面積算出工程で用いた腐食環境測定装置を用いる。
測定方法1と同様に、まず、プローブの本体の表面、ならびにこの本体の表面に露出する第1電極対及び第2電極対の各端面に、評価対象の液膜を形成する。この液膜は、厚さ及び電気伝導率が未知である。次に、第1電極対を構成する第1電極、及び第2電極対を構成する第2電極に、それぞれ高周波の交流電圧を印加して、第1電極対で液膜のインピーダンスを測定するとともに、第2電極対で液膜のインピーダンスを測定する。
なお、断面積算出工程(予備試験工程を含む)と、インピーダンス測定工程とは、どちらを先に実施してもよく、その順序は特に限られない。最終的に、断面積算出工程及びインピーダンス測定工程は、次の電気伝導率算出工程の前に実施されていればよい。
[電気伝導率算出工程]
電気伝導率算出工程では、インピーダンス測定工程で得られた第1電極対によるインピーダンスと、断面積算出工程で得られた、第1電極からの交流電流が通る部分の断面積と、に基づいて、液膜の電気伝導率を算出する。上述したように、第1電極同士の間隔は、第2電極同士の間隔よりも小さい。測定方法2では、第1電極対で没水環境が発現し、第2電極対で薄膜環境が発現する。
没水環境では、液膜において交流電流が通る部分の断面積は、液膜の厚さに依存しない。インピーダンス測定工程及び断面積算出工程のいずれでも、第1電極対で没水環境が発現する。このため、インピーダンス測定工程で得られた第1電極対による断面積は、断面積算出工程で得られた第1電極対による断面積と等しくなる。これより、インピーダンス測定工程で得られた第1電極対によるインピーダンスと、断面積算出工程で得られた第1電極対による断面積とを、上記の式(1)に代入すれば、評価対象の液膜の電気伝導率σが算出される。
[膜厚算出工程]
膜厚算出工程では、電気伝導率算出工程で得られた電気伝導率と、インピーダンス測定工程で得られた第2電極対によるインピーダンスと、に基づいて、液膜の厚さを算出する。上述したように、第2電極対では薄膜環境が発現する。薄膜環境では、液膜において交流電流が通る部分の断面積は、液膜の厚さに比例する。これより、インピーダンス測定工程で得られた第2電極対によるインピーダンスと、電気伝導率算出工程で得られた電気伝導率σとを、上記の式(1)に代入すれば、第2電極対による断面積Aが算出される。この断面積Aから、評価対象の液膜の厚さが算出される。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
本実施形態のプローブ、及び腐食環境測定装置は、例えば、材料の大気腐食試験において材料の腐食環境の測定に用いることができる。また、輸送機器の金属部分に取り付け、その部分の腐食の進行を把握することもできる。また、海上の橋脚等、大気腐食が進行しやすい場所の金属の腐食環境の測定に用いることができる。
1:腐食環境測定装置
2:プローブ
3:第1交流電源
4:第2交流電源
5:導線
6:導線
10:本体
10a:表面
11A、11B:第1電極
11Aa、11Ba:端面
12A、12B:第2電極
12Aa、12Ba:端面
F:液膜
20:pH測定器
21:導線
22:pH検出器
22a:検知面
231:作用電極
232:参照電極

Claims (2)

  1. 電気化学インピーダンス法による金属の腐食環境測定に用いられるプローブであって、
    測定時に液膜が形成される表面を有する本体と、
    前記本体の内部から前記本体の前記表面に露出して、第1の間隔をあけて配列された一対の第1電極と、
    前記本体の内部から前記本体の前記表面に露出して、前記第1の間隔よりも大きい第2の間隔をあけて配列された一対の第2電極と、
    前記本体の表面に露出する検知面を有するpH検出器と、を備える、プローブ。
  2. 電気化学インピーダンス法による腐食環境測定装置であって、
    請求項1に記載のプローブと、
    前記第1電極の各々と接続された第1交流電源と、
    前記第2電極の各々と接続された第2交流電源と、
    前記pH検出器に接続されたpH測定器と、を備える、腐食環境測定装置。
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