JP2021002989A - 情報処理装置、制御方法、及びプログラム - Google Patents

情報処理装置、制御方法、及びプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】太陽電池モジュールの評価に資する情報処理装置、制御装置、及び制御プログラムを提供する。【解決手段】情報処理装置は、第1情報及び第2情報の入力に基づいて、結果情報を出力する。第1情報は、太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能な期間の途中の時点から満了時までに受ける湿熱によるストレス量を表す。第2情報は、太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおいて太陽電池モジュールが所定時間当たりに受ける湿熱によるストレス量を表す。結果情報は、太陽電池モジュールがフィールドに設置される場合に太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能と想定される残り期間に関する情報である。【選択図】図35

Description

本開示は、情報処理装置、制御方法、及びプログラムに関する。
近年、太陽電池モジュール(以下、「PVモジュール」又は単に「モジュール」とも記す)の劣化に関する研究が進められつつある。例えば非特許文献1は、高温の環境において動作するPVモジュールの高分子材料の劣化について開示している。また、例えば特許文献1は、PVモジュールの変質が発生する前段階における水の浸入を計測するPVモジュールの評価方法を開示している。また、例えば特許文献2は、PVモジュールの出力低下を予測する管理装置を開示している。
Sarah Kurtz, et al "Evaluation of High-Temperature Exposure of Rack-Mounted Photovoltaic Modules" Conference Paper NREL/CP-520-45986, June2009
特開2007−165438号公報 特開2014−82309号公報
PVモジュールの劣化に基づく寿命の予測を合理的に数値化できれば、PVモジュールの評価に資する。
本開示は、PVモジュールの評価に資する情報処理装置、制御方法、及びプログラムの提供に関する。
一実施形態に係る情報処理装置は、
太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能な期間の途中の時点から満了時までに受ける湿熱によるストレス量を表す第1情報、及び、
前記太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおいて前記太陽電池モジュールが所定時間当たりに受ける湿熱によるストレス量を表す第2情報の入力に基づいて、
前記太陽電池モジュールが前記フィールドに設置される場合に前記太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能と想定される残り期間に関する結果情報を出力する
一実施形態に係る情報処理装置の制御方法は、
太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能な期間の途中の時点から満了時までに受ける湿熱によるストレス量を表す第1情報を取得するステップと、
前記太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおいて前記太陽電池モジュールが所定時間当たりに受ける湿熱によるストレス量を表す第2情報を取得するステップと、
前記第1情報及び前記第2情報に基づいて、前記太陽電池モジュールが前記フィールドに設置される場合に前記太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能と想定される残り期間に関する結果情報を出力するステップと、
を含む。
一実施形態に係るプログラムは、コンピュータに、
太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能な期間の途中の時点から満了時までに受ける湿熱によるストレス量を表す第1情報を取得するステップと、
前記太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおいて前記太陽電池モジュールが所定時間当たりに受ける湿熱によるストレス量を表す第2情報を取得するステップと、
前記第1情報及び前記第2情報に基づいて、前記太陽電池モジュールが前記フィールドに設置される場合に前記太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能と想定される残り期間に関する結果情報を出力するステップと、を実行させる。
一実施形態によれば、PVモジュールの評価に資する情報処理装置、制御方法、及びプログラムを提供することができる。
一実施形態に係る情報処理装置の概略構成例を示すブロック図である。 PVモジュールの劣化について説明する図である。 典型的なPVモジュールの構造を説明する図である。 一実施形態に係る寿命予測のロジックフローを示す図である。 一実施形態に係る寿命予測の他のロジックフローを示す図である。 あるフィールドにおいて実測した温度のデータの例を示す図である。 1日当たりの有効ストレス時間の例を説明する図である。 1日当たりの有効ストレス時間の例をさらに説明する図である。 1日当たりの有効ストレス時間の例をさらに説明する図である。 算出した1日当たりの有効ストレス時間の例を示す図である。 湿熱による劣化に基づく寿命の湿度依存性を示すグラフである。 湿熱による劣化に基づく寿命を規格化した例を示すグラフである。 水蒸気圧の温度依存性と相対湿度依存性を示したグラフである。 モジュール温度における相対湿度RHを割り出す手順を示す図である。 相対湿度と湿度補正係数Hcとの関係の例を示すグラフである。 フィールド温度と湿熱試験温度における相対湿度の関係を示すグラフである。 湿熱による劣化に基づく寿命の湿度依存性を示すグラフである。 湿熱による劣化に基づく寿命を規格化した例を示すグラフである。 日本国内のフィールドにおける月別の平均気温と平均相対湿度との関係を示す図である。 国外のフィールドにおける月別の平均気温と平均相対湿度との関係を示す図である。 国外のフィールドにおける月別の平均気温と平均相対湿度との関係を示す図である。 EVAと大気の間における水の偏析係数と温度との関係を示す図である。 EVAと大気の間における水の偏析係数と飽和水蒸気圧と温度との関係を示す図である。 いくつかのEVAにおける水分子濃度の例を示す図である。 いくつかのEVAを用いたPVモジュールについてUVDH連続試験をした結果を示す図である。 湿熱による劣化に基づく寿命の時間と温度との関係の例を示す図である。 UV及び湿熱による劣化に基づく寿命の時間と温度との関係の例を示す図である。 Tmp_effとTmaxの年間平均値とΔTとの間の相関関係の一例を示すグラフである。 フィールドから回収したPVモジュールの加速試験による寿命予測を説明する図である。 フィールドから回収したPVモジュールの加速試験による寿命予測を説明する図である。 UV光の照射エネルギー量に対する酢酸濃度を分析する実験の結果の一例を示す図である。 UV及び湿熱による劣化に基づく寿命の時間と温度との関係の例を示すグラフにフィールド回収品の寿命時間をプロットした図である。 UV及び湿熱による劣化に基づく寿命の時間と温度との関係の例を示すグラフにフィールド回収品の寿命時間をプロットした図である。 UV及び湿熱による劣化に基づく寿命の時間と温度との関係の例を示すグラフにフィールド回収品の寿命時間をプロットした図である。 一実施形態に係る寿命予測の他のロジックフローを示す図である。
(情報処理装置)
以下、一実施形態に係る情報処理装置について、図面を参照して説明する。
一実施形態に係る情報処理装置の想定されるユーザは、例えば、太陽光発電システムなどを構成するPVモジュールの予測される寿命を知りたい者などとしてよい。PVモジュールの予測される寿命を知りたい者とは、例えば、一般家庭又は企業などにおいて、太陽光発電システムの導入又は売却などを検討している者などとしてよい。また、PVモジュールの予測される寿命を知りたい者とは、例えば検査機関などにおいて、PVモジュールの検査又は評価などを行う者などとしてよい。一実施形態に係る情報処理装置の想定されるユーザは、PVモジュールの予測される寿命を知りたい任意の者としてよい。以下、一実施形態に係る情報処理装置を操作する者(例えば消費者、業者、技術者、又は検査技師など)を、単に「ユーザ」と記す。
一実施形態に係る情報処理装置は、典型的にはユーザの操作による入力に応じて、PVモジュールの寿命に関する情報を出力する。例えば、ユーザは、寿命を測定したいPVモジュールに関する各種の情報を、一実施形態に係る情報処理装置に入力することができる。一実施形態に係る情報処理装置は、例えばユーザによって入力されたPVモジュールに関する各種の情報に応じて、当該PVモジュールの寿命の予測に関する情報を出力する。一実施形態に係る情報処理装置が出力するPVモジュールの寿命の予測に関する情報とは、例えば、PVモジュールの寿命までの年数など期間の情報としてよい。PVモジュールの寿命までの期間の情報とは、例えばPVモジュールの特性(後述のPm特性又はFF特性)が大幅に減少することなく発電可能な期間、つまり、PVモジュールの特性が初期値を基準にして所定の割合まで減少する期間などとしてよい。このようにして出力されたPVモジュールの寿命の予測に関する情報は、典型的にはディスプレイ装置などに表示することができる。したがって、ユーザは、PVモジュールの予測された寿命を知ることができる。
図1は、一実施形態に係る情報処理装置の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
一実施形態に係る情報処理装置は、例えば専用端末として構成することができる。一方、一実施形態に係る情報処理装置は、例えば、ノートPC(Personal Computer)、デスクトップPC、タブレット端末、スマートフォン、又は携帯電話などで構成してもよい。また、一実施形態に係る情報処理装置の機能は、他の電子機器の機能の一部として実現されてもよい。一実施形態に係る情報処理装置の機能は、コンピュータを搭載する任意の電子機器において、一実施形態に係る情報処理装置の処理を行うアプリケーションプログラムを実行させて実現することもできる。
図1に示すように、一実施形態に係る情報処理装置1は、制御部10と、入力部20と、出力部30と、通信部40と、記憶部50とを備えている。
制御部10は、情報処理装置1を構成する各機能部をはじめとして、情報処理装置1の全体を制御及び管理する。制御部10は、例えばCPU(Central Processing Unit)などを含めて構成することができる。一実施形態に係る情報処理装置1において、制御部10は、PVモジュールの寿命の予測に関する種々の情報を演算及び/又は処理してよい。
情報処理装置1は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、制御部10として、少なくとも1つのプロセッサを含んでもよい。種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)として、又は複数の通信可能に接続された集積回路、及び/又はディスクリート回路(discrete circuits)として実現されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術に従って実現されることが可能である。
一実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続又は処理を実行するために構成された、1以上の回路又はユニットを含む。例えば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号処理装置、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、又はこれらのデバイス若しくは構成の任意の組み合わせ、又は他の既知のデバイス若しくは構成の組み合わせを含むことにより、以下に説明する機能を実行してもよい。
入力部20は、例えばキーボードのようなキー(物理キー)、及び/又は、マウス若しくはトラックボールのようなポインティングデバイスなど、ユーザが操作を行うために使用する任意の入力デバイスとすることができる。一実施形態において、入力部20は既知の各種入力デバイスとすることができるため、より詳細な説明は省略する。一実施形態において、情報処理装置1は、PVモジュールの寿命の予測に必要な種々の情報を、入力部20から取得してよい。
出力部30は、情報処理装置1による処理結果などを表示する。一実施形態において、出力部30は、例えばディスプレイとして、例えばPVモジュールの寿命の予測に関する情報を表示する。また、一実施形態において、出力部30は、例えば上述した情報を出力するために、ユーザに所定の情報の入力を促す画面を構成する文字、記号、及び/又は画像なども表示する。出力部30において表示を行うために必要なデータは、制御部10から供給される。
出力部30は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(Organic Electro-Luminescence panel)、又は無機ELディスプレイ(Inorganic Electro-Luminescence panel)等の任意の表示デバイスとしてよい。出力部30は、文字、図形、記号、又はグラフ等の各種の情報を表示してよい。出力部30は、情報処理装置1を操作するユーザに操作を促すために、ポインタをはじめとする種々のGUIを構成するオブジェクト、及びアイコン画像などを表示してもよい。また、出力部30は、適宜、バックライトなどを含んで構成してもよい。
また、出力部30は、必ずしもユーザに視覚的効果を与えるデバイスに限定されない。出力部30は、PVモジュールの寿命の予測に関する情報をユーザに伝えることができれば、任意の構成を採用してよい。例えば、出力部30は、PVモジュールの寿命の予測に関する情報を音声などで伝えるスピーカなどで代用してもよい。さらに、このようなスピーカを、出力部30に併設してもよい。
一実施形態において、出力部30は、入力部20とともに、例えばタッチスクリーンディスプレイとして構成されてもよい。この場合、タッチスクリーンディスプレイは、出力部30として、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示デバイスと備えてよい。また、この場合、タッチスクリーンディスプレイは、入力部20として、例えば、ユーザによる接触の有無及び当該接触の位置を検出するタッチセンサ又はタッチパネルを備えてよい。このような構成においては、例えばテンキーなどのキー又はアイコン等をオブジェクトとして出力部30に表示して、当該オブジェクトに対して操作者が接触する操作を、入力部20により検出することができる。入力部20は、抵抗膜方式、静電容量方式、又は光学式などの種々の方式のタッチパネルなどを採用することができる。
通信部40は、無線通信をはじめとする各種の機能を実現することができる。通信部40は、例えばLTE(Long Term Evolution)等の種々の通信方式による通信を実現してよい。通信部40は、例えばITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)において通信方式が標準化されたモデムを含んでよい。通信部40は、例えばアンテナを介して、例えば外部サーバ又はクラウドサーバのような外部機器と、ネットワークを介して無線通信してよい。一実施形態において、通信部40は、例えば外部サーバ又はクラウドサーバなどの外部のデータベースから、各種情報を受信してよい。また、このようにして通信部40が受信した各種情報は、記憶部50に記憶してもよい。一実施形態において、情報処理装置1は、PVモジュールの寿命の予測に必要な種々の情報を、通信部40を経て受信又は取得してよい。
通信部40は、無線通信を行う機能部に限定されるものではない。例えば、通信部40は、外部機器とケーブルなどで有線接続するためのインタフェースとして構成してもよい。
記憶部50は、制御部10及び通信部40などから取得した情報を記憶する。また記憶部50は、制御部10によって実行されるプログラム等を記憶する。その他、記憶部50は、例えば制御部10による演算結果などの各種データも記憶する。さらに、記憶部50は、制御部10が動作する際のワークメモリ等も含むことができるものとして、以下説明する。記憶部50は、例えば半導体メモリ又は磁気ディスク等により構成することができるが、これらに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。例えば、記憶部50は、光ディスクのような光学記憶装置としてもよいし、光磁気ディスクなどとしてもよい。また、例えば、記憶部50は、本実施形態に係る情報処理装置1に挿入されたメモリカードのような記憶媒体としてもよい。また、記憶部50は、制御部10として用いられるCPUの内部メモリであってもよい。一実施形態において、情報処理装置1は、PVモジュールの寿命の予測に必要な種々の情報を、記憶部50に記憶してよい。
図1において、入力部20、出力部30、通信部40、及び記憶部50は、それぞれ情報処理装置1に内蔵されてもよいし、情報処理装置1の外部に設けてもよい。
以下の説明において、一実施形態に係る情報処理装置1が行う各種の演算及び/又は処理は、制御部10が行うものとしてよい。一実施形態に係る情報処理装置1において、制御部10が行う各種の演算及び/又は処理に必要な情報は、記憶部50に記憶されていてもよく、入力部20から取得してもよく、通信部40から受信してもよい。また、一実施形態に係る情報処理装置1において、制御部10が行った各種の演算及び/又は処理の結果は、記憶部50に記憶されてもよく、出力部30から出力してもよく、通信部40から外部に送信してもよい。
次に、一実施形態に係る情報処理装置1が行う処理について説明する。
(PVモジュールの劣化及び寿命)
一実施形態に係る情報処理装置1は、PVモジュールに関する所定の情報に基づいて、当該PVモジュールの寿命を予測する。PVモジュールの寿命は、当該PVモジュールの劣化に起因するため、以下、PVモジュールの劣化について説明する。
PVモジュールの劣化には、いくつかの観点に基づく劣化が想定される。また、それぞれの観点の劣化についても、いくつかの要因の関与が想定される。本開示において、「PVモジュールの劣化」とは、PVモジュールの太陽光発電による電力の出力が時間の経過を経て徐々に減少し、やがて急激に低減する現象を意味する。このようなPVモジュールの劣化の要因として、出願人は、紫外線(以下、「UV」とも記す)及び/又は湿熱のストレスが関与することを見出した。そこで、一実施形態に係る情報処理装置1は、PVモジュールのUV及び/又は湿熱による劣化に基づく寿命を予測する。
図2は、PVモジュールの劣化について説明する図である。図2において、横軸は時間[年]を示し、縦軸はPVモジュールの太陽光発電による出力を示す。すなわち、図2は、一般的なPVモジュールの出力が時間の経過とともに低下する様子を示している。図2に示すように、一般的なPVモジュールは、太陽光発電を開始してからM年までは、年間Di%の初期劣化が発生する。また、図2に示すように、一般的なPVモジュールは、年間Da%の緩やかな経年劣化が発生する。その後、図2に示すように、一般的なPVモジュールは、上述のようにある時点(寿命を迎える時点)において、急激な劣化を生じる。PVモジュールの太陽光発電による電力が上述のように「急激に低減する」のは、図2に示す「急激な劣化」に起因する。この急激な劣化は、UV及び/又は湿熱のストレスに起因してPVモジュールの封止材中で発生する酸によって生じることが知られている。
PVモジュールにおいて、経年で徐々に劣化するモードと、ある時点で急激に劣化するモードは、同じ劣化のモードとは限らない。ここで扱う、UV及び湿熱のストレスによって発生する酸による劣化においては、経年劣化の主成分となるような劣化はほとんど見られない。したがって、経年劣化は、UV及び湿熱のストレスに起因した酸による劣化とは異なる他の劣化モードを主成分として生じる劣化と想定される。上述の急激な劣化は、ある時点で急激に劣化するモードである。この急激な劣化は、ある時点において、それまでの他の劣化モードによる経年劣化を追い抜いて、急激に表れてくる劣化である。
以下、上述のようなPVモジュールの劣化の要因について説明するために、PVモジュールの構造について説明する。
図3は、PVモジュールの構造を説明する図である。図3は、PVモジュールの断面を示す図である。図3は、一例として典型的なPVモジュールの断面を模式的に示している。図3に示すPVモジュールは、図3に示すZ軸の方向に厚みを有する。図3に示すPVモジュールにおいて、Z軸の正方向側を「表側」とも記し、Z軸の負方向側を「裏側」とも記す。図3において、上述のようなPVモジュールの劣化に関連しない又は関連が弱い部分の図示は、適宜省略してある。
図3に示すように、PVモジュール100は、表面ガラス110と、バックシート120と、太陽電池セル130と、を備えている。表面ガラス110は、太陽光などの光の入射面を構成する。表面ガラス110は、表面保護材としての機能も備える。バックシート120は、裏面保護材としての機能を備える。太陽電池セル130は、シリコン(Si)などの半導体で構成される。太陽電池セル130は、光エネルギーを吸収して電気に変換する。
太陽電池セル130は、表面ガラス110とバックシート120との間において、表面側の封止材140及び裏面側の封止材150によって封止される。多くのPVモジュールにおいて、封止材140及び封止材150は、エチレンビニルアセテート(ethylene-vinyl acetate:EVA)の共重合体を用いて構成される。表面ガラス110には、例えば、厚さが2mmから5mm程度の白板ガラス、強化ガラス又は熱線反射ガラスなどの光透過率の高い材料が用いられる。バックシート120には、例えば、ポリプロピレン及びポリオレフィンのうちの1種あるいは2種以上の樹脂などが用いられ、さらに、樹脂間にアルミニウム(Al)シートを有する構成であってもよい。
図3に示すように、太陽電池セル130は、シリコンなどから構成される半導体基板の表側及び裏側において電極170を備えている。電極170は、例えば銀(Ag)又はアルミニウム(Al)等の金属を用いて形成される。電極170は、半導体基板の表側及び裏側の少なくとも一方に、任意の個数だけ形成されてよい。図3に示すように、電極170は、半導体基板に、コンタクト部180を介して形成されている。多くのPVモジュールにおいて、コンタクト部180は、薄いガラス層によって形成される。電極170及びコンタクト部180は、一般的に、ガラスフリットを含有する銀等の導電性ペーストを半導体基板に印刷し、焼成することによって、形成される。電極170及びコンタクト部180は、スパッタリング等の成膜技術又はメッキ法を用いて形成してもよく、コンタクト部180は、電極170と同じ材料によって形成されてもよい。
図3に示すPVモジュール100の劣化には、上述のように、UV及び/又は湿熱のストレスが関与する。PVモジュール100においてUV及び/又は湿熱のストレスが関与する劣化は、電極170と半導体基板との間に形成されるコンタクト部(ガラス層)180が、UV及び/又は湿熱のストレスに起因してEVA中で発生する酸によって腐食することに起因する。電極170と半導体基板との間のコンタクト部180には、厚さ10〜100nm程度の薄いガラス層が形成される。このガラス層は、Agの電極170とSiの半導体基板と間の電気的な接合と機械的な接合の機能を併せ持つ。また、このガラス層の厚さは薄いため、電極170と半導体基板と間の電気的な接続は阻害されない。太陽電池セル130の表側及び裏側のどちらの電極170においても、酸による腐食は生じ得る。しかしながら、太陽電池セル130の裏側にはUV光がほとんど入り込まないため、太陽電池セル130の裏側の電極170においては、主に湿熱のストレスが関与する。
封止材140及び150を構成するEVAは、UV及び/又は湿熱のストレス下において、酸(主に酢酸)を発生する。この酸によって、コンタクト部180を構成するガラス層が腐食されると、ガラス層が有する機械的な接合機能は失われてしまう。また、一定の機械的な接合機能が保持されても、ガラス層が腐食されることによって電気抵抗が増大し、電気的な接合機能が悪化する。そして、コンタクト部180の機械的及び/又は電気的な接合機能が失われると、Si中で発生した光生成キャリアを、Ag電極から取り出すことができなくなる。このようにして、PVモジュール100の太陽電池特性は劣化する。
コンタクト部180を構成するガラス層の腐食は、コンタクト部180の断面SEM観察又はEPMA分析などを行うことにより、直接的に確認できる。すなわち、腐食の程度に対応したコンタクト部180のガラス層の消失(AgとSiと間の空隙)、及び/又は、ガラス層の組成的変質などを認めることができる。より簡便には、PVモジュールのEL像を見ることによっても、ガラス層の腐食を判断することができる。すなわち、腐食の程度に対応した特徴的なEL暗部の発生及び/又は拡大などを認めることができる。
PVモジュール100の太陽光発電による電力の出力特性は、UV及び/又は湿熱のストレスが所定量に至ると、急激に低減する。これは、上述した酸が増大することにより、コンタクト部180のガラスが急速に腐食することにより生じる現象である。このような現象が生じる目安としては、EVA中の酢酸濃度(酢酸分子の濃度)が1019個/cm前後になる時点とすることができる。ここで、酢酸分子の濃度とは、25℃(298.15K)、1気圧におけるEVA単位体積中の酢酸分子の個数を意味する。PVモジュール100の太陽光発電による電力の出力特性が急激に低減した状態は、PVモジュール100が既に寿命を迎えている状態としてよい。
(PVモジュールの寿命の予測)
次に、一実施形態に係る情報処理装置1によって、PVモジュールのUV及び/又は湿熱による劣化に基づく寿命を予測する原理について説明する。以下、一実施形態に係る情報処理装置1が行う、PVモジュールのUV及び/又は湿熱による劣化に基づく寿命の予測を、単に「寿命の予測」又は「寿命予測」とも記す。
まず、寿命の予測を行うための基本的な原理について説明する。一実施形態に係る情報処理装置1が予測する「寿命」とは、例えば、PVモジュールが発電を開始してから、UV及び/又は湿熱のストレスが所定量に至って電力の出力特性が急激に低減するまでの時間としてよい。以下、一実施形態に係る情報処理装置1が予測する「寿命」とは、曲線因子(以下、「FF特性」とも記す)又は発電電力(以下、「Pm特性」とも記す)が初期値に比べて10%減少する時点までを目安とする。初期値とは、寿命予測試験前の値を指す。しかしながら、一実施形態に係る情報処理装置1による寿命の予測の原理は、FF特性又はPm特性が初期値に比べて10%減少する時点において、電力の出力特性の急激な低減が確認されない場合においても採用してよい。この場合、FF特性又はPm特性が初期値に比べて20%又は30%などに減少する時点までを寿命の目安としても、一実施形態に係る情報処理装置1による寿命の予測の原理は同様に成り立つ。ここで、PVモジュールの出力特性は、IEC 60891規格(又はJIS C8914)に準拠して測定する。
次に、寿命の予測において実施する湿熱試験について説明する。湿熱試験の方法としては、所定の温度条件及び湿度条件に設定されている恒温恒湿試験器にPVモジュールを設置することによって、PVモジュールが所定雰囲気内に暴露される。温度条件としては、80〜135℃の温度域が使用される。湿度条件としては、相対湿度85〜95%の湿度域が使用される。このように、温度条件及び湿度条件は適宜設定すればよく、例えば、温度85℃、湿度85%の条件で湿熱試験を行うことができる。そして、所定時間毎に試験器からPVモジュールを取出した後、PVモジュールの出力特性を測定する。そして、再度、試験器にPVモジュールを設置して、所定雰囲気内に暴露する。この工程を繰り返し行うことで、PVモジュールの出力特性が急激に低減するまでの時間を計測する。このとき、所定時間は適宜変更してもよく、試験開始直後は測定間隔を長く設定し、ある程度の出力特性の低下が見られた場合、測定間隔を短く設定しても構わない。ここで、湿熱試験は、2つ以上、好ましくは3つ以上の温度条件で行う。3つ以上の温度条件であれば、寿命と温度の関係がアレニウスプロットで直線関係にあるかどうかを判断できる。もし、直線性が得られない場合は、直線性が得られるように低温側の温度条件を新たに設定して試験を行うことができる。
(寿命予測のロジックフロー)
図4は、一実施形態に係る寿命予測のロジックフローを示す図である。図4は、一実施形態に係る情報処理装置1が寿命予測を行う際のロジックの流れを概略的に示す。それぞれの詳細については、後述する。図4に示すように、一実施形態に係る情報処理装置1は、以下のロジックの流れに基づいて、寿命予測を行ってよい。
すなわち、図4のステップS1に示すように、情報処理装置1の制御部10は、フィールドの1日における最高気温Tmaxを取得する。これは、例えば気象データから取得してよい。
図4のステップS2に示すように、制御部10は、ΔT(モジュール最高温度Tmpと最高気温Tmaxとの温度差)を取得する。これは、フィールドにモジュールが設置されていない場合又はモジュールの温度情報が利用できない場合、目安値を取得することができる。目安値は、例えば、地上に設置した場合に25℃±(5〜10)℃程度、住宅の屋根に設置した場合に35℃±(5〜10)℃程度とすることができる。また、フィールドにモジュールが設置されていてモジュールの温度情報が利用できる場合、モジュール最高温度Tmpの実測データと最高気温データTmaxから取得してよい。
図4のステップS3に示すように、制御部10は、フィールドの1日におけるPVモジュールの最高温度Tmp(=Tmax+ΔT)を算出する。
図4のステップS4に示すように、制御部10は、年間を通して汎用できる1日当たりの有効ストレス時間Heffを取得する。フィールドにおけるモジュールの温度情報が利用できない場合、目安として、Heff=4.0±0.4hとすることができる。より好ましくは、1日における最高気温Tmaxの年平均温度を「Tmax年平均」と記す場合、Heff[h]=0.108×Tmax年平均[℃]+1.7とすることができる。さらに好ましくは、Heff[h]=−0.00248×(Tmax年平均[℃])+0.245×Tmax年平均[℃]とすることができる。フィールドにおけるモジュール温度が利用できる場合、年間を通して1日ごとに異なる1日当たりの有効ストレス時間heffの年間中央値をHeffとすることができる。
図4のステップS5に示すように、制御部10は、湿熱劣化の活性化エネルギーEaを取得する。これは、例えば2つ以上の温度条件における湿熱試験の結果より取得してよい。
図4のステップS6に示すように、制御部10は、年間ストレス指数A(=Σexp(−Ea/kTmp)・Heff、総和は365日分)を算出する。このとき、Tmpは1日ごと異なり得る値である。
図4のステップS7に示すように、制御部10は、寿命ストレス指数B(=exp(−Ea/kTm)×τ)を取得する。ここで、Tmは湿熱試験の温度(モジュールの温度)であり、τは湿熱試験での寿命時間である(これらの詳細については、さらに後述する)。
図4のステップS8に示すように、制御部10は、相対湿度RH90%前後の仮想的なフィールドにおける湿熱による劣化に基づく寿命Yv(=B/A)を算出する。
図4のステップS9に示すように、制御部10は、湿度補正係数Hcを取得する。その後に続くステップS10においては、この湿度補正係数Hcを利用して、フィールドにおける湿熱による劣化に基づく寿命Yh(=Yv×Hc)を算出する。このステップ10においては、湿度補正係数Hcを利用することが望ましいが、利用しない場合はYh=Yvとして算出し、ラフな精度での寿命予測とすることができる。
図4のステップS11に示すように、制御部10は、UV補正係数Ucを取得する。その後に続くステップS12においては、このUV補正係数Ucを利用して、フィールドにおけるUV及び湿熱による劣化に基づく寿命Y(=Yh×Uc)を算出する。このステップ12においては、UV補正係数Ucを利用することが望ましいが、利用しない場合はY=Yhとして算出し、ラフな精度での寿命予測とすることができる。
図5は、図4に示した寿命予測と等価な寿命予測を、グラフを用いて行う場合のロジックフローを示す図である。それぞれの詳細については、後述する。図5に示すように、一実施形態に係る情報処理装置1は、以下のロジックの流れに基づいて、寿命予測を行ってよい。
すなわち、図5のステップG1に示すように、情報処理装置1の制御部10は、図4のステップS1からステップS3まで及びステップS5の処理の結果に基づいて、フィールドにおける年間有効モジュール温度Tmp_eff(=(−Ea/k)/ln{Σexp(−Ea/kTmp)/365})を算出する。ここで、総和は365日分である。
図5のステップG2に示すように、制御部10は、モジュール温度Tmと寿命時間τとの関係を示す寿命曲線のグラフを取得する。寿命曲線のグラフは、例えば、2つ以上の温度条件において行う湿熱試験の結果より描画してよい。このとき、exp(−Ea/kTm1)×τ1=exp(−Ea/kTm2)×τ2 の関係を用いて寿命曲線を描画する。
図5のステップG3に示すように、制御部10は、ステップG1及びステップG2の処理の結果に基づいて、Tmp_effの温度における相対湿度RH90%前後の仮想的なフィールドにおける湿熱による劣化に基づく寿命時間τvを算出する。
図5のステップG4に示すように、制御部10は、ステップG3及び図4に示すステップS4の処理の結果に基づいて、相対湿度RH90%前後の仮想的なフィールドにおける湿熱による劣化に基づく寿命年数Yvを算出する。
図5のステップG5に示すように、制御部10は、ステップG4並びに図4に示すステップS9及びS11の処理の結果に基づいて、フィールドにおけるUV及び湿熱による劣化に基づく寿命年数Y(=Yv×Hc×Uc)を算出する。
以下、図4及び図5のロジックフローにおける処理の詳細について説明する。
(寿命年数Y)
一実施形態に係る情報処理装置1は、PVモジュールに関する所定の情報に基づいて、当該PVモジュールの寿命として、例えば以下の式(1)に示す寿命年数Yを予測する。
寿命年数Y=(寿命ストレス指数B/年間ストレス指数A)×湿度補正係数Hc×UV補正係数Uc 式(1)
ここで、寿命年数Yは、フィールドにおけるUV及び/又は湿熱による劣化に基づくPVモジュールの寿命年数を意味する。寿命年数Yは、PVモジュールが同一仕様のものであっても、PVモジュールを設置する場所の環境及び/又は設置態様(地上設置、住宅屋根置き、など)によって異なり得る値である。すなわち、寿命年数Yは、PVモジュールが設置されるフィールド条件(環境条件及び/又は設置態様条件)に依存する値となる。
一実施形態に係る情報処理装置1の制御部10は、式(1)右辺の(寿命ストレス指数B/年間ストレス指数A)によって、相対湿度RH90%前後の仮想的なフィールドにおける湿熱による劣化に基づく寿命年数を求めることができる。また、一実施形態に係る情報処理装置1の制御部10は、上述の寿命年数に、湿度補正係数HcとUV補正係数Ucとを乗じることにより、実際にPVモジュールが設置されたフィールドにおけるUV及び/又は湿熱による劣化に基づく寿命年数Yを算出することができる。ここで、湿度補正係数Hcにおける湿度補正とは、フィールドにおける湿度を考慮して行う補正である。また、UV補正係数UcにおけるUV補正とは、フィールドにおけるUV光の影響を考慮して行う補正である。以下、式(1)に示す寿命年数Yを算出するための各要素の概念について説明する。
(寿命ストレス指数B)
式(1)における寿命ストレス指数Bは、PVモジュールの寿命までの湿熱によるストレス量を示す指数である。寿命ストレス指数Bは、湿熱試験を行うことにより定めることができる。寿命ストレス指数Bは、PVモジュールが寿命となる(出力特性が急激に低減する)までの湿熱によるストレス量に対応した指数であり、以下の式(2)のように表現される。
寿命ストレス指数B=exp(−Ea/kTm)×τ 式(2)
ここで、Eaは湿熱劣化の活性化エネルギー[J]、kはボルツマン定数、TmはPVモジュールの温度[絶対温度K]、τは湿熱試験における寿命時間[h]とする。以下、PVモジュールの温度は、単に「モジュール温度」とも記す。式(2)において、exp関数の項は、exp(−Ea/(k×Tm))と同義である。
式(2)において、exp(−Ea/kTm)は単位時間当たりのストレス量に対応した指数を示す。このexp(−Ea/kTm)に寿命時間τを乗じることにより、寿命に至るまでの総ストレス量に対応した指数として、寿命ストレス指数Bが算出される。ここで、湿熱試験は、通常、相対湿度90%前後(85%〜95%程度)で行われる。したがって、ここで算出される寿命ストレス指数Bは、相対湿度90%前後を想定した値になる。
式(2)において、湿熱劣化の活性化エネルギーEaは、2つ以上の温度条件における湿熱試験を行うことで、以下の式(3)によって算出することができる。
exp(−Ea/kT1)×τ1=exp(−Ea/kT2)×τ2 式(3)
ここで、T1及びT2は湿熱試験のそれぞれの温度条件であり、τ1及びτ2はそれぞれの湿熱試験によって得られる寿命時間である。
後述する、紫外線吸収剤の添加ありの一般的なEVA(EVA1)を用いたPVモジュール、紫外線吸収剤の添加ありの改善されたEVA(EVA2)を用いたPVモジュール、及び紫外線吸収剤の添加なしの改善されたEVA(EVA3)を用いたPVモジュールについて、これらの具体的な値を示すと次のようになる。温度95℃、湿度95%における湿熱試験によって得られる寿命時間は、EVA1の場合に2200時間、EVA2の場合に6500時間、EVA3の場合に6000時間であった。温度125℃、湿度95%における湿熱試験によって得られる寿命時間は、EVA1の場合に450時間、EVA2の場合に950時間、EVA3の場合に950時間であった。湿熱劣化の活性化エネルギーEaは、EVA1の場合に0.668eV、EVA2の場合に0.810eV、EVA3の場合に0.776eVであった。Ea[eV]とEa[J]とは、Ea[J]=q・Ea[eV]という関係にある。ここで、qは電子素電荷であり、具体的にはq=1.6×10−19[C]である。
ここで行うそれぞれの湿熱試験は、PVモジュールの出力特性が急激に低減する(寿命となる)まで行うのが好適である。具体的には、例えば、PVモジュールのFF特性が初期値に比べて10%減少するまで湿熱試験を行ってよい。また、ここで行うそれぞれの湿熱試験において、PVモジュールの劣化のモードが同じであることを確認するのが好適である。劣化のモードが同じであるかどうかは、PVモジュールのV−I特性、EL像のパターン、又はEVA中の酢酸濃度などを調べることによって確認できる。
(年間ストレス指数A)
式(1)における年間ストレス指数Aは、フィールドにおけるPVモジュールの1年当たりの湿熱によるストレス量を示す指数である。後述するように、この年間ストレス指数Aは、相対湿度90%前後の仮想的なフィールドにおける1年当りの湿熱ストレス量を示す指数である。年間ストレス指数Aは、以下の式(4)のように表現される。
年間ストレス指数A=∫exp(−Ea/kTm)dt 式(4)
ここで、積分区間は1年間とする。
式(4)において、dtをΔtとして離散化すると、年間ストレス指数Aは、以下の式(5)のように表現される。
年間ストレス指数A≒Σexp(−Ea/kTm)Δt 式(5)
ここで、総和区間は1年間とする。
式(5)において、Δtは1分間隔としてもよいし、1時間間隔としてもよい。出願人は、Δtを1時間間隔のデータで計算しても、精度上の支障はないことを確認した。したがって、以下、Δtは1時間間隔として説明する。この場合、Δt=1[h]となり、式(5)は、以下の式(6)のように表現される。
年間ストレス指数A≒Σexp(−Ea/kTm) 式(6)
ここで、総和区間は1時間間隔で1年間とする。Tmは、1時間ごとに異なり得る値である。また、Δtを1分間隔のデータで計算する場合、式(6)において、Δt=1/60[h]として、総和区間を1分間隔で1年間とすればよい。
ここで算出される年間ストレス指数Aは、相対湿度90%前後の仮想的なフィールドを想定した値になる。実際のフィールドの湿度域における寿命の予測を行うためには、湿度補正を行う必要がある。湿度補正については、さらに後述する。
式(5)及び式(6)に示すように、年間ストレス指数Aの値を算出するには、モジュール温度Tmの1時間間隔のデータが必要になる。PVモジュールを含む太陽光発電システムが既にフィールドに設置してある状態で、モジュール温度のデータが1時間間隔で1年分取得されていれば、上記の計算により、年間ストレス指数Aの値を算出することができる。
一方、PVモジュールを含む太陽光発電システムがまだフィールドに設置されていない状態においては、上記の計算式によって年間ストレス指数Aの値を算出することはできない。しかしながら、太陽光発電システムを実際にフィールドに設置する前に、当該フィールドに設置された場合のPVジュールの寿命が予測できれば極めて有益である。また、太陽光発電システムが既にフィールドに設置してある状態であっても、モジュール温度のデータが取得できない(又は利用できない)ことも想定される。このような場合であっても、当該フィールドに設置された場合のPVジュールの寿命が予測できれば極めて有益である。
したがって、一実施形態に係る情報処理装置1は、モジュール温度のデータが1時間間隔で1年分取得されていない場合でも、年間ストレス指数Aの値を算出できるようにする。以下、このような算出の原理について説明する。
一般的に、世界中の非常に多数の地点において、気象データは日常的に測定され、累積されている。例えば、日本国気象庁のウェブサイトなどにおいて、各種のデータを取得することができる。具体的には、各地点の1時間ごとの気温データ、各地点の1日単位の気温データ(最低気温、平均気温、及び最高気温など)、並びに、月単位の平均気温データ(1日における最低気温の月平均値、1日における平均気温の月平均値、及び1日における最高気温の月平均値など)を取得することができる。
上述のデータのうち、1時間ごとの気温データを使うと、1時間ごとのモジュール温度Tmは、次の式(7)のように表現できる。
1時間ごとのモジュール温度Tm=気温T+ΔT 式(7)
ここで、ΔTはモジュール温度と気温との差とし、気温Tは1時間ごとの値とする。
式(7)を用いて1時間ごとのモジュール温度Tmを求めるには、ΔTの1時間ごとのデータが必要になる。そこで、1時間ごとのΔTを、1時間ごとの気象情報から見積もる方法について検討する。ΔTは、日射量、風速、及び/又はPVモジュールの設置態様(地上に設置又は住宅の屋根に設置など)などによって定まると想定される。ここで、公称動作セル温度(Nominal Operating Cell Temperature:NOCT)と呼ばれる情報を用いると、地上に設置された場合のΔTの目安となる値は、以下の式(8)のように与えられる。NOCTは、太陽電池メーカーの仕様書に記載されているものを用いてよい。
ΔT=(NOCT−20)×S/80 式(8)
ここで、Sは入射光量[mW/cm]である。
上述のように、1時間ごとの気温データは、多くの地点において測定され利用できる状態である。これに対し、式(8)における入射光量Sの1時間ごとのデータが測定されている地点は、日本国においても外国においても、現時点では限定されているのが実情である。したがって、任意の地点における年間ストレス指数Aを、入射光量Sの1時間ごとのデータを利用せずとも、実用に足る程度に妥当に推定する方法について検討する。
一実施形態において、年間ストレス指数Aの算出に際し上述のように1時間ごとのΔTを見積もるのではなく、1日当たりのストレス指数を1時間ごと24時間の総和で与えることを考える。このような想定に基づいて、1日当たりのストレス指数を、以下の式(9)のように表現する。
Σexp(−Ea/kTm)=exp(−Ea/kTmp)・heff 式(9)
ここで、左辺の総和区間は1時間ごとに24時間とし、右辺のTmpは1日におけるPVモジュールの最高温度[絶対温度K]であり、heffは1日当たりの有効ストレス時間[h]とする。左辺の総和区間は1分間隔としてもよいが、その場合は、heffを、heff[h]×60に置き換える。このように、heffは、式(9)から、Σexp(−Ea/kTm)を、exp(−Ea/kTmp)で除した値としてよい。ここで、Σexp(−Ea/kTm)は、フィールドに設置されたPVモジュールにおいて、1日当たりの湿熱によるストレスに比例した量の所定時間を単位とする総和である。また、exp(−Ea/kTmp)は、フィールドに設置されたPVモジュールの最高温度における単位時間あたりの湿熱によるストレスに比例した量である。
式(9)を用いると、年間ストレス指数Aは、以下の式(10)のように表現できる。
年間ストレス指数A=Σ{exp(−Ea/kTmp)・heff} 式(10)
ここで、総和区間は1日ごとに365日間とする。また、Tmp及びheffは1日ごとに異なり得る値である。
式(10)において、1日ごとの365日間分のTmpは、その地域における年間の日別気温情報及びPVモジュールの設置態様の情報が与えられれば、次の式(11)のように表現できる。
Tmp=Tmax+ΔT 式(11)
ここで、Tmaxは1日における最高気温であり、1日ごとの365日間分のデータである。1日における最高気温Tmaxの1日ごとのデータは、例えば気象庁などの年間気象データから得られる。また、ΔTはモジュール温度と気温との差である。
図6は、1日におけるPVモジュールの最高温度Tmpと、1日における最高気温Tmaxとを、あるフィールドにおいて実測した年間のデータの例を示す図である。図6において、中黒のドットはモジュール温度を示し、白丸印のドットは気温を示している。図6において、月ごとの値は、1日における最高気温TmaxとPVモジュールの最高温度Tmpの月平均値を示している。図6において、PVモジュールの最高温度Tmpの月平均値は、フィールドにおいて地表からの傾斜角(設置角度)が異なる3タイプのPVモジュール(傾斜15°、傾斜30°、及び傾斜45°)について示してある。
図6に示すように、式(11)に示すΔT(=Tmp−Tmax)は、月ごとの月平均値として示せば、1年間においてほぼ一定値とみなして差し支えない。ΔTの値は、地上の設置されたPVモジュールの場合25℃±(5〜10)℃程度となり、住宅の屋根に設置されたPVモジュールの場合35℃±(5〜10)℃程度となる傾向にある。月平均値として示したΔTが1年間においてほぼ一定値とみなせない場合、月平均値として示したΔTの年間中央値をとることができる。
上述のように、1日当たりの有効ストレス時間heffは、年間において毎日異なり得る値である。図7及び図8は、1時間ごとのPVモジュール温度Tmを実測したデータから、式(9)において用いられる1日当たりの有効ストレス時間heffを算出した例を示す図である。図7及び図8は、太陽光発電システムが設置されたフィールドにおいて、1時間ごとのモジュール温度のデータを1年分取得した結果に基づくデータを示すものである。図7及び図8おいて、横軸は1日におけるPVモジュールの最高温度Tmpを表し、縦軸は1日当たりの有効ストレス時間heffを表す。図7においては、1月から12月まで全て同じドットによりTmpとheffとの相関をプロットしてある。図8においては、3カ月ごとに異なるドットによりTmpとheffとの相関をプロットしてある。
図7及び図8に示すように、Tmpとheffとの相関は、1日ごとのバラツキを反映して広い範囲に分布している。一方、図7及び図8に示すように、Tmpとheffとの相関の分布においては粗密がある。これは、太陽と地球との位置関係、及び、地球の自転周期などの規則性(法則性)に起因するものと考えられる。このように、Tmpとheffとの相関は、一定の傾向を示す分布になると想定される。
図9は、図7及び図8に示したフィールドとは別のフィールドで、同様に1年間365日分のPVモジュールの最高温度Tmpと、1日当たりの有効ストレス時間heffとの相関関係を示した図である。図9においては、図7と同様に、1月から12月まで全て同じドットによりTmpとheffとの相関をプロットしてある。図9に示すように、Tmpとheffとの相関は、1日ごとのバラツキを反映して広い範囲に分布している。図7及び図8に示したのと同様に、図9においてもTmpとheffとの相関の分布においては粗密があることが確認できる。
一実施形態に係る情報処理装置1は、年間ストレス指数Aをより簡単に算出するために、年間で1日ごとに異なる1日当たりの有効ストレス時間heffの代わりに、年間で一定値(汎用値)となる1日当たりの有効ストレス時間Heffを設定する。以下、このような算出について説明する。
一実施形態に係る情報処理装置1は、以下の式(12)を用いることにより、年間ストレス指数Aを算出する。
Σ{exp(−Ea/kTmp)・heff}=Heff・Σexp(−Ea/kTmp) 式(12)
ここで、総和区間は1日ごとに365日間とする。また、Tmp及びheffは1日ごとに異なり得る値である。
式(12)を用いると、年間ストレス指数Aは、以下の式(13)のように表現できる。
年間ストレス指数A=Heff・Σexp(−Ea/kTmp) 式(13)
ここで、総和区間は1日ごとに365日間とする。また、Tmpは1日ごとに異なり得る値であるが、Heffは年間で一定値(汎用値)である。以上説明したように、年間を通して使用できる1日当たりの有効ストレス時間Heffを適切に設定できれば、年間ストレス指数Aの算出は非常に簡単になる。
出願人は、年間ストレス指数Aを精度よく再現可能なHeffの値を検討した結果、上述した1日当たりの有効ストレス時間heffの年間中央値を用いることが好適であることを見出した。図10は、4つのフィールドについて算出したHeff(すなわち1日当たりの有効ストレス時間heffの年間中央値)[h]の例を示す図である。図10に示すように、例えば千葉県に設置されたPVモジュールの一例においては、Heffの値を4.4hとすることにより、年間ストレス指数Aを精度よく再現できた。また、例えば山梨県に設置されたPVモジュールの一例においては、Heffの値を4.0hとすることにより、年間ストレス指数Aを精度よく再現できた。また、カリフォルニア及びロスアラモスに設置されたPVモジュールの例においても同様の再現性を確認できた。
すなわち、出願人は、図10に示す4つのフィールドにおいて、1時間ごとのモジュール温度のデータを1年分取得することにより、それぞれの年間ストレス指数Aの値を正確に求めた。そして、出願人は、4つのフィールドのそれぞれにおいて、図10に示すHeffを用いて、年間ストレス指数Aを算出した。その結果、出願人は、それぞれのフィールドにおけるHeffを用いて算出した年間ストレス指数Aの値が実用的に充分な精度で再現されることを確認した。
また、出願人は、上述のHeffのEaに対する依存性を調査した。その結果、出願人は、Ea=0.8eV±0.1eV程度の振れ幅において、Heffの振れ幅は±10%程度内に収まることも確認した。
以上の結果から、一実施形態に係る情報処理装置1は、汎用的な使用に耐える年間の1日当たりの有効ストレス時間Heffの目安として、以下の式(14)を用いることができる。
1日当たりの有効ストレス時間Heff(年間で一定値)=4.0h±0.4h(±10%) 式(14)
式(14)は、特に日本国内において有効に用いることができる。
出願人は、上記した4つのフィールドに加えて、さらに5つ目のフィールドとして、タイにおけるPVモジュール温度と気温の年間情報を同様に調査した。その結果、年間で1日ごとに異なる1日当たりの有効ストレス時間heffの年間中央値であるHeffとして、5.8hという値を得た。さらに、前記5つのフィールドでのHeffの値と日別最高気温の年間平均値であるTmax年平均の関係を調べたところ、次のような相関関係が見い出せることを確かめた。すなわち、1次関数近似式としては、Heff[h]=0.108×Tmax年平均[℃]+1.7という相関関係が見い出せた。また、2次関数近似式としては、Heff[h]=−0.00248×(Tmax年平均[℃])+0.245×Tmax年平均[℃]という相関関係が見い出せた。これらの相関関係式を用いれば、日本国外まで含めた広い地域で、より精度の高いHeffを用いることができる。前記5つのフィールドにおける日別最高気温の年間平均値であるTmax年平均の値は、2015年前後の気象情報及び現地気温情報から見積もると、千葉県、山梨県、カリフォルニア、ロスアラモス、及びタイにおいて、それぞれ、20.3℃、19.7℃、23.5℃、15.6℃、38.1℃であった。
上述のHeffの値を汎用的な目安として用いることにより、一実施形態に係る情報処理装置1は、太陽光発電システムがまだ設置されていない状況においても、実用的な精度で年間ストレス指数Aを算出することができる。また、上述のHeffの値を汎用的な目安として用いることにより、一実施形態に係る情報処理装置1は、モジュール温度のデータが利用できない状況においても、実用的な精度で年間ストレス指数Aを算出することができる。
以上説明したように、一実施形態に係る情報処理装置1は、年間ストレス指数Aを以下の式(15)のように簡易に算出することができる。
年間ストレス指数A≒Heff・Σexp(−Ea/kTmp) 式(15)
ここで、総和区間は1日ごとに365日間とする。Tmpは、1日におけるPVモジュールの最高温度(=最高気温Tmax+ΔT)であり、1日ごとに異なり得る値である。また、Heffは汎用値として4.0h±0.4としてよく、年間で一定値としてよい。このとき、より好ましくは、1日における最高気温Tmaxの年平均温度をTmax年平均とした場合、Heff[h]=0.108×Tmax年平均[℃]+1.7とすることができる。さらに好ましくは、Heff[h]=−0.00248×(Tmax年平均[℃])+0.245×Tmax年平均[℃]とすることができる。
一実施形態に係る情報処理装置1は、上述のような算出を行うにあたり、気温情報として、1日当たりの最高気温(平均気温ではなく)を採用する。また、一実施形態に係る情報処理装置1は、上述のような算出を行うにあたり、Heffとして、1年間を構成する365日の1日当たりの有効ストレス時間heffの中央値(年間平均ではなく)を採用する。また、一実施形態に係る情報処理装置1は、上述のような算出を行うにあたり、月別の気温情報を使う場合は、1日における最高気温の月平均値(月最高気温ではなく)を採用する。
一実施形態に係る情報処理装置1は、以下の式(16)を用いることにより、相対湿度90%前後の仮想的なフィールドにおける湿熱による劣化に基づくPVモジュールの寿命年数Yvを予測することができる。
PVモジュールの寿命年数Yv≒寿命ストレス指数B/年間ストレス指数A 式(16)
ここで、PVモジュールの「寿命年数Yv」は、相対湿度90%前後の仮想的なフィールドにおける湿熱による劣化に基づくPVモジュールの寿命年数である。
(湿度補正係数Hc)
次に、式(1)における湿度補正係数Hcについて説明する。
フィールドの湿度域における湿熱による劣化に基づく寿命は、以下の式(17)に示すように、上述のPVモジュールの寿命年数Yvに、湿度補正係数Hcを乗じることで得られる。
PVモジュールの寿命年数Yh=寿命年数Yv×湿度補正係数Hc 式(17)
ここで、PVモジュールの「寿命年数Yh」は、フィールドにおける湿熱による劣化に基づくPVモジュールの寿命年数である。また、湿度補正係数Hcの値は、例えば、相対湿度の条件を設定して行う実験により得られるデータと、実際のフィールドにおける相対湿度の情報とから見積もることができる。
以下、湿度補正係数Hcの求め方について詳細に説明する。
フィールドに設置されたPVモジュールの湿熱による劣化に基づく寿命は、以下の手順によって見積もることができる。すなわち、まず、相対湿度(Relative Humidity:RH)90%程度における湿熱試験の結果(温度‐寿命曲線、すなわちPVモジュール温度Tmと湿熱寿命時間τの関係)を、フィールドに設置されたPVモジュールの温度(フィールドにおける年間有効モジュール温度Tmp_eff)まで、「exp(−Ea/kTm)×τ=一定」の関係を使って外挿する。ここで、フィールドにおける年間有効モジュール温度Tmp_effについては、「グラフを用いた寿命予測」において、さらに後述する。これにより、RH90%程度の仮想フィールドにおける湿熱による劣化に基づく寿命が求まる。次に、上述の仮想フィールドにおける湿熱による劣化に基づく寿命に、湿度補正係数Hcをかける。
ここで、湿度補正係数Hcは、以下の手続で見積もることができる。
(1)予め相対湿度を複数設定した湿熱試験において、湿熱による劣化に基づく寿命と相対湿度の相関関係を調べる。この湿熱による劣化に基づく寿命の相対湿度依存性を基準相対湿度(RH90%前後)における湿熱による劣化に基づく寿命によって規格化して表せば、その規格化数値がすなわち湿度補正係数Hcである。以上によって、相対湿度と湿度補正係数Hcとの関係が得られる。
(2)フィールドに設置されたPVモジュールの温度における相対湿度を見積もる。これは、PVモジュールが設置された環境の大気温度における相対湿度の情報(気象データ)と、飽和水蒸気圧の温度依存性とを踏まえて計算する。
(3)上述の(1)及び(2)から、フィールドに設置されたPVモジュールに対する湿度補正係数Hcが求まる。
上述の(2)において、大気温度における相対湿度(気象データ)を、そのまま用いることはできない。比較的低温の大気は、比較的高温のPVモジュールに触れることにより、モジュール温度相当の温度になる。PVモジュールにおけるEVA中の水分は、このモジュール温度相当の大気中の水蒸気と、水分子のやりとりをしている。すなわち、熱平衡状態に向かって、大気とEVAとの間を水分子が出入りしている。比較的低温の大気が比較的高温の大気になっても、絶対水蒸気密度(∝水蒸気圧)は、ほとんど変化しない。具体的には、絶対水蒸気密度は、気体の体積膨張効果を考慮しても、10%程度しか変化しない。
しかしながら、相対湿度は、飽和水蒸気圧の温度上昇に伴う増大が大きいため、比較的大きく低下する。相対湿度による湿度補正を行う場合、この点に注意すべきである。したがって、上述の(2)において、フィールドに設置されたPVモジュールの温度における相対湿度を見積もるプロセスを、明確に定量化しておくとよい。このことは、PVジュールのフィールドにおける湿熱による劣化に基づく寿命を精度良く見積もるためには不可欠である。
上述の(1)〜(3)の手順について、以下、具体的に説明する。
まず、上述の(1)について説明する。例として、一般的なEVAを使用したPVモジュールの製品について、相対湿度を複数設定して行った湿熱試験の結果について説明する。
図11は、一般的なEVAを使用したPVモジュールを用いて行った湿熱試験に基づいて、相対湿度と、湿熱による劣化に基づく寿命との関係を示すグラフである。図11において、横軸は相対湿度RH[%]を示し、縦軸はPVモジュールの劣化に基づく寿命を迎えるまでの時間[h]を示している。PVモジュールの劣化に基づく寿命を迎えるまでの時間は、例えばFF特性が初期値に比べて10%減少するまでの時間としてもよい。
ここで、相対湿度の低い領域まで含めて広い相対湿度の範囲において、湿熱による劣化に基づく寿命の予測を定量的に行えるようにする。このため、湿熱による劣化に基づく寿命の湿度依存性を、以下の式(18)に示すように、べき乗則で近似する。
τ2/τ1=(RH2/RH1)−n 式(18)
ここで、RH1及びRH2は湿熱試験のそれぞれの相対湿度条件であり、τ1及びτ2はそれぞれの相対湿度における湿熱試験によって得られる寿命時間である。このように、湿熱による劣化に基づく寿命の湿度依存性を確認するには、少なくとも湿度が異なる2回の湿熱試験が必要である。
一般的なEVAを使用したPVモジュールの製品についての湿熱試験の結果を解析すると、n=0.44程度であれば、実験結果を良好に再現することが判明した。この場合、実験データが不足する相対湿度が低い領域まで外挿することが可能になる。図11において、一点鎖線によって、上述のべき乗則の近似曲線を示した。べき乗則近似のターゲットにした実験データは、相対湿度範囲を最も広くとって行った実験データとした。また、図11において、ドットは、各温度条件及び湿度条件で得られた実験結果を示す。以下で説明する図12、図15、図17、及び図18においても同様である。また、湿熱試験の湿度条件は、少なくとも相対湿度が70%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下の実験を行うことが好ましい。また、EVAの種類が異なる場合のみならず、封止材をオレフィンなどの異なる材料にした場合においても、その都度、相対湿度が異なる湿熱試験を行い、湿度補正係数の湿度依存性を確認する必要がある。
ここで基準となる相対湿度(RH90%前後)における湿熱による劣化に基づく寿命によって、湿熱による劣化に基づく寿命の湿度依存性データを規格化すれば、相対湿度に対する湿度補正係数Hcを得ることができる。
図12は、RH95%における湿熱による劣化に基づく寿命によって湿熱による劣化に基づく寿命の湿度依存性データを規格化した例を示すグラフである。以上のようにして、広い相対湿度範囲において、湿度補正係数Hcを求めることが可能になる。
次に、上述の(2)について説明する。モジュール温度Tmにおける大気の相対湿度RH(Tm)は、大気温度Tにおける大気の相対湿度RH(T)と、大気温度Tにおける飽和水蒸気圧Ps(T)と、モジュール温度Tmにおける飽和水蒸気圧Ps(Tm)を用いて、以下の式(19)のように表現できる。
RH(Tm)≒{Ps(T)/Ps(Tm)}・RH(T) 式(19)
ここで、大気温度Tにおける相対湿度RH(T)は、気象データから得ることができる。
また、式(19)は、飽和水蒸気圧Ps(T)及びPs(Tm)の代わりに、大気温度Tにおける大気の飽和水蒸気密度Ns(T)と、モジュール温度Tmにおける大気の飽和水蒸気密度Ns(Tm)とを用いると、以下の式(20)のようにも表現できる。
RH(Tm)≒{Ns(T)/Ns(Tm)}・RH(T) 式(20)
ここで、式(20)は、温度が変わったとしても水蒸気密度はほとんど変わらないという物理法則に基づいている。すなわち、式(20)は、以下の式(21)に基づいている。
Ns(Tm)・RH(Tm)≒Ns(T)・RH(T) 式(21)
ここで、式(19)、式(20)及び式(21)においては、気体の体積膨張に伴う10%程度の誤差があるため、「=」ではなく「≒」を用いて表現している。しかしながら、10%程度の誤差があったとしても、ここでの議論にはほとんど影響しない。
次に、日中の最高温度になる時間帯において、PVモジュールの最高温度Tmpでの大気の相対湿度RHは次の式(22)のように表現できる。
RH(Tmp)={Ps(Tmax)/Ps(Tmp)}・RH(Tmax) 式(22)
ここで、RH(Tmax)は、1日における最高気温の時の大気の相対湿度である。RH(Tmp)は、1日におけるPVモジュールの最高温度Tmpでの大気の相対湿度である。Ps(Tmax)は、1日における最高気温での飽和水蒸気圧である。Ps(Tmp)は、1日におけるPVモジュールの最高温度Tmpでの飽和水蒸気圧である。
式(22)において、1日における最高気温の時の相対湿度RH(Tmax)の情報は、1日の間の時間単位の湿度推移データがないと得られない。一方、1日における平均の相対湿度である日平均RH情報なら、簡単にアクセスできる。そこで、RH(Tmax)を、以下の式(23)を用いて、日平均RHで表現する。
RH(Tmax)≒{Ps(T日平均)/Ps(Tmax)}・日平均RH 式(23)
ここで、Ps(T日平均)は、1日における平均気温での飽和水蒸気圧である。
式(23)において、「=」ではなく「≒」を用いて表現しているのは、RH(T日平均)≒日平均RHとしたためである(RH(T日平均)を用いれば「=」となる)。ここで、RH(T日平均)は、1日における平均気温での相対湿度である。RH(T日平均)を求めるには、1日における気温と相対湿度の時間推移情報が必要であり、必ずしもアクセスできるわけではない。そのため、ここでは簡単にアクセスできる日平均RHを用いて表現している。
式(22)及び式(23)を用いることにより、日単位のRH(Tmp)は、次の式(24)のように表現できる。
RH(Tmp)≒{Ps(T日平均)/Ps(Tmp)}・日平均RH 式(24)
ここで、1日におけるPVモジュールの最高温度Tmpは、以下の式(25)にように表現できる。
Tmp=Tmax+ΔT=Tave+(ΔT2+ΔT) 式(25)
式(25)において、Taveは、1日における平均気温である。また、ΔT2は、1日における最高気温から1日における平均気温を引いたものである。このように、1日におけるPVモジュールの最高温度Tmpと1日における平均気温Taveとは、基本的に凡そ比例関係にあると言える。
上述のような日単位の議論を踏まえて類推すれば、年単位での議論においては、年間有効モジュール温度Tmp_effを用いて、以下の式(26)のように表現できると考えられる。
RH(Tmp_eff)≒{Ps(T年平均)/Ps(Tmp_eff)}・年平均RH 式(26)
ここで、RH(Tmp_eff)は、フィールドにおける年間有効モジュール温度Tmp_effでの相対湿度である。年平均RHは、1年間における平均の相対湿度である。Ps(Tmp_eff)は、フィールドにおける年間有効モジュール温度Tmp_effでの飽和水蒸気圧である。Ps(T年平均)は、1年間における平均気温での飽和水蒸気圧である。
また、RH(Tmp_eff)は、1日における最高気温Tmaxの年平均温度での相対湿度及び飽和水蒸気圧を用いて、以下の式(27)のようにも表現できる。
RH(Tmp_eff)={Ps(Tmax年平均)/Ps(Tmp_eff)}・RH(Tmax年平均) 式(27)
ここで、RH(Tmax年平均)は、1日における最高気温Tmaxの年平均温度での相対湿度である。Ps(Tmax年平均)は、1日における最高気温Tmaxの年平均温度での飽和水蒸気圧である。年間有効モジュール温度Tmp_effについては、「グラフを用いた寿命予測」において、さらに後述する。
ところで、ここで議論している湿度補正は、UV及び湿熱による劣化に基づく寿命の予測の議論(本開示による寿命予測方法を構成する諸量間が成す系)に整合するように行うのが好適である。この点、後述する千葉及び沖縄の実例ケースの温度情報から、以下の式(28)のような関係が確認できる。
Tmax年平均+ΔT≒Tmp_eff 式(28)
したがって、寿命予測において湿度補正を行うには、ΔT及びTmp_effと相性のよい、すなわち整合性のとれる1日における最高気温Tmaxの年平均値であるTmax年平均を用いるのがよく、以下、式(27)を参照しながら説明を続ける。
Tmp_effは、目安となる概算値を簡単に求めたい場合、上述した図5のステップG1又は後述の式(47)とは異なるように定義されてもよい。すなわち、式(28)に示すように、Tmp_effとTmax年平均とは、exp(−Ea/kTmp)を介さずに、直接的に関連付けられてもよい。このように定義される場合、例えば式(28)におけるΔTとして、365日分のΔTの中央値、又は月平均のΔTの年間中央値を用いてよい。式(28)におけるΔTとして、仮に年平均のΔTを用いると、Tmp_effが過少評価される場合がある。このため、式(28)におけるΔTとして、年平均のΔTを用いるのは好ましくない。Tmp_effとして、より正確な値が必要である場合は、本来の定義である後述の式(47)で与えられる値を用いることができる。
ここで、PVモジュールの温度データがない場合(すなわちTmp_effが不明の場合)も想定し得る。このような場合、ΔTとして、PVモジュール温度の年間データ及び気温の年間データがすでに得られている場所(PVモジュールが設置されているフィールド)におけるΔTの情報を用いてもよい。すなわち、このような場合、ΔTとして、既知の場所における365日分のΔTの中央値、又は月平均のΔTの年間中央値で与えることができる。ΔTの目安は、地上に設置された場合は25℃±(5〜10)℃としてよく、住宅屋根に設置された場合は35℃±(5〜10)℃としてよい。
ここで、RH(Tmax年平均)の算出には、日別の最高気温における相対湿度の情報が必要である。しかしながら、日別の最高気温における相対湿度の情報は、一般的に、日別の気象データの形で得られる状態にはなっていない。このため、日別の最高気温における相対湿度の情報を得るためには、時間別の相対湿度のデータに遡って検索することになる。しかしながら、時間別の相対湿度のデータは、現時点では、例えば各県において1カ所程度のように、限られた地点でしか得ることができない。
そこで、一実施形態において、以下のようにして、寿命をより安全側で予測してもよい。すなわち、一実施形態において、RH(Tmp_eff)を高めに見積もってもよい。ここで、RH(Tmp_eff)を高めに見積もるとは、湿熱による寿命に基づく寿命を、短めに見積もることに相当する。ここでは、一般的に、年平均RH≧RH(Tmax年平均)となる関係を踏まえて、以下で定義するRH’(Tmp_eff)を導入して、年平均RHを使う。日別の平均相対湿度のデータ及び月別の平均相対湿度のデータは、アクセスが容易である。したがって、年平均RHを求めることは容易である。このため、年平均RHを用いることは、湿度補正係数Hcを求めるという目的には好都合である。
上述のRH’(Tmp_eff)を、以下の式(29)で定義する。
RH’(Tmp_eff)≒{Ps(Tmax年平均)/Ps(Tmp_eff)}・年平均RH 式(29)
ここで、式(27)と式(29)を比較すれば、次の式(30)に示すような関係が成り立つ。
RH’(Tmp_eff)≧RH(Tmp_eff) 式(30)
このようなRH’を用いれば、湿熱による寿命をより安全側で(短めに)見積もることができる。以上のようにして、上述の(2)の手順を行うことができる。
次に、上述の(3)について説明する。上述の(1)及び(2)の手順を踏まえると、以下の手続きのようにまとめることができる。すなわち、湿熱試験(RH=90%前後)から見積もったRH90%前後の仮想的なフィールドにおける湿熱による劣化に基づく寿命に対して湿度補正を行うには、次のような手続きに従えばよい。
(i)まず、年間有効モジュール温度Tmp_effにおける大気の相対湿度は、上述のRH’(Tmp_eff)とみる。この観点に基づき、1日における最高気温Tmaxの年平均値であるTmax年平均、年間有効モジュール温度Tmp_eff、及び1年間における平均の相対湿度(年平均RH)の情報から、RH’(Tmp_eff)を求める(上述の(2)の手順による)。
(ii)次に、相対湿度を設定した湿熱試験の結果の情報と、湿熱による劣化に基づく寿命の湿度依存性をべき乗則で表した近似曲線とから(上述の(1)の手順による)、RH’(Tmp_eff)での湿度補正係数Hcを読み取る。ここで、相対湿度を設定した湿熱試験の結果の情報とは、相対湿度と湿熱による劣化に基づく寿命との関係を示す情報である。
上述の(i)及び(ii)のそれぞれの手続きを、一般的なEVAを使用したPVモジュールの場合について、具体的に説明する。
(i)年間有効モジュール温度Tmp_effにおける大気の相対湿度RH’(Tmp_eff)の見積もり
図13(A)及び図13(B)は、水蒸気圧の温度依存性及び相対湿度依存性を示したグラフである。図13(B)は、図13(A)のグラフの縦軸をlogで表示したものである。ここで、例として、年平均の最高気温Tmax年平均=20℃、年平均の相対湿度RH(T年平均)=70%の場所で、ΔT=25℃(地上設置)の場合及びΔT=35℃(住宅屋根設置)の場合の仮想モデルについて説明する。
図14は、年間有効モジュール温度での大気の相対湿度RH’(Tmp_eff)を割り出す手順を示す図である。Tmax年平均=20℃の大気がPVモジュールに接触して、有効温度45℃あるいは55℃のモジュール温度と同じ温度になっても、上述のように、水蒸気圧自体はほぼ変化しない。このような物理法則に基づいて、図14においては、年間有効モジュール温度での大気の相対湿度RH’(Tmp_eff)を、それぞれの場合について、RH’=17%又はRH’=10%と割り出している。すなわち、Tmax年平均=20℃において、ΔT=25℃(Tmp_eff=45℃)の場合、RH’(Tmp_eff)=17%となる。また、Tmax年平均=20℃において、ΔT=35℃(Tmp_eff=55℃)の場合、RH’(Tmp_eff)=10%となる。
(ii)RH’(Tmp_eff)での湿度補正係数Hcの読み取り
湿度補正係数Hcは、上述の相対湿度と湿度補正係数Hcとの関係を示すグラフから読み取ることができる。
図15は、相対湿度と湿度補正係数Hcとの関係の例を示すグラフである。図15においては、RH’=17%の場合及びRH’=10%の場合が例示されている。図15から、一般的EVAを用いた場合の湿度補正係数Hcは、RH’=17%の場合に2.1と読み取ることができ、RH’=10%の場合に2.7と読み取ることができる。また、図15には、改善EVAの場合についても記載してある。
図16は、温度95℃湿度95%の湿熱試験の条件、RH95%の仮想的なフィールドの条件、及び上述の仮想モデルのフィールド条件の3者間において、温度と相対湿度との関係を示すグラフである。この図は、寿命を見積もる手続きにおける温度と湿度の関係の全体像を示している。
上述の仮想モデルを用いて説明した手順に従い、一般的なEVAを使用した場合の湿度補正係数Hcの具体的見積もり値について、千葉及び沖縄を例に揚げて示す。年平均の相対湿度(年平均RH)は目安としてRH70%とする。この例は、2015年の気象データを利用したものであり、千葉においてTmax年平均=20.3℃であり、沖縄においてTmax年平均=26.3℃である。ここで、RH70%の前後10%程度の値をとったとしても、結果は大差ない。以下、図14及び図18を用いて説明する。
まず、千葉(Tmax年平均=20.3℃)において、ΔT=25℃の場合は、Tmp_eff=47.5℃となる。次に図14から、RH’(Tmp_eff)=15〜20%が得られる。そして図18から、湿度補正係数Hcは、2〜2.2と求めることができる。また、千葉(Tmax年平均=20.3℃)において、ΔT=35℃の場合は、Tmp_eff=57.3℃となる。次に図14から、RH’(Tmp_eff)=10%前後が得られる。そして図18から、湿度補正係数Hcは、約2.7と求めることができる。
次に、沖縄(Tmax年平均=26.3℃)において、ΔT=25℃の場合は、Tmp_eff=52.0℃となる。次に図14から、RH’(Tmp_eff)=15〜20%が得られる。そして図18から、湿度補正係数Hcは、2〜2.2と求めることができる。また、沖縄(Tmax年平均=26.3℃)において、ΔT=35℃の場合は、Tmp_eff=62.0℃となる。次に図14から、RH’(Tmp_eff)=10%前後が得られる。そして図18から、湿度補正係数Hcは、約2.7と求めることができる。
ここで、年間有効モジュール温度Tmp_effは、千葉及び沖縄の気象データを用いて計算した年間ストレス指数Aから割り出したものである。年間有効モジュール温度Tmp_effの算出については、「グラフを用いた寿命予測」において後述する。また、以上の例より、上述の式(28)に示した関係があることも確認することができる。つまり、T年平均よりもTmax年平均を採用する方が、上述のUV及び湿熱による劣化に基づく寿命の予測の議論に整合することも確認できる。
結局、国内における一般的なEVAを使用したPVモジュールについて湿度補正をするための目安値は、湿熱による劣化に基づく寿命の予測をより安全側で行う観点からは、以下のような値とすることができる。すなわち、地上に設置されたPVモジュールであってΔT=25℃の場合、湿度補正係数Hcは約2とすることができる。また、住宅の屋根に設置されたPVモジュールであってΔT=35℃の場合、湿度補正係数Hcは約2.5とすることができる。以上をまとめると、国内における一般的なEVAを使用したPVモジュールについて湿度補正をするための湿度補正係数Hcは、目安として2.2程度とすることができる。
次に、改善したEVAを使用した場合の湿度補正係数Hcの具体的な見積もり値について説明する。一般的なEVAを使用したPVモジュールの製品と同様に、改善したEVAを用いたPVモジュールの製品についても、湿度補正係数Hcを求めることができる。ここで注意すべき点は、EVAの種類が異なれば、湿度補正係数Hcが異なってくることである。以下、このような場合について、さらに説明する。
一般的なEVAを用いたPVモジュールの製品に対して、改善したEVAを用いたPVモジュールの製品においては、湿熱による劣化に基づく寿命が一般的なEVAを用いた場合の寿命に対して一定量増加する。このことを踏まえると、改善したEVAを用いたPVモジュールの製品において、湿熱による劣化に基づく寿命の湿度依存性は、例えば図17に示すようになると推測される。
図17は、図11と同様に、湿熱による劣化に基づく寿命の湿度依存性を示すグラフである。図17は、改善したEVAを使用したPVモジュールについて、相対湿度と、湿熱による劣化に基づく寿命との関係を示すグラフである。図17において、横軸は相対湿度RH[%]を示し、縦軸はPVモジュールの劣化に基づく寿命を迎えるまでの時間[h]を示している。PVモジュールの劣化に基づく寿命を迎えるまでの時間は、例えばFF特性が初期値に比べて10%減少するまでの時間としてもよい。図17においては、比較のために、一般的なEVAを用いたPVモジュールの製品の場合の曲線を一点鎖線によって示し、改善したEVAを用いたPVモジュールの製品の場合の曲線を破線によって示してある。
以上から、湿度補正係数Hcの湿度依存性を示すと、例えば図18に示すようになる。図18は、図12と同様に、RH95%における湿熱による劣化に基づく寿命によって湿熱による劣化に基づく寿命を規格化した例を示すグラフである。図18においても、比較のために、一般的なEVAを用いたPVモジュールの製品の場合の曲線を一点鎖線によって示し、改善したEVAを用いたPVモジュールの製品の場合の曲線を破線によって示してある。図18の情報は、図15にも記載されている。
以上を踏まえ、上述の一般的なEVAを用いたPVモジュールの製品の場合と同様に、改善したEVAを用いた場合についての湿度補正係数Hcの具体的見積もり例を、千葉と沖縄を例にとって示す。以下、図14及び図18を用いて説明する。
まず、千葉(Tmax年平均=20.3℃)において、ΔT=25℃の場合は、Tmp_eff=47.5℃となる。次に図14から、RH’(Tmp_eff)=15〜20%が得られる。そして図18から、湿度補正係数Hcは、約1.7と求めることができる。また、千葉(Tmax年平均=20.3℃)において、ΔT=35℃の場合は、Tmp_eff=57.3℃となる。次に図14から、RH’(Tmp_eff)=10%前後が得られる。そして図18から、湿度補正係数Hcは、約2.0と求めることができる。
次に、沖縄(Tmax年平均=26.3℃)において、ΔT=25℃の場合は、Tmp_eff=52.0℃となる。次に図14から、RH’(Tmp_eff)=15〜20%が得られる。そして図18から、湿度補正係数Hcは、約1.7と求めることができる。また、沖縄(Tmax年平均=26.3℃)において、ΔT=35℃の場合は、Tmp_eff=62.0℃となる。次に図14から、RH’(Tmp_eff)=10%前後が得られる。そして図18から、湿度補正係数Hcは、約2.0と求めることができる。
結局、国内における改善したEVAを使用したPVモジュールについて湿度補正をするための目安値は、湿熱による劣化に基づく寿命の予測を安全に行う観点からは、以下のような値とすることができる。すなわち、地上に設置されたPVモジュールであってΔT=25℃の場合、湿度補正係数Hcは約1.5とすることができる。また、住宅の屋根に設置されたPVモジュールであってΔT=35℃の場合、湿度補正係数Hcは約1.8とすることができる。以上をまとめると、国内における改善したEVAを使用したPVモジュールについて湿度補正をするための湿度補正係数Hcは、目安として1.6程度とすることができる。
図19は、日本国内のいくつかのフィールドにおける年間月別の平均気温と平均相対湿度との関係をプロットして示す図である。図19に示すように、国内のいくつかの異なるフィールドにおいて、平均気温が変化しても、平均相対湿度はおおよそ70%前後であることがわかる。したがって、相対湿度90%前後の仮想的フィールドでの寿命年数Yvに対する湿度補正係数として、国内のフィールドにおける平均的な相対湿度を70%程度として導いた上述の湿度補正係数Hcの妥当性が裏付けられる。すなわち、相対湿度が70%程度の国内のフィールドにおいては、前述したように、一般的なEVAを用いた場合、湿度補正係数Hcの目安は2.2程度としてよい。さらに詳しく見るならば、湿度補正係数Hcの目安は、地上に設置された場合に約2程度とし、住宅の屋根に置かれた場合に約2.5程度としてよい。また、改善したEVAを用いた場合、湿度補正係数Hcの目安は1.6程度としてよい。さらに詳しく見るならば、湿度補正係数Hcの目安は、地上に設置された場合に約1.5程度とし、住宅の屋根に置かれた場合に約1.8程度としてよい。
次に、国外のフィールドでの湿度補正係数Hcについて具体的に検討する。
図20及び図21は、国外のフィールドにおける年間月別の平均気温と平均相対湿度との関係をプロットして示す図である。
図20においては、例として台北、バンコク、及びマニラにおける年間月別の平均気温と平均相対湿度との関係を示してある。特にバンコク及びマニラでは、年間を通して高温多湿な状態であり、年平均の相対湿度は70%を超えている。また、台北では年平均の相対湿度は80%を超えている。したがって、これらの地域における湿度補正係数Hcは、一般的なEVAを用いた場合は、地上設置では2よりも小さな値とし、住宅屋根置きでは2.5よりも小さな値としてよい。また、改善したEVAを用いた場合は、地上設置では1.5よりも小さな値とし、住宅屋根置きでは1.8よりも小さな値としてよい。このように、海外のフィールドの特に高温多湿な地域においては、湿度補正係数Hcは、日本国の場合での値よりも小さな値としてよい。
図21においては、例としてニューデリー、リヤド、アブダビ、及びラスベガスにおける年間月別の平均気温と平均相対湿度との関係を示してある。図21に示すように、特にリヤド及びラスベガスにおいて、平均相対湿度は非常に低く、年間を通じておおよそ15%〜45%前後である。したがって、例えば、リヤド及びラスベガスなどでは、フィールドにおける相対湿度の情報から、湿度補正係数Hcは、一般的なEVAを用いた場合は、地上設置では2よりも高い値とし、住宅屋根置きでは2.5よりも高い値としてよい。また、改善したEVAを用いた場合は、地上設置では1.5よりも高い値とし、住宅屋根置きでは1.8よりも高い値としてよい。このように、海外のフィールドの特に乾燥している地域においては、湿度補正係数Hcは、日本国の場合における値よりも大きな値としてよい。
(月別の湿度補正係数を用いる方法)
また、月別の平均的な相対湿度RHmの情報が利用できる場合、月間ストレス指数Amを、以下の式(31)のように定義することができる。
月間ストレス指数Am=Heff・Σexp(−Ea/kTmp) 式(31)
ここで、総和区間は1日ごとに各月の月間の日数分とする。
この式(31)により、月別の湿度補正係数Hcmを用いて、以下の式(32)に示すように、湿度補正済みの年間ストレス指数Acを得ることができる。
湿度補正済みの年間ストレス指数Ac≒Σ{Am/Hcm} 式(32)
ここで、総和区間はひと月ごとに12か月間とする。
湿度補正済みの年間ストレス指数Acを用いれば、フィールドの湿度域における湿熱による劣化に基づく寿命年数Yhは、以下の式(33)に示すように、上述の寿命ストレス指数Bを該Acで割ることによって得られる。
PVモジュールの寿命年数Yh=寿命ストレス指数B/Ac 式(33)
この算出によれば、年当たりの平均的な相対湿度RHの情報を用いる場合よりも、正確に寿命予測を行うことができる。この算出は、年間で相対湿度が大きく変動する地域において、特に有用である。
(日別の湿度補正係数を用いる方法)
また、日別の平均的な相対湿度RHdの情報が利用できる場合、1日当たりのストレス指数Adを、以下の式(34)のように定義することができる。
1日当たりのストレス指数Ad=Heff・exp(−Ea/kTmp) 式(34)
ここで、Tmpは1日ごとに異なり得る値である。
この式(34)により、日別の湿度補正係数Hcdを用いて、以下の式(35)に示すように、湿度補正済みの年間ストレス指数Acを得ることできる。
湿度補正済みの年間ストレス指数Ac≒Σ{Ad/Hcd} 式(35)
ここで、総和区間は1日ごとに365日間とする。
フィールドの湿度域における湿熱による劣化に基づく寿命年数Yhは、該Acを用いて、式(33)によって、上述同様に得ることができる。
この算出によれば、月当たりの平均的な相対湿度RHmの情報を用いる場合よりも、さらに正確に寿命予測を行うことができる。この算出は、月間で相対湿度が大きく変動する地域において、特に有用である。
ここで、相対湿度情報を用いて湿度補正を行う際に、踏まえておくべき物理について説明する。すなわち、湿度補正係数Hcは、相対湿度を変数にした湿熱試験結果に基づいて決められるべきである。大気中の絶対水蒸気圧(水蒸気密度)に単純に反比例した湿度補正係数、又は、EVA中の水分子濃度に単純に反比例した湿度補正係数を想定することはできないことについて、注意を付記する。
EVA中の水分は、フィールドにおける温度圧力領域では、凝縮状態(液相状態)にあると考えられる。EVA中の水分の拡散は、温度が高い状態ほど速く進む。すなわち、日中のモジュール温度が最高になる時間帯において、EVA中の水分の拡散距離は非常に長くなる。一方、朝方、夕方、又は夜間などのモジュール温度が低くなる時間帯において、EVA中の水分の拡散距離は、逆に大幅に短くなる。その結果、EVA中の水分子濃度(水分子の濃度)は、時間が経過するに従ってモジュール温度が最高になる状態における平衡濃度に近い値になっていくと考えられる。つまり、フィールドに設置されて一定の時間を経たモジュールのEVA中の水分量(液相状態の水)は、次のような水分量によって、ほぼ与えられると考えられる。すなわち、当該水分量とは、モジュール温度が最高になる温度域において、モジュールに接してモジュールとほぼ同じ温度となった大気中の水分量(気相状態の水蒸気)と平衡状態にあると想定したときのEVA中の水分量である。以下、水や水蒸気の濃度について言及する場合は、単位体積中に存在する水分子の濃度[個/cm]を示すものとする。
EVAからなる樹脂(以下、単に「樹脂」とも記す)中の水分子濃度n_HO樹脂は、熱物理学・熱化学に基づき、以下のように導出できる。
n_HO樹脂=RH・Ps(T)/Ps’(T)・n_全液 式(36)
ここで、Tは、樹脂中と大気が成す平衡系の絶対温度[K]である。RHは、大気中の相対湿度[%]を100で除した値[%/100]である。樹脂中の水分子濃度n_HOは、樹脂単位体積当たりの水の分子数[個/cm]である。n_全液は、樹脂単位体積当たりに含むことができる水の最大分子数(飽和分子数)[個/cm]である。Ps(T)は、温度Tでの水蒸気の飽和水蒸気圧[Pa]である。Ps’(T)は、樹脂中の水と大気中の水蒸気の熱平衡関係(偏析係数の実験結果)から定義した、温度依存性を有する関数[Pa]である。
また、Ps(T)は、次の式(37)のように表すことができる。
Ps(T)=exp(ΔG_HO液相/気相(T)/RT) 式(37)
ここで、ΔG_HO液相/気相(T)は、温度Tにおける液体状態の水のモルギブズエネルギーと、気体状態の水蒸気のモルギブズエネルギーとの差である。
また、ΔG_HO液相/気相(T)は、次の式(38)のように表すことができる。
ΔG_HO液相/気相(T)=ΔG_HO液相/気相(298)−T・ΔS_HO液相/気相(298) 式(38)
ここで、ΔG_HO液相/気相(298)は、温度25℃における液体状態の水のモル標準生成ギブズエネルギーと、気体状態の水蒸気のモル標準生成ギブズエネルギーとの差である。ΔS_HO液相/気相(298)は、温度25℃における液体状態の水のモル標準エントロピーと、気体状態の水蒸気のモル標準エントロピーとの差である。
また、Ps’(T)は、次の式(39)のように定義する。
Ps’(T)=exp(ΔG_HO液相’/気相(T)/RT) 式(39)
ここで、ΔG_HO液相’/気相(T)は、温度Tにおける樹脂中の液体状態の水のモルギブズエネルギーと、気体状態の水蒸気のモルギブズエネルギーとの差である。
また、ΔG_HO液相’/気相(T)は、次の式(40)のように定義する。
ΔG_HO液相’/気相(T)=ΔG_HO液相’/気相(298)−T・ΔS_HO液相’/気相(298) 式(40)
ここで、ΔG_HO液相’/気相(298)は、温度25℃における樹脂中の液体状態の水のモル標準生成ギブズエネルギーと、気体状態の水蒸気のモル標準生成ギブズエネルギーとの差である。ΔS_HO液相’/気相(298)は、温度25℃における樹脂中の液体状態の水のモル標準エントロピーと、気体状態の水蒸気のモル標準エントロピーとの差である。
次に、樹脂の水分子濃度n_HO樹脂と、大気中の水分子濃度n_HO大気との比から、水分子に関する偏析係数Cを得ることができる。
偏析係数C=n_HO樹脂/n_HO大気 式(41)
式(41)は、式(36)から、次の式(42)のように表すことができる。
偏析係数C=RH・Ps(T)・n_全液/(Ps’(T)・n_HO大気) 式(42)
また、式(42)は、RH・Ps(T)=P(T)=n_HO大気・kT を踏まえれば、次の式(43)のように表すことができる。P(T)は、温度Tでの水蒸気の水蒸気圧[Pa]である。
偏析係数C=n_全液・kT/Ps’(T) 式(43)
式(43)から、各温度Tにおける偏析係数Cが分かれば、Ps’(T)を求めることができる。
次に、式(41)を用いて水分子に関する偏析係数Cを実験から求める方法を説明する。
所定の温度条件における高温高湿試験を行ったPVモジュールからEVAを取出し、EVA中の水分子濃度n_HO樹脂をカールフィッシャー法などで定量分析する。そして、所定温度における大気中の水分子濃度n_HO大気は、高温高湿試験条件の温度と相対湿度から求めることができる。偏析係数Cは、得られた樹脂の水分子濃度n_HO樹脂と大気中の水分子濃度n_HO大気の比をとることで求めることができる。これを異なる温度で繰り返し行うことによって、各温度における偏析係数Cを求める。
図22は、各温度において得られた偏析係数Cをプロットした図である。これらの実験データを用いることで、Ps’(T)を求めることができる。ここでは、式(40)において、ΔG_HO液相’/気相(298)=−9448J/mol、ΔS_HO液相’/気相(298)=−83.1J/molとして、式(39)からPs’(T)を与えれば、式(43)を介して計算される偏析係数Cが、実験で得られた偏析係数Cをよく再現することが確かめられた。ここで、単純な水(液相)と水蒸気(気相)の系では、ΔG_HO液相/気相(298)=−8589J/mol、ΔS_HO液相/気相(298)=−118.8J/molであることを考慮すると、水と水蒸気の系に比べて、水は樹脂中で熱力学的により安定して存在することが分かる。
また、式(36)から、EVA中の水分子濃度は、相対湿度RHに比例することがわかる。また、相対湿度RHが一定の場合は、 Ps(T)/Ps’(T)の温度依存性から、EVA中の水分子濃度は、温度に比例して緩やかに増大することが予想できる。
前述のように、EVA中の水分子濃度は、相対湿度RHが一定の場合に温度に比例して緩やかに増大する。このことは、EVA中の水分子濃度は、温度に比例して指数関数的に増大する飽和水蒸気圧に比例する形では決まらないことを示している。EVA中の水分子濃度が温度に比例して指数関数的に増大しないで、温度に比例して緩やかに増大する理由は、飽和水蒸気圧の温度依存性をほぼ打ち消す形で偏析係数の温度依存性が効いてくるからである。すなわち、式(36)は、式(43)を用いて、次の式(44)のように表すことができる。
n_HO樹脂=RH・Ps(T)/kT・偏析係数C 式(44)
偏析係数の温度依存性は、EVA中の水と大気中の水蒸気の平衡関係が、基本的には、水単体(液相の水分子)と水蒸気(気相の水分子)の平衡関係と同じであると考えれば、自然に理解できる。すなわち、図23に示すように、水単体と水蒸気の系では、温度が下がれば飽和水蒸気圧は指数関数的に大きく低下する(飽和水蒸気濃度は指数関数的に大きく低下する)。一方、水の密度の温度低下に対する変化量は、水の熱膨張係数程度しかなく、今の場合、その変化はほとんど無視できる。つまり、液相の水分子濃度/気相の水分子濃度、すなわち水分子の偏析係数が、温度の低下とともに指数関数的に大きく増大する。このことによって、飽和水蒸気圧の温度依存性の影響は打ち消され、0〜100℃の間の水単体/水蒸気系においては、液相の水分子濃度はほとんど変化しない事実を理解できる。EVA中の水と大気中の水蒸気の間で起こっている物理現象も、基本はこれと同じである。温度の低下とともに指数関数的に低下する飽和水蒸気圧の影響を、EVAと大気の間における水の偏析係数が温度の低下とともに指数関数的に大きく増大することによって打消し、EVA中の水分濃度は大きく変化しない結果となっていることを理解できる。
以上を別言すれば、EVAの保湿効果が強く働くため、大気中の水蒸気濃度が大きく変化したとしても、EVA中の水分子濃度は大気中の水分子濃度が大きく変わる(低下する)ほどは変わらない(低下しない)と解釈することもできる。すなわち、高温高湿試験の温度域の飽和水蒸気圧に対して、実際のフィールドの温度域での飽和水蒸気圧が1桁以上低くなっても)、EVA中の水分子濃度は大気中の水分子濃度が大きく変わる(低下する)ほどは変わらない(低下しない)と解釈することもできる。
以上のことは、次の事実からも確認できる。すなわち、相対湿度RH90%前後における高温高湿試験に曝された試験品のEVA中の水分子濃度と、フィールドにおける回収品のEVA中の水分子濃度とを比べると、図24に示す程度(係数程度)の差しか生じない。
図24は、高温高湿試験に曝された試験品のEVAと、国内のフィールドにおける回収品のEVAについて、それぞれのEVA中の水分子濃度(水分子の濃度)を示す図である。ここで、水分子の濃度とは、EVA単位体積中の水分子の個数を意味する。図24に示すように、温度125℃、相対湿度RH95%の条件の試験品は、最大で1〜2×1020個/cm程度、温度95℃、相対湿度RH95%の条件の試験品は、最大で5〜8×1019個/cm程度であるのに対して、回収品は3〜5×1019個/cm程度であった。試験品と回収品におけるEVA中の水分子濃度の差は、飽和水蒸気圧の温度依存性から得られる飽和水蒸気圧の差に比べて、ずっと小さいことが確認できる。
以上の説明を踏まえて、湿熱寿命の湿度補正について、注意すべき点を以下に記載する。
第1に、湿熱寿命の湿度依存性について、飽和水蒸気圧の温度依存性をそのまま湿度補正係数として適用することはできない。具体的には、高温高湿試験における飽和水蒸気圧と、フィールドに設置されたPVモジュールの温度における飽和水蒸気圧との比を湿度補正係数として適用することはできない。もし、その比を湿度補正係数として適用すると、湿熱寿命を大幅に過大に見積もってしまうことになる。これは偏析係数の温度依存性の影響を考慮していないためである。
第2に、式(36)より、EVA中の水分子濃度は外気の相対湿度RHに比例していると考えられるが、実際に相対湿度を複数設定して行った実験結果で得られた湿熱寿命及び湿度補正係数は、相対湿度RHには単純に反比例していない。すなわち式(18)において、n≒1とはなっておらず、有意にn<1である。もし相対湿度RHに単純に反比例した(1/RHに単純に正比例した)湿度補正係数を与えてしまうと、すなわちn≒1としてしまうと、湿熱寿命を大幅に過大に見積もってしまうことになる。EVA中の水分子濃度と湿熱寿命が単純な反比例の関係にないのは、電極のコンタクト部の腐食劣化反応がEVA中の水分子濃度に単純に比例していないからである。すなわち、水そのものが腐食反応を起こしているわけではないからである。腐食反応は酸(EVAの場合は酢酸)が関係しており、水分は直接の腐食因子ではなく、酸が関与する腐食反応に間接的に関与する因子だからである。
以上、寿命予測にあたって湿度補正をする場合に注意すべき点について説明した。すなわち、大気中の絶対水蒸気圧(水蒸気密度)に単純に反比例した湿熱寿命を想定すること、また、EVA中の水分子濃度に単純に反比例した湿熱寿命を想定することは、湿熱寿命を大幅に過大評価してしまうことについて注意する必要がある。
本開示の方法では、湿熱寿命の相対湿度依存性を実際の実験結果から導いている。このため、上記のように湿熱寿命を大幅に過大評価してしまう恐れはない。
(湿度補正係数Hcの上限値及び下限値の見積もり)
ここで、フィールドにおける回収品のEVA中の水分子濃度は、図24に示すように3〜5×1019個/cm程度であった。この値は、上述した偏析係数の実験情報とフィールドでの平均湿度情報から計算される値よりも2〜3倍高い値であることが確認された。
この差をもたらす原因として、偏析係数を求めるために用意された試験品のEVAの状態と、フィールドにおける回収品のEVAの状態が異なることが考えられる。すなわち、試験品は、UV光のストレスが無い単純な湿熱のストレス状態に置かれ、樹脂中水分の飽和が確認できる時間で試験を終了している。そのため、湿熱のストレスによるEVAの加水分解反応(酢酸発生反応)は初期段階に留まっている。一方、フィールドにおける回収品は、UV光のストレスを充分に受けており、また、湿熱のストレスも酢酸が相当発生する程度に受けている。EVAはUV光によって分子構造にダメージを受けることが知られている。
また、UV光のストレスに起因する酢酸の発生、及び湿熱に起因する酢酸の発生によって、酢酸の発生に伴った分子レベルの構造変化が当然起こっている。また、これらの分子構造の劣化は、特にEVAと太陽電池セルとの界面で発生しやすい、との報告もある。つまり、試験品のEVAに比べて、フィールドにおける回収品のEVAは劣化の程度が進んでいるため、水分子を捕獲できる空隙量(空隙体積)が増えているものと考えられる。そのため、フィールドにおける回収品のEVAの水分子濃度は、試験品の実験結果(偏析係数)から予想される値よりも高い値が観測されたものと考えられる。
樹脂中の空隙量の増加は、樹脂単位体積当たりに含むことができる水の最大分子数n_全液を増加させる。今の場合、水の最大分子数n_全液は、樹脂中の全空隙が水分子で飽和状態になったときの単位体積当たりの飽和水分子数を意味する。この全空隙の量(空隙体積)がEVAの劣化に伴って増大することで、式(36)より、EVA中の水分子濃度n_HO樹脂が、試験品の実験結果から予想される値よりも高くなったものと考えられる。
ここで、フィールドにおける回収品のEVAの水分子濃度を、仮に試験品のEVAで実現しようとすると、モジュールの温度における大気の相対湿度RHは、おおよそ60%±20%程度である必要があると見積もられた。仮に、相対湿度RH60%の場合、図18に示す相対湿度と湿度補正係数との関係を表すグラフから湿度補正係数を見積もると、一般的なEVAについては1.2程度、改善したEVAについては1.1程度が目安値となることがわかった。
フィールドに設置されたPVモジュールのEVAは、曝露年数とともに徐々に劣化していくので、劣化に伴うEVA中の空隙量の増大も、徐々に進行していくはずである。したがって、湿度補正係数もフィールド曝露年数とともに徐々に変化していくべきものであると考えられる。すなわち、湿度補正係数は経年で少しずつ低下していくべきものであると考えられる。
以上を鑑みると、試験品の情報に基づいて見積もられた湿度補正係数は上限の目安となり、フィールドにおける回収品の情報に基づいて見積もられた湿度補正係数は下限の目安となると考えられる。すなわち、一般的なEVAについては、湿度補正係数の上限の目安を2.2程度、より詳細に設定するならば、地上に設置された場合は2程度、住宅の屋根に置かれた場合は2.5程度とすることができ、湿度補正係数の下限の目安を1.2程度とすることができる。また、改善したEVAについては、湿度補正係数の上限の目安を1.6程度、より詳細に設定するならば、地上に設置された場合は1.5程度、住宅の屋根に置かれた場合は1.8程度とすることができ、湿度補正係数の下限の目安を1.1程度とすることができる。
(UV補正係数Uc)
次に、式(1)におけるUV補正係数Ucについて説明する。
上述した寿命年数Yは、以下の式(45)に示すように、上述した寿命年数Yhに、UV補正係数Ucを乗じることで得られる。
寿命年数Y=寿命年数Yh×UV補正係数Uc 式(45)
ここで、式(17)に示したように、寿命年数Yhは、寿命年数Yvに湿度補正係数Hcを乗じることで得られる。ここで、寿命年数Yvは、湿度90%前後の仮想的なフィールドにおける湿熱による劣化に基づくPVモジュールの寿命年数である。
UV補正係数値Ucは、湿熱試験を行うことによって得られる寿命までの時間と、UV光を所定ストレス量与えた後に湿熱試験を行うことによって得られる寿命までの時間とに基づいて得ることができる。具体的には、上述の試験に基づいて、UV補正係数Ucは、以下の式(46)のように得ることができる。
UV補正係数Uc=τUD/τD 式(46)
ここで、τDは、PVモジュールに湿熱試験(以下、「DH試験」とも記す(DH:ダンプヒート))を行うことにより得られる寿命までの時間である。また、τUDは、PVモジュールにUV光を所定ストレス量与えた後に連続して湿熱(DH)試験を行う連続試験(以下、「UVDH連続試験」とも記す)により得られる寿命までの時間である。
式(46)に示すτUDを得る際にPVモジュールに与えるべきUV光のストレス量は、EVA中に添加されている添加剤の種類及び/又は添加量によって変わる。この場合、与えるべきUV光量は、UV光の累積照射量に対する添加剤起因の酸(酢酸など)の発生量がほぼ飽和する光量を目安としてよい。
以下、紫外線吸収剤に起因して酢酸が発生するUV試験を行う場合について説明する。この場合、波長300〜400nmの範囲のUV光であれば、UV光のストレス量の目安は、250〜300kWh/mの照射エネルギー量としてよい。この量は、国内のフィールドにおける約3年分のUV光エネルギー量に相当する。おおよそこの程度の照射エネルギー量のUV光量を照射すれば、紫外線吸収剤はほぼ劣化し切ることが確認されている。すなわち、上述した照射エネルギー量以上にUV光を照射したとしても、それ以上に紫外線吸収剤に起因して酢酸が発生することはない。以上のことは、図31に示したUV光の照射エネルギー量に対する酢酸イオン濃度([CHCOO])の飽和傾向から確認することができる。
出願人は、紫外線吸収剤UVAの添加の有無などの条件が異なるいくつかのEVAについて、UV補正係数Ucを求めるべく、DH試験及びUVDH連続試験を含む実験を行った。図25(A)〜図25(C)は、いくつかのEVAについてUVDH連続試験をした結果のグラフを示す図である。図25(A)は、一般的なEVAであるEVA1(紫外線吸収剤の添加あり)を使用した製品をサンプルとした試験の結果を示している。図25(B)は、改善したEVAであるEVA2(紫外線吸収剤の添加あり)を使用した製品をサンプルとした試験の結果を示している。図25(C)は、改善したEVAであるEVA3(紫外線吸収剤の添加なし)を使用した製品をサンプルとした試験の結果を示している。
図25(A)〜図25(C)のグラフにおいて、それぞれ、横軸はDH試験の時間を示し、縦軸はFF特性の減少を示す。図25(A)〜図25(C)は、それぞれ、照射エネルギー量100kWh/mのUV試験の後にDH試験を行った結果と、照射エネルギー量277kWh/mのUV試験の後にDH試験を行った結果とを合わせて示している。また、DH試験は、温度95℃、相対湿度95%の条件で行った。また、図25に記載されているUV100は、UV光の照射エネルギー量が100kWh/mのUV試験を意味し、UV277は、UV光の照射エネルギー量が277kWh/mのUV試験を意味する。ここで、照射エネルギー量100kWh/mのUV試験の後にDH試験を行った寿命時間は、DH試験のみを行った寿命時間に対して、その差が十分に無視できる程度に近いことを別途確認してある。
図25(A)及び図25(B)に示すように、改善したEVA(EVA2)と、一般的なEVA(EVA1)とについて、どちらもUV光による有意な寿命の短縮が観察された。具体的には、一般的なEVA(EVA1)において、UV光による劣化に基づいて短縮される寿命は50%程度であることが確認された。これに対し、改善したEVA(EVA2)においては、UV光による劣化に基づいて短縮される寿命は30%程度であることが確認された。ここで、一般的なEVA(EVA1)においても、改善したEVA(EVA2)においても、紫外線吸収剤UVAの添加量は同等である。
一方、図25(C)に示すように、紫外線吸収剤UVAが添加されていない改善したEVA(EVA3)においては、UV光による劣化に基づいて短縮される寿命は5%程度にとどまることが確認された。
上述の実験結果より、異なる3つのEVA(EVA1、EVA2、及びEVA3)のUV補正係数Ucは、次のようになった。すなわち、EVA1のUV補正係数Ucは約0.5になり、EVA2のUV補正係数Ucは約0.7になり、EVA3のUV補正係数Ucは約0.95になった。上述のように、EVA1は、紫外線吸収剤が添加された一般的なEVAに相当する。EVA1において、UV及び湿熱による劣化に基づく寿命の短縮が顕著であることがわかる。UV光の影響を無視できるほぼ湿熱ストレスのみによる寿命において、EVA1は、EVA2及びEVA3に対して、約3分の1の寿命となっている。このことから、UV光の影響がある実フィールドでのEVA1の寿命は、EVA2及びEVA3に対して、顕著に短くなるであろうことが推測できる。
EVAに添加される添加剤には、紫外線吸収剤UVA以外にも、EVA中に酸(酢酸など)を発生させるものがある。例えば、架橋剤などは、紫外線吸収剤UVAと同様に、UV光照射下でEVA中に酸(酢酸)を発生することが知られている。この場合も、上述したのと同様に、発生する酸の飽和傾向を確認することをもって所定のUV光の照射量を決定することができる。したがって、紫外線吸収剤UVA以外の場合でも、DH試験及びUVDH連続試験を含む実験を行うことにより得られる寿命までの時間の情報に基づいて、UV補正係数Ucを求めることができる。
以上説明したように、一実施形態に係る情報処理装置1は、上述した式(1)に従って、寿命ストレス指数B、年間ストレス指数A、湿度補正係数Hc、及びUV補正係数Ucに基づいて、PVモジュールの寿命年数Yを求めることができる。すなわち、一実施形態に係る情報処理装置1は、上述した式(1)に従って、フィールドにおけるUV及び/又は湿熱による劣化に基づくPVモジュールの寿命年数を求めることができる。
(UV補正係数Ucを用いない寿命予測)
上述のようにPVモジュールの寿命年数Yを算出する際に、UV補正係数Ucを用いずに算出することもできる。以下、UV補正係数Ucを用いずに行うPVモジュールの寿命年数Yの算出について説明する。
上述の式(1)に示したように、寿命年数Yは、(寿命ストレス指数B/年間ストレス指数A)×湿度補正係数Hc×UV補正係数Ucと表すことができる。ここで、寿命ストレス指数B及び年間ストレス指数Aは、湿熱によるストレス量を示す指数である。これら寿命ストレス指数B及び年間ストレス指数Aを、UV及び湿熱によるストレス量を示す指数に置き換えることよって、UV補正係数Ucを用いずにPVモジュールの寿命年数Yを算出することができる。この場合、寿命ストレス指数Bは、UV及び湿熱によるストレス量を示す「寿命ストレス指数Bu」に置き換えられてよい。また、年間ストレス指数Aは、UV及び湿熱によるストレス量を示す「年間ストレス指数Au」に置き換えられてよい。
この場合、寿命ストレス指数Bu及び年間ストレス指数Auの算出に用いる活性化エネルギーは、湿熱劣化の活性化エネルギーEaの代わりに、UV及び湿熱劣化の活性化エネルギーEauを用いてよい。また、UV及び湿熱劣化の活性化エネルギーEauは、2つ以上の温度条件におけるUVDH連続試験を行うことにより、式(3)を用いる場合と同様に算出されてよい。ここでいう温度条件は、UVDH連続試験におけるDH試験の温度条件である。
そして、寿命ストレス指数Buは、式(2)において、湿熱試験における寿命時間を示すτを、UVDH連続試験により得られる寿命までの時間を示すτUDに置き換えることによって算出されてよい。また、年間ストレス指数Auは、式(15)等を用いる場合と同様に、UV及び湿熱劣化の活性化エネルギーEauを用いることによって算出されてよい。
以上のようにして、上述した式(1)からUV補正係数Ucを除いても、PVモジュールの寿命年数Yが求まる。
後述のように、PVモジュールがフィールドに設置されてから3年〜5年程度の期間が経過すると、PVモジュールを劣化させる酸の発生のうち、UV光に曝されることに起因するものは、ほぼ飽和する。したがって、PVモジュールが3年〜5年程度のように充分な期間フィールドに設置されていれば、UV補正係数Ucを用いなくても、PVモジュールの寿命年数Yを実用的な精度で算出することができる。一方、PVモジュールがフィールドに設置されていた期間が3年〜5年程度に比べて短期間であると、PVモジュールを劣化させる酸の発生のうち、UV光に曝されることに起因するものは、まだ飽和していない。このような場合、UV補正係数Ucを用いることにより、PVモジュールの寿命年数Yをより正確に算出することができる。
以上説明したように、一実施形態に係る情報処理装置1によれば、PVモジュールの寿命を、良好な精度で簡便に予測することができる。したがって、一実施形態に係る情報処理装置1は、PVモジュールの劣化に基づく寿命の予測を合理的に、すなわち客観的な根拠に基づいて数値化できる。このため、一実施形態に係る情報処理装置1は、PVモジュールの長期信頼性に関る品質価値の評価に資する。
(グラフを用いた寿命予測)
次に、上述したPVモジュールの寿命年数Yを、より簡便に予測することについて説明する。
一実施形態に係る情報処理装置1によって、フィールドにおけるUV及び/又は湿熱による劣化に基づくPVモジュールの寿命を、グラフを用いて視覚的に予測してもよい。一実施形態において、例えば温度とPVモジュールの寿命との関係を示すグラフを用いて、PVモジュールの寿命を予測してもよい。このような予測を行うために、以下、フィールドにおける年間有効モジュール温度Tmp_effという概念について説明する。
上述のように、年間ストレス指数Aは、式(13)のように表現できる。式(13)において、総和区間は1日ごとに365日間とした。
ここで、フィールドにおける年間有効モジュール温度Tmp_effを、以下の式(47)のように定義する。
Tmp_eff=(−Ea/k)/ln{Σexp(−Ea/kTmp)/365} 式(47)
ここで、上述の式(11)より、1日におけるPVモジュールの最高温度Tmpは、1日における最高気温Tmax+ΔTである。また、総和区間は1日ごとに365日間とする。
式(47)を用いることにより、式(13)に示した年間ストレス指数Aは、以下の式(48)のように表現できる。
年間ストレス指数A=Heff・Σexp(−Ea/kTmp)
=Heff・365・exp(−Ea/kTmp_eff) 式(48)
実際のフィールドにおいて、モジュール温度は、年間を通して毎日異なり得る。しかしながら、年間有効モジュール温度Tmp_effの概念を導入することにより、年間を通して毎日異なり得る温度を、ただ一点のモジュール温度で代表することができる。一方、2つ以上の温度条件において行う湿熱試験の結果から、(湿度90%前後における)湿熱による劣化に基づく寿命の時間τと、温度Tmとの関係を、グラフに表現することができる。このとき、τとTmの関係は、式(2)に示した寿命ストレス指数Bを表す式に従う。
図26は、(相対湿度90%前後における)湿熱による劣化に基づく寿命の時間τと、温度Tmとの関係を示す図である。図26に示すグラフは、2つ以上の温度条件において行う湿熱試験の結果に基づいて表現したものである。図26において、ドットは、各温度条件で得られた実験結果を示す。図26のグラフにおいて、横軸はモジュール温度Tmを示し、縦軸は湿熱試験における寿命時間τを示す。モジュール温度Tmは、湿熱試験の場合、試験温度で与えることができる。モジュール温度Tmは、フィールド設置の場合、年間有効モジュール温度Tmp_effで与えることができる。以下で説明する図27、図32、図33、及び図34においても同様である。湿熱試験における寿命時間τは、PVモジュールのFF特性又はPm特性が初期値に比べて10%減少するまでの時間としてよい。図26は、Tmとτとの関係を示すことにより、湿熱による劣化に基づくPVモジュールの寿命を示す曲線を示している。以下、湿熱による劣化に基づくPVモジュールの寿命を示す曲線を、「寿命曲線」とも記す。
図26において、EVA1、EVA2、及びEVA3の寿命曲線をそれぞれ示してある。上述のように、EVA1は、一般的なEVAを使用した製品をサンプルとした(紫外線吸収剤の添加あり)。EVA2は、改善したEVAを使用したサンプルとした(紫外線吸収剤の添加あり)。EVA3は、改善したEVA2に対して、紫外線吸収剤が添加されていない改善したEVAを使用したサンプルとした。図26に示すように、いずれのサンプルにおいても、モジュール温度Tmが高くなるにつれて、寿命時間τは短くなる。
以下、年間有効モジュール温度Tmp_effを用いて寿命年数Yを求める手順について説明する。
まず、図26に示すようなグラフにおいて、Tmp_effの温度における垂線を引き、Tmとτとの関係を示す寿命曲線との交点を求める。その交点の縦軸における時間は、(湿度90%前後の仮想的な)フィールドにおける湿熱による劣化に基づく寿命時間τv[時間]を示している。
次に、寿命時間τv[時間]を、以下の式(49)を用いて、寿命年数Yv[年]に変換する。
寿命年数Yv[年]=寿命時間τv[時間]/Heff/365 式(49)
最後に、式(16)及び式(1)に示したように、寿命年数Yvに湿度補正及びUV補正をすることにより、寿命年数Yを求めることができる。
図26は、Tmp_effの具体例として、千葉及び沖縄のそれぞれの地域において、地上設置の場合及び住宅屋根置きの場合のおおよその目安となるTmp_effを示し、その温度における垂線を示す。以下説明する図27、図32、図33、及び図34においても同様である。
上述した手順では、寿命年数Yvを求めてから湿度補正及びUV補正をすることを想定して説明したが、この順序を逆にしてもよい。すなわち、図26に示したような寿命曲線に先に温度補正及びUV補正をしてから、Tmp_effの温度における垂線を引き、寿命曲線との交点を求めることにより、寿命時間τvを求めてもよい。
図27は、寿命曲線に湿度補正及びUV補正をした様子を示す図である。図27は、図26に示した寿命曲線に湿度補正及びUV補正をする前後の様子を示してある。図27において、EVA1、EVA2、及びEVA3の寿命曲線は、湿度補正及びUV補正をする前のものを示してある。図27において、EVA1、EVA2、及びEVA3の寿命曲線に湿度補正及びUV補正をした後の寿命曲線は、EVA1’、EVA2’及びEVA3’として示してある。図27に示すように、EVA1の寿命曲線に湿度補正及びUV補正を行うと、両補正がほぼ打ち消し合って、補正後の寿命時間は、補正前の寿命時間に近い値になる。また、EVA2の寿命曲線に湿度補正及びUV補正をしても、両補正がほぼ打ち消し合って、補正後の寿命時間は補正前の寿命時間に近い値となる。一方、EVA3は、紫外線吸収剤が添加されていないEVAを使用している。このため、EVA3の寿命曲線に湿度補正及びUV補正を行うと、湿度補正の影響が表面化するため、補正後の寿命時間は補正前に比べて有意に長くなる。
以上説明したように、一実施形態に係る情報処理装置1によれば、グラフを介することにより、PVモジュールの寿命をより簡便かつ視覚的に予測することができる。したがって、一実施形態に係る情報処理装置1は、PVモジュールの劣化に基づく寿命の予測を合理的に、すなわち客観的な根拠に基づいて数値化できる。このため、一実施形態に係る情報処理装置1は、PVモジュールの長期信頼性に関る品質価値の評価に資する。ここで、グラフ化は必須としなくてもよい。例えば、式(2)に示した寿命ストレス指数Bと式(47)に示したTmp_effの温度を用いて計算することで、(湿度90%前後の仮想的な)フィールドにおける湿熱による劣化に基づく寿命時間τv[時間]を算出して、上記した手続きで寿命年数Yを求めてもよい。
上述のTmp_effの見積もりにあたっては、Tmp_effと、Tmaxの年間平均値と、ΔTとの間の相関関係を、予め表やグラフなどの形で用意しておくこともできる。図28は、Tmp_effと、Tmaxの年間平均値と、ΔTとの間の相関関係の一例を、グラフで示す図である。図28のグラフにおいて、横軸は1日における最高温度Tmaxの年間平均値を示し、縦軸は年間有効モジュール温度Tmp_effを示す。このようなグラフに基づけば、Tmaxの年平均値と、ΔTとが与えられれば、Tmp_effの概算値を直ちに読み取ることができる。ΔTは、地上設置型のPVモジュールの場合に25℃を目安としてよく、住宅屋根置きのPVモジュールの場合に35℃を目安としてよい。このような算出により、上述した寿命の予測をさらに簡単に行うことができる。また、Tmaxの年間平均値は、フィールドの1日における最高気温を日別に1年分取得したものの平均値でもよく、フィールドの1日における最高気温の月平均を1年分取得したものの平均値であってもよい。
上述のように、Tmp_effは、目安となる概算値を簡単に求めたい場合、上述した図5のステップG1又は後述の式(47)とは異なるように定義されてもよい。すなわち、式(28)に示すように、Tmp_effとTmax年平均とは、exp(−Ea/kTmp)を介さずに、直接的に関連付けられてもよい。このように定義される場合、例えば式(28)におけるΔTとして、365日分のΔTの中央値、又は月平均のΔTの年間中央値を用いてよい。式(28)におけるΔTとして、仮に年平均のΔTを用いると、Tmp_effが過少評価される場合がある。このため、式(28)におけるΔTとして、年平均のΔTを用いるのは好ましくない。Tmp_effとして、より正確な値が必要である場合は、本来の定義である後述の式(47)で与えられる値を用いることができる。
(月別の気温情報を用いた寿命予測)
次に、上述したPVモジュールの寿命年数Yを、さらに簡便に予測することについて説明する。
上述の算出においては、年間365日の気温情報(1日における最高気温の情報)が必要である。ここで、月別の気温情報を用いて同様の算出ができれば、より簡便に寿命年数を予測することができる。月別の気温情報は、アクセスが非常に容易である。したがって、月別の気温情報を用いて寿命の予測ができれば、その算出を簡素に行うことができる。
出願人は、月別の気温情報として、1日における最高気温の月平均値データ(Tmax_月平均)を用いれば、式(12)などに示したHeffとの整合性が良好であることを見出した。このようにすれば、式(13)に示した年間ストレス指数Aは、Heffをそのまま利用して、以下の式(50)のように算出することができる。
年間ストレス指数A≒Heff・Σ{exp(−Ea/kTmp_月)×月日数} 式(50)
ここで、総和区間は1月ごとに12か月間とする。月日数は、月ごとの日数であり、例えば1月は31日、2月は28日、3月は31日、4月は30日などの値を与えることができる。また、式(50)において、kTmp_月は、以下の式(51)のように定義することができる。
Tmp_月=Tmax_月平均+ΔT 式(51)
月別の気温情報として、ひと月における最高気温のデータもアクセスしやすい情報である。しかしながら、出願人は、ひと月における最高気温のデータを用いると、寿命年数の予測をさらに簡便にすることは困難になることを確かめた。ひと月における最高気温のデータを用いると、上述のHeffとの整合性がとれなくなり、Heffをそのまま用いて算出することができなくなる。
また、出願人は、月別の気温情報を用いた寿命の予測の精度について検証を行った。すなわち、出願人は、1日におけるデータを用いて年間ストレス指数Aを算出した。また、出願人は、ひと月におけるデータを用いて年間ストレス指数Aを算出した。その結果、出願人は、両者の誤差がおよそ5%以内であることを確認した。
以上説明したように、一実施形態に係る情報処理装置1によれば、月別の気温情報のみを使っても、年間ストレス指数Aを十分な精度で予測することができる。このため、一実施形態に係る情報処理装置1によれば、前述した寿命ストレス指数B、湿度補正係数Hc、UV補正係数Ucを用いて、PVモジュールの寿命を実用的な精度でより簡便に予測することができる。したがって、一実施形態に係る情報処理装置1は、PVモジュールの劣化に基づく寿命の予測を合理的に、すなわち客観的な根拠に基づいて数値化できる。このため、一実施形態に係る情報処理装置1は、PVモジュールの長期信頼性に関る品質価値の評価に資する。
(年間の有効発電日率による補正)
必要に応じて、上述の寿命年数Yは、年間の有効発電日率を用いて、以下の式(52)のように補正することができる。
補正後の寿命年数Y=補正前の寿命年数Y/年間の有効発電日率 式(52)
ここで年間の有効発電日率とは、1年間の365日のうち、PVモジュールが有効に発電できる日数の割合である。例えば、雨天でPVモジュールがほとんど発電しない日は有効発電日からは除外される。この割合については、曇天の日は晴れの日の発電量を基準にして、曇天日の発電量/晴天日の発電量を、曇天日の1日の有効日数(0〜1の間の値)としてカウントする。この補正は、熱帯地帯など雨季があるような地域において特に有用である。
(回収品の試験による寿命予測)
次に、フィールドにおけるPVモジュールの回収品に対してさらに加速試験を行うことによる寿命の予測について説明する。以下説明する寿命の予測は、上述した寿命の予測とは独立して行ってよい。以下説明する寿命の予測においては、フィールドにおけるPVモジュールの回収品に対してさらに加速試験を行って、当該PVモジュールの残存する寿命時間を求めることによって、フィールドでの寿命予測を行う。
フィールドにおける回収品に対してさらに加速試験を行った結果から寿命を予測する方法自体は、従来既知である。しかしながら、上述したように、PVモジュールの劣化を生じさせる要因は単一ではない。PVモジュールの寿命の予測においては、UVストレスに起因する劣化と、湿熱ストレスに起因する劣化の両者を考慮する必要がある。この場合、従来既知の方法では寿命予測はできない。したがって、UVストレスに起因する劣化と湿熱ストレスに起因する劣化の両者を考慮する場合、従来既知の方法からさらに発展させた方法にて寿命予測を行う必要がある。
以下説明する寿命の予測においては、フィールドに設置されていたPVモジュールを回収して追加試験を行う。
(UV光の影響がない場合の寿命予測方法)
まず、UV光の影響が無いPVモジュールの寿命を予測する場合について、図29を用いて説明する。これは、紫外線吸収剤UVAを含まないEVAを使用したPVモジュールの寿命を予測する場合を想定している。この寿命予測は従来既知の考え方で対応できる。
回収品の追加試験による寿命予測においては、まず、回収品とほぼ同一仕様とみなせる新品のPVモジュール(初期品)に対して湿熱試験を行う。例えば、温度95℃湿度95%の湿熱試験(DH試験)を行った結果、初期品はα[時間]で寿命を迎えたとする。ここで、寿命とは、上述のように、PVモジュールの出力の特性が急激に低減した時点までの時間としてよい。図29に示す(1)は、初期品に対してα[時間]のDH試験を行った結果、PVモジュールが寿命を迎えるまでのストレス量を、横方向の長さによって示している。
次に、あるフィールドにX[年]設置されていたPVモジュールを回収したとする。そして、回収されたPVモジュール(回収品)に対して、温度95℃湿度95%の湿熱試験(上述同様のDH試験)を行う。その結果、回収品はβ[時間]で寿命を迎えたとする。図29に示す(2)は、回収品に対してβ[時間]のDH試験を行った結果、PVモジュールが寿命を迎えるまでのストレス量を、横方向の長さによって示している。
以上の結果から、図29に示す(3)(=(1)−(2))は、そのフィールドにX[年]設置されていたことによるストレス量を、横方向の長さによって示していることになる。すなわち、初期品に対してα[時間]のDH試験を行ったストレス量は、回収品がフィールドにX[年]設置されたことによるストレス量と、回収品に対してβ[時間]のDH試験を行ったストレス量との和と等価であると考えられる。したがって、あるPVモジュールがそのフィールドにX[年]設置されたことによるストレス量は、そのPVモジュールに対して(α−β)[時間]のDH試験を行ったことによるストレス量と等価であると考えることができる。
この場合、初期品をそのフィールドに設置した場合に予測される寿命年数Yp[年]は、以下の式(53)のように示すことができる。
Yp[年]=(X[年]/(α−β))×α 式(53)
このようにして、一実施形態に係る情報処理装置1は、あるPVモジュールをあるフィールドに当初から設置した場合における寿命年数Yp[年]を求めることができる。
(UV光の影響がある場合の寿命予測方法)
次に、UV光の影響を考慮したPVモジュールの寿命を予測する場合について、図30を用いて説明する。これは、紫外線吸収剤UVAが添加されたEVAを使用したPVモジュールの寿命を予測する場合などを想定している。この寿命予測は、従来既知の考え方では対応できず、さらに発展させた考え方で対応する必要がある。
この場合も、回収品の追加試験による寿命予測において、まず、回収品とほぼ同一仕様とみなせる新品のPVモジュール(初期品)に対して湿熱試験を行う。例えば、温度95℃湿度95%の湿熱試験(DH試験)を行った結果、初期品はα[時間]で寿命を迎えたとする。ここで、寿命とは、上述のように、PVモジュールの出力の特性が急激に低減した時点までの時間としてよい。図30に示す(1)は、初期品に対してα[時間]のDH試験を行った結果、PVモジュールが寿命を迎えるまでのストレス量を、横方向の長さによって示している。
次に、あるフィールドにX[年]設置されていたPVモジュールを回収したとする。そして、回収されたPVモジュール(回収品)に対して、温度95℃湿度95%の湿熱試験(上述同様のDH試験)を行う。その結果、回収品はβ[時間]で寿命を迎えたとする。図30に示す(2)は、回収品に対してβ[時間]のDH試験を行った結果、PVモジュールが寿命を迎えるまでのストレス量を、横方向の長さによって示している。
以上の結果から、図30に示す(3)(=(1)−(2))は、そのフィールドにX[年]設置されていたことによるストレス量を、横方向の長さによって示していることになる。すなわち、初期品に対してα[時間]のDH試験を行ったストレス量は、回収品がフィールドにX[年]設置されたことによるストレス量と、回収品に対してβ[時間]のDH試験を行ったストレス量との和と等価であると考えられる。したがって、あるPVモジュールがそのフィールドにX[年]設置されたことによるストレス量は、そのPVモジュールに対して(α−β)[時間]のDH試験を行ったことによるストレス量と等価であると考えることができる。
次に、回収品とほぼ同一仕様とみなせる新品のPVモジュール(初期品)に対して、UV照射試験(UV試験)を行い、さらに温度95℃湿度95%の湿熱試験(DH試験)を行う。このような連続した試験(UVDH連続試験)を、複合シーケンシャル試験とも称する。ここで、UV照射のエネルギー量は、そのフィールドでUV光に曝されることによって発生する酢酸の発生量がほぼ飽和すると想定されるエネルギーに相当する量としてよい。ここで、フィールドでのUV光に曝されて発生する酢酸がほぼ飽和するまでの期間を有効UVストレス年数として、Z[年]で表す。
UV試験におけるUV照射のエネルギー量は、例えば250〜300kWh/mとしてよい。これは、国内のフィールドにおける約3年分のUV照射エネルギーに相当するエネルギー量である。この場合、フィールドにおける約3年分のUV照射のエネルギーによって、UV光に起因する酢酸の発生は飽和するという事実を、例えば他の実験などによって既知であるものとする。他の実験とは、例えば図31に示すように、UV光の照射エネルギー量に対するEVA中の酢酸濃度を分析する実験などとしてよい。
図31は、UV光の照射エネルギー量に対するEVA中の酢酸濃度(より正確には酢酸イオン濃度[CHCOO])を分析した実験の結果の一例を示す図である。図31においては、EVA2(紫外線吸収剤の添加ありの改善されたEVA)を用いたモジュール、EVA3(紫外線吸収剤の添加なしの改善されたEVA)を用いたモジュール、及びEVA2と同等仕様のEVAを用いたフィールド回収品(フィールドにおいて回収されたモジュール)について分析した結果を示している。
以上のようなUVDH試験の結果、DH試験(UV試験に続けて行った)によって、初期品は、γ[時間]で寿命を迎えたとする。図30に示す(4)は、初期品に対して、UV試験を行った後、γ[時間]のDH試験を行った結果、PVモジュールが寿命を迎えるまでのストレス量を、横方向の長さによって示している。
以上の結果から、図30に示す(5)(=(1)−(4))は、初期品にフィールドにおいてZ[年]分のUV試験を行ったストレス量を示していることになる。すなわち、初期品にフィールドにおいてZ[年]分のUV試験を行ったストレス量(5)は、そのPVモジュールに対して(α−γ)[時間]のDH試験を行ったことによるストレス量と等価であると考えることができる。つまり、この(α−γ)[時間]は、UVに起因するストレス量を、それと等価なストレス量を与えるDH試験の時間に換算して表したものである。
ここで、初期品がフィールドにおいてZ[年]年間UV光に曝されると、UV光に起因する酢酸の発生が飽和することは既知であるものとする。このため、回収品としては、フィールドでの設置年数をX[年]とするとき、X>Zを満たすPVモジュールを使用する必要があることに注意する。
ところで、図30に示す(3)のストレス量、すなわちフィールドにX[年]設置された回収品のストレス量は、UVに起因するストレス量と、湿熱に起因するストレス量とを含むものと想定される。すなわち、図30に示す(3)は、図30に示すUVのストレス量(6)と、図30に示す湿熱のストレス量(7)との和に相当するものと考えることができる。上述のように、フィールドにおけるUVのストレス量(6)を、それと等価なストレス量を与えるDH試験の時間に換算して表すと、(α−γ)[時間]と表すことができる。一方、フィールドにおける湿熱のストレス量(7)をDH試験の時間に換算して表すと、(γ−β)[時間]と表すことができる。
以上の結果から、あるPVモジュールがそのフィールドにX[年]設置されたことによる湿熱のストレス量は、そのPVモジュールに対して(γ−β)[時間]のDH試験を行ったことによるストレス量と等価であると考えることができる。
この場合、初期品をそのフィールドに設置した場合のUV及び湿熱のストレスによる劣化に基づく寿命年数Yp[年]は、以下の式(54)のように予測することができる。
Yp[年]=(X[年]/(γ−β))×γ 式(54)
このようにして、一実施形態に係る情報処理装置1は、あるPVモジュールをあるフィールドに当初から設置した場合における寿命年数Yp[年]を、UV光の影響も考慮して求めることができる。
また、UV補正係数Uc=γ/αなので、寿命年数Ypは、Ucを使って以下の式(55)のように表すこともできる。
寿命年数Yp[年]=X[年]/(1−β/(Uc×α)) 式(55)
(有効UVストレス年数Zを考慮した寿命予測)
上述の予測では、初期品に対してUV光を照射する実験から得られるUV光の照射エネルギー量とUV光に起因する酢酸の発生量との関係から、フィールドにおいてZ年間分のUV光が照射されると、UV光に起因する酢酸の発生量がほぼ飽和することを既知とした。また、上述のUVDH連続試験を用いた寿命予測においては、湿熱ストレスを加える前に、一度に所定量のUV照射エネルギーを加えて試験を行うことで、UV補正係数Ucを算出している。つまり、UVDH連続試験では、フィールドにおけるZ年間相当の所定のUV光エネルギーによって十分に酢酸が発生した状態を予め形成しておき、その後、湿熱ストレスが加わることによって、酢酸濃度が指数関数的に増大していく状況となっている。これは、実際にフィールドで起こる状況とは異なる状況である。すなわち、実際のフィールドでは、一度にZ年間相当のUV光エネルギーが与えられることはなく、Z年間を通して、気象条件に依存しつつ、1日ごとに所定量以下のUV光エネルギーが与えられる。
ところで、EVA中の酢酸濃度が指数関数的に増大する理由は、酢酸の一部が電離して放出された水素イオンが、EVAの加水分解反応(酢酸発生反応)を促進する触媒として働くことによる。言い換えれば、酢酸濃度が指数関数的に増大する理由は、既に存在している酢酸自体が次に発生する酢酸の増加速度を増大させる作用があることによる(この現象は、酸触媒加水分解反応として知られている)。つまり、その瞬間に存在している酢酸濃度が、その瞬間の酢酸の増加速度を決定づけている。
以上のことを踏まえると、UVDH連続試験においては、最初にZ年間相当の所定量のUV光エネルギーを照射しているため、Z年間分のUV光エネルギー量に対応したUV光起因の酢酸がEVA中に既に大量に発生している。湿熱ストレス下におけるEVAの加水分解による酢酸の増加速度は、上記したように、既に存在している酢酸濃度に依存する。このため、Z年間分のUV光エネルギーを受けた後におけるDH試験におけるEVA中の酢酸濃度の増加速度は、UV光照射のないDH単体試験での増加速度よりも、格段に速くなる。
一方、実際のフィールドで起こっていることは、気象条件によって多少変動はするが、UV光ストレス及び湿熱ストレスが、毎日、そしてほぼ同時に、PVモジュールに加えられている、という状況である。
ここで、仮に、UVDH連続試験に対して、UV試験、DH試験、UV試験、DH試験と順次繰り返すようにして、UV試験とDH試験との試験時間を短くし、これらをサイクル試験の形で連続して行うUVDH連続サイクル試験を想定する。ただし、トータルのUV試験時間、及びトータルのDH試験時間は、サイクル数を変えても不変に保つこととする。
ここで、湿熱ストレス下でのEVAの加水分解反応による酢酸発生は、酸触媒加水分解反応によるものである。また、酢酸の増加速度は、その時点で存在する酢酸濃度に比例する形で大きくなる。以上を踏まえると、UVDH連続サイクル試験における酢酸濃度の増加速度は、UVDH連続試験における酢酸濃度の増加速度よりも遅くなることが理解できる。UVDH連続試験においては、最初にZ年間相当の大量のUV光エネルギーが加えられ、大量のUV光起因の酢酸が発生して、大量の酢酸が存在する湿熱ストレス下において、酸触媒加水分解反応が進む。これに対し、UVDH連続サイクル試験においては、サイクル数の少ない段階ほど(サイクル試験の初期の段階ほど)UV光起因の酢酸発生量が少なく、湿熱ストレスが加えられても酸触媒加水分解反応の進行が進みにくい。
要するに、UVDH連続試験では、DH試験中の酸触媒加水分解反応の効率が相対的に高く、UVDH連続サイクル試験では、DH試験中の酸触媒加水分解反応の効率が相対的に低い。実際のフィールドで起こっていることは、上記したUVDH連続サイクル試験のサイクル間隔を無限小にしていった極限と考えることができる。その場合、UVDH連続試験におけるDH試験中の酸触媒加水分解反応の効率に比べて、実際のフィールドを想定したUVDH連続サイクル試験でのDH試験中の酸触媒加水分解反応の効率が低いことは明らかである。すなわち、UVDH連続試験よりも、実際のフィールドを想定したUVDH連続サイクル試験の方が、同じ酢酸濃度に到達するまでの時間が長くなる。
以上の説明から、UVDH連続試験の結果に基づいて、フィールド回収品の寿命を算出する方法は、実際よりも寿命を短く見積もる傾向にあることが理解できる。その見積もり誤差は、最大でZ年程度とみることができる。そこで、以下の式(56)のようにして、より正確なフィールドにおけるUV及び湿熱による劣化に起因する寿命年数Yp’を求めてもよい。ここで、Zを有効UVストレス年数と称する。
寿命年数Yp’[年]=Yp+Z 式(56)
(Yp、Yp’の実例)
以下、実際にフィールドに設置されたPVモジュールを回収して、さらに湿熱試験にかけた結果の例を示す。ここでは、沖縄地域に設置されたPVモジュールを回収して、さらに湿熱試験を行った。また、回収してさらに湿熱試験を行ったPVモジュールは、一般的なEVAを使用したものと、改善したEVAを使用したものとが存在した。
上述のようにPVモジュールを回収して、さらに湿熱試験を行うことにより、以下のような結果が得られた。すなわち、一般的なEVAを使用したPVモジュールの寿命Ypは、10〜15年程度(有効ストレス年数Zの補正を加えると、13〜18年程度)と予測された。一方、改善したEVAを使用したPVモジュールの寿命Ypは、40〜50年程度(Zの補正を加えると、43〜53年程度)と予測された。ここで、回収されたPVモジュールのフィールドにおける年間有効モジュール温度Tmp_effは、沖縄地域の年間の気温情報、及びPVモジュールの設置態様の情報などに基づいて、57〜60℃程度と推定された(ΔT≒30〜33℃)。
図32、図33、及び図34は、フィールド回収品について以上のようにして得られた情報(Tmp_eff及び寿命年数Yp又はYp’)を、湿熱による劣化に基づく寿命の時間と温度との関係(寿命曲線)を示したグラフに追加でプロットした結果の例を示す図である。図32、図33、及び図34のグラフにおいて、横軸はモジュール温度Tmを示し、縦軸は湿熱試験における寿命時間τを示す。ここで、モジュール温度Tmは、湿熱試験の場合、試験温度で与えることができ、フィールド設置の場合、年間有効モジュール温度Tmp_effで与えることができる。寿命年数Yp[年]又はYp’[年]を寿命時間τ[h]に変換する際には、式(49)に示した場合と同様に、Heffを媒介にして変換した(以下、「寿命時間」を単に「寿命」とも記す)。ここで、「沖縄1」のドットは、一般的なEVA(EVA1に相当するEVA)を使用したPVモジュールの寿命であり、「沖縄2」のドットは、改善したEVA(EVA2に相当するEVA)を使用したPVモジュールの寿命である。
図32において、EVA1及びEVA2の寿命曲線は、湿度補正及びUV補正をする前のものであり、EVA1’’及びEVA2’’の寿命曲線は、UV補正のみをした後のものを示してある。図33において、EVA1’及びEVA2’の寿命曲線は、湿度補正係数の上限の目安(EVA1’の湿度補正係数は2.2、EVA2’の湿度補正係数は1.6)で湿度補正及びUV補正をした後のものである。また、図33において、EVA1’(min)及びEVA2’(min)の寿命曲線は、湿度補正係数の下限の目安(EVA1’(min)の湿度補正係数は1.2、EVA2’(min)の湿度補正係数は1.1)で湿度補正及びUV補正をした後のものを示してある。図34は、図33に示したグラフにおいて、沖縄1及び沖縄2のドットを沖縄1+Z及び沖縄2+Zに置き換えた結果を示してある。ここで、沖縄1+Zは、一般的なEVAを使用したPVモジュールの寿命年数Yp[年]に有効UVストレス年数Zを3年加えて得た寿命年数Yp’[年]を寿命時間τ[h]に変換してプロットしたものである。また、沖縄2+Zは、改善したEVAを使用したPVモジュールの寿命年数Yp[年]に有効UVストレス年数Zを3年加えて得た寿命年数Yp’[年]を寿命時間τ[h]に変換してプロットしたものである。
(フィールドにおける回収品のみを用いた寿命予測)
次に、PVモジュールの寿命を、新品のPVモジュール(初期品)を使わずに、フィールドに設置されていたPVモジュールの回収品のみを用いて予測する方法について説明する。この方法によれば、PVモジュールの初期品を必要とせずにPVモジュールの寿命を予測できるため、さらに汎用性の高い寿命予測を実現することができる。
フィールドから回収されたPVモジュール(フィールド回収品)のみを用いて寿命を予測するためには、まず、同一のフィールドから回収された少なくとも2つ(2つ以上)のPVモジュールを用意する。
ここで、回収された複数のPVモジュールについては、例えば以下のような条件を満たす必要がある。
(1)複数のPVモジュールの仕様(例えば型式又は使用部材の仕様など)が同一であること
(2)複数のPVモジュールが同一のフィールドに設置された時期が同一であること
(3)複数のPVモジュールが同一のフィールドに設置された期間が同一であること
(4)複数のPVモジュールが同一のフィールドに設置された形態(又は状況)が同一であること
以上の各条件において、「同一」とは、厳密な意味で同一でなくとも、ほぼ同一とみなせる場合を含めてもよい。要するに、回収された複数のPVモジュールについては、同一仕様の(又は同一仕様とみなせる)複数のPVモジュールが、同一の(又は同一とみなせる)環境条件で使用された履歴があることが必要になる。
ここで、PVモジュールがフィールドに設置された期間については、3年以上であることが望ましく、より好ましくは5年以上であることが望ましい。フィールドに設置された期間が3年以上、より好ましくは5年以上であれば、前述したUV光に起因した酢酸の発生は、ほぼ飽和しているとみなすことができる。すなわち、このような状態にあるPVモジュールは、UV光に起因した寿命短縮の影響が最大になっている状態にある。言い換えれば、このような状態に至った後、PVモジュールにおいて酢酸濃度が増加するのは、主として、外気からEVA封止材の中に浸入した水分に起因して、EVAの加水分解反応が起こることによる。フィールドから回収されたPVモジュールが前述のような状態になっていれば、当該PVモジュールにおいて、UV光による寿命短縮の影響は、既に最大となっている。したがって、そのようなPVモジュールについては、以下説明するように、UV補正係数Ucを用いずに寿命予測を行うことができる。一方、フィールドに設置された期間が3年未満であるPVモジュールを回収して用いる場合は、以下説明する寿命予測を行うと、寿命を長めに評価する傾向になる。このような場合には、上述のように、UV補正係数Ucを用いることにより、PVモジュールの寿命を正確に算出することができる。
図35は、フィールドにおける回収品のみを用いた寿命予測のロジックフローを例示する図である。図35は、上述した図4と同様に、一実施形態に係る情報処理装置1が寿命予測を行う際のロジックの流れを概略的に示す。図35に示すように、一実施形態に係る情報処理装置1は、以下のロジックの流れに基づいて、寿命予測を行ってよい。
フィールドから回収されたPVモジュール(フィールド回収品)のみを用いて寿命を予測するためには、上述のように、同一のフィールドから回収された少なくとも2つ以上のPVモジュールを用意する。そして、同一のフィールドから回収された少なくとも2つ以上のPVモジュールを、2つ以上のグループに分ける。以下、フィールドから回収されたPVモジュールを2つ用意して、回収品をグループ1及びグループ2にそれぞれひとつずつ分けた場合について説明する。ここで、1つのグループに複数の回収品がある場合、以下説明する回収品に関する結果の情報(残存寿命時間)について、平均をとればよい。また、3つ以上のグループに分ける場合、以下説明する湿熱劣化の活性化エネルギーEaを求める際に、最小二乗法を用いればよい。
図35に示すロジックフローが開始すると、ステップS1に示すように、情報処理装置1の制御部10は、フィールドの1日における最高気温Tmaxを取得する。ステップS1は、図4に示したステップS1と同様に行ってよい。
図35のステップS2に示すように、制御部10は、ΔT(モジュール最高温度Tmpと最高気温Tmaxとの温度差)を取得する。ステップS1は、図4に示したステップS2と同様に行ってよい。
図35のステップS3に示すように、制御部10は、フィールドの1日におけるPVモジュールの最高温度Tmp(=Tmax+ΔT)を算出する。ステップS3は、図4に示したステップS3と同様に行ってよい。
図35のステップS4に示すように、制御部10は、年間を通して汎用できる1日当たりの有効ストレス時間Heffを取得する。ステップS4は、図4に示したステップS4と同様に行ってよい。
図35のステップS5に示すように、制御部10は、湿熱劣化の活性化エネルギーEaを取得する。湿熱劣化の活性化エネルギーEaは、以下のようにして取得することができる。
まず、フィールドから回収されてグループ1及びグループ2に分けられたPVモジュールは、それぞれ異なる条件の加速試験に投入されてよい。すなわち、グループ1の回収品に対しては、例えば温度T1で相対湿度(RH)H0の湿熱試験を行ってよい。一方、グループ2の回収品に対しては、例えば温度T2で相対湿度(RH)H0の湿熱試験を行ってよい。ここで、温度T1及び温度T2は、例えば85℃〜95℃程度の範囲の温度から採用してよい。具体的には、T1=85℃として、T2=95℃のとするように設定してもよい。また、相対湿度(RH)H0として、85%〜95%程度の範囲の湿度から採用してよい。具体的には、H0=95%とするように設定してもよい。
この湿熱試験は、フィールドから回収されたPVモジュールが寿命に至るまで行われてよい。この結果、試験の開始時点から寿命に至る時点までの時間が取得される。この時間を、残存寿命時間τとする。すなわち、グループ1のPVモジュールについて、残存寿命時間τ1が得られる。一方、グループ2のPVモジュールについて、残存寿命時間τ2が得られる。
湿熱劣化の活性化エネルギーEaは、上記で得られた情報を用いて、上述した式(3)から算出することができる。以下、式(3)を再掲する。ここで、温度T1及び温度T2は、絶対温度[K]で表した値である。
exp(−Ea/kT1)×τ1=exp(−Ea/kT2)×τ2 式(3)
式(3)をEaについて解くと、以下の式(57)が得られる。
Ea=k・ln(τ1/τ2)・(1/T1−1/T2)−1 式(57)
次に、図35のステップS21に示すように、制御部10は、湿度補正係数Hcを取得する。ステップS21は、図4に示したステップS9と同様に行ってよい。
次に、図35のステップS22に示すように、制御部10は、フィールドから回収されたPVモジュールの年間ストレス指数Ahを取得する。年間ストレス指数Ahは、前記した年間ストレス指数Aに対して、湿度補正係数Hcを考慮したものである。
フィールドから回収されたPVモジュールは、設置されていたフィールドの環境における温度及び湿度のストレスを受けている。このため、回収されたPVモジュールのフィールドにおける温度及び湿度の両方が反映された年間ストレス指数Ahを求める際は、フィールドでの温度情報及びフィールドでの湿度情報の双方を考慮する必要がある。この場合、温度情報として、フィールドに設置されたPVモジュールの1日ごとに異なるPVモジュールの最高温度Tmpを用いてよい。一方、温度情報として、フィールドに設置されたPVモジュールの年間有効モジュール温度Tmp_effを用いてもよい。また、湿度情報として、湿度補正係数Hcを適用してよい。PVモジュールが設置されていたフィールドと異なるフィールドにPVモジュールを設置する場合は、新たに設置されるフィールドにおける温度情報及び湿度情報の双方を考慮して、年間ストレス指数Ahを求めればよい。
以上から、フィールドから回収されたPVモジュールの年間ストレス指数Ahは、以下の式(58)のように表すことができる。以下、フィールドから回収されたPVモジュールの年間ストレス指数Ahは、適宜、単に「年間ストレス指数Ah」と記す。
年間ストレス指数Ah=Σexp(−Ea/kTmp)×Heff/Hc 式(58)
ここで、総和区間は365日とする。
また、年間ストレス指数Ahは、以下の式(59)のように表すこともできる。
年間ストレス指数Ah=exp(−Ea/kTmp_eff)×Heff×365/Hc 式(59)
ここで、Heffは、年間で汎用して用いることができる一日あたりの有効ストレス時間である。また、Tmp_effは、上述のように、1日ごとの最高気温Tmaxの年間平均値とΔTとの間の相関関係から概算してもよい。
次に、図35のステップS23に示すように、制御部10は、残存寿命ストレス指数Brを取得する。
ステップS23において取得される残存寿命ストレス指数Brは、フィールドから回収されたPVモジュールの残存寿命を全て消耗するのに必要なストレス量に対応した情報である。これは、以下の式(60)のように表すことができる。
Br=exp(−Ea/kTm)×τ 式(60)
ここで、Tmは回収されたPVモジュールについて行われる加速試験における試験温度(絶対温度[K]単位)であり、τはその加速試験において得られる寿命時間([h]単位)である。
式(60)において、Brを求める際は、Tm及びτについて、T1及びτ1の組を用いてもよいし、T2及びτ2の組を用いてもよい。どちらの組の情報を用いても、同一のBrが得られる。
次に、図35のステップS24に示すように、制御部10は、残存寿命年数Yrを算出する。残存寿命年数Yrは、回収されたPVモジュールが仮にそのまま当該フィールドに設置され続けたとした場合に、回収された時点から寿命に至るまでの年数を表す。これは、残存寿命ストレス指数Brと年間ストレス指数Ahとを用いて、以下の式(61)のように表すことができる。
残存寿命年数Yr=Br/Ah 式(61)
次に、図35のステップS25に示すように、制御部10は、寿命年数Ypを算出してよい。当該PVモジュールが当該フィールドに設置されてから寿命に至るまでの寿命年数Ypは、フィールドに設置された年数Xを残存寿命年数Yrに加えて、以下の式(62)のように表すことができる。
寿命年数Yp=X+Yr 式(62)
ここで、設置されていたフィールドから回収されたPVモジュールが、設置されていたフィールドとは異なる他のフィールドに設置される場合について述べる。このような場合、PVモジュールが仮に最初から他のフィールドに設置されていたとした場合の寿命年数Ypは、以下の式(63)のように表すことができる。
寿命年数Yp=X×(Ah_bf/Ah_af)+Yr 式(63)
ここで、Xは、回収されたPVモジュールが設置されていたフィールドにおけるPVモジュールの設置年数である。また、Ah_bfは、回収されたPVモジュールが設置されていたフィールドにおける年間ストレス指数であり、Ah_afは、PVモジュールが設置される他のフィールドにおける年間ストレス指数である。また、Yrは、式(61)においてAhをAh_afで置き換えることで得られる。
以上から、新品のPVモジュール(初期品)を必要とせずに、フィールドにおける(設置されたフィールドから回収された)PVモジュールの寿命年数Ypを、フィールド回収品のみを用いて算出できることが示された。
以下、上述したような算出、すなわちフィールドにおける回収品のみを用いた寿命予測を、一実施形態に係る情報処理装置1において実施する例について、さらに説明する。
上述のように、一実施形態に係る情報処理装置1において、制御部10は、入力部20及び/又は通信部40から取得する各種の情報の入力に基づいて、各種の演算を行うことができる。また、一実施形態に係る情報処理装置1において、制御部10は、各種の演算の結果を、出力部30及び/又は通信部40から出力することができる。したがって、一実施形態に係る情報処理装置1は、必要な各種の情報の入力に基づいて、各種の結果情報を出力することができる。
より具体的には、一実施形態に係る情報処理装置1は、第1情報及び第2情報の入力に基づいて、結果情報を出力してよい。ここで、第1情報は、例えば上述した残存寿命ストレス指数Br(図35のステップS23)のように、太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能な期間の途中の時点から満了時までに受ける湿熱によるストレス量を表す情報としてよい。また、第2情報は、例えば上述した年間ストレス指数Ah(図35のステップS22)のように、太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおいて太陽電池モジュールが所定時間当たりに受ける湿熱によるストレス量を表す情報としてよい。また、結果情報は、例えば上述した残存寿命年数Yr(図35のステップS24)のように、太陽電池モジュールがフィールドに設置される場合に太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能と想定される残り期間に関する情報としてよい。
また、第1情報は、太陽電池モジュールが受ける紫外線によるストレスに起因する酸の発生が所定の飽和度に達した後に所定の期間が経過した時点から、太陽電池モジュールが受ける湿熱によるストレス量を表す情報としてもよい。さらに、第1情報は、上述の時点から、太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能な期間の満了時までに受ける湿熱によるストレス量を表す情報としてもよい。例えば、第1情報は、図30に示すストレス量(2)の領域の少なくとも一部に相当するストレス量を表す情報としてもよい。この場合、「太陽電池モジュールが受ける紫外線によるストレスに起因する酸の発生が所定の飽和度に達した後に所定の期間が経過した時点」とは、例えば、太陽電池モジュールが設置されたフィールドから太陽電池モジュールが回収された時点としてもよい。
また、第1情報及び/又は第2情報は、例えばフィールドから回収された太陽電池モジュールについて2以上の温度条件において行われる湿熱試験の結果から得られる湿熱劣化の活性化エネルギーEa(図35のステップS5)に基づいて生成されてもよい。
また、第2情報は、例えば湿度補正係数Hcを示す情報のように、太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおける湿度の情報及びフィールドから回収された太陽電池モジュールについて2以上の湿熱試験における湿度の情報に基づいて生成されてもよい。ここで、湿度補正係数Hcは、図35のステップS21(又は図4のステップS9)において説明したようにして取得してよい。
また、第2情報は、例えばTmp(図35のステップS3)を示す情報のように、太陽電池モジュールが設置されるフィールドの1日における太陽電池モジュールの最高温度に関する情報に基づいて生成されてもよい。
さらに、第2情報は、例えばHeff(図35のステップS4)又はheffのように、太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおいて太陽電池モジュールが湿熱によるストレスを受ける1日当たりの時間を表す情報に基づいて生成されてもよい。ここで、「太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおいて太陽電池モジュールが湿熱によるストレスを受ける1日当たりの時間を表す情報」は、例えば、年間において一定値を表す情報としてもよい。
また、第2情報は、例えば年間ストレス指数Ah(図35のステップS22)のように、太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおいて太陽電池モジュールが1年間当たりに受ける湿熱によるストレス量を表す情報としてもよい。
一実施形態に係る情報処理装置1は、結果情報として、例えば図35のステップS25において説明したYpのような情報を出力してもよい。すなわち、情報処理装置1は、太陽電池モジュールがフィールドに設置される場合に太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能と想定される残り期間に、太陽電池モジュールがフィールドに設置されてから回収される時点までの期間を加算して出力してもよい。ここで、「太陽電池モジュールがフィールドに設置される場合に太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能と想定される残り期間」とは、例えば上述した残存寿命年数Yr(図35のステップS24)としてよい。また、「太陽電池モジュールがフィールドに設置されてから回収される時点までの期間」とは、例えば図35のステップS25に示すように、フィールドにおける設置年数Xとしてよい。
上述した実施形態は、情報処理装置1としての実施のみに限定されない。例えば、上述した実施形態は、情報処理装置1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、情報処理装置1のような機器が実行するプログラムとして実施してもよい。
以上説明したように、上述の方法によれば、PVモジュールの初期品を必要とせずにPVモジュールの寿命を予測できる。このため、一実施形態に係る情報処理装置1によれば、PVモジュールについて、さらに汎用性の高い寿命予測を実現することができる。
(独立した2つの寿命予測方法の間の整合性の検証)
出願人は、寿命年数Yp又はYp’と、寿命年数Yとを比較した。ここで、寿命年数Yp又はYp’は、上述したようにフィールドから回収されたPVモジュールに湿熱試験を実施した結果の情報から予測された寿命年数である。また、寿命年数Yは、これとは独立する形で、製造初期品のPVモジュールの試験情報(温度及び相対湿度を変数にして行われたDH試験及びUVDH連続試験)から予測した寿命年数である。その結果、出願人は、図33及び図34で示されたように、両者が実用的に許容できる誤差の範囲において良好に合致することを確認した。したがって、上述した、寿命年数Yの予測、グラフを用いた寿命年数Yの予測、及び月別の気温情報を用いた寿命年数Yの予測は、いずれも、極めて有用であることが確かめられた。すなわち、上述したそれぞれの寿命の予測方法は、現実のフィールドにおけるUV及び湿熱による劣化に基づく寿命の予測方法として、定量性及び汎用性が高いのみならず、実用に充分に足るものであることが検証された。
(フィールド品の情報を用いた寿命予測の補正方法)
ここで、例えば上述の式(1)によって算出する寿命年数Yと、上述の式(54)や式(56)によって算出する寿命年数YpやYp’との間に、誤差範囲ではない有意差が生じる場合、算出される寿命年数Yを、補正係数を使って補正してもよい。以下、補正される前の寿命年数Yを「寿命年数Ybf」とし、補正した後の寿命年数Yを「寿命年数Yaf」と記す。
寿命年数Yafは、以下の式(64)に示すように、寿命年数Ybfにフィールド回収品のフィードバック補正係数Fcを乗じることにより求めることができる。
寿命年数Yaf=寿命年数Ybf×Fc 式(64)
上述のフィールド回収品のフィードバック補正係数Fcは、以下の式(65)のように示すことができる。
Fc={Σ(Yp/Ybf)}/回収品追加試験サンプル数Nf 式(65)
ここで、総和区間は、フィールド回収品の追加試験におけるサンプル数Nf分である。Ypは、フィールド回収品ごとに異なる値である。また、Ybfは、PVモジュールの設置された地域及び/又はPVモジュールの設置態様などに応じて異なる値である。また、Ypの代わりにYp’を用いてもよい。
このような算出によれば、式(1)によって算出する寿命年数Yの予測の精度をさらに高めることができる。また、このような算出によれば、フィールド回収品の追加試験の情報が蓄積されるにつれて、寿命予測の精度を遂次向上させていくことができる。
(出力保証の安全率)
以上説明したように、一実施形態に係る情報処理装置1によれば、フィールドにおけるUV及び湿熱による劣化に基づく寿命の年数Yを予測することができる。このため、一実施形態に係る情報処理装置1は、PVモジュールの出力保証期間(年数)Ypwを設定することにより、以下の式(66)に示すように、UV及び湿熱のストレスに対する出力保証の安全率を算出することができる。式(66)において、UV及び湿熱のストレスに対する出力保証の安全率を、単に「出力保証の安全率Spw」と記す。
出力保証の安全率Spw=寿命年数Y/出力保証期間Ypw 式(66)
PVモジュールの寿命予測には、様々な不確定要素及び/又は誤差が含まれ得る。したがって、PVモジュールの寿命を予測する際には、出力保証の安全率Spwを充分に確保することが望ましい。目安としては、出力保証の安全率Spwは、最低でも1.3以上とするのが望ましい。より望ましくは、出力保証の安全率Spwは、1.5以上とするのが好適である。さらに望ましくは、出力保証の安全率Spwは、2.0以上とするのが好適である。特に、UV光の照射量が多い地域、及び特に高温多湿の地域などにおいては、出力保証の安全率Spwは、2.0以上とするのが望ましい。
ここで、出力保証の安全率Spwは、PVモジュールの生産業者が設定する出力保証期間Ypwによって、どのような値にでも設定できる。上述の出力保証の安全率Spwが確保できない場合、PVモジュールの生産業者は、出力保証期間Ypwを短く設定するなどして、出力保証の安全率Spwを充分に確保することが望ましい。
(一実施形態に係る寿命予測の効果)
以下、従来技術の実情に照らした上で、一実施形態に係る情報処理装置1が行うPVモジュールの寿命予測の効果について、さらに述べる。
従来、UV及び湿熱による劣化に基づく寿命を、定量的に妥当な精度で予測する技術は確立されていなかった。例えば、現状のIECの規格に基づく試験は、温度85℃、湿度85%、1000時間のような、単一の条件のもとで行われる。このような試験によっては、PVモジュールの寿命に関する情報は得られない。
このため、従来、例えば、少なくとも以下のような状況が実情であった。
(1)上述の出力保証期間Ypwを、根拠に基づいて(すなわち例えば安全率Spwまで考慮して)設定することはできなかった。このため、ユーザに対してPVモジュール製品の長期信頼性について十分なアピール及び/又は情報提供ができなかった。
(2)発電コスト[円/kWh]を、技術的根拠に基づいて定量的かつ妥当に見積もることができなかった。このため、発電事業の計画段階におけるトータル発電量及び/又は発電コストに関する価値判断の根拠が充分ではなかった。
(3)例えば発電所などにおいて太陽光発電システムを売却する場合、当該システムの資産価値を正当かつ妥当に評価することができなかった。このため、発電事業における経営判断に資する根拠が充分ではなかった。
(4)UV光がPVモジュールの寿命に及ぼす影響が大きいことは、近年ようやく知られるようになってきた。しかし、UV光がPVモジュールの寿命に及ぼす影響が具体的にどの程度なのか、技術的根拠に基づいて定量的かつ妥当に見積もることはできなかった。
(5)PVモジュールの製品としての寿命情報を、市場及びユーザが知ることはできなかった。このため、市場及びユーザは、実際には寿命に長短のある製品を、充分な情報もないまま選ばざるを得なかった。
(6)PVモジュールの長期の信頼性に関して、メーカー各社の品質差が可視化されないまま、市場において玉石混交の流通状態となっている。このような状態は、今後の太陽光発電の産業及び市場の健全な発展に鑑みて、有益な方向に改善されることが望ましい。
一方、例えば太陽光発電システムを設置する前などに、当該システムを構成するPVモジュールの寿命を予測したいというニーズがある。特に、発電コストを円/kWhのような観点から試算する際に、PVモジュールの寿命に関する情報が必要になる。また、太陽電池システムを売却する際の資産価値の妥当な評価が望まれている。
上述のように、一実施形態に係る情報処理装置1によれば、UV及び湿熱による劣化に基づくPVモジュールの寿命の予測を合理的に、すなわち客観的な根拠に基づいて数値化できる。また、一実施形態に係る情報処理装置1によれば、妥当な根拠に基づいて、定量的にPVモジュールの劣化に基づく寿命を予測することができる。
また、一実施形態に係る情報処理装置1によれば、太陽光発電システムの資産価値を評価することができる。すなわち、一実施形態に係る情報処理装置1は、例えば本開示による寿命予測の結果に基づいて、太陽光発電システムの設置を計画している段階においても、システムの総発電量又は発電コストの予測に資することができる。また、一実施形態に係る情報処理装置1は、本開示による寿命予測の結果に基づいて、太陽光発電システムの売却を検討している段階においても、システムの残発電量の予測に資することができる。このようにして、PVモジュールの寿命が客観的に評価されれば、健全な太陽光発電の産業及び市場の形成に貢献し得る。また、一実施形態に係る情報処理装置1によるPVモジュールの寿命予測の情報が業界に広まれば、長期信頼性に関する情報を、市場においてユーザが入手することができる。
また、上述のように、一実施形態に係る情報処理装置1によれば、例えば、既存の複数のフィールドにおけるモジュール温度の実測データセットから、年間における1日当たりの有効ストレス時間Heffの汎用値を定めることができる。このHeffを用いることにより、一実施形態に係る情報処理装置1は、新規となる太陽光発電システムの設置前に、PVモジュールの寿命を簡便に予測できる。また、上述のように、一実施形態に係る情報処理装置1は、PVモジュールの寿命予測に際し、湿度補正のみならず、UV補正も組み込むことができる。また、上述のように、一実施形態に係る情報処理装置1によれば、PVモジュールの回収品に対してさらに加速試験を行うことによって寿命を予測できる。また、上述のように、一実施形態に係る情報処理装置1によれば、UV及び湿熱による劣化に基づくPVモジュールの寿命予測の結果に基づいて、PVモジュールの出力保証の安全率を定義できるようになる。このように、PVモジュールの出力保証の安全率が定義されれば、PVモジュールの長期信頼性に関する情報を、市場においてユーザにより正しく伝えることができる。
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。
例えば、一実施形態に係る情報処理装置1は、上述のように、太陽光発電システムを設置する計画段階における資産価値(寿命年数)を評価することができるが、中古の太陽光発電システムの資産価値(残寿命年数)を評価してもよい。例えば、一実施形態に係る情報処理装置1は、中古の太陽光発電システムについて、UV及び湿熱による劣化に基づく寿命の観点から資産価値(残寿命年数)を評価してもよい。この場合、例えば以下に記す(1)乃至(3)のようにしてもよい。
(1)まず、PVモジュールの設置場所における気温湿度の情報及びPVモジュールの設置態様の情報から、UV及び湿熱による劣化に基づく寿命年数Yを概算する。この場合、設置されたPVモジュールとほぼ同等の仕様の製品について、湿熱試験による寿命に至るまでの時間の情報(τ)及び劣化の活性化エネルギーの情報(Ea)を用いてもよい。一方、このようなほぼ同等の仕様と見なせる製品の情報が入手できない場合、既存の情報又は入手可能な情報のうち、当該PVモジュールに近い仕様と考えられる仕様のPVモジュールの試験情報(τ及びEa)を代用してもよい。
次に、あるフィールドに設置され続けた場合の残存寿命時間を求める。例えば、あるフィールドにX[年]設置されていたPVモジュールを回収したとする。このフィールドの設置環境における寿命年数がY[年]という情報を有している場合、このフィールドに設置された場合の残存寿命時間τra[時間]は、以下の式(67)のように表すことができる。
残存寿命時間τra[時間]=(Y−X)×Heff×365 式(67)
次に、温度情報として、このフィールドに設置されたPVモジュールの年間有効モジュール温度Tmp_effを用いることによって、残存寿命ストレス指数Brは、以下の式(68)のように表すことができる。
Br=exp(−Ea/kTmp_eff)×τra 式(68)
式(68)において、残存寿命ストレス指数Brは、フィールドに設置されたPVモジュールの年間有効モジュール温度Tmp_effを用いて算出されている。また、残存寿命ストレス指数Brは、フィールドに設置されたPVモジュールの1日ごとに異なるPVモジュールの最高温度Tmpを用いて算出されてもよい。
次に、これから設置されようとしている他のフィールドにおけるPVモジュールの年間ストレス指数Ahは、式(58)又は式(59)のように表すことができる。この場合、式(61)を用いることによって、他のフィールドにおける残存寿命年数Yrを算出することができる。
(2)太陽光発電システムにおけるPVモジュールの温度モニター値がある場合、その温度情報を用いて計算される年間ストレス指数Ahを用いて、残存寿命年数Yrを算出してもよい。この場合、残存する寿命を予測する精度を、より向上させることができる。
(3)太陽光発電システムから一部のPVモジュールを回収し、さらに湿熱試験を行うことにより、当該PVモジュールの残存する寿命を確認してもよい。具体的には、上述の(フィールドにおける回収品のみを用いた寿命予測)で説明した方法を用いることができる。
また、上述した実施形態は、情報処理装置1としての実施に限定されない。例えば、上述した実施形態は、情報処理装置1のような装置の制御方法として実施してもよい。また、例えば、上述した実施形態は、情報処理装置1において実行されるような情報処理方法、及び情報処理装置1のような装置を制御するコンピュータに実行させるプログラムとして実施してもよい。
また、必要に応じて追加で寿命に対する補正係数を設けても構わない。例えば、バックシート120がアルミニウム(Al)シートを有する構成の場合、水分の侵入経路がPVモジュールの側面に限られ、PVモジュールの裏面から水分侵入量が減少するため、寿命が長くなる。寿命の延長量は、PVモジュールの大きさに比例するが、通常のPVモジュールサイズ(60直〜72直程度)であれば、補正係数として最大2〜3程度に適宜設定することができる。
また、上記においては封止材の材料としてEVAを用いた場合について説明したが、封止材の材料はEVAに限られるものではなく、例えば、オレフィンやその他の樹脂材料であってもよい。
1 情報処理装置
10 制御部
20 入力部
30 出力部
40 通信部
50 記憶部

Claims (13)

  1. 太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能な期間の途中の時点から満了時までに受ける湿熱によるストレス量を表す第1情報、及び、
    前記太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおいて前記太陽電池モジュールが所定時間当たりに受ける湿熱によるストレス量を表す第2情報の入力に基づいて、
    前記太陽電池モジュールが前記フィールドに設置される場合に前記太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能と想定される残り期間に関する結果情報を出力する情報処理装置。
  2. 前記第1情報は、フィールドから回収された太陽電池モジュールについて2以上の温度条件において行われる湿熱試験の結果から得られる湿熱劣化の活性化エネルギーに基づいて生成される、請求項1に記載の情報処理装置。
  3. 前記第1情報は、前記太陽電池モジュールが受ける紫外線によるストレスに起因する酸の発生が所定の飽和度に達した後に所定の期間が経過した時点から、前記太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能な期間の満了時までに受ける湿熱によるストレス量を表す、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
  4. 前記第1情報において、前記太陽電池モジュールが受ける紫外線によるストレスに起因する酸の発生が所定の飽和度に達した後に所定の期間が経過した時点とは、前記太陽電池モジュールが設置されたフィールドから前記太陽電池モジュールが回収された時点とする、請求項3に記載の情報処理装置。
  5. 前記第2情報は、フィールドから回収された太陽電池モジュールについて2以上の温度条件において行われる湿熱試験の結果から得られる湿熱劣化の活性化エネルギーに基づいて生成される、請求項1から4のいずれかに記載の情報処理装置。
  6. 前記第2情報は、前記太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおける湿度の情報及び前記湿熱試験における湿度の情報に基づいて生成される、請求項5に記載の情報処理装置。
  7. 前記第2情報は、前記太陽電池モジュールが設置されるフィールドの1日における前記太陽電池モジュールの最高温度に関する情報に基づいて生成される、請求項1から6のいずれかに記載の情報処理装置。
  8. 前記第2情報は、前記太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおいて前記太陽電池モジュールが湿熱によるストレスを受ける1日当たりの時間を表す情報に基づいて生成される、請求項1から7のいずれかに記載の情報処理装置。
  9. 前記太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおいて前記太陽電池モジュールが湿熱によるストレスを受ける1日当たりの時間を表す情報は、年間において一定値を表す情報である、請求項8に記載の情報処理装置。
  10. 前記第2情報は、前記太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおいて前記太陽電池モジュールが1年間当たりに受ける湿熱によるストレス量を表す情報である、請求項1から9のいずれかに記載の情報処理装置。
  11. 前記結果情報として、前記太陽電池モジュールが前記フィールドに設置される場合に前記太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能と想定される残り期間に、前記太陽電池モジュールが前記フィールドに設置されてから回収される時点までの期間を加算して出力する、請求項1から10のいずれかに記載の情報処理装置。
  12. 太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能な期間の途中の時点から満了時までに受ける湿熱によるストレス量を表す第1情報を取得するステップと、
    前記太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおいて前記太陽電池モジュールが所定時間当たりに受ける湿熱によるストレス量を表す第2情報を取得するステップと、
    前記第1情報及び前記第2情報に基づいて、前記太陽電池モジュールが前記フィールドに設置される場合に前記太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能と想定される残り期間に関する結果情報を出力するステップと、
    を含む、情報処理装置の制御方法。
  13. コンピュータに、
    太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能な期間の途中の時点から満了時までに受ける湿熱によるストレス量を表す第1情報を取得するステップと、
    前記太陽電池モジュールが設置されるフィールドにおいて前記太陽電池モジュールが所定時間当たりに受ける湿熱によるストレス量を表す第2情報を取得するステップと、
    前記第1情報及び前記第2情報に基づいて、前記太陽電池モジュールが前記フィールドに設置される場合に前記太陽電池モジュールが所定の電力を出力可能と想定される残り期間に関する結果情報を出力するステップと、を実行させるプログラム。

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