JP2021001994A - エレクトロクロミック素子およびスマートウィンドウ - Google Patents

エレクトロクロミック素子およびスマートウィンドウ Download PDF

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Abstract

【課題】透明導電層が近赤外光に対する高い光透過率を有することと、透明導電層と配線との間での低い接触抵抗を得ることとを両立し得るエレクトロクロミック素子を提供する。【解決手段】エレクトロクロミック素子は、第1透明基板と、第1透明基板上に設けられた第1透明導電層と、第1透明導電層上に設けられたナノ結晶層と、第1透明基板に対向するように配置された第2透明基板と、第2透明基板上に設けられナノ結晶層に対向するように配置された第2透明導電層と、ナノ結晶層と第2透明導電層との間に設けられた電解質層と、電解質層を包囲するように配置されたシール部とを備える。第1および第2透明導電層の少なくとも一方は、シール部によって囲まれた部分を含む第1領域と、シール部よりも外側に位置する部分を含む第2領域とを有する。第2領域のキャリア密度は、第1領域のキャリア密度よりも高い。【選択図】図1

Description

本開示は、エレクトロクロミック素子およびスマートウィンドウに関する。
電圧の印加によりその光学的性質が可逆的に変化するエレクトロクロミック素子が知られている。エレクトロクロミック素子を用いた製品の1つとして、電気的に光透過率を制御することができるスマートウィンドウが挙げられる。
スマートウィンドウの一種として、赤外光の透過率を制御可能なタイプ(以下では「赤外タイプ」と呼ぶこともある。)が提案されている。特許文献1は、赤外タイプのスマートウィンドウに用いられるエレクトロクロミック素子を開示している。
特許文献1に開示されているエレクトロクロミック素子では、電圧の印加により光の透過スペクトルが変化するエレクトロクロミック層として、ナノ結晶層が設けられている。ここで、図24を参照しながら、特許文献1のエレクトロクロミック素子の構造を簡単に説明する。
図24に示すエレクトロクロミック素子900は、第1基板911、第2基板912、第1透明電極901、第2透明電極902、ナノ結晶層903、電解液904、電源907、シール部905およびスペーサ908を備える。
第1基板911および第2基板912は、互いに対向するように設けられている。第1基板911および第2基板912のそれぞれは、透明である。
第1透明電極901は、第1基板911の第2基板912側の表面上に設けられている。第2透明電極902は、第2基板912の第1基板911側の表面上に設けられている。
ナノ結晶層903は、第1透明電極901上に設けられている。ナノ結晶層903は、粒径が数nm〜数十nmのナノ結晶粒子を含んでいる。
電解液904は、シール部905によって包囲された領域に封入されており、ナノ結晶層903と第2透明電極902との間に位置している。電源907は、第1透明電極901および第2透明電極902に電気的に接続されており、第1透明電極901および第2透明電極902間に所定の電圧を印加し得る。
スペーサ908は、ナノ結晶層903と第2透明電極902との間に設けられており、電解液904が封入されている領域の高さを規定する。
エレクトロクロミック素子900のナノ結晶層903は、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を利用してエレクトロクロミズムを発現する。
非特許文献1は、エレクトロクロミック材料として用いられる種々のナノ結晶を開示している。
国際公開第2017/141528号
Evan L. Runnerstrom et. al., 「Nanostructured electrochromic smart windows: traditional materials and NIR-selective plasmonic nanocrystals」, Chem.Commun., 2014, 50, 10555-10572
エレクトロクロミック素子用の透明電極(透明導電層)には、光透過率が高いことが要求される。例えば、特許文献1のエレクトロクロミック素子のように赤外タイプのスマートウィンドウに用いられる場合、透明電極は、可視光および近赤外光の両方に対して高い透過率を有することが好ましい。
しかしながら、一般に、近赤外光の透過率が高い透明導電膜は、比較的キャリア密度が低い。そのため、そのような透明導電膜を透明電極として用いると、透明電極と配線との間の接触抵抗が高くなり、電圧印加時に透過率のロスが発生してしまう。
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、透明導電層が近赤外光に対する高い光透過率を有することと、透明導電層と配線との間での低い接触抵抗を得ることとを両立し得るエレクトロクロミック素子を提供することにある。
本明細書は、以下の項目に記載のエレクトロクロミック素子を開示している。
[項目1]
第1透明基板と、
前記第1透明基板上に設けられた第1透明導電層と、
前記第1透明導電層上に設けられ、ナノ結晶粒子を含むナノ結晶層と、
前記第1透明基板に対向するように配置された第2透明基板と、
前記第2透明基板上に設けられ、前記ナノ結晶層に対向するように配置された第2透明導電層と、
前記ナノ結晶層と前記第2透明導電層との間に設けられた電解質層と、
前記第1透明基板と前記第2透明基板との間に設けられ、前記電解質層を包囲するように配置されたシール部と、
を備え、
前記第1透明導電層および前記第2透明導電層の少なくとも一方は、前記シール部によって囲まれた部分を含む第1領域と、前記シール部よりも外側に位置する部分を含む第2領域とを有し、
前記第2領域のキャリア密度は、前記第1領域のキャリア密度よりも高い、エレクトロクロミック素子。
[項目2]
前記第1透明導電層および前記第2透明導電層のうちの前記第1透明導電層が、前記第1領域および前記第2領域を有する、項目1に記載のエレクトロクロミック素子。
[項目3]
前記第1透明導電層および前記第2透明導電層のうちの前記第2透明導電層が、前記第1領域および前記第2領域を有する、項目1に記載のエレクトロクロミック素子。
[項目4]
前記第1透明導電層および前記第2透明導電層の両方が、前記第1領域および前記第2領域を有する、項目1に記載のエレクトロクロミック素子。
[項目5]
前記第1領域のキャリア密度は、5×1020cm−3以下である、項目1から4のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
[項目6]
前記第2領域のキャリア密度は、8×1020cm−3以上である、項目1から5のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
[項目7]
前記第2領域の厚さは、前記第1領域の厚さよりも大きい、項目1から6のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
[項目8]
前記第1領域の厚さは、1nm以上100nm以下である、項目1から7のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
[項目9]
前記第1領域の酸素濃度は、前記第2領域の酸素濃度よりも高い、項目1から8のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
[項目10]
前記第1透明導電層および前記第2透明導電層のうちの前記第1領域および前記第2領域を有する透明導電層は、錫ドープ酸化インジウムまたは酸化亜鉛から形成されている、項目1から9のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
[項目11]
前記第1領域は、前記シール部よりも外側に位置する部分をさらに含み、
前記第1領域の前記シール部よりも外側に位置する部分上に、前記第2領域の前記シール部よりも外側に位置する部分が位置している、項目1から10のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
[項目12]
前記第2領域は、前記シール部よりも内側に位置する部分をさらに含む、項目1から11のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
[項目13]
項目1から12のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子を備えたスマートウィンドウ。
本開示の実施形態によると、透明導電層が近赤外光に対する高い光透過率を有することと、透明導電層と配線との間での低い接触抵抗を得ることとを両立し得るエレクトロクロミック素子が提供される。
本開示の実施形態におけるエレクトロクロミック素子100を模式的に示す断面図である。 エレクトロクロミック素子100のシール部5近傍(図1中の点線で囲まれた領域)を拡大して示す断面図である。 エレクトロクロミック素子100のシール部5近傍(図1中の点線で囲まれた領域)を拡大して示す上面図である。 配線(接合材)と低キャリア密度の透明導電膜とを接続した場合の界面における電子の流れやすさを模式的に示す図である。 配線(接合材)と高キャリア密度の透明導電膜とを接続した場合の界面における電子の流れやすさを模式的に示す図である。 エレクトロクロミック素子100の第1透明導電層1の他の構成を示す図である。 キャリア密度が異なる2つの領域(第1領域1aおよび第2領域1b)を含む第1透明導電層1の形成方法を説明するための図である。 本開示の実施形態における他のエレクトロクロミック素子200を模式的に示す断面図である。 エレクトロクロミック素子200のシール部5近傍(図7中の点線で囲まれた領域)を拡大して示す断面図である。 エレクトロクロミック素子200の第2透明導電層2の他の構成を示す図である。 本開示の実施形態におけるさらに他のエレクトロクロミック素子300を模式的に示す断面図である。 エレクトロクロミック素子300のシール部5近傍(図10中の点線で囲まれた領域)を拡大して示す断面図である。 エレクトロクロミック素子300のシール部5近傍(図10中の点線で囲まれた領域)を拡大して示す断面図である。 エレクトロクロミック素子300の第1透明導電層1の他の構成を示す図である。 エレクトロクロミック素子300の第2透明導電層2の他の構成を示す図である。 エレクトロクロミック素子300の実施例の作製方法のフローチャートである。 実施例および比較例について、透過率の測定結果を示すグラフである。 エレクトロクロミック素子100および300の第1透明導電層1の他の構成を示す図である。 エレクトロクロミック素子200および300の第2透明導電層2の他の構成を示す図である。 本開示の実施形態におけるスマートウィンドウ400を模式的に示す正面図である。 スマートウィンドウ400を模式的に示す断面図であり、図16中の17A−17A’線に沿った断面を示している。 スマートウィンドウ400の他の構成を示す図である。 スマートウィンドウ400のさらに他の構成を示す図である。 スマートウィンドウ400のさらに他の構成を示す図である。 本開示の実施形態における他のスマートウィンドウ500を模式的に示すブロック図である。 スマートウィンドウ500の他の態様を示すブロック図である。 スマートウィンドウ500のさらに他の態様を示すブロック図である。 スマートウィンドウ500のさらに他の態様を示すブロック図である。 特許文献1のエレクトロクロミック素子900を模式的に示す断面図である。
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態を説明する。なお、本開示の実施形態は、以下に例示する構成に限定されるものではない。
(実施形態1)
図1を参照しながら、本実施形態におけるエレクトロクロミック素子100を説明する。図1は、エレクトロクロミック素子100を模式的に示す断面図である。
エレクトロクロミック素子100は、図1に示すように、第1透明基板11および第2透明基板12と、第1透明導電層1および第2透明導電層2と、ナノ結晶層3と、電解質層4と、シール部5とを備える。
第1透明基板(以下では単に「第1基板」とも呼ぶ)11および第2透明基板(以下では単に「第2基板」とも呼ぶ)12は、互いに対向するように配置されている。第1基板11および第2基板12は、それぞれ透明であり、実質的に無色である。
第1透明導電層(第1透明電極)1は、第1基板11上に設けられている。より具体的には、第1透明導電層1は、第1基板11の第2基板12側の主面上に形成されている。第1透明導電層1は、透明であり、実質的に無色である。
第2透明導電層(第2透明電極)2は、第2基板12上に設けられている。より具体的には、第2透明導電層2は、第2基板12の第1基板11側の主面上に形成されている。第2透明導電層2は、透明であり、実質的に無色である。
第1透明導電層1および第2透明導電層2は、それぞれ配線6Aおよび6Bを介して電源7に電気的に接続されている。
ナノ結晶層3は、第1透明導電層1の第2透明導電層2側に設けられている。つまり、ナノ結晶層3は、第2透明導電層2に対向するように第1透明導電層1上に設けられている(言い換えると、第2透明導電層2はナノ結晶層3に対向するように配置されている)。ナノ結晶層3は、ナノ結晶粒子を含む。
ナノ結晶粒子は、例えば1nm以上100nm以下の粒径を有する粒子状の結晶体である。ナノ結晶粒子は、後述するように、例えば金属酸化物から形成されている。
電解質層4は、ナノ結晶層3と第2透明導電層2との間に設けられている。電解質層4の厚さ(セルギャップ)は、ナノ結晶層3と第2透明導電層2との間に位置するスペーサ8によって規定される。
シール部5は、第1基板11と第2基板12との間に設けられている。シール部5は、電解質層4を包囲するように配置されている。
ナノ結晶層3に含まれるナノ結晶粒子は、エレクトロクロミック材料である。そのため、ナノ結晶層3の透過スペクトルは、第1透明導電層1と第2透明導電層2との間に印加された電圧に応じて変化する。この透過スペクトルの変化は、近赤外領域における透過率変化を伴っている。従って、エレクトロクロミック素子100は、近赤外光の透過率を制御することができる。本願明細書において、近赤外領域は、波長が約800nm以上約2500nm以下の範囲を指す。太陽から放射される赤外光の大部分は近赤外光であるので、近赤外光の透過率を制御することにより、太陽光による日射熱の取得率を制御することができる。例えば、夏期には近赤外光の室内への入射を防ぐことができ、冬期には近赤外光を室内に取り込むことができる。
ナノ結晶粒子としては、例えば、錫ドープ酸化インジウム(Tin doped Indium Oxide:ITO)から形成されたナノ結晶粒子を好適に用いることができる。ナノ結晶層3がエレクトロクロミズムを示す原理については後述する。
なお、ナノ結晶層3の透過スペクトルの変化は、近赤外領域における透過率変化だけでなく、可視領域(約400nm以上約800nm以下の範囲)における透過率変化を伴っていてもよい。
本実施形態のエレクトロクロミック素子100では、第1透明導電層1は、キャリア密度が互いに異なる第1領域1aおよび第2領域1bを有する。第2領域1bのキャリア密度は、第1領域1aのキャリア密度よりも高い。つまり、第1領域1aは、相対的にキャリア密度が低い「低キャリア密度領域」であり、第2領域1bは、相対的にキャリア密度が高い「高キャリア密度領域」である。
以下、図2および図3も参照しながら、第1領域1aおよび第2領域1bをより詳しく説明する。図2および図3は、エレクトロクロミック素子100のシール部5近傍(図1中の点線で囲まれた領域)を拡大して示す断面図および上面図である。なお、以降の説明では、エレクトロクロミック素子100のうち、第1基板11の法線方向から見たときにシール部5によって囲まれた領域を「調光領域」と呼び、第1基板11の法線方向から見たときにシール部5よりも外側に位置する領域を「周辺領域」と呼ぶことがある。
図2および図3に示すように、第1透明導電層1は、周辺領域において、導電性を有する接合材9を介して配線6Aに電気的に接続されている。接合材9は、例えばはんだから形成される。接合材9は、はんだ以外の材料、例えば、導電性粘着剤、導電性接着剤、異方性導電膜等から形成されてもよい。
第1透明導電層1の第1領域1aは、図1および図2に示すように、第1基板11の法線方向から見たときにシール部5によって囲まれる(つまり調光領域内に位置する)部分を含む。また、第1透明導電層1の第2領域1bは、第1基板11の法線方向から見たときにシール部5よりも外側に位置する部分を含む。図示している例では、第1領域1aは、シール部5よりも外側に位置する部分を含んでおらず、第2領域1bは、シール部5によって囲まれた部分を含んでいない。第1透明導電層1の第2領域1bが周辺領域において接合材9によって配線6Aに接続されている。
上述したように、本実施形態のエレクトロクロミック素子100では、第1透明導電層1のうち、相対的にキャリア密度が低い第1領域1aがシール部5に囲まれた部分を含み、相対的にキャリア密度が高い第2領域1bがシール部5よりも外側に位置する部分を含んでいる。これにより、調光領域において第1透明導電層1の近赤外光に対する光透過率を高くしつつ、周辺領域において第1透明導電層1と配線6Aとの間での接触抵抗を低くすることができる。
図4Aは、配線(接合材)と低キャリア密度の透明導電膜とを接続した場合の界面における電子の流れやすさを模式的に示す図であり、図4Bは、配線(接合材)と高キャリア密度の透明導電膜とを接続した場合の界面における電子の流れやすさを模式的に示す図である。図4Aと図4Bとの比較からもわかるように、高キャリア密度の透明導電膜と配線とを接続することにより、接触抵抗を低くすることができる。
なお、図2などには、第1領域1aがシール部5よりも外側に位置する部分を含んでいない例を示したが、第1領域1aは、シール部5よりも外側に位置する部分をさらに含んでもよい。図5に、そのような構成の例を示す。
図5に示す例では、第1透明導電層1の第1領域1aは、シール部5によって囲まれた部分1aaに加えて、シール部5よりも外側に位置する部分1abを含んでいる。第1領域1aの、シール部5よりも外側に位置する部分1ab上に、第2領域1bの、シール部5よりも外側に位置する部分が位置している。図5に示した構成は、後に詳述するように、図2に示した構成よりも簡便に製造できる等の利点がある。
なお、第1透明導電層1の第1領域1aと第2領域1bとは、キャリア密度が異なっているものの、実質的に同じ材料(同じ元素を含む材料)で形成され得るので、第1領域1aと第2領域1bとでの熱膨張係数の差を小さくできる。そのため、図5に示したように第1領域1aと第2領域1bとが積層された構成においても剥がれが生じにくく、優れた信頼性が得られる。なお、第1領域1aに含まれる元素と、第2領域1bに含まれる元素とが厳密に同じでなくてもよく、5原子%以下の不純物を一方のみが含んでもよい。
また、調光領域における近赤外光の透過率を高く維持する観点からは、第2領域1bは、調光領域内に位置する部分を含んでいないことが好ましく、調光領域内において第1領域1aが存在し、且つ、第2領域1bが存在しない領域が90%以上を占めることが好ましい。
近赤外光に対する透過率を十分に高くする観点からは、第1領域1aのキャリア密度は、5×1020cm−3以下であることが好ましい。キャリア密度が5×1020cm−3を超えると、近赤外光に対する透過率を十分に高くできないおそれがある。なお、電極として好適に機能する導電性を確保する観点からは、第1領域1aのキャリア密度は、1×1019cm−3以上であることが好ましい。
第1透明導電層1と配線6Aとの間での接触抵抗を低くする観点からは、第2領域1bのキャリア密度は、5×1020cm−3超であることが好ましく、8×1020cm−3以上であることがより好ましい。なお、第2領域1bのキャリア密度に特に上限はないが、例えば1×1022cm−3以下である。
第1領域1aの厚さt1(図2および図5参照)は、近赤外光の透過率を高くする観点からは、100nm以下であることが好ましい。なお、第1領域1aの厚さt1が小さすぎると、比抵抗が高くなるおそれがあるので、第1領域1aの厚さt1は、1nm以上であることが好ましい。
第2領域1bの厚さt2(図2および図5参照)は、特に制限されないが、例えば200nm以下である。このように、第2領域1bの厚さt2は、第1領域1aの厚さよりも大きくてよい。なお、第2領域1bの厚さt2が小さすぎると、比抵抗が高くなるおそれがあるので、第2領域1bの厚さt2は、1nm以上であることが好ましい。
第1透明導電層1の第1領域1aおよび第2領域1bのキャリア密度の制御は、第1領域1aおよび第2領域1bの酸素濃度を調整することにより行うことができる。第1透明導電層1を構成する金属酸化物の酸素濃度が低いほど、キャリア密度が高くなり、また、酸素濃度が高いほど、キャリア密度が低くなる。そのため、第1領域1aの酸素濃度が第2領域1bの酸素濃度よりも高いことにより、第1領域1aのキャリア密度を第2領域1bのキャリア密度よりも低く、言い換えると、第2領域1bのキャリア密度を第1領域1aのキャリア密度よりも高くすることができる。
図6を参照しながら、キャリア密度が異なる2つの領域(第1領域1aおよび第2領域1b)を含む第1透明導電層1の形成方法の例を説明する。図6には、スパッタ法により第1透明導電層1を形成する場合の例が示されている。ここでは、図5に示した構成を例として説明を行う。
図6に示す例では、第1基板11は、チャンバ―50内において搬送装置51によって所定方向(図中の左側から右側に向かう方向)に搬送される。チャンバ―50内には、2つの成膜領域(第1成膜領域R1および第2成膜領域R2)が存在している。第1成膜領域R1は、搬送方向において第2成膜領域R2よりも上流側に位置している。第1領域R1には、第1のターゲット52が配置されており、第2領域R2には、第1のターゲット52とは異なる第2のターゲット53が配置されている。
搬送過程において、まず、チャンバ―50内の第1成膜領域R1で、第1基板11上に第1領域1aとなる低キャリア密度の透明導電膜(以下では「第1導電膜」とも呼ぶ)tcf1を形成する。続いて、第2成膜領域R2において、第1導電膜tcf1の一部をマスク(例えばシャッター)で覆った状態で、第1導電膜fc1の露出した部分上に第2領域1bとなる高キャリア密度の透明導電膜(以下では「第2導電膜」とも呼ぶ)tcf2を形成する。
第1のターゲット52と、第2のターゲット53とは、異なるものであるが、互いに同じ元素を含んでいる。ただし、第2のターゲット53の酸素含有量は、第1のターゲット52の酸素含有量よりも少ない。これにより、第2成膜領域R2で形成される第2導電膜tcf2のキャリア密度を、第1成膜領域R1で形成される第1導電膜tcf1のキャリア密度よりも高くすることができる。
例えば、第1透明導電層1の材料としてITOを用いる場合、第1のターゲット52として、SnOを5質量%含むITOターゲットを用い、第2のターゲット53として、SnOを1質量%、Snを4質量%含むITOターゲットを用いる。
上述したように、第1透明導電層1を形成する際、まず、第1導電膜(低キャリア密度の透明導電膜)tcf1を形成し、その後、第2導電膜(高キャリア密度の透明導電膜)tcf2を形成することが好ましい。この場合、第1導電膜tcf1をマスクなしで形成することができる。また、これとは逆の順番で形成を行う場合に比べ、第1導電膜tcf1と第2導電膜tcf2との接合面積を大きくすることができるので、第1導電膜tcf1と第2導電膜tcf2との接触抵抗の低減および密着性の増大を図ることができる。
これに対し、まず、第2導電膜tcf2を形成し、その後に第1導電膜tcf1を形成する場合、第1基板11の一部をマスクで覆った状態で第2導電膜tcf2の形成を行い、その後に、第2導電膜tcf2をマスクで覆った状態で第1導電膜tcf1を形成することになる。そのため、第1導電膜tcf1と第2導電膜tcf2との接合面積が小さくなるので、第1導電膜tcf1と第2導電膜tcf2との接触抵抗および密着性の点で劣る。
[ナノ結晶層の動作原理]
ここで、ナノ結晶層3がエレクトロクロミズムを示す原理を説明する。
非特許文献1に記載されているように、ITOナノ結晶層などの透明導電性酸化物(Transparent Conducting Oxide:TCO)ナノ構造体に電子を注入することによって、近赤外領域の透過スペクトルを変化させ得ることが知られている。その原理は、端的に言えば、TCOナノ構造体の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による吸収波長を、電圧印加によってシフトさせることである。以下、より詳細に説明する。
LSPRの共鳴周波数は、プラズマ周波数ωpに比例する。プラズマ周波数ωpは、下記式で表わされる。
ωp =N・e/(m・ε
ここで、Nは電子密度、eは電子の電荷、mは電子の有効質量、εは真空の誘電率である。従って、TCOナノ構造体に負電圧を印加して電子密度を高くすると、プラズマ周波数ωpが大きくなるので、LSPRの共鳴周波数も大きくなる。そのため、LSPRの共鳴波長は短くなる(つまり短波長側にシフトする)。TCOナノ構造体のキャリア密度を調整することにより、LSPRの共鳴波長を近赤外領域に設定できるので、近赤外領域における透過スペクトルを変化させることが可能となる。
なお、このように透過スペクトルを変化させる機能は、ITOナノ結晶粒子を含むITOナノ結晶層だけに特有のものではない。ナノ結晶粒子が、LSPRが生じるようなサイズ(例えば100nm以下)であり、且つ、ナノ結晶層が透明電極からの電子を注入され得るような構成であれば、原理的には上述した機能を奏し得る。
なお、本願明細書では、第1透明導電層1と第2透明導電層2との間に印加される電圧を切り換えたときの、所定の波長(例えば2000nm)の光に対するナノ結晶層3の透過率の差を、「動作シフト範囲」と呼ぶことがある。
続いて、エレクトロクロミック素子100の各構成要素の具体例や好ましい構成を説明する。
[ナノ結晶層]
ナノ結晶粒子の材料として用いられる金属酸化物は、例示したITOに限定されるものではない。例えば、AZO(Aluminum-doped Zinc Oxide:アルミニウムドープ酸化亜鉛)やATO(Antimony-doped Tin Oxide:アンチモンドープ酸化錫)、GZO(Gallium-doped Zinc Oxide:ガリウムドープ酸化亜鉛)等の可視領域においてほぼ透明な材料を用いることができる。また、Cs(x、yは組成比を示す)で表されるような複合タングステン酸化物や六ホウ化ランタンなどのような、可視領域の光を吸収する材料を用いることもできる。
ナノ結晶粒子の平均粒径は、典型的には、1nm以上100nm以下である。ただし、ナノ結晶粒子の平均粒径が大きすぎると、動作しにくくなるおそれがあるので、動作のしやすさの観点からは、ナノ結晶粒子の平均粒径は、30nm以下であることが好ましい。
ナノ結晶層3の厚さは、典型的には、100Å以上50000Å以下である。可視光の透明性と透過スペクトルの動作シフト範囲の観点からは、ナノ結晶層3の厚さは、1000Å以上15000Å以下であることが好ましい。
ナノ結晶層3の形成方法に特に限定はない。ナノ結晶粒子が分散された液体または半固体を第1基板11上に塗布し、焼成を行うことによって、ナノ結晶層3を形成することができる。ナノ結晶粒子の分散液をスピンコート法により塗布してもよいし、ビヒクルを適度に添加されたペーストを用いた印刷法により塗布してもよい。また、バーコート法、スリットコート法、グラビアコート法またはダイコート法により塗布を行ってもよい。焼成温度が、ナノ結晶表面にある有機成分が除去されて焼結が好適に生じる温度であれば、十分な耐溶剤性が得られる。ただし、焼成温度が高すぎ、焼結が過度に進むと、所望の波長のLSPRが得られないおそれがある。トルエンを分散媒とするITOナノ結晶粒子分散液を用いてスピンコート法によりナノ結晶層3を形成する場合、焼成は、例えば、200℃以上300℃以下の温度で60分間行われる。
また、ナノ結晶層3は、第1基板11との結着性を向上させるために、バインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の溶剤系バインダーやスチレン・ブタジエンゴム等の水系バインダー、光硬化樹脂、熱硬化樹脂等を含んでもよい。
[電解質層]
電解質層4は、例えば電解液で構成される。電解液の電解質としては、イオン化しやすく、且つ、生じたイオンが印加電圧の範囲で酸化還元反応を起こしにくい、アニオンのイオン半径が0.23nm以下の材料を好適に用いることができる。電解質として、具体的には、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF)、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(EtNBF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)等を用いることができる。
電解液の溶媒としては、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジエチル(DEC)、これらの混合物、炭酸プロピレン等を用いることができる。また、電解液は、ゲル化剤によりゲル化されていてもよい。ゲル化剤としては、例えば、ポリビニルブチラールを用いることができる。さらに、環状四級アンモニウムカチオンとイオン半径が0.23nm以下のアニオンからなるイオン液体を用いてもよい。
[基板]
第1基板11および第2基板12としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)などの樹脂材料から形成されたプラスチック基板を用いることができる。プラスチック基板には、無機材料または有機材料から形成されたガスバリア層が設けられてもよいし、ハードコート層や光学調整層等が設けられていてもよい。また、任意の調光波長に対して透過率が高い無機材料から形成された基板(例えばガラス基板)を用いてもよい。さらに、必要に応じて水素雰囲気下、真空下等でのアニールが行われてもよい。
[透明導電層(透明電極)]
第1透明導電層1および第2透明導電層2の材料としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、チタンドープ酸化インジウム(Titanium-doped Indium Oxide:InTiO)、アナターゼ型二酸化チタンをシード層としたタンタル置換酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛(ZnO)などの近赤外光を透過する材料を用いることができる。これらの材料を、スパッタ法や蒸着法、塗布法などにより第1基板11および第2基板12上に堆積することによって、第1透明導電層1および第2透明導電層2を形成することができる。
上述した材料のうち、生産性、耐薬品性、視認性(より透明に見えるものを作りやすい)の観点からは、ITO(錫ドープ酸化インジウム)およびZnO(酸化亜鉛)を好適に用いることができる。ITOおよびZnOを用いると、比較的低温での成膜が可能になり、プラスチック基板上への透明導電層の形成を容易に行うことができる等、生産性が向上する。また、ITOおよびZnOを用いると、透明導電層の透明性を高くしやすいので、視認性をいっそう向上させることができる。
第1透明導電層1がITOから形成されている場合、第1領域(低キャリア密度領域)1aのキャリア密度n[cm−3]は、下記式(1)で表わされる。式(1)中、x、y、zは、それぞれ第1領域1aにおけるIn、Sn、Oの原子数[cm−3]である。
=3x+4y−2z ・・・(1)
従って、第1領域1aのキャリア密度nを5×1020cm−3以下にするには、下記式(2)を満足するような組成とすればよい。
3x+4y−2z≦5×1020 ・・・(2)
また、第2領域(高キャリア密度領域)1bのキャリア密度n[cm−3]は、下記式(3)で表わされる。式(3)中、x、y、zは、それぞれ第2領域1bにおけるIn、Sn、Oの原子数[cm−3]である。
=3x+4y−2z ・・・(3)
従って、第2領域1bのキャリア密度nを8×1020cm−3以上にするには、下記式(4)を満足するような組成とすればよい。
3x+4y−2z≧8×1020 ・・・(4)
第1透明導電層1がZnOから形成されている場合、第1領域(低キャリア密度領域)1aのキャリア密度n[cm−3]は、下記式(5)で表わされる。式(5)中、a、bは、それぞれ第1領域1aにおけるZn、Oの原子数[cm−3]である。
=2(a−b) ・・・(5)
従って、第1領域1aのキャリア密度nを5×1020cm−3以下にするには、下記式(6)を満足するような組成とすればよい。
2(a−b)≦5×1020 ・・・(6)
また、第2領域(高キャリア密度領域)1bのキャリア密度n[cm−3]は、下記式(7)で表わされる。式(7)中、a、bは、それぞれ第2領域1bにおけるZn、Oの原子数[cm−3]である。
=2(a−b) ・・・(7)
従って、第2領域1bのキャリア密度nを8×1020cm−3以上にするには、下記式(8)を満足するような組成とすればよい。
2(a−b)≧8×1020 ・・・(8)
また、第1透明導電層1および第2透明導電層2の材料は、遠赤外光を反射する特性を有することが好ましい。冬期に室内の温度を高く保つためには、室内から屋外に赤外光が出ることを防ぐ必要がある。室内から輻射される赤外光は、波長が10μm程度の、遠赤外光に分類されるものである。そのため、第1透明導電層1および第2透明導電層2が遠赤外光を反射する特性を有していると、近赤外光の透過率が高くなるようにナノ結晶層3の状態を制御しても、室内の熱は輻射熱として屋外に逃げない、理想的な状態を実現することができる。また、夏期に近赤外光の透過率が低くなるように制御したときも、屋外からの遠赤外光が室内に入ることを防止できるので、やはり理想的な状態を実現できる。
エレクトロクロミック素子100が表示を目的としないものである場合、第1透明導電層1の電極取り出し(外部配線への接続)は、1箇所で行われてもよいし、複数箇所で行われてもよい。1箇所の場合、エレクトロクロミック素子100の組み立て工程が簡略化されるとともに配線の引き回しを簡素にすることができる。複数箇所の場合、第1透明導電層1と第2透明導電層2との間に抵抗成分がある、すなわち電流が流れるような場合にも部分的な応答速度の遅延を防ぐことができる。
第1透明導電層1は、電気的に独立した複数のサブ電極に分割されていてもよい。第1透明導電層1が複数のサブ電極に分割されていると、サブ電極に対応する領域ごとに透過スペクトルを変化させることができる。第2透明導電層2は、第1透明導電層1と同様、電気的に独立した複数のサブ電極に分割されていてもよいし、分割されていなくてもよい。
[スペーサ]
セルギャップを規定するスペーサ8は、散布、または、電解液中に分散させておくことにより、第1基板11および第2基板12間(より具体的にはナノ結晶層3と第2透明導電層2との間)に配置される。スペーサ8は、例えば図示しているように球状(ビーズ状)であり、その直径は例えば約30μmである。スペーサ8は、固着性を有してもよい。スペーサ8が固着性を発現するための処理(熱処理等)が必要に応じて適宜行われる。スペーサ8の量に特に制限はないが、例えば、電解液に対して0.2wt%程度の量のスペーサ8が用いられる。
なお、液晶表示装置等では、セルギャップを規定するスペーサとして、感光性樹脂材料から形成された柱状のスペーサ(「フォトスペーサ」と呼ばれる)が用いられることが多い。エレクトロクロミック素子100にフォトスペーサを用いてもよいが、フォトスペーサは、材料費が高く、また、露光工程や現像工程を行う必要があり工程数が増えてしまうので、製造コストの点では不利である。
[シール部]
シール部5の材料としては、例えばUV硬化型の樹脂材料を用いることができる。シール部5は、異なる材料(シール材)から形成された2つの領域を有してもよい。相対的に内側に位置する領域(「内側領域」と呼ぶ)を、相対的に外側に位置する領域(「外側領域」と呼ぶ)を形成するシール材よりも耐溶剤性の高いシール材から形成し、外側領域を、内側領域を形成するシール材よりも接着力の強いシール材から形成すると、シール部5の高い信頼性および強い接着力を両立させることができる。
[製造方法]
エレクトロクロミック素子100を製造する際、液晶パネルや色素増感型太陽電池等の製造に用いられる種々の方法・工程を用いることができる。第1基板11および第2基板12としてプラスチック基板(樹脂基板)を用いる場合には、ロール・ツー・ロール法によって貼り合せ工程を連続的に行うことができるので、製造コストを低減することが可能である。また、一連の工程を脱酸素乾燥雰囲気下で行うことにより、エレクトロクロミック素子100の信頼性を向上させることができる。
(実施形態2)
図7および図8を参照しながら、本実施形態におけるエレクトロクロミック素子200を説明する。図7は、エレクトロクロミック素子200を模式的に示す断面図である。図8は、エレクトロクロミック素子200のシール部5近傍(図7中の点線で囲まれた領域)を拡大して示す断面図である。以下では、エレクトロクロミック素子200が実施形態1のエレクトロクロミック素子100と異なる点を中心に説明を行う。
本実施形態のエレクトロクロミック素子200では、図7および図8に示すように、第2透明導電層2が、キャリア密度が互いに異なる第1領域2aおよび第2領域2bを有する。第2領域2bのキャリア密度は、第1領域2aのキャリア密度よりも高い。つまり、第1領域2aは、相対的にキャリア密度が低い「低キャリア密度領域」であり、第2領域2bは、相対的にキャリア密度が高い「高キャリア密度領域」である。
図8に示すように、第2透明導電層2は、周辺領域において、導電性を有する接合材9を介して配線6Bに電気的に接続されている。
第2透明導電層2の第1領域2aは、図7および図8に示すように、第2基板12の法線方向から見たときにシール部5によって囲まれる(つまり調光領域内に位置する)部分を含む。また、第2透明導電層2の第2領域2bは、第2基板12の法線方向から見たときにシール部5よりも外側に位置する部分を含む。図示している例では、第1領域2aは、シール部5よりも外側に位置する部分を含んでおらず、第2領域2bは、シール部5によって囲まれた部分を含んでいない。第2透明導電層2の第2領域2bが周辺領域において接合材9によって配線6Bに接続されている。
上述したように、本実施形態のエレクトロクロミック素子200では、第2透明導電層1のうち、相対的にキャリア密度が低い第1領域2aがシール部5に囲まれた部分を含み、相対的にキャリア密度が高い第2領域2bがシール部5よりも外側に位置する部分を含んでいる。これにより、調光領域において第2透明導電層2の近赤外光に対する光透過率を高くしつつ、周辺領域において第2透明導電層2と配線6Bとの間での接触抵抗を低くすることができる。
なお、図8には、第1領域2aがシール部5よりも外側に位置する部分を含んでいない例を示したが、第1領域2aは、シール部5よりも外側に位置する部分をさらに含んでもよい。図9に、そのような構成の例を示す。
図9に示す例では、第2透明導電層2の第1領域2aは、シール部5によって囲まれた部分2aaに加えて、シール部5よりも外側に位置する部分2abを含んでいる。第1領域2aの、シール部5よりも外側に位置する部分2ab上に、第2領域2bの、シール部5よりも外側に位置する部分が位置している。図9に示した構成は、実施形態1のエレクトロクロミック素子100についての図5に示した構成と同様、簡便に製造できる等の利点がある。
なお、第2透明導電層2の第1領域2aと第2領域2bとは、キャリア密度が異なっているものの、実質的に同じ材料(同じ元素を含む材料)で形成され得るので、第1領域2aと第2領域2bとでの熱膨張係数の差を小さくできる。そのため、図9に示したように第1領域2aと第2領域2bとが積層された構成においても剥がれが生じにくく、優れた信頼性が得られる。なお、第1領域2aに含まれる元素と、第2領域2bに含まれる元素とが厳密に同じでなくてもよく、5原子%以下の不純物を一方のみが含んでもよい。
また、調光領域における近赤外光の透過率を高く維持する観点からは、第2領域2bは、調光領域内に位置する部分を含んでいないことが好ましく、調光領域内において第1領域2aが存在し、且つ、第2領域2bが存在しない領域が90%以上を占めることが好ましい。
近赤外光に対する透過率を十分に高くする観点からは、第1領域2aのキャリア密度は、5×1020cm−3以下であることが好ましい。キャリア密度が5×1020cm−3を超えると、近赤外光に対する透過率を十分に高くできないおそれがある。なお、電極として好適に機能する導電性を確保する観点からは、第2領域1aのキャリア密度は、1×1019cm−3以上であることが好ましい。
第2透明導電層2と配線6Bとの間での接触抵抗を低くする観点からは、第2領域2bのキャリア密度は、5×1020cm−3超であることが好ましく、8×1020cm−3以上であることがより好ましい。なお、第2領域2bのキャリア密度に特に上限はないが、例えば1×1022cm−3以下である。
第1領域2aの厚さt1(図8および図9参照)は、近赤外光の透過率を高くする観点からは、100nm以下であることが好ましい。ただし、第1領域2aの厚さt1が小さすぎると、比抵抗が高くなるおそれがあるので、第1領域2aの厚さt1は、1nm以上であることが好ましい。
第2領域2bの厚さt2(図8および図9参照)は、特に制限されないが、例えば200nm以下である。このように、第2領域2bの厚さt2は、第1領域2aの厚さよりも大きくてよい。ただし、第2領域2bの厚さt2が小さすぎると、比抵抗が高くなるおそれがあるので、第2領域2bの厚さt2は、1nm以上であることが好ましい。
(実施形態3)
図10、図11Aおよび図11Bを参照しながら、本実施形態におけるエレクトロクロミック素子300を説明する。図10は、エレクトロクロミック素子300を模式的に示す断面図である。図11Aおよび図11Bは、エレクトロクロミック素子200のシール部5近傍(図10中の点線で囲まれた2つの領域)を拡大して示す断面図である。
本実施形態のエレクトロクロミック素子300では、図10、図11Aおよび図11Bに示すように、第1透明導電層1が、キャリア密度が互いに異なる第1領域(低キャリア密度領域)1aおよび第2領域(高キャリア密度領域)1bを有するとともに、第2透明導電層2が、キャリア密度が互いに異なる第1領域(低キャリア密度領域)2aおよび第2領域(高キャリア密度領域)2bを有する。
第1透明導電層1の第1領域1aは、図10および図11Aに示すように、第1基板11の法線方向から見たときにシール部5によって囲まれる(つまり調光領域内に位置する)部分を含む。また、第1透明導電層1の第2領域1bは、第1基板11の法線方向から見たときにシール部5よりも外側に位置する部分を含む。
第2透明導電層2の第1領域2aは、図10および図11Bに示すように、第2基板12の法線方向から見たときにシール部5によって囲まれる(つまり調光領域内に位置する)部分を含む。また、第2透明導電層2の第2領域2bは、第2基板12の法線方向から見たときにシール部5よりも外側に位置する部分を含む。
上述したように、本実施形態のエレクトロクロミック素子300では、第1透明導電層1および第2透明導電層2の両方が、第1領域1a、2aおよび第2領域1b、2bを有する。これにより、調光領域において第1透明導電層1および第2透明導電層2の近赤外光に対する光透過率を高くしつつ、周辺領域において第1透明導電層1と配線6Aとの間、および、第2透明導電層2と配線6Bとの間での接触抵抗を低くすることができる。そのため、透過率のロスをいっそう低減することができる。
なお、図11Aおよび図11Bには、第1領域1aおよび2aがシール部5よりも外側に位置する部分を含んでいない例を示したが、第1領域1aおよび2aは、シール部5よりも外側に位置する部分をさらに含んでもよい。図12Aおよび図12Bに、そのような構成の例を示す。
図12Aに示す例では、第1透明導電層1の第1領域1aは、シール部5によって囲まれた部分1aaに加えて、シール部5よりも外側に位置する部分1abを含んでいる。第1領域1aの、シール部5よりも外側に位置する部分1ab上に、第2領域1bの、シール部5よりも外側に位置する部分が位置している。図12Bに示す例では、第2透明導電層2の第1領域2aは、シール部5によって囲まれた部分2aaに加えて、シール部5よりも外側に位置する部分2abを含んでいる。第1領域2aの、シール部5よりも外側に位置する部分2ab上に、第2領域2bの、シール部5よりも外側に位置する部分が位置している。図12Aおよび図12Bに示した構成は、図11Aおよび図11Bに示した構成よりも簡便に製造できる等の利点がある。
[効果の検証結果]
続いて、エレクトロクロミック素子300の試作例(実施例)を以下のようにして作製し、本発明の実施形態の効果を検証するために、キャリア密度および光透過率の測定を行った。図13は、実施例の作製方法のフローチャートである。
・透明電極付き基板の作製(ステップS1)
第1基板11および第2基板12として、サイズが530mm×530mm、厚さが125μmのPETフィルム(東レ株式会社製)を用意した。次に、第1基板11上に、第1透明導電層1としてITO層をスパッタ法により以下のようにして形成した。
まず、マグネトロンDCスパッタ装置のチャンバー内に、低キャリア密度のITO膜形成用のターゲット(第1のターゲット)と、高キャリア密度のITO膜形成用のターゲット(第2のターゲット)とを配置した。第1のターゲットとして、SnOを5質量%含むITOターゲット(豊島製作所製)を用い、第2のターゲットとして、Snを4質量%、SnOを1質量%含むITOターゲット(豊島製作所製)を用いた。
次に、チャンバ―内に第1基板11を導入し、その後、ターボ分子ポンプを用いてチャンバ―内の圧力が5×10−4Paになるまで排気を行った。
続いて、第1基板11に対して加熱を行い、第1基板11の温度を150℃に維持した。その状態で、Arガスを198sccm、Oガスを2sccmの流量で混合ガスとしてチャンバ―内に導入し、チャンバ―内の圧力が0.5Paに維持されるように調整を行った。
次に、第1のターゲットに1kWの電力を印加して、第1基板11上に厚さ30nmの低キャリア密度ITO膜(第1領域1a)を形成した。低キャリア密度ITO膜は、第1基板11の全面に形成されたので、そのサイズは530mm×700mmである。
続いて、低キャリア密度ITO膜の所定の領域(サイズは500mm×700mm)をシャッターで覆い、その状態で第2のターゲットに1kWの電力を印加して、低キャリア密度ITO膜のシャッターで覆われていない領域上に、厚さ30nm、サイズが30mm×700mmの高キャリア密度ITO膜(第2領域1b)を形成した。同様にして、第2基板12上に、第1領域2aおよび第2領域2bを含む第2透明導電層2を形成した。
・ナノ結晶粒子の分散液の作製(ステップS2)
ナノ結晶粒子と、溶媒(分散媒)とを混合して2時間撹拌し、ナノ結晶粒子の分散液を得た。ナノ結晶粒子として、平均粒径が20nmのATOナノ結晶粒子(大日本塗料製)を15g用いた。溶媒として、IBOH(イソブタノール)を30g用いた。
・ナノ結晶層の形成(ステップS3)
第1基板11上、より具体的には第1透明導電層1の第1領域1a上に、ATOナノ結晶粒子の分散液をスピンコート法により塗布し、ホットプレート上で90℃で5分間乾燥させた。乾燥後、オーブンにおいて100℃で1分間、150℃で1分間、100℃で1分間焼成を行った。焼成後、500mJ/cmの露光量で紫外線照射による焼結を行い、ナノ結晶層3を得た。
・基板の貼り合わせ(ステップS4)
まず、シール部5を形成するためのUV硬化型樹脂(株式会社スリーボンド製TB3035B)を、ナノ結晶層3の一部上(外周上)に、厚さ500μmで塗布した。後に電解液を注入するための注液口となる領域には、塗布を行わなかった。
次に、第1基板11と第2基板12とを、ナノ結晶層3と第2透明導電層2とが対向するように貼り合わせ、紫外線照射によりUV硬化型樹脂を硬化させた。
・電解液の注入・封止(ステップS5)
第1基板11と第2基板12との間(ナノ結晶層3と第2透明導電層2との間)に、電解質としてLiTFSI(キシダ化学製)を1Mの濃度で含む電解液を注液口から注入した。電解液は、溶媒としてEC(Ethylene Carbonate:キシダ化学製)およびDMC(Dimethyl Carbonate:キシダ化学製)を1:1で含む。また、電解液は、ゲル化剤としてエーテル系2元共重合体のポリマー(株式会社大阪ソーダ製)を10質量%含み、開始剤としてベンゾフェノンをポリマーに対して4質量%含む。その後、UV硬化型樹脂(株式会社スリーボンド製3035B)を注液口に塗布して硬化させることによって封止を行った。
このようにして、実施例のエレクトロクロミック素子300が得られた。
・比較例
第1透明導電層および第2透明導電層が第2領域(高キャリア密度領域)を含まない点以外は実施例と同様にして、比較例のエレクトロクロミック素子を作製した。
・キャリア密度の測定
キャリア密度の測定は、ホール測定により行った。ホール測定には、ナノメトリクス社製のホール効果測定システムHL5500PCを用いた。
実施例の第1透明導電層1について測定を行ったところ、第1領域1a(低キャリア密度ITO膜)のキャリア密度は3.69×1020cm−3、第2領域1b(高キャリア密度ITO膜)のキャリア密度は9.23×1020cm−3であった。
・光透過率の測定
透過率の測定は、下記表1に示す条件で行った。なお、表1中の「印加電圧」は、第2透明導電層2の電位を基準としたときの第1透明導電層1の電位である。
Figure 2021001994
図14に、実施例および比較例について、透過率の測定結果を示す。図14に示すように、印加電圧が−3Vの時(つまり赤外光遮断状態において)、実施例の透過率と、比較例の透過率とはほぼ同じである。これに対し、印加電圧が+3Vの時(つまり赤外光透過状態において)、実施例の透過率は、比較例の透過率よりも高い。このように、本発明の実施形態により、透過率のロスが抑制されることが確認された。なお、透過率のロスが抑制される理由は、以下のように考えられる。比較例のエレクトロクロミック素子では、第1透明導電層と配線との間、および、第2透明導電層と配線との間での接触抵抗が高いことにより、ナノ結晶層および電解質層への実効的な印加電圧が低下し、それによって透過率のロスが生じる。これに対し、実施例のエレクトロクロミック素子300では、第1透明導電層1と配線6Aとの間、および、第2透明導電層2と配線6Bとの間での接触抵抗が低くなることにより、ナノ結晶層3および電解質層4への実効的な印加電圧の低下が抑制され、そのことによって透過率のロスが抑制される。
[第2領域(高キャリア密度領域)の他の配置例]
ここまでの説明では、第1透明導電層1の第2領域1bおよび/または第2透明導電層2の第2領域2bが、シール部5よりも内側に位置する部分を含まない構成を例示したが、第1透明導電層1の第2領域1bおよび/または第2透明導電層2の第2領域2bは、シール部5よりも内側に位置する部分をさらに含んでもよい。図15Aおよび図15Bに、そのような構成の例を示す。
図15Aに示す例では、第1透明導電層1の第2領域1bは、シール部5よりも外側に位置する部分1bbに加えて、第1基板11の法線方向から見たときにシール部5よりも内側に位置する部分1baを含んでいる。また、図15Bに示す例では、第2透明導電層2の第2領域2bは、シール部5よりも外側に位置する部分2bbに加えて、第2基板12の法線方向から見たときにシール部5よりも内側に位置する部分2baを含んでいる。
第1透明導電層1の、シール部5の内側側面5a近傍に位置する部分は、電圧印加時に電界が集中して腐食が生じやすいことがある。図15Aに示すように、第1透明導電層1の第2領域1bがシール部5よりも内側に位置する部分1baを含んでいることにより、そのような腐食に対する耐性を高くして信頼性を向上させることができる。同様に、第2透明導電層2の、シール部5の内側側面5a近傍に位置する部分は、電圧印加時に電界が集中して腐食が生じやすいことがある。図15Bに示すように、第2透明導電層2の第2領域2bがシール部5よりも内側に位置する部分2baを含んでいることにより、そのような腐食に対する耐性を高くして信頼性を向上させることができる。
(実施形態4)
実施形態1、2および3のエレクトロクロミック素子100、200および300は、例えばスマートウィンドウ(調光窓)に好適に用いることができる。エレクトロクロミック素子100、200および300を、窓の透光板(ガラス板やアクリル板)に重ねて設置することにより、可視光域の透過率を保持したまま、室外からの近赤外域の透過スペクトルを切り替えて日射熱取得率を制御することができる。
以下、図16および図17を参照しながら、本実施形態におけるスマートウィンドウ400を説明する。図16および図17は、それぞれスマートウィンドウ400を模式的に示す正面図および断面図である。図17は、図16中の17A−17A’線に沿った断面を示している。
本実施形態のスマートウィンドウ400は、いわゆる引違い窓である。スマートウィンドウ400は、図16に示すように、屋外側(奥側)に配置された第1サッシ20Aと、屋内側(手前側)に配置された第2サッシ20Bと、施錠を行うための施錠装置(例えばクレセント錠)21とを備える。
第1サッシ20Aおよび第2サッシ20Bのそれぞれは、ガラス板22、框23およびエレクトロクロミック素子100を有する。框23は、枠状であり、ガラス板22を支持している。逆に言うと、ガラス板22は、框23の開口部に嵌め込まれている。エレクトロクロミック素子100は、図17に示すように、ガラス板22の屋内側の表面に貼り付けられている。
図17に例示したように、エレクトロクロミック素子100をガラス板22の屋内側に配置すると、風雨などの影響による、エレクトロクロミック素子100の汚れや傷を防ぐことができる。
なお、エレクトロクロミック素子100の動作に電源や回路等は、例えばサッシ(第1サッシ20Aまたは第2サッシ20B)内に配置されてもよい。
また、スマートウィンドウ400の第1サッシ20Aおよび第2サッシ20Bのそれぞれは、2枚以上のガラス板を有してもよい。例えば、図18に示すように、第1サッシ20A(または第2サッシ20B)は、屋外側に配置された外側ガラス板22Aと、屋内側に配置された内側ガラス板22Bとを有してもよい。エレクトロクロミック素子100は、外側ガラス板22Aと内側ガラス板22Bとの間に配置されている。より具体的には、エレクトロクロミック素子100は、内側ガラス板22Bの屋外側の表面に貼り付けられている。
図18に示したように、外側ガラス板22Aと内側ガラス板22Bとの間にエレクトロクロミック素子100を配置することにより、風雨の影響による汚れ、傷を防ぐとともに、屋内側の要因による汚れ、傷を防ぐこともできる。また、図18に例示しているように、エレクトロクロミック素子100を、外側ガラス板22Aではなく、内側ガラス板22Bに貼り付けることにより、エレクトロクロミック素子100が屋外からの熱伝導や振動の影響を受けにくくなるので、信頼性が向上する。
なお、第1サッシ20Aおよび第2サッシ20Bのそれぞれは、3枚以上のガラス板を有してもよい。例えば、図19Aおよび図19Bに示すように、第1サッシ20Aおよび第2サッシ20Bのそれぞれは、外側ガラス板22Aおよび内側ガラス板22Bに加え、これらの間に配置された中間ガラス板22Cを有してもよい。
図19Aに示す例では、エレクトロクロミック素子100は、外側ガラス板22Aと中間ガラス板22Cとの間に配置されている。より具体的には、エレクトロクロミック素子100は、中間ガラス板22Cの屋外側の表面に貼り付けられている。図19Bに示す例では、エレクトロクロミック素子100は、内側ガラス板22Bと中間ガラス板22Cとの間に配置されている。より具体的には、エレクトロクロミック素子100は、中間ガラス板22Cの屋内側の表面に貼り付けられている。
図19Aおよび図19Bに示したように、外側ガラス板22Aと中間ガラス板22Cとの間、または、内側ガラス板22Bと中間ガラス板22Cとの間にエレクトロクロミック素子100を配置することにより、風雨の影響による汚れ、傷を防ぐとともに、屋内側の要因による汚れ、傷を防ぐこともできる。また、エレクトロクロミック素子100を、外側ガラス板22Aではなく、中間ガラス板22Cに貼り付けることにより、エレクトロクロミック素子100が屋外からの熱伝導や振動の影響を受けにくくなるので、信頼性が向上する。
(実施形態5)
図20を参照しながら、本実施形態におけるスマートウィンドウ500を説明する。図20は、スマートウィンドウ500を模式的に示すブロック図である。
スマートウィンドウ500は、図20に示すように、調光装置30と、制御回路31とを備える。
調光装置30は、エレクトロクロミック素子(例えばエレクトロクロミック素子100、200または300)を含む窓状の部分であり、いわばスマートウィンドウ500の本体部である。
制御回路31は、調光装置30の動作を制御する。制御回路31は、例えば、CPU(Central Processing Unit)や専用プロセッサ等の演算部と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の記憶部とを有する。
図20に示す例では、制御回路31は、人間の所在を感知する人感センサー40からの信号に応じて制御を行う。これにより、例えば、人間がスマートウィンドウ500に近付くと、調光装置30のエレクトロクロミック素子を可視光を透過する状態から可視光を散乱する状態(すりガラスのように視認される状態)に切り替えることが可能になる。
人感センサー40と制御回路31との間、および、制御回路31と調光装置30との間における信号およびデータのやり取りは、有線通信で行われてもよいし、無線通信で行われてもよい。また、ユーザによる入力を受け付けるスイッチ部を設け、手動により状態の切り替えを行ってもよい。
図21に、スマートウィンドウ500の他の態様を示す。図21に示す例では、制御回路31は、屋外の温度を検知する屋外温度センサー41および屋内の温度を検知する屋内温度センサー42からの信号に応じて制御を行う。これにより、屋内の設定温度に対して屋内の実温度が低い場合(例えば設定温度が24℃で屋内の実温度が18℃の場合)には、調光装置30のエレクトロクロミック素子を近赤外光を透過する状態にして屋内の温度を高くし、屋内の設定温度に対して屋内の実温度が高い場合には、調光装置30のエレクトロクロミック素子を近赤外光を遮断する状態にして屋内の温度を低くすることができる。
なお、屋外温度センサー41に代えて、屋外の照度を検知する屋外照度センサーを設け、制御回路31が屋外照度センサーからの信号に応じて制御を行ってもよい。また、屋内温度センサー42は、屋内の人間の体温を検知してもよい。
図22に、スマートウィンドウ500のさらに他の態様を示す。図22に示す例では、制御回路31は、屋外温度センサー41からの信号に応じて制御を行うだけでなく、ネットワーク(例えばインターネット)からの情報(例えば天気予報情報)に応じて制御を行うこともできる。
図23に、スマートウィンドウ500のさらに他の態様を示す。図23に示す例では、制御回路31は、屋外温度センサー41からの信号に応じて制御を行うだけでなく、現在の季節や日の出・日没時間等に関する情報に応じて制御を行うこともできる。これにより、例えば、近赤外光の透過率を、午前9時には最大、午前12時には最大時の約50%、午後7時には最小、とすることができる。なお、季節や日の出・日没時間に関する情報は、あらかじめ制御回路31に入力されていてもよいし、ネットワークから入手されてもよい。
なお、本開示の実施形態によるエレクトロクロミック素子は、窓ガラス以外のものに設置されてもよく、例えば、農業用のビニールハウスに設置されてもよい。
本開示の実施形態によると、透明導電層が近赤外光に対する高い光透過率を有することと、透明導電層と配線との間での低い接触抵抗を得ることとを両立し得るエレクトロクロミック素子が提供される。
1 第1透明導電層
1a 第1透明導電層の第1領域
1aa 第1領域の、シール部によって囲まれた部分
1ab 第1領域の、シール部よりも外側に位置する部分
1b 第1透明導電層の第2領域
1ba 第2領域の、シール部よりも内側に位置する部分
1bb 第2領域の、シール部よりも外側に位置する部分
2 第2透明導電層
2a 第2透明導電層の第1領域
2aa 第1領域の、シール部によって囲まれた部分
2ab 第1領域の、シール部よりも外側に位置する部分
2b 第2透明導電層の第2領域
2ba 第2領域の、シール部よりも内側に位置する部分
2bb 第2領域の、シール部よりも外側に位置する部分
3 ナノ結晶層
4 電解質層
5 シール部
6A、6B 配線
7 電源
8 スペーサ
9 接合材
11 第1透明基板
12 第2透明基板
20A 第1サッシ
20B 第2サッシ
21 施錠装置
22 ガラス板
22A 外側ガラス板
22B 内側ガラス板
22C 中間ガラス板
23 框
30 調光装置
31 制御回路
100、200、300 エレクトロクロミック素子
400、500 スマートウィンドウ

Claims (13)

  1. 第1透明基板と、
    前記第1透明基板上に設けられた第1透明導電層と、
    前記第1透明導電層上に設けられ、ナノ結晶粒子を含むナノ結晶層と、
    前記第1透明基板に対向するように配置された第2透明基板と、
    前記第2透明基板上に設けられ、前記ナノ結晶層に対向するように配置された第2透明導電層と、
    前記ナノ結晶層と前記第2透明導電層との間に設けられた電解質層と、
    前記第1透明基板と前記第2透明基板との間に設けられ、前記電解質層を包囲するように配置されたシール部と、
    を備え、
    前記第1透明導電層および前記第2透明導電層の少なくとも一方は、前記シール部によって囲まれた部分を含む第1領域と、前記シール部よりも外側に位置する部分を含む第2領域とを有し、
    前記第2領域のキャリア密度は、前記第1領域のキャリア密度よりも高い、エレクトロクロミック素子。
  2. 前記第1透明導電層および前記第2透明導電層のうちの前記第1透明導電層が、前記第1領域および前記第2領域を有する、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
  3. 前記第1透明導電層および前記第2透明導電層のうちの前記第2透明導電層が、前記第1領域および前記第2領域を有する、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
  4. 前記第1透明導電層および前記第2透明導電層の両方が、前記第1領域および前記第2領域を有する、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
  5. 前記第1領域のキャリア密度は、5×1020cm−3以下である、請求項1から4のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  6. 前記第2領域のキャリア密度は、8×1020cm−3以上である、請求項1から5のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  7. 前記第2領域の厚さは、前記第1領域の厚さよりも大きい、請求項1から6のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  8. 前記第1領域の厚さは、1nm以上100nm以下である、請求項1から7のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  9. 前記第1領域の酸素濃度は、前記第2領域の酸素濃度よりも高い、請求項1から8のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  10. 前記第1透明導電層および前記第2透明導電層のうちの前記第1領域および前記第2領域を有する透明導電層は、錫ドープ酸化インジウムまたは酸化亜鉛から形成されている、請求項1から9のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  11. 前記第1領域は、前記シール部よりも外側に位置する部分をさらに含み、
    前記第1領域の前記シール部よりも外側に位置する部分上に、前記第2領域の前記シール部よりも外側に位置する部分が位置している、請求項1から10のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  12. 前記第2領域は、前記シール部よりも内側に位置する部分をさらに含む、請求項1から11のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  13. 請求項1から12のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子を備えたスマートウィンドウ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102493454B1 (ko) * 2022-07-27 2023-01-30 주식회사 윈플랜 내진성 및 단열성이 향상된 스마트 커튼월 창호

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