JP2020531076A - パルス磁気粒子イメージングシステム及び方法 - Google Patents

パルス磁気粒子イメージングシステム及び方法 Download PDF

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Abstract

パルス磁気粒子イメージングシステムは、少なくとも1つの磁石を含む磁場発生システムであって、磁気粒子イメージングシステムの観察領域内に空間的に構造化された磁場を設けて、空間的に構造化された磁場が、内部に磁気ナノ粒子トレーサー分布を有する観察物体に対する無磁場領域(FFR)を有するようにする磁場発生システムを含む。パルス磁気粒子イメージングシステムはまた、観察領域に隣接して配設されたパルス励起システムであって、電磁石とパルスシーケンス発生器とを含み、パルスシーケンス発生器は電磁石に電気的に接続されて電磁石に励起波形を与え、電磁石は、励起波形が与えられると、FFRの場所または状態をシフトさせることの少なくとも一方によって、観察領域内に励起磁場を発生させてそこから励起信号を誘起する、パルス励起システムを含む。パルス磁気粒子イメージングシステムはさらに、観察領域に隣接して配設された検出システムであって、励起信号を検出して検出信号を得るように構成された検出システムを含む。励起波形は過渡的部分と実質的に一定の部分とを含む。【選択図】図1A

Description

関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第62/546,395号(2017年8月16日に出願)に対する優先権を主張する。なおこの文献の全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
本発明は、米国国立衛生研究所から授与された認可番号EB019458及びMH106053の下で政府支援によってなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
本発明の現時点で請求されている実施形態の分野は、磁気粒子イメージング(MPI)デバイス及び方法に関する。MPIは、対象領域内の磁気ナノ粒子トレーサーの画像を構成するイメージング様式である。
本発明の実施形態によるパルス磁気粒子イメージングシステムは、少なくとも1つの磁石を含む磁場発生システムであって、磁気粒子イメージングシステムの観察領域内に空間的に構造化された磁場を設けて、空間的に構造化された磁場が、内部に磁気ナノ粒子トレーサー分布を有する観察物体に対する無磁場領域(FFR)を有するようにする磁場発生システムを含む。パルス磁気粒子イメージングシステムはまた、観察領域に隣接して配設されたパルス励起システムであって、電磁石とパルスシーケンス発生器とを含み、パルスシーケンス発生器は電磁石に電気的に接続されて電磁石に励起波形を与え、電磁石は、励起波形が与えられると、FFRの場所または状態をシフトさせることの少なくとも一方によって、観察領域内に励起磁場を発生させてそこから励起信号を誘起する、パルス励起システムを含む。パルス磁気粒子イメージングシステムはさらに、観察領域に隣接して配設された検出システムであって、励起信号を検出して検出信号を得るように構成された検出システムを含む。励起波形は過渡的部分と実質的に一定の部分とを含む。
本発明の実施形態による磁気ナノ粒子トレーサーを用いて物体をイメージングする方法は、物体に磁気ナノ粒子トレーサーを与えることと、FFRを有する空間的に構造化された磁場を印加して、FFRと空間的に構造化された磁場の周囲領域とが、磁気ナノ粒子トレーサーの少なくとも一部を含む領域において観察物体を遮断するようにすることと、FFRの特性またはFFRの位置を変えることの少なくとも一方によって磁気ナノ粒子トレーサーの一部を励起することと、FFRの特性及びFFRの位置が実質的に一定である間に、励起に起因する磁気ナノ粒子トレーサーの磁化の変化を検出して、検出信号を取得することと、物体内のFFRの複数の異なる場所に対して励起及び検出を繰り返して、複数の検出信号を取得することと、複数の検出信号を処理して物体の領域の画像をレンダリングすることと、を含む。
本発明の実施形態によるパルス磁気粒子イメージングシステムとともにまたはその一部として用いるデバイスは、サンプル観察領域に隣接して配設されたパルス励起システムであって、電磁石とパルスシーケンス発生器とを含み、パルスシーケンス発生器は電磁石に電気的に接続されて電磁石に励起波形を与え、電磁石は、サンプル観察領域内に磁場を与えて、サンプル観察領域内にサンプルホルダーによって保持されたときにサンプルから励起信号を発生させるパルス励起システムを含む。本デバイスはさらに、サンプル観察領域に隣接して配設された検出システムであって、サンプルから励起信号を検出して検出信号を得るように構成された検出システムを含む。励起波形は過渡的部分と実質的に一定の部分とを含む。
さらなる目的及び利点は、記載、図面、及び実施例を考察することから明らかになる。
本発明の実施形態によるパルス磁気粒子イメージングシステムの概略図である。 本発明の実施形態によるパルスMPIエンコーディングに対する基本成分の概略図である。 本発明の実施形態による勾配磁場を伴う異なるFFR構造の設定を示す図である。 本発明のいくつかの実施形態による空間的に均質な磁場を印加して空間的に均一な磁場に勾配磁場を重ねる駆動または励起コイルの配置の例を示す図である。 本発明のいくつかの実施形態による種々の継続時間(t1)、振幅、及び極性を伴う実質的に一定の成分を含むパルスMPI波形の例を示す図である。 本発明のいくつかの実施形態によるパルスMPIにおけるパルスの過渡的部分の例を示す図である。これらの過渡的部分は、急速に移行する時間t2のウィンドウ内で十分に生じ得る。破線は、過渡的部分がt2閾値時間内の任意の軌跡によって特徴付けられるような実施形態の変化を示す。 本発明のいくつかの実施形態によるパルスMPIエンコーディングにおいて用いられる過渡パルスの例を示す図である。これらの過渡的部分には、急速に移行する時間ウィンドウ内で生じる部分、実質的に一定である部分、または両方が含まれ得る。 本発明のいくつかの実施形態によるMPIにおいて理想的なPSFであるMPI磁気トレーサー磁化曲線及び微分を示す図である。 本発明のいくつかの実施形態による励起パルス成分のブロック図である。 本発明のいくつかの実施形態によるパルス波形成分の図である。 本発明の実施形態によるある状態のトレーサーを選択的にゼロにすることを示す特定のパルス波形図である。 本発明の実施形態による実験に基づいた方形波時間ドメインデータ及び定常状態M−H曲線に対する関係を示す図である。 本発明の実施形態による勾配磁場の存在下での時間緩和エンコーディングを示す図である。 本発明の実施形態による異なる時間ドメイン緩和ダイナミクスを示すAWR実験データと全印加磁場の関数としての測定されたインパルス応答とを示す図である。 本発明の実施形態による直交配置にある励起コイルを駆動する一連のパルスによるFFR平行移動の例を示す図である。 本発明の実施形態によるFFLの方向での励起のx空間結果を示す図である。これにより、低磁場線(LFL)であって、FFL形状及び空間的構造が維持されるが、対称中心線が0磁場を通らない(何らかの磁場の大きさでバイアスされる)低磁場線が形成される。線に沿ったパルス励起、直交励起による線のバイアシング、または両方を行ってもよい。 本発明の実施形態によるイメージングスキャン前の速い無勾配スキャンを用いたパラメータ最適化を示す図である。 本発明の実施形態によるFFLにより複数の2D投影データセットが取得されたx空間パルスMPIパルスシーケンス及びFFL軌跡図の例を示す図である。異なる投影角における様々な2D投影データセットには、3Dトモグラフィ画像を再構成するために必要な情報が含まれる。 本発明の実施形態によるシフト波形からの平均FFR場所に対応付けられる繰り返し励起パルスシーケンスを示す図である。 本発明の実施形態による楕円体トレーサー分布をサンプリングする方形波パルスシーケンス及び空間内でのFFRの平均場所の軌跡を示す図である。 本発明の実施形態による定常状態再生シーケンス及びAWRデータを示す図である。 本発明の実施形態によるFFRによる場所の直交ベースの旋回及び空間内での軌跡を示す図である。 本発明のいくつかの実施形態による勾配波形の例を示す図である。 本発明の実施形態によるデジタル信号処理及び再構成ブロック図である。 本発明によるパルスMPIにおける画像形成の概略的な実施形態の概略図である。 本発明の実施形態によるパルスMPIにおける包括的なx空間グリッディングを示す図である。 従来のMPI、方形波パルスMPI、及び緩和加重パルスMPIの間の実験による分解能比較を示す図である。 実験に基づいたPSF比較データ及び外挿された2Dシミュレーションを示す図である。 パルス励起実験データによる平均FFR場所に対する直接積分グリッディングを例示する図である。 本発明の実施形態による局所的なpFOV投影再構成を説明する図である。 本発明の実施形態による完全なFOV投影再構成を説明する図である。 本発明の実施形態による実験データを用いた緩和加重再構成を例示する図である。 パルスMPI文脈において受信帯域幅の低減を用いて分解能を向上させるためのフィルタリングを用いた実験データであり、受信帯域幅の関数としての実験によるピーク信号及びFWHMを含む図である。 本発明の実施形態による緩和加重分解の例を示す図である。 本発明の実施形態によるパルスMPIにおける緩和情報のエンコーディングの概略的な構成及び関連する再構成方法を示す図である。 本発明の実施形態によるパルス励起を用いて平均FFR場所に実験に基づいた緩和画像データをグリッディングすることによって行う緩和画像再構成を例示する図である。 本発明の実施形態によるトレーサー磁気緩和の定常状態再生の定量化を示す図である。 本発明の実施形態による異なる粒子、励起振幅などに対する方形波再構成を示す図である。 本発明の実施形態による異なる磁気コアサイズの粒子に対する緩和マップ再構成を示す図である。 本発明の実施形態による異なるウィンドウ処理オプションを伴う緩和加重PSFを示す図である。 本発明の実施形態によりブラウン物理過程を示すMPIトレーサーを用いて、測定した緩和時定数を流体粘性に相関づけるためにパルスMPIを用いた実験に基づく粘度測定を例示する図である。 本発明の実施形態による配位子含有混合物の導入に対するMPI粒子の感度を示す実験データを示す図である。著しいブラウン物理過程を伴うトレーサーは、配位子混合物が添加されてそれに対する受容体をトレーサーが有するときに(左)、かなりの変化を示す。たとえ受容体がなくても、ブラウントレーサーは、粘度及び微環境の他の状態の変化に起因して、配位子混合物を添加した後に異なる緩和挙動を示す。トレーサーは、著しいブラウン性質を伴わずニールが支配的である場合には、微環境の変化及び結合事象に対する感度を示さない。 本発明のいくつかの実施形態に対する汎用的なエレクトロニクスブロック図である。 本発明の実施形態によるパルスMPIスキャナシステムの概略図である。 本発明の実施形態による磁石及びパッシブな磁束ガイドを用いてFFRを発生させるいくつかの例を示す図である。 本発明の実施形態による線形電力増幅器を用いたパルス励起に対する送信システムを示す図である。 本発明の実施形態によるパルスMPI励起に対する切り替え送信回路の実施形態を示す図である。 本発明の実施形態によるAWRデバイスの説明図である。 切断線48で取った図47のAWRデバイスの断面図である。 本発明の実施形態による受信部チェーンを例示する図である。 本発明の実施形態によるVGA、プリエンファシスを用いることを示すデータを提供する図である。 本発明の実施形態によるモジュラ/スワップ可能なパルスMPIハードウェアの概略図である。 本発明の実施形態によるパルスMPI波形に対するハードウェアを可能にするシーケンス発生器のモデルの概略図である。 本発明の実施形態による送信切替器回路の例を示す図である。 2Dパルス磁気粒子イメージング(pMPI)結果をアナログ正弦波励起2Dイメージング及び理論と比較して2Dパルスイメージングを実証する実験データを示し、pMPIを用いて可能な分解能向上を実証する図である。 本発明の実施形態による無磁場線スキャナを用いたMPI取得におけるパルスエンコーディングの概略図である。 従来の正弦波法と比較してパルスエンコーディングがどうやって緩和ダイナミクスを取り込むかを表現し、正弦波励起ができないときにパルスMPIがどうやって定常状態磁化情報を取り込むことができるかを示す図である。 実質的に一定の保持時間とパルスMPI性能との間の関係を示す実験データを示す図である。 パルスMPI励起における実質的に一定の保持時間の間で用いる励起の動的/過渡的領域の種々の立ち上がり時間の効果を示す実験データを示す図である。たとえば、これは、パルス励起において明白な台形波形を用いたとき対理想的な方形波形に近いものを用いたときの効果を示す。 本発明の実施形態により、定常状態再生パルスシーケンスを用いて1D緩和画像を生成し、pHの関数としてのトレーサーの動的な緩和挙動の変化を検出する典型的な実験データを示す図である。
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。実施形態を説明する際に、明瞭にするために特定の専門用語を用いる。しかし本発明は、そのような選択された特定の専門用語に限定されることは意図されていない。当業者であれば分かるように、他の均等物コンポーネントを用いることができ、また本発明の広いコンセプトから逸脱することなく他の方法を作り出すことができる。本明細書のいずれかで引用された参考文献はすべて、背景及び発明を実施するための形態のセクションも含めて、それぞれが別個に取り入れられたかのように参照により組み込まれている。
本発明のいくつかの実施形態は、新しく及び/または改善されたMPIシステム及び方法を対象としている。たとえば、いくつかの実施形態では、実質的に平坦または一定の成分を含むパルス波形がMPIスキャニングプロセスの間に用いられる空間的に均一な励起または駆動磁場に対する代替的な典型例が用いられる。
図1Aは、本発明の実施形態によるパルス磁気粒子イメージング(pMPI)システム100の概略図である。pMPIシステム100は磁場発生システム102を含み、磁場発生システム102には少なくとも一対の磁石104が含まれている。いくつかの実施形態では、磁場発生システム102は、第2の対の磁石105を有することができ、またはいくつかの実施形態では磁石アレイもしくは二対を超える磁石でさえ有することができる。磁石104、105などは永久磁石、電磁石、または両方の組み合わせとすることができる。磁石104、105などの配置のいくつかの例について、以下でより詳細に説明する。磁場発生システム102は、空間的に構造化された磁場を磁気粒子イメージングシステム100の観察領域106内に設けて、空間的に構造化された磁場が観察物体に対する無磁場領域(FFR)を画定するようにする。観察物体は内部に磁気ナノ粒子トレーサー分布を有している。
用語無磁場領域(FFR)は、対象物体内にトレーサーの分布が含まれているときに、構成された磁場のうちの、磁気ナノ粒子トレーサーに対応付けられる飽和磁場強度を下回る部分を指すことが意図されている。なお、FFRは磁場が領域の全体にわたってゼロであることを意味するものではない。FFRは、たとえば、点の周りの局所領域、線の周りの局所領域、または平面の周りの局所領域とすることができる。
pMPIシステム100はまた、観察領域106に隣接して配設されたパルス励起システム108を含んでいる。パルス励起システム108には、電磁石110とパルスシーケンス発生器132とが含まれている。パルスシーケンス発生器132は電磁石110に電気的に接続されて、電磁石110に励起波形を与える。しかし、パルス励起システム108は1つの電磁石110のみに限定されるものではないことに注意されたい。電磁石の特定の数に関して限定することなく、1つ、2つ、3つ、4つ以上の電磁石とすることができる。電磁石110は、観察領域106内に励起磁場を発生させて、FFRの場所または状態をシフトさせることの少なくとも一方によって、観察物体から励起信号を誘起する。語句「FFRの状態」は、たとえば、サイズ、具体的な形状、バイアシング磁場の付加、及び/またはFFRにおける磁場分布とすることができる。パルス励起システム108ならびにそこから発生する波形の種々の実施形態について、いくつかの特定の例に対して以下でより詳細に説明する。しかし、本発明の概略的なコンセプトはこれらの特定の実施形態に限定されない。
pMPIシステム100はさらに、観察領域106に隣接して配設された検出システム112を含んでいる。検出システム112は観察物体からの励起信号を検出して検出信号114を得るように構成されている。いくつかの実施形態では、検出システム112には1つ以上の受信部コイル(たとえば、受信部コイル116)を含めることができる。いくつかの実施形態では、受信部コイルの特定の数に関して限定することなく、1つの受信部コイル、または2つの受信部コイル、または3つの受信部コイルなどとすることができる。略語Tx及びRxは送信部及び受信部をそれぞれ意味する。検出システム112のいくつかの実施形態について、以下でより詳細に説明する。しかし、本発明の概略的なコンセプトは、説明する特定の例のみに限定されるものではない。パルス励起システム108によって生成された励起波形には、過渡的部分と実質的に一定の部分とが含まれる。波形には1つのパルスまたは複数のパルスが含まれていてもよい。波形にははまた、パルスではない1つ以上の部分が含まれていてもよい。用語「パルス」とは、信号のうちの、少なくとも1つの過渡的部分を含む部分であって、過渡的部分は実質的に一定の信号の隣接部分から区別できるものを指す。実質的に一定であるとは、過渡的部分の時間変動と比べて遅い時間変動を意味する。たとえば、いくつかの実施形態では、本発明の概略的なコンセプトに対して限定することなく、過渡的部分は、実質的に一定の部分の変化の2倍の速度で、3倍の速度で、10倍の速度で、何桁も速い速度で、またはそれらの中間の値で経時変化している可能性がある。たとえば、パルスは単純な形状、たとえば限定することなくスパイクとすることができる。しかし、パルスはより複雑な構造を有して複数の過渡的部分と複数の実質的に一定の部分とを含むことができる。パルスは、信号の隣接する実質的に一定の部分と比べて継続時間(すなわち、時間)を短くすることができる。隣接する実質的に一定の部分は等しくある必要はない。短いとは、本発明の概略的なコンセプトに対して限定することなく、少なくとも2分の1の短さ、10分の1の短さ、何桁もの短さなどとすることができる。
いくつかの実施形態では、pMPIシステム100にはさらに、少なくとも磁場発生システム102とパルス磁気粒子イメージングシステム100の周囲の環境とから観察領域106を電磁的に分離するように観察領域106を内部に十分に囲むように配設された電磁シールド118が含まれる。電磁シールド118は金属シールド、たとえば、限定することなく、銅板及び/または銅の合金から形成されたシールドとすることができる。このシールドの厚さは、予想または所望のTx及びRx帯域幅によって規定してもよい。たとえば、厚さを、表皮深さがすべてのRx帯域幅干渉信号をブロックするが、ある信号(たとえば、スローシフト磁場)を著しい減衰を伴わずに通すように選択してもよい。たとえば、シールドは約2〜5mm厚の実質的に純粋な銅とすることができる。しかし、電磁シールド118はこれらの例に限定されず、種々の形状、厚さなどの他の金属から構成することができる。なお、十分に囲まれたシールディングシステムを用いることは双方向のEMIシールディングにとって重要であることに注意されたい。影響を受けやすいRx信号を、外部または環境の干渉及びノイズ源から、ならびにシステム100の他の部品(たとえば、FFRを発生及び/またはシフトさせる磁石システム104、105、130、136等及びパッシブな磁場収束システム120)内で生じる干渉及びノイズ源からシールドしてもよい。さらに、また重要なこととして、これらの磁石システム104、105、130、136及びパッシブな磁場収束システム120自体は、Txコイル110によって生成される強力な磁場からシールドされて、磁気飽和及び他の不都合な相互作用を防いでいる。
いくつかの実施形態では、後に詳細に説明するように、少なくともパルス励起システム108の送信部分(たとえば、Txコイル110)と検出システム112の受信部分(たとえば、Rxコイル116)とは、電磁シールド118内に囲まれている。
いくつかの実施形態では、磁場発生システム102にはまた、パッシブな磁場収束素子120(たとえば、軟磁性材料)を含めることができる。パッシブな磁場収束素子120は、磁力線を内部の所望の経路に収束させる(すなわち、集中させる)かそうでなければガイドするような形状に構成されて少なくとも1つの磁石104に対して配設されている。図1Aにこれらの構造を概略的に表す。さらなる例について以下でより詳細に例示する。
いくつかの実施形態では、検出システム112を、実質的に励起波形の実質的に一定の部分の間のみで励起信号を検出して励起波形の過渡的部分の間のフィードスルー干渉を回避して、検出信号を得るように構成することができる。たとえば、このような機能が得られるように電子回路を設けることができる。検出システム112は、ハードワイヤードコンポーネントとすることも、ハードワイヤードコンポーネントを含むこともでき、及び/またはプログラム可能な構造を含むこともできる。いずれにしても、これらは構造部品と解釈すべきである。なぜならば、プログラム可能な構造は、ハードワイヤードコンポーネント(たとえば、限定することなく、ASIC及び/またはFPGAなど)と交換可能であるからである。いくつかの実施形態では、検出システム112は、励起波形の過渡的部分の間にまたは励起波形の過渡的部分と実質的に一定の部分との両方の間に励起信号を検出するように構成することができる。
いくつかの実施形態では、励起波形の実質的に一定の部分は少なくとも500ナノ秒で500ミリ秒未満である。いくつかの実施形態では、励起波形の実質的に一定の部分は、励起波形の目標振幅の約10%以内で一定である。いくつかの実施形態では、励起波形の過渡的部分は継続時間が少なくとも100ナノ秒で100マイクロセカンド未満である。いくつかの実施形態では、励起波形には磁化準備部分と読み出し部分とが含まれ、磁化準備部分には過渡的部分の少なくとも一部が含まれ、読み出し部分には一定部分の少なくとも一部が含まれている。いくつかの実施形態では、磁化準備部分は、FFRの近傍にあるトレーサー磁化の状態を、読み出し部分の前のトレーサーの磁気緩和特性に基づいて動的に構成する。いくつかの実施形態では、磁化準備は、読み出し部分の間の特定の緩和状態または物理的場所に対応付けられるトレーサーからの信号を選択的にゼロにする。いくつかの実施形態では、磁化準備は、再構成画像における空間分解能を向上させるようにトレーサー磁化をエンコードする。いくつかの実施形態では、実質的に一定の部分はFFRにおける磁気ナノ粒子トレーサーに対する緩和時間よりも長い。いくつかの実施形態では、読み出し部分はFFRにおける磁気ナノ粒子トレーサーに対する緩和時間よりも長い。いくつかの実施形態では、実質的に一定の部分は、前記FFRにおける磁気ナノ粒子トレーサー内に定常状態磁化を設定するのに十分に長い。いくつかの実施形態では、読み出し部分は、前記FFRにおける磁気ナノ粒子トレーサー内に定常状態磁化を設定するのに十分に長い。図57に、定常状態磁化の実現を、たとえば、分解能と読み出し部分もしくは実質的に一定の部分の長さとの間の実験に基づいた関係、またはピーク信号強度と読み出し部分もしくは実質的に一定の部分の長さとの間の実験に基づいた関係を観察することによって、どのように測定できるかを実証するデータを示す。たとえば、最初は、読み出し部分または実質的に一定の部分は定常状態を実現するには短すぎるが、読み出し部分または実質的に一定の部分の長さが長くなると、実験に基づいた分解能またはピーク信号強度値は最終的に横ばいになり、読み出し部分の長さまたは実質的に一定の部分の長さがトレーサーの定常状態磁化を設定するのに十分なものとなる。このように、トレーサーの磁気的挙動の何らの演繹的知識も用いずに、望ましい読み出し部分の長さまたは実質的に一定の部分の長さを取得することができる。いくつかの実施形態では、読み出し部分はFFRにおける磁気ナノ粒子トレーサー内の緩和時間よりも短い。いくつかの実施形態では、定常状態磁化分布は、励起波形の実質的に一定の部分の終わりによってトレーサー分布内に実現される。いくつかの実施形態では、この励起波形の実質的に一定の部分は、終わりの読み出し時間である。いくつかの実施形態では、1つ以上の過渡パルスの収集を含む磁化準備時間に続く終わりの読み出し時間を、より長いスキャンの間に印加されるより大きい励起波形において何度も繰り返す。いくつかの実施形態では、これらの繰り返し成分はそれぞれ、FFRの異なる平均場所に対応付けられる。
いくつかの実施形態では、励起波形には複数のパルスが含まれ、複数のパルスの各パルスには少なくとも1つの過渡的部分が含まれる。いくつかの実施形態では、励起波形にはさらに複数の一定部分が含まれ、励起波形には複数の磁化準備部分と複数の読み出し部分とが含まれ、複数の磁化準備部分の各磁化準備部分には、複数のパルスの少なくとも1つにある少なくとも1つの過渡的部分が含まれ、複数の読み出し部分の各読み出し部分には、複数の一定部分の少なくとも1つの一定部分の少なくとも一部が含まれる。いくつかの実施形態では、励起波形は方形波である。いくつかの実施形態では、励起波形は台形である。
いくつかの実施形態では、FFRは長手方向または「長い」方向を規定する無磁場「線」であり、励起波形は無磁場線の長手方向に少なくとも部分的に印加されて、磁場空間内の対応する無磁場線構造を移動させるが無磁場線構造の形状及び場所を維持することによって、無磁場線の状態を変える。いくつかの実施形態では、FFRは長手方向を規定する無磁場線であり、励起波形は無磁場線の長手方向に直交する平面において少なくとも部分的に印加されて、無磁場線の位置を変える。ここで、語句「無磁場線」は、数学的な意味でゼロ幅を伴う完全に1次元のFFRである必要はない。「無磁場線」の幅は線の長さよりも短い。たとえば、幅は線の長さと比べて、少なくとも2分の1、または10分の1、または100分の1、または1000分の1に短くすることができるが、これらの特定の例に限定されない。
いくつかの実施形態では、パルスシーケンス発生器は複数のパルスを与えることを、それぞれが、予め選択された形状、大きさ、幅、またはパルス間時間のうちの少なくとも1つを有して特定のパルスシーケンスエンコーディングを与えるように行うように構成されている。いくつかの実施形態では、パルスシーケンス発生器は、パルス間部分によって分離された複数のパルスを含む励起波形を与えるように構成され、複数のパルスの各パルスには過渡的部分が含まれる。
いくつかの実施形態では、パルスシーケンス発生器は、一定のパルス間部分によって分離された複数のパルスを含む励起波形を与えるように構成され、複数のパルスの各パルスは過渡的部分の間に一定部分を有する。いくつかの実施形態では、励起波形は、有限の移行スルーレートを伴う有限時間方形波に近似することができる。いくつかの実施形態では、励起波形は台形である。いくつかの実施形態では、パルス波形の少なくとも一部に対して、複数のパルスの連続パルス間の各一定部分は先行する一定部分よりも大きい。しかし、本発明の概略的なコンセプトはこれらの特定の例に限定されない。
いくつかの実施形態では、パルス励起システムには、非共振フィルターチェーン内の線形増幅器によってパワー供給されるLR回路が含まれる。いくつかの実施形態では、LR回路はインダクタンスが1マイクロヘンリー〜50マイクロヘンリーである。いくつかの実施形態では、LR回路はインダクタンスが1マイクロヘンリー〜30マイクロヘンリーである。
いくつかの実施形態では、パルス励起システムには共振切替器回路が含まれる。いくつかの実施形態では、検出システムには、検出信号のフィードスルー汚染が多い部分と比べて検出信号のフィードスルー汚染が少ない部分を増幅する利得制御回路が含まれる。
いくつかの実施形態では、pMPIシステム100にはさらに、検出システム112と通信してそこから検出信号114を受け取るように構成された信号プロセッサ122が含まれる。信号プロセッサ122はさらに、FFRが横断した観察物体の領域に対応する画像をレンダリングするためのイメージング信号を発生させるように構成されている。信号プロセッサ122は、たとえば、概略的な意味でのコンピュータとすることができ、限定することなく、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットデバイス、スマートフォン、マイクロコントローラ、もしくは他のシステムオンチップデバイス、またはこのようなデバイスもしくはこのようなデバイスの部分の任意のネットワーク接続された組み合わせとすることができる。信号プロセッサは、プログラマブルプロセッサ及び/またはハードワイヤードプロセッサ(たとえば、限定することなく、ASIC及び/またはFPGA)とすることができる。信号プロセッサ122は、プログラム可能であるか否かとは関係なく、pMPIシステム100の構造部品として解釈すべきである。
いくつかの実施形態では、pMPIシステム100にはさらに、pMPIシステム100の観察領域106内に配設されるように構成された物体ホルダー124が含まれる。いくつかの実施形態では、pMPIシステム100にはさらに、物体ホルダー124または磁場発生システム102の少なくとも一方に動作可能に接続されて、FFRの相対位置を平行移動させるかまたは回転させることの少なくとも一方を行う機械アセンブリ126が含まれている。
いくつかの実施形態では、pMPIシステム100にはさらに、スローシフト電磁石130を含むスローシフト電磁システム128と、pMPIシステム100の観察領域106に隣接して配置されたスローシフト波形発生器132とが含まれる。スローシフト波形発生器132は、励起パルスの時間スケールと比べて遅い時間スケールでFFRの位置をシフトさせるためにスローシフト電磁石130に波形を与える。いくつかの実施形態では、スローシフト電磁システム128には、複数のスローシフト電磁石(たとえば、限定することなく、スローシフト電磁石130、134、136、138など)を含めることができる。代替的な実施形態では、pMPIシステム100にはさらに、磁場発生システム102と通信して、磁場発生システム102と同じコイル(たとえば、限定することなく、コイル104及び/または105)を用いるように構成されたスローシフト波形発生器132が含まれる。いくつかの実施形態では、スローシフトリニアモータが、励起パルスの時間スケールと比べて遅い時間スケールで少なくとも1つの寸法においてイメージングされている物体を動かすように構成されている。いくつかの実施形態では、pMPIシステム100はさらに、無磁場線及び回転ガントリ及びモータによって構成されて、無磁場線と対象サンプル124を含むイメージング孔106との間の相対回転を与える。いくつかの実施形態では、以下のうちの1つ以上が回転ガントリに取り付けられている。主磁石及び軟磁束ガイド(120)、スローシフト磁石(130、134、136、138)、Tx及びRxコイル(複数可)(110、116)、Tx/Rx回路構成(108、112)、ならびに電磁石シールド(118)。
いくつかの実施形態では、磁場発生システム102は動的に構成可能である。ユーザが事前に動的挙動をシーケンス発生器132内に予めプログラムすることに加えて、フィードバックループが、オンラインアルゴリズムまたはコントローラロジックに情報を与えて、望ましい理想的な軌跡にもっと十分に適合するように励起波形にリアルタイムの変更を施してもよい。たとえば、磁場及び/または電流スニファ要素が、実現された波形をコントローラに報告して、電力増幅器に対する入力のネガティブフィードバック制御された変更を行ってもよい(たとえば、図1A、42、及び43を参照)。いくつかの実施形態では、FFRを動的に変えて、検出信号においてエンコードされた信号対雑音比及び分解能を動的に変えるように、磁場発生システム102は動的に構成可能である。いくつかの実施形態では、ユーザが、スカウトスキャンまたはリアルタイムイメージングフィードバックに基づいて介在して、SNR及び分解能を動的にトレードオフすることができるようにしてもよい。たとえば、シーケンス発生器132に対するインターフェースを、ユーザフィードバックに動的に基づいて励起振幅または勾配強度に対する信号をスケール変更するように構成してもよい。いくつかの実施形態では、低密度のトレーサー信号の領域において勾配強度またはパルス励起振幅をそれぞれ動的に弱くするかまたは低減して、分解能を犠牲にしてSNRを向上させてもよい。いくつかの実施形態では、トレーサー高密度の領域において勾配強度またはパルス励起振幅を増加させて、SNR及び可能性としてイメージング速度を犠牲にして分解能を向上させる。いくつかの実施形態では、勾配強度及びパルス励起振幅の両方を、いくつかの最適化ロジックまたはアルゴリズムにより同時に変更してもよい。いくつかの実施形態では、これらの動的なトレードオフを、シーケンス発生システム132内部のアルゴリズムまたはロジックによって自動的に行ってもよい。いくつかの実施形態では、クローズドループフィードバック情報が与えられたら、磁化準備シーケンスをリアルタイムフィードバックに基づいて変更して、意図した磁化準備をより正確に実現してもよい。いくつかの実施形態では、シーケンス発生器及びフィードバック要素は、イメージングされている物体内のトレーサーの測定された、フィッティングされた、または定量化された磁気緩和特性に基づいて、パルスシーケンスの磁化準備または他の要素を動的に変更するように構成されている。いくつかの実施形態では、これらの変更は、画像内の異なる場所で生じるトレーサーの変化する磁気緩和特性を考慮する。
いくつかの実施形態では、pMPIシステム100にはさらに、検出システム112と通信して検出信号114を受信するように構成された信号処理及び画像レンダリングシステム122が含まれている。信号処理及び画像レンダリングシステム122は、検出信号114を処理するように、また磁気ナノ粒子トレーサーを含みFFRによってアドレスされた観察物体の部分に対応する画像をレンダリングするように構成することができる。
いくつかの実施形態では、信号処理及び画像レンダリングシステム122は、検出信号114を処理するように、また少なくとも1.5mmの空間分解能で画像をレンダリングするように構成されている。いくつかの実施形態では、信号処理及び画像レンダリングシステム122は、検出信号114を処理するように、また少なくとも1000μm〜100μmの空間分解能で画像をレンダリングするように構成されている。いくつかの実施形態では、信号処理及び画像レンダリングシステム122は、検出信号114を処理するように、また画像をレンダリングして、対応する画像場所におけるトレーサーの密度、質量、濃度、またはその微分のうちの少なくとも1つを表すように構成されている。いくつかの実施形態では、信号処理及び画像レンダリングシステム122は、検出信号114を処理するように、また画像をレンダリングして、対応する画像場所におけるトレーサーの局所的な緩和時間を表すように構成されている。いくつかの実施形態では、信号処理及び画像レンダリングシステム122は、検出信号を処理するように、また画像をレンダリングして、局所粘度、pH、磁気ナノ粒子結合事象、局所的な酸化状態、対象とする生化学的検体の濃度、または対応する画像場所における機能化させた磁気ナノ粒子相互作用のうちの少なくとも1つを表すように構成されている。いくつかの実施形態では、信号処理及び画像レンダリングシステム122は、検出信号を処理するように、また画像をレンダリングして、可能性として機能化させた磁気ナノ粒子トレーサーと直接または間接的に相互作用する局所的な生化学プロセスの動力学的な情報を表すように構成されている。
本発明の別の実施形態は、磁気ナノ粒子トレーサーを用いて物体をイメージングする方法を対象としている。本方法は、物体に磁気ナノ粒子トレーサーを与えることと、FFRを有する空間的に構造化された磁場を印加して、FFR及び空間的に構造化された磁場の周囲領域が、磁気ナノ粒子トレーサーの少なくとも一部を含む領域において観察物体を遮断するようにすることと、FFRの特性またはFFRの位置を変えることの少なくとも一方によって磁気ナノ粒子トレーサーの一部を励起することと、FFRの特性及びFFRの位置が実質的に一定である間に、励起に起因する磁気ナノ粒子トレーサーの磁化の変化を検出して、検出信号を取得することと、物体内のFFRの複数の異なる場所に対して励起及び検出を繰り返して、複数の検出信号を取得することと、複数の検出信号を処理して物体の領域の画像をレンダリングすることと、を含む。
いくつかの実施形態では、検出は、磁気ナノ粒子トレーサーの一部を励起した後に行う。いくつかの実施形態では、検出は、磁気ナノ粒子トレーサーの一部を励起する間に行う。いくつかの実施形態では、検出は、磁気ナノ粒子トレーサーの一部を励起した後及び励起する間の両方に行う。
いくつかの実施形態では、本方法にはさらに、観察物体に磁気ナノ粒子トレーサーを投与することが含まれ、投与された磁気ナノ粒子トレーサーに含まれる磁気ナノ粒子は、アンサンブル平均直径が少なくとも10nmで100nm未満である。いくつかの実施形態では、磁気ナノ粒子トレーサーの磁気ナノ粒子は少なくとも25nmで50nm未満である。いくつかの実施形態では、磁気ナノ粒子トレーサーの磁気ナノ粒子は5nmの変動内で一様である。
いくつかの実施形態では、検出中の少なくとも500ナノ秒で500ミリ秒未満の間、FFRの特性及びFFRの位置は実質的に一定である。いくつかの実施形態では、退出中のFFRの変化量及びFFRの位置の約10%以内で、FFRの特性及びFFRの位置は実質的に一定である。いくつかの実施形態では、FFRの特性またはFFRの位置を変えることの継続時間は、少なくとも100ナノ秒で10マイクロセカンド未満である。
いくつかの実施形態では、複数の検出信号を処理して物体の領域の画像をレンダリングすることによって、磁気粒子密度画像、または磁気緩和動的パラメータ画像の少なくとも一方をレンダリングする。いくつかの実施形態では、複数の検出信号を処理して物体の領域の画像をレンダリングすることによって、局所粘度をレンダリングする。いくつかの実施形態では、複数の検出信号を処理して物体の領域の画像をレンダリングすることによって、トレーサーの局所的な結合状態をレンダリングする。
本発明の別の実施形態は、パルス磁気粒子イメージングシステムとともにまたはその一部として用いるデバイスを対象としている。この実施形態は、図1Aの対応するコンポーネントに類似するかまたは同じコンポーネントから構成することができる。その結果、図1Aから得られる同じ参照数字をここでも用いる。この実施形態では、デバイスには、サンプル観察領域106に隣接して配設されたパルス励起システム108が含まれる。パルス励起システム108には、電磁石110とパルスシーケンス発生器とが含まれている。パルスシーケンス発生器は電磁石110に電気的に接続されて、電磁石110に励起波形を与える。電磁石110は、サンプル観察領域106内に磁場を与えて、サンプルがサンプル観察領域106内にサンプルホルダー124によって保持されたときに前記サンプルから励起信号を発生させる。デバイスにはまた、サンプル観察領域106に隣接して配設された検出システム112が含まれる。検出システム112はサンプルから励起信号を検出して検出信号114を得るように構成されている。励起波形には過渡的部分と実質的に一定の部分とが含まれる。パルス励起システム108と検出システム112とは、非パルスMPIシステムをパルスMPIシステムに変換するように適合されたモジュラ構造の一部とすることができる。
デバイスにはさらに、検出システム112と通信して検出信号114を受信して処理するように構成された信号プロセッサ122が含まれる。信号プロセッサ122をさらに、検出信号を処理してサンプル内の磁気粒子に対する磁化緩和時間を決定するように構成することができる。この実施形態によるデバイスにはさらに、サンプル観察領域を画定するサンプルホルダーを含めることができる。
以下では、本発明のいくつかの特定の実施形態についてより詳細に説明する。しかし、本発明の概略的なコンセプトはこれらの特定の例に限定されない。
パルスエンコーディング技術
パルス波形を用いてMPI信号をエンコードすることが、正弦波的な連続波形を用いた場合には一般に実現できない方法で可能である。たとえば、トレーサー信号から送信フィードスルー干渉を時間的に分離することができる。またパルス波形によって、ナノ粒子トレーサー分布の定常状態磁気物理過程の測定を可能にすることができ、トレーサーに付随する磁気応答時間が有限であるために生じる連続的な正弦波MPIにおけるぼかし効果を潜在的に回避することができる。同時に、パルス波形によって、これらの磁気応答時間を定量化できる方法及びエンコーディング領域を得ることができ、画像コントラストの増加及び付加情報を測定する可能性をもたらすことができる。たとえば、トレーサー密度画像に加えて、トレーサー緩和物理過程の測定を定量化して空間分解して報告する緩和画像も生成され得る。他の実施形態では、完全な4次元イメージングデータセットが与えられ得る。このデータは、同じ励起パルスシーケンスからまたは異なる励起パルスシーケンスの連続印加を介して同時に取得され得る。
またパルス波形シーケンスによって、磁気緩和ダイナミクスを介して、第2の形態の空間情報エンコーディング(MPIで典型的に用いられるランジュバン飽和とは異なる)がもたされ得る。より概略的には、この新しいエンコーディングを用いて、エンコーディング時間の前または間にトレーサー磁化を成形して、分解能、SNR、及び画像コントラストに有用な方法で影響を与えることができる。たとえば、現在のMPIアプローチでは、磁気緩和は一般的に分解能及び画質を低下させるように作用するが、パルスMPI技術では、磁気緩和を利用して分解能を向上させることができる。
パルスエンコーディングに対する要件
図1Bに示すように、MPIにおける基本的なパルスエンコーディングに対する要件には、無磁場領域(FFR)として知られる空間的に変化する磁場パターンまたは構造、時間的に制御可能で空間的に均一な励起磁場源、及び1つ以上の磁場パルスが含まれ、各磁場パルスには、励起磁場源によって生成される1つ以上の実質的に一定の磁場波形が含まれる。いくつかの実施形態では、較正する場合、または空間的に局在化された画像を生成する必要がない検知応用例では、FFRを省略してもよい。いくつかの実施形態では、パルス励起磁場に加えて1つ以上の空間的に均一なバイアシング磁場を印加して、さらなる側面のデータ(たとえば、緩和データ)を、FFRを用いてまたは用いずに取得してもよい。
磁気飽和
MPIは、磁気的に飽和可能な磁気トレーサーをイメージングする。印加磁場とナノ粒子磁化との間の関係は磁化曲線(M−H曲線として知られる)によって記述することができる。磁化曲線は、印加磁場に対するナノ粒子集合の磁化応答を与える(図7を参照)。印加磁場が小さいときには、磁気ナノ粒子はその磁化を急速に変化させる。印加磁場が大きくなると、M−H曲線は磁化のプラトーまたは一定値に漸近的に近づく。そして、全印加磁場の大きさが大きいところでは、これらのトレーサーは、印加磁場をさらに増加させてもその磁化を実質的に変化させず、そのため粒子は「飽和した」と言われる。超常磁性酸化鉄(SPIO)トレーサーの場合、印加磁場に対するSPIOの磁化応答はランジュバン曲線に従うと理解されている。
勾配磁場によるFFRの設定
典型的なMPIスキャニングシステムには、特定の空間的な磁場パターン(本明細書ではFFRと言う)を発生させるために用いられる1つ以上のアクティブまたはパッシブな磁場源が含まれている。FFRは、印加磁場が磁気飽和値を下回る空間領域として規定される。これは、印加磁場が磁気飽和値を上回る近くの空間領域とは異なる状態とすることができる。FFRには多くの場合、必ずしもそうではないが、線形磁場勾配が含まれているため、磁場がFFRと近くの飽和磁場領域との間で滑らかに移行する。FFRは、無磁場点、無磁場線、またはマクスウェルの方程式によって課される制限を受ける図2に示したようなより一般的な形状であってもよい。
均一な速い励起磁場
典型的なMPIシステムでは、FFRを形成する勾配磁場に重ね合わせて、空間的に均一だが時間変化する磁場を印加することによって、トレーサー信号を発生させる。このように印加された均一磁場は一般的に、FFRの形状を維持しながら、FFRを空間及び時間においてシフトまたは平行移動させるように作用する。いくつかの実施形態では、たとえば、FFL内の線と同軸の印加磁場による均一な励起の場合、均一磁場を付加してもFFRの平均場所はシフトせず、その代わりに、たとえば、磁気的バイアスを加えてFFRを低磁場領域(LFR)に変換する。
均一磁場を生成するコイルを用いる場合、均質性要求は視野(FOV)上で<10%またはより良好であり得る(公称からの磁場のズレの量として規定される)が、均質性がより不十分なコイルを用いてもよい。MPIでは、均一な励起磁場と均一なシフト磁場とを区別することは、たとえ両方のタイプの空間的場が数学的に同等であっても、有益である可能性がある。励起磁場はスルーレートが高く、FFRの速い平行移動を行って、粒子を刺激し、誘導受信部コイルによって受信される電圧信号を誘起することができる。一方で、シフト磁場は桁違いに強くて桁違いに遅く、励起磁場単独ではアクセスできない大きなFOVにわたってFFR構造の平均場所をゆっくりと平行移動させるために用いることができる。パルスMPIエンコーディングは、より速い励起磁場に大いに関係しているが、標準MPIの場合と同様に、シフト磁場も依然として使用されて、より大きいFOVのエンコーディングを可能にしている。
図3に、FFRを平行移動させるかまたはその状態を変えるために用いてもよい基本的な電磁コイル配置を例示する。複数の励起源(たとえば、電磁石コイル)を、いずれかの任意の方向に動的に励起するために配設してもよい。たとえば、図3に示したように、コイルを空間に直交して配設して、直交に駆動してもよい。またこれらのコイルを、実質的な勾配がないFFRの方向に沿って(たとえば、図3に示したFFL構造の線に沿って)励起するように配設してもよい。この場合、FFR構造の状態は、可能性として構造の別個の平行移動を伴わずに、変更される。図3に示した励起コイルは通常、帯域幅にわたってスペクトルエネルギーを伴う時間変化する磁場を与えるように構成された供給源によって駆動される。たとえば、磁場は磁気エネルギーを帯域幅として>10Hz、>1kHz、>10kHz、または>100kHzにわたって含むことができる。従来のMPIアプローチでは、これらの励起源は、キャリア周波数(たとえば20kHz、45kHz、または150kHz)の中心に位置する低チャンネル帯域幅(たとえば<1kHz)を伴う正弦波的に変化する成分のうちの1つまたは少数から構成されている。パルスMPIでは、これらの供給源は、はるかに広い帯域幅を伴う波形を生成することができ、キャリア周波数の中心に位置する必要はない。
実質的に一定のパルス励起波形成分
典型的なMPI軌跡には、正弦波的に変わり連続的に送信する励起磁場(たとえば、45kHzでの正弦曲線)が含まれるが、本発明のいくつかの実施形態では、非正弦波スキャニング軌跡を伴う励起波形が提供される。本明細書ではこれらの波形をパルス波形と言う。これらのパルス励起波形の重要な特徴は、磁場の大きさがある時間の間実質的に一定に保持されるいくつかの周期的または非周期的成分が含まれることである。実質的に一定の意味は、磁場の大きさが、何らかの最初の過渡的または立ち上がり時間の後及び/または以後の過渡的または立ち上がり時間の前に、何らかの望ましいまたは理想的な磁場の大きさから、規定されたエラーを超えて外れることはないということである。エラーの大きさ例としては、これらに限定されないが、望ましい値の10%、望ましい値の5%、及び望ましい値の1%が挙げられる。この実質的に一定の値に磁場が維持される時間は500ナノ秒〜500ミリ秒の範囲であってもよいが、この範囲に限定されない。図4に、種々の振幅、極性、及び継続時間(t1で示す)を伴う実質的に一定の波形成分を例示する。パルスシーケンス全体において、図4に示すような種々の振幅、極性、及びt1継続時間を伴う多くの実質的に一定の波形成分を用いてもよい。
時間変化するパルス励起波形成分
励起波形における実質的に一定の値を、種々の基本形状のパルス波形成分によって分離してもよい。概略的に、これらの基本形状を正確なタイミングで互いにつないで、より複雑なパルス波形を形成してもよい。このようなパルス波形基本形状の1つの重要なタイプは、立ち上がり及び/または立ち下がりエッジを通って急速に移行するものである。このような急速に磁場が移行する間、時間変化する磁場波形は任意の形状であってもよい。たとえば、波形は、図5及び図6に例示するように、直線的に、指数関数的に、正弦波的に、またはその重ね合わせで立ち上がってもよい。図5に示すのは、立ち上がり及び/または立ち下がりエッジを介した急速な移行を例示する典型的な励起波形であり、最大の継続時間t2を伴う成分で示す。この継続時間t2は100ナノ秒〜10マイクロセカンドの範囲であってもよい。また図5には、より大きいパルスMPI波形またはパルスシーケンスを形成するために用いてもよい他の典型的な過渡パルス及びパルス状波形成分も示す。
磁気トレーサー
MPIで用いる磁気トレーサーの特徴は、その定常状態応答(M−H曲線(図7)で示されることが多い)と印加磁場に対してその時間変化する応答との両方である。発明者らは、MPIにおいて、磁化曲線の印加磁場に関する微分が、理想的な、ネイティブの、または定常状態の点広がり関数(PSF)に比例していることを、理論的及び実験的に見いだした。この定常状態のナノ粒子応答によって、逆畳み込みなどのツールを用いなければ、MPIにおいて可能な分解能に対する限定が生じるということが、従来理解されていた。実際には、トレーサーの動的な磁気緩和挙動があるために、このような分解能を標準的な正弦波MPIにおいて実現するのは難しい可能性がある。さらに、本明細書で説明するように、パルスMPI法によって、これまで考えられていたこの限定を超えて、定常状態ランジュバン理論によって予測されるものより良好な分解能を実現することが、逆畳み込みを行わずに、緩和ダイナミクスを利用することによって可能となる。
印加磁場に対する磁気ナノ粒子の時間変化する応答は、磁気緩和によって支配される。磁気緩和が生じるのは、磁気ナノ粒子が印加磁場に瞬時に応答することができないからである。従来のMPIへの正弦波アプローチでは、粒子がその磁気モーメントを再配向することに付随する特徴時間が励起正弦の時間のレートであるときには、磁気緩和によって著しい画像ボケが生じる可能性がある。この磁気緩和を、時間ドメイン信号にローパスフィルタを適用することと近似することができ、適用の結果、画像ドメインぼけとして現れる。結果として、点広がり関数の幅が、定常状態ランジュバンM−H曲線によって予測されるものから広がる。
粒子を大きくすれば、理論的に、どのように信号を取得したかに応じて、定常状態分解能を向上させることができた。トレーサー磁化を記述するランジュバン方程式は、磁気コア直径とともに3乗で向上することが良く知られている。これは、トレーサーのコアサイズが大きい(たとえば、25nmよりも大きい)と、トレーサーのコアサイズが小さい(たとえば、25nmよりも小さい)場合よりも、磁化曲線が急になることを意味する。しかし、従来の正弦波励起MPIで用いる典型的な振幅及び周波数では、より大きいトレーサー(たとえば、直径が約25nmよりも大きい)で磁気緩和が生じると、著しい画像ボケが生じる可能性があるため、大きい粒子を用いて高分解能イメージングを得ることができない。本発明のいくつかの実施形態では、分解能を損失することなく、比較的長い磁気応答時間を用いて、より大きい粒子に対して定常状態磁化をサンプリングすることができるパルス励起波形を用いた方法及びデバイスが提供される。
パルスシーケンスの成分
波形基本形状(たとえば、実質的に一定である過渡パルス及び時間)を組み合わせて、より複雑なパルス波形及びMPI励起パルスシーケンスを形成してもよい。MPIパルスシーケンスの2つの基本成分には、1つ以上の別個の磁化準備基本形状と1つ以上の別個の信号読み出し時間とが含まれていてもよい。これについて、図8及び図9に概念的に例示する。いくつかの実施形態では、一連の磁化準備パルスは継続時間が以後のより長い読み出し時間より短くてもよい。いくつかの実施形態では、準備及び読み出し時間の相対的な継続時間が連続シーケンスにおいて変化してもよい。いくつかの実施形態では、実質的に一定の時間の間の移行が、励起及び/または準備として機能する。
実質的に一定の時間
磁場が実質的に一定に保持される1つ以上の時間を、磁化準備の間及び信号読み出し時間の間の両方で用いてもよい。磁場が実質的に一定に保持される時間の間、トレーサー分布の磁化は新しい磁化定常状態に向かって進展する。この定常状態は、空間的に変化する可能性があり(なぜならば、たとえば、FFR及びそれが形成する空間的な磁場パターンと磁場依存のトレーサー緩和特性との間の相互作用が存在するため)、またトレーサーを支配する磁気緩和物理過程によって進展する。概略的に、磁化の進展はほぼステップ応答のようであるため、誘導的に受信された信号はインパルスのような応答を記録する。図11に、勾配が存在しない状態でサンプルに印加されるパルス励起波形を形成することができるテーブルトップリラクソメータシステムを用いて取られた典型的なデータを示す。本明細書では、このようなデバイスを任意波形リラクソメータ(AWR)という。図11では、方形波状の励起パルスシーケンスによって、誘導受信部コイルに減衰インパルス応答信号が発生する。これは、磁化の成長及び減衰に対応する。なぜならば、サンプル分布の正味の磁化は、方形波の各実質的な一定値に対応する全印加磁場状態に付随する定常状態値に向かって進展するからである。実質的に一定の時間が十分に長い継続時間ならば、定常状態が実現され、トレーサー分布の定常状態の2つの別個な値が、トレーサーに対応付けられる定常状態M−Hまたはランジュバン曲線に従ってサンプリングされている。図57に、可変の実質的に一定の保持時間(または方形波半周期時間)を伴う方形波パルスMPIを用いた実験データを示す。保持時間がトレーサー磁気緩和プロセスに対して短すぎると、トレーサー磁化は、次の過渡パルスの前に定常状態を実現することができない。この結果、図57に示すように、信号強度及び分解能の両方が低下する。保持時間が、長さが不十分の保持時間から長くなると、定常状態に対応付けられる最大信号及び最適な分解能への漸近アプローチを観察することができる。
図56に、正弦波及びパルスエンコーディング間の差をさらに例示する。ここでは、些細ではない磁気緩和を伴うトレーサーがある場合の方形波励起を考えている。著しい磁気緩和により、標準MPIではトレーサー磁化が励起磁場に著しく遅れ、未処理の時間ドメイン信号が著しく不鮮明になる。パルスMPIの場合には、実質的に一定の時間が十分に長いため、定常状態磁化を実現することができる。誘導的に受信した未処理のMPI信号に関して、未処理の時間ドメイン信号を単一の実質的に一定の成分(または方形波半周期)に渡って積分したものは、励起方形波のn番目及び(n−1)番目の実質的に一定の部分の終わりに実現された定常状態磁化値の間の差に比例している。
勾配磁場による時間緩和エンコーディング
勾配磁場またはFFR構造がパルス波形の実質的に一定の時間の間に存在する場合、これは、空間的に異なる緩和時間に起因するトレーサー分布に関係する空間情報の第2のエンコーディングとなる。図12に、この空間情報が、空間的に変化する磁場(たとえば、FFR)の存在下で、任意の実質的に一定の時間に対応付けられる受信信号において、時間的にどのようにエンコードされるかを例示する。実質的に一定の時間に十分に長い(たとえば、観察される最長の磁気緩和現象よりもはるかに長い)継続時間が適用された場合、トレーサー分布全体は、ある定常状態分布から別の定常状態分布へ進展する。しかし、実質的に一定の値の正確な継続時間及び定常状態が実現されたか否かには関係なく、時間の間の時間ドメイン信号によって空間情報がエンコードされる。
図12に例示するように、任意の所与の場所におけるトレーサーは、その場所における全印加磁場に対応付けられる磁気緩和応答に従って、定常状態に向かって進展する。概略的に、磁気緩和の複数の物理的メカニズムにわたって、印加磁場の大きさと磁気応答時間との間の関係が単調であるために、結果として、実質的に一定の時間の始まりの付近の時間ドメイン信号は、固定されたFFRアイソセンタからより遠くに配置されたトレーサー(より短い緩和時間)に向かってより加重され、一方で、後の時点でのまたは実質的に一定の時間の終わりに向かう信号は、FFRアイソセンタのより近くに配置されたトレーサー(より長い緩和時間)からの信号によってより支配される。この時間空間エンコーディングの起こりは、所与の印加磁場におけるトレーサーに課された印加磁場と磁気トルクとの間の単調な関係である。磁場の大きさが大きいと(FFRから遠いトレーサーが受ける)、非常に強力な磁気トルクが課されて、応答が速くなる。またこのプロセスによって、フーリエドメインにおける空間エンコーディングとなる。フーリエドメインでは、FFRアイソセンタから遠いトレーサーに対応付けられる信号は、FFRアイソセンタに近いトレーサーに対応付けられる信号よりも高い周波数の成分からなる。フーリエドメインにおけるこの可分性によって、ノイズを限定して分解能が鋭くする受信帯域幅を効果的に選択することができる。この第2の空間エンコーディング現象は、すべてのMPIの基礎をなす標準的な飽和ベースの空間エンコーディングとともに生じる。緩和ダイナミクスとは関係なくトレーサーのM−Hまたはランジュバン曲線に従って、パルス励起中にFFRアイソセンタから遠いトレーサーほど小さい信号を生成する(磁化全体の変化が小さくなり、その結果、信号エネルギーが低下する)。
この第2の時間空間エンコーディング現象を、パルスシーケンスの磁化準備態様及び画像再構成中の両方において利用することができる。図13に、AWRを用いて取得された実験データにおける、実質的に一定の時間の間の時間ドメイン信号に対応付けられる全エネルギー(ランジュバン飽和効果に起因する)と、この信号の進展のダイナミクス(全体的な磁場に依存する磁化物理過程に起因する)との両方に全印加磁場がどのように影響するかをさらに例示する。AWRでは、平均全体磁場を時間とともに立ち上げるかまたはラスター化することができ、一方で、パルス励起を印加して、種々の全印加磁場大きさにおけるトレーサーの信号及びダイナミクスを調べることができる。
磁化準備時間
読み出し時間の前に、または可能性として読み出し時間と同時に、1つ以上のパルス成分によって、トレーサー分布の磁化状態を準備するか、セットアップするか、そうでなければ動的に成形してもよい。図9及び図10に、このような準備時間で用いてもよいいくつかの典型的なパルス及びパルスを連続して集めたものを示す。これらのパルスは、トレーサー分布内の空間依存する磁気緩和ダイナミクスを利用するのに十分に短い継続時間であってもよい。たとえば、準備時間における一連のパルスは、非飽和領域内のどこででも定常状態磁化が達成されるのを防ぐのに十分に短い継続時間であってもよい。しかし、このパルシング時間における磁化の変化または成長の度合いは、FFR構造の正確な軌跡に空間的に依存する。概略的に、磁気緩和時間がFFRからの距離とともに単調減少する(緩和時間と全印加磁場強度との間の単調な関係に起因する)ために、緩和ダイナミクスはFFRアイソセンタに近いほど最も遅く、FFRアイソセンタから遠いほど最も速い。このように、読み出し時間における信号を、準備時間における分布を事前に操作することによって予め加重することができる。
図10に、パルスの磁化準備シーケンスからなる典型的なパルスシーケンスと、それに続く実質的に一定の読み出し時間とを汎用的に例示する。2つの異なる場所に位置する及び/または2つの異なる固有の磁気緩和応答時間を伴うトレーサーの進展が見られる。準備成分は、これらの2点(場所または緩和状態)におけるトレーサーの磁化の成形の仕方が異なっている。なぜならば、FFRに対するそれらの異なるジオメトリ、固有の磁気緩和差のいずれか、または両方があるからである。詳細には、ある特性でトレーサーを減衰させるか、ゼロにするか、またはキャンセルすることができるが、このアプローチでは他の特性のトレーサーはそのようにできず、その結果、MPI緩和加重されたエンコーディング及び反転再生及びゼロ化シーケンスとなる。2つの場所のみにある磁化及び/または同じ場所だが2つの異なる緩和応答プロファイルを伴う磁化を、説明を目的として示す。概略的に、これらの磁化準備パルスは飽和領域内のトレーサーに、空間座標上で連続的に変化しながら影響する。
磁化進展の間の読み出し
パルス波形の概略的な特徴は、たとえば、磁化準備時間の後に別個の信号読み出し時間を規定できることである。いくつかの実施形態では、読み出し時間は、トレーサー分布の磁化の進展が定常状態位置に近づくことが観察される実質的に一定の時間から構成される。いくつかの実施形態では、この読み出しは、急速に移行する立ち上がり及び/または立ち下がりエッジに即時に続いてもよい。いくつかの実施形態では、実質的に一定の読み出し時間の継続時間を、対象とするサンプル内でのトレーサー分布の磁気的定常状態の実現が確実になるように故意にデザインする。他の実施形態では、実質的に一定の読み出し時間を、定常状態条件が実現されないように故意にデザインする。いくつかの実施形態では、読み出し時間には非定常成分が含まれていてもよい。図9、図10、図11、図12、及び図13に、パルスMPI励起波形における典型的な読み出し時間を示す。
MPIにおけるパルスタイプ
パルス波形を用いてMPIにおける均一な励起コイルを駆動してもよい。これらのパルス波形はFFRの状態及び/または場所に影響し、磁気トレーサー分布が存在する場合に信号を発生させる。
FFRの平行移動による投影励起
いくつかの実施形態では、パルスの効果がFFR構造の場所を平行移動させることとなるように、パルス波形を均質コイルによって印加する。これらの波形の実質的に一定の時間の間、FOV内でFFR構造は静止している。図14に、2つの励起コイルの主軸によって規定される平面内のどこへでもFFRの場所を平行移動させるように、直交する均質コイル内のパルスがどのように作用するかを例示する。FFR構造のアイソセンタが3つのすべての寸法において局在化している場合(たとえば、FFP)、均一なコイルを用いてFFR構造を任意の方向に平行移動させることができる。FFRアイソセンタの連続的な場所を接続する曲線(たとえば、図14の線1、2、及び3)に沿って位置する任意のトレーサーは、パルスによって励起される。軌跡は単純な線より一般的な形状であってもよく、トレーサー信号を支配する磁気緩和は、この軌跡と、FFRの場所とトレーサー分布との間の瞬間的な相対ジオメトリとに概ね依存する。単純な方形状パルスの場合、各ステップ状の移行によって、FFRアイソセンタの最初の場所とステップ後の場所とを接続するx空間内の線が規定される。パルスの時間に対して、最初のFFR場所に近い励起線の付近に配置されたトレーサーの応答は、最終的なFFR場所に近い励起線の付近に配置されたトレーサーよりも速い。
2つの実質的に一定の成分によって任意の動的な軌跡を挟み、両方の実質的に一定の時間の継続時間が、各実質的に一定の成分に対応付けられるFFRとトレーサー分布との間の相対ジオメトリに対して定常状態磁化状態を設定するのに十分であり(また、介在する時間におけるトレーサー分布に変化がない)ならば、最初の磁化状態と最終的な磁化状態とが、特定の中間の軌跡に依存することなくサンプリングされる。瞬間的な時間ドメイン受信信号(磁化進展の時間微分を測定する)は、選択された特定の軌跡に依存するが、この信号の積分はそうでなくてもよい。この場合、挟む実質的に一定の成分の継続時間が、すべての磁気緩和現象が終了するのに必要な時間を超える場合、信号を、最初及び最後のFFR場所を接続する線に沿ったまたは線の付近の空間における完全な局所投影をエンコーディングすると見なしてもよい。挟んだ実質的に一定の時間のいずれにも定常状態が設定されていない場合、この結果は適用されない。2つの成分の間の磁化の差は、特定の軌跡の態様によって加重される。
FFLの方向における励起
いくつかの実施形態では、励起パルスを無磁場線(FFL)の線に沿った方向に印加してもよい。図15に例示するように、線方向にパルスが印加される間、勾配磁場構造の状態は変更されるが、構造の場所は線に直交する平面内で変化しない。励起パルスを印加する直前の磁場の値に応じて、FFLは、FFLから低磁場線(LFL)へ、LFLからFFLへ、またはある方向に分極されたLFLから反対方向に分極されたLFLへと移行する。LFLを、同じかまたは類似の空間的に変化する構造によって特徴付けてもよいが、ゼロ磁場大きさを通って横断する点(複数可)がないように大きさをバイアスしてもよい。FFLの場合と同様に、磁場のベクトル方向は、LFLに直交する平面の一方の側から他方へ回転する。この励起領域では、FFLまたはLFLを規定する線に沿ったすべてのトレーサーは同様に励起されて、全印加磁場への依存性の点で同じ緩和物理過程を受ける。これは、線に沿っているが直交面内での投影励起を伴わない完全なFOV投影エンコーディングを表す。線に沿った励起パルスを、線に直交する平面内の励起パルスと平行または直列に行ってもよい。
FFLのバイアシング
いくつかの実施形態では、FFLの方向にある均一なバイアス磁場を通常、たとえば、直交面内で、線に沿って、または両方で別個に印加される別個の励起パルスとともに印加してもよい。このようなバイアス磁場によって、FFLの代わりにLFLが設定される。図15に、バイアシング波形を伴うLFLを例示する。バイアシング磁場の付加は、LFLが直交面内で動いたときにトレーサー集合体の回転の対称性を壊す働きをしてもよい。またトレーサーは任意の点においてゼロ磁場領域によって励起されることはないため、より急速な緩和ダイナミクスが通常、よりSNR効率的な信号エンコーディングに対して誘起されてもよい。
FFRを伴わないパルス励起
いくつかの実施形態では、勾配磁場または空間的に変化するFFR構造が存在しない状態で、サンプルに均一パルス励起波形を印加する。この領域では、線形バイアシング磁場をゆっくりと立ち上げてもよく、直線勾配磁場が用いられたときにスキャニングシステム内の点状源の経験に直線的に比例する印加磁場大きさ空間での軌跡を通してサンプル全体が取られる。このようなシステムを用いて、MPIパルスシーケンスの効果を迅速にテストすることができ、また集合体内のトレーサーサンプルまたはサンプル物体に対応付けられる1次元(1D)のPSFを測定することができる。なお、このようなアプローチによって、すべてのトレーサーが、場所とは関係なく同様に励起される。こうして、1DのPSFによって、観察体積内のすべてのトレーサーの集合体または平均挙動が記述される。このタイプのスキャンは、FFRを発生させる磁気源をターンオフできるならば、小さいテーブルトップリラクソメータシステム(たとえば、任意波形リラクソメータ(AWR))を用いて、またはフルイメージングスキャナを用いて、行うことができる。
サンプリングは1次元(印加磁場空間)のみで行われるため、これらの空間的に均一なスキャンは高スループットであり、たとえば1秒未満で完了し得る。異なるパルスシーケンスパラメータまたは全く異なるパルスシーケンスをテストするスキャンの立ち上がりは、容易にテスト及び検査され得る。またこのようなスキャンによって、分解能、全体トレーサー質量及びSNR、ならびに磁気緩和ダイナミクスの点に関するサンプル内の全体トレーサー分布についての典型的な情報を、迅速に得ることができる。この情報を用いて、スキャンパラメータ(たとえば、以後の及び概してより長いイメージングスキャンまたは一連のスキャンの間の実質的に一定の磁場値の振幅及び時間)の選択をガイドしてもよい。またこの情報は、信号処理及び再構成パラメータ(たとえば、受信帯域幅及び受信フィルタカットオフ)を選択するときにも有用であり得る。これらの値は、標準化された較正手順を通してか、または高速の無勾配スキャンを用いた任意のスキャンを行う前の実行中に取得してもよい。
図16に、パルスMPIスキャニングワークフローを例示する。ここでは、勾配磁場を伴わない1つ以上の高速スキャンを用いて、勾配磁場を用いたより長いイメージングスキャンを開始する前に、パルスシーケンスパラメータを最適化する。
パルスシーケンス
パルスMPIにおいて利用可能なエンコーディング機械(種々のパルスタイプ、概念上のパルス波形成分、及びパルス波形によって駆動されるコイル配置を含む)を組み合わせて、完全なパルスMPIパルスシーケンスを形成し、イメージングFOVを十分にサンプリングすることができる。図17及び55に、典型的なパルスMPIパルスシーケンス図を例示する。典型的なパルス励起波形が他のシステムシーケンスと関連付けて示されている。これらの実施形態では、1つ以上のパルスシーケンスを用いて、2Dスライスを、FFLスキャニングシステムを用いて十分にサンプリングする。サンプルとFFLとの間で回転するジオメトリを伴う複数のスライスをサンプリングして、投影再構成技術を用いたトモグラフィ3D画像形成を可能にする。比較的速いパルス励起の他に、もっと遅いシフティング成分によって、2DFOV全体のサンプリングが可能になる。これを図18に示す典型的なラスタースキャニング軌跡に例示する。いくつかの実施形態では、1つ以上の磁化準備成分と1つ以上の別個の読み出し時間とを含む励起パルス波形を何度も繰り返してもよい。各繰り返しは、もっとゆっくりと変化するシフト波形によって規定されるFFR構造の別個の平均場所に対応付けられる。概略的に、遅いシフト成分に対応付けられるはるかに遅いスルーレートは、励起波形における実質的に一定の磁場時間に対して課された実質的に一定であるという基準(たとえば、望ましい値の1%または10%など)に違反しない。いくつかの実施形態では、この違反は許容してもよいし望ましくてもよい。
本明細書ではいくつかの典型的なパルスシーケンスについて説明する。たとえば、方形波状パルスシーケンス、定常状態再生シーケンス、及び例示的なもっと複雑なSNR効率的シーケンスである。これらの特定のパルスシーケンス実施形態の説明も、例示したこれらのパルスシーケンスの典型的な形状も、限定と解釈してはならない。
方形波状励起パルスシーケンス
パルス波形を伴うエンコーディングMPI信号の利点の多くを例示するパルスMPIパルスシーケンスの1つは、方形波状励起波形を用いることである。これらの波形には、立ち上がり及び立ち下がりエッジを介した急速な移行によって分離された磁場の実質的に一定の値の交互に変わる時間が含まれる。図4、図5、及び図6にこれらの成分を示す。用語方形波状は、急速な移行及び実質的に一定の値の時間が前述の特性を有する限り、繰り返し励起パルス成分の全体形状が、方形に、台形に、またはより複雑なもの(たとえば、指数関数的または正弦波的に変化する成分など)に類似してもよいことを強調するために用いられる。このように規定された方形波状励起パルスシーケンスは、最小の磁化準備時間を有すると考えられ得る。前の実質的に一定の読み出し時間で磁化を特定の状態で準備し、次の実質的に一定の読み出し時間への急速な移行で、勢いを与える信号を与え、第2の実質的に一定の読み出し時間で、読み出し中に磁化分布が進展する先の定常状態ターゲットが設定される。
図58に、各励起半周期において定常状態磁化を実現するのに適切な実質的に一定の保持時間に関して、より方形波状から台形波形に移る派生効果を示す実験データを示す。この領域では、台形の立ち上がり時間を3マイクロセカンドから380秒へと変えるときにサンプルから取得したPSFはほとんど同一である。この性能に対するキーは、実質的に一定の保持時間が同じで、定常状態を誘起するのに十分であるということである。この場合、立ち上がり時間を長くする効果は、SNR効率及びピーク信号が小さくなり(台形波形であるほど、課されるピーク磁気トルクが小さいかまたは誘起されるピークdM/dtが小さい)、また励起フィードスルーとトレーサー信号との間の時間デカップリングが減ることである。
図19に、2DFOVの典型的な方形波状サンプリングを示す。例示したように、FFRは時間とともに画像にわたってラスター化され、一方で方形波状励起が急速に繰り返される。FFRアイソセンタの異なる平均場所において、交互に変わる方形波半周期の間に受信部コイルから得る受信信号の例を例示する。FFRアイソセンタの平均場所(ゆっくりと変化するシフト波形によって設定される)が、図示した楕円体トレーサーファントムに近いかまたは一致するときにのみ、著しい時間ドメイン応答が観察される。
方形波状励起波形の半周期がトレーサー分布の磁気緩和または磁気応答時間以上である場合、トレーサー分布は各方形波半周期の終わりまでに磁化の定常状態に到達する。ここで、磁気緩和時間または磁気応答時間とは、方形波状波形の各ステップ状の移行の後にトレーサーの磁気応答が定常状態に落ち着くのに必要な時間を指す。この時間は種々の仕方で正確に規定され得る。たとえば、トレーサーの磁気インパルス応答を1つ以上の指数関数的時定数として適切に記述することができる場合には、応答時間を最大または最高の時定数の何らかの倍数以上であると規定してもよい。たとえば、tchar2、tchar3、tchar4、またはtchar5である。ここで、tcharは平均、有界、最大、または特性の指数関数的時定数である。図57の実験データは、たとえ、第一原理からのトレーサーの特性時間定数を知らなくても、必要な方形波半周期(実質的に一定の保持時間)を、半周期を変えてピーク信号強度及び/または分解能の漸近安定化を特定することによって取得できることを示している。いくつかの実施形態では、必ずしも異質なプロセスに対応付けられる最大ではないtcharを用いて、パルスMPI信号エンコーディングシーケンスにおける定常状態またはほぼ定常状態設定に対するターゲットを規定してもよい。
トレーサー磁気応答時間は通常、トレーサーが受ける絶対磁場の関数であって、ゼロ磁場時定数が最長となっており、印加磁場強度の増加とともに時定数は単調減少する(また非常に高い磁場強度では制限を受ける)。したがって、トレーサーに対応付けられ、またMPIシステムにおけるFFRの中心に対応付けられるゼロ磁場時定数及び/または低磁場時定数は通常、最長緩和時間に対応付けられ、また定常状態が実現されることを確実にする半周期要求を設定する。これも、受信信号帯域幅に対する派生効果を有する。磁気緩和ダイナミクスは、単一または多重指数関数モデルに厳密に従う必要はない。実質的に一定の時間を含む方形波状(またはもっと一般的な)励起波形を用いる派生効果は、常に有限の時間応答によって特徴付けられるため、何らかの実際の磁気物理過程に関する。対照的に、全印加磁場が連続的に時間変化している限り(たとえば、正弦波励起波形、またはパルス励起波形の非実質的に一定の時間の場合)、トレーサー分布は連続的な励起を受け、緩和物理過程は動的に変化している。実質的に一定の波形の特別な場合(パルスMPIのように)、連続的な時間刺激はない。固定された空間パターン及び磁気緩和物理過程の強力な磁場依存性に従って進展するトレーサー分布の磁気緩和によって生じる応答の減衰のみがある。磁気緩和に影響する要因の他の時間変化源、たとえば生理的供給源(たとえば、粘度、結合事象、pH、または化学反応)が、やはり、実質的に一定の磁場の時間の間の時間変化する緩和ダイナミクスにつながり得ることは可能であり、これは、パルスMPIエンコーディング方式によって別個に目に見えるかまたはエンコードされ得る。
図11、図12、図13、及び図19に、そのように規定された方形状波形を伴う励起の種々の派生効果を例示する。各方形波状の半周期の間、トレーサー分布の磁化は、トレーサーに関連する磁気物理過程により、実質的に一定の磁場状態に対応付けられる定常状態磁化に向かって動き、そして十分な継続時間を伴って、最終的に到達する。誘導受信部コイルから取得された信号は磁化の時間変化率に比例し、したがって、特定の応答物理過程によって決定される何らかの初期特徴の後にゼロまで減衰する。理想的な方形波の範囲において、磁気緩和ダイナミクスの点で、また各ステップに対応付けられるFFRとトレーサー分布との間の相対ジオメトリに対して、トレーサー分布の磁化はトレーサー分布のステップ応答に正確に従い、受信信号はトレーサー分布のインパルス応答に比例している。
単一点状源の場合、または勾配磁場/FFRのない状態で励起された分布するサンプルの場合、各半周期の終わりでの磁化は、所与の全体磁場におけるトレーサーに対する定常状態M−H曲線上の単一点に対応する。超常磁性トレーサー(MPIで典型的に用いられる)の場合、これは定常状態ランジュバン曲線上の点に対応する。勾配磁場/FFRの存在下で分布する点状源の場合、各半周期の終わりでの全体磁化は、使用しているFFRの具体的な形状により、トレーサーのM−H曲線上の対応点にマッピングされたトレーサー分布密度の空間積分に対応する。図11に、定常状態を誘起する一定に保持される時間とM−H曲線のサンプリングとの間のこの関係を例示する。この関係は、たとえ有限の(及び可能性として任意に大きな)磁気緩和が存在する場合でもMPIにおいて定常状態信号エンコーディングが実現されることを表している。このようなエンコーディングは望ましく、有限緩和が無視されることが多い当初のMPI理論のほとんどにおいてしばしば想定される。しかし定常状態エンコーディングを実際に実現することは、典型的に用いる正弦波励起波形の時間と比べて緩和時間が長い大きい粒子の場合には達成できていない。このため、定常状態理論に従ってこれらの大きい粒子を用いれば可能な分解能の大きな改善に達することはできないでいる。
定常状態再生励起エンコーディング
定常状態再生シーケンスによって、他のエンコーディング領域で、または応答時間が大変異なる多重応答ダイナミクスが全体磁化進展(したがって受信信号)に寄与する場合、はっきりしないトレーサー応答ダイナミクスをエンコードすることができる。
いくつかの実施形態では、図10に例示するように、定常状態再生パルスシーケンスは、短い励起パルスによって分離された可変継続の実質的に一定の時間を用いて構成される。いくつかの実施形態では、定常状態が設定された後に印加される励起パルスによってベースライン磁化または信号値が得られて、パルスより前に定常状態が実現されない他の励起パルスに対応付けられる信号の状況が説明される。たとえば、この情報は、FFRアイソセンタの特定の平均場所に対応付けられる第1のパルスによって得られてもよく、一方で、パルス間または再生時間が変化する一連の以後のパルスによって定常状態再生のダイナミクスがエンコードされる。実質的に一定のパルス間時間の間、当初の平均FFRアイソセンタ場所が再生される。この実質的に一定の時間が、前のパルス勢いの後に定常状態磁化を完全に再生できる継続時間として不十分であるときには、次のパルスに対応付けられる信号を、完全な定常状態設定の場合と比べて減衰させる。減衰の度合い(または完全な再生が無いこと)は、トレーサー分布の励起成分のトレーサー応答時間の関数である。可変のパルス間再生時間を用いてトレーサーの動的応答をエンコーディングすることは、図20の実験データに見られるように時間ドメイン信号の包絡線において明らかである。
パルス間時間に対応付けられる位置にFFRアイソセンタが配置されているときには、各パルスに対応付けられる信号の変化は、トレーサーの磁気応答時間に直接的に関係づけられる。いくつかの実施形態では、パルスのうち少数が、所与のパルス間FFRアイソセンタ場所に対応付けられる(たとえば3〜10の範囲)。他の実施形態では、緩和ダイナミクスの高密度サンプリングに対するパルス間FFRアイソセンタ場所ごとに、パルスのうち100を印加してもよい。いくつかの実施形態では、パルス間時間の広い範囲をサンプリングして(たとえば、5マイクロセカンド〜100ミリ秒の範囲)、すべての現存する緩和プロセスの全体を十分に取り込む。このような広い範囲は、パルス間時間の低密度サンプリングを必要とするか、そうでなければトレードオフを示す場合がある。いくつかの実施形態では、パルス間時間変動は、累乗パターン(たとえば、2乗、3乗、4乗など)に従い、一方で他の指数関数的サンプリングではパルス間時間サンプリングパターンを特長づけてもよい。いくつかの実施形態では、はるかに小さい範囲を調べて、対象とする特定の時間範囲にわたるサンプリング密度を増加させる。
いくつかの実施形態では、勾配磁場またはFFR構造がない場合も存在する。そして定常状態再生シーケンスを均一な励起コイルを用いてサンプルに印加して、集合体内のサンプルのゼロ磁場緩和ダイナミクスのみを調べてもよい。いくつかの実施形態では、複数の定常状態再生シーケンスが非ゼロの平均全体磁場値に対応付けられるように、バイアス波形を印加してもよい。
他の実施形態では、定常状態再生シーケンスを、FFRの存在下で、しかし低またはゼロ勾配磁場方向に印加してもよい。たとえば、定常状態再生励起をFFLスキャニングシステム内の線に沿って印加してもよい。このように、緩和情報は、全印加磁場の関数としてエンコードすることが可能であるが、空間的に局在化されてFFRまたはLFRアイソセンタの平均場所にも対応付けられる。
定常状態再生アプローチは、たとえば、トレーサー緩和ダイナミクスをエンコーディングするために方形波状パルスシーケンスを用いることに対して、利点を有することができる。概略的に、トレーサーの磁気緩和は、著しいブラウン及びニール成分の両方、ならびに/または非常に急速に(たとえば、10マイクロセカンド以内で)生じる著しい緩和成分、ならびに数10または数100マイクロセカンドの時間スケールでまたはミリ秒の範囲でも生じる他の著しい緩和成分を有していてもよい。方形波状エンコーディング領域では、誘導信号受信の時間微分性質に起因して、最短の緩和成分が時間ドメイン信号を完全に支配し得る。より長い及び/またはブラウン応答(生理的コントラスト及び検知の点で関心が大きい)を時間ドメイン信号において直接エンコーディング及び観察することは、時間ドメインSNR、帯域幅制約、及び/またはノイズフロア制限のせいで、この領域では難しい場合がある。本明細書で説明するように、定常状態再生アプローチは、磁気緩和信号のこれらのより長い及び/またはブラウン成分を正確及び頑強に測定するための強力なツールとなることができる。概略的に、複数のエンコーディング領域を印加してもよい(たとえば、単一または連続励起波形において方形波状及び定常状態再生成分の両方を含む)。定常状態再生シーケンス内の各パルスに対応付けられる時間ドメインデータには、類似または同等の情報が単一の方形波状サイクルとして含まれていてもよい。複数のエンコーディング技術を同時にまたは連続して用いれば、異なる緩和情報(たとえば、異質の緩和ダイナミクスを伴うトレーサーの場合)を、良条件の堅固な再構成問題につながる方法でエンコードすることができる。
SNR効率的な励起パルス波形
より複雑なエンコーディング領域及びパルスシーケンスが、たとえば、より大きなSNR効率を得るためには望ましい場合がある。図21に、直交配置で駆動された直交コイルに一連のパルスが印加されると、FFRアイソセンタがFOV内の特定の場所の周りに、特定の励起パルス列の間にどのように回転するかを例示する。説明を目的として、図示するように、取り囲むパターンの半径またはサイズは、FFRジオメトリ、イメージングFOV、及びスローシフトラスターパターンに対して必ずしも一定の比率ではない。たとえば、取り囲むパターンは実際には比較的はるかに小さくてもよい。さらに、各場所で印加されるパルスは単純な実質的に一定の時間でなくてもよい。図5に例示するように、多くのパルシング形状の何れかが急速な移行によって分離されてもよい(たとえば、平均FFRの場所に急速に移行した後の短時間の正弦波パルス)。中心点を囲む番号付けされた場所のそれぞれに対応付けられるパルスの継続時間は、定常状態条件を設定するのに必要なものよりはるかに短くてもよいが、急速な移行及び/または通常の励起に対する応答に対応付けられる著しい時間ピークを引き出す。いくつかの実施形態では、定常状態を誘起する実質的に一定の時間を、このような速い励起及び読み出し波形と組み合わせて用いてもよい。概略的に、回転励起があると、短い時間にわたってイメージングFOV内の場所または小さい領域に対応付けられる比較的大きな総合信号が得られる場合があり、より単純なラスタースキャンと比べたときにSNR効率が増加する。この取り囲むパルス波形をスローシフティング磁場と共に繰り返して、時間とともに全体イメージングFOVをサンプリングすることができる。
他のシステムシーケシング
図17、図18、及び図19に例示するように、パルス励起波形を通常、他の重要なシーケンスとともに用いて、完全なトモグラフィまたは投影イメージングを行う。概略的に、pMPIエンコーディングをシステム行列法とともに用いてもよいことに注意されたい。システム行列法では、多くの較正スキャンを、イメージング視野(FOV)内の異なる場所に配置された点状源を用いて行って、システム行列を構成する。システム行列を反転させて、可能性として同じシステム及びスキャニング軌跡を用いて取られるもっと複雑なサンプルの画像が生成され得る。
スローシフトティング
大きなイメージング視野(FOV)(たとえば、励起波形に対応付けられるズレよりも大きい)をカバーするために、ゆっくりと変化する均一波形を繰り返し励起波形と重ねてもよい。この結果、図17、18、及び55に示すように、FFRアイソセンタの平均場所が時間とともにゆっくりと平行移動することができる。スローシフトティング波形は、周期的な励起波形の個々の励起成分の時間スケールと比べて十分に遅くてもよく、個々の励起時間の間にFFR構造を移動させることに対するスローシフトティング波形の影響は無視することができ、またたとえば、パルス波形の実質的に一定の時間における望ましい大きからの最大偏位さに対する時間保証が維持される。他の実施形態として、特に速い取得が望まれる場合には、スローシフトティング波形の効果によって、トレーサーの励起を無視できない仕方で増大させてもよい。
複数のスローシフトティング波形を、所与のスキャンにおいてシフトすべき主軸のそれぞれに対応付けてもよい。FFLスキャニングシステムの場合、FFLの線に直交する平面に位置合わせされた2つのシフティング成分を、投影画像を取得するときに用いてもよく、また連続的な投影画像を、FFLとサンプルとの間の相対ジオメトリを固定軸の周りに回転させた後に取ってもよい(図17に示す)。FFPスキャニングシステムの場合、FFPを3つのすべての寸法にシフトさせる必要がある。
図17、18、及び55に、全体イメージングFOVにわたってFFRをラスターさせるシフティング波形の特定の実施形態を示す。概略的に、他のシフト波形を用いて、より大きいFOVを異なる軌跡を用いて時間とともにサンプリングしてもよい。たとえば、ある応用例では、非デカルトの半径方向または螺旋状のスローシフト軌跡が望ましい場合がある。さらに、FFR構造に応じて、シフト波形がより大きい3D領域を時間とともにサンプリングしてもよい。FFR構造が3つのすべての寸法において局在化されている場合(たとえば、FFP)、シフト波形を3つのすべての主軸に対応付けてFFPを3次元空間を通して任意に動かしてもよい。FFLの場合、図17に示すような回転波形が断層イメージングには必要である。いくつかの実施形態では、回転波形によって実現されるような別個の投影角を用いて2Dスライスデータを取得する。他の実施形態では、データ取得の間に投影角を連続的に変化させてもよい。回転を、FFL形成磁石システムをサンプルに対して回転させるかまたはサンプルをFFL形成磁石システムに対して回転させるかの一方または両方によって行ってもよい。
勾配波形
FFR構造を発生させる勾配磁場の供給源として電磁石を用いる場合、図22に示す典型的な勾配波形に例示するように、応用例に応じて異なるタイプの勾配波形が望ましい場合がある。たとえば、一定の勾配強度をイメージングスキャンの全体にわたって印加してもよい。この強度を複数のスキャンの間で変更して、異なる勾配強度において複数のイメージングデータセットを取るようにしてもよい。たとえば、低分解能において取る速いスカウトスキャンを、勾配強度が高くて固有の空間分解能エンコーディングが向上されたより長いスキャンの前に行ってもよい。スカウトスキャンから得られる情報を用いて、以後のスキャンにおけるイメージングパラメータを設定してもよい。
図22の下部に示すように、イメージングスキャン中の勾配の強度を動的に調節することが望ましい場合がある。これは、信号処理モジュールからのアクティブフィードバックを用いて、ほとんどないかまたはまったくない信号を用いてFOVの領域を粗くスキャンし、信号が存在する場合にのみ勾配(したがって固有のMPI分解能エンコーディング)を増加させるときに望ましい場合がある。低密度トレーサー分布の場合、これによってはるかに高速のスキャニングが得られる場合がある。勾配波形を繰り返して速く調節すること(磁気刺激及び/またはSARスルー制限を前提として)を用いて、複数の横断またはスキャンを必要とすることなく単一スキャン内のイメージングFOVの全体にわたって多重分解能エンコーディングを実現してもよい。
信号処理及び再構成
パルスMPIエンコーディング方式では、受信データから画像を形成する複数の方法が認められる。図23に、パルスMPIx空間デジタル信号処理及び再構成における主要なコンポーネントを記載する。受信部コイルから得たアナログ受信信号をサンプリングして、受信エレクトロニクスチェーンの終わりにデジタル化する。これらの信号を、スキャンにおいて印加される既知のパルスシーケンスとともに用いて、種々の信号処理及び調整タスクを実行する。これらには、タスク、たとえばデジタルフィルタリング、区分的な減少ステップ、たとえば積分または閾値化、及び位相補正が含まれていてもよい。これらのタスクを、データをたとえばフーリエ空間内に変換することなく、時間ドメインにおいて完全に行ってもよい。他の実施形態では、データを好適な基底系上に変換または投影してもよい。
デジタル信号処理ステップが完了した後で、結果として得られる1つ以上の信号を、画像ドメイン内に直接変換するかまたは組み合わせてから変換する。パルスMPIにおける共通パターンは、単一の値または少数の値が、励起パルスシーケンスの繰り返される態様のそれぞれに対応付けられるように、時間ドメイン信号を処理することである(図18、図24、及び図25に例示する)。x空間方法においては、これらの単一の値または少数の値を次に、像空間内の物理的場所に関連づけてもよい。関連付けは、たとえば、繰り返し励起パルスシーケンスパターンまたは読み出し時間のそれぞれの間のシフティング及び可能性として励起波形に対するFFRアイソセンタの平均場所に基づいて行ってもよい。各パルス励起時間に対応付けられるFFR場所の点に関するサンプリング密度は不均一であってもよく、多対1の関係が典型的に、サンプル点のセットと、望ましい規則的な像空間グリッドを構成する最終的な画像ドメインピクセル/ボクセル場所のセットとの間に存在する。このマッピングを、平均または加重平均を伴う内挿グリッディング手順のいくつかの形態を用いて実施してもよい。このプロセスでは種々の内挿方式を用いてもよい。たとえば、最近接法による内挿、線形内挿、またはより高次の内挿アルゴリズム(たとえば、多項式またはスプラインを用いる)を用いてもよい。またグリッディングの前またはグリッディングと同時に、内挿グリッディングステップはフィルタリングプロセスを適用してもよい(たとえば、低SNRの値を拒否する)。
再構成のシステム行列法を用いることが望ましい場合がある。このような方法では、パルスMPIシステム行列はパルスMPI取得データの多くのセットから構成される。詳細には、最終的なピクセル/ボクセル場所の中心場所に点状源を配置してもよい。各場所において、pMPI取得(たとえば、図17、図18、及び図19に記載されたもの)が行われる。このようなそれぞれの取得に対応付けられるデータを用いて、システム行列の単一の行または列を構成してもよい。行列の行または列としての取得及び記憶の間に、種々のデジタル信号処理及び/または数学的変換(たとえば、フーリエドメインへの変換)を適用してもよい。さらに、各取得に対応付けられるデータを解析的モデル、数学関数、最小基底系にフィッティングさせてもよいし、他の場合には圧縮してシステム行列に対する必要メモリを最小限にしてもよい。たとえば、前述したように、各周期的な読み出し時間に対応付けられる未処理または処理データのx空間積分グリッディングを、既知のFFRアイソセンタ軌跡を用いて実行することが望ましい場合がある。そして各点状源場所に対して結果として得られるx空間画像を用いて、システム行列の行または列を埋めることができる。正確にどのようにpMPIシステム行列が構成されているかとは関係なく、汎用的なサンプルのイメージングが次に、対象とするサンプルに各点状源に適用されたものと同じ励起シーケンスを適用することによって与えられる。次にマニフェスト行列逆問題を標準的なアルゴリズム(可能性として、種々の正則化法及び制約条件を含む)のいずれかを用いて解いて、最終画像を形成してもよい。システム行列法に対してpMPIエンコーディングを用いることが、連続波システム行列法と比べて望ましいかまたは優位である場合がある。なぜならば、pMPIの分解能向上エンコーディングによって、システム行列の行または列の直交性が向上し、その結果、行列逆問題の良条件化が改善されるからである。ネイティブまたはランジュバンFWHMのサイズとサイズが同様のシステム行列アプローチのボクセルサイズを選択すると、逆問題の非常に改善された良条件化が生じる。特にもっと大きいトレーサーに対して磁気緩和の効果を低減するかまたは取り除くことによって、pMPIエンコーディングは、連続波pMPIエンコーディングを用いて利用できるものよりも小さいピクセル/ボクセルサイズに対して、良条件のシステム行列定式化を与えることができる。
前述したように構成された1つ以上の画像に、最終的な後処理ステップを施してもよい。たとえば、異なる分解能で再構成された1つ以上の画像を組み合わせて単一画像にしてもよいし、1つ以上の画像を用いて、カラー化されたコントラストを伴う1つ以上の新しい画像を形成してもよいし、または1つ以上のトレーサー密度画像を1つ以上の緩和画像と組み合わせて、緩和スペクトル情報軸を伴う4次元イメージングデータセットを形成してもよい。概略的に、別個のトレーサー密度とトレーサー緩和画像とが生成されることが、パルスMPIの特徴である。
トレーサー密度再構成
トレーサー密度の画像を、種々のグリッディング方法を用いて再構成してもよい。実質的に一定の読み出し時間またはより複雑な繰り返しパルス励起波形に対応付けられる時間ドメインデータを積分して、結果として得られる値を、ピクセルまたはボクセル場所にグリッディングしてもよい。グリッディング手順では、FFRアイソセンタの既知のx空間軌跡を用いて、時間ドメイン信号を画像空間場所にマッピングしてもよい。いくつかの実施形態では、繰り返しパルス励起の間のFFRアイソセンタの平均場所、または実質的に一定の読み出し時間に対応付けられるFFRのアイソセンタの単一の場所によって、このマッピングに対するルールが得られる。
図26に、従来の正弦波MPIとパルスMPIにおける2つの異なる再構成方法とを用いた実験データから得たトレーサーコア直径の関数としてのネイティブ分解能のプロットを示す。理論上のランジュバン限界も示す。これらのデータにおいて、従来の連続的な正弦波MPI分解能は、再構成プロセスに対する磁気緩和の影響があるために、約25nmのトレーサーコアサイズを越えて向上することはない。他のすべての変数が一定であるとすると、磁気緩和の度合いは典型的にトレーサーコアサイズの強力な機能であり、長い緩和時間ほど大きいトレーサーに対応付けられる。これによって概略的に、理想的なランジュバン理論によって予測されるネイティブ分解能が標準MPIにおいて実現されることはない。しかし、パルスMPI法では、より大きいコアサイズに対しても続けて分解能向上が示され、緩和加重再構成法によって、定常状態ランジュバン理論単独によって予測されるものよりも大きい分解能が得られる。
図27に、2つの異なるパルスMPI再構成を用いて同じトレーサーに対してAWRを用いて得た実験に基づく1DPSF及び分解能測定値(FWHM)を示す。従来のMPI方法と比べて、パルスMPI技術を用いてネイティブ分解能が向上したことが示されている。右側では、1DPSF情報を用いて、2次元イメージングコンテキストにおいて予想される効果を模擬した。
図54に、ファントムの実験に基づいた2D画像を示す。この画像は、3.5T/mMPIシステムを用いて得た標準的な正弦波MPIデータと、2D有効AWRシステム(FFL磁石及びシフトシステムを用いて変更されたAWR)を用いて得た2DパルスMPI画像とを比較している。標準MPIデータは、トレーサーが大きくなると(27.4nmの単一コアトレーサー)、標準的なトレーサー(VivoTrax(商標))と比べて、どのように分解能が不十分となるかを示している。2DパルスMPIデータは、大きいトレーサーを用いていてもはるかに鋭く、隣接するプロットにおいて理論上のランジュバンシミュレーションと実によく似ている。1.5mmサンプルの2点は、3.5T/m標準MPI画像では分解できないが、3.5T/mパルスMPI画像では分解できている。
いくつかの実施形態として、FFLベースまたは他の投影FFRベースのパルスMPIシステムを用いる場合には、FFL/FFRと画像ボリュームとの間の異なる相対角度において、投影再構成を最初に未処理の時間ドメイン収集データに適用することを、画像ドメイン値を計算してこれらの値をグリッディングまたは内挿する前に行ってもよい。このような方法では、時間ドメインデータを画像ドメイン値に低減する前に、時間ドメインデータを、3つのすべての空間の寸法において分解された場所に対応付けてもよい。
直接積分グリッディング
読み出し時間に対応付けられる時間ドメインデータの積分を、読み出し中のFFRの場所に基づいて、規則的なピクセルまたはボクセルグリッド上に直接内挿またはグリッディングしてもよい。またグリッド場所をFFRの場所によって部分的に決定することを、読み出す前に、たとえば磁化準備または前の読み出し時間の間に、行ってもよい。
AWRを用いた方形波PSF再構成
図28に例示する一実施形態では、これによって、1つ以上の受信コイルに対する受信電圧信号の曲線の下の積分領域であって、各方形波状半周期ステップに対応付けられる積分領域を、平均FFRアイソセンタ場所にグリッディングする。勾配磁場がない状態でのスキャンの場合またはAWRを用いたときは、このプロセスは、バイアス磁場を用いたときの全印加磁場の平均にグリッディングすることに対応する。図28によって記載される実施形態では、受信信号を積分することから得た単一値を、前の半周期と現在の半周期とにおけるFFRアイソセンタ場所の平均値に、言い換えると、各ステップの前後のFFRの場所を接続する線に沿った中間点にグリッディングする。勾配がない状態でのスキャンの場合、印加磁場空間における対応するグリッド場所は、前及び現在のステップに対応付けられる2つの全印加磁場値の平均である。方形波励起におけるステップジャンプは投影励起を表すため、隣接する方形波半周期を接続する線に沿ったすべてのトレーサーをある程度まで励起すると(この実施形態の場合と同様に直接積分グリッディングアプローチ)、方形波振幅のサイズに基づく投影ボケを被る。またボケは方形波状半周期の継続時間に、各半周期の間に十分な定常状態条件が実現されるまで依存する。定常状態が実現されると、ボケは最大に達して中間点の周りに対称的になり、それ自身を矩形関数として数学的に特徴付けられ得る。
図26の理論上のランジュバン曲線に最も近い実験データ点は、方形波状パルスMPI励起と方形波半周期がトレーサーの最大緩和時間を超えた再構成とを用いて得た。小さい方形波振幅(トレーサーに対応付けられる定常状態ランジュバン曲線の微分のFWHMに対する)を用いて、この直接積分グリッディング技術に固有の投影ボケを最小限にした。図27に示す実験に基づいたPSFで方形波パルスMPIと標示されているものも、低振幅の定常状態誘起方形波パルスMPIアプローチを用いて得た。いくつかの実施形態では、方形波振幅を選択するのは、理想的な値(たとえば、0.25mT〜1mTの範囲)に任意に近い分解能を実現するには小さい。他の実施形態では、もっと大きい振幅を用いて、SNRを増加させ、少なめの分解能ペナルティを被るようにする。概略的に、SNR分解能バランスを、制約条件(たとえば、磁気刺激/SAR、ハードウェア及び電力制限、ならびに信号デジタル分解能)を受ける方形波振幅を選択することによって任意に変えることができる。
投影再構成技術による積分グリッディング
いくつかの実施形態では、直接積分グリッディングの代わりに投影再構成技術を適用してもよい。これは、大きい投影ボケペナルティを被ることなくもっと大きいパルス励起振幅を用いるためには、望ましいアプローチであり得る。パルス励起を励起方向に沿った局所投影と見なしてもよい。直交励起コイル、またはサンプルとパルスの励起方向との間の相対ジオメトリを回転させる他のメカニズムを用いて、異なる励起角度における局所的な部分視野(pFOV)のサンプリングを行ってもよく、図29に例示するような局所投影再構成技術が可能になる。
他の実施形態では、多くの局所的なpFOV投影励起を一緒に足し合わせるか、そうでなければ組み合わせて、完全なFOV投影を得てもよい。このように、単一の完全なFOV投影再構成を、図30に例示するように多くの角度をサンプリングした後で行ってもよい。
これらの投影再構成アプローチによって、SNR効率を改善することが、投影再構成アプローチに固有のSNR利点によって実現され得る。概略的に、このような利点は、角度ごとに必要なステップの数、角度の数、スライスごとの投影再構成の数に依存する。エンコーディング及び再構成の観点から、FFLの線方向に直交する励起方向で用いるときは、これらのアプローチは、無磁場平面または無磁場スラブFFRジオメトリを用いることをエミュレートする方法を表す。概略的に、逆定式化、順モデル定式化、及び反復再構成アルゴリズムが、これらの投影再構成問題を解くのに望ましい場合がある。
磁化画像再構成
パルスMPI励起シーケンスとして、各連続的な読み出し時間の終わりまでにトレーサー分布の磁化が定常状態を実現するものを用いるとき、磁化画像を中間または最終画像として直接再構成することを考えることができる。
各読み出し中に、またはより概略的には、連続して繰り返すパルス励起波形の間に定常状態が設定される場合、各繰り返す励起時間の間に受信コイルに対応付けられる信号の曲線の下の領域は、ある励起サイクルと前のサイクルとに設定された絶対磁化状態の間の有限差に比例している。いくつかの実施形態では、これはすべての連続励起の間の再帰関係を構成する。既知の初期状態を用いて、これらの再帰方程式を解いて、各パルス励起の終わり(定常状態)に対応付けられる絶対磁化に比例する信号を得ることができる。これらの値を、前述したように平均FFR場所にグリッディングして、磁化画像を得てもよい。
いくつかの実施形態では、有限差及び代数的方法(たとえば、テプリッツ行列の反転)用いて再帰方程式を解いてもよい。パルスシーケンスエンコーディングに応じて、この再構成の方法は不十分な良条件化を被って不良設定となる場合がある。推測的仮定または特定のエンコーディング方式を利用して、この状況を改善してもよい。たとえば、多くの連続的なFOV場所のサンプリング間の基準またはアンカーとして単一のFFR場所が用いられる非デカルトFFR軌跡を用いてもよい。いくつかの実施形態では、励起源及び可能性としてシフト源がスイッチオフされるゼロ磁場励起によって、絶対基準を設定して再帰的関係を壊す。
このような磁化画像を、有限な台及び典型的に医用イメージングで望まれる対称性さえ無いPSFによって特徴付けてもよい。いくつかの実施形態では、良設定の磁化画像再構成の後に有限差または数値微分技術を適用して、MPIでより典型的なランジュバンPSFを伴う最終画像を実現する。いくつかの実施形態では、両方の手順を1つの再構成アルゴリズムに、たとえばシステムの順モデル記述を用いて定式化する。このような変換を行って画像ノイズの著しい増幅を回避するときに平滑化または規則化方法を取ってもよい。これらは、堅固な推測的仮定(たとえば、予想されるトレーサーPSFの空間帯域幅についての仮定)を利用してもよい。このように構成された画像は、直接積分グリッディングの場合のような投影ボケを被ることはない。
緩和加重及び緩和フィルタリングされた再構成
磁化準備シーケンスを伴ういくつかのパルス波形は本来的に、図10及び図12に例示するような勾配またはFFRの状況で存在する空間的に異なる磁気緩和状態を用いて信号を加重する。任意の磁化準備に加えて、少なくとも1つの実質的に一定の領域を含むすべての読み出し時間は、良好に特徴付けられた固有の空間エンコーディングを、図12に例示するような一定の読み出し時間に対応付けられる時間ドメインデータに含む。
再構成の間に、選択積分、ウィンドウ処理、時間分割、種々の時間加重、またはフィルタを適用して、この二次的空間エンコーディングを使用し、可能性としてSNRを犠牲にして、トレーサー密度画像の分解能を向上させることができる。これはトレーサー密度情報を緩和ダイナミクスと結合することを示す。図31に、結果として得られる実験データを伴う一実施形態を示す。緩和加重をこのように行うと、分解能が定常状態ランジュバン物理過程を用いて可能な値よりも良好になり得る。この値は、図26の実験データ点に例示するように、ネイティブ分解能に対するMPIでの基本的限界であると考えられていた。緩和加重を、前述した再構成方法のいずれかを行う前に受信時間ドメイン信号のデジタル信号処理において適用してもよい。
いくつかの実施形態では、緩和加重を、読み出し時間に対応付けられる時間ドメインデータの選択ウィンドウ処理または閾値化によって、また信号積分及びグリッディングステップの前に行ってもよい。ウィンドウ処理は種々の方法で行ってもよく、データに適用される多くの異なるウィンドウのうちの1つに対応付けて別個の画像を形成してもよい。たとえば、図33に例示するように、複数の非重複のウィンドウをデータセットに適用してもよい。これらのデータ及び図12に例示するように、読み出し時間の早い部分またはウィンドウに対応する時間ドメイン信号は、FFRアイソセンタから遠い方のトレーサーにより対応付けられ、一方で、遅い部分またはウィンドウに対応する時間ドメイン信号は、FFRアイソセンタに近い方のトレーサーにより対応付けられる。遅いウィンドウに対応付けられるデータまたはある時間閾値の後のデータから画像を再構成すると、SNRを犠牲にして分解能を非常に改善することができる。読み出しに対応付けられる時間ドメインデータセットの全域をカバーする非重複ウィンドウのセットから画像を再構成した場合は、これらの画像の重ね合わせが、全体の時間ドメイン読み出し時間をカバーする単一ウィンドウによる単一画像再構成と同等であるという特性になる。このように、これらのウィンドウ処理手順を全信号の分解と見なしてもよい。
より一般的な加重手順を時間ドメインデータに適用してもよく、前述したウィンドウ処理及び閾値化は2値またはステップ状加重を表す。時間ドメインデータを積分及びグリッディングする前に、加重手順を個々のデータセットにまたは複数の分解されたデータセットにわたって適用してもよい。たとえば、全体の時間ドメイン読み出し時間(または1つ以上の時間分割)に対応付けられる時間データを、直線ランプによって、またはもっと複雑な時間加重、たとえば直線ランプ及び単一加重、多項式関数、または指数関数の区分的な組み合わせによって加重してもよい。これらの加重を用いて、緩和ダイナミクスを介して空間時間エンコーディングを強調してもよい。加重がより円滑またはより連続的であれば、本明細書で述べたように、緩和加重に固有のSNR分解能トレードオフにおいてもっと柔軟性がまたはトレードオフに対応付けられるもっと好都合な状態が実現され得る。時間加重を介してSNR及び分解能をトレードオフできることは、たとえば、直接積分グリッディング再構成法を用いる場合に励起振幅を選ぶときに可能なSNR分解能トレードオフとは独立にパルスMPIにおいてSNR及び分解能をトレードオフする第2の方法である。
いくつかの実施形態では、フィルタを適用して分解能の緩和加重改善を実現してもよい。標準的な単音の連続波システムでは、基本励起周波数の高調波が画像ドメイン内のより高い空間周波数情報に対応付けられることが十分に確立されており、その結果、全体受信帯域幅を広げることが分解能を向上させるために必要であり、逆もまた同様であるという基本的な分解能受信帯域幅トレードオフがもたらされる。しかし、緩和の効果と、定常状態磁化を設定するのに十分に長い静止した半周期を用いることによって、低周波数側信号帯域幅の小さいサブセットに対応付けられるデータのみを保持するだけで分解能を改善できるという大変異なる関係をパルスMPIに有することができる。これを、図32の方形波励起実施形態に対して示す。
FFRアイソセンタから遠いトレーサーから得られる信号ほど、信号が読み出し時間内のより早くに発生することによって特徴付けられるとともに、信号成分が時間的により急激に変化することに全般的に及び関連して特徴付けられる。フーリエドメインの観点から、これは高周波数側成分を意味する。したがって、緩和では通常、空間周波数可分性が認められる。時間ドメインまたは周波数ドメインフィルタ(フーリエ変換の適用後)も、時間ウィンドウの適用と同様に、分解能を向上させるために用いてもよい。前述した時間ドメイン法の多くとは異なり、これらの周波数によって、SNRを損失することなく分解能を改善することができ得る。いくつかの実施形態では、分解能とSNRとを同時に向上させることができ得る。これが可能であるのは、高調波に対応付けられるデータを除去すると通常、情報、したがって信号強度が取り除かれるため、帯域幅の低減に起因するノイズも取り除かれるからである。ノイズの減少が信号の損失以上であるならば、当初のSNRを維持するかまたは上回る。概略的に、再構成において緩和情報を利用することは、単純な時間ウィンドウ処理、フィルタリング、または両方によって行ってもよい。
あるパルス励起波形を、周期的に繰り返す励起波形(たとえば、方形波)の基本周波数とともに特定の励起波形のフーリエ分解ごとの高調波を用いるトレーサー分布の同時励起と見なしてもよい。これに関連して、トレーサーからの受信時間ドメイン応答信号はまた、基本周波数の高調波を囲む小帯域に集中する。各高調波の周りの帯域のサイズは、システムの他の特徴(たとえば、シフト磁場スルーレート)によって決定される。この結果、標準的な単音連続波システムの場合と同様の受信帯域幅構造が得られる。しかし図32に例示するように、信号強度、分解能、及び帯域幅の間の大変異なる関係を有することができる。図32の方形波実施形態では、高品質画像を基本波の周りの単一の小帯域のみから構成することができる。他の高調波の周りの1つ以上の帯域を選ぶこともできる。図32に、含まれる高調波帯域の数と、1D画像FWHM及びピーク信号強度との間の実験に基づく関係を示す。標準的な連続波MPIで観察されるもの(受信帯域幅が増加すると分解能が悪化する)とは反対の関係が、分解能と帯域幅との間で見られる。このようなアプローチは、前述した時間ウィンドウ処理及び関連する時間ドメイン操作で利用するものと同じ緩和空間時間エンコーディングを利用しているが、点ごとの乗法ウィンドウではなくて時間ドメインフィルタを用いることによって実施される。他の実施形態では、パルス励起波形を用いて、いくつかの基本周波数の高調波の周りの小帯域としての受信帯域幅の記述が適切でないようにしてもよい。それにもかかわらず、これらの実施形態では、緩和との同じ空間時間及び空間周波数結合が、受信帯域幅が低減した際の分解能の改善に関係して実現してもよい。
概略的に、時間ドメインデータの緩和加重、ウィンドウ処理、フィルタリング、またはより一般的な分解を用いて、分解能及びSNRが異なる多くの画像を形成してもよく、これらの画像を、たとえば多重分解能画像処理技術を用いて、後で組み合わせて1つまたはより少数の画像にしてもよい。用いるウィンドウ及び分解は非重複であってもよいし、重複を含んでいてもよい。概略的な場合に対して前述したものと同様に、緩和加重イメージングに対するシステム行列アプローチを定式化することも可能であり、望ましい場合がある。緩和加重システム行列再構成の場合、システム行列を構成する前にデータを変換すること(たとえば、行列の行または列と同様に、x空間グリッディングされ及びウィンドウを開けられ及び/またはフィルタリングされた点状源画像を用いて行う)が必要となる。このように、システム行列を構成するために取られる単一の較正データセットを用いて、多くの異なるシステム行列を構成してもよい(緩和加重/フィルタリングがある場合とない場合とを含む)。逆定式化を解く前に、サンプルスキャンに対応付けられる生データをそれ相応に変換する必要がある。
緩和画像再構成
概略的に、パルスMPIにおける受信時間ドメイン信号内で磁気緩和情報を直接エンコードする。この磁気緩和情報を測定し、フィッティングさせ、定量化し、そうでなければ特徴付けてもよい。この定量化は、非イメージング、センサ、またはスペクトルフォーマットの勾配磁場を用いずに行うことがきるか、または勾配磁場の状況で行って緩和画像及び/または4Dイメージングデータセットを形成してもよい。緩和画像を形成するときに、磁気緩和現象の測定値を、FFRアイソセンタの既知の軌跡に基づいて画像空間場所にグリッディングし、トレーサー密度画像とは別個でこれに大きくまたは完全に直交する情報を用いて緩和画像を形成する。いくつかのエンコーディング方式を用いて、緩和マップを、印加磁場の関数として、像空間内の各ピクセルまたはボクセルに対応付けることができる。勾配磁場またはFFR構造が存在しない場合、全サンプル体積を表す印加磁場の関数としての緩和マップが急速に形成され得る。他の実施形態では、空間及び緩和関連変数の関数としてトレーサー密度を記述する4Dデータセットを得てもよい。いくつかの実施形態では、システム行列法を用いて緩和画像を構成することができる。好適なシステム行列を構成するときに、動的パラメータの部分的なx空間グリッディング及びフィッティング、測定、または定量化が望ましい場合がある。
MPIでは、トレーサーの磁気緩和を、複数の及び可能性として相互に作用する現象(たとえば、ニール、ブラウン、または強磁性物理緩和プロセス)によって特徴づけてもよい。また、緩和物理過程の具体的な性質とは関係なく、不均質シナリオにおいてより速い磁気緩和プロセスとより遅い磁気緩和プロセスとを区別してもよい。パルスMPIエンコーディングでは、緩和情報(これらの異なる成分に関するものを含む)をエンコーディングして、再構成プロセスが磁気緩和の異なる態様を観察し、調べ、または強調することができるようにする複数の方法が認められる。
概略的に、パルスMPIでは、特により大きい磁気コアサイズのトレーサーを用いる場合には、磁気緩和現象は局所的な微環境プロセス及び状態の影響を受けやすい場合がある。粘度、pH、活性酸素種濃度、生化学的状態、トレーサー結合事象、セルを標識化するためにトレーサーを用いるときのセルの状態または生存能力、種々の生化学プロセスの動力学またはダイナミクス、及び他の多くなどの変数がすべて、トレーサーの磁気緩和特性に影響し得る。これは特に、トレーサーが著しいブラウン緩和現象を示して、局所的な印加磁場と位置合わせする過程でトレーサーが物理的に回転する(磁気コア及び外部シェルの両方を含む)ときに当てはまる場合がある。ブラウン緩和を受けるトレーサーの時間的ダイナミクスは、磁気トルクとして働く印加磁場強度及び任意の回転ドラッグ源の両方の強い関数である。パルスMPIでは、実質的に一定の時間の励起磁場が印加されると、FFR構造によって与えられる磁気トルクと局所的な微環境状態との間の相互作用に基づいて、トレーサー分布の磁化が新しい定常状態に向かって進展する。FFRアイソセンタの異なる平均場所に同じパルス励起が繰り返して印加されると、対象とする局所的な微環境の変数におけるわずかな差によって、観察可能な磁気緩和の点に関するコントラストが得られる。これらの変数の多くは、対象とする生理的プロセスに対応付けてもよく、したがってこれらの変数によって生理的コントラストをMPI信号に直接または間接的にエンコードしてもよい。これらのデータから緩和画像が再構成されると、トレーサー密度画像において観察できない生理的コントラストが取得され得る。
図34に、パルスMPI波形を用いるときの緩和情報のエンコーディングの重要な特徴と、このエンコーディングによってどうやって緩和画像を再構成できるかを例示する。トレーサー密度イメージングの場合と同様に、トレーサー分布についての空間情報を、ランジュバン飽和現象を介して、また時間的に読み出し時間の信号ダイナミクスにおいてエンコードする。ランジュバン物理過程とは、緩和特性とは関係なく、FFRアイソセンタから遠く離れたトレーサーは、所与のパルス励起に対応付けられる時間ドメイン信号に信号エネルギーをほとんどまたはまったく寄与しないことを意味する。FFRアイソセンタに十分に近いトレーサーが些細でない信号エネルギーを寄与する場合、FFRアイソセンタからの距離に基づいて寄与は変化する。FFRアイソセンタに最も近くて、もっと低い全印加磁場強度に対応付けられるトレーサーは、もっと長い緩和時間によって特徴付けられる緩和を受け、一方で、さらに遠いトレーサーは、もっと短い緩和時間によって特徴付けられる緩和を受ける。概略的に、所与のパルス励起読み出し時間に対応付けられる時間ドメイン信号は、FFRアイソセンタ及び局所的な微環境状態に対するその位置によって決定される緩和プロセスに続くトレーサーインパルス応答の加重された混合物または重ね合わせ(誘導的な信号受信を用いるときは体積積分から)であり、またランジュバン物理によってFFRアイソセンタからの距離によって加重またはスケール変更される。緩和ダイナミクスに対する局所的な微環境状態の影響によって、生理的情報がパルスMPI信号に強力に結合され得る。
このように構成された緩和画像は、対象とするイメージング態様(たとえば、対象とする特定の生理的コントラストまたは信号)を強調または特定するために適用される種々の後処理ステップを有していてもよい。いくつかの実施形態では、緩和画像を閾値化することを用いて、対象とする別個の現象を分離するかまたは画像をカラー化してもよい。緩和画像及びトレーサー密度画像(可能性として同じスキャンから得たデータから構成される)を組み合わせて、1つ以上のカラー化された画像にすることもできる。
直接応答グリッディング
いくつかの実施形態では、各読み出し時間に対応付けられる未処理の時間ドメイン信号によって磁化インパルス応答を直接エンコードする。たとえば、急速な移行の後に実質的に一定の時間が存在する場合、磁気トレーサー分布はステップ応答のような方法で新しい定常状態磁化分布に進展する。誘導受信コイルを用いることによって適用される時間微分によって、未処理の時間ドメイン信号において直接観察できるインパルスのような応答が実現する。これらの状況では、1つ以上の特性緩和パラメータを、各読み出し時間に対して測定するかまたはフィッティングさせて、規則的なピクセルまたはボクセルグリッド上にグリッディングするかまたは内挿して、緩和画像を形成してもよい。いくつかの実施形態では、各ステップに対応付けられる画像ドメイングリッド点は、そのステップ中の既知のFFRアイソセンタ場所である。
AWRにおける方形波状緩和マップまたはPSF
図35に、方形波状パルスシーケンスエンコーディングを使用し、図24及び図25記載するように再構成された緩和イメージングの一実施形態を例示する。この実施形態では、方形波励起は、交互に変わる時間ドメインインパルス応答をもたらす。これらのインパルス応答はそれぞれ、FFRアイソセンタの付近のトレーサーに対応付けられる緩和現象の加重重ね合わせの結果である。概略的に、個々の構成する緩和応答は、FFRアイソセンタからの距離及び局所的な微環境状態によって決定され、ランジュバン物理過程に従ってFFRアイソセンタからの距離によって加重される。これに関連して、各インパルス応答を、局所的に集合した(FFRに対して)トレーサー応答と見なしてもよい。各インパルス応答を、たとえば、単一の平均、特性、または総合の指数関数的な緩和時定数を、各方形波ステップまたは半周期に対応付けられる時間ドメインデータにフィッティングすることによって定量化してもよい。各フィッティングされた値を次に、ステップ中のFFRアイソセンタの平均位置、または勾配磁場が存在しない状態での励起における全印加磁場に対応付けてもよい。トレーサー密度イメージングの場合と同様に、結果は、概略的に、サンプル点と最終的なイメージンググリッドとの間の多対1の関係である。内挿グリッディングステップを行って、測定した緩和時間のセットをピクセルまたはボクセルの最終的な規則的グリッドにマッピングしてもよい。緩和ダイナミクスを測定し、フィッティングし、または定量化する前に、前述したように緩和加重またはフィルタリングを適用して、たとえば、緩和フィッティングの測定をさらに局在化してもよい。いくつかの実施形態では、動的な緩和値をフィッティングして、フィッティングされた値をx空間にグリッディングまたは内挿する前に、FFLベースまたは他の投影FFRベースのパルスMPIシステムを用いて、投影再構成を最初に、FFL/FFRと画像ボリュームとの間の異なる相対角度で収集した未処理の時間ドメインデータセットに適用してもよい。このような方法では、時間ドメインデータを画像ドメイン値に低減する前に、時間ドメインデータを、3つのすべての空間の寸法に分解した場所に対応付けてもよく、その結果、動的なフィッティングの良条件化が改善されて、3D空間内での真の緩和挙動がより良好に局在化され得る。
図35に示すように、AWRを用いて、サンプルの総合緩和時定数を印加磁場強度の関数として測定することができる。方形波状励起に遅くて直線的に立ち上がるバイアス磁場を重ねて、大きい磁気的視野をサンプリングした。この1次元の緩和マップは印加磁場強度の関数として、同様に構成されたトレーサー密度PSFと類似の緩和画像PSFであって、全印加磁場の関数及び/または勾配磁場が存在する場合のイメージング状況でのFFRアイソセンタからの距離の関数として磁気緩和ダイナミクスがどのように変化するかを記述する緩和画像PSFと、見なしてもよい。さらに、この緩和マップは、集合体トレーサーサンプルがどのようにサンプル内の集合体微環境状態に応答するかを記述する。同じサンプル内かまたは多くの異なるサンプルにわたる局所的な微環境状態を、サンプルが種々の状態にさらされているときに、スキャン及び緩和マップ再構成を用いて必要に応じて調べてもよい。このプロセスを用いて、微環境状態に対するトレーサーダイナミクス及び緩和PSFの感度を検知し、検出し、及び定量化してもよく、所与のトレーサーを伴う緩和イメージングフォーマットで利用できる予想されるコントラストについての情報が得られる。
図35に示す実施形態では、励起読み出しごとに単一の典型的な緩和時定数をフィッティングしたが、他の実施形態では、複数の緩和パラメータをフィッティングすることが望ましい場合がある。たとえば、複数の指数関数的時定数をフィッティングしてもよく、1つ以上の指数関数的な振幅を時定数(複数可)とともにフィッティングしてもよい。このようなアプローチは、以下の場合に、望ましいかまたは十分に動機付けられている場合がある。トレーサーの物理過程が複数のプロセス(たとえば、ニール及びブラウンプロセスの組み合わせ)によって支配されている場合、トレーサーの特性(たとえば、磁気コアサイズ及びシェル直径)が不均質である場合、他の何らかの非理想特性が存在する場合、または4Dイメージングにとって緩和のスペクトル分解が望ましい場合。単一の指数関数的時定数自体が必ずしも正確ではない。なぜならば、時間ドメイン信号は、異なる場所におけるトレーサー及び異なる状態を受けるトレーサーに対応付けられる種々の応答時間の加重平均または混合物であることが知られているからである。しかし、単一の指数関数的時定数などの単純なモデルは、効果的及び頑強にダイナミクスを取り込んで、生理的または分子イメージング視点から非常に有意義なコントラストを与え得る。
概略的に、緩和ダイナミクスを、指数関数的時定数によって記述される単純な線形の一次プロセスよりも複雑な磁気トレーサー緩和の現象学的または物理モデルに対してフィッティングしてもよい。いくつかの実施形態では、時定数以外の緩和パラメータをフィッティングし、測定し、または導き出してもよい。たとえば、パラメータ、たとえばピーク遅延時間、FWHM、または有限な台の時間(SNR閾値などのいくつかの閾値によって規定される)が、より教育的であるか、時間的ダイナミクスをより良好に特性評価するか、または緩和イメージング内の対象とするコントラストを強調してもよい。
定常状態再生画像再構成
いくつかの実施形態では、パルスシーケンスによって、所与のFFRの平均場所の付近のトレーサーに対する定常状態を実現するための時間を、定常状態再生パルス励起波形を用いて調べてもよい。図20に、このタイプのエンコーディング及び関連する生データの実施形態を示す。この場合、定常状態再生または緩和時間の測定値を定量化またはフィッティングしてもよい。定常状態再生励起によって、はるかに長いまたは総合時定数を、はるかに速い時定数及び同時に作用する関連する物理的現象の存在下で、測定可能または検出可能とすることができる。ある状態下のいくつかのMPIトレーサーを、特徴時間が一桁以上異なる同時の緩和プロセスによって特徴付けてもよい。さらに、遅いプロセスがトレーサー応答の全エネルギーのかなりの割合に関与する場合があるが、このプロセスのダイナミクスを未処理の時間ドメイン信号に取り込むことは、速いプロセス及びノイズフロアと並べられると難しい場合がある。この場合、定常状態再生エンコーディングによって、より遅いプロセス、及び/またはプロセスに関連する総合または結合緩和時間を定量化するための堅固な方法が得られる。
図36に、定常状態エンコーディング信号をどのように処理して定量化された緩和情報を得るかを示す。FFRの平均場所ごとに、または勾配を伴わないスタンドアローンの検知システムとして、可変のパルス間時間を伴う一連のパルスを印加する。出力した生データには、各パルスに対応付けられる特性信号インパルス応答が含まれる。励起パルス間のパルス間時間が早くて及び/または短い継続時間だと、トレーサー分布が次の励起前に定常状態に達することはできない。この場合、分布は、各パルスに対応付けられるものとパルス間時間に対応付けられるものとの間のいくつかの中間状態にある。継続時間がより短いパルス間時間の後にパルスが印加されると、全エネルギーがより小さい(たとえば、ピーク値及び/または曲線下の領域がより小さい)信号スパイクとなる。これは、図20及び図37の生データに容易に見られる。全定常状態エネルギーを、最初のパルス(パルス間時間FFR場所に対応付けられる定常状態が実現した後に印加される)に対応付けてもよいし、または最後のパルス(パルス間時間が保証されたかもしくは定常状態が実現したことが分かった後、または両方の後に印加される)によって対応付けてもよい。トレーサー分布の緩和ダイナミクスをサンプリングするための可変のパルス間時間を伴って、最初と最後のパルスの間に多くのパルスを印加してもよい。いくつかの実施形態において、イメージング応用では妥当な全スキャン時間を確実にするために比較的少なめのパルスを用いる。いくつかの実施形態において、非イメージング(無勾配)応用では、緩和ダイナミクスをより高密度にサンプリングするためにさらに多くのパルスを用いる。
多くの方法を用いて、定常状態再生励起によって調べた緩和ダイナミクスを定量化してもよい。いくつかの実施形態では、図36に示すように、包絡線を生データにフィッティングさせる。たとえば、定常状態エンコーディング分析を介してトレーサーに対応付けられる緩和時間に包絡線の指数関数的時定数が対応するように、指数関数をフィッティングさせてもよい。他の実施形態では、特徴時間を直接フィッティングさせるか、または生データ及び/または生データにフィッティングする包絡線から内挿してもよい。たとえば、定常状態ピークまたはエネルギー値の63%を実現するのに必要なパルス間時間を直接計算するかまたは内挿してもよく、また特徴時間定数として報告してもよい。
線に沿った励起
いくつかの実施形態では、パルス励起をFFLの線に沿った方向に行ってもよい。この方式では、線は直交面内では平行移動しないが、その代わりに、FFLからLFLへ、またはある強度もしくは分極におけるLFLから別の強度もしくは分極におけるLFLへ移行する。線方向に印加された励起パルスとは関係なく、直交面内でのFFLまたはLFLの平均場所は一定である。いくつかの実施形態では、異なる印加磁場強度において線に沿ってトレーサーの緩和を調べることが可能である。AWRにおいて緩和マップをパルスエンコーディングによって構成するときまたは勾配がないときと同様に、励起パルスシーケンスを用いてトレーサー分布の緩和ダイナミクスを全印加磁場強度に対して調べてもよい。しかしこの情報は、ここでは励起線によって空間的に局在化される。この励起をFFR及び/またはFFLの異なる平均場所で適用してもよい。投影モードにおいてまたは完全なトモグラフィ投影再構成に続いて、1D緩和マップまたは他の非スカラ値を個々のピクセル及び/またはボクセルに対応付けてもよい。概略的に、他の緩和画像実施形態の場合と同様に、これらの多値データセットをメリットのスカラ値に低減してスカラ緩和画像を得てもよい。またこれらのデータを、空間及び時間緩和に関連する変数の関数としてトレーサー強度を記述する4Dデータセットに低減または変換してもよい。
時間分割
トレーサー密度イメージングの場合と同様に、時間ドメイン信号自体に固有の空間時間エンコーディングを緩和画像を構成するときに用いてもよい。緩和加重トレーサー密度イメージングで適用されたものと同じかまたは類似の加重、ウィンドウ処理、またはフィルタリング手順を、緩和画像を形成する前に時間ドメイン信号に適用してもよい。いくつかの実施形態では、メリットの緩和パラメータ(たとえば、指数関数的時定数)を、時間ドメイン信号のウィンドウを開けられた多くの別個の分解またはフィルタリングされた別個のバージョンのそれぞれにフィッティングしてもよい。早い態様の読み出し信号ほど速い緩和プロセス(たとえば、FFRアイソセンタからより遠い粒子に起因するもの)によって多く加重され、遅い態様ほど遅い緩和プロセス(たとえば、FFRアイソセンタにより近い粒子に起因するもの)によるため、異なるウィンドウまたはフィルタに対応付けられる緩和パラメータの測定値によって、特定の現象に対応付けられる緩和時間に対して除去または選択するメカニズムが得られる。いくつかの実施形態では、この手順によって緩和画像の分解能が向上する。いくつかの実施形態では、空間加重とは関係なく、この手順を用いて別個の緩和状態(たとえば、結合対未結合)に対して除去または選択することができる。
4Dイメージング
別個のトレーサー密度画像及び緩和状態画像を形成するある実施形態について説明してきた。数学的に、これらは、形式ロー(x、y、z)及びr(x、y、z)の別個の画像をもたらすと記述することができる。ここで、ローはスカラトレーサー密度画像に対応し、rはスカラ緩和画像に対応する。概略的に、より明示的に情報を組み合わせて形式I(x、y、z、タウ)の4D画像データセットを形成することができてもよい。この形式では、再構成されたデータセットにはトレーサーについての強度情報が空間及び緩和時間の関数として含まれる。このような再構成によって、点広がり関数(PSF)及び画像(MPIプロセスをより十分に特性評価してトレーサーダイナミクスについてのスペクトル情報を与える)が得られる。いくつかの実施形態では、4D画像がタウ方向に沿って投影された場合、スカラ強度変数Iは崩壊してトレーサー密度ローになる。いくつかの実施形態では、未処理の時間ドメインデータに適用されるウィンドウを開けられた分解技術を用いて、このような4D画像データセットを形成してもよい。他の実施形態では、ラプラス変換などの数学的ツールを利用して、緩和時間または緩和スペクトルデータを再生し、分解し、または再構成してもよい。他の実施形態では、未処理の時間ドメインデータを好適な基底系上に投影してもよいし、または変換した後に好適な基底系上に投影してもよい。基底系を、たとえば、トレーサーを特性評価する既知の物理的緩和プロセスに対応付けてもよい。
後処理アプローチ
パルスMPIの状況で種々の後処理技術を利用してもよい。概略的に、各スキャンに対して信号プロセッサによって1つ以上の画像を再構成してもよく、また単一のサンプルに1つ以上のスキャンを対応付けてもよい。このように得た画像のセットを種々の仕方で処理して、ユーザに対する最終出力を形成してもよい。たとえば、単一画像を処理し、フィルタリングし、または閾値処理してもよい。複数の画像を、何らかの方法で組み合わせる前に、同様に処理し、フィルタリングし、または閾値処理してもよい。
多重分解能画像の組み合わせ
いくつかの実施形態では、複数の画像を、異なるネイティブ分解能及び/またはSNRレベルをもたらすエンコーディングまたは再構成から得てもよい。たとえば、動的に変化する勾配、異なる固定値の勾配大きさで取った複数のスキャンを用いること、動的に変化するパルス励起振幅、異なる固定値の励起振幅で取った複数のスキャン、及び/または異なるパルスMPIエンコーディングを用いて(たとえば、異なる磁化準備デザインを通して)取ったスキャンを用いることをすべて組み合わせて、より小さいセットまたは単一の画像を形成してもよい。最終画像(複数可)は、分解能、SNR、及び画像コントラストのうちの1つ以上を最大にするようにデザインしてもよく、また所望の応用例に依存してもよい。
密度及び緩和画像の組み合わせ
いくつかの実施形態では、1つ以上の別個の密度及び/または1つ以上の別個の緩和画像を組み合わせて1つ以上の新しい画像にしてもよい。いくつかの実施形態では、緩和情報を用いてトレーサー密度画像をカラー化して、画像コントラストを向上させ、緩和情報をトレーサー密度画像上にマッピングする。緩和情報を、連続的に変化するカラーマップを伴う別の様式から、密度画像及び/または解剖学的参考画像上に直接重ねてもよい。いくつかの実施形態では、他の手段によって、連続的に変化する緩和情報を閾値処理するかまたは別個のカラー上にマッピングしてもよい。たとえば、順モデルベースのアルゴリズムを用いて、対象とする緩和種を分離してもよい(たとえば、結合または未結合状態のMPIトレーサーを、またはサンプル体積に複数が適用される場合の別個のトレーサーの分離において)。これらの結果を用いてスタンドアローンの画像を形成してもよいし、またはカラーマッピングとして密度画像上に適用して重ねてもよい。
4Dデータの投影及びスライシング
いくつかの実施形態では、信号処理及び再構成によって、MPI強度値が3つの空間座標変数及び時間緩和変数に対してマッピングされる4DMPIデータセットが得られる。種々の寸法に沿って投影することによって、情報が豊富なデータセットをシームレスに照合することができてもよい。たとえば、1つ以上の空間寸法に沿って投影すると、残りの空間寸法に対して緩和スペクトル情報を視覚化することができる。緩和寸法に沿って投影することでトレーサー密度画像が再生され得る。4Dデータセットを通るスライスがあると、容易に視覚化された3Dデータセット(たとえば、空間内に局在化されたMPI強度)が、緩和スペクトル変数の列挙を通ってステップするときに与えられ得る。
パルスMPIエンコーディングの応用例
より大きいコアトレーサーを用いることによるイメージングの向上
パルスエンコーディング及び再構成技術を用いれば、MPIの現在の応用例がすべて、イメージングパラメータ(たとえば、分解能、SNR、及び画像コントラスト)の点に関して改善され得る。たとえば、平均コアサイズが25nmよりも大きいトレーサーをパルスMPI技術とともに用いれば、アクティブなMPI開発の現在領域(たとえば、幹細胞追跡、癌診断イメージング、肺換気及び灌流イメージング、心血管造影応用例、脳卒中診断イメージング、及び灌流イメージング、たとえば脳血流量(CBF)及び脳血液量(CBV))において分解能を向上させることができる。
パルスMPIの応用例の例
パルスMPIの固有の態様(たとえば、緩和情報の定量化、4Dイメージングの可能性、及び磁化準備を通して磁化成形ができること)によって、MPIのこれまでに予測されていない新しい応用例が得られ得る。緩和情報、特に環境に敏感な物理過程(たとえば、ブラウン緩和)に対応付けられるものを頑強に定量化できることを用いて、これらのパルスシーケンスを、新しい分子イメージング応用例の広範囲にわたって用いてもよい。パルスMPIパルスシーケンスにより、任意的に平均磁気コアサイズが25nm以上のトレーサーを用いて、以下のすべてを可能にすることができる。インビボ粘度測定イメージング、pHイメージング、炎症イメージング、活性酸素種イメージング、機能化されたトレーサーを用いた結合事象のイメージング、MPI磁気スイッチの設計及び使用、機能化されたまたは専用のトレーサーを介した生化学的動力学の観察、身体内の出血を明らかにすること、感染イメージング、肺塞栓症及び肺の灌流障害の診断、センチネル節生検。
いくつかの実施形態では、パルスMPI法及び装置を用いて、対象とするエクスビボサンプルに対する緩和特性をイメージング及び/または定量化する。これらのサンプルは、MPIトレーサーが(たとえば、全身送達または局所注射により)導入された全生物から作られている場合もあるし、または収穫後にMPIトレーサーが別個のステップで導入されている場合もある。これらのサンプルには、組織及び臓器サンプル、生体液、ならびに他の生物学的に誘導されたサンプルが含まれていてもよい。またこれらのサンプルには、対象とする非生物学的サンプル(たとえば、トレーサーサンプル)が含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、パルスMPI法及び装置を用いて、対象とするMPIトレーサーが導入された後に、生動物被検体に対する緩和特性を、たとえば、限定することなく、循環系への全身注射または直接組織注射によって、イメージング及び/または定量化する。いくつかの実施形態では、パルスMPI法及び装置を用いて、対象とするMPIトレーサーが導入された後に、被験者に対する緩和特性を、たとえば、限定することなく、循環系への全身注射または直接組織注射によって、イメージング及び/または定量化する。
図40及び図41に、AWRとともにパルスエンコーディング及びパルスMPI技術を用いて得た実験データを示す。図40に、より大きいコアMPIトレーサー(>25nm)に対する磁気緩和の変化を、生理的に関連する粘度範囲にわたって粘度の関数として堅固に検出できることを示す。これらのデータは、パルスMPIにおける緩和イメージングに固有の感度及び可能な生理的コントラスト機能を示す。図41にさらに、パルスMPI緩和イメージング技術を用いて結合事象を検出できることを例示し、結合に応答するトレーサーと応答しないトレーサーとの間の測定された区別を示す。
パルスMPIハードウェア
実際にはパルスMPI励起を実現するには複数のハードウェアシステムが必要である。図42に、パルスMPIスキャニングシステムにおける構成サブシステムのコンポーネント及びそれらの間の関係を記載する。図43にはさらに、典型的なパルスMPIスキャニングシステムの態様を例示する。
FFRの形成
図2に例示するように、すべてのMPIシステムの最も重要な点はあるタイプのFFR構造を出現させることを通して信号の空間位置を確認することである。FFR構造を形成するために、典型的なMPIスキャニングシステムでは、1つ以上のアクティブまたはパッシブな磁場源を用いて、FFRを構成する特定の空間磁場パターンを発生させる。FFRの特徴は、印加磁場がトレーサー固有の飽和値を下回る少なくとも1つの領域と、印加磁場がトレーサー固有の飽和値を上回る1つの領域とを含むことである。FFRは多くの場合に、必ずしもそうではないが、磁場に線形空間勾配を含むため、これらの領域の間を滑らかで直線的に移行する。FFRは、無磁場点、無磁場線、または図2に示したようなより一般的な形状を有していてもよい。FFRは、図44に例示するように、1つ以上のアクティブまたはパッシブな磁気源(たとえば、電磁石コイル、超伝導磁石、または永久磁石のアレイ)によって生成してもよい。また、図44に示すようなパッシブな軟磁性材料(たとえば鉄)を磁束集中ガイドとしてデザインで用いて、FFRパターンの望ましい態様を改善してもよい(たとえば、電力を低減した状態での直線勾配強度)。
FFRサンプルジオメトリを動かし、励起し、及び操作する
図17に示すように、典型的なMPIスキャンは、対象とするイメージングFOVに対してFFRパターンの場所をシフトさせて、対象とするイメージングFOVをサンプリングすることと考えてもよい。FFLを用いるこの典型的なx空間パルスシーケンス実施形態では、線に直交する平面内でFFL線アイソセンタの平均場所をゆっくりとラスター化して、投影画像を取得する。FFLサンプル相対ジオメトリが回転すると、トモグラフィ投影再構成に対して複数の投影を得ることができる。図のクロスハッチ領域は、線に直交する平面内で励起パルスシーケンスによってサンプリングまたはカバーされたpFOV領域を例示する。代替的に、いくつかの実施形態では、励起は全体的に線の方向であってもよい。より大きいFOVを十分にサンプリングするためにはシフティング波形が必要である。これらの領域は説明用であり、及びまたは必ずしも一定の比率ではない。たとえば、いくつかの実施形態では、pFOV領域幅は相対的なサイズがはるかに小さくてもよい。さらに、図示した特定のラスター軌跡は限定ではない。他のラスターまたはデカルト軌跡、ならびに半径方向、螺旋状、または他のタイプの軌跡を用いて、全体FOVをカバーしてもよい。またpMPI励起を、システム行列再構成法用の較正またはシステム行列を作成するときに用いることができる。
概略的に、FFRパターンを形成するために用いる同じ磁場源(たとえば、電磁石の場合)を用いて、時間変化するFFR軌跡の一部または全部の成分を完成してもよい。他の実施形態では、別個の磁気源コンポーネントによって、これらのシフティング磁場のうちの1つ以上を得る。図43に、これらの場合の両方を例示する。小さいパッシブまたはアクティブなシムコンポーネント(たとえば、小さい電磁石コイル、永久磁石片、または軟磁性材料片)をデザインに含めて、対象とする軌跡をスキャンする間、ターゲットFFRの忠実度が維持されることを確実にする。FFRに対するサンプルの機械的な動き、サンプルに対するFFRの機械的な動き、または両方の組み合わせを用いて、イメージングFOVに対してFFRの場所をシフトさせることができる。また、時間変化する磁場源または供給源を機械的な動きと組み合わせることを用いて、イメージングFOVをサンプリングすることもできる。たとえば、いくつかの実施形態では、サンプルをイメージング孔内に配置してスキャン中に相対的なシフトの全部または一部を一方向に行うために用いるモータによって駆動されるリニアステージ上に、サンプルをマウントしてもよい。図43に例示するように、別個の電磁石によって直交軸の一方または両方でのシフトを行ってもよい。投影イメージングが回転する場合、機械的または電磁石源によって、サンプリング体積とFFLまたはより一般的にFFRとの間の相対回転を得てもよい。
概略的に、速い(たとえば、帯域幅>1kHz)励起または駆動波形を、遅いシフト波形(たとえば、帯域幅<10Hz)から区別することを、それらがシステムコンポーネント(たとえば、渦電流シールディングサブシステム)と相互作用する仕方の違いを概念的に明確にするために、またイメージング信号を考慮して行ってもよい。しかし、両方のタイプの波形は、時間とともにFFRパターンをシフトさせるかまたはコンディショニングするように作用し、可能性として、速度またはスルーレートに加えて磁場の大きさ及び所要電力が実質的に異なる。電磁石を用いて直線勾配FFRデザインをシフトさせるとき、励起及びシフト波形を典型的に、空間的に均質だが時間変化する磁場を生成するために配設されたコイルに印加する。均一磁場は、多くのFFR実施態様を時間とともにシフトまたは平行移動させながら、全体を通してFFRパターンの空間整合性を維持するように作用する。FFLの線に沿って励起させるようないくつかの実施形態では、FFRを平行移動させず、むしろ前述したように変換する。このような均一なコイルを用いるとき、イメージングFOV上でのコイル感度のズレの点に関して、均質性の要求は90%以上であってもよいが、均質性がもっと不十分なコイルを用いてもよい。
パルス励起送信システム
パルスMPIでは、速い励起または送信ハードウェアシステムによって、パルス波形によって記述される時間変化する磁場を実現できなくてはならない。典型的なMPI軌跡には、速くて時間的に正弦波的に変わる励起または駆動磁場が含まれるが、本発明のいくつかの実施形態では、非正弦波スキャニング軌跡をもたらす非正弦波的な時間変化を伴うパルス励起波形を用いることを考える。これらの非正弦波励起波形には、磁場の特定値がある時間の間だけ実質的に一定に保持される周期的または非周期的な成分、ならびに立ち上がり及び/または立ち下がりエッジを通る急速な移行、ならびにより多くの任意の過渡的な波形成分が含まれていてもよい。
これらのパルス波形を実現するために、特定の送信エレクトロニクス及びコイルデザインが必要である。最終的な目標は、1つ以上の励起コイルを通る電流(したがって、誘起される磁場)が、パルスシーケンスによって規定される所定の時間の軌跡に従うことである。詳細には、種々の継続時間の実質的に一定の両方の時間、及び急速な過渡事象、及び/または従来の正弦波的な送信システムの単音よりも帯域幅が大きい励起波形をサポートできることが必要である。
線形増幅器及び低インダクタンスLR回路
いくつかの実施形態では、図45に例示するように、送信、駆動、または励起エレクトロニクスチェーンにはLR回路が含まれ、このLR回路は、このインダクタンスを実質的に変えない非共振フィルターチェーン内の線形増幅器によってパワー供給される。電力増幅器を、制御された電圧または制御された電流モードで実行してもよい。図45に例示するように、制御された電圧モードで動作するとき、線形電力増幅器に供給される入力電圧信号にプリエンファシスを適用してもよい。所望のパルス状電流波形(急速な過渡事象及び実質的に一定の時間が含まれ得る)を実現するために不可欠な電圧波形を、電力増幅器に入力する前に事前に計算する。これは、回路のシミュレーション、数学的な最適化技術(たとえば、凸最適化定式化)、及び/またはスキャンを実行する前の測定による回路特性評価によって行ってもよい。概略的に、線形増幅器を伴うLR回路にパワー供給するとき、最大のスルーレートはシステムのLR時定数によって決定される。したがって、適切なスルーレートを得るために低インダクタンスの送信/励起/駆動コイルをデザインすることが望ましいかまたは必須であり得る。
このように構成されたプリエンファシスされた電圧波形を、スキャン中にリアルタイムで電力増幅器に供給して、リンギングまたは他の形状の歪みが最小である最大の磁場スルーレートを実現してもよい。同相信号除去、フィルタリングコンポーネント、及びシールディングシステムをインストールしてもよい。プリエンファシスを適用するときの時間分解能のフレキシビリティを最大にするために、電力増幅器を制御する波形に対するサンプリングレートを選ぶときに注意しなければならない。このサンプリングレートは約1MHzであってもよいし、もっと高いサンプリングレートたとえば10MHz以上が必要であってもよい。パルス波形を用いてコイルを駆動するという点に関して同様の結果が、制御された電流モードで線形増幅器を動作させることによって得られる場合がある。制御された電流モードでは、内部のフィードバック制御ループが、理想的な波形ターゲットが与えられたら立ち上がり及び/または立ち下がりエッジを通る急速な移行などのパルス波形成分を実現するように動作する。迅速で高速なフィードバック調整を実現するために、線形増幅器を、高電圧スルーレートを可能にするように変更してもよいし、高電圧スルーレートが可能でない場合には、フィードバックループの不安定性を回避してリンギングを回避するように予測計算アルゴリズムまたは電子回路を用いてセットアップしてもよい。
共振切替器回路
いくつかの実施形態では、切替器回路を用いてパルス励起波形を実現してもよい。このアプローチでは、送信回路システムが、図46に示すように正確なタイミング図に従って種々の状態の間で切り替わる。送信コイルにキャパシタを共振周期の一部の間接続して、送信コイルの電流を、キャパシタの接続を切る前に、高速な切り替え時間による制御可能な切り替えにより急速に変えて、コイル内の実質的に一定の電流をグライディング時間にわたって実現する。所望のスルーレートを実現するようにキャパシタのキャパシタンスを選択して、可能性としてコイルのインダクタンスにもっとフレキシビリティが与えられるようにしてもよい。実質的に一定の領域間で電流が移行する必要がある度に、キャパシタを短時間で再接続する。切り替える正確なタイミングが、回路動作にとって非常に重要であり、適切にデザインされた切り替えによって可能になる。このような切り替えは、たとえば10マイクロセカンドよりも良好であるか、または1マイクロセカンドよりも良好であるか、または0.1マイクロセカンドよりも良好である時間分解能によって制御することができる。図46に、所望の特徴、結果として生じる励起コイルを時間とともに流れる電流、及び各別個のステージにおける回路トポロジを形成するために用いる典型的な切り替えタイミング図を示す。これらのデザインは教育的で典型的であることが意図されており、決して限定ではない。
送信コイルデザイン
パルス波形を送信、駆動、または励起コイルに印加してもよい。これらの励起コイルは全般的に、空間的に均一だが時間変化する磁場をイメージングFOVに与えるようにデザインされる。パルスMPIにおけるある望ましい信号エンコーディングストラテジ及びMPI軌跡を容易にするために、本開示では複数の送信コイル配置を考える。ある回転または投影エンコーディングストラテジをサポートするために、互いに直交する主軸を伴う励起コイルを有することが望ましい場合があり得る。たとえば、FFLMPIシステムにおいて線の方向をy軸として選ぶ場合、図3に示すように、励起コイルをx軸及びz軸と同心で配置してもよい。図14に例示するように、これらのコイルを直交モードで駆動して、励起またはシフトパルスをxz平面の任意の方向に沿って与えてもよい。FFPシステムの場合、少なくとも3つの直交励起コイル(設定された3つの主軸のそれぞれと位置合わせされている)のシステムであれば、励起方向の点に関して類似のフレキシビリティを得ることができる。
いくつかのパルスシーケンスにおいて必要な立ち上がり及び/または立ち下がりエッジを通る急速な移行を実現するためには、(電圧、電流、または磁場の)高スルーレートが必要であり、リンギング及び歪みの供給源を防ぐかまたは最小限にすることが重要である。励起コイルを、低インダクタンスを用いて、たとえば1マイクロヘンリー〜30マイクロヘンリーのインダクタンス値を用いて、デザインしてもよい。これによって、電流コイルがLR回路の一部であって線形電圧増幅器によって駆動される実施形態において移行を速くする(各パルスに対する立ち上がり時間を短くする)ことが容易になる。いくつかの実施形態では、送信コイルは、冷却流体(たとえば、液体またはガス)を通すように中空であってもよい単一のワイヤーループである。いくつかの実施形態では、リッツ線を用いて励起コイルを構成する。これらのコイルは、固定されたイメージング孔との幾何学的関係及び低インダクタンスコイルに対する必要性などの要因に応じて、ソレノイド、鞍、ヘルムホルツ状、または他のコイルデザインであってもよい。いくつかの実施形態では、送信コイルは単一のヘルムホルツまたはマクスウェル対で構成される。いくつかの実施形態では、送信コイルの直径はインダクタンスを減らすために小さい。
FFLのようなスキャニングシステムを用いるいくつかの応用例では、図3及び図15に例示するように、送信コイルをFFLの線の軸と同心で取り付けることが望ましい場合がある。これは、1つ以上のコイルを線に垂直な平面内の感度に配向することに加えるものである。コイルがFFL軸と同心であることによって、直交面内で線を物理的に平行移動させることなくすべての粒子を線に沿ってバイアスまたは励起することができ、以前のセクションで説明した種々の信号エンコーディング方式が可能になる。
完全なFOVカバレージに対してFFRサンプル相対ジオメトリをシフトさせる方法
図17及び図18に例示するように、一般的なパルスMPI取得にはパルス励起波形を繰り返し印加することが伴い、一方で、シフト波形によって、時間とともに大きなイメージングFOVのサンプリングを可能にする全体x空間軌跡が得られる。これらのパルスシーケンス図に示すシフト波形は、イメージングFOV及びサンプルに対するFFRアイソセンタ及び/または全体FFR構造場所の時間を通じての動きを指す。この相対的な動きは複数の方法で行ってもよい。いくつかの実施形態では、電磁石の中心軸に沿って全体FFR構造をシフトさせるように配設された高出力の均一な電磁石にシフト波形を印加する。いくつかの実施形態では、サンプル自体を機械的手段によって(たとえば、サンプルホルダー、可動ステージ、及びモータの配置を用いて)動かしてもよい。いくつかの実施形態では、サンプルの機械的な動き及びFFRの電磁石シフトティングの両方を全体x空間イメージングスキャンにおいて用いる。図43に、これに関連して、機械装置及びシフト磁石をどのように配設し得るかを例示する。
イメージングスキャナの重要なコンポーネントは、内部領域と外部領域との間のシールディングである。図43に示すように、内部領域には、サンプルが中に配置されるイメージング孔として画定される領域、1つ以上の励起コイル、1つ以上の受信コイル、及び可能性として1つ以上のシフトティング電磁石が含まれる。内部領域は外部領域(スキャナ内の空間の残りと外界)から十分に電磁的に分離されている。シフトティング電磁石の1つ以上を外部領域に配置してもよい。FFR発生源(電磁石または永久磁石)、モータ、段階などはすべて、外部領域に配置されている。電磁的分離は単一の連続的な固体銅の渦電流シールディングシステムによって与えてもよい。このシールドによって、干渉及びノイズ源が励起または受信システム内に結合することが取り除かれ、内孔の送信及び/またはシフトシステムが外部領域の要素(たとえば、軟磁性材料、シフト磁石、またはFFR発生磁石)と相互作用することが禁じられる。また図43に示すように、励起エレクトロニクスチェーン及び受信エレクトロニクスチェーンの全体を内部のシールド領域に配置してもよい。
冷却
MPIスキャニングシステムの多くの態様において動作中に冷却する必要があり得る。いくつかの実施形態では、送信または励起コイルならびにシフト磁石及びFFR発生電磁石を積極的に冷却する。いくつかの実施形態では、渦電流シールディングシステムの態様もまた冷却してよい。いくつかの実施形態では、水または代替的な冷却流体(たとえば、フルオロカーボンベースのフロリナート)を用いて、中空の電磁石ワイヤ及びコイルを冷却する。いくつかの実施形態では、要素を熱流体槽内に配置することによって冷却する。
安全性への配慮
このような大きいスルーレートを用いるときには、対象物に対する比吸収率(SAR)考察の点について注意しなければならない。場合によっては、磁気刺激効果もまた適用され得る。パルスMPI内の高スルー時間は定義上は短いため、単一の励起時間内の小さい負荷サイクルを表す場合がある。パルス励起波形の周期性がより大きい状況では、パルスMPI波形に、たとえば、2乗平均平方根(RMS)という意味で計算されたものと同じかまたは類似のSAR制限測定を施す。
パルスMPI受信システム
MPIでは、誘導受信部コイルを用いて磁気ナノ粒子トレーサーから磁化信号を検出する。従来、信号を受信する間、連続的な正弦波励起波形が印加される。送受信コイルは強く結合されているため、全般的に、この結果、著しい励起フィードスルーが受信部コイル内に入る。緩和がない場合は、このフィードスルーはトレーサー信号よりも何桁も大きい。幾何学的デカップリングストラテジ(たとえば、使用する受信部コイルが、送信コイルによって規定されるジオメトリに対して正味面積がゼロの磁気傾度測定用で巻かれている)が、典型的に用いられる。
パルスMPIは広い周波数帯域にわたって直接フィードスルーを有する。いくつかの実施形態では、細かく調整された磁気傾度計を介した誘導デカップリング及び/またはアクティブなキャンセルが用いられる。いくつかの実施形態では、誘導デカップリングを、送信コイルに対する磁気傾度計コイルの空間シミングによって改善する。いくつかの実施形態では、誘導デカップリングを、チューナブル分圧器(受信コイルの一部の振幅を微調整する)及び/またはチューナブルキャパシタ(受信コイルの部分間の位相差を微調整する)によって改善する。図47及び48に、MPI任意波形リラクソメータ(AWR)に対する典型的なチューナブル磁気傾度計デザインとAWRデザインの詳細とを示す。AWRは、サンプルの特性評価を可能にして典型的に勾配の実施態様を有さないテーブルトップMPIデバイスである。その代わりに、サンプル全体を、直線勾配を用いるスキャニングシステムでの点状源の経験に直線的に比例する印加磁場大きさ空間内での軌跡を通して取る。このようなデバイスを用いれば、トレーサーサンプルに対応付けられる1DPSF(たとえば、トレーサー密度及び緩和イメージングの両方)を容易に測定することができ、また異なるMPIパルスシーケンスのテスティングが可能になる。
磁気傾度測定用受信部コイルデザインに加えて、典型的な正弦波MPI受信チェーンには、基本励起周波数でのノッチフィルタ、ならびに、他にも目的があるが、基本周波数でのすべての受信信号を十分に除去することを試みる1つ以上の他のフィルタ(ローパス、ハイパス、または帯域パス)が含まれていてもよい。この成分を除去することは典型的である。なぜならば、基本周波数におけるトレーサー信号を、励起フィードスルーから、また可能性としてサンプルが大きい場合のイメージングされた材料の線形反磁性信号から分離することができないからである。基本波におけるトレーサー信号が失われると、MPIにおける信号線形シフト不変性(LSI)に対する主要な派生効果が生じ、LSIを再生する再構成において重要なステップが必要となる。このような要求によって、信号取得及びエンコーディング軌跡に対して制約条件が加わり、再構成プロセスに対して複雑さが加わり、全体的な信号対雑音比(SNR)が減る。受信信号をデジタル化したらすぐに、また画像再構成を行う前に、さらなるデジタル信号処理及びベースライン除去アプローチをフィードスルー緩和及び信号処理に対して用いてもよい。
パルスMPIの重要な態様は、ナノ粒子信号からフィードスルーを時間デカップリングできることである。これは、標準的な連続的正弦波MPIではできないことである。パルス波形を用いると、全般的に、励起フィードスルーの状況は非常に異なる。ある時間に渡って実質的に一定の成分を伴うパルス波形を用いると、実質的に一定の値に達し、システム応答がゼロになる時間が過ぎた後に、励起フィードスルーは存在しない。さらに、急速に移行する立ち上がり及び/または立ち下がりエッジの後に実質的に一定の値に達し、前述したようにシステム応答時間が非常に短い場合、各励起サイクルまたは時間の間にある、フィードスルーがはっきりと存在する時間は、単に非常に短いものとなる。このため、短いシステム応答時間の範囲内でトレーサー信号から励起フィードスルーを完全に時間的に分離することができる。システム応答時間が有限である場合、フィードスルー及び信号分離の度合いはシステム応答時間及び磁気トレーサー応答時間の関数である。全般的に、トレーサー応答時間よりもはるかに短いシステム応答時間が望ましい場合がある。
直接フィードスルーを、パルスエンコーディングストラテジによって非常に短い時間ウィンドウに制限することができるが、緩和がない場合は、磁気トレーサー信号が単独で存在する信号部分に対して理想的な利得を伴う敏感な前置増幅器システムセットに損傷を与え得る。このピークに適応するように前置増幅器システム(複数可)の利得を下げると、ダイナミックレンジの低下、SNRの低下、及び離散化誤差の増加のうちの1つ以上が起きる。これらの悪影響を回避して、受信信号ダイナミックレンジを最大にするために、複数のストラテジを利用してもよい。いくつかの実施形態では、可変利得増幅器は、時間的に遅延されたナノ粒子信号を選択的に増幅する一方で、最初の直接フィードスルー信号は増幅しない。いくつかの実施形態では、ブランキング信号(各励起サイクル、時間、またはパルスの励起フィードスルー態様に正確に関連づけられている)を可変利得増幅器(VGA)システムに送って、フィードスルーの時間中の低利得と他の時間での高利得との間で切り替えてもよい。システム応答時間を特徴付けてもよく、またブランキング信号を用いて受信機システムの利得を下げて、システム応答が始まる前に何らかの有限な時間を始め、システム応答が最適な小さい値に減衰した後に何らかの小さい有限な時間を終えるようにしてもよい。このVGAシステム自体の応答時間に応じて、励起フィードスルー信号を大きく減衰させることができ、読み出し内の所望の信号のダイナミックレンジ及び全体増幅を最大にすることができる。図49に、これらの特徴を伴う典型的な受信回路デザインを示す。図50に、動作中のシステムから得た典型的なデータであって、線形増幅器による送信電圧プリエンファシスとともに、ブランキング信号を用いてVGAを実施する受信システムとを組み合わせて使用することを実証するデータを示す。
いくつかの実施形態では、ある閾値を越えた電圧を拒否するクロスダイオード回路(図49に示す)を用いて直接フィードスルー信号を制限することができる。いくつかの実施形態では、デジタル制御された切り替え(たとえば、IGBT、MOSFET、または他の電圧制御された切り替え)を用いることによって、フィードスルー信号を短時間で信号経路から分路して流すことができる。いくつかの実施形態では、電子遅延を用いてフィードスルー及びナノ粒子信号の時間デカップリングを強化してもよい。いくつかの実施形態では、フィードスルー時間の間は前置増幅器及び利得段を短時間でターンオフしてそれらを過電圧から保護し、急速に切り替えてオンに戻して、(遅延された)ナノ粒子信号を受信及び増幅してもよい。いくつかの実施形態では、前置増幅器に対する入力を特に、フィードスルー時間の間のみブランキングしてもよい。これらのストラテジのうちの1つ以上を、図49に示すようなパルスMPIシステムに対する全体受信機システムデザインにおいて同時に用いてもよい。
多くのパルスMPIエンコーディングストラテジでは、特に急速に移行する立ち上がり及び/または立ち下がりエッジを利用するものでは、トレーサー信号のかなりの部分が、立ち上がり及び/または立ち下がりエッジに続く短時間内に含まれ得る。受信機システムが、この信号をナイキスト限界の意味で十分に取り込むことができる帯域幅によって構成されていることが重要である。サンプリングレートは1MHzの範囲であれば十分であり得るが、最大で10MHz以上のサンプリングレートが必要となる場合もある。
いくつかの実施形態では、広い帯域幅にわたって未処理の受信信号を検出することが望ましい。このような実施形態では、受信帯域幅がDCから最大で10MHz以上の範囲であることが望ましい場合がある。他の実施形態では、信号帯域幅を低減することが、画像再構成におけるSNR及び/または空間分解能を調節するには望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、最大で10MHz以上の大きい信号帯域幅をデータ取得システムによってサンプリングし、その後のデジタル信号処理によって、再構成中に帯域幅を必要に応じて減らす。他の実施形態では、受信機システムをノイズ抑制のための帯域幅制限フィルタを用いて構成してもよい。たとえば、小さい帯域幅を基本波(この帯域幅は、シフト磁場スルーレート及び周期的励起波形を参照する基本周波数などのシステムパラメータによって決定される)の周りに保持してもよいし、または基本的な周期的励起波形の何らかの小さい数Nの高調波の周りの帯域幅が望ましい場合がある。図32に、1〜15のこのような高調波帯域を用いて1DパルスMPI画像を再構成する実験データを示す。いくつかの実施形態では、帯域幅は1kHz未満、500Hz未満、または250Hz未満であってもよい。いくつかの実施形態では、このような狭帯域サンプリングを、受信部コイルと検出器エレクトロニクスとの間のノイズ整合を最適化するときに用いる。いくつかの実施形態では、並列ハードウェア(たとえば、フィルタバンク)によって、複数の中心周波数(たとえば、励起高調波)における狭帯域検出が可能になる。いくつかの実施形態では、狭帯域検出が望ましいときにはロックイン増幅法などの技術を用いてもよい。いくつかの実施形態では、MPI励起波形基本周波数、励起波形内の実質的に一定の時間の長さ、スローシフトティング波形成分のスルーレート、及び受信帯域幅のうちの1つ以上を、必要に応じて、分解能、SNR、及びSNR効率指標を実現及び/またはトレードオフするように最適化する。
パルスハードウェアコンポーネントのモジュール方式
パルスMPIは、励起及び受信チェーンにおいて従来のMPI方法から大きくずれることが要求される。ハードウェアの他の態様は維持してもよい。たとえば、磁場源コンポーネントとしては、FFRを発生させ、FFRをゆっくりと(励起時間と比べて)シフトさせて大きいイメージングFOVをカバーするものを、正弦波MPIシステムで用いたものと同じかまたは類似の方法で構成して使用してもよい。図51に例示するように、モジュラパルスMPI励起及び受信システムがモジュラ正弦波励起及び受信システムとスワップ可能または切り替え可能であるMPIスキャニングシステムをデザインすることが望ましい場合がある。このようなデザインであれば、特性の異なるパルスMPI励起/受信システムのモジュラ交換または切り替えも容易になる。これは、このようなシステムによって基本パラメータ(たとえば、システム応答時間及びイメージングSNR)がトレードオフされた場合、望ましい可能性がある。主要なデザイン関係はシステム応答時間とトレーサー磁気緩和時間との間にあるため、あるパルスMPI励起/受信システムを、特定のトレーサーまたはトレーサーの特定の応用例に最適にマッチングさせてもよい。
1DにおけるパルスMPI信号及びイメージング方程式
ここで、理想的な方形波励起を用いた1次元のパルスMPI法の基本的な導出を示す。この分析は少数の理想的なパルスMPI法に対するものであり、基本的考え方のいくつかをさらに例示することが意図されており、決して限定ではない。
定常状態方形波イメージング
視野内の超常磁性磁気粒子の分布の定常状態磁化は次のように記述される。
ここで、mは単一粒子の磁気モーメントであり、ローは粒子密度であり、Lはランジュバン関数であり、kはトレーサー固有の項であり、及びHは印加磁場である。
そして、MPIFFRの場所に対する1D方形波励起の寄与は次のようには表現することができる。
ここで、デルタxはFFRのx空間変位であり、方形波励起振幅(テスラ)にMPIデバイスの直線勾配強度(テスラ/メートル)を乗じたものに等しい。受信部コイル上の電圧(誘導物理による)は次のようになる。
各n番目のステップ励起における応答を考慮して、次の信号方程式を導き出すことができる。
ここで、デルタM(x)はn番目の方形波ステップ励起前後の定常状態磁化状態の間の差であり、h(t、x)は磁気粒子緩和インパルス応答である。このインパルス応答が位置の関数であるのは、トレーサー緩和の強力な磁場依存性及びMPI内での強力な勾配磁場の存在があるからである。この信号方程式が表現しているのは、理想的な方形波の場合、受信した電圧信号が、空間上で積分されたトレーサー緩和インパルス応答のスケール変更された形式であるということである。これは、トレーサーインパルス応答ならびに定常状態情報(デルタMを介して)が、未処理の時間ドメインデータにおいてどのように直接エンコードされるかを明示的に示している。
さらに、前述したように、各半周期の下で信号を積分することによってインデックス付き信号方程式を設定することができる。
ここで、方形波励起の半周期は十分に長くて、半周期の終わりまでのどこででも定常状態条件が十分に設定されることを想定している。この場合、インパルス応答成分は積分すると1になり、ステップ前後の定常状態磁化状態の間の有限差が残る。この結果を、最終ステップに示すように畳み込み関係と表現することができる。2Δx=2AG−1は方形波ステップ励起におけるFFR変位距離であり、Aは方形波振幅、GはMPI勾配強度である。
最後に、分かっているスカラ量を除算することによってイメージング方程式を設定することができる。
ここで、イメージングPSFh(x)自体を、定常状態ランジュバン成分(緩和効果がない場合)と矩形ボケ(励起振幅を選択することによって制御可能である)とに分解することができる。
緩和イメージング
各方形波半周期上で進展する磁気緩和プロセスを直接定量化して、この情報を用いて緩和画像を構成することができる。このような実施形態の1つにおいては、各半周期に対する受信信号を加重指数関数として近似することができる。
次に、各半周期及びグリッドに対する時定数τ及び振幅Aを、半周期に対するFFRの平均場所にフィッティングすることができる。また、デバイ指数関数モデルが緩和プロセスを適切に記述すると考えるならば、特定の演繹的知識または予想(たとえば、A=τ −1)を実行してもよい。この結果、トレーサー質量/濃度ではなくて空間上での緩和ダイナミクスの画像が得られる。
時間ドメイン緩和加重イメージング
緩和ダイナミクスの二次的空間エンコーディングを利用することによる空間分解能の向上に対する緩和加重の効果を、以下のように理解することができる。定常状態方形波分析とは異なり、方形波半周期に対応付けられる全体信号を積分することはせずに、ウィンドウ処理閾値によって特定されるある程度の後半のみについて行う。
ここで、srw(n)は、緩和加重された再構成に対するインデックス付き信号方程式である。ウィンドウ処理をこのように遅延した結果、空間重み関数w(x)が存在する。完全積分の場合と同様の分析に従って、緩和加重された再構成に対する変更されたイメージング方程式に達する。
ここで、緩和加重PSFであるhrwは、完全積分の定常状態方形波PSF(h(x))に重み関数w(x)を点ごとに乗じたものである。指数関数的緩和ダイナミクスの場合、緩和関数は次のように近似し得る。
緩和加重PSFを、緩和フリー定常状態方形波PSFに別の狭い関数を点ごとに乗じたものと理解することができ、潜在的にランジュバン限界を超えて分解能を向上させることができる。
同様の方法で、より複雑なパルスMPI励起軌跡を数学的に記述することができる。任意のパルス波形は、たとえば再帰関係として最も自然に表現され得る。特定の方形波アプローチのこれらのいくつかの1Dの数学的記述は、これらの単純な例をさらに説明することのみを対象としており、決して限定ではない。
本明細書で例示及び説明した実施形態は、当業者に本発明をどのように作製して使用するかを教示することのみを意図している。本発明の実施形態を説明するときに、明瞭にするために特定の専門用語を用いている。しかし、本発明がそのように選択した特定の専門用語に限定されることは意図していない。当業者であれば前述の教示を考慮して理解するように、本発明の前述の実施形態を本発明から逸脱することなく変更または変形してもよい。したがって、請求項及びその均等物の範囲内で、本発明を具体的に述べたこと以外で実施してもよいことを理解されたい。

Claims (56)

  1. パルス磁気粒子イメージングシステムであって、
    少なくとも1つの磁石を含む磁場発生システムであって、前記磁気粒子イメージングシステムの観察領域内に空間的に構造化された磁場を設けて、前記空間的に構造化された磁場が、内部に磁気ナノ粒子トレーサー分布を有する観察物体に対する無磁場領域(FFR)を有するようにする前記磁場発生システムと、
    前記観察領域に隣接して配設されたパルス励起システムであって、電磁石とパルスシーケンス発生器とを含み、前記パルスシーケンス発生器は前記電磁石に電気的に接続されて前記電磁石に励起波形を与え、前記電磁石は、前記励起波形が与えられると、前記FFRの場所または状態をシフトさせることの少なくとも一方によって、前記観察領域内に励起磁場を発生させてそこから励起信号を誘起する、前記パルス励起システムと、
    前記観察領域に隣接して配設された検出システムであって、前記励起信号を検出して検出信号を得るように構成された前記検出システムと、を含み、
    前記励起波形は過渡的部分と実質的に一定の部分とを含む、前記パルス磁気粒子イメージングシステム。
  2. 少なくとも前記磁場発生システムと前記パルス磁気粒子イメージングシステムの周囲の環境とから前記観察領域を電磁的に分離するように前記観察領域を内部に囲むように配設された電磁シールドをさらに含む請求項1に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  3. 少なくとも前記パルス励起システムの送信部分と前記検出システムの受信部分とは前記電磁シールド内に囲まれる請求項2に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  4. 前記磁場発生システムはさらに、軟磁性材料を含むパッシブな磁場収束素子であって、内部で磁力線を所望の形状に収束または形成するような形状に構成され前記少なくとも1つの磁石に対して配設された前記磁場収束素子含む、請求項1に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  5. 前記検出システムは、実質的に前記励起波形の前記実質的に一定の部分の間にのみ前記励起信号を検出して前記検出信号を得るように構成されている請求項1に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  6. 前記励起波形の前記実質的に一定の部分は少なくとも500ナノ秒で500ミリ秒未満である請求項1に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  7. 前記励起波形の前記実質的に一定の部分は、前記励起波形の目標振幅の約10%以内で一定である請求項1〜6のいずれか1項に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  8. 前記励起波形の前記過渡的部分は継続時間が少なくとも100ナノ秒で100マイクロセカンド未満である請求項1に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  9. 前記励起波形は磁化準備部分と読み出し部分とを含み、前記磁化準備部分は少なくとも前記過渡的部分の一部を含み、前記読み出し部分は少なくとも前記一定部分の一部を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  10. 前記磁化準備部分は、前記FFRの付近にあるトレーサー磁化の状態を、前記読み出し部分の前の前記トレーサーの磁気緩和特性に基づいて動的に構成する請求項9に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  11. 前記磁化準備は、前記読み出し部分の間の特定の緩和状態に対応付けられるトレーサーからの信号を選択的にゼロにする請求項10に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  12. 前記磁化準備は前記トレーサー磁化をエンコードして、磁気緩和特性に基づいて信号を選択的に減衰させるかまたはゼロにする請求項10に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  13. 前記読み出し部分は、前記FFRにおける前記磁気ナノ粒子トレーサーに対する緩和時間よりも長い請求項9に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  14. 前記読み出し部分は、前記FFRにおける前記磁気ナノ粒子トレーサー内に定常状態磁化を設定するのに十分に長い請求項9に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  15. 前記読み出し部分は、前記FFRにおける前記磁気ナノ粒子トレーサーに対する緩和時間よりも短い請求項9に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  16. 前記励起波形は複数のパルスを含み、前記複数のパルスの各パルスは過渡的部分を含む、請求項1に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  17. 前記励起波形は複数の一定部分を含み、
    前記励起波形は複数の磁化準備部分と複数の読み出し部分とを含み、前記複数の磁化準備部分の各磁化準備部分が、前記複数のパルスの少なくとも1つにある少なくとも1つの過渡的部分を含み、前記複数の読み出し部分の各前記読み出し部分が、前記複数の一定部分の少なくとも1つの一定部分の少なくとも一部を含む、請求項16に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  18. 前記FFRは長手方向を規定する無磁場線であり、前記励起波形は前記無磁場線の前記長手方向に少なくとも部分的に印加されて、磁場空間内の対応する無磁場線構造を移動させるが前記無磁場線構造の形状及び空間的位置を維持することによって、前記無磁場線の状態を変える請求項1〜16のいずれか1項に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  19. 前記FFRは長手方向を規定する無磁場線であり、前記励起波形は前記無磁場線の前記長手方向に直交する平面において少なくとも部分的に印加されて、前記無磁場線の前記位置を変える請求項1〜16のいずれか1項に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  20. 前記パルスシーケンス発生器は、前記複数のパルスを、それぞれが、予め選択された形状、大きさ、幅、またはパルス間時間のうちの少なくとも1つを有して特定のパルスシーケンスエンコーディングをもたらすように、与えるように構成されている請求項16に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  21. 前記パルスシーケンス発生器は、パルス間部分によって分離された複数のパルスを含む励起波形を与えるように構成され、
    前記複数のパルスの各パルスは過渡的部分を含む請求項1〜20のいずれか1項に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  22. 前記パルスシーケンス発生器は、一定のパルス間部分によって分離された複数のパルスを含む励起波形を与えるように構成され、
    前記複数のパルスの各パルスは過渡的部分の間に実質的に一定の部分を有する請求項1〜20のいずれか1項に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  23. 前記励起波形は有限時間方形波に近似する請求項20に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  24. 前記パルス波形の少なくとも一部に対して、前記複数のパルスの連続パルス間の各一定部分は先行する一定部分よりも長い請求項20に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  25. 前記パルス励起システムは、非共振フィルターチェーン内の線形増幅器によってパワー供給されるLR回路を含む請求項1〜24のいずれか1項に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  26. 前記LR回路はインダクタンスが1マイクロヘンリー〜50マイクロヘンリーである請求項25に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  27. 前記LR回路はインダクタンスが1マイクロヘンリー〜30マイクロヘンリーである請求項25に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  28. 前記パルス励起システムは共振切替器回路を含む請求項1〜24のいずれか1項に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  29. 前記検出システムは、前記検出信号のフィードスルー汚染が多い部分と比べて前記検出信号のフィードスルー汚染が少ない部分を増幅する利得制御回路を含む請求項5に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  30. 前記検出システムと通信してそこから検出信号を受け取るように構成された信号プロセッサをさらに含み、
    前記信号プロセッサはさらに、前記FFRが横断した前記観察物体の領域に対応する画像をレンダリングするためのイメージング信号を発生させるように構成されている請求項1〜24のいずれか1項に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  31. 前記磁気粒子イメージング装置の前記観察領域内に配設されるように構成された物体ホルダーをさらに含む請求項1〜30のいずれか1項に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  32. 前記物体ホルダーまたは前記磁場発生システムの少なくとも一方に動作可能に接続されて、前記FFRの相対位置を平行移動させるかまたは回転させることの少なくとも一方を行う機械アセンブリをさらに含む請求項31に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  33. スローシフト電磁石を含むスローシフト電磁システムと、前記磁気粒子イメージング装置の前記観察領域に隣接して配置されたスローシフト波形発生器とをさらに含み、
    前記スローシフト波形発生器は、前記励起パルスの時間スケールと比べて遅い時間スケールで前記FFRの位置をシフトさせるために前記スローシフト電磁石に波形を与える請求項1〜32のいずれか1項に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  34. 前記磁場発生システムと通信するように構成されたスローシフト波形発生器を含むスローシフト電磁システムをさらに含み、
    前記スローシフト波形発生器は、前記励起パルスの時間スケールと比べて遅い時間スケールで前記FFRの位置をシフトさせるために前記磁場発生システムに波形を与える請求項1〜32のいずれか1項に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  35. 前記磁場発生システムは動的に構成可能である請求項1〜32のいずれか1項に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム
  36. 前記FFRを動的に変えて、前記検出信号においてエンコードされた信号対雑音比及び分解能を動的に変えるように、前記磁場発生システムは動的に構成可能である請求項35に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  37. 前記検出システムと通信して前記検出信号を受信するように構成された信号処理及び画像レンダリングシステムをさらに含み、
    前記信号処理及び画像レンダリングシステムは、前記検出信号を処理するように、また前記磁気ナノ粒子トレーサーを含み前記FFRによってアドレスされた前記観察物体の部分に対応する画像をレンダリングするように構成されている請求項1〜34のいずれか1項に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  38. 前記信号処理及び画像レンダリングシステムは、前記検出信号を処理するように、また少なくとも1.5mmの空間分解能で前記画像をレンダリングするように構成されている請求項37に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  39. 前記信号処理及び画像レンダリングシステムは、前記検出信号を処理するように、また少なくとも1000μm〜100μmの空間分解能で前記画像をレンダリングするように構成されている請求項37に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  40. 前記信号処理及び画像レンダリングシステムは、前記検出信号を処理するように、また前記画像をレンダリングして、対応する画像場所における前記トレーサーの密度、質量、濃度、またはその微分のうちの少なくとも1つを表すように構成されている請求項37に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  41. 前記信号処理及び画像レンダリングシステムは、前記検出信号を処理するように、また前記画像をレンダリングして、対応する画像場所における前記トレーサーの磁気緩和ダイナミクスの局所測定を表すように構成されている請求項37または40に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  42. 前記信号処理及び画像レンダリングシステムは、前記検出信号を処理するように、また前記画像をレンダリングして、対応する画像場所における局所粘度を表すように構成されている請求項37または41に記載のパルス磁気粒子イメージングシステム。
  43. 磁気ナノ粒子トレーサーを用いて物体をイメージングする方法であって、
    前記物体に前記磁気ナノ粒子トレーサーを与えることと、
    FFRを有する空間的に構造化された磁場を印加して、前記FFRと前記空間的に構造化された磁場の周囲領域とが、前記磁気ナノ粒子トレーサーの少なくとも一部を含む領域において前記観察物体を遮断するようにすることと、
    前記FFRの特性または前記FFRの位置を変えることの少なくとも一方によって前記磁気ナノ粒子トレーサーの一部を励起することと、
    前記FFRの前記特性及び前記FFRの前記位置が実質的に一定である間に、前記励起に起因する前記磁気ナノ粒子トレーサーの磁化の変化を検出して、検出信号を取得することと、
    前記物体内の前記FFRの複数の異なる場所に対して前記励起及び検出を繰り返して、複数の検出信号を取得することと、
    前記複数の検出信号を処理して前記物体の領域の画像をレンダリングすることと、を含む前記物体をイメージングする方法。
  44. 前記観察物体に前記磁気ナノ粒子トレーサーを投与することをさらに含み、
    投与された前記磁気ナノ粒子トレーサーに含まれる磁気ナノ粒子は、アンサンブル平均直径が少なくとも10nmで100nm未満である請求項43に記載の物体をイメージングする方法。
  45. 前記磁気ナノ粒子トレーサーの前記磁気ナノ粒子は、少なくとも25nmで50nm未満である請求項43または44に記載の物体をイメージングする方法。
  46. 前記磁気ナノ粒子トレーサーの前記磁気ナノ粒子は、5nmの変動内で一様である請求項44または45に記載の物体をイメージングする方法。
  47. 前記検出中の少なくとも500ナノ秒で500ミリ秒未満の間、前記FFRの前記特性及び前記FFRの前記位置が実質的に一定である請求項43〜46のいずれか1項に記載の物体をイメージングする方法。
  48. 前記退出中の前記FFRの変化量及び前記FFRの前記位置の約10%以内で、前記FFRの前記特性及び前記FFRの前記位置が実質的に一定である請求項43〜47のいずれか1項に記載の物体をイメージングする方法。
  49. 前記FFRの前記特性または前記FFRの前記位置を変えることの継続時間は、少なくとも100ナノ秒で10マイクロセカンド未満である請求項43〜48のいずれか1項に記載の物体をイメージングする方法。
  50. 前記複数の検出信号を処理して前記物体の前記領域の前記画像をレンダリングすることによって、磁気粒子密度画像または磁気緩和動的パラメータ画像の少なくとも一方をレンダリングする請求項43〜49のいずれか1項に記載の物体をイメージングする方法。
  51. 前記複数の検出信号を処理して前記物体の前記領域の前記画像をレンダリングすることによって、局所粘度をレンダリングする請求項43〜50のいずれか1項に記載の物体をイメージングする方法。
  52. パルス磁気粒子イメージングシステムとともにまたはその一部として用いるデバイスであって、
    サンプル観察領域に隣接して配設されたパルス励起システムであって、電磁石とパルスシーケンス発生器とを含み、前記パルスシーケンス発生器は前記電磁石に電気的に接続されて前記電磁石に励起波形を与え、前記電磁石は、前記サンプル観察領域内に磁場を与えて、サンプルが前記サンプル観察領域内にサンプルホルダーによって保持されたときに前記サンプルから励起信号を発生させる、前記パルス励起システムと、
    前記サンプル観察領域に隣接して配設された検出システムであって、前記サンプルから前記励起信号を検出して検出信号を得るように構成された前記検出システムと、を含み、
    前記励起波形は過渡的部分と実質的に一定の部分とを含む、前記デバイス。
  53. 前記パルス励起システムと前記検出システムとは、非パルスMPIシステムをパルスMPIシステムに変換するように適合されたモジュラ構造の一部である請求項52に記載のデバイス。
  54. 前記検出システムと通信して前記検出信号を受信して処理するように構成された信号プロセッサをさらに含む請求項52に記載のデバイス。
  55. 前記信号プロセッサはさらに、前記検出信号を処理して前記サンプル内の磁気粒子に対する磁化緩和時間を決定するように構成されている請求項52に記載のデバイス。
  56. 前記サンプル観察領域を画定するサンプルホルダーをさらに含む請求項52〜55のいずれか1項に記載のデバイス。
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