JP2020528078A - 障害治療用のトリプトニドまたはトリプトニド含有組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、過剰増殖性障害を治療または予防するためのトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、あるいはトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩を含む組成物を提供する。上記物質を使用して対象における過剰増殖性障害、好ましくは癌を治療または予防する方法をさらに提供する。

Description

本願は、トリプトニドまたはトリプトニド含有組成物およびそれらの使用に関連する。具体的には、本願は、トリプトニドまたはトリプトニド含有組成物に関連し、それは疾患および障害(病症)を治療または予防するための使用または方法に関連する。
(関連出願)
本出願は、2017年7月11日に出願された米国仮特許出願第62/530,845号の優先権を主張し、その内容は全体として参照によりここに組み込まれる。
癌が制御されない細胞増殖の疾患であるため、細胞増殖の標的化は癌と戦うための潜在的に効果的な戦略を構成する。標的抗癌療法は、抗癌化学療法における革新的な突破と新しいパラダイムを示している。この新しいパラダイムでは、個別的抗癌医薬は、独特な癌特異的遺伝子型(特定の遺伝子の変異)またはエピジェネティックな属性(特定の遺伝子の誤発現)に基づいて開発されました。したがって、このような治療法は、癌細胞の標的死滅を促進して重度の副作用のリスクを最小限に抑えるだけでなく、治療の恩恵を受ける可能性が最も高い患者に治療を提供することもでき、それらの有益な反応を期待できない患者に対する無駄な治療を減らすことができる。したがって、標的抗癌療法は、個別的抗癌療法とも呼ばれている。
しかしながら、個別的抗癌療法の広い見通しにも関わらず、現在までに、広限られた数の標的のみが同定され、成功裏に治療に利用されている。なお、通常、これらの標的医薬は、標的属性の同じ特定種類を持つ腫瘍に罹患している患者でさえ、ごく一部の患者のみで有効である。その結果、現在、個別的学療法は癌患者群体(集団全体)のごく一部のみに利益をもたらしている。したがって、このような新規な療法の応用を拡大することは、急務でまだ満たされていないニーズになってきた。標的治療を開発するための新しい標的の確定は、そのような目的を達成する最も有望な経路の1つである。
Gタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーのメンバーには、多くの医薬品の標的が含まれている。これらの受容体は、細胞外微小環境から細胞の内部機構に情報を伝達し、それにより特定の下流信号伝達経路の活性に影響を与える。F2RL1遺伝子によってコードされるプロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)は、受容体の自己リガンドGPCRサブファミリーのメンバーであり、その相同リガンドとその対応する受容体は単一のポリペプチドとしてコードされ、一緒に細胞質膜に展開される。
最近の研究により、PAR2はインビトロ培養条件下でも、検査されたいくつかのタイプのヒト原発腫瘍でも、複数のタイプの腫瘍細胞に発現されることが明らかになった。これは、通常の環境下でいくつかのタイプで最終分化非分裂細胞での高度に制限された発現パターンとは、対照的になっている。また、古典的なPAR2信号伝達経路(Gαq−PLC−IP3/DAG経路)の活性化は、成長促進効果を示している。総合すると、これらの観察結果から、PAR2の活性化は発癌性であるという結論に至った。なお、いくつかの癌細胞系、例えば結腸癌由来の細胞系において、PAR2発現の阻害は増殖阻害効果をもたらした。なお、乳癌細胞系および異種移植腫瘍において、組織因子(TF)−PAR2経路の阻害は、細胞増殖の阻害および抗腫瘍効果をそれぞれもたらした。これらの観察結果から、いくつかの癌細胞がPAR2活性化に「ふける」ため、PAR2の阻害が抗癌効果を持っている可能性のあると示唆されている。しかしながら、そのように示唆された臨床的徴候は、まだ解明されていない。
トリプトニドは、トリプジオリド(tripdiolide)およびトリプトリド(triptolide、トリプトライドともいう)(図1A)とともに1972年に雷公籐(Tripterygium wilfordii)植物から最初に精製された天然化合物である。トリプトニドとトリプトリドは、C14の官能基でのみ異なり、トリプトニドはC14ケトンを持ち、トリプトリドはC14アルコールを持っているが、トリプトニドではなくトリプトリドは有効な抗白血病特性を有することを発見した。初期の研究では、トリプトリドが有効な抗白血病特性を有する毒物として定義されていた。なお、トリプトリドは前臨床モデルにおいて適度の抗腫瘍活性を有すると報告されているが、いくつかのジテルペンラクトンエポキシド(トリプトニドを含む)は、避妊活性を有することが示された。
本出願において、本発明者らは、癌、特にPAR2発現の増殖細胞に対するトリプトニドの効果を研究した。これらの研究では、トリプトニドとその機能的同等物を用いてPAR2の型破りな活性化により標的療法の新しい抗癌パラダイムを提供した。
第1の態様によれば、本発明は、対象における過剰増殖性障害、好ましくは癌を治療または予防するための方法であって、プロテインキナーゼA(PKA)の活性化を引き起こすことができる治療または予防有効量の薬剤、あるいは該薬剤を含む医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
いくつかの実施形態において、前記治療は、癌細胞、好ましくはPAR2発現の増殖細胞を選択的に死滅させることを含む。いくつかの実施形態において、前記予防は、悪性転化前および/または悪性転化部位にPAR2発現の細胞を選択的に死滅させることを含む。いくつかの実施形態において、PKA活性化を引き起こすことができる薬剤は、トリプトニド、またはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩である。
第2の態様によれば、本発明は、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、ならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
第3の態様によれば、本発明は、対象における過剰増殖性障害、好ましくは癌を治療または予防するための、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、あるいはトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。具体的には、本発明は、対象における癌細胞、好ましくはPAR2発現の増殖細胞を選択的に死滅させるための、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、あるいはトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩を含む組成物が開示された。
第4の態様によれば、本発明は、PKA活性化を引き起こすことができる薬剤の、対象における過剰増殖性障害を治療または予防する医薬の調製における使用を提供する。いくつかの実施形態において、前記過剰増殖性障害は癌である
本発明は、PKA活性化を引き起こすことができる薬剤の、対象における癌細胞を選択的に死滅させるための医薬の調製における使用をさらに提供した。いくつかの実施形態において、前記細胞はPAR2発現の増殖細胞である。
いくつかの実施形態において、PKA活性化を引き起こすことができる薬剤は、GPCR受容体の作動薬(アゴニスト)である。具体的な実施形態において、上記薬剤は、トリプトニド、またはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩である。
第5の態様によれば、本発明は、対象における免疫応答関連障害の治療もしくは予防および/または疼痛制御のための方法であって、治療または予防有効量のトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、または本発明に係る医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法を提供する。
他の態様によれば、本発明は、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、あるいはトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の、対象における免疫応答関連障害の治療もしくは予防および/または疼痛制御のための医薬の調製における使用を提供する。
他の態様によれば、本発明は、対象における免疫応答関連障害の治療もしくは予防および/または疼痛制御のための、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、あるいはトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。
他の態様によれば、本発明は、PAR2発現の増殖細胞においてPKAの持続的活性化を誘導する方法であって、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、あるいはトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、前記細胞に接触させることを含む方法が開示されている。
他の態様によれば、前記のいずれの組成物は、1種以上のその他薬剤をさらに含む。
他の態様によれば、候補薬剤の分裂期細胞死(mitotic catastrophe)の誘導効果を評価することを含む、PKAの持続的活性化を引き起こすことができる薬剤を同定する方法を提供する。いくつかの実施形態において、前記候補薬剤は間期に投与される。いくつかの実施形態において、前記候補薬剤は、数分間〜数時間での短期治療として投与される。
細胞増殖に対するトリプトニドの効果を示している。図1Aは、トリプトニドとトリプトリドの構成を示している。図1B〜1Cは、HepG2(B)および培養の初代マウス肝細胞(PMH)(C)成長に対する濃度逓増のトリプトニドで1時間処理した場合の効果を示している。96ウェルプレートの各ウェルに細胞を播種し、培養細胞の相対密度により増殖速度を評価すると共に、IncuCyte Zoomシステムを使用して3時間ごとに4つの固定位置でウェルあたり4つの画像を撮影して培養細胞の実際の画像をモニタリングする。 Edu取り込みアッセイによりDNA複製を行う細胞の検出を示している。HepG2細胞は、ミモシンまたは血清飢餓により同期化された。その後、これらをEdU含有培地に放出し、30分間維持した。DNA複製を受けている細胞は新たに合成されたゲノムDNAにEdUを取込んだ。増殖細胞におけるEdU含有DNAにアルキニル基の存在下で、「クリック」反応により、Edu含有DNAと蛍光色素含有アジドとを標識しおよび可視化することができる。アセチレン系炭化水素とアジド官能基との反応により、2つの部分(moiety)を結合させ、蛍光プローブでDNAを共有結合標識させた。DAPI(1種のDNA特異的蛍光色素)でDNAを染色することにより、個々の核を可視化させた。図2Aは、Eduに基づくクリックアッセイ(Click assay)後、ミモシン処理の細胞の写真を示している。Eduに基づく信号が陽性である複製細胞の百分率は、対応する写真の下部に表示されている。なお、細胞の大部分は、ミモシン処理から放出後に0〜1時間の間に、Eduに基づく蛍光信号が陽性である。1.5時間で殆ど検出できなくなった。図2Bは、Eduに基づくクリックアッセイ後の血清飢餓の細胞の写真を示している。Eduに基づく信号が陽性である複製細胞の百分率は、対応する写真の下部に表示されている。第1波のEdu陽性細胞は、0時間でEdu投与時に認められ、飢餓(starvation)から放出された後4時間から減少し始めた。第2波のEdu陽性細胞は、10時間で認められ、放出後18時間で減少した。 他の処理をしない(対照)または異なる時点(0分間、120分間および240分間、それぞれ、TR0、TR120、TR240)で1μMトリプトニドを用いて処理した場合、血清飢餓の細胞を通常培地に放出した後異なる時点での生細胞イメージングの代表的な画像を示しており、トリプトニドが血清飢餓のHepG2細胞に対する効果が実証された。上部の数字は細胞が血清飢餓から放出された後の時間を示している。なお、対照およびTR120は、有糸分裂像(mitotic figures)の有意な増加が13時間で明らかであり、その後相対的一定のままで維持し、且つ総細胞数は37時間で有意に増加した。その一方、TR0およびTR240処理は、総細胞数は最初から最後まで有意に変化しなかったが、異常に濃縮された染色質を有する細胞数は、37時間で有意に増加した。また、異常に濃縮された染色質を有する細胞の蓄積は、13時間でピーク値に達した。 ミモシン処理したHepG2細胞の代表的な画像を示しており、上記細胞は、異なる時点(ミモシン処理後、0分間、60分間、120分間および240分間、または、それぞれTR0、TR60、TR120、TR240)において、ビークルのみ(対照)、または1μMトリプトニドで処理し、その後通常培地に戻り、ミモシン処理したHepG2細胞に対するトリプトニドの影響が実証された。実験開始後0時間、14時間、23時間と37時間で得られた画像を示している。上部の数字は、細胞がミモシン処理から放出された後の時間(h)を示している。なお、対照(一番上の行)、TR60およびTR240処理は、総細胞数が左から右へ増加しており、TR0およびTR120サンプルにおいてこのような変化に欠けており、TR120処理は、異常に濃縮された染色質を有する細胞が多く蓄積した(TR120の右端の図)。また、対照、TR60およびTR240では、相対的一定の数の比較的小さくて濃い色および円形状の中期細胞の実体は14時間から現れ始め、また、TR120処理は、異常に濃縮された染色質を有する細胞数は14時間から安定的に増加し始めた。 ミモシン処理の細胞の画像を示しており、前記細胞は、実験開始後0分間または120分間で、さらにビークル溶液(対照)、1μMまたは2μMトリプトリドで1時間処理し、ミモシン処理したHepG2細胞に対するトリプトリドの効果が実証された。実験開始後0時間と37時間で得られる画像のみを示している。0分間および120分間で2μMトリプトリド(TR0−2μM、TR120−2μM)で処理された細胞のみについて、開始後37時間で濃縮染色質含有細胞の有意な蓄積が認められた。1μMトリプトリド(TR0−1μM、TR120−1μM)で処理された細胞がこのような特徴を示していなかった。 HepG2細胞の細胞周期の進行に対するトリプトニドとトリプトリドの効果を示している。非同期の(AS)HepG2細胞を200μMミモシンで28時間処理した後、個々の通常培地に戻して0時間、11時間、24時間と37時間(Mim 0、Mim R11、Mim R24、Mim R37)を維持し(上部パネル)、または、それぞれ1μMトリプトニド、2μMトリプトリド、または10μMトリプトニド(下部パネル)で処理した。その後、DNA含有量に基づくフローサイトメトリーを行って細胞周期のさまざまな段階、すなわち、それぞれG1:2N;S:>2Nから<4Nまで;G2/M:4N;sub−G1:<2Nの細胞の構成を評価した。G2/M期(4N)細胞の百分率を示している。なお、1μMトリプトニド処理細胞(トリプトニドで処理された細胞)中にG2/M亜群の持続的に高い百分率と、2μMトリプトリドまたは10μMトリプトニド処理細胞(1μMトリプトニド処理細胞ではない)中にsub−G1(<2N、アポトーシスを示す)の有意なピークとに注意する必要がある。 培養の初代角化細胞に対するトリプトニドの効果を示している。図7A−7Cは、異なる濃度のトリプトニドで1時間処理された後の野生型角化細胞(A)またはPar2ノックアウトの角化細胞(B、C)の成長曲線を示している。対応するIC50を含む。図7D−7Eは、異なる濃度のトリプトニドに連続的に曝露された後の野生型角化細胞(D)またはPar2ノックアウトの角化細胞(E)の成長曲線を示している。図7Fは、異なる濃度のトリプシンで30分間処理した後の野生型角化細胞の増殖曲線を示している。注意点:1)濃度が5μM未満のトリプトニドでの1時間処理に対するPar2ノックアウトの角化細胞ではなく野生型の独特な高感度(AおよびB);2)Par2ノックアウト細胞の増殖に対する100μMおよび200μMのトリプトニドでの阻害効果;3)トリプシンに由来の処理では有意な効果に欠けている(F)。 初代マウス肝細胞(PMH)、不死化ヒト肝細胞系LO2、並びに肝細胞癌細胞系Hep3BおよびHepG2中に、PAR2−またはPar2−特異的バンド、およびβ−アクチン(ACTB、ローディング対照とし)が存在するか否かを呈するウエスタンブロットの画像を示しており、これはPAR2が不死化ヒト肝細胞系LO2およびヒト肝癌細胞系で発現しているが、初代マウス肝細胞では発現していないことが実証された。 培養の初代角化細胞に対するトリプトリドの効果を示している。図9A−9Bは、異なる濃度のトリプトニドに1時間曝露された後の野生型角化細胞(A)、またはPar2ノックアウトの角化細胞(B)の成長曲線を示している。図9C−9Dは、異なる濃度のトリプトリドに連続的に曝露された後の野生型角化細胞(C)、またはPar2ノックアウトの角化細胞(D)の成長曲線を示している。なお、濃度が800nMに至るまで高いトリプトリドで1時間処理されたところ、如何なる有意な増殖阻害効果に欠けているが、連続的に適用された場合、1.25nMに至るまで低いトリプトリドで同様の有効な増殖阻害効果があった。 HepG2細胞におけるERKリン酸化に対するトリプシン、トリプトニドとトリプトリドの効果を示している。HepG2細胞を48時間血清飢餓させ、その後DMSOビークル、トリプシン(50nM)、トリプトリド(1μM)またはトリプトニド(1μM)を含む無血清基礎培地1640で培養した。サンプルは、総タンパク質抽出のために異なる時点(それぞれ0分間、5分間、10分間、20分間および40分間)で採取された。それぞれ、リン酸化ERK (p−ERK)、非リン酸化のERK(ERK)およびβ−アクチンに特異的な抗体を用いてウエスタンブロットを行った。なお、トリプシン(50nM)、トリプトリド(1μM)またはトリプトニド(1μM)でそれぞれ処理した後のERKリン酸化の相違に注意する必要がある。 HepG2細胞におけるリン酸化ヒストンH3レベルに対するトリプトニドの効果を示している。ミモシンで28時間処理したHepG2細胞を同期化させて通常培地に放出されて2時間維持した。その後、ビークル溶液または1μMトリプトニドで細胞を1時間処理した。処理後、通常の培養条件下で細胞をインキュベートし、2時間から12時間まで1時間ごとにサンプルを収集した(上部パネルの上部に示している)。リン酸化のヒストンH3(p−H3)、CDK1およびβアクチン(ATCB)(対照として)の相対レベルを測定するために、ウエスタンブロットを行った。なお、p−H3のピークレベルは、ビークル溶液で処理した後10時間で収集された対照サンプルから検出され、且つ、p−H3のレベルは、トリプトニド処理細胞に由来のサンプルに有意な増加に欠けていることに注意する必要がある。 HepG2細胞におけるcAMPレベルに対するトリプシンおよびトリプトニドの効果を示している。ミモシンで28時間処理したHepG2細胞を同期化させた後、それを通常培地に放出させて2時間維持した(トリプトニド−2、この時に、細胞は、トリプトニドの分裂期細胞死の誘導効果に敏感があった)。その後、サンプルを収集する前に、無血清基礎培地において、異なる時点で細胞をビークル溶液、50nMトリプシンまたは1μMトリプトニドで処理した。なお、1μMトリプトニドで処理する前に、1群の細胞を通常培地において4時間回復させた(トリプトニド−4、この時に、細胞は、トリプトニドの分裂期細胞死の誘導効果に敏感でなかった)。各サンプルにおけるcAMPレベルを測定した。なお、トリプシンで処理された細胞におけるcAMPレベルの適度で一時的な上昇と、細胞を通常培地に回復させた後、トリプトニドで4時間(トリプトニド−4)ではなく2時間(トリプトニド−2)で処理された細胞中にcAMPの2つの反復的ピークのはるかに高いレベルとに注意する必要がある。 HepG2細胞におけるPKA活性レベルに対するトリプトニドの効果を示している。ミモシンで28時間処理したHepG2細胞を同期化させた後、それを通常培地に放出して2時間維持した。その後、サンプルを収集する前に、異なる時点で細胞を無血清基礎培地にビークル溶液、または1μMトリプトニドで処理した。その後、各サンプルにおけるPKA活性レベルを測定した。なお、PKA活性の上昇する2つのピークは、トリプトニド処理細胞における場合、未処理した細胞における方によりもはるかに高いことに注意する必要がある。 HepG2細胞のPKA活性レベルに対するトリプシンおよびトリプトニドの効果を示している。ミモシンで28時間処理したHepG2細胞を同期化させた後、それを通常培地に放出して2時間維持した。その後、通常培地に戻る前に、ビークル溶液、50nMトリプシンまたは1μMトリプトニドを含む通常培地で細胞を1時間処理した。毎回処理後の異なる時点でサンプルを収集し、各サンプルのPKA活性を測定した。なお、未処理の細胞またはトリプシンで処理された細胞には、ミモシンで処理して放出した後9時間でPKA活性レベルの急激に低下することが発生し、しかしながらトリプトニド処理細胞には、PKA活性レベルが同じ時点で有意に低下しなかったことに注意する必要がある。 トリプトニドのHepG2細胞への効果に対する、AC−cAMP−PKA信号伝達経路の遮断の効果を示している。HepG2細胞を96ウェルに一晩播種した後、ビークル溶液(対照、Ctrl)、トリプトニド(Trip、1μM)、ビダラビン(Vidarabine)(Vid、10μM)、ミリストイル化PKI−14−22アミド(PKI、2.5μM)、トリプトニドとビダラビン(Trip+Vid)またはトリプトニドとPKI(Trip+PKI)で処理した。IncuteCyte Zoomシステムを用いて細胞の増殖および形態をモニタリングした。図15Aは、ビダラビン、トリプトニド、およびビダラビンとトリプトニドの効果を示している。なお、細胞増殖に対するビダラビンの有意な効果がなかったことに注意する必要がある。トリプトニドは増殖阻害的である。ビダラビンとトリプトニドは、細胞増殖に有意な効果がなかった。図15Bは、PKI、トリプトニド、およびPKIとトリプトニドの効果を示している。なお、単独のPKIでは細胞増殖に有意な効果がなかったことに注意する必要がある。トリプトニドは、増殖阻害的である。トリプトニドとPKIでは、細胞増殖に有意な効果がなかった。 ウエスタンブロット分析の画像を示しており、不死化胃上皮細胞系GES−1および5種の胃癌細胞系にPAR2およびβ−アクチン(ACTB、ローディング対照とし)が存在するか否かを示しており、胃癌細胞系および不死化胃上皮細胞系におけるPAR2の発現が実証された。 担癌マウスに対するトリプトニドの効果を示している。図17Aは、トリプトニドで処理したビークル(一番上の行)と、25mg/kg体重レベルのトリプトニド(胃内投与による)、またはソラフェニブ(腹腔内注射による)で処理し始めた後の異なる時点(日数)での3つの異なる処理群団(コホート)(各群団について、n=10)とを表している3匹の担癌マウスのGFP蛍光リアルタイムイメージングの写真を示している。なお、ビークル処理のマウス(一番上の行)は、GFP信号の強度および相対面積が経時的に徐々に増加したが、トリプトニドで処理したマウスのGFP信号の強度および相対面積が処理後4日目から低下し、そして11日目までに検出できなくなったことに注意する必要がある。ソラフェニブ処理群のGFP信号の強度および相対面積は、最初に安定していた。その後、これらは短期の減少を呈したが、また増加し始めた。図17Bは、各群団の個々の腫瘍の平均面積で反映される3つの異なる群団における腫瘍細胞の増殖曲線を示している。GFP蛍光信号は、18日目以降、トリプトニド処理群の10匹の担癌マウスのいずれでも検出されなくなった。図17Cは3つの処理群団のそれぞれの体重曲線を示している。なお、3群の間に如何なる有意差がないことに注意する必要がある。
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、対象における過剰増殖性障害(特に、癌)、免疫応答関連障害の治療もしくは予防、および/または疼痛制御のために用いられ、あるいはこれらの障害または疾患を治療または予防するための方法に用いられる、プロテインキナーゼAの活性化を引き起こすことができる薬剤、または該薬剤を含む医薬組成物を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明に係る、プロテインキナーゼAの活性化を引き起こすことができる薬剤は、GPCR受容体の作動薬である。好ましい実施形態において、薬剤は、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩である。
いくつかの実施形態において、プロテインキナーゼAの活性化を引き起こすことができる薬剤は、対象における癌細胞を選択的に死滅させることができる。具体的な実施形態において、細胞はPAR2発現の増殖細胞である。
いくつかの実施形態において、癌は、原発性癌または転移性癌であってもよい。具体的な実施形態において、癌は、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、非小細胞肺癌、胃癌、卵巣癌、腎癌、前立腺癌、中枢神経系癌、黒色腫等であってもよい。
所望な新規な標的の入手可能性は、新規な標的抗癌療法を開発する制限要素である。本発明においては、トリプトニドまたはその機能的等価物を使用して、独特なPAR2活性化モードにより、PAR2発現の癌細胞を選択的に死滅させるように促進するために用いることができる、新規な標的としてPAR2の同定について説明した。発明者らの研究によれば、トリプトニドがPKAの継続的な上昇に関連するPAR2の非古典的活性化により分裂期細胞死を引き起こし、PAR2発現の増殖細胞を標的死滅させることができることを発見したことは、注目に値する。驚くべきことに、発明者らのデータから、PAR2発現が主に静止細胞および/または最終分化の非分裂細胞に制限されているが、2種の形質転換ヒト細胞系(LO−2およびGES−1)および多くのヒト癌細胞系で発現することが示されている。この発見では、PAR2の異常な活性化が腫瘍形成前または発癌中にすでに発生した初期「ドライバー」変更(すなわち駆動変化)を表し得るため、許容できない有害な副作用を伴わずに治療効果のために癌細胞を特異的に死滅させる所望な標的を促進させるという根拠を提供した。重要なことに、発明者らは、すでに、最大耐容量よりも何倍も低いトリプトニドによる処理により、担癌マウスから迅速かつ完全に同所性HepG2異種移植腫瘍を除去し、そのような新規な標的抗癌療法のパラダイムに原理の論拠を提供できることが示されている。いくつかの実施形態において、ヒト癌におけるPAR2の広範な発現および発癌中のPAR2活性化の初期発症を考えると、そのようなパラダイムが多くのタイプのヒトの癌治療および/または予防に適用可能である。いくつかの実施形態において、PAR2が炎症反応および疼痛制御の両方において重要な役割を果たし、トリプトニドの優れた安全特性を考えると、PAR2媒介性の炎症および/または疼痛反応の調節により、トリプトニドを活用して炎症および過度の疼痛に関連する障害を管理できる可能性がある。
癌は細胞が異常に増殖する疾患であり、このため、異常増殖の癌細胞の死滅および/または癌細胞成長の抑制は、該疾患を治療するための主要な戦略を構成する。正常および悪性のヒト細胞の増殖は、高度に制御された複雑な過程である。ヒトにおいて、一度生まれると、特定の細胞を静止態様(G0とも呼ばれる)のままに維持するか、新しいラウンドの増殖を続けて2つの新しい娘細胞を生成する可能性がある。細胞増殖サイクルは、ギャップ1(G1)期、合成(S)期、ギャップ2(G2)期および有糸分裂(M)期という4つの連続段階に分けられる。最近では、G1期は、初期G1またはG1後有糸分裂期(G1−ps)と後期G1またはG1−pre−S(G1−ps)にさらに細分化されている。G1−pmは、相対的一定の期間(3〜4時間)を定義し、該期間は新生細胞がいわゆる制限点(またはR点)を通過して増殖可能な最短時間を表し、G1−psは異なる細胞タイプまたは同じタイプの個別の細胞の間にずっと多く変動する。「R」点を通過する前に、個別の細胞は、細胞周期を終了して静止状態またはG0状態に入る能力を保持する。分裂刺激によるMAPK−ERK経路の活性化は、個別の細胞を駆動し「R」点を通過させて増殖させる重要な力を構成した。細胞周期に入ると、細胞周期のプロセスは、G1/S、S/G2、G2/M境界および有糸分裂期間の規制を含む追加の規制を受ける。細胞がG2/Mによって移行されると、それは初期のチェック点によって停止されるか、前中期まで進行する。初期のチェック点で停止された細胞は、間期状態に後退する可能性があり、次いで条件が適切になったら、正方向の進行に戻ることができる。その一方、前中期にすでに入った細胞は、いわゆる「帰還不能限界点(point−of−no−return)」をすでに通過し、且つ、間期状態に再度後退することができない。むしろ、正常に進行して2つの二倍体娘細胞の産生を伴う生産的な有糸分裂を完了するか、失敗の有糸分裂で終わる可能性がある。いくつかの失敗の有糸分裂が四倍体細胞の形成につながる可能性があり、残りは最終的に死に屈し、すなわち分裂期細胞死を引き起こす。したがって、失敗の有糸分裂を防止するため、G2/M移行は高度に規制されている。
哺乳類細胞において、有糸分裂促進因子(MPF)がG2/M移行の調節に重要な役割を果たす。このMPFの核心(コアコンポーネント)は、サイクリンB1サイクリン依存性キナーゼ1(CDK1)キナーゼ複合体である。CDK1キナーゼの活性化は、G2/M移行を促進して有糸分裂を起動するために必要かつ十分である。細胞周期の間期(interphase)に、Wee1/Tyt1キナーゼのリン酸化によっても、該キナーゼ複合体は不活性である。G2後期に、CDK1は、阻害性CDK1リン酸化を除去したCDC25ホスファターゼの作用により活性化される。最近の研究では、細胞質コンパートメントにおけるサイクリンB1−CDK1複合体を活性化することにより、G2/M移行を最初に起動させることが示されている。その後、活性化のサイクリンB1−CDK1複合体がすぐに細胞核に導入され、有糸分裂に関連する高度に調整されたイベントにつながる。興味深いことに、哺乳類雌性の卵母細胞では、減数分裂の前期IのG2/M移行が、細胞質におけるCDK1の初期活性化の、細胞質PKA活性の上昇による不活性化によって抑制される。細胞質PKA活性の上昇は、多くのタンパク質(Wee1およびCDC25を含む)にリン酸化させてCDK1活性化を抑制し、前記リン酸化は、それぞれWee1活性化とCDC25不活性化をもたらす。Wee1活性化とCDC25不活性化のいずれもCDK1活性化を抑制するため、PKA活性の上昇はG2/M移行を抑制する非常に有効なメカニズムを提供する。PKA活性の上昇は、哺乳類の体細胞におけるG2/M移行を抑制するための有効な手段でもある。
PAR2は受容体の自己リガンドGPCRサブファミリーのメンバーであり、その相同リガンドとその対応する受容体は、単一のポリペプチドとしてコードされ、細胞質膜に一緒に配置される。PAR2の古典リガンドは、ポリペプチドのN末端に位置し、使用できない態様で細胞質膜の外側に配置されている。該リガンドは、タンパク質が特定プロテアーゼ(例えば、トリプシン)で切断されると、利用可能になる。PAR2/Par2の2つの主な生物学的役割は、(1)神経系の疼痛および痒みの知覚における感覚的役割と、(2)複数種類の臓器/組織の上皮内層におけるバリアの完全性および炎症反応の調節における役割である。したがって、ヒトPAR2とそのマウスホモログPar2は、主に表皮の最終分化の上皮細胞、胃腸管の陰窩の上部および神経細胞のサブセットにおいて高レベルで発現する。Par2欠損マウスは、生存可能で正常に発達するが、痛みの知覚および炎症反応に欠陥がある。したがって、PAR2/Par2の発現は、そのインビボでの決定的な役割と密接に関連する。免疫応答および疼痛制御におけるPAR2の重要な役割は、疼痛および/または炎症に関連する病状を管理するための潜在的な医薬候補物としてのPAR2調整剤(モジュレーター)の開発に人々の大きな関心を集めている。そのような調整剤は、研究ツールとしてだけでなく、免疫応答および/または疼痛制御に関連する治療薬の開発における潜在的な先導(リード)として非常に有用であることが実証されている。注目すべきことに、これらの調整剤は、古典的なPAR2媒介性の信号伝達経路、すなわちGαq−PLC経路を標的とする小分子調整剤が含まれている。
あるいは、PAR2の活性化は、いくつかのプロテアーゼ(例えば、エラスチンおよびカテプシン)により誘導され、これはGαs−cAMP−PKA信号伝達カスケードの活性化をもたらし、PKAキナーゼの活性化をもたらす。本発明者らは、PAR2媒介性のGαs−AC−cAMP−PKA経路の最初の小さな調整剤としてトリプトニドを最初に発見した。
いくつかの実施形態において、本発明に係る薬剤、例えば、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩は、PAR2を活性化し、そしてPKAの持続的な活性化を引き起こすことができる。好ましい実施形態において、本発明に係る薬剤、例えば、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩は、分裂期細胞死の誘導効果を生じ、そして増殖性癌細胞の最終的な死亡をもたらす。
いくつかの実施形態において、本発明に係る薬剤、例えば、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩は、許容できない有害な影響を引き起こすことなく、PAR2発現の増殖細胞を選択的に死滅させるように促進することができる。
本発明者らは、癌細胞を含む増殖細胞に対してトリプトニドが所望な選択的致死効果を有することがすでに実証され、それは、静止状態の非分裂細胞に影響しないとともに有糸分裂で活性化された細胞に対する独特な分裂期細胞死の誘導効果に部分的に起因している。
具体的な実施形態において、トリプトニドは、Par2/PAR2発現の細胞においてPAR2/Par2媒介性の分裂期細胞死を誘導し、Par2/PAR2発現の増殖細胞を選択的に死滅させることができる独特な薬剤として同定される。トリプトニドの分裂期細胞死の誘導効果が、Par2/PAR2−Gαs−AC−cAMP−PKA信号伝達カスケードに対する非古典的な作動薬効果によるものであることを発見した。
いくつかの実施形態において、トリプトニドは、異常なPAR2作動薬として機能し、AC−cAMP−PKA経路の異常な活性化をもたらす。本発明者らは、トリプトニドをPAR2−Gαs−AC−cAMP−PKA信号伝達経路の小分子作動薬として最初に同定した。
いくつかの実施形態において、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩への癌細胞の曝露時間により、PAR2/Par2非依存性の有害な効果を引き起こさなく、PKAキナーゼの持続的活性化が可能になり、そして癌細胞特異的な増殖阻害が可能になる。
具体的な実施形態において、癌細胞はトリプトニドに複数回曝露される。好ましくは、可能性のある、PAR2/Par2に依存しない有害な影響が発生しないか、許容できないレベルに達しないように、投与されたトリプトニドを有意に除去することに十分な連続曝露との間の時間間隔が実施される。
具体的な実施形態において、本明細書の開示に鑑み、当業者は、必要に応じて曝露持続時間または連続曝露との間の時間間隔を決定することができる。例えば、HepG2細胞曝露の所望な持続時間は、20分間〜2時間、例えば1時間であってもよい。また、例えば、胃内投与による担癌マウスの2回の連続投与間の時間間隔は、1日、2日、3日等であってもよい。
一態様によれば、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、いわゆる組み合わせ戦略により、望ましい治療効果を高め、望ましくない効果を低減し、または両方を達するように、1種以上の他の薬剤をさらに含んでもよい。
本発明に係る医薬組成物は、単位用量(単位剤形)の形態で呈され、医薬技術分野における周知の任意方法により調製されてもよい。すべての方法は、本発明に係る活性成分と、1種以上の薬学的に許容される担体またはその他の試薬または他の形態の介入処置とを組み合わせるステップ(手順)を含む。一般には、活性成分と、液体担体、固体担体またはこの両方の組み合わせとの組成物を調製し、次いで必要に応じて得られた生成物を成形する。
いくつかの実施形態において、本発明に係るトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、またはそれらを含む組成物(単独で、または他の薬剤や他の形態の介入処置と組み合わせ)と、薬学的に許容される担体と共に、薬学的に許容される剤形、例えば、経口液剤、カプセル剤、散剤、錠剤、顆粒剤、丸剤、シロップ剤、注射剤、坐剤等に製剤化される。
本明細書に記載の「薬学的に許容される担体」とは、製薬分野で一般的に使用されるものを含む、活性成分の生物活性を妨げない担体を意味する。本明細書に記載の薬学的に許容される担体は、薬学的に許容される賦形剤、緩衝剤、乳化剤、安定剤、防食剤、希釈剤、封入剤、充填剤等を含む固体または液体であってもよい。例えば、薬学的に許容される緩衝剤は、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩等をさらに含む。
いくつかの実施形態において、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、またはそれらを含む組成物は、例えば、経口、皮下、筋肉内または腹腔内などの任意の適切な経路を介して投与される。好ましい実施形態において、経口投与されるトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、またはそれらを含む組成物は、単独で投与され、または他の薬剤または他の形態の介入処置とを組み合わせて投与される。
一態様によれば、対象における過剰増殖性障害、例えば、癌、免疫応答関連障害の治療もしくは予防および/または疼痛制御のための方法を提供し、前記方法には、治療または予防有効量のトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、またはそれらを含む医薬組成物が前記対象に投与されることを含み、前記投与は、単独で投与され、または他の薬剤または他の形態の介入処置とを組み合わせて投与される。
他の態様によれば、治療または予防有効量のトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、またはそれらを含む医薬組成物(前記のものは、単独で投与され、または他の薬剤または他の形態の介入処置とを組み合わせて投与される)の、対象における過剰増殖性障害、例えば、癌、免疫応答関連障害の治療もしくは予防および/または疼痛制御のための使用を提供する。
いくつかの実施形態において、治療は、癌細胞、好ましくはPAR2発現の増殖細胞を選択的に死滅させることを含む。いくつかの実施形態において、予防は、悪性転化前および/または悪性転化部位に発現するPAR2の細胞を選択的に死滅させることを含む。
本明細書に係る公開は、有効な標的抗癌療法を提供する。最近で出現の標的抗癌療法は、癌患者に大きな希望を与えている。従来、標的抗癌療法の開発は、癌の特異的属性(例えば、癌特異的な突然変異または遺伝子発現特徴)の同定から始まり、その後適切な調整剤を開発することである。しかしながら、このような戦略は肝細胞癌(HCC)の標的治療に対する開発に効果が僅かであることがすでに実証されるため、有効な標的抗癌医薬の開発はまだ満たされていない差し迫った必要のままである。
いくつかの実施形態において、本明細書に係る公開は、肝細胞癌に有効な標的治療を提供する。その他実施形態において、本明細書に係る公開は、乳癌、結腸癌、非小細胞肺癌、胃癌、卵巣癌、腎癌、前立腺癌、中枢神経系癌、黒色腫等に有効な標的治療を提供する。
本明細書に記載の「治療有効量」または「予防有効量」は、場合により決定することができ、当業者は、実際に必要な用量に応じて、例えば、患者の体重、年齢および状況および/または個別的医療分野に利用可能な技術に基づいて簡単に操作することができる。組成物が薬学的に許容される担体を含む場合、所望な医薬を調製するために、薬学分野における従来の方法により活性成分および担体を混合することができる。
いくつかの実施形態において、有益な効果を高めるためか、望ましくない効果を低減するためか、または両方のために、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩と、1種以上の他の薬剤または他の形態の介入処置とを組み合わせて投与される場合がある。
本明細書に記載の用語「対象」とは、霊長類、牛、ウマ、豚、ヒツジ、ヤギ、イヌ、猫およびげっ歯類(例えば、ラットおよびマウス)を含むがこれらに限らない哺乳類を意味する。本明細書に記載の細胞は、対象、臓器、組織、細胞、または如何なる他の適切な供給源に由来してもよい。
本明細書および特許請求の範囲において、用語「含む」(comprise/comprises/comprising)、「包括する」(include/includes/including)および「含有する」(contain/contains/containing)とは、「…を含むが、これらに限らない」ことを意味し、且つ、他の部分、添加物、成分またはステップ(手順)を除外することを意図していない。
なお、特に断りのない限り、本発明の特定の態様、実施形態または実施例に説明される特徴、特性、組成またはステップ(手順)は、本明細書に記載された他のいずれかの態様、実施形態又は実施例に適用できることは言うまでもない。
以上、本発明を全体的に説明したが、以下の実施例は本発明をさらに説明する。これらの記載されている実施形態、実施例、および図面は、本発明を説明することのみを意図しているが、決して本発明をいかなる限定として解釈されるべきではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。本発明の範囲における唯一かつ排他的な指標、および本出願人が本発明の範囲とする意図は、本出願に係る特許請求の範囲に記載の文字通りおよび等価範囲であり、そのような請求項は、追跡の如何なる補正を含む特定の形式で生成される。本明細書では特定の用語および値が使用されているが、これらの用語および値も例示的なものとして解釈されるべきであり、本発明の範囲を限定するものではない。特に明記しない限り、本明細書の実験方法および技術は、当業者に周知の方法および技術である。
実験方法
1. 細胞培養実験
1.1初代マウス肝細胞および角化細胞の調製および培養。
初代マウス肝細胞および角化細胞の起動および培養は、前述のように実施された。簡単に説明すると、肝細胞培養を開始するために、まずペントバルビタールナトリウム(400mg/kg、ip)で動物を麻酔し、次に腹腔を開き、37℃でカルシウムを含まないHEPES緩衝液を門脈のインサイチュー(in situ)から肝臓に4分間灌流し、および0.5mg/mLコラゲナーゼD(Life Technologies、米国)および3mM CaClを含有するHEPES緩衝液を8〜10分間灌流した。灌流速度は5mL/minに設定した。10%ウシ胎児血清(Life Technologies、米国)を添加したWilliams’ medium E(Life Technologies、米国)に、12ウェルプレートの各ウェルに400,000個細胞/ウェルの密度で細胞を播種し、そしてウェル壁に2時間貼付させる。壁に貼付していない細胞を捨て、貼付している細胞(肝細胞)を新鮮な培地に保存した。
新生児マウスの角化細胞を培養するために、新生児野生型またはPar2ノックアウトマウスの背部皮膚を、それぞれ野生型またはPar2ノックアウトマウスから収集した。カルシウムおよびマグネシウムを含まないリン酸緩衝液(PBS)に溶解したトリプシン(Life Technologies、米国)の0.25%溶液において、皮膚を4℃で一晩インキュベートした。その後、表皮をその隣接する真皮から分離し、グルタミンおよび8%のカルシウムを含まないウシ胎児血清(FCS)(Life Technologies、米国)を追加したイーグル最小必須培地(SMEM)(Life Technologies、米国)懸濁液に、分散の表皮細胞を収集した。細胞は、48ウェルプレート(Corning、米国)の各ウェルに、70,000個細胞/ウェルの密度で播種され、これらのウェルは、コラーゲン(Life Technologies、米国)で事前コーティングされた。細胞培養物は、34℃で8%COを含有する加湿インキュベーターに12時間維持した。その後、8%FCSを含む低カルシウム(0.05mM)S−MEMを加えて培養を開始した。培地は、2日ごとに1回交換された。
1.2 確立された細胞系の培養
37℃および5% COの標準組織培養条件下で、10%ウシ胎児血清を含む1640組織培地(Corning、米国)において、癌細胞系および不死化ヒト細胞系を培養した。
1.3 HepG2細胞同期化
ミモシンの非存在下または200μMミモシンの存在下で28時間の場合、約60%コンフルエントのHepG2細胞は、無血清1640培地(Corning、米国)に48時間維持された。
2. IncuCyte Zoomに基づく増殖実験
初代肝細胞については、無処理(対照として)または複数のタイプの処理を48時間に至るまで行った場合、播種した細胞をモニタリングした。初代角化細胞については、無処理または複数のタイプの処理を96時間に至るまで行った場合、48ウェルプレートにおける細胞をモニタリングした。HepG2については、無処理または複数のタイプの処理を48時間に至るまで行った場合、96ウェルプレートにおける細胞をモニタリングした。IncuCyte Zoomは、3時間ごとに固定位置で1群の画像を撮影する(96ウェルプレートにウェルあたり4枚撮影し、および48ウェルプレートおよび12ウェルプレートにウェルあたり16枚撮影する)ように設定された。
3. ウエスタンブロット
処理後、細胞を収集してRIPA緩衝液(Solarbio)での溶解によりタンパク質抽出物を調製した。ウエスタンブロットは、特異的抗体およびSuperSignal(登録商標)West Pico化学発光基質(Pierce)を使用して実施された。抗体は、ポリクローナルウサギ抗PAR2抗体(ABGENT)、ポリクローナルウサギ抗β−アクチン抗体(Cell Signaling Technology)、抗ERK(Cell Signaling Technology)、抗リン酸化ERK(Cell Signaling Technology)、抗リン酸化ヒストンH3(Abchem)、抗CDK1(Abcam)のような商業的企業から購入された。
ERKリン酸化に対するトリプトニドの効果を評価するため、6ウェルプレートに2×10細胞/ウェルでHepG2細胞を播種し、12時間培養し、次いで無血清1640基礎培地に48時間血清飢餓させて同期化した。その後、直ちにビークル溶液または1μMトリプトニドで細胞を処理した。処理後の異なる時点でサンプリングしてウエスタンブロット分析に使用した。
ヒストンH3リン酸化に対するトリプトニドの効果を評価するために、6ウェルプレートに2×10細胞/ウェルでHepG2細胞を播種し、12時間培養した後、200μMミモシン含有培地に28時間維持して同期化させた。ミモシン処理後、細胞を通常培地に2時間回復し、そしてビークル溶液または1μMトリプトニドで1時間処理した。トリプトニド処理後、通常の培養条件に細胞を戻し、さまざまな時点でサンプルを収集してウエスタンブロット分析に使用した。
培養細胞におけるPAR2発現のレベルを評価するために、複数種類の細胞系または初代細胞を約90%コンフルエントになるまで培養し、その後収集してウエスタンブロット分析に使用した。
4. Edu取り込みおよび検出実験
実験は、製造業者から提供された扱い説明書に基づいてわずかな変更を加えて「Click−iT Plus EdUイメージングキット」(Life Technologies, Carlsbad, California、米国)を用いて実行された。簡単に説明すると、24ウェルプレートの各ウェル内のカバースリップ(ウェルあたり1つのカバースリップ)上に、30,000個細胞/ウェルの密度でHepG2細胞を播種した。HepG2細胞は未処理であるか、または200μMで28時間処理し、または無血清培地で48時間インキュベートした後、HepG2細胞は、通常培地に異なる回復期間にある。その後、Edu(10μM)を30分間供給する前に、異なる時点で、薬物を含まない培地培地に細胞を戻して放出した。その後、室温で細胞を3.7%ホルムアルデヒド含有PBSで15分間固定し、次いで室温で0.5%Triton X−100で20分間透過処理した。その後、Click−iT Plus反応混合物を加えて30分間インキュベートした。3% BSA含有PBSでカバースリップを洗浄した後、Hoechst 33342(5μg/mL)で染色した。クリック反応は、Alexa Fluor蛍光色素をEduに接続させるようにデザインされており、Edu含有DNAと、Eduが追加された時にDNA合成を受けていた細胞とを可視化することができる。Hoechst 33342蛍光色素は、DNAに特異的に結合し、すべての核の可視化を可能にする。クリック反応とHoechst 33342染色をした後に、蛍光顕微鏡で検査して複数のタイプの処理を受けた細胞のEdu取り込み特性を評価した。
5. 臨床前抗腫瘍実験
AntiCancer Biotech(Beijing) Co., Ltd.により臨床前実験を行った。
5.1動物
本研究では、雌の無胸腺ヌードマウス(6週齢)を使用した。動物はBeijing HFK Bioscience, Co., Ltdから購入され、ケージ、食物および放射線またはオートクレーブで滅菌済みの寝具(bedding)を備えた、高効率微粒子エアフィルター(HEPA)で濾過された環境で飼育し維持した。合計30匹のヌードマウスが研究に使用された。
5.2 研究用試薬
トリプトニド含有懸濁液は、カルボキシメチルセルロース懸濁液における、すぐに投与できる(ready−to−administer)経口製剤として調製された。トリプトニドの濃度は、動物あたりの所望な医薬量が約0.2mLの体積で取得できるように選択される。動物研究の過程において、ビークル懸濁液およびトリプトニド含有懸濁液を試薬Aおよび試薬Bとして指定された。試薬Aおよび試薬Bの性質に関する情報は、動物実験を行ったAntiCancer Biotech (Beijing) Co., Ltdに保存された。
5.3 腫瘍細胞
HepG2−GFPヒト肝細胞癌細胞(AntiCancer, Inc., San Diego, CA)は、10% FBS含有RPMI−1640(Gibco−BRL, Life Technologies, Inc.)とともにインキュベートされた。細胞は37℃および5% CO/95%空気雰囲気に維持されたCO Water Jacketedインキュベーター(Forma Scientific)で増殖させた。トリパンブルー排除アッセイ法により細胞活性(細胞生存率)を確定した。
5.4 皮下ヒト肝細胞癌モデル
雌の無胸腺ヌードマウスマウスに、それぞれ単回用量での5×10個のHepG2−GFP細胞を皮下注射した。腫瘍サイズが約1cmに達した時に腫瘍を収集した。
5.5 同所性ヒト肝細胞癌モデル
同所性ヒト肝細胞癌モデルを確立する方法は以前に記載されている(62)。HepG2−GFP細胞の由来とする皮下腫瘍を約1mmの断片に切断し、6週齢の雌BALB/cnuヌードマウス(Beijing HFK BioScience Co., Ltd.)の肝臓右葉に同所移植し、動物あたり1つの移植物にした。簡単に説明すると、麻酔下で1cmの上腹部切開を行った。肝臓の右葉を曝露し、肝臓表面の一部をハサミで機械的に損傷した。次に、1つの腫瘍断片を肝臓組織内に固定して肝臓を腹膜腔に戻し、そして腹壁を縫合した。マウスは、特定の病原体のない条件下で層流キャビネットに保管された。
5.6 研究デザイン
移植後3日目に、蛍光イメージングの結果に基づいて、移植した腫瘍が約2mmである動物は選択された。該実験では、所望な腫瘍を有する動物を、群あたり10匹で無作為に群分けた。また、各マウスには、それぞれ識別用記号が耳に付けられた。
5.7 処理
まず、1日おきに0、5、10、25、50、100、200mg/kg体重の経口投与量のトリプトニドを1回投与することにより、予備実験を行って最大無毒用量を確定した。該実験により、100mg/kg体重まで高い用量レベルでは、如何なる顕著な有害な影響が生じないことが明らかになった。したがって、担癌ヌードマウスに対して2回目の予備実験を行って無毒範囲内に抗腫瘍効果を達成可能であるか否かを確定した。第1群の実験において、1日おきに1つの投与量の方案で胃内投与によりトリプトニド0、1、5、10、25mg/kgで担癌マウスを処理した。結果は、投与量25mg/kgによる処理が1週間以内に、腫瘍塊を減少させることに非常に有効であることが示された。したがって、臨床前実験では、1日おきに1回25mg/kgのレジメンが選択された。単一の腫瘍の体積は、生物発光イメージングにより評価された。
5.8 動物モニタリング
研究期間中に、すべての実験マウスの死亡率または苦痛の症状を毎日チェックした。動物は腫瘍移植後28日間まで観察された。
a. 体重
マウスの体重は、研究期間中3日ごとに測定された。
b. 全身イメージング
腫瘍の増殖および進行の画像は、FluorVivoイメージングシステム、型番300/Mag(INDEC、CA、USA)を使用して研究期間中に3日ごとに取得された。
c. 終了
ペントバルビタールナトリウムの過剰注射により動物を安楽死させた。
d. 剖検
各動物を安楽死させた直後、それぞれ皮膚を除去して肝臓を露出させ、すぐに最終的なGFP蛍光イメージングを行った。イメージング後、各肝臓の移植部位の腫瘍またはその残留物を検査した。腫瘍が明確に識別できる場合、腫瘍を切除してその重量を電子天秤(Sartorius BS 124 S、ドイツ)で測定した。腫瘍が見えない場合、移植部位周辺の腫瘍組織を収集し、さらなる分析のためにホルマリンで保存した。
6. 細胞周期分析およびフローサイトメトリー
標準的なヨウ化プロピジウム(PI)染色法を使用して、細胞周期プロファイルを分析した。簡単に説明すると、HepG2細胞を播種し、そして200μMミモシンを使用したかまたは使用しなく28時間処理した。未処理の細胞を非同期化対照として使用した。次に、別途の薬物処理なしで一部のミモシン処理細胞を培養し、0、11、24、および37時間で収集してフローサイトメトリー分析に使用した。
あるいは、同じミモシン処理細胞を1μMトリプトニド、2μMトリプトリドまたは10μMトリプトニドの存在下で培養し、未処理細胞と同じ時点で収集した。
細胞を−20℃で70%エタノールで固定し、PBSで洗浄し、染色溶液(50μg/mL PI(Sigma)、200μg/mL RNase A(Roche))に再懸濁してフローサイトメトリーに使用した。
Coulter EPICS XL−MCL Cytometer(Beckman Coulter)またはBD LSR I Cytometer(Becton Dickinson)を使用してすべてのフローサイトメトリーデータを収集した。FACScan(Becton Dickinson)およびWinMDI(J. Trotter, Scripps Institute)ソフトウェアパッケージを使用してデータを分析した。
7. cAMPレベルの測定
約70%コンフルエントになった培養HepG2細胞を200μMミモシンで28時間処理した。次に、ミモシン処理細胞を通常培地で2時間回復させてから、無血清1640基礎培地においてビークル溶液、1μMトリプトニドまたは50nMトリプシンで処理した。処理後の異なる時点で細胞を収集した。1群のサンプルに対して、細胞を通常培地に4時間回復させた後、1μMトリプトニドで処理した。その後、製造業者によって提供されたプロトコルにより、cAMP ELLISAキット(CELL BIOLABS、カタログ番号STA−501)を使用して、単一サンプルのcAMP濃度を測定した。
8. PKA活性の測定
約70%コンフルエントになった培養HepG2細胞を200μMミモシンで28時間処理した。ビークル溶液または1μMトリプトニドで処理する前に、ミモシン処理細胞を通常培地で2時間回復した。PKA活性に対する治療の急性効果を測定するために、無血清1640基礎培地において処理を行った。処理後の異なる時点で細胞を収集した。処理の長期効果を測定するのために、通常培地において処理を1時間行った。処理後、細胞を通常の培養条件に戻し、処理後の異なる時点で収集した。単一サンプルのPKA活性レベルは、PepTag(登録商標)非放射性cAMP依存性プロテインキナーゼアッセイシステム(Promega、カタログ番号:V5340)を使用して製造業者によって提供されたプロトコルにより測定された。
9.その他試薬
PKI−14−22アミド(ミリストイル化)はTocrisから購入され、ビダラビンはSelleckから購入された。他のすべての化学薬品は、特に明記しない限り、Sigma−Aldrichから購入された。
実施例1 トリプトニド癌細胞が特異的な増殖阻害効果を示すことができる
発明者らは、初代マウス肝細胞(PMH、非癌細胞を表す)と、HepG2細胞(HCC癌細胞)との両方を個別の試験試薬に1時間だけ曝露し、PMHではなくHepG2細胞に対して有意な増殖阻害効果を示す試薬を探すスクリーニングスキームをデザインした。1時間の曝露は、一部の経口投与された医薬または局所送達された医薬の初回通過効果による肝臓の一時的な高濃度をシミュレートすることを目的としており、そのような短期間の曝露は、細胞内吸収による如何なる有意なオフターゲット効果を引き起こすことなく、一部の細胞表面受容体に影響を与えるのに依然として十分であると予想される。このような戦略は、可逆的な細胞周期停止による誤りヒットを減らすことにもなる。IncuCyte Zoomシステム(Essen BioScience、アナーバー、ミシガン州)を使用して、各試験化合物の短期(1時間)曝露のIC50値(IC50)を確定し、実験中に2分間ごとに培養細胞に対して撮影して単一細胞の動的変化を記録した。
HepG2細胞を濃度4μM以上のトリプトニドに1時間曝露すると(図1A)、HepG2の有意な増殖阻害が引き起こされた(IC50:7.5μM、図1B)。16μM(IC50よりわずかに高い)以上のトリプトニドは、細胞密度を有意に低減し、細胞損失(細胞死)が増殖阻害効果に関連する要因であることを示している(図1B)。これに対して、同じ処理は、PMHの成長に有意な影響を与えなかった(図1C)。驚くべきことに、濃度が320μMもある(HepG2のIC50よりも約25倍高い)トリプトニドは、PMHに対して有意な増殖抑制効果を示さなかった(図1C)。したがって、これらのデータによれば、トリプトニドは、1時間処理に適用された場合、非癌対応物(PMH)ではなく、HCC癌細胞に特異的な増殖抑制効果を示すような第1の候補物として資格を有して見なされた。興味深いことに、200nMより大きい濃度のトリプトニドにHepG2およびPMHを持続に曝露してHepG2およびPMHが完全に死に至ることが引き起こされ(データが示していない)、トリプトニドの癌細胞特異的な増殖阻害効果が短時間の曝露に依存することが明らかにされた。
1時間の医薬曝露条件下では、増殖阻害は、不可逆的な増殖阻害(老化)、細胞死またはその両方の影響に対する影響を直接反映できる。最初に、細胞周期のさまざまな段階での混合細胞群(混合細胞集団)を使用して測定した。単一細胞の細胞周期状態が増殖阻害および/または細胞殺傷剤に対する反応に影響を与える可能性があること、および16μMトリプトニド処理で一部の細胞のみを死滅させることを考えると、発明者らは、マイトジェン活性化および/または細胞周期の進行段階によりHepG2が治療の反応に影響する可能であるか否かについて質問した。言い換えれば、トリプトニドは、癌細胞の増殖亜群(亜集団)を標的とすることによりその増殖阻害効果を発揮するか否かという問題に対処するために、特定の細胞周期段階の細胞に富む細胞群(細胞集団)を使用して別途に研究した。2種の異なる方法を使用して、細胞周期のさまざまな段階で富化されたHepG2細胞群を得た。具体的には、血清飢餓により細胞周期のG0とG1期で富化された細胞群を取得し、またミモシン処理によりG1後期の細胞進行を阻害した。なお、その後、細胞群が培地において一定期間に回復させることにより、細胞群からG1、S、G2およびM期のさまざまな段階で富化された群体(集団全体)を派生した。5−エチニル−2’−デオキシウリジン(Edu)取り込み実験によって単一群体の段階を確定した。Edu取り込み実験では、短時間(約30分間)で細胞にEdu(DNAの人工ビルディングブロック)を与えた。DNA合成を受けている(つまりS期にある)細胞は、そのDNAにEduを組み込むことができる唯一の細胞である。したがって、Eduを組み込む能力は、S期細胞のマーカーとして機能する。Edu取り込み実験により、78%のミモシン処理したHepG2細胞が30分間内にEduを取り込んだことを示唆した。それらの大部分(>90%)は、次の2時間(1.5時間+パルス標識の0.5時間、図2A)内に、S期を完了してG2期に達したことであり、それらの大部分が実際に細胞周期のG1/S境界にあることは実証された。血清飢餓が48時間されたHepG2細胞では、62%が通常培地(10%の血清を含む)に放出された後の最初の30分間内にEduを取り込むことができた(図2B、0時間、4時間)。細胞が血清飢餓期間にS期に入ることができないを考えると、これは、この62%のEdu取り込み細胞が血清飢餓後にG1期後期にあったが、Eduへの30分間の曝露中にS期に進行したことを示している。約10時間後、約37%のEdU取り込み細胞の第2波が現れた(図2B、10時間、14時間、18時間)。これらは、おそらく血清飢餓後の細胞周期のG0またはG1初期にあったものである。したがって、血清飢餓は、それぞれG0/初期G1期(37%)およびG1期後期(62%)の細胞蓄積をもたらした。
続いて、血清飢餓細胞に対するトリプトニドの効果が濃度依存性および/または時間依存性であるか否かを評価するための実験が行われた。具体的には、血清飢餓細胞は、血清飢餓処理の放出(G0/G1初期またはG1後期)から10時間に至るまで(Edu取り込みの第2波が発生した時)、さまざまな濃度(0.1〜10μM)のトリプトニドで1時間処理を受けた。1μM未満の濃度のトリプトニドによる1時間処理は、トリプトニド処理の投与時期に関係なく、これらの血清飢餓のHepG2細胞の増殖に有意な影響を及ぼさないことが分かった。10μMトリプトニドによるすべての処理は、増殖阻害であった。興味深いことに、1μMによる処理こそは、飢餓後0時間と2時間に投与された場合にのみ、増殖阻害であった(データは示さず)。
血清飢餓後0時間、1時間、2時間、4時間後に1μMトリプトニドで処理した場合の反応を調べるために、より詳細な研究が行われた。データでは、通常培地に放出された後、一部の血清飢餓のHepG2細胞(おそらくG1亜群)が13時間目から有糸分裂に入り始め、16時間目でピーク値に達することを示した(図3、対照13)。有糸分裂の第1波は、G0亜群の細胞がこの時にまだG1期またはS期にあったため、G1後期亜群に由来することが明らかにされた(図2B)。37時間までに、対照の細胞数は開始数の2倍以上になった(図3、対照0、37)。これらのデータは、これらの血清飢餓細胞の大部分(G0/G1初期およびG1後期亜群の両方)は、細胞周期の進行を再開することができ、G1後期亜群が培養に戻ってから約13時間後に有糸分裂に入り始め、生産的な有糸分裂を受けることができる。
1μMトリプトニド処理こそは、通常培地で血清飢餓細胞を培養した後の0時間と4時間に処理を行った場合にのみ、球状形態と濃縮染色質を持っている細胞の有意な蓄積をもたらした。13時間までに、独特な球状形態と濃縮染色質を持っている細胞の蓄積の開始時間は、非常に明確になった(図3、TR0−13、TR240−13)。これは、対照細胞が有糸分裂に入り始めた時期と一致している(図3、対照13、およびデータは示さず)。重要なのは、このような球状形態と濃縮染色質を持っている細胞が一度現れると、37時間までもほとんど変化しなく(図3、TR0−37、TR240−37)、これは分裂期細胞死を示した。したがって、データは、トリプトニドが以前に未知の効果である分裂期細胞死の誘導を引き起こすことを明確に示している。なお、累積的に、細胞の約60%が分裂期細胞死の特徴を示し(図3、TR0、TR240)、トリプトニド処理によりG1後期亜群(62%)(図2B)が分裂期細胞死を受けることが明らかになった(本明細書では、このような特徴を示した細胞が分裂期細胞死細胞と呼ばれる)。したがって、全体として、これらのデータは、G1後期の細胞が飢餓から放出された後のわずか0時間と4時間の時点(Edu取り込み実験に由来したデータ(図2B)に基づき、この時にそれぞれG1/SおよびS/G2移行付近の点にある)で、処理に敏感である(感受性がある)ことを示している。同時に、血清飢餓から放出された後の0時間と4時間に行った場合、トリプトニド処理は、残りの37%の細胞に対して有意な分裂期細胞死の誘導効果を引き起こすように見えなく、前記細胞がG0期またはG1期初期にあり、飢餓から放出された後の10〜14時間にS期(図2B)を通過し(traverse)、飢餓から放出された後の0時間と4時間にG0/G1初期を維持しているはずである。したがって、これらのデータは、G1後期からS期初期およびS後期〜G2初期(以下G1/SおよびS/G2移行付近と呼ばれる)のHepG2がトリプトニドの分裂期細胞死の誘導効果に独特な敏感であるが、静止(G0)およびG1初期のHepG2細胞はこのような効果に敏感でないことも明らかにした。
その後、ミモシン処理の細胞で同様の一連の実験を行い、血清飢餓に特異の潜在的な影響を排除し、細胞周期中に細胞がトリプトニド処理に敏感だった如何なる他の点があるか否かを調べた。ミモシン処理したHepG2細胞は、細胞周期の進行を再開することもできる。注目すべきことに、それらのかなりの部分が11時間目で有糸分裂に入り、有糸分裂パターンの百分率は、ミモシン処理から放出された後約14時間でピーク値に達した(図4、対照14およびデータは示さず)。Edu取り込み実験に由来のデータと一緒に、これらのデータは、これらのミモシン処理のHepG2細胞(G1期)が進行してS期を経て相対的同期してG2に入ることを示した。しかしながら、それらはその後かなり非同期になり、数時間の時間帯もかけて中期に達した(図4、対照14時間、23時間と37時間)。予備実験は、0時間〜14時間目(細胞の第1波がすでに有糸分裂を完了した際)に、1μMトリプトニド処理で行われた。予備実験での結果は、ミモシンを含まない培地に細胞を2時間置いた後に処理した場合にのみ、細胞こそが敏感であることを示した。より詳細な追跡研究により、S/G2移行付近の時間は、ミモシン処理されたHepG2細胞がトリプトニド処理の分裂期細胞死誘導効果に敏感があった唯一の点であることが実証された(図4A、TR120)。また、この場合、分裂期細胞死細胞は、実験の期間中に持続的に存在し(23時間まで)、細胞蓄積の開始時間はミモシン処理後11時間までにかなり明らかになっており、且つ、ミモシン処理後14時間でピーク値に達した(図4、TR120−14およびデータは示さず)。これは細胞が有糸分裂に入り始め、有糸分裂指数が対照におけるピーク値に達した時の時間と一致している(図4、対照14およびTR240−14)。興味深いことに、放出後0時間に処理を適用すると、細胞は静止状態になったが、分裂期細胞死細胞の有意な蓄積が観察されなかった(図4、TR0)。ミモシン放出後の他の時点(例えば、60分間および240分間)で、同じ処理が行われた場合、分裂期細胞死細胞の有意な増加が観察されなかった(図4、TR60、TR240)。
したがって、2種の異なる方法を使用して処理されたHepG2細胞の実験からの結合データは、HepG2が細胞周期の段階特異的な方式、すなわちS/G2移行点付近でトリプトニドの独特な有糸分裂障害誘導効果に敏感があったことを示している。血清飢餓HepG2細胞((G0/G1初期+G1後期)にある)を使用した場合、G1/S移行付近の敏感な点は検出されたが、ミモシン処理細胞(G1/S境界にある)を使用した場合、検出されなかった。むしろ、トリプトニド処理後、ミモシン処理のG1/S細胞は、静止状態になっており、トリプトニド処理により細胞が有糸分裂または分裂期細胞死までに進行するのを防止すると予想される。したがって、ミモシン処理の細胞は、トリプトニドがG1/S移行点付近に分裂期細胞死の誘導効果を発揮するか否かを評価するのに適していない。したがって、トリプトニドはG1/S移行点付近に分裂期細胞死の誘導効果を発揮する可能性が高いようである。重要なことに、静止(G0)細胞は、トリプトニドの分裂期細胞死の誘導効果に耐性があった。
実施例2 トリプトニドとトリプトリドがHepG2細胞に対する異なる効果を示す
該実施例において、HepG2細胞に対するトリプトニドとトリプトリドの効果を比較した。
ミモシン処理HepG2細胞を1μMトリプトリドで1時間処理すると、増殖が阻害されたが、投与時期に関係なく、分裂期細胞死を引き起こさなかた(図5、TR120、TR0−1μM、TR120−1μM)。しかしながら、ミモシン処理直後、および処理後2時間で投与した(程度が比較的低いにも関わらず)場合、2μM トリプトリドでの1時間処理は増殖阻害のみならず、染色質濃縮を引き起こした(図5、TR0−2μM、TR120−2μM、およびデータは示さず)。
細胞周期の進行分析により、ミモシン処理HepG2細胞は生産的な細胞周期の進行を再開することができることが示された。それらの大部分は、ミモシンが放出後11時間(Mim R11)で、ほとんど4NのDNA含有量でG2/M期に達した。同時に、1μMトリプトニドでさらに処理されたミモシン処理細胞は、G2/M細胞の有意な蓄積を示した(11時間、24時間と37時間に、それぞれ82%、80%および78%)。
これらのデータは、ミモシン処理後2時間に、ミモシン処理細胞中で発生した球状細胞が、実際に分裂期細胞死の結果であるという結論をさらに実証した。それに対し、2μMトリプトリドまたは10μMトリプトニド処理細胞は、11時間(Mim R11)でG1期、S期およびG2期で最初に停止した。24時間(Mim R24)までに、SとG2の百分率が減少したが、サブG1(<2N、アポトーシス)群の有意なピーク値は、両方にも明らかになった。重要なことに、4N DNA含有量の細胞の蓄積はなく、有意な分裂期細胞死効果の欠如を明らかにした(図6)。したがって、これらのデータは、生細胞イメージングに由来したデータと共に、1μMトリプトニド処理細胞がG2/M期に入ることができたが、その後、有糸分裂を完了できなかったことが明らかになった。代わりに、分裂期細胞死を受けた。一方、1μM、2μMまたは10μMで処理された細胞は、G1(2N)で停止したか、SまたはG2細胞としてアポトーシスを起こした。したがって、これらのデータは、トリプトニドとトリプトリドの両方が低μMレベルで有意な増殖阻害効果を持つ可能性があるにも関わらず、これらの効力と潜在的なメカニズムに関して異なることを示した。具体的に、トリプトニドはG2/M停止/分裂期細胞死のみを引き起こす可能性があるが、トリプトリドは主にG1停止およびアポトーシスを引き起こした一方、分裂期細胞死は引き起こさなかった。
実施例3 トリプトニドがPAR2を標的として分裂期細胞死を誘導する
トリプトニドの標的を同定するために、発明者らは、トリプトニドの増殖阻害効果がPAR2に依存しているかどうかを調べた。
この問題を解決するために、遺伝的アプローチを採用した。具体的には、ヒトPAR2とそのマウスホモログPar2は、高度に保存されており、初代角化細胞がPar2を発現するため(興味深いことに、分化の有糸分裂期後の角化細胞のみが高レベルのPar2をインビボで発現する)、野生型とPar2ノックアウトマウスにそれぞれ由来する初代角化細胞間でトリプトニド感受性を比較することにより、トリプトニドがPar2依存的に細胞死を引き起こすことができるか否かを調べることにした。50nMトリプトニド(試験の最低用量)が野生型角化細胞の増殖阻害に有効であったが、1.6μMのほうが完全な増殖阻害を引き起こすには十分であった(IC50:1.293μM)(図7A)ことを発見した。その一方、Par2ノックアウトの角化細胞、26μMの高濃度のトリプトニドは有意な増殖阻害を引き起こさなかった(IC50:25.674μM)(図7B、7C)。従来の連続曝露方式で投与した場合、トリプトニドは、Par2ノックアウト対応物よりも、Par2野生型PMHに対してさらに有効な増殖阻害効果を示した(図7D、7E)。これらのデータは、1時間処理で投与した場合、濃度範囲50nM〜26μMのトリプトニドは、初代角化細胞に対してPar2依存的な増殖阻害効果を示したことが実証されている。
トリプシン(Par2/PAR2の同族アクチベーター)で処理された野生型角化細胞は、如何なる有意な細胞死を引き起こさなく(図6F)、これは、PAR2依存性経路のその自体の正常な活性化が本質的に細胞毒性でないという予想と一致している。これらのデータは、古典的な活性化ではなく、PAR2/Par2経路の異常な活性化が、細胞死のトリプトニド媒介Par2/PAR2依存効果の潜在的な基礎となる可能性があることを強く示唆している。また、発明者らは、初代マウス肝細胞がトリプトニドの増殖阻害効果に敏感でないことを最初に発見したため、これらのデータは、初代マウス肝細胞(PMH)がPar2を欠損しているか、そのヒト対応物で保存されていないPar2を発現したことも示唆している。ウエスタンブロット実験により、PMHに実際にPar2を欠損していることが明らかになった(図8)。これらのデータは、マウスPar2とPAR2(そのヒト対応物)との間に高度に保存された性質と組み合わせて、トリプトニド誘導の増殖阻害効果を支持し、したがって、分裂期細胞死の誘導効果は、それぞれ、マウス細胞中にPar2依存的であり、ヒト細胞中にPAR2依存的である。
実施例4 トリプトリドがPMKのPar2依存性死滅を引き起こすことにおいてトリプトニドほど効果的でない
興味深いことに、トリプトニドは50nMの低濃度で野生型角化細胞に対して有意な増殖阻害効果を示したが、その密接に関連するトリプトリドは、延いて800nMの高濃度で野生型またはPar2ノックアウトの角化細胞に対して如何なる有意な増殖阻害効果を持っていなかったであり(図9A、9B)、Par2依存性細胞死を引き起こすには、トリプトリドがトリプトニドよりも効果が低いか、Par2依存性細胞死を引き起こすのにまったく効果がないことを示している。しかしながら、これとは鮮明に対照的に、連続的に暴露した場合、1.25nMという低濃度(検出の最低濃度)のトリプトリドは、野生型とPar2ノックアウトの角化細胞と共に完全な致死ををもたらした(図9C、9D)。それに比べて、320nMという高濃度のトリプトニドはPMHに対して有意な毒性効果を示さなかった(図9D)。これらのデータは、トリプトリドとトリプトニドの異なる効果を実証する追加の証拠を提供している。すなわち、1時間スキームで投与した場合、トリプトリドではなくトリプトニドは、マイトジェン活性化細胞での独特なPar2/PAR2依存性細胞死を有効でもたらす可能性があり、そして1.25nM〜320nMの濃度で連続に適用した場合、トリプトリドは非常に強力な毒性があったが、トリプトニドは毒性がなかった。
また、トリプトニドで処理した分裂期細胞死誘導の効果は、遅延的に現れたことが明らかになった。具体的には、発明者らのEdu取り込み実験に由来したデータによれば、分裂期細胞死が発生し始めた場合、ミモシン処理の細胞はG1/S境界(敏感点の1つ)からG2/M移行点まで通過したのに少なくとも11時間かかった(図3と4)。したがって、トリプトニドで処理した時間(ミモシン処理後2時間)から分裂期細胞死表現型の開始時間(ミモシン処理後11時間)までに少なくとも8時間の間隔(1時間の処理時間を考えた)が存在する。発明者らの知る限り、そのような独特な効果をもたらす可能性のある薬剤は、まだ報告されていない。したがって、発明者らは、癌細胞死滅を標的とする新規な方式を発見し、トリプトニドはそのような独特タイプの標的癌細胞死滅を実行するために使用できる最初の薬剤を代表している。このように、そのような新規な癌細胞特異的死滅を利用して新規な標的抗癌療法の開発中に、トリプトニドのかかる独特な効果を誘導する標的経路を同定することは極めて重要になった。
トリプトニドの分裂期細胞死の誘導効果のPar2/PAR2依存性性質を考えると、Par2/PAR2媒介性の信号伝達の活性化は、そのような効果をもたらす候補となっている。トリプシンによるPar2/PAR2の古典的な活性化は、Gq共役経路の活性化につながり、間接的にMAPK−ERK経路の活性化につながる。あるいは、Par2/PAR2活性化はGs共役経路、すなわちGs−アデニリルシクラーゼ(AC)−cAMP−PKA経路の活性化をもたらすことも報告されている。MAPK−ERK経路はG2と有糸分裂とを含む細胞周期中に重要な役割を果たしていると考えられており、トリプトリドが強力なPar2/PAR2拮抗薬として同定されているため、発明者らは、トリプトニドがMAPK−ERK経路の適切な作用を乱して独特な分裂期細胞死誘導効果を引き起こすことができるか否かを尋ねった。この可能性を試験するために、トリプトニドが、強力なPar2/PAR2拮抗薬としてトリプトリドのように機能できるか否かを調べた。Par2/PAR2活性化の特徴は、独特な2段階ERKリン酸化(急性期の増加、それに続く遅延のβアレスチン依存性の増加)であるため、HepG2細胞におけるERKリン酸化に対するトリプシン(同族のPAR2作動薬)、トリプトニドおよびトリプトリドの影響を調べた。予想通り、トリプシンが血清飢餓のG0/G1 HepG2細胞におけるリン酸化ERKのレベルを2段階に増加させることが分かった。トリプトリド(Par2/PAR2拮抗薬)は、リン酸化ERKのレベルに有意な影響を与えなかった。しかしながら、驚いたことに、トリプトニドは、リン酸化ERKレベルの急激な一時的増加のみを引き起こした(図10)。したがって、ERKリン酸化に対するトリプトニドのような効果がPar2/PAR2媒介性であるという仮説を立てると、Par2/PAR2の拮抗薬でなく、トリプトニドが異常な作動薬として機能するようである。そして、トリプトニドがPar2/PAR2拮抗薬として作用することにより分裂期細胞死誘導効果を引き起こさないと結論付けられた。このような結論は、成長および/または生存について、一部の癌細胞が一見したところPar2/PAR2に「没頭」しており、これに起因してPar2/PAR2の阻害により増殖阻害を引き起こす可能性があるが、Par2/PAR2は如何なる細胞タイプの成長および生存に必要なものではない、という事実と一致している。なお、MAPK−ERKの増殖促進における役割を考えると、トリプトニドのERKリン酸化を活性化できることは、代わりに、増殖を上昇させる効果を持つはずであることが示されている。したがって、別の1種以上のタイプのトリプトニドで誘導されたPar2/PAR2媒介性効果は、Par2/PAR2発現の細胞に対する独特な分裂期細胞死誘導効果に関与するはずある。
実施例5 トリプトニドがGαs共役のPAR2信号伝達経路の最初の小分子偏向的な作動薬(小分子バイアスアゴニスト)を代表する
細胞質におけるPKA活性の上昇は、哺乳類卵母細胞と体細胞の両方でG2/M移行を抑制するための効果的なメカニズムであり、G2/M移行の長期または永続的な阻害が分裂期細胞死を引き起こすをもたらす可能性があることがすでに実証されている。PAR2活性化がGαs−AC−cAMP−PKA経路の活性化、すなわちPKA活性の上昇と共役する可能であるため、発明者らは、トリプトニドがPAR2を介してGαs共役経路を活性化し、すなわちAC−cAMP−PKA経路を活性化して細胞質のPKA活性を上昇させることにより分裂期細胞死誘導効果をもたらす、という仮説を検討した。この仮説は、次のいくつかの予測を導いた。すなわち、(1)CDK1活性化は、G2/M移行時間の前に発生しない、(2)AC−cAMP−PKA経路は活性化される、(3)細胞質のPKAのレベルは、G2/M移行の時間の前後に上昇を維持する、(4)トリプトニドの増殖阻害と分裂期細胞死の誘導効果は、AC−cAMP−PKA経路に依存する。その後、これらの予測の妥当性を調べるために、次の実験を実行した。
まず、発明者らは、未処理とトリプトニドで処理されたHepG2細胞の間にCDK1活性化の動態を比較したところ、S期、G2期を経て有糸分裂(0時間〜12時間)に入る際に、前記HepG2細胞はミモシン同期化されている。具体的には、ウエスタンブロットによりヒストンH3のリン酸化で検出することによりCDK1の活性を評価した。該実験の結果は、ミモシン同期化のHepG2細胞において、リン酸化のヒストンH3(p−H3)のレベル10時間目で急激に増加し、そして次の1時間迅速に減少する(図11)ことを示した(10時間目でのCDK1活性の急激な増加と、11時間目ので有糸分裂指数の急激な上昇と一致している(図4、データは示さず))。その一方、モニタリング期間全体を通じて、ヒストンH3リン酸化のレベルは、トリプトニド処理細胞中に極めて低いままで維持した(図11)。このように、データは、これらの細胞の大部分が4N DNA含有量を取得しており、おそらくG2に入った(図6)と思われるにも関わらず、CDK1がトリプトニドに感受性のある時に1μMトリプトニド処理細胞中に活性化されなかったこと、を示している。したがって、これらのデータは、トリプトニドがPAR2を介してGαs共役経路を活性化し、すなわち細胞質のPKA活性を上昇させることにより分裂期細胞死誘導効果を引き起こす、という前記仮説を実証している。
その後、発明者らは、トリプトニド処理が実際にAC−cAMP−PKA経路の活性化をもたらすか否かを調べた。具体的には、cAMPおよびPKA活性のレベルに対するトリプトニド処理の影響を調べた。この場合、血清によるcAMPレベルの影響を最小限に抑えるために、実験は無血清培地で行われた。ミモシン同期化の細胞には、感受性および非感受性の両方の時間(それぞれ、図4におけるミモシン処理後の2時間および4時間)でトリプトニド処理を受けた。また、対照として、非感受性時間(ミモシン処理後の4時間)で投与されたトリプシン処理およびトリプトニド処理も含まれた。トリプシンはcAMPレベルを適度で一時的に上昇させることが分かった。感受性時間(ミモシン処理後4時間)で投与されたトリプトニド処理は、トリプシン処理によって引き起こされた振幅と同様の振幅で、cAMPレベルを適度に上昇させた。その一方、ミモシン処理後2時間のトリプトニド処理は、cAMPレベル上昇の2波をもたらし、両方ともはるかに高い振幅を示した(対照よりも約4倍高い)(図12)。したがって、この予想外の発見では、トリプトニド媒介性のAC−cAMP−PKA経路活性化の異常性質、すなわちそれはcAMPレベルの1ラウンド以上の上昇をもたらするということが明らかになった。重要なことに、ミモシン放出後の4時間ではなく、2時間でトリプトニド処理を適用した場合にのみ、そのような効果が観察され、これによりこれらの効果と分裂期細胞死の誘導効果と関連付けられた。
しかしながら、重要なことは、G2/M移行の抑制を維持するために、CDK1活性に対するトリプトニドの効果が、図11に示すデータで支持されているように、G2/M移行点まで、またはそれを超えて維持される必要がある。この効果を達成する可能性のある解決策は、最初の1時間のトリプトニド処理によるAC−cAMP−PKA経路の活性化が、何らかの形でG2/M移行の頃およびその後にPKA活性レベル上昇の確立につながる可能性があることである。この可能性を調べるために、PKA活性に対するトリプトニド処理の効果を測定した。まず、無血清条件下では、トリプトニド処理後の最初の30分間内にPKA活性レベルの2波の上昇も観察された(図13)。その後、重要な問題は、通常の細胞培養条件下で適用された処理が、G2/M移行の頃(すなわちミモシン処理後約10時間)にPKA活性レベルを上昇させたか否かである。この場合、G2/M移行前、且つCDK1活性レベルが対照にピーク値に達した場合、G1/S境界で富化されたミモシン処理細胞は、通常培地中に10時間に至るまで回復させることができる(図4、図11)。対照およびトリプシン処理細胞では、PKA活性レベルが、9時間目(G2/M移行の直前)に有意に低下したことが分かった。その一方、トリプトニド処理細胞において、PKA活性レベルは、9時間目と10時間目でほとんど変化しなかった(図14)。したがって、S/G2移行点付近でのトリプトニドによる1時間の短い処理は、G2/M移行時のスケジュールと同様に、処理された細胞は数時間後にそのPKA活性レベルを低下させることができなかった。PKA活性の上昇だけで有糸分裂期間のG2/M移行を抑制するのに十分であるという以前の実証を考えると、この発見ではトリプトニドの分裂期細胞死誘導効果に対してもっともらしい解釈を提供し、かつ、これは、トリプトニドが少なくとも部分的にAC−cAMP−PKA経路の活性化により分裂期細胞死誘導効果を引き起こす、という発明者らの仮説をさらに支持した。
続いて、発明者らは、トリプトニドの増殖阻害効果または分裂期細胞死の誘導効果が、実際にGαs−AC−cAMP−PKA経路の異常な活性化によって引き起こされたか否かに関する質問を対処した。この問題に対処するために、まず、ミモシン同期化のHepG2細胞を、ビダラビン(アデニリルシクラーゼの小分子阻害剤)単独、トリプトニド単独、またはそれらの組み合わせで処理した後、増殖速度および/または分裂期細胞死の誘導効果に対する影響を調べた。ビダラビンではなくトリプトニドで処理した場合、HepG2細胞に対する有意な増殖阻害効果を示した一方、ビダラビンおよびトリプトニドで処理した場合、HepG2細胞の増殖に有意な効果を示さなかったことが分かった(図15A)。
その後、発明者らは、ミリストイル化PKA阻害剤14−22アミド細胞透過性PKA阻害剤)を使用して、同様の一連の実験を行いた。PKI阻害剤単独による処理はHepG2細胞増殖に対する有意な効果を引き起こさなかったが、トリプトニド処理はこれらの細胞に対する有意な増殖阻害効果を示した。しかしながら、PKI阻害剤とトリプトニドとの共処理は、HepG2細胞に対する如何なる有意な増殖阻害効果を引き起こさなかったことがわかった(図15B)。したがって、2種の異なる方法でAC−cAMP−PKA経路を阻害すると、トリプトニド処理での増殖阻害効果からHepG2細胞が保護された。したがって、これらのデータは、HepG2細胞に対するトリプトニドの増殖阻害および分裂期細胞死の誘導効果がAC−cAMP−PKA経路の異常な活性化によって実際に引き起こされるという観点を支持している。
また、マウス初代角化細胞に対するトリプトニドの増殖阻害効果もPar2に依存すること(図7)を考えると、トリプトニドがGαs−AC−cAMP−PKA経路の活性化を介してPar2およびPAR2の異常な作動薬として作用することによりマウスやヒト細胞の増殖阻害効果と分裂期細胞死の誘導効果を発揮することが明らかになった。発明者らの知る限り、これにより、トリプトニドがPAR2−Gαs−AC−cAMP−PKA信号伝達経路の最初の小分子作動薬として同定された。
実施例6 複数のタイプのヒト癌の細胞系の大部分は、トリプトニドに敏感である
これまで、PAR2は多くの癌細胞系および検出された多くの腫瘍タイプの大きい部分で発現していることが報告されていた。したがって、発明者らは、そのような新規な抗癌パラダイムは、HCCおよび/または他のタイプ癌の多くのケースにおける癌細胞を特異的に死滅させるために使用できるか否かを調べた。
この可能性に対処するために、発明者らは、他のHCC細胞系、他のタイプの癌に由来の細胞系、および非癌不死化/形質転換の細胞系を含む他の細胞系でもトリプトニドに敏感であるか否かを検討した。具体的には、10種のタイプのヒト癌(6つの非小細胞肺癌細胞系、5つの結腸癌細胞系、5つ中枢神経系癌細胞系、8つの黒色腫細胞系、4つ卵巣癌細胞系、4つの腎癌細胞系、2つの前立腺癌細胞系、3つの乳癌細胞系、7つ肝細胞癌細胞系、および4つの胃癌細胞系)に相当する合計51のヒト癌細胞系を分析した。51の癌細胞系のIC50は、0.41μM(NCI−H23、非小細胞肺癌細胞系)〜51.039μM(SNB−19、中枢神経系癌細胞系)の範囲である。全体の平均値は7.308μMで、HepG2の全体の平均値(7.5μM)よりもわずかに低かった(表1)。その中で、10種の癌タイプのすべてからの少なくとも1つの代表者で構成される34の系(lines)(66.7%)のID50値はHepG2の値よりも低くなっている(表1)。したがって、10種の異なる癌タイプのこれらの細胞系の大部分は、HepG2よりもさらにトリプトニドに敏感である。
総合すると、これらのデータは、来源于10タイプに由来するヒト癌の癌細胞系の大部分が、トリプトニドでの1時間処理に非常に敏感であることが実証されている。特に、66.7%の癌細胞系(検出された10タイプの癌のそれぞれからの少なくとも1つの代表者)のIC50値がHepG2より低く、初期スクリーニングおよび多くの後続実験(抗腫瘍実験を含む)に使用されるモデル細胞系を以下に説明する。
実施例7 形質転換された非癌細胞はPAR2陽性であり、トリプトニドに敏感である
上記実験には、2種の不死化細胞系(LO2、不死化肝細胞、およびGES−1、不死化胃上皮)も非癌対照細胞系として含まれていた。驚くべきことに、発明者らは、検出されたこれら2種の不死化細胞系は、両方ともトリプトニドに敏感であることに気付いた(表1)。この発見により、発明者らは、PAR2がこれらの非癌細胞で発現し、または言い換えれば、PAR2の活性化が腫瘍形成の一般的な初期イベント(early event)(または、いわゆる「ドライバーイベント」)(且つ、このため、抗癌医薬開発の望ましい標的である)を構成する可能性がある、という仮説を立てることができた。実際に、PAR2はHCC細胞系(図8)および胃癌細胞系(図16)だけでなく、調べた2種の不死化細胞系(図8、図16)においても明確に発現していることが分かった。また、予想どおり、Par2は、トリプトニド処理(図1)に耐性のある初代マウス肝細胞抽出物から検出できなかった(図8)。したがって、これらのデータは、PAR2が不死化細胞系において活性化であることが明らかに示している。不死化が細胞形質転換と腫瘍形成の初期イベントを構成するため、これは、一部の癌に対して、PAR2活性化が腫瘍形成の初期イベントであるという可能性も高めた。なお、このデータは、マウスおよびヒト細胞において、トリプトニドに対する感受性とPar2/PAR2発現との相関関係を実証した。
実施例8 トリプトニドがインビボで効果的な抗腫瘍活性を示した
前述のように、インビボで非分裂細胞がPAR2の発現を制限する状況で、独特なトリプトニド媒介性のPar2依存的に増殖細胞を死滅させることにより、発明者らは、PAR2発現の癌に対する標的抗癌治療を推進するためにトリプトニドおよび/または同様のPAR2リガンドを使用する実現可能性をさらに評価するよう促された。しかしながら、50nM低濃度のトリプトニドへの長期曝露がPAR2発現の初代マウス角化細胞に対して強力な毒性を持つことを考えると(図7)、PAR2依存的に標的サイクルの癌細胞を死滅させると共に、PAR2発現の非癌細胞に対する有意な非特異的毒性を避けるために、短期曝露の実施、すなわち所望な血漿濃度の短期持続時間とすることが不可欠である。これに関して幸いなことは、トリプトニドがげっ歯類で非常に迅速な再分布動態を示すように見えることであり、これは、経口投与後の血漿濃度の数十倍の減少と相関している。したがって、トリプトニドの潜在的な抗腫瘍活性を評価することにした。具体的には、HepG2細胞は、トリプトニドに対する感受性レベルが、試験された細胞系の66.7%よりも低く、試験されたすべてのHCC細胞系で最も低いことを示したため(表1)、HCCに対する且つ望ましくは10タイプの癌の大部分の症例を対象とする評価を提供するために、HepG2に基づく同所性異種移植腫瘍モデルにおいてヒトHCCに対するトリプトニドの抗腫瘍効果の評価を最初に選択した。
標的抗癌療法の本質は、有害な影響を最小限に抑えるかまたはまったく伴わずに所望な治療効果を得るために、癌細胞の死滅させる効果を選択的に高めることである。したがって、発明者らは、1日おきに1回のレジメンに基づくトリプトニドのマウスに対する致死量および最大耐容量(MTD)を最初に確定した。発明者らは、200mg/kgでは4日間で100%の死亡をもたらし、100mg/kgではマウスに如何なる有意な有害影響をもたらさないと発見した上で、この特定の1日おきに1回のレジメンに対する100〜200mg/kg範囲内における致死量およびMTDを確立した。同時に、トリプトニドが100mg/kgで投与されたが、各処理間に4時間おきに1日3回で投与された場合、すべての動物が4日以内死亡したことを発見した。総合すると、これらのデータでは、高すぎる用量または短すぎる間隔での過度の曝露が一般毒性のリスクを増加させる可能性があるが、適切な間隔(例えば1日おきに1回)で100mg/kgまでの高用量の反復投与は良好に許容されていることを示唆している。なお、1日おきに1回では最適なレジメンとは限らないことに注意すべきである。それにも関わらず、発明者らは、このレジメンから始め、25%のMTD値すなわち25mg/kgから始めることにした。
予備実験としては、1日おきに1回で投与するレジメンを利用し、胃内投与により、0、1、5、10、25mg/kgで担癌マウスを処理し、潜在的な有効な抗腫瘍の用量範囲を試験した。この予備実験の結果は、0mg/kg対照に比べて、1mg/kgまたは5mg/kgの処理は、腫瘍特異的信号強度の変化に有意な影響を及ぼさないが、10mg/kgの処理は、腫瘍特異的信号を減少していることを示した。その一方、25mg/kgのトリプトニドによる処理は、腫瘍特異的信号の強度を急速に低下させるだけでなく、最終的に腫瘍特異的信号をバックグラウンドレベル(データは示さず)まで低下させることができた。この予備実験の結果に基づいて、1日おきに1回25mg/kgの単回胃内投与量による処理は、効果的な抗腫瘍効果を提供するのに十分であると結論付けた。
その後、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するHepG2(HepG2−GFP)同所性異種移植腫瘍モデルを使用して全般の臨床前実験を実施した。このような場合、GFPは腫瘍特異的信号として使用され、個々の腫瘍の相対体積が評価された。30匹のマウスは、それぞれ10匹ずつ、無作為に3つの群団に分けられ、そしてビークルのみ、25mg/kg体重レベルのトリプトニド、またはソラフェニブでそれぞれ処理された。ソラフェニブは、USFDAによって承認されたHCC用の唯一の抗癌医薬である。したがって、それが含まれて陽性対照とした。結果は、ビークル対照群に比べて、ソラフェニブ処理群はすべての時点で比較的低い腫瘍特異的信号強度を示しており、腫瘍阻害性効果を明らかにした。しかしながら、処理期間全体を通して、すべての処理されたマウスには、腫瘍特異的信号が検出可能なままであり、経時的に強度が増加する傾向を示した。その一方、トリプトニド処理群は、腫瘍特異的信号強度が迅速に低下し始めることが特徴付けられた。注目すべきことに、処理開始後2週間までに10匹のマウスのいずれでも、腫瘍特異的信号はもはや検出できなかった(図17A〜17B)。図9Aに3つの群団のそれぞれについて、単一の動物の代表的な画像データを示している。また、トリプトニド処理は、動物の平均体重に有意な影響を及ぼさず(図17C)、重大な副作用がないことを示している。これらのマウスのうち6匹の剖検では、腫瘍の兆候は明らかにならず、これらのマウスからの腫瘍塊が完全にまたはほぼ完全に除去されたことが確認された。なお、残りのマウスをさらに処理せずにさらに4か月間モニターされた。この期間中に、腫瘍特異的信号が再び検出されなかった。
総合すると、これらのデータは、トリプトニドによる処理が担癌動物における腫瘍を、如何なる有害な影響を与えることなく効果的に除去したことを示している。
<考察と結論>
ヒトHCCの標的抗癌治療の候補物を同定する試みたところ、発明者らは、トリプトニドが所望な癌細胞特異的な増殖阻害効果を有することを発見した(図1)。追跡の研究によりこの特異的な増殖阻害効果は、静止状態の非分裂細胞を損傷しないと共に、マイトジェン活性化細胞に対するトリプトニドの独特な分裂期細胞死の誘導効果によるものであることが明らかになった(図2−4)。次に、トリプトニドの該独特な分裂期細胞死の誘導効果とトリプトリドの細胞死滅効果と異なっており(図4と図5)、トリプトリドは、よく研究された抗白血病/抗癌剤であり、主にG1細胞の細胞周期停止とS期細胞のアポトーシス引き起こした(図6)。培養されたマウス角化細胞では、トリプトニドのようなこの独特な効果はGPCR受容体であるPar2に依存していた(図7−8)。ナノモル範囲で1時間曝露する場合、トリプトリドではなくトリプトニドは、この独特なPar2依存効果を示した(図9)。総合すると、これらのデータは、トリプトニドを、Par2/PAR2発現の細胞における分裂期細胞死を誘導し、Par2/PAR2発現の増殖細胞を選択的に死滅させることをもたらすために使用できる独特な薬剤として定義した。
機構的に、トリプトニドは、ERKの活性化を引き起こすことができ(図10)、G1/S移行の促進と、有糸分裂開始前のCDK1活性化の阻害(G2/M移行)とを引き起こす(図11)。したがって、トリプトニドはまずG1/S移行を促進し、次にG2/M移行を遮断できる。G2/M移行に対するトリプトニドの遮断効果は、その独特な分裂期細胞死の誘導効果の原因である。具体的には、G2/M移行の前に、トリプトニドは、AC−cAMP−PKA経路の持続的活性化と、PKAの持続的高活性引き起こした(図12−14)。AC−cAMP−PKA経路の阻害は、HepG2細胞をトリプトニドの分裂期細胞死の誘導効果から保護した(図15)。したがって、トリプトニドの増殖阻害効果(分裂期細胞死によって引き起こされる)もPar2に依存することを考えると(図7)、トリプトニドの分裂期細胞死の誘導効果は、Par2/PAR2−Gαs−AC−cAMP−PKA信号伝達カスケードの作動薬効果によることが明らかになった。
総合すると、これらのデータは、トリプトニドおよび/または他のPAR2作動薬でPAR2を標的とすることによりPAR2発現の増殖細胞を選択的に死滅させることを促進する新規なパラダイムの発見につながり、前記トリプトニドおよび/または他のPAR2作動薬は、AC−cAMP−PAK信号伝達経路の異常な活性化を引き起こすために使用できると共に、PAR2陰性細胞とPAR2発現の増殖していない細胞を損傷しない。なお、個別の細胞は、トリプトニドのこのような死滅効果のみに容易に影響されるため、ERKを活性化する能力は、静止細胞の細胞周期への侵入を促進することにより、この死滅効果を高めることができる。
本発明者らは、続いて、12種の主要なタイプのヒト癌を代表するヒト癌細胞系のコレクションからの少なくとも1種の細胞系がHepG2よりも敏感が高いことを発見した(表1)。なお、すべての被検胃癌細胞系でPAR2発現が検出された(図16)。総合すると、これらのデータは、PAR2発現がこれらすべての主要なタイプのヒト癌の少なくとも1つのサブセットの共通特徴であることを明らかにしている。したがって、癌細胞の選択的死滅を促進する新規なパラダイムは、これらすべての癌タイプに適用可能である。したがって、トリプトニド−PAR2パラダイムは、多くの、またはおそらくすべてのタイプのヒト癌の癌細胞の死滅を促進するために適用できる。
興味深いことに、PAR2が被検の2種の不死化細胞系のいずれにも発現していることを明らかにし、PAR2発現の獲得が多くの癌の初期イベントであることをさらに示唆している(図8と図16)。言い換えれば、PAR2はPAR2発現の腫瘍のすべての細胞に共通する特徴であり、且つ、標的化された抗癌治療法を開発するための優れた標的である。
注目すべきなのは、臨床前実験に由来の結果、トリプトニド単剤療法が同所性異種移植肝腫瘍モデルに対する治癒効果をもたらすことを示した。驚くべきことに、最大非致死量よりも4倍低い(最大非致死量を4倍下回る)薬用量で治癒効果を達成することができる。総合すると、これらのデータでは、治療効果のために、トリプトニドを使用して癌細胞を選択して有効に死滅させるために使用されると共に、有害な副作用がほとんどないかまったくないことが実証される。注意すべきなのは、HepG2がトリプトニドの平均値IC50(IC50:7.509μM)を有し、検出された68%の癌細胞系よりも高く(表1)、トリプトニドまたはその機能的等価物が潜在的に多くのタイプの癌における治療に使用できる可能性があることが明らかにした。
興味深いことに、S/G2(またはおそらくG1/Sともする)移行周辺のHepG2細胞に対する1μMトリプトニドでの1時間曝露により、有糸分裂のタイミングと一致する時間範囲内で分裂期細胞死を引き起こした。注目すべきなのは、そのような独特な細胞死メカニズムは、PAR2発現の細胞の周期における細胞部分のみへの損害を制限した。PAR2が主にヒトの非周期における有糸分裂期後の細胞に発現しているため、これにより、如何なる非癌細胞(PAR2発現の非周期における細胞を含む)に如何なる有意な有害な影響を及ぼさなく、トリプトニドまたはPAR2に対する同じ独特な効果を持つ他の医薬がPAR2発現の周期における癌細胞の特異的死滅を実施するために使用する可能性は示された。したがって、総合すると、発明者らで得られたデータは、トリプトニドによって媒介される形態でのPAR2の非古典的活性化が、標的抗癌療法を開発するための新規な候補パラダイムを構成することを確定した。
標的抗癌療法のための癌細胞特異的死滅を達成するために、特異的な、偏向的なまたは異常な作動薬でPAR2を標的とする概念は、これまで報告されていない。また、それは、抗癌効果のために、GPCRを標的する有効性を表す第1の例である。そして、発明者らの知る限り、本発明は、さらにPAR2−AC−cAMP−PKA信号伝達経路の小分子作動薬の同定のための最初の開示を構成した。
トリプトニドがそのような独特抗癌特性を持っているという発見は、発明者らにとって大きな驚きであった。驚くべきことに、発明者らのデータは、トリプトリドとトリプトニドがHepG2細胞におけるERKリン酸化と、Par2ノックアウトの角化細胞の増殖および生存とに有意に異なる効果を示すことを明確に示している。したがって、トリプトリドの抗腫瘍活性がトリプトリドの非癌細胞の特異的細胞の通常の毒性によるものであることをよく知られているが、本明細書に記載のトリプトニドのPAR2依存性細胞毒性の独特なモードと標的抗腫瘍活性について以前に報告されていない。
なお、PAR2が明らかに不死化LO2細胞系で発現されたからである(興味深いことに、不死化細胞系GES−1にも発現している)ため、不死化細胞系(例えば、LO2)ではなく培養の初代マウス肝細胞の使用がこの発見で重要であることはすでに実証された。注目すべきことは、通常の連続曝露方式で適用した場合、トリプトニドは如何なる有意な癌細胞死滅上昇効果を示さなかった。意外的には、発明者らの初期実験において、非癌対照としての初代培養のマウス肝細胞の使用と、1時間医薬処理スキームと組み合わせた独特スクリーニング戦略を採用することにより、発明者らは、初代培養のマウス肝細胞とその癌の対応物と推定されるHepG2細胞に対するトリプトニドの異なる効果を非常に幸運で発見した。
該医薬の潜在的なオフターゲット細胞毒性効果を考えると、最大耐容量より4倍低い(最大耐容量を4倍下回る)用量でトリプトニドに基づく処理を行って完全な治癒結果をもたらすというその後の発見について、本当に驚きであった。細胞表面受容体を標的とする医薬が所望な標的に対して高度に特異的である場合、および/または細胞表面受容体を標的とする医薬がその所望な標的への近接を制限する薬物動力学特性を持っている場合、それはこのような標的のみに対する有害な効果を示す可能性がある。このような場合、げっ歯類では、トリプトニドが、腹腔内注射で投与した場合、非常に短いT1/2α(0.17−0.195時間)およびT1/2β(約4.95−6.49時間)を有することを注目に値する。また、トリプトリドの固有の一般的な細胞毒性にも関わらず、トリプトリドの抗癌活性に大きな関心が寄せられていることも注目に値する。しかしながら、抗腫瘍活性の有効用量と、一般毒性の最小用量との間の非常に狭い範囲が、抗癌医薬としての臨床応用への主な障害を代表する可能性があることは、ますます明らかになっている。その一方、トリプトニドは一般的な細胞毒性(すなわち、PAR2と関係のない毒性)の点で効力が比較的低いのみならず、例えば迅速な再分布/代謝および急速なクリアランスのような非常に独特な薬物動力学特徴も持っている。これらの独特な特徴は、PAR2(細胞表面受容体の1つ)を標的するための、標的抗癌療法によりPAR2発現の癌細胞を選択的に死滅させるための薬物としての別の所望な特性であることが実証されるかもしれない。
その他化合物または生物学的薬剤を使用して、同様にPAR2依存的に増殖細胞を死滅させることを引き起こす可能性がある。興味深いことに、以前の研究では、トリプトリドがPAR2依存機能の有効な阻害剤であるを示したが、発明者らのデータは、トリプトニドがPAR2の異常な活性剤(アクチベーター)として作用することでPAR2依存性死滅を引き起こすことを示唆している。
振り返って見れば、多くのタイプの臓器/組織にわたるいくつかの細胞タイプでのPar2の広範な発現を考えると、Gαs−AC−cAMP−PKAに対するPAR2作動薬による処理の発見では、すべてのこれらのPAR2発現の細胞におけるPKA上昇を引き起こすと予想される。したがって、発明者らのデータは、これらのマウス細胞におけるPKA活性のアップレギュレーションが明らかに十分に許容されるように見えるという認識にもつながっている。そのような特徴は、他の多くの細胞タイプに共通している可能性があり、マウスとヒトの間で保存される可能性がある。これに関して、治療効果のために、ヒト癌細胞で発現される他のGPCR受容体を利用して癌細胞の有効な死滅を促進できると共に、容易に制御するまたは主な有害な副作用がない可能性があると予測することは、合理的である。同様に、トリプトニドと同様の方式で、癌細胞におけるPKA活性を上方制御するために使用できる他の成分は、抗癌効果のために潜在的に使用される可能性がある。
なお、トリプトニドおよび/またはその機能的類似体と、他の薬物または免疫療法を含む形態(モダリティ)と組み合わせて新規な抗癌治療戦略を開発できる可能性が非常に高いである。
要約すると、発明者らの研究によれば、トリプトニドによるPAR2 GPCR受容体の活性化を介したPKA活性の持続的な上昇が、標的抗癌療法の新規な戦略として使用できることを支持した。発明者らは、この戦略をすでに成功裏に開発して実施し、トリプトニドと、PAR2に同様の効果をもたらす他の化合物または生物製剤と、それらの自体あるいはそれらと他の薬剤および/または形態(モダリティ)との併用療法を使用するようになり、個別的抗癌療法を開発するための概念実証を提供した。
複数種類の異なる方式でPKA活性の持続的な上昇を潜在的に達成できるため、PKAの上昇は一般的な抗癌パラダイムとして活用できる。特に、多くのGPCR受容体は、Gαs−AC−cAMP−PKA信号伝達カスケードと共役しており、一部はいくつかのヒト癌で発現している。通常の生理学的条件下で、個別GPCR受容体は、その相同リガンドの活性化により高度に制御された方法で通常PKA活性を上方制御しているが、そのようなGPCR受容体の一部の偏向的なリガンドは、PKA活性の持続的活性化を引き起こす可能性が残っており、トリプトニドによるPAR2の活性化に類似している。したがって、治療効果のために、そのような偏向的なGPCRリガンドは、癌細胞を選択的に死滅させることを促進するためにも使用できる。これに関して、本明細書に記載の、細胞生物学レベルでトリプトニドの効果を検出する方法は、分裂期細胞死の誘導効果を引き起こすために使用できる新規な薬剤(トリプトニドの機能的類似体を含む)の同定において有用であることが実証される。このような機能的アッセイおよび関連する方法は、臨床設定における患者の選択をガイドするために使用できるコンパニオン診断テストの開発に重要な用途がある。
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明したが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範囲内において、各種の変更または修正に想到し得ることは明らかであり、本明細書に記載の発明の精神から逸脱することなく、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと理解される。
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Claims (15)

  1. 対象における過剰増殖性障害、好ましくは癌を治療または予防するための方法であって、プロテインキナーゼAの活性化を引き起こすことができる、治療または予防有効量の薬剤、好ましくは、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、あるいはトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が前記対象に投与されることを含む、方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、前記治療は、癌細胞、好ましくは、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)の増殖細胞を選択的に死滅させることを含む、および/または、前記予防は、悪性転化前および/または悪性転化部位に発現するPAR2の細胞を選択的に死滅させることを含む、方法。
  3. トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む、必要に応じて、プロテインキナーゼAの活性化を引き起こす1種以上のその他薬剤をさらに含む、医薬組成物。
  4. 請求項3に記載の医薬組成物であって、対象における過剰増殖性障害、好ましくは癌を治療または予防するための、医薬組成物。
  5. 請求項3に記載の医薬組成物であって、対象における癌細胞、好ましくはPAR2の発現する増殖細胞を選択的に死滅させるために用いられる、医薬組成物。
  6. 請求項3〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、薬学的に許容される剤形、好ましくは、経口液剤、カプセル剤、散剤、錠剤、顆粒剤、丸剤、シロップ剤、注射剤等に製剤化される、医薬組成物。
  7. プロテインキナーゼAの活性化を引き起こすことができる薬剤、好ましくは、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、あるいはトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の、対象における過剰増殖性障害、好ましくは癌を治療または予防するための医薬の調製における使用。
  8. 請求項7に記載の使用であって、前記医薬は、経口、皮下、筋肉内または腹腔内を介して投与される、好ましくは、前記医薬は経口投与される、使用。
  9. 前記癌は、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、非小細胞肺癌、胃癌、卵巣癌、腎癌、前立腺癌、中枢神経系癌および黒色腫からなる群より選ばれる、請求項1または2に記載の方法、請求項4〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物、あるいは請求項7または8に記載の使用。
  10. 対象における免疫応答関連障害の治療もしくは予防、および/または疼痛制御のための方法であって、治療または予防有効量のトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、あるいはトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が前記対象に投与されることを含む、方法。
  11. トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、あるいはトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の、対象における免疫応答関連障害の治療もしくは予防および/または疼痛制御のための医薬の調製における使用。
  12. PKAの持続的活性化を引き起こすことができる薬剤を同定する方法であって、候補薬剤の分裂期細胞死の誘導効果を評価することを含む、方法。
  13. 請求項12に記載の方法であって、前記候補薬剤は分裂間期に投与される、方法。
  14. 請求項12または13に記載の方法であって、前記候補薬剤は、数分間〜数時間での短期治療として投与される、方法。
  15. PAR2発現の増殖細胞においてPKAの持続的活性化を誘導する方法であって、トリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩、あるいはトリプトニドまたはその機能的等価物もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、前記細胞に接触させることを含む、方法。
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