授乳が実行される場合、乳児の吸引パターンがMERを引き起こすが、乳腺ポンプが用いられる必要がある場合、適切な吸引パターンの欠如のために、射乳がうまくいかないか又は効果的とならない場合がある。射乳を支援するため、国際特許出願公開WO00/57934A1の教示は、胸部からの母乳の流れの開始を検出するため、受容ユニットのなかにセンサを配置することを提案している。該センサの信号はこのとき、マイクロプロセッサに送り戻され、該マイクロプロセッサが、「開始」から「終了」までそれぞれの吸引パターンを変更する。
しかしながら、該センサは、受容ユニットの結合端と光学的に通信するよう配置され、即ち、MERは検出されることができず、センサの近くの受容ユニットを通る流体の流れが検出されたときに射乳が検出されるに過ぎない。乳腺と該センサとの距離のため、母乳の流れの検出、従って吸引パターンの調節が遅れてしまう。更に、例えば汗や、先行する胸部又は受容ユニットの洗浄による水のような、他の流体が存在する場合には、誤った測定結果が生じ得る。
国際特許出願公開WO2017/080851A1は、ユーザの胸部を内部に受容するための乳房シールドと、胸部に入力信号を送信し、それに応答した、胸部における母乳の流れの変化を示唆する、対応する受容信号を受信するためのセンサと、を有する、搾乳器のための乳房シールドを開示している。
欧州特許出願公開EP2277571A1は、搾乳器のユーザから生理学的な応答を検出し、該検出された生理学的な応答に依存して該搾乳器の動作における変化を引き起こすよう構成された感知ユニットを有する装置であって、該感知ユニットは、該搾乳器の漏斗型部から離隔された配置された装置を開示している。
本発明の目的は、遅延なく、高い正確さで、胸部における母乳の流れの開始、即ちMERの出現の直接的な検出を可能とするシステムを提供することにある。
第1の態様によれば、射乳反射の決定のためのシステムが提供される。該システムは、女性の第1の乳房に装着されるよう構成された、搾乳器のための乳房シールド構成と、第2の乳房から生理学的受容信号を受信するための、生理学的センサユニットと、を有する。前記生理学的受容信号は、前記第2の乳房における流体の量を示す。 前記システムは、前記第2の乳房における流体の量における変化に基づいて、射乳反射を決定するよう構成される。該第1の乳房(乳房シールド構成による射乳が該第1の乳房を用いて実行されるため以下においては授乳乳房とも呼ばれる)は斯くして、第2の乳房(乳房シールド構成が装着されず、例えば対応する時間においては射乳のために用いられないため以下においては非授乳乳房とも呼ばれる)とは反対の乳房である。射乳のための乳房シールド構成が2つの乳房のうちどちらに装着されるかに依存して、女性の左及び右の乳房がそれぞれ第1及び第2の乳房となり得ることは明らかである。
MERに対応する、乳房組織における母乳の流れの開始は有利にも、母乳が実際に乳房組織の外部で検出可能となる前であっても、乳房組織の流体量における変化を直接に検出することにより、決定される。更に、生理学的センサユニットは、授乳乳房ではない、即ち乳房シールド構成が装着されておらず、授乳乳房即ち第1の乳房とは反対側の乳房に対応する、第2の乳房から生理学的受容信号を受信するため、生理学的受容信号は、例えば搾乳器からの機械的な動きにより引き起こされるノイズの影響を受けない。従って、得られる生理学的受容信号は、高い精度を持つMERについての情報を導出する。該生理学的受容信号は、動き及び最初のMER並びに射乳の間に生じる全ての更なるMERによって変化させられず、高い正確さで検出されることができる。更に、MERが直接に決定されるため、吸引パターンが遅延なく、従って母乳が実際に乳頭から流れ出す前に、調節されることができる。
一実施例においては、前記生理学的センサユニットは、非授乳乳房に入力信号を送信し、それに応じて対応する生理学的受容信号を該非授乳乳房から受信するよう構成される。有利にも、該生理学的センサユニットの測定精度は、測定原理に依存して、入力信号を送信することにより増大させられ得る。しかしながら、該生理学的センサユニットの測定原理に依存して、該生理学的センサユニットは、生理学的受容信号を受信する前に送信された入力信号に依存するか、又は依存しないこととなり得る。
一実施例においては、前記生理学的センサユニットは、乳房の皮膚と接触して配置されるか又は特に1cmよりも短い距離において皮膚の近傍に配置されるよう構成された、接触型の光電脈波(PPG)センサを有する。
接触型のPPGセンサは広く知られており、低コストで利用可能である。PPGセンサは、特定の波長を持つ単一のLEDか、又は好適には400nm乃至1300nmの範囲内の異なる波長の組み合わせを持つ複数のLEDを有しても良い。接触型のPPGセンサは、標準的な有線又は無線接続を用いて、射乳決定のためのシステムの残りの部分に接続されても良い。好適には、該接触型のPPGセンサは、該乳房シールド構成が反対側の乳房に装着されている間に、ユーザにより非授乳乳房と接触するよう保持される。他の実施例においては、該接触型のPPGセンサは、ユーザが支える必要なくPPGセンサが乳房に装着されたまま保つための、適切な装着手段を有しても良い。これにより、使用の利便性が更に向上させられ得る。
以下において議論される接触型のPPGセンサ及び更なる又は代替の測定センサの全ては、生理学的受容信号の非侵襲的な痛みのない決定を可能とすることは、留意されるべきである。
一実施例においては、前記センサユニットは、更に又は代替として、レーザスペックルセンサ、熱センサ、及び生体インピーダンスセンサのうち少なくとも1つを有する。これら測定手法のそれぞれは、生理学的受容信号の正確で簡単な受信を可能とするが、本発明はこれらの測定手法に限定されるものではなく、代替の又は付加的な手法が当業者により想到可能である。
一実施例においては、前記生理学的センサユニットは、特にカメラのような、リモートの光電脈波センサを有する。
リモートのPPGセンサ(rPPG)は、接触型のPPGセンサと同様に、PPG受信信号の決定を可能とし、rPPGセンサは、ユーザの乳房から大きな距離をおいて備えられることができる。好適には、rPPGセンサは、両方の乳房を感知し、2つの感知された乳房のうちの非授乳乳房を決定するよう構成される。より正確には、好適にはカメラであるrPPGセンサは、一実施例においては、両方の乳房の画像を取得し、2つの撮像された乳房のうちの非授乳乳房を決定する。好適には、この目的のために、例えば該乳房シールド構成又は授乳乳房における乳児の頭部を認識することによる、非授乳乳房を認識する画像認識アルゴリズムが用いられても良い。
一実施例においては、前記生理学的センサユニットは、レーザスペックル撮像(LSI)、熱撮像等を実行するよう構成された、特にカメラのような、撮像要素を有する。換言すれば、利用可能である場合には、接触測定手法の代わりに又はこれに加えて、リモート感知手法の形をとるあらゆる測定手法もが実装されても良い。この点に関してのバリエーションは当業者に良く知られている。
一実施例においては、前記生理学的センサユニットは、スマートフォンに内蔵されている。
好適には、スマートフォンに内蔵された前記生理学的センサユニットは、例えば該スマートフォンのカメラ又は専用のPPGセンサを利用する。スマートフォンを生理学的センサユニットとして用いることは、ユーザがスマートフォンを用いることに慣れている点、及びハードウェアの付加的な装置又はユニットに対する必要性が生じない点、といった利点を持つ。代替の実施例においては、前記生理学的センサユニットは勿論、該乳房シールド構成又は該システムの他の要素内に内蔵されていても良い。
一実施例においては、前記システムは更に、搾乳器を有する。前記搾乳器は、母乳を抽出するため前記乳房シールドにおいて増大させられた又は低下させられた圧力を生成するための、前記乳房シールドに空気導通的に接続された圧力源と、前記生理学的センサユニットからの前記生理学的受容信号に基づいて前記圧力源を制御するための制御ユニットと、を有する。
前記圧力源は、MERの正確な決定を可能とする前記生理学的受容信号に基づいて制御されるため、該搾乳器の周波数及び真空強度が、乳児の自然な吸引パターンをより正確に模倣するよう制御されることができる。例えば、より高い周波数及びより低い真空強度で乳頭を刺激した後、MERが生じる。MERに続いて母乳が流れ出し、乳児がより低速なペース及び増大させられた真空強度で吸引することとなる。授乳の間に複数のMERが生じ、乳児は更なるMERを刺激し、それに応じて吸引パターンを調節することが可能である。斯くして、該圧力源を制御するために該生理学的受容信号を用いて、搾乳器のより自然な動作が実現され得る。
一実施例においては、該システムは、前記生理学的受容信号を解析し、前記生理学的受容信号の解析に基づいて前記圧力源の機能の調節のための調和フィードバック信号を生成するための、信号処理ユニットを更に有する。
一実施例においては、前記信号処理ユニットは、特にPPGセンサ又はrPPGセンサの、前記生理学的受容信号の交流(AC)成分及び直流(DC)成分を解析し、特に乳房におけるMERによる流体の増大のような、乳房におけるバルク吸収の変化についての情報を有する、前記生理学的受容信号のDC成分を評価し、前記圧力源の機能の調節のための調和フィードバック信号を生成するよう構成される。
信号のDC成分は、受信信号から得ることが容易であり、簡単な手段により解析されることができる。
一実施例においては、前記信号処理ユニットは、所定の閾値に対する前記DC成分の値の比較により、乳房における流体の増大を検出するよう構成される。
前記閾値は、較正測定値から選択されても良いし、又は女性の母集団の特定の割合に対する医学的な評価から選択されても良い。
これに加えて又は代替として、例えば約5%の増大のような、特定の割合の増大が、乳房における流体の増大、従ってMERの出現と解釈されても良い。これに加えて又は代替として、ユーザ及び/又は周囲の特定の境界条件が考慮に入れられても良く、例えば乳房サイズ、母乳抽出の大小等が考慮に入れられても良い。しかしながら、これらの選択肢は勿論、MERを検出するための適切な閾値又は分類を決定するための単なる例であり、他の実装も同様に当業者により想到可能である。
一実施例においては、前記信号処理ユニットは更に、特に心拍数についての情報のような、生体信号(vital sign)についての情報を有する、前記生理学的受容信号のAC成分を評価するよう構成される。該生体信号は、ユーザの精神状態を制御するために用いられても良く、必要な場合に提案又は有用な助言が該生体信号に基づいて生成されても良い。
一実施例においては、該システムは更に、前記システムのユーザに対する情報、ガイド及び提案を担持するためのユーザインタフェースを有する。このことは、該搾乳器を使用しているときに、ユーザが急いでいる場合、不安である場合又は痛みを感じる場合に、特に有用となり得る。例えば、これらの障害のいずれもがガイドにより制御された呼吸へと緩和され、射乳反射の誘引及び効果的な母乳の抽出を支援するリラックスした状態へと導き得る。
好適には、該ユーザインタフェースは、スマートフォンにおける生理学的センサユニットと一体化されても良い。スマートフォンの汎用性のため、殆ど制限のないユーザインタフェースが提供され得る。更に、スマートフォンの広い利用可能性のため、付加的なハードウェアコストを含む専用のユーザインタフェース装置が提供される必要がない。
一実施例においては、前記信号処理ユニットは更に、特に心拍数についての情報のような、生体信号についての情報を有する、前記受容信号のAC成分を評価するよう構成され、前記信号処理ユニットは更に、前記AC成分に含まれる心拍数情報を含むフィードバック信号、及び/又は前記交流成分の心拍数情報の解析に基づく提案又はガイドを生成し、前記フィードバック信号を前記ユーザインタフェースに送信するよう構成される。
一実施例においては、該システムは更に、ユーザにより提供されるフィードバックに基づいて、MERの決定を修正するための、決定修正ユニットを有する。
MERの決定は、母集団のうち多くの割合について非常に正確なものとなり得るが、特定の個人については正確でないか又は全く動作しない場合もあり得る。本実施例においては、ユーザにより提供されるフィードバックに基づいて、該システムが個々のユーザについてのMERの出現を教示されることができ、該提供されるフィードバックに基づいて決定を修正することができる。好適には、母乳が流れているのをユーザが見たときに、例えばボタン等を押下することによってユーザインタフェースにフィードバックが入力されても良い。これにより、MERの決定が、全ての個人について、より正確に提供されることができる。
更なる態様においては、MERを決定するための方法が提供される。該方法は、女性の第1の乳房に乳房シールド構成を装着するステップと、前記第1の乳房とは反対側である第2の乳房から生理学的受容信号を受信するステップであって、前記生理学的受容信号は、前記第2の乳房における流体の量を示すステップと、前記第2の乳房における流体の量における変化に基づいてMERを決定するステップと、を有する。
該乳房シールド構成は、例えば搾乳器とともに用いられる乳房シールド構成、又は女性の乳頭を保護するためのもののような授乳のために用いられる乳房シールド構成といった、本分野において知られたいずれの種類の乳房シールド構成であっても良い。
本発明による方法は有利にも、以上のシステムに関して説明された実施例のいずれもと組み合わせられ得る。有利にも、本方法を用いるMERは、乳児の授乳の間のような、システムの使用とは独立して決定され得る。MERは第2の乳房から得られた生理学的受容信号に基づき決定され、第1の乳房における機械的な動きが第2の乳房から得られる受容信号に悪影響を及ぼさないため、MERは高い精度で決定されることができる。
更なる態様においては、MERを決定するためのコンピュータプログラムが提供される。該コンピュータプログラムは、処理ユニットに、母乳が抽出される第1の乳房とは反対側である、女性の第2の乳房から、前記第2の乳房における流体の量を示す生理学的受容信号を受信させ、前記第2の乳房における流体の量の解析に基づいてMERを決定させるためのプログラムコード手段を有する。
好適には、該コンピュータプログラムは、例えばAppストア等を介してダウンロード可能であり、ユーザのスマートフォンにおいて実行されても良い。しかしながら、その他の配布、記憶等の手段も当業者には明らかである。好適な実施例においては、該コンピュータプログラムは、生理学的受容信号に応答して搾乳器の機能を制御するための付加的なプログラムコード手段を有する。それにより、該搾乳器の動作は、母親が母乳の抽出に集中し自身で動作を起こす必要なく、改善されることができる。
請求項1のシステム、請求項14の方法及び請求項15のコンピュータプログラムは、特に従属請求項に定義されたような、類似する及び/又は同一の好適な実施例を持つことは、理解されるべきである。
本発明の好適な実施例は、従属請求項又は対応する独立請求項による以上の実施例のいずれの組み合わせであっても良いことは、理解されるべきである。
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明される実施例を参照しながら説明され明らかとなるであろう。
図1は、本発明による射乳反射(MER)の決定のためのシステム100の第1の実施例を模式的及び例示的に示す。システム100は、搾乳器2のための乳房シールド構成1を有する。乳房シールド構成1は、ユーザの乳房を受容するよう構成された漏斗型の乳房シールド3を有する。乳房シールド3は、ポリウレタン又はシリコーンのようないずれの適切な弾力性材料から形成されていても良い。乳房シールド3は本分野において一般に知られているため、一般的な形態及び機能についての更なる詳細な説明はここでは必要ではないと思われる。
本発明によれば、システム100は、非授乳乳房、即ち乳房シールド3が装着されるべき乳房とは反対の乳房に入力信号を送信し、応答して対応する生理学的受容信号を受信するよう構成された、生理学的センサユニット4を有する。生理学的センサユニット4の実装例は、図2A及びBを参照しながら、以下に説明される。
乳房シールド構成1は、接続端7を介して圧搾キット5に接続される。圧搾キット5は、乳房シールド3が接続される受容部6を有する。受容部6は、ユーザの乳房から搾出された母乳を受け、該母乳を同様に受容部6に接続された容器8に導く。受容部6においては、例えば制御された吸引機能を実現する弁アセンブリ(図示されていない)のような、該搾乳器の動作に必要な更なる構成要素が収容されていても良い。
搾乳器2は更に、真空源10への空気導通接続部9を有する。真空源10は、本実施例においては圧力源の一例として用いられ、受容部6における少なくとも1つの弁アセンブリにより支援されて、乳房シールド3に負圧をかけるよう構成される。代替としては、該少なくとも1つの弁アセンブリは、真空源10の筐体又は空気導通接続部9に配置されても良い。
真空源10は、機械的ポンプ又は電気ポンプのような、いずれの適切なポンプ機構であっても良い。
搾乳器2は更に、真空源10と動作可能に相互作用する制御ユニット11を有する。制御ユニット11は、好適には生理学的センサユニット4から受信された非授乳乳房に関する信号に応じて、真空源10の機能を制御するよう構成される。
好適には、該搾乳器は更に、例えば(図1に示されるように)制御ユニット11の一部として又は別個の構成要素として、信号処理ユニット13を有する。好適には、信号処理ユニット13は、生理学的センサユニット4から信号を受信し、該信号に含まれる情報を評価し、真空源の機能の適合のためのフィードバック信号を生成する。
更に、スピーカ、振動信号ユニット又は光学的ディスプレイのいずれか又は組み合わせであっても良いユーザインタフェース12が、制御ユニット11と接続されて備えられても良い。ユーザインタフェース12は、以下に詳細に説明されるように、システム100のユーザに情報を提供する。
ここで図2A及び2Bを参照すると、システム100の生理学的センサユニット4の2つの実施例が示されている。図2Aにおいては、生理学的センサユニット4は、非授乳乳房、即ち乳房シールド3が装着される乳房とは反対の乳房に接触させられる、PPGセンサを有する。図示されたPPGセンサは、有線で制御ユニット11に結合されているが、他の実施例では無線接続も想到され得る。射乳反射(MER)の出現は、本実施例においては、PPGセンサ信号から得られ、好適には授乳乳房のための搾乳器2の設定における変更、即ち「開始」から「終了」への吸引パターンの変更を引き起こす。該PPGセンサは好適には、1つのLEDを有し、他の実施例においては、好適には400nmと1300nmとの間の範囲内の種々の波長の組み合わせが利用される複数のLEDを有する。
図2Bは、他の実施例を模式的及び例示的に示し、ここでは生理学的センサユニット4が、好適には非授乳乳房のリモートのPPG(rPPG)信号である、生理学的信号を取得するためのカメラ40を有する。カメラ40は、スマートフォン50等に含まれる外部カメラであっても良いし、又は例えばシステム100の乳房シールド3に内蔵されたカメラであっても良い。好適には、該rPPG信号はこのとき、非授乳乳房の記録された画像から抽出される。この目的のため、好適には、非授乳乳房から授乳乳房を区別するため、搾乳器のヘッド部及び/又は乳児を認識するためのアルゴリズムが備えられる。好適には、搾乳器2は、該アルゴリズムによって非授乳乳房から授乳乳房を区別することを容易化する、例えば光のような信号を発しても良い。
図2Bの例においては、ユーザインタフェース12もまた、スマートフォン50に内蔵される。この目的のため、スマートフォン50は、無線接続55を介して、システム100の制御ユニット11と通信する。
図2A及び2Bを参照すると、生理学的センサユニット4により得られたPPG信号が、生理学的信号の例として開示されているが、他の実施例においては、MERの決定に導く生理学的信号を検出するために異なる手法が用いられても良い。斯かる更なる手法は、生体インピーダンス、レーザスペックル及び熱感知のような、接触ベースのものであっても良い。これに加えて又は代替として、該手法は、レーザスペックル撮像及び熱撮像を含む、非接触ベースのものであっても良い。本実施例においては、搾乳器2の制御の全体が、例えばスマートフォン50において動作するアプリに内蔵されていても良い。従って、生理学的センサユニット4は、測定原理に依存して、熱感知の場合におけるように、生理学的受容信号を直接に決定しても良いし、又はPPGの場合におけるように、非授乳乳房への入力信号の送信の後に該送信に依存して決定しても良い。
システム100は、単一の乳房シールド3を有するものとして記載されたが、他の実施例においては、1つの乳房シールド3と両乳房のための対応するポンプ構成とも想到され得る。本実施例においては、乳房が真空源10からの真空にさらされ、生理学的センサユニット4が反対側の乳房に信号を入力する。従って、両乳房が母乳の搾出のために用いられている場合にも、正確なMER決定が実行されることができる。例えば、生理学的センサユニット4は、2つの乳房シールド3のそれぞれの内側又は外側面に配置されても良い。
対向する乳房に装着されるべき2つの乳房シールド3の実施例については、スマートフォン50が有するカメラ40の例のような、単一の生理学的センサユニット4が利用されても良い。
代替として又はこれに加えて、それぞれが2つの乳房のうち一方に向けられた2つの生理学的センサユニット4が利用され、2つの乳房シールド3のそれぞれを備えられても良い。この場合、対応する生理学的センサは、それぞれの乳房シールド3が装着された乳房に入力信号を送信しても良いし、又は反対側の乳房に送信しても良い。これに依存して、生理学的センサのそれぞれは、対応する乳房シールドの搾乳器2とともに動作しても良いし(即ち生理学的センサが反対の乳房に向けられている場合)、又は、例えば対応する搾乳器2が動作していない場合、その反循環的なものであって良い(即ち生理学的センサが同じ乳房に向けられている場合)。
生理学的センサユニット4が光学センサを有する場合、乳房シールド3の材料が半透明である場合、又は各生理学的センサが反対の乳房に向けられている場合、外側面における配置が可能である。ユーザの損傷の危険又は生理学的センサの損傷の危険が最小化されるため、外側面における配置が好適となり得る。
代替としては、該生理学的センサは、乳房シールド3の材料に組み込まれていても良い。ここで「組み込まれて(embedded)」とは、乳房シールド3の凹部における該生理学的センサの構成であって、該凹部が乳房シールド3の少なくとも1つの面に開いているか、又は該乳房シールドの材料に完全に被覆された、生理学的センサの構成を意味する。後者は、例えば金型成形又は鋳造により実現され得る。
生理学的センサが乳房シールド3の内側面に配置される場合、好適には、該生理学的センサを囲み、該生理学的センサをユーザの皮膚から離隔する、センサパッドが含まれる。当該付加的なセンサパッドの背景は、ユーザの皮膚に直接に配置される生理学的センサは、皮膚に対する該生理学的センサの圧力のため、バイアスがかけられた測定値に持ち引き得るという観察である。該センサパッドの厚さは、該生理学的センサがユーザの皮膚のごく近くにとどまるよう、十分に小さいべきである。好適には、該生理学的センサとユーザの皮膚との間の距離は、1cmよりも小さく、特に好適には0.5cmよりも小さい。該センサが感知する特定の乳房が、例えば真空源10による真空圧にさらされない限りにおいてのみ、それぞれの生理学的センサが動作させられることは、留意されるべきである。
示唆されているように、生理学的センサユニット4は好適には、光学センサ、特に光電脈波(PPG)センサを有する。PPGセンサは本分野においては知られており、特に血液の酸素飽和度の測定のために用いられている。本発明の理解を容易化するため、PPGセンサの測定原理が以下に手短に説明される。
例えば発光ダイオードのような少なくとも1つの光源は、それぞれの身体部分の組織に導かれる光を発する。通常、測定のためには、指の先端又は耳たぶのような身体の薄い部分が利用される。これらの場合には、該光源からの光は、身体の組織全体を通過し、光源と光検出器との間の身体部分を挟んで該光源とは反対側に配置された、少なくとも1つの光検出器により検出される。該組織を通過させられる光の量は、光検出器により測定され、該光源から発せられた光と比較される。これらの値の間の差が、バルク吸収及びそれぞれの組織の流体量についての尺度である。これにより、該組織を流れる血液における酸素飽和度が算出されることができる。該飽和度が高いと、バルク吸収及び流体量における差により、低い飽和度に比べて発せられた光の量が異なることとなる。
乳房シールド構成1及び搾乳器2を含むシステム100の場合には、組織の量が完全に照射するには大き過ぎるために、乳房の組織を通して、光源とは反対側に配置された検出器にまで光を通すことができない。この場合には、光は組織へと発せられ、該組織において反射された光の量が検出器により測定される。斯くして、生理学的センサユニット4は好適には、互いに隣接した少なくとも1つの光源と少なくとも1つの光検出器とを有し、該光源は乳房組織に光を送り、該検出器は乳房組織において反射させられた光の量を検出する。
従って、反射させられた光の量は、乳房組織における流体量の度合いの変動に伴って変動する。一方では、乳房組織は血液を供給され、他方では、最近出産した女性の乳房組織は母乳を生成し、該女性が子どもに授乳することを可能とする。斯くして、乳房組織における母乳の流れが、乳房組織の流体量における変化により検出可能となる。
乳房から射乳を開始するためには、いわゆる射乳反射(MER)が誘発される必要がある。該誘発は通常、授乳中の女性の乳頭における子どもの吸引動作により引き起こされる。この吸引動作により、血液にホルモンのオキシトシンが放出され、乳房組織における受容細胞により検出されると、射乳を引き起こす。授乳中の女性の場合、乳房から放出される母乳は、子どもの異なる吸引動作に導く。授乳中の女性が授乳を控えさせられ、その代わりに搾乳器2により母乳を集める必要がある場合、射乳は通常、搾乳器2のユーザにより直接に監視される必要がある。先行技術は単に、乳房組織の外の母乳の流れの存在を検出する搾乳器を提供しているのみである。これらの搾乳器においては、搾乳器の機能の利用において、誤った測定及び遅延が観察される。
本発明による搾乳器2は、生理学的センサユニット4の使用により、乳房の外での射乳が検出される前であっても、乳房組織における射乳の開始の直接の検出を提供する。斯くして、圧力源10は、射乳の開始に対して直接に反応することができる。搾乳器2は、生理学的センサユニット4によって射乳が検出されるまで、特定の吸引圧力及び吸引頻度で動作させられる。乳房組織における流体量の変化により受信された信号は、制御ユニット11に送られ、信号処理ユニット13により解析され、吸引方式を変更するため真空源10にフィードバックされる。
信号の解析のためには、既知の手法が用いられる。光検出器により検出された信号は、AC成分とDC成分の2つの成分に分離され、含まれる情報について種々の成分が解析される。これら成分の模式的な図は、参考のため図3に示されている。
図3は、AC及びDCを含む、例えばPPG信号の典型的な信号シーケンスを模式的に例示して示す。AC成分は主に、特に心拍数のような生体信号についての情報を含む。DC成分は、乳房組織におけるバルク反射についての情報を含む。比AC/DCは変調と呼ばれ、心拍数の逸脱に対して用いられる量を百分率で反映する。
搾乳器2のための乳房シールド構成1を有する本発明のシステム100については、DC成分が重要な測定値である。射乳が開始すると、乳房組織における流体の量が、乳房組織が血液のみを供給されている通常の状態に比べて増大する。信号の増大は、両方の流体、即ち血液及び母乳の存在を反映する。
図4は、DC成分における検出可能な増大を模式的且つ例示的に示し、ここでは非授乳乳房から生理学的信号を決定する有利な効果が明らかに示されている。図4は、生理学的センサユニット4に起因する信号シーケンス400を示す。比較のため、授乳乳房から同時に得られたものである信号シーケンス410も示されている。それぞれの生理学的信号の強度が縦軸にIとして示され、時間が横軸に示されている。信号シーケンス400のDC成分における明らかな増大が、時間Tにおいて見られる。この増大は、乳房組織における流体量の変化、及びそれに起因する光の異なる吸収である。信号シーケンス400におけるこの急上昇は、生理学的センサユニット4により検出可能であり、例えば真空源10の吸引モード又はパターンを制御するために用いられることができる。
授乳乳房に比べて非授乳乳房を用いることの利点は、信号シーケンス410を更に詳細に解析することにより明らかとなる。真空源10のサイクルは、生理学的信号の強度に影響を与え、このことは信号シーケンス410の周期的なピーク420により表されている。ピーク420に導く搾乳器により生成されるノイズは、MERによるDCの急上昇よりも大きくなり得、生理学的センサユニット4が授乳乳房から生理学的受容信号を決定する場合には、MERを検出することを困難にする。その代わりに、信号シーケンス400に見られるように、非授乳乳房の生理学的受容信号は、ノイズがないため、よりきれいな信号に導く。一例においては、MERは、DC成分の絶対値又は絶対値の変化において、超過される必要がある境界又は閾値を用いることにより、検出されることができる。例えば、5%のDC値の増大、及び/又はユーザ特有又は環境特有の境界値を用いることが、利用されても良い。ユーザ特有の値及び/又は環境値は、例えば乳房サイズ、以前のポンピングサイクルからの較正測定値、及び基準対象等を含んでも良い。
好適には、MERが決定された場合、搾乳器2の動作が自動的に制御される。斯くして、搾乳器2のユーザは、射乳が開始したことを該ユーザが感じたときの自己鑑定に対して動作する必要はなく、単に決定されたMERに応答した搾乳器2の自動化された動作に頼るだけで良い。
生理学的センサユニット4は、必ずしも通常のPPGセンサを有する必要はなく、特定の距離から動作するリモートのPPGセンサであっても良く、例えばスマートフォン50のカメラ40として実装されても良い。これに加えて又は代替として、生理学的センサユニット4はまた、接触型又は撮像型のレーザスペックル干渉計、接触型又は撮像型の生体熱センサ、生体インピーダンスセンサ、又はMERが決定されることができる生理学的信号を決定するための更なる適切な手法を有しても良い。しかしながら好適には、重要な値、即ちDC成分における増大が、言及されるセンサタイプの値に存在する。
図1を参照しながら既に述べられたように、制御ユニット11に接続されたユーザインタフェース12が存在しても良い。ユーザインタフェース12は、例えばスピーカ、振動ユニット及び/又はディスプレイを有しても良い。ユーザインタフェース12は、特に生理学的センサユニット4により検出された信号の上述したAC成分から導出された情報のような情報を、搾乳器2のユーザに供給するのに適したものである。該信号のAC成分は主に、例えば心拍数のようなユーザの生体信号についての情報を有し、ストレスの緩和のためのフィードバックを生成するために用いられても良い。有利な実施例においては、ユーザインタフェース12は、スマートフォンに一体化され、制御ユニット11に無線接続されていても良い。
初めて授乳する若い女性は、搾乳器2を利用するときに不安となり神経質になることが多い。従って、これらのユーザの心拍数は高くなり、精神的状態を反映する。他方、この神経質さは、胸部から母乳を抽出しようとするとき悪い結果に導き得る。制御ユニット11の信号処理ユニット13は、DC成分に加えて該信号のAC成分を解析し、該成分に含まれる有用な情報をユーザインタフェース12を介してユーザに供給しても良い。例えば、特別な呼吸法によって心拍数を低下させることを支援するための推奨が生成され、ユーザに提示されることも可能である。該呼吸法が成功した場合、心拍数の低下が更にユーザにフィードバックされ、ユーザの快適さ及び安心感を改善する。ストレスの緩和は一般に、母乳の流量を増大させることを支援し、斯くして抽出量を改善し得る。
搾乳器2の正確な機能を更に改善するため、例えば圧搾キット6又は空気導通接続部9において、例えば流量センサの形をとる、第2のセンサを配置することも可能である。該流量センサにより、母乳の抽出の時間及び量についての更なる測定値が得られ、例えば生理学的センサユニット4の受信信号及び該付加的な流量センサからの信号に基づいて該搾乳器のための制御信号を生成することにより、搾乳器2の機能を制御するために用いられることができる。
本発明の更に他の実施例は、負圧又は吸引を胸部に印加する真空ポンプの代わりに、正圧ポンプと組み合わせた該センサの利用である。このことは空気導通部の乳房シールドへの異なる接続を必要とし得るが、本発明により提供されるセンサは同じ又は同様の測定機能及び同様の結果を伴って利用され得る。
本発明は図面及び以上の記述において説明され記載されたが、斯かる説明及び記載は説明するもの又は例示的なものとみなされるべきであり、本発明は開示された実施例に限定されるものではない。図面、説明及び添付される請求項を読むことにより、請求される本発明を実施化する当業者によって、開示された実施例に対する他の変形が理解され実行され得る。
請求項において、「有する(comprising)」なる語は他の要素又はステップを除外するものではなく、「1つの(a又はan)」なる不定冠詞は複数を除外するものではない。単一のプロセッサ又はその他のユニットが、請求項に列記された幾つかのアイテムの機能を実行しても良い。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に利用されることができないことを示すものではない。
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又は固体媒体のような適切な媒体上で保存/配布されても良いが、インターネット又はその他の有線若しくは無線通信システムを介してのような、他の形態で配布されても良い。
請求項におけるいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。