1.概要
製薬及びバイオテクノロジーの分野では、薬物/APIのポリマー粒子への封入が必要であることが多い。例えば、薬物は、長時間作用型の持続放出のためのラクチド−グリコリドコポリマー、PLGAなどの、生分解性ポリマーのミクロスフェアに封入することができる。市販品の例として、ロイプロリドアセタート、エクセナチド、リスペリドン及びナルトレキソンのPLGA又はPLAミクロスフェアが挙げられる。
ミクロスフェア製剤に加えて、標的薬物送達のために薬物分子をポリマーナノ粒子に封入することもでき、標的薬物送達は、特定の部位、細胞、臓器及び受容体に薬物を送達することを含む。ナノ粒子への薬物の封入は、標的薬物送達を様々な方法で容易にすることができる。例えば、ナノ粒子は、「血管透過性・滞留性亢進効果(Enhanced Permeability and Retention Effect)」、即ちEPR効果を利用して、腫瘍組織に薬物を送達することができる。EPR効果は、特定の分子又は粒子が、正常組織よりもはるかに多く腫瘍組織に蓄積する傾向があるという特性である(Matsumura and Maeda,Cancer Research.46(12 Pt 1):6387−6392,1986;Duncan and Sat,Ann.Oncol.9,Suppl.2:39,1998;Kaye,et al.Clinical Cancer Research.5(1):83-94,1999)。
標的薬物送達は、最初に薬物をナノ粒子中に封入し、続いてナノ粒子の表面に標的化剤を付着させることによっても達成され得る。ほとんどの場合、表面への標的化剤の付着は化学的コンジュゲーションを介して行うことが必要である。通例、そのようなコンジュゲーションは、標的化剤とナノ粒子の表面上の適切な反応基との間の化学反応を含む。一般的な反応基としては、カルボキシル、アミノ、チオール、アルデヒド、マレイミド、エポキシド及び無水物が挙げられる。
ポリラクチド(PLA)、PLGA、PCL及び他のいくつかの生分解性及び生体適合性ポリマーが、多種多様な用途のためのAPIの封入に使用されてきた。米国FDAが承認した数多くの製品が、PLGA粒子に封入された薬物分子を主成分としている。
そのような装填ポリマー粒子の表面特性は、標的薬物送達にとって非常に重要である。考慮する必要がある薬物装填粒子の表面特性に関して、少なくとも以下の2つの態様がある。
1)表面電荷−特定の薬物送達用途それぞれについて、粒子表面は正、負又は中性である必要があり得る。ゼータ電位は特定の範囲内にある必要があり得る。
2)表面の官能基−薬物装填粒子の表面に生物学的物質又は標的化剤をコンジュゲート可能にするために、カルボキシル、アミノ、チオール、アルデヒド、マレイミド、グリシジル及び無水物などの官能性反応基を表面に付加することが必要である。
場合により、1つの解決策で両方の目的を達成できる。例えば、カルボキシル基を薬物装填ポリマー粒子の表面に付加して、同時に表面に負電荷及び官能基を生成することができる。
本明細書に記載の発明は、マイクロ粒子及びナノ粒子を含む医薬製剤(薬物/API装填あり又はなし)並びに医薬的に許容される成分のみを使用して、カルボキシル基の高い表面密度及び高い負の表面電荷を有するマイクロ粒子及びナノ粒子を含む、そのような医薬製剤を製造可能な改良方法を提供する。
本発明は、PLGA又はPLAなどの疎水性及び/又は中性生体適合性ポリマーとポリアクリル酸などのポリアニオン性ポリマーとの共沈又はコアセルベーションから製造されるマイクロ粒子及びナノ粒子が、粒子表面にアニオンを高密度で供給するという発見に一部基づいており、それにより高装填量で有効成分を封入する能力によって免疫原性特性を改善する。いかなる理論にも縛られることなく、ポリマー主鎖はエマルジョンの有機相中で絡み合い、この間に親水性アニオンはエマルジョン液滴の表面に有利に作用すると考えられる。このようにして形成された相互連結網状構造によって、さもなければ水溶性のポリアニオン性ポリマーを洗い流すことができない粒子を生じ、同時に封入に有利な疎水性微小環境が保存される。
本発明は、本発明の方法を、例えば1グラム、3グラム、5グラム、10グラム、50グラム、100グラム、200グラム、300グラム、500グラム、800グラム、1kg又はそれ以上の医薬的に許容されるポリマー、例えばPLGAを使用する、医薬的に許容される負に帯電した薬剤(例えばポリアクリル酸(PAA)及びヒアルロン酸(HA)のような)の存在下での、ナノ粒子の大規模製造に利用する場合、製造された粒子は、本質的に同じ成分を使用する、他の点は比例しているが、より小規模(例えば1グラム未満又は0.5グラム未満のPLGA)製造と比べて、より高度に負に帯電した表面(ゼータ電位によって測定)を有するという、驚くべき発見に一部基づいている。
このため、一態様において、本発明は、負の表面電荷を有する乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)マイクロ粒子又はナノ粒子を含む組成物の調製方法を提供し、前記方法は、(1)1グラム以上のPLGAを第1の溶媒に溶解させて、PLGA溶液を形成するステップ、(2)ポリマー溶液を第2の溶媒の溶液中に乳化させて、エマルジョンを形成するステップであって、第1の溶媒が第2の溶媒と混和性でないか、又は部分混和性であり、第2の溶媒の溶液が、ポリアクリル酸(PAA)及びヒアルロン酸(HA)からなる群から選択される医薬的に許容される負に帯電した薬剤を含む、ステップ、並びに(3)第1の溶媒を除去して、負の表面電荷を有する前記マイクロ粒子又はナノ粒子を形成するステップを含む。
関連する態様において、本発明は、負の表面電荷を有する乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)マイクロ粒子又はナノ粒子を含む組成物の調製方法を提供し、前記方法は、(1)1グラム以上のPLGAを第1の溶媒に溶解させて、ポリマー溶液を形成するステップ、(2)少量の第2の溶媒の第1の溶液をポリマー溶液に添加して、混合物を形成するステップであって、第1の溶媒が第2の溶媒と混和性でないか、又は部分混和性であり、第2の溶媒の第1の溶液が医薬品有効成分(API)を任意に含む、ステップ、(3)混合物を乳化させて、第1のエマルジョンを形成するステップ、(4)第1のエマルジョンを大量の第2の溶媒の第2の溶液中に乳化させて、第2のエマルジョンを形成するステップであって、第2の溶媒の第2の溶液がポリアクリル酸(PAA)及びヒアルロン酸(HA)からなる群から選択される、医薬的に許容される負に帯電した薬剤を含み、任意に界面活性剤をさらに含む、ステップ、(5)第1の溶媒を除去して、負の表面電荷を有する前記マイクロ粒子又はナノ粒子を形成するステップを含む。
本明細書で使用する場合、「少(量)」は、第1の溶媒中のポリマー溶液中で、第2の溶媒の第1の溶液の乳化によって、エマルジョン(即ち、第1のエマルジョン)が形成され、連続相がポリマー溶液であるように、PLGAポリマーを有する第1の溶媒の体積と比較して、第2の溶媒の第1の溶液の量/体積が比較的少ないことを示す。通例、少量の第2の溶媒の第1の溶液と第1の溶媒との間の体積比は、約1:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100である。
本明細書で使用する場合、「大(量)」は、第2の溶媒の第2の溶液中の第1のエマルジョンの乳化によって、エマルジョン(即ち、第2のエマルジョン)が形成され、連続相が第2の溶媒の第2の溶液であるように、第1のエマルジョンの体積と比較して、第2の溶媒の第2の溶液の量/体積が比較的大きいことを意味する。通例、第1のエマルジョンと大量の第2の溶媒の第2の溶液との間の体積比は、約1:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100である。
好ましくは、大規模製造は、約−40mV以下、約−45mV以下又は約−50mV以下のゼータ電位を有するマイクロ粒子又はナノ粒子を生じる。
本発明の方法の使用により、医薬的に許容される負に帯電した薬剤は、製造されたマイクロ粒子又はナノ粒子に堅固に組み入れられている。したがって、好ましくは、医薬的に許容される負に帯電した薬剤は、前記マイクロ粒子又はナノ粒子に包含されて、前記マイクロ粒子又はナノ粒子上の負の表面電荷を上昇させる。好ましくは、医薬的に許容される負に帯電した薬剤は、前記マイクロ粒子又はナノ粒子に包含されて、前記マイクロ粒子又はナノ粒子の表面のCOOH基の数を増加させる。
マイクロ粒子又はナノ粒子への医薬的に許容される負に帯電した薬剤の包含は安定かつ堅固である。このため、好ましくは、方法は、前記マイクロ粒子若しくはナノ粒子を洗浄すること及び/又は前記マイクロ粒子若しくはナノ粒子を所望の体積まで濃縮することをさらに含む。
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本出願人は、カルボキシル基の存在に主に又はもっぱら起因し得る負の表面電荷が、前記マイクロ粒子及びナノ粒子の表面に堅固に固定され、このため、そのような負の表面電荷及び/又はカルボキシル基の著しい損失を被ることなく、各種の洗浄条件又は洗浄試験に耐えられると考えている。
本発明の方法を使用して製造したマイクロ粒子及びナノ粒子は、不純物を除去する、並びに/又はそのように製造されたマイクロ粒子及びナノ粒子を濃縮する精製工程の一部として、日常的に洗浄を行ってよい。
本発明の方法を使用して製造されたマイクロ粒子及びナノ粒子は、負の表面電荷及び/又はカルボキシル基のマイクロ粒子及びナノ粒子への安定的な包含を確実にするために、例えば品質管理工程の一部として、より厳格な洗浄試験を受けることもある。
好ましくは、洗浄試験は、例10に例示されたものと同一又は類似の条件を使用する。好ましくは、洗浄試験後、マイクロ粒子及びナノ粒子は、ゼータ電位によって測定される負の表面電荷を著しく失わない(例えば、著しくより小さい負、つまり元の負の値より0に近い負の値にならない)。
好ましくは、洗浄後、マイクロ粒子又はナノ粒子は、ゼータ電位によって測定すると、少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%又は99%の負の表面電荷を保持している。
上記で一般に説明した本発明を用いて、本発明の具体的な態様を以下の節でさらに説明する。
2.定義:
本明細書で使用する場合、「医薬的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を引き起こすことなく、ヒト及び動物の組織と接触したときの医学的又は獣医学的使用に好適であり、合理的な利益/リスク比に見合った、化合物、材料、組成物及び/又は剤形を含む。好ましくは、医薬的に許容される材料(例えば、それから製造されるポリマー又はマイクロ粒子/ナノ粒子)は、ヒトの医学用途に好適であるか又は承認されている。
本明細書で使用する場合、「マイクロ粒子」は、おおよそ円形、球形又は球形様の形状であり、一般に、例えば約1〜1,000μmの間又は約10〜100μmの大きさの範囲内である。主題のマイクロ粒子は、インビボで凝集しにくい粒子も含み得る。
本明細書中で使用する場合、「ナノ粒子」は、おおよそ円形、球形、又は球形様の形状であり、一般に、例えば約1〜1,000nm、約10〜1,000nm又は約50〜1,000nm又は約100〜500nmの大きさの範囲内である。主題のナノ粒子は、インビボで凝集しにくい粒子を含み得る。
粒径及び粒度分布は動的光散乱装置、例えばMalvern Zetasizerによって測定することができる。別の技術としては、例えば沈降場流動分画法、光子相関分光法、光散乱法、動的光散乱法、光回折法及びディスク遠心分離法が挙げられる。「マイクロ粒子」及び「ナノ粒子」という用語は、いかなる特定の形状の限定も伝えることを意図するものではない。そのような粒子は、一般的に多面体又は球形の形状を有するものを含むが、これらに限定されない。好ましい粒子は、通例、エマルジョン系封入方法によって製造された球形の幾何学的形状を特徴とする。「マイクロ粒子」及び「ナノ粒子」という用語は、大きさの具体的な説明を伴わない限り、本明細書では互換的に使用されることが理解される。例えば、「マイクロ粒子」という用語は、文脈で別途求められない限り、「マイクロ粒子及び/又はナノ粒子」と記載されているかのように、「ナノ粒子」も包含することを意図している。
各マイクロ粒子又はナノ粒子は、大きさが均一である必要はないが、粒子は一般に抗原提示細胞(APC)又は他のMPS細胞において食作用を誘発するのに十分な大きさである。好ましくは、主題のマイクロ粒子及びナノ粒子は、抗原提示細胞(APC)又は他のMPS細胞において食作用を誘発するのに十分な直径を有する。
本発明により、マイクロ粒子又はナノ粒子は負(表面)電荷を有する。カルボキシル化マイクロ粒子及びナノ粒子上の負電荷密度は、「ゼータ電位」によって定量化することができる。負の表面電荷を有するマイクロ粒子及びナノ粒子のゼータ電位は、通例、粒子の水性懸濁液中で4〜10、好ましくは5〜8のpHにて測定される。好ましくは、本発明の方法によって製造されたマイクロ粒子又はナノ粒子は、約−5mV〜約−200mV、好ましくは約−15mV〜約−100mV、最も好ましくは−35mV〜85mVのゼータ電位を有し得る。約−40mVよりも負のゼータ電位は、本明細書では「高度に負に帯電した粒子」と呼ぶ。
本明細書で使用する場合、「約」は一般に、修飾されている特定の用語の最大±10%を意味する。
主題のマイクロ粒子及びナノ粒子に包含される負電荷は、例えばカルボキシラート、スルホナート、ニトラート、フルオラート、クロリド、ヨージド、パーサルファート及び他の多くの負に帯電した化学基の形態であることができ、最も好ましいのはカルボキシラートである。このため、好ましくは、負電荷は主に、大部分又はもっぱらカルボキシル基によって付与される。カルボキシル基は、PLGA、ポリアクリル酸及び/又はヒアルロン酸由来であり得る。
正味の負の表面電荷を有する主題のマイクロ粒子又はナノ粒子は、正の表面電荷を多少含んでも含まなくてもよい。
負の表面電荷は、ゼータ電位の測定によってなど、当分野において既知の任意の技術を用いて測定することができる(例を参照のこと)。
3.PLGA
PLGAは通例、ラクチドとグリコリドの開環重合によって調製される。この反応では、触媒としてスズオクトアートが通常使用されるが、他の触媒も使用され得る。アルコールなどの開始剤が重合反応を開始するためによく使用される。意図的に開始剤を添加しない場合、微量の、アルコール及び水などの活性プロトンを含有する極性化合物が開始剤として作用し得る。下記のように、重合により、鎖末端にカルボキシル基を有するPLGAポリマーが通常得られる。
R−OH+L(ラクチドモノマー)+G(グリコリドモノマー)=PLGA−COOH
したがって、各PLGAポリマー分子は通例は直鎖状であり、通例は鎖末端にCOOH基を1個含有する。その結果、そのようなPLGAポリマーから調製した、従来のPLGA粒子は表面に少量のCOOH基のみを有し、その負電荷は、炎症性疾患の処置などの、ある種の用途には十分ではない場合がある。さらに、API又は他の化学的部分、例えばタンパク質リガンド若しくは他の標的化剤の前記マイクロ粒子及びナノ粒子の表面への共有結合に十分な数のCOOH基が存在しない場合がある。そのようなタンパク質リガンド又は他の標的化剤は、標的細胞、組織、臓器又は位置の表面の受容体又は結合パートナーに結合し得る。
本発明は、PLGA粒子表面に追加の負に帯電した基(例えばカルボキシル基)を有するPLGA粒子を製造するための、各種の方法又はその組合せを提供する。正味の負の表面電荷が増加したそのようなPLGA粒子は、例えばある疾患(例えば炎症性疾患)を処置し、API又は他の化学物質のマイクロ粒子及びナノ粒子へのコンジュゲーションを促進するために特に有用である。
好ましくは、医薬的に許容されるポリマーPLGAの平均分子量は、所望の範囲内にある。
範囲の下限は、好ましくは約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1500、2000、2500又は3000Da以上である。所望の範囲は、上記の値のいずれかの下限を有する。
範囲の上限は、好ましくは50,000、40,000、35,000、30,000、25,000、20,000、15,000、10,000、7,500又は5,000Da以下である。所望の範囲は、上記の値のいずれかの上限を有する。
例えば、所望の範囲は、約500〜約50,000Da又は約1,000〜約30,000Daであり得る。
好ましくは、PLGAは、約500〜約1,000,000Da、好ましくは約1,000〜約50,000Daの平均分子量を有する。
好ましくは、PLGAは複数の負に帯電した末端基を含む。
PLGAの場合、平均分子量は、固有粘度などの他の物理的特性で表すことができる。固有粘度(IV)は、分子サイズを測定するための粘度測定法である。IVは、毛細管を通過する純粋溶媒の流動時間に対する、毛細管を通過するポリマー溶液の流動時間に基づく。本出願における確実な測定のために、使用される溶媒は通例クロロホルムであり、ポリマー濃度は約0.5%(重量/体積)である。粘度の測定温度は約30℃である。IVの単位は、通例、デシリットル/グラム(dL/g)で示す。このため、例えば本発明において使用されるPLGAは、約0.01〜約20dL/g又は約0.05〜約2.0dL/gの固有粘度を有し得る。
主題のPLGAポリマーの組成及び生分解性は、ポリマー中のラクチド(L)単位のグリコリド(G)単位に対するモル比、即ちL/G比によって一部求められる。本発明におけるPLGAポリマーのL/G比は、100/0〜0/100であることができる。本明細書で使用する場合、「100/0」のL/G比はポリラクチド、即ちPLAを示し、「0/100」のL/G比はポリグリコリド、即ちPGAを示す。好ましくは、PLGAポリマーのL/G比は、約100/0〜0/100又は約95/5〜5/95、より好ましくは約85/15〜15/85である。本発明における最も好ましいL/G比は、約50/50である。
PLGAマイクロ粒子及びナノ粒子の調製において、他のポリマーをPLGAポリマーと混合することができる。例えば、ポリエチレングリコール、即ちPEGは、性能を向上させるためにPLGAに添加されることが多い。PEG化粒子は、ヒト又は動物の体内で循環時間が長くなることが多いため有用である。
好ましくは、PEGとPLGAの共重合体も使用することができる。
PEGとPLGAの混合物又はPEGとPLGAの共重合体から調製したマイクロ粒子及びナノ粒子は、PEG化PLGAマイクロ粒子及びナノ粒子と呼ばれる。
そのような「PEG化」工程は、マイクロ粒子及びナノ粒子が形成された後に行うこともできる。この場合、PEGポリマー又はPEG単位を含有する他のポリマーは、PLGAマイクロ粒子及びナノ粒子への物理的吸収によってコーティングされている。
PEG単位は、共有結合を介してPLGAマイクロ粒子又はナノ粒子の表面に結合することもできる。そのような工程は「コンジュゲーション」と呼ばれることが多い。コンジュゲーション工程において、PEG単位を含有する反応性物質は、マイクロ粒子及びナノ粒子の表面の特定の官能基と反応して化学結合を形成する。
このため、好ましくは、医薬的に許容されるポリマーはPLGAであり、マイクロ粒子又はナノ粒子はPEG化されている。マイクロ粒子又はナノ粒子は、マイクロ粒子及びナノ粒子の調製中にポリエチレングリコール(PEG)又はPEG含有物質を混合することによって、PEG化され得る。マイクロ粒子又はナノ粒子は、PEGとPLGAとの共重合体を使用することによってもPEG化され得る。マイクロ粒子又はナノ粒子はさらに、PEGポリマー又はPEG単位を含有するポリマーをPLGAマイクロ粒子及びナノ粒子に物理的に吸収させることによって、さらにPEG化することができる。マイクロ粒子又はナノ粒子は加えて、共有結合を介してPLGAマイクロ粒子又はナノ粒子の表面にPEG単位をコンジュゲートさせることによってPEG化され得る。
4.向上した負表面を有するナノ粒子又はマイクロ粒子の製造
本明細書に記載の発明は、高度に負の表面電荷を有する粒子を調製するための、いくつかの基本的な方法を提供する。これらの方法は相互に相容れないものではなく、互いに組合されて相加的効果又は相乗的効果さえ生じ、高度に負に帯電した表面を有するマイクロ粒子及びナノ粒子を製造し得る。
このため、一態様において、本発明は、負の表面電荷を有するマイクロ粒子又はナノ粒子を含む組成物の調製方法であって、エマルジョン工程又は沈殿工程(好ましくは、ダブルエマルジョン工程を含むエマルジョン工程)のどちらかを使用して、医薬的に許容されるポリマー(例えばPLGA)によってマイクロ粒子又はナノ粒子を製造することを含み、以下に記載される任意の1つ以上の特徴又はその組合せを含む、方法を提供する。
具体的には、本発明の方法の1つの特徴は、医薬的に許容されるポリマーのイオン化を促進するpHを有する水溶液中で、エマルジョン工程又は沈殿工程を行うことを含む。例えば、医薬的に許容されるポリマー(例えばPLGA)は、塩基性pHにてイオン化される(例えば負電荷を帯びる)カルボキシル基を含み得る。別の例において、医薬的に許容されるポリマー(例えばPLGA)は、化学的部分であって、この化学的部分が比較的酸性のpH(例えばpH5又は6)にてイオン化されるように低いpKaを有する化学的部分を含み得る。
特定の理論に縛られることを望むものではないが、イオン化基又は部分は、その非イオン化形態と比較して、本発明の方法を使用して調製した、最終的に形成されたマイクロ粒子又はナノ粒子の表面により暴露される傾向があり、最終的に形成されたマイクロ粒子又はナノ粒子の内部に埋没しにくい傾向がある。
本発明の方法の他の特徴は、低い平均分子量を有する医薬的に許容されるポリマー(例えば低平均MW PLGA)を使用することを含む。本明細書に記載するように、PLGAは、通例、触媒としての第1スズオクタアート及び開始剤としてのアルコールを使用して、ラクチド及びグリコリドの開環重合によって調製される。重合は通常、鎖末端に1個のカルボキシル基を有する直鎖状PLGAポリマーを生じる。このため、より低い分子量又はより短いポリマー鎖を有するPLGAポリマーを使用することによって、ナノ粒子及びマイクロ粒子において、比較的高いカルボキシル基密度を達成することができる。ここで、カルボキシル基密度は、ポリマー1グラム当たりのカルボキシル基の数として定義することができる。
本発明の方法のさらに別の特徴は、複数の(即ち、2以上、≧2、≧3、≧4、≧5、≧10、≧20、≧50、≧75、≧100又は記載された2つの値のいずれかの間の範囲など)潜在的に負に帯電した末端基を含む、医薬的に許容されるポリマー(例えばPLGA)の使用を含む。好ましくは、複数の負に帯電した末端基は、カルボキシル末端基である。
複数のカルボキシル基を含有するポリマーは、以下を含む、様々な手段によって得ることができる:1)ポリマーの調製時にカルボキシル官能性開始剤を使用すること。一般的なカルボキシル官能性開始剤としては、α−ヒドロキシル酸が挙げられるが、これに限定されない。例えば乳酸、グリコール酸、2)カルボキシル含有成分をポリマー鎖にグラフトすること、3)化学反応によりPLGAポリマーの他の官能基をカルボキシル基に変換すること。例えば、ヒドロキシル基を無水物(例えばジヒドロフラン−2,5−ジオン)と反応させることによって、PLGAポリマーのヒドロキシル基がカルボキシル基に変換され得る。例示的な反応は以下のスキームに示す:
及び4)例えば複数のカルボキシル基を分子上に含有する開始剤を使用することによって得た、複数のカルボキシル含有アームを含有する超分岐PLGAポリマーを使用すること。
各(PLGA)ポリマーのカルボキシル基の数は、好ましくは1〜100、より好ましくは2〜10(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)である。
本発明の方法は、本明細書に記載の任意の1つ以上の特徴を含むことができる。
当分野で認識されているいずれのエマルジョン工程も、本発明の方法で使用され得る。好ましくは、主題のマイクロ粒子及びナノ粒子(例えばPLGAマイクロ粒子及びナノ粒子)は、以下のステップ(必ずしもこの順序ではない):1)医薬的に許容されるポリマー(例えばPLGA)を第1の溶媒(例えばメチレンクロリド)に溶解させて、ポリマー溶液を形成するステップ、2)ポリマー溶液(例えばPLGA溶液)を第2の溶媒の溶液(例えば水溶液又は有機溶媒)中に乳化させて、エマルジョンを形成するステップであって、第1の溶媒が第2の溶媒と混和性でないか、又は部分混和性であり、第2の溶媒の溶液が、ポリアクリル酸(PAA)及びヒアルロン酸(HA)などの医薬的に許容される負に帯電した薬剤を任意に含む、ステップ、並びに3)第1の溶媒を除去して、負の表面電荷を有するマイクロ粒子又はナノ粒子を形成するステップ
を含む乳化工程によって調製することができる。
好ましくは、少なくとも1つのAPIがナノ粒子又はマイクロ粒子中に存在し、エマルジョン工程は、(1)第1の溶媒(例えば有機溶媒)中に前記少なくとも1つのAPI及び医薬的に許容されるポリマー(例えばPLGA)を溶解させて、ポリマーAPI溶液を形成するステップ、(2)ポリアクリル酸(PAA)及びヒアルロン酸(HA)などの医薬的に許容される負に帯電した薬剤を、溶解させた界面活性剤又は表面安定剤を任意に含む第2の溶媒(例えば水溶液)に溶解させるステップ、(3)ポリマー−API溶液を前記第2の溶媒/水溶液中に乳化させるステップ、並びに(4)溶媒蒸発法又は溶媒交換法などによって、第1の有機溶媒を除去するステップを含む。
好ましくは、乳化工程において、PLGA溶液と水溶液との重量比は、通例1:1,000〜10:1、好ましくは1:100〜1:1である。
本明細書で使用する場合、混和性(miscibility)は、液体があらゆる割合で混合し、均一な溶液を形成する特性であると定義される。物質/液体は、ある割合でそれらが溶液を形成しない場合、非混和性である又は混和性でないと言われる。
水と混和性である例示的な溶媒としては、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)が挙げられる。
当分野で認識されている別のエマルジョン工程は、ダブルエマルジョン工程として一般に既知であり、ダブルエマルジョン工程は、水溶液中で調製されるタンパク質系治療薬などの医薬品有効成分(API)が最初に医薬的に許容されるポリマー溶液で乳化されて、タンパク質系治療薬がポリマー溶液中に封入されるように第1のエマルジョンを形成する場合に特に有用であり得る。次いで、マイクロ粒子又はナノ粒子が形成される前に、ポリマー及びポリマー中に封入された治療薬をより大量の溶媒中で再度乳化させて、第2のエマルジョン(例えば水中油中水型又はw/o/w型ダブルエマルジョン)を形成する。
例えば、上記のw/o/w技術では、比較的少量の第2の溶媒の第1の溶液(例えばタンパク質水溶液)(例えば有機溶媒の約20%、15%、10%、5%体積/体積)が、疎水性ポリマーPLGAを溶解するメチレンクロリド又はエチルアセタートなどの比較的大量の第1の溶媒(例えば有機溶媒)中に導入され得る。次いで、適切な方法、例えばプローブ音波処理又はホモジナイゼーションを使用して、第1のエマルジョンを形成する。第1のエマルジョンの形成後、第2のエマルジョンは、第1のエマルジョンを、例えばポリビニルアルコールのような乳化剤を含む、より大量(例えば第1のエマルジョンの約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、10倍)の第2の溶媒の第2の溶液中に導入することによって形成する。ここでもホモジナイゼーション法を使用して第2エマルジョンを形成する。この次には溶媒蒸発の期間が続いて、通例数時間撹拌することによって、ポリマーの硬化につながる。結果として、タンパク質溶液は、PLGAポリマーの比較的疎水性のマトリックス中に捕捉されて、小さな封入物を形成する。最後に、形成されたマイクロ粒子又はナノ粒子を回収し、遠心分離又は濾過を反復して(例えば蒸留水で)洗浄した後、通例は凍結乾燥によって脱水する。
このため、好ましくは、主題のマイクロ粒子及びナノ粒子(例えばPLGAマイクロ粒子及びナノ粒子)は、以下のステップ(必ずしもこの順序ではない):
1)医薬的に許容されるポリマー(例えばPLGA)を第1の溶媒(例えばメチレンクロリドなどの有機溶媒)に溶解させて、ポリマー溶液を形成するステップ、2)比較的少量(有機溶媒の量に対して、例えば約20%、15%、10%、5%体積/体積)の第2の溶媒の第1の溶液をポリマー溶液中に添加して、混合物を形成するステップであって、第1の溶媒が第2の溶媒と混和性でないか、又は部分混和性であり、第2の溶媒の第1の溶液が医薬品有効成分(API)を任意に含む、ステップ、3)混合物を乳化させて、第1のエマルジョンを形成するステップ、4)第1のエマルジョンを、より大きな体積(第1のエマルジョンの例えば約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、10倍)の第2の溶媒の第2の溶液中に乳化させて、第2のエマルジョンを形成するステップであって、第2の溶媒の溶液がポリアクリル酸(PAA)及びヒアルロン酸(HA)などの医薬的に許容される負に帯電した薬剤を任意に含み、さらに界面活性剤を任意に含む、ステップ、並びに5)第1の溶媒を除去して、負の表面電荷を有する前記マイクロ粒子又はナノ粒子を形成するステップを含む、ダブル乳化工程によって調製することができる。
好ましくは、少なくとも1つのAPIがナノ粒子又はマイクロ粒子中に存在し、エマルジョン工程は、(1)医薬的に許容されるポリマー(例えばPLGA)及び任意にAPIを第1の溶媒(例えば有機溶媒)に溶解させて、溶液Aを形成するステップ、(2)前記APIを第2の溶媒の第1の溶液(例えば第1の水溶液)に溶解させて、溶液Bを形成するステップ、(3)ポリアクリル酸(PAA)及びヒアルロン酸(HA)などの医薬的に許容される負に帯電した薬剤を第2の溶媒の第2の溶液(例えば第2の水溶液)に溶解させて、溶液Cを形成するステップであって、前記第2の水溶液がその中に溶解した界面活性剤又は表面安定化剤を任意に含む、ステップ、(4)溶液Bを溶液A中に乳化させて、第1のエマルジョンを形成するステップ、(5)第1のエマルジョンを溶液C中にさらに乳化させて、第2のエマルジョンを形成するステップ、並びに(6)溶媒蒸発法又は溶媒交換法などによって、第2のエマルジョンの有機溶媒を除去するステップを含む。
好ましくは、第1のエマルジョンの生成のためにポリマー溶液に添加される少量の第2の溶媒の溶液の体積は、PLGA溶液の体積に対して、通例0.01%〜50%、好ましくは0.1%〜10%である。
好ましくは、上記の工程4)に記載されている第2の溶媒の第2の溶液に対する第1のエマルジョンの体積比は、通例10:1〜1:10,000、好ましくは1:1〜1:100、例えば1:10又は1:4〜5である。
当分野で認識されている任意の沈殿工程も、本発明の方法に使用することができる。好ましくは、主題のマイクロ粒子及びナノ粒子(例えば、PLGAマイクロ粒子及びナノ粒子)は、以下のステップ(必ずしもこの順序ではない):1)医薬的に許容されるポリマー(例えばPLGA)を第1の溶媒(例えばアセトン)に溶解させて、ポリマー溶液を形成するステップ、2)第2の溶媒の溶液(例えば1mM NaOH溶液などの水溶液)を調製するステップであって、第1の溶媒が第2の溶媒と混和性であり、第2の溶媒の溶液が医薬的に許容される負に帯電した薬剤を任意に含み、界面活性剤を任意に含む、ステップ、並びに3)ポリマー溶液を第2の溶媒の溶液に混合しながら添加し、それにより負の表面電荷を有するマイクロ粒子又はナノ粒子を形成するステップであって、第2の溶媒の溶液が任意に水溶液である、ステップを含む沈殿工程によって調製することができる。
好ましくは、沈殿工程は、(1)医薬的に許容されるポリマー(例えばPLGA)及び少なくとも1つのAPIを第1の溶媒(例えば有機溶媒)に溶解させて、ポリマー−API溶液を形成するステップ、(2)ポリアクリル酸(PAA)及びヒアルロン酸(HA)などの医薬的に許容される負に帯電した薬剤を第2の溶媒(例えば水溶液)に溶解させるステップであって、前記第2の溶媒/水溶液がその中に溶解した界面活性剤又は表面安定剤を任意に含む、ステップ、並びに(3)ポリマー−API溶液を混合しながら水溶液に合せる(例えば添加する)ことによって、表面に負電荷及びカルボキシル基を有するAPI装填ナノ粒子又はマイクロ粒子を形成するステップを含む。
好ましくは、沈殿工程において、水溶液に対するPLGA溶液の体積比は、通例10:1から1:1,000、好ましくは1:1から1:10である。
好ましくは、沈殿工程におけるステップ3)の代替手順として、第2の溶媒の溶液(例えば水溶液)をポリマー溶液(例えばPLGA溶液)に添加することができる。
好ましくは、医薬的に許容される負に帯電した薬剤は、マイクロ粒子又はナノ粒子の表面を被覆し得て、及び/又はマイクロ粒子又はナノ粒子上の負の表面電荷を上昇させるために前記マイクロ粒子又はナノ粒子に少なくとも部分的に包含され得る。代表的な医薬的に許容される負に帯電した薬剤は、ポリアクリル酸を含み得る。
上記の態様のいずれにおいても、好ましくは、第1の溶媒はメチレンクロリド、エチルアセタート又はクロロホルムである。好ましくは、第2の溶媒の第2の溶液は、有機又は無機の医薬用賦形剤、各種ポリマー、オリゴマー、天然物、非イオン性、カチオン性、双性イオン性又はイオン性界面活性剤及びその混合物を含む。界面活性剤は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリソルバート(ツインシリーズ)界面活性剤、PEO−PPO−PEOポリエチレンオキシドポリプロピレンオキシドトリブロックコポリマー(プルロニックシリーズ又はポロキサマーシリーズ)界面活性剤若しくはt−オクチルフェニル−ポリエチレングリコール(トリトンX−100)界面活性剤又はその塩、誘導体、共重合体若しくは混合物を含み得る。好ましくは、界面活性剤はPVAである(例を参照のこと)。
好ましくは、乳化ステップは、ホモジナイゼーション、機械的撹拌及び/又はマイクロフルイダイゼーションを含む。
好ましくは、第1の溶媒は溶媒交換及び/又は蒸発によって除去される。
5.医薬的に許容される負に帯電した薬剤
本発明の方法は、医薬的に許容される負に帯電した薬剤を利用して、主題のマイクロ粒子及びナノ粒子上の負の表面電荷をさらに上昇させる。そのような薬剤は、好ましくは、医薬的に許容されるカルボキシル含有剤、例えば表面に追加量のカルボキシル基を有する(PLGA)マイクロ粒子及びナノ粒子の製造に有用なものなどである。そのようなカルボキシル含有剤としては、ヒアルロン酸又はその類似体若しくは誘導体、ゼラチン、多糖類、ヒドロキシエチルメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アミノ酸又はその塩、誘導体、共重合体及び混合物が挙げられるが、これらに限定されない。最も好ましくは、医薬的に許容される負に帯電した薬剤は、ポリアクリル酸(PAA)及びヒアルロン酸(HA)、その類似体若しくは誘導体又はその組合せ/混合物からなる群から選択される。
本発明で使用する医薬的に許容される負に帯電した薬剤の量は、製剤中で使用される医薬的に許容されるポリマー(PLGAなど)の重量に基づいて、0.01%〜30%、好ましくは0.1%〜15%である。
ヒアルロン酸類似体としては、サルファート化グリコサミノグリカン、例えばヘパリンのように挙動し得る、サルファート化された多くの天然多糖類が挙げられる(Hoffman et al.,1982,Carbohydrate Res.,2:115;Kindness et al.,1980,Brit.J.Pharmac.,69:675;Horton et al.,1973,Carbohydrate Res.,30:349;Okada et al.,1979,Makromol.Chem.,180:813;Kikuchi et al.,1979,Nippon Kagaku Kaishi,1:127;Manzac et al.,1981,Proc.Third M.I.S.A.O.,5:504)。さらに、硫酸基、カルボキシル基又はスルホナート化基は、本発明においてHA類似体として使用され得る合成ポリマー、例えばポリスチレン(Kanmaugue et al.,1985,Biomaterials,6:297)及びポリウレタン(Ito et al.,1992,Biomaterials,13:131)に結合している。pH依存性であり得る、これらのHA類似体(例えばグルコサミン残基のN−サルファート化基)の負電荷が高密度であることによって、主題のマイクロ/ナノ粒子へのHA類似体としての添加時に、さらなる利益が付与される。
HA類似体は、多糖のサルファート化で既知である化学反応によって製造することができる(例えば国際公開第88/00211号;欧州特許第0340628号;Carbohydrate Research,158:183−190,1986を参照のこと)。
一連の重要なHA類似体には、ヒアルロン酸の修飾によって産生されるHA誘導体が含まれる。
あるヒアルロン酸誘導体は、当分野で既知である。例えば(参照により組み入れられる)国際公開第95/25751号は、反復単位当たりのサルファート基の数が0.5〜3.5の範囲にあるように、異なる分子量範囲のサルファート化ヒアルロン酸などの、各種ヘパリン様サルファート化多糖誘導体について記載している。サルファート化HAは、反復単位当たりより多くの負電荷を含有するだけでなく、約10,000〜約50,000ダルトンの範囲の分子量を有するサルファート化ヒアルロン酸を使用した場合に腫瘍壊死因子(TNF)の生成も抑制する。過剰なTNFα活性は炎症性細胞の増殖と関連していて、多くの炎症性疾患症状の原因である。このため、そのようなサルファート化ヒアルロン酸を使用することによって、主題のマイクロ/ナノ粒子の抗炎症効果をさらに増強することができる。
好ましくは、サルファート化ヒアルロン酸は、約10,000〜約50,000ダルトン又は約50,000〜約250,000ダルトン又は約250,009〜約750,000ダルトン又は約750,000〜約1,250,000ダルトンの範囲の分子量を有し、各場合において、前記サルファート化ヒアルロン酸のサルファート化度は、ヒアルロン酸の反復単位当たり2.5、3.0又は3.5個のサルファート基である。
国際公開第1998/045335A1号は、グルコサミンが部分的にN−サルファート化されているか、又は部分的にN−サルファート化されかつ6位にて部分的に若しくは全体にO−サルファート化されている、任意に塩化されたヒアルロン酸又はその誘導体のある生体適合性サルファート化化合物について記載している。具体的には、そのようなHA誘導体は、(本明細書に組み入れられている)P.Shaklee(1984)Biochem.J.,217:187−197に記載の手順に従って先にN−脱アセチル化されたヒアルロン酸のグルコサミンのアミノ基の、制御されたサルファート化反応によって得られる。その生体適合性の特性とは別に、そのようなN−サルファート化誘導体は、抗ウイルス活性、抗炎症活性、抗血栓性及び抗凝固性特性も有する。
好ましくは、アミノ基の1ダイマー単位当たりのサルファート化度は、1〜70%の間で変化し、6位のヒドロキシル基の1ダイマー当たりのサルファート化度は、0〜100%の間で変化する。好ましくは、アミノ基の1ダイマー単位当たりのサルファート化度は、5〜40%の間で変化し、6位のヒドロキシル基の1ダイマー当たりのサルファート化度は、0〜100%の間で変化する。
追加のヒアルロン酸誘導体は、米国特許第7,993,678号に記載され、少なくとも1個のヒアルロン酸のヒドロキシル基を有するその誘導体が、アリール/アルキルコハク酸無水物(ASA)との反応により置換されて、アリール/アルキルコハク酸無水物HA誘導体を生成する。誘導体は反復単位当たりより多くの負電荷を担持し、本発明の方法においてHAと共に又はHAの代わりに使用することができる。
好ましくは、ヒアルロン酸類似体又は誘導体は、医薬的に許容されるポリマーの10、15、20、25又は30%(重量/重量)以下である。
ポリ(アクリル酸)(PAA又はカルボマー)は、アクリル酸の合成高分子量ポリマーの総称である。ポリ(アクリル酸)は、アリルエーテルペンタエリスリトール、スクロースのアリルエーテル又はプロピレンのアリルエーテルによって架橋されたアクリル酸のホモポリマーであり得る。中性pHの水溶液中で、PAAはアニオン性ポリマーであり、即ちPAAの側鎖の多くはそのプロトンを失って、負電荷を獲得することになる。
乾燥PAAは、白色で綿毛状の粉末として市場で見いだされる。Carbomerコード(910、934、940、941及び934P)は、ポリマーの分子量及び特定成分を示すものである。PAAは、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩、例えばナトリウムポリアクリラートの形態で使用することができる。
ポリアクリル酸は弱アニオン性高分子電解質であり、そのイオン化度は溶液のpHに依存している。低pHにおけるその非イオン化形態では、PAAは各種の非イオン性ポリマー(例えばポリエチレンオキシド、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びいくつかのセルロースエーテル)と会合して、水素結合インターポリマー複合体を形成し得る。水溶液中では、PAAは逆帯電したポリマー(例えばキトサン)、界面活性剤及び薬物/API分子とポリ複合体を形成することができる。
好ましくは、マイクロ粒子又はナノ粒子は負(表面)電荷を有する。カルボキシル化マイクロ粒子及びナノ粒子上の負電荷密度は、ゼータ電位によって定量化することができる。カルボキシル化マイクロ粒子及びナノ粒子のゼータ電位は、通例、粒子の水性懸濁液中で4〜10、好ましくは5〜8のpHにて測定される。好ましくは、本発明の方法によって製造されたマイクロ粒子又はナノ粒子は、約−5mV〜約−200mV、好ましくは約−15mV〜約−100mV、最も好ましくは−35mV〜−85mVのゼータ電位を有し得る。
好ましくは、マイクロ粒子又はナノ粒子は、約−40mV以下、約−45mV以下又は約−50mV以下、例えば約−40mV〜−65mVなどのゼータ電位を有する。
6.溶媒及び界面活性剤
ポリマーの溶解工程で使用される溶媒は、ポリマーを溶解する任意の種類の溶媒(例えばPLGA)であり得る。しかし、揮発性溶媒をその除去のために使用するのが好ましい。例えば、PLGA溶液を形成するための好ましい溶媒としては、メチレンクロリド、エチルアセタート及びクロロホルムが挙げられる。
乳化工程において、(水)溶液は界面活性剤又は表面安定剤を含有し得る。界面活性剤は、一般に、液体の表面張力、2つの液体間の界面張力又は液体と固体との間の界面張力を低下させる化合物を含む。界面活性剤は、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤及び分散剤として作用し得る。界面活性剤は、通常、両親媒性の有機化合物であり、疎水性基(通常、「尾部」として分枝鎖、直鎖又は芳香族炭化水素鎖、フルオロカーボン鎖又はシロキサン鎖)及び親水性基(通常、頭部)の両方を含む。界面活性剤は、最も一般的にはその極性の頭部基に従って分類される。非イオン性界面活性剤は、その頭部に電荷基を有さない。イオン性界面活性剤は、正味の電荷を担持している。電荷が負の場合は、界面活性剤はアニオン性であり、電荷が正の場合はカチオン性である。界面活性剤が2つの逆に帯電した基を有する頭部を含有する場合、それは双性イオン性と呼ばれる。好ましくは、カルボキシル基を含有するもの(「カルボキシラート」)などのアニオン性又は双性イオン性界面活性剤が、本発明で好ましく使用される。カルボキシラートは、最も一般的な界面活性剤であり、アルキルカルボキシラート、例えばナトリウムステアラート、ナトリウムラウロイルサルコシナート及びカルボキシラート系フルオロ界面活性剤、例えばペルフルオロノナノアート、ペルフルオロオクタノアート(PFOA又はPFO)を含む。
特定の理論に縛られることを望むものではないが、界面活性剤はエマルジョン液滴の形成及び安定化に有用であり得る。界面活性剤は、有機又は無機の医薬用賦形剤、各種ポリマー、オリゴマー、天然物、非イオン性、カチオン性、双性イオン性又はイオン性界面活性剤及びその混合物も含み得る。
主題の(PLGA)マイクロ粒子/ナノ粒子の調製に使用できる界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ツインシリーズ、プルロニックシリーズ、ポロキサマーシリーズ、トリトンX−100などが挙げられる。追加の好適な界面活性剤は、本明細書中以下で与える。
乳化工程は、当分野で認識されている任意の手段、例えばホモジナイゼーション、超音波処理、機械的撹拌、マイクロフルイダイゼーション又はその組合せなどによって実施され得る。
溶媒の除去は通常、例えば溶媒交換及び蒸発によって行う。
好ましくは、大部分のカルボキシル基を主題の(例えばPLGA)マイクロ粒子及びナノ粒子の表面に確実に存在させるために、水溶液は、ポリマー上の部分のイオン化を促進するpH、例えばPLGA上のカルボキシル基のための塩基性pHに調整される。pHは、イオン化されて負電荷を担持することができるポリマー基のpKaに応じて、好ましくは約4〜14、6〜14、6〜10又は約8〜12の範囲である。水溶液のpHは、例えばその塩基又は溶液、例えばナトリウムヒドロキシド、カリウムヒドロキシド、ナトリウムバイカーボナート、ナトリウムカーボナート、カリウムバイカーボナート、カリウムカーボナートなどを添加することによって好ましい範囲に調整することができる。
複数の界面活性剤の組合せを本発明で使用することができる。本発明で使用することができる有用な界面活性剤又は表面安定剤は、既知の有機及び無機医薬用賦形剤を含むことができるが、それに限定されない。そのような賦形剤としては、各種のポリマー、低分子量オリゴマー、天然物及び界面活性剤が挙げられる。界面活性剤又は表面安定剤としては、非イオン性、カチオン性、双性イオン性及びイオン性界面活性剤が挙げられる。
他の有用な界面活性剤又は表面安定剤の代表例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ナトリウムラウリルサルファート、ナトリウムジオクチルスルホスクシナート、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、ベンザルコニウムクロリド、カルシウムステアラート、グリセロールモノステアラート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばマクロゴールエーテル、例えばセトマクロゴール1000)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば市販のTWEEN(いずれかの国における登録商標)、例えばTWEEN 20(いずれかの国における登録商標)及びTWEEN 80(いずれかの国における登録商標)(ICI Specialty Chemicals))、ポリエチレングリコール(例えばCARBOWAXS 3550(いずれかの国における登録商標)及び934(いずれかの国における登録商標)(Union Carbide))、ポリオキシエチレンステアラート、コロイド状二酸化ケイ素、ホスファート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、非結晶性セルロース、マグネシウムアルミニウムシリカート、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキシド及びホルムアルデヒドを含む4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー(タイロキサポール(tyloxapol)、スペリオン(superione)及びトリトンとしても既知);ポロキサマー(例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーである、PLURONICS F68(いずれかの国における登録商標)及びF108(いずれかの国における登録商標));ポロキサミン(例えばエチレンジアミンへのプロピレンオキシド及びエチレンオキシドの逐次付加から誘導された4官能性ブロックコポリマーである、POLOXAMINE 908(いずれかの国における登録商標)としても既知である、TETRONIC 908(いずれかの国における登録商標))(BASF Wyandotte Corporation、パーシッパニー、ニュージャージー州);TETRONIC 1508(いずれかの国における登録商標)(T−1508)(BASF Wyandotte Corporation)、アルキルアリールポリエーテルスルホナートである、TRITONS X−200(いずれかの国における登録商標)(Rohm and Haas);スクロースステアラートとスクロースジステアラートの混合物であるCRODESTAS F−110(いずれかの国における登録商標)(Croda Inc.);OLIN−1OG(いずれかの国における登録商標)又はSURFACTANT 10−G(いずれかの国における登録商標)(Olin Chemicals、スタンフォード、コネチカット州)としても既知である、p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール);Crodestas SL−40(Croda,Inc.);及びC18H37CH2(CON(CH3)−CH2(CHOH)4(CH2OH)2である、SA9OHCO(Eastman Kodak Co.);デカノイル−N−メチルグルカミド;n−デシルβ−D−グルコピラノシド;n−デシルβ−D−マルトピラノシド;n−ドデシルβ−D−グルコピラノシド;n−ドデシルβ−D−マルトシド;ヘプタノイル−N−メチルグルカミド;n−ヘプチル−p−D−グルコピラノシド;n−ヘプチルβ− D−チオグルコシド;n−ヘキシルβ−D−グルコピラノシド;ノナノイル−N−メチルグルカミド;n−ノイル−β−D−グルコピラノシド;オクタノイル−N−メチルグルカミド;n−オクチル−β−D−グルコピラノシド;オクチルβ−D−チオグルコピラノシド;PEG誘導体化リン脂質、PEG誘導体化コレステロール、PEG誘導体化コレステロール誘導体、PEG誘導体化ビタミンA、PEG誘導体化ビタミンE、リゾチーム、ビニルピロリドンとビニルアセタートのランダムコポリマーなどが挙げられる。
有用なカチオン性界面活性剤又は表面安定剤の例としては、ポリマー、バイオポリマー、多糖類、セルロース系物質、アルギナート、リン脂質及び非ポリマー系化合物、例えば双性イオン性安定剤、ポリ−n−メチルピリジニウム、アントリル(anthryul)ピリジニウムクロリド、カチオン性リン脂質、キトサン、ポリリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリブレン、ポリメチルメタクリラート、トリメチルアンモニウムブロミドブロミド(PMMTMABr)、ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDMAB)、ポリビニルピロリドン−2−ジメチルアミノエチルメタクリラートジメチルサルファート、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[アミノ(ポリエチレングリコール)2000](ナトリウム塩)(DPPE−PEG(2000)−アミンNaとしても既知)(Avanti Polar Lipids、アラバスター、アリゾナ州)、ポリ(2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)(Polysciences、Inc.、ワーリントン、ペンシルベニア州)(S1001としても既知)、ポロキサミン、例えばプロピレンオキシド及びエチレンオキシドのエチレンジアミンへの逐次付加から誘導された4官能性ブロックコポリマーである、POLOXAMINE 908(いずれかの国における登録商標)としても既知のTETRONIC 908(いずれかの国における登録商標)(BASF Wyandotte Corporation、パーシッパニー、ニュージャージー州)、リゾチーム、長鎖ポリマー、例えばアルギン酸、カラギーナン(FMC Corp.)及びポリオックス(Dow、ミッドランド、ミシガン州)が挙げられるが、これに限定されない。
他の有用なカチオン性安定剤としては、カチオン性脂質、スルホニウム、ホスホニウム及び第4級アンモニウム化合物、例えばステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルジ(2−クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ココナッツトリメチルアンモニウムクロリド又はブロミド、ココナッツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド又はブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド又はブロミド、C12−15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド又はブロミド、ココナッツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド又はブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルサルファート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド又はブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムクロリド又はブロミド、N−アルキル(C12−18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N−アルキル(C14−18)ジメチル−ベンジルアンモニウムクロリド、N−テトラデシルメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、N−アルキル及び(C12−14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムハライド、アルキル−トリメチルアンモニウム塩及びジアルキルジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、エトキシル化アルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩及び/又はエトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロリド、N−ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム、クロリド一水和物、N−アルキル(C12−14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウムクロリド及びドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C12,C15,C17トリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルアンモニウムハロゲニド、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド(ALIQUAT 336(商標))、POLYQUAT 10(商標)、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、コリンエステル(脂肪酸のコリンエステルなど)、ベンザルコニウムクロリド、ステアラルコニウムクロリド化合物(例えばステアリルトリモニウムクロリド及びジステアリルジモニウムクロリド)、セチルピリジニウムブロミド又はクロリド、4級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハライド塩、MIRAPOL(商標)及びALKAQUAT(商標)(Alkaril Chemical Company)、アルキルピリジニウム塩;アミン、例えばアルキルアミン、ジアルキルアミン、アルカノールアミン、ポリエチレンポリアミン、N,N−ジアルキルアミノアルキルアクリラート及びビニルピリジン、アミン塩、例えばラウリルアミンアセタート、ステアリルアミンアセタート、アルキルピリジニウム塩及びアルキルイミダゾリウム塩並びにアミンオキシド;イミドアゾリニウム塩;プロトン化第4級アクリルアミド;メチル化第4級ポリマー、例えばポリ[ジアリルジメチルアンモニウムクロリド]及びポリ[N−メチルビニルピリジウムクロリド];及びカチオン性グアーが挙げられるが、これに限定されない。
そのような例示的なカチオン性界面活性剤又は表面安定剤及び他の有用なカチオン性界面活性剤又は表面安定剤は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられている、J.Cross and E.Singer,Cationic Surfactants:Analytical and Biological Evaluation(Marcel Dekker,1994);P.and D.Rubingh(Editor),Cationic Surfactants:Physical Chemistry(Marcel Dekker,1991);及びJ.Richmond,Cationic Surfactants:Organic Chemistry,(Marcel Dekker,1990)に記載されている。
非ポリマーカチオン界面活性剤又は表面安定剤は、任意の非ポリマー化合物、例えばベンザルコニウムクロリド、カルボニウム化合物、ホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、ハロニウム化合物、カチオン性有機金属化合物、第4級リン化合物、ピリジニウム化合物、アニリニウム化合物、アンモニウム化合物、ヒドロキシルアンモニウム化合物、第1級アンモニウム化合物、第2級アンモニウム化合物、第3級アンモニウム化合物及び式NR1R2R3R4(+)の第4級アンモニウム化合物である。式NR1R2R3R4(+)の化合物では、(i)R1−R4のいずれもCH3ではない;(ii)R1−R4の1つがCH3である;(iii)R1−R4のうち3つがCH3である;(iv)R1−R4の全てがCH3である;(v)R1−R4のうちの2つがCH3であり、R1−R4のうちの1つがC6H5CH2であり、R1−R4のうちの1つが炭素原子7個以下のアルキル鎖である;(vi)R1−R4のうちの2つがCH3であり、R1−R4のうちの1つがC6H5CH2であり、R1−R4のうちの1つが炭素原子19個以上のアルキル鎖である;(vii)R1−R4のうちの2つがCH3であり、R1−R4のうちの1つが基C6H5(CH2)nであり、式中、n>1である;(viii)R1−R4のうちの2つがCH3であり、R1−R4のうちの1つがC6H5CH2であり、R1−R4のうちの1つが少なくとも1個のヘテロ原子を含む;(ix)R1−R4のうち2つがCH3であり、R1−R4のうち1つがC6H5CH2であり、R1−R4のうち1つがが少なくとも1個のハロゲンを含む;(x)R1−R4のうち2つがCH3であり、R1−R4の1つがC6H5CH2であり、R1−R4のうち1つが少なくとも1個の環状フラグメントを含む;(xi)R1−R4のうちの2つがCH3であり、R1−R4のうちの1つがフェニル環である;又は(xii)R1−R4のうち2つがCH3であり、R1−R4の2つが純粋に脂肪族フラグメントである。
そのような化合物としては、ベヘンアルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ラウラルコニウムクロリド、セタルコニウムクロリド、セトリモニウムブロミド、セトリモニウムクロリド、セチルアミンヒドロフルオリド、クロルアリルメタンアミンクロリド(クオタニウム−15)、ジステアリルジアンモニウムクロリド(クオタニウム−5)、ドデシルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロリド(クオタニウム−14)、クオタニウム−22、クオタニウム−26、クオタニウム−18ヘクトライト、ジメチルアミノエチルクロリドヒドロクロリド、システインヒドロクロリド、ジエタノールアンモニウムPOE(10)オレチルエーテルホスファート、ジエタノールアンモニウムPOE(3)オレイルエーテルホスファート、タローアルコニウムクロリド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト、ステラルコニウムクロリド、ドミフェンブロミド、デナトニウムベンゾアート、ミリスタルコニウムクロリド、ラウトリモニウムクロリド、エチレンジアミンジヒドロクロリド、グアニジンヒドロクロリド、ピリドキシンHCl、イオフェタミンヒドロクロリド、メグルミンヒドロクロリド、メチルベンゼトニウムクロリド、ミルトリモニウムブロミド、オレイルトリモニウムクロリド、ポリクオタニウム−1、プロカインヒドロクロリド、ココベタイン、ステラルコニウムベントナイト、ステアラルコニウムヘクトナイト、ステアリルトリヒドロキシエチルプロピレンジアミンジヒドロフルオリド、タロートリモニウムクロリド及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドが挙げられるが、これに限定されない。
これらの界面活性剤又は表面安定剤の大半は既知の医薬用賦形剤であり、参照により特に組み入れられている、米国薬剤師会(American Pharmaceutical Association)及び英国薬剤師会(Pharmaceutical Society of Great Britain)により共同出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipients(The Pharmaceutical Press、2000)に詳説されている。
界面活性剤又は表面安定剤は市販され、及び/又は当分野における既知の技術によって調製することができる。
好ましくは、主題のマイクロ粒子又はナノ粒子の表面は、粒子表面と間質との間の非特異的又は望ましくない生物学的相互作用を最小にする材料からなり、例えば粒子表面は非特異的相互作用を防止又は減少するための材料でコーティングされ得る。ポリエチレングリコール(PEG)及びそのコポリマー、例えばプルロニック(ポリ(エチレングリコール)−bl−ポリ(プロピレングリコール)−bl−ポリ(エチレングリコール)のコポリマーを含む)などの親水性層で粒子をコーティングすることによる立体安定化によって、皮下注射後のリンパによる取込みの改善で示されるように、間質のタンパク質との非特異的相互作用が低減され得る。
7.粒径
主題のマイクロ粒子及びナノ粒子の大きさは、約1nm〜約1000μm、好ましくは約10nm〜約100μm、最も好ましくは約20nm〜約5μm、最も好ましくは約50nm〜約2μmである。例えば、マイクロ粒子及びナノ粒子は、約100、300、500、700又は900nmの平均粒径を有し得る。
本明細書で使用する場合、粒径は、当業者に周知の任意の従来の粒径測定技術によって決定することができる。そのような技術としては、例えば沈降場流動分画法、光子相関分光法、光散乱法、動的光散乱法、光回折法及びディスク遠心分離法が挙げられる。
8.追加の成分
好ましくは、本発明の粒子は追加の成分も含み得る。例えば、担体は、該担体に組み込まれた又はコンジュゲートされた造影剤を有し得る。現在市販されている造影剤を有する担体ナノスフェアの例は、Kodak X−sightナノスフェアである。量子ドット(QD)として既知の無機量子閉じ込め発光性ナノ結晶は、FRET用途における理想的な供与体として浮上している。その高い量子収率及び調整可能なサイズ依存性のストークスシフトによって、単一の紫外線波長における励起時に、異なるサイズが青から赤外まで放出できるようにする (Bruchez et al.,Science,1998,281:2013;Niemeyer,C.M.,Angew.Chem.Int.Ed.,2003,42:5796;Waggoner,A.Methods Enzymol.,1995,246:362;Brus,L.E.,J.Chem.Phys.,1993,79,5566)。デンドリマーとして既知のポリマーのクラスに基づくハイブリッド有機/無機量子ドットなどの量子ドットは、生物学的標識化、撮像及び光学バイオセンシングシステムにおいて使用され得る(Lemon et al.,J.Am.Chem.Soc.,2000,122:12886)。無機量子ドットの従来の合成とは異なり、これらのハイブリッド量子ドットナノ粒子の合成は、高温又は毒性の高い不安定な試薬を必要としない(Etienne et al.,Appl.Phys.Lett.,87:181913,2005)。
9.API
本発明の別の態様は、負の表面電荷を有する主題のマイクロ粒子又はナノ粒子を含む組成物を提供し、組成物は本明細書に記載の主題の方法のいずれか1つ又はその組合せに従って調製される。
好ましくは、組成物は、結合ペプチド又は抗原部分などの他の医薬品有効成分、即ちAPIを含まない。
好ましくは、組成物はAPIを含み、APIは、タンパク質のアミド基とマイクロ粒子又はナノ粒子の表面のカルボキシル基との間に形成された結合などの共有結合を介して、マイクロ粒子又はナノ粒子の表面に共有結合する。
好ましくは、APIの量は、マイクロ粒子又はナノ粒子の約0.01〜50%(重量/重量)又は約0.05〜25%、約0.1〜10%、約0.2〜5%、0.5〜3%、1〜5%又は2〜5%(重量/重量)であり得る。
好ましくは、組成物は、APIの代わりに、マイクロ粒子又はナノ粒子の表面に共有結合した標的化部分、例えばペプチド又はタンパク質リガンド又はドメインを含み、標的化部分は標的部位(例えば標的化部分の細胞表面受容体又は結合パートナー)に特異的又は優先的に結合して、そのような標的化部分を担持するマイクロ粒子又はナノ粒子はインビボで標的部位を特異的又は優先的に対象とする。標的化部分を担持するマイクロ粒子又はナノ粒子は、標的部位で放出することができるか、又はさもなければ有効化できる、マイクロ粒子又はナノ粒子内に封入された又は埋め込まれたAPIをさらに含み得る。
本発明の関連する態様は、主題組成物及び医薬的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、別の節でより詳細に後述する。
好ましくは、APIは水溶性である。
好ましくは、APIは比較的不十分な水溶性を有する。好ましくは、本発明の方法において水溶液又は第2の溶媒にAPIを含めることの代わりに又はそれに加えて、本発明は、PLGAなどのポリマーを溶解するために使用される第1の溶媒中にAPIを含む、同等の方法を提供する。APIは、PLGAを溶解するために使用されたのと同じ第1の溶媒に溶解されるか、又は(第1の溶媒と同じであり得る又は異なり得る)好適な溶媒に溶解されて、API溶液を形成し得て、その後、API溶液は、API及びPLGAの両方が得られた溶液中に残存するように、PLGAを含む第1の溶媒と混合される。
好ましくは、APIを最初に(第2の溶媒と同じあり得る又は異なり得る)それ自体の溶媒に溶解されて、API溶液を形成し得て、その後、API溶液が第2の溶媒に添加される。
API又は治療薬としては、化学化合物及び化学化合物の混合物、例えば有機小分子又は無機小分子;サッカリン;オリゴ糖類;多糖類;生物学的巨大分子、例えばペプチド、タンパク質並びにペプチド類似体及び誘導体、ペプチド模倣薬;抗体及びその抗原結合断片;核酸;核酸類似体及び誘導体;細菌、植物、真菌又は動物細胞などの生物学的材料から作られた抽出物;動物組織;天然又は合成組成物;並びにその任意の組合せを含む、多種多様の異なる化合物が挙げられる。好ましくは、治療薬は小分子である。
本明細書で使用する場合、「小分子」という用語は「天然物様」である化合物を示すことができるが、「小分子」という用語は、「天然物様」化合物に限定されない。むしろ、小分子は通例、小分子が複数の炭素−炭素結合を含有し、5000ダルトン(5kDa)未満、好ましくは3kDa未満、さらにより好ましくは2kDa未満、最も好ましくは1kDa未満の分子量を有することを特徴とする。場合によっては、小分子は700ダルトン以下の分子量を有することが好ましい。
例示的な治療薬としては、臨床試験又は前臨床研究において、FDAによる新薬申請に供され、FDAによる承認を受けたものが挙げられるが、これに限定されない。
API又は治療薬は、本明細書に開示されている種類及び具体例を含む。種類が特定の例によって限定されることを意図するものではない。当業者はまた、その種類に含まれ、本開示に従って有用である多数の他の化合物も認識するであろう。例としては、放射線増感剤、ステロイド、キサンチン、ベータ−2−アゴニスト気管支拡張剤、抗炎症剤、鎮痛剤、カルシウム拮抗剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、ベータ遮断薬、中枢活性型アルファ−アゴニスト、アルファ−1−アンタゴニスト、抗コリン薬/鎮痙薬、バソプレシン類似体、抗不整脈薬、抗パーキンソン病薬、抗狭心症薬/抗高血圧薬、抗凝固薬、抗血小板薬、鎮静薬、抗不安薬(ansiolytic agent)、ペプチド剤、バイオポリマー剤、抗新生物剤、緩下薬、下痢止め剤、抗微生物剤、抗真菌剤、ワクチン、タンパク質又は核酸が挙げられる。さらなる態様において、医薬的活性剤は、クマリン、アルブミン、ステロイド、例えばベタメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、ヒドロコルチゾン及び医薬的に許容されるヒドロコルチゾン誘導体;キサンチン類、例えばテオフィリン及びドキソフィリン;ベータ−2−アゴニスト気管支拡張剤、例えばサルブタモール、フェンテロール、クレンブテロール、バンブテロール、サルメテロール、フェノテロール;抗喘息抗炎症剤、抗関節炎性抗炎症剤及び非ステロイド系抗炎症剤を含む抗炎症剤、この例としては、スルフィド、メサラミン、ブデソニド、サラゾピリン、ジクロフェナク、医薬的に許容されるジクロフェナク塩、ニメスリド、ナプロキセン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン及びピロキシカムが挙げられるが、これに限定されない;サリチラートなどの鎮痛剤;カルシウムチャネル遮断薬、例えば、ニフェジピン、アムロジピン及びニカルジピン;アンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えばカプトプリル、ベナゼプリルヒドロクロリド、ホシノプリルナトリウム、トランドラプリル、ラミプリル、リシノプリル、エナラプリル、キナプリルヒドロクロリド及びモエキシプリルヒドロクロリド;ベータ遮断薬(即ち、ベータアドレナリン遮断剤)、例えばソタロールヒドロクロリド、チモロールマレアート、エスモロールヒドロクロリド、カルテオロール、プロパノロールヒドロクロリド、ベタキソロールヒドロクロリド、ペンブトロールサルファート、メトプロロールタートラート、メトプロロールスクシナート、アセブトロールヒドロクロリド、アテノロール、ピンドロール及びビソプロロールフマラート;中枢活性型アルファ−2−アゴニスト、例えばクロニジン;アルファ−1−アンタゴニスト、例えばドキサゾシン及びプラゾシン;抗コリン薬/鎮痙薬、例えばジサイクロミンヒドロクロリド、スコポラミンヒドロブロミド、グリコピロラート、クリジニウムブロミド、フラボキサート及びオキシブチニン;バソプレッシン類似体、例えばバソプレッシン及びデスモプレシン;抗不整脈薬、例えばキニジン、リドカイン、トカイニドヒドロクロリド、メキシレチンヒドロクロリド、ジゴキシン、ベラパミルヒドロクロリド、プロパフェノンヒドロクロリド、フレカイニドアセタート、プロカインアミドヒドロクロリド、モリシジンヒドロクロリド及びジソピラミドホスファート;抗パーキンソン病剤、例えばドーパミン、L−ドパ/カルビドパ、セレギリン、ジヒドロエルゴクリプチン、ペルゴリド、リスリド、アポモルフィン及びブロモクリプチンなど;抗狭心症薬及び降圧薬、例えばイソソルビドモノニトラート、イソソルビドジニトラート、プロプラノロール、アテノロール及びベラパミル;抗凝固薬及び抗血小板薬、例えばクマジン、ワルファリン、アセチルサリチル酸及びチクロピジン;鎮静薬、例えばベンゾジアザピン及びバルビツラート;抗不安薬(ansiolytic agent)、例えばロラゼパム、ブロマゼパム及びジアゼパム;ペプチド剤及びバイオポリマー剤、例えばカルシトニン、ロイプロリド及び他のLHRHアゴニスト、ヒルジン、シクロスポリン、インスリン、ソマトスタチン、プロチレリン、インターフェロン、デスモプレシン、ソマトトロピン、チモペンチン、ピドチモド、エリスロポエチン、インターロイキン、メラトニン、顆粒球/マクロファージ−CSF及びヘパリン;抗新生物剤、例えばエトポシド、エトポシドホスファート、シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ドキソルビシン、シスプラチン、ヒドロキシウレア、ロイコボリンカルシウム、タモキシフェン、フルタミド、アスパラギナーゼ、アルトレタミン、ミトタン及びプロカルバジンヒドロクロリド;緩下薬、例えばセンナ濃縮物、カサントラノール、ビサコジル及びナトリウムピコスルファート;下痢止め剤、例えばジフェノキシンヒドロクロリド、ロペラミドヒドロクロリド、フラゾリドン、ジフェノキシラートヒドロクロリド(hdyrochloride)及び微生物;ワクチン、例えば細菌ワクチン及びウイルスワクチン;抗微生物剤、例えばペニシリン、セファロスポリン及びマクロライド;抗真菌剤、例えばイミダゾール系誘導体及びトリアゾール系誘導体;並びに核酸、例えば生物学的タンパク質をコードするDNA配列及びアンチセンスオリゴヌクレオチドであることができる。
好適なAPIの例としては、インフリキシマブ、エタネルセプト、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、アナキンラなどのインターロイキン1(IL−1)遮断薬、アバタセプトなどのT細胞共刺激遮断薬、トシリズマブなどのインターロイキン6(IL−6)遮断薬、レブリキズマブなどのインターロイキン13(IL−13)遮断薬;ロンタリズマブなどのインターフェロンアルファ(IFN)遮断薬;rhuMAbベータ7などのベータ7インテグリン遮断薬;抗M1プライムなどのIgE経路遮断薬;抗リンホトキシンα(LTa)などの分泌ホモトリマーLTa3及び膜結合ヘテロトリマーLTa1/ベータ2遮断薬又は抗VEGF剤などが挙げられる。
「API」という用語は、本明細書で便宜上使用される。この用語は、本明細書内で、それぞれの場合に具体的に列挙されているかのように、生体分子、タンパク質及び核酸という用語によって置き換えられることが理解される。
10.使用例
本発明の方法は、多数の用途を有するナノ粒子及びマイクロ粒子を製造するために使用することができる。
好ましくは、ナノ粒子及びマイクロ粒子は、それを必要とする対象における疾患若しくは状態を処置する方法、又はそれを必要とする対象における疾患若しくは状態の期間若しくは重症度を軽減する方法であって、疾患又は状態が負の表面電荷を有する(又は任意で特定のAPIを有する)マイクロ粒子又はナノ粒子によって処置可能であり、マイクロ粒子若しくはナノ粒子を含む組成物又は医薬組成物を対象に投与し、これにより疾患又は状態を処置することを含む、方法で使用することができる。
関連する態様において、本発明は、それを必要とする対象、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおいて免疫応答を制御する方法であって、マイクロ粒子若しくはナノ粒子を含む組成物又は医薬組成物を対象に投与し、これにより免疫応答を制御する方法を提供する。本発明によって提供される免疫制御の方法は、これに限定されるわけではないが、免疫刺激ポリペプチド又はウイルス若しくは細菌成分によって刺激される免疫応答を含む、先天性免疫応答又は適応免疫応答を抑制及び/又は阻害する方法を含む。主題の粒子は、免疫応答を調節するのに十分な量で投与される。本明細書に記載するように、免疫応答の制御は体液性及び/又は細胞性であり得て、当分野における標準的な技術を使用して本明細書に記載するように測定される。
好ましくは、疾患又は状態は炎症性免疫応答を特徴とする。
処置可能な疾患又は状態には、自己免疫疾患、例えば多発性硬化症、強皮症、I型糖尿病、関節リウマチ、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、レイノー症候群、シェーグレン(Sjorgen)症候群、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性心筋炎又はクローン病が含まれるが、これに限定されない。好ましくは、自己免疫疾患は多発性硬化症である。自己免疫疾患又は炎症性疾患を有する個体は、既存の自己免疫疾患又は炎症性疾患の認識可能な症状を有する個体である。
自己免疫疾患は、臓器特異的及び全身性という、2つの大きな種類に分けることができる。自己免疫疾患としては、限定されないが、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、II型糖尿病、多発性硬化症(MS)、早発卵巣不全などの免疫性不妊症、強皮症、シェーグレン病、白斑、脱毛症(禿頭症)、多腺性不全、バセドウ病、甲状腺機能低下症、多発性筋炎、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、B型肝炎ウイルス(HBV)及びC型肝炎ウイルス(HCV)と関連付けられるものを含む自己免疫肝炎、下垂体機能低下症、移植片対宿主疾患(GvHD)、心筋炎、アジソン病、自己免疫皮膚疾患、ブドウ膜炎、悪性貧血並びに副甲状腺機能低下症が挙げられる。
自己免疫疾患としてはまた、限定されないが、橋本甲状腺炎、I型及びII型自己免疫多腺性症候群、腫瘍随伴性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、線状IgA病、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、妊娠性類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、小児慢性水疱性疾患、溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、自己免疫性好中球減少症、重症筋無力症、イートン・ランバート筋無力症症候群、スティフマン症候群、急性播種性脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、伝導ブロックを伴う多巣性運動ニューロパチー、単クローン性グロブリン血症を伴う慢性ニューロパチー、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、小脳変性症、脳脊髄炎、網膜症、原発性胆管硬化症、硬化性胆管炎、グルテン過敏性腸疾患、強直性脊椎炎、反応性関節炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、混合性結合組織疾患、ベチェット症候群、乾癬、結節性多発動脈炎、アレルギー性脈管炎及び肉芽腫症(チャーグ・ストラウス病)、多発性血管炎重複症候群、過敏性血管炎、ウェーゲナー肉芽腫症、側頭動脈炎、高安動脈炎、川崎病、中枢神経系の孤立性血管炎、閉塞性血栓血管炎、サルコイドーシス、糸球体腎炎並びに寒冷症が挙げられ得る。これらの症状は、医学分野で周知であり、例えばHarrison’s Principles of Internal Medicine,14th edition,Fauci,A.S.et al.,Eds.,New York:McGraw−Hill,1998に記載されている。
好ましくは、疾患又は状態としては、アレルギー性障害又は状態、例えばアレルギー性疾患、アレルギー、湿疹、喘息、アレルギー性鼻炎又は皮膚過敏症が挙げられる。アレルギー性疾患又は喘息を有する個体は、既存のアレルギー性疾患又は喘息の認識可能な症状を有する個体である。
好ましくは、疾患又は状態は細菌感染又はウイルス感染を含む。細菌又はウイルス感染を有する個体は、既存の細菌又はウイルス感染の認識可能な症状を有する個体である。
好ましくは、対象はウイルス感染症を有する。好ましくは、ウイルス感染症は、ヘルペスウイルス感染症、肝炎ウイルス感染症、西ナイルウイルス感染症、フラビウイルス、インフルエンザ感染症、ライノウイルス感染症、パピローマウイルス感染症、パラミクソウイルス感染症又はパラインフルエンザウイルス感染症である。好ましくは、ウイルス感染症は前記対象の中枢神経系に感染する。好ましくは、ウイルス感染症はウイルス性脳炎又はウイルス性髄膜炎を引き起こす。
好ましくは、対象は細菌感染症を有する。本発明の主題の粒子によって処置可能な細菌感染症の非限定的なリストには、ブドウ球菌感染症、連鎖球菌感染症、マイコバクテリア感染症、バチルス感染症、サルモネラ感染症、ビブリオ感染症、スピロヘータ感染症及びナイセリア感染症が含まれる。対象の中枢神経系に感染する細菌が好ましい。脳炎又は髄膜炎を引き起こす細菌が最も好ましい。
好ましくは、本発明の方法は、細菌感染症又はウイルス感染症を有する対象に投与された場合に免疫寛容を誘導する。好ましくは、この方法は、細菌感染症又はウイルス感染症を有する対象に投与された場合に炎症性免疫応答を改善又は軽減する。
好ましくは、対象は移植レシピエントである。移植とは、ドナー個体からレシピエント個体への組織サンプル又は移植片の移植を示し、組織によって提供される生理学的機能を回復するために組織を必要とするヒトレシピエントに対してよく行われる。移植される組織としては、全臓器、例えば腎臓、肝臓、心臓、肺;臓器構成要素、例えば皮膚移植片及び眼の角膜;並びに細胞懸濁液、例えば骨髄細胞及び骨髄又は循環血液から選択及び増殖された細胞の培養物、並びに全血輸血が挙げられる(が、これに限定されない)。
任意の移植の重篤な潜在的合併症は、宿主のレシピエントと生着した組織との間の抗原の相違から生じる。相違の性質及び程度に応じて、宿主による移植片の、又は移植片による宿主の免疫学的攻撃、又はその両方のリスクがあり得る。リスクの程度は、同様の表現型を有し、同様に処置された対象の集団における反応パターンを追跡し、十分に受け入れられている臨床手順に従って考えられる各種の寄与因子を相関させることにより求められる。免疫学的攻撃は、既存の免疫応答(事前に形成された抗体など)の又はほぼ移植時に開始されたもの(TH細胞の生成など)の結果であり得る。抗体、Tヘルパー(TH)細胞又は細胞傷害性T(Tc)細胞は、相互との、及び各種のエフェクター分子や細胞との任意の組合せで関与し得る。しかし、免疫応答に関与する抗原は一般に既知でなく、したがって抗原特異的療法の設計又は抗原特異的寛容の誘導に困難がもたらされる。本発明の修飾粒子が臓器拒絶反応の予防に特に有用であるのは、粒子が寛容の誘導又は炎症性免疫応答の改善に有効であるために、結合したペプチド又は抗原を修飾粒子にコンジュゲートさせる必要がないためである。
好ましくは、本発明は、レシピエントによる組織移植片の拒絶につながる、宿主対移植片病のリスクを低減させることに関する。超急性、急性又は慢性の拒絶反応の影響を予防又は軽減するために処置が実施され得る。処置は、移植片の設置時に、寛容の準備が整うように、移植の十分に事前に優先的に開始されるが、これが可能ではない場合、処置は、移植と同時に又はその後に開始することができる。開始の時間にかかわらず、処置は一般に、移植後の少なくとも最初の1ヶ月間は一定の間隔で継続する。移植片の十分な順応が生じる場合、追跡の投薬は不要であり得るが、移植片の拒絶又は炎症の何らかの証拠が存在する場合、再開することができる。もちろん、本発明の寛容化手順は、さらに低いレベルのリスクを達成するために、他の形態の免疫抑制と組合せることができる。
好ましくは、疾患又は状態は、望ましくない免疫活性化、例えばアテローム性動脈硬化症、虚血性再灌流障害及び心筋梗塞などを含む。
好ましくは、本発明は、望ましくない過敏症に関する病理学的状態の処置に関する。過敏症は、I型、II型、III型及びIV型、即時型(I型)過敏症のうちのいずれか1つであることができる。投与頻度は、通例、アレルゲン暴露のタイミングと一致する。好適な動物モデルは当分野で公知である(例えばGundel et al.,Am.Rev.Respir.Dis.,146:369,1992,Wada et al,J.Med.Chem.,39:2055,1996;及び国際公開第96/35418号)。
好ましくは、処置可能な疾患又は状態としては、炎症性単球、自己免疫によって引き起こされたもの、心血管疾患(例えば心虚血又は心筋梗塞及び移植後の虚血再灌流障害)、ウイルス性脳炎、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、腹膜炎、致死性フラビウイルス脳炎、免疫病理学的ウイルス感染(インフルエンザ及び西ナイルウイルス(WNV)を含む)、関節リウマチ、HIV脳炎、慢性肝疾患、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)及びその対応する疾患、潰瘍性大腸炎などが挙げられる。
好ましくは、本発明のマイクロ粒子又はナノ粒子(例えば、本発明の方法で製造されたもの)は、処置可能な状態のいずれか1つを処置するのに有効な第2の治療薬と組合せて使用することができる。
好ましくは、対象はヒト患者である。好ましくは、対象は、非ヒト哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、家畜動物(ウマ、ラバ、ウシ、オウシ、メウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ラクダなど)、齧歯動物(ウサギ、ハムスター、マウス、ラットなど)又はペット(猫、犬)である。
好ましくは、方法は、任意の好適な手段又は経路、例えば経口、経鼻、静脈内、筋肉内、眼内、経皮又は皮下によって、主題のマイクロ粒子又はナノ粒子(例えばカルボキシル化粒子)を含む主題の組成物又は医薬組成物を対象に投与することを含む。好ましくは、粒子は経鼻投与される。好ましくは、粒子は静脈内投与される。
本発明の粒子は、それを必要とする対象における炎症性免疫応答を軽減するのに、又はそれを必要とする対象における細菌感染症若しくはウイルス感染症を処置するのに有効な、任意の用量で投与することができる。好ましくは、約102〜約1020個の粒子が個体に与えられる。好ましくは、約103〜約1015個の粒子が与えられる。好ましくは、約106〜約1012個の粒子が与えられる。好ましくは、約108〜約1010の粒子が与えられる。好ましくは、好ましい用量は0.1%固形分/mlである。したがって、0.5μmビーズでは、好ましい用量は約4×109ビーズであり、0.05μmビーズでは、好ましい用量は約4×1012ビーズであり、3μmビーズでは、好ましい用量は2×107ビーズである。しかし、処置されるべき特定の状態を処置するのに有効である、いかなる用量も本発明に含まれる。
好ましくは、主題のマイクロ粒子又はナノ粒子(例えばカルボキシル化粒子)を含有する主題の組成物又は主題の医薬組成物は、それを必要とする対象への投与時に免疫寛容を誘導する。
好ましくは、主題のマイクロ粒子又はナノ粒子(例えばカルボキシル化粒子)を含有する主題の組成物又は主題の医薬組成物は、それを必要とする対象への投与時に炎症性免疫応答を改善する。
11.効能試験
処置可能な疾患及び状態に対する主題のマイクロ粒子及びナノ粒子の有効性は、好適な動物モデルを含めた、いくつかの有効性試験を使用して試験することができる。
寛容原性活性の代用は、標的部位で適切なサイトカインの産生を刺激する粒子の能力である。標的部位でTサプレッサ細胞によって放出される免疫制御性サイトカインはTGF−βであると考えられる(Miller et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:421,1992)。寛容中に産生され得る他の因子は、サイトカインIL−4及びIL−10並びに媒介物質PGEである。対照的に、活発な免疫破壊を受けている組織中のリンパ球は、IL−1、IL−2、IL−6及びIFNγなどのサイトカインを分泌する。したがって、対象粒子の有効性は、適切な種類のサイトカインを刺激するその能力を測定することによって評価することができる。
例えば、対象粒子、有効な粘膜結合成分、有効な組合せ又は粘膜投与の有効な様式及びスケジュールの迅速なスクリーニング試験を、動物モデル系を使用して実施することができる。動物は粘膜表面で試験粒子組成物によって処置され、ある時点で疾患を引き起こす抗原又は感染性因子の投与によって攻撃される。脾臓細胞を単離し、約50μg/mLの濃度の、疾患を引き起こす抗原又は感染性因子に由来する抗原の存在下にて、インビトロで培養する。培地中へのサイトカイン分泌は標準的なイムノアッセイにより定量化することができる。
対象粒子が細胞の活性を抑制する能力は、修飾粒子で免疫付与した動物から単離した細胞を使用して、又は疾患を引き起こす抗原若しくはウイルス抗原標的抗原に応答性である細胞株を作製することによって決定することができる(Ben−Nun et al.,Eur.J.Immunol.,11195,1981)。この実験の一変形形態では、サプレッサ細胞集団に軽度に放射線照射して(約1000〜1250ラド)増殖を防止し、サプレッサをレスポンダ細胞と共培養し、その後、トリチウム化チミジン取込み(又はMTT)を使用して、レスポンダの増殖活性を定量化する。別の変形では、サプレッサ細胞集団及びレスポンダ細胞集団を、ポリカーボナート膜によって分離された、細胞集団が相互の1mm以内で共インキュベーションするのを可能にする、デュアル・チャンバ・トランスウェル培養システム(dual chamber transwell culture system)(Costar、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)の上部及び下部レベルにて培養する(国際公開第WO93/16724号)。この手法では、レスポンダの増殖活性を別個に測定することができるため、サプレッサ細胞集団の照射は不要である。
特定の疾患の処置のための組成物の有効性及び投与様式も、対応する動物疾患モデルにおいて詳しく説明することができる。疾患の総合的症状を減退又は遅延させるための処置の能力は、使用されているモデルに適するように、疾患の循環生化学的及び免疫学的特徴、罹患組織の免疫組織学並びに全体的な臨床的特徴のレベルにて監視される。試験に使用することができる動物モデルの非限定的な例は以下に含まれる。
例えば、自己免疫疾患の研究のための動物モデルは当分野で公知である。ヒト自己免疫疾患に最も類似していると思われる動物モデルとしては、高い発生率の特定の疾患を自発的に発症する動物株が含まれる。そのようなモデルの例としては、1型糖尿病に類似した疾患を発症する非肥満性糖尿病(NOD)マウス、並びにニュージーランドハイブリッド、MRL−Faslpr及びBXSBマウスなどの、狼瘡様疾患を発症しやすい動物が挙げられるが、これに限定されない。自己免疫疾患が誘導されている動物モデルとしては、多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、関節リウマチのモデルであるコラーゲン誘導性関節炎(CIA)及びブドウ膜炎のモデルである実験的自己免疫ブドウ膜炎(EAU)が挙げられるが、これに限定されない。自己免疫疾患の動物モデルも遺伝子操作によって作製されていて、例えば炎症性腸疾患用のIL−2/IL−10ノックアウトマウス、SLE用のFas又はFasリガンドノックアウト及び関節リウマチ用のIL−1受容体アンタゴニストノックアウトが挙げられる。
本発明は、TH1応答、TH2応答、TH17応答又はこれらの応答の組合せを調節することによる寛容の調節を考慮する。TH1応答の調節は、例えばインターフェロンガンマの発現を変化させることを含む。TH2応答の調節は、例えばIL−4、IL−5、IL−10及びIL−13の任意の組合せの発現を変化させることを含む。通例、TH2応答の増加(減少)は、IL−4、IL−5、IL−10又はIL−13のうちの少なくとも1つの発現の増加(減少)を含むことになり、より通例には、TH2応答の増加(減少)は、IL−4、IL−5、IL−10又はIL−13のうちの少なくとも2つの発現の増加を含むことになり、最も通例には、TH2応答の増加(減少)は、IL−4、IL−5、IL−10又はIL−13のうちの少なくとも3つの増加を含むことになるが、TH2応答の増加(減少)は理想的には、IL−4、IL−5、IL−10及びIL−13のうちの全ての発現の増加(減少)を含むことになる。TH17の調節は、例えば、TGF−ベータ、IL−6、IL−21及びIL−23の発現を変化させることを含み、IL−17、IL−21及びIL−22のレベルに影響する
自己抗原及び自己免疫疾患に対する寛容(Tolerance)は、胸腺における自己反応性T細胞のネガティブ選択及び胸腺欠失を免れ、末梢に認められる自己反応性T細胞の末梢寛容の機構を含む、様々な機構によって達成される。末梢T細胞寛容をもたらす機構の例としては、自己の抗原の「無視」、自己抗原に対するアネルギー又は不応答性、サイトカイン免疫偏向及び自己反応性T細胞の活性化誘導細胞死が挙げられる。さらに、制御性T細胞は、末梢寛容の媒介に関与することが示されている。例えばWalker et al.(2002)Nat.Rev.Immunol.,2:11−19;Shevach et al.(2001)Immunol.Rev.,182:58−67を参照のこと。ある状況において、自己抗原に対する末梢寛容が消失し(又は破壊され)、自己免疫応答が生じる。例えば、EAEの動物モデルにおいて、TLR自然免疫受容体による抗原提示細胞(APC)の活性化が、自己寛容を破壊し、結果的にEAEを誘導することが示されている(Waldner et al.(2004)J.Clin.Invest.,113:990−997)。
好ましくは、本発明は、TLR7/8、TLR9及び/又はTLR7/8/9依存性細胞刺激を抑制又は低減しながら、抗原提示を増加させるための方法を提供する。本明細書に記載されるように、特定の主題粒子の投与により、免疫刺激性ポリヌクレオチドに関連するTLR 7/8、TLR9及び/又はTLR7/8/9依存性細胞応答を抑制しながら、DC又はAPCによる抗原提示がもたらされる。そのような抑制は、1つ以上のTLR関連サイトカインのレベルの低下を含み得る。
本発明は、Mac−1及びLFA−1介在性障害の処置に有用な生物学的特性を有する、新規化合物も提供する。
12.医薬組成物
本発明の一態様は、主題のマイクロ粒子及びナノ粒子を含み、医薬的に許容される担体を任意に含む医薬組成物を提供する。好ましくは、これらの組成物は、1種以上の追加の治療薬を任意にさらに含む。又は、本発明の主題の粒子は、それを必要とする患者に、1種以上の他の治療薬の投与と組合せて投与され得る。例えば、本発明の化合物との併用投与又は医薬組成物中への包含のためのさらなる治療薬は、承認された抗炎症薬であり得るか、又は制御されていない炎症性免疫応答又は細菌感染症若しくはウイルス感染症を特徴とする任意の疾患の処置について承認を最終的に得る、食品医薬品局において承認を受けている、いくつかの薬剤のうちのいずれかであり得る。本発明の特定の主題の粒子は、処置のために遊離形態で、又は適切な場合には、その医薬的に許容される誘導体として存在し得ることも理解されよう。
好ましくは、本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含み、担体は、本明細書で使用する場合、所望の特定の剤形に適した、ありとあらゆる溶媒、希釈剤又は他の液体ビヒクル、分散剤若しくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、保存料、固体結合剤、潤滑剤などを含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)には、医薬組成物の調合に用いられる各種の担体及びそれを調製するための既知の技術が開示されている。いずれの従来の担体媒体も、例えば、何らかの望ましくない生物学的作用を生ずることにより、又はさもなければ医薬組成物の他のいずれの成分と有害な様式で相互作用することにより、本発明の化合物に不相溶性である場合を除き、その使用は、本発明の範囲内であると考えられる。
医薬的に許容される担体として役立つことのできる材料のいくつかの例としては、糖類、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えばコーンスターチ及びポテトスターチ;セルロース及びその誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及びセルロースアセタート;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばカカオバター及び座薬用ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール;エステル、例えばエチルオレアート及びエチルラウラート;寒天;緩衝剤、例えばマグネシウムヒドロキシド及びアルミニウムヒドロキシド;アルギン酸;発熱物質不含水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール及びリン酸緩衝液並びに他の非毒性相溶性潤滑剤、例えばナトリウムラウリルサルファート及びマグネシウムステアラートが挙げられるが、これに限定されず、並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、香味剤及び香料、保存料及び酸化防止剤も、調合者の裁量に従って、組成物中に存在することができる。
経口投与用の液体剤形としては、医薬的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが挙げられるが、これに限定されない。活性化合物に加えて、液体剤形は、当分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボナート、エチルアセタート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾアート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル並びにその混合物を含有し得る。不活性希釈剤の他に、経口組成物はアジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、香味剤及び香料も含むことができる。
注射用調製物、例えば水性又は油性の滅菌注射用懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、既知の技術に従って製剤され得る。滅菌注射用調製物は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液としての、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌注射用溶液、懸濁液又はエマルジョンであってもよい。用いられ得る許容されるビヒクル及び溶媒には、水、リンガー溶液(米国薬局方)及び等張ナトリウムクロリド溶液がある。さらに、滅菌不揮発性油が、溶媒又は懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無刺激性不揮発性油を用いることができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製に使用される。
注射用製剤は、例えば細菌保持フィルターでの濾過によって、又は使用前に滅菌水若しくは他の滅菌注射用媒体に溶解又は分散することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を包含することによって滅菌することができる。
薬物の効果を延長するために、皮下注射又は筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延することが望ましいことが多い。この遅延は、液体懸濁液又は水溶性が低い結晶性若しくは非晶質の材料を使用することによって達成され得る。
そこで薬物の吸収速度はその溶解速度に依存し、溶解速度は次に、結晶サイズ及び結晶形態に依存し得る。又は、非経口投与された薬物形態の吸収の遅延は、薬物を油性ビヒクルに溶解又は懸濁させることによって達成される。注射用デポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に薬物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。薬物対ポリマーの比及び用いられる特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射製剤はまた、身体組織と適合性のあるリポソーム又はマイクロエマルジョン中に薬物を捕捉することによっても調製される。
経口投与用の固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤及び顆粒剤が挙げられる。そのような固体剤形において、修飾粒子は、少なくとも1つの不活性の医薬的に許容される賦形剤又は担体、例えばナトリウムシトラート若しくはジカルシウムホスファート並びに/又はa)充填剤若しくは増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸;b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース及びアラビアゴム;c)保湿剤、例えばグリセロール;d)崩壊剤、例えば寒天、カルシウムカーボナート、ポテトスターチ若しくはタピオカスターチ、アルギン酸、あるシリカート及びナトリウムカーボナート;e)溶解遅延剤、例えばパラフィン;f)吸収促進剤、例えば第4級アンモニウム化合物;g)湿潤剤、例えばセチルアルコール及びグリセロールモノステアラート;h)吸収剤、例えばカオリン及びベントナイト粘土並びにi)潤滑剤、タルク、カルシウムステアラート、マグネシウムステアラート、固体ポリエチレングリコール、ナトリウムラウリルサルファート並びにその混合物と混合される。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、剤形は緩衝剤も含み得る。
同様の種類の固体組成物は、ラクトース又は乳糖、並びに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤としても用いられ得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤の固体剤形は、コーティング及びシェル、例えば腸溶コーティング及び製薬業界で周知である他のコーティングを用いて調製することができる。それらは乳白剤を任意に含有し得て、それらが活性成分のみを又は活性成分を優先的に、腸管のある部分において、任意に遅延した様式で放出する組成物であることもできる。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。同様の種類の固体組成物は、ラクトース又は乳糖、並びに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤としても用いられ得る。
マイクロ粒子及びナノ粒子はまた、上記のように1種以上の賦形剤を含むマイクロカプセル化形態であることもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤の固体剤形は、コーティング及びシェル、例えば腸溶コーティング、放出制御コーティング及び医薬製剤分野で周知の他のコーティングを用いて調製することができる。そのような固体剤形において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性希釈剤、例えばスクロース、ラクトース及びデンプンと混合され得る。そのような剤形は、通常の慣行と同様に、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば錠剤化潤滑剤及び他の錠剤化助剤、例えばマグネシウムステアラート及び微結晶セルロースも含み得る。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、剤形は緩衝剤も含み得る。それらは乳白剤を任意に含有し得て、それらが修飾粒子のみを又は修飾粒子を優先的に、腸管のある部分において、任意に遅延した様式で放出する組成物であることもできる。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。
本発明は、カルボキシル化マイクロ粒子及びナノ粒子の医薬的に許容される局所製剤を含む。「医薬的に許容される局所製剤」という用語は、本明細書で使用する場合、表皮への製剤の適用による主題のマイクロ粒子/ナノ粒子の皮内投与のために医薬的に許容される、任意の製剤を意味する。好ましくは、本発明の局所製剤は、担体系を含む。医薬的に有効な担体としては、溶媒(例えばアルコール、ポリアルコール、水)、クリーム、ローション、軟膏、オイル、プラスター、リポソーム、粉末、エマルジョン、マイクロエマルジョン及び緩衝溶液(例えば低張又は緩衝食塩水)又は局所投与医薬品の分野において既知の任意の他の担体が挙げられるが、これに限定されない。当分野で既知の担体のより完全な列挙は、当分野の標準である参考テキスト、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,16th Edition,1980 and 17th Edition,1985,both published by Mack Publishing Company,Easton,Pa.によって提供され、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。好ましくは、本発明の局所製剤は賦形剤を含み得る。当分野において既知の任意の医薬的に許容される賦形剤を使用して、本発明の医薬的に許容される局所製剤が調製され得る。
本発明の局所製剤に含めることができる賦形剤の例としては、保存料、酸化防止剤、保湿剤、皮膚軟化剤、緩衝剤、可溶化剤、他の浸透剤、皮膚保護剤、界面活性剤及び噴射剤並びに/又は修飾粒子と組合せて使用される追加の治療薬が挙げられるが、これに限定されない。適切な保存料としては、アルコール、第4級アミン、有機酸、パラベン及びフェノールが挙げられるが、これらに限定されない。好適な酸化防止剤としては、アスコルビン酸及びそのエステル、ナトリウムビススルファイト、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トコフェロール並びにEDTA及びクエン酸などのキレート剤が挙げられるが、これに限定されない。好適な保湿剤としては、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、尿素及びプロピレングリコールが挙げられるが、これに限定されない。本発明と共に使用するための好適な緩衝剤としては、クエン酸、塩酸及び乳酸緩衝剤が挙げられるが、これに限定されない。好適な可溶化剤としては、第4級アンモニウムクロリド、シクロデキストリン、ベンジルベンゾアート、レシチン及びポリソルバートが挙げられるが、これに限定されない。本発明の局所製剤で使用できる好適な皮膚保護剤としては、ビタミンE油、アラトイン、ジメチコン、グリセリン、ワセリン及び酸化亜鉛が挙げられるが、これに限定されない。
好ましくは、本発明の医薬的に許容される局所製剤は、少なくともカルボキシル化マイクロ粒子及びナノ粒子並びに浸透促進剤を含む。局所製剤の選択は、処置される症状、存在する粒子及び他の賦形剤の物理化学的特徴、製剤中でのその安定性、利用可能な製造装置並びに費用の制約を含む、複数の要因に依存する。「浸透促進剤」という用語は、本明細書で使用する場合、角質層を通して表皮又は真皮中へ、好ましくは全身吸収をほぼ又は全く伴わずに、薬理学的に活性な化合物を輸送することができる薬剤を意味する。多種多様な化合物が、皮膚を介した薬物の浸透速度の向上における、その有効性に関して評価されてきた。例えば、多様な皮膚浸透促進剤の使用及び試験を概説するPercutaneous Penetration Enhancers,Maibach H.I.and Smith H.E.(eds.),CRC Press,Inc.,Boca Raton,Fla.(1995)、及びBuyuktimkin et al.,Chemical Means of Transdermal Drug Permeation Enhancement in Transdermal and Topical Drug Delivery Systems,Gosh T.K.,Pfister W.R.,Yum S.I.(Eds.),Interpharm Press Inc.,Buffalo Grove,111(1997)を参照のこと。好ましくは、本発明で使用するための浸透剤としては、トリグリセリド(例えばダイズ油)、アロエ組成物(例えばアロエベラゲル)、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクトリフェニル(octolyphenyl)ポリエチレングリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N−デシルメチルスルホキシド、脂肪酸エステル(例えばイソプロピルミリスタート、メチルラウラート、グリセロールモノオレアート及びプロピレングリコールモノオレアート)及びN−メチルピロリドンが挙げられるが、これに限定されない。
好ましくは、組成物は、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、散剤、液剤、スプレー剤、吸入剤又はパッチ剤の形態であり得る。好ましくは、本発明による組成物の製剤はクリームであり、クリームは飽和又は不飽和脂肪酸、例えばステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミト−オレイン酸、セチルアルコール又はオレイルアルコールをさらに含み得て、ステアリン酸が特に好ましい。本発明のクリームは、非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシステアラートも含み得る。好ましくは、活性成分は、滅菌条件下で医薬的に許容される担体及び必要に応じて、任意の必要な保存料又は緩衝剤と混合される。眼科用製剤、点耳剤及び点眼剤も、本発明の範囲内であると考えられる。さらに、本発明は、身体への化合物の制御送達を提供するというさらなる利点を有する、経皮パッチの使用を検討する。そのような剤形は、化合物を適切な媒体に溶解又は分散させることによって作製される。上記のように、浸透促進剤も、皮膚での化合物の流動を増大させるために使用することができる。速度は、速度制御膜を設けることによって、又は化合物をポリマーマトリックス若しくはゲルに分散させることによって制御することができる。
カルボキシル化マイクロ粒子及びナノ粒子は、エアゾールによって投与することができる。これは修飾粒子を含有する水性エアゾール、リポソーム調製物又は固体粒子を調製することにより達成される。非水性(例えばフルオロカーボン噴射剤)懸濁液を使用することができる。
通常、水性エアゾールは、薬剤の水溶液又は懸濁液を、従来の医薬的に許容される担体及び安定剤と共に製剤することによって作製される。担体及び安定化剤は特定の化合物の要件によって変わるが、通例、非イオン性界面活性剤(ツイン、プルロニック又はポリエチレングリコール)、血清アルブミンなどの無毒性タンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝剤、塩、糖又は糖アルコールが挙げられる。エアゾールは一般に等張液から調製される。
本発明のカルボキシル化ナノ粒子及びマイクロ粒子並びに医薬組成物は、併用療法において製剤及び使用できることも、即ち、化合物及び医薬組成物は、1つ以上の他の所望の治療又は医療手順と同時に、その前に、又はその後に製剤及び/又は(with/or)投与できることも認識されるであろう。併用レジメンで用いる療法(治療薬又は手順)の特定の組合せによって、所望の治療薬及び/又は手順の適合性並びに達成される所望の治療効果が考慮されるであろう。用いられる療法は同じ障害に対して所望の効果を達成し得る(例えば、本発明の化合物は別の抗炎症剤と同時に投与され得る)、又はその療法が異なる効果を達成し得る(例えば、任意の有害な影響の抑制)ことも認識されるであろう。
好ましくは、本発明のカルボキシル化粒子を含有する医薬組成物は、1つ以上の追加の治療活性成分(例えば抗炎症性及び/又は緩和性)をさらに含む。本発明の目的では、「緩和的」という用語は、疾患の症状及び/又は治療レジメンの副作用の軽減に集中するが、治癒的ではない処置を示す。例えば、緩和処置は、鎮痛剤、抗悪心薬及び制吐薬を含む。
以下の例は、本発明を説明するために与える。しかし、本発明はこれらの例に記載された特定の条件又は詳細事項に限定されないことを理解されたい。本明細書を通して、米国特許又は特許出願公開を含む公的に利用可能な文書へのありとあらゆる言及は、参照により具体的に組み入れられている。
例
例1 高度に負に帯電したPLGAナノ粒子の調製
PLGA 0.9005gをエチルアセタート18mlに溶解させて、ポリマー溶液を形成した。該ポリマー溶液を、ポリアクリル酸0.2340グラムを含有する0.5%ポリビニルアルコール(PVA)溶液80mLと混合し、IKA(いずれかの国における登録商標)DIGITAL ULTRA−TURRAX(いずれかの国における登録商標)T25ホモジナイザを使用して、18,000rpmにて1分間ホモジナイズした。得られたエマルジョンをガラス容器に注入し、400rpmにて4時間磁気撹拌して、溶媒を蒸発させた。次いで、ナノ粒子を蒸留水で3回洗浄してから、凍結乾燥させた。粒径及びゼータ電位は、Malvern粒径分析器(ウスターシャー、英国)によって測定した。該凍結乾燥粒子は、541.5nmの平均粒径及び−40.5mVのゼータ電位を有することが判明した。
例2 高度カルボキシル化PLGAナノ粒子の調製
PLGA 5.0860gをエチルアセタート100mLに溶解させて、PLGA溶液を形成した。1%ポリビニルアルコール(PVA)溶液280ml、エチルアセタート20ml及びポリアクリル酸1.3グラムからなる水溶液を調製した。次いで、該PLGA溶液を該PVA溶液と混合し、IKA(いずれかの国における登録商標)DIGITAL ULTRA−TURRAX(いずれかの国における登録商標)T25ホモジナイザを使用して、24,000rpmにて1分間均ホモジナイズした。得られたエマルジョンを2Lガラス製フラスコに注入し、一晩撹拌することによって有機溶媒を除去した。硬化したナノ粒子を蒸留水で3回洗浄してから、凍結乾燥させた。該凍結乾燥粒子は、529.9nmの平均粒径及び−40.6mVのゼータ電位を有することが判明した。
例3 ダブル乳化工程による、BSAが装填された、高度に負に帯電したPLGAナノ粒子の調製
PLGA 0.9084gをエチルアセタート18mLに溶解させて、PLGA溶液を形成した。0.5%ポリビニルアルコール(PVA)溶液(水中)80ml、エチルアセタート6.5ml及びポリアクリル酸0.2340グラムからなる水溶液を調製した。ウシ血清アルブミン(BSA)20mgを水性緩衝液2.0mLに溶解させて、タンパク質溶液を形成した。該BSA溶液1.8mLを該PLGA溶液と混合し、ホモジナイザを使用して24,000rpmにて45秒間ホモジナイズした。得られたエマルジョンを該PVA溶液と混合し、別のホモジナイザを使用して18,000rpmにて1分間ホモジナイズした。得られた最終エマルジョンを1Lガラス製フラスコに注入し、50ミリバールの真空下でローター蒸発により溶媒を除去した。BSA装填粒子を蒸留水で3回洗浄してから、凍結乾燥させた。該凍結乾燥粒子は、528.2nmの平均粒径及び−40.4mVのゼータ電位を有することが判明した。280nmにてUV分光計によって測定すると、BSA装填量は、封入効率が約85%で1.7%であることが判明した。
例4 ダブル乳化工程による、BSAが装填された、高度に負に帯電したPLGAナノ粒子の調製
PLGA 0.9064gをエチルアセタート18mLに溶解させて、PLGA溶液を形成した。0.5%ポリビニルアルコール(PVA)溶液(水中)80ml、エチルアセタート6.5ml及びポリアクリル酸0.2340グラムからなる水溶液を調製した。BSA 40mgを水性緩衝液1.0mLに溶解させて、タンパク質溶液を形成した。該BSA溶液0.45mLを該PLGA溶液と混合し、ホモジナイザを使用して24,000rpmにて45秒間ホモジナイズした。得られたエマルジョンを該PVA溶液と混合し、別のホモジナイザを使用して18,000rpmにて1分間ホモジナイズした。得られた最終エマルジョンを1Lガラス製フラスコに注入し、50ミリバールの真空下でローター蒸発により溶媒を除去した。BSA装填粒子を蒸留水で3回洗浄してから、凍結乾燥させた。該凍結乾燥粒子は、587.4nmの平均粒径及び−41.4mVのゼータ電位を有することが判明した。波長280nmにてUV分光計によって測定すると、BSA装填率は、封入効率が70%で1.4%であることが判明した。
例5 ダブル乳化工程によってパクリタキセルを装填した、高度に負に帯電したPLGAナノ粒子の調製
PLGA 0.9g及びパクリタキセル18mgをエチルアセタート18mLに溶解させて、PLGA−パクリタキセル溶液を形成した。該PLGA−パクリタキセル溶液を、ポリアクリル酸0.2340グラムを含有する0.5%ポリビニルアルコール溶液80mLと混合し、IKA(いずれかの国における登録商標)Digital ULTRA−TURRAX(いずれかの国における登録商標)T25ホモジナイザを使用して、18,000rpmにて1分間ホモジナイズした。得られたエマルジョンをガラス容器に注入し、400rpmにて5時間磁気撹拌して、溶媒を蒸発させた。次いで、パクリタキセル装填ナノ粒子を蒸留水で3回洗浄してから、凍結乾燥させた。該凍結乾燥粒子は、574.6nmの平均粒径及び−43.8mVのゼータ電位を有することが判明した。HPLCによって測定すると、パクリタキセル装填率は、封入効率が約100%で2%であることが判明した。
例6 ダブル乳化によってエクセナチドを装填した、高度に負に帯電したPLGAナノ粒子の調製
PLGA 0.9gをエチルアセタート18mLに溶解させて、PLGA溶液を形成した。0.5%ポリビニルアルコール(PVA)溶液(水中)80ml、エチルアセタート6.5ml及びポリアクリル酸0.2340グラムからなる水溶液を調製した。エキセンディン−4アセタート20mgを水性緩衝液2.0mLに溶解させて、API溶液を形成した。該API溶液1.8mLを該PLGA溶液と混合し、ホモジナイザを使用して24,000rpmにて45秒間ホモジナイズした。得られたエマルジョンを該PVA溶液と混合し、別のホモジナイザを使用して18,000rpmにて1分間ホモジナイズした。得られた最終エマルジョンを1Lガラス製フラスコに注入し、50ミリバールの真空下でローター蒸発により溶媒を除去した。エキセンディン−4アセタート装填粒子を蒸留水で3回洗浄してから、凍結乾燥させた。該凍結乾燥粒子は、579.7nmの平均粒径、約-47.0mVのゼータ電位及びHPLCによって測定した、ほぼ100%の封入効率での約2%のエクセチナド装填率を有することが判明した。
例7 蛍光染料を装填した、高度に負に帯電したPLGAナノ粒子の調製
PLGA 0.9g及びのクマリン−6 9mgをエチルアセタート18mLに溶解させて、PLGA溶液を形成した。PLGA/クマリン溶液を、ポリアクリル酸0.2340グラムを含有する0.5%ポリビニルアルコール溶液80mLと混合し、IKA(いずれかの国における登録商標)Digital ULTRA−TURRAX(いずれかの国における登録商標)T25ホモジナイザを使用して、18,000rpmにて1分間ホモジナイズした。得られたエマルジョンをガラス容器に注入し、400rpmにて5時間磁気撹拌して、溶媒を蒸発させた。次いで、クマリン−6装填ナノ粒子を蒸留水で3回洗浄してから、凍結乾燥させた。該凍結乾燥粒子は、479.4nmの平均粒径、約−44.1mVのゼータ電位、及び444nmの波長にてUV分光計によって測定した、ほぼ100%封入効率での約1%のクマリン−6装填率を有することが判明した。
例8 ヒアルロン酸を含む、高度に負に帯電したPLGAナノ粒子の調製
PLGA 0.2078gをエチルアセタート8mlに溶解させた。該PLGA溶液を、ナトリウムヒアルロナート0.0404グラム及びエチルアセタート3.25mLを含有する0.5%ポリビニルアルコール溶液40mlと混合した。ホモジナイザを使用して該混合物を25,000rpmにて1分間ホモジナイズした。得られたエマルジョンを1Lガラス製フラスコに注入し、50ミリバールの真空下でローター蒸発によりエチルアセタートを除去した。得られたナノ粒子を蒸留水で3回洗浄してから、凍結乾燥させた。該凍結乾燥粒子は、753.2.0nmの平均粒径及び−43.1mVのゼータ電位を有することが判明した。
例9 ヒアルロン酸を含む、高度に負に帯電したPLGAナノ粒子の調製
PLGA 0.9014gをエチルアセタート18mlに溶解させた。該PLGA溶液を、ナトリウムヒアルロナート0.0819グラム及びエチルアセタート6.5mLを含有する0.5%ポリビニルアルコール溶液80mLと混合した。ホモジナイザを使用して該混合物を18,000rpmにて1分間ホモジナイズした。得られたエマルジョンをガラス容器に注入し、400rpmにて5時間磁気撹拌して、溶媒を蒸発させた。得られたナノ粒子を蒸留水で3回洗浄してから、凍結乾燥させた。該凍結乾燥粒子は、424.0nmの平均粒径及び−41.1mVのゼータ電位を有することが判明した。
例10 洗浄試験
例9に記載したように製造したBSA装填PLGAナノ粒子300mgを脱イオン水30mL中で再構成する。短時間の超音波処理の後、粒子は十分に懸濁されている。試料をゼータ電位測定用に採取する。ゼータ電位は−42.7mVであることが判明する。
次いで、そのようなナノ粒子懸濁液に脱イオン水300mLを添加する。得られた混合物を、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)装置を使用して30mLに濃縮すると、ゼータ電位は−44.5mVであることが判明した。この洗浄工程をさらに2回反復し、各洗浄後に得られるゼータ電位はそれぞれ−43.0mV及び−40.1mVであることが判明する。
例1〜9の参考文献
・Layne,E.Spectrophotometric and Turbidimetric Methods for Measuring Proteins.Methods in Enzymology 3:447−455.1957.
・Stoscheck,CM.Quantitation of Protein.Methods in Enzymology 182:50−69.1990.
本発明をその好ましい実施形態を参照して、特に図示及び説明したが、当業者は、添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細事項に各種の変更がなされ得ることを理解するであろう。