JP2020511189A - 生体組織を熱処置するためのパルスエネルギーを利用したプロセス - Google Patents

生体組織を熱処置するためのパルスエネルギーを利用したプロセス Download PDF

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Abstract

生体組織を熱処置するためのプロセスは、標的組織を破壊せず、または恒久的に傷つけずに標的組織に治療効果を生み出すために、標的組織の温度を制御可能に上昇させるように、ある期間にわたって標的組織にパルスエネルギーを繰り返し適用する工程を含む。第1の処置を終えた後、標的組織へのパルスエネルギーの適用は、ある時間、停止される。単一の処置セッション内で第2の処置は時間間隔をおいた後に、標的組織を破壊せず、または恒久的に傷つけずに標的組織を治療的に処置するために標的組織の温度を制御可能に上昇させるように、標的組織にパルスエネルギーを繰り返し再適用することによって、標的組織に行われる。【選択図】図24

Description

本発明は概して、病的な生体組織等の生体組織を処置するためのシステムとプロセスを対象とする。とりわけ本発明は、標的組織を破壊せず、または恒久的に損傷せずに、標的組織に治療効果を生み出すパルスエネルギーを使用した生体組織の熱処置のためのプロセスを対象とする。
本発明者らは、組織の温度を所定の温度範囲まで制御可能に上昇させ、同時に標的組織を恒久的に傷つけないように数分間にわたる組織の平均温度上昇を所定レベル以下に維持することによって、生体組織、およびとりわけ損傷を受けた、または病的な生体組織に治療効果がもたらされることを発見した。とりわけ、本発明者らは、眼疾患に有益な効果を達成しながらも、網膜組織を破壊せず、または傷つけない方法で、レーザー光の様々な波長の形態等で電磁放射を網膜組織に適用することができることを発見した。本発明者らは、治療のためのものであるが、網膜組織細胞にとって致死量以下であり、したがって網膜組織での損傷をもたらす光凝固を回避するように、眼の網膜組織の予防的および保護的な処置を提供するレーザー光線を生成し、かつ網膜組織に適用できることを発見した。処置は典型的には、1秒未満の合計持続時間で病的な網膜の部分を放射するために、レーザーマイクロパルスの列を適用することを必要とする。各マイクロパルスは、およそ数十から数百マイクロセカンドの長さであり、マイクロセカンドは1〜数百ミリセカンドに分けられ、制御された方式で組織温度を上昇させる。
そのような制御された方式で組織温度を上昇させることは、熱ショックタンパク質の活性化および/または生成およびタンパク質修復の促進を選択的に刺激し、これは、組織を治療的に処置するためのメカニズムの役割を果たす。このマイクロパルス列は、標的組織において、熱により熱ショックタンパク質(HSP)を活性化すると考えられる。網膜組織の場合、該プロセスは、視覚的に敏感な桿状体と錐体を含む網膜層のすぐ後ろにある網膜色素上皮(RPE)層でのHSPを熱により活性化し、次に、これらの活性化されたHSPは、損傷したタンパク質を除去および修復することによって、病的な網膜をその健康状態へとリセットする。これは結果として、RPE機能を改善し、網膜の機能と自己調節、急性炎症の回復、慢性炎症の低減、および組織的な免疫調節を改善する。これらのレーザーによりもたらされた効果は、その後、網膜の疾患を遅らせ、停止させ、または逆転させ、視覚機能を改善し、視力喪失のリスクを減らす。熱ショックタンパク質の活性化を選択的に刺激するためにそのような制御された方式で組織温度を上げることは、他の組織にも同様に有益であると考えられる。
HSPは、ストレスの多い状態にさらされると細胞によって生成されるタンパク質のファミリーである。高レベルの熱ショックタンパク質の生成は、感染、炎症、運動、毒素への細胞の暴露、酸化剤、重金属、飢餓、低酸素、または水分欠乏、および組織外傷等の、異なる種類の環境ストレス条件にさらされることによって引き起こされ得る。
熱ショックタンパク質は、ウイルス感染、炎症、悪性化、酸化剤への暴露、細胞毒、および酸素欠乏を含む、体組織の多数の異常状態に反応する際に役割を果たすことが知られている。いくつかの熱ショックタンパク質は、他のタンパク質のための細胞内シャペロンとして機能し、HSPファミリーのメンバーは、タンパク質維持と、ストレスの多くない条件下でも細胞のタンパク質を単純にモニタリングする際のそれらの不可欠な役割のために、低レベルから中レベルで発現または活性化される。これらの活性は、細胞自身の修復システムの一部であり、細胞のストレス応答または熱ショック応答と呼ばれる。
熱ショックタンパク質は、ほとんどすべての細胞と多細胞生物の組織型、および体外培養された組織と培養細胞に見られる。HSPは典型的には細胞のタンパク質の3%〜10%を含むが、ストレス下では割合は15%に上昇し得る。哺乳動物細胞のタンパク質の密度は、(2−4)×1018CM−3の範囲であることがわかっている。したがって、前述の割合は、HSPの密度が通常(1−4)×1017CM−3であり、他方でストレス下では、密度が(3−6)×1017CM−3に上昇し得ることを意味する。
熱ショックタンパク質は典型的に、それらの分子量に従って命名され、および異なる方法で作用する。特に遍在する熱ショックタンパク質は、Hsp70、すなわち70キロダルトンの分子量のタンパク質である。それは、たった今形成されているタンパク質を守り、かつ損傷したタンパク質を救う際に、特に重要な役割を果たす。それは、最大7残基の長さのペプチドと相互に作用することができる中性の疎水性アミノ酸残基に親和性のある溝を含む。Hsp70は、展開可能でアセンブリ能力のある状態(assembly−competent states)でタンパク質構造を安定させる、ペプチド結合ドメインおよびATPaseドメインを有する。HSPは、その多くが疎水性部分を露出するミスフォールドタンパク質の凝集を防ぎ、およびその適切な構造へのタンパク質のリフォールディングを促進する役割を担う。Hsp70は、まずミスフォールドタンパク質またはフラグメントタンパク質に結合することによってこれを達成し、結合は、ATPを結合してADPへと加水分解する部位によって活動的に可能になる。
Hsp70熱ショックタンパク質は、抗原の結合と免疫系への提示に関係する、細胞外および膜結合の熱ショックタンパク質のメンバーである。Hsp70は、インフルエンザA型ウイルスのリボ核タンパク質の活性を阻害すること、およびウイルスの複製を阻止することがわかっている。腫瘍由来の熱ショックタンパク質は、特定の防御免疫を誘発する。実験的および臨床的な所見は、熱ショックタンパク質が自己免疫性関節炎、1型真性糖尿病、動脈硬化症、多発性硬化症、および他の自己免疫反応の調節に関与することを示した。
したがって、短期間に所定温度範囲まで標的組織の温度を選択的かつ制御可能に上昇させながら、より長い期間にわたって所定温度で組織の平均温度上昇を維持することができることの有益性が知られている。これは、感染または他の異常に応じて、体組織または体液における熱ショックタンパク質の数または活性を高めるために、熱ショック応答を誘発すると考えられる。しかしながら、これは、処置されている身体の組織または領域を損傷または破壊しないように制御された方法で行われなければならない。単一の処置セッション中に標的組織の細胞内の熱ショックタンパク質の活性化の量を最大化することが望ましいだろう。本発明はこれらの必要を満たし、かつ他の関連する利点を提供する。
本発明は、標的組織を治療的に処置するために標的組織にパルスエネルギーを適用することによって、生体組織を熱処置するプロセスを対象とする。標的組織を破壊せず、または恒久的に傷つけずに、標的組織を治療的に処置するために標的組織の温度を制御可能に上昇させることができるように、標的組織への第1の処置は、パルスエネルギーを生成し、ある期間にわたって標的組織に制御可能に適用することによって行われる。標的組織は網膜組織を含み得る。
パルスエネルギーは、波長または周波数、デューティサイクルおよびパルス列持続時間を含むエネルギーパラメータを有する。エネルギーパラメータは、治療効果を達成するために11℃まで標的組織温度を上昇させるように選択され、数分間にわたる組織の平均温度上昇は、恒久的に標的組織を傷つけないように所定のレベル以下に維持される。標的組織温度が、少なくとも標的組織へのパルスエネルギーの適用中に、およそ6℃〜11℃に上昇するように、パルスエネルギーパラメータが選択されてもよい。数分間にわたる標的組織の平均温度上昇は6℃以下に維持され、例えば数分間にわたっておよそ1℃以下等に維持される。
パルスエネルギーは、光線、マイクロ波、高周波、または超音波を含む場合もある。組織にパルスエネルギーを適用するために、デバイスが体腔に挿入されてもよい。パルスエネルギーは、標的組織に隣接している、または外部領域の表面近くに血液供給を有する、身体の外部領域に適用されてもよい。
パルスエネルギーは、およそ3〜6メガヘルツ(MHz)の高周波を含む場合もある。それは、およそ2.5%〜5%のデューティサイクルを有する場合もある。それは、およそ0.2〜0.4秒のパルス列持続時間を有する場合もある。高周波は、およそ2〜6mmのコイル半径と、およそ13〜57のアンペア回数を有するデバイスで生成されてもよい。
パルスエネルギーは、10〜20ギガヘルツ(GHz)のマイクロ波周波数を含む場合もある。マイクロ波は、0.2〜0.6秒のパルス列持続時間を有する場合もある。マイクロ波は、およそ2%〜5%のデューティサイクルを有する場合もある。マイクロ波は、およそ8〜52ワットの平均パワーを有する場合もある。
パルスエネルギーは、1つ以上のレーザー光線等の、パルス光線を含んでもよい。光線は、およそ530nm〜1300nm、およびより好ましくは800nm〜1000nmの波長を有する場合もある。パルス光線は、およそ0.5〜74ワットのパワーを有する場合もある。パルス光線は、10%未満、および好ましくは2.5%〜5%のデューティサイクルを有する。パルス光線は、およそ0.1〜0.6秒のパルス列持続時間を有する場合もある。
パルスエネルギーは、およそ1〜5MHzの周波数を有するパルス超音波を含む場合もある。超音波は、およそ0.1〜0.5秒の列持続時間を有する。超音波は、およそ2%〜10%のデューティサイクルを有する場合もある。超音波は、およそ0.46〜28.6ワットのパワーを有する。
第1の処置は、10秒未満、およびより典型的には1秒未満の期間、標的組織にパルスエネルギーを適用することを含む。第1の処置は、標的組織においてあるレベルの熱ショックタンパク質活性化を生み出す。
標的組織へのパルスエネルギーの適用は、好ましくは第1の処置の期間を超える時間、停止される。時間は、3秒から3分、または好ましくは10秒から90秒等の、数秒から数分を含んでもよい。
時間をおいた後、かつ単一の処置セッション内で、標的組織を破壊せず、または恒久的に傷つけずに標的組織を治療的に処置するために、標的組織の温度を制御可能に上昇させることができるように、第2の処置は、標的組織にパルスエネルギーを繰り返し再適用することによって、標的組織に対して行なわれる。第2の処置は、第1の処置後のレベルよりも高いレベルになるように標的組織において熱ショックタンパク質の活性化レベルを高める。
本発明の他の特徴および利点は、例として本発明の原理を例示する添付の図面と共に、以下のより詳細な説明から明白になるだろう。
添付図面は本発明を例示している。
レーザー源の半径およびパルス列持続時間と比較した、レーザー源の平均パワーを例示するグラフである。 レーザー源の半径およびパルス列持続時間と比較した、レーザー源の平均パワーを例示するグラフである。 図2のAとBは、レーザー源の半径および波長に応じた温度減衰に関する時間を例示するグラフである。 様々な高周波、デューティサイクルおよびコイル半径ごとのピークアンペア回数を例示するグラフである。 様々な高周波、デューティサイクルおよびコイル半径ごとのピークアンペア回数を例示するグラフである。 様々な高周波、デューティサイクルおよびコイル半径ごとのピークアンペア回数を例示するグラフである。 様々な高周波、デューティサイクルおよびコイル半径ごとのピークアンペア回数を例示するグラフである。 無線周波コイル半径と比較した、減衰までの温度上昇に対する時間を描くグラフである。 マイクロ波周波数およびパルス列持続時間と比較した、平均マイクロ波パワーを描くグラムである。 マイクロ波周波数およびパルス列持続時間と比較した、平均マイクロ波パワーを描くグラムである。 様々なマイクロ波周波数ごとの、温度減衰に関する時間を示すグラフである。 周波数およびパルス列持続時間と比較した、平均の超音波源パワーを表すグラフである。 様々な超音波周波数ごとの、温度減衰に関する時間を表すグラフである。 様々な超音波周波数ごとの、温度減衰に関する時間を表すグラフである。 超音波周波数と比較した、焦点加熱領域の容積を表すグラフである。 超音波エネルギー源に関する、パルス持続時間に対する温度の関係を比較するグラフである。 温度とパルス持続時間の関数としての、損傷の対数の大きさとHSP活性化のアレニウスの積分を例示するグラフである。 温度とパルス持続時間の関数としての、損傷の対数の大きさとHSP活性化のアレニウスの積分を例示するグラフである。 本発明に係る、時系列のパルスを生成する光生成ユニットの概略図であり、該光生成ユニットは、そこから伸長する光パイプを有する。 本発明に係る、標的組織に電磁エネルギーを送達する光刺激送達装置の断面図である。 本発明に係る、レーザー光線を生成するために使用されるシステムを例示する概略図である。 本発明に係る、レーザー光線の幾何学パターンを生成するために使用される光学の概略図である。 本発明に従って使用される光学走査メカニズムの平面図である。 図22の光学走査メカニズムの部分分解図であり、その様々な構成部品を例示している。 本発明の実施形態に係る、標的組織を処置するためのレーザースポットの、典型的な幾何学パターングリッドの暴露の制御されたオフセットを例示する。 標的組織の領域を処置するための制御可能に走査された、線の形態での幾何学的オブジェクトの使用を例示する概略図である。 図25に類似した概略図であるが、標的組織を処置するための幾何学的な線または回転されたバーを例示している。 本発明に係る、標的組織を処置するためのレーザー光線を生成するために使用されるシステムの代替的な実施形態を例示する概略図である。 本発明に係る、組織を処置するためのレーザー光線を生成するために使用されるシステムの別の代替的な実施形態を例示する概略図である。 本発明に係る、鼻腔に挿入され、そして組織を処置する内視鏡の端部の断面の概略図である。 本発明に係る、気管を通って肺の気管支へと伸長し、そこに処置を提供する気管支鏡の概略的な部分断面図である。 本発明に係る、身体の腸または結腸領域に光刺激を提供する大腸内視鏡の概略図である。 本発明に係る、胃に挿入され処置を提供する内視鏡の概略図である。 本発明に従って使用されるカプセル内視鏡の部分断面の斜視図である。 本発明に係る、身体内の組織を処置するためのパルス状高密度焦点式超音波の概略図である。 本発明に係る、耳たぶを介した患者の血流への送達治療に関する概略図である。 本発明に係る、耳たぶを介した血液への光刺激の送達に使用される本発明の刺激治療デバイスの断面図である。 本発明に係る、単一の処置セッション内での、予め決められた時間間隔の間の異なる処置領域に対するマイクロパルスエネルギーの適用、および事前に処置された領域へのエネルギーの再適用を例示する概略図である。 本発明に係る、単一の処置セッション内での、予め決められた時間間隔の間の異なる処置領域に対するマイクロパルスエネルギーの適用、および事前に処置された領域へのエネルギーの再適用を例示する概略図である。 本発明に係る、単一の処置セッション内での、予め決められた時間間隔の間の異なる処置領域に対するマイクロパルスエネルギーの適用、および事前に処置された領域へのエネルギーの再適用を例示する概略図である。 本発明に係る、単一の処置セッション内での、予め決められた時間間隔の間の異なる処置領域に対するマイクロパルスエネルギーの適用、および事前に処置された領域へのエネルギーの再適用を例示する概略図である。 本発明の実施形態に係る処置用のパワーと時間の関連性を描写するグラフである。 本発明の実施形態に係る処置用のパワーと時間の関連性を描写するグラフである。 本発明の実施形態に係る処置用のパワーと時間の関連性を描写するグラフである。 離れた距離にある2つの源からのウェーブフロントを表すグラフである。 図42のAとBは、突然の温度上昇に続く、経時的なHSP細胞系成分の挙動を 突然の温度上昇に続く、第1分におけるHSP細胞系分子の挙動を表すグラフである。 突然の温度上昇に続く、第1分におけるHSP細胞系分子の挙動を表すグラフである。 突然の温度上昇に続く、第1分におけるHSP細胞系分子の挙動を表すグラフである。 突然の温度上昇に続く、第1分におけるHSP細胞系分子の挙動を表すグラフである。 突然の温度上昇に続く、第1分におけるHSP細胞系分子の挙動を表すグラフである。 突然の温度上昇に続く、第1分におけるHSP細胞系分子の挙動を表すグラフである。 突然の温度上昇に続く、第1分におけるHSP細胞系分子の挙動を表すグラフである。 突然の温度上昇に続く、第1分におけるHSP細胞系分子の挙動を表すグラフである。 図44のAおよびBは、本発明に係る、1分間隔にわたっての、細胞質リザーバ中のHSPの活性化濃度および非活性化HSPにおける変動を例示するグラフである。 本発明に係る、改善比率 対 処置の間隔を表すグラフである。
添付の図面に示されるように、およびより完全に本明細書に記載されるように、本発明は、短時間に組織温度を上昇させるために熱の経時変化を引き起こし、同時に恒久的な組織損傷を避けるためにより長い時間にわたって平均組織温度を所定のレベル未満に維持するように選択されたエネルギーパラメータを有する、超音波、紫外線高周波、マイクロ波高周波、1つ以上の光線等のパルスエネルギーの伝達のためのシステムと方法を対象とする。熱の経時変化を作り出すことで、熱ショックタンパク質の活性化または生成を刺激し、および損傷を引き起こさずにタンパク質修復を促進すると考えられる。
本発明者らは、眼疾患への有益な効果を達成しながらも網膜の組織を破壊または損傷しない方法で、網膜組織に電磁放射線を適用することができることを発見した。より具体的には、治療効果はあるが網膜組織細胞にとって致死量以下であり、したがって網膜組織での光凝固の損傷を回避し、眼の網膜組織の予防的および保護的な処置を提供するレーザー光線を生成することができる。これは、少なくとも部分的に、熱ショックタンパク質の刺激と活性化、および網膜組織におけるタンパク質修復の促進に起因し得ると考えられる。これは、2015年1月28日出願の米国特許第14/607,959号、2013年3月13日出願の第13/798,523号、および2012年5月25日出願の第13/481,124号に開示され、それらの内容はその全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
選択されたパラメータの組み合わせが恒久的に組織を損傷せずに治療効果を達成するように、光線の様々なパラメータが考慮され、選択される。これらのパラメータは、レーザー波長、レーザー源の半径、平均レーザーパワー、合計パルス持続時間、およびパルス列のデューティサイクルを含む。
これらのパラメータの選択は、HSP活性化に関するアレニウスの積分が1または1より多いことを要求することにより判定され得る。アレニウスの積分は、生体組織への作用の影響を分析するために使用される。例えば、The CRC Handbook of Thermal Engineering,ed.Frank Kreith,Springer Science and Business Media(2000)を参照されたい。同時に、選択されたパラメータは恒久的に組織を傷つけてはならない。したがって、損傷に関するアレニウスもまた使用されてもよく、ここで解かれたアレニウスの積分は、1または1未満である。
代替的に、恒久的な組織損傷を回避できるように、組織の単位グラムあたりのエネルギー堆積と、数分間にわたって測定される温度上昇に対するFDA/FCC制約が満たされる。エネルギー堆積と温度上昇へのFDA/FCCの要求条件は広く使用され、例えば、電磁気源に関してはwww.fda.gov/medicaldevices/deviceregulationandguidance/guidancedocuments/ucm073817.htm#attacha、および超音波源に関してはAnastosio and P.LaRivero,ed.,Emerging Imaging Technologies.CRC Press(2012)を参照することができる。一般に、6℃〜11℃の組織温度上昇は、熱ショックタンパク質を活性化する等によって治療効果を生み出すことができるが、6分等の数分間に及ぶ長い期間での、6℃および特定の状況では1℃以下等の所定温度未満での平均組織温度の維持は、恒久的に組織を傷つけることはない。
本発明者らは、予め決められた強度またはパワー、および決められたパルス長または暴露時間で、532nmを超える波長および10%未満のデューティサイクルを有する、閾値以下で致死量以下のマイクロパルスレーザー光線を生成することによって、目に見える火傷領域または組織破壊のない望ましい網膜の光刺激がもたらされることを発見した。より具体的には、550nm〜1300nmの波長、特に好ましい実施形態では810nm〜1000nmの波長を有し、およそ2.5%〜5%のデューティサイクルと予め決められた強度またはパワー(網膜の1平方センチメートル当たり100〜590ワット、または網膜の各処置スポットに対して1レーザースポット当たりおよそ1ワット等)、および予め決められたパルス長または暴露時間(100〜600ミリセカンド以下等)を有するレーザー光線は、レーザー照射に暴露された網膜色素上皮のすべての領域が保護されており、かつ治療上寄与することが可能である、致死量以下の「真の閾値以下」の網膜光凝固をもたらす。言いかえれば、本発明者らは、網膜組織を少なくとも治療的レベルまで、ただし細胞または組織の致死レベルより低いレベルまで上昇させることによって、網膜組織を破壊し、焼き、またはそうでなければ傷つけることなく、先行技術の方法のハロ効果の恩恵が再びもたらされることを発見した。これは、閾値以下のダイオードマイクロパルスレーザー治療(SDM)として本明細書で言及される。
SDMは、レーザー誘発網膜損傷(光凝固)をもたらさず、既知の有害な処置効果を有さず、および(糖尿病黄斑浮腫(DME)、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)に起因する黄斑浮腫、中心性漿液性脈絡網膜症(CSR)、薬物耐性の逆転を含む)多くの網膜障害において有効な処置であり、萎縮型加齢黄斑変性症、シュタルガルト病、錐体ジストロフィー、および色素性網膜炎などの進行性の変性網膜症の予防的処置であると報告されている。SDMの安全性は、初期の中心窩に関係するDMEに起因する視力喪失のリスクを減らすために、20/20の視力の眼において中心窩にわたって使用され得るような安全性である。
それを介してSDMが作用し得るメカニズムは、熱ショックタンパク質(HSP)の生成または活性化である。ほぼ無限の様々な細胞異常が可能性としてあるにも関わらず、すべてのタイプの細胞が、共通の高度に保存された修復のメカニズム:熱ショックタンパク質(HSP)を共有する。HSPは、ほぼすべてのタイプの細胞のストレスまたは損傷によって、数秒から数分で、ほとんど即座に誘発される。致死的な細胞損傷がない状態で、HSPは、生細胞をより正常な機能状態へと修復および回復させるのに極めて有効である。HSPは一時的なものであり、一般に数時間でピークに達し、数日間持続し、その効果は長く持続する場合もある。HSPは、多くの障害における共通因子である炎症を低減する。
レーザー療法は、HSP生成または活性化を誘発し、サイトカイン発現を変化させることができる。致命的でない細胞ストレス(レーザー照射等)がより突発的かつ重度なものであれば、HSP活性化はより迅速かつ強固なものとなる。したがって、各SDM暴露によってもたらされた非常に急激な変化率(各100μsのマイクロパルスで〜7℃の上昇、または70,000℃/秒)での爆発的な(a burst of)繰り返しの低温熱スパイクは、特に、低い平均組織温度上昇のみを繰り返すことができる、連続波レーザーによる閾値以下の処置への致命的でない暴露と比較して、HSPの活性化を刺激するのに有効である。
550nm未満のレーザー波長は、漸増的に細胞毒性の光化学効果をもたらす。810nmでは、SDMは、光化学的な細胞ストレスよりもむしろ光熱をもたらす。したがってSDMは、組織を損傷することなく組織に影響を与えることができる。したがってSDMの臨床的有用性は、亜病的な光熱細胞HSP活性化によってもたらされる。機能障害の細胞において、SDMによるHSP刺激は、結果としてサイトカイン発現を正常化させ、最終的に構造および機能を改善する。その後、この「低強度」のレーザー/組織相互作用の治療効果は、「高密度」のレーザー適用によって増幅され、すべての病理領域を含む大きな組織領域を密に/集密的に処置することによって標的組織領域に機能障害の細胞をすべて動員し、それによって処置効果を最大化する。これらの原理は、本明細書に記載されるSDMの処置方策を定義している。
正常に機能する細胞は修復を必要としないため、正常細胞におけるHSP刺激は、顕著な臨床効果を有さない傾向にある。様々な細胞タイプに対する、病的細胞に影響するが正常細胞には影響しないSDM等の近赤外レーザー効果の「病原性−選択性(patho−selectivity)」は、SDMの臨床的所見と一致している。SDMは、American National Standards Institute“Maximum Permissible Exposure”の予測と一致する、網膜レーザー法の中でも独特な、臨床的に広い治療域を有すると報告されている。SDMは、エントロピー(entropic)タンパク質のアンフォールディングおよび脱凝集などの直接的な光熱効果を引き起こし得るが、HSP媒介性の修復の臨床的に安全かつ有効な刺激のために最適化されている。
上記のように、HSPのSDM刺激が疾患プロセスに非特異的である一方で、HSP媒介性の修復の結果は、その性質ゆえに機能不全の状態に特異的である。HSPは、間違っていれば何であれ修復する傾向がある。したがって、網膜症状において観察されたSDMの有効性は、BRVO、DME、PDR、CSR、加齢および遺伝性の網膜症、および薬物耐性のNAMDとは広く異なる。概念的に、この能力は、SDM作用の「デフォルトへのリセット(Reset to Default)」モードの一種であると考えられ得る。細胞機能が危機にある広範囲の網膜障害に関して、SDMは、HSP媒介性の細胞修復によって(「工場出荷時の設定」への)「リセット」を引き起こすことによって細胞機能を正常化する。
本発明者らは、加齢黄斑変性症(AMD)を患う患者のSDM処置が、AMDの進行を遅らせ、または止めることもできることを発見した。患者のほとんどは、SDM処置後に動的な機能的logMAR薄明視力および薄明対比視力の著しい改善を見た。SDMは、網膜色素上皮(RPE)を標的とし、保護し、およびその機能を「正常化する」(正常へと近づける)ことによって作用すると考えられる。
SDMはまた、全身性糖尿病の持続性にもかかわらず、処置関連の損傷または副作用なしで、糖尿病性網膜症の疾患状態の発現を停止または逆転させることが示された。これに基づくと、SDMは、工場出荷時の設定を回復させるために電子装置の「リセット」ボタンを押すことのように、糖尿病の影響を受けたRPE細胞において、より正常な細胞機能およびサイトカイン発現へと戻るのを誘発することにより作用すると仮定される。上記の情報および研究に基づくと、SDM処置は、標的組織における熱ショックタンパク質(HSP)活性化によってサイトカイン発現に直接影響し得る。
熱ショックタンパク質が、眼組織以外の体内組織において多数の異常状態に反応する際に役割を果たすため、類似のシステムおよび方法論が、そのような異常状態、感染などの処置に有利に使用することができると考えられている。そのため、本発明は、内視鏡または表面プローブのファイバーオプティクスの他に、集束電磁波/音波によってアクセス可能である、炎症、自己免疫疾患、および癌を含む異常状態を処置するための、超音波または電磁放射の制御された適用に関する。例えば、転移の最大の脅威を有する前立腺の表面の癌は、直腸鏡のファイバーオプティクスによってアクセス可能である。結腸腫瘍は、大腸内視鏡検査で使用されるもの等の光ファイバーシステムによって可能である。
上記のように、閾値以下のダイオードマイクロパルスレーザー(SDM)光刺激は、眼組織でわずかにミスフォールドされたタンパク質の直接的な修復を刺激するのに有効である。HSP活性化に加えて、別の方法でこれは生じ得るが、なぜなら熱的な時間経過の形態でのマイクロパルスによって引き起こされた温度のスパイクが、タンパク質内の水の拡散を可能にし、これによって、タンパク質がその天然状態に戻るのを防ぐペプチド−ペプチド水素結合の切断が可能になるからである。タンパク質への水の拡散は、結果として、制止(restraining)水素結合の数のおよそ1000倍の増加をもたらす。したがって、このプロセスは他の組織と疾患にも同様に有利に適用され得ると考えられている。
上記で説明されたように、標的組織に適用されるエネルギー源は、恒久的に組織を傷つけずに治療効果を達成するように判定され、選択されなければならないエネルギーおよびオペレーティングのパラメータを有する。例えばレーザー光線等の光線エネルギー源を使用すると、レーザー波長、デューティサイクル、および全パルス列持続時間のパラメータを考慮しなければならない。考慮され得る他のパラメータは、平均レーザーパワーと共にレーザー源の半径を含む。これらのパラメータの1つを調節または選択することは、少なくとも1つの他のパラメータへの効果を有し得る。
図1Aと1Bは、レーザー源の半径(0.1cm〜0.4cm)およびパルス列持続時間(0.1〜0.6秒)と比較した、ワットでの平均パワーを示すグラフを例示する。図1Aは、880nmの波長を示し、図1Bは1000nmの波長を有する。源の半径の減少、全列持続時間の増加、および波長の減少に従って必要なパワーが単調に減少することが、これらの図から見て取れる。レーザー源の半径に関する好ましいパラメータは、1mm〜4mmである。880nmの波長では、パワーの最小値は0.55ワットであり、レーザー源の半径は1mmであり、および全パルス列持続時間は600ミリセカンドである。レーザー源の半径が4mmであり、かつ全パルス列持続時間が100ミリセカンドである場合、880nmの波長に対するパワーの極大値は52.6ワットである。しかしながら、1000nmの波長を有するレーザーを選択すると、最小パワー値は0.77ワットであり、レーザー源の半径は1mm、および全パルス列持続時間は600ミリセカンドであり、およびレーザー源の半径が4mmかつ全パルス持続時間が100ミリセカンドである場合、最小パワー値は73.6ワットである。個々のパルスにおける対応するピークパワーは、デューティサイクルによって割られた平均パワーから得られる。
加熱される組織領域の容積は、波長、関連する組織での吸収長、およびビーム幅によって判定される。全パルス持続時間と平均レーザーパワーは、組織を加熱するために送達される総エネルギーを決定し、およびパルス列のデューティサイクルは、関係するスパイク、またはピーク、平均レーザーパワーに関係するパワーを供給する。好ましくは、およそ20〜40ジュールのエネルギーが標的組織の各立方センチメートルに吸収されるように、パルスエネルギー源のエネルギーパラメータが選択される。
吸収長は、網膜の色素上皮の薄いメラニン層では非常に小さい。他の身体部分では、吸収長は一般的にそれほど小さくない。400nm〜2000nmに及ぶ波長では、浸透深度と皮膚は0.5mm〜3.5mmの範囲にある。ヒト粘液組織への浸透深度は、0.5mm〜6.8mmの範囲である。したがって、放射線源が浸透深度に等しい深度と、放射線源の横断寸法に等しい横断寸法で配置される場合、加熱量は外側表面または内側表面に限定される。光線エネルギー源は、外側表面近くまたはアクセス可能な内側表面近くの病変組織を処置するために使用されるため、1mm〜4mmの源半径および880nmの波長での動作は、およそ2.5mmの浸透深度を生み出し、および1000nmの波長は、およそ3.5mmの浸透深度を生み出す。
数分間等のより長い時間にわたって6℃未満または1℃以下等のより低い温度範囲に組織の平均温度を維持しながら、本発明の治療効果を生み出すために標的組織を1秒未満等の短期間におよそ11℃まで加熱できることが判定された。デューティサイクルの選択と全パルス列持続時間は、熱が消え得る時間区間を提供する。10%未満の、好ましくは2.5%〜5%のデューティサイクル、および100ミリセカンドから600ミリセカンドの全パルス持続時間が効果的であることがわかっている。図2のAとBは、Aでは880nm、Bでは1000nmの波長を有する0.1cm〜0.4cmの半径を有するレーザー源に対して、10°Cから1°Cへの減衰時間を例示する。880nmの波長を使用すると減衰時間はより少ないが、いずれの波長も、恒久的な組織損傷を引き起こさずに本発明の利益を達成するための許容可能な要件と動作パラメータにあてはまることがわかる。
全照射期間中に、少なくとも6℃から最大11℃まで、および好ましくはおよそ10℃に増大する望ましい標的領域の平均温度上昇が、結果としてHSP活性化をもたらすことがわかっている。標的組織温度の制御は、源と標的パラメータを選択することによって決定され、それによってHSP活性化に関するアレニウスの積分は1より大きく、同時に損傷を回避するための保守的なFDA/FCC要件、または1未満である損傷のアレニウスの積分の遵守を保証する。
恒久的な組織損傷を回避する保守的なFDA/FCC制約を満たすために、光線および他の電磁放射線源に関して、6分間に及ぶ標的組織の平均温度上昇は1℃以下である。上記の図2のAとBは、加熱された標的領域における温度が、熱拡散によって温度上昇がおよそ10℃から1℃へと減少するのに必要とされる典型的な減衰時間を例示し、図2のAで見られるように、波長が880nmであり、かつ源の直径が1ミリメートルである場合、温度減衰時間は16秒である。源の直径が4mmである場合、温度減衰時間は107秒である。図2のBで示されるように、波長が1000nmであると、源の直径が1mmの場合に温度減衰時間は18秒であり、源の直径が1mmである場合に温度減衰時間は136秒である。これは十分に、6分以下等の数分間にわたって維持される平均温度上昇の時間内である。標的組織の温度は、組織へのエネルギー源の適用中に、1秒の何分の1等で非常に素早く、およそ10℃等に上昇されるが、比較的低いデューティサイクルは、組織に適用されたエネルギーのパルス間の比較的長い期間を提供し、および比較的短いパルス列持続時間は、恒久的な組織損傷のない、6分以下等の数分を含む比較的短期間内での十分な温度の拡散と減衰を保証する。
パラメータは、マイクロ波、赤外線レーザー、無線周波数および超音波を含む、個々のエネルギー源によって異なり、なぜなら組織の吸収特性がこれらの異なるタイプのエネルギー源ごとに異なるからである。組織の含水量は組織のタイプごとに異なり得るが、処置を設計する際に臨床医によって広く使用される組織パラメータの公表を可能にした正常条件または正常に近い条件での組織の特性の均一性が観察される。以下は、生体媒質における電磁波の特性を例示する表であり、表1は、高含水量を有する筋肉と皮膚と組織に関し、表2は、低含水量を有する脂肪と骨と組織に関する。
表1.生体媒質における電磁波の特性:低含水量を有する、筋肉、皮膚および組織
表2.生体媒質における電磁波の特性:低含水量を有する、脂肪、骨、および組織
体組織における高周波の吸収長は、身体寸法と比較して長い。結果的に、加熱領域は、吸収長によってではなく、むしろ高周波エネルギーの源であるコイルの寸法によって決定される。コイルからの距離rが長い場合、コイルからの(近)磁場は1/rで減衰する。距離がより小さい場合、電場と磁場は、磁気ベクトルポテンシャルの観点で表すことができ、それは順に第1種および第2種の楕円積分の観点から閉形で表すことができる。加熱は、ソースコイル自体の寸法と同等のサイズの領域でのみ生じる。したがって、半径を特徴とする領域を優先的に加熱することが望ましい場合、ソースコイルは同様の半径を有するように選択される。磁場の1/rの減少ゆえに、加熱は、半径の半球領域の外部で非常に急速に減少する。外部的にまたは内腔からのみアクセス可能な病変組織への高周波の使用が提案されているため、コイルの半径はおよそ2〜6mmであると考えるのが適当である。
ソースコイルの半径は、ソースコイルのアンペア回数(NI)の数と同様に、磁場の大きさと空間的広さを与え、および高周波は、電場の大きさを磁場の大きさに関連づける因子である。加熱は、伝導率の積および電場の二乗に比例する。外部表面または内部表面に近い対象の標的組織に関しては、伝導率は皮膚および粘膜組織のそれである。パルス列の全列持続時間と同様にパルス列のデューティサイクルは、どれだけの総エネルギーが組織に送達されるかに影響を与える因子である。
高周波エネルギー源の好ましいパラメータは、2〜6mmのコイル半径、3〜6MHzの範囲の高周波、0.2〜0.4秒の全パルス列持続時間、および2.5%〜5%のデューティサイクルになるように決定された。図3−6は、これらのパラメータが、HSP活性化に対しておよそ1または単一のアレニウスの積分をもたらす温度上昇を与えるために変更されると、アンペア回数がどれほど変化するかを示している。図3に関連して、6MHzのRF周波数、0.2〜0.4秒のパルス列持続時間、0.2〜0.6cmのコイル半径、および5%のデューティサイクルでは、ピークアンペア回数(NI)は、0.6cmのコイル半径で13であり、0.2cmのコイル半径で20である。3MHzの周波数では、図4に例示されるように、ピークアンペア回数は、パルス列持続時間が0.4秒、コイル半径が0.6cm、およびデューティサイクルが5%であるときに、26である。しかしながら、同じ5%のデューティサイクルで、コイル半径が0.2cm、およびパルス列持続時間が0.2秒である場合、ピークアンペア回数は40である。2.5%のデューティサイクルが、図5および図6において使用される。これは、図5に例示されるように、0.6cmのコイル半径および0.4秒のパルス列持続時間を有する6MHzの無線周波数に対して18のアンペア回数をもたらし、コイル半径がわずか0.2cm、およびパルス列持続時間が0.2秒であるときに、29のアンペア回数をもたらす。図6に関連して、2.5%のデューティサイクルおよび3MHzの無線周波数では、ピークアンペア回数は、パルス列持続時間が0.4秒であり、コイル半径が0.6cmであるときに36であり、パルス列持続時間が0.2秒であり、コイル半径が0.2cmであるときに57アンペアである。
0.2cm〜0.6cmのコイル半径に関しておよそ10℃からおよそ1℃に減衰する温度上昇に関する秒単位の時間が、図7において無線周波数エネルギー源ごとに例示される。温度減衰時間は、無線周波数コイル半径が0.2cmである時におよそ37秒であり、無線周波数コイル半径が0.5cmである時におよそ233秒である。無線周波数コイル半径が0.6cmである時、減衰時間はおよそ336秒であり、これは、依然として減衰時間の許容域内にあるが、その上限である。
マイクロ波は、本発明に従って利用することができる別の電磁エネルギー源である。マイクロ波の周波数は組織浸透距離を決定する。円錐のマイクロ波ホーンの利得はマイクロ波長と比較して大きく、これらの状況下で、エネルギーが大抵は狭い前方荷重で放射されることを示している。典型的に、本発明に従って使用されるマイクロ波源は、およそ1センチメートル以下の長さ寸法を有し、したがって、マイクロ波源は波長より小さく、その場合、マイクロ波源は、ダイポールアンテナとして近づくことができる。そのような小さなマイクロ波源は、内部の体腔に挿入するのがより容易であり、外部表面を放射するためにも使用され得る。その場合、加熱領域は、処置されている体組織におけるマイクロ波の吸収長と等しい半径で半球だけ近づくことができる。マイクロ波が、外部表面または内部空洞からアクセス可能な表面の近くの組織を処置するために使用されるため、10−20GHzの範囲の周波数が使用され、ここで対応する浸透距離は、およそ2mm〜4mmだけである。
マイクロ波エネルギー源を使用する組織の温度上昇は、マイクロ波の平均パワーおよび合計のパルス列持続時間によって決定される。パルス列のデューティサイクルは、パルスの列での単一パルスにおけるピークパワーを決定する。エネルギー源の半径がおよそ1センチメートル未満であり、および10〜20GHzの周波数が典型的に使用されるため、結果として生じる0.2秒〜0.6秒のパルス列持続時間が好ましい。
列持続時間が増加し、かつマイクロ波周波数が増加するにつれ、必要とされるパワーは単調に減少する。10GHzの周波数では、パルス列持続時間が0.6秒の場合、平均パワーは18ワットであり、パルス列持続時間が0.2秒の場合は52ワットである。20GHzのマイクロ波周波数では、8ワットの平均パワーは、パルス列が0.6秒である場合に使用され、パルス列持続時間がわずか0.2秒である場合には26ワットであり得る。対応するピークパワーは、平均パワーを単にデューティサイクルで割ることによって得られる。
ここで図8を参照すると、グラフは、10GHzの周波数と0.2秒〜0.6秒のパルス列持続時間を有するマイクロ波の、ワットでの平均マイクロ波パワーを示す。図9は似たグラフであるが、20GHzの周波数を有するマイクロ波に関する平均マイクロ波パワーを示す。したがって、全列持続時間およびマイクロ波周波数が異なると、平均マイクロ波源のパワーは異なることがわかる。しかしながら、支配的条件は、加熱領域におけるHSP活性化に関するアレニウスの積分がおよそ1であることである。
図10を参照すると、グラフは、58MHz〜20000MHzのマイクロ波周波数と比較した、およそ10℃〜1℃に減衰する温度に関する秒単位での時間を例示する。好ましいマイクロ波周波数範囲での最小および最大の温度減衰は、マイクロ波周波数が20GHzの場合は8秒、マイクロ波周波数が10GHzの場合は16秒である。
エネルギー源として超音波を利用すると、表面組織と、いくぶん深い組織を含む身体内の異なる深度の組織を加熱することが可能になる。身体内での超音波の吸収長は、画像化へのその広範な使用によって証明されているように、かなり長い。したがって超音波は、ビームのほぼ円筒状の焦域に主として集中する集束超音波ビームの加熱を伴い、身体深くの標的領域に焦点を合わせることができる。加熱領域は、エアリーディスクの焦点ウエストおよび焦点ウエスト領域の長さによって決定される容積を有し、それは共焦点パラメータである。源からの異なる角度の複数のビームを使用することもでき、加熱は重複する焦点領域で生じる。
超音波では、組織温度を判定するための関連するパラメータは、超音波トランスデューサーの焦点距離と直径を考慮すると、超音波の周波数、全列持続時間、およびトランスデューサーパワーである。周波数、焦点距離、および直径は、超音波エネルギーが集中した焦点領域の容積を決定する。処置のための組織の標的容積を含むのは、焦点容積である。直径がおよそ5cmであり、およそ10cmの焦点距離を有するトランスデューサーは、容易に入手可能である。超音波周波数が1〜5MHzであり、および全列持続時間が0.1〜0.5秒である場合、有利な焦点寸法が達成される。例えば、10cmの焦点距離および5cmのトランスデューサー直径では、焦点容積は5MHzで0.02cc、および1MHzで2.36ccである。
ここで図11を参照すると、グラフは、周波数(1MHz〜5MHz)およびパルス列持続時間(0.1〜0.5秒)と比較した、ワットでの平均源パワーを例示する。トランスデューサー焦点距離を10cm、および源直径を5cmと仮定する。およそ1のHSP活性化に関するアレニウスの積分を得るために必要なパワーは、周波数が増加し、かつ全列持続時間が増加するにつれて、単調に減少する。好ましいパラメータを考慮すると、1GHzの周波数および0.5秒のパルス列持続時間での最小パワーは5.72ワットであり、1GHzの周波数および0.1秒のパルス列持続時間では、最大パワーは28.6ワットである。5GHzの周波数では、0.046ワットが0.5秒のパルス列持続時間に必要とされ、0.23ワットが0.1秒のパルス列持続時間に必要とされる。個々のパルスにおける対応するピークパワーは、デューティサイクルで単純に割ることにより得られる。
図12は、超音波周波数が1〜5MHzである場合に、温度が10℃から6℃へと拡散または減衰するのにかかる時間を秒単位で例示する。図13は、1〜5MHzの超音波周波数に関して、およそ10℃からおよそ1℃へと減衰するのにかかる時間を秒単位で例示する。10cmの好ましい焦点距離および5cmのトランスデューサー直径では、超音波周波数が1MHzである場合に温度減衰の最大時間は366秒であり、およびマイクロ波周波数が5MHzである場合、最小温度減衰は15秒である。分単位の試験時間に対して温度上昇が6℃未満であることのみをFDAが要求するため、数分間にわたって1℃上昇するための1MHzでの366秒の減衰時間が可能である。図12および図13に見られるように、6℃の上昇までの減衰時間は、1℃の上昇よりもおよそ70倍、はるかに短い。
図14は、1〜5MHzの超音波周波数と比較した、焦点加熱領域の容積を立方センチメートル単位で例示する。1〜5MHzの範囲の超音波周波数を考慮すると、これらの周波数に対する対応する焦点サイズは、3.7mm〜0.6mmの範囲であり、焦点領域の長さは5.6cm〜1.2cmの範囲である。対応する処置容積は、およそ2.4cc〜0.02ccの範囲である。
1より大きい望ましいHSP活性化のアレニウスの積分、および1未満の損傷のアレニウスの積分を与えるパラメータの例は、5.8〜17ワットの合計超音波パワー、0.5秒のパルス持続時間、5秒のパルス間隔であり、50秒の合計のパルス列ストリーム時間内に合計10のパルスを有する。標的処置容積は一側面上でおよそ1mmとなる。複数の同時に適用された、隣接しているが間隔を置いた別個の列で超音波を適用することによって、より大きな処置容積が、レーザー回折された光学システムに類似した超音波システムにより処置可能であり得る。複数の集束超音波ビームは、身体内の非常に小さな処置標的に集まり、これによって、標的における重複するビーム以外での最小限の加熱が可能になる。この領域は加熱され、一時的な高温スパイクによってHSPの活性化を刺激し、かつタンパク質修復を促進する。しかしながら、本発明のパルスの態様に加えて、任意の時間で処置されている比較的小さな領域も考慮すると、処置は、長期間(分)の平均温度上昇<1Kに対するFDA/FCC要件に従っている。疼痛および筋肉緊張に対する既存の温熱療法処置との本発明の重要な相違は、既存の技術には高いTスパイクがなく、細胞レベルでの治癒を提供するためにHSPを効率的に活性化し、かつタンパク質修復を促進する必要があることである。
治療的なHSPの活性化およびタンパク質修復の促進が関係する限り、エネルギー送達のパルス列モードは、エネルギー送達の単一パルスまたは段階的なモードとは異なる利点を有する。この利点については2つの考察がある。
まず、SDMエネルギー送達モードにおけるHSP活性化およびタンパク質修復に対する大きな利点は、およそ10℃のスパイク温度の生成から生じる。この大きな温度上昇は、活性化されるHSPの数を定量的に記述するアレニウスの積分、およびタンパク質修復を促進するタンパク質への水拡散の速度に対して大きな影響を与える。これは、温度が大きな増幅効果を有する指数関数(exponential)に入るからである。
温度上昇が長い期間、高値(10℃以上)に留まらないことが重要であり、なぜならこれは、分単位の期間にわたる平均温度上昇が1℃(超音波の場合には6℃)未満でなければならないというFDAとFCCの要件に違反するためである。
エネルギー送達のSDMモードは、パワー、パルス時間、パルス間隔、および処置される標的領域の容積の賢明な選択によって、これらの先の考察を両方とも一意的に満たす。長期間の平均温度上昇が、超音波周波数に関しては6℃および電磁放射線エネルギー源に関しては1℃以下である長期間のFDA/FCC限界を超えないように、温度はかなり急速におよそ10℃のその高値から減衰しなければならないため、処置領域の容積が入る(enters)。
長さ寸法Lの領域に関して、ピーク温度が組織においてe倍(e−fold)となるのにかかる時間は、およそL/16Dであり、ここでD=0.00143cm/秒は、典型的な熱拡散係数である。例えば、L=1mmの場合、減衰時間はおよそ0.4秒である。したがって、側面の1mmの領域に関して、5秒のパルスの間隔で、各々の持続時間が0.5秒である、10のパルスから成る列は、1℃の平均の長期温度上昇を超えることなく、望ましい瞬間的な高上昇を達成することができる。これは以下でさらに実証される。
加熱量の制限は、RF電磁放射が、超音波として身体深くの領域のSDMタイプの処置にとって良い選択ではない理由である。長い表皮深度(貫通距離)および表皮深度全体に沿ったオーム加熱は、結果として大量の加熱量をもたらし、その熱慣性は、HSPを活性化してタンパク質修復を促進する高いスパイク温度の達成と、平均温度上昇に対する長期間のFDAおよびFCCの制限を満たす急速な温度減衰の両方を認めない。
超音波は、疼痛と筋肉緊張を緩和すべく、身体の領域を治療的に加熱するために既に使用されている。しかしながら加熱は、SDMタイプのプロトコルに従っておらず、HSPの励起の要因である温度スパイクを有さない。
次に、身体内の深い標的領域に配向される集束超音波ビームのグループを考慮する。計算を単純化するために、ビームが、球体の中心に集束される球面形状を有する単一の源と取り替えられると仮定する。超音波の吸収長はかなり長くなり得る。下記の表3は、1MHzでの超音波に関する典型的な吸収係数を示す。吸収係数は、周波数にほぼ比例している。
表3.体内組織における1MHzでの超音波に対する典型的な吸収係数:
集束による入射の幾何学的変形が、減衰による変形を支配すると想定すると、焦点からの距離rで入射する超音波の強度は、およそ以下のように計算され:
I(r)=P/(4πr) [1]
式中、Pは合計の超音波パワーを示す。rでの持続時間tの短いパルスの終端での温度上昇は、
dT(t)=Pαt/(4πC) [2]
であり、式中、αは吸収係数であり、およびCは比体積熱容量である。tでの熱拡散距離がrに匹敵するところにrが達するまで、または集束ビームの回折限界に達するまで、これは当てはまる。より短いrについては、温度上昇は本質的にrとは無関係である。一例として、回折限界が、熱拡散によって判定された距離より短い半径方向距離で到達されたと仮定する。この場合、
dif=(4Dt1/2 [3]
式中、Dは熱拡散係数であり、およびr<rdifでは、tでの温度上昇は以下である。
dT(rdif,t)=3Pα/(8πCD) ここでr<rdif [4]
したがって、パルスの終端で、温度上昇を記録することができる:
dT(r)={Pαt/(4πC}[(6/rdif )U{rdif−r)+(1/r)U(r−rdif)] [5]
熱拡散方程式に関するグリーンの関数:
G(r,t)=(4ΩDt)−3/2exp[−r/(4Dt) [6]
を、この初期の温度分布に適用すると、時間tでの焦点r=0での温度dT(t)は、以下であることがわかる:
dT(t)=[dT/{(1/2)+(π1/2/6)}][(1/2)(t/t)3/2+(π1/2/6)(t/t)] [7]
かつ、dT=3Pα/(8πCD) [8]
方程式[7]への十分な近似は、図15に見られるように、
dT(t)≒dT(t/t)3/2 [9]
によって提供され、これは、標的処置ゾーンにおけるdT(t)/dTに対する方程式[7]および[9]の比較である。下の曲線は方程式[9]の近似式である。Nパルスの列に関するアレニウスの積分は、方程式[9]によって得られる温度上昇を用いて評価することができる。この式では、
dT(t)=ΣdT(t−nt) [11]
であり、式中、dT(t−nt)は、t−ntによって置き換えられたt、およびパルス間の間隔を指定するtを有する方程式[9]の式である。
アレニウスの積分は、積分間隔を温度スパイクが生じる部分および温度スパイクのない部分へと分割することによって、近似的に評価され得る。温度スパイクの寄与(contribution)に対する合計は、Laplaceのエンドポイント式(Laplace’s end point formula)を温度スパイクに対する積分に適用することにより単純化され得る。さらに、スパイクがないときの部分に対する積分は、スパイクのない温度上昇が、漸近値に非常に急速に達し、その結果、変化する時間上昇をその漸近値と置き換えることにより良い近似値が得られることに留意することで、単純化され得る。これらの近似値が作られると、方程式[10]は以下のようになる:
Ω=AN[{t(2k /(3EdT)}exp[−(E/k)1/(T+dT+dT(Nt))]+exp[−(E/k)1/(T+dT(Nt))]][12]
ここで、
dT(Nt)≒2.5dT(t/t3/2 [13]
(方程式[13]の2.5は、総和から(N−n)−3/2のnを超えて上昇し、および対象の典型的なNに関する高調波の数(N,3/2)の大きさである)。
この式を、網膜に適用されるSDMに関する式と比較すると興味深い。第1の項は、有効なスパイク間隔がこの3D集束ビームの場合に3倍縮小される以外は、網膜の場合におけるスパイク寄与からの条件に非常に類似している。dT(Nt)を含む第2の項は、網膜の場合におけるよりもはるかに小さい。ここで、バックグラウンドの温度上昇は、その大きさの点でスパイク温度上昇に匹敵していた。しかし、ここで集束ビームの場合には、バックグラウンドの温度上昇は、比率(t/t3/2によってはるかに小さいものである。連続的な超音波加熱の場合における上昇に類似しているバックグラウンドの温度上昇が、スパイク寄与と比較して有意でないため、これは、HSPの活性化または生成およびタンパク質修復の促進に対するスパイク寄与の重要性を強調している。パルス列の終端では、この低いバックグラウンドの温度上昇でさえも、熱拡散によって急速に消える。
図16および図17は、パルス持続時間t=0.5秒、パルス間隔t=10秒、およびパルスの総数N=10に対するdTの関数として、損傷およびHSPの活性化または生成に関するアレニウスの積分の対数の大きさを示す。パルス持続時間t=0.5秒、パルス間隔t=10秒、および超音波パルスの総数N=10に対する単一パルスdTからのケルビン度での温度上昇に応じた、損傷およびHSP活性化に関するアレニウスの積分[方程式12]の対数。図16は、アレニウス定数A=8.71×1033sec−1およびE=3.55×10−12ergsでの損傷の積分の対数を示す。図17は、アレニウス定数A=1.24×1027sec−1およびE=2.66×10−12rgsでのHSP活性化の積分の対数を示す。図16および図17のグラフは、dTが11.3Kを超えるまでΩdamageが1を超えず、他方でΩhspが、示される全間隔にわたって1を超えることを示し、これは損傷のない細胞修復に対する望ましい条件である。
方程式[8]は、α=0.1cm−1であるときに、11.5KのdTが、5.8ワットの合計超音波パワーで達成され得ることを示している。これは容易に達成可能である。αが2または3倍増加すると、結果として生じるパワーは依然として容易に達成可能である。温度上昇が一定である領域の容積(つまりr=r=(4Dt1/2に対応する容積)は、0.00064ccである。これは、一側面が0.86mmである立方体に相当する。
この単純な例は、集束超音波が、容易に達成可能な装備を用いて身体深くで、修復のためのHSPを刺激するために使用可能であるべきことを実証している:
全超音波パワー:5.8ワット〜17ワット
パルス時間:0.5秒
パルス間隔:5秒
全列持続時間(N=10):50秒
より大きな内容積の処置を促進するために、SAPRAシステムを使用することができる。
パルスエネルギー源は、身体の外部領域に向けられてもよく、身体の外部領域は、標的組織に隣接している、または身体外部の表面近くに血液供給を有する。代替的に、デバイスは、標的組織にパルスエネルギー源を適用するために、身体の腔に挿入されてもよい。エネルギー源が身体外部または身体内部のいずれに適用されるか、および、どの対応するデバイスが使用されるかは、標的組織を処置するために選択され使用されるエネルギー源に左右される。
本発明に係る光刺激は、気管支鏡、直腸鏡、大腸内視鏡などの内視鏡を利用して、身体の内部表面領域または組織に有効に送達され得る。これら各々は本質的に可撓管から成り、それ自体は1本以上の内管を含む。典型的に内管の1つは、対象の領域を照射し、照射された端部にあるものを医師が見ることができるように内視鏡を下って光を導く光パイプまたは多モード光ファイバーを含む。別の内管は、医師が照射された組織を焼灼することを可能にするように電流を運ぶワイヤーから構成されてもよい。さらに別の内管は、医師が照射された組織のいずれかを切り取って保持することができる生検ツールから構成されてもよい。
本発明において、これらの内管の1つは、多モード光ファイバーなどの電磁放射パイプとして使用され、SDMまたは他の電磁放射パルスを送達し、医師が保持する端部で内視鏡へと供給される。ここで図18を参照すると、望ましい波長および/または周波数を有するレーザーなどの、光生成ユニット(10)は、身体へと挿入される、図19に例示される内視鏡(14)の遠位端へと光チューブまたは光パイプ(12)を通って送達される制御されたパルス式の方法で、レーザー光などの電磁放射線を生成するために使用され、レーザー光または他の放射線(16)は、処置される標的組織(18)に送達される。
ここで図20を参照すると、SDMを含む、レーザー光等の電磁エネルギー放射線を生成するためのシステムの概略図が示される。概して参照番号(20)で示されるシステムは、好ましい実施形態において、例えば810nmの近赤外線マイクロパルスダイオードレーザーなどの、レーザーコンソール(22)を含む。レーザーは、光学レンズまたはマスク、または必要に応じて複数の光学レンズまたはマスク(24)に通されるレーザー光線を生成する。レーザープロジェクタ光学素子(24)は、患者の標的組織上にレーザー光線を投射するために、形成された光線を内視鏡などの送達装置(26)に通す。(26)と標識されたボックスは、レーザー光線プロジェクタまたは送達装置と、内視鏡などの視認システム/カメラの両方を表わすことができるか、使用時に2つの異なるコンポーネントを含むことが理解される。視認システム/カメラ(26)は、レーザー(22)、光学素子(24)、および/または投射/視認コンポーネント(26)を操作するために、必要なコンピューター化されたハードウェア、データ入力部および制御部などをさらに含み得る表示モニター(28)にフィードバックを提供する。
ここで図21を参照すると、一実施形態では、複数の光線が生成され、その各々は、標的組織を破壊または恒久的に損傷することなく標的組織を治療的に処置するために、標的組織温度が制御可能に上昇され得るように選択されたパラメータを有する。これは、例えば、選択されたパラメータを有するレーザー光線(30)から複数のレーザー光線を回折またはそうでなければ生成する、光学素子を通じてレーザー光線(30)を流すことにより、行われてもよい。例えば、レーザー光線(30)は、コリメータレンズ(32)を通過し、次にマスク(34)を通過し得る。特に好ましい実施形態では、マスク(34)は回折格子を含む。マスク/回折格子(34)は、幾何学オブジェクト、またはより典型的には同時に生成された複数のレーザースポットの幾何学パターン、または他の幾何学オブジェクトをもたらす。これは、参照符号(36)を付けられた複数のレーザー光線によって表わされる。代替的に、複数のレーザースポットは、複数のファイバー光導波路によって生成され得る。レーザースポットを生成する方法はいずれも、非常に広い治療照射野にわたって大多数のレーザースポットを同時に生成することを可能にする。実際、ひょっとすると何百、何千またはそれ以上もの数の非常に多くのレーザースポットが、標的組織の任意の領域、または可能性として標的組織全体さえをもカバーするために、同時に生成され得る。大きなレーザースポットの適用に関連することが知られている特定の欠点と処置リスクを回避するために、広範な同時適用される分離された小さなレーザースポットの適用が望ましい場合もある。
利用されるレーザーの波長と同等の形状サイズを有する光学機構を使用することで、例えば回折格子を用いて、非常に大きな標的領域のための非常に多くのレーザースポットの同時適用を可能にする量子力学的効果を活用することが可能である。そのような回折格子によって生成された個々のスポットはすべて、入力ビームに対して類似する光学的幾可学形状にあり、各スポットごとのパワー変化は最小限である。結果として得られるのは、大きな標的領域にわたって同時に、無害であるが効果的な処置適用をもたらすための、適切な放射量の複数のレーザースポットである。本発明はさらに、他の回折光学素子によって生成される、他の幾何学オブジェクトおよびパターンの使用を熟慮する。
マスク(34)を通るレーザー光は回折し、図21で(36)と標識されたレーザー光線によって示される、マスク(34)とは離れた周期的パターンがもたらされる。単一のレーザー光線(30)はしたがって、望ましいスポットパターンまたは他の幾何学オブジェクトを作り出すように、何百または何千もの個別のレーザー光線(36)に形成された。これらのレーザー光線(36)は、レーザー光線を伝送し、および望ましいパターンを形成するために、追加のレンズ、コリメーター等(38)(40)に流されてもよい。そのような追加のレンズ、コリメーター等(38)(40)はさらに、必要に応じてレーザー光線(36)を変換し、再配向することができる。
恣意的なパターンは、光学マスク(34)の形状、間隔およびパターンを制御することによって構成することができる。パターンと暴露スポットは、光工学分野の専門家による適用要件に従い、望ましいように、恣意的に生成され、かつ修正される。写真石版技術、特に半導体製造の分野で開発されたものは、スポットまたは他のオブジェクトの同時幾何学パターンを作成するために使用することができる。
本発明のパラメータおよび方法が治療上有効であるが非破壊的であり、かつ恒久的な損傷のない処置を生み出すため、本発明は、何十または何百もの数の、同時生成された多くの治療光線またはスポットを使用することができる。何百または何千もの同時のレーザースポットが生成され、作成され、および組織に同時適用されるパターンへと形成され得るが、組織を加熱しすぎないという要件ゆえに、本発明に従って同時に使用され得る処置スポットまたはビームの数には制約がある。個々のレーザービームまたはスポットは、効果的であるように列持続期間にわたって最小の平均パワーを要求する。しかし同時に、組織は、損傷を受けることなく特定の温度上昇を上回ることはできない。例えば、810nmの波長のレーザーを使用すると、生成され使用される同時のスポットの数は、0.04(4%)のデューティサイクルおよび0.3秒(300ミリセカンド)の合計列持続時間が使用される場合、1〜およそ100までの数であろう。波長が増すにつれて吸水率は増加する。より短い波長、例えば577nmでは、レーザーパワーはより低くなり得る。例えば、577nmでは、本発明が効果的であるためにはパワーを4の因数だけ低下させることができる。したがって、577nmの波長のレーザー光を使用する場合、わずか1つのレーザースポットまたは最大およそ400のレーザースポットが存在し得るが、依然として組織は害されず、または傷つかない。
典型的には、本発明のシステムは、網膜の光刺激による完全かつ全体的な網膜処置を確かなものとするために、誘導システムを組み込む。固定標的、追跡メカニズムから成り、およびシステムオペレーションに接続された固定/追跡/登録システムを本発明に組み込むことができる。特に好ましい実施形態では、同時のレーザースポットの幾何学パターンは、表面の集密的および完全な処置を達成するために連続してオフセットされる。
これは光学走査メカニズム(50)を使用して、制御された方法で行うことができる。図22および23は、MEMSミラーの形態の光学走査メカニズム(50)を例示し、これは、電子的に作動する制御装置(54)および(56)を備えるベース(52)を有し、制御装置は、電気が適用されてそこに移されるとミラー(58)を傾けてパンするように働く。コントローラ(54)および(56)に電気を適用することによってミラー(58)が移動し、したがってレーザースポットの同時のパターンまたはその上に反映された他の幾何学オブジェクトが、適宜、患者の網膜上に移される。これは、例えば、網膜の完全な適用範囲、または処置の望まれる網膜の少なくとも一部が光線療法に暴露されるまで、光走査メカニズム(50)を調節する電子ソフトウェアプログラムを使用して自動方式で行われ得る。光学走査メカニズムはさらに、Thorlabsによって流通しているもの等の、小径ビーム走査型ガルバノミラーシステム、または類似のシステムでもよい。そのようなシステムは、望ましいオフセットパターンでレーザーを走査することができる。
スポットのパターンは、熱損失を可能にし、かつ熱損傷または組織破壊の可能性を予防するために、直前の暴露との間隔を作るように各暴露でオフセットされる。したがって、図24に例示されるように、16のスポットのグリッドとしての典型的目的のために例示されるパターンは、レーザースポットが以前の暴露とは異なる空間を占有するように、各暴露をオフセットする。塗りつぶされたドットと同様に円または白いドットの図解的使用は、本発明に従って、領域のスポットのパターンの以前および以後の暴露を例示する図解目的のためだけのものであることが理解されよう。レーザースポットの間隔は、過熱および組織の損傷を防ぐ。処置される全標的組織が光線療法を受けるまで、または望ましい効果に達するまで、これが生じることが理解されよう。これは、例えば、図22と23に例示されるように、マイクロマシンミラー(micromachined mirror)に静電トルクを適用することによって行うことができる。露光自由領域によって区切られた小さなレーザースポット、蓄熱の予防、および一面当たり多数のスポットを有するグリッドの使用を組み合わせることによって、現在の技術で可能なものよりもはるかに急速に短い露光持続時間で大きな標的領域を傷つけず、かつ目に見えないように処置することが可能である。
スポットまたは幾何学オブジェクトの同時適用されたグリッドアレイ全体の再配向またはオフセットを急速かつ連続的に繰り返すことによって、標的の完全な被覆が熱組織の損傷なしに素早く達成され得る。このオフセットは、レーザーパラメータおよび望ましい用途に応じて、最速の処置時間および熱による組織への最小の損傷リスクを保証するために、アルゴリズム的に決定され得る。
以下は、フランホーファー近似(Fraunhoffer Approximation)を使用してモデル化された。9×9の正方格子を有するマスクを備え、9μmの開口半径、600μmの開口間隔を有し、890nmの波長レーザーを使用し、75mmのマスク−レンズ分離、および2.5mm×2.5mmの二次的なマスクサイズを有し、以下のパラメータは、6μmのスポットサイズ半径で133μmで区切られた一面当たり19のスポットを有するグリッドをもたらす。所与の望ましい領域の辺長「A」を処置する(小さなスポットを適用することで集密的に覆う)のに求められる暴露の数「m」は、正方形の1辺当たりの所与の出力パターンスポット「n」、スポット間の間隔「R」、スポット半径「r」、および領域を処置するための望ましい正方形の1辺の長さ「A」を考慮して、下記式により導くことができる:
先の設定を用いて、暴露の種々の照射野面積を処置するのに必要とされる操作mの数を計算することができる。例えば、処置に有用な3mm×3mmの面積は、およそ30秒の処置時間を要する98のオフセット操作を必要とするだろう。別の例は、ヒト網膜の表面全体を表わす、3cm×3cmの面積になるだろう。そのような大きな処置領域のために、25mm×25mmのはるかに大きな二次的なマスクサイズが使用されてもよく、6μmのスポットサイズ半径で133μmで区切られた一面当たり190のスポットの処置グリッドがもたらされる。二次的なマスクサイズは望ましい処置領域と同じ因数で増加するため、およそ98のオフセット動作の数、したがっておよそ30秒の処置時間は一定である。
もちろん、処置を完了するのに必要とされる連続したオフセット動作の数を、所与の用途の治療的必要に応じて容易に調整可能であるように、同時のパターンアレイで生成されたスポットの数と大きさは、容易かつ高度に変更可能である。
さらに、回折格子またはマスクに使用される小さな開口部によって、レーザー入力エネルギーの恣意的な分配を可能にする量子機械的な挙動が観察される場合もある。これは、グリッドパターンの複数のスポット等の恣意的な幾何学図形またはパターン、線または他の望ましいパターン等を生成することを可能にするだろう。多数のファイバー光ファイバーまたはマイクロレンズの使用等の、幾何学図形またはパターンを生成する他の方法もまた、本発明に使用されてもよい。幾何学形状またはパターンの同時投射の使用による時間節約は、単一の来院または処置セッションでの、網膜全体の処置を達成する1.2cm面積等の新規なサイズの処置照射野を可能にする。
ここで図25を参照すると、小さなレーザースポットの幾何学パターンの代わりに、本発明は、他の幾何学オブジェクトまたは幾何学パターンの使用を熟考する。例えば、連続的に形成された、または一連の密に間隔を置いたスポットによって形成された、レーザー光の単一の線(60)を作り出すことができる。領域にわたって線を連続して走査するために、オフセット光走査メカニズムを使用することができ、これは図25で下向きの矢印により例示される。
ここで図26を参照すると、線(60)の同じ幾何学オブジェクトが、矢印によって例示されるように、光線療法の円形視野を作り出すように回転され得る。しかしながら、この手法の潜在的な欠点は、中央領域が繰り返し露光され、許容しがたい温度にまで達し得ることである。しかしながら、これは、露光間の時間を増やすことによって、または中央領域が露光されないように線に間隙を作り出すことによって、克服することができるかもしれない。
光生物学の分野は、標的組織を異なる波長のレーザーに暴露することによって、異なる生物学的効果が達成され得ることを明らかにする。同じことが、様々な時間間隔および/または異なる放射光エネルギーで順に、異なる波長または同じ波長の多数のレーザーを連続的に適用することによっても達成され得る。本発明は、望ましい治療効果を最大化し、またはカスタマイズするために、同時または順に適用される多数のレーザー、光または放射波長(またはモード)の使用を予測する。この方法はさらに、有害な潜在的効果を最小化する。上記に例示され記載された光学的手法およびシステムは、多数の波長の同時または連続した適用を提供する。
図27は、上記の多数の処置光源をパターン生成光学サブアセンブリに結合するシステムを図解的に例示する。具体的には、このシステム(20’)は、上記の図2に記載のシステム(20)に類似する。代替的なシステム(20’)と先に記載のシステム(20)の主要な違いは、複数のレーザーコンソールが含まれることであり、それらのパワーは各々、ファイバーカプラ(42)に供給される。各レーザーコンソールは、異なる波長等の異なるパラメータを有するレーザー光線を供給し得る。ファイバーカプラは、前述のシステムに記載されたようなレーザープロジェクタ光学素子(24)へと渡される単一の出力を生み出す。複数のレーザーコンソール(22)の単一の光ファイバーへの連結は、当該技術分野で既知であるファイバーカプラ(42)を用いて達成される。多数の光源を組み合わせるための他の既知のメカニズムも利用可能であり、本明細書に記載のファイバーカプラと置き換えるために使用されてもよい。
このシステム(20’)では、複数の光源(22)は、前述のシステム(20)で記載されたものと類似する経路に従い、つまりコリメートされ、回折され、再びコリメートされ、およびプロジェクタ装置および/または組織へと配向される。この代替的なシステム(20’)では、回折素子は、通過する光の波長によって前述のものとは異なって機能し、結果としてわずかに異なるパターンをもたらす。この変形は、回折される光源の波長と直線である。一般に、回折角の差は、異なる重複パターンが、処置のためにプロジェクタ装置(26)を通って組織に向かう同じ光路に沿って配向され得るのに十分に小さい差である。
結果として生じるパターンが波長ごとにわずかに異なるため、完全な被覆を達成するための連続するオフセットは波長ごとに異なる。連続するオフセットは2つのモードで行われ得る。第1のモードにおいて、光の波長はすべて、一致する被覆なしに同時に適用される。多数の波長の1つに対して完全な被覆を達成するためのオフセットステアリングパターンが使用される。したがって、選択された波長の光は、組織の完全な被覆を達成しているが、他の波長の適用は、組織の不完全な被覆または重複する被覆のいずれかを達成する。第2のモードは、その特定の波長に対する組織の完全な被覆を達成するために、適切なステアリングパターンを用いて、可変波長の各光源を連続して適用する。このモードは、多数の波長を使用した同時処置の可能性を排除するが、光学的手法が各波長で同一の被覆を達成することを可能にする。これは、光波長の不完全または重複する被覆のいずれも回避する。
これらのモードを混合して一致させてもよい。例えば、2つの波長が同時に適用され、一方の波長は完全な被覆を達成し、他方の波長は不完全または重複する被覆を達成し、続いて第3の波長が連続して適用されて完全な被覆を達成してもよい。
図28は、本発明のシステム(20’’)のさらに別の代替的な実施形態を図式で例示する。このシステム(20’’)は概して、図20に描かれるシステム(20)と同様に構成される。主な違いは、光源の特定の波長に合わせた多数のパターン生成サブアセンブリチャネルが含まれることである。複数のレーザーコンソール(22)が平行に配置され、その各々は、それ自体のレーザープロジェクタ光学素子(24)に直接つながっている。各チャネル(44a)、(44b)、(44c)のレーザープロジェクタ光学素子は、図21に関連して記載されるように、コリメーター(32)、マスクまたは回折格子(34)、および再コリメーター(recollimators)(38)(40)を含み、光学素子の全セットは、対応するレーザーコンソール(22)によって生成された特定の波長に合わせられる。その後、光学素子(24)の各セットからのパワーは、他の波長との結合のためにビームスプリッター(46)に向けられる。逆に使用されるビームスプリッタが、光の多数のビームを単一の出力に結合するために使用可能であることは、当業者に既知である。その後、最終的なビームスプリッター(46c)からの結合チャネル出力は、プロジェクタ装置(26)を通じて配向される。
このシステム(20’’)では、各チャネルの光学素子は、そのチャネルの波長ごとに正確な特定のパターンを生成するために調整される。結果的に、チャネルがすべて組み合わせられ、適切に整列されると、単一のステアリングパターンが使用されて、すべての波長に対する組織の完全な被覆範囲が達成され得る。システム(20’’)は、処置に使用されている光の波長と同じぐらい多くのチャネル(44a)(44b)(44c)等、およびビームスプリッタ(46a)(46b)(46c)等を使用してもよい。
システム(20’’)の実装は、整列の制約数を減らすために種々の対称性を利用してもよい。例えば、提案されたグリッドパターンは二次元の周期性であり、および完全な被覆を達成するために二次元でステアリングされる。その結果、各チャネルに対するパターンが規定されたように同一であれば、各チャネルの実際のパターンは、すべての波長に対して完全な被覆を達成するために同じステアリングパターンで並べられる必要はないだろう。効果的な結合を達成するために、各チャネルを光学的に整列させる必要があるだけである。
システム(20’’)において、各チャネルは光源(22)で始まり、これは、パターン生成サブアセンブリの他の実施形態等における光ファイバーからのものであり得る。この光源(22)は、コリメーション、回折、再コリメーションのために光学アセンブリ(24)に配向され、およびチャネルを主パワーと組み合わせるビームスプリッタに配向される。
図20−28に例示されるレーザー光生成システムが典型的なものであることが理解される。他のデバイスおよびシステムは、典型的に光パイプなどを有する内視鏡の形態でプロジェクタ装置に動作自在に流され得るSDMレーザー光の源を生成するために使用することができる。さらに、電磁放射線の他の形態もまた生成され、使用されてもよく、これには紫外線、マイクロ波、他の高周波、および所定の波長のレーザー光線が含まれる。さらに、標的組織自体を傷つけることなく、標的組織の細胞において熱ショックタンパク質を活性化または生成するのに十分な、熱の経時的温度スパイクを生み出すために、超音波をさらに生成して使用してもよい。そのためには、典型的に、超音波または電磁放射線エネルギーのパルス源が提供され、および一時的に6℃〜11℃等に、数分間等の長期間では6℃または1℃以下に、標的組織の温度を上昇させる方法で標的組織に適用される。
本発明に係るHSP生成の刺激は、広範囲の組織異常、病気および感染さえをも処置するのに有効に利用され得ると考えられている。例えば、風邪を引き起こすウイルスは主として、鼻通路および上咽頭における呼吸上皮の小さなポートに影響を及ぼす。網膜と同様に、呼吸上皮は薄く透明な組織である。図29を参照すると、ヒトの頭(62)の断面図が、鼻腔(64)に挿入された内視鏡(14)と、鼻腔(64)内で処置される組織(18)に配向されている、レーザー光等のエネルギー(16)と共に示される。処置される組織(18)は、鼻通路および上咽頭を含む鼻腔(64)内にあってもよい。
レーザーエネルギー、または他のエネルギー源の吸収を確かなものとするために、波長は、水の赤外線(IR)吸収ピークに調節され得る、またはアジュバント色素が光増感剤としての機能のために使用され得る。そのような場合、処置はその後、アジュバントを飲むこと、または局所に適用すること、アジュバントが表面組織に浸透するのを数分待つこと、およびその後に、図29に例示されるように内視鏡(14)の光ファイバー等を介して、数秒間レーザー光または他のエネルギー源(16)を標的組織(18)に投与することから成る。患者に快適さを提供するために、内視鏡(14)は局所麻酔剤の適用後に挿入され得る。必要ならば、上記手順は、一日程度、定期的に繰り返され得る。
処置は、処置されている細胞および組織を損傷させることなく、熱ショックタンパク質の活性化または生成を刺激し、タンパク質修復を促進するだろう。上記で論じられるように、特定の熱ショックタンパク質は、免疫反応および標的細胞と組織の健康に重要な役割を果たすことがわかっている。エネルギー源は、810nmの波長のレーザー光等の単色レーザー光であってもよく、上記で言及された特許出願に記載された方法に類似の方法で投与されるが、図29で例示されるように、内視鏡などを通じて投与されてもよい。アジュバント色素は、レーザー光吸収を増大させるように選択されるだろう。これは、本発明を実行する特に好ましい方法と実施形態を含むが、本発明に従って同じ目的を達成するために、他のタイプのエネルギーと送達手段が使用され得ることが認識される。
ここで図30を参照すると、インフルエンザウイルスに関して類似の状況が存在し、ここで主要な標的は、約3.3mmより大きな直径を有するセグメントにおける上部の呼吸樹の上皮、すなわち上部の呼吸樹の上部の6世代である。粘性の薄層によって、標的上皮細胞を気道内腔と分離し、この層において、抗原と抗体の相互作用が生じて、結果的にウイルスの不活性化がもたらされる。図30を引き続き参照すると、気管支鏡(14)の可撓性光チューブ(12)が、個体の口(66)から喉および気管(68)を通って呼吸樹の気管支(70)へと挿入される。ここで、レーザー光または他のエネルギー源(16)が、図29に関して上記された方法と同じ方法で、組織および領域を処置するために、最上部のセグメントのこの領域の組織に投与され、および送達される。レーザーまたは他のエネルギーの波長が、その付随する恩恵とともに、組織を加熱し、かつHSPの活性化または生成を刺激し、またはタンパク質修復を促進するために、粘液中に存在する水のIR吸収ピークと一致するように選択されることが熟考される。
ここで図31を参照すると、例示されるように、大腸内視鏡(14)は、処置される領域および組織に選択されたレーザー光または他のエネルギー源(16)を送達するように、肛門および直腸(72)へと、および大腸(74)または小腸(76)のいずれかへと挿入される可撓性光チューブ(12)を有してもよい。これは、結腸癌の処置と共に、他の胃腸の問題を助けるために使用され得る。
典型的に、上記手順は大腸内視鏡検査と同様に実施されてもよく、ここで、腸からすべての便が取り除かれ、患者が横向きに寝て、および医師は大腸内視鏡(14)の長く薄い光チューブ部分(12)を直腸へと挿入し、それを処置される領域の結腸、大腸(74)または小腸(76)の領域へと移動させる。医師は、モニターを通じて、挿入された可撓性部材(12)の経路を見ることができ、さらに処置される領域を見るために、腸内の大腸内視鏡(14)の先端にある組織を見ることもできる。他の光ファイバーまたは光チューブの1つを使用すると、内視鏡の先端(78)は処置される組織に配向され、レーザー光または他の放射線(16)の源は、組織(18)においてHSPの活性化または生成を刺激するために、上記のように、処置される組織の領域を処置すべく大腸内視鏡(14)の光チューブの1つを通って送達される。
ここで図32を参照すると、本発明を有利に使用することができる別の例は、炎症および他の代謝機能不全によって示される胃腸(GI)管の症状である、「リーキーガット」症候群としばしば呼ばれるものである。GI管は、網膜に類似して代謝機能不全に弱いため、本発明の処置によく反応することが予想される。これは、先に議論されたような、閾値以下のダイオードマイクロパルスレーザー(SDM)治療、または本明細書で議論され、かつ当該技術分野で既知の他のエネルギー源および手段によって行われ得る。
図32を引き続き参照すると、内視鏡などの可撓性光チューブ(12)は、患者の口(66)から喉および気管領域(68)を通って胃(80)へと挿入され、ここでその先端または端部(78)は、処置される組織(18)に向けて配向され、およびレーザー光または他のエネルギー源(16)は、組織(18)に配向される。大腸内視鏡を使用し、直腸(72)を通って胃(80)または胃と直腸との間の任意の組織へと挿入してもよいことが、当業者によって理解される。
必要であれば、放射線の吸収を可能にするためにGI組織に発色団色素を経口的に送達してもよい。例えば、レーザーダイオードまたはLEDからの非焦点810nmの放射線が使用されたならば、色素は810nmに近い吸収ピークを有するだろう。代替的に、エネルギー源の波長を、水の吸収ピークでわずかに長い波長に調整してもよく、その結果、外部から適用される発色団は必要ではないだろう。
図33に例示されるようなカプセル内視鏡(82)は、本発明に従って放射線とエネルギー源を投与するために使用されてもよいことが、本発明によってさらに熟慮される。そのようなカプセル剤は、患者が呑み込むことができるように、長さがおよそ1インチなどの比較的小さいサイズである。カプセルまたはピル(82)が呑み込まれ、胃に入り、そしてGI管を通ると、適切な位置で、カプセルまたはピル(82)は、レーザーダイオードおよび関連する回路類等のエネルギー源(86)を活性化するために、アンテナ(84)等を介してパワーと信号を受け取ることができ、適切なレンズ(88)が、放射線用透明カバー(90)を通じて、生成されたレーザー光または放射線の焦点を処置される組織に合わせる。カプセル内視鏡(82)の位置が、外部画像診断、信号トラッキングなどの様々な手段によって、またはその時にピルまたはカプセル(82)が通るGI管の画像を医師が見るための、照明を備えた小型カメラによっても、判定され得ることが理解される。カプセルまたはピル(82)には、バッテリー等によってそれ自体のパワー源が供給されてもよく、またはアンテナを介して外部からパワーを供給されてもよく、その結果、処置されるべき組織および領域を処置するために、レーザーダイオード(86)または他のエネルギーを生成する源は、望ましい波長とパルスエネルギー源を作り出す。
先の出願における網膜の処置におけるように、放射線は、マイクロパルスの温度スパイクおよび関連する安全性を活用するためにパルス状にされ、処置が組織に完全に無害であるようにパワーが調節され得る。これは、長期的な温度上昇をFDAが定めた1℃の限界未満に維持しながら、およそ10℃のスパイク温度上昇を与えるために、ピークパワー、パルス時間、および反復率を調節することを含み得る。ピル形態(82)の送達が使用される場合、デバイスは、小型充電式電池または無線の誘導励起などによってパワーを供給され得る。加熱した、またはストレスを与えた組織は、HSPの活性化または生成を刺激し、タンパク質修復を促進し、その恩恵が付随する。
先の例から、本発明の技術は、ファイバー光学素子または他の光送達手段によって容易にアクセス可能である体表面近く、または内部表面における症状の処置に限定される。HSP活性を活性化するためのSDMの適用が、身体の表面近く、または光学的にアクセス可能な領域に限定されるのは、身体におけるIRまたは可視光線の吸収長が非常に短いからである。しかしながら、本発明から利益を得るのは、組織または身体内の深部の症状である。したがって本発明は、体組織で比較的長い吸収長を有する、マイクロ波等の超音波および/または無線周波(RF)、さらに短い波長の電磁(EM)放射線の使用さえをも熟考する。パルス超音波の使用は、表面のSDM等のアクセスできない異常な組織において治療用のHSP活性を活性化するために、RF電磁放射線よりも好ましい。
内部オリフィスに近くない深部組織では、光パイプはパルスエネルギーを送達するための効果的な手段ではない場合もある。その場合、パルス低周波電磁エネルギー、または好ましくはパルス超音波を使用して、標的組織における一連の温度スパイクを引き起こすことができる。
したがって、本発明に従って、パルス超音波または電磁放射線の源は、HSP生成または活性化を刺激し、かつ生きている動物の組織でのタンパク質修復を促進するために、標的組織または体液に適用される。一般に電磁放射線は、紫外線、マイクロ波、他の高周波、所定の波長のレーザー光線等であり得る。一方、電磁エネルギーが、生来の開口部から離れた深部組織の標的に使用される場合、吸収長は、標的組織の深度に応じて波長をマイクロ波または無線周波数波の波長に制限する。しかしながら、超音波は、生来の開口部から離れた深部組織の標的に対して長波長の電磁放射よりも好まれる。
超音波または電磁放射線は、処置されている細胞および組織に対する損傷を引き起こすことなく、HSP生成または活性化を刺激し、タンパク質修復を促進する、組織における熱の時間経過を生成するためにパルス状にされる。処置される組織の面積および/または体積もまた、長期的な温度上昇をFDAが定めた1℃等の限界未満に維持しながら、温度スパイクが数度、例えばおよそ10℃になるように、制御され、最小限にされる。処置される組織の面積または体積が大きすぎると、上昇した組織温度は、FDA要件を満たすほど十分に素早く拡散され得ないことがわかっている。しかしながら、処置される組織の面積および/または体積を制限すると共に、パルスエネルギー源を作り出すことによって、処置される細胞および組織が、生成される余剰熱を許容限界内で拡散することを可能にしながら、細胞および組織を加熱するまたはそうでなければストレスをかけることにより、HSPの活性化または生成を刺激する本発明の目的が達成される。
ここで図34を参照すると、超音波を用いることで、身体深部の特定領域は、標的部位に各々焦点を当てた1つ以上のビームを使用することによって特異的に標的とされ得る。その後、パルス加熱は大部分が標的領域のみに適用され、ここにビームは集束して重複する。パルス超音波源もまた、表面またはその近くの異常に使用され得る。
図34に例示されるように、超音波振動子(92)等は、複数の超音波ビーム(94)を生成し、これらは音響インピーダンス整合のゲルを介して皮膚に連結され、ビーム(94)の焦点の前の皮膚(96)および損傷のない組織を通って、例示される肝臓等の標的臓器(98)、および具体的には超音波ビーム(94)が集束している処置される標的組織(100)へと貫通する。上記で言及されたように、パルス加熱はその後、集束ビーム(94)が重複している標的集束領域(100)に適用されるだけである。集束領域(100)前後の組織は、認知できるほどには加熱または影響されない。
本発明は、レーザー光などを使用する表面組織または表面近くの組織の処置、例えば、集束超音波ビームなどを使用する深部組織の処置だけでなく、敗血症などの血液疾患の処置も熟考している。上記のように、集束超音波処置は、表面と共に深部の体組織でも使用され、血液を処置する際にも適用され得る。しかしながら、SDM、および上皮細胞などの表面または表面近くの処置に典型的に限定される類似した処置オプションが、耳たぶ等の組織の比較的薄い層を通って血液にアクセス可能な領域で血液疾患を処置する際に使用されることも熟考されている。
ここで図35および36を参照すると、血液疾患の処置は単に、耳たぶ(102)へのSDMまたは他の電磁放射線または超音波パルスの伝達を必要とし、ここでSDMまたはエネルギーの他の放射線源は、耳たぶ組織を通過し、耳たぶを通過する血液へと入る場合もある。このアプローチは、血流が比較的高い身体の他の領域で、および/または指先、口または喉の内部等の組織表面近くで行われてもよいことが理解されるだろう。
ここで再度、図35と36を参照すると、耳たぶ(102)は、SDM放射線などを伝達するように構成されたクランプ装置(104)に隣接していることが示される。これは、例えば、望ましいパルスおよびパルス列の望ましい周波数を耳たぶ(102)に伝達する1つ以上のレーザーダイオード(106)によるものであってもよい。例えば、ランプ装置(108)によってパワーが提供され得る。代替的に、ランプ装置(108)は、適切な光学素子および電子装置を通って耳たぶ(102)に伝達される、レーザー光の実際の源であり得る。クランプ装置(104)は、患者の耳たぶ上への固定、および患者の耳たぶ(102)に放射を限定するために、単に使用される。これは、鏡、反射鏡、ディフューザーなどによって行われてもよい。これは、キーボード(112)等によって操作される、制御コンピュータ(110)によって制御され得る。システムはまた、必要ならば、例えば手順が患者から離れているオペレーターによって実行される場合に、ディスプレイとスピーカー(114)を含んでもよい。
電磁パルスまたは超音波パルスの列による提案された処置は、単一の短パルスまたは維持(長)パルスを組み込む初期の処置に対して、2つの主要な利点を有する。第1の利点は、列における短い(好ましくは一秒以内の)個々のパルスが、より長い時間スケール(分または時)で動作するものよりも大きな反応速度定数でHSP活性化等の細胞のリセットメカニズムを活性化することにある。第2の利点は、機能障害の細胞状態を望ましい機能状態から分離する活性化エネルギーバリアを細胞の修復システムが、より迅速に乗り越えることを可能にする大きな熱スパイク(約10,000)を、処置で反復されたパルスが提供することにある。最終的な結果は、適用されるより低い平均パワーおよび適用される総エネルギーが、望ましい処置目標を達成するために使用され得るという意味で、「治療閾値の低下」である。
現在のマイクロパルスダイオードレーザーにおけるパワー制限は、かなり長い露光持続時間を必要とする。露光が長ければ長いほど、レーザースポットの残存部での露光されていない組織へのセンタースポットでの放熱性がより重要となる。したがって、810nmのダイオードレーザーのマイクロパルスレーザー光線は、500ミリセカンド以下、および好ましくはおよそ300ミリセカンドの露光エンベロープ(envelope)持続時間を有する必要がある。もちろん、マイクロパルスダイオードレーザーがより強力になった場合、露光持続時間は適宜、短縮されるべきである。
パワー制限とは別に、本発明の別のパラメータは、デューティサイクル、またはマイクロパルスの列の周波数、または連続するパルス間の熱緩和時間の長さである。同様のMPEレベルで同様の放射照度でマイクロパルスレーザーを送達するために調節された10%以上のデューティサイクルの使用が、致死的な細胞損傷のリスクを有意に増大させることがわかっている。しかしながら、10%未満のデューティサイクル、および好ましくはおよそ5%以下のデューティサイクルは、生物学的反応を刺激するのに適切なMPE細胞のレベルにおける熱上昇と処置を実証するが、致死的な細胞損傷をもたらすと予測されるレベルを下回ったままである。しかしながら、デューティサイクルが低ければ低いほど、露光エンベロープ持続時間は増加し、いくつかの例では500ミリセカンドを超過し得る。
各マイクロパルスは、1000分の1秒にも満たず、典型的には50〜100マイクロセカンドの持続時間である。したがって、300〜500ミリセカンドの露光エンベロープ持続時間および5%未満のデューティサイクルでは、連続するパルス間の熱緩和時間を可能にするためにマイクロパルス間の相当量の時間が浪費される。典型的に、熱緩和時間の1〜3ミリセカンドおよび好ましくはおよそ2ミリセカンドの遅延が、連続するパルス間で必要とされる。適切な処置のために、細胞は典型的に、各位置で50〜200回、および好ましくは75〜150回暴露または命中され、1〜3ミリセカンドの緩和時間または時間間隔があり、レーザースポットに暴露されている任意の領域を処置するための上記の実施形態に係る合計時間は、通常1秒未満であり、平均で100ミリセカンドから600ミリセカンドである。熱緩和時間は、その位置またはスポット内で細胞を加熱しすぎないように、および細胞が損傷または破壊されるのを防ぐために、必要とされる。100〜600ミリセカンドの時間は長くないように思われるが、レーザースポットの小さなサイズと、標的組織の比較的より広い面積を処置する必要性を考慮して、標的組織全体を処置するには、特に処置を受けている患者にとって相当量の時間がかかる。
マイクロ波、無線周波数、および超音波を含む他のパルスエネルギー源もまた、好ましくは自然界においてパルス状にされ、およびデューティサイクルおよび/またはパルス列、したがって標的組織へのマイクロパルスエネルギー適用の遅延時間または間隔を有する。さらに、エネルギーのマイクロパルスで事前に処置された標的組織は、標的組織の細胞を恒久的に傷つけ、または破壊さえし得る所定の上限温度を超えないように、エネルギーの提供によって生成された熱を消すことができなければならない。典型的には、処置される標的組織の面積または体積は、多数のエネルギービームが生成され、標的組織に適用される場合であっても、エネルギー源によって任意の量で処置される標的組織の面積または体積よりもはるかに大きい。
したがって、本発明は、第1の処置領域から離れている標的組織の第2の処置領域または追加の領域にエネルギーを適用するために、同じ場所への連続した適用間の間隔を利用する場合もある。本発明の望ましい治療効果を達成するために、連続するパルス間の十分な熱緩和時間を提供し、それでもなお、その位置にエネルギーを繰り返し適用することでそれらの細胞の温度を十分に上昇させることによって適切にそれらの位置または領域にある細胞を十分に処置するために、パルスエネルギーは、予め決められた時間間隔内で、第1の処置位置または先の処置位置に戻される。
所定の時間内に事前に処置された位置に戻ることが重要であり、それによって、その時間の間、その領域を十分に冷まし、さらに必要な時間ウィンドウ内で処置することが可能になる。レーザー光パルスエネルギーを適用する場合、レーザー光は、1〜3ミリセカンド、および好ましくはおよそ2ミリセカンド以内に事前に処置された位置に戻り、なぜなら、1、2秒待てずに、必要な処置をまだ完全に受けていない事前に処置された領域に戻ると、処置は効果的ではなく、またはまったく効果的でない恐れもあるからである。しかしながら、レーザー光パルスが典型的に50〜100マイクロセカンドの持続時間であるため、その時間間隔の間、典型的におよそ2ミリセカンドの間、少なくとも1つの他の領域、および典型的に複数の領域を、レーザー光の適用によって処置することができる。これは、本明細書においてマクロシフト(microshifting)と呼ばれる。処置することができる追加領域の数は、マイクロパルスの持続時間と、光線を1つの領域から別の領域に制御可能に移動させる能力のみによって制限される。
現在、互いに十分に間隔を置いて離れているおよそ4つの追加領域を、レーザー光を使用する場合に第1の処置領域で始まる熱緩和間隔の間に処置することができる。したがって、複数の領域を少なくとも部分的に、第1の領域に対して200〜500ミリセカンドの露光エンベロープの間で処置することができる。したがって、単一の時間間隔において、100の同時の光スポットのみが処置領域に適用される代わりに、およそ500の光スポットを、異なる処置領域においてその時間間隔の間に適用することができる。これは例えば、810nmの波長を有するレーザー光線に当てはまるだろう。572nmなどのより短い波長に関しては、多数の個々の位置でさえ光スポットを作り出すためにレーザービームにさらされ得る。したがって、最高でおよそ400の同時スポットの代わりに、およそ2,000のスポットが、任意の領域または位置に対するマイクロパルス処置の間隔の間に被覆され得る。典型的には、各位置は、望ましい処置を達成するために、露光エンベロープ持続時間(典型的に200〜500ミリセカンド)にわたって50〜200、およびより典型的には75〜150の光の適用を有する。本発明の一実施形態に従って、レーザー光は、各領域または位置に対する緩和時間間隔の間に順に、事前に処置された領域に再適用されるだろう。これは、処置される各領域に対する予め決められた数のレーザー光の適用が達成されるまで繰り返し行われるだろう。
同様に、マイクロ波、高周波および/または超音波の1つ以上のビームが、第1の処置領域とは間隔を置いた標的組織の第2または追加の処置領域に適用されてもよく、および所定の時間間隔後に、必要であれば、パルスエネルギーを再適用するために標的組織の第1の処置領域に戻る。パルスエネルギーは、望ましい数の適用が各処置領域に対してなされるまで、各領域または位置に対する緩和時間間隔の間に順に事前に処置された領域に再適用されてもよい。処置領域は、熱緩和と消費を可能にし、かつ熱による組織損傷を回避するために、少なくとも事前に決められた最小距離だけ離れていなければならない。波長または周波数、デューティサイクルおよびパルス列持続時間を含むパルスエネルギーパラメータは、細胞内でのHSP生成の刺激等によって治療効果を達成するために、標的組織にパルスエネルギー源を適用している間、最大11℃まで、およそ6〜11℃等に標的組織の温度を上昇させるように選択される。しかしながら、標的組織の細胞は、熱を消すための期間を与えられなければならず、それによって数分間にわたる組織の平均温度上昇は、恒久的に標的組織を傷つけないように、数分間にわたって6℃以下または1℃以下等の所定のレベル以下に維持される。
これは、図37A−図37Dに図式で例示される。図37Aは、第1の適用としてそこに適用されるレーザー光線等のエネルギービームを有する第1の領域を実線の丸で例示している。第1の露光領域における位置が、ビームを熱緩和時間間隔内で再度適用することによって再処置される必要があるまで、図37Bに例示されるようにビームは、第2の露光領域、続いて第3および第4の露光領域へとオフセットまたはマイクロシフトされる。その後、図37Cに例示されるように、第1の露光領域内の位置に、エネルギービームが再適用されるだろう。図37Dにおいて黒塗りされた丸によって例示されるように、標的組織領域への望ましい数の露光または命中またはエネルギーの適用が、これらの領域を治療敵に処置するために達成されるまで、陰影線が入ったドットまたは丸によって図37Dに例示されるように、第2または続く露光が各露光領域に生じるだろう。第1または先の露光領域の処置が完了すると、システムは追加の露光領域を加えることができ、そのプロセスは、処置される全領域が十分に処置されるまで繰り返される。実際に本発明に従ったエネルギーまたはレーザー光の暴露は、ヒトの眼に加えて既知の検出装置および技術では見ることができず、検出できないため、実線の丸、破線の丸、部分的に陰影線が入った丸、および完全に陰影線が入った丸の使用が単に説明目的のためのものであることを理解する必要がある。
隣接した露光領域は、熱による組織損傷を回避するために、少なくとも予め決められた最小距離だけ離されなければならない。そのような距離は、直前に処置された位置または領域から少なくとも0.5直径、およびより好ましくは1〜2直径離れている。そのような間隔は、先の露光領域の実際に処置された位置に関係している。比較的大きな領域が、図37に例示される方法とは異なる方法でオフセットされる複数の露光領域を実際に含み得ることが、本発明によって熟考される。例えば、露光領域は、図25および図26に例示される細線を含み得るが、これは、必要領域がすべて十分に露光され処置されるまで、順に繰り返し露光されるだろう。本発明に従い、処置されるべきその領域を処置するために必要とされる時間は、単一の処置セッションが医療提供者にとってはるかに短い時間を要するものであり、かつ期間が長いとして患者が不快になる必要がないように、4倍または5倍等に有意に短縮される。
1つ以上の処置ビームを一度に適用し、処置ビームを一連の新たな位置に移動させる本発明のこの実施形態に従って、ビームを同じ位置または領域に戻して繰り返し再処置することは、全露光エンベロープ持続時間の間にビームを同じ位置または領域に保持する方法論と比較して、それほどパワーを必要としないことが分かった。図38−40に関連して、必要とされるパルス長とパワーとの間には直線関係があるが、生成される熱には対数関係がある。
図38に関連して、X軸はレーザーのワットでの平均パワーの対数(Log)を表わし、Y軸は秒で処置時間を表わすグラフが提供される。下の曲線は汎黄斑の処置のためのものであり、上の曲線は汎網膜のためのものである。これは、50マイクロセカンドのマイクロパルス時間、パルス間の2ミリセカンドの時間、および300ミリセカンドのスポット上の列の持続時間を有するレーザー光線に対するものである。各網膜スポットの面積は100ミクロンであり、これらの100ミクロンの網膜スポットに対するレーザーパワーは0.74ワットである。汎黄斑領域は、合計で7,000の汎黄斑スポットを必要とする0.55であり、汎網膜領域は、完全な被覆のために42,000のレーザースポットを必要とする3.30である。各RPEスポットは、本発明に従って、そのリセットメカニズムを適切に作動させるために最小エネルギー、すなわち汎黄斑では38.85ジュール、および汎網膜では233.1ジュールを必要とする。予想されるように、処置時間が短ければ短いほど、必要とされる平均パワーは大きくなる。しかしながら、許容可能な平均パワーには上限があり、これは処置時間を短くする程度を制限している。
上記のように、利用可能かつ使用されるレーザー光に関してパワー制約があるだけでなく、眼組織を傷つけることなく眼に適用することができるパワーの量にも制約がある。例えば、眼の水晶体における温度上昇は、白内障を引き起こす等、水晶体の過剰な加熱と損傷がないように、4℃等に限定される。したがって、7.52ワットの平均パワーは、水晶体温度をおよそ4℃に上昇させ得る。パワーへのこの制限は最小処置時間を増大させる。
しかしながら、図39を参照すると、必要とされるパルス当たりの合計パワーは、レーザースポットを繰り返し連続して移動させて、先に処置された位置に戻すマイクロシフトの場合にはより少なく、その結果、処置時間の間に送達される総エネルギーおよび合計平均パワーは同じである。図39および図40は、合計のパワーが処置時間にどの程度左右されるかを示す。これは、汎黄斑処置に対しては図39に、汎網膜処置に対しては図40に示される。上の実線または曲線は、図24等に記載され例示されるように、熱緩和時間間隔を活用するマイクロシフトのない実施形態を表わし、一方で下の破線は、図37等に記載され例示されるように、そのようなマイクロシフトに関する状況を表わす。図39および図40は、所与の処置時間の間、マイクロシフト無しよりもマイクロシフト有りの方がピークの合計パワーがより少ないことを示している。これは、本発明のマイクロシフトの実施形態を使用する任意の処置時間により少ないパワーが求められることを意味する。代替的に、許容可能なピークパワーが有利に使用可能であり、全処置時間を短縮する。
したがって、図38−図40によれば、1.0の対数パワー(10ワット)は、本明細書に記載されるように、本発明のマイクロシフトの実施形態を使用して合計20秒の処置時間を必要とする。マイクロシフト無しでは2分より多くの時間がかかり、代わりに、全処置エンベロープ持続時間の間に同じ位置または領域にマイクロパルス光線を残す。ワット数に従って最小の処置時間がある。しかしながら、マイクロシフトでのこの処置時間は、マイクロシフト無しよりもはるかに短い。必要とされるレーザーパワーがマイクロシフトではさらに少ないため、任意の望ましい網膜処置領域に対する処置時間を短縮するために、いくつかの事例においてパワーを増大させることが可能である。処置時間と平均パワーの積は、本発明に係る治療的処置を達成するために、任意の処置領域に対して固定される。これは、例えば、低減されたパワーで同時により多くの治療用レーザー光線またはスポットを適用することによって実施され得る。もちろん、レーザー光のパラメータが、治療上有効であるが、細胞に対して破壊的ではなく、恒久的に損傷を与えないように選択されるため、誘導または追跡のビームが必要とされず、本発明に従って、処置ビームだけですべての領域を処置することができる。
本発明は、マイクロパルスレーザーに関連した使用に関して記載されているが、理論上、可能性として連続波レーザーがマイクロパルスレーザーの代わりに使用され得る。しかしながら、連続波レーザーでは、レーザーが位置から位置へと移動し、そこでレーザーが停止せず、処置領域間で熱漏洩および過熱が生じ得るため、過熱に対する懸念がある。したがって、連続波レーザーの使用は理論上可能であるが、実際には理想的ではなく、マイクロパルスレーザーが好ましい。
グラフ38−40に関して提供された情報は、網膜の眼組織に適用されたエネルギー源としてのレーザー光線の所見と計算から導かれるが、他の組織へのそのようなパルスレーザー光の適用は類似の結果を達成すると考えられ、この結果では、処置ビームを一連の新たな位置に移動させ、次に同じ位置または領域を繰り返し再処置するためにビームを戻すことは、全露光エンベロープ持続時間中に同じ位置または領域にビームを保持する方法論と比較して、時間の節約となるだけでなく、より少ないパワーを要する。そのようなパワーの保存はまた、マイクロ波、高周波、および超音波エネルギー源を含むパルスエネルギーの他の源を用いて達成されると考えられる。
上記のマクロシフト技術に従って、光線のパターンのシフトまたはステアリングは、図22および23に関連して例示され記載されるもの等の、光学走査メカニズムの使用によって行われてもよい。照明またはエネルギーの波長が、照らされる、または露光される容積に対する距離よりもはるかに小さい状況では、ステアリングは位相配列の使用により行うことができる。この場合の照明またはエネルギーは、「遠距離場」であると言われている。位相配列は、マイクロ波と超音波照明の用途、またはレーザー光線源にさえも使用することができる。
マイクロ波、超音波、およびレーザーエネルギー源のためのステアリングは、「アレイ」を提供する多数の源の使用によって行われる場合もある。アレイの照明放射パターンをステアリングするための基本概念は、源のアレイの個々の構成員からの放射間の構造的な(かつ有害な)干渉である。これを例示するために、図41に関連して、アレイの2つの隣接したメンバーを考慮することのみが必要である。図41は、2つの隣接した源から生じるウェーブフロントを表す。
2つの源間の距離に関して角度θで表された波面では、左の源からの波の振幅は、exp[iωt]に比例するが、右の源からの波の振幅は、exp[iωt−kasinθ−φ]に比例し、式中ωは、放射の角振動数であり、k=2π/λである。
建設的干渉に関しては、これらの2つの波は「位相に」あるべきであり、すなわち以下である。
φconstructive=kasinθ+2nπ [1]
相殺的干渉に関しては、これらの2つの波は「位相が異なる」べきであり、つまり以下である。
φdestructive=kasinθ+(2n+1)π [2]
したがって、照明は、以下から得られる方向θで大きくなる。
sinθ=(1/ka)[φconstructive−2nπ] [3]
言いかえれば、放射は、異なる遅延φを選ぶことにより、単純に異なる所望方向θへと導くことができる。
遅延は、放射線源の励起のために回路に電子的に導入され得る。これを行うための手段もまた、公開された文献で十分に論じられている:アナログ遅延回路が、デジタル遅延回路と同様に利用可能である。
マイクロ波、超音波、およびレーザー源に関する放射パターンは、非常によく配向されている。
エアリーディスクの式による横断寸法2bの源からの放射線ビームの発散を推定する場合、以下である。
Θ1/2=0.6λ/b [4]
源からの標的距離Dにおいて、照らされた領域の半値幅wは、およそ以下である。
w=0.6λD/b [5]
照らされた領域の分離が2wであることを要する場合、源の分離はおよそ3w:
a=1.8λD/b [6]
である。
これは、源の大きさが放射波長よりもはるかに大きくなるように選択される場合、小さな分離であり得る。
例えば、超音波では、1cmの横断寸法を有する5MHzの源を有し、望ましい標的距離は10cmであると仮定する。分離距離は≒0.5cmである。
他の例として、140〜220GHzで作動する、市販のマイクロ波基準利得ホーン型ソースは、13.9mm×10.8mmの横断寸法と32.2mmの奥行寸法を有する。200GHzでは、波長は0.15cmであり、および10cmの標的距離では、方程式[5]により得られる標的幅は1.2×0.15×10/0.6=3cmである。ホーンの間隔として、方程式[6]は9cmを与える。
次に、方程式[4]−[6]を適用して、810nmのレーザー放射のステアリング可能アレイに関するおおざっぱな推定を得る。b=2×810nm、およびD=1mmであると推測する。方程式[4]−[6]からΘ1/2=0.3、w=0.3mm、およびa=0.9mmが得られる。
しかしながら高周波の用途では、高周波の波長は典型的に、人体の寸法よりもはるかに大きい。その場合、処置容積は、高周波源の「近距離音場」にあると言われている。位相配列は近距離音場に有用ではなく、ステアリングの異なる方法が求められる。
無線周波数処置については、放射線の波長は体の寸法よりはるかに大きい。したがって、3〜6MHzでは、波長は10,000cmから5000cmまで変動する。したがって、体の標的部位は、源の「近距離音場」にある、つまり標的の距離と寸法はRF放射線の波長よりはるかに小さい。これは、関連する処置照射野が放射線場ではなく(マイクロ波、超音波、およびとレーザー療法の場合)、代わりに誘導電磁界であることを意味する。
RFコイルからの誘導電磁界は、コイル寸法に匹敵する寸法を超えるほどに大きいだけである。誘導磁場は、これより大きな距離での1/rとして急速に減衰する。したがって、体の表面にあるコイルでは、処置容積を、コイル半径に等しい半径の半球としておおざっぱに描くことができる。
2〜6mmの半径のコイルでは、これらのコイルに対する処置容積は、むしろ表面に近い(コイル寸法に匹敵する距離)。大きい方のコイルは、より深い標的に使用することができる。先に論じられた間隔基準に合わせて、表面アレイにおけるコイル間の間隔は、個々のコイル寸法に匹敵するように選択される。
上記のように、標的組織にエネルギーを適用する制御された方式は、標的組織を破壊せず、または恒久的に傷つけることなく、標的組織を治療的に処置するために標的組織の温度を上げるように意図される。そのような加熱はHSPを活性化し、熱により活性化されたHSPは、損傷を受けたタンパク質を修復および/または除去することによって病変組織を健康な状態にリセットすると考えられる。そのようなHSP活性化の最大化が標的組織に対する治療効果を改善すると、本発明者らは考えている。そのため、HSPとHSP系種の挙動および活性化、それらの生成と活性化、HSP活性化のための温度範囲およびHSP活性化または生成と非活性化の時間枠の理解は、生体標的組織の熱処置を最適化するために利用することができる。
上記のように、標的組織は、100ミリセカンドから600ミリセカンド等の、10秒以下、および典型的には1秒未満等の短期間にパルスエネルギーによって加熱される。エネルギーが標的組織に実際に適用される時間は典型的には、標的組織が過熱せず、かつ損傷または破壊を受けないように、熱緩和のための時間を提供するためにこれよりはるかに少ない。例えば、上記のように、レーザー光パルスは数ミリセカンドの緩和時間間隔を伴い、およそマイクロセカンド続く場合もある。
したがって、HSPの一秒以内の挙動の理解は、本発明にとって重要であり得る。SDMにおけるHSPの熱活性化は典型的に、関係するアレニウスの積分、
によって記載され、式中、積分は処置時間に及び、
AはHSP活性化に関するアレニウスの速度定数であり、
Eは活性化エネルギーであり、
T(t)は薄いRPE層の温度であり、レーザーによって引き起こされた温度上昇を含む。
レーザーによって引き起こされた温度上昇、したがって活性化アレニウスの積分は、処置パラメータ(例えばレーザーパワー、デューティサイクル、全列持続時間)とRPE特性(例えば吸収係数とHSPの密度)の両方に依存する。効果的なSDM処置は、アレニウスの積分がおよそ1である場合に得られることが、臨床的にわかっている。
アレニウスの積分の形式は、単に正反応、つまりHSP活性化反応のみを考慮に入れる:それは、活性化HSPがその不活性化状態に戻る逆反応を考慮しない。SDM処置の典型的な1秒以下の持続時間では、これは完全に適切であることがわかる。しかしながら、より長い期間(例えば1分以上)では、この形式は十分な近似値ではない:これらのより長い時間で、反応の全体が生じて、はるかに小さい効果的なHSP活性化率を結果としてもたらす。これは、本発明の開示におけるSDMの適用間の、提示された分程度の間隔中の場合である。
公開された文献では、より長い持続時間にわたる細胞中の熱ショックタンパク質(HSP)の生成と破壊は通常、HSP分子のライフサイクルに関与する様々な分子種の挙動を記載する9〜13の同時質量収支微分方程式の集合によって記載される。これらの連立方程式は、温度の急激な上昇後の、HSPと他の種の早晩の挙動を示すために、コンピューターによって解かれる。
これらの方程式は、HSPの活動に含まれる様々な分子種の反応に基づいたすべての保存方程式である。SDMの繰り返しの適用の間の分単位の間隔でHSPの挙動を記載するために、M.Rybinski,Z.Szymanska,S.Lasota,A.Gambin(2013)Modeling the efficacy of hyperthermia treatment.Journal of the Royal Society Interface 10,No.88,20130527(Rybinski et al(2013))に記載された方程式を使用する。Rybinski et al(2013)で考慮された種が、表1に示される。
表1:Rybinski et al(2013)の記載にあるHSP系種:
これら10の種に関する結合連立質量保存方程式は、方程式[2]−[11]として以下に概説される:
これらの式では、[]は、ブラケット内部の量の細胞濃度を意味する。Rybinski et al(2013)では、310Kの平衡温度での初期濃度は、表2.0で提供される。
表2:任意の単位での典型的な細胞に関する310Kでの種の初期値[Rybinski et al(2013)]。任意の単位は、計算上の利便性によりRybinski et alによって選択される:0.01〜10の範囲にある対象の量を作るためである。
Rybinski et al(2013)速度定数は表3に示される。
表3:先の表の任意の濃度単位に対するmin−1で比率を提供するRybinski et al(2013)速度定数。
表2の初期濃度値と表3の速度定数は、温度が数分間(例えば350分)におよそ5℃上昇した場合、全HSP系の挙動に関する実験データに対応するように、Rybinski et al(2013)によって判定された。
HSPの初期濃度は、100×0.308649/(8.76023+0.113457+1.12631)}=細胞に存在するタンパク質の総数の3.09%、であることに留意されたい。
表3の速度定数は、T=310+5+315KでRybinski et al等によって使用されるが、非常に類似する速度定数が他の温度で存在するだろう。この関係では、シミュレーションの質的挙動は、大きな範囲のパラメータに類似する。便宜上、表3の速度定数の数値がT=310Kの平衡温度での数値と十分な近似値であると推定する。
Rybinski et alの細胞における種々の構成成分の挙動は、温度が周囲310Kからt=0において急激に5Kに増加する状況に関して350分間、図42に示される。続けて図42を参照すると、37℃〜42℃への温度の急増に続く、350分間のHSP細胞系の構成成分の挙動が示される。
ここで、構成成分の濃度は、計算上有利な恣意的な単位で示される。Sは、HSPの影響をまだ受けていない変性または損傷したタンパク質を意味する;HSPは遊離した(活性化された)熱ショックタンパク質を意味する;HSP:Sは、損傷を受けたタンパク質に付着し修復を行なっている活性化されたHSPを意味する;HSP:HSFは、熱ショック因子モノマーに付着した(不活性)HSPを意味する;HSFは、熱ショック因子のモノマーを意味する;HSFは、DNA分子上の熱ショック要素と相互作用するために核膜を貫通することができる熱ショック因子の三量体を意味する;HSE:HSFは、新たなmRNA分子の転写を開始するDNA分子上の熱ショック要素に付着した熱ショック因子の三量体を意味する;mRNAは、HSE:HSFから結果としてもたらされるメッセンジャーRNA分子を意味し、および細胞の細胞質での新たな(活性化された)HSP分子の生成をもたらす。
図42は、活性化HSPの初期濃度が、細胞質中の分子HSPHSFに隔離されたHSPの放出の結果であり、mRNAを介した細胞核からの新たなHSPの生成は、温度上昇が生じた60分後までは生じないことを示している。図42はまた、活性化HSPが、それらの修復活動を始めるために損傷を受けたタンパク質に急速に付着するのを示す。描かれた細胞では、突然の温度上昇はまた、損傷を受けたタンパク質の濃度における一時的な上昇を結果としてもたらし、温度上昇後約30分で生じる、損傷を受けたタンパク濃度のピークを伴う。
図42は、Rybinski et alの方程式が、350分間にわたる10の異なる種の変化を予測することを示す。しかしながら本発明は、任意の単一の網膜座でのSDMの2回の適用間のはるかに短い0(分)間隔にわたる種の変化に対するSDMの適用に関係する。レーザー光処置の形態でのSDMの好ましい実施形態が分析され記載されるが、他のエネルギー源にも同様に適用可能であることが理解されるだろう。
図43A−43Hを新たに参照すると、表2と表3の初期値および速度定数を用いた、Rybinski et al(2013)の方程式を使用した、37℃〜42℃の急激な温度上昇に続く、第1分の間のHSP細胞系の構成成分の挙動が示される。横座標は、分単位で時間を意味し、および縦座標は、図43のように同じ任意の単位で濃度を示す。
図43は、HSPの核源が1分の間、実質的に何の役割も果たさず、細胞質中の新たなHSPの主な源は、HSPHSF分子のリザーバからの隔離されたHSPの放出から生じることを示す。これはさらに、新たに活性化されたHSPの十分なフラクションが、修復プロセスを始めるために損傷を受けたタンパク質に付着しているのを示す。
表2の初期濃度は、種の均衡値ではなく、つまり図42と43の曲線によって証明されるように、それらはd[…]/dt=0を与えない。表3の速度定数に対応するd[…]/dt=0を与える均衡値は、表4に表記されたものであるとわかる。
表4:任意の単位での種の均衡値[Rybinski et al(2013)]は、表3の速度定数に対応する。任意の単位は、計算上の利便性によりRybinski et alによって選択されたものである:0.01〜10の範囲にある対象の量を作るためである。
HSPの平衡濃度は、100×{0.315343/(4.39986+5.05777+0.542375)}=細胞に存在するタンパク質の総数の3.159%、であることに留意されたい。これは同等であるが、他の研究者によって発見された予想されるタンパク質の総数の5%〜10%未満である。しかしながら、一般的な挙動は、他の研究者によって指示されるように明らかには変化しないだろうと予想して、パーセンテージの上昇を調節することはしなかった。
本発明者らは、標的組織を破壊せず、または恒久的に傷つけずに、標的組織を治療的に処置するために標的組織の温度を制御可能に上げるために、標的組織に対する第1の処置は、ある期間にわたって標的組織にパルスエネルギー(例えばSDM)を繰り返し適用することにより行われてもよいことを発見した。「処置」は、100ミリセカンドから600ミリセカンド等の、10秒未満、およびより典型的には1秒未満の期間等の短い期間にわたって、標的組織に数十または数百の光あるいは他のエネルギーを適用する等の、任意の期間にわたる標的組織へのパルスエネルギーの適用の総数を含む。この「処置」は、熱ショックタンパク質および関連する構成成分を活性化するために標的組織の温度を制御可能に上げる。
しかしながら、標的組織へのパルスエネルギーの適用は、「第1の処置」を含む第1の期間を超える時間間隔等の時間間隔の間、停止され、これは、3秒〜3分、またはより好ましくは10秒〜90秒等の数秒から数分を含んでもよく、次に第2の処置は、単一の処置セッションまたは来院内の時間間隔後に標的組織に行なわれ、ここで第2の処置はまた、標的組織を破壊せず、または恒久的に傷つけずに、標的組織を治療的に処置するために標的組織の温度を制御可能に上げるために、標的組織にパルスエネルギーを繰り返し適用する工程を含み、標的組織の細胞中の活性化HSPおよび関係する構成成分の量は増加し、結果として生体組織のより効果的な全面処置をもたらすことがわかっている。言いかえれば、第1の処置は、標的組織の熱ショックタンパク質のあるレベルの活性化を生み出し、および第2の処置は、第1の処置に起因するレベルを超える標的組織における熱ショックタンパク質の活性化のレベルを高める。したがって、単一の処置セッションまたは来院において患者の標的組織に多数の処置を行うことは、第2のまたは追加の処置が、数分を超えないが、標的組織を損傷または破壊しないように温度緩和を可能にするのに十分な長さである時間間隔後に行われる限り、生体組織の全面的な処置を高める。
この技術は、「ステア・ステッピング(stair−stepping)」と呼ばれる場合もあり、ここで活性化HSP生成のレベルは、続く処置または同じ来院処置セッション内での処置により増加する。この「ステア・ステッピング」技術は、SDMまたは他のパルスエネルギーの繰り返しの1秒以下の適用間の間隔のRybinski et al.(2013)の処置との、1秒以下の現象に関するアレニウスの積分アプローチの組み合わせによって記載され得る。
本発明の開示で提案されたステア・ステッピングSDM(繰り返しのSDM適用)に関して、図42に示される状況とのいくつかの重要な違いがある:
・SDMは、正常細胞に予防的に適用することができるが、しばしばSDMは病的な細胞に適用される。その場合、損傷を受けたタンパク質の初期濃度[S(0)]は、表4で得られるものよりも大きい場合もある。我々は、質的挙動が変化しないと推定し、これに関する説明を試みない。
・単一のSDM適用の期間は、図42に示される分ではなく、1秒以下だけである。Rybinski et alの速度定数は、アレニウスの定数よりはるかに小さい:後者は、1秒以下の持続時間の間のおよそ均一なアレニウスの積分を与え、他方でRybinski et alの速度定数は小さすぎてそれを行うことができない。これは、対象の時間スケールが異なる場合、存在する異なる実勢レート定数の例である:Rybinski et alの速度定数は数分にわたって生じる現象に当てはまるが、アレニウスの速度定数は1秒以下の現象に当てはまる。
したがって、SDMの有効度を改善するための提案されたステア・ステッピングSDM技術で何が起こるかを分析するために、我々は、1秒以下の現象に適したアレニウスの積分処置を、繰り返しのSDM処置間の約1分間隔にわたって生じる現象に適したRybinski et al(2013)処置と組み合わせる:
・アレニウスの積分の形式によって記載されたSDMの1秒以下の適用
・Rybinski et al(2013)方程式により記載されたSDM適用間の間隔0(分)
具体的に、我々は、SDMの2つの連続した適用を考慮し、各SDMマイクロパルス列は一秒以下の持続時間を有することを考慮する。
・短い1秒以下の時間スケールでは、活性化(遊離した)HSPの源である非活性化HSPは、細胞質中のHSPHSF分子にすべて含まれると推定する。したがって、第1のSDM適用は、初期HSPHSF分子集団における非活性化HSPの細胞質リザーバを、
[HSPHSF(equil)]から[HSPHSF(equil)]exp[−Ω]
に減らすために、
・および初期HSP分子集団を、
[HSP(equil)]から[HSP(equil)]+[HSPHSF(equil)](1−exp[−Ω])
に増加させ、
・かつ初期HSF分子集団を、
[HSF(equil)]から[HSF(equil)]+[HSPHSF(equil)](1−exp[−Ω])
に増加させるために、行われる。
・他の種のすべての平衡濃度は、第1のSDM適用後に同じままであると推定される。
・Rybinski et alの方程式は、第1のSDM適用と第2のSDM適用との間の間隔λt=0(分)において[HSP]と[HSPHSF]に何が起きるかを計算するために使用され、第1のSDM処置後のHSP、HSF、およびHSPHSFの初期値は、
[HSP(SDM1)]=[HSP(equil)]+[HSPHSF(equil)](1−exp[−Ω])
[HSF(SDM1)]=[HSF(equil)]+[HSPHSF(equil)](1−exp[−Ω])
および
[HSPHSF(SDM1)]=[HSPHSF(equil)]exp[−Ω]
であるようにとられる。
・間隔λt後のSDMの第2の適用に関して、SDM後の[HSP]、[HSF]、および{HSPHSF]の値は、
[HSP(SDM2)]=[HSP(λt)]+[HSPHSF(λt)](1−exp[−Ω])
[HSF(SDM2)]=[HSF(λt)]+[HSPHSF(λt)](1−exp[−Ω])
および
[HSPHSF(SDM2)]=[HSPHSF(λt)]exp[−Ω]
であるようにとられ、ここで[HSP(λt)]、[HSF(λt)]、および[HSPHSF(λt)]は、時間λtにおいてRybinski et al(2013)の方程式から判定される値である。
・我々の現在の関心は、SDMの第1の適用後の間隔λtでのSDMの繰り返しの適用が、細胞質中のより多くの活性化(遊離)したHSPをもたらすことを確認するために、[HSP[SDM2)]と[HSP[SDM1)]と比較することにある。比率β(λt,Ω)=[HSP(SDM2)]/[HSP(SDM1)]={[{[HSP(λt)]+[HSPHSF(λt)](1−exp[−Ω])}/{[HSP(0)]+[HSPHSF(0)](1−exp[−Ω])}は、第1のSDM適用からの間隔λt後のSDMの繰り返しの適用に関するHSP活性化の度合における改善の直接測定を提供する。
HSPとHSPHSFの濃度は、SDM適用間の間隔λtにおいて、大いに変動し得る。
図44のAとBは、SDMのアレニウスの積分Ω=1および平衡濃度が表4で得られるようなものである場合に、SDM適用間の間隔λt=1分の間の、細胞質リザーバ[HSPHSF]中の活性化濃度[HSP]と非活性化HSPの変動を例示する。
1回の繰り返し(1工程)のみがここで処置されるが、該手順が、SDM、または組織HSPの活性化を含む他の治療法の効果を改善する手段として、多数のステア・ステッピング事象を提供するために繰り返されてもよいことは明らかである。
アレニウスの積分Ωの大きさと、時間間隔によって分離された2つの別個の処置間の間隔λtを変動させることの効果は、以下の例と結果によって示される。
上記の手順で生成された9つの例が、以下に示される。例の全ては、2つのSDM処置から成る処置のものであり、第2の処置は、第1の処置に続いて時間λtにおいて生じ、以下のように探究する:
・SDM処置における異なる大きさのアレニウスの積分Ωの効果[3つの異なるΩは、Ω=0.2、0.5、および1.0であると考えられる]
・2つのSDM処置間の変動する間隔λtの影響[3つの異なるλtは:λt=15秒、30秒、および60秒であると考えられる]
上記のように、活性化アレニウスの積分Ωは、処置パラメータ(例えばレーザーパワー、デューティサイクル、全列持続時間)と、RPE特性(例えば吸収係数、HSPの密度)の両方に依存する。
以下の表5は、2つのSDM処置の間隔がλt=1分である場合、細胞のHSP含量に対する異なるΩ(Ω=0.2、0.5、1)の効果を示す。ここで細胞は、表4で得られる、含まれる10の種に関するRybinski et al(2013)の平衡濃度を有するように取られる。
表5は、4つの異なる時間に各々対応する4つのHSP濃度を示す(Rybinski et alの任意の単位):
・第1のSDM処置の前:[HSP(equil)]
・第1のSDM適用後:[HSP(SDM1)]
・第1のSDM処置に続く間隔λtの終わり:[HSP(λt)]
・λtにおける第2のSDM処置の直後:[HSP(SDM2)]
・さらに、単一の処置に関する改善度が示される:β=[HSP(SDM2)]/[HSP(SDM1])
表5.ちょうど本文に記載された4つの時間におけるHSP濃度:処置がλt=0.25分=15秒で分離される場合、2つのSDM適用に関する変動するSDMΩの細胞に対する効果。
表6.ちょうど本文に記載された4つの時間におけるHSP濃度:処置がλt=0.5分=30秒で分離される場合、2つのSDM処置に関する変動するSDMΩの細胞に対する効果。
表7.ちょうど本文に記載された4つの時間におけるHSP濃度:処置がλt=1分=60秒で分離される場合、2つのSDM処置に関する変動するSDMΩの正常な(健康な)細胞に対する効果。
表5−7は以下を示す:
・SDMの第1の処置は、3つすべてのΩに関する大きな因子により[HSP]を増やすが、増加はより大きなΩより大きい。表には明確に示されないが、[HSP]の増加は、隔離した(非活性化)HSPの細胞質リザーバを犠牲にしてもたらされる:
[HSPHSF](SDM1)は、[HSPHSF(equil)][HSP]よりもはるかに小さい。
・[HSP]は、2つのSDM処置間の間隔λtにおいて明らかに減少し、λtが大きくなると、減少もより大きくなる([HSP]の減少は、図44に示されるように[HSPHSF]と、間隔λt中の[HSPS]の両方における増加を伴い、非活性化HSPの細胞質リザーバの迅速な補給と、損傷を受けたタンパク質へのHSPの迅速な付着を示す)。
・60秒未満のλtでは、単一の処置よりもむしろ2つのSDM処置に関して、細胞質にある活性化(遊離)したHSPの数に改善がある。
・λtが小さくなるにつれて改善が増す。
・しかしながらλtが60秒と同じくらい大きくなると、比率β=[HSP](SDM2)/[HSP](SDM1)は1未満になり、この結果はエネルギー源パラメータと処置される組織の種類に応じて変化し得るが、単一のSDM処置と比較して2つのSDM処置に何の改善も示さない。
・λt<60秒での改善は、SDMのアレニウスの積分Ωが小さいほど大きい。
改善比率β=[HSP(SDM2)]/[HSP(SDM1)]に関する結果は図45に概説され、ここで改善比率β=[HSP(SDM2)]/[HSP(SDM1)] 対 SDMのアレニウスの積分Ωの3つの数値に関する、および間隔λt=15秒、30秒、および60秒の3つの値に関する(秒単位での)SDM処置λt間の間隔。最上部の曲線はΩ=0.2に関する;中央の曲線はΩ=0.5に関する;および、最低部の曲線はΩ=1.0に関する。これらの結果は、Rybinski et al(2013)の表3の速度定数、および表4の平衡種濃度に関するものである。
表5−7および図45の結果は、Rybinski et al(2013)の表3の速度定数、および表4の平衡濃度についてのものであることが理解されるべきである。細胞中の有効濃度と速度定数は、これらの数値とは異なる場合もあり、したがって表5−7および図45における数の結果は、絶対的であるよりもむしろ代表的なものとしてとらえられるべきである。しかしながら、それらが有意に異なるとは予想されない。したがって、単一の網膜座等の単一の標的組織位置または領域に多数のセッション内処置を行い、3秒〜3分、および好ましくは10秒〜90秒の間隔後に第1の処置に続いて第2の処置および続く処置を行うことは、HSPおよび関連する構成成分の活性化、すなわち標的組織の全面的な処置の効率を増加させるべきである。結果として生じる「ステア・ステッピング」効果は、活性化される熱ショックタンパク質の数におけるインクリメントの増加を達成し、処置の治療効果を高める。しかしながら、第1の処置と続く処置との間の時間間隔が大きすぎる場合、「ステア・ステッピング」効果は減少し、または達成されない。
本発明の技術は、処置パラメータまたは組織特性が、活性化に関する関連するアレニウスの積分が低い場合、および反復適用の間隔が小さく、90秒未満等、および好ましくは1分未満である場合、特に有用である。したがって、そのような多数の処置は、単一の来院等の同じ処置セッション内で行われなければならず、ここで別個の処置は、本発明の技術の有益性を達成するように時間間隔のウィンドウを有し得る。
いくつかの実施形態は、例示目的で詳細に記載されているが、本発明の範囲および精神から逸脱することなく様々な変更がなされてもよい。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲を除いて、限定されないものとする。

Claims (20)

  1. 生体組織を熱処置するためのプロセスであって、該プロセスは:
    標的組織を破壊せず、または恒久的に傷つけずに治療的に標的組織を処置するために、および標的組織において熱ショックタンパク質の活性化レベルを作り出すために、標的組織の温度を制御可能に上昇させるように第1の期間にわたって標的組織にパルスエネルギーを繰り返し適用することによって標的組織を処置する工程;
    第1の期間を上回る時間間隔の間、標的組織へのパルスエネルギーの適用を停止する工程;および、
    標的組織を破壊せず、または恒久的に傷つけずに標的組織を治療的に処置するために、および標的組織における熱ショックタンパク質の活性化レベルを増加させるために、標的組織の温度を制御可能に上昇させるように標的組織にパルスエネルギーを繰り返し再適用することによって、単一の処置セッション内の時間間隔後に標的組織を再度処置する工程、
    を含む、プロセス。
  2. 第1の期間は10秒未満である、請求項1に記載のプロセス。
  3. 第1の期間は1秒未満である、請求項1に記載のプロセス。
  4. 時間間隔は、数秒から数分を含む、請求項1に記載のプロセス。
  5. 時間間隔は3秒から3分を含む、請求項4に記載のプロセス。
  6. 時間間隔は、10秒から90秒を含む、請求項4に記載のプロセス。
  7. 少なくとも標的組織へのパルスエネルギーの適用中に、摂氏11度に標的組織の温度を上げるように、波長または周波数、デューティサイクルおよびパルス列持続時間を含む、パルスエネルギーのエネルギーパラメータを選択する工程を含む、請求項1に記載のプロセス。
  8. パルスエネルギーのパラメータは、少なくとも標的組織へのパルスエネルギー源の適用中に、摂氏6度〜摂氏11度に標的組織の温度を上げるように選択される、請求項7に記載のプロセス。
  9. 数分間にわたる標的組織の平均温度上昇を摂氏6度以下に維持する工程を含む、請求項1に記載のプロセス。
  10. 標的組織の平均温度上昇は、数分間にわたっておよそ摂氏1度以下に維持される、請求項9に記載のプロセス。
  11. 標的組織は網膜組織を含む、請求項1に記載のプロセス。
  12. パルスエネルギーは、光ビーム、マイクロ波、高周波、または超音波を含む、請求項1に記載のプロセス。
  13. パルスエネルギーは、約3〜6メガヘルツの高周波、約2.5%〜5%のデューティサイクル、および約0.2〜0.4秒のパルス列持続時間を含む、請求項12に記載のプロセス。
  14. 高周波は、約2〜6mmのコイル半径、および約13〜57アンペア回数を有するデバイスで生成される、請求項13に記載のプロセス。
  15. パルスエネルギーは、約10〜20GHzのマイクロ波周波数、約0.2〜0.6秒のパルス列持続時間、および約2%〜5%のデューティサイクルを含む、請求項12に記載のプロセス。
  16. マイクロ波は約8〜52ワットの平均パワーを有する、請求項15に記載のプロセス。
  17. パルスエネルギーは、約530nm〜1300nmの波長、10%未満のデューティサイクル、および約0.1〜0.6秒のパルス列持続時間を有するパルス光ビームを含む、請求項12に記載のプロセス。
  18. パルス光ビームは、800nm〜1000nmの波長、および約0.5〜74ワットのパワーを有する、請求項17に記載のプロセス。
  19. パルスエネルギーは、およそ1MHz〜5MHzの周波数、およそ0.1〜0.5秒の列持続時間、およびおよそ2%〜10%のデューティサイクルを有するパルス超音波を含む、請求項12に記載のプロセス。
  20. 超音波はおよそ0.46〜28.6ワットのパワーを有する、請求項19に記載のプロセス。
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