以下、本発明の一部の実施例を例示的な図面を参照して詳細に説明する。各図面の構成要素に参照符号を付加するにおいて、同一の構成要素に対しては、たとえ他の図面上に表示されても、可能な限り同一の符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本発明の実施例を説明するにあたって、かかる公知の構成又は機能についての具体的な説明が本発明の実施例に対する理解を妨げると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
また、本発明の実施例の構成要素を説明するにあたって、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語によって当該構成要素の本質や順番又は順序などが限定されるものではない。ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」又は「接続」されると記載された場合、その構成要素は、その他の構成要素に直接的に連結又は接続されてもよいが、各構成要素の間にまた他の構成要素が「連結」、「結合」又は「接続」されてもよいと理解されるべきである。
図1は、本発明の第1実施例に係る空気調和機の構成を示す冷凍サイクルに関する線図であり、図2は、本発明の第1実施例に係る圧縮機の吸入配管及び吐出配管の様子を示す図である。
<室外機の構成>
図1を参照すると、本発明の第1実施例に係る空気調和機10には、冷媒が循環する冷媒サイクルを運転するために、室外機20及び室内機160が含まれる。まず、室外機20の構成を説明する。
[圧縮機]
図1を参照すると、本発明の第1実施例に係る空気調和機10には、冷媒を圧縮する圧縮機100が含まれる。一例として、前記圧縮機100にはロータリ圧縮機が含まれる。
前記圧縮機100の圧縮能力に基づいて、前記空気調和機10の冷凍能力、即ち空調能力が決定され得る。前記空調能力には、冷房能力または暖房能力が含まれてもよい。本実施例に係る空気調和機10の空調能力は、11kW以上16kW以下の範囲で形成され得る。そして、前記圧縮機100には回転式圧縮機が含まれ得る。一例として、BLDCツインロータリ圧縮機が含まれてもよい。そして、前記圧縮機100の限界冷媒量は1,600ccであり、オイル量は570ccであり得る。
[マフラー]
前記空気調和機10には、前記圧縮機100の出口側に配置されるマフラー105がさらに含まれる。前記マフラー105は、前記圧縮機100から吐出された高圧の冷媒から発生する騒音を低減させることができる。前記マフラー105には、冷媒の流動断面積を増加させるチャンバが含まれ、前記チャンバは共鳴室を形成する。
[流動調節弁]
前記空気調和機10には、前記マフラー105の出口側に配置され、前記圧縮機100で圧縮された冷媒の流動方向を切り替える流動調節弁110がさらに含まれる。
一例として、前記流動調節弁110には、四方弁(four−way valve)が含まれてもよい。詳しくは、前記流動調節弁110には、多数のポートが含まれる。前記多数のポートには、前記圧縮機100で圧縮された高圧の冷媒が流入する第1ポート111と、前記流動調節弁110から室外熱交換器側に延びる配管に接続される第2ポート112と、前記流動調節弁110から室内機160に延びる配管に接続される第3ポート113と、前記流動調節弁110から気液分離器104,103に延びる第4ポート114とが含まれる。
[冷暖房運転時、流動調節弁の作用]
前記圧縮機100で圧縮された冷媒は、前記マフラー105を通過した後、前記流動調節弁110の第1ポート111を介して前記流動調節弁110に流入することができる。
前記空気調和機10が冷房運転するとき、前記流動調節弁110に流入する冷媒は室外熱交換器120に流動することができる。一例として、冷媒は、前記流動調節弁110の第2ポート112から排出されて前記室外熱交換器120に流入することができる。
その一方で、前記空気調和機10が暖房運転するとき、前記流動調節弁110に流入する冷媒は室内機160に流動することができる。一例として、冷媒は、前記流動調節弁110の第3ポート113から排出されて前記室内機160に流入することができる。
[室外熱交換器]
前記空気調和機10には、外気と熱交換する室外熱交換器120がさらに含まれる。前記室外熱交換器120は、前記流動調節弁110の出口側に配置される。
前記室外熱交換器120には、熱交換配管121と、前記熱交換配管121を支持するホルダー123とが含まれる。前記ホルダー123は、前記熱交換配管121の両側を支持することができる。図示していないが、前記室外熱交換器120には、前記熱交換配管121に結合されて外気との熱交換を助ける熱交換フィンがさらに含まれる。
[マニホールド及び接続管]
前記空気調和機10には、前記流動調節弁110の第1ポートに接続されるマニホールド130がさらに含まれる。前記マニホールド130は、前記室外熱交換器120の一側に備えられ、冷房運転時に、冷媒を前記室外熱交換器120の多数の経路に流入させるか、または暖房運転時に、前記室外熱交換器120を通過した冷媒が集まる構成として理解される。
前記空気調和機10には、前記マニホールド130から前記室外熱交換器120に延びる多数の接続管135が含まれる。前記多数の接続管135は、前記マニホールド130の上部から下部まで互いに離隔して配置され得る。
[分配器]
前記室外熱交換器120の一側には、分配器140が備えられる。前記分配器140は、冷房運転時に、前記室外熱交換器120を通過した冷媒が合わせられるか、または暖房運転時に、冷媒を前記室外熱交換器120に分配して流入させる構成として理解される。
[キャピラリ及び分岐管]
前記空気調和機10には、前記分配器140から前記室外熱交換器120に延びる多数のキャピラリ142がさらに含まれる。各キャピラリ142は分岐管145に接続され得る。
前記分岐管145は前記室外熱交換器120に結合され得る。一例として、前記分岐管145は、Y字状に構成されて前記室外熱交換器120の熱交換配管121に結合されてもよい。前記分岐管145は、前記多数のキャピラリ142の数に対応して、多数個が備えられ得る。
[膨張装置及びストレーナ]
前記空気調和機10には、前記室内機160で凝縮された冷媒を減圧するメイン膨張装置155がさらに含まれる。一例として、前記メイン膨張装置130には、開度調節が可能な電子膨張弁(Electronic Expansion Valve)が含まれてもよい。
前記膨張装置155の一側には、冷媒中の異物を分離させるストレーナ156,158(strainer)がさらに含まれる。前記ストレーナ156,158は多数個が提供され得る。前記多数のストレーナ156,158には、前記膨張装置155の一側に備えられる第1ストレーナ156と、前記膨張装置155の他側に備えられる第2ストレーナ158とが含まれ得る。
冷房運転時に、前記室外熱交換器120で凝縮された冷媒は、前記第1ストレーナ156を通過した後、前記膨張装置155を経由して前記第2ストレーナ158を通過することができる。反対に、暖房運転時に、前記室内機160で凝縮された冷媒は、前記第2ストレーナ158を通過した後、前記膨張装置155を経由して前記第1ストレーナ156を通過することができる。
[サービス弁及び接続配管]
前記室外機20には、室内機160と組み立てる際に接続配管171,172が接続されるサービス弁175,176がさらに含まれる。前記接続配管171,172は、前記室外機20と前記室内機160とを接続する配管として理解することができる。
前記サービス弁175,176には、前記室外機20の一側に備えられる第1サービス弁175と、前記室外機20の他側に備えられる第2サービス弁176とが含まれる。
そして、前記接続配管171,172には、前記第1サービス弁175から前記室内機160に延びる第1接続配管171と、前記第2サービス弁176から前記室内機160に延びる第2接続配管172とが含まれる。一例として、前記第1接続配管171は前記室内機160の一側に接続され、前記第2接続配管172は前記室内機160の他側に接続されてもよい。
[圧力センサ]
前記室外機20には、前記圧力センサ180がさらに含まれる。前記圧力センサ180は、前記流動調節部110の第3ポート113から前記第2サービス弁176に延びる冷媒配管に設置することができる。
冷房運転時に、前記圧力センサ180は、前記室内機160で蒸発した冷媒の圧力、即ち、低圧を感知することができる。反面、前記圧力センサ180は、前記圧縮機100で圧縮された冷媒の圧力、即ち、高圧を感知することができる。
[気液分離器]
前記室外機20には、前記圧縮機100の吸入側に配置され、蒸発した低圧の冷媒のうち気相冷媒を分離して前記圧縮機100に提供する第1気液分離器104がさらに含まれる。前記第1気液分離器104は、前記流動調節部110の第4ポート114に接続され得る。そして、前記第1気液分離器104を経た後、残留する液体状態の冷媒を完全に分離する第2気液分離器103をさらに含むことができる。すなわち、前記室外機20には、前記流動調節部110の第4ポート114から前記第1及び第2気液分離器104,103に延びる冷媒配管が含まれ得る。前記第1及び第2気液分離器104,103で分離された気相冷媒は前記圧縮機100に吸入され得る。
<室内機の構成>
前記室内機160には、室内熱交換器(図示せず)と、前記室内熱交換器の一側に備えられて室内の空気を吹き出す室内ファンとが含まれる。そして、前記室内機160には、冷房運転時に凝縮冷媒を減圧する室内膨張装置がさらに含まれ得る。そして、前記室内膨張装置で減圧された冷媒は、前記室内熱交換器で蒸発することができる。
前記室内機160は、第1及び第2接続配管171,172を介して前記室外機20に接続され得る。
[冷媒配管]
前記の室外機20の多数の構成及び室内機160は冷媒配管50によって接続され、前記冷媒配管50は、前記室外機20及び室内機160での冷媒循環をガイドすることができる。前記の第1及び第2接続配管171,172も、前記冷媒配管50の一構成であるものと理解することができる。
前記冷媒配管50の管径(外径)は、空気調和機10の空調能力に基づいて決定され得る。一例として、前記空気調和機10の空調能力が増加すれば、前記冷媒配管50の管径は相対的に大きく設計されてもよい。
[冷房運転時の冷媒流動]
空気調和機10が冷房運転される場合、圧縮機100で圧縮された冷媒は、マフラー105を経て流動調節弁110の第1ポート111に流入し、第2ポート112を介して排出される。前記流動調節弁110から排出された冷媒は、前記室外熱交換器120に流入して凝縮され、分配器140及び第1ストレーナ156を経由して前記メイン膨張装置155を通過する。このとき、冷媒の減圧は行われない。
そして、前記減圧された冷媒は、第2ストレーナ158を経た後、室外機20から排出され、第1接続配管171を介して前記室内機160に流入し、室内膨張装置で減圧された後、前記室内機160の室内熱交換器で蒸発する。前記蒸発した冷媒は、前記第2接続配管172を介して前記室外機20に再び流入する。
前記室外機20に流入した冷媒は、第3ポート113を介して前記流動調節弁110に流入し、第4ポート114を介して前記流動調節弁110から排出される。そして、前記流動調節弁110から排出された冷媒は、第1気液分離器104で相分離され、第2気液分離器103を経て完全に相分離されて前記圧縮機100に吸入される。このようなサイクルが繰り返され得る。
[暖房運転時の冷媒流動]
空気調和機10が暖房運転される場合、圧縮機100で圧縮された冷媒は、マフラー105を経て流動調節弁110の第1ポート111に流入し、第3ポート113を介して排出される。前記流動調節弁110から排出された冷媒は、第2接続配管172を介して前記室内機160に流入して室内熱交換器で凝縮された後、室内機160から排出される。前記室内機160から排出された冷媒は、第1接続配管171を介して室外機20に流入し、第2ストレーナ158を経由して前記メイン膨張装置155で減圧される。
そして、前記減圧された冷媒は、第1ストレーナ156を経た後、前記分配器140及びキャピラリ142を介して前記室外熱交換器120に分岐して流入する。そして、冷媒は前記室外熱交換器120で蒸発し、第2ポート112を介して前記流動調節弁110に流入する。
そして、冷媒は、第4ポート114を介して前記流動調節弁110から排出され、第1及び第2気液分離器104,103で相分離され、分離された気相冷媒は前記圧縮機100に吸入される。このようなサイクルが繰り返され得る。
[冷媒]
空気調和機10の冷房または暖房運転のために、前記室外機20及び室内機160には冷媒が循環することができる。一例として、前記冷媒には、単一冷媒としてR32またはR134aが含まれてもよい。
前記R32は、メタン系ハロゲン化炭素化合物であって、化学式CH2F2で表される。前記R32は、従来のR22(化学式:CHCLF2)に比べて、オゾン破壊係数(Ozone Depletion Potential、ODP)の低い環境に優しい冷媒であって、圧縮機の吐出圧力が高いという特性を有する。
前記R134aは、エタン系ハロゲン化炭素化合物であって、化学式CF3CH2Fで表される。前記R134aは、従来のR12(化学式:CCl2F2)に代わる冷媒として空気調和機に使用され得る。
他の例として、前記冷媒には、非共沸混合冷媒としてR410aが含まれてもよい。
前記R410aは、R32とR125(化学式:CHF2CF3)を50:50の重量比で混合した物質であって、蒸発器で蒸発(飽和液→飽和気体)するときに温度が上昇し、凝縮機で凝縮(飽和気体→飽和液)されるときに温度が下降する性質を有するので、熱交換効率が改善される効果を有することができる。
本実施例では、前記空気調和機10を循環する冷媒としてR410aを使用する。
[冷媒循環量]
本実施例に係る空気調和機10には、前記の冷媒が充填され得る。冷媒の充填量は、前記空気調和機10を構成する冷媒配管50の長さに基づいて決定され得る。一例として、長さ7.5mで構成される標準配管を基準として2,000gが充填され、長さ50mで構成される長配管を基準として4,000gが充填されてもよい。それ以外に追加で構成される配管に対してはメートル当たり40gが充填されてもよい。
そして、空気調和機10の空調能力に基づいて、前記圧縮機100で圧縮される冷媒の容量が決定され得る。本実施例のように、11kW〜16kWの空調能力を基準として、前記圧縮機100の冷媒容量は1,600ccに形成され得る。
[オイル]
本実施例に係る空気調和機10には、圧縮機の潤滑または冷却のためのオイルが含まれる。前記オイルには、PAG系冷凍機油、PVE系冷凍機油、またはPOE系冷凍機油が含まれてもよい。
前記PAG系冷凍機油は、プロピレンオキシド(Propylene Oxide)を原料として製造された合成油であって、粘度が相対的に高いので、温度による粘度特性に優れる。したがって、前記PAG系冷凍機油が使用される場合、圧縮機の負荷を少なくすることが可能である。一例として、前記PAG系冷凍機油は、冷媒R134aを使用する圧縮機に使用されてもよい。
前記PVE系冷凍機油は、ビニルエーテル(Vinyl ether)を原料として製造された合成油であって、冷媒との相溶性が良く、体積抵抗率が高いので電気安定性に優れるという特性を有する。一例として、前記PVE系冷凍機油は、冷媒R32、R134aまたはR410aを使用する圧縮機に使用されてもよい。
前記POE系冷凍機油は、多価アルコールとカルボン酸を脱水縮合して製造された合成油であって、冷媒との相溶性が良く、空気中での酸化安定性及び熱安定性に優れるという特性を有する。一例として、前記POE系冷凍機油は、冷媒R32またはR410aを使用する圧縮機に使用されてもよい。
本実施例において、オイルはPVE系冷凍機油(FVC68D)が使用され得る。
[新素材配管]:延性ステンレス鋼管
前記冷媒配管50には、強いながらも加工性に優れる新素材配管が含まれ得る。詳しくは、前記新素材配管は、ステンレス素材と、少なくとも銅(Cu)が含む不純物を有する物質で構成され得る。前記新素材配管は、銅(Cu)配管の強度よりは大きい強度を有し、ステンレス鋼管よりは加工性が良く構成され得る。一例として、前記新素材配管を、“延性ステンレス鋼管”と命名することができる。前記延性ステンレス鋼管は、延性ステンレス鋼で製造される配管を意味する。
前記冷媒配管50が銅配管で構成される場合、前記銅配管を循環できる冷媒の種類は制限され得る。冷媒は、その種類に応じて作動圧力の範囲が異なって形成され得る。もし、作動圧力の範囲が大きい、すなわち、上昇できる高圧が高い冷媒が銅配管に使用される場合、前記銅配管が破損し、これによって冷媒の漏洩が発生することがある。
しかし、本実施例のように、新素材配管として延性ステンレス鋼管を使用する場合、前記の問題点が発生することを防止することができる。
[延性ステンレス鋼の性質]
延性ステンレス鋼は、従来のステンレス鋼に比べて強度及び硬度が低い一方で、撓み性が良い特徴がある。本発明の実施例に係る延性ステンレス鋼管は、強度及び硬度において、従来の一般的なステンレス鋼よりも低いが、少なくとも銅管の強度及び硬度以上を維持し、銅管の撓み性とほぼ同様のレベルの撓み性を有するため、管の曲げ加工性が非常に良いといえる。ここで、撓み性と曲げ性は同じ意味で使用されることを明らかにしておく。
結局、前記延性ステンレス鋼の強度は、前記銅配管の強度よりも高いので、配管の破損の恐れが減少することができる。したがって、空気調和機10に選択できる冷媒の種類が多くなるという効果がある。
[圧縮機の吸入配管]
前記冷媒配管50には、前記圧縮機100に冷媒の吸入をガイドする吸入配管210が含まれる。前記吸入配管210は、前記流動調節弁110の第4ポート114から前記圧縮機100に延びる配管であるものと理解することができる。
前記吸入配管210には、前記延性ステンレス鋼管が含まれ得る。
上述したように、前記冷媒配管50の外径(管径)は、空気調和機10の空調能力に基づいて決定され得る。したがって、本実施例に係る空気調和機10の空調能力は11kW以上16kW以下の範囲で形成されるので、吸入配管210の外径も、これに基づいて決定され得る。
前記吸入配管210には低圧の気相冷媒が流動するので、前記吸入配管210の外径は、吐出配管よりも相対的に大きく形成され得る。
本実施例に係る空気調和機10の空調能力(11kW以上16kW以下)において、前記吸入配管210の外径は、18.95〜19.15mm、15.78〜15.98mm、及び22.10〜22.30mmのうち少なくともいずれか1つの範囲に属するように形成することができる。
一実施例として、前記吸入配管210の外径は、18.95mm以上19.15mm以下の範囲に属するように形成されてもよい。このとき、前記吸入配管210の外径は19.05mm(後述する表4の標準配管の外径を参照)に形成することができる。
他の実施例として、前記吸入配管210の外径は、15.78mm以上15.98mm以下の範囲に属するように形成されてもよい。このとき、前記吸入配管210の外径は15.88mm(後述する表4の標準配管の外径を参照)に形成することができる。
更に他の実施例として、前記吸入配管210の外径は、22.10mm以上22.30mm以下の範囲に属するように形成されてもよい。このとき、前記吸入配管210の外径は22.20mm(後述する表4の標準配管の外径を参照)に形成することができる。
前記吸入配管210の管径は、2つ以上の配管を接続するとき、いずれか1つの配管を拡管する場合、前記拡管された配管の管径値を含む。
[圧縮機の吐出配管]
前記冷媒配管50には、前記圧縮機100で圧縮された冷媒を吐出する吐出配管220がさらに含まれる。前記吐出配管220は、前記圧縮機100の吐出部から前記流動調節弁110の第1ポート111に延びる配管であるものと理解できる。一例として、前記吐出配管220は、前記圧縮機100とマフラー105とを接続する第1吐出配管220a、及び前記マフラー105と流動調節弁110の第1ポート111とを接続する第2吐出配管220bを含むことができる。
前記吐出配管220には、前記延性ステンレス鋼管が含まれ得る。
上述したように、前記冷媒配管50の外径(管径)は、空気調和機10の空調能力に基づいて決定され得る。したがって、本実施例に係る空気調和機10の空調能力は11kW以上16kW以下の範囲で形成されるので、吐出配管220の外径も、これに基づいて決定され得る。
そして、前記吐出配管220には高圧の気相冷媒が流動するので、前記吐出配管220の外径は、吸入配管よりも相対的に小さく形成され得る。
本実施例に係る空気調和機10の空調能力(11kW以上16kW以下)において、前記吐出配管220の外径は、12.60〜12.80mm、9.42〜9.62mm、及び15.78〜15.98mmのうち少なくともいずれか1つの範囲に属するように形成することができる。
一実施例として、前記吐出配管220の外径は、12.60mm以上12.80mm以下の範囲に属するように形成されてもよい。このとき、前記吐出配管220の外径は12.70mm(後述する表4の標準配管の外径を参照)に形成することができる。
他の実施例として、前記吐出配管220の外径は、9.42mm以上9.62mm以下の範囲に属するように形成されてもよい。このとき、前記吐出配管220の外径は9.52mm(後述する表4の標準配管の外径を参照)に形成することができる。
更に他の実施例として、前記吐出配管220の外径は、15.78mm以上15.98mm以下の範囲に属するように形成されてもよい。このとき、前記吐出配管220の外径は15.88mm(後述する表4の標準配管の外径を参照)に形成することができる。
前記吐出配管220の外径は、2つ以上の配管を接続するとき、いずれか1つの配管を拡管する場合、前記拡管された配管の外径値を含む。
前記吐出配管220には、高圧のガス冷媒が流動し、圧縮機100で発生する振動によって動きが大きく発生し得るので、前記吐出配管220の強度は設定強度以上に維持されることが要求される。前記吐出配管220が前記新素材配管で構成されることによって、吐出配管220の強度が高く維持され、前記吐出配管220の破損による冷媒の漏洩を防止することができる。
一方、前記吸入配管210には、相対的に低い低圧の冷媒が流動してはいるが、前記圧縮機100に隣接して位置した配管であるので、前記圧縮機100の振動によって動きが大きく発生し得る。したがって、前記吸入配管210の強度は設定強度以上に維持されることが要求されるので、前記吸入配管210は新素材配管で構成することができる。
以下では、本発明の実施例に係る延性ステンレス鋼の特性を定義する構成要素について説明し、以下で説明される各構成要素の構成比は重量比(weight percent、wt.%)であることを明らかにしておく。
図3は、99%のオーステナイト基地組織と1%以下のデルタフェライト組織を有するステンレス鋼の微細組織の写真であり、図4は、オーステナイト基地組織のみを有するステンレス鋼の微細組織の写真である。
1.ステンレス鋼の組成(composition)
(1)炭素(C、carbon):0.3%以下
本発明の実施例に係るステンレス鋼は、炭素(C)とクロム(Cr、chromium)を含む。炭素は、クロムと反応してクロム炭化物(chromium carbide)として析出されるが、粒界(grain boundary)またはその周辺にクロムが枯渇して腐食の原因となる。したがって、炭素の含量は少なく維持されることが好ましい。
炭素は、他の元素と結合してクリープ強度(creep strength)を高める作用をする元素であり、炭素の含量が0.03%を超えると、むしろ延性を低下させる要因となる。したがって、本発明では、炭素の含量を0.03%以下に設定する。
(2)ケイ素(Si、silicon):0超1.7%以下
オーステナイト組織は、フェライト組織またはマルテンサイト組織に比べて低い降伏強度を有する。したがって、本発明の延性ステンレス鋼が、銅と類似または同等のレベルの撓み性(又は撓み自由度)を有するためには、ステンレス鋼の基地組織がオーステナイトからなることがよい。
しかし、ケイ素はフェライトを形成する元素であるため、ケイ素の含量が増加するほど、基地組織におけるフェライトの比率が増加するようになり、フェライトの安定性が高まるようになる。ケイ素の含量は、可能な限り少なく維持されることが好ましいが、製造過程でケイ素が不純物として流入することを完全に遮断することは不可能である。
ケイ素の含量が1.7%を超えると、ステンレス鋼が銅素材レベルの延性を有しにくく、十分な加工性を確保することが難しくなる。したがって、本発明の実施例に係るステンレス鋼に含まれるケイ素の含量を1.7%以下に設定する。
(3)マンガン(Mn、manganess):1.5〜3.5%
マンガンは、ステンレス鋼の基地組織がマルテンサイト系に相変態することを抑制し、オーステナイト区域を拡大させて安定化する作用をする。もし、マンガンの含量が1.5%未満であると、マンガンによる相変態抑制効果が十分に現れない。したがって、マンガンによる相変態抑制効果を十分に得るためには、マンガンの含量の下限を1.5%に設定する。
しかし、マンガンの含量が増加するほど、ステンレス鋼の降伏強度が上昇し、ステンレス鋼の延性を低下させる要因となるので、マンガンの含量の上限を3.5%に設定する。
(4)クロム(Cr、chromium):15〜18%
マンガンは、ステンレス鋼の腐食開始抵抗性(Corrosion Initiation Resistance)を向上させる元素である。腐食開始とは、腐食していない母材(base material)に腐食が存在しない状態から初めて腐食が発生することを意味し、腐食開始抵抗性とは、母材に初めて腐食が発生することを抑制する性質を意味する。これは、耐食性と同じ意味で解釈できる。
クロムの含量が15.0%よりも低いと、ステンレス鋼が十分な腐食開始抵抗性(又は耐食性)を有することができないので、本発明では、クロムの含量の下限を15.0%に設定する。
反対に、クロムの含量が過度に多くなると、常温でフェライト組織になってしまい、延性が減少するようになり、特に、高温でオーステナイトの安定性がなくなって脆化するため、強度の低下をもたらす。したがって、本発明では、クロムの含量の上限を18.0%に設定する。
(5)ニッケル(Ni、nickel):7.0〜9.0%
ニッケルは、ステンレス鋼の腐食成長抵抗性(Corrosion Growth Resistance)を向上させ、オーステナイト組織を安定化させる性質を有している。
腐食成長とは、既に母材に発生した腐食が広い範囲に広がりながら成長することを意味し、腐食成長抵抗性とは、腐食の成長を抑制する性質を意味する。
ニッケルの含量が7.0%よりも低いと、ステンレス鋼が十分な腐食成長抵抗性を有することができないので、本発明のニッケルの含量の下限を7.0%に設定する。
また、ニッケルの含量が過剰になると、ステンレス鋼の強度と硬度を増加させ、ステンレス鋼の十分な加工性を確保することが難しくなる。それだけでなく、コストの増加をもたらし、経済的な面でも好ましくない。したがって、本発明において、ニッケルの含量の上限を9.0%に設定する。
(6)銅(Cu、Copper):1.0〜4.0%
銅は、ステンレス鋼の基地組織がマルテンサイト組織に相変態することを抑制して、ステンレス鋼の延性を高める作用をする。銅の含量が1.0%未満であると、銅による相変態抑制効果が十分に現れない。したがって、本発明では、銅による相変態抑制効果を十分に得るために、銅の含量の下限を1.0%に設定する。
特に、ステンレス鋼が銅の撓み性と同等または類似のレベルの撓み性を有するようにするためには、銅の含量が1.0%以上でなければならない。
銅の含量が増加するほど、基地組織の相変態抑制効果が増加するが、その増加幅は次第に小さくなる。そして、銅の含量が過剰になって4〜4.5%を超えると、その効果は飽和し、マルテンサイトの発生を促進するため好ましくない。そして、銅が高価の元素であるため、経済性にも影響を与えるようになる。したがって、銅の相変態抑制効果が飽和レベル未満に維持され、経済性を確保できるように、銅の含量の上限を4.0%に設定する。
(7)モリブデン(Mo、molybdenum):0.03%以下
(8)リン(P、phosphorus):0.04%以下
(9)硫黄(S、sulfer):0.04%以下
(10)窒素(N、nitrogen):0.03%以下
モリブデン、リン、硫黄、及び窒素は、鋼鉄の半製品に元々含まれている元素であって、ステンレス鋼を硬化させるので、可能な限り低い含量に維持することが好ましい。
2.ステンレス鋼の基地組織(matrix structure)
ステンレス鋼を金属組織(又は基地組織)の面で分類すると、クロム(18%)及びニッケル(8%)を主成分とするオーステナイト系(Ostenite type)ステンレス鋼と、クロム(18%)を主成分とするフェライト系(Ferrite type)ステンレス鋼と、クロム(8%)を主成分とするマルテンサイト系(Martensite type)ステンレス鋼とに分類される。
そして、オーステナイト系ステンレス鋼が塩分や酸に対する耐食性に優れ、延性が大きい特徴を有しているので、本発明の延性ステンレス鋼は、基地組織がオーステナイト系ステンレス鋼がよい。
また、オーステナイト組織は、フェライト組織やマルテンサイト組織に比べて降伏強度及び硬度が低い特性を有する。さらに、同じ条件で結晶の大きさを成長させたとき、オーステナイトの平均粒度の大きさが最も大きいので、延性を高めるのに有利である。
ステンレス鋼の延性を高めるためには、ステンレス鋼の基地組織がオーステナイト組織のみからなることが最も好ましい。しかし、ステンレス鋼の基地組織をオーステナイトのみに制御することが非常に難しいため、他の基地組織を含まざるを得ない。
詳細には、オーステナイト系ステンレス鋼の延性に影響を与える他の基地組織は、熱処理過程で発生するデルタフェライト(δ−Ferrite)である。すなわち、前記デルタフェライトの含量が多いほど、ステンレス鋼の硬度は高くなる反面、延性は低下するようになる。
ステンレス鋼が、粒度面積を基準として90%以上、好ましくは99%以上のオーステナイト基地組織を有し、1%以下のデルタフェライト基地組織を有することがよい。したがって、ステンレス鋼の延性を大きくするための方法の一つとして、オーステナイト系ステンレス鋼に含まれたデルタフェライトの量を減少させることが挙げられる。
本発明の実施例に係る延性ステンレス鋼が1%以下のデルタフェライト基地組織を有する場合にも、前記デルタフェライトが結晶粒全体に均一に分布するより、局部的に特定の結晶粒に密集して分布する方が延性の増加に有利である。
[延性ステンレス鋼の微細組織]
図3は、99%のオーステナイト基地組織と1%以下のデルタフェライト組織を有するステンレス鋼の微細組織の写真であり、図4は、オーステナイト基地組織のみを有するステンレス鋼の微細組織の写真である。図3の組織を有するステンレス鋼が、本発明の実施例に係る延性ステンレス鋼の微細組織である。
図3のステンレス鋼及び図4のステンレス鋼は、粒度番号5.0〜7.0に該当する平均粒度の大きさを有する。平均粒度の大きさについては、以下で再び説明する。
下記の表1は、図3のステンレス鋼(素材1)と図4のステンレス鋼(素材2)との機械的物性を比較したグラフである。
前記表1を参照すると、素材2が、素材1に比べて強度及び硬度においてさらに低い物性を有することが分かる。また、素材2が、素材1に比べて高い延伸率を有することが分かる。これから、ステンレス鋼の強度及び硬度を低下させるためには、ステンレス鋼がオーステナイト基地組織のみからなるのが理想的であるといえる。しかし、デルタフェライト基地組織を完全に除去するには困難が多いので、デルタフェライト基地組織の比率を最小限にすることがよい。
また、上述したように、デルタフェライト組織が均一に分布するより、特定の結晶粒に密集して分布すれば、ステンレス鋼の軟質化にさらに良いという効果がある。
図3において、大きな結晶粒101はオーステナイト基地組織を示し、黒色斑点状の小さな結晶粒102がデルタフェライト基地組織を示す。
3.ステンレス鋼の平均粒度の大きさ(average diameter)
ステンレス鋼の平均粒度の大きさは、組成及び/又は熱処理条件に応じて決定され得る。ステンレス鋼の平均粒度の大きさは、ステンレス鋼の強度及び硬度に影響を及ぼす。例えば、平均粒度の大きさが小さいほど、ステンレス鋼の強度及び硬度は大きくなり、平均粒度の大きさが大きいほど、ステンレス鋼の強度及び硬度は小さくなる。
本発明の実施例に係る延性ステンレス鋼は、銅の含量及びデルタフェライトの粒度面積を調節することで撓み性が良い特性以外に、従来の一般的なステンレス鋼に比べて強度及び硬度が低い特性を有し、銅の強度及び硬度よりは高いという特性を有する。
このためには、ステンレス鋼の平均粒度の大きさを30〜60μmに制限する。一般的なオーステナイト組織の平均粒度の大きさは30μmよりも小さい。したがって、製造工程及び熱処理を通じて平均粒度の大きさを30μm以上に成長させなければならない。
米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials、ASTM)の基準によると、30〜60μmの平均粒度の大きさは5.0〜7.0の粒度番号(Grain size No.)に該当する。これに反して、30μmよりも小さい平均粒度の大きさはASTM粒度番号7.5以上に該当する。
ステンレス鋼の平均粒度の大きさが30μmより小さいか、または粒度番号が7.0より大きい場合、本発明で要求する低強度及び低硬度の特性を有することができない。特に、ステンレス鋼の平均粒度の大きさ(又は粒度番号)は、ステンレス鋼の低強度及び低硬度の特性を決定する核心因子に該当する。
下記の表2を参照すると、従来の銅配管は低強度及び低硬度の物性を有するので、冷媒循環サイクルを構成する冷媒配管として商用化されているが、腐食による信頼性の問題及び新冷媒に対する耐圧力性の問題を抱えている。
そして、比較例2〜5のステンレス鋼は、銅配管に比べて過度に大きい強度及び硬度を有するため、銅の腐食性及び耐圧力性の問題は解決しても、加工性が低下するという問題を抱えている。
これに反して、本発明の実施例に係るステンレス鋼は、従来の銅配管よりも強度及び硬度が大きく、かつ比較例2〜5のステンレス鋼よりも低い強度及び硬度を有するので、銅配管が有する耐食性及び耐圧力性の問題を解消することができ、R32のような高圧新冷媒用配管に使用するに好適である。
それだけでなく、銅配管よりも高い延伸率を有するので、既存のステンレス鋼が有する加工性の問題も解決される利点がある。
まとめると、本発明で定義される延性ステンレス鋼は、前記で説明したような構成要素が設定比率だけ含有され、99%のオーステナイトと1%以下のデルタフェライトを有するステンレス鋼を意味するといえる。
図5は、本発明の第1実施例に係る冷媒配管の外径及び内径を示す図である。
図2及び図5を共に参照すると、本発明の第1実施例に係る圧縮機100が駆動すると、前記圧縮機100に吸入された冷媒は、圧縮後、温度の変化を伴うようになる。このような温度の変化により、吸入配管210及び吐出配管220側において、応力の変化が他の配管に比べて激しく発生する。
本実施例は、図4に示すように、冷媒の状態変化時に圧力及び振動が最も激しく発生する吸入配管210及び吐出配管220を、軟質化過程を経た延性ステンレス鋼管で形成して許容応力を高める点に特徴がある。しかし、吸入配管及び吐出配管のみに限定されるものではなく、応力の変動状況に応じて、室外機及び室内機を接続するいずれか1つ以上の配管を前記延性ステンレス鋼管で構成することができる。
本実施例に係る空気調和機10の空調能力は、11kW〜16kWの範囲で選択され得る。前記選択された空気調和機10の空調能力に基づいて、前記延性ステンレス鋼管の外径が決定され得る。
そして、本発明の空気調和機10で使用できる冷媒には、上述したように、R32、R134a、またはR401aが含まれてもよい。特に、本発明において、前記延性ステンレス鋼管の厚さは、前記冷媒の種類に応じて異なって決定され得る。
[延性ステンレス鋼管の厚さ設定方法]
前記延性ステンレス鋼管の厚さは、次のような数式によって決定され得る。下記の数式は、配管に関する規格及び指針に関するコードを提供するASME B31.1、及びガス関係法令で定めた施設、技術、検査などの技術的事項をコード化したKGS Codeに基づいて算出されたものである。
ここで、tmは、ステンレス配管の最小厚さ、Pは設計圧力(MPa)、D0は、ステンレス配管の外径(mm)、Sは許容応力(M/mm2)、Textraは、腐食、ねじ山加工などによる余裕厚さを意味する。前記Textraは、配管の材質が銅、アルミニウムまたはステンレス鋼で構成される場合、0.2と決定される。
[配管の管径の定義]
図5に示したように、吸入配管210または吐出配管220に使用される延性ステンレス鋼管の外径はa、その内径はbと定義することができる。数式1を説明すると、配管の最小厚さは、配管の外径には比例し、許容応力には反比例することが分かる。
[許容応力、S]
許容応力は、基準強度を安全率で割ったもので、配管に外力が加えられる場合、配管の変形又は破損が発生せずに耐えられるほどであると認められて重量を加えるように許容されている応力(変形力)の最大値を意味する。
本実施例において、延性ステンレス鋼管の許容応力の基準は、ASME SEC.VIII Div.1に記載されたコードを満足するように導出されたものであって、許容応力(S)は、配管の引張強度を3.5で割った値、または配管の降伏強度を1.5で割った値の中で小さい値に設定され得る。許容応力は、配管の材質によって変化する値であり、ASME SEC.VIII Div.1を基準として93.3Mpaに決定され得る。
配管に同じ応力が加えられる場合、銅に比べてステンレスは、応力のマージンが大きく形成され得るので、配管の設計自由度が増加することができる。結局、配管に伝達される応力を減少させるために、配管の長さを長く形成しなければならない制限から解放され得る。一例として、圧縮機100から伝達される振動を低減するために、制限された設置空間内で、ループ(loop)状に配管を複数回折り曲げて(bending)配置する必要がなくなる。
[延性ステンレス鋼管の外径]
圧縮機100の能力に基づいて、前記空気調和機10の空調能力、すなわち、冷房能力又は暖房能力が決定され得る。そして、延性ステンレス鋼管の外径は、圧縮機の冷凍能力に応じてその大きさが決定され得る。すなわち、圧縮機の容量が、前記延性ステンレス鋼管の外径を決定する基準となり得る。
一例として、11kW以上16kW以下の空調能力を有する空気調和機10において、前記吸入配管210及び吐出配管220を前記延性ステンレス鋼管で構成する場合、吸入配管210の外径は、18.95〜19.15mm、15.78〜15.98mm、及び22.10〜22.30mmのうち少なくともいずれか1つの範囲に属するように形成されてもよく、吐出配管220の外径は、12.60〜12.80mm、9.42〜9.62mm、及び15.78〜15.98mmのうち少なくともいずれか1つの範囲に属するように形成されてもよい。
本実施例は、空気調和機10の空調能力が11kW以上16kW以下に形成されることを特徴とする。
[冷媒の種類による設計圧力、P]
設計圧力は、冷媒の圧力であって、冷媒サイクルの凝縮圧力に対応することができる。一例として、前記凝縮圧力は、室外熱交換器120または室内熱交換器で凝縮される冷媒の温度値(以下、凝縮温度)に基づいて決定されてもよい。そして、前記設計圧力は、前記凝縮温度で冷媒の飽和蒸気圧を意味することができる。通常、空気調和機の凝縮温度は、約65℃前後に形成される。
冷媒の種類による飽和蒸気圧は表3に開示される。
表3を参照すると、R410aを冷媒として使用した場合、65℃での飽和蒸気圧が4.15と示されるので、前記設計圧力(P)は4.15(MPa)と決定され得る。
R134aを冷媒として使用した場合、65℃での飽和蒸気圧は1.79と示されるので、前記設計圧力(P)は1.79(MPa)と決定され得る。
また、R32を冷媒として使用した場合の飽和蒸気圧は4.30と示されるので、前記設計圧力(P)は4.30(MPa)と決定され得る。
[延性ステンレス鋼管の最小厚さの計算]
前記したように、許容応力(S)は、ASME SEC.VIII Div.1を基準として93.3MPaであり、設計圧力(P)は、冷媒がR410aであり、冷媒の温度が65℃であるとき、4.15MPaと決定される。決定された許容応力(S)及び設計圧力(P)を数式1に適用して配管の外径に応じて計算された配管の最小厚さを、次のような表4を通じて確認できる。
表4を参照すると、ASME B31.1に基づいて導出された延性ステンレス鋼管の最小厚さ、及びJIS B 8607に基づいて導出された延性ステンレス鋼管の最小厚さを確認することができる。ここで、実施例は、延性ステンレス鋼管を適用したものであり、比較例は、既存の銅配管を適用したものである。
JIS B 8607は、日本で使用される配管の基準コードであって、JIS B 8607の場合には、ASME B31.1とは異なり、腐食、ねじ山加工などによる余裕厚さであるtextra値を考慮しないので、最小厚さがASME B31.1より小さく導出される。textra値は、通常、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスの場合、0.2(mm)に設定され得る。
実施例に係る延性ステンレス鋼管の最小厚さは、ASME B31.1に基づいて導出されたものであるが、R401aの冷媒を使用する場合の圧力を考慮して、約0.1〜0.2mmの間で決定される所定のマージンをおいて適用可能な厚さを決定したものである。すなわち、実施例は、一つの例としてマージンをおいて最小厚さを提案するものと理解され、計算された最小厚さ以上であれば、前記マージンの大きさは、安全率に基づいて変動可能である。
具体的には、表4において、同じ外径(φ7.94)の場合を説明すると、実施例は、適用可能な配管の厚さが0.50mmであり、比較例は0.622mmであることを確認できる。すなわち、同じ外径を有するように設計された配管を、実施例のように延性ステンレス鋼管で形成した場合には、配管の厚さをさらに減少させることができることを意味し、これは、配管の内径をさらに大きく形成できることを意味する。
本実施例において、前記吸入配管210の外径は、18.95〜19.15mm、15.78〜15.98mm、及び22.10〜22.30mmのうち少なくともいずれか1つの範囲に属するように形成することができる。
前記吸入配管210の外径が18.95〜19.15mmの範囲で形成される場合、表4を参照すると、前記吸入配管210の標準配管の外径は19.05mmであり、前記吸入配管210の最小厚さは、ASME B31.1の場合に0.69mm、JIS B 8607の場合に0.49mmであり、マージンを適用した実施例の場合に0.80mmに形成することができる。したがって、前記の基準のうち、前記吸入配管210に適用できる限界厚さ値は、JIS B 8607を基準として、0.49mmとなる。結局、前記吸入配管210の内径は、18.07mm(=19.05−2×0.49)以下に形成され得る。
他の実施例として、前記吸入配管210の外径が15.78〜15.98mmの範囲で形成される場合、表4を参照すると、前記吸入配管210の標準配管の外径は15.88mmであり、前記吸入配管210の最小厚さは、ASME B31.1の場合に0.61mm、JIS B 8607の場合に0.41mmであり、マージンを適用した実施例の場合に0.70mmに形成することができる。したがって、前記の基準のうち、前記吸入配管210に適用できる限界厚さ値は、JIS B 8607を基準として、0.41mmとなる。結局、前記吸入配管210の内径は、15.06mm(=15.88−2×0.41)以下に形成され得る。
更に他の実施例として、前記吸入配管210の外径が22.10〜22.30mmの範囲で形成される場合、表4を参照すると、前記吸入配管210の標準配管の外径は22.20mmであり、前記吸入配管210の最小厚さは、ASME B31.1の場合に0.77mm、JIS B 8607の場合に0.57mmであり、マージンを適用した実施例の場合に1.00mmに形成することができる。したがって、前記の基準のうち、前記吸入配管210に適用できる限界厚さ値は、JIS B 8607を基準として、0.57mmとなる。結局、前記吸入配管210の内径は、21.06mm(=22.20−2×0.57)以下に形成され得る。
本実施例において、前記吐出配管220の外径は、12.60〜12.80mm、9.42〜9.62mm、及び15.78〜15.98mmのうち少なくともいずれか1つの範囲に属するように形成することができる。
まず、前記吐出配管220の外径が12.60〜12.80mmの範囲で形成される場合、表4を参照すると、前記吐出配管220の標準配管の外径は12.70mmであり、前記吐出配管220の最小厚さは、ASME B31.1の場合に0.53mm、JIS B 8607の場合に0.33mmであり、マージンを適用した実施例の場合に0.60mmに形成することができる。したがって、前記の基準のうち、前記吐出配管220に適用できる限界厚さ値は、JIS B 8607を基準として0.33mmとなる。結局、前記吐出配管220の内径は、12.70mm(=12.04−2×0.33)以下に形成され得る。
他の実施例として、前記吐出配管220の外径が9.42〜9.62mmの範囲で形成される場合、表4を参照すると、前記吐出配管220の標準配管の外径は9.52mmであり、前記吐出配管220の最小厚さは、ASME B31.1の場合に0.44mm、JIS B 8607の場合に0.24mmであり、マージンを適用した実施例の場合に0.50mmに形成することができる。したがって、前記の基準のうち、前記吐出配管220に適用できる限界厚さ値は、JIS B 8607を基準として、0.24mmとなる。結局、前記吐出配管220の内径は、9.04mm(=9.52−2×0.24)以下に形成され得る。
更に他の実施例として、前記吐出配管220の外径が15.78〜15.98mmの範囲で形成される場合、表4を参照すると、前記吐出配管220の標準配管の外径は15.88mmであり、前記吐出配管220の最小厚さは、ASME B31.1の場合に0.61mm、JIS B 8607の場合に0.41mmであり、マージンを適用した実施例の場合に0.70mmに形成することができる。したがって、前記の基準のうち、前記吐出配管220に適用できる限界厚さ値は、JIS B 8607を基準として、0.41mmとなる。結局、前記吐出配管220の内径は、15.06mm(=15.88−2×0.41)以下に形成され得る。
まとめると、本実施例に係る圧縮機100に使用される配管の外径は、圧縮機の冷凍能力または空気調和機10の空調能力によって決定され、設計圧力は、使用される冷媒に応じて決定され得る。
実施例のように、吸入配管及び吐出配管を延性ステンレス鋼管で構成する場合、ステンレスの許容応力が銅の許容応力に比べて大きいので、数式1にこれを適用すれば、配管の厚さを減少させることができることが分かる。すなわち、強度または硬度が相対的に高い延性ステンレス鋼管を使用することによって許容応力が増加することができ、これによって、同じ配管外径での厚さの減少を実現することができる。
したがって、本実施例に係る延性ステンレス鋼管は、従来の銅配管と同じ外径を有するように設計されても、内径がさらに大きくなるように設計できるので、冷媒の流動抵抗を減少させることができ、冷媒の循環効率を改善することができる。
図6は、本発明の第1実施例に係る延性ステンレス鋼管の製造方法を示したフローチャートであり、図7は、図6の冷間圧延工程(S1)を概略的に示した図であり、図8は、図6のスリッティング工程(S2)を概略的に示した図であり、図9は、図6のフォーミング工程(S3)を概略的に示した図であり、図10乃至図13は、図6の製造方法によって延性ステンレス鋼管を製造する過程を示した断面図であり、図14は、図6の光輝焼鈍工程(S7)を概略的に示した図である。
上述したように、従来のステンレス鋼は、銅よりも高い強度及び硬度を有するので加工性の問題が提起され、特に、ステンレス鋼で曲げ加工を行うことが制限されるという問題があった。
[要求される延性ステンレス鋼管の性質]
このような問題を解決するために、本発明に係る延性ステンレス鋼管は、銅を含む組成、オーステナイトからなる基地組織、30〜60μmの平均粒度の大きさを有することによって、従来のステンレス鋼よりも低強度及び低硬度の物性を有する。
特に、オーステナイトは、フェライトやマルテンサイトに比べて低降伏強度及び低硬度の特性を有する。したがって、本発明で要求する低強度及び低硬度の特性を有する延性ステンレス鋼管を製造するためには、延性ステンレス鋼管の粒度面積を基準として99%以上のオーステナイト基地組織を有し、1%以下のデルタフェライト基地組織を有しなければならない。
このために、本発明では、延性ステンレス鋼管の組成比だけでなく、追加的な熱処理を行うことで、延性ステンレス鋼管の粒度面積を基準として99%以上のオーステナイト基地組織を有し、1%以下のデルタフェライト基地組織を有することを特徴とする。
<延性ステンレス鋼管の熱処理工程>
延性ステンレス鋼管の熱処理工程について具体的に説明する。
銅からなる配管が引き抜きという単一の工程により形成できるのとは異なり、延性ステンレス鋼からなる配管は、銅よりも高い強度及び硬度を有するので、単一の工程では製造しにくい。
本実施例に係る延性ステンレス鋼管の熱処理工程は、冷間圧延工程(S1)、スリッティング(Slitting)工程(S2)、フォーミング(Forming)工程(S3)、溶接(Welding)工程(S4)、切削(Cutting)工程(S5)、引き抜き(Drawing)工程(S6)、及び光輝焼鈍(Bright Annealing)(S7)工程を含むことができる。
[第1工程:冷間圧延工程(S1)]
冷間圧延工程(S1)は、鋳造工程で生産された延性ステンレス鋼を、再結晶温度以下で回転する2つのロールの間を通過させて圧延する工程として理解できる。すなわち、冷間圧延された延性ステンレス鋼は、薄板の表面凹凸やしわなどが矯正され、表面に金属光沢が付与され得る。
図7に示されたように、延性ステンレス鋼は、シート(sheet)310形状からなり、シート310は、アンコイラ(uncoiler)によってコイル(Coil)状に巻かれて提供され得る。
前記シート310は、上下に配置されて回転する2つの圧延ロール(Roll)320の間を通過して連続的な力を受けることによって、表面積は広くなり、その厚さは薄くなり得る。本実施例において、延性ステンレス鋼は、鋳造工程で1.6mm〜3mmの厚さを有するシート状に提供され、冷間圧延工程(S1)を通じて、シートの厚さが1mm以下に冷間加工され得る。
[第2工程:スリッティング工程(S2)]
スリッティング工程(S2)は、冷間加工されたシート310を、スリッタを用いて所望の幅に多数個に切断する工程として理解できる。すなわち、単一のシート310は、スリッティング工程(S2)を経て多数個に切断されて加工され得る。
図8に示されたように、冷間加工されたシート310は、アンコイラ331の外周面にコイル状に巻かれた状態で、アンコイラ331の回転によって、巻かれたコイルが巻きほぐされながら前記シート310がスリッタ332を通過することができる。
一例として、前記スリッタ332は、前記シート310の上下方向に配置される軸、及び前記軸に結合される回転カッター332aを含むことができる。前記回転カッター332aは、前記軸において前記シート310の幅方向に多数個が離隔して配置され得る。前記多数個の回転カッター332aの離隔間隔は、互いに同一であってもよく、場合によっては互いに異なってもよい。
したがって、前記シート310が前記スリッタ332を通過すると、単一のシート310は、多数個の回転カッター332aによって多数個のシート310a,310b,310c,310dに分離され得る。このような過程を通じて、前記シート310は、適用される冷媒配管の好適な直径または幅を有することができる。このとき、前記シート310は、前記スリッタ332によって精密に切断されるように、上下方向に配置される多数の支持ローラ333,334によって加圧され得る。
一方、スリッティング工程(S2)が完了すると、前記シート310の外面にまくれ(Bur)が形成され得るが、このようなBurは除去される必要がある。もし、前記シート310の外面にBurが残存する場合、前記シート310から加工された配管が他の配管と溶接される過程で溶接不良が発生するだけでなく、溶接が不良な部分を介して冷媒が漏洩する問題をもたらすことがある。したがって、本発明では、スリッティング工程(S2)が完了すると、Burの除去のための研磨工程をさらに行う必要がある。
[第3工程:フォーミング工程(S3)]
フォーミング工程(S3)は、シート310a状の延性ステンレス鋼を複数の段階の成形ロール340を通過させて配管310eの形状に成形する工程として理解できる。
図9に示されたように、前記シート310aは、アンコイラの外周面にコイル状に巻かれた状態で、アンコイラの回転によって、巻かれたコイルが巻きほぐされながら垂直又は水平方向に交互に配置された多段の成形ロール340に進入する。このような多段の成形ロール340に進入したシート310aは、順次に成形ロール340を通過しながら、両側端が互いに隣接した配管310eの形状に成形され得る。
図10は、シート状の延性ステンレス鋼を巻いて配管10eの形状に成形されたことを示している。すなわち、シート310a状の延性ステンレス鋼は、フォーミング工程(S3)を通じて、両側端311a,311bが互いに近接している配管310eに成形され得る。
[第4工程:溶接工程(S4)]
溶接工程(S4)は、フォーミング工程(S3)によって巻かれて互いに近づいた配管310eの両側端311a,311bを互いに接合して継ぎ目パイプ(welded pipe)にする工程として理解できる。溶接工程(S4)での継ぎ目パイプは、溶融溶接機、例えば、通常の電気抵抗溶接機、アルゴン溶接機、または高周波溶接機などによって、突き合わせられた両側端が溶接されることによって具現され得る。
図11は、延性ステンレス鋼からなるシートを巻いて溶接した配管を示したものである。具体的には、前記配管310eの両側端311a,311bを配管の長手方向に溶接することによって前記両側端311a,311bを互いに接合させる。
このとき、溶接過程において、前記配管310eの長手方向に沿って溶接部(weld zone)313が形成される。図11に示されたように、前記溶接部313には、配管310eの外周面311及び内周面312から少し突出したビード313a,313bが形成されるため、前記配管の外周面311及び内周面312は平滑面(smooth surface)を構成しない。
前記溶接部313の両側には、溶接過程での熱によって熱影響部(HAZ:heat−affected zone)314a,314bがさらに形成され得る。前記熱影響部314a,314bも、溶接部313と同様に配管の長手方向に沿って形成される。
[第5工程:切削工程(S5)]
切削工程(S5)は、前記溶接部313のビード313aを部分的に切り出して配管の外周面311を平滑面にする工程として理解できる。前記切削工程(S5)は、溶接工程(S4)に連続して行われ得る。
一例として、切削工程(S5)は、プレスビードローリング(press bead rolling)を通じて配管を長手方向に移動させながら、バイト(bite)を用いてビード313aを部分的に切り出す過程を含むことができる。
図12は、切削工程(S5)まで終えた延性ステンレス鋼管を示す。すなわち、切削工程(S5)を通じて、前記配管310eの外周面311に形成されたビード313aが除去され得る。場合によって、切削工程(S5)は、溶接工程(S4)と共に行われてもよく、これとは異なり、切削工程(S5)は省略されてもよい。
[第6工程:引き抜き工程(S6)]
引き抜き工程(S6)は、前記溶接部313のビード313bに外力を加えて配管310eの内周面312を平滑面にする工程として理解できる。
一例として、引き抜き工程(S6)は、フォーミング工程(S3)及び溶接工程(S4)を経て製造された配管310eの外径よりも小さい内径を有する孔(hole)が形成されたダイス(dies)と、フォーミング工程(S3)及び溶接工程(S4)を経て製造された前記配管310eの内径よりも小さい外径を有するプラグ(plug)とを含む引抜機によって行われてもよい。
具体的には、溶接工程(S4)及び/又は切削工程(S5)を経た配管310eは、ダイスに形成された孔とプラグとの間を通過し、このとき、配管310eの外周面311に形成されたビード313aは、配管の外周面311の中心外側に突出して形成されるため、ダイスの孔を通過できずに塑性変形しながら除去され得る。
同様に、前記配管310eの内周面312に形成されたビード313bは、配管310eの内周面312の中心部側に突出して形成されるため、プラグを通過できずに塑性変形しながら除去され得る。
すなわち、上述したような引き抜き工程(S6)を経ながら前記配管の内周面312及び外周面311上の溶接ビード313a,313bが除去され得る。そして、前記配管の内周面312上の溶接ビード313aが除去されるので、冷媒配管のための拡管時に、配管の内周面312上に段部が発生することを根本的に防止することができる。
図13は、引き抜き工程(S6)まで終えた延性ステンレス鋼管を示す。すなわち、引き抜き工程(S6)を通じて、前記配管310eの外周面311及び内周面312に形成されたビード313a,313bが除去され得る。
切削及び引き抜きを通じて配管310eの外周面311と内周面312を平滑面にする理由は、配管の内部の均一な内径を形成し、他の配管との接続を容易にするためである。また、配管の内部の均一な内径を形成する理由は、円滑な冷媒の流れ、及び一定の冷媒の圧力を維持させるためである。図示していないが、引き抜き工程(S6)の後に、機械加工を通じて配管310eの外周面311と内周面312にグルーブ(図示せず)を形成することができる。
[第7工程:光輝焼鈍工程(S7)]
光輝焼鈍(Bright Annealing)工程(S7)は、溶接ビードが除去された配管310eを加熱して内部に残っている熱履歴及び残留応力を除去する工程として理解できる。本実施例では、延性ステンレス鋼の粒度面積を基準として、99%以上のオーステナイト基地組織を有し、1%以下のデルタフェライト基地組織を有するようにすると同時に、延性ステンレス鋼の平均粒度の大きさを30〜60μmに成長させるために、本熱処理工程を行うことを特徴とする。
特に、延性ステンレス鋼の平均粒度の大きさ(又は粒度番号)は、ステンレス鋼の低強度及び低硬度の特性を決定する核心因子に該当する。具体的には、光輝焼鈍工程(S7)は、溶接ビードが除去された配管310eを還元性や非酸化性ガスの気流内で焼鈍を行い、焼鈍の後にそのまま冷却させることによって行われる。
図14に示されたように、溶接ビードが除去された配管310eは、一定の速度で焼鈍炉(annealing furnace)350を通過する。前記焼鈍炉350内には雰囲気ガスが充填され、前記焼鈍炉350の内部は、電気ヒータまたはガスバーナーなどによって高温に加熱された状態であり得る。
すなわち、前記配管310eは、前記焼鈍炉350を通過しながら所定の入熱量(heat input)を得るようになり、このような入熱量によって、延性ステンレス鋼は、オーステナイト基地組織、及び30〜60μmの平均粒度の大きさを有するように形成され得る。
前記入熱量は、金属部材に入った熱量を意味し、前記入熱量は、金属学的微細組織の調節に非常に重要な役割を果たす。したがって、本実施例では、前記入熱量を制御するための熱処理方法を提示する。
光輝焼鈍工程(S7)において、前記入熱量は、熱処理温度、雰囲気ガス、または配管310eの移送速度に応じて定められ得る。
本実施例に係る光輝焼鈍工程(S7)の場合、熱処理温度は1050〜1100℃であり、雰囲気ガスは水素又は窒素であり、配管310eの移送速度は180〜220mm/minである。したがって、前記配管310eは、焼鈍炉350の焼鈍熱処理温度1050〜1100℃で180〜220mm/minの移送速度で焼鈍炉350を通過することができる。
ここで、焼鈍熱処理温度が1050℃未満であると、延性ステンレス鋼の十分な再結晶が起こらず、細粒組織が得られないだけでなく、結晶粒が扁平な加工組織となってクリープ強度を損傷させるようになる。反対に、焼鈍熱処理温度が1100℃を超えると、高温粒界割れ(intercrystalline cracking)や延性の低下をもたらすようになる。
また、溶接ビードが除去された配管310eが焼鈍炉350を180mm/min未満の移送速度で通過する場合、長時間により生産性が低下するという問題がある。反対に、配管310eが焼鈍炉350を220mm/minを超える移送速度で通過する場合、延性ステンレス鋼内に存在する応力が十分に除去されないだけでなく、オーステナイト基地組織の平均粒度の大きさが30μm以下に形成される。すなわち、配管310eの移送速度が速すぎると、延性ステンレス鋼の平均粒度の大きさが30μm以下となり、本発明で要求する低強度及び低硬度の特性を有することができなくなる。
上述したように、冷間圧延工程(S1)、スリッティング工程(S2)、フォーミング工程(S3)、溶接工程(S4)、切削工程(S5)、引き抜き工程(S6)及び光輝焼鈍工程(S7)を経て製造された本発明に係る延性ステンレス鋼は、スプール(spool)などによってコイリングされた状態で臨時に保管された後、出荷され得る。
図示していないが、光輝焼鈍工程(S7)が完了した後に、形状矯正及び表面研磨加工がさらに行われ得る。
<疲労破壊試験>
図15は、本発明の第1実施例に係る延性ステンレス鋼管と従来の銅配管との疲労限度を比較できるS−N曲線(Curve)実験グラフであり、図16は、本発明の第1実施例に係る延性ステンレス鋼管のS−N曲線を示す実験グラフである。
図15及び図16を参照すると、本発明の第1実施例に係る延性ステンレス鋼管の疲労限度(又は耐久限度)は、約200.52MPaである。これは、従来の銅(Cu)配管の疲労限度25MPaに比べて約175MPa(8倍)高い値である。すなわち、前記延性ステンレス鋼管は、従来の銅配管よりも耐久性、信頼性、期待寿命、設計自由度の面で向上した効果を有することができる。以下では、前記延性ステンレス鋼管の効果についてより詳細に説明する。
[最大許容応力]
前記延性ステンレス鋼管は、前記疲労限度値に基づいて、最大許容応力値を決定することができる。一例として、前記延性ステンレス鋼管の最大許容応力は、空気調和機10の起動または停止時に200MPaに設定することができ、空気調和機の運転時には90MPaに設定することができる。前記空気調和機の運転時に最大許容応力が小さい値を有する理由は、運転状態で配管の内部を流動する冷媒による応力を反映したものと理解することができる。
前記最大許容応力は、配管などを安全に使用するのに許容できる最大限度の応力を意味する。一例として、配管などは使用中に外力を受けることがあり、前記外力によって配管の内部には応力が発生する。ここで、前記内部応力が、固体材料などの要因によって定められるある限界応力値以上となる場合、前記配管は、永久変形を起こしたり、破壊されたりすることがある。したがって、最大許容応力を定めることによって、前記配管を安全に使用できるようにする。
[疲労限度]
鋼(Steel)などのような固体材料に繰り返し応力が連続して加えられると、前記固体材料は、引張強度よりも遥かに低い応力で破壊され得る。これを材料の疲労(fatigue)といい、前記疲労による破壊を疲労破壊という。前記材料の疲労は、材料が繰り返し荷重を受けると発生する。そして、繰り返し荷重によってある限度を超えると、終局的に材料が破断し得るが、いくら繰り返し荷重を受けても破断しない限度を疲労限度(fatigue limit endurance limit)または耐久限度と定義する。
[疲労限度とS−N曲線の関係]
S−N曲線は、ある応力(Stress)を繰り返した場合、破壊するまでの繰り返し回数(N、cycle)を示したものである。詳しくは、固体材料は、複数回繰り返して作用する応力を受けると、さらに早く破壊され、破壊されるまでの応力の繰り返し回数は、加えられる応力の振幅に影響を受ける。したがって、前記S−N曲線を通じて、前記固体材料が破壊されるまでどのくらいの大きさの応力及び応力の繰り返し回数に影響を受けるかを分析することができる。
図15及び図16のS−N曲線実験グラフにおいて、縦軸は応力振幅(Stress)を示し、横軸は繰り返し回数のログ(Log)値を示す。そして、S−N曲線は、応力振幅を加えたときに材料が破壊されるまでの繰り返し回数のログ値に従って引かれる曲線である。一般的に、金属材料のS−N曲線は、応力振幅が小さいほど、破壊までの繰り返し回数は増加する。そして、応力振幅がある値以下になると、無限に繰り返しても破壊されない。ここで、S−N曲線が水平になる限界の応力値は、上述した材料の疲労限度または耐久限度を意味する。
[銅配管の疲労限度の問題点]
図15の従来の軟質の銅(Cu)配管の疲労破壊の実験データに基づく従来の銅(Cu)配管のS−N曲線を説明すると、従来の銅配管の疲労限度は約25MPaであることを確認できる。すなわち、前記銅配管の最大許容応力は25MPaである。しかし、空気調和機の運転状態に応じて(図18参照)、前記空気調和機の起動または停止時には、配管の応力が約25〜30MPaの値を有する場合が発生し得る。結局、従来の銅配管は、上述したように、疲労限度以上の応力値により、配管の寿命が短縮され、耐久性が低下するという問題がある。
[延性ステンレス鋼管の効果]
図15及び図16において、前記延性ステンレス鋼管の疲労破壊の実験データに基づく本発明のS−N曲線を説明すると、前記延性ステンレス鋼管の疲労限度は約200.52MPaであり、前記銅配管に対し8倍の値を有する。すなわち、前記延性ステンレス鋼管の最大許容応力は約200MPaである。空気調和機の最大運転負荷を考慮しても、空気調和機に備えられる配管内の応力は、前記延性ステンレス鋼管の最大許容応力を超えない。したがって、前記延性ステンレス鋼管が空気調和機に使用される場合、配管の寿命が延び、耐久性及び信頼性が向上するという利点がある。
前記延性ステンレス鋼管は、前記銅配管の疲労限度に比べて約175MPaの設計余裕が存在する。詳しくは、前記延性ステンレス鋼管の外径は従来の銅配管の外径と同一であり、内径は拡張されるように形成することができる。
すなわち、前記延性ステンレス鋼管の最小厚さは、前記銅配管の最小厚さよりも小さく、このような場合にも、相対的に高い設計余裕により、従来の銅配管よりも高い最大許容応力を有することができる。結局、前記延性ステンレス鋼管の設計自由度が向上する効果がある。
<応力測定実験>
前記空気調和機の運転条件に応じて、従来の銅配管の疲労限度以上の応力が配管内に発生することがある。その一方で、延性ステンレス鋼管が空気調和機に使用される場合、前記延性ステンレス鋼管で発生する最大応力値は、前記延性ステンレス鋼管の疲労限度に達しない。以下では、これに関連して詳細に説明する。
図17は、配管の応力を測定するための応力測定センサの取り付け位置を示す図であり、図18及び図19は、図17の応力測定センサが測定した結果値を示す実験データである。
詳しくは、図18の(a)は、空気調和機が標準冷房モードで動作する場合、前記空気調和機の起動、運転、停止状態を区分して従来の銅配管と延性ステンレス鋼管の応力測定値を示し、図18の(b)は、空気調和機が標準暖房モードで動作する場合、前記空気調和機の起動、運転、停止状態を区分して従来の銅配管と延性ステンレス鋼管の応力測定値を示す。
そして、図19の(a)は、空気調和機が過負荷冷房モードで動作する場合に、図4(a)と同様の応力測定値を示し、図19の(b)は、空気調和機が過負荷暖房モードで動作する場合に、図4(b)と同様の応力測定値を示す。
[応力測定センサの取り付け位置]
図17を参照すると、複数の応力測定センサは、圧縮機100に冷媒が吸入されるように案内する吸入配管210と、前記圧縮機で高温・高圧に圧縮された冷媒を凝縮機に案内する吐出配管220とに取り付けることができる。詳しくは、前記吸入配管210は、第1気液分離器104と接続され、前記第1気液分離器104に冷媒が吸入されるように案内することができる。前記第1及び第2気液分離器104,103、そして、前記吸入配管210及び吐出配管220を通過する冷媒には、R32、R134aまたはR410aが含まれてもよい。
本実施例では、冷媒としてR410aを使用することができる。
空気調和機のサイクルの面で、圧縮機100を通過した冷媒は高温・高圧の気相冷媒であるので、前記吐出配管220に作用する応力は他の冷媒配管に作用する応力よりも高い。
一方、前記圧縮機100は、低圧の冷媒を高圧の冷媒に圧縮する過程で振動が発生し得、前記振動に起因して圧縮機100及び第1及び第2気液分離器104,103と接続される配管の応力が上昇し得る。したがって、前記吸入配管210及び吐出配管220での応力は、他の接続配管に比べて相対的に高いので、前記吸入配管210及び吐出配管220に応力測定センサを取り付けて最大許容応力以内であるか否かを確認する必要がある。
また、前記吸入配管210と吐出配管220は、折り曲げられる部分で応力が最も高く形成され得る。したがって、前記応力測定センサは、前記吸入配管210の2つの折り曲げられた部分215a,215bと吐出配管220の2つの折り曲げられた部分225a,225bに取り付け、前記吸入配管210及び吐出配管220に作用する応力が最大許容応力以内であるか否かを確認する必要がある。
[従来の銅配管の応力の測定]
図18及び図19を参照すると、前記吸入配管及び吐出配管が従来の銅配管で構成される場合、最大応力値は、起動時に4.9MPa、運転時に9.6MPa、停止時に29.1MPaと測定される。上述したように、停止時の最大応力測定値29.1MPaは、前記銅配管の最大許容応力値(25MPa)を超える。これによれば、配管の耐久性の低下及び配管の寿命の短縮を引き起こし得る。
[延性ステンレス鋼管の応力の測定]
吸入配管210及び吐出配管220が本発明の実施例に係る延性ステンレス鋼管で構成される場合、応力値は、起動時に19.2MPa、運転時に23.2MPa、停止時に38.7MPaと測定される。すなわち、前記延性ステンレス鋼管での応力測定値は、最大許容応力である200MPa(起動/停止)または90MPa(運転)以下を満足させる値であり、前記最大許容応力との差も非常に大きく形成される。
したがって、前記延性ステンレス鋼管は、従来の銅配管に比べて耐久性が向上し、前記延性ステンレス鋼管を前記吸入配管210及び吐出配管220として使用する場合、既存の銅配管よりも向上した配管寿命及び信頼性を提供することができる。
<性能(COP)の向上>
図20は、本発明の第1実施例に係る延性ステンレス鋼管または従来の銅配管がガス配管(Gas Pipe)として使用される場合、ガス配管(Gas Pipe)の管内圧力損失を比較する実験グラフであり、図21は、本発明の第1実施例に係る延性ステンレス鋼管と従来の銅配管の性能を示す実験結果テーブルである。前記ガス配管は、冷媒サイクルを基準として、蒸発した低圧の気相冷媒または圧縮された高圧の気相冷媒の流動をガイドする配管として理解できる。
より詳しくは、図20の(a)及び図21の(a)は、標準配管(5m)での実験グラフであり、図20の(b)及び図21の(b)は、長配管(50m)での実験グラフである。
[管内圧力損失の比較]
図20の(a)及び図20の(b)を参照すると、グラフの縦軸は、ガス配管での圧力変化量または圧力損失量(△P=Pin−Pout、単位KPa)を示し、横軸は、空気調和機の冷房モードまたは暖房モードを示す。
本発明の実施例に係る延性ステンレス鋼管は、上述したように、従来の銅配管よりも耐久性及び設計自由度が大幅に向上する。したがって、前記延性ステンレス鋼管は、前記銅配管と同じ外径を有し、かつ前記銅配管よりも拡大された内径を有することができる。前記拡大された内径によって、前記延性ステンレス鋼管は、前記銅配管よりも冷媒の流動抵抗が減少し、冷媒の流量が増加することができる。そして、前記延性ステンレス鋼管は、従来の銅配管よりも管内側の圧力損失を低減させることができる。
[標準配管での管内圧力損失の比較]
図20の(a)を参照すると、ガス配管の管内圧力損失は、5mの長さを有する標準配管に対して、冷房モードであるとき、延性ステンレス鋼管の圧力損失量が従来の銅配管の圧力損失量よりも約2.3KPa小さく形成される。詳しくは、冷房モードで、前記延性ステンレス鋼管の圧力損失量(△P)は約6.55KPaであり、前記銅配管の圧力損失量(△P)は約8.85KPaと示される。すなわち、標準配管(5m)の冷房モードで、前記延性ステンレス鋼管の圧力損失量は、前記銅配管の圧力損失量よりも約26%減少した値を有する。
また、前記ガス配管の管内圧力損失は、標準配管(5m)で暖房モードであるとき、延性ステンレス鋼管の圧力損失量(△P)が従来の銅配管の圧力損失量(△P)よりも約1.2KPa小さい。すなわち、暖房モードで、前記延性ステンレス鋼管の圧力損失量(△P)は約3.09KPaであり、前記銅配管の圧力損失量(△P)は約4.29KPaである。すなわち、標準配管(5m)の暖房モードで、前記延性ステンレス鋼管の圧力損失量は、前記銅配管の圧力損失量よりも約28%減少した値を有する。
[長配管での管内圧力損失の比較]
図20の(b)を参照すると、ガス配管の管内圧力損失は、50mの長さを有する長配管で冷房モードであるとき、延性ステンレス鋼管の圧力損失量が従来の銅配管の圧力損失量よりも約16.9KPa小さい。詳しくは、冷房モードで、前記延性ステンレス鋼管の圧力損失量(△P)は約50.7KPaであり、前記銅配管の圧力損失量(△P)は約67.6KPaである。すなわち、長配管(50m)の冷房モードで、前記延性ステンレス鋼管の圧力損失量は、前記銅配管の圧力損失量よりも約26%減少した値を有する。
また、前記ガス配管の管内圧力損失は、長配管(50m)で暖房モードであるとき、延性ステンレス鋼管の圧力損失量(△P)が従来の銅配管の圧力損失量(△P)よりも約10.2KPa小さい。すなわち、暖房モードで、前記延性ステンレス鋼管の圧力損失量(△P)は約29.03KPaであり、前記銅配管の圧力損失量(△P)は約39.23KPaである。すなわち、長配管(50m)の暖房モードで、前記延性ステンレス鋼管の圧力損失量は、前記銅(Cu)配管の圧力損失量よりも約26%減少した値を有する。
[性能係数]
前記ガス配管(Gas Pipe)、圧縮機100の吸入配管210又は吐出配管220の内部では、冷媒圧力損失が発生し得る。前記冷媒圧力損失は、冷媒循環量の減少、体積効率の減少、圧縮機吐出ガスの温度上昇、単位冷凍能力当たりの動力の増加、性能係数(COP)の減少という悪影響をもたらす。
したがって、前記図20に示されるように、上述したガス配管、吸入配管又は吐出配管を延性ステンレス鋼管で構成する場合、従来の銅配管よりも管内圧力損失を低減させることができるので、冷媒流量が増加し、圧縮機の圧縮仕事(例えば、消費電力(kW))が減少し、性能係数(COP)を増加させることができる。
前記性能係数(COP)は、冷蔵庫(refrigerator)、エアコン(air conditioner)、熱ポンプ(heat pump)などのように、温度を下げたり上げたりする機構の効率を示す尺度であって、投入された仕事(Work)の量に対し、出力又は供給した熱量(冷房能力又は暖房能力)の比として定義される。熱ポンプの場合、温度を上げる機構であるので、暖房性能係数といい、COPhと表記することができ、冷蔵庫やエアコンの場合は温度を下げる機構であるので、冷房性能係数COPcと表記することができる。また、性能係数(COP)は、熱源(heat source)から取り出すか、または熱源に供給した熱量(Q)を機械的な仕事(mechanical work)の量(Work)で割った値として定義される。
[標準配管での性能係数の比較]
図21の(a)を参照すると、標準配管(5m)で冷房モードであるとき、冷房能力は、銅配管が約9.36(kW)であり、前記延性ステンレス鋼管が約9.45(kW)である。すなわち、前記延性ステンレス鋼管の熱量(Q)は、前記銅配管の約100.9%増加した値を有する。そして、消費電力は、銅配管が約2.07(kW)であり、前記延性ステンレス鋼管が約2.06(kW)である。したがって、効率(COP)は、前記銅配管で4.53であり、前記延性ステンレス鋼管で4.58であるので、前記延性ステンレス鋼管が、従来の銅配管の約100.9%向上した効率を有する。
また、標準配管(5m)で暖房モードであるとき、暖房能力は、銅配管が約11.28(kW)であり、前記延性ステンレス鋼管が約11.31(kW)である。すなわち、前記延性ステンレス鋼管の熱量(Q)は、前記銅(Cu)配管の約100.2%増加した値を有する。そして、消費電力は、銅配管が約2.55(kW)であり、前記延性ステンレス鋼管が約2.55(kW)である。したがって、効率(COP)は、前記銅配管で4.43であり、前記延性ステンレス鋼管で4.44であるので、前記延性ステンレス鋼管が、従来の銅配管の約100.2%向上した効率を有する。
[長配管での性能係数の比較]
前記配管の管内側の圧力損失の低減による効率(性能係数)の向上は、前記標準配管(5m)よりも長配管(50m)においてさらに確実に現れる。すなわち、配管の長さが長くなるほど、従来の銅配管に比較して改善される延性ステンレス鋼管の性能がさらに向上することができる。
図21の(b)を参照すると、長配管(50m)で冷房モードであるとき、冷房能力は、延性ステンレス鋼管が約8.03(kW)であり、前記銅配管が約7.77(kW)である。すなわち、前記延性ステンレス鋼管の熱量(Q)は、前記銅配管の約103.4%増加した値を有する。そして、銅配管の消費電力は約2.08(kW)であり、前記延性ステンレス鋼管の消費電力は約2.08(kW)である。したがって、効率(COP)は、前記銅配管で3.74であり、前記延性ステンレス鋼管で3.86であるので、前記延性ステンレス鋼管が、従来の銅配管の約103.2%向上した効率を有する。
また、長配管(50m)で暖房モードであるとき、銅配管の暖房能力は約8.92(kW)であり、前記延性ステンレス鋼管の暖房能力は約9.07(kW)である。すなわち、前記延性ステンレス鋼管の熱量(Q)は、前記銅配管の約101.7%増加した値を有する。そして、消費電力は、銅(Cu)配管が約2.54(kW)であり、前記軟質化STS配管が約2.53(kW)である。したがって、効率(COP)は、前記銅配管で3.51であり、前記延性ステンレス鋼管で3.58であるので、前記延性ステンレス鋼管の効率は、従来の銅配管の効率に対し約102%向上する。
<耐食性試験>
図22は、耐食性を試験するための対象材である複数個の延性ステンレス鋼管、アルミニウム(Al)配管及び銅配管を示す図であり、図23は、前記図22の配管別に腐食深さを測定した結果テーブルであり、図24は、図23の結果グラフである。
耐食性は、ある物質が腐食や侵食によく耐える性質を意味する。これは、耐腐食性ともいう。一般的に、ステンレス鋼やチタンは、炭素鋼より腐食しにくいため、耐食性が強い。一方、耐食性試験は、塩水噴霧試験、ガス試験などの方式がある。前記耐食性試験を通じて、塩分を含む大気に対する製品の抵抗性を判断し、耐劣化性、保護被膜の品質、均一性などを調べることができる。
[複合腐食試験]
図22乃至図24を参照すると、本発明の実施例に係る延性ステンレス鋼管、他の配管比較群(Al,Cu)と共に複合腐食試験(cyclic corrosion test)を行った場合、腐食深さ(μm)が、比較群に比べて最も小さい値を有するので、耐食性が最も優れた配管であることを確認できる。以下では、これに関連して詳細に説明する。
前記複合腐食試験(cyclic corrosion test)は、自然環境に近似または促進させる目的で、塩水噴霧、乾燥、湿潤の雰囲気を繰り返して行う腐食試験法を意味する。例えば、1サイクルを8時間とし、塩水噴霧2時間、乾燥4時間、湿潤2時間として、30サイクル、60サイクル、90サイクル、180サイクルなど、試験時間を定めて実施して評価することができる。前記複合腐食試験のうち塩水噴霧試験は、めっきの耐食性を調べる促進試験法として最も広く実施され、食塩水の噴霧中に試料を暴露させて耐食性を調べる試験である。
図22を参照すると、前記複合腐食試験を行う複数個の延性ステンレス鋼管S1,S2,S3、複数個のアルミニウム配管A1,A2,A3、及び複数個の銅配管C1,C2,C3を示し、それぞれの配管において任意の位置D1,D2を定めて腐食深さ(μm)を測定した。
[試験の結果及び軟質化STS配管の利点]
図23及び図24を参照すると、腐食深さが最も深いと測定された配管は、平均95μmを有するアルミニウム配管である。その次に、銅配管が平均22μmであり、延性ステンレス鋼管は平均19μmと最も耐食性に優れた測定値を有する。また、腐食深さ(μm)の最大値(Max)も、アルミニウム配管が110μmと最も深く、その次に銅配管が49μmであり、前記延性ステンレス鋼管は36μmと最下値を有する。
従来の銅配管を代替するためにアルミニウム配管の使用を試みたが、上述した実験結果のように、腐食が容易に起こるなど、耐食性が最も劣るので、大きな欠点が存在する。その一方で、前記延性ステンレス鋼管は耐食性が最も優れ、上述した耐久性及び性能の面でも従来の配管よりも優れるという効果がある。
<曲げ性試験>
個別的な設置環境に応じて配管を接続する空気調和機の設置作業の場合、前記配管は、直管だけでなく、配管を設置する作業者の外力により曲げを与えて形成する曲管も使用する。そして、前記直管または曲管は、室外機と室内機などを接続する。
従来のステンレス配管は、銅配管よりも強度が非常に高い。したがって、従来のステンレス配管の高い強度により、作業者が配管に外力を加えて曲がる曲管を形成することは非常に難しい。したがって、設置作業の利便性のために、銅配管またはアルミニウム配管を使用しなければならないという問題があった。
しかし、本発明の実施例に係る延性ステンレス鋼管は、強度が、従来のステンレス鋼よりは低く、従来の銅配管よりは高いレベルに低くなり得る。したがって、上述した曲管などを形成できるので、従来のステンレス配管に対する低い成形性を解決することができる。これに関連して、以下で曲げ性実験について詳細に説明する。
[曲管の形状及び曲率半径]
図25は、本発明の実施例に係る延性ステンレス鋼管が曲管で構成される様子を示す図であり、図26は、前記曲管の一断面を示す図であり、図27は、延性ステンレス鋼管、銅配管及びアルミニウム配管の変形長さによる曲げ荷重を比較する実験グラフである。
図25を参照すると、本発明の実施例に係る延性ステンレス鋼管は、曲げ力によって曲管として構成され得る。例えば、前記延性ステンレス鋼管は、図25の(a)に示される‘┐’形状、または図25の(b)に示される‘S’字状を有することができる。
図25の(a)及び図25の(b)を参照すると、前記延性ステンレス鋼管の中心線は、一方向から他方向に折り曲げられるように曲率を有する曲線部分を含むことができる。そして、前記曲線は曲率半径Rを有する。
前記曲率半径Rは、曲線の各点において湾曲の程度を表す値として定義される。一方、前記曲管を形成する延性ステンレス鋼管の曲率半径Rは、直管を曲管に成形してもしわが発生せず、振動が発生しない配管において使用可能な最小曲率半径(Rmin)を含むことができる。そして、最小曲率半径(Rmin)は、最大、最小外径の比に対する設定基準を満足する曲管から測定することができる。
[延性ステンレス鋼管の最大/最小外径の比]
図26を参照すると、延性ステンレス鋼管は、最大外径Fと最小外径Eとの比(E/F)が0.85を超え、1より小さい値を有するように、曲管で構成され得る。
前記最大、最小外径の比(E/F)は、ASME(American Society of Mechanical Engineers)及びJIS(Japanese Industrial Standards)の基準(表5)に基づいて保守的に算定した基準である。
以下、表5は、最大、最小外径の比に対する設定基準を示す。
前記表5において、Dは、直管(基準配管)での外径値であり、Rは曲率半径を意味する。
[延性ステンレス鋼管、銅配管及びアルミニウム配管の曲げ性の比較]
図27では、前記設定基準(最大、最小外径の比)を満足する延性ステンレス鋼管の曲げ性を試験した結果を示す。本曲げ性試験において、前記延性ステンレス鋼管の管径(Ф)は15.88(mm)である。
一方、曲げ(bending)は、荷重がかかったとき、梁が変形する状態で下又は上に曲がることを意味する。前記梁が下方に曲がる場合、下部分は引張力が作用し、梁が上方に曲がる場合、下部分は圧縮力が作用する。
図27を参照すると、それぞれ管径(Ф)が15.88(mm)である、アルミニウム配管、銅配管及び延性ステンレス鋼管の変形長さ(mm)に応じて加えられる力(N)が示される。
一方、前記管径(Ф)が15.88(mm)で最小曲率半径(Rmin)を測定すると、銅配管は85mmであり、延性ステンレス鋼管は70mmである。これによれば、前記延性ステンレス鋼管は、銅配管よりも小さい曲率半径Rを有するので、前記銅配管に比べて同等またはそれ以上に曲げられ得る。
したがって、前記延性ステンレス鋼管は、前記銅配管と同等レベルに曲管を形成できるので、従来のステンレス配管に比べて成形性が向上する効果がある。このとき、作業者の曲げ可能な力は、銅配管及びアルミニウム配管の最大曲げ荷重と仮定する。本実施例において、作業者の曲げ可能な力は900Nであり得る。
曲げ性試験の結果グラフを説明すると、変形長さ0〜2.5mmの区間では、加えられる力(N)が急激に上昇し、その後、変形長さでの力は、次第に傾きが小さくなった後、最大値の力(N)に漸近していく。
また、前記曲げ性試験の結果グラフにおいて最大曲げ荷重を比較してみると、前記延性ステンレス鋼管の最大曲げ荷重は750Nであり、銅配管及びアルミニウム配管の最大曲げ荷重は900Nである。すなわち、前記延性ステンレス鋼管の最大曲げ荷重が、他の従来の配管よりも最も小さく示される。
したがって、作業者は、銅配管及びAアルミニウム配管の最大曲げ荷重の83%以内の力を使用して延性ステンレス鋼管を曲がるように成形することができる。結局、作業者は、前記銅配管及びアルミニウム配管を曲管にするために加える力より少ない力を加えて前記延性ステンレス鋼管を曲管にすることができる。
まとめると、本発明の実施例に係る延性ステンレス鋼管は、従来のステンレス配管だけでなく、銅配管及びアルミニウム配管に比べて成形性が向上する効果がある。したがって、設置作業の容易性も向上するという利点がある。
<第2実施例>
以下では、本発明の第2実施例について説明する。本実施例は、新素材配管で構成される冷媒配管において第1実施例と相違点を有するところ、相違点を中心に説明し、第1実施例と同一の部分に対しては第1実施例の説明と図面符号を援用する。
図28は、本発明の第2実施例に係る空気調和機の構成を示す冷凍サイクルに関する線図である。
[新素材配管で構成される冷媒配管]
図28を参照すると、本発明の第2実施例に係る空気調和機10の空調能力は、11kW以上16kW以下を形成する。前記空気調和機10には、冷凍サイクルを循環する冷媒の流動をガイドする冷媒配管50aが含まれ得る。前記冷媒配管50aには新素材配管が含まれ得る。前記新素材配管は、銅配管に比べて熱伝導率が低く形成されるので、冷媒が前記冷媒配管50aを流動する場合、前記銅配管を流動する場合よりも熱損失が少なく発生する効果を奏することができる。
[第1冷媒配管]
詳細には、前記冷媒配管50aには、流動調節弁110の第2ポート112から前記マニホールド130、すなわち、室外熱交換器120側に延びる第1冷媒配管51aが含まれる。前記第1冷媒配管51aは前記新素材配管で構成され得る。
前記第1冷媒配管51aには、冷房運転時に高圧の気相冷媒が流動し、暖房運転時に低圧の気相冷媒が流動することができる。前記第1冷媒配管51aの外径は、前記空気調和機10の空調能力に基づいて、15.88mmに形成され得る。
一例として、前記表4を参照すると、前記第1冷媒配管51aの標準配管の外径は15.88mmであり、前記第1冷媒配管51aの最小厚さは、ASME B31.1の場合に0.61、JIS B 8607を基準として0.41mmであり、マージンを適用した実施例の場合に0.7mmに形成することができる。したがって、前記の基準のうち、第1冷媒配管51aに適用できる限界厚さ値はJIS B 8607を基準として0.41mmとなる。したがって、前記第1冷媒配管51aの内径は、15.06mm(=15.88−2×0.41)以下に形成され得る。
[第2冷媒配管]
前記冷媒配管50aには、分配器140からメイン膨張装置155に延びる第2冷媒配管52aがさらに含まれる。前記第2冷媒配管52aは前記新素材配管で構成され得る。
前記第2冷媒配管52aには、冷房運転時に高圧の液冷媒が流動し、暖房運転時に低圧の液冷媒が流動することができる。前記第2冷媒配管52aの外径は、前記空気調和機10の空調能力に基づいて、9.52mmに形成され得る。
一例として、前記表4を参照すると、前記第2冷媒配管52aの標準配管の外径は9.52mmであり、前記第2冷媒配管52aの最小厚さは、ASME B31.1の場合に0.44、JIS B 8607を基準として0.24mmであり、マージンを適用した実施例の場合に0.5mmに形成することができる。したがって、前記の基準のうち、第2冷媒配管52aに適用できる限界厚さ値はJIS B 8607を基準として0.24mmとなる。したがって、前記第2冷媒配管52aの内径は、9.04mm(=9.52−2×0.24)以下に形成され得る。
[第3冷媒配管]
前記冷媒配管50aには、前記メイン膨張装置155から第1サービス弁175に延びる第3冷媒配管53aがさらに含まれる。前記第3冷媒配管53aは前記新素材配管で構成され得る。
前記第3冷媒配管53aには、冷房及び暖房運転時に高圧の液冷媒が流動することができる。前記第3冷媒配管53aの外径は、前記空気調和機10の空調能力に基づいて、9.52mmに形成され得る。
一例として、前記表4を参照すると、前記第3冷媒配管53aの標準配管の外径は9.52mmであり、前記第3冷媒配管53aの最小厚さは、ASME B31.1の場合に0.44、JIS B 8607を基準として0.24mmであり、マージンを適用した実施例の場合に0.5mmに形成することができる。したがって、前記の基準のうち、第3冷媒配管53aに適用できる限界厚さ値はJIS B 8607を基準として0.24mmとなる。したがって、前記第3冷媒配管53aの内径は、9.04mm(=9.52−2×0.24)以下に形成され得る。
[第4冷媒配管]
前記冷媒配管50aには、前記第2サービス弁176から前記流動調節弁110の第3ポート113に延びる第4冷媒配管54aがさらに含まれる。前記第4冷媒配管54aは前記新素材配管で構成され得る。
前記第4冷媒配管53aには、冷房運転時に低圧の気相冷媒が流動し、暖房運転時に高圧の気相冷媒が流動することができる。前記第4冷媒配管54aの外径は、前記空気調和機10の空調能力に基づいて、15.88mmに形成され得る。
一例として、前記表4を参照すると、前記第4冷媒配管54aの標準配管の外径は15.88mmであり、前記第4冷媒配管54aの最小厚さは、ASME B31.1の場合に0.61、JIS B 8607を基準として0.41mmであり、マージンを適用した実施例の場合に0.7mmに形成することができる。したがって、前記の基準のうち、第4冷媒配管54aに適用できる限界厚さ値はJIS B 8607を基準として0.41mmとなる。したがって、前記第4冷媒配管54aの内径は、15.06mm(=15.88−2×0.41)以下に形成され得る。