JP2020509045A - 頬側/歯肉経路によりパラセタモールを投与するための医薬製剤 - Google Patents
頬側/歯肉経路によりパラセタモールを投与するための医薬製剤 Download PDFInfo
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Abstract
本発明は、溶解パラセタモールを含む含水アルコール溶液からなる、頬側/歯肉経路によりパラセタモールを投与するための医薬製剤であって、#パラセタモールの質量が95mg〜190mgであり、#該含水アルコール溶液の体積が1.0mL〜2.0mLであり、#該含水アルコール溶液のアルコール度が48.5°〜52.5°であり、#該含水アルコール溶液中のパラセタモールの濃度が85mg/ml〜110mg/mlであることを特徴とする医薬製剤である。本発明はまた、パラセタモールが血液脳関門を通過する速度を加速するための使用のための上記医薬製剤、および特に疼痛または発熱の対症療法のための薬物としてのその使用に関する。
Description
本発明は、パラセタモールの頬側/歯肉投与のための医薬製剤、ならびに、パラセタモールによる血液脳関門
の通過を促進するためのその使用、および、特に疼痛および/または発熱の処置のための、薬物としてのその使用に関する。
の通過を促進するためのその使用、および、特に疼痛および/または発熱の処置のための、薬物としてのその使用に関する。
技術水準
パラセタモールは、軽度〜中等度の疼痛および/または発熱を緩和するために長年使用されてきた有効成分である。
パラセタモールは、軽度〜中等度の疼痛および/または発熱を緩和するために長年使用されてきた有効成分である。
その作用機序は、まだ詳細に知られていないが、この生成物は、その非常に好ましいリスク・ベネフィット比により、世界で最も広く使用されている医薬品の1つである。
しかしながら、その好ましいリスク・ベネフィット比により、その使用が一般的になりすぎて、特にこの化合物が消費者向け製剤に体系的に加えられている米国では、多くの偶発的過量投与を引き起こしている。いくつかの医薬品を摂取している消費者は、最終的に過量投与および致死性中毒を引き起こす可能性がある。
米国食品医薬局(FDA)は、実際、製薬会社に対し、併用製品においてパラセタモールの用量を減らすよう警告している。
2014年に、FDAは、中毒および致死性事故のリスクを制限するために、325mgを超えるパラセタモールを含有する他の有効成分と組み合わせた全ての製品の販売を禁止した。
したがって、効果的な鎮痛効果を得るのに必要な用量を減らすために、最適化された製剤がパラセタモールの有効性を改善する医薬品を開発する必要がある。
特許文献1の特許出願には、製品の有効性を維持しながら、パラセタモールの用量を減らすことを目的とするパラセタモールの製剤が非常に具体的に開示されている。
この特許出願には、体積が0.5mL〜2.5mLの含水アルコール溶液中にパラセタモール25mg〜250mgを含むパラセタモール経粘膜投与用投与剤形が記載されている。
かくして、該投与剤形中のパラセタモールの濃度は、10mg/mL〜500mg/mLの間で変化する。
しかしながら、本出願人は、一方で、パラセタモールの濃度が85mg/mLよりも低い場合には、嚥下反射を引き起こすという点で頬側/歯肉投与と不適合である過剰な体積の溶液を投与する必要があることを発見した。これは、結局、有効成分を経口投与することを意味し、これにより、有効成分は消化器系および肝臓を通過して血流に到達しなければならず、肝臓初回通過代謝として知られている代謝(化学的または生物学的)を受ける。
他方、本出願人は、安定性試験において、パラセタモールの濃度が高過ぎる場合、典型的には125mg/mL以上である場合、パラセタモールが経時的に再結晶することを見出した。加えて、40℃で6か月間の予備安定性試験は濃度が115mg/mLよりも高い場合にはピンク色の外観を示し、これは電気酸化による含水アルコール溶液中のパラセタモールの重合に関連している。
加えて、従来技術の投与剤形においては、含水アルコール溶液のアルコール度は、10°〜70°の間で変化し得る。
しかしながら、本出願人は、エタノールの体積が総体積の60%以上である含水アルコール溶液は粘膜の生理学的不耐性の問題を引き起こす可能性が高いということを発見した。さらにまた、他方、水/エタノール混合物の総体積に対するエタノールの体積百分率が低すぎる場合、典型的には45%未満である場合、パラセタモールが水よりもエタノールの方に容易に溶解する限り、パラセタモールの溶解は損なわれる。
結果的に、本出願人は、先に挙げた種々の落とし穴を避けるパラセタモールの頬側/歯肉投与用新規医薬製剤を開発した。
驚くべきことに、本出願人によって最適化された該医薬製剤は、高い治療効果につながる非常に特異的な物理化学的特性を有している。実際、本発明の製剤におけるパラセタモール分子の収縮が実証されており、頬側粘膜を通過するのに役立っている。加えて、本出願人が開発した該製剤は、従来の製剤、特にペルファルガン(Perfalgan)のような既存の注射用水溶液と比べて非常に高い通過能で血液脳関門を通過するパラセタモール分子の能動輸送を可能にする。これは、中枢神経系へのパラセタモールの送達を標的とすることによりパラセタモールの治療効果を改善するのに役立つ。
したがって、本発明の第1の対象は、溶解パラセタモールを含む含水アルコール溶液からなるパラセタモールの頬側/歯肉投与用医薬製剤であって、
・パラセタモールの質量が95mg〜190mgであり、
・該含水アルコール溶液の体積が1.0mL〜2.0mLであり、
・該含水アルコール溶液のアルコール度が48.5°〜52.5°であり、
・該含水アルコール溶液中のパラセタモールの濃度が85mg/mL〜110mg/mLである、
医薬製剤に関する。
・パラセタモールの質量が95mg〜190mgであり、
・該含水アルコール溶液の体積が1.0mL〜2.0mLであり、
・該含水アルコール溶液のアルコール度が48.5°〜52.5°であり、
・該含水アルコール溶液中のパラセタモールの濃度が85mg/mL〜110mg/mLである、
医薬製剤に関する。
本発明の第2の対象は、パラセタモールによる血液脳関門の通過を促進するために使用するための該医薬製剤に関する。
本発明の第3の対象は、特に疼痛または発熱の対症療法のための、薬物として使用するための該医薬製剤に関する。
定義
本発明の目的のために、「頬側/歯肉」とは、有効成分を口内に投与する薬物投与経路を意味する。それは、頬側粘膜を通って拡散し、血流に直接進入する。吸収のタイプに応じて、舌下(sublinguale)または経舌(perlingual)経路を区別することができる。
本発明の目的のために、「頬側/歯肉」とは、有効成分を口内に投与する薬物投与経路を意味する。それは、頬側粘膜を通って拡散し、血流に直接進入する。吸収のタイプに応じて、舌下(sublinguale)または経舌(perlingual)経路を区別することができる。
本発明の目的のために、「溶解パラセタモール」とは、経時的に完全かつ安定な溶解状態にある、溶媒中で分子状態であって弱くイオン化されており、パラセタモールを意味する。
本発明の目的のために、「血液脳関門」
とは、全ての陸生脊椎動物における脳内で循環血液と中枢神経系(CNS)との間に存在する生理学的関門をいい、血液からCNSを分離することにより脳の恒常性を維持することを可能にする。それは、血液脳関門
または血液髄膜関門とも称される。この関門の必須構成要素は、血流側の毛細血管の内側を覆っており、密着結合により互いに接続しあっている、内皮細胞である。
とは、全ての陸生脊椎動物における脳内で循環血液と中枢神経系(CNS)との間に存在する生理学的関門をいい、血液からCNSを分離することにより脳の恒常性を維持することを可能にする。それは、血液脳関門
または血液髄膜関門とも称される。この関門の必須構成要素は、血流側の毛細血管の内側を覆っており、密着結合により互いに接続しあっている、内皮細胞である。
発明の詳細な説明
本発明は、第一に、溶解パラセタモールを含む含水アルコール溶液からなるパラセタモールの頬側/歯肉投与用医薬製剤であって、
・パラセタモールの質量が95mg〜190mgであり、
・該含水アルコール溶液の体積が1.0mL〜2.0mLであり、
・該含水アルコール溶液のアルコール度が48.5°〜52.5°であり、
・該含水アルコール溶液中のパラセタモールの濃度が85mg/mL〜110mg/mLである、
医薬製剤に関する。
本発明は、第一に、溶解パラセタモールを含む含水アルコール溶液からなるパラセタモールの頬側/歯肉投与用医薬製剤であって、
・パラセタモールの質量が95mg〜190mgであり、
・該含水アルコール溶液の体積が1.0mL〜2.0mLであり、
・該含水アルコール溶液のアルコール度が48.5°〜52.5°であり、
・該含水アルコール溶液中のパラセタモールの濃度が85mg/mL〜110mg/mLである、
医薬製剤に関する。
有利には、パラセタモールの質量は、120mg〜170mgであり、典型的には125mg〜165mgであり、特に125mgまたは165mgに等しい。
好ましくは、含水アルコール溶液の体積は、1.2mL〜1.7mLであり、典型的には1.25mL〜1.65mLであり、特に1.25mLまたは1.65mLに等しい。
有利には、該含水アルコール溶液中のパラセタモールの濃度は、90mg/mL〜105mg/mLであり、好ましくは、95mg/mL〜105mg/mLであり、特に100mg/mLに等しい。
好ましくは、含水アルコール溶液は、エタノールの体積が該含水アルコール溶液の総体積の45%〜60%であり、有利には48.5%〜52.5%であり、典型的には50%である、水/エタノール混合物からなる。
本発明の文脈において、「エタノール」とは、水およびエタノールからなり、96体積%〜99.8体積%のエタノール、有利には96体積%のエタノールを含有する、市販の二成分溶液をいう。
有利には:
・パラセタモールの質量は、120mg〜170mgであり、典型的には125mg〜165mgであり、
・含水アルコール溶液の体積は、1.2mL〜1.7mLであり、典型的には1.25mL〜1.65mLであり、
・含水アルコール溶液は、エタノールの体積が該含水アルコール溶液の総体積の50%の間である水/エタノール混合物からなる。
・パラセタモールの質量は、120mg〜170mgであり、典型的には125mg〜165mgであり、
・含水アルコール溶液の体積は、1.2mL〜1.7mLであり、典型的には1.25mL〜1.65mLであり、
・含水アルコール溶液は、エタノールの体積が該含水アルコール溶液の総体積の50%の間である水/エタノール混合物からなる。
第一の特定の実施態様において、
・パラセタモールの質量は、125mgに等しく、
・含水アルコール溶液の体積は、1.25mLに等しく、
・含水アルコール溶液は、エタノールの体積が該含水アルコール溶液の総体積の50%である水/エタノール混合物からなる。
・パラセタモールの質量は、125mgに等しく、
・含水アルコール溶液の体積は、1.25mLに等しく、
・含水アルコール溶液は、エタノールの体積が該含水アルコール溶液の総体積の50%である水/エタノール混合物からなる。
第二の特定の実施態様において、
・パラセタモールの質量は、165mgであり、
・含水アルコール溶液の体積は、1.65mLであり、
・含水アルコール溶液は、エタノールの体積が該含水アルコール溶液の総体積の50% である水/エタノール混合物からなる。
・パラセタモールの質量は、165mgであり、
・含水アルコール溶液の体積は、1.65mLであり、
・含水アルコール溶液は、エタノールの体積が該含水アルコール溶液の総体積の50% である水/エタノール混合物からなる。
好ましくは、含水アルコール溶液の粘度は、1.5・10-3Pa・sよりも大きい。
有利には、上記定義の含水アルコール溶液に溶解したパラセタモールの40℃での流体力学的半径は、2.1Å未満である。
本発明の目的のために、「流体力学的半径」またはRHとは、溶質が下記のストークス−アインシュタイン(Stokes-Einstein)関係式によって定義されるように球状であると仮定して、溶液中の溶質の半径を意味する[Edward, J. T. (1970) J. Chem. Educ. 47, 261;Einstein, A. (1905) Annalen Der Physik 17, 549-560;Einstein, A. (1906) Annalen Der Physik 19, 371-381]:
式中、
・Dは、溶媒中の溶質の拡散係数であり(m2・s-1で表される)、
・kBは、ボルツマン定数であり、kB=1.3806・10-23 J・K-1であり、
・Tは、培地の温度であり(Kで表される)、
・ρは、培地の粘度であり(Pa・sで表されるか、またはkg・s-1・m-1と等価である)、
・RHはmで表される。
・Dは、溶媒中の溶質の拡散係数であり(m2・s-1で表される)、
・kBは、ボルツマン定数であり、kB=1.3806・10-23 J・K-1であり、
・Tは、培地の温度であり(Kで表される)、
・ρは、培地の粘度であり(Pa・sで表されるか、またはkg・s-1・m-1と等価である)、
・RHはmで表される。
かくして、球状とみなされる分子の溶液における拡散係数の測定により、該分子のサイズ、より正確にはその流体力学的半径を決定することが可能となる。
特定の実施態様において、含水アルコール溶液は、香味剤および/または甘味剤を含む。
本発明の目的のために、「香味剤および/または甘味剤」とは、医薬製剤の投与を受ける患者によって知覚される味をより快適にする薬学的に許容される物質であると定義される。
「薬学的に許容される」とは、一般的に安全であり、非毒性であり、生物学的にもその他の点でも望ましくなくはなく、獣医およびヒトのどちらの薬学的使用にも許容されるものを意味する。
特定の実施態様において、含水アルコール溶液は、パラセタモール以外の有効成分を少なくとも1種類含有する。
特に、含水アルコール溶液への溶解に適合する、気道、副鼻腔、鼻(rhino)および中咽頭経路のための鎮痛剤、鬱血除去剤、鎮静剤であるアジュバントを提供することができる親油性物質を、パラセタモールと組み合わせることができる。特に、パラセタモールは、プソイドエフェドリン、トリプロリジン、プロメタジン、フェニラミン、メクリジン、ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、シプロヘプタジン、デキストロプロポキシフェン
および/またはコデインと組み合わせることができる。
および/またはコデインと組み合わせることができる。
加えて、本発明は、また、パラセタモールによる血液脳関門の通過を促進するのに使用するための上記で定義された医薬製剤にも関する。
最後に、本発明は、また、特に疼痛(典型的には軽度から中等度)および/または発熱の処置のための薬物として使用するための上記で定義された医薬製剤にも関する。
本発明の医薬製剤は、0.5〜3mLの単回投与パッケージにパッケージ化されてもよく、該パッケージは、その表面でのパラセタモールの吸着を制限しなければならず、含水アルコール溶液に対して不浸透でなければならず、溶液の安定性を保証しなければならず、一方では、医薬製剤の下顎前庭への完全な送達を可能にする。
下記の略語が使用されている:
1.パラセタモールの流体力学的半径に対する含水アルコール溶液の希釈の影響
・材料および方法
・材料
A.パラセタモール溶液
− U95: 水/エタノール混合物(50/50 v/v)中95mg/mlパラセタモール溶液(C=628mM)、および
− パーファルガン: 幼児および小児用の市販の10mg/mLパラセタモール溶液+賦形剤(C=66mM)。
A.パラセタモール溶液
− U95: 水/エタノール混合物(50/50 v/v)中95mg/mlパラセタモール溶液(C=628mM)、および
− パーファルガン: 幼児および小児用の市販の10mg/mLパラセタモール溶液+賦形剤(C=66mM)。
B.参照
− エタノール(ロットMPA1003583): 10mLバイアル、
− パラセタモール粉末(ロットMPA10031465): 1g(M=151.16g/mol)、
− 重水(D2O): Eurisotop(Groupe CEA, Saclay)から購入、
− 生理食塩水(Gilbert Laboratoires): 5mL投与単位中0.9g/100mL(C=154mM)の塩化ナトリウムを含有する水溶液、および
− Milli−Q水、Millipore(Molsheim, France)からの濾過および逆浸透システムを用いて生成。
− エタノール(ロットMPA1003583): 10mLバイアル、
− パラセタモール粉末(ロットMPA10031465): 1g(M=151.16g/mol)、
− 重水(D2O): Eurisotop(Groupe CEA, Saclay)から購入、
− 生理食塩水(Gilbert Laboratoires): 5mL投与単位中0.9g/100mL(C=154mM)の塩化ナトリウムを含有する水溶液、および
− Milli−Q水、Millipore(Molsheim, France)からの濾過および逆浸透システムを用いて生成。
・試料の調製
液体のNMR分析のために、下記の試料を調製し、5mm径のNMRガラス管または4mm径のジルコニアローター(Cortecnet, France)に入れた。少量の重水(D2O)を加えて、収集中の空間的および時間的な均一性を確保する。
− EU−95: U95 450μL+D2O 50μL(C=565mM、xE=0.236)、
− EU−95−30: U95 500μL+生理食塩水215μL+D2O 70μL(C=400mM、xE=0.141)、
− EU−95−50: U95 250μL+生理食塩水250μL+D2O 50μL(C=285mM、xE=0.092)、
− EU−95−80: U95 250μL+生理食塩水1250μL+D2O 150μL(C=95mM、xE=0.033)、
− REF−生理食塩水: 生理食塩水450μL+D2O 50μL(CNaCl=138mM、xE=0.0)、
− REF: EtOH 250μL+Milli−Q水250μL+D2O 50μL(C=6.9M、xE=0.236)、
− REF−30: EtOH 250μL+Milli−Q水250μL+生理食塩水215μL+D2O 70μL(C=4.8M、xE=0.141)、
− REF−50: EtOH 125μL+Milli−Q水125μL+生理食塩水215μL+D2O 50μL(C=3.7M、xE=0.092)、
− REF−80: EtOH 125μl+Milli−Q水125μL+生理食塩水1250μL+D2O 150μL(C=1.14M、xE=0.033)、
− REF−EtOH: EtOH 450μL(C=13.6M、xE=0.999)、
− PERF: パーファルガン450μL+D2O 50μL(C=59mM、xE=0.0)、および
− PARA−125: パラセタモール粉末56mg+EtOH 500μL+D2O 50μL(C=673mM、xE=0.735)。
液体のNMR分析のために、下記の試料を調製し、5mm径のNMRガラス管または4mm径のジルコニアローター(Cortecnet, France)に入れた。少量の重水(D2O)を加えて、収集中の空間的および時間的な均一性を確保する。
− EU−95: U95 450μL+D2O 50μL(C=565mM、xE=0.236)、
− EU−95−30: U95 500μL+生理食塩水215μL+D2O 70μL(C=400mM、xE=0.141)、
− EU−95−50: U95 250μL+生理食塩水250μL+D2O 50μL(C=285mM、xE=0.092)、
− EU−95−80: U95 250μL+生理食塩水1250μL+D2O 150μL(C=95mM、xE=0.033)、
− REF−生理食塩水: 生理食塩水450μL+D2O 50μL(CNaCl=138mM、xE=0.0)、
− REF: EtOH 250μL+Milli−Q水250μL+D2O 50μL(C=6.9M、xE=0.236)、
− REF−30: EtOH 250μL+Milli−Q水250μL+生理食塩水215μL+D2O 70μL(C=4.8M、xE=0.141)、
− REF−50: EtOH 125μL+Milli−Q水125μL+生理食塩水215μL+D2O 50μL(C=3.7M、xE=0.092)、
− REF−80: EtOH 125μl+Milli−Q水125μL+生理食塩水1250μL+D2O 150μL(C=1.14M、xE=0.033)、
− REF−EtOH: EtOH 450μL(C=13.6M、xE=0.999)、
− PERF: パーファルガン450μL+D2O 50μL(C=59mM、xE=0.0)、および
− PARA−125: パラセタモール粉末56mg+EtOH 500μL+D2O 50μL(C=673mM、xE=0.735)。
・方法
静的モードで操作するQNP SB 1H/19F−13C−31Pプローブを装備したBruker SB 400MHz NMR分光計(Wissembourg, France)を使用して、液体プロトンNMR分析を行った。
静的モードで操作するQNP SB 1H/19F−13C−31Pプローブを装備したBruker SB 400MHz NMR分光計(Wissembourg, France)を使用して、液体プロトンNMR分析を行った。
2D 1H−NMRにおいて、使用したシーケンスは、+0.5℃の温度調整を有するDOSYパルスシーケンス [Morris, K. F., and Johnson, C. S. (1993) J. Am. Chem. Soc. 115, 4291-4299](Z勾配のスピンエコーシーケンス)である。90°パルスは15μ秒であり、リサイクリング時間は5秒であり、収集の数は、1時間の合計収集時間で、勾配について16増分で、48である。信号は、F2次元のフーリエ変換(1H化学シフト)の前に、定数2Hzの減少指数関数でフィルタリングされる。逆ラプラス変換は、F1次元で実行され、拡散係数を直接与える。
NMRスペクトル処理に使用されるソフトウェアは、Brukerが開発したTopspin 2.0である。
・結果
・前置き
溶液中の分子のサイズは、溶液中の種の拡散係数を測定するためにいわゆる拡散実験を使用する液体NMRによって推定することができる。該実験は、粒子の拡散が測定される方向である所定の方向に磁場勾配を適用することにより行われる。
溶液中の分子のサイズは、溶液中の種の拡散係数を測定するためにいわゆる拡散実験を使用する液体NMRによって推定することができる。該実験は、粒子の拡散が測定される方向である所定の方向に磁場勾配を適用することにより行われる。
このタイプの実験に続いて2つの処理が可能である。ピークごとの分析は、NMRピークの強度の変動を該磁場勾配の関数として非常に正確に設定することにより行われ得る(図1A)。唯一の調整変数が拡散係数である場合、すでに記載されているストークス−アインシュタインの式を使用して溶液中の種のサイズを得ることは容易である。2次元マップ(2D−NMR)で拡散/化学シフトを得るためにラプラス変換を適用することもでき、該拡散係数はy軸に沿って直接測定可能である(図1B)。
・参照試料の拡散係数の測定
水、エタノール、パーファルガン、およびエタノールに溶解したパラセタモールについてDOSY実験を行った。
水、エタノール、パーファルガン、およびエタノールに溶解したパラセタモールについてDOSY実験を行った。
拡散係数の測定には、NMR共鳴、通常、単離されたCH3が選択され、これはより高い精度を提供するためである。この場合、精度は±0.1・10-9m2・s-1と推定される。
決定された種々の化合物の拡散係数の値を下記の表1に示す。この表は、文献[Khattab, I. S., Bandarkar, F., Fakhree, M. A. A., and Jouyban, A. (2012) Korean J. Chem. Eng. 29, 812-817]から得られる粘度値、エタノールのモル分率、およびストークス−アインシュタイン式から算出された流体力学的半径も包含する。このようにして算出された値の精度は±0.1Åと推定される。
・水(生理食塩水)による希釈中の水−EtOH溶液の拡散係数の測定
参照試料についての実験から、分子のサイズは、溶媒に非常に強く依存して、試料ごとに異なると考えられる:例えば、パラセタモールは、パーファルガン試料中ではRHが2.8Åであり、エタノール中ではRHが4.2Åである。
参照試料についての実験から、分子のサイズは、溶媒に非常に強く依存して、試料ごとに異なると考えられる:例えば、パラセタモールは、パーファルガン試料中ではRHが2.8Åであり、エタノール中ではRHが4.2Åである。
ここでは該試料の粘度および複雑な水和現象が関係している。研究において、特に希釈研究中に、種々の溶媒中の分子サイズをモニターすることが重要である。
したがって、水による希釈の効果を評価するために、参照溶液(REF−生理食塩水、REF、REF−30、REF−50、REF−80およびREF−EtOH)をDOSY実験に供した。
25℃および40℃で得られた結果をそれぞれ図2Aおよび図2Bに示す。
かかる結果からいくつかの結論を引き出すことができる。
粘度は、EtOH/水のモル分率が25℃では0.3(60/40 v/v)に近くて40℃では0.2(50/50 v/v)に近い場合に最大である。これは、注目に値し、最大粘度が純粋な水または純粋なエタノールよりも2〜3倍高いことを示している。
水およびエタノールについて算出した流体力学的半径はまた、特定の挙動を有する。エタノールは、25℃において半径が1.5Åであるが、純粋な形態および高度に希釈された形態のどちらにおいても0.05〜0.1のxEに対して最小(0.8Å)である。水は、同様に挙動する。この現象は、すでに文献[Price, W. S., Ide, H., and Arata, Y. (2003) The Journal of Physical Chemistry A 107, 4784-4789;Codling, D. J., Zheng, G., Stait-Gardner, T., Yang, S., Nilsson, M., and Price, W. S. (2013) The Journal of Physical Chemistry B 117, 2734-2741]に見られており、水またはエタノールの純粋な溶液について見られる水−水会合またはエタノール−エタノール会合が混合物において破壊されることによって説明される。
40℃における粘度およびRHは25℃の場合よりも低く、これは温度の影響を反映している: ブラウン運動は水素結合を破壊する傾向があり、これは水およびエタノールが一緒に形成することができる全ての双極子−双極子会合を破壊する効果を有する。
興味深いことに、試料EU−95はエタノールのモル分率が0.236であり、すなわち、その領域では粘度が最大である。
・水(生理食塩水)で希釈した場合または同じ含水アルコール媒体中のパラセタモールの濃度が低下した場合の水−EtOH−パラセタモール溶液の拡散係数の測定
種々の希釈条件下でパラセタモールを含有する溶液(EU−95、EU−95−30、EU−95−50およびEU−95−80)もまたDOSY実験に供した。これらの溶液は、それぞれ、0.236、0.141、0.092および0.033のxE値に対応し、図2Aおよび図2Bにおける網掛け部分を定義する。25℃および40℃で得られた結果を下記の表2にまとめ、それぞれ、図3Aおよび図3Bに報告する。
種々の希釈条件下でパラセタモールを含有する溶液(EU−95、EU−95−30、EU−95−50およびEU−95−80)もまたDOSY実験に供した。これらの溶液は、それぞれ、0.236、0.141、0.092および0.033のxE値に対応し、図2Aおよび図2Bにおける網掛け部分を定義する。25℃および40℃で得られた結果を下記の表2にまとめ、それぞれ、図3Aおよび図3Bに報告する。
ヒトの体温に最も近い温度である40℃において、U95の非希釈試料(EU−95)の場合にパラセタモールの最小の流体力学的半径(1.9Å)が得られる。温度の上昇による影響をほとんど受けないパーファルガン中のパラセタモールの値(2.5Å)とは異なる。
・結論
含水アルコール溶液は特定の巨視的および分子的側面によって区別され、該溶液に溶解したパラセタモール分子は顕著な特性を有する。
水は純粋な水素結合のネットワークを形成し、エタノールは純粋なアルコール−アルコール会合を形成する。水中のアルコール含有量が非常に低いと、水/エタノール会合が生じる。エタノール含有量がより高い場合には、会合の破壊が起こり、分子は混合物中で互いに単離されて個々に行動する。
同時に、溶液の粘度は、上昇して、EtOH/水のモル分率が25℃では0.3(60/40 v/v)に近くて40℃では0.2(50/50 v/v)に近い場合に最大に達し、これは、純粋な水または純粋なエタノールよりも2〜3倍高い粘度に相当する。
サブナノメートルスケールサイズの測定(DOSY NMR拡散実験)により、パラセタモール分子の変動が明らかになる。
50/50(v/v)の範囲の水−エタノール混合物の特定の組成により、特にヒトの体温に最も近い40℃で、パラセタモールが最小サイズとなる。これは、分子をよりステルシーにし、該分子の疎水特性を高め、疎水性でもある膜バリアを該分子が通過するのを助ける、分子の濡れが弱いことにより解釈できる。
パラセタモール分子の収縮、そのステルス性は、調製物の高粘度および既知であるがほとんど特徴付けられていない現象であるエタノールによる生体膜の流動化効果と合わせて、頬側/歯肉投与における発明に従って医薬製剤の有効性に寄与する。
2.血液脳関門を通過するパラセタモールの輸送
・材料および方法
・材料
A.パラセタモール溶液
− U95: 水/エタノール混合物(50/50 v/v)中95mg/mlパラセタモール溶液(C=628mM)、および
− パーファルガン: 幼児および小児用の市販の10mg/mLパラセタモール溶液+賦形剤(C=66mM)。
A.パラセタモール溶液
− U95: 水/エタノール混合物(50/50 v/v)中95mg/mlパラセタモール溶液(C=628mM)、および
− パーファルガン: 幼児および小児用の市販の10mg/mLパラセタモール溶液+賦形剤(C=66mM)。
B.血液脳関門の細胞モデル
文献において、hCMEC/D3細胞株が、血液脳関門の構成要素を模倣している、血液脳関門の関連するインビトロモデルを構成し得ることが従前に確立されている[Weksler et al., FASEB J. 2005 Nov;19(13):1872'4. Epub 2005 Sep 1;Weksler et al., Fluids Barriers CNS. 2013 Mar 26;10(1):16. doi: 10.1186/2045'8118'10'1]。
文献において、hCMEC/D3細胞株が、血液脳関門の構成要素を模倣している、血液脳関門の関連するインビトロモデルを構成し得ることが従前に確立されている[Weksler et al., FASEB J. 2005 Nov;19(13):1872'4. Epub 2005 Sep 1;Weksler et al., Fluids Barriers CNS. 2013 Mar 26;10(1):16. doi: 10.1186/2045'8118'10'1]。
該細胞をまず細胞培養バイアル中にて培養し(保存培養物からの凍結細胞を解凍した後、3継代培養)、次いで、図4に記載のトランスウェルシステムに播種した。
それらが、トランスウェルシステムにおいて14日間培養した後に得られるコンフルエンスに達すると、該細胞は、血液脳関門形成に特徴的なタンパク質、すなわち、ZO1、オクルディン、ファロイジンおよびCD31を発現する。
次いで、このように模倣された該関門の透過性を、ルシファーイエローを使用して決定する。この場合、ルシファーイエローは、該関門を通過することができない。
C.培養培地
培養培地の組成を下記の表3に示す:
培養培地の組成を下記の表3に示す:
D.HPLC
培養培地およびサンプリングプロトコルを考慮して、上記のインビトロ血液脳関門モデルを通過するパラセタモールの定量化を可能にする特定のHPLC法を開発した。
培養培地およびサンプリングプロトコルを考慮して、上記のインビトロ血液脳関門モデルを通過するパラセタモールの定量化を可能にする特定のHPLC法を開発した。
使用した装置は、Thermo Fisher(Courtaboeuf, France)からの、P4000ポンプ、50mm光路を備えた6000LP UV検出器、100μLループを備えたAS 3000オートサンプラー、およびSN 4000 System Controllerで構成されている。使用した収集ソフトウェアはChromQuest 5.0である。
開発した方法は、以下の特徴に基づいている:
カラム: XTerra RP18 20*4.6mm*3.5μm、
UV検出器: 242nm、
流速: 1mL/分、
カラム温度: 35℃、
注入体積: 10μL、および
移動相: 0.02MおよびpH4のギ酸アンモニウム緩衝液。
カラム: XTerra RP18 20*4.6mm*3.5μm、
UV検出器: 242nm、
流速: 1mL/分、
カラム温度: 35℃、
注入体積: 10μL、および
移動相: 0.02MおよびpH4のギ酸アンモニウム緩衝液。
・方法
様々なステップを含む以下のサンプリングプロトコルを確立した:
a)図4に記載のトランスウェルシステムの上部コンパートメントにU95 10μLを堆積すること、
b)下部コンパートメントから1000μLを取り出すこと、
c)10%トリクロロ酢酸溶液200μLを添加することによりタンパク質を沈殿させること、
d)3000rpmで10分間遠心分離すること、
e)移動相を使用して1/10に希釈すること、
f)0.22μm PTFEフィルターを使用して濾過すること、
g)HPLCに10μLを注入すること、
h)パラセタモールを定量化すること。
様々なステップを含む以下のサンプリングプロトコルを確立した:
a)図4に記載のトランスウェルシステムの上部コンパートメントにU95 10μLを堆積すること、
b)下部コンパートメントから1000μLを取り出すこと、
c)10%トリクロロ酢酸溶液200μLを添加することによりタンパク質を沈殿させること、
d)3000rpmで10分間遠心分離すること、
e)移動相を使用して1/10に希釈すること、
f)0.22μm PTFEフィルターを使用して濾過すること、
g)HPLCに10μLを注入すること、
h)パラセタモールを定量化すること。
・結果
・パラセタモール「U95」対パラセタモール「パーファルガン」による血液脳関門通過の比較
「U95」溶液に含まれるパラセタモールとパーファルガンに含まれるパラセタモールの両方について、血液脳関門膜のインビトロモデルを通るパラセタモールのフローを測定した。
「U95」溶液に含まれるパラセタモールとパーファルガンに含まれるパラセタモールの両方について、血液脳関門膜のインビトロモデルを通るパラセタモールのフローを測定した。
同一濃度のパラセタモールを得るために、第1のケースでは、トランスウェルシステムの管腔コンパートメントにU95溶液10μLおよび培養培地85μLを加え、第2のケースでは、パーファルガン95μLを使用した。
培養培地中の血清の存在下(5%)および血清の非存在下において37℃で各化合物の通過を研究した。
細胞を、37℃で20〜22時間培養した後、測定を行った。
このようにして測定したフローを図5に報告している。
血清の存在下または非存在下でのパラセタモール「U95」のフロー(それぞれ、曲線USおよびU)は経時的にほぼ一定であり、非常に急速に減少するパラセタモール「パーファルガン」のフローよりも有意に高いことが分かる。
図5において、血液脳関門膜のインビトロモデルを通過するパラセタモール「U95」の輸送は、最初の30分間、血清の存在下でより高くなることにも注目する。
したがって、パラセタモール「U95」の輸送に対する血清の影響を決定するために、さらなる実験を行った。
・血清の存在下でのパラセタモール「U95」の輸送
細胞培地中の血清含有量が0%、5%、20%および50%の場合のパラセタモール「U95」の反管腔側濃度の経時的変化を測定した。
細胞培地中の血清含有量が0%、5%、20%および50%の場合のパラセタモール「U95」の反管腔側濃度の経時的変化を測定した。
得られた結果を図6に報告している。
図6に示されているパラセタモールの反管腔側濃度の値が、HPLC定量化によって得られる生の値に対応していることに注目すべきである。HPLCでは希釈が行われるため、それらは、実際の値と一致させるためには12倍すべきである。
血液脳関門膜のインビトロモデルを通過するパラセタモール「U95」の輸送が培養培地中の血清の存在によって増強されることが分かる。存在する血清の量とバリアを通過するパラセタモールの量との間には比例関係があるようにさえ考えられる。
他方、このような血清の有無の影響は、パラセタモール「パーファルガン」の場合には見られない。
実際、細胞培地中の血清含有量が0%、5%、20%および50%の場合のパラセタモール「パーファルガン」の反管腔側濃度の経時的変化を測定した。
得られた結果は図7に報告されている。
血液脳関門膜のインビトロモデルを通過するパラセタモール「パーファルガン」の輸送が、30分以降、血清の存在下であまり好ましくないことが分かる。
・結論
上記の結果は、血清溶液の少なくとも1つの成分が関与している、本発明の医薬製剤に含まれるパラセタモールの能動輸送を示している。
上記の結果は、血清溶液の少なくとも1つの成分が関与している、本発明の医薬製剤に含まれるパラセタモールの能動輸送を示している。
Claims (7)
- 溶解パラセタモールを含む含水アルコール溶液からなる、パラセタモールの頬側/歯肉投与用医薬製剤であって、
パラセタモールの質量が95mg〜190mgであり、
該含水アルコール溶液の体積が1.0mL〜2.0mLであり、
該含水アルコール溶液のアルコール度が48.5°〜52.5°であり、
該含水アルコール溶液中のパラセタモールの濃度が85mg/mL〜110mg/mLである、
医薬製剤。 - 含水アルコール溶液が水/エタノール混合物からなり、ここで、エタノールの体積が該含水アルコール溶液の総体積の50%である、請求項1記載の医薬製剤。
- 含水アルコール溶液の粘度が1.5・10-3Pa・sよりも大きい、請求項1および2のいずれか1項記載の医薬製剤。
- 40℃におけるパラセタモールの流体力学的半径が2.1Åよりも小さい、請求項1〜3いずれか1項記載の医薬製剤。
- 含水アルコール溶液が香味剤および/または甘味剤を含む、請求項1〜4いずれか1項記載の医薬製剤。
- パラセタモールによる血液脳関門の通過を促進するために用いるための、請求項1〜5いずれか1項記載の医薬製剤。
- 疼痛および/または発熱の処置のための薬物として用いるための、請求項1〜5いずれか1項記載の医薬製剤。
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