JP2020500511A - 操作されたtgfベータ単量体およびtgfベータシグナル伝達のためのそれらの使用 - Google Patents

操作されたtgfベータ単量体およびtgfベータシグナル伝達のためのそれらの使用 Download PDF

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Abstract

二量体化を阻害し、TGF−βシグナル伝達を遮断するように修飾された組換えトランスフォーミング増殖因子(TGF)−β単量体が記載される。組換えTGF−β単量体は、TGF−βI型受容体(TβM)に結合しそれを動員する能力に欠けるが、高親和性TGF−βII型受容体(TβMI)に結合する能力を保持し、場合によっては、TβMIに対するその親和性を高める変異を含む。組換えTGF−β単量体をコードする核酸分子およびベクターもまた記載される。T細胞などの単離された細胞は、単量体を分泌するようにTGF−β単量体コード核酸またはベクターで再プログラム化することができる。TGF−βシグナル伝達を阻害するための、例えば、異常なTGF−βシグナル伝達に関連する障害を処置するための、組換えTGF−β単量体および/または組換えTGF−β単量体を産生する細胞の使用もまた記載される。

Description

関連出願への相互参照
本出願は、2016年11月18日に出願された米国仮出願番号第62/423,920号の利益を主張しており、この仮出願は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
分野
本開示は、高親和性TGF−βII型受容体(TβRII)に結合する能力を保持しながら二量体化を阻害するように修飾された、組換えトランスフォーミング増殖因子(TGF)−β単量体に関する。本開示はさらに、TGF−βシグナル伝達を阻害する組換えTGF−β単量体の使用に関する。
政府支援の承認
本発明は、米国国立衛生研究所により授与された助成金番号GM058670の政府支援によりなされた。政府は、本発明に特定の権利を有する。
背景
TGF−βは、細胞増殖、遊走、分化、およびアポトーシスを含む細胞プロセスに対して多様な生物学的影響を有する多機能性サイトカインである。3つの哺乳動物TGF−βアイソフォーム、TGF−β1、−β2および−β3は、I型(TβRI)およびII型(TβRII)セリン/スレオニンキナーゼ受容体から構成される細胞表面受容体複合体を通じてその機能を発揮する。受容体活性化は、SMADタンパク質、ならびにRas、RhoA、TAK1、MEKK1、PI3K、およびPP2Aを含む他の下流の標的の両方を誘導して、全面的なTGF−β応答をもたらす(RobertsおよびWakefield、Proc Natl Acad Sci USA 100巻:8621〜8623頁、2003年;DerynckおよびZhang、Nature 425巻:577〜584頁、2003年;Massague、Cell 134巻:215〜230頁、2008年)。
TGF−βタンパク質は、線維性障害および特定のタイプのがんの進行を促進することが公知である。線維性障害との関連において、TGF−βは、細胞外基質(ECM)タンパク質の発現を強力に刺激する。ECMリモデリングの調節不全は、病理学的線維症につながり得る。がんにおけるTGF−βの役割は多面的である。TGF−βアイソフォーム、TGF−β1、−β2および−β3はまた、宿主の免疫監視を抑制し、上皮間葉転換を刺激し、がんの進行および転移を亢進することも公知である。
RobertsおよびWakefield、Proc Natl Acad Sci USA 100巻:8621〜8623頁、2003年 DerynckおよびZhang、Nature 425巻:577〜584頁、2003年 Massague、Cell 134巻:215〜230頁、2008年
要旨
本明細書に記載されるのは、TGF−βシグナル伝達を遮断することができる操作されたTGF−β単量体である。操作された単量体は、TGF−β二量体化およびTβRIの動員を妨げることによりTGF−βシグナル伝達を阻害する。
本明細書で提供されるのは、アミノ酸残基77におけるシステインからセリンへの置換;アミノ酸残基52〜71の欠失;および単量体の正味電荷を増加させる少なくとも1個のアミノ酸置換を含む組換えTGF−β単量体である。いくつかの実施形態において、TGF−β単量体は、TGF−βII型受容体(TβRII)に対するTGF−β単量体の親和性を高める少なくとも1個のアミノ酸置換をさらに含む。TGF−β単量体は、例えば、TGF−β2、TGF−β1またはTGF−β3単量体、例えば、ヒト、ラット、マウスまたは他の哺乳動物TGF−β2、TGF−β1またはTGF−β3単量体であってもよい。
TGF−β単量体および異種タンパク質を含む融合タンパク質も提供される。さらに提供されるのは、本明細書に開示された組換えTGF−β単量体または融合タンパク質、および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む組成物である。
さらに提供されるのは、細胞を、本明細書に開示された組換えTGF−β単量体、融合タンパク質または組成物と接触させることにより、細胞におけるTGF−βシグナル伝達を阻害する方法である。いくつかの実施形態において、方法はin vitro方法である。他の実施形態において、方法は、組換えTGF−β単量体、融合タンパク質または組成物を、異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害を有する対象に投与することを含むin vivo方法である。
また、提供されるのは、本明細書に開示された組換えTGF−β単量体をコードする核酸分子およびベクターである。さらに提供されるのは、組換えTGF−β単量体コード核酸分子またはベクターを含む、単離されたTリンパ球などの単離された細胞である。
開示された核酸またはベクターを含む単離された細胞(T細胞など)を対象に投与することにより、対象における異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害を処置する方法が、さらに提供される。
本発明の前述のおよび他の目的、特徴、および利点は、添付図面を参照して進められる以下の詳細な記述からより明らかになるであろう。
図1A〜1F:TGF−βシグナル伝達複合体の構造および界面のα−ヘリックスを欠く操作されたTGF−βバリアントの配列。(図1A)ヒトTGF−β3ホモ二量体と、ヒトTGF−βI型およびII型受容体(TβRIおよびTβRII(PDB 2PJY))の細胞外リガンド結合ドメインとの間で形成されるTGF−βシグナル伝達複合体を示す模式図(Groppeら、Mol Cell 29巻、157〜168頁、2008年)。TGF−β単量体を連結する単一鎖間ジスルフィドを含むジスルフィド結合を示す。3−1/2回転α−ヘリックス(α3)によって形成されるヒールおよび各単量体を安定させるシスチンノットから伸長するβ鎖によって形成される4つのフィンガーとともに、TGF−β単量体をカールする左手として示す。(図1B)1つのTGF−β3単量体のヒールα−ヘリックスから突出する疎水性残基と、対向するTGF−β3単量体のパーム領域からの疎水性残基とにより形成されるパッキング相互作用を示す拡大図。(図1C)TGF−β3およびTβRIIの両方の単量体によって形成されるコンポジット界面でTβRIを安定化させるイオン、水素結合および疎水的相互作用を示す拡大図。(図1D)鎖間のジスルフィド結合を通常は形成するCys77がセリンにより置換された単量体バリアント(mTGF−β2およびmTGF−β3)、または、Cys77がセリンにより置換され、残基52〜71が削除され、また2つまたは3つのさらなる残基が置換されたミニ単量体バリアント(mmTGF−β1、mmTGF−β2およびmmTGF−β3)を有するTGF−β1、−β2、および−β3の配列アラインメント。pH7.0における対応する単量体の正味電荷の計算値を右側に示す。(図1E)TβRII結合領域のTGF−β1、−β3、−β2、mmTGF−β2およびmmTGF−β2−7Mの配列アラインメント。TβRII結合界面の残基を陰影によって示す。mmTGF−β2と比較してmmTGF−β2−7Mにおいて置換される残基がボックスによって示され、K25R、I92VおよびN94Rを含むが、これらは高親和性でのTβRII結合に必要十分なことが過去に示されている(Baardsnesら、Biochemistry 48巻:2146〜2155頁、2009年;De Crescenzoら、J Mol Biol 355巻:47〜62頁、2006年)。(図1F)TGF−β3とTβRIIとの間の界面。 図1A〜1F:TGF−βシグナル伝達複合体の構造および界面のα−ヘリックスを欠く操作されたTGF−βバリアントの配列。(図1A)ヒトTGF−β3ホモ二量体と、ヒトTGF−βI型およびII型受容体(TβRIおよびTβRII(PDB 2PJY))の細胞外リガンド結合ドメインとの間で形成されるTGF−βシグナル伝達複合体を示す模式図(Groppeら、Mol Cell 29巻、157〜168頁、2008年)。TGF−β単量体を連結する単一鎖間ジスルフィドを含むジスルフィド結合を示す。3−1/2回転α−ヘリックス(α3)によって形成されるヒールおよび各単量体を安定させるシスチンノットから伸長するβ鎖によって形成される4つのフィンガーとともに、TGF−β単量体をカールする左手として示す。(図1B)1つのTGF−β3単量体のヒールα−ヘリックスから突出する疎水性残基と、対向するTGF−β3単量体のパーム領域からの疎水性残基とにより形成されるパッキング相互作用を示す拡大図。(図1C)TGF−β3およびTβRIIの両方の単量体によって形成されるコンポジット界面でTβRIを安定化させるイオン、水素結合および疎水的相互作用を示す拡大図。(図1D)鎖間のジスルフィド結合を通常は形成するCys77がセリンにより置換された単量体バリアント(mTGF−β2およびmTGF−β3)、または、Cys77がセリンにより置換され、残基52〜71が削除され、また2つまたは3つのさらなる残基が置換されたミニ単量体バリアント(mmTGF−β1、mmTGF−β2およびmmTGF−β3)を有するTGF−β1、−β2、および−β3の配列アラインメント。pH7.0における対応する単量体の正味電荷の計算値を右側に示す。(図1E)TβRII結合領域のTGF−β1、−β3、−β2、mmTGF−β2およびmmTGF−β2−7Mの配列アラインメント。TβRII結合界面の残基を陰影によって示す。mmTGF−β2と比較してmmTGF−β2−7Mにおいて置換される残基がボックスによって示され、K25R、I92VおよびN94Rを含むが、これらは高親和性でのTβRII結合に必要十分なことが過去に示されている(Baardsnesら、Biochemistry 48巻:2146〜2155頁、2009年;De Crescenzoら、J Mol Biol 355巻:47〜62頁、2006年)。(図1F)TGF−β3とTβRIIとの間の界面。 図2A〜2D:mmTGF−β2の構造。(図2A)10mMのリン酸ナトリウム、10mMのCHAPS、5%の2HO、pH4.70、37℃、800MHzにおいて記録した、mmTGF−β2の割り当てられたH−15N HSQCスペクトル。割り当てられたバックボーンアミドシグナルを、それらの残基番号および1文字アミノ酸コードによって示す。(図2B)1.8ÅのmmTGF−β2の結晶構造と、1.8ÅのTGF−β2(PDB 2TGI)の結晶構造からの1つの単量体との重なり。TGF−β2のパーム(α3)ヘリックスに代わるmmTGF−β2の操作されたループとともに、大きな構造的特徴を示す。(図2C)結晶学的非対称ユニットからの2つのmmTGF−β2鎖(鎖AおよびB)の重なり。他の詳細は図2Bのとおり。(図2D)図2BのmmTGF−β2およびTGF−β2の重なり。但し、アラインする部分は、それぞれ、フィンガー1/2および3/4の残基18〜45および61〜87に限定。 図2A〜2D:mmTGF−β2の構造。(図2A)10mMのリン酸ナトリウム、10mMのCHAPS、5%の2HO、pH4.70、37℃、800MHzにおいて記録した、mmTGF−β2の割り当てられたH−15N HSQCスペクトル。割り当てられたバックボーンアミドシグナルを、それらの残基番号および1文字アミノ酸コードによって示す。(図2B)1.8ÅのmmTGF−β2の結晶構造と、1.8ÅのTGF−β2(PDB 2TGI)の結晶構造からの1つの単量体との重なり。TGF−β2のパーム(α3)ヘリックスに代わるmmTGF−β2の操作されたループとともに、大きな構造的特徴を示す。(図2C)結晶学的非対称ユニットからの2つのmmTGF−β2鎖(鎖AおよびB)の重なり。他の詳細は図2Bのとおり。(図2D)図2BのmmTGF−β2およびTGF−β2の重なり。但し、アラインする部分は、それぞれ、フィンガー1/2および3/4の残基18〜45および61〜87に限定。 図3A〜3H:mmTGF−β2およびmmTGF−β2−7Mの結合特性。(図3Aおよび3B)固定化TGF−β2(図3A)またはmmTGF−β2(図3B)に対する、TβRIIの0.047〜12μMの2倍希釈系列の注入の際の表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラム。(図3C〜3H)固定化avi−TGF−β3(図3C、3Eおよび3G)またはavi−mmTGF−β2−7M(図3D、3Fおよび3H)に対する、0.012〜3μMのTβRII(図3Cおよび3D)、0.008〜1.024μMのTβRI(図3Eおよび3F)、またはランニング緩衝液および注入試料における2μMのTβRIIの存在下での、0.008〜1.024μMのTβRII(図3Gおよび3H)の、2倍希釈系列の注入の際のSPRセンサーグラム。図3C、3Dおよび3Gに示されるセンサーグラムは、1:1の結合モデルにフィットさせ、生データおよびフィットさせた曲線を示す。センサー表面への直接的なカルボジイミドベースのアミンカップリングによってTGF−β2およびmmTGF−β2を固定化し、高い(約8000応答単位(RU))密度でストレプトアビジンコーティングされたセンサーチップの表面上への、酵素的にビオチン化したタンパク質の捕捉によって、avi−TGF−β3またはavi−mmTGF−β2−7Mを固定化した。 図3A〜3H:mmTGF−β2およびmmTGF−β2−7Mの結合特性。(図3Aおよび3B)固定化TGF−β2(図3A)またはmmTGF−β2(図3B)に対する、TβRIIの0.047〜12μMの2倍希釈系列の注入の際の表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラム。(図3C〜3H)固定化avi−TGF−β3(図3C、3Eおよび3G)またはavi−mmTGF−β2−7M(図3D、3Fおよび3H)に対する、0.012〜3μMのTβRII(図3Cおよび3D)、0.008〜1.024μMのTβRI(図3Eおよび3F)、またはランニング緩衝液および注入試料における2μMのTβRIIの存在下での、0.008〜1.024μMのTβRII(図3Gおよび3H)の、2倍希釈系列の注入の際のSPRセンサーグラム。図3C、3Dおよび3Gに示されるセンサーグラムは、1:1の結合モデルにフィットさせ、生データおよびフィットさせた曲線を示す。センサー表面への直接的なカルボジイミドベースのアミンカップリングによってTGF−β2およびmmTGF−β2を固定化し、高い(約8000応答単位(RU))密度でストレプトアビジンコーティングされたセンサーチップの表面上への、酵素的にビオチン化したタンパク質の捕捉によって、avi−TGF−β3またはavi−mmTGF−β2−7Mを固定化した。 図4A〜4D:TGF−β2および単量体バリアントの溶解度。(図4Aおよび4C)TGF−β2およびmTGF−β2(図4A)、ならびにmmTGF−β2およびmmTGF−β2−7M(図4C)を、100mM酢酸中の濃縮ストックから、7.4(中性pH)のPBSまたは100mMの酢酸(酸性pH)に希釈し、340nmの光散乱を測定した。(図4Bおよび4D)PBSまたは100mMの酢酸に希釈したTGF−β2およびmTGF−β2(図4B)ならびにmmTGF−β2およびmmTGF−β2−7M(図4D)の試料を、20,000×gで5分間遠心分離し、280nmのタンパク質吸光度を測定した。 図5A〜5E:mmTGF−β2−7MおよびmmTGF−β2−7M:TβRII複合体の構造。(図5A)10mMのリン酸ナトリウム、10mMのCHAPS、5%の2HO、pH4.70、37℃、800MHzにおいて記録した、mmTGF−β2−7Mの割り当てられたH−15N HSQCスペクトル。割り当てられたバックボーンアミドシグナルを、それらの残基番号および1文字アミノ酸コードによって示す。(図5B)1.8ÅのmmTGF−β2−7Mの結晶構造と、1.8ÅのTGF−β2(PDB 2TGI)の結晶構造からの1つの単量体との重なり。TGF−β2のパーム(α3)ヘリックスに代わるmmTGF−β2の操作されたループとともに、大きな構造的特徴を示す。(図5C)結晶学的非対称ユニットからの3つのmmTGF−β2−7Mの鎖(鎖A、BおよびC)の重なり。破線は、弱い電子密度のため鎖C中の操作されたループ領域における欠失セグメントに対応する。他の詳細は図5Bのとおり。(図5D)1.8ÅのmmTGF−β2−7M:TβRII複合体の結晶構造と、3.0ÅのTGF−β3:TβRII:TβRI複合体の結晶構造からの1つのTGF−β3単量体およびその結合するTβRIIとの重なり(PDB 2PJY、TGF−β3単量体およびTβRII;TβRIは明確化のため示さない)。TGF−β2のパーム(α3)ヘリックスに代わるmmTGF−β2の操作されたループを表す。(図5E)重なりは図5Bのとおりであるが、以前に高親和性TGF−β3:TβRII結合にとって不可欠であることを示した臨界的な疎水性および水素結合/静電的相互作用にほぼ同一であることを示すために拡大した。 図5A〜5E:mmTGF−β2−7MおよびmmTGF−β2−7M:TβRII複合体の構造。(図5A)10mMのリン酸ナトリウム、10mMのCHAPS、5%の2HO、pH4.70、37℃、800MHzにおいて記録した、mmTGF−β2−7Mの割り当てられたH−15N HSQCスペクトル。割り当てられたバックボーンアミドシグナルを、それらの残基番号および1文字アミノ酸コードによって示す。(図5B)1.8ÅのmmTGF−β2−7Mの結晶構造と、1.8ÅのTGF−β2(PDB 2TGI)の結晶構造からの1つの単量体との重なり。TGF−β2のパーム(α3)ヘリックスに代わるmmTGF−β2の操作されたループとともに、大きな構造的特徴を示す。(図5C)結晶学的非対称ユニットからの3つのmmTGF−β2−7Mの鎖(鎖A、BおよびC)の重なり。破線は、弱い電子密度のため鎖C中の操作されたループ領域における欠失セグメントに対応する。他の詳細は図5Bのとおり。(図5D)1.8ÅのmmTGF−β2−7M:TβRII複合体の結晶構造と、3.0ÅのTGF−β3:TβRII:TβRI複合体の結晶構造からの1つのTGF−β3単量体およびその結合するTβRIIとの重なり(PDB 2PJY、TGF−β3単量体およびTβRII;TβRIは明確化のため示さない)。TGF−β2のパーム(α3)ヘリックスに代わるmmTGF−β2の操作されたループを表す。(図5E)重なりは図5Bのとおりであるが、以前に高親和性TGF−β3:TβRII結合にとって不可欠であることを示した臨界的な疎水性および水素結合/静電的相互作用にほぼ同一であることを示すために拡大した。 図5A〜5E:mmTGF−β2−7MおよびmmTGF−β2−7M:TβRII複合体の構造。(図5A)10mMのリン酸ナトリウム、10mMのCHAPS、5%の2HO、pH4.70、37℃、800MHzにおいて記録した、mmTGF−β2−7Mの割り当てられたH−15N HSQCスペクトル。割り当てられたバックボーンアミドシグナルを、それらの残基番号および1文字アミノ酸コードによって示す。(図5B)1.8ÅのmmTGF−β2−7Mの結晶構造と、1.8ÅのTGF−β2(PDB 2TGI)の結晶構造からの1つの単量体との重なり。TGF−β2のパーム(α3)ヘリックスに代わるmmTGF−β2の操作されたループとともに、大きな構造的特徴を示す。(図5C)結晶学的非対称ユニットからの3つのmmTGF−β2−7Mの鎖(鎖A、BおよびC)の重なり。破線は、弱い電子密度のため鎖C中の操作されたループ領域における欠失セグメントに対応する。他の詳細は図5Bのとおり。(図5D)1.8ÅのmmTGF−β2−7M:TβRII複合体の結晶構造と、3.0ÅのTGF−β3:TβRII:TβRI複合体の結晶構造からの1つのTGF−β3単量体およびその結合するTβRIIとの重なり(PDB 2PJY、TGF−β3単量体およびTβRII;TβRIは明確化のため示さない)。TGF−β2のパーム(α3)ヘリックスに代わるmmTGF−β2の操作されたループを表す。(図5E)重なりは図5Bのとおりであるが、以前に高親和性TGF−β3:TβRII結合にとって不可欠であることを示した臨界的な疎水性および水素結合/静電的相互作用にほぼ同一であることを示すために拡大した。 図5A〜5E:mmTGF−β2−7MおよびmmTGF−β2−7M:TβRII複合体の構造。(図5A)10mMのリン酸ナトリウム、10mMのCHAPS、5%の2HO、pH4.70、37℃、800MHzにおいて記録した、mmTGF−β2−7Mの割り当てられたH−15N HSQCスペクトル。割り当てられたバックボーンアミドシグナルを、それらの残基番号および1文字アミノ酸コードによって示す。(図5B)1.8ÅのmmTGF−β2−7Mの結晶構造と、1.8ÅのTGF−β2(PDB 2TGI)の結晶構造からの1つの単量体との重なり。TGF−β2のパーム(α3)ヘリックスに代わるmmTGF−β2の操作されたループとともに、大きな構造的特徴を示す。(図5C)結晶学的非対称ユニットからの3つのmmTGF−β2−7Mの鎖(鎖A、BおよびC)の重なり。破線は、弱い電子密度のため鎖C中の操作されたループ領域における欠失セグメントに対応する。他の詳細は図5Bのとおり。(図5D)1.8ÅのmmTGF−β2−7M:TβRII複合体の結晶構造と、3.0ÅのTGF−β3:TβRII:TβRI複合体の結晶構造からの1つのTGF−β3単量体およびその結合するTβRIIとの重なり(PDB 2PJY、TGF−β3単量体およびTβRII;TβRIは明確化のため示さない)。TGF−β2のパーム(α3)ヘリックスに代わるmmTGF−β2の操作されたループを表す。(図5E)重なりは図5Bのとおりであるが、以前に高親和性TGF−β3:TβRII結合にとって不可欠であることを示した臨界的な疎水性および水素結合/静電的相互作用にほぼ同一であることを示すために拡大した。 図6A〜6B:TGF−β1およびバリアントのシグナル伝達活性。(図6A)黒い丸、正方形および三角形でそれぞれ示すTGF−β1、mTGF−β3およびmmTGF−β2−7MのTGF−βルシフェラーゼレポーター活性。実線はフィットさせた曲線に対応し、EC50を導く(mmTGF−β2−7Mはこのバリアントのシグナル伝達活性の欠如のためフィットしなかった)。(図6B)亜飽和濃度(8pM)のTGF−β1で処理した細胞に、示されるTGF−β単量体バリアントの濃度を増加させて添加したときのTGF−βルシフェラーゼレポーター活性(mTGF−β3およびmmTGF−β2−7Mをそれぞれ白四角および黒三角で示す)。実線は、mTGF−β3のフィット曲線に対応してEC50を導き、またmTGF−β2−7Mのフィット曲線に対応してIC50を導く。 図7A〜7B:TβRI:TβRII複合体のリガンド媒介性の会合についての、時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR−FRET)アッセイ。(図7A)C末端タグ、ならびにタグと会合する蛍光標識ドナーおよびアクセプタータンパク質を有する、TGF−β3:TβRII:TβRI複合体の構造。TβRIIはC末端にヘキサヒスチジンタグ(His)を有し、Tb3+−クリプテート標識抗ヘキサヒスチジンタグ抗体(Cisbio、Bedford、MA)に結合する。TβRIはC末端にビオチン化されたaviタグを有し、XL665標識ストレプトアビジン(Cisbio、Bedford、MA)に結合する。ビオチン化された、TβRI C末端aviタグ中の単一リジン残基を「K−B」とする。(図7B)添加される示される成分からなる試料のTR−FRETΔF値。全ての場合、緩衝液は、25mMのトリス、50mMのNaCl、pH7.4、2nMのTb3+−クリプテート標識抗ヘキサヒスチジンタグ抗体および30nMのXL665標識ストレプトアビジンを含有した。TR−FRETΔFは、490nmでのドナー(Tb3+−クリプテート)放出に対する、665nmでのアクセプター(XL665)放出の比率に対応する。 本試験において使用するTGF−βのアミノ酸配列のアラインメント。図では、N末端メチオニン後の最初の残基が残基1となるように配列に付番している。 図9A〜9B:mmTGF−β2の二次構造予測およびバックボーンの15N T弛緩時間。(図9A)プログラムPECANを使用し、バックボーンH、N、CαおよびCおよび側鎖Cβ原子に基づいて、二次構造予測を算出した。β鎖およびα−へリックスの予測を、それぞれ正および負の値としてプロットする。(図9B)15N T弛緩時間を、残基数の関数としてプロットした。各グラフの上に示される二次構造は、TGF−β2(PDB 2TGI)の結晶構造からのそれらに対応する。 図10A〜10B:mmTGF−β2−7Mの二次構造予測およびバックボーンの15N T弛緩時間。(図10A)プログラムPECANを使用し、バックボーンH、N、CαおよびCおよび側鎖Cβ原子に基づいて、二次構造予測を算出した。β鎖およびα−へリックスの予測を、それぞれ正および負の値としてプロットする。(図10B)15N T弛緩時間を、残基数の関数としてプロットした。各グラフの上に示される二次構造は、TGF−β2(PDB 2TGI)の結晶構造からのそれらに対応する。 可逆的単量体−二量体モデルの、mTGF−β3の沈降速度実験への有限要素フィット。有限要素フィットにより重なり合った実験データを上部に示し、残余を下部に示す。 可逆的単量体−二量体モデルの、mmTGF−β2の沈降速度実験への有限要素フィット。有限要素フィットにより重なり合った実験データを上部に示し、残余を下部に示す。 可逆的単量体−二量体モデルの、mmTGF−β2−7Mの沈降速度実験への有限要素フィット。有限要素フィットにより重なり合った実験データを上部に示し、残余を下部に示す。 TGF−β:TβRII:TβRI複合体の会合を評価するためのTR−FRETアッセイ。テルビウム−クリプテート抗ヘキサヒスチジンタグ抗体ドナーフルオロフォアおよびストレプトアビジン−665アクセプターフルオロフォアの濃度を、それぞれ2nMおよび30nMとした。 図15A〜15B:mmTGF−β2によるTGF−β2およびTGF−β3の阻害。一定濃度のTGF−β2(20pM、図15A)またはTGF−β3(10pM、図15B)により、ならびにmmTGF−β2−7Mの濃度を増加させて処理した細胞におけるTGF−βルシフェラーゼ活性。実線はフィット曲線に対応し、IC50を導く。
配列表
37C.F.R.1.822において定義されるように、添付の配列表に列挙されるアミノ酸配列は、アミノ酸の標準的な3文字表記を使用して示される。配列表は、2017年11月6日に作成の、11.3KBのASCIIテキストファイルとして提出され、それは本明細書に参照により組み込まれる。添付の配列表の内容は以下のとおりである:
配列番号1は、野生型ヒトTGF−β1のアミノ酸配列である。
配列番号2は、野生型ヒトTGF−β2のアミノ酸配列である。
配列番号3は、野生型ヒトTGF−β3のアミノ酸配列である。
配列番号4は、N末端Aviタグを有するヒトTGF−β3のアミノ酸配列である。
配列番号5は、mTGF−β2と称する操作されたヒトTGF−β2単量体のアミノ酸配列である。
配列番号6は、mTGF−β3と称する操作されたヒトTGF−β3単量体のアミノ酸配列である。
配列番号7は、mmTGF−β1と称する操作されたヒトTGF−β1単量体のアミノ酸配列である。
配列番号8は、mmTGF−β2と称する操作されたヒトTGF−β2単量体のアミノ酸配列である。
配列番号9は、mmTGF−β3と称する操作されたヒトTGF−β3単量体のアミノ酸配列である。
配列番号10は、mmTGF−β2−7Mと称する操作されたヒトTGF−β2単量体のアミノ酸配列である。
配列番号11は、N末端Aviタグを有するmmTGF−β2−7Mのアミノ酸配列である。
詳細な説明
I.略号
AUC 分析用超遠心法
BSA ウシ血清アルブミン
EC50 50%有効濃度
FBS ウシ胎児血清
IC50 50%抑制濃度
NMR 核磁気共鳴
RU 共鳴単位
SPR 表面プラズモン共鳴
TβRI トランスフォーミング増殖因子−βI型受容体
TβRII トランスフォーミング増殖因子−βII型受容体
TGF−β トランスフォーミング増殖因子−β
TR−FRET 時間分解蛍光共鳴エネルギー転移
II.用語および方法
特に断りのない限り、専門用語は従来の用法に従って使用される。分子生物学における一般用語の定義は、Benjamin Lewin、Genes V、Oxford University Press刊、1994年(ISBN 0-19-854287-9);Kendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Science Ltd.刊、1994年(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers,Inc.刊、1995年(ISBN 1-56081-569-8)に見出すことができる。
本開示の様々な実施形態の概説を容易にするために、特定の用語について以下の説明が提供される。
異常な(aberrant)(TGF−βシグナル伝達):異常な(abnormal)または調節不全のTGF−βシグナル伝達。本開示との関連において、「異常なTGF−βシグナル伝達」は、TGF−βシグナル伝達経路の過剰な(病理学的)活性化を指す。
投与:任意の有効な経路により、対象に治療剤(例えば組換えTGF−β)などの薬剤を提供する、または与えること。例示的な投与経路には、注射または注入(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、髄腔内、静脈内、脳室内、線条体内、頭蓋内および脊髄など)、経口、管内、舌下、直腸、経皮、鼻腔内、経膣および吸入経路が挙げられるが、これらに限定されない。
接触:直接的な物理的結合に留置すること;固体および液体形態の両方が挙げられる。in vivo方法との関連において使用される場合、「接触」は投与も含む。
線維症:修復または反応過程中の臓器または組織における過剰な線維性結合組織の形成。線維症は、典型的には炎症または損傷の結果として、多くの異なる身体組織(心臓、肺および肝臓など)で生じ得る。線維性障害には、肺線維症、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、間質性肺疾患、肝硬変、腎線維症(糖尿病に起因する損傷由来など)、心房線維症、心内膜心筋線維症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄および強皮症が挙げられるが、これらに限定されない。線維症はまた、手術合併症、化学療法薬、放射線、傷害または熱傷の結果としても生じ得る。
融合タンパク質:2種類の異なる(異種の)タンパク質の少なくとも一部を含むタンパク質。本明細書におけるいくつかの実施形態において、融合タンパク質は、タンパク質タグ、Fcドメイン(ヒトFcドメインなど)またはアルブミンに融合されたTGF−β単量体を含む。
グリコシル化:アスパラギン(N−グリコシル化)、またはセリンもしくはスレオニン残基(O−グリコシル化)への糖部分の共有結合の過程。グリコシル化のレベルおよびタイプは、組換え発現に使用される宿主生物によって異なり得る。新たなグリコシル化部位は、グリコシル化シークオンをタンパク質の溶媒曝露領域に導入して操作された配列であってもよい。例えば、N−グリコシル化シークオンNX[S/T]が、本明細書に開示された特定の実施形態の配列内の1つまたは複数の場所で導入されてもよい。グリコシル化のタイプおよび程度を変えることは、溶解度、機能および半減期をモジュレートし、ならびに部位特異的な化学的結合を可能にする上で実用性を有する。
異種の:別個の遺伝源または種に由来すること。
単離された(isolated):核酸、タンパク質(抗体を含む)またはオルガネラなどの「単離された」生物学的成分は、成分が天然に存在する環境(細胞など)における他の生物学的成分、すなわち、他の染色体DNAおよびRNAならびに染色体外DNAおよびRNA、タンパク質、およびオルガネラから実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法により精製された核酸およびタンパク質が挙げられる。該用語はまた、宿主細胞における組換え発現により調製された核酸およびタンパク質、ならびに化学的に合成された核酸も包含する。
単量体:他の分子単位と結合して二量体またはポリマーを形成することができる単一分子単位(タンパク質など)。本開示との関連において、「TGF−β単量体」は、野生型バージョンが他のTGF−β単量体に結合して二量体を形成することができる、単一TGF−βポリペプチド鎖である。本明細書におけるいくつかの実施形態において、組換えTGF−β単量体は、二量体化を防ぐように操作されている。本明細書における他の実施形態において、直接二量体化を防ぐように操作されている組換えTGF−β単量体が、それ自体二量体化することができる異種タンパク質(例えば、IgGのFcドメイン)に融合され得る。
新生物、悪性腫瘍、がんまたは腫瘍:新生物は、過剰な細胞分裂の結果生じる組織または細胞の異常増殖である。新生物の増殖は、腫瘍をもたらす可能性がある。個体における腫瘍の量は、腫瘍の数、体積、または重量として測定することができる「腫瘍負荷」である。転移しない腫瘍は、「良性」と呼ばれる。周囲組織に浸潤する腫瘍および/または転移し得る腫瘍は、「悪性」と呼ばれる。
PEG化:薬物、治療用タンパク質または小胞などの分子およびマクロ構造への、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー鎖の共有結合および非共有結合の両方または融合の過程であり、次いでPEG化(またはペグ化)と呼ばれる。PEG化は、標的分子とのPEGの反応性誘導体のインキュベーションにより日常的に達成される。薬物または治療用タンパク質へのPEGの共有結合は、宿主の免疫系から薬剤をマスクし(免疫原性および抗原性の低減)、薬剤の流体力学的サイズ(溶液中のサイズ)を増加させることができ、腎クリアランスを低下させることにより循環時間を延長させる。PEG化はまた、疎水性薬物およびタンパク質に水溶性を与えることもできる。
ペプチドまたはポリペプチド:単量体がアミド結合を通じて連結しているアミノ酸残基であるポリマー。アミノ酸がアルファアミノ酸である場合、L−光学異性体またはD−光学異性体のどちらかが使用され得、L−異性体が好ましい。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、本明細書で使用される場合、任意のアミノ酸配列を包含し、修飾グロブリンタンパク質を含む修飾配列を含むことが意図される。用語「ペプチド」および「ポリペプチド」は、天然に存在するタンパク質、および組換えによりまたは合成的に産生されるものを含むことが特に意図される。
保存的アミノ酸置換は、なされた場合、元のタンパク質の特性を妨げることが最も少ない、すなわち、タンパク質の構造および特に機能が保存され、そのような置換により大幅に変更されない置換である。保存的置換の例を以下に示す。
保存的置換は、(a)例えば、シート構造もしくはヘリックス構造としての、置換エリアのポリペプチドバックボーンの構造、(b)標的部位の分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩を概ね維持する。
一般に、タンパク質特性に最大の変化をもたらすことが予想される置換は、非保存的な、例えば、(a)親水性残基、例えば、セリンもしくはスレオニンが、疎水性残基、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリンもしくはアラニンに(または、によって)置換される;(b)システインまたはプロリンが、任意の他の残基に(または、によって)置換される;(c)正電荷側鎖を有する残基、例えば、リジン、アルギニン、またはヒスチジンが、負電荷残基、例えば、グルタミンまたはアスパラギン酸に(または、によって)置換される;または(d)嵩高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、側鎖を持たないもの、例えば、グリシンに(または、によって)置換される変化となる。
薬学的に許容される担体:有用な薬学的に許容される担体は、従来的なものである。E.W. MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PA、第15版、1975年は、本明細書に開示された組成物の薬学的送達に適した組成物および製剤を記載する。
一般に、担体の性質は、使用されている特定の投与方法に依存する。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存料、およびpH緩衝剤等(例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレート)などの微量の非毒性補助物質を含有し得る。
疾患の予防(preventing)、処置(treating)または改善(ameliorating):疾患の「予防」は、疾患の完全な発症を阻害することを指す。「処置」は、疾患または病態が発症し始めた後に、腫瘍負荷の低減または転移サイズの数の減少など、疾患または病態の徴候または症状を改善する治療介入を指す。「改善」は、疾患の徴候または症状の数または重症度の低減を指す。
組換え:組換え核酸またはタンパク質は、天然に存在しない配列を有する、または2つの、さもなければ別々の配列セグメントの人工的組合せにより作られた配列を有するものである。この人工的組合せは、核酸の単離されたセグメントの化学合成または人工的操作により、例えば、遺伝子操作技法によりしばしば達成される。組換えという用語は、天然の核酸分子またはタンパク質の一部の付加、置換、または欠失により変更されている核酸およびタンパク質を含む。
配列同一性/類似性:2つもしくはそれよりも多くの核酸配列間、または2つもしくはそれよりも多くのアミノ酸配列間の同一性は、配列間の同一性または類似性によって表される。配列同一性は、同一性パーセンテージによって測定することができ、パーセンテージが高いほど配列はより同一である。配列類似性は、(保存的アミノ酸置換を考慮に入れる)類似性パーセンテージによって測定することができ、パーセンテージが高いほど配列はより類似している。核酸配列またはアミノ酸配列のホモログまたはオルソログは、標準的な方法を使用して整列される場合、比較的高程度の配列同一性/類似性を有する。オーソロガスタンパク質またはcDNAが、関係がより近い種(ヒトとマウスの配列など)に由来する場合、関係がより遠い種(ヒトとC.elegansの配列など)と比べて、この相同性はより顕著である。
比較のための配列のアライメントの方法は、当技術分野で周知である。様々なプログラムおよびアライメントアルゴリズムが記載されている:SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math. 2巻:482頁、1981年;NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol. 48巻:443頁、1970年;PearsonおよびLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻:2444頁、1988年;HigginsおよびSharp、Gene、73巻:237〜44頁、1988年;HigginsおよびSharp、CABIOS 5巻:151〜3頁、1989年;Corpetら、Nuc. Acids Res. 16巻:10881〜90頁、1988年;Biosciences 8巻、155〜65頁、1992年のHuangら Computer Appls.;およびPearsonら、Meth. Mol. Bio. 24巻:307〜31頁、1994年。Altschulら、J. Mol. Biol. 215巻:403〜10頁、1990年は、配列アライメント方法および相同性計算の詳細な考察を提示している。
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、J. Mol. Biol. 215巻:403〜10頁、1990年)は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxと関連して使用するために、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)を含むいくつかの供給源から、およびインターネット上で入手可能である。追加の情報は、NCBIウェブサイトで見出すことができる。
対象:ヒトおよびヒト以外の哺乳動物の両方を含むカテゴリーである脊椎生物を含む、生きている多細胞生物。
タグ:標識、検出または精製目的などのために、タンパク質または核酸に付加することができる分子。いくつかの実施形態において、タグはタンパク質タグである。いくつかの実施形態において、タンパク質タグは、親和性タグ(例えば、Aviタグ、ヘキサヒスチジン、キチン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、またはグルタチオン−S−転移酵素)、エピトープタグ(例えば、V5、c−myc、HAまたはFLAG)または蛍光タグ(例えば、GFPまたは別の周知の蛍光タンパク質)である。
治療有効量:処置されている対象において所望の効果を得るのに十分な、化合物または組成物、例えば、組換えTGF−β単量体の分量。例えば、これは、細胞におけるTGF−βシグナル伝達を阻害または遮断するのに必要な量であってもよい。
トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β):増殖、細胞分化、およびいくつかの他の細胞機能を制御する、分泌された多機能性タンパク質。多くの細胞がTGF−βを合成し、ほとんど全ての細胞がTGF−βの受容体を発現する。用語「TGF−β」は、それぞれ、遺伝子TGFB1、TGFB2、TGFB3によりコードされる3つの異なるタンパク質アイソフォーム、TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3を指す。
TGF−βシグナル伝達経路:細胞増殖、分化およびアポトーシスなどの多くの細胞プロセスに関与するシグナル伝達経路。TGF−β経路のメンバーには、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3ならびにTGF−β受容体I型およびTGF−β受容体II型が挙げられるが、これらに限定されない。
TGF−β受容体:用語「TGF−β受容体」は、TGF−β受容体I型(TGFBR1によりコードされた)およびTGF−β受容体II型(TGFBR2によりコードされた)を含む。TGF−β受容体は、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼである。I型およびII型TGF−β受容体は、TGF−βに結合するとヘテロ二量体複合体を形成し、細胞表面から細胞質へTGF−βシグナルを伝達する。
特に説明のない限り、本明細書で使用される全ての専門用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。単数の用語「a」、「an」、および「the」は、文脈が特に明白に示さない限り、複数の指示対象を含む。「AまたはBを含む(comprising)」は、A、またはB、またはAおよびBを含むことを意味する。核酸またはポリペプチドに関して与えられた全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、および全ての分子量または分子質量値は概算であり、説明のために提供されることがさらに理解されるべきである。本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料が、本開示の実施または試験において使用され得るが、適切な方法および材料が以下に記載れる。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合、用語の説明を含む本明細書が支配する。さらに、材料、方法、および例は例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。
III.いくつかの実施形態の概要
本明細書に開示されるのは、二量体化およびI型受容体結合を阻害するが、高親和性TGF−βII型受容体(TβRII)に結合する能力を保持するように修飾された組換えトランスフォーミング増殖因子(TGF)−β単量体である。本明細書に開示された組換えTGF−β単量体は、異常なTGF−βシグナル伝達により特徴付けられる疾患または障害、例えば線維性障害、眼疾患、特定のタイプのがん、または結合組織の遺伝性障害の処置などのために、TGF−βシグナル伝達を阻害するのに使用することができる。さらに、組換えTGF−β単量体をコードする核酸分子は、組換えタンパク質を過剰産生するようにT細胞を再プログラムするのに使用することができる。組換えTGF−β単量体を過剰発現するように操作されたT細胞は、異常なTGF−βシグナル伝達により特徴付けられる疾患または障害の処置などのために、遺伝子治療用途において使用することができる。
本明細書で提供されるのは、アミノ酸残基77におけるシステインからセリンへの置換(配列番号2に関して);アミノ酸残基52〜71の欠失(配列番号2に関して);および単量体の正味電荷を増加させる、野生型TFG−β単量体と比べて少なくとも1個のアミノ酸置換(例えば、欠失残基の近位の置換)を含む組換えTGF−β単量体である。システインからセリンへの置換は、TGF−β単量体間のジスルフィド結合形成を防ぐ。アミノ酸残基52〜71の欠失は、α−ヘリカル3(α3)領域(主要な二量体化モチーフ)、およびいくつかのフランキング残基(図1D)を除去する。残基52〜71が除去されると、残りの残基は極性残基および電荷残基を含有するループを形成する(図1Dおよび2B)。
いくつかの実施形態において、TGF−β単量体は、ヒト、マウス、ラットまたは他の哺乳動物TGF−β単量体である。
いくつかの実施形態において、TGF−β単量体は、TβRIIに対するTGF−β単量体の親和性を高める、野生型TFG−β2単量体と比べて少なくとも1個のアミノ酸置換をさらに含む。
いくつかの実施形態において、TGF−β単量体は、ヒトTGF−β2単量体である。いくつかの例において、ヒトTGF−β2単量体の正味電荷を増加させる少なくとも1個のアミノ酸置換には、残基51におけるロイシンからアルギニンへの置換;残基73におけるアラニンからリジンへの置換;または残基51におけるロイシンからアルギニンへの置換および残基73におけるアラニンからリジンへの置換の両方が挙げられる(配列番号2に関して)。
いくつかの実施形態において、TβRIIに対するヒトTGF−β2単量体の親和性を高める少なくとも1個のアミノ酸置換には、配列番号2の残基23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99に対応するアミノ酸残基、またはそれらの2つもしくはそれよりも多い残基の任意の組合せにおける置換が挙げられる。いくつかの例において、TβRIIに対する単量体の親和性を高める少なくとも1個のアミノ酸置換は、残基23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36または37における少なくとも1個の置換、および残基89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99における少なくとも1個の置換を含む。特定の例において、TβRIIに対するヒトTGF−β2単量体の親和性を高める少なくとも1個のアミノ酸置換には、残基25におけるリジンからアルギニン、残基26におけるアルギニンからリジン、残基89におけるロイシンからバリン、残基92におけるイソロイシンからバリン、残基94におけるアスパラギンからアルギニン、残基95におけるスレオニンからリジン、残基98におけるイソロイシンからバリン、またはそれらの2つもしくはそれよりも多い、例えば、3つもしくはそれよりも多い、4つもしくはそれよりも多い、5つまたはそれよりも多い、または6つまたはそれよりも多い任意の組合せが挙げられる。1つの非限定的な例において、組換えヒトTGF−β2単量体は、残基25におけるリジンからアルギニン、残基26におけるアルギニンからリジン、残基89におけるロイシンからバリン、残基92におけるイソロイシンからバリン、残基94におけるアスパラギンからアルギニン、残基95におけるスレオニンからリジン、および残基98におけるイソロイシンからバリンを含む。
いくつかの例において、ヒトTGF−β2単量体のアミノ酸配列は、配列番号8または配列番号10と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。場合によっては、ヒトTGF−β2単量体は、配列番号8または配列番号10と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であり、保存的アミノ酸置換のみを含有する。特定の非限定的な例において、ヒトTGF−β2単量体のアミノ酸配列は、配列番号8もしくは配列番号10を含む、または配列番号8もしくは配列番号10からなる。
他の実施形態において、組換えTGF−β単量体は、ヒトTGF−β1単量体である。いくつかの例において、ヒトTGF−β1単量体の正味電荷を増加させる少なくとも1個のアミノ酸置換には、残基51におけるイソロイシンからアルギニンへの置換;残基74におけるアラニンからリジンへの置換;残基75におけるアラニンからセリンへの置換;または残基51におけるイソロイシンからアルギニンへの置換、残基74におけるアラニンからリジンへの置換、および残基75におけるアラニンからセリンへの置換が挙げられる(配列番号1に関して)。
いくつかの例において、ヒトTGF−β1単量体のアミノ酸配列は、配列番号7と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。場合によっては、ヒトTGF−β1単量体は、配列番号7と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であり、保存的アミノ酸置換のみを含有する。特定の非限定的な例において、ヒトTGF−β1単量体のアミノ酸配列は、配列番号7を含む、または配列番号7からなる。
他の実施形態において、組換えTGF−β単量体は、ヒトTGF−β3単量体である。いくつかの例において、ヒトTGF−β3単量体の正味電荷を増加させる少なくとも1個のアミノ酸置換には、残基51におけるロイシンからグルタミン酸への置換;残基72におけるアラニンからグルタミン酸への置換;残基74におけるアラニンからアスパラギン酸への置換;または残基51におけるロイシンからグルタミン酸への置換、残基72におけるアラニンからグルタミン酸への置換、および残基74におけるアラニンからアスパラギン酸への置換が挙げられる(配列番号3に関して)。
いくつかの例において、ヒトTGF−β3単量体のアミノ酸配列は、配列番号9と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。場合によっては、ヒトTGF−β3単量体は、配列番号9と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であり、保存的アミノ酸置換のみを含有する。特定の非限定的な例において、ヒトTGF−β3単量体のアミノ酸配列は、配列番号9を含む、または配列番号9からなる。
本明細書におけるいくつかの実施形態において、組換えTGF−β単量体は、PEG化、グリコシル化、高グリコシル化され、または循環時間を延長させる別の修飾を含む。
また、本明細書で提供されるのは、TGF−β単量体および異種タンパク質を含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、異種タンパク質はタンパク質タグである。いくつかの例において、タンパク質タグは、親和性タグ(例えば、Aviタグ、ヘキサヒスチジン、キチン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質、またはグルタチオン−S−転移酵素)、エピトープタグ(例えば、V5、c−myc、HAまたはFLAG)または蛍光タグ(例えば、GFPまたは別の周知の蛍光タンパク質)である。他の実施形態において、異種タンパク質は、マウスまたはヒトFcドメインなどのFcドメインを含む。特定の実施形態において、異種タンパク質は、融合タンパク質のホモ二量体(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3由来のFcドメイン)、ヘテロ二量体(例えば、操作されたFcドメイン、E/Kコイルドコイル)、または多量体(例えば、ペンタボディ、ナノ粒子)状態への分子間会合を促進する。他の実施形態において、異種タンパク質は、アルブミン、アルブミン結合タンパク質もしくは薬剤、またはin vivoでのTGF−β単量体の循環時間を増大させる別のタンパク質である。
また、提供されるのは、放射線療法剤、化学療法のための細胞傷害剤、または薬物を含む組換えTGF−β単量体または融合タンパク質である。さらに提供されるのは、イメージング剤、蛍光色素、または蛍光タンパク質タグを含む組換えTGF−β単量体または融合タンパク質である。
さらに本明細書で提供されるのは、本明細書に開示された組換えTGF−β単量体または融合タンパク質、および薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む、医薬組成物などの組成物である。
また、本明細書で提供されるのは、細胞におけるTGF−βシグナル伝達を阻害する方法である。いくつかの実施形態において、方法は、細胞を、本明細書に開示された組換えTGF−β単量体、融合タンパク質または組成物と接触させることを含む。
いくつかの実施形態において、方法はin vitro方法である。
他の実施形態において、方法はin vivo方法である。いくつかの例において、in vivo方法は、組換えTGF−β単量体、融合タンパク質または組成物を、異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害を有する対象に投与することを含む。いくつかの例において、組換えTGF−β単量体、融合タンパク質または組成物は、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、静脈内または腫瘍内注射などの注射により投与される。
また、提供されるのは、異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害を処置する方法である。いくつかの実施形態において、方法は、本明細書に開示された組換えTGF−β単量体、融合タンパク質または組成物を対象に投与することを含む。
いくつかの実施形態において、異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害は、肺線維症、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、間質性肺疾患、肝硬変、腎線維症(糖尿病に起因する損傷由来など)、心房線維症、心内膜心筋線維症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、強皮症、または手術合併症、化学療法薬、放射線、傷害もしくは熱傷に起因する線維症などの線維性障害であるが、これらに限定されない。
他の実施形態において、異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害は、乳がん、脳がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、膀胱がん、肝臓がん、卵巣がん、腎臓がん、子宮内膜がん、結腸直腸がん、胃がん、皮膚がん(悪性黒色腫など)、または甲状腺がんである。
他の実施形態において、異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害は、眼疾患である。
他の実施形態において、異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害は、結合組織の遺伝性障害である。
さらに提供されるのは、本明細書に開示された組換えTGF−β単量体をコードする単離された核酸分子である。いくつかの実施形態において、核酸分子は、T細胞特異的プロモーターなどのプロモーターに作動可能に連結される。
また、提供されるのは、TGF−β単量体コード核酸分子を含むベクターである。いくつかの実施形態において、ベクターは、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターである。
本明細書に開示された組換えTGF−β単量体をコードする核酸分子またはベクターを含む単離されたT細胞などの(但し、これに限定されない)、単離された細胞がさらに提供される。細胞は、対象にとって自己であってもよく、または細胞は、異種(同種)であってもよい。単離された細胞および薬学的に許容される担体を含む組成物もまた提供される。
さらに提供されるのは、対象における異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害を処置する方法である。いくつかの実施形態において、方法は、本明細書に開示された核酸分子、ベクターまたは単離された細胞を対象に投与することを含む。いくつかの例において、異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害は、線維性障害である。他の例において、異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害は、乳がん、脳がん、膵臓がん、前立腺がんまたは皮膚がんである。他の例において、異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害は、眼疾患である。さらなる他の例において、異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害は、結合組織の遺伝性障害である。
IV.操作されたTGF−β単量体の投与
組換えヒトTGF−β単量体または融合タンパク質を含む、医薬組成物などの組成物が本明細書で提供される。また、提供されるのは、組換えヒトTGF−β単量体をコードするベクターを含む、T細胞などの単離された細胞を含む組成物である。いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容される担体を含む。
本開示において有用な薬学的に許容される担体および賦形剤は、従来的なものである。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、The University of the Sciences in Philadelphia、編者Lippincott、Williams、およびWilkins、Philadelphia、PA、第21版(2005年)参照。例えば、非経口製剤は、通常、水、生理食塩水、他の平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロール等などの薬学的および生理学的に許容される流体媒体である注射可能な流体を含む。固体組成物(例えば、粉末、ピル、錠剤、またはカプセル形態)に関して、従来の非毒性固体担体には、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが挙げられ得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存料、pH緩衝剤等(例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレート)などの微量の非毒性補助物質を含有し得る。含まれ得る賦形剤は、例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿調製物などの他のタンパク質である。
細胞の投与に関して、様々な水性担体、例えば、緩衝食塩水等が、細胞を導入するために使用され得る。これらの溶液は滅菌であり、一般的に、望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技法により滅菌することができる。組成物は、生理学的状態に近づけるために必要とされる場合、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤等(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等)などの薬学的に許容される補助物質を含有してもよい。これらの製剤における濃度は大きく異なり得、選択される特定の投与方法および対象のニーズに従って、主として流体体積、粘度、体重等に基づき選択される。
組成物の剤形は、選択された投与方法により決定される。例えば、注射可能な流体に加えて、局所、吸入、経口および座薬製剤が使用されてもよい。局所調製物には、点眼薬、軟膏、スプレー、パッチ等が挙げられ得る。吸入調製物は、液体(例えば、溶液または懸濁液)であってもよく、およびミスト、スプレー等が挙げられ得る。経口製剤は、液体(例えば、シロップ、溶液または懸濁液)、または固体(例えば、粉末、ピル、錠剤、またはカプセル)であってもよい。座薬調製物も、固体、ゲル、または懸濁形態であってもよい。固体組成物に関して、従来の非毒性固体担体には、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが挙げられ得る。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に公知であり、または当業者に明らかとなるであろう。
組換えヒトTGF−β単量体を含む、医薬組成物などの組成物は、正確な投与量の個々の投与に適した単位剤形で製剤化することができる。投与されるTGF−β単量体の量は、処置されている対象、病気の重症度、および投与態様によって決まり、処方医師の判断に委ねるのが最良である。これらの範囲内で、投与される製剤は、処置されている対象において所望の効果を達成するのに有効な量で活性成分の量を含有する。
TGF−β単量体、またはその組成物は、それらが有効であるヒトまたは他の動物の組織に、局所、経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、皮内、髄腔内、皮下、吸入または座薬などの様々な態様で投与することができる。特定の投与方法および投与レジメンは、症例の詳細(例えば、当該対象、疾患、病状、および処置が予防的であるかどうか)を考慮して、担当医師によって選択される。処置は、数日間から数ヶ月間、またはさらには数年間にわたる化合物の1日用量または複数の1日用量を必要とし得る。
以下の例は、特定の特徴および/または実施形態を例証するために提供される。これらの例は、記載された特定の特徴または実施形態に本開示を限定すると解釈されるべきではない。
(実施例1)
ドミナントネガティブとして機能するためにTGF−βシグナル伝達を遮断する操作されたTGF−β単量体
本実施例は、TGF−βシグナル伝達を遮断できる操作されたTGF−β単量体を記載する。本明細書においてmmTGF−β2−7Mと称する操作されたTGF−β単量体には、野生型の二量体TGF−β2の単量体と比較して以下の3つの変化を有する:
(1)鎖間ジスルフィドを通常は形成するシステイン(Cys77)がセリンにより置換された(図1D);
(2)α3へリックスが除去され、極性および荷電残基を担持する短いループで置き換えられた(図1D);
(3)TGF−β2に対して7つの残基が置換され、これにより高親和性でのTβRII結合が可能になった(図1E)。
mmTGF−β2−7Mの特徴および本明細書に開示される他の操作されたTGF−βバリアントを以下に記載し、表1に列挙する。全ての操作されたTGF−βバリアントの配列を図8に示し、配列番号1〜11として示す。
背景
以前の試験では、野生型TGF−β1およびTGF−β3単量体(鎖間ジスルフィドを通常は形成するシステイン残基Cys77がセリンに置換される、TGF−β1およびTGF−β3単量体)が、天然のジスルフィド結合したホモ二量体と比較して約10分の1〜15分の1の効力であるにもかかわらず、約150pMの中間点刺激強度(EC50)と、顕著なシグナル伝達活性を保持していることを示した(Amatayakul-Chantlerら、J Biol Chem 269巻:27687〜27691頁、1994年;Zunigaら、J Mol Biol 355巻:47〜62頁、2006年)。
構造的研究に基づいた場合、増殖因子と結合する2つの不可欠な受容体のうちの1つであるTGF−βI型受容体(TβRI)が、TGF−βホモ二量体界面にまたがることによって結合することが示された(図1A)(Groppeら、Mol Cell 29巻:157〜168頁、2008年)ため、TGF−β1 Cys77→SerおよびTGF−β3 Cys77→Serバリアントがなぜかかる顕著なシグナル伝達活性を保持するかが明確にならなかった。
TGF−β単量体が非共有結合で二量化し、受容体に結合することによりシグナル伝達し、その結果(受容体のうちの少なくとも1つであるTβRIが二量体界面全体に結合するという事実により)非共有結合性二量体を安定化させると仮定した。TGF−ベータシグナル伝達の刺激物質よりもむしろ、阻害剤として機能するTGF−β単量体を得るため、主要な二量体化モチーフである界面のα−ヘリックス(α3)を柔軟なループで置き換えた操作された単量体を産生した(図1Aおよび1D)。これが、(a)疎水性の接触のため単量体が非共有結合的に二量化する可能性を制限し(図1B)、また(b)TGF−ベータ二量体界面にまたがることによって結合するTGF−βI型受容体(TβRI)のための接触面の大部分を除去する(図1C)ことにより、TGF−βが二量体化してTβRIを動員する能力を妨害すると考えられた。
方法
タンパク質の発現および精製
安定にトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において、プロドメインと結合した分泌タンパク質としてTGF−β1を発現させた。TGF−β1を産生するために用いる細胞系、およびそれに続く馴化培地からの成熟型のジスルフィド結合したTGF−β1ホモ二量体を単離する方法は、先行文献に記載されている(ZouおよびSun、Protein Expr Purif 37巻、265〜272頁、2004年)。ヒトホモ二量体TGF−β2(TGF−β2)、ヒトホモ二量体TGF−β3(TGF−β3)、ならびに、aviタグを有する(CullおよびSchatz、Methods Enzymol 326巻、430〜440頁、2000年)ホモ二量体TGF−β3(TGF−β3−avi)、単量体TGF−β2(mTGF−β2)、単量体TGF−β2(mTGF−β3)、ミニ単量体TGF−β1(mmTGF−β1)、ミニ単量体TGF−β2(mmTGF−β2)、ミニ単量体TGF−β3(mmTGF−β3)、高い親和性でのTβRII結合を可能にする7つの置換を有するミニ単量体TGF−β2(mmTGF−β2−7M)、および高い親和性でのTβRII結合を可能にする7つの置換を有するaviタグを有する(CullおよびSchatz、Methods Enzymol 326巻、430〜440頁、2000年)ミニ単量体TGF−β2(mmTGF−β2−7M)を含むバリアントを、E.Coliにおいて発現させ、封入体から天然のフォールディング状態のジスルフィド結合したホモ二量体(TGF−β2、TGF−β3、TGF−β3−avi)または単量体(mTGF−β1、mTGF−β2、mTGF−β3、mmTGF−β1、mmTGF−β2、mmTGF−β3、mmTGF−β2−7M、mmTGF−β2−7M−avi)にリフォールディングさせ、文献の記載(HuangおよびHinck、Methods Mol Biol 1344巻、63〜92頁、2016年)に従い、高分解能カチオン交換クロマトグラフィーを使用して均一に精製した(Source Q、GE Healthcare、Piscataway、NJ)。本試験において使用する二量体および単量体TGF−βの命名および主要な特徴を表1にまとめ、全配列を図8に示す。
成熟型受容体の残基1〜101にわたるヒトTβRI外部ドメイン(TβRI)、または成熟型受容体の残基1〜88にわたる、15のアミノ酸aviタグ(CullおよびSchatz、Methods Enzymol 326巻、430〜440頁、2000年)をC末端に有するバリアント(TβRI−ΔC−Avi)をE.Coliにおいて発現させ、前述したように封入体からリフォールディングし、均一に精製した(Zunigaら、J Mol Biol 354巻、1052〜1068頁、2005年)。成熟型受容体の残基15〜136にわたるヒトTβRII外部ドメイン(TβRII)、またはそのC末端にヘキサヒスチジンタグを有するもの(TβRII−His)をE.Coliにおいて発現させ、前述したように封入体からリフォールディングし、均一に精製した(Hinckら、J Biomol NMR 18巻、369〜370頁、2000年)。
溶解度アッセイ
TGF−β二量体および単量体を、100mM酢酸中で300μMまたはそれよりも高い濃度に濃縮し、100mMの酢酸またはリン酸緩衝食塩水(PBS、10mMのNaHPO、1.8mMのKHPO、137mMのNaCl、2.7mMのKCl、pH7.4)中に所定の濃度に希釈した。PBSに希釈した試料のpHを、NaOHの小アリコートを用いて最終pHが7.4となるよう調整した。340nmの試料の光散乱を、HP 8452ダイオードアレイ分光光度計(HP、Palo Alto、CA)を使用して測定した。試料をマイクロチューブへ移し、5分間20000×gで遠心分離し、上清の280nmの吸光度をNANODROP(商標)分光光度計(ThermoFisher、Waltham、MA)を使用して測定した。溶解度アッセイの結果を、図4A〜4Dに示す。
核磁気共鳴(NMR)分光測定
0.1%(w/v)の15NHCl、または0.1%(w/v)の15NHClおよび0.03%(w/v)の13C標識グルコースを含有するM9培地で細菌細胞を増殖させることにより、NMR用の15N、または15Nおよび13Cで放射性同位元素標識したmmTGF−β2およびmmTGF−β2−7Mの試料を調製した。全てのNMR試料を、10mMのリン酸ナトリウム、10mMの3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、5%のO、0.02%のw/vアジ化ナトリウム中、0.2mM〜0.4mMのタンパク質濃度で、pH4.7において調製した。全てのNMRデータを、37℃の試料温度で、700または800MHzで得た。高感度HNCACB(WittekindおよびMueller、J Magn Reson Ser B 101巻:201〜205頁、1993年)、CBCA(CO)NH(Grzesiekら、J Magn Reson Ser B 101巻:114〜119頁、1993年)、C(CO)NH(GrzesiekおよびBax、J Biomol NMR 3巻:185〜204頁、1993年)、HNCO(Kayら、J Magn Reson 89巻:496〜514頁、1990年)により回収および分析し、13C、15N捕捉グリッドの位置において25%のノンユニフォームサンプリング(NUS)を有するデータセットとして、mmTGF−β2およびmmTGF−β2−7Mのバックボーン共鳴割り当てを得た。先行文献(Kayら、Biochemistry 28巻:8972−8979頁、1989年)に記載のH検出パルス方式を使用して、70.95MHzの15N周波数、300°Kで、インターリービング方式でバックボーンアミド15N T弛緩パラメータを測定した。16〜192msで変化させる8〜10の遅延時間を使用し、各Tデータセットを回収した。T遅延時間の関数としての相対ピークの強度を、指数関数的に壊変する2つのパラメータにフィットさせて、T弛緩時間を得た。NMRPipeを使用し、NUSデータセットの13Cおよび15Nディメンジョンのミッシングポイントの予測に用いられるSMILEアルゴリズム(Yingら、J. Biomol. NMR 2016年)によりデータ処理した(Delaglioら、J Biomol NMR 6巻:277〜293頁、1995年)。データ解析は、NMRFAM−SPARKYを使用して実行した(Leeら、Bioinformatics 31巻:1325〜1327頁、2015年)。
SPR結合測定
図3A〜3Bに示されるTGF−β2およびmmTGF−β2を用いたSPR測定は、BIACORE(商標)3000 SPR(G.E.Healthcare、Piscataway、NJ)装置を使用して実行し、その際、CM5センサーチップ(G.E.Healthcare、Piscataway、NJ)の表面上に、アミン(カルボジイミドベースの)カップリングキット(G.E.Healthcare、Piscataway、NJ)を使用し、TGF−β2またはmmTGF−β2を直接固定化した。TGF−β3およびmmTGF−β2−7mを用いた、図3C、3Eおよび3G、ならびに図3D、3Fおよび3Hにそれぞれ示すSPR実験は、ストレプトアビジンコーティングされたCM5センサーチップ(GE Healthcare、Piscataway、NJ)上へ、適度な密度(50〜200RU)でビオチン化リガンドを捕捉させたBIACORE(商標)X100 SPR装置(G.E.Healthcare、Piscataway、NJ)を使用して実行した。N末端の15アミノ酸のaviタグを有するTGF−β3またはmmTGF−β2−7Mを発現させることによって、ビオチン化TGF−β3またはmmTGF−β2−7Mを作製した(CullおよびSchatz、Methods Enzymol 326巻、430〜440頁、2000年)。TGF−β3−aviまたはmmTGF−β2−7M−aviを、pH8.0で10mMのビシン中でTβRIIと結合させ、細菌にて発現させた触媒量のBirAリコンビナーゼ、ビオチンおよびATPと、記載(HuangおよびHinck、Methods Mol Biol 1344巻、63〜92頁、2016年)に従い、37℃で2時間、インキュベートすることによってビオチン化した。ビオチン化されたaviタグ付きTGF−β3またはaviタグ付きTGF−β2−7mを、94.9%の水/5%のアセトニトリル/0.1%のトリフルオロ酢酸で平衡化したC4逆相カラムと結合させ、アセトニトリルの直線勾配によって溶出させた。
図3A〜3Eに示すSPR測定は、HBS−EP緩衝液(10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.005%の界面活性剤P20、GE Healthcare、Piscataway、NJ)において、示される濃度範囲にわたる2倍希釈系列で示される受容体を注入して実施した。注入は2度行い、実験の開始時に10の緩衝液ブランクの注入を含めた。結合は、100mL/分の流速で、2〜3分間会合させ、続いて1分間またはそれよりも長く解離させて行った。各注入サイクル後、10mlの4Mのグアニジン・HCl、2MのNaClにより再生させた。プログラムScrubber2(Biologic software、Campbell、Australia)を使用しブランクフローセルおよび緩衝液ブランクによる応答を減算してデータを処理した。データの動態フィッティングは、Scrubber2による、単純1:1結合モデルの仮定にて実行した。図3Gおよび3Hに示すSPR測定を同様に実行したが、その際、2μMのTβRIIをランニング緩衝液および注入試料中に含有させた。SPR測定の結果を表2および図3A〜3Hに示す。
結晶化、構造決定および精密化
mmTGF−β2の結晶は、25℃で、10mMのMES(pH5.5)中の7.9mg/mLのタンパク質ストック液0.2μLを、0.2μLのウェルからの沈殿液、20%のPEG 3350、0.2Mのチオシアン酸ナトリウムと混合し、シッティングドロップにて形成させた。回収した結晶を、過剰な母液を除いた小さいナイロンループに装着し、データ収集前に、液体窒素でフラッシュ冷却した。Advanced Photon Source NE−CATビームライン24−ID−Cでデータを得、集積し、XDS(Kabsch、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 66巻、125〜132頁、2010年)を使用して解析した。サーチモデルとしてPDBエントリー2TGI(Daopinら、Science 257巻、369〜373頁、1992年)の短縮バージョンを使用し、PHASER(McCoyら、J Appl Crystallogr 40巻、658〜674頁、2007年)において実施される分子置換法により構造を決定した。座標はPHENIX(Adamsら、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 66巻、213〜221頁、2010年)を使用して精密化し、その際、ねじれ角力学とのシミュレーテッドアニーリングを行い、またCOOT(Emsleyら、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 66巻、486〜501頁、2010年)を使用した手動リビルディングに置き換えた。データ収集および精密化統計処理を表3に示す。
mmTGF−β2−7M:TβRII複合体の結晶は、25℃で、10mMのトリス(pH7.4)中の複合体の7.4mg/mLストック液1.0μLを、1.0μLの0.1MのHEPES(pH7.5)、60%のv/v(+/−)−2−メチル−2,4−ペンタンジオールと混合し、懸滴にて形成させた。回収した結晶をナイロンループに装着し、データ収集前に、液体窒素でフラッシュ冷却した。Advanced Photon Source 24−ID−Cでデータを得、集積し、HKL2000(OtwinowskiおよびMinor、Method Enzymol 276巻、307〜326頁、1997年)を使用して解析した。サーチモデルとしてTβRII(PDB 1M9Z;Boesenら、Structure 10巻、913〜919頁、2002年)およびmmTGF−β2を使用し、PHASER(McCoyら、J Appl Crystallogr 40巻、658〜674頁、2007年)において実施される分子置換法により構造を決定した。座標はPHENIX(Adamsら、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 66巻、213〜221巻、2010年)を使用して精密化し、その際、COOT(Emsleyら、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 66巻、486〜501頁、2010年)を使用した手動リビルディングに置き換えた。データ収集および精密化統計処理を表3に示す。
mmTGF−β2−7Mの結晶は、25℃で、20mMの酢酸中の10mg/mLタンパク質ストック液1.0μLを、0.8μLのウェルからの沈殿液、100mMの酢酸ナトリウム二塩基性三水和物(pH4.6)、25%の2−プロパノールおよび400mMの無水塩化カルシウム、ならびに0.2μLの5%n−オクチル−β−D−グルコシドと混合し、懸滴にて形成させた。回収した結晶をナイロンループに装着し、20%のグリセロールを含むウェル緩衝液中で低温保存し、窒素流においてフラッシュ冷却した。100Kにおいて、Saturn 944 CCD検出器を備えたRigaku FR−E Superbright発生器を使用してデータを収集し、CCP4(Winnら、Acta Crystallogr D 67巻、235〜242頁、2011年)においてMOSFLMを使用して処理した(Battyeら、Acta Crystallogr D 67巻、271〜281頁、2011年)。mmTGF−β2−7Mの構造は、共結晶構造に由来するmmTGF−β2−7Mの構造を使用し、TβRIIで分子置換することにより解析された。反復モデルの構築および精密化は、それぞれCOOT(Emsleyら、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 66巻、486〜501頁、2010年)およびPHENIXを使用して実行した。データ収集および精密化統計処理を表3に示す。
構造解析の結果を、図2A〜2D、5A〜5E、9A〜9Bおよび10A〜10Bに示す。
ルシフェラーゼアッセイ
CAGA12 TGF−βレポーターにより安定にトランスフェクトしたヒト胎生期腎臓293(HEK293)細胞を、ルシフェラーゼレポーターアッセイに使用した(Thiesら、Growth Factors 18巻:251〜259頁、2001年)。10%のウシ胎児血清(FBS)および1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において、安定にトランスフェクトされたCAGA12 TGF−βレポーターを含むHEK293細胞を維持した。TGF−β(TGF−β1、8pM;TGF−β2、20pM;TGF−β3、10pM)の一定の亜飽和濃度の存在した、TGF−β(TGF−β1、mTGF−β3またはmmTGF−β2−7M)の濃度系列、またはmmTGF−β2−7Mの濃度系列とともに16時間、細胞を処理した。0.1%(w/v)のBSAを含むDMEMにタンパク質を希釈した。16時間後に、細胞をTropix溶解緩衝液によって溶解させ(ThermoFisher、Waltham、MA)、ルシフェラーゼ活性をPromega GloMax照度計(Promega、Madison、WI)で測定した。ルシフェラーゼ活性を、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイにより測定した全タンパク質レベルに正規化した。Graphpad Prism 6を使用し、データをリガンド活性(EC50)およびリガンド阻害活性(IC50)の標準モデルにフィットさせた(Graphpad、La Jolla、CA)。結果を図6A〜6Bに示す。
時間分解FRETアッセイ
以下の精製されたタンパク質を用いて、TβRIおよびTβRIIを含有する複合体の形成に対するリガンドの要件を検討した:TGF−β3、mTGF−β3、mmTGF−β2−7M、ビオチン化TβRI−ΔC−AviおよびTβRII−His。最初に、TGF−β3:TbRII−His(1:2)、mTGF−β3:TβRII−His(1:1)およびmmTGF−β2−7M:TβRII−His(1:1)の二元複合体を、20μMで、50mMのトリス緩衝液(pH7.5)中で形成させ、4℃で保存した。抗His mAb(Tb−anti−His、CisBio、Bedford、MA)で標識されたドナーテルビウムクリプテートから、アクセプターXL665標識ストレプトアビジン(SA−665、CisBio、Bedford、MA)への蛍光の近位依存的な転移に基づく時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR−FRET)アッセイを用い、三元リガンドTβRII−His:ビオチン化TβRI−ΔC−Avi複合体の会合をモニターした。100nMまたは250nMのTGF−β3:TβRII−His(1:2)、mTGF−β3:TβRII−His(1:1)およびmmTGF−β2−7M:TβRII−His(1:1)複合体を含む50μLアッセイを、50nMのビオチン化TβRI−ΔC−Aviとインキュベートした。各50μl三元複合体形成アッセイではまた、2nMのTb−抗−Hisおよび30nM SA−665を含み、室温で2時間インキュベートした。6つの複製物で各条件を試験した。緩衝液対照(n=6)は、2nM Tb−抗−Hisおよび30nM SA−XL665のみを含んだ。各アッセイの緩衝液条件は、50mMのトリス、50mMのNaCl、pH7.5とした。コーニングブラック384ウェルの低フランジマイクロプレート(ThermoFisher、Waltham、MA)においてアッセイを実施した。2時間のインキュベートの後、BMG Labtech Pherastar FSマルチモードプレートリーダー(BMG Labtech Inc.、Cary、NC)上で、アッセイプレートにおけるテルビウム/XL−665 TR−FRETを測定した。337、490および665nmのフィルタを備えた光学モジュールを用い、337/490(テルビウム放出)および337/665(XL−665)放出の生データを発生させるTR−FRETをモニターした。665放出/490放出の比率を各条件で測定し、次に、試料対バックグラウンドのシグナルを反映する指標となるΔFを算出するために用いた。ΔFは、以下の方程式を使用して算出した:(Ratiosignal−Rationegative/Rationegative)×100。Ratiosignalとは、三元複合体または緩衝液対照を含むアッセイを意味する。Rationegativeとは、2つのアッセイ緩衝液対照(2nM Tb−抗−Hisおよび30nM SA−665)を意味する。緩衝液対照では、ΔFを算出するため、陰性対照として、6つの複製物中2つを割り当てた。ΔFは、残りの4つの緩衝液対照の複製物を用いて算出された。結果を図7A、7Bおよび14に示す。
分析用超遠心分離
mTGF−β3、mmTGF−β2およびmmTGF−β2−7Mを沈降速度によって分析し、単量体TGF−βの自己会合によるホモ二量体形成の平衡定数を決定した。mTGF−β3、mmTGF−β2およびmmTGF−β2−7Mを、クオーツウィンドウを装着したepon 2チャネルセンターピースにて280nmで各々測定し、100mMのNaClを含み、pH3.8に調整した15mMのリン酸ナトリウム緩衝液中27時間、20℃および42,000rpmで遠心分離した。UTHSCSAのCAUMAセンターにおいて、Beckman Optima XL−I分析用超遠心機を用い、強モードで300のスキャンを収集した。データ解析は、UltraScanリリース2130によって実行し(DemelerおよびGorbet、Analytical ultracentrifugation data analysis with Ultrascan-III、Analytical Ultracentrifugation: Instrumentation, Software, and Applications(Uchiyama, S.、Stafford, W.、およびLaue, T.編)、119〜143頁、Springer、2016年;Demelerら、A comprehensive data analysis package for analytical ultracentrifugation experiments、2016年)、Texas Advanced Computing CenterのLonestar−5で計算を実行した。(Demeler、Curr Protoc Protein Sci 7章、ユニット7 13、2010年)に記載のように、最初に沈降速度データを二次元スペクトル分析にフィットさせ、生データから時間的および放射状の不変ノイズを除去し、メニスカス位置にフィットさせた。次にデータを、アダプティブ時空間有限要素法(CaoおよびDemeler、Biophys J 95巻、54〜65頁、2008年)およびパラメータ最適化のための遺伝的アルゴリズム(Demelerら、Macromol Biosci 10巻、775〜782頁、2010年)を用いて個々の単量体−二量体モデルにフィットさせた。単量体−二量体モデルは、質量作用および可逆的会合挙動の原因であり、K(水力学的パラメータ)ならびに偏比容にフィットする一方、野性型または変異体のいずれかでは予測されたモル質量を仮定する。各データセットについてMonte Carlo分析(DemelerおよびBrookes、Colloid Polym Sci 286巻、129〜137頁、2008年)を100回反復して実施し、フィッティング統計値を得た。緩衝液の密度および粘性を、緩衝液組成に基づきUltraScanにより推定し、全ての水力学的値を、標準的な条件(20℃および水)に対して補正した。フィッティングの結果、ランダムな残差および超低RMSD値を有する優れたフィットであった。全ての結果を表4および図11〜13にまとめる。
結果
操作されたミニ単量体TGF−β(mmTGF−β)のデザイン
TGF−β受容体複合体の構造(Groppeら、Mol Cell 29巻、157〜168頁、2008年;Radaevら、J Biol Chem 285巻:14806〜14814頁、2010年)、ならびに、それに伴うTGF−β3 C77Sによる結合および架橋の研究(Zunigaら、J Mol Biol 354巻、1052〜1068頁、2005年;Groppeら、Mol Cell 29巻、157〜168頁、2008年;Huangら、EMBO J 30巻:1263〜1276頁、2011年)は、単量体TGF−βのシグナル伝達能力(TGF−β1 C77SまたはmTGF−β1、ならびに、TGF−β3 C77SまたはmTGF−β3)が、非共有結合的に二量体化するそれらの能力に由来し、それにより、それらの受容体に結合することを示唆した(図1Aおよび1C)。これは、二量体形成およびTβRIの結合に関与する残基を除去または変更することによって、単量体TGF−βとの受容体複合体会合を減少させ、または完全に除去することが可能であるはずであるという仮説を生じさせるものであった。おそらく単量体の自己会合に最も大きく貢献する構造モチーフは、「ヒール」α−へリックス(α−ヘリックス3)である(図1A))。このヘリックスは、非常に両親媒性が高く、対向する単量体の「パーム(掌)」を裏打ちする残基による多数の疎水的相互作用を有する(図1B)。このヘリックスはまた、TβRIの結合面の大部分を形成する(図1C)。したがって、α−ヘリックス3の除去が単量体の自己会合およびTβRIの結合を妨害すると仮定されたが、これがα−ヘリックス3から遠く離れたリガンドフィンガーチップを通じて発生するため、TβRII結合を損なわない(図1A)。
この仮説を評価するため、残基52〜71が除去され、Cys−77がセリンで置換された、TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3についての細菌発現構築物を作製した。これは全てのα−ヘリックス3、ならびにN末端上の5つのフランキング残基およびC末端上の3つのフランキング残基の欠失に対応する(図1D)。鎖4および5に架橋する拘束されないループを形成するために、β鎖4の最後の残基(Gly−48)とβ鎖5の最初の残基(Cys−77/Ser−77)との間に十分な数の残基を残すように、欠失の長さを選択した。二次的な考慮ではあるが、2つの(TGF−β2)、または3つの(TGF−β1および−β3)ループ形成残基も置換し、pH7.0で全長TGF−β1、−β2および−β3単量体全体の正味電荷が、α−ヘリックス3が削除された構築物では、それぞれ−0.9、+1.1および+4.4から、−3.1、+3.9および+6.1まで上昇した(図1D)。これより推論されることは、単量体の溶解度がホモ二量体のようにpH4.5〜9.5で低い(図4Aおよび4Bを参照)ことが、疎水性α−ヘリックス3の除去、およびpH7.0での正味電荷を人工的に増加させること、の両方によって改善され得る、ということである。
mmTGF−β2の単離および物理学的特徴付け
mmTGF−β1、mmTGF−β2およびmmTGF−β3と称する上記のTGF−β1、−β2および−β3の「ミニ単量体」をEscherichia Coliにおいて発現させ、不溶性の封入体形で蓄積させた。封入体を単離し、変性剤中で再構成し、精製した後、ミニ単量体を、先行文献記載のようにpH9.0のCHAPS含有緩衝液へ希釈して巻き戻した(Huangら、Methods Mol Biol 1344巻:63〜92頁、2016年)。ミニ単量体のフォールディングは大きく異なり、mmTGF−β2の大部分は、フォールディングの間、可溶化されたままであり、カチオン交換クロマトグラフィーによる精製の後、多量の単量体タンパク質が産生された一方、mmTGF−β1およびmmTGF−β3では、少量のみがフォールディングの間可溶化されたままであり、カチオン交換クロマトグラフィーによる精製の後、(TGF−β1)単量体タンパク質は得られず、また(TGF−β3)単量体タンパク質はごくわずかしか得られなかった。このパターンは、過去に全長野生型単量体からのTGF−βホモ二量体のフォールディングについて観察されたパターンを反映するものであり(Huangら、Methods Mol Biol 1344巻:63〜92頁、2016年)、またおそらく、各単量体に特異的な4つの分子内ジスルフィドを適切に形成する単量体の固有の傾向の違いを反映するものである。予想されたTβRIIの低い結合親和性のため、mmTGF−β2は、最も望ましくないバリアントであった。しかしながらこれは、TGF−β2のLys−25、Ile−92およびLys−94の、TGF−β1およびTGF−β3の対応する残基への置換が、高い親和性でTβRIIに結合する能力をTGF−β2に付与することを証明した先行研究に基づく対応指定可能な課題と考えられた(Baardsnesら、Biochemistry 48巻:2146〜2155頁、2009年;De Crescenzoら、J Mol Biol 355巻:47〜62頁、2006年)。
mmTGF−β2が上記の方法のさらなる開発に適するか否かを決定するため、フォールディング、溶解度および受容体結合特性に関して特徴付けを行った。フォールディングを評価するため、mmTGF−β2の15N標識サンプルを調製し、二次元H−15Nシフト相関スペクトルを記録することによって試験した(図2A)。その結果、天然の状態でフォールディングされたタンパク質に特有の非常に分散したスペクトルを示した。スペクトルは完全に割り当てることができ、また二次構造傾向を同定する割り当てられた化学シフトの分析は、特にTβRIIが結合するシステインノットおよびフィンガー領域によって形成されるパーム領域において、タンパク質が予想される二次構造を有することを示した(図9A)。この分析はさらに、残基47および56の間の新しく形成されたループには、α−ヘリックスまたはβ鎖を形成する確率がゼロに近いことを示し、逆平行の2つのβ鎖を連結するこの長さのループに期待されるように、このループがおそらく柔軟であることが示唆される。これは、バックボーン15NのT値の分析によって直接確認された。これらの値は、速い(ナノ秒〜ピコ秒)および中間の(マイクロ秒〜ミリ秒)の時間スケールでの動作に関する情報を提供するものであり、タンパク質の他の部分に対して新しく作製されたループに対応する領域において著しく増加しており(図9B)、すなわち、α−ヘリックス1およびβ鎖1を連結するN末端および短いループを除き、構造的に秩序立っていると考えられる。
三次元構造を直接調べるため、mmTGF−β2を結晶化させ、分子置換を使用し1.8Åの分解能でその構造を決定した(表3)。mmTGF−β2の全体のフォールドは、新たに作製されたループを除き、以前にTGF−β2について決定されたものと非常に類似することが示され、それは予想されるα−ヘリックス3に代わることを示すものであった(図2B)。mmTGF−β2の、TGF−β2の構造からの単量体とのスーパーインポーズは、mmTGF−β2のフィンガー領域においてTGF−β2と比較して最大約1.5Åの系統的置換があることを示す。フィンガーのみのスーパーインポーズが、0.2Å未満のバックボーン二乗平均平方根偏差およびフィンガーをパックし、安定化させるいくつかの残基の側鎖が同様の方向を向いていることで、それらが密接に対応することを示すため、かかる違いは、フィンガー領域の中心付近の単量体の屈曲の結果であって、フィンガー領域の構造の変化でないと考えられる(図2D)。かかる屈曲は、結晶学的非対称ユニットに存在するmmTGF−β2の2つの分子の重なりによってもサポートされ、またそれは、互いに関連してフィンガー領域の、小さいがまだ目立つ置き換えを示す(図2C)。NMR分析と整合するように、新たに作製されたループに対応する領域の電子密度が顕著に弱いのみならず、非対称ユニットからの2つの分子が異なる方向を向いていることが示された(図2C)。
TGF−β2に対するmmTGF−β2の同様のフォールディングは、特にTβRII−結合フィンガー領域において、それがまた同様にTβRIIに結合することを示唆した。これを評価するために、別々のフローセルに固定化したTGF−β2およびmmTGF−β2に対して、TβRIIの同じ濃度系列を注入した表面プラズモン共鳴(SPR)実験を実施した(図3Aおよび3B)。弱い結合のため親和性を数量化できなかったにもかかわらず、センサーグラムは同様な形状および濃度依存性を示した。これらのセンサーグラムは、以前の報告(Baardsnesら、Biochemistry 48巻:2146〜2155頁、2009年)と整合するようにmmTGF−β2とTβRIIの結合が弱いことを示し、またそれが質的にTGF−β2と同様であることを示した。
mmTGF−β2の溶解度は、その試料が、pH7.0において目立った沈殿なく、2〜3mg/mlの濃度で容易に調製できるため、TGF−β2および全長TGF−β2単量体(mTGF−β2)より顕著に良好であると考えられ、一方、後者の2つのタンパク質の試料は、これらの同じ条件では完全に沈殿した。溶解度を数量化するため、TGF−β2、mTGF−β2およびmmTGF−β2を100mMの酢酸(pH2.9)中の濃縮ストックとして調製したところ、それらは容易に溶解し、さらにそれをPBS(pH7.4)で希釈した。沈殿を評価するために340nMでの光散乱を測定し、次にサンプルを遠心分離し、タンパク質濃度を評価するために280nMの吸光度を測定した。これは、評価した全ての濃度範囲(7〜100μM)にわたり、中性pHでTGF−β2およびmTGF−β2の両方が効果的に不溶性であることを証明した(図4Aおよび4B)。これはTGF−βホモ二量体の公知の難溶性と整合しているが(Pellaudら、J Biol Chem 274巻:7699〜7704頁、1999年)、それはこの特性が全長単量体TGF−βにまで及ぶことを示す。ミニ単量体TGF−β2(mmTGF−β2)は対照的に、タンパク質濃度が40μMまたはそれよりも高いときに予想されるものと比較して、適度の光散乱および可溶タンパク質量の対応する適度の減少を示し、すなわち、実際には、完全ではなくとも、mmTGF−β2が中性pHで相当に可溶性であることを示した。これはNMRスペクトルにおいて反映されており、100〜200μMの15N mmTGF−β2サンプルが容易に調製できるにもかかわらず、スペクトルが弱く、タンパク質の可撓性部分の残基、すなわちN末端、α−ヘリックス1とβ鎖1との間の露出したループ、ならびにβ鎖4と5と間で新たに作製されたループから生じる検出可能なシグナルが得られるのみであることを示した。シグナルがタンパク質の可撓性部分から検出できるだけであるという事実は、mmTGF−β2がこれらの条件で大規模な可溶性の凝集物を形成することを示唆するものであった。試行錯誤により、これらの可溶性の凝集物が双性イオン界面活性剤CHAPSの添加によって除去できることが判明し、5mMのCHAPS濃度で大部分のNMRシグナルが現れ、またNMRの全シグナルが10mMのCHAPSで現れた。このように、図2Aに示すものを含む全てのNMRスペクトルは、10mMのCHAPSの存在下で記録した。
mmTGF−β2−7Mの単離および物理学的特徴付け
以上で示される結果は、mmTGF−β2が、天然の状態でフォールディングされるのにもかかわらず、それがTβRIIに結合する固有の親和性が低いことを示す。mmTGF−β2に対し、TGF−β1およびTGF−β3と同等の高い親和性でTβRIIに結合する能力を与えるために、TβRIIとの界面において異なることが以前示されたマウスTGF−β2の3つの残基Lys−25、Ile−92およびAsn−94(De Crescenzoら、J Mol Biol 355巻:47〜62頁、2006年;Hartら、Nat Struct Biol 9巻:203〜208頁、2002年)を、TGF−β1および−β3由来の対応する残基Arg−25、Val−92およびArg−94により置換した(図1Eおよび1F)。これらの3つの残基の置換は、以前の研究において、TGF−β1およびTGF−β3と同等のTβRII結合親和性をTGF−β2に付与するのに十分なことが示されている(Baardsnesら、Biochemistry 48巻:2146〜2155頁、2009年;De Crescenzoら、J Mol Biol 355巻:47〜62頁、2006年)。これにもかかわらず、TGF−β1と比較してTGF−β2においては異なる、TβRII−結合部位の周辺の4つのさらなる残基もまた、TGF−β1の対応する残基で置換した(R26K、L89V、T95KおよびI98V)(図1Eおよび1F)。以前の結果は、これが厳密には必要でないことを示唆したにもかかわらず、TβRIIに対するmmTGF−β2−結合部位の残基の実際の方向が、高親和性TGF−βアイソフォームであるTGF−β1およびTGF−β3のそれとできるだけ密接にマッチするか否かの確認を行った。mmTGF−β2−7Mと称する得られたこれら7つのアミノ酸置換を有する構築物を(図1E、図9および表1)、不溶性の封入体の形でE.Coliにおいて発現させた。mmTGF−β2と同様、タンパク質のほとんどは天然フォールディング緩衝液への再構成および希釈の後、溶液中に残っており、大量の均一な単量体が単離できた(E.Coli培地中4〜5mg/L)。
単離されたmmTGF−β2−7Mのフォールディングおよび均一性をNMRによって評価した結果、mmTGF−β2と同様、タンパク質が、2D H−15Nシフト相関スペクトルにおける予想される数のシグナル(図5A)、ならびにNMRでの第2のシフトの分析により決定されるような二次構造(図10A)を有することがわかった。mmTGF−β2−7Mの溶解度を前と同様評価した結果、示されるように、その挙動は同等か、またはおそらくmmTGF−β2のそれよりわずかに良好だった(図4Cおよび4D)。しかしながら、肉眼での溶解度のこのわずかな改善は、NMR分析のように顕微鏡観察における溶解度を変化させず、すなわち10mMのCHAPSを試料緩衝液に含有させてタンパク質中の全てのバックボーンのアミド共鳴のシグナルを検出することが未だ必要であったことを示した。
mmTGF−β2−7Mの三次元構造を、2.75Åの分解能で結晶学的に測定し(表3)、前述のとおり、全体のフォールドは、TGF−β2と比較して維持され、唯一の違いとしては、mmTGF−β2において記載したような単量体におけるわずかなヒンジの屈曲であった(図5Bおよび5C)。mmTGF−β2−7Mの新たに形成されたループに対応する領域の15N T弛緩時間の増加は、mmTGF−β2のそれと同等だった(図10B)。これは、mmTGF−β2−7Mにおいて新たに形成されたループに対応する領域における、非対称ユニットの3つの分子中の一部の鎖Aおよび大部分鎖Cで観察された密度の喪失が、動力学の増加によるものではなく、他の因子、最も考えられるのがmmTGF−β2構造と比較したmmTGF−β2−7Mの構造の低い分解能であることを示唆した(表3)。
mmTGF−β2−7Mが高親和性でTβRIIに結合する否かを決定するため、mmTGF−β2−7MおよびTGF−β3のバリアントを、N末端aviタグ付きで産生させ、ストレプトアビジンコーティングしたSPRセンサー上へのビオチン化および固定化の後、動力学的SPR実験を行い、TβRIIへのそれらの結合親和性を測定した(図3Cおよび3D)。得られたセンサーグラムは、以前にmmTGF−β2およびTGF−β2において得られたものと非常に異なっており、飽和の明白なパターンを示していた。センサーグラムはさらに、同様な形状ならびにK値(表2)を含むフィットしたパラメータを有することを示し、それは互いの実験誤差範囲内であり、またハイエンドにあるにもかかわらず、TGF−β1およびTGF−β3に対するTβRIIの結合について以前報告されたK値と整合していた(Huangら、EMBO J 30巻:1263〜1276頁、2011年;Baardsnesら、Biochemistry 48巻:2146〜2155頁、2009年;De Crescenzoら、J Mol Biol 355巻:47〜62頁、2006年)。
高い親和性でのTβRII結合を可能にする相互作用が、TGF−β1およびTGF−β3と比較してmmTGF−β2−7Mにおいて維持されたか否かを決定するため、mmTGF−β2−7M・TβRII複合体を結晶化し、その構造を1.88Åの分解能で決定した(表3)。mmTGF−β2−7M・TβRII複合体の全体の構造は、TGF−β3・TβRII・TβRI複合体の構造からの1つのTβRII結合単量体のそれと非常に類似していることが示され、そこでは、TβRIIはmmTGF−β2−7Mのフィンガーチップと、TGF−β3のそれと基本的に区別がつかない態様で結合していた(図5D)。高親和性結合に最も著しく貢献することが公知の相互作用は、これまでに決定されていたTGF−β1・TβRIIおよびTGF−β3・TβRII複合体と比較して、mmTGF−β2−7M・TβRII複合体においても完全に維持されることがさらに示された(1.8Åに決定されたTGF−β3・TβRII複合体(Hartら、Nat Struct Biol 9巻:203〜208頁、2002年)が、現在までに決定された最も高い分解能の構造であることを示す)(図5E)。これは、TGF−βフィンガー間の疎水性ポケットのTβRIIからのIle−53のパッキング、およびフィンガー1/2と3/4を連結させるループのチップ上の、それぞれTGF−βArg−25とArg−94との間に形成される水素結合のイオン対、およびTβRII(図5E)上のGlu−119とAsp−32のカルボキシレート基、を含む。
mmTGF−β2−7Mの阻害活性およびその根底にあるメカニズム
上記の結果は、mmTGF−β2−7MがTGF−βシグナル伝達のドミナントネガティブ阻害剤として機能するために必要となる必須の属性の1つを備えていることを示し、すなわちそれは、TGF−β1およびTGF−β3のそれと同等の高い親和性でTβRIIに結合する能力である。mmTGF−β2−7Mがシグナルを発し得るか否か、もしそうでなければ、それが阻害剤として機能し得るか否かを直接判断するため、CAGA12プロモーターの制御下のTGF−βルシフェラーゼレポーターで安定にトランスフェクトしたHEK293細胞を、TGF−βの濃度を増加させて処理することによってTGF−βシグナル伝達を評価した(Thiesら、Growth Factors 18巻:251〜259頁、2001年)。その結果、二量体TGF−β1(TGF−β1)および全長単量体TGF−β3(mTGF−β3)では、シグモイド状にルシフェラーゼ応答が増加し、約25pMのTGF−β1および250pMのmTGF−β3の濃度によって測定されるルシフェラーゼ応答がさらに増加しないことが示された。これは、(全長)単量体TGF−β1および−β3が、それらの二量体相対物に対して効力が5分の1〜15分の1であったことを示した以前の報告と整合している(Zunigaら、J Mol Biol 354巻、1052〜1068頁、2005年;Amatayakul-Chantlerら、J Biol Chem 269巻:27687〜27691頁、1994年)。正規化されたルシフェラーゼ応答を、リガンド依存的な活性化の標準的モデルに容易にフィットさせることができ、TGF−β1に対しては12.4±1.5pM、mTGF−β3に対しては182±16pMのEC50値を得た。TGF−β1およびmTGF−β3での値は、以前TGF−β1についてAmatayakul−Chantlerら(J Biol Chem 269巻:27687〜27691頁、1994年)により、またmTGF−β3についてのZunigaら(J Mol Biol 354巻、1052〜1068頁、2005年)により報告された値とほぼ一致した。TGF−β1およびmTGF−β3で観察された強力なサブナノモル濃度のシグナル伝達活性は、mmTGF−β2−7Mのそれとは対照的であり、後者は、mTGF−β3の飽和応答をもたらした濃度(約200pM)、または最高4桁高い濃度で検出可能なシグナル伝達活性を有さなかった(図6A)。したがって、mmTGF−β2−7Mはシグナル伝達活性が完全に失われたか、または、シグナル伝達活性を有してもmTGF−β3の10,000分の1未満の効力であった。
さらにmmTGF−β2−7Mの特性を解析するため、同じHEK293ルシフェラーゼレポーター細胞系を、一定のEC50濃度以下の二量体TGF−β1(8.0pM)と、mTGF−β3またはmmTGF−β2−7Mの濃度を増加させて刺激する競合実験を行った。その結果、mTGF−β3がmTGF−β3単独と同様の中間点濃度によりシグナル伝達をさらに刺激することを示した(図6B)。フィットさせたEC50値は、図6Aに示されるデータの182±16pMのEC50、および図6Bに示されるデータの194±36pMのEC50により、これを確認するものである。mmTGF−β2−7Mの挙動は大きく異なり、10nMの濃度まで添加したとき、シグナル伝達活性の検出可能な変化がなく、濃度を100nMに増加させたとき、検出可能なシグナル伝達活性が激減してなくなった(図6B)。これは、mmTGF−β2−7Mがシグナル伝達活性を実際に有さず、完全にTGF−βシグナル伝達を遮断し、阻害する機能を発揮できることを示す。正規化されたルシフェラーゼ反応を、リガンド依存的な阻害の標準的モデルに容易にフィットさせることができ、68±7nMのIC50値を得た。同様の実験から、mmTGF−β2−7Mもまた、他のTGF−βアイソフォーム、TGF−β2およびTGF−β3に対して強力な競合的阻害剤として機能することが示され、測定されたIC50値(TGF−β2のIC50が19±3nM、TGF−β3のIC50が21±8nM)は、TGF−β1で測定された数値に対して2〜3倍であった(図15Aおよび15B)。これらのIC50値は、本明細書に報告されるmmTGF−β2−7Mを含む高親和性TGF−βアイソフォームのTβRIIとの結合について報告された親和性の範囲の下限値にある(表2)。これは、mmTGF−β2−7Mが内因性TβRIIに対して結合および遮断することによって、TGF−βシグナル伝達を阻害するよう機能することを示唆する。測定された効力が、最も強いTβRIIに対するTGF−β1およびTGF−β3の結合親和性(140nM)であるとして以前に報告された(9)ものより強度であるという事実は、他の要因(例えば形質膜とのmmTGF−β2−7Mの非特異的な会合)がその阻害活性の強化に役立ち得ることを示唆する。
mmTGF−β2−7Mが明らかなシグナル伝達活性を有さず、低ナノモル濃度でのTGF−βシグナル伝達の阻害剤として機能するという知見は、α−ヘリックス3の除去が、単量体の非共有結合的会合を減少させ、TβRI結合を非常に減衰させ、または消失させることを示唆する。これを直接評価するため、SPR実験を行い、mmTGF−β2−7Mが、TβRIIの存在下でTβRIを動員できるか否かを決定した。これを行うため、TβRIの濃度を増加させて、またTβRII(2μM)の略飽和量の存在下での同じTβRI濃度の系列を、上記のTβRII結合測定に使用した同じTGF−β3およびmmTGF−β2−7Mを有するSPRチップ表面に注入した。これは、TβRI単独でのTGF−β3およびmmTGF−β2−7Mへの結合がごくわずかであることを示したが(図3Eおよび3F)、TGF−β3とは異なり、TβRIIに結合したmmTGF−β2−7MはTβRIを動員することができない(図3Gおよび3H)。これは、TβRIIに結合したmTGF−β3がTβRIに結合しそれを動員するその能力に関して、著しく、または完全に損なわれたというHuangら(EMBO J 30巻:1263〜1276頁(2011年))によって報告された過去の結果と整合している。これはまた、TβRIIに結合したTGF−β単量体はTβRIに結合しそれを動員することができないというさらなる証拠を提供するものであるが、mmTGF−β2−7Mがセンサーの表面に固定化されていたため、この結果のみでは、mmTGF−β2−7Mが非共有結合で二量体化し、TβRIに結合しそれを動員し得るか否かについてのいかなる洞察も提供しない。
これらの問題に直接対処するため、2つの溶液ベースの技術、すなわち分析用超遠心分離(AUC)および時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR−FRET))を使用した。AUC実験は、半径方向位置、およびmTGF−β3、mmTGF−β2およびmmTGF−β2−7Mが単量体が完全に可溶化される酸性条件(pH3.8)で沈殿した時間の関数としての280nmでの全UV吸収を測定することによって行った。AUCデータは、全3つの単量体について放物線状に形成されるvan Holde−Weischet沈降係数分布プロットを示し、各々が、可逆的な自己会合により二量体または他の高次オリゴマーを形成することと整合していた。どの種が溶液に存在し得るかをより正確に決定するため、有限要素分析を用い、考えられる最も単純なモデル、すなわち個別の単量体−二量体平衡にデータをフィットさせた。フィッティング手順の結果、単純な単量体−二量体モデルへの全3つの単量体のほぼ完全なフィットがなされ、それは(a)時間的および放射状に不変のノイズ(黒)の除去後、生データによるフィットさせた曲線(赤)間の近接した重なり、および(b)残差における任意の系統的偏差の欠如により示された(図11〜13)。フィットさせたパラメータはさらに、自己会合のためのKがmmTGF−β2およびmmTGF−β2−7Mと比較してmTGF−β3では1桁高いことを示した。したがって、ヒールヘリックス(α3)の除去は二量体を形成する単量体の自己会合を減少させるが、それは二量体形成を完全に消失させない。
TR−FRETを用いて、二量体および単量体のTGF−βの、TβRIおよびTβRIIに結合して一緒にする能力を評価した。これは、それぞれタグを付された形のTβRIIおよびTβRIを作製し、蛍光ドナーおよびアクセプターで標識したタンパク質とこれらのタグを結合させることにより行った。TβRIIにはC末端Hisタグを付け、テルビウムクリプテート標識抗Hisモノクローナル抗体蛍光ドナーに結合させ、またTβRIにはN末端aviタグを付け、酵素的ビオチン化の後、それを色素標識(XL−665)ストレプトアビジン蛍光アクセプター(図7A)に結合させた。タグを付された受容体に対するTGF−βの添加はそれらを一緒にし、結果としてアクセプターおよびドナー放出蛍光強度の比率として定義されるΔF値を大きく増加させる。TR−FRETアッセイを図14に示すデータによって示し、またTGF−β3全長単量体、mTGF−β3および高親和性でTβRIIに結合するTGF−β2ミニ単量体(mmTGF−β2−7M)の、TβRIおよびTβRIIに結合し一緒にする能力を比較するためにここで使用した。mTGF−β3についてのTR−FRETシグナルは、TGF−β3と同等の結果を示し、TGF−β濃度が100または250nMであるか否かには依存しなかった(図7B)。mmTGF−β2−7MのTR−FRETシグナルは、対照的に、緩衝液対照の誤差範囲内であり、これはTGF−β濃度に依存しなかった(図7B)。これらの結果は、これらの条件では、mTGF−β3が全ての能力を保持してTβRIおよびTβRIIと非共有結合性の二量体複合体を構築するが、これらの同じ条件ではmmTGF−β2−7Mはその能力を有さないことを示すものである。これらの結果は、AUCの結果とともに、ヒールヘリックスの除去が予想される効果をもたらし、その除去が二量体形成を減少させたが排除はせず、二量体が形成される場合であっても、それらはTβRIに結合しそれを動員することができないことを示す。
考察
TGF−βは、多くのヒト疾患の進行を促進する役割を果たすが(Dietzら、Nature、352巻、337〜339頁、1991年、Biernackaら、Growth Factors、29巻、196〜202頁、2011年、Massague、Cell、134巻、215〜230頁、2008年、Loeysら、Pediatr Endocrinol Rev、10巻、417〜423頁、2013年)、この20年程の間、前臨床試験および臨床的試験において、ヒト用に承認された阻害剤はなかった。本明細書に示される結果は、操作されたTGF−β単量体(Cys−77およびヒールα−ヘリックス(α3)を欠失)が、20〜70nMの範囲のIC50値により強力にTGF−β1、−β2および−β3のシグナル伝達を遮断および阻害する機能を奏することを示す(図6Bおよび図15)。この新規な阻害剤は、他の種類の阻害剤が有する限界、例えばTGF−βの天然の高い特異性を克服するいくつかの属性を有し、ゆえに、TβRIIに対する阻害剤は、はるかにより無差別なTGF−βキナーゼ阻害剤と比較して、はるかにより高い特異性をTGF−βIIに付与することができ、したがって好ましくない副作用を低減する。さらに、阻害剤のサイズが小さい(約10kDa)ことにより、TGF−βが疾患の進行を亢進する腫瘍および他の高密度な組織を透過する能力が非常に高くなり、それは非常により大きく(約150kDa)、血管および高灌流器官の間隙のみを占める傾向があるIgG抗体と比較して明らかに有利である(Meibohm(2012年)、Therapeutic Proteins: Strategies to Modulate Their Plasma Half-Lives(Kontermann R.編)、23〜38頁、Wiley-Blackwell、Weinheim、Germany、Meibohmおよびraeckman(2008年)、「Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of Peptides and Protein Drugs」、Pharmaceutical Biotechnology: Fundamentals and Applications(Crommelin D. J. A.、Sindelar R. D.、およびMeibohm B.編)、95〜123頁、Informa Healthcare、New York)。この新規な阻害剤の他の利点としては、その高い固有の安定性が挙げられ、それは、4つのフィンガーをまとめる4つの分子内ジスルフィド結合、および天然型TGF−β二量体または全長TGF−β単量体と異なり、それが中性pHの水における溶解度が非常に高いという事実によるものである。
TGF−β受容体複合体の構造は、過去に発表された化学的架橋データを考え合わせると、TGF−β1 C77SおよびTGF−β3 C77Sの強力なシグナル伝達活性は、単量体が非共有結合的に二量体化し、次にそれらが(TβRI・TβRII)ヘテロ四量体に会合する能力に起因することを示唆した。本実施例の結果、すなわち非共有結合性の二量体形成を評価するために用いたAUC実験、およびTβRIおよびTβRIIによる複合体会合体を評価するために用いたTR−FRET実験の結果は、このさらなる証拠を提供した。AUCデータは、全長単量体TGF−β3、mTGF−β3が自己会合し、4.1μMの二量体化定数により二量体を形成することを示した(表4)。TR−FRETデータは、mTGF−β3が、0.1または0.25μMの濃度で、適切な濃度のTβRIおよびTβRII外部ドメインの存在下で、二量体TGF−β3と同程度にTβRI・TβRII複合体を会合させることを示した(図7B)。これが、mTGF−β3濃度(0.1〜0.25μM、図7B)が自己会合のためのK値より1桁超低い条件であっても生じる(4.1μM、表4)ということは、受容体結合もまた顕著にTβRI・TβRII複合体の会合に関与することを示す。したがって、TβRI・TβRII複合体と、mTGF−β3および(おそらくmTGF−β1も)との会合は、(タンパク質のフォールディングに非常に似た)協同プロセスであると考えられ、かかるプロセスでは、単量体−単量体、非共有結合性の二量体−受容体および受容体−受容体相互作用を含む複数の弱い相互作用が協働して、熱力学的に安定なTGF−β・TβRI・TβRII複合体の形成を可能にする。この態様による協働的会合はおそらく、mTGF−β1およびmTGF−β3の、単量体の自己会合K値より4桁超低い(EC50値約0.1nM 対 自己会合のためのK値4.1μM)濃度でシグナル伝達を誘導する能力に起因するものである。
TGF−β単量体からのヒールヘリックスの除去は、TR−FRETデータ(図7B)および細胞ベースのシグナル伝達データ(図6Aおよび6B)で示すように、TβRI・TβRII複合体の協働的会合を防ぐ観点から非常に効果的であることを示した。AUCデータは、ヒールヘリックスの除去が結果として単量体−単量体相互作用を1桁弱めることを示した(表4)。図3Gおよび3Hに示されるSPRデータはさらに、TβRIIが結合した形のmmTGF−β2−7MがTβRIと結合しそれを動員することができないことを示し、それはTGF−βの両方の鎖ならびにTβRIIによって形成されるコンポジット界面とTβRIとの結合を示す、報告されたTGF−β受容体複合体の構造に基づき予想される(Groppeら、Mol Cell 29巻、157〜168頁、2008年、Radaevら、J Biol Chem、285巻、14806〜14814頁、2010年)。したがって、そのデータは、操作された単量体が自己会合する傾向が低いことが、形成されたいかなる二量体へのTβRIの結合が非常に弱いと予想されることと考え合わせると、mmTGF−β2−7MがTβRI・TβRII複合体をまとめられないことの原因となることを示す。これはシグナル伝達活性の欠如を説明し、またこれは、高い親和性でのTβRIIとの結合の保持と併せると、阻害的活性を説明するものである。
他のII型受容体のファミリーであるアクチビンII型受容体II、アクチビンII型B受容体、BMPII型受容体および抗MullerianホルモンII型受容体は、TβRIIと同様、GFナックルに結合し、GFフィンガーチップには結合しないことが示され、またはそうであることが予測される(Hinckら、Cold Spring Harb Perspect Biol 8巻:a022103、2016年)。にもかかわらず、それらは、全てのI型受容体のファミリーにおいて示され、または予測されるような、両方の単量体でなく単一のGF単量体に由来する残基を接触させることでのみ結合するというTβRIIと同じ特性を共有する(Hinckら、Cold Spring Harb Perspect Biol 8巻:a022103、2016年)。これは、本発明で報告した、単量体の全体構造に影響を及ぼすことなくα3を除去できることが示された構造と考え合わせると(図2B〜2Dおよび図5B〜5E)、阻害剤として機能するヒールヘリックスを欠失するファミリーの他のGF単量体を作製し得ることを示唆するものである。このタイプの阻害剤は、in vivoでの特定のリガンドの役割を解析するための研究用ツールから、ファミリーの他のリガンドによる高活性シグナル伝達によって亢進される疾患(例えばアクチビンによるがん悪液質)を処置するための臨床的に有用な阻害剤に至るまで、幅広い利用可能性を有する(Coerverら、Mol Endocrinol 10巻、534〜543頁、1996年)。
開示される発明の原理を適用できる多くの考えられる実施形態に鑑みて、この例示された実施例は、本発明の好適な例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないと認識すべきである。むしろ本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、これらの特許請求の範囲および技術思想に包含される全てを、本発明として特許請求する。

Claims (47)

  1. 組換えトランスフォーミング増殖因子(TGF)−β単量体であって、
    (i)配列番号2の残基77に対応するアミノ酸残基におけるシステインからセリンへの置換と、
    (ii)配列番号2のアミノ酸残基52〜71に対応するα3ヘリックスの欠失と、
    (iii)組換えTFG−β単量体の正味電荷を増加させる、野生型TFG−β単量体と比べて少なくとも1個のアミノ酸置換と
    を含む、組換えTGF−β単量体。
  2. TGF−βII型受容体(TβRII)に対する前記組換えTGF−β単量体の親和性を高める、野生型TFG−β2単量体と比べて少なくとも1個のアミノ酸置換をさらに含む、請求項1に記載の組換えTGF−β単量体。
  3. ヒトTGF−β2単量体である、請求項1または請求項2に記載の組換えTGF−β単量体。
  4. 前記単量体の正味電荷を増加させる前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、
    配列番号2の残基51に対応するアミノ酸残基におけるロイシンからアルギニンへの置換;
    配列番号2の残基73に対応するアミノ酸残基におけるアラニンからリジンへの置換;または
    配列番号2の残基51に対応するアミノ酸残基におけるロイシンからアルギニンへの置換、および残基73に対応するアミノ酸残基におけるアラニンからリジンへの置換の両方
    を含む、請求項3に記載の組換えヒトTGF−β2単量体。
  5. TβRIIに対する前記単量体の親和性を高める前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、配列番号2の残基23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99に対応するアミノ酸残基、またはそれらの2つもしくはそれよりも多い残基の任意の組合せにおいて置換を含む、請求項3または請求項4に記載の組換えヒトTGF−β2単量体。
  6. TβRIIに対する前記単量体の親和性を高める前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、残基23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36または37に少なくとも1個の置換、および残基89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99に少なくとも1個の置換を含む、請求項5に記載の組換えヒトTGF−β2単量体。
  7. TβRIIに対する前記単量体の親和性を高める前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、残基25におけるリジンからアルギニン、残基26におけるアルギニンからリジン、残基89におけるロイシンからバリン、残基92におけるイソロイシンからバリン、残基94におけるアスパラギンからアルギニン、残基95におけるスレオニンからリジン、残基98におけるイソロイシンからバリン、またはそれらの2つもしくはそれよりも多い任意の組合せを含む、請求項6に記載の組換えヒトTGF−β2単量体。
  8. 残基25におけるリジンからアルギニン、残基26におけるアルギニンからリジン、残基89におけるロイシンからバリン、残基92におけるイソロイシンからバリン、残基94におけるアスパラギンからアルギニン、残基95におけるスレオニンからリジン、および残基98におけるイソロイシンからバリンを含む、請求項7に記載の組換えヒトTGF−β2単量体。
  9. 配列番号8または配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項3から8のいずれか一項に記載の組換えヒトTGF−β2単量体。
  10. ヒトTGF−β1単量体である、請求項1または請求項2に記載の組換えTGF−β単量体。
  11. 前記単量体の正味電荷を増加させる前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、
    配列番号1の残基51に対応するアミノ酸残基におけるイソロイシンからアルギニンへの置換;
    配列番号1の残基74に対応するアミノ酸残基におけるアラニンからリジンへの置換;
    配列番号1の残基75に対応するアミノ酸残基におけるアラニンからセリンへの置換;または
    配列番号1の残基51に対応するアミノ酸残基におけるイソロイシンからアルギニンへの置換、残基74に対応するアミノ酸残基におけるアラニンからリジンへの置換、および残基75に対応するアミノ酸残基におけるアラニンからセリンへの置換
    を含む、請求項10に記載の組換えヒトTGF−β1単量体。
  12. 配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項10または請求項11に記載の組換えヒトTGF−β1単量体。
  13. ヒトTGF−β3単量体である、請求項1または請求項2に記載の組換えTGF−β単量体。
  14. 前記単量体の正味電荷を増加させる前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、
    配列番号3の残基51に対応するアミノ酸残基におけるロイシンからグルタミン酸への置換;
    配列番号3の残基72に対応するアミノ酸残基におけるアラニンからグルタミン酸への置換;
    配列番号3の残基74に対応するアミノ酸残基におけるアラニンからアスパラギン酸への置換;または
    配列番号3の残基51に対応するアミノ酸残基におけるロイシンからグルタミン酸への置換、残基72に対応するアミノ酸残基におけるアラニンからグルタミン酸への置換、および残基74に対応するアミノ酸残基におけるアラニンからアスパラギン酸への置換
    を含む、請求項13に記載の組換えヒトTGF−β3単量体。
  15. 配列番号9のアミノ酸配列を含む、請求項13または請求項14に記載の組換えヒトTGF−β3単量体。
  16. PEG化されている、請求項1から15のいずれか一項に記載の組換えTGF−β単量体。
  17. グリコシル化または高グリコシル化されている、請求項1から15のいずれか一項に記載の組換えTGF−β単量体。
  18. 請求項1から17のいずれか一項に記載の組換えTGF−β単量体および異種タンパク質を含む、融合タンパク質。
  19. 前記異種タンパク質がタンパク質タグを含む、請求項18に記載の融合タンパク質。
  20. 前記異種タンパク質がFcドメインを含む、請求項18に記載の融合タンパク質。
  21. 前記異種タンパク質がアルブミンまたはアルブミン結合ポリペプチドを含む、請求項18に記載の融合タンパク質。
  22. 前記異種タンパク質が、抗体、その抗原結合断片、または標的化部分を含む、請求項18に記載の融合タンパク質。
  23. 一本鎖ポリペプチドである、請求項18に記載の融合タンパク質。
  24. 二量体ポリペプチドを形成する、請求項18に記載の融合タンパク質。
  25. ヘテロ二量体である、請求項18に記載の融合タンパク質。
  26. 多量体である、請求項18に記載の融合タンパク質。
  27. 放射線療法剤、化学療法のための細胞傷害剤、または薬物を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の組換えTGF−β単量体、または請求項18から26のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
  28. イメージング剤、蛍光色素、または蛍光タンパク質タグを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の組換えTGF−β単量体、または請求項18から26のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
  29. 請求項1から17のいずれか一項に記載の組換えTGF−β単量体、または請求項18から26のいずれか一項に記載の融合タンパク質、および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む、組成物。
  30. 細胞におけるTGF−βシグナル伝達を阻害する方法であって、前記細胞を、請求項1から17のいずれか一項に記載の組換えTGF−β単量体、請求項18から26のいずれか一項に記載の融合タンパク質、または請求項29に記載の組成物と接触させることを含む、方法。
  31. in vitro方法である、請求項30に記載の方法。
  32. 前記組換えTGF−β単量体、融合タンパク質または組成物を、異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害を有する対象に投与することを含む、in vivo方法である、請求項30に記載の方法。
  33. 対象における異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害を処置する方法であって、請求項1から17のいずれか一項に記載の組換えTGF−β単量体、請求項18から26のいずれか一項に記載の融合タンパク質、または請求項29に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
  34. 異常なTGF−βシグナル伝達に関連する前記疾患または障害が、線維性障害である、請求項32または請求項33に記載の方法。
  35. 異常なTGF−βシグナル伝達に関連する前記疾患または障害が、乳がん、脳がん、膵臓がん、前立腺がんまたは皮膚がんである、請求項32または請求項33に記載の方法。
  36. 異常なTGF−βシグナル伝達に関連する前記疾患または障害が、眼疾患である、請求項32または請求項33に記載の方法。
  37. 異常なTGF−βシグナル伝達に関連する前記疾患または障害が、結合組織の遺伝性障害である、請求項32または請求項33に記載の方法。
  38. 請求項1から17のいずれか一項に記載の組換えTGF−β単量体をコードする、単離された核酸分子。
  39. プロモーターに作動可能に連結された、請求項38に記載の核酸分子。
  40. 請求項38または請求項39に記載の核酸分子を含むベクター。
  41. 請求項38または請求項39に記載の核酸分子、または請求項40に記載のベクターを含む単離された細胞。
  42. Tリンパ球である、請求項41に記載の単離された細胞。
  43. 対象における異常なTGF−βシグナル伝達に関連する疾患または障害を処置する方法であって、請求項41または請求項42に記載の単離された細胞を前記対象に投与することを含む、方法。
  44. 異常なTGF−βシグナル伝達に関連する前記疾患または障害が、線維性障害である、請求項43に記載の方法。
  45. 異常なTGF−βシグナル伝達に関連する前記疾患または障害が、乳がん、脳がん、膵臓がん、前立腺がんまたは皮膚がんである、請求項43に記載の方法。
  46. 異常なTGF−βシグナル伝達に関連する前記疾患または障害が、眼疾患である、請求項43に記載の方法。
  47. 異常なTGF−βシグナル伝達に関連する前記疾患または障害が、結合組織の遺伝性障害である、請求項43に記載の方法。
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