以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で「前」とは、コンバイン100が刈取時に進行する方向を意味し、「後」とは、その反対の方向を意味する。また、「左」及び「右」とは、後述の運転座席12に前向きに座るオペレータから見て左及び右を意味する。図1は、本発明の一実施形態に係るコンバイン100の側面図である。図2は、コンバイン100の平面図である。
図1に示す本実施形態のコンバイン100は、いわゆる自脱型コンバインとして構成されている。このコンバイン100は、左右1対の走行クローラ2によって支持された機体1を備えている。
機体1の前部には、穀稈を刈り取る6条刈用の刈取装置(刈取装置)3が配置されている。図1に示すように、刈取装置3は刈取入力パイプ52を備えている。刈取装置3は、刈取入力パイプ52の軸線まわりで昇降可能に、機体1に取り付けられている。コンバイン100は、刈取装置3と機体1とを連結する油圧シリンダ4を備えており、この油圧シリンダ4が伸縮することで、刈取装置3を昇降させることができる。
機体1は、フィードチェーン6を有する脱穀装置(脱穀部)5と、脱穀後の穀粒を貯留するグレンタンク7と、グレンタンク7内の穀粒を機体の外部に排出する穀粒排出オーガ(排出部)8と、を備える。脱穀装置5及びグレンタンク7は左右に並べて設けられ、脱穀装置5が左側、グレンタンク7が右側に配置される。
機体1の右側前部であってグレンタンク7の前方には、運転部10が設けられている。運転部10は、オペレータの居住空間を構成するキャビン11と、オペレータが座る運転座席12と、オペレータに操作される操作部13と、を備える。運転座席12及び操作部13は、キャビン11の内部に配置されている。
機体1は、運転座席12の下方に配置された動力源としてのエンジン20を備える。本実施形態において、このエンジン20はディーゼルエンジンとして構成されている。
図1に示すように、機体1の底部には左右のトラックフレーム21が配置されている。トラックフレーム21には、駆動スプロケット22と、テンションローラ23と、複数のトラックローラ24と、が設けられている。駆動スプロケット22は、走行クローラ2にエンジン20の動力を伝達して駆動する。テンションローラ23は、走行クローラ2のテンションを保持する。トラックローラ24は、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する。
刈取装置3は、刈取入力パイプ52及び図示しないパイプ部材等からなる刈取フレームを備える。この刈取フレームは、刈取入力パイプ52の軸線を中心として回動可能となるように機体1に取り付けられている。
刈取装置3は、刈刃装置47と、穀稈引起し装置48と、穀稈搬送装置(搬送装置)49と、分草体50と、を備える。また、図2に示すように、左端の分草体50から右端の分草体50までの間隔を刈り幅と称する。刈刃装置47は、バリカン式の刈刃を有しており、圃場の未刈穀稈の株元を切断することができる。穀稈引起し装置48は、圃場の未刈穀稈を引き起こす。穀稈搬送装置49は、刈刃装置47によって刈り取られた穀稈を搬送する。分草体50は、図2に丸印で示す未刈穀稈101の6条分を1条ずつ分草する。
刈取フレームの下方に刈刃装置47が配置され、刈取フレームの前方に穀稈引起し装置48が配置されている。穀稈引起し装置48とフィードチェーン6の前端部(送り始端側)との間に穀稈搬送装置49が配置されている。分草体50は、穀稈引起し装置48の下部前方に突状に設けられている。
この構成で、コンバイン100は、エンジン20によって走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈穀稈を連続的に刈り取ることができる。
図1に示すように、脱穀装置5は、穀稈脱穀用の扱胴26と、揺動選別盤27と、唐箕ファン28と、処理胴29と、排塵ファン30と、を備える。扱胴26は図示しない多数の扱歯を備えており、扱胴26が回転することによって、扱歯により穀稈から穀粒を分離することができる。揺動選別盤27は、扱胴26の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別機構として構成される。唐箕ファン28は、揺動選別盤27に選別風を供給する。処理胴29は、扱胴26の後部から取り出される脱穀排出物を再処理する。排塵ファン30は、揺動選別盤27の後部の排塵を機外に排出する。
以上の構成で、刈取装置3から穀稈搬送装置49によって送られてきた刈取穀稈の株元側は、フィードチェーン6の前端側(送り始端側)に受け継がれる。そして、フィードチェーン6の搬送により、穀稈の穂先側が脱穀装置5内に導入され、扱胴26によって脱穀される。
フィードチェーン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェーン34が配置されている。フィードチェーン6の後端側から排藁チェーン34に受け継がれた排藁は、長い状態で機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁切断装置35にて適宜の長さに短く切断された後、機体1の後下方に排出される。なお、ここでいう排藁とは穀粒が分離された後の穀稈のことである。
揺動選別盤27の下方には、当該揺動選別盤27にて選別された穀粒(一番選別物)を取り出す一番コンベア31と、枝梗付き穀粒等の二番選別物を取り出す二番コンベア32と、が設けられている。本実施形態では、機体1の進行方向前側から一番コンベア31、二番コンベア32の順で、それぞれ機体左右方向に向けて配置されている。
揺動選別盤27は、扱胴26の下方に落下した脱穀物を揺動選別(比重選別)するように構成されている。揺動選別盤27から落下した穀粒(一番選別物)は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン28からの選別風によって除去され、一番コンベア31に落下する。一番コンベア31のうち脱穀装置5におけるグレンタンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる一番揚穀筒33が接続されている。一番コンベア31から取り出された穀粒は、一番揚穀筒33内の図略の一番揚穀コンベアによってグレンタンク7に搬入されて貯留される。
揺動選別盤27は、揺動選別(比重選別)によって、枝梗付き穀粒等の二番選別物(穀粒と藁屑等が混在した再選別用の還元再処理物)を二番コンベア32に落下させるように構成されている。二番コンベア32によって取り出された二番選別物は、二番還元コンベア36及び二番処理部37を介して揺動選別盤27の上面側に戻されて再選別される。また、扱胴26からの脱粒物中の藁屑及び粉塵等は、唐箕ファン28からの選別風によって、機体1の後部から圃場に向けて排出される。
次に、図3を参照して、コンバインの動力伝達系の構成について説明する。図3は、コンバイン100の動力伝達図である。
図3に示すように、本実施形態のコンバイン100が備えるエンジン20の動力は、当該エンジン20の出力軸20aから、走行クローラ2を駆動させる無段変速装置15と、脱穀装置5の各部と、穀粒排出オーガ8と、刈取装置3と、にそれぞれ分岐して伝達される。
無段変速装置15は、静圧油圧式無段変速(HST)式の変速装置として構成されている。この無段変速装置15は図略の油圧ポンプと油圧モータの対を備えた公知の構造であるので、詳細な説明は省略する。
エンジン20の駆動力の一部は、刈取装置3への駆動力の伝達の有無を切換可能な刈取クラッチ46を介して、当該刈取装置3に伝達される。なお、刈取装置3の各構成への駆動力伝達機構については説明を省略する。
エンジン20の駆動力の一部は、脱穀装置5への駆動力の伝達の有無を切換可能な脱穀クラッチ25を介して、脱穀装置5の各構成に伝達される。具体的には、前記駆動力は、唐箕ファン28及び一番コンベア31に伝達された後、更に二番コンベア32、揺動選別盤27、排藁切断装置35、及びフィードチェーン6へ伝達される。
前記一番コンベア31は、揺動選別盤27で選別された精粒を外部に送り出すためのものである。この一番コンベア31の端部にはベベルギアを介して揚穀コンベア41が連結されており、一番コンベア31に伝達された駆動力によって揚穀コンベア41が駆動される。揚穀コンベア41は、一番揚穀筒33の内部に配置されており、穀粒をグレンタンク7へ運ぶことができる。以上の構成で、揺動選別盤27等で選別された精粒は、一番コンベア31及び揚穀コンベア41を介してグレンタンク7に運搬され、グレンタンク7内で貯留される。
前記二番コンベア32の端部には還元コンベア42がベベルギアを介して連結されている。また、還元コンベア42の端部には二番処理部37がベベルギアを介して連結されている。これにより、二番コンベア32に伝達された駆動力は、更に還元コンベア42及び二番処理部37へ伝達される。前記二番コンベア32及び還元コンベア42は精粒から分離された二番物(枝梗付き穀粒や穂切れ粒等)を二番処理部37に搬送するためのものである。二番物は、二番処理部37により枝梗等が除去された後、揺動選別盤27に戻されて再び選別される。
また、エンジン20の駆動力の一部は、扱胴26及び処理胴29に伝達される。扱胴26に伝達された駆動力は、更に、扱胴26で処理された排藁を排藁切断装置35まで搬送するための排藁チェーン34に伝達される。排藁切断装置35は、排藁チェーン34によって搬送された排藁を図略の回転刃によって切断して排出する。
グレンタンク7に貯留された穀粒は、複数のコンベアにより穀粒排出オーガ8へ送られる。穀粒排出オーガ8は、穀粒排出オーガ8の内部に設けられたコンベアを駆動することで、穀粒を排出することができる。
次に、図4及び図5を参照して、コンバイン100に設けられたセンサと管理装置70について説明する。図4は、コンバイン100の電気的構成を示すブロック図である。図5は、グレンタンク7及び穀粒センサ62の構成を示す縦断面図である。
コンバイン100は、図4に示すように、GNSS受信機61と、穀粒センサ62と、穀稈検出センサ64と、をセンサとして備える。
GNSS受信機61は、キャビン11の上面に配置されたGNSSアンテナ60と接続されている。なお、GNSSアンテナ60とGNSS受信機61は同じ位置に配置されていても良いし、異なる位置に配置されていても良い。GNSS受信機61は、GNSSアンテナ60が測位衛星から受信した信号に基づいて、コンバイン100の位置(詳細にはGNSSアンテナ60の位置)の緯度・経度情報として算出する。GNSS受信機61が行う測位は、単独測位であっても良いし、別のGNSS受信機の算出結果を用いる相対測位であっても良い。また、相対測位としては、ディファレンシャルGNSSを用いても良いし、干渉測位を用いても良い。GNSS受信機61が検出したコンバイン100の位置(位置検出値)は、検出した時刻とともに、管理装置70へ出力される。なお、時刻との対応付けは、GNSS受信機61側で行っても良いし、管理装置70側で行っても良い(他のセンサについても同様)。
穀粒センサ62は、コンバイン100で収穫された穀粒量(収量)を検出する。具体的には、図5に示すように、穀粒センサ62はグレンタンク7の上面に取り付けられている。上述のように、脱穀装置5等によって得られた穀粒102は、一番揚穀筒33の内部に設けられた揚穀コンベア41によってグレンタンク7へ向けて搬送される。この揚穀コンベア41の軸の下流側の端部には、放出羽根43が接続されている。放出羽根43は、揚穀コンベア41により搬送された穀粒102をグレンタンク7に向けて跳ね飛ばす。また、穀粒センサ62には、歪みゲージ又は圧電素子等の衝撃検出部が設けられている。この構成により、穀粒センサ62は、放出羽根43が跳ね飛ばした穀粒102が衝突した際の衝撃力を検出する。穀粒センサ62は、この衝撃力に基づいて、穀粒量(収量検出値)を検出する。穀粒センサ62は、検出した穀粒量を管理装置70へ出力する。なお、穀粒センサ62は、穀粒量ではなく、衝撃力を管理装置70へ出力しても良い。つまり、穀粒センサ62は、穀粒量(収量)に関する値である収量検出値(穀粒量そのもの、又は穀粒量を算出するための値)を検出して管理装置70へ出力する構成であれば良い。
なお、揚穀コンベア41に穀粒102が連続的に供給されている場合であっても、放出羽根43は穀粒を間欠的に跳ね飛ばすため、穀粒センサ62が検出する衝撃力も離散的となる。従って、穀粒センサ62は、一定の間隔で得られた衝撃力を平均化する等して、穀粒量を算出する。この処理を行うことにより、穀粒センサ62は、穀粒量の時間変化を検出することができる。
なお、穀粒センサ62は、衝撃力以外の方法を用いることで、穀粒量を検出する構成であっても良い。例えば、収穫した穀粒量の重さを用いることで穀粒量を検出可能である。
穀稈検出センサ64は、例えば刈取装置3に設けられており、搬送される穀稈に接触することで穀稈を検出する構成のセンサである。穀稈検出センサ64は、穀稈が搬送されているか否か、即ち刈取作業が行われているかを検出する。なお、穀稈検出センサ64が設けられる位置は任意であり、例えば穀稈搬送装置49に設けられていても良い。穀稈検出センサ64は、検出結果を管理装置70へ出力する。
管理装置70は、キャビン11内に設けられており、オペレータの操作等に応じて様々な情報を表示可能である。管理装置70は、制御部71と、表示部75と、記憶部76と、操作部77と、を備える。
制御部71は、管理装置70内に配置されたCPU等の演算装置であるが、FPGA又はASIC等の演算装置であっても良い。制御部71は、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することで、様々な処理を行うことができる。制御部71は、取得部72と、判定部73と、算出部74と、表示処理部78と、を備える。取得部72は、GNSS受信機61、穀粒センサ62、及び、穀稈検出センサ64等の検出値を取得する。判定部73が行う処理は後述する。算出部74は、取得部72が取得した検出値に基づいて収量分布を算出する(詳細な算出方法を後述する)。表示処理部78は、取得部72が取得した検出値、及び、算出部74が算出した収量分布等に基づいて、表示画面を生成する。
表示部75は、液晶ディスプレイ等で構成されており、表示処理部78が生成した表示画面を表示する。記憶部76は、フラッシュメモリ(フラッシュディスク及びメモリーカード等)、ハードディスク、又は光ディスク等の不揮発性メモリである。記憶部76は、取得部72が取得した検出値、及び、算出部74が算出した収量分布等を記憶する。操作部77は、ハードウェアキー又はタッチパネル等であり、オペレータの操作内容を制御部71へ出力する。
次に、収量分布を算出する処理について説明する。図6は、収量分布を求めるフローチャートである。図7及び図8は、コンバイン100が進行した場合における未通過領域と既通過領域の変化を示す図である。
初めに、本実施形態の収量分布を算出する方法の概要を説明する。従来では、圃場を分割する領域単位が荒い(1つの領域単位の面積が大きい)。そのため、例えば6条刈りのコンバインで作業を進め最後に残った4条分の穀稈を刈り取る場合、圃場の2条分は既に刈取り済みであり、圃場の4条分を新たに刈り取っているが、4条分のみに収量を割り付けることは困難であった。
この点、本実施形態では、図7及び図8に示すように、圃場を分割して収量を割り付ける領域単位が非常に細かい。具体的には、本実施形態では領域単位は正方形であり、一辺がコンバインの幅、刈り幅、分草体50の配置間隔の何れよりも短い。圃場内にどのように領域単位を定めるかは任意であるが、例えば、圃場が長方形である場合は、圃場の輪郭を構成する短辺に平行な仮想線を所定間隔で引くとともに、長辺に平行な仮想線を短辺と同じ間隔で引くことで、正方形の領域単位を定めることができる。なお、この仮想線は、経線及び緯線と平行に引いても良い。ここで、穀粒センサ62及び穀稈検出センサ64では、6条刈りのコンバインのどの部分で穀稈を刈り取っているが判断することはできない。この点、本実施形態では、圃場を細かく分割するとともに、分割した領域単位毎に、未通過/既通過の情報を割り当てる(図7及び図8を参照)。未通過の情報が割り当てられた領域単位の集合が未通過領域であり、既通過の情報が割り当てられた領域単位の集合が既通過領域である。
コンバイン100が通過した場合、基本的には穀稈が存在すれば穀稈を刈り取るため、既通過領域においては、刈取り済みと判断できる。これにより、6条刈りのコンバインで4条分を新たに刈り取っている場合においても、4条分の未通過領域が存在することが特定できれば、当該未通過領域に収量を割り付けることができる。以下、具体的な処理について説明する。なお、図6に示す処理を行うタイミングは任意であり、刈取り中に行っても良いし、圃場全体の刈取りが完了した後に行っても良い。
上述のように、コンバイン100が備える各センサの検出値は、管理装置70へ出力される。言い換えれば、管理装置70の制御部71は、コンバイン100が備える各センサの検出値(特に、GNSS受信機61及び穀粒センサ62の検出値)を取得する(図6のS101)。
次に、制御部71は、コンバイン100の幅に関するデータと、GNSSアンテナ60と刈取装置3の位置関係と、を読み出す(S102)。コンバイン100の幅に関するデータは、コンバイン100の走行時に未通過領域を既通過領域に変更する幅を特定するために用いられる。コンバイン100の幅に関するデータとしては、コンバイン100の左右幅、刈り幅、オペレータが入力した所定の値等が該当する。制御部71は、「コンバイン100の幅に関するデータ」をそのまま「未通過領域を既通過領域に変更する幅」にしても良いし、「コンバイン100の幅に関するデータ」に基づいて「未通過領域を既通過領域に変更する幅」を算出しても良い。本実施形態では、制御部71が「刈り幅」を読み出し、刈り幅をそのまま「未通過領域を既通過領域に変更する幅」として用いる。
また、GNSSアンテナ60と刈取装置3の位置関係は、GNSSアンテナ60が検出した位置と、未通過領域を既通過領域に変更する位置と、を補正するために(具体的には刈取装置3の絶対位置を算出するために)用いられる。また、制御部71は、コンバイン100の幅に関するデータと、GNSSアンテナ60と刈取装置3の位置関係と、を記憶部76から読み出す構成であるが、オペレータに入力を求めても良いし、オペレータが所有する端末にアクセスして読み出す構成であっても良い。
次に、判定部73は、コンバイン100が刈取りを行った(コンバイン100が通過した)領域であって、収量の割り付けの判定がまだ行われていない領域(処理対象の領域)を特定する(S103)。判定部73は、この領域に、未通過領域が含まれるか否かを判定する(S104)。初めに、未通過領域/既通過領域の変化について説明する。GNSS受信機61の検出結果と、GNSSアンテナ60と刈取装置3の位置関係と、コンバイン100の刈り幅と、を用いることで、圃場のどの位置がコンバイン100が通過した領域であるかを算出できる。具体的には、図7及び図8に示すように、コンバイン100が走行することで、左右方向においてコンバイン100の刈り幅かつ前後方向において刈取装置3を通過した部分に含まれる全ての領域単位が、未通過領域から既通過領域に変更され、記憶部76に記憶される。なお、未通過領域から既通過領域に変更する処理は、図6に示す収量の割付けが行われた後である。つまり、判定部73は、今回の刈取りが行われる前の時点(収量の割付けが行われる前の時点)において、未通過と既通過の何れが登録されているかを記憶部76にアクセスして領域単位毎に判定することで、ステップS104の判定を行う。なお、コンバイン100が走行した領域には収量が割り付けられるため、算出部74は、今回の刈取りが行われる前の時点において収量が対応付けられている領域単位を既通過領域と判定し、収量が対応付けられていない領域単位を未通過領域と判定することで、ステップS104の判定を行うこともできる。
処理対象の領域に未通過領域が含まれている場合(言い換えれば、今回の刈取りが行われる前の時点において、全てが未通過領域である場合か、未通過領域と既通過領域の両方が含まれる場合)、コンバイン100による刈取りが行われている。この場合、算出部74は、穀粒センサ62の検出値に基づいて得られた収量を、処理対象の領域のうちの未通過領域に割り付ける(S105)。上述のように位置に応じた収量は、GNSS受信機61及び穀粒センサ62等の検出値に基づいて算出できる。しかし、コンバイン100の左右方向の収量の分布は穀粒センサ62等では検出できない。従って、算出部74は、ある位置の収量を、当該位置の左右方向に存在する未通過の領域単位に均等に割り付けて記憶部76に記憶する。なお、当該位置に既通過の領域単位が存在している場合、この既通過の領域単位には収量を割り付けない(以前に割り付けた収量を維持する)。つまり、穀粒センサ62が微量の穀粒量を検出していた場合でも当該既通過領域と対応付けて記憶しない。更に、制御部71は、上述のように、未通過の領域単位を既通過に変更する。その後、管理装置70は、処理対象の領域が残存しているか否かを判定する(S106)。処理対象の領域が残存している場合は、再びステップS103以降の処理を行う。管理装置70は、処理対象の領域が残存していない場合は、処理を終了する。以上の処理を行うことで、圃場の位置に応じた収量(収量分布)を算出することができる。算出部74は、算出した収量分布を記憶部76に記憶する。また、表示処理部78は、算出部74から取得した収量分布に基づいて収量マップを生成し、表示部75に表示する。
一方、処理対象の領域に未通過領域が含まれていない場合(言い換えれば今回の刈取りが行われる前の時点において全て既通過領域である場合)、穀稈の刈取りは行われないので、収量の割り付けも不要となる。従って、管理装置70は、処理対象の領域が残存しているか否かを判定する(S106)。以降の処理は上述した通りである。
図9には、図6の処理を行うことで得られた収量分布に基づいて算出した収量マップである。収量マップには、位置毎の収量が圃場の模式図を用いてグラフィカルに表示されている。生産者は、この収量マップを確認することで、圃場の位置毎の生育状況を把握することができる。これを用いて、例えば次年度の肥料管理等を行うことで、収穫量を更に向上させることができる。
次に、本実施形態のように領域単位を細かくすることの別の利点について図10及び図11を参照して説明する。図10は、圃場の辺と領域の辺とが一致しない例を示す図である。図11は、微小な領域単位を用いることで、圃場の辺と領域の辺とを一致させた例を示す図である。
圃場を分割する場合、一般的には経度線及び緯度線に平行な線を複数引くことで分割を行う。そのため、図10に示すように圃場の輪郭を構成する線が経度線又は緯度線と平行でない場合、圃場の輪郭を構成する線と平行でない線によって圃場が分割される。しかし、コンバイン100やトラクタ等を用いた作業時は、圃場の輪郭を構成する線に平行に行われることが多いため、図10の分割方法では、領域毎の管理が複雑になることがある。
この点、本実施形態では、未通過/既通過を判定する領域単位毎に収量が割り付けられるため、収量分布を算出する領域の最小単位は、この領域単位と同一である。本実施形態では、この領域単位の面積は圃場を管理する領域の最小単位の面積と比べて十分小さいため、当該領域単位を複数集めた領域を、圃場を管理する領域の最小単位(収量分布を表示する領域の最小単位)とすることができる(図11を参照)。これにより、表示処理部78は、圃場の輪郭を構成する線と、圃場を管理する領域の輪郭を構成する何れかの線と、が平行となるように収量マップ等を生成して表示部75に表示することができる。これにより、領域毎の管理が行い易くなる。なお、本明細書において平行とは、略平行を含む概念である。また、図11では経度線及び緯度線と、圃場の輪郭を構成する線と、が平行でないため、収量分布を表示する領域の輪郭を構成する線(図11の太線)は、厳密には、経度線及び緯度線に平行な多数の線の組合せにより、疑似的に圃場の輪郭を構成する線と平行な線を実現している。しかし、本明細書においては、このような態様も含めて、「圃場の輪郭を構成する線と、収量分布を表示する領域の輪郭を構成する線と、が平行」とみなす。
次に、上記実施形態とは別の実施形態について説明する。図12は、別の実施形態において収量分布を算出する構成を示す図である。上記実施形態では、コンバイン100に設けられた管理装置(コンピュータ)70でセンサの検出結果の取得及び収量分布の算出を行ったが、これらの処理は、コンバイン100以外で行うこともできる。
図12(a)に示す例では、コンバイン100に設けられた各センサの検出結果を、無線通信又は有線通信を用いたり、記録媒体を用いたりして、オペレータの所有するPC200に送信する。そして、PC200は、インターネットを介して、センサの検出結果をサーバ210に送信する。また、GNSSアンテナ60と分草体50の位置関係及び刈り幅等は、コンバイン100を介してサーバ210へ送信しても良いし、生産者がPC200等を用いてサーバ210にアクセスして入力しても良い。また、サーバ210がコンバイン100の型番等から所定のデータベースにアクセスして取得しても良い。サーバ210は、上記実施形態で説明した方法を用いて収量分布を算出する。そして、収量分布をPC200へ送信する。生産者は、例えばPC200上で収量分布を閲覧することができる。
なお、サーバ210は、1台のサーバでなくても良く、例えば複数台のサーバで演算を分担して行っても良い。また、センサの検出結果を取得又は記憶する装置と、領域の判定及び収量分布を算出する装置と、が物理的に離れていても良い(この場合、2つの装置は適宜の通信手段で接続される)。これらの場合においても、本発明における「収量分布算出装置、コンピュータ」に相当する。
図12(b)に示す例においても、図12(a)に示す例と同様に、コンバイン100に設けられた各センサの検出結果をオペレータの所有するPC200に送信する。また、GNSSアンテナ60と分草体50の位置関係及び刈り幅等は、図12(a)のサーバ210と同様に、PC200が取得する。図12(b)に示す例では、サーバ210ではなくPC200がセンサの検出結果の取得、領域の判定、及び収量分布の算出を行う。この処理に必要な収量分布算出プログラムは、サーバ210から提供されている。図12(b)に示す例では、PC200が本発明における「収量分布算出装置、コンピュータ」に相当する。
なお、図12(a)及び図12(b)の何れにおいても、PC200に代えて、スマートフォン又はタブレット端末を用いることもできる。また、コンバイン100がインターネット等に接続されている場合は、PC200を介さずにセンサの検出結果を送信することもできる。
以上に説明したように、上記の管理装置70は、取得部72と、判定部73と、算出部74と、を備える。取得部72は、コンバイン100の位置を検出するGNSS受信機61の検出値である位置検出値と、コンバイン100の収量に関する検出値である収量検出値と、を取得する(取得処理)。判定部73は、取得部72が取得した位置検出値と、刈取りを行ったコンバイン100の幅に関するデータと、に基づいて、コンバイン100が刈取りを行った圃場の領域について、コンバイン100が当該刈取り前に通過していない領域である未通過領域であるか、コンバイン100が既に通過した領域である既通過領域であるか、を判定する(判定処理)。算出部74は、コンバイン100が通過した領域に未通過領域と判定された領域が含まれている場合は、収量検出値が示す収量を当該未通過領域と対応付けて記憶し、コンバイン100が通過した領域が既通過領域と判定された場合は、収量検出値が示す収量を当該既通過領域と対応付けて記憶しない処理を行い、位置に応じた収量の分布である収量分布を算出する(算出処理)。
これにより、上記のように圃場を未通過領域と既通過領域とに分けることで、一度刈り取った領域を再び通過した場合であっても、収量が上書きされないため、正確な収量分布を算出できる。
また、上記の管理装置70において、判定部73は、所定の領域単位で、未通過領域か既通過領域かを判定する。領域単位の少なくとも一辺がコンバイン100の幅、及び、分草体50の配置間隔よりも短い。
これにより、領域単位を細かくすることで、正確な収量分布を算出できる。
また、上記の管理装置70においては、判定部73は、GNSSアンテナ60と、コンバイン100の刈取装置3と、の位置関係を考慮して、領域が未通過領域か既通過領域かを判定する。
これにより、GNSSアンテナ60とコンバイン100の刈取装置3との位置関係を考慮するため、より正確な収量分布を算出できる。
また、上記の管理装置70は、算出部74が算出した収量分布を圃場の図を用いて描画する処理を行う表示処理部78を備える。表示処理部78は、算出部74が収量分布を算出する領域の最小単位を複数集めることで、収量分布を表示する領域の最小単位とする。
これにより、収量分布を細かく算出することで、収量分布を表示する領域を柔軟に変更できる。
また、上記の管理装置70においては、表示処理部78は、圃場の輪郭を構成する線と、収量分布を表示する領域の最小単位の輪郭を構成する何れかの線と、が平行となるように、収量分布を表示する。
これにより、収量分布を見易く、かつ、コンバイン100の走行方向等にも沿った向きで表示できる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記実施形態では、未通過領域と既通過領域を判定するための領域単位は正方形であるが、別の形状であっても良い。例えば、領域単位は、長方形であっても良いし、六角形であっても良い。領域単位が長方形等である場合は、領域単位の少なくとも一辺が、コンバインの幅、刈り幅、分草体50の配置間隔の何れよりも短いことが好ましい。
GNSSアンテナ60が例えば刈取部の上面の中央に設けられていたり、未通過領域/既通過領域の領域単位が荒い場合は、GNSSアンテナ60と刈取装置3の位置関係を使うことなく、ある程度の精度で収量分布を算出できる。
上記実施形態では、未通過領域に収量を割り付ける場合に、左右方向に存在する未通過の領域単位に均等に収量を割り付けた。この構成に代えて、例えば左右方向の穀稈量の分布をカメラ又は接触センサ等で検出し、この検出結果に基づいて(即ち穀稈量が多い領域単位は割り付けられる収量が多くなるように)、収量を割り付けることもできる。また、未通過/既通過を判定する領域単位と、収量を割り付ける単位と、が異なっていても良い。
本実施形態では、穀粒センサ62が検出した穀粒量を収量に関する収量検出値として用いて、圃場の位置毎に登録した。これに代えて、他の収量検出値(例えば藁量)を圃場の位置毎に登録しても良い。
上記実施形態では、コンバイン100に設けられた管理装置70でセンサの検出結果の取得及び収量分布の算出を行ったが、コンバイン100に設けられた別の制御装置(例えばコンバイン100の各部を制御する装置)で同様の処理を行っても良い。