以下、本発明の実施形態に係る反応処理容器について説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る反応処理容器は、基板と、該基板に貼り付けられた封止フィルムと、フィルタと、から成る。図1は、本発明の第1の実施形態に係る反応処理容器が備える基板の平面図である。図2は、反応処理容器の断面構造を説明するための図である。図2は、基板に形成される流路、フィルムおよびフィルタとの位置関係を説明するための図であり、実施の反応処理容器の断面図とは異なる点に留意されたい。
反応処理容器10は、上面14aに溝状の流路12が形成された樹脂製の基板14と、基板14の上面14a上に貼られた流路封止フィルム16、第1封止フィルム18および第2封止フィルム19と、基板14の下面14b上に貼られた第3封止フィルム20、第4封止フィルム21および第5フィルム(図示せず)と、基板14内に配置された第1フィルタ28および第2フィルタ30とを備える。
基板14は、温度変化に対して安定で、使用される試料溶液に対して侵されにくい材質から形成されることが好ましい。さらに、基板14は、成形性がよく、透明性やバリア性が良好で、且つ、低い自家蛍光性を有する材質から形成されることが好ましい。このような材質としては、アクリル、ポリプロピレン、シリコーンなどの樹脂、中でも環状ポリオレフィン樹脂が好適である。
基板14の上面14aには溝状の流路12が形成されている。反応処理容器10において、流路12の大部分は基板14の上面14aに露出した溝状に形成されている。金型を用いた射出成型により容易に成形できるようにするためである。この溝を封止して流路として活用するために、基板14の上面14a上に流路封止フィルム16が貼られる。また射出成型法により基板を工業的により有利に生産するために、流路の構造は、いわゆる「抜きテーパ」と称する、基板の主面に対して一定の角度を備える側面を含みうる。
流路封止フィルム16は、一方の主面が粘着性を備えていてもよいし、押圧や紫外線などのエネルギー照射、加熱等により粘着性や接着性を発揮する機能層が一方の主面に形成されていてもよく、容易に基板14の上面14aと密着して一体化できる機能を備える。流路封止フィルム16は、粘着剤も含めて低い自家蛍光性を有する材質から形成されることが望ましい。この点でシクロオレフィンポリマー、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはアクリルなどの樹脂からなる透明フィルムが適しているが、これらに限定されない。また、流路封止フィルム16は、板状のガラスや樹脂から形成されてもよい。この場合はリジッド性が期待できることから、反応処理容器10の反りや変形防止に役立つ。
流路12の一端12aには、第1フィルタ28が設けられている。流路12の他端12bには、第2フィルタ30が設けられている。流路12の両端に設けられた一対の第1フィルタ28および第2フィルタ30は、PCRによって目的のDNAの増幅やその検出を妨げないように、または目的のDNAの品質が劣化しないように、コンタミネーションを防止する。第1フィルタ28および第2フィルタ30の寸法は、基板14に形成されたフィルタ設置スペースに隙間なく収まるような寸法に形成される。
基板14には、空気導入路29および第1フィルタ28を介して流路12の一端12aに通じる第1空気連通口24が形成されている。同様に基板14には、空気導入路31および第2フィルタ30を介して流路12の他端12bに通じる第2空気連通口26が形成されている。一対の第1空気連通口24および第2空気連通口26は、基板14の上面14aに露出するように形成されている。
第1の実施形態においては、第1フィルタ28および第2フィルタ30として、低不純物特性が良好であり、且つ通気性および撥水性もしくは撥油性を有するものが用いられる。第1フィルタ28および第2フィルタ30としては、例えば多孔性樹脂や樹脂の焼結体などが好ましく、これらに限られないが、フッ素含有樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー)などが例示できる。さらにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製フィルタとしては、これらに限られないが、PF020(アドバンテックグループ社製)等を用いることができる。さらに、第1フィルタ28および第2フィルタ30としては、フッ素含有樹脂でコーティングして表面を撥水処理したものも使用することができる。その他フィルタの材料としては、ポリエチレン、ポリアミド、ポリプロピレンなどが挙げられ、PCRに供される試料のコンタミネーション防止をすることができ、PCRに支障の生じないものであればよく、空気を通過させることができ、液体を通過させないような性状を備えていればなおよく、求められる性能に対してこれらのいくつかの要求を満たすものであればその性能や材質は問わない。
反応処理容器10には、流路12を流れる試料にサーマルサイクルを与えるために、後述する反応処理装置により複数水準の温度の制御が可能な反応領域が設定される。複数水準の温度が維持された反応領域内の流路を連続的に往復するように試料を移動させることにより、試料にサーマルサイクルを与えることができる。
第1の実施形態において、反応領域は、高温領域36と、中温領域38とを含む。高温領域36は、反応処理装置に反応処理容器10が搭載された際に、高温用ヒータの有効面に対応する領域であり、比較的高温(例えば約95℃)に維持される。中温領域38は、反応処理装置に反応処理容器10が搭載された際に、中温用ヒータの有効面に対応する領域であり、高温領域36よりも低温(例えば約62℃)に維持される。
高温領域36および中温領域38にはそれぞれ、曲線状流路と直線状流路とを組み合わせた連続的に折り返す蛇行状流路を含んでいる。すなわち、高温領域36は高温蛇行状流路35を含んでおり、中温領域38は中温蛇行状流路37を含んでいる。このような蛇行状流路は、限られた基板14の面積を有効活用することができるので、反応処理容器の実体的な大きさを小さくでき、反応処理装置の小型化に貢献できる。また、後述の温度制御システムを構成するヒータの限られた実効面積を有効に使うことができ、反応領域内での温度のばらつきを低減することが容易である。
図1に示すように、高温蛇行状流路35の一端35aと中温蛇行状流路37の一端37aとの間には、接続流路40が形成されている。この接続流路40は、直線状の流路となっている。接続流路40の略中央部には、反応処理装置に反応処理容器10が搭載された際に、流路内を流れる試料から蛍光を検出するために励起光の照射を受ける領域(「蛍光検出領域」と呼ぶ)86が設定される。この蛍光検出領域86に含まれる流路を「検出流路61」と呼ぶ。
高温蛇行状流路35の他端35bは、高温制動流路45に連通している。高温制動流路45は、高温蛇行状流路35に隣接し、且つ接続流路40から見て高温蛇行状流路35よりも奥側(第2フィルタ30側)に形成されている。また、中温蛇行状流路37の他端37bは、中温制動流路46に連通している。中温制動流路46は、中温蛇行状流路37に隣接し、且つ接続流路40から見て中温蛇行状流路37よりも奥側(第1フィルタ28側)に形成されている。
高温制動流路45は直線状流路であり、その断面積が高温蛇行状流路35の断面積よりも大きくなるように形成されている。同様に、中温制動流路46は直線状流路であり、その断面積が中温蛇行状流路37の断面積よりも大きくなるように形成されている。詳細については後述するが、高温制動流路45および中温制動流路46はそれぞれ、高温蛇行状流路35および中温蛇行状流路37を流れる試料にブレーキ作用を及ぼす役割を有する。
本第1の実施形態においては、図1に示すように、高温蛇行状流路35および高温制動流路45の両方が高温領域36に含まれている。一方、中温領域38に関しては、中温蛇行状流路37は中温領域38に含まれているが、中温制動流路46は中温領域38に含まれていない。PCR中に高温領域36に試料を停止させるときには、試料は少なくとも高温蛇行状流路35および高温制動流路45の両方に存在する。一方、PCR中に中温領域38に試料を停止させるときには、試料は少なくとも中温蛇行状流路37に存在する。高温領域36および中温領域38に含まれる流路内に存在する試料が実質的に加熱され、所定の温度の一定時間維持されることにより、変性やアニーリングなどの反応が生じる。
高温制動流路45は、第2フィルタ30および空気導入路31を介して第2空気連通口26に連通している。中温制動流路46は、緩衝流路(予備流路)39に連通している。緩衝流路39は、第1フィルタ28および空気導入路29を介して第1空気連通口24に連通している。
緩衝流路39の一部には分岐点が設けられており、該分岐点から分岐流路42が分岐している。分岐流路42の先端には、基板14の下面14bに露出するように試料導入口44が形成されている。緩衝流路39は、試料導入口44から所定量の試料が投入された後に、反応処理容器10の反応処理装置への導入を行う際の一時的な試料の待機流路として用いることができる。
図2に示すように、第1封止フィルム18は、第1空気連通口24を封止するように基板14の上面14aに貼り付けられる。第2封止フィルム19は、第2空気連通口26を封止するように基板14の上面14aに貼り付けられる。第3封止フィルム20は、空気導入路29および第1フィルタ28を封止するように基板14の下面14bに貼り付けられる。第4封止フィルム21は、空気導入路31および第2フィルタ30を封止するように基板14の下面14bに貼り付けられる。第5封止フィルム(図示せず)は、試料導入口44を封止するように基板14の下面14bに貼り付けられる。これらの封止フィルムとしては、シクロオレフィンポリマー、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはアクリルなどの樹脂を基材とする透明フィルムを用いることができる。流路封止フィルム16を含む全ての封止フィルムを貼った状態では、全流路は閉空間となっている。
反応処理容器10に後述する送液システムを接続する際には、第1空気連通口24、第2空気連通口26を封止している第1封止フィルム18、第2封止フィルム19を剥がし、送液システムに備わったチューブを第1空気連通口24、第2空気連通口26に接続する。あるいは、送液システムに備わった中空のニードル(先端がとがった注射針)で第1封止フィルム18、第2封止フィルム19に穿孔することにより行ってもよい。この場合、第1封止フィルム18、第2封止フィルム19は、ニードルによる穿孔が容易な材質や厚みから成るフィルムが好ましい。
試料導入口44を通じての試料の流路12内への導入は、第5封止フィルムを一旦、基板14から剥がして行い、所定量の試料の導入後に第5封止フィルムを再び基板14の下面14bに戻し貼り付ける。このとき、試料の導入によって流路内部の空気が押されるので、その空気を逃がすために、事前に第2封止フィルムを剥がしておいてもよい。そのため、第5封止フィルムとしては、数サイクルの貼り付け/剥がしに耐久するような粘着性を備えるフィルムが望ましい。また第5封止フィルムは、試料導入後に新しいフィルムを貼り付ける態様であってもよく、この場合は繰り返しの貼り付け/剥がしに関する特性の重要性は緩和されうる。
試料導入口44への試料の導入の方法は特に限定されないが、例えばピペットやスポイト、シリンジ等で試料導入口44から適量の試料を直接導入してもよい。あるいは、多孔質のPTFEやポリエチレンからなるフィルタが内蔵してあるニードルチップを介してコンタミネーションを防止しながらの導入方法であってもよい。このようなニードルチップは一般的に数多くの種類のものが販売され容易に入手でき、ピペットやスポイト、シリンジ等の先端に取り付けて使用することが可能である。さらにピペットやスポイト、シリンジ等による試料の吐出、導入後、さらに加圧して推すことにより流路12の所定の場所まで試料を移動させてもよい。また、図示しないが試料導入口は、複数あってもよい。この場合は、複数の試料導入口間の緩衝流路39のエリアを利用して、PCRなどの反応処理に供される一定体積の試料を簡便に計ることのできる機能を持たせることが可能となる。このときの詳細な方法は、特開2016−19606号に記載された事項を参考とすることができる。
試料としては、例えば、一または二以上の種類のDNAを含む混合物に、PCR試薬として、耐熱性酵素および4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を添加したものがあげられる。さらに反応処理対象のDNAに特異的に反応するプライマー、さらに、場合によってはTaqMan等の蛍光プローブ(TaqMan/タックマンはロシュ ダイアグノスティックスゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの登録商標)もしくはSYBR Green(SYBRはモレキュラープローブス インコーポレイテッドの登録商標)を混合する。市販されているリアルタイムPCR用試薬キット等も使用することができる。
図3は、反応処理容器10を利用可能な反応処理装置100を説明するための模式図であり、特に反応処理容器10に直接関連する部分のみを概念的に抜粋したものである。
反応処理装置100は、反応処理容器10が設置される容器設置部(図示せず)と、流路12の高温領域36を加熱するための高温用ヒータ104と、流路12の中温領域38を加熱するための中温用ヒータ106と、各反応領域の実温度を計測するための例えば熱電対等の温度センサ(図示せず)を備える。各ヒータは例えば抵抗加熱素子やペルチェ素子等であってよい。これらのヒータ、適切なヒータドライバ(図示せず)およびマイクロコンピュータなどの制御装置(図示せず)によって、反応処理容器10の流路12における高温領域36が約95℃、中温領域38が約62℃に維持され、サーマルサイクル領域の各反応領域の温度が設定される。
反応処理装置100は、さらに、蛍光検出器140を備える。上述したように、試料Sには所定の蛍光プローブが添加されている。DNAの増幅が進むにつれ試料Sから発せられる蛍光信号の強度が増加するので、その蛍光信号の強度値をPCRの進捗やその終結の判定材料としての指標とすることができる。
蛍光検出器140としては、非常にコンパクトな光学系で、迅速に測定でき、かつ明るい場所か暗い場所かにもかかわらず、蛍光を検出することができる日本板硝子株式会社製の光ファイバ型蛍光検出器FLE−510を使用することができる。この光ファイバ型蛍光検出器は、その励起光/蛍光の波長特性を試料Sの発する蛍光特性に適するようにチューニングしておくことができ、様々な特性を有する試料について最適な光学・検出系を提供することが可能であり、さらに光ファイバ型蛍光検出器によってもたらされる光線の径の小ささから、流路などの小さいまたは細い領域に存在する試料からの蛍光を検出するのに適しており応答スピードも優れている。
光ファイバ型の蛍光検出器140は、光学ヘッド142と、蛍光検出器ドライバ144と、光学ヘッド142と蛍光検出器ドライバ144とを接続する光ファイバ146とを備える。蛍光検出器ドライバ144には励起光用光源(LED、レーザその他特定の波長を出射するように調整された光源)、光ファイバ型合分波器および光電変換素子(PD,APD又はフォトマル等の光検出器)(いずれも図示せず)等が含まれており、これらを制御するためのドライバ等からなる。光学ヘッド142はレンズ等の光学系からなり、励起光の試料への指向性照射と試料から発せられる蛍光の集光の機能を担う。集光された蛍光は光ファイバ146を通じて蛍光検出器ドライバ144内の光ファイバ型合分波器により励起光と分けられ、光電変換素子によって電気信号に変換される。光ファイバ型の蛍光検出器としては、特開2010−271060号に記載のものを使用することができる。光ファイバ型蛍光検出器は、さらに単一または複数の光学ヘッドを用いて同軸式に複数波長に係る検出が可能なようにモディファイすることもできる。複数波長に係る蛍光検出器とその信号処理については、国際公開第2014/003714号に記載の発明を活用することができる。
反応処理装置100においては、検出流路61内の試料Sからの蛍光を検出することができるように光学ヘッド142が配置される。試料Sは流路内を繰り返し往復移動させられることで反応が進み、試料Sに含まれる所定のDNAが増幅するので、検出された蛍光の量の変動をモニタリングすることで、DNAの増幅の進度をリアルタイムで知ることができる。また、反応処理装置100においては、蛍光検出器140からの出力値を利用して、試料Sの移動制御に活用する。例えば蛍光検出器140からの出力値を制御装置に送信して、後述の送液システムの制御をする際のパラメータとして利用してもよい。蛍光検出器は、試料からの蛍光を検出する機能を発揮するものであれば光ファイバ型蛍光検出器に限定されない。
反応処理装置100は、さらに、試料Sを反応処理容器10の流路12内で移動および停止させるための送液システム(図示せず)を備える。送液システムは、これに限られるものではないが、第1空気連通口24または第2空気連通口26を通じて、いずれか一方から空気を送り込む(送風する)ことによって、試料Sを流路12内で一方向に移動させることができる。さらに、送液システムは、流路への送風を止める、または流路12内の試料Sの両側の圧力を等しくすることにより所定の位置で停止させることができる。
送液システムのうち、送風や加圧機能を備える手段(送風手段)として、シリンジポンプやダイアフラムポンプ、ブロアなどを用いることができる。また試料Sを所定の位置で停止させる機能を備えるものとして、送風手段と三方弁(3ポートバルブ)などを組み合わせたものを用いることができる。例えば、第1および第2の三方弁を備え、第1の三方弁を、その第1のポート(コモンポート)を第1の空気連通口に接続し、第2のポートを上記の送風手段に接続し、第三のポートを大気圧に開放されるように各ポートの接続をし、第2の三方弁を、その第1のポート(コモンポート)を第2の空気連通口に接続し、第2のポートを上記の送風手段に接続し、第三のポートを大気圧に開放されるように各ポートの接続をした態様が考えられる。これらの具体的態様は、例えば、特開平4−325080号や特開2007−285777号に記載がある。例えば、いずれか一方の空気連通口に接続されている三方弁を操作して、送風手段とその空気連通口とが連通するような状態にして、かつ、もう一方の空気連通口に接続されている三方弁を操作して、その空気連通口が大気圧に通じるような状態にすることにより、試料Sを一方向に移動させる。続いて両方の三方弁を操作して、両方の空気連通口が大気圧に通じるような状態にすることにより、試料Sを停止させる。
また、三方弁や送液手段の操作は、適切なドライバを通じて、制御装置によって行わせることが可能である。特に、先述のように配置された蛍光検出器140が、得られた蛍光信号に基づく出力値を制御装置に送信することにより、流路12中の試料Sの位置やその通過を、制御装置に認識させることによって、三方弁や送液手段からなる送液システムの制御を行わせる。
従って、流路12の両側に接続された三方弁を順次に、かつ、連続的に操作することにより、試料Sを流路12内で、高温領域36と中温領域38の間を連続して往復移動させて、それによって試料Sに適切なサーマルサイクルを与えることが可能となる。
図4(a)および(b)は、図1に示す反応処理容器10の基板14における流路12の形状を説明するための図である。図4(a)は、蛇行状流路53の断面を示す。図4(b)は、制動流路54の断面を示す。蛇行状流路53は、高温蛇行状流路35および中温蛇行状流路37に対応する。制動流路54は、高温制動流路45および中温制動流路46に対応する。
図4(a)に示すように、蛇行状流路53は台形状の流路であり、開口部47と、底面48と、底面48の両側に位置する側面49とを備える。側面49は、底面48から開口部47に向かって拡大するテーパ状に形成されている。蛇行状流路53の形状・寸法を規定するパラメータとしては、深さDr、テーパ角Tr、開口幅Wr1、底面幅Wr2、断面積Srがある。底面48および側面49は平面状であり、底面48と側面49の接続部55は角張った形状となっている。
図4(b)に示すように、制動流路54も台形状の流路であり、開口部50と、底面51と、底面51の両側に位置する側面52とを備える。側面52は、底面51から開口部50に向かって拡大するテーパ状に形成されている。制動流路54の形状・寸法を規定するパラメータとしては、深さDb、テーパ角Tb、開口幅Wb1、底面幅Wb2、断面積Sbがある。底面51および側面52は平面状であり、底面51と側面52の接続部58は角張った形状となっている。
第1の実施形態に係る反応処理容器10においては、制動流路54の断面積Sbは、蛇行状流路53の断面積Srよりも大きくなっている。試料の移動速さは、流路の断面積によって異なり、一般に流路断面積を大きくすると試料の移動速さは小さくなる。制動流路54の断面積Sbを蛇行状流路53の断面積Srよりも大きくすることで、試料にブレーキ作用が生じるので、反応処理装置100の送液システムによる試料の移動・停止制御が容易となり、試料を蛇行状流路53の所定の位置で停止する精度を向上できる。また、試料を所定量より多く流路12内に導入してしまった場合でも、蛇行状流路53からの試料の過剰なオーバーランを抑制することができる。
蛇行状流路53の断面積Srと制動流路54の断面積Sbの断面積比Sb/Srは、1<Sb/Sr≦1.8の範囲内であってよく、好ましくは1.02≦Sb/Sr≦1.5の範囲内であってよく、より好ましくは1.02≦Sb/Sr≦1.2の範囲内であってよい。断面積比Sb/Srをこのような範囲内の値とすることにより、上述のブレーキ作用を好適に発生させることができる。
第1の実施形態に係る反応処理容器10において、蛇行状流路53の開口幅Wr1は、0.55mm〜0.95mmであってよく、好ましくは0.65mm〜0.85mmであってよい。蛇行状流路53の底面幅Wr2は、0mm〜0.95mmであってよく、好ましくは0.4mm〜0.6mmであってよい。蛇行状流路53の深さDrは、0.5mm〜0.9mmであってよく、好ましくは0.6mm〜0.8mmであってよい。蛇行状流路53のテーパ角Trは、0°〜45°であってよく、好ましくは10°〜30°であってよく、さらに好ましくは15°〜25°であってよい。第1の実施形態に係る反応処理容器10において、蛇行状流路53の底面幅Wr2が0mmもしくはその近傍になるように開口幅Wr1に比較して小さい場合は、蛇行状流路53の断面形状は、略逆三角形状に近いものになる点に注意する。また、テーパ角Trが0°もしくはその近傍になるように小さくした場合は、蛇行状流路53の断面形状は、略長方形状に近いものになる点に注意する。
また、制動流路54の開口幅Wb1は、0.65mm〜1.05mmであってよく、好ましくは0.75mm〜0.95mmであってよい。制動流路54の底面幅Wb2は、0mm〜1.05mmであってよく、好ましくは0.5mm〜0.7mmであってよい。制動流路54の深さDbは、0.5mm〜0.9mmであってよく、好ましくは0.6mm〜0.8mmであってよい。制動流路54のテーパ角Tbは、0°〜45°であってよく、好ましくは10°〜35°であってよい。第1の実施形態に係る反応処理容器10において、制動流路54の底面幅Wb2が0mmもしくはその近傍になるように開口幅Wb1に比較して小さい場合は、制動流路54の断面形状は、略逆三角形状に近いものになる点に注意する。また、テーパ角Tbが0°もしくはその近傍になるように小さくした場合は、制動流路54の断面形状は、略長方形状に近いものになる点に注意する。
上記のような寸法で蛇行状流路53および制動流路54を形成することにより、試料(界面活性剤を含むこともありうる)の連続的な移動がスムースになり、射出成型など慣用の製造技術によっても容易に作製することができる。
図5は、蛇行状流路の変形例を示す。図4(a)に示す蛇行状流路53においては、底面48と側面49の接続部が角張った形状であったが、図5に示す蛇行状流路56においては、底面48と側面49の接続部55が曲面状となっている。図5では、底面48は平面状であるが、接続部55と連続的につながる曲面状としてもよい。
本実施形態では上述したようにヒータによる加熱の効率の向上を目的として蛇行状流路を採用しているが、金型内で樹脂が高速で充填される射出成型法によっては、このような流路の形状が抵抗や障害となって、樹脂の充填のスピードのバラツキや空隙が生じるなど成形がうまくいかない場合がある。このような場合では、蛇行状流路を含む領域にウェルドラインが形成され、流路上にピットのような凹部が形成されるおそれがある。このような凹部は、試料の流れを阻害するおそれがある。本変形例に係る蛇行状流路56のように、接続部55を曲面状とすることにより、射出成形時の金型内での樹脂の流れがスムースになるので、反応流路の近傍でのウェルドラインの発生を抑制することができる。接続部55の曲率半径R1は、例えば0.2mm〜0.38mmであってよく、好ましくは0.3mm〜0.35mmであってよい。なお、制動流路54においても同様に、底面51と側面52の接続部58が曲面状とされてもよい。
図1に示すように、高温蛇行状流路35および中温蛇行状流路37には複数の屈曲部57が含まれる。屈曲部57の曲率半径R2は、0.3mm〜10mmであってよく、好ましくは0.5mm〜6mmであってよい。屈曲部57の曲率半径をこのような範囲内とすることにより、ウェルドラインの発生をより抑制することができ、さらに、蛇行状流路内を試料が移動する際に、屈曲部57においてもその移動速度を一定に保ちやすい。
図6は、第1の実施形態の変形例に係る反応処理容器60が備える基板14の平面図である。本変形例に係る反応処理容器60は、中温蛇行状流路37および中温制動流路46の両方が中温領域38に含まれている点が、図1に示す反応処理容器10と異なる。一方、高温蛇行状流路35に関しては、反応処理容器10と同様に、高温蛇行状流路35および高温制動流路45の両方が高温領域36に含まれている。PCR中に高温領域36に試料を停止させるときには、試料は少なくとも高温蛇行状流路35および高温制動流路45の両方に存在する。一方、PCR中に中温領域38に試料を停止させるときには、試料は少なくとも中温蛇行状流路37および中温制動流路46の両方に存在する。
本変形例に係る反応処理容器60においても、高温制動流路45は、その断面積が高温蛇行状流路35の断面積よりも大きくなるように形成されている。同様に、中温制動流路46は、その断面積が中温蛇行状流路37の断面積よりも大きくなるように形成されている。これにより、高温蛇行状流路35および中温蛇行状流路37を流れる試料にブレーキ作用を及ぼすことができる。
(第2の実施形態)
図3を参照して説明したように、反応処理装置100は、PCRの間に反応処理容器の流路内を移動中の試料に励起光を照射し、試料から発せられる蛍光を計測するために、蛍光検出器140を備える。蛍光検出器140においては、光学ヘッド142が励起光の試料への指向性照射と試料から発せられる蛍光の集光の機能を担う。光学ヘッド142の集光スポット径は、通常0.15mm〜0.45mm程度であり、非常に小さい。そのため、光学ヘッド142を反応処理装置100に配置および固定する際に、非常に高い精度が求められる。その結果、組み付けの作業性が低下するとともに、部品コストが高くなるおそれがある。そこで、第2の実施形態では、このような課題を解決できる反応処理容器を提供する。
本発明の第2の実施形態に係る反応処理容器も、基板と、該基板に貼り付けられた封止フィルムと、フィルタと、から成る。第1の実施形態に係る反応処理容器10と共通する構成については同一の符号を使用し、重複する説明を適宜省略する。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る反応処理容器70が備える基板14の平面図である。第2の実施形態に係る反応処理容器70は、第1の実施形態に係る反応処理容器10の高温制動流路45および中温制動流路46に対応する流路を備えていない。さらに、第2の実施形態に係る反応処理容器70は、検出流路61に関して第1の実施形態に係る反応処理容器10と異なる構成を有する。
図8は、第2の実施形態に係る反応処理容器70の検出流路61の断面を示す。検出流路61は、接続流路40に設けられており、試料から蛍光を検出するために励起光の照射を受ける。図8に示すように、検出流路61は台形状の流路であり、開口部62と、底面63と、底面63の両側に位置する側面64とを備える。側面64は、底面63から開口部62に向かって拡大するテーパ状に形成されている。検出流路61の形状・寸法を規定するパラメータとしては、深さDd、テーパ角Td、開口幅Wd1、底面幅Wd2、断面積Sdがある。
第2の実施形態に係る反応処理容器70においては、検出流路61の断面積Sdは、蛇行状流路53の断面積Sr(図4(a)参照)よりも大きくなっている。このように検出流路61の断面積Sdを蛇行状流路53の断面積Srよりも大きくすることによって、反応処理装置100に光学ヘッド142を組み付ける際のトレランスが緩和されるので、組み付け作業性が向上するとともに、部品の低コスト化を図ることができる。
第2の実施形態に係る反応処理容器70において、蛇行状流路53の断面積Srと検出流路61の断面積Sdの断面積比Sd/Srは、1<Sd/Sr≦1.8の範囲内であってよく、好ましくは1.02≦Sd/Sr≦1.5の範囲内であってよく、より好ましくは1.02≦Sd/Sr≦1.2の範囲内であってよい。
第2の実施形態に係る反応処理容器70において、蛇行状流路53の開口幅Wr1は、0.55mm〜0.95mmであってよく、好ましくは0.65mm〜0.85mmであってよい。蛇行状流路53の底面幅Wr2は、0mm〜0.95mmであってよく、好ましくは0.4mm〜0.6mmであってよい。蛇行状流路53の深さDrは、0.5mm〜0.9mmであってよく、好ましくは0.6mm〜0.8mmであってよい。蛇行状流路53のテーパ角Trは、0°〜45°であってよく、好ましくは10°〜30°であってよく、さらに好ましくは15°〜25°であってよい。第2の実施形態に係る反応処理容器70において、蛇行状流路53の底面幅Wr2が0mmもしくはその近傍になるように開口幅Wr1に比較して小さい場合は、蛇行状流路53の断面形状は、略逆三角形状に近いものになる点に注意する。また、テーパ角Trが0°もしくはその近傍になるように小さくした場合は、蛇行状流路53の断面形状は、略長方形状に近いものになる点に注意する。
第2の実施形態に係る反応処理容器70において、検出流路61の開口幅Wd1は、0.7mm〜1.2mmであってよく、好ましくは0.8mm〜1.1mmであってよい。検出流路61の底面幅Wd2は、0.15mm〜1.2mmであってよく、好ましくは0.55mm〜0.95mmであってよい。検出流路61の深さDdは、0.5mm〜1.2mmであってよく、好ましくは0.6mm〜1.1mmであってよい。検出流路61のテーパ角Tdは、0°〜45°であってよく、好ましくは10°〜35°であってよく、さらに好ましくは15°〜30°であってよい。
上記のような寸法で蛇行状流路53および検出流路61を形成することにより、試料(界面活性剤を含むこともありうる)の連続的な移動がスムースになり、射出成型など慣用の製造技術によっても容易に作製することができる。
さらに、検出流路61の断面において、底面幅Wd2を拡大することにより、上記のトレランスに関する効果のさらなる向上が図れるとともに、対向する側面64の間の距離が大きくなることにより、側面64での反射や屈折、散乱などが蛍光の安定した測定を妨げるおそれを低減できる。
検出流路61における底面63は、基板14の主面(すなわち、上面14aおよび下面14b)と平行な平面に形成される。また、反応処理容器70を、反応処理装置100(図3参照)に設置したときに、蛍光検出器140の光学ヘッド142は、その光軸が底面63や基板14の主面と略垂直になるように配置される。このように配置することにより、光学ヘッド142から試料に照射される励起光または試料から出射される蛍光の好ましくない屈折や反射等を抑制することができ、安定した蛍光強度の検出が可能となる。
底面63および側面64は平面状であり、底面63と側面64の接続部65は角張った形状となっている。すなわち、底面63と側面64の接続部65は、実質的に曲面を有さず、例えばその近似曲率半径は0.02mm以下であってよく、好ましくは0.01mm以下であってよく、より好ましくは0.005mm以下であってよい。蛍光検出領域86において、蛍光の出射部分や励起光の照射部分に対応する部分に曲面などが存在すると、それによって不規則な屈折や散乱が生じ、安定した蛍光の測定を妨げるおそれがある。従って、検出流路61の断面を曲面などを出来るだけ排除した形状にすることにより、このような事態が生じることを防ぐことができる。
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る反応処理容器90が備える基板14の平面図である。図10は、分岐流路42および試料導入口44付近を示す概略拡大平面図である。図11は、図10に示す分岐流路42および試料導入口44付近の概略A−A断面図である。
上述したように、緩衝流路39の一部から分岐流路42が分岐しており、分岐流路42の先端には、基板14の下面14bに露出するように試料導入口44が形成されている。この試料導入口44から試料が導入され、分岐流路42を介して緩衝流路39に流れ込む。緩衝流路39に充填された試料は高温蛇行状流路35や中温蛇行状流路37に移動されてPCRに供されるが、分岐流路42および試料導入口44に試料が残留している可能性がある。上述したように、PCRの間に高温領域36や中温領域38は反応処理装置のヒータにより加熱されている。高温領域36や中温領域38に与えられている熱が分岐流路42や試料導入口44に伝達されると、この熱により分岐流路42や試料導入口44に存在する空気が膨張し、この膨張した空気により残留した試料が緩衝流路39に押し出される可能性がある。すなわち、流路12には、PCRに供される試料(「主試料」と称する)と、残留試料とが離間して存在することとなる。このように流路12に主試料と残留試料とが離間して存在している場合、流路12内を加圧しても推進力が主試料に好適に作用せず、主試料の移動を適切に行うことができない可能性がある。
そこで、本発明の第3の実施形態に係る反応処理容器90は、分岐流路42および試料導入口44に近い中温領域38と、分岐流路42および試料導入口44との間の距離dεが5mm以上となるように形成されている。基板14が樹脂又はガラス製である場合、距離dεを5mm以上とすることで、中温領域38から分岐流路42および試料導入口44への熱の伝達を防止または少なくとも抑制できるので、上記のような不具合を防止することができる。距離dεは、5mm以上であり、6mm以上が好ましく、7.5mm以上がより好ましく、9mm以上がさらに好ましい。当然のことながら、距離dεは大きければ大きい程伝熱の防止という観点では好ましいが、過剰に大きくすると反応処理容器90が大型化してしまう。距離dεは、50mm以下であり、40mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下がさらに好ましい。
本実施形態では、高温領域36よりも中温領域38の方が分岐流路42および試料導入口44に近いため、中温領域38と分岐流路42および試料導入口44との間の距離dεを規定した。しかしながら、別の実施形態において中温領域よりも高温領域の方が分岐流路42および試料導入口44に近い場合には、高温領域と分岐流路および試料導入口との間の距離dεを規定することになる。すなわち、複数の反応領域のうち分岐流路42および試料導入口44に最も近い反応領域と、分岐流路42および試料導入口44との間の距離dεを5mm以上とすればよい。
(第4の実施形態)
図12は、本発明の第4の実施形態に係る反応処理容器110が備える基板14の平面図である。緩衝流路39の一部から分岐流路42が分岐しており、分岐流路42の先端には、基板14の下面14bに露出するように試料導入口44が形成されている。この試料導入口44から導入された試料が、いずれかのフィルタのほうに流れて、フィルタ面に接触し、フィルタ面の一部が試料によって埋没や目詰まりしてしまう可能性がある。フィルタの一部または全体に目詰まり等が生じてしまうと、送液システムとしての、シリンジポンプやダイアフラムポンプ、ブロアなどの推進力がフィルタを通じて試料に作用しにくくなり、試料の高温領域と中温領域の間の往復移動が正常に行われずに、PCR反応に支障がでる可能性がある。
そこで、本発明の第4の実施形態に係る反応処理容器110は、試料導入口44から試料導入口に最も近いほうのフィルタ(図12では第1フィルタ28)に至るまでの流路の体積をVfとして、試料導入口から導入される試料の体積をVsとした場合に、k×Vs<Vf(ただし、kは係数であり0.1〜10の実数を表す)を満たす。
また、係数kは、導入される試料の体積Vs、導入される試料の溶媒の種類や粘度、試料に添加されている界面活性剤などの物質の量やその性質、基板や流路封止フィルムなどの表面との濡れ性や抵抗などによって決まる。係数kの値は好ましくは0.3〜5であり、より好ましくは0.4〜2である。また、導入された試料の全量が、試料導入口から最も近いフィルタのほうに流れたとしても、試料の先端がフィルタ面に接触しないという観点から、係数kは1より大きくてもよい(1<k)。一方で係数kが大きい場合はVfが大きくなるので、基板の主面の省スペース効果に観点から、係数kは0.4〜0.6であってもよい。
導入される試料の体積Vsは、1μL〜50μL(マイクロ・リットル)であり、好ましくは、5μL〜40μLであり、より好ましくは、10μL〜30μLであってもよい。流路の断面形状が、図4(a)で表される場合、試料導入口44から試料導入口44に最も近いフィルタに至るまでの流路の長さLhは、2mm〜200mmであり、好ましくは、5mm〜100mmであり、より好ましくは、10mm〜50mmであり、さらに好ましくは、20mm〜40mmである。流路の長さLhが小さすぎると、試料がフィルタに接触する可能性が高くなり、大きすぎると、基板14のサイズが大きくなる原因となり、基板の省スペースの観点から好ましくないうえに、反応処理装置の小型化に支障が生じる。
試料導入口44と試料導入口44に最も近いフィルタまでの流路の少なくとも一部を図4(b)で表される断面や、図8で表される断面の流路としてもよい。試料導入口44からフィルタに至る流路の断面積を比較的大きくすることにより、長さLhを小さくすることができる。また、PCRなどの反応処理中の試料のオーバーランを防ぐブレーキ作用が期待でき、試料によるフィルタの汚染を防ぐことができる。
例えば、作業者が、試料を試料導入口44から導入する際に、誤って、試料導入口44に最も近いフィルタを封止している封止フィルムや、当該フィルタに最も近い空気連通口を封止している封止フィルムを剥がしてから試料を導入したとしても、試料が試料導入口に近いフィルタの方向に流れてフィルタに接触して、フィルタを汚染することを防ぐことができる。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
例えば、ある実施形態に係る反応処理容器は、上記第1の実施形態に係る反応処理容器10における高温制動流路45および中温制動流路46と、上記第2の実施形態に係る反応処理容器70における検出流路61とを備えていてもよい。この場合、これら2つの実施形態の両方の効果を奏することのできる反応処理容器を実現できる。