JP2020197061A - 柱梁接合部構造及び柱梁接合部の設計方法 - Google Patents

柱梁接合部構造及び柱梁接合部の設計方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鉄骨梁の端部のまわりのコンクリートが硬化する前の状態において鉄骨梁の長手方向の中央部のモーメントや撓みをより効果的に抑える。精度のよい柱梁接合部の設計価方法を提供する。【解決手段】柱梁接合部構造は、鉄筋16がコンクリート32の内部に配置された柱10と、長手方向の端部が柱10のコンクリート32内に配置された鉄骨梁20と、の接合部14の構造である。鉄骨梁20の長手方向の端部を柱12のコンクリート32において鉄骨梁20の長手方向の端部よりも下方側の部分に固定することで、鉄骨梁の長手方向の端部の回転に抗する反力を生じさせる固定要素を備え、固定要素が、鉄骨梁20の長手方向の端部の回転中心よりも鉄骨梁20の長手方向の端側に配置されている。【選択図】図26

Description

本発明は、柱梁接合部構造及び柱梁接合部の設計方法に関する。
下記特許文献1及び特許文献2には、鉄筋コンクリートの柱や壁に凹所(凹部)を形成し、この凹所に鉄骨梁の端部を挿入配置するとともにコンクリートを充填することで、柱や壁と鉄骨梁とを接合した接合部構造が開示されている。また、特許文献2に記載された接合部構造では、鉄筋コンクリートの壁に形成された凹部内に、アンカーを有する基板を固定し、このアンカーにボルトを螺合させることで、鉄骨梁の端部を凹部の底部に固定している。そして、鉄骨梁の端部を凹部の底部に固定した後に、凹部の内部にコンクリートを充填している。
特開2016−142062号公報 特開平8−42027号公報
しかしながら、特許文献1に記載された接合部構造では、凹所内に充填されたコンクリートが硬化する前の状態では、コンクリートからの反力による接合部の回転剛性は得られないため、接合部はピン接合として設計する必要があり、構造体の自重や施工中の荷重によって生じる鉄骨梁の長手方向の中央部のモーメントや撓みを抑えることが難しい。そのため、構造体の自重や施工中の荷重に対しては、凹所内に充填されたコンクリートが硬化する前のピン接合の状態での鉄骨梁のモーメントや撓みを考慮して、鉄骨梁の断面寸法を設定する必要がある。この場合、コンクリート硬化後の接合部の回転剛性を考慮して設定した鉄骨梁の断面寸法よりも、コンクリートが硬化する前のピン接合の状態で構造体の自重や施工中の荷重を考慮して設定した鉄骨梁の断面寸法が大きくなることがあり、コンクリートと鉄骨梁の合成効果による接合部の回転剛性を活用して鉄骨梁の断面寸法の増加を抑えた経済設計をすることが難しい。また、接合部の回転剛性を過大評価すると鉄骨梁のたわみは過小評価することになり、接合部の回転剛性を過小評価すると鉄骨梁の端部の曲げモーメントを過小評価して安全を損なうこととなるため、接合部の回転剛性及び耐力を精度良く評価できることが望ましい。
特許文献2に記載された接合部構造は、凹部内に充填されたコンクリートが硬化する前の状態で、多数のボルトを用いることなく梁から接合部に作用するせん断力に対する接合強度を向上し、鉄骨梁の長手方向への抜け出しや、長手方向の軸まわりの回転による倒れを抑えることができるが、鉄骨梁の接合部の曲げモーメントに対する抵抗を高めて長手方向の中央部のモーメントや撓みをより効果的に抑える効果は期待できない。また、特許文献2に記載された接合部構造で接合部の曲げモーメントに対する抵抗を高めるためには、あらかじめ鉄骨梁よりも高い位置まで鉄筋コンクリート造厚壁を形成してアンカーを埋設して硬化させ、アンカーを介して鉄筋コンクリート造厚壁に鉄骨梁の上フランジを接合する必要があり、鉄骨梁の埋設後に鉄骨梁の上フランジよりも高い位置のコンクリートを打設する場合には用いることができない。
本発明は上記事実を考慮し、コンクリートの柱に鉄骨梁の長手方向の端部を埋め込む形式の柱梁接合部について、鉄骨梁の端部が埋め込まれた部分のコンクリートが硬化する前の状態において鉄骨梁の長手方向の中央部のモーメントや撓みをより効果的に抑えることができる柱梁接合部構造を得ることを目的とする。また、精度のよい柱梁接合部の設計方法を提供することを目的とする。
本発明の柱梁接合部構造は、コンクリートの柱と、長手方向の両端部のうちの少なくとも一端部が前記柱のコンクリート内に配置された鉄骨梁とを有する接合部の構造であって、前記鉄骨梁の一端部を、前記柱のコンクリートにおける前記鉄骨梁の一端部よりも下方側の部分に固定することで、前記鉄骨梁の一端部の回転に抗する反力を生じさせる固定要素を備え、前記鉄骨梁の一端部の弾性回転中心を、前記柱のコンクリートと前記鉄骨梁の一端部との間に生じる支圧力と前記固定要素に生じる前記反力との和が前記鉄骨梁の一端部を除く部分に作用する外力と釣り合う点とし、前記固定要素が、前記弾性回転中心よりも前記鉄骨梁の一端部の梁端側に配置されている。
一方、本発明の柱梁接合部の設計方法は、コンクリートの柱と、長手方向の両端部のうちの少なくとも一端部が前記柱のコンクリート内に配置された鉄骨梁とを有する接合部の設計方法であって、前記鉄骨梁の一端部の弾性回転中心を、前記柱のコンクリートと前記鉄骨梁の一端部との間に生じる支圧力と前記固定要素に生じる前記反力の和が前記鉄骨梁の一端部を除く部分に作用する外力と釣り合う点とし、前記鉄骨梁の一端部を前記柱のコンクリートにおいて前記鉄骨梁の一端部よりも下方側の部分に固定することで、前記鉄骨梁の一端部の回転に抗する反力を生じさせる固定要素を、前記鉄骨梁の一端部の前記弾性回転中心よりも前記鉄骨梁の一端の梁端側に配置する。
本発明によれば、鉄骨梁の端部のまわりのコンクリートが硬化する前の状態において鉄骨梁の長手方向の中央部のモーメントや撓みをより効果的に抑えることができる。また、精度のよい柱梁接合部の設計方法を提供することができる。
柱と梁の接合部のモデルを示す側面図である。 柱と梁の接合部のモデルを示す側面図であり、梁端部周辺を拡大して示している。 柱と梁の接合部のモデルを示す側面図であり、鉄骨梁の長さ方向の反曲点までの区間を示している。 柱と梁の接合部の回転剛性計算のためのモデルを示す側面図であり、鉄骨梁の柱コンクリートに埋め込まれた部分における柱のコンクリートと上下フランジとの界面の支圧抵抗による反力の応力分布を示している。 柱のコンクリートと上下フランジとの界面の支圧抵抗を模式的に示した斜視図であり、支圧抵抗による反力が線形の応力勾配となっている状態を示している。 柱のコンクリートと上下フランジとの界面の支圧抵抗を模式的に示した斜視図であり、支圧抵抗による反力が均一な応力となっている状態を示している。 柱と梁の接合部の回転剛性計算のためのモデルを示す側面図であり、フェースベアリングプレートと柱のコンクリートとの界面の支圧抵抗による反力、柱内スタッドの引き抜き抵抗による反力、スラブ内の鉄筋の抵抗による反力を示している。 鉄骨梁の柱コンクリートに埋め込まれた部分に付加部材として柱内スタッドを設置したときの、柱内スタッドの引き抜きによる柱のコンクリートのコーン状破壊を説明するための斜視図である。 柱と梁の接合部の耐力計算のためのモデルを示す側面図であり、鉄骨梁の柱コンクリートに埋め込まれた部分における柱のコンクリートと上下フランジとの界面の上下方向の支圧抵抗による最大の反力が鉄骨梁に作用する状況模式的に示した側面図である。 柱と梁の接合部の耐力計算のためのモデルを示す側面図であり、鉄骨梁の柱コンクリートに埋め込まれた部分における柱のコンクリートと上下フランジとの界面に支圧抵抗による最大の反力が作用するときの、実際の応力分布とストレスブロックへの換算を説明するための側面図である。 有効支圧面積と最大支圧応力分布面積を説明するための説明図であり、投影面全体がコンクリート内にある場合を示している。 有効支圧面積と最大支圧応力分布面積を説明するための説明図であり、投影面の一部がコンクリートの外にある場合を示している。 柱と梁の接合部の耐力計算のためのモデルを示す側面図であり、鉄骨梁の柱コンクリートに埋め込まれた部分及びその周縁部に設けられた付加部材(フェースベアリングプレート、柱内スタッド及びスラブ内の鉄筋)の水平方向の抵抗による最大の反力が鉄骨梁に作用する状況を模式的に示した側面図である。 柱と梁の接合部の耐力計算のためのモデルを示す側面図であり、フェースベアリングプレートと柱のコンクリートとの界面の有効支圧面積の最大の応力分布、柱内スタッドの引き抜き抵抗による最大の反力、スラブ内の鉄筋の抵抗による最大の反力を説明するための側面図である。 フェースベアリングプレートと柱のコンクリートとの界面の有効支圧面積と最大支圧応力分布面積を説明するための説明図である。 接合部のモーメント−回転角の関係と、接合部の回転剛性及び耐力を説明するための図である。 鉄筋の剛性及び耐力計算に用いる各パラメータを示す表である。 柱内スタッドの剛性及び耐力計算に用いる各パラメータを示す表である。 柱と梁の接合部の回転剛性計算のためのモデルを示す側面図であり、鉄骨梁の柱コンクリートに埋め込まれた部分と柱コンクリートとの界面の支圧抵抗による反力の応力分布を示す側面図である。 柱と梁の接合部の耐力計算のためのモデルを示す側面図であり、柱鉄骨梁の柱コンクリートに埋め込まれた部分における柱のコンクリートと上下フランジとの界面の支圧抵抗による最大の反力が鉄骨梁に作用するときの支圧の有効領域、実際の応力分布とストレスブロックへの換算を示す側面図である。 鉄骨梁の柱コンクリートに埋め込まれた部分と柱コンクリートとの界面の支圧抵抗による剛性及び耐力計算に用いる各パラメータを示す表である。 フェースベアリングプレートとコンクリートとの支圧による剛性及び耐力計算に用いる各パラメータを示す表である。 接合部の柱フェース位置でのモーメント−回転角関係を示すグラフであり、実験結果と本発明による計算結果を併記している。 繰り返し作用する荷重に対する接合部の回転剛性の実験結果と本発明による計算結果とを比較して示すグラフである。 接合部の回転剛性及び耐力の実験結果と本発明による計算結果とを示す表である。 本発明を適用する柱と梁の接合部の例を示す斜視図である。 図21に示す柱梁接合部において、柱の下部形成工程を示す斜視図である。 図21に示す柱梁接合部において、X方向に沿う方向の鉄骨梁架け渡し工程を示す斜視図である。 図21に示す柱梁接合部において、Y方向に沿う方向の鉄骨梁架け渡し工程を示す斜視図である。 図21に示す柱梁接合部において、接合部のコンクリート及びスラブ形成工程を示す斜視図である。 図21に示す柱梁接合部において、接合部のコンクリートが硬化する前の、柱下部の上端に固定された鉄骨梁と柱との力の伝達のモデルを示す図である。 図26に示す柱梁接合部のモデルについて、力の伝達経路をばねに置き換えて模式的に示した側面図である。
(第1の実施形態)
図1A、図1B及び図2を用いて柱梁接合部構造の前提構成について説明する。
図1A及び図2に示されるように、本実施形態の前提構成となる柱梁接合部構造は、柱10と梁12との接合部14に適用されている。なお、建物の上下方向上側を矢印Z方向で示し、梁12が延在する方向の一方側かつ建物の水平方向の一方向を矢印X方向とする。
柱10は、建物の水平方向に沿って切断した断面視で略矩形状に形成されている。この柱10は、コンクリート32の内部に鉄筋16(図1Aでは図示省略)及び鉄骨18が配置されることで、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造の柱となっている。なお、本発明は鉄筋コンクリート(RC)造の柱と鉄骨梁との接合部にも適用することができる。
また、本実施形態では、建物の水平方向に沿って切断した断面視で断面H字状に形成されたH形鋼が鉄骨18として用いられている。さらに、本実施形態では、図2に示されるように、建物の上下方向に延びる複数の鉄筋16が主筋16Aとして設けられている。また、梁12の上方、下方及び側方で、複数の主筋16Aを取り囲んだ鉄筋16が、建物の上下方向で複数段に亘って帯筋16Bとして設けられている。
本実施形態では、4つの梁12が建物の上下方向の同じ位置で柱10に接合されている。そして、4つの梁12は、建物の上方側から見て柱10の回りに互いに90°の間隔をあけて配置されている。なお、4つの梁12の構成は互いに同じ構成とされているため、以下の説明においては、4つの梁12のうち1つの梁12について説明する。
梁12は、上下方向(梁12の長手方向と直交する方向)に切断(つまりYZ平面に平行な面で切断)した断面視で断面H字状に形成された鉄骨梁20と、鉄骨梁20の上部において水平方向(XY平面)に広がりかつ当該鉄骨梁20と一体化された鉄筋コンクリートのスラブ22と、を含んで構成された合成梁である。なお、本発明は、スラブ22と一体化されていない梁(鉄骨梁)にも適用することができる。
図1A及び図2に示されるように、鉄骨梁20は、建物の上下方向(Z方向)を厚み方向とする矩形板状の上フランジ20Aと、建物の上下方向を厚み方向とする矩形板状に形成され上フランジ20Aの下方側において当該上フランジ20Aと平行に広がる下フランジ20Bと、を備えている。また、鉄骨梁20は、上フランジ20A及び下フランジ20Bの幅方向(建物の水平方向の一方向でありかつ矢印X方向と直交する矢印Y方向)の中央部どうしを建物の上下方向に繋ぐウェブ20Cを備えている。このウェブ20Cは、矢印Y方向を厚み方向とする矩形板状に形成されている。
鉄骨梁20の長手方向の端部(梁端部24)は、ボルト34等の締結部材及びフィンプレート36を介して柱10の鉄骨18に接合されている。また、鉄骨梁20は、その長手方向の端部(梁端部24)が柱10のコンクリート32内に埋め込まれている。これにより、鉄骨梁20が、半剛接合状態で柱10に接合されている。なお、以下の説明において、梁端部24とは、鉄骨梁20において柱10のコンクリート32に埋め込まれている部分のことを言うものとする。
鉄骨梁20は、梁端部24に、上フランジ20Aにおいて柱10のコンクリート32に埋め込まれた上フランジ端部20Aa、下フランジ20Bにおいて柱10のコンクリート32に埋め込まれた下フランジ端部20Ba、ウェブ20Cにおいて柱10のコンクリート32に埋め込まれたウェブ端部20Caをそれぞれ備えている。上フランジ端部20Aaは、矢印Z方向側(上下方向の上側)に位置する上フランジ20Aの外面24A、及び矢印Z方向側とは反対側(上下方向の下側)に位置する上フランジ20Aの内面24Bにおいて、柱10のコンクリート32と接している。また、下フランジ端20Baは、矢印Z方向(上下方向の上側)に位置する下フランジ20Bの内面24C、及び矢印Z方向とは反対側に位置する下フランジ20Bの外面24Dにおいて、柱10のコンクリート32と接している。また、ウェブ端部20Caは、矢印Y方向側及び矢印Y方向とは反対側の面(ウェブ面)において柱10のコンクリート32と接している。
図1A及び図1Bに示されるように、鉄骨梁20は、その長手方向の一端部、具体的には、柱10のコンクリート32に埋めこまれた梁端部24が、鉄骨梁20の梁端部の回転に抗する反力を生じさせる固定要素により、柱10のコンクリート32に固定されている。
本実施形態では、固定要素として、アンカーボルト38及びナット40が用いられており、鉄骨梁20は、これらのアンカーボルト38及びナット40により、柱10のコンクリート32における鉄骨梁20の梁端部24よりも下方側の部分に固定されている。なお、図1Aにおいては、アンカーボルト38及びナット40の図示を省略している。また、図1Bにおいては、図1Aに示された符号の一部を省略している。具体的に、アンカーボルト38は、鉄骨梁20の梁端部24における下フランジ20BをZ方向に貫通していて、下フランジ20Bの下面側よりも下方側の部分は柱10のコンクリート32に埋設される一方で、下フランジ20Bの上面側よりも上方側の部分にはナット40が取り付けられ、鉄骨梁20の梁端部24を、アンカーボルト38を介して柱10のコンクリートに固定している。
固定要素であるこれらのアンカーボルト38及びナット40は、梁端部24が弾性回転中心24Eを軸に回転する場合に、回転に対する抵抗要素として作用する付加部材の一つであり、弾性回転中心24Eよりも鉄骨梁20の梁端部24の梁端側(鉄骨梁20の長手方向における梁端部24の端面側)に配置されている。これにより、鉄骨梁20の梁端部24の回転に抗する反力がアンカーボルト38のテンションとして生じる。すなわち、アンカーボルト38は、梁端部24が弾性回転中心を軸に回転する際に、回転に抗する反力を生じさせる。また、鉄骨梁20の梁端部24の回転に抗するコンクリート32からの反力が、梁端部24の下フランジ20Bにおいて弾性回転中心24Eよりも鉄骨梁20の長手方向の中央部側に生じる。
具体的に、鉄骨梁20に矢印Z方向とは反対向き(図1Bにおける下方向き)の鉛直荷重が作用した場合、鉄骨梁20は、XZ面内において、梁端部24の回転中心24Eを中心に、鉄骨梁20を反時計回りにθだけ回転し、図1B中破線で示す鉄骨梁20aの位置に変位する。回転中心24Eを通りZ方向に平行な第1軸24F、弾性回転中心24Eを通りX方向に平行な第2軸24Gとすると、梁端部24が回転中心24Eを軸に回転したとき、アンカーボルト38は、回転に抗する反力を生じさせる抵抗要素として機能する。
また、下フランジ端部20Baにおける下フランジ20Bの外面24D(すなわち、下フランジ20Bの下面)のうち、第1軸24Fよりも鉄骨梁20の長手方向中央側で柱10のコンクリート32に接する部分を下フランジ端部外面抵抗要素24Daとすると、梁端部24が弾性回転中心24Eに対して回転する際に、下フランジ端部外面抵抗要素24Daは、回転に抗する反力(支圧力)を生じる抵抗要素として機能する。
つまり、固定要素であるアンカーボルト38及びナット40と、下フランジ端部外面抵抗要素24Daは、鉄骨梁20における柱10のコンクリート32の内部に配置された梁端部24が回転中心24Eを軸に回転したときに、回転に抗する反力を生じさせる2つの抵抗要素である。
ここで、鉄骨梁20の梁端部24の弾性回転中心24Eは、柱10のコンクリート32と鉄骨梁20の梁端部24との間に生じる支圧力と固定要素(この実施形態の場合、アンカーボルト38及びナット40)に生じる反力との和が鉄骨梁20の梁端部24を除く部分に作用する外力と釣り合う点である。
また、図1A及び図2に示されるように、本実施形態の鉄骨梁20は、鉄骨梁20の上部を構成する上フランジ20Aに固定された複数のスタッド26を備えている。これらの複数のスタッド26は、上フランジ20Aから建物の上方側へ向けて突出しており、鉄骨梁20の長手方向に沿って互いに間隔をあけて配置されている。なお、図1Aにおいては、梁端部24におけるスタッド26Aのみを図示している。梁端部24におけるスタッド26Aは、梁端部24が、後述する回転中心24Eを軸に回転する場合に、回転に対する抵抗要素として作用する付加部材である。また、本実施形態では、スラブ22内に設けられた接合部補強筋28が、鉄骨梁20の長手方向に沿って、かつスタッド26の上端部に沿って、柱10をX方向に貫通するように設けられている。これらの接合部補強筋28及びスタッド26のうち、梁端部24に位置する部分以外の接合部補強筋28の一部及びスタッド26Bは、スラブ22及び柱10のコンクリート32の内部に配置(埋設)されている。なお、スラブ22内のスタッド26Bは、鉄骨梁20とスラブ22とをつないでいる。接合部補強筋28は、梁端部24が回転中心24Eを軸に回転する場合に、回転に対する抵抗要素として作用する付加部材である。
さらに、鉄骨梁20は、当該鉄骨梁20の長手方向を厚み方向とする矩形板状に形成されたフェースベアリングプレート30を備えている。本実施形態では、2つのフェースベアリングプレート30が、鉄骨梁20の長手方向の同じ位置においてウェブ20Cを挟んで矢印Y方向側及び矢印Y方向とは反対側にそれぞれ固定されている。なお、フェースベアリングプレート30の矢印Y方向への寸法は、当該フェースベアリングプレート30が上フランジ20A、下フランジ20B及びウェブ20Cに囲まれた領域から矢印Y方向側又は矢印Y方向とは反対側へ突出しない寸法に設定されている。また、鉄骨梁20が柱10のコンクリート32に埋め込まれた状態では、X方向においてフェースベアリングプレート30における柱10の軸心側とは反対側(すなわち柱10の外方側)の面は、当該柱10の外面と略面一となっている。
フェースベアリングプレート30における柱10の軸心側(図1Aにおける右側)に位置するフェースベアリングプレートの内面30Aは、柱10のコンクリート32と接している。
ここで、鉄骨梁20にZ方向負側向きの鉛直荷重が作用した場合、鉄骨梁20は、XZ面内において、梁端部24の回転中心24Eを中心に、鉄骨梁20を反時計回りにθだけ回転し、図1A中破線で示す鉄骨梁20aの位置に変位する。回転中心24Eを通りZ方向に平行な第1軸24F、回転中心24Eを通りX方向に平行な第2軸24Gとすると、梁端部24が回転中心24Eを軸に回転したときの、フェースベアリングプレート30の内面30Aのうち、第2軸24Gを挟んで矢印Z方向と反対側の部分を、フェースベアリングプレートの第1内面30Aaとする。このフェースベアリングプレート30の第1内面30Aaは、鉄骨梁20が鉄骨梁20aの位置に回転した場合に、柱10のコンクリート32から支圧による反力が作用し、梁端部24の回転に対する回転抵抗を生じさせる。すなわち、フェースベアリングプレート30の第1内面30Aaは、鉄骨梁20における柱10のコンクリート32の内部に配置された梁端部24が回転中心24Eを軸に回転したときに、回転に対する抵抗要素として作用する付加部材である。
また、鉄骨梁20にZ方向負側向きの鉛直荷重が作用して鉄骨梁20aが回転中心24Eを中心に回転したとき、上フランジ端部20Aaにおける上フランジ20Aの外面24A及び内面24B、下フランジ端部20Baにおける下フランジ20Bの内面24C及び外面24Dは、柱10のコンクリート32から支圧による反力が作用し、梁端部24の回転に対する回転抵抗を生じさせる。すなわち、上フランジ端部20Aaの外面24A及び内面24Bは、上フランジ端部外面抵抗要素24Aa及び上フランジ端部内面抵抗要素24Baとして、また下フランジ端部20Baの内面24C及び外面24Dは、下フランジ端部内面抵抗要素24Ca及び下フランジ端部外面抵抗要素24Daとして、梁端部24の回転に抵抗する抵抗要素となる。より詳しくは、上フランジ端部20Aaの外面24Aのうち、第1軸24Fより矢印X方向側の部分を上フランジ端部外面抵抗要素24Aaとし、上フランジ端部20Aaの内面24Bのうち、第1軸24Fより矢印X方向と反対側の部分を上フランジ端部内面抵抗要素24Baとしている。また、下フランジ端部20Baの内面24Cのうち、第1軸24Fより矢印X方向側の部分を下フランジ端部内面抵抗要素24Caとし、下フランジ端部20Baの外面24Dのうち、第1軸24Fより矢印X方向と反対側の部分を下フランジ端部外面抵抗要素24Daとしている。
これらの上フランジ端部外面抵抗要素24Aa、上フランジ端部内面抵抗要素24Ba、下フランジ端部内面抵抗要素24Ca、下フランジ端部外面抵抗要素24Daは、鉄骨梁20における柱10のコンクリート32の内部に配置された梁端部24が回転中心24Eを軸に回転したときに、回転に抗する反力を生じさせる4つの抵抗要素である。
さらに、本実施形態では、鉄骨梁20が鉄骨梁20aの位置に回転すると、付加部材の一つであるスタッド26Aは矢印X方向とは反対側(図1A中の左側)に変位し、その変位量に応じて柱10のコンクリート32から反力を受ける。すなわち、スタッド26Aは、鉄骨梁20における柱10のコンクリート32の内部に配置された梁端部24が回転中心24Eを軸に回転したときに、回転に抗する反力を生じさせる抵抗要素である。
また、本実施形態では、鉄骨梁20が鉄骨梁20aの位置に回転すると、付加部材の一つであるフェースベアリングプレート30の第1内面30Aaは矢印X方向側(図1A中の右側)に変位し、その変位量に応じて柱10のコンクリート32及び柱10を挟んで矢印X方向側の相対する接合部14から反力を受ける。すなわち、フェースベアリングプレート30の第1内面30Aaは、鉄骨梁20における柱10のコンクリート32の内部に配置された梁端部24が回転中心24Eを軸に回転したときに、回転に抗する反力を生じさせる抵抗要素である。
さらに、本実施形態では、鉄骨梁20が鉄骨梁20aの位置に回転すると、付加部材の一つである接合部補強筋28は矢印X方向とは反対側(図1A中の左側)に伸ばされて変位し、その変位量に応じて柱10のコンクリート32からから反力(引張力)を受ける。すなわち、接合部補強筋28は、鉄骨梁20における柱10のコンクリート32の内部に配置された梁端部24が回転中心24Eを軸に回転したときに、回転に抗する反力を生じさせる抵抗要素である。
以上から、本実施形態では、抵抗要素の総数nはn=8であり、iを1以上n以下の自然数としたときに、抵抗要素iの反力が、抵抗要素iの剛性kと変形量との積で表されるものとすると、柱10のコンクリート32の内部に配置された梁端部24の弾性回転中心24Eaを、抵抗要素iの反力をi=1〜8ついて累加した総和と鉄骨梁20が支えるZ方向負側向きの鉛直荷重によって接合部に作用するせん断力が釣り合う点として、求めることができる。梁に軸力(X方向の力)が作用する場合は、軸力と抵抗要素iの反力のX方向成分の総和についても力の釣り合いを満たすように、弾性回転中心24Eaを求める。
本実施形態の場合、抵抗要素1(i=1)は上フランジ端部外面抵抗要素24Aa、抵抗要素2(i=2)は上フランジ端部内面抵抗要素24Ba、抵抗要素3(i=3)は下フランジ端部内面抵抗要素24Ca、抵抗要素4(i=4)は下フランジ端部外面抵抗要素24Da、抵抗要素5(i=5)はスタッド26A、抵抗要素6(i=6)はフェースベアリングプレートの第1内面30Aa、抵抗要素7(i=7)は接合部補強筋28、抵抗要素8(i=8)はアンカーボルト38であり、これらを総称して抵抗要素iと呼ぶ。
本実施形態では、固定要素であるアンカーボルト38及びナット40、上フランジ端部外面抵抗要素24Aa、上フランジ端部内面抵抗要素24Ba、下フランジ端部内面抵抗要素24Ca、下フランジ端部外面抵抗要素24Da、スタッド26A、フェースベアリングプレート30の第1内面30Aaに対して、柱10のコンクリート32から作用する支圧による反力は、柱10のコンクリート32が抗することのできる最大耐力を超えないように調整されている。具体的には、固定要素を含む各抵抗要素の反力の調整を、鉄骨梁20のX方向における両端部の間の距離及び/又は鉄骨梁20の断面形状を調整することによって行っている。このように調整されることで、接合部に顕著な不可逆変形が生じないため、計算上の接合部の回転剛性を担保することができ、梁に生じるたわみや曲げモーメントが計算値と比べて過大になるのを防止できる。
また、付加部材であるスタッド26Aに対して、柱10のコンクリート32から作用する支圧による反力が、スタッド26Aが抗することのできる最大耐力を超えないように、鉄骨梁20のX方向における両端部の間の距離及び/又は鉄骨梁20の断面形状が調整されている。さらに、付加部材である接合部補強筋28に作用する反力が、接合部補強筋28が抗することのできる最大耐力を超えないように、鉄骨梁20のX方向における両端部の間の距離及び/又は鉄骨梁20の断面形状が調整されている。このように調節されることで、接合部の回転による各抵抗要素の変位と各抵抗要素の弾性剛性に応じて計算される各抵抗要素の反力がその最大耐力を超えないようにでき、接合部の塑性化を抑制できる。これにより、接合部の固定度が計算値よりも低下して梁のたわみが計算値よりも大きくなるのを防ぐことができる。
また、本実施形態では、鉄骨梁20において柱10のコンクリート32の内部に配置された部分(接合部14)の単位回転角当たりの回転抵抗Sは、抵抗要素iの反力が、前記抵抗要素iの剛性kと変形量との積で表されるものとし、抵抗要素iの変位の代表点(アンカーボルト38の軸、上フランジ端部外面抵抗要素24Aa、上フランジ端部内面抵抗要素24Ba、下フランジ端部0内面抵抗要素24Ca、下フランジ端部外面抵抗要素24DaのそれぞれのX方向の中央点)と、弾性回転中心24Eとを結ぶベクトルの成分のうち、抵抗要素iの反力の法線方向であるX方向の成分の大きさをxd,iとし、抵抗要素iの反力の重心と、弾性回転中心24Eとを結ぶベクトルの成分のうち、抵抗要素iの反力の法線方向であるX方向の成分の大きさをxl,iとすると、以下の式1で計算される。
ここで反力の重心とは、ある長さまたは面積を持つ領域sに作用する分布荷重wによって回転中心に対して作用するモーメントと等価なモーメントを与える仮想の集中荷重pの作用線のことを指す。ただし、仮想の集中荷重pは分布荷重wを領域sで積分した値と同じとして、回転中心から作用線までの距離を設定する。
これにより、複数の抵抗要素を有する任意のディテールの接合部について、各抵抗要素の特性と接合部の回転剛性を一義的に対応付けられる。
さらに、本実施形態では、抵抗要素iの反力を抵抗要素iの負担しうる最大の反力Fi,Rdとし、接合部14の耐力をMj,Rdとし、任意の回転中心24Eを仮定し、回転中心24Eと反力の作用点との距離をxu,iとし、回転中心24Eの位置であるX座標とY座標の2つを変数として、以下の式2を用いてMj,Rdを計算し、接合部14の耐力が以下の式2で計算されたMj,Rdの最小値の耐力に設定されている。
これにより、複数の抵抗要素を有する任意のディテールの接合部について、各抵抗要素の最大耐力と接合部の最大耐力を一義的に対応付けられる。なお、Mj,Rdが最小となるときの回転中心24Eを終局回転中心24Ebとする。
以上説明した柱10と梁12との接合部14のように、鉄骨梁20が半剛接合状態で柱10に接合されている構成では、梁端部24に適度な回転剛性を付与することができる。
以下、柱梁接合部、すなわち柱10と梁12との接合部14の設計方法について説明する。
(接合部14の回転剛性の評価方法)
前述のとおり、以上説明した柱10と梁12との接合部14のように、鉄骨梁20が半剛接合状態で柱10に接合されている構成であって、付加部材、梁12の断面寸法と長さが適切に設定されていれば、梁端部24に適度な回転剛性と耐力を付与することができることがわかったが、以下においてはこの回転剛性を定量的に評価する方法について説明する。
まず、柱梁接合部を、接合部14の回転剛性を評価することにより設計する場合について説明する。この設計方法に基づいて、接合部の回転剛性を評価し、それに基づいて鉄骨梁20の各部の寸法や付加部材等を設定するなどして接合部を設計することにより、接合部14の回転剛性を所望の回転剛性に設定することができる。
接合部14の回転剛性S(Nmm/rad)を、接合部14における梁端部24の単位回転角(rad)あたりの回転抵抗(Nmm)であると定義すると、回転剛性Sは以下の式1.1で表される。なお、M(Nmm)は梁端部24の回転抵抗であり、φ(rad)は梁端部24の回転角である。
図1Aに示すように、接合部14の変形状態は、鉄骨梁20の梁端部24の剛体回転と鉄骨梁20の回転を拘束する(回転に抗する)各抵抗要素の変形で構成されるものと仮定すると、抵抗要素iの変形量δ(mm)は下式1.2で表される。
d,i(mm)は抵抗要素iの代表変位の作用線から梁端部24の弾性回転中心までの距離、すなわち抵抗要素iの代表変位の作用線と、鉄骨梁において柱のコンクリートの内部に配置された部分の前記弾性回転中心との距離である。ここで、代表変位とは、抵抗要素の反力が1点に作用する場合は反力の作用点における変位、抵抗要素の反力が線状や面状に応力として分布して作用する場合は、分布する反力をそれぞれ線積分、面積分した値と等価となる一様な応力分布を仮定したときの、一様な応力分布の作用中心における仮想の変位を表す。
抵抗要素iの反力Fは、抵抗要素iの変形量δと剛性k(N/mm)の積で計算でき、以下の式1.3で表される。
すべての抵抗要素におけるFと、後述する抵抗要素iの反力の重心から梁端部24の弾性回転中心までの距離、すなわち抵抗要素iの反力の重心と、鉄骨梁において柱のコンクリートの内部に配置された部分の前記弾性回転中心との距離xl,i(mm)の積の和が、接合部の回転抵抗M(Nmm)として求められ、以下の式1.4で表される。
式1.4に式1.2及び式1.3を代入すると、以下の式1.5となる。
式1.5と式1.1との関係から、以下の式1.6(すなわち、式1)が成立する。
上記の方法で接合部14の回転剛性を求めるには、モデルにおける鉄骨梁20の梁端部24の剛体回転の弾性回転中心の位置を特定する必要がある。対象は弾性挙動であるので、任意の回転角に対して接合部14の各抵抗要素は線形の荷重変形関係を持つ可逆変形を生じると仮定すると、接合部14の内力Fの和と外力(梁軸力N(N)、梁せん断力V(N))との釣り合い条件から、弾性回転中心を求めることができる。
上記の反力Fと対応する接合部14内の抵抗要素は、鉄骨梁20の梁端部24の回転に抗する反力を生じさせる要素であり、前述したように、固定要素であるアンカーボルト38(及びナット40)に生じるテンションによる反力、スラブ22や柱10のコンクリート32内に配した接合部補強筋28の引張抵抗、接合部14内(柱内)のスタッド26の引き抜き抵抗、鉄骨梁20の上フランジ20Aの上下面及び下フランジ20Bの上下面と柱10のコンクリート32との支圧抵抗、フェースベアリングプレート30と柱10のコンクリート32の支圧抵抗がある。その他、鉄骨梁20のウェブ20Cと柱10のフィンプレート36とを繋ぐボルト接合部の摩擦によるすべり抵抗や支圧によるボルト34のせん断変形抵抗及びアンカーボルト34が挿通されるボルト孔の局所変形抵抗、フィンプレート36のせん断抵抗が考えられる。本実施形態では、各抵抗要素について弾性の荷重変形関係(弾性剛性)を仮定した。
以下、上記のうち、アンカーボルト38、スラブ22や柱10のコンクリート32内に配した接合部補強筋28の引張抵抗、接合部14内(柱内)のスタッド26の引き抜き抵抗、鉄骨梁20の上フランジ20Aの上下面及び下フランジ20Bの上下面と柱10のコンクリート32との支圧抵抗、フェースベアリングプレート30と柱10のコンクリート32の支圧抵抗を主要な抵抗要素とし、これらの各抵抗要素の弾性剛性についてそれぞれ説明する。
(アンカーボルト38の弾性剛性)
アンカーボルト38の弾性剛性k(N/mm)は、アンカーボルト38のヤング係数をE(N/mm)、アンカーボルト38の断面積(長手方向と直交する方向に沿って切断した断面の断面積)をa(mm)、第1軸24Fからアンカーボルト38の中心までの水平方向への距離をleff,b(mm)を用いて、以下の式5.4で表される。
(接合部補強筋28の弾性剛性)
コンクリート32内に配した接合部補強筋28の引張抵抗についての弾性剛性、すなわち接合部補強筋28の弾性剛性k(N/mm)は、接合部補強筋28の伸びu(mm)と引張力T(N)、後述するkslipを用いて、以下の式1.7で表現できる。
スラブ22の有効幅内の接合部補強筋28の全断面積をa(mm)、接合部補強筋28のヤング係数をE、uに対応する鉄筋の応力度をσ(N/mm)、ひずみをεとすると、さらに以下の式1.8及び式1.9が成り立つ。

ここで、接合部補強筋28の有効幅内では、ε、uは幅方向の位置によらず一定であるとの仮定から、同様にスラブ22幅方向の位置によらず一定な接合部補強筋28の有効長さhを定義することで、uとεは以下の式1.10で対応づけられる。
式1.10は、柱10の芯を中心とした長さhの範囲では、接合部補強筋28のひずみが一様であると仮定している。αは両側のモーメントに応じた接合部長さの補正係数であり、公知文献「EN1994-1-1:2004 Eurocode 4: Design of composite steel and concrete structures Part 1-1: General rules and rules for buildings」の「Appendix A.2」に基づき、両側に対称の負曲げモーメント(Mj,Ed1=Mj,Ed2)が作用する場合は0.5、片側のモーメントがゼロの場合(Mj,Ed1>Mj,Ed2=0)は3.6、これらを上下限として両側のモーメント(Mj,Ed1>Mj,Ed2)の比に応じて以下の式1.11〜式1.15で計算する。
(i)Mj,Ed1に対するα


(ii)Mj,Ed2に対するα


ここで、モーメントは負曲げ(梁が上に凸になる方向)を正としている。
図2に示されるように、接合部補強筋28のひずみの履歴において、接合部14を挟む両側の鉄骨梁20とスラブ22をつなぐスタッド26のうち最も柱10に近いもの同士の距離をhと等しいものとし、接合部14を挟む両側はほぼ対称の負曲げモーメントが作用していることからαを0.5とし、平面保持の仮定(Navier Hypothesis)のもとで計算した接合部補強筋28のひずみεr,calcと、接合部14のモーメント−回転角関係が弾性挙動を示す範囲での実験のひずみが概ね一致することを確認した。この結果に基づき、hは鉄骨梁20とスラブ22をつなぐスタッド26のうち最も柱に近いもの同士の距離とする。
以上から、式1.7に式1.8〜式1.10を代入して、kは以下の式1.16で計算できる。
slipはスタッド26の変形を考慮した接合部補強筋28の剛性の低減係数(0≦kslip≦1)であり、スタッド26の変形によるスラブ22と鉄骨梁20の相対ずれが大きいほど、小さい値となる。公知文献「EN1994-1-1:2004 Eurocode 4: Design of composite steel and concrete structures Part 1-1: General rules and rules for buildings」の「Appendix A.2」に基づき、以下の式1.17〜式1.20で計算できる。



ここで、lは接合部14から鉄骨梁20の長さ方向の反曲点までの区間(負曲げ区間)の長さ、Nはl内のスラブ22のコンクリート32aに含まれるスタッド26(シアコネクタ)の数、kscはスタッド26ひとつあたりのせん断剛性(N/mm)、hは補強筋の引張力と釣り合う圧縮力(後述のフェースベアリングプレート30と柱10のコンクリート32間の支圧による圧縮力)の作用中心から接合部補強筋28までの距離(mm)、dは接合部補強筋28から鉄骨梁20の断面の重心までの距離(mm)、Iは鉄骨梁20の断面二次モーメント(mm)、Eは鉄骨梁20のヤング係数(N/mm)である。
また、接合部補強筋28の変位を計算するためのxd,i、すなわち抵抗要素i代表の変位の作用線と、鉄骨梁において柱のコンクリートの内部に配置された部分の前記弾性回転中心との距離及び反力によるモーメント抵抗を計算するための腕の長さ、すなわち抵抗要素iの反力の重心と、鉄骨梁において柱のコンクリートの内部に配置された部分の前記弾性回転中心との距離xl,iは、ともに以下の式1.21で表される。
ここで、図1Aに示されるように、xは接合部14の弾性回転中心とスラブ22表面の間の距離の鉛直方向の軸(Z軸)と平行な成分(mm)、dは接合部補強筋28の断面の中心(または複層配筋の場合はそれらの重心)からスラブ22表面までの距離の鉛直方向の軸(Z軸)と平行な成分(mm)である。
(柱内スタッドのせん断に対する弾性剛性)
接合部14内(柱内)のスタッド26の引き抜き抵抗についての弾性剛性、すなわち柱内スタッドのせん断に対する弾性剛性kst(N/mm)は、スタッド26の引き抜き抵抗Tst(N)と、スタッド26のずれust(mm)とに基づいて求めることができる。スタッド26の引き抜き抵抗Tstは式1.22により、スタッド26のずれustは式1.23によりそれぞれ表される。

ここで、Tstはスタッド26の引き抜き抵抗(N)、φstはスタッド26の径(頭付スタッドの場合は軸部の径(mm))、nstはスタッド26の本数、ustはスタッド26のずれ(mm)、Dはデッキを含むスラブ22の全厚(mm)を表す(図1A参照)。スタッド26のせん断剛性(式1.22)は公知文献「井上一朗:頭付きスタッドの現状と展望, コンクリート工学, Vol. 34, No. 4, 1996.4」で井上らが示した実験式であり、スタッド26のせん断剛性はスタッド26の径に比例する形で与えられている。式1.22中の係数の9.8は(N/mm)の次元を持っている。なお、式1.18、式1.19に用いるkscは、公知文献「EN1994-1-1:2004 Eurocode 4: Design of composite steel and concrete structures Part 1-1: General rules and rules for buildings」の「Appendix A.3」に記載の値(φ19スタッドに対し100kN/mm)を用いてもよい。
式1.22から、柱10内のスタッド26のせん断による弾性剛性kst(N/mm)は、以下の式1.24で表される。
また、柱10内のスタッド26の変位を計算するための値、すなわち抵抗要素の代表変位の作用線と、鉄骨梁において柱のコンクリートの内部に配置された部分の前記弾性回転中心との距離xd,i、及び柱10内のスタッド26の反力によるモーメント抵抗を計算するための腕の長さ、すなわち抵抗要素の反力の重心と、鉄骨梁において柱のコンクリートの内部に配置された前記弾性回転中心との距離xl,iは、ともに以下の式1.25で表される。
(梁フランジ面とコンクリートの支圧による弾性剛性)
鉄骨梁20の上フランジ20Aの上下面及び下フランジ20Bの上下面と柱10のコンクリート32との支圧抵抗についての弾性剛性、すなわち梁フランジ面とコンクリートの支圧による弾性剛性に関して説明する。
まずはじめに、鋼板とコンクリートが一様な支圧応力下にあるときの支圧面の反力と支圧面の圧縮方向の変位について定式化する。
公知文献「EN1993-1-8:2005 Eurocode 3: Design of steel structures Part 1-8: Design of joints, BSI, 2010」は、鋼板とコンクリートが一様な支圧応力下にあるときの鋼板表面とコンクリートの間の支圧による弾性剛性k(N/mm)を以下の式2.1で与えている。
ここで、beffは有効支圧領域の幅(mm)、leffは弾性回転中心から有効支圧領域の縁端までの距離(有効支圧領域の長さ(mm))であり、beff×leffはコンクリート32の有効支圧面積(mm)を表わす(図5参照)。また、Eはコンクリートのヤング係数(N/mm)である。
αは例えば公知文献「Lambe T.W., Whitman R.V.: Soil Mechanics, MIT, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1969」ではポワソン比に依存する値であり公知文献「Martin Steenhuis他: Concrete in compression and base plate in bending, HERON Vol. 53, No. 1/2, 2008」では、以下の式2.2の値とされる。また、鋼材とコンクリート間のモルタルの充填性による剛性低減率1.5を考慮して、以下の式2.3の値とされる。

これを、一般的なフックの式P=kδの形に変形すると、以下の式2.4が成立する。
ここで、Pclは支圧による反力の合計(有効支圧領域における反力を有効支圧面積で積分した値(N))であり、δは支圧界面の圧縮方向の変位(mm)である。有効支圧面積の一様な平均支圧応力をσ(N/mm)とすると、式2.4はさらに次の式2.5の形に変形できる。
支圧を受けるコンクリート32の半空間において、δに対し、コンクリート32の実際のひずみはコンクリート32の支圧面から無限遠でゼロとなるが、これを等価な有効深さDc,eff(mm)の範囲で一定のひずみが作用するものとして、以下の式2.6でコンクリート32のひずみεc,effとδを対応付ける。
すると、式2.5と式2.6から、Dc,effはひずみの大きさに依存しない以下の式2.7で定義できる。
さて、接合部14内の柱10のコンクリート32に埋め込まれた鉄骨梁20(梁端部24)とコンクリート32との支圧については、梁端部24の弾性回転中心からの距離が遠いほど、支圧による沈み込み(支圧界面の変位)が大きくなるので、前述の公知文献「EN1993-1-8:2005 Eurocode 3: Design of steel structures Part 1-8: Design of joints, BSI, 2010の式をそのまま用いることはできない。ここでは、図3,図4のように支圧面が線形の応力勾配を持つ場合について、式2.1を利用した剛性の計算方法を導出する。
支圧界面が図3,図4に示す変位分布を持つとき、支圧面が受ける反力の合計Pc2(N)は以下の式2.8で計算できる。
式2.8中の「σc(y)」は支圧面におけるコンクリートの単位面積当たりの反力分布(N/mm)である。
また、図4から以下の式2.9〜式2.11が成り立つとする。


ここで、式2.9〜式2.11中のεc(y)は支圧面におけるコンクリートのひずみ分布、δc(y)は支圧面の圧縮方向の変位分布(mm)である。
式2.9〜式2.11を式2.8に代入すると、以下の式2.12が成り立つ。
式2.12による反力が、式2.4による反力と等価とおくと、以下の式2.13が成り立つ。
式2.13中のδcP,effは支圧面におけるコンクリートの代表変位(mm)である。
従って、支圧面が線形の応力勾配を持つ場合に対しても、式2.13で計算した変位を用いて、一様な支圧状態における式2.4を適用して反力を求めることができる。
次に、支圧面が線形の応力勾配を持つ場合の支圧反力によるモーメント(回転抵抗)Mc2(Nmm)は以下の式2.14で計算できる。
支圧面に一様な応力分布を仮定した場合のモーメント(回転抵抗)Mc1(Nmm)は以下の式2.15で計算できる。
式2.14によるモーメントを、式2.15によるモーメントと等価とおくと、以下の式2.16が成り立つ。
式2.16中のδcM,effはモーメント計算用の距離における支圧面の圧縮方向の変位(mm)である。
従って、支圧面が線形の応力勾配を持つ場合に対しても、式2.16で計算した変位を用いて、一様な支圧状態における式2.15を適用することができる。以上から、支圧面の剛性kは式2.12及び式2.13から、結局式2.1と同じ以下の式2.17で評価できる。
なお、有効支圧領域の幅beffは板曲げによって支圧面の縁端ほど支圧による反力が減衰することを考慮して設定するが、柱10の内部に埋め込まれた鉄骨梁20(梁端部24)のフランジについては、上下フランジ20A、20B間にコンクリート32が充填されている場合は上下フランジ20A、20Bの板曲げがコンクリート32によって拘束されているものとし、上下のフランジ20A、20B全幅を有効と考える。
また、柱10の内部に埋め込まれた鉄骨梁20(梁端部24)の上下フランジ20A、20Bとコンクリート32の支圧による代表変位を計算するための値、すなわち抵抗要素iの代表変位の作用線と、鉄骨梁において柱のコンクリートの内部に配置された部分の前記弾性回転中心との距離xd,i、及びモーメント抵抗を計算するための腕の長さ、すなわち抵抗要素の反力の重心と、鉄骨梁において柱のコンクリートの内部に配置された部分の前記弾性回転中心との距離xl,iは、それぞれ式2.13及び式2.14から、弾性回転中心から有効支圧領域の縁端までの距離leffを用いて以下の式2.18及び式2.19でそれぞれ表される。

図3の場合、上フランジ20Aの上フランジ端部外面抵抗要素24Aaの有効支圧領域の長さはleff,t、上フランジ20Aの上フランジ端部内面抵抗要素24Baの有効支圧領域の長さはleff,b、下フランジ20Bの下フランジ端部内面抵抗要素24Caの有効支圧領域の長さはleff,t、下フランジ20Bの下フランジ端部外面抵抗要素24Daの有効支圧領域の長さはleff,bであり、の有効支圧領域の幅はいずれもbeffである。
(フェースベアリングプレートとコンクリートの支圧による弾性剛性)
フェースベアリングプレート30と柱10のコンクリート32の支圧抵抗についての弾性剛性について説明する。
フェースベアリングプレート30については、支圧面の周辺の拘束条件を適切に考慮する。ここでは、ウェブ20Cによるフェースベアリングプレート30の面外変形拘束は無視し、公知文献「EN1993-1-8:2005 Eurocode 3: Design of steel structures Part 1-8: Design of joints, BSI, 2010」を参考に、図6に示す通り、下フランジ20Bの軸線上に作用する圧縮力がフェースベアリングプレート30の有効支圧領域を介してコンクリート32に伝達されるものとし、有効支圧領域の長さleff及び幅beffは、鉄骨梁20の下フランジ20Bの幅B(mm)、ウェブ20Cの厚みt(mm)、フェースベアリングプレート30の板厚tfb(mm)、局所支圧に対するコンクリート32の圧縮耐力fjd(N/mm)、フェースベアリングプレート30の降伏応力f(N/mm)を用いて、以下の式2.20及び式2.21で計算する。

γM0は鋼材の強度のばらつきを考慮した低減係数であるが、ここでは1とする。
前述の公知文献「Lambe T.W., Whitman R.V.: Soil Mechanics, MIT, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1969」によると、式2.21はTスタブのコンクリートとの支圧面を有する鋼板の曲げを考慮し、Tスタブが片持梁としてコンクリートの支圧強度と等しい等分布荷重を受けるモデルを仮定して、片持梁の最大曲げモーメントが弾性限曲げモーメントに達するときの梁長さを逆算したものである。すなわち式2.21は支圧強度の計算に用いる有効支圧領域の長さを表している。
一方で、前述の公知文献「Lambe T.W., Whitman R.V.: Soil Mechanics, MIT, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1969」において支圧面の剛性計算に用いる有効支圧領域の寸法について、鋼板の曲げ変形(正弦波形)を考慮した正味の支圧領域の長さCfl(mm)、Cflと等価な一様な支圧変形状態に換算した有効支圧領域の長さC(mm)=leff、支圧変形に対するひずみを定義する有効深さheq(mm)は以下の式2.22、式2.23及び式2.24で表される。


ここで、式2.23、式2.24中のξは有効深さheqのCflに対する比である。
さらに、αは前述の公知文献「EN1993-1-8:2005 Eurocode 3: Design of steel structures Part 1-8: Design of joints, BSI, 2010」、及び前述の公知文献「Martin Steenhuis他: Concrete in compression and base plate in bending, HERON Vol. 53, No. 1/2, 2008」を参考に、係数をαとすると、以下の式2.25で表される。
よって式2.24は、以下の式2.26で表される。
式2.22に式2.23及び式2.26を代入すると、以下の式2.27が成り立つ。
一方で公知文献「EN1993-1-8:2005 Eurocode 3: Design of steel structures Part 1-8: Design of joints, BSI, 2010」は、式2.21を強度計算、剛性計算の双方に用いてもよいこととしている。これは、公知文献「Lambe T.W., Whitman R.V.: Soil Mechanics, MIT, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1969」において、式2.21と式2.27の値がほぼ同じとなるためである。
以上から、式2.1、式2.4と同様に、フェースベアリングプレート30とコンクリート32の支圧面の剛性kc,fb(N/mm)及び反力Pc,fb(N)は、以下の式2.28、式2.29及び式2.30で計算できる。


また、フェースベアリングプレート30とコンクリート32の支圧力による代表変位を計算するための値、すなわち抵抗要素iの代表変位の作用線と、鉄骨梁において柱のコンクリートの内部に配置された部分の前記弾性回転中心との距離xd,i、及びモーメント抵抗を計算するための腕の長さ、すなわち抵抗要素の反力の重心と、鉄骨梁において柱のコンクリートの内部に配置された部分の前記弾性回転中心との距離xl,iは、図6から、スラブ22厚みD(mm)、鉄骨梁20の高さH(mm)、鉄骨梁20の下フランジ20B厚みt(mm)、スラブ22の上面から弾性回転中心までのZ方向に沿った距離x(mm)を用いて以下の式2.31で表される。
以上の説明では、柱10と梁12との接合部14の変形状態を鉄骨部分(鉄骨梁20の梁端部24)の剛体回転でモデル化し、モーメント抵抗を生じる鋼とコンクリートの支圧部に関する弾性剛性(回転剛性)の計算方法を記した。
(接合部14の耐力の評価方法)
次に、柱梁接合部を、接合部14の耐力を評価することにより設計する場合について説明する。接合部14の耐力Mj,Rdは、柱10と梁12の接合部14の終局状態が、鉄骨梁20の梁端部24の剛体回転と、鉄骨梁20の梁端部24の回転を拘束する各抵抗要素の反力とで構成されるものと仮定したとき、抵抗要素i(抵抗要素iの反力の重心)から梁端部24の回転中心までの距離xu,i(mm)、抵抗要素iの最大反力Fi,Rd(N)の積の和として、次式で求められる。
式3.1は、接合部14内の各抵抗要素が完全剛塑性の荷重変形関係を有するものとして、全ての抵抗要素が塑性流れを生じる状態(メカニズム)を仮定する。この仮定によって求められるモーメント抵抗は真の崩壊荷重よりも大きい値を与えるので(上界)、任意の回転中心に対して式3.1を用いてモーメント抵抗を求め、その中で崩壊荷重を最小化する回転中心(終局回転中心)を求め、その時のモーメント抵抗を接合部14のモーメント耐力(接合部14の耐力Mj,Rd)とする。
接合部14内の抵抗要素としては、スラブ22内に配した接合部補強筋28の引張抵抗、接合部14内のスタッド26の引き抜き抵抗、フェースベアリングプレート30と柱10のコンクリート32の支圧抵抗、鉄骨梁20の上フランジ20A及び下フランジ20Bと柱10のコンクリート32との支圧抵抗がある。その他、鉄骨梁20のウェブ20Cと柱10のフィンプレート36とを繋ぐボルト接合部の摩擦によるすべり抵抗や支圧によるボルト34のせん断変形抵抗及びボルト孔の局所変形抵抗、フィンプレート36のせん断抵抗がある。各抵抗要素について塑性流れを生じる耐力Fi,Rdが必要であるが、上述の各抵抗要素のうち、ここでは相対的に耐力が大きくモーメント抵抗の計算上無視できないものとして、スラブ22内に配した接合部補強筋28の引張抵抗、接合部14内のスタッド26の引き抜き抵抗、フェースベアリングプレート30と柱10のコンクリート32の支圧抵抗、鉄骨梁20の上フランジ20A及び下フランジ20Bと柱10のコンクリート32との支圧抵抗を考慮した各々の耐力について説明する。なお、他の抵抗要素についても適切に考慮してモーメント抵抗を求めてもよい。
(接合部補強筋の耐力)
図10Aに示すように、Fi,Rdに対応する、スラブ22内に配した接合部補強筋28の引張抵抗についての耐力、すなわち接合部補強筋28の耐力Fr,Rd(N)は、スラブ22有効幅内の接合部補強筋28の総断面積a(mm)と降伏応力fr,y(N/mm)とを用いて、以下の式3.2で表現できる。
または、降伏応力fr,yの代わりに引張強さfr,uを用いてもよい。
また、接合部補強筋28の反力によるモーメント抵抗を計算するための腕の長さ(抵抗要素i(抵抗要素iの反力の重心)から梁端部24の回転中心までの距離)、すなわち鉄骨梁において柱のコンクリートの内部に配置された部分の回転中心と反力の作用線との距離xu,iは、以下の式3.3で表される。
u,nは接合部14の回転中心とスラブ22表面の間の距離の鉛直方向の軸(Z軸)と平行な成分(mm)、dは接合部補強筋28の断面の中心(または複層配筋の場合はそれらの重心)からスラブ22表面までの距離の鉛直方向の軸(Z軸)と平行な成分(mm)である。
(柱内のスタッドのせん断耐力)
図10Aに示すように、Fi,Rdに対応する、接合部14内(柱内)のスタッド26の引き抜き抵抗についてのせん断耐力、すなわち柱内のスタッド26の最大耐力Fst,Rd(N)は、公知文献「日本建築学会: 各種合成構造設計指針・同解説, 第2版, 2010.11の第4編4.2節4.2」に記載されている頭付きアンカーボルトのせん断耐力の算定式を援用する。最大耐力Fst,Rdは、スタッド26のせん断強度により決まる耐力Tst1、コンクリート32の支圧強度により決まる耐力Tst2、スタッド26の前面の柱10のコンクリート32のコーン状破壊により決まる耐力Tst3のうちのいずれか小さい値とする。
(i)スタッドのせん断強度により決まるせん断耐力
st1(N)は、スタッド26一本あたりのせん断耐力qa1(N)を用いて以下の式3.4で与えられる。
φは低減係数であり、ここでは1.0とする。σqaはスタッド26のせん断強度(N/mm)で、材料試験の0.2%降伏耐力の1/31/2の値を用いる。scaはスタッド26の軸部の断面積(mm)である。
(ii)コンクリートの支圧強度により決まるせん断耐力
st2(N)は、スタッド26の本数nstと、スタッド26一本あたりのコンクリート32との支圧耐力qa2(N)とを用いて以下の式3.5で与えられる。
φはコンクリート耐力の低減係数であり、ここでは1.0とする。fcdは柱10のコンクリート32の圧縮強度(N/mm)、Eはコンクリートのヤング係数(N/mm)で、ともに材料試験の値を用いる。
(iii)柱コンクリートのコーン状破壊により決まるせん断耐力
st3(N)は、コーン状破壊の耐力qa3(N)を用いて以下の式3.6で与えられる。
σはコーン状破壊に対するコンクリート32の引張強度(N/mm)で、日本建築学会: 各種合成構造設計指針・同解説, 第2版, 2010.11に与えられる以下の式3.7を用いる。
qcはコーン状破壊面の有効投影面積(mm)で、以下の式3.8で求める。
cは柱10のコンクリート32表面から最も奥にあるスタッド26の軸芯から柱10のコンクリート32表面までの距離(mm)、s及びnはそれぞれ同一深さの列にあるスタッド26の間隔(mm)、及び本数である(図7参照)。
また、柱10内のスタッド26の反力によるモーメント抵抗を計算するための腕の長さ、すなわち鉄骨梁において柱のコンクリートの内部に配置された部分の回転中心と反力の作用線との距離xu,iは、以下の式3.9で表される。
(梁のフランジ面とコンクリートの支圧耐力)
鉄骨梁20の上フランジ20A及び下フランジ20Bと柱10のコンクリート32との支圧抵抗についての支圧耐力、すなわち梁フランジ面とコンクリートの支圧耐力Fc,Rd(N)について、公知文献「EN1993-1-8:2005 Eurocode 3: Design of steel structures Part 1-8: Design of joints, BSI, 2010」では、ベースプレートとコンクリートが一様な支圧状態下にあるとき、耐力Fc,Rd(N)を以下の式3.10で与えている。
ここで、beff(mm)、leff(mm)はコンクリートの有効支圧領域の幅と長さを表わす。beffは弾性剛性の計算剛性と同様、鉄骨梁20の上下フランジ20A、20Bと柱10のコンクリート32の支圧面においてはコンクリート32による上下フランジ20A、20Bの面外変形の拘束を考慮して上下フランジ20A、20Bの全幅をとる。
また、leffは、公知文献「EN1993-1-8:2005 Eurocode 3: Design of steel structures Part 1-8: Design of joints, BSI, 2010」では一様な支圧変形を仮定しているため全支圧面の長さを用いる(β=1)が、図8Aのような回転変形の場合は、応力勾配がある状態に対してストレスブロック(応力が一様な状態)を仮定するため、低減係数βを用いて図8A及び図8Bに示すように実際の応力分布と等価な支圧面に換算する。一方、βは、例えば公知文献「EN1992-1-1:2004 Eurocode2: Design of concrete structures Part 1-1: General rules and rules for buildings」ではコンクリート32の圧縮強度fcdに応じた以下の式3.11で定められる。
または、公知文献「日本建築学会: 鉄筋コンクリート柱・鉄骨梁混合構造の設計と施工, 第1版, 2001.1」には、βは0.6〜0.85の範囲であると記載されている。
さらに、fjdは局所支圧に対するコンクリート32の圧縮耐力で、以下の式3.12で定義される。
ここで、λは局所支圧に対する耐力割増係数で、公知文献「EN1992-1-1:2004 Eurocode2: Design of concrete structures Part 1-1: General rules and rules for buildings」や公知文献「日本建築学会: 鉄筋コンクリート柱・鉄骨梁混合構造の設計と施工, 第1版, 2001.1」に従い求められる。例えば、公知文献「EN1992-1-1:2004 Eurocode2: Design of concrete structures Part 1-1: General rules and rules for buildings」によると、以下の式3.13で計算できる。
ここで、Ac0(mm)は局所の有効支圧面積、Ac1(mm)は最大支圧応力分布面積で、半空間においてはAc0の相似形かつ面中心の法線が一致するような投影面を仮定する(図9A及び図9B参照)。投影面においてコンクリート32のエッジから外側の部分がある場合は、これを減じたものをAc1とする(例えば図9Bのモデル)。
式3.12におけるβは、支圧面の材料による低減係数で、敷きモルタル等を用いる場合は2/3などとするが、ここでは1とする。
また、ストレスブロックによるモーメント抵抗を計算するための腕の長さxu,iは、図8A及び図8Bのモデルから、回転中心から支圧応力による合力の作用線までの距離leffを用いて以下の式3.14で表される。
図8A及び図8Bにおいては、上フランジ20Aの上フランジ端部外面抵抗要素24Aaの有効支圧領域の長さはleff,t、下フランジ20Bの下フランジ端部外面抵抗要素24Daの有効支圧領域の長さはleff,bであり、有効支圧領域の幅はいずれもbeffである。初期剛性に対しては、柱10のコンクリート32のうち、上下フランジ20A、20B内法のコンクリート32とその外側のコンクリート32の一体性が保たれ、上下フランジ20A、20Bの内側も支圧抵抗を有するが、終局耐力時においては上フランジ20Aの上フランジ端部内面抵抗要素24Ba及び下フランジ20Bの下フランジ端部内面抵抗要素24Caは、終局耐力の導出に考慮しないこととする。これは、終局耐力時は鉄骨梁20を包絡する矩形部分とその外側(上下フランジ20A、20B幅方向端部)の間のねじれによってコンクリート32が破壊して柱10のコンクリート32とは一体性を保てないものとし、上下フランジ20A、20Bの内側は効かなくなるものとの考えに基づく。図8A及び図8Bにおいてxu,iに対応する長さは、上フランジ20Aの上フランジ端部外面抵抗要素24Aaはxu,ct、下フランジ20Bの下フランジ端部外面抵抗要素24Daはxu,cbで示した。同様に図8A及び図8BにおいてFi,Rdに対応する耐力は、上フランジ20Aの上フランジ端部外面抵抗要素24Aaの支圧耐力Fct,Rd、下フランジ20Bの下フランジ端部外面抵抗要素24Daの支圧耐力Fcb,Rdで示した。
(フェースベアリングプレートと柱のコンクリートの支圧耐力)
i,Rdに対応する、フェースベアリングプレート30と柱10のコンクリート32の支圧抵抗についての支圧耐力Fc,fb,Rd(N)は、図10A及び図10Bに示すように、フェースベアリングプレート30とコンクリート32が一様な支圧状態下にあると仮定し、梁フランジ面とコンクリートの支圧耐力の場合と同様、前述の公知文献「EN1993-1-8:2005 Eurocode 3: Design of steel structures Part 1-8: Design of joints, BSI, 2010」の以下の式3.15を用いる。
ここで、beff(mm)、leff(mm)はコンクリート32の有効支圧面の幅と長さであり、beffは弾性剛性の計算剛性と同様、上下フランジ20A、20Bと柱10のコンクリート32の支圧面においてはコンクリート32による上下フランジ20A、20Bの面外変形の拘束を考慮して上下フランジ20A、20Bの全幅をとる。leffは、公知文献「EN1993-1-8:2005 Eurocode 3: Design of steel structures Part 1-8: Design of joints, BSI, 2010」及び公知文献「Martin Steenhuis他: Concrete in compression and base plate in bending, HERON Vol. 53, No. 1/2, 2008」の以下の式3.16を用いる。
ここで、tfb(mm)はフェースベアリングプレート30の板厚、fjd(N/mm)は局所支圧に対するコンクリート32の圧縮耐力で式3.12、式3.13による、f(N/mm)はフェースベアリングプレート30の降伏応力、γM0は鋼材の強度のばらつきを考慮した低減係数であるが、ここでは1とする。式3.13のAc0(mm)、Ac1(mm)は図11に示す投影面を仮定する。βは1とする。
また、ストレスブロックによるモーメント抵抗を計算するための腕の長さxu,iは、図10A及び図10Bのモデルから、回転中心から支圧応力による合力の作用線までの距離leffを用いて以下の式3.17で表される。
(アンカーボルト38の耐力)
1つのアンカーボルト38に生じるテンションによる反力F=Fab(N)は、アンカーボルト38に生じる応力σ(N/mm)に当該アンカーボルト38の断面積a(mm)(長手方向と直交する方向に沿って切断した断面の断面積)を乗じることによって算出され、以下の式5.1で表される。
また、アンカーボルト38に生じる応力σ(N/mm)は、アンカーボルト38のヤング係数をE(N/mm)、ひずみをεとして以下の式5.2で表される。また、アンカーボルト38のひずみεは、中心線Lからアンカーボルト38の中心までの水平方向への距離をleff,b(mm)とし、アンカーボルト38の伸びをδ(mm)として、以下の式5.3で表される。

以上の説明では、接合部14の終局状態における耐力を各抵抗要素の耐力の累加によって柱梁接合部を設計する方法を記した。この方法に基づいて鉄骨梁20の各部の寸法等を設定することで、柱10と梁12との接合部14の耐力を所望の耐力に設定した柱梁接合部とすることができる。
(計算結果と実験結果の比較)
本発明の柱梁接合部の効果を確認するため、本発明のうち図1A及び図2に示す実施形態の柱梁接合部について、梁に鉛直方向下向き(方向の反対側)に荷重を作用させて接合部の回転角とモーメントの関係を取得し、式1〜式3.17を用いて接合部の回転剛性及び耐力を計算した結果と実験結果を比較した。
接合部14における鉄骨梁20の梁端部24のモーメントと回転角の関係は、式1〜式3.17の手順に則り、初期の回転剛性Sj,ini(Nmm/rad)及び最大耐力Mj,Rd(Nmm)を求めることで、バイリニアモデルで定義できる。ここでは、最大耐力Mj,Rdの2/3倍を弾性限として、これを超えるモーメントが作用した場合は初期の回転剛性Sj,iniよりも回転剛性が低下するものとし、最大耐力Mj,Rd(Nmm)のときの割線剛性S(Nmm/rad)をSj,iniを剛性低減率η(>1)で除した値で定めたトリリニアモデルとする(図12参照)。トリリニアモデルを適用する場合は、回転剛性Sj,iniを弾性回転剛性として接合部の作用モーメントを計算し、最大耐力Mj,Rdの2/3倍以下のモーメントが作用した場合は、そのまま実施できる。回転剛性Sj,iniを弾性回転剛性として接合部の作用モーメントを計算し、最大耐力Mj,Rdの2/3倍を超えるモーメントが作用した場合は、新たに割線剛性Sを弾性回転剛性として接合部の作用モーメントを計算し、これが最大耐力Mj,Rd以下であれば実施可能、最大耐力Mj,Rdを超えた場合は実施不可能(本発明の請求の範囲外)である。回転剛性Sj,ini、最大耐力Mj,Rd、ηは以下の式4.1、式4.2及び式4.3による。


図12に記載の変形性能φcdは、各抵抗要素が変形量の限界に達するときの回転角φcd,iのうちの最小値(rad)であり、終局回転中心から各抵抗要素までの距離xu,iとφの積が各抵抗要素の変形量の限界δu,i(mm)と等しいとおいてφについて解くと、φcd,i=δu,i/xu,iとして求めることができる。
(接合部補強筋の弾性剛性と耐力)
接合部補強筋28をi=1番目の抵抗要素とし、弾性剛性k(N/mm)、弾性時の力の釣り合いを満たす弾性回転中心から鉄筋までの距離(腕の長さ)x(=xd,1,xl,1(mm))、終局耐力時の回転中心から鉄筋までの距離(腕の長さ)xu,r(=xu,1,(mm))、耐力Fr,Rd(N)は、以下の式4.4〜式4.11を用いて求める。式中各パラメータの定義は式1〜式3.17で説明したものと同一であり、実施例1における実験は、図13の表に示す条件(E,a,h,α,N,ksc,h,d,l,E,I,ξ,d,fr,y,,xu,n)を用いて、式4.4〜式4.11のk,kslip,Ksc,ν,ξ,xd,1,Fr,Rd,xu,1を計算した。







(柱内のスタッドのせん断に対する弾性剛性と耐力)
柱10内のスタッド26をi=2番目の抵抗要素とし、せん断による弾性剛性kst(N/mm)、弾性時の力の釣り合いを満たす終局回転中心からスタッドの根元までの距離(腕の長さ)xst(=xd,2,xl,2(mm))、終局耐力時の回転中心から鉄筋までの距離(腕の長さ)xu,st(=xu,2(mm))、耐力Fst,Rd(N)は、以下の式4.12〜式4.20を用いて求める。式中の各パラメータの定義は、式1〜式3.17で説明したものと同一であり、実施例1における実験は、図14の表に示す条件(φst,nst,x,D,φσqasca,φ,fcd,E,c,s,n)を用いて、式4.12〜式4.20のk,xd,2,F2,Rd,xu,2,Tst1,Tst2,Tst3σ,Aqcを計算した。








(梁本体のフランジ面とコンクリートの支圧に対する弾性剛性と耐力)
初期剛性に対しては、上下フランジ20A、20Bの内外面、全4か所(i=3,4,5,6)が支圧抵抗し、最大耐力に対しては、上下フランジ20A、20Bの外面のみ、全2か所(i=3,6)が支圧抵抗すると仮定した(図15A及び図15B参照)。これは、初期剛性に対しては、上下フランジ20A、20B内法のコンクリート32とその外側のコンクリート32の一体性が保たれ、上下フランジ20A、20Bの内側も支圧抵抗を有するが、終局状態においては鉄骨梁20を包絡する矩形部分とその外側(上下フランジ20A、20B幅方向端部)の間のねじれによってコンクリート32が破壊し、上下フランジ20A、20Bの内側は効かなくなるものとの考えに基づく。
上下フランジ20A、20B面とコンクリート32の支圧の弾性剛性k(N/mm)、弾性時の抵抗要素i(上下フランジ20A、20Bの内外面、全4か所(i=3,4,5,6))の支圧変位の代表点から回転中心までの距離xd,c,i(mm)、弾性時の力の釣り合いを満たす回転中心から支圧力の重心までの距離(腕での長さ)xl,c,i(mm)、終局耐力時の回転中心から支圧力の重心までの距離(腕の長さ)xu,c,i(mm)、耐力Fc,Rd,i(N)は、以下の式4.21〜式4.35を用いる。式中の各パラメータは、図16の表に示す値を用いた。














ここで、Bは鉄骨梁20の上下フランジ20A、20Bの幅(mm)、tは鉄骨梁20のウェブ20Cの板厚(mm)、tfbはフェースベアリングプレート30の板厚(mm)、Lemは鉄骨梁20の柱10のコンクリート32への埋め込み長さ(mm)、yは柱10のコンクリート32外面(フェースベアリングプレート30側)から弾性時の力の釣り合いを満たす弾性回転中心までのx軸と平行な方向における水平距離(mm)、yu,nは柱10のコンクリート32外面(フェースベアリングプレート30側)から終局回転中心までの水平距離(mm)である。
(フェースベアリングプレートとコンクリートの支圧に対する弾性剛性と耐力)
ウェブ20Cによるフェースベアリングプレート30の面外変形拘束は無視し、下フランジ20Bの軸線上に作用する圧縮力がフェースベアリングプレート30の有効支圧領域を介して面内で一様な支圧力がコンクリート32に伝達されるものとした。フェースベアリングプレート30とコンクリート32の支圧をi=7番目の抵抗要素とし、弾性剛性kc,fb(N/mm)、弾性時の支圧領域の代表変位の作用線から弾性回転中心までの距離xd,c,fb(=xd,7(mm))、弾性時の力の釣り合いを満たす弾性回転中心から支圧力の重心までの距離(腕の長さ)xl,c,fb(=xl,7(mm))、終局耐力時の回転中心から支圧力の重心までの距離(腕の長さ)xu,c,fb(mm)、耐力Fc,fb,Rd(N)は、以下の式4.36〜式4.43を用いる。式中の各パラメータの定義は式1〜式3.17で説明したものと同一であり、実施例1における実験は、図17の表に示す条件(E,B,t,tfb,f,γM0,β,fcd、fb,Ac0,Ac1)を用いて、式4.36〜式4.43からkc,fb,xd,c,fb,xl,c,fb,Fc,fb,Rdを計算した。







(実験と評価モデルの弾性剛性と耐力の比較)
弾性剛性については鉛直方向及び水平方向の外力と内力のつり合い条件から、梁端部24の弾性回転中心の位置を示すx、yを求め、式4.1を用いてSj,iniを求めた。終局耐力については、全抵抗要素の単純累加強度と上界定理からMj,Rdを最小とする終局回転中心の位置を表すxu,n、yu,nを求めた。剛性低減率ηの実験値は4.8であったが、評価モデルによる弾性剛性の計算値を基にすると、実験の非線形化後の剛性とよく対応するのは3.0程度であったので、ここでは3.0とした。
実験結果と評価モデルによるトリリニアを比較して図18に示す。図18における縦軸は接合部のモーメント、横軸は接合部の回転であり、実線は実験結果の履歴、点線は評価モデルによるトリリニアを表す。実験の接合部14のモーメントは、柱10のコンクリート32のフェース位置(図1AにおいてX軸方向と直交する柱10のコンクリート32の側表面のうち、X軸と反対側の側表面)で定義した。
図18を見ると、実験と評価モデルはよく一致していることがわかる。
弾性範囲での繰り返し載荷に対する除荷サイクルの回転剛性と評価モデルとの比較を図19に示す。図19における縦軸は除荷サイクルにおける接合部の回転剛性、横軸はサイクル数(繰り返し回数)であり、プロット点は実験結果、点線は評価モデルを表す。評価モデルの回転剛性は実験下限値を概ね評価できている。以上の比較結果における具体的な数値を図20の表に示す。実験の平均値に対し終局耐力は93%、回転剛性は76〜77%の評価精度である。耐力については過大評価しない安全側の計算結果であり、回転剛性については2割程度の評価誤差は接合部に作用するモーメントの評価誤差にはあまり影響しないため、本発明における評価モデルは実用上問題がない精度を有しているといえる。
以上より、本発明の柱梁接合部の設計方法によるトリリニアモデルは、弾性剛性、最大耐力ともに本実験結果とよく対応した。したがって、本発明に記載の計算方法を用いて、接合部の回転剛性S及び最大耐力Mj,Rdを精度よく評価できることが確認できた。これにより、前記鉄骨梁が支持する荷重及び前記鉄骨梁における前記柱のコンクリートの内部に配置された部分の回転剛性Sによって前記鉄骨梁から前記柱に作用する力の推定値と、前記柱のコンクリートが抗することのできる最大耐力を精度よく比較することができる。この結果、本発明の柱梁接合部においては、柱と梁との接合部が顕著な不可逆変形(塑性化)を生じることを防ぎ、前記鉄骨梁のたわみの安定性と前記柱の健全性を確保することができること可能となる。
(第2の実施形態)
以上の説明では、鉄骨梁20の梁端部24のまわりのコンクリート32が硬化した後の柱梁接合部構造について説明した。以下、鉄骨梁20の梁端部24のまわりのコンクリート32が硬化する前の実施形態として、当該鉄骨梁20のモーメントや撓みを抑える要部構成について説明する。
なお、前述の梁柱接合部構造の前提構成で説明した各部材及び部分と対応する部材及び部分については、前述の説明で用いた符号と同一の符号を付してその説明を省略することがある。
図21に示されるように、本実施形態の柱梁接合部構造は、柱10と梁12との接合部14に適用されている。
柱10は、建物の水平方向に沿って切断した断面視で略矩形状に形成されている。この柱10は、コンクリート32の内部に鉄筋16(図1Aでは図示省略)が配置されることで、鉄筋コンクリート(RC)造の柱となっている。なお、本発明は、前述の鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造の柱と梁との接合部にも適用することができる。
本実施形態では、4つの梁12(鉄骨梁20)が建物の上下方向の同じ位置で柱10に接合されている。なお、4つの梁12(鉄骨梁20)のうち1つの梁12の図示を省略している。
次に、柱10への鉄骨梁20の接合方法について説明する。
図22に示されるように、先ず柱10の下部10Aを形成する。この柱10の下部10Aは、工場であらかじめ形成してもよいし、現場でコンクリート32を打設することにより形成してもよい(柱の下部形成工程)。
次に、図23及び図24に示されるように、それぞれの鉄骨梁20の梁端部24を柱10の下部10Aの上面10Bに載置する。ここで、本実施形態では、鉄骨梁20の梁端部24の下フランジ20Bを後述するアンカーボルト38及びナット40(図26参照)を介して柱10の下部10Aの上面10Bに固定する(鉄骨梁架け渡し工程)。なお、本実施形態では、ウェブ20Cを挟んだ2箇所において、鉄骨梁20の梁端部24の下フランジ20Bがアンカーボルト38及びナット40を介して柱10の下部10Aの上面10Bに固定される。また、図23及び図24においては、鉄骨梁20の梁端部24を見易くするために、一部の鉄筋16の図示を省略している。
次に、図25に示されるように、コンクリート32を打設することで、柱10の下部10Aの上方側に当該柱10の一部である中腹部10Cを形成すると共に、当該中腹部10Cの内部に鉄骨梁20の梁端部24を埋設する(梁端部埋設工程)。
次に、柱10の中腹部10Cを形成するコンクリート32が硬化した後に、鉄筋コンクリートのスラブ22を鉄骨梁20の上フランジ20Aの上面に沿って形成し、上フランジ20Aの上面に固定する(スラブ形成及び固定工程)。なお、スラブ22は工場であらかじめ形成してもよいし、現場でコンクリート32を打設することにより形成してもよい。
次に、図21に示されるように、コンクリート32を打設することで、柱10の中腹部10Cの上方側に当該柱10の一部である上部10Dを形成する(柱の上部形成工程)。なお、柱10の上部10Dは、当該柱10の下部10Aと同様に、工場であらかじめ形成してもよいし、現場でコンクリート32を打設することにより形成してもよい。
以上の工程を経て、鉄骨梁20が柱10に接合される。
ところで、本実施形態では、前述の鉄骨梁架け渡し工程において、鉄骨梁20の梁端部24の下フランジ20Bを固定要素としてのアンカーボルト38及びナット40(図26参照)を介して柱10の下部10Aの上面10Bに固定している。これは、柱10の中腹部10Cを形成するコンクリート32が硬化する前の状態では、前述の抵抗要素は、固定要素以外は機能しないためである。この状態を接合部14Bとする。
具体的には、接合部14Bは、図26に示されるように、アンカーボルト38の下方側の部分は、柱10の下部10Aに固定されている。これにより、アンカーボルト38の上方側の部分が、柱10の下部10Aの上面10Bから上方側へ向けて突出している。また、鉄骨梁20の梁端部24の下フランジ20Bには、アンカーボルト38が挿通される挿通孔20Dが形成されている。そして、鉄骨梁20の梁端部24を柱10の下部10Aの上面10Bに載置する際に、アンカーボルト38が挿通孔20Dに挿通される。そして、ナット40がアンカーボルト38に螺合されることで、鉄骨梁20の梁端部24が柱10の下部10Aの上面10Bに固定される。
ここで、本実施形態では、鉄骨梁20の長手方向と直交する水平方向の一方向(矢印Y又は矢印Yとは反対方向)から見て、梁端部24における鉄骨梁20の長手方向の中央に対して、鉄骨梁20の端側に挿通孔20D、アンカーボルト38及びナット40が配置されている。詳述すると、鉄骨梁20の長手方向と直交する水平方向の一方向(矢印Y又は矢印Yとは反対方向)から見て、梁端部24の回転中心を通りかつ鉄骨梁20の長手方向と直交する上下方向に伸びる中心線Lに対して、鉄骨梁20の端側に挿通孔20D、アンカーボルト38及びナット40が配置されている。これにより、図27に示されるように、鉄骨梁20の梁端部24の回転に抗する反力Fがアンカーボルト38のテンションとして生じるようになっている。すなわち、アンカーボルト38は梁端部24を柱10の下部10Aの上面10Bに固定する固定要素であり、梁端部24が中心線Lに対して回転する際に、回転に抗する反力を生じる抵抗要素として機能する。また、鉄骨梁20の梁端部24の回転に抗するコンクリート32(柱10の下部10Aの上面10B)からの反力Fが、梁端部24の下フランジ20Bにおいて中心線Lよりも鉄骨梁20の長手方向の中央部側に生じるようになっている。すなわち、下フランジ20Bの下面のうち、中心線Lよりも鉄骨梁20の長手方向中央側で柱10の下部10Aの上面10Bに接する部分を下フランジ端部外面抵抗要素24Daとすると、梁端部24が中心線Lに対して回転する際に、下フランジ端部外面抵抗要素24Daは、回転に抗する反力を生じる抵抗要素として機能する。
以上から、本実施形態では、抵抗要素の総数はn=2であり、iを1以上n以下の自然数としたときに、抵抗要素iの反力が、抵抗要素iの剛性kと変形量との積で表されるものとすると、中心線Lを、抵抗要素iの反力をi=1〜2について累加した総和と鉄骨梁20に作用するZ方向負側向きの鉛直荷重が釣り合う点を通りZ方向に平行な線として、求めることができる。
本実施形態では、鉄骨梁20において柱10のコンクリート32の内部に配置された部分(接合部14B)の単位回転角当たりの回転抵抗Sは、下フランジ端外面抵抗要素24Daに対して、柱10のコンクリート32から作用する支圧によるZ方向の反力と、アンカーボルト38に生じるZ方向の反力の和が、外力である鉄骨梁20に作用するZ方向負側向きの鉛直荷重と釣り合う点を弾性回転中心とし、弾性回転中心を通りZ方向に平行な線を中心線Lとし、抵抗要素iの変位の代表点(アンカーボルト38の軸、及び下フランジ端外面抵抗要素24DaのX方向の中央点)と、中心線Lとを結ぶベクトルの成分のうち、抵抗要素iの反力の法線方向であるX方向の成分の大きさをxd,iとし、
抵抗要素iの反力の重心と、中心線Lとを結ぶベクトルの成分のうち、抵抗要素iの反力の法線方向であるX方向の成分の大きさをxl,iとし、
接合部14Bの回転剛性が以下の式1を満たす値に設定されている。
さらに、本実施形態では、抵抗要素iの反力を抵抗要素iの負担しうる最大の反力Fi,Rdとし、接合部14Bの耐力をMj,Rdとし、
任意の回転中心を仮定し、回転中心と反力の作用点または重心とを結ぶベクトルの成分のうち、抵抗要素iの反力の法線方向であるX方向の成分の大きさをxu,iとし、
回転中心の位置であるX座標とY座標の2つを変数として、以下の式2を用いてMj,Rdを計算し、接合部14Bの耐力が以下の式2で計算されたMj,Rdの最小値の耐力に設定されている。
これにより、柱10の中腹部10Cを形成するコンクリート32が硬化する前の状態において、少なくとも、鉄骨梁20の両端部の間の距離及び/又は前記鉄骨梁の断面形状を調整することにより接合部14Bの回転剛性と耐力を確保することで、コンクリート32の中腹部10Cが硬化する前においても、鉄骨梁20の長手方向の中央部のモーメントや撓みをより効果的に抑えることができる。また、抵抗要素iの配置、形状、寸法のうちの少なくとも1つを調整することにより抵抗要素iの反力を調整し、接合部14Bの回転剛性と耐力を確保することで、コンクリート32の中腹部10Cが硬化する前においても、鉄骨梁20の長手方向の中央部のモーメントや撓みをより効果的に抑えることができる。その結果、鉄骨梁20の断面寸法の増加を抑制することができ、経済設計という観点で優れた効果が得られる。
なお、コンクリート32からの反力F2は、前述の(梁フランジ面とコンクリートの支圧による弾性剛性)の欄の説明と同様の手順で算出することができる。
また、1つのアンカーボルト38に生じるテンションによる反力F=Fab(N)は、アンカーボルト38に生じる応力σ(N/mm)に当該アンカーボルト38の断面積a(mm)(長手方向と直交する方向に沿って切断した断面の断面積)を乗じることによって算出され、以下の式5.1で表される。
また、アンカーボルト38に生じる応力σ(N/mm)は、アンカーボルト38のヤング係数をE(N/mm)、ひずみをεとして以下の式5.2で表される。また、アンカーボルト38のひずみεは、中心線Lからアンカーボルト38の中心までの水平方向への距離をleff,b(mm)とし、アンカーボルト38の伸びをδ(mm)として、以下の式5.3で表される。

さらに、アンカーボルト38の弾性剛性k(N/mm)は、以下の式5.4で表される。
そして、アンカーボルト38に生じるテンションによる反力F及びコンクリート32(柱10の下部10Aの上面10B)からの反力Fを抵抗要素として、式1.1〜式1.6や式3.1等に基づいて、柱10の中腹部10Cを形成するコンクリート32が硬化する前の状態の回転剛性を計算し評価することができる。また、前述の基本構成の回転剛性/耐力にアンカーボルト38分を付加することで、柱10の中腹部10Cを形成するコンクリート32の硬化後の状態の接合部14の回転剛性及び耐力をそれぞれ算出し評価することができる。
上述した第1の実施形態では、柱のコンクリートが硬化した後の態様において、抵抗要素の総数nをn=9とした例を示したが、nの値については、付加部材等の数を調整して抵抗要素の数を増減させるなどして、適宜に設定することができる。例えば、前記実施形態において説明した柱梁接合部において、付加部材である鉄筋、スタッド、フェースベアリングを省略した場合には抵抗要素の総数はn=6となる。この場合、柱のコンクリートの内部に配置された鉄骨梁の梁端部の弾性回転中心を、抵抗要素iの反力をi=1〜6について累加した総和と鉄骨梁に作用する矢印Z方向とは反対向きの鉛直荷重とが釣り合う点として求めることができる。
また、前記実施形態では、抵抗要素の反力を主に鉄骨梁の断面形状により調整していたが、鉄骨梁の両端部の間の距離、すなわち鉄骨梁における長手方向の梁端部の、柱のコンクリートへの差し込み長さを調整、あるいは鉄骨梁の断面形状の調整することによって抵抗要素の反力を調整してもよい。
さらに、抵抗要素として設ける付加部材については、付加部材の配置、形状、寸法のうちの少なくとも1つを調整することにより抵抗要素の反力を調整するようにしてもよい。例えば、鉄筋やスタッドの配置や形状、寸法、あるいは本数等を調整したり、フェースベアリングの位置や形状、寸法を調整するなど、適宜決定することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
10 柱
12 梁
16 鉄筋
18 鉄骨
20 鉄骨梁(抵抗要素)
20A 上フランジ(抵抗要素)
20B 下フランジ(抵抗要素)
26 スタッド(抵抗要素)
28 接合部補強筋(抵抗要素)
30 フェースベアリングプレート(抵抗要素)
32 コンクリート(抵抗要素)
34 ボルト(抵抗要素)
36 フィンプレート(抵抗要素)
38 アンカーボルト(抵抗要素、固定要素)
40 ナット(抵抗要素、固定要素)

Claims (10)

  1. コンクリートの柱と、長手方向の両端部のうちの少なくとも一端部が前記柱のコンクリート内に配置された鉄骨梁とを有する接合部の構造であって、
    前記鉄骨梁の一端部を、前記柱のコンクリートにおける前記鉄骨梁の一端部よりも下方側の部分に固定することで、前記鉄骨梁の一端部の回転に抗する反力を生じさせる固定要素を備え、
    前記鉄骨梁の一端部の弾性回転中心を、前記柱のコンクリートと前記鉄骨梁の一端部との間に生じる支圧力と前記固定要素に生じる前記反力との和が前記鉄骨梁の一端部を除く部分に作用する外力と釣り合う点とし、
    前記固定要素が、前記弾性回転中心よりも前記鉄骨梁の一端部の梁端側に配置されている柱梁接合部構造。
  2. 前記鉄骨梁の前記一端部の回転によって前記鉄骨梁から前記柱に作用する力が、前記固定要素及び前記柱のコンクリートが抗することのできる最大耐力を超えないように、前記鉄骨梁の一端部の回転に抗する反力を生じさせる抵抗要素が設けられていて、
    前記抵抗要素の前記反力は、少なくとも前記鉄骨梁の両端部の間の距離及び/又は前記鉄骨梁の断面形状を調整することにより調整されている請求項1に記載の柱梁接合構造。
  3. 前記抵抗要素は、前記鉄骨梁の一端部おける前記柱のコンクリートの内部に配置された部分及びその周縁部に設けられた複数の付加部材を含み、
    前記複数の付加部材の一つが前記固定要素とされ、
    前記複数の付加部材の配置、形状、寸法のうちの少なくとも1つを調整することにより前記抵抗要素の前記反力が調整されている請求項2に記載の柱梁接合部構造。
  4. 前記鉄骨梁において前記柱のコンクリートの内部に配置された部分の単位回転角当たりの回転抵抗をSとし、
    前記抵抗要素の総数をn、iを1以上n以下の任意の自然数として、前記鉄骨梁に設けられた前記抵抗要素を抵抗要素iとしたときに、
    前記抵抗要素iの反力が、前記抵抗要素iの剛性kと変形量との積で表されるものとし、
    前記抵抗要素iの変位の代表点と、前記弾性回転中心とを結ぶベクトルの成分のうち、前記抵抗要素iの反力の法線方向の成分の大きさをxd,iとし、
    前記抵抗要素iの反力の重心と、前記鉄骨梁において前記弾性回転中心とを結ぶベクトルの成分のうち、前記抵抗要素iの反力の法線方向の成分の大きさをxl,iとし、
    以下の式1を満たす値に前記回転剛性が設定されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の柱梁接合部構造。
  5. 前記鉄骨梁において前記柱のコンクリートの内部に配置された部分の前記抵抗要素iの反力を該抵抗要素iの負担しうる最大の反力Fi,Rdとし、
    前記接合部の耐力をMj,Rdとし、
    前記鉄骨梁において前記柱のコンクリートの内部に配置された部分の回転中心と前記反力の作用点とを結ぶベクトルの成分のうち、前記抵抗要素iの反力の法線方向の成分の大きさをxu,iとし、
    前記回転中心の位置を変数として、以下の式2を用いてMj,Rdを計算し、前記接合部の耐力が以下の式2で計算されたMj,Rdの最小値の耐力に設定されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の柱梁接合部構造。
  6. コンクリートの柱と、長手方向の両端部のうちの少なくとも一端部が前記柱のコンクリート内に配置された鉄骨梁とを有する接合部の設計方法であって、
    前記鉄骨梁の一端部の弾性回転中心を、前記柱のコンクリートと前記鉄骨梁の一端部との間に生じる支圧力と前記固定要素に生じる前記反力の和が前記鉄骨梁の一端部を除く部分に作用する外力と釣り合う点とし、
    前記鉄骨梁の一端部を前記柱のコンクリートにおいて前記鉄骨梁の一端部よりも下方側の部分に固定することで、前記鉄骨梁の一端部の回転に抗する反力を生じさせる固定要素を、前記鉄骨梁の一端部の前記弾性回転中心よりも前記鉄骨梁の一端の梁端側に配置する柱梁接合部の設計方法。
  7. 前記鉄骨梁の一端部の回転によって前記鉄骨梁から前記柱に作用する力が、前記固定要素及び前記柱のコンクリートが抗することのできる最大耐力を超えないように、前記一端部の回転に抗する反力を生じさせる抵抗要素を設け、
    前記抵抗要素の前記反力を、少なくとも、前記鉄骨梁の前記両端部の間の距離及び/又は前記鉄骨梁の断面形状を調整することにより調整する請求項6に記載の柱梁接合部の設計方法。
  8. 前記抵抗要素として、前記鉄骨梁の一端部における前記柱のコンクリートの内部に配置された部分及びその周縁部に複数の付加部材を設け、
    前記複数の付加部材の一つを前記固定要素とし、
    前記複数の付加部材の配置、形状、寸法のうちの少なくとも1つを調整することにより前記抵抗要素の前記反力を調整する、請求項7に記載の柱梁接合部の設計方法。
  9. 前記鉄骨梁において前記柱のコンクリートの内部に配置された部分の単位回転角当たりの回転抵抗をSとし、
    前記抵抗要素の総数をn、iを1以上n以下の任意の自然数として、前記鉄骨梁に設けられた前記抵抗要素を抵抗要素iとしたときに、
    前記抵抗要素iの反力が、該抵抗要素iの剛性kと変形量との積で表されるものとし、
    前記抵抗要素iの変位の代表点と、前記弾性回転中心とを結ぶベクトルの成分のうち、前記抵抗要素iの反力の法線方向の成分の大きさをxd,iとし、
    前記抵抗要素iの反力の重心と、前記弾性回転中心とを結ぶベクトルの成分のうち、前記抵抗要素iの反力の法線方向の成分の大きさをxl,iとし、
    以下の式3によって得られた値によって前記接合部の回転剛性を評価する請求項6乃至8のいずれか1項に記載の柱梁接合部の設計方法。
  10. 前記鉄骨梁において前記柱のコンクリートの内部に配置された部分の前記抵抗要素iの反力を該抵抗要素iの負担しうる最大の反力Fi,Rdとし、
    前記接合部の耐力をMj,Rdとし、
    前記鉄骨梁において前記柱のコンクリートの内部に配置された部分の回転中心と前記反力の作用点とを結ぶベクトルの成分のうち、前記抵抗要素iの反力の法線方向の成分の大きさをxu,iとし、
    前記回転中心の位置を変数として、以下の式4を用いてMj,Rdを計算し、前記接合部の耐力を以下の式4で計算されたMj,Rdの最小値とする請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の柱梁接合部の設計方法。
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