JP2020196929A - コンクリート構造物における鋼材の電気防食装置および電気防食方法 - Google Patents

コンクリート構造物における鋼材の電気防食装置および電気防食方法 Download PDF

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Abstract

【課題】自己発電による電力を使用することで外部からの商用電力の供給を不要としつつ、夜間や天候不順のときも安定した電力の供給が可能なコンクリート構造物における鋼材の電気防食技術を提供する。【解決手段】コンクリート構造物に設置された陽極材からコンクリート構造物中の防食対象鋼材に防食電流を流すことで当該鋼防食対象材を防食する電気防食装置であって、陽極材から防食対象鋼材に防食電流を流すための電力を発電する発電部を有する発電装置を備え、発電部は、n型熱電変換素子とp型熱電変換素子とが電極を介して交互に且つ電気的に直列に接続された熱電変換モジュールを含む。【選択図】図4

Description

本発明は、コンクリート構造物における鋼材の電気防食装置および電気防食方法に関する。
コンクリート構造物においては、酸素、水、塩化物イオン等の内部浸透によって、その内部に配設されている鉄筋等の鋼材に腐食が発生する。そのような鋼材腐食が発生すると、それに伴う腐食生成物の体積膨張により、コンクリートにひび割れが発生し、腐食をさらに加速させ、鋼材の断面減少等が引き起こされ、最終的には構造物の強度等の諸性能が低下する。そのため、コンクリート構造物における鋼材の腐食を防止する様々な手段が開発されてきており、その中の一つとして電気防食方法が知られている。
電気防食方法は、コンクリート構造物内の鋼材(防食対象鋼材)を陰極とし、当該陰極と、コンクリート構造物の表面又はその表面に切削した溝等に設置された陽極(電気防食用電極)との間に電流(防食電流)を通すことで、防食対象鋼材(陰極)の電位を卑方向に変化させることによって防食する方法である。
電気防食方法には、流電陽極方式と外部電源方式とが知られている。流電陽極方式は、防食対象鋼材よりも自然電位が卑な金属からなる陽極(電気防食用電極)をコンクリート表面等に設置し、当該陽極と防食対象鋼材とを導線等によって電気的に接続し、コンクリートを電解質とする電池作用によって陽極と防食対象鋼材との間に防食電流を生じさせることで鋼材の腐食を防止する方式である。流電陽極方式による電気防食方法は、外部電源装置が不要であるが、陽極(電気防食用電極)を定期的に取り換える必要がある。
一方、外部電源方式は、コンクリート構造物の表面又はその表面に切削した溝等に設置された陽極(電気防食用電極)を外部電源装置のプラス極に接続し、防食対象鋼材を外部電源装置のマイナス極に接続し、外部電源装置により陽極と防食対象鋼材との間に防食電流を流すことで防食を行う方式である。外部電源方式による電気防食方法は、外部電源装置を用いることで長期間にわたって安定した電力を得ることができる反面、外部電源装置から常時電力を供給する必要があり、電気防食に要するコストが嵩みやすい。
これに関連して、太陽電池を電源とする外部電源方式の電気防食方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、太陽電池を電源とする外部電源方式の場合、夜間時や天候不順によって電力の供給が不安定になったり、太陽光が照射しない構造物への適用が難しいといった問題がある。
特開平7−316850号公報
また、特許文献1には、太陽光線が不足した場合に、予め組み込んだ犠牲陽極回路を外部電源から切り替えて作動させ、定常的に防食を行う方法が開示されているが、この方法では複数の異なる防食方式を組み合わせる必要がある。
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、自己発電
による電力を使用することで外部からの商用電力の供給を不要としつつ、夜間や天候不順のときも安定した電力の供給が可能なコンクリート構造物における鋼材の電気防食技術を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、以下の手段を採用した。すなわち、本発明は、コンクリート構造物に設置された陽極材から、前記コンクリート構造物中の防食対象鋼材に防食電流を流すことで当該防食対象鋼材を防食する電気防食装置であって、前記陽極材から前記防食対象鋼材に防食電流を流すための電力を発電する発電部を有する発電装置を備え、前記発電部は、n型熱電変換素子とp型熱電変換素子とが電極を介して交互に且つ電気的に直列に接続された熱電変換モジュールを含むことを特徴とする。
本発明において、前記n型熱電変換素子および前記p型熱電変換素子は、それぞれフォノニック結晶構造を有していても良い。また、熱電変換モジュールは、薄膜形状を有していても良いし、バルク形状を有していても良い。ここで、前記p型熱電変換素子および前記n型熱電変換素子は、素子を厚さ方向に貫通するサブマイクロオーダー又はナノオーダーの直径を有する細孔が多数形成されていても良い。
また、本発明において、前記発電部は、複数の前記熱電変換モジュールを含んでいても良い。
また、本発明において、前記熱電変換モジュール同士が電気的に並列又は直列に接続されていても良い。
また、本発明において、前記熱電変換モジュールは、電気絶縁性材料からなる支持基板上に配置されており、前記電極は、前記n型熱電変換素子および前記p型熱電変換素子における熱伝導方向の両端に配置されており、前記n型熱電変換素子および前記p型熱電変換素子における低温側端部が前記支持基板に設けられた支持部に支持されていると共に、前記n型熱電変換素子および前記p型熱電変換素子における高温側端部が前記支持基板と非接触になっていても良い。
また、前記熱電変換モジュールは、前記n型熱電変換素子と前記p型熱電変換素子とが前記電極を介して交互に直列に接続されることでπ型を呈すると共に、互いに平行に配列される複数のπ型部を含み、前記複数のπ型部において、互いに隣接する一組のπ型部が連結部を介して連結されると共に、前記連結部を介して連結された一組のπ型部が前記支持基板に突設されると共に互いに離間して配置される一対の支持部に支持されることで、当該一組のπ型部が一対の支持部間に架け渡されており、前記連結部を介して連結される一組のπ型部に含まれる前記n型熱電変換素子および前記p型熱電変換素子の前記低温側端部が前記支持部に支持されると共に、前記高温側端部が前記連結部によって連結されていても良い。
また、本発明において、前記発電部は、前記コンクリート構造物のコンクリート表面に設置されていても良い。
また、本発明は、コンクリート構造物における鋼材の電気防食方法として特定することができる。すなわち、本発明は、コンクリート構造物に設置された陽極材から、前記コンクリート構造物中の防食対象鋼材に防食電流を流すことで当該防食対象鋼材を防食する電気防食方法であって、n型熱電変換素子とp型熱電変換素子とが電極を介して交互に且つ電気的に直列に接続された熱電変換モジュールを有する発電部において、前記n型熱電変換素子および前記p型熱電変換素子における高温側端部と低温側端部との温度差を利用し
て発電し、当該発電した電力を利用して前記陽極材から前記防食対象鋼材に防食電流を流すことを特徴とする。
本発明によれば、自己発電による電力を使用することで外部からの商用電力の供給を不要としつつ、夜間や天候不順のときも安定した電力の供給が可能なコンクリート構造物における鋼材の電気防食技術を提供できる。
図1は、実施形態1に係る電気防食装置および電気防食方法を適用する鉄筋コンクリート構造物の概略側面図である。 図2は、実施形態1に係る橋桁の横断面図である。 図3は、実施形態1に係る電気防食装置を説明する図である。 図4は、実施形態1に係る主桁の設置対象面に設置された発電装置の正面図である。 図5は、実施形態1に係る発電パネルの正面図である。 図6は、実施形態1に係る熱電変換ユニットの平面構造を模式的に説明する図である。 図7は、実施形態1に係る熱電変換ユニットの断面構造を模式的に示す図である。 図8は、実施形態1に係る熱電変換モジュールのブリッジ構造を説明するための図である。 図9は、実施形態1に係る熱電変換モジュールにおいて、ゼーベック効果によって生じた電位差によって流れる電流を説明するための模式図である。 図10は、作製した熱電変換モジュールの一部を電子顕微鏡で写した像である。 図11は、トンネルの内壁面に発電装置の発電パネルを設置する例を示す図である。
以下、本発明の実施形態に係るコンクリート構造物における鋼材の電気防食装置および電気防食方法について、図面を参照しながら説明する。
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る電気防食装置および電気防食方法を適用する鉄筋コンクリート構造物の一例である橋桁1の概略側面図である。橋桁1は、図1に示すように、橋脚2,2の間に架け渡されたものである。図2は、実施形態1に係る橋桁1の横断面図である。橋桁1は、複数の主桁10をほぼ平行に配列して形成されている。橋桁1は、図2に示す例において、主桁10の断面形状はほぼT型となっており、隣り合う主桁10の上床版部10aの間にPC版11が設置されている。そして、主桁10の上床版部10aおよびPC版11の上部にRC床版12が現場打設されて、連続するコンクリート床版が形成されている。このコンクリート床版の上面には、舗装13が施されるなどして、路面が形成される。また、主桁10の端部には、図2に示すように横桁14が設けられ、複数の主桁10が一体となっており、これらが支承15によって橋脚2の上に支持されている。
図3は、実施形態1に係る電気防食装置100を説明する図である。図3においては、主桁10の下部領域を図示している。図3の符号4は、主桁10の鉄筋(主筋)を例示したものである。鉄筋4は、主桁10の長手方向(橋軸方向)に沿って伸びている。図3の符号5は、コンクリートである。本実施形態における電気防食装置100は、陽極材6、発電装置7等を備える。本実施形態では、主桁10の鉄筋4を防食対象鋼材として、電気
防食装置100によって電気防食する態様について説明する。
図3に示す例において、陽極材6は面状陽極方式を採用しており、コンクリート構造物である主桁10の表面(ここでの例では底面)に設置されている。陽極材6は、例えばチタンメッシュ等であっても良い。発電装置7は、主桁10のコンクリート表面である設置対象面5Aに取り付けられている。本実施形態では、主桁10の側面を形成するコンクリート側面を設置対象面5Aとする例を説明するが、他の部位におけるコンクリート表面に発電装置7を設置しても良い。
図4は、実施形態1に係る主桁10の設置対象面5Aに設置された発電装置7の正面図である。発電装置7は、複数の発電パネル70および外部接続装置80を備える。外部接続装置80には、外部端子としてのプラス極端子80Aおよびマイナス極端子80B等を有している。発電パネル70は、電気絶縁性材料からなる支持基板71と、支持基板71に形成された発電部72と、支持基板71に設けられた外部端子としてのプラス極端子73Aおよびマイナス極端子73B等を有している。各発電パネル70におけるプラス極端子73Aおよびマイナス極端子73Bは、それぞれリード線(図示せず)等を介して外部接続装置80におけるプラス極端子80Aおよびマイナス極端子80Bに接続されている。図4中で、一点鎖線で囲まれた領域は、発電パネル70において発電部72が形成されている領域を示している。
ここで、発電装置7における発電パネル70および外部接続装置80は、適宜の方法を用いて主桁10の設置対象面5Aに取り付けられている。本実施形態においては、各発電パネル70における支持基板71の裏面が熱伝導性を有する接着材を介して主桁10の設置対象面5Aに接着されている。発電パネル70における発電部72の詳細構造については後述するが、本実施形態における発電部72はる熱電変換方式によって発電する熱電変換モジュールを多数備えている。そして、各発電パネル70において発電された電力は、リード線等を介して外部接続装置80に供給されるようになっている。
また、図3に示すように、発電装置7における外部接続装置80のプラス極端子80Aは、リード線81を介して主桁10のコンクリート表面に設置された陽極材6に接続されることで当該陽極材6と導通している。また、外部接続装置80のマイナス極端子80Bは、リード線82を介して主桁10における防食対象鋼材としての各鉄筋4に接続されることで当該各鉄筋4と導通している。発電装置7は、各発電パネル70において発電した電力を利用して、外部接続装置80のプラス極端子80Aから陽極材6に直流電流を供給する。ここで、コンクリート5は電解質であるため、発電装置7から陽極材6に供給された直流電流は、コンクリート5を経由して外部接続装置80のマイナス極端子80Bに接続されている鉄筋4(防食対象鋼材)の表面を流れる。このようにして、防食対象鋼材としての鉄筋4の表面に防食電流を流すことにより、鉄筋4の腐食反応を停止させ、腐食を抑制することができる。
次に、発電パネル70における発電部72について詳しく説明する。図5は、実施形態1に係る発電パネル70の正面図である。発電パネル70における発電部72は、支持基板71の表面に面状の熱電変換ユニット9が多数配列された発電領域である。図5に示すように、発電部72における複数の熱電変換ユニット9は、支持基板71の表面上に、縦方向および横方向に沿ってグリッド状に配列されている。熱電変換ユニット9の平面形状および大きさは特に限定されないが、図示の例では、熱電変換ユニット9は各辺が数mm〜十数mm程度の矩形平面形状を有している。また、発電パネル70の支持基板71についても、その平面形状および大きさは特に限定されないが、図示の例では、支持基板71は各辺が数10cm程度の矩形平面形状を有している。
図6は、実施形態1に係る熱電変換ユニット9の平面構造を模式的に説明する図である。図7は、実施形態1に係る熱電変換ユニット9の断面構造を模式的に示す図である。本実施形態における熱電変換ユニット9は、1又は複数の熱電変換モジュール3を含む。すなわち、本実施形態においては、熱電変換ユニット9に含まれる熱電変換モジュール3の数は特に限定されず、一の熱電変換ユニット9に複数の熱電変換モジュール3が含まれている場合には、当該一の熱電変換ユニット9に含まれる各熱電変換モジュール3が電気的に直列に接続されていても良いし、電気的に並列に接続されていても良い。また、発電部72に含まれる複数の熱電変換ユニット9間において、各々の熱電変換モジュール3同士が直列に接続されていても良いし、並列に接続されていても良い。
ここでは、熱電変換ユニット9に単一の熱電変換モジュール3が含まれている態様を例に説明する。図6等に示すように、熱電変換モジュール3は、フォノニック結晶構造を有するn型熱電変換素子31とフォノニック結晶構造を有するp型熱電変換素子32とが電極34A,34Bを介して交互に且つ電気的に直列に接続された、いわゆるπ(パイ)型を呈する薄膜状の熱電変換モジュールである。ここで、フォノニック結晶構造については後から詳述する。なお、図6は、熱電変換モジュール3の部分拡大図であり、熱電変換モジュール3の一部だけが図示されている。
図6中の符号33は、熱電変換モジュール3に含まれる「π型部」である。図6に示す例では、熱電変換モジュール3は、電気的に直列に接続される複数のπ型部33を含んで構成されている。但し、本実施形態において、熱電変換モジュール3は単一のπ型部33によって形成されていても良い。図6に示す例において、熱電変換モジュール3における各π型部33は、同一方向に延伸している。以下、各π型部33の延伸方向を「π型部延伸方向D1」と呼ぶ。ここで、熱電変換モジュール3における各π型部33は、互いに平行に配置されている。より具体的には、熱電変換モジュール3における各π型部33は、π型部延伸方向D1と直交する「π型部配列方向D2」に並んで配置されている。従って、モジュール全体としては、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32がマトリックス状に配置されて熱電変換モジュール3が形成されている。なお、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32の大きさは特に限定されないが、例えば、1辺が数10μmの矩形形状を有していても良い。
熱電変換モジュール3の各π型部33において、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32が、π型部延伸方向D1に沿って交互に隣り合うように配置されており、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32の端部同士が電極34A,34Bによって接合されている。ここで、図6に示す符号31A,32Aは、電極34Aを介して互いに接続される一組のn型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32のそれぞれの高温側端部である。また、図6に示す符号31B,32Bは、電極34Bを介して互いに直列に接続される一組のn型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32のそれぞれの低温側端部である。
電極34Aおよび電極34Bは、熱電変換素子1個分だけずれた状態で配置されており、このような電極配置にすることで、π(パイ)型の熱電変換モジュール3(π型部33)が形成されている。本実施形態においては、各π型部33に含まれるn型熱電変換素子31の高温側端部31Aとp型熱電変換素子32の高温側端部32Aの位置がπ型部配列方向D2において互いに揃えられている。また、各π型部33に含まれるn型熱電変換素子31の低温側端部31Bとp型熱電変換素子32の低温側端部32Bの位置がπ型部配列方向D2において互いに揃えられている。そして、本実施形態における熱電変換モジュール3は、n型熱電変換素子31における高温側端部31Aから低温側端部31Bに向けて、双方の温度差に基づいて熱伝導が行われ、p型熱電変換素子32の高温側端部32Aから低温側端部32Bに向けて、双方の温度差に基づいて熱伝導が行われるようになって
いる。以下、n型熱電変換素子31における高温側端部31Aと低温側端部31Bを結ぶ方向、および、p型熱電変換素子32における高温側端部32Aと低温側端部32Bを結ぶ方向を「熱伝導方向」と呼ぶ。なお、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32における熱伝導方向は、π型部配列方向D2と一致している。
また、図6においては、図示されているn型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32のうち、一部の高温側端部31A,32A、低温側端部31B,32Bのみについて、便宜上、符号を表記している。また、図6においては、一部の電極34A,34Bのみについて、これらの符号を表記している。
次に、熱電変換ユニット9の断面構造について、図7を参照して説明する。図7に示すように、熱電変換ユニット9における熱電変換モジュール3は、支持基板71上に配置されている。また、図7に示すように、支持基板71には、複数の支持部710が隆起するように突設されており、この支持部710によって熱電変換モジュール3が支持されている。なお、図7に示す断面構造図は、図6に示すA−A矢視断面における断面を示している。支持基板71に突設される支持部710は、熱電変換ユニット9におけるπ型部延伸方向D1に沿って延伸配置されている。また、各支持部710は、π型部配列方向D2に対して一定間隔毎に配置されている。また、支持基板71における表面のうち、各支持部710によって挟まれた領域は、支持部710に対して相対的に表面が凹んだ凹表面領域711が形成されている。そのため、支持基板71の表面が隆起する支持部710に熱電変換モジュール3の背面S1が支持されることで、熱電変換モジュール3の背面S1と、支持基板71における凹表面領域711との間には、空洞部712が形成されている。
本実施形態における支持基板71は、上記のように電気絶縁性材料によって形成されている。本実施形態においては、支持基板71をシリコン基板によって形成しているが、シリコンと異なる半導体や、銅やアルミニウムなどの金属、炭化ケイ素などのセラミックス、炭素系材料、高熱伝導性樹脂など、他の材料によって支持基板71を形成しても良い。また、支持部710は、例えば、支持基板71を形成するシリコン基板上に積層された薄膜状の二酸化ケイ素(SiO)絶縁膜によって形成されている。本実施形態において、支持部710が絶縁性材料によって形成されていれば、支持基板71は電気伝導性を有していても良い。
図7中の符号300は、熱電変換モジュール3を形成するためのシリコン薄膜材料である。シリコン薄膜材料300は、熱電変換モジュール3におけるn型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32を形成するドープ領域R1と、非ドープ領域R2とを含む。ドープ領域R1は、シリコン原子にドーパントを混ぜることでn型又はp型にドープした領域である。すなわち、熱電変換モジュール3におけるn型熱電変換素子31は、例えば、シリコン原子にリン(P)など5価の原子をドーパントとして注入することによってn型にドープした領域によって形成したものであり、電子をキャリアとする半導体素子である。一方、熱電変換モジュール3におけるp型熱電変換素子32は、シリコン原子にホウ素(B)など3価の原子をドーパントとして注入することによってp型にドープした領域によって形成したものであり、ホール(正孔)をキャリアとする半導体素子である。一方、シリコン薄膜材料における非ドープ領域R2は、シリコン原子がドープされていない領域であり、真性半導体として形成されている。本実施形態において、シリコン薄膜材料300における非ドープ領域R2には、絶縁膜が成膜されている。なお、熱電変換モジュール3におけるn型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32の端部同士を接合する電極34A,34Bは、シリコン薄膜材料300のドープ領域R1上に、例えばアルミニウム電極を蒸着するなどして形成することができる。
ここで、図7に示すように、熱電変換モジュール3は、n型熱電変換素子31およびp
型熱電変換素子32の各低温側端部31B,32Bが支持基板71における支持部710上に載置されることで支持されている。一方、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32の各高温側端部31A,32Aは、支持基板71における支持部710間に位置する凹表面領域711から離間した状態で当該凹表面領域711の上部に配置されている。すなわち、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32の各高温側端部31A,32Aは、支持基板71と非接触の状態で配置されている。
また、本実施形態における熱電変換モジュール3は、π型部配列方向D2に隣接する一対のπ型部33同士が、シリコン薄膜材料300における非ドープ領域R2によって形成される連結部310を介して連結されている。連結部310は、π型部配列方向D2に隣接する一対のπ型部33のうち、一方のπ型部33におけるn型熱電変換素子31の高温側端部31Aと、他方のπ型部33におけるp型熱電変換素子32の高温側端部32A同士を連結している。上記のように構成される熱電変換モジュール3は、連結部310を介して連結された一対のπ型部33が支持部710に支持されることで、凹表面領域711(空洞部712)上に架け渡されたブリッジ構造となっている。
図8は、実施形態1に係る熱電変換モジュール3のブリッジ構造を説明するための図である。このようなブリッジ構造によれば、熱電変換モジュール3におけるn型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32の各高温側端部31A,32Aは、支持基板71と非接触の状態で配置されるため、空気を介して外部環境(外部雰囲気)に晒され易くなる。一方、熱電変換モジュール3におけるn型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32の各低温側端部31B,32Bは、支持部710に支持されることで、支持基板71を介して主桁10(コンクリート構造物)における設置対象面5Aの温度が伝達され易くなる。その結果、主桁10(コンクリート構造物)における設置対象面5Aの表面温度と、その周辺の雰囲気温度(例えば、外気温)との温度差を利用して、熱電変換モジュール3におけるn型熱電変換素子31の高温側端部31Aと低温側端部31Bとの間に温度差を生じさせることができる。同様に、p型熱電変換素子32の高温側端部32Aと低温側端部32Bとの間に温度差を生じさせることができる。その結果、ゼーベック効果によって、上記熱電変換素子両端の温度差に比例した電位差(電圧)を生じさせることができる。なお、本実施形態においては、支持基板71とシリコン薄膜材料300の間に空洞部712を形成することで当該空洞部712に空気を介在させる構造を採用しているが、例えば樹脂やエアロゲルなどからなる熱伝導率の低い低熱伝導率材料を空洞部712に充填する構造を採用しても良く、そのような構造を採用することで、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32における高温側端部31A,32Aと低温側端部31B,32Bとの間に温度差を好適に生じさせることができる。
本実施形態においては、発電装置7における発電パネル70が主桁10のコンクリート表面である設置対象面5Aに対して熱伝導性接着材を用いて取り付けられている。また、一般に、外気温に比べてコンクリート表面温度の方が低温であると考えられる。従って、発電パネル70の発電部72に配置される各熱電変換ユニット9(熱電変換モジュール3)においては、n型熱電変換素子31における低温側端部31Bが高温側端部31Aよりも相対的に低温になり、高温側端部31Aから低温側端部31Bに向けて熱伝導が起こる。同様に、p型熱電変換素子32における低温側端部32Bが高温側端部32Aよりも相対的に低温になり、高温側端部32Aから低温側端部32Bに向けて熱伝導が起こる。
図9は、実施形態1に係る熱電変換モジュール3において、ゼーベック効果によって生じた電位差によって流れる電流を説明するための模式図である。n型熱電変換素子31は、マイナスの電荷を持つ電子の数がプラスの電荷を持つホール(正孔)より多いため、高温側端部31Aおよび低温側端部31Bの温度差に応じて、高温側端部31Aから低温側端部31Bに向かって電子が拡散してゆく(図9中、破線矢印にて図示)。その結果、n
型熱電変換素子31においては、高温側端部31Aが低温側端部31Bよりも高電位となる。
一方、p型熱電変換素子32は、ホール(正孔)の数が電子より多いため、高温側端部32Aおよび低温側端部32Bの温度差に応じて、高温側端部32Aから低温側端部32Bに向かってホール(正孔)が拡散してゆく(図9中、鎖線矢印にて図示)。その結果、p型熱電変換素子32においては、低温側端部32Bが高温側端部32Aよりも高電位となる。以上のようなメカニズムにより、本実施形態における熱電変換モジュール3は、図9に示す実線矢印の方向に向かって電流を流れる。なお、図9中、蛇行状に示す太実線は、熱電変換モジュール3の各熱電変換素子31,32、電極34A,34Bを電路として流れる電流の流れを模式的に示したものである。
ここで、図9に示す符号91は、各熱電変換ユニット9(熱電変換モジュール3)におけるプラス極端子であり、符号92は、各熱電変換ユニット9(熱電変換モジュール3)におけるマイナス極端子である。プラス極端子91は、熱電変換モジュール3において、高電位側に位置する方の端部を形成する熱電変換素子(図9に示す例では、符号32(X)で示すp型熱電変換素子が該当)の電極(図9に示す例では、電極34B)に接続されている。また、マイナス極端子92は、熱電変換モジュール3において、低電位側に位置する方の端部を形成する熱電変換素子(図9に示す例では、31(X)で示すn型熱電変換素子が該当)の電極(図9に示す例では、電極34Bが該当)に接続されている。そして、各熱電変換ユニット9(熱電変換モジュール3)におけるプラス極端子91およびマイナス極端子92は、例えばリード線などを介して、図5に示す発電パネル70のプラス極端子73Aおよびマイナス極端子73Bにそれぞれ接続されている。これにより、各熱電変換ユニット9(熱電変換モジュール3)によって発電された電力を、外部接続装置80に送電することができる。なお、ここでの説明では、一の発電パネル70に含まれる各熱電変換ユニット9(熱電変換モジュール3)をすべて並列接続する場合を例に説明しているが、その一部又は全部が直列に接続されていても良い。
次に、熱電変換モジュール3におけるn型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32のフォノニック結晶(Phononic crystal, PnC)構造について説明する。ここで、フォ
ノニック結晶構造は、異種弾性体の周期構造より構成される人工結晶である。また、フォノニック結晶構造は、異種弾性体がフォノンの波長オーダーの長さで周期的に配列した結晶構造ということもできる。ここで、フォノン(「熱フォノン」と呼ばれる場合もある)とは、固体中において熱を輸送する粒子であり、フォノンが固体中を高温側から低温側に伝播することで、固体中における熱伝導が行われる。本実施形態においては、熱電変換モジュール3におけるn型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32にサブマイクロオーダー又はナノオーダーで周期的に整列した貫通孔を多数形成することで、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32をフォノニック結晶構造としている。
図10は、作製した熱電変換モジュール3の一部を電子顕微鏡で写した像である。図10に示すように、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32には、多数(複数)の細孔Cが周期的に配列されている。細孔Cは、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32を厚さ方向に貫通しており、本実施形態では円形の横断面形状を有する円孔として形成されている。細孔Cの直径は、サブマイクロオーダー又はナノオーダーの寸法に設計されている。n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32に対する細孔Cの形成は、半導体微細加工技術を用いて行うことができる。なお、図8において、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32における細孔Cを模式的に図示しているが、図6、図7、図9等においては細孔Cの図示を省略している。
ところで、熱電変換の性能指数ZTは、ゼーベック係数S、電気伝導率σ、熱伝導率k
、温度差Tを用いると下記(1)式のように表される。
ZT=S×σ×T/k ・・・(1)
ここで、S[V/K]:ゼーベック係数、σ[1/Ωm]:電気抵抗率、k[W/(mK)]:熱伝導率
従って、熱電変換モジュール3における熱電変換効率を高めるためには、熱伝導率を低減することが重要なファクターとなる。これに対して、本実施形態の熱電変換モジュール3においては、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32をフォノニック結晶構造とし、多数の細孔Cを配列するようにした。これによれば、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32において、高温側端部31Aから低温側端部31Bに向かってフォノンが輸送される際、細孔Cによってフォノンが散乱されるため、フォノンの輸送を著しく阻害することができる。その結果、熱電変換モジュール3におけるn型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32の熱伝導率を大幅に低減することができ、故に、熱電変換材料の両端に発生する温度差が大きくなり、熱電変換効率(発電効率)を高めることができる。
なお、本実施形態におけるn型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32において、細孔C同士の間隔は、フォノンの平均自由行程より小さい寸法に設定されていることが好ましい。フォノンの平均自由行程とは、フォノンが、散乱源による散乱(衝突)で妨害されることなく進むことのできる距離(自由行程)の平均値として定義される。例えば、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32における細孔C同士の間隔は、数10nm〜100nm程度であっても良い。細孔C同士の間隔を、フォノンの平均自由行程より小さい寸法に設定することで、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32においてフォノンをより一層散乱させることができる。その結果、熱電変換モジュール3の熱電変換効率(発電効率)をより一層向上することができる。
以上のように構成される熱電変換モジュール3を有する発電装置7および当該発電装置7を備えた電気防食装置100によれば、鉄筋4(防食対象鋼材)の表面に防食電流を流すための電力を、熱電変換モジュール3において好適に発電することができる。よって、外部電源装置から常時電力を供給する必要がなく、鉄筋4の電気防食に要するコストを低減することができる。また、流電陽極方式による電気防食方法と異なり、陽極(電気防食用電極)を定期的に取り換える必要がなく、メンテナンス性に優れている。
また、本実施形態における熱電変換モジュール3は、コンクリート構造物のコンクリート表面温度と、周辺の雰囲気温度(例えば、外気温)との温度差を利用して発電を行うことができるため、昼夜を問わず、また、天候にも影響されず、安定的に発電を行うことができる。すなわち、本実施形態に係る電気防食装置100によれば、夜間や天候不順のときも安定して、常時、鉄筋4(防食対象鋼材)の表面に防食電流を流すことができる。特に、本実施形態における熱電変換モジュール3は、上記のようにフォノニック結晶構造を採用しているため、熱電変換効率(発電効率)を好適に高めることができる。
更に、本実施形態における電気防食装置100の発電装置7によれば、温度差を利用して熱電変換モジュール3が発電を行うため、発電パネル70を設置する場所を選ばず、設置場所を選択する際の自由度が高い。すなわち、主桁10の底面等、日射の届き難い場所に設置しても、環境温度差を利用して安定的に発電を行うことができる。従って、図4等に示す例では、主桁10のコンクリート側面に発電装置7(発電パネル70)を設置する態様について説明したが、主桁10の底面等、他の部位に発電装置7(発電パネル70)を設置しても良い。
また、本実施形態における電気防食装置100の発電装置7においては、発電パネル7
0を、鉄筋4(防食対象鋼材)を含むコンクリート構造物のコンクリート表面に直接取り付けることができるので、コンクリート構造物から離れた外部電源装置から送電する場合に比べて、送電ロスが起こることを抑制できる。
次に、本実施形態における発電装置7が備える熱電変換モジュール3によって発電可能な発電能力について評価する。
ここで、電気化学的防食工法 設計施工指針(案)[土木学会](以下、単に「設計施工指針」という)によると、電気防食工法において、鋼材の防食に必要な防食電流の電流密度は0.001〜0.03A/m(0.1〜3μA/cm)程度が一般的で、防食電流の通電電圧は1〜5V程度が一般的である旨が記載されている。
これに対して、発電装置7における発電パネル70を設置するコンクリート構造物における設置対象面5Aの表面温度と、その周辺の雰囲気温度(例えば、外気温)との温度差(環境温度差)を2℃、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32における高温側端部31A,32Aと低温側端部31B,32Bとの温度差を1℃と仮定した場合に、30μW/cm程度の電力が得られるというシミュレーション結果が得られた。
また、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32における高温側端部31A,32Aと低温側端部31B,32Bとの温度差を1℃とした場合、一対の熱電変換素子(1組のn型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32)当たり約300μVの電位差が発生するという結果が得られている。図10に示すように、実際に作製した熱電変換モジュール3は、一対の熱電変換素子(1組のn型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32)の大きさは短辺寸法が約30μm、長辺寸法が約40μmであるため、1cm当たり8万対の熱電変換素子を敷き詰めることが可能である。この場合、8万対の熱電変換素子を直列に接続することで、約24Vの電位差を生じさせることができる(80000対×300μV×10−6=24V)。
上記のように算出された24Vは、本設計施工指針において防食電流の通電電圧として要求される1〜5Vよりも大きい。そのため、熱電変換素子対(n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32の組数)を直列に接続する組数(段数)を調整することで、本設計施工指針において要求される防食電流の通電電圧を容易に得ることができる。また、実用上は、1cm当たりに複数の熱電変換モジュール3を配置し(例えば、5mm角の領域ごとに1つの熱電変換モジュール3を配置)、これら複数の熱電変換モジュール3を並列に接続することで、熱電変換モジュール3毎において発生する電位差が1〜5Vの範囲となるように調整すると良い。
次に、熱電変換モジュール3によって得られる電流の電流密度について算出すると、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32における高温側端部31A,32Aと低温側端部31B,32Bとの温度差を1℃と仮定し、電流の通電電圧を1〜5Vの範囲となるように熱電変換素子対の組数を調整した場合に、下記(2)式に、電力W=30μW/cm、電圧V=1〜5Vを代入すると、A=6〜30μA/cmの電流が得られることがわかる。
A(電流)=W(電力)/V(電圧) ・・・(2)
従って、熱電変換モジュール3によって、本設計施工指針において要求される防食電流の電流密度を容易に得ることができることがわかる(6〜30μA/cm>0.1〜3μA/cm)。
以上のように、フォノニック結晶構造を有する本発明に係る熱電変換モジュール3によ
れば、本設計施工指針で要求される通電電圧、電流密度を満足する電流を容易に得ることができる。
なお、本実施形態では、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32において配列する細孔Cを円孔とする例を説明したが、細孔Cの形状は特に限定されない。また、本実施形態においては、n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32が、それぞれフォノニック結晶構造を有する形態を例に説明したが、必ずしもフォノニック結晶構造を有していていなくても良い。n型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32として、フォノニック結晶構造を採用しない場合、細孔Cはフォノニック結晶のように周期性を持たなくてもよい。また、本実施形態では、シリコン薄膜材料300におけるシリコン原子をn型又はp型にドープすることでn型熱電変換素子31およびp型熱電変換素子32を形成するようにしたが、シリコン材料の代わりに、例えばGe、SiGe、CrSi、FeSi、MnSi、MgSi、MgGe、CoSb、AgSbTe、SnTe、PbT等を使用しても良い。なお、本実施形態においては、熱電変換モジュール3を薄膜状に形成する形態を例に説明したが、これには限定されない。例えば、熱電変換モジュール3をバルク状に形成しても良い。
また、本実施形態の発電装置7は、熱電変換モジュール3における温度差を利用して得られた防食電流の電圧を昇圧するための昇圧器(昇圧回路)を備えていても良い。これにより、環境温度差が小さい状況下においても、上記設計施工指針で要求される電圧を容易に確保することができる。また、発電装置7は、整流器(整流回路)を備えていても良い。これにより、発電装置7における発電パネル70を設置する設置対象面5Aの表面温度が、その周辺の雰囲気温度(例えば、外気温)よりも高くなった場合においても、防食電流が逆方向に流れてしまうことを抑制できる。
また、本実施形態における電気防食装置100の発電装置7は、熱電変換ユニット9(熱電変換モジュール3)に加えて、太陽光発電装置や振動発電装置を更に備えていても良い。太陽光や、電気防食装置100を設置するコンクリート構造物の振動を利用することで、防食対象鋼材に対し安定して防食電流を供給できる。なお、上述した振動発電装置は、例えば圧電素子を備えたものを採用しても良く、例えば、橋桁1を車両が通行する際の振動等を利用して発電することができる。また、本実施形態における電気防食装置100は、発電装置7によって発電した電力を蓄電するコンデンサーや二次電池などの蓄電装置を更に備えていても良い。これらによれば、防食対象鋼材に、より安定的に防食電流を供給することができる。
なお、上記実施形態では、主桁10の鉄筋4を防食対象鋼材とする例を説明したが、これには限定されないのは勿論である。すなわち、本実施形態における電気防食装置100は、種々のコンクリート構造部における鋼材の電気防食に適用することができる。例えば、本実施形態における電気防食装置100を、図11に示すトンネル200の覆工コンクリート210に含まれる鉄筋などの鋼材を電気防食するために用いても良い。この場合、トンネル200の内空側の内壁面220に、発電装置7(発電パネル70)を設置することが好ましい。すなわち、トンネル200の内空側は、例えば、トンネル200を通行する車両の排気ガス等の影響で温度が比較的高く、トンネル200の内壁面220の温度との温度差を確保しやすい。その結果、環境温度差を十分に確保しやすく、熱電変換モジュール3における熱電変換効率(発電効率)を好適に高めることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明に係るコンクリート構造物における鋼材の電気防食装置および電気防食方法は、種々の変形例を採用することができる。
1・・・橋桁
2・・・橋脚
3・・・熱電変換モジュール
4・・・鉄筋
5・・・コンクリート
6・・・陽極材
7・・・発電装置
9・・・熱電変換ユニット
C・・・細孔
31・・・n型熱電変換素子
32・・・p型熱電変換素子
33・・・π型部
70・・・発電パネル
71・・・支持基板
72・・・発電部
80・・・外部接続装置
310・・・連結部
710・・・支持部
31A,32A・・・高温側端部
31B,32B・・・低温側端部
34A,34B・・・電極

Claims (9)

  1. コンクリート構造物に設置された陽極材から、前記コンクリート構造物中の防食対象鋼材に防食電流を流すことで当該防食対象鋼材を防食する電気防食装置であって、
    前記陽極材から前記防食対象鋼材に防食電流を流すための電力を発電する発電部を有する発電装置を備え、
    前記発電部は、n型熱電変換素子とp型熱電変換素子とが電極を介して交互に且つ電気的に直列に接続された熱電変換モジュールを含む、
    コンクリート構造物における鋼材の電気防食装置。
  2. 前記n型熱電変換素子および前記p型熱電変換素子は、それぞれフォノニック結晶構造を有する、請求項1に記載のコンクリート構造物における鋼材の電気防食装置。
  3. 前記p型熱電変換素子および前記n型熱電変換素子は、素子を厚さ方向に貫通するサブマイクロオーダー又はナノオーダーの直径を有する細孔が多数形成されている、
    請求項1又は2に記載のコンクリート構造物における鋼材の電気防食装置。
  4. 前記発電部は、複数の前記熱電変換モジュールを含む、請求項1から3の何れか一項に記載のコンクリート構造物における鋼材の電気防食装置。
  5. 前記熱電変換モジュール同士が電気的に並列又は直列に接続されている、請求項4に記載のコンクリート構造物における鋼材の電気防食装置。
  6. 前記熱電変換モジュールは、電気絶縁性材料からなる支持基板上に配置されており、
    前記電極は、前記n型熱電変換素子および前記p型熱電変換素子における熱伝導方向の両端に配置されており、
    前記n型熱電変換素子および前記p型熱電変換素子における低温側端部が前記支持基板に設けられた支持部に支持されていると共に、前記n型熱電変換素子および前記p型熱電変換素子における高温側端部が前記支持基板と非接触になっている、
    請求項1から5の何れか一項に記載のコンクリート構造物における鋼材の電気防食装置。
  7. 前記熱電変換モジュールは、前記n型熱電変換素子と前記p型熱電変換素子とが前記電極を介して交互に直列に接続されることでπ型を呈すると共に、互いに平行に配列される複数のπ型部を含み、
    前記複数のπ型部において、互いに隣接する一組のπ型部が連結部を介して連結されると共に、前記連結部を介して連結された一組のπ型部が前記支持基板に突設されると共に互いに離間して配置される一対の支持部に支持されることで、当該一組のπ型部が一対の支持部間に架け渡されており、
    前記連結部を介して連結される一組のπ型部に含まれる前記n型熱電変換素子および前記p型熱電変換素子の前記低温側端部が前記支持部に支持されると共に、前記高温側端部が前記連結部によって連結されている、
    請求項6に記載のコンクリート構造物における鋼材の電気防食装置。
  8. 前記発電部は、前記コンクリート構造物のコンクリート表面に設置されている、
    請求項1から7の何れか一項に記載のコンクリート構造物における鋼材の電気防食装置。
  9. コンクリート構造物に設置された陽極材から、前記コンクリート構造物中の防食対象鋼材に防食電流を流すことで当該防食対象鋼材を防食する電気防食方法であって、
    n型熱電変換素子とp型熱電変換素子とが電極を介して交互に且つ電気的に直列に接続された熱電変換モジュールを有する発電部において、前記n型熱電変換素子および前記p型熱電変換素子における高温側端部と低温側端部との温度差を利用して発電し、当該発電した電力を利用して前記陽極材から前記防食対象鋼材に防食電流を流す、
    コンクリート構造物における鋼材の電気防食方法。
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