<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態における情報提供システム100の構成図である。第1実施形態の情報提供システム100は、各種の興行(例えば演劇,演奏,映画等)に関する情報をその進行に並行して利用者に提供するためのコンピュータシステムであり、図1に例示される通り、配信装置10と端末装置20とを具備する。配信装置10は、各種の興行が開催される劇場やホール等の施設Hに設置される。施設Hに来場した利用者は、端末装置20を携帯する。端末装置20は、例えば携帯電話機やスマートフォン等の可搬型の情報処理端末である。なお、実際には施設H内に複数の端末装置20が存在するが、以下の説明では便宜的に任意の1個の端末装置20に着目する。
第1実施形態では、事前に用意された複数の台詞が所定の順番で時系列に発音されるショー(例えばキャラクターショー)が施設H内で開催される場合を想定する。利用者は、端末装置20を携帯しながらショーを鑑賞する。端末装置20は、時系列に発音される複数の台詞の各々に関連する情報(以下「関連情報」という)をショーの進行に並行して順次に表示する。具体的には、例えば各台詞を表す文字列(すなわち字幕)が関連情報として端末装置20に表示される。以上の構成によれば、端末装置20の利用者は、端末装置20が順次に表示する関連情報をショーの鑑賞とともに随時に確認することで、ショーの台詞を視覚的に把握することが可能である。したがって、例えば聴覚障碍者でもショーの内容を把握できるという利点がある。
図2は、配信装置10の構成図である。図2に例示される通り、第1実施形態の配信装置10は、制御装置12と記憶装置14と入力装置16と放音装置18とを具備する。制御装置12は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む処理回路であり、配信装置10の各要素を統括的に制御する。記憶装置14は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体、あるいは複数種の記録媒体の組合せで構成され、制御装置12が実行するプログラムと制御装置12が使用する各種のデータとを記憶する。第1実施形態の記憶装置14は音響信号Xを記憶する。音響信号Xは、ショーで発音される複数の台詞の音声を表す時間信号である。
放音装置18は、例えば施設H内に設置されたスピーカ装置であり、音響信号Xが表す音を再生する。なお、音響信号Xをデジタルからアナログに変換するD/A変換器、および、音響信号Xを増幅する増幅器の図示は便宜的に省略されている。入力装置16は、ショーを運営する管理者からの指示を受付ける操作機器である。例えば入力装置16を適宜に操作することで、管理者は、音響信号Xの再生または停止を随時に指示することが可能である。制御装置12は、入力装置16に対する管理者からの指示に応じて音響信号Xを放音装置18に供給することで、複数の台詞の各々の音声を放音装置18から順次に再生させる。施設H内の舞台における各出演者の演技に並行して音響信号Xを再生することでショーが構成される。
図3は、音響信号Xに含まれる音響成分の説明図である。図3に例示される通り、複数の台詞Ln(L1,L2,L3,…)の各々の音響成分が音響信号Xの相異なる区間(以下「再生区間」という)に含有される(nは自然数)。したがって、放音装置18による音響信号Xの再生により各台詞Lnの音響成分が順次に放音される。また、音響信号Xのうち任意の1個の台詞Lnの再生区間には、その台詞Lnの識別情報Dn(D1,D2,D3,…)の音響成分が含有される。識別情報Dnは、台詞Lnを識別するための符号である。識別情報Dnの音響成分は、例えば所定の周波数の正弦波等の搬送波を識別情報Dnにより変調する周波数変調、または、拡散符号を利用した識別情報Dnの拡散変調等の変調処理により生成された変調成分である。識別情報Dnの音響成分の周波数帯域は、利用者が通常の環境で聴取する音の周波数帯域を上回る範囲(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)に設定される。
以上に例示した音響信号Xが図2の放音装置18に供給される。したがって、台詞Lnの音響成分と識別情報Dnの音響成分とが放音装置18から順次に放音される。すなわち、第1実施形態の放音装置18は、台詞Lnの音響成分を放音する音響機器として機能するほか、空気振動としての音波を伝送媒体とする音響通信で当該台詞Lnの識別情報Dnを周囲に送信する送信機としても機能する。
図4は、ショーの進行と端末装置20の動作との関係の説明図である。図4に例示される通り、配信装置10は、複数の台詞Lnの再生(すなわちショーの進行)に並行して各台詞Lnの識別情報Dnを音響通信により順次に送信する。例えば、第n番目の台詞Lnの再生とともに当該台詞Lnの識別情報Dnが配信装置10から送信される。すなわち、各台詞Lnの再生に同期して識別情報Dnが順次に送信される。なお、図3および図4では、台詞Lnの再生区間の開始とともに識別情報Dnの送信を開始する場合を例示したが、台詞Lnの再生区間と識別情報Dnが送信される期間との時間的な関係は適宜に変更され得る。また、台詞Lnの再生区間内に識別情報Dnを複数回にわたり反復的に送信する構成によれば、端末装置20が識別情報Dnを受信できない可能性を低減することが可能である。
図5は、端末装置20の構成図である。図5に例示される通り、端末装置20は、制御装置21と記憶装置23と収音装置25と入力装置27と表示装置29とを具備する。制御装置21は、例えばCPUを含む処理回路であり、端末装置20の各要素を統括的に制御する。記憶装置23は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体、あるいは複数種の記録媒体の組合せで構成され、制御装置21が実行するプログラムと制御装置21が使用する各種のデータとを記憶する。第1実施形態の記憶装置23は、図6に例示される情報テーブルTを記憶する。例えば、移動体通信網やインターネット等の通信網を介して端末装置20が管理サーバ(図示略)から受信した情報テーブルTが記憶装置23に記憶される。
図6に例示される通り、情報テーブルTは、ショーで発音され得る複数の台詞Lnの各々について識別情報Dn(D1,D2,D3,…)と関連情報Rn(R1,R2,R3,…)とが登録されたデータテーブルである。ショーにおける各台詞Lnの発音の順番で識別情報Dnと関連情報Rnとが配列される。第1実施形態における各台詞Lnの関連情報Rnは、当該台詞Lnの文字列を表すテキストデータである。識別情報Dnは、前述の通り台詞Lnを識別するための符号であるが、関連情報Rnを識別するための符号とも換言され得る。
図6に例示される通り、第1実施形態の情報テーブルTには、相前後する2個の台詞(Ln,Ln+1)の対毎に時間差Q[n,n+1](Q[1,2],Q[2,3],Q[3,4],…)が登録される。時間差Qは、音響信号Xにおいて相前後する2個の台詞Lnの間の時間である。具体的には、図3に例示される通り、任意の1個の時間差Q[n,n+1]は、第n番目の台詞Lnの再生区間の始点と直後の台詞Ln+1の再生区間の始点との間隔である。したがって、ショーが当初の予定通りに進行すれば、配信装置10の放音装置18による再生音では、台詞Lnの発音の時点から時間差Q[n,n+1]だけ経過した時点で台詞Ln+1の発音が開始される。例えば、最初の台詞L1の発音の開始から時間差Q[1,2]だけ経過した時点で第2番目の台詞L2の発音が開始され、台詞L2の発音の開始から時間差Q[2,3]だけ経過した時点で第3番目の台詞L3の発音が開始される。
図6に例示される通り、複数の台詞Lnは、時間軸上で複数の集合(以下「台詞群」という)Gmに区分される(mは自然数)。各台詞群Gm(G1,G2,…)は、時間軸上で相前後する複数の台詞Lnの集合である。図6では、第1番目から第3番目までの3個の台詞Ln(L1,L2,L3)を第1番目の台詞群G1に区分し、第4番目および第5番目の2個の台詞Ln(L4,L5)を第2番目の台詞群G2に区分した場合が例示されている。情報テーブルTは、台詞群Gmの区分(相前後する台詞群Gmの境界)を規定する。例えば相前後する台詞群(Gm,Gm+1)の境界を示すデータ、あるいは、各台詞群Gmの先頭または末尾の台詞Lnを示すデータ(例えばフラグ)が情報テーブルTに含められる。各台詞群Gmに属する台詞Lnの総数は台詞群Gm毎に相違し得る。また、台詞群Gmを1個の台詞Lnで構成することも可能である。なお、識別情報Dnと関連情報Rnと時間差Q[n,n+1]と台詞群Gmとの対応を特定できれば、情報テーブルTを複数のテーブルで構成することも可能である。
図5の収音装置25(マイクロホン)は、周囲の音を収音して音響信号Yを生成する音響機器である。具体的には、収音装置25は、配信装置10の放音装置18が再生した音(すなわち台詞Lnの音響成分と識別情報Dnの音響成分との混合音)を表す音響信号Yを生成する。なお、収音装置25が生成した音響信号Yをアナログからデジタルに変換するA/D変換器の図示は便宜的に省略した。
入力装置27は、端末装置20に対する各種の指示のために利用者が操作する入力機器である。例えば利用者が操作する複数の操作子や利用者による接触を検知するタッチパネルが入力装置27として好適に利用される。表示装置29(例えば液晶表示パネル)は、制御装置21による制御のもとで関連情報Rnを表示する。なお、収音装置25および表示装置29の一方または双方を、端末装置20とは別体で構成して端末装置20に接続することも可能である。
図5に例示される通り、記憶装置23に記憶されたプログラムを制御装置21が実行することで、関連情報Rnを利用者に提供するための複数の機能(情報抽出部42,時点特定部44,再生制御部46,停止判定部48)が実現される。なお、以上に例示した制御装置21の機能を複数の装置に分散した構成、または、制御装置21の機能の一部を専用の電子回路が実現する構成も採用され得る。
情報抽出部42は、収音装置25が生成した音響信号Yから各台詞Lnの識別情報Dnを抽出する。具体的には、情報抽出部42は、音響信号Yのうち識別情報Dnを含む周波数帯域の音響成分を例えば帯域通過フィルタで選択し、音響信号Xの生成時の変調処理に対応する復調処理を当該音響成分に対して実行することで識別情報Dnを抽出する。具体的には、放音装置18による台詞Lnの発音毎に、当該台詞Lnの識別情報Dnが順次に抽出される。以上の説明から理解される通り、第1実施形態の収音装置25は、端末装置20の相互間の音声通話や動画撮影時の音声収録に利用されるほか、音響通信による識別情報Dnの受信に利用される。すなわち、収音装置25および情報抽出部42は、複数の台詞Lnの再生に並行して配信装置10から順次に送信される各台詞Lnの識別情報Dnを受信可能な情報受信部50として機能する。
時点特定部44は、図4に例示される通り、台詞Lnの発音が予定される時点(以下「予定時点」という)Pnを順次に特定する。具体的には、時点特定部44は、情報テーブルTで指定された時間差Q[n,n+1]が既定の予定時点Pnから経過した時点を、第(n+1)番目の台詞Ln+1が発音されるべき予定時点Pn+1として特定する。例えば、図4に例示される通り、第3番目の台詞L3の予定時点P3は、直前の台詞L2の予定時点P2から時間差Q[2,3]が経過した時点である。第1実施形態の時点特定部44は、任意の1個の予定時点Pnから経時的に計時値C(例えば内部タイマによるカウント値)を増加させ、情報テーブルTで指定された時間差Q[n,n+1]に計時値Cが到達した時点を台詞Ln+1の予定時点Pn+1として特定する。なお、第1番目の台詞L1については、時点特定部44は、情報受信部50が配信装置10から最初の識別情報D1を受信した時点を予定時点P1として特定する。図4に例示される通り、各予定時点Pnの到来を契機として計時値Cはゼロに初期化される。
図5の再生制御部46は、表示装置29による関連情報Rnの表示を制御する。具体的には、再生制御部46は、複数の台詞群Gmの各々について、その台詞群Gmの先頭の台詞Lnに対応する予定時点Pnの到来を契機として、当該台詞群Gmに属する複数の台詞Lnの関連情報Rnを表示装置29に表示させる。例えば、図4に例示される通り、再生制御部46は、台詞群G1のうち先頭の台詞L1の予定時点P1が到来すると、その台詞群G1に属する複数の台詞Lnの関連情報Rn(R1,R2,R3)を表示装置29に表示させる。また、台詞群G2のうち先頭の台詞L4の予定時点P4が到来すると、その台詞群G2に属する複数の台詞Lnの関連情報Rn(R4,R5)を表示装置29に表示させる。すなわち、台詞群Gmの先頭の台詞Lnについて時点特定部44が特定する予定時点Pn毎に、表示装置29に表示される関連情報Rnが更新される。以上の説明から理解される通り、台詞群Gmは、端末装置20で一括的に表示される複数の台詞Lnの集合である。
ところで、実際のショーでは、相前後する台詞Lnの間に、事前に想定されていない突発的な事象(以下「突発的事情」という)が発生し得る。突発的事情は、可変長にわたる事柄であり、例えば出演者による即興的な演技(アドリブ)が典型例である。突発的事情が発生した場合、管理者は、配信装置10の入力装置16に対する操作で音響信号Xの再生の停止を指示し、突発的事情が終了した段階で音響信号Xの再生の再開を指示する。配信装置10の制御装置21は、管理者からの指示に応じて音響信号Xの再生を停止および再開する。以上の説明から理解される通り、突発的事情が発生した場合には、台詞Lnの再生の進行(以下「台詞進行」という)が停止する。したがって、台詞進行に並行した適切な時点で関連情報Rnを表示するためには、突発的事情の発生(台詞進行の停止)を検知して以降の各台詞Lnの予定時点Pnを特定することが重要である。
以上の事情を考慮して、図5の停止判定部48は、台詞進行が停止しているか否か(すなわち、突発的事情の有無)を判定する。図3を参照して前述した通り、配信装置10は、各台詞Lnの再生とともに当該台詞Lnの識別情報Dnを送信する。したがって、ショーが予定通りに進行している状況(突発的事情が発生していない状況)では、各台詞Lnの予定時点Pnの近傍の時点にて情報受信部50が当該台詞Lnの識別情報Dnを受信すると期待される。他方、台詞進行が停止した状況では、各台詞Lnの予定時点Pnの近傍の時点において情報受信部50が識別情報Dnを受信できない。
以上の傾向を考慮して、第1実施形態の停止判定部48は、時点特定部44が台詞Ln毎に特定した予定時点Pnの近傍において情報受信部50が当該台詞Lnの識別情報Dnを受信したか否かに応じて、台詞進行が停止しているか否かを判定する。具体的には、停止判定部48は、図4に例示される通り、各台詞Lnの予定時点Pnを含む所定の期間(以下「判定期間」という)W内に情報受信部50が当該台詞Lnの識別情報Dnを受信した場合には台詞進行が停止していないと判定し、判定期間W内に情報受信部50が識別情報Dnを受信しない場合には台詞進行が停止していると判定する。
台詞進行が停止していないと停止判定部48が判定した場合には、前述の通り、時点特定部44が予定時点Pnを順次に特定する動作と再生制御部46が関連情報Rnの表示を順次に更新する動作とが継続的に実行される。他方、台詞進行が停止していると停止判定部48が判定した場合には、時点特定部44による予定時点Pnの特定(計時値Cの増加)と再生制御部46による関連情報Rnの表示の更新とが待機される。台詞進行が停止した場合の動作の具体例を以下に説明する。
図7は、1個の台詞群Gm内で相前後する2個の台詞L(Ln,Ln+1)の間で突発的事情Eが発生した結果、台詞Ln+1の直前で台詞進行が停止した場合の動作の説明図である。具体的には、台詞群G1の台詞L2と台詞L3との間で突発的事情Eが発生し、結果的に台詞L3が遅延した場合が図7では例示されている。
停止判定部48は、時点特定部44が特定した予定時点P3を始点とする判定期間W内において情報受信部50が台詞L3の識別情報D3を受信したか否かを判定する。図7に例示される通り、予定時点P3では突発的事情Eが発生しているから、判定期間W内で識別情報D3の送信および受信は実行されない。したがって、停止判定部48は、台詞進行が停止していると判定する(図7の「NG」)。この場合、時点特定部44による計時値Cの計数(予定時点P4の特定)と再生制御部46による表示の更新とは待機される。
突発的事情Eが終了すると、配信装置10による音響信号Xの再生(識別情報Dnの送信)が再開される。図7に例示される通り、台詞進行の再開後の最初の識別情報D3を情報受信部50が受信すると、識別情報D3の受信の時点を新たな予定時点P3として時点特定部44による計時値Cの計数が再開される。そして、更新後の予定時点P3から時間差Q[3,4]が経過した予定時点P4が到来すると、時点特定部44は計時値Cを初期化したうえで計数を継続し、再生制御部46は、台詞群G2に属する各台詞Lnの関連情報Rn(R4,R5)を表示装置29に表示させる。すなわち、台詞群G1の各台詞Lnの関連情報Rn(R1,R2,R3)の表示が、予定時点P4の到来を契機として、台詞群G2の各台詞Lnの関連情報Rn(R4,R5)の表示に更新される。他方、停止判定部48は、予定時点P4を始点とする判定期間W内に情報受信部50が台詞L4の識別情報D4を受信したか否かに応じて台詞進行の停止の有無を判定する。台詞進行が停止していると停止判定部48が判定した場合に、予定時点Pnの特定と関連情報Rnの表示の更新とが待機される点は前述の通りである。
なお、以上の説明では、台詞進行の再開後に予定時点P4の到来を契機として台詞群G2の各台詞Lnの関連情報Rn(R4,R5)を表示したが、台詞進行の再開後に最初に関連情報Rnの表示を更新する状態では、予定時点P4の到来と識別情報D4の受信との双方を条件として台詞群G2の関連情報Rnを表示することも可能である。
図8は、相前後する2個の台詞群Gm-1および台詞群Gmの間(すなわち台詞群Gmの先頭の台詞Lnの直前)にて突発的事情Eが発生した結果、台詞群Gmの先頭の台詞Lnの直前で台詞進行が停止した場合の動作の説明図である。具体的には、台詞群G1の最後の台詞L3と直後の台詞群G2の先頭の台詞L4との間で突発的事情Eが発生し、結果的に台詞L4が遅延した場合が図8では例示されている。
停止判定部48は、時点特定部44が特定した予定時点P4を始点とする判定期間W内において情報受信部50が台詞L4の識別情報D4を受信したか否かを判定する。図8に例示される通り、予定時点P4では突発的事情Eが発生しているから、判定期間W内で識別情報D4の送信および受信は実行されない。したがって、停止判定部48は、台詞進行が停止していると判定する(図8の「NG」)。この場合、時点特定部44による計時値Cの計数(予定時点P5の特定)と再生制御部46による表示の更新とは待機される。
突発的事情Eが終了すると、配信装置10による音響信号Xの再生(識別情報Dnの送信)が再開される。図8に例示される通り、台詞進行の再開後の最初の識別情報D4を情報受信部50が受信すると、時点特定部44は、識別情報D4の受信の時点を新たな予定時点P4として計時値Cの計数を初期値から開始する。また、情報受信部50による識別情報D4の受信を契機として、再生制御部46は、台詞群G2に属する各台詞Lnの関連情報Rn(R4,R5)を表示装置29に表示させる。すなわち、時点特定部44による時間差Q[3,4]の計時(更新前の予定時点P4の到来)と、台詞L4の識別情報D4の受信とを条件として、台詞群G1の各台詞Lnの関連情報Rn(R1,R2,R3)の表示が、台詞群G2の各台詞Lnの関連情報Rn(R4,R5)の表示に更新される。
以上の説明から理解される通り、再生制御部46は、台詞進行が停止していると停止判定部48が判定した場合に、表示装置29に表示させる関連情報Rnの更新を待機する一方、当該判定後に情報受信部50が識別情報Dnを受信すると、関連情報Rnの更新を再開する。突発的事情Eの発生時における端末装置20の動作例は以上の通りである。
図9は、端末装置20の制御装置21が実行する処理のフローチャートである。図9の処理を開始すると、時点特定部44は、予定時点Pnが到来するまで待機する(SA1:NO)。予定時点Pnが到来すると(SA1:YES)、時点特定部44は、計時値Cをゼロに初期化したうえで計時を開始し(SA2)、停止判定部48は、予定時点Pnを含む判定期間W内に情報受信部50が台詞Lnの識別情報Dnを受信したか否かに応じて台詞進行の停止の有無を判定する(SA3)。台詞進行が停止していない場合(SA4:NO)、再生制御部46は、時点特定部44により特定された予定時点Pnが台詞群Gmの先頭の台詞Lnに対応するか否かを判定する(SA5)。台詞群Gmの先頭の台詞Lnの予定時点Pn(例えば図4の予定時点P4)が到来した場合(SA5:YES)、再生制御部46は、当該台詞群Gmに属する各台詞Lnの関連情報Rnを表示装置29に表示させる(SA6)。他方、予定時点Pnが台詞群Gmの先頭以外の台詞Lnに対応する場合(SA5:NO)、再生制御部46は、現段階の関連情報Rnの表示を維持する。すなわち、図4からも理解される通り、台詞群Gmの先頭以外の台詞Lnが再生された段階では、表示装置29の表示は更新されない。以上の処理を実行すると、次回の予定時点Pnを待機する状態(SA1)に遷移する。
以上に説明した通り、第1実施形態では、台詞進行が停止していない場合には、台詞群Gmの先頭の台詞Lnに対応する予定時点Pnの到来を契機として当該台詞群Gmの各台詞Lnの関連情報Rnが表示される。すなわち、識別情報Dnの受信を要件とせずに関連情報Rnの表示が更新される。したがって、配信装置10が送信した識別情報Dnを適正に受信できない可能性がある環境でも、台詞進行に並行するように各台詞Lnの関連情報Rnを表示することが可能である。
他方、台詞進行が停止している場合(SA4:YES)、時点特定部44は、図7および図8に例示した通り、計時値Cの計時を停止し(SA7)、配信装置10が送信した識別情報Dnを情報受信部50が受信するまで待機する(SA8:NO)。情報受信部50が識別情報Dnを受信すると(SA8:YES)、再生制御部46は、例えば情報テーブルTを参照することで、情報受信部50が受信した識別情報Dnが台詞群Gmの先頭の台詞Lnに対応するか否かを判定する(SA9)。識別情報Dnが台詞群Gmの先頭以外の台詞Lnに対応する場合(SA9:NO)、すなわち、台詞群Gmの先頭以外の台詞Lnの直前に突発的事情Eが発生した場合、再生制御部46による関連情報Rnの表示の更新(SA10)は実行されない。この場合、図7を参照して説明した通り、時点特定部44は、識別情報Dnの受信の時点を新たな予定時点Pnとして計時値Cの計数を再開する(SA11)。
識別情報Dnが台詞群Gmの先頭の台詞Lnに対応する場合(SA9:YES)、すなわち、台詞群Gmの先頭の台詞Lnの直前に突発的事情Eが発生した場合、再生制御部46は、図8を参照して前述した通り、当該台詞群Gmに属する複数の台詞Lnの関連情報Rnを表示装置29に表示させる(SA10)。そして、時点特定部44は、識別情報Dnの受信の時点を新たな予定時点Pnとして計時値Cの計数を再開する(SA11)。
以上に説明した通り、第1実施形態では、各台詞Lnの発生が予定される予定時点Pnの近傍で識別情報Dnを受信したか否かに応じて台詞進行における停止の有無が判定され、台詞進行が停止していると判定された場合には再生制御部46が関連情報Rnの更新を待機する。したがって、台詞進行の再開後には、台詞進行に並行するように各台詞Lnの関連情報Rnを再生することが可能である。また、第1実施形態では、情報テーブルTで指定された時間差が台詞Lnの予定時点Pnから経過した時点が、台詞Ln+1の予定時点Pn+1として特定される。したがって、各予定時点Pnからの経過時間(計時値C)を計数する簡便な構成により各台詞Lnの予定時点Pnを特定できるという利点がある。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同様の要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
図10は、第2実施形態における端末装置20の構成図である。配信装置10は、第1実施形態と同様に、ショーの台詞進行に並行して各台詞Lnの識別情報Dnを音響通信により順次に送信する。図10に例示される通り、第2実施形態における端末装置20の制御装置21は、情報抽出部42および再生制御部46として機能する。情報抽出部42は、第1実施形態と同様に、収音装置25が生成した音響信号Yから識別情報Dnを抽出する。したがって、第2実施形態の端末装置20の収音装置25および情報抽出部42は、第1実施形態と同様に、配信装置10から順次に送信される各台詞Lnの識別情報Dnを受信可能な情報受信部50として機能する。すなわち、放音装置18による台詞Lnの発音毎に当該台詞Lnの識別情報Dnが順次に抽出される。
第2実施形態の記憶装置23が記憶する情報テーブルTには、ショーで再生され得る複数の台詞Lnの各々について識別情報Dn(D1,D2,D3,…)と関連情報Rn(R1,R2,R3,…)とが登録される。再生制御部46は、情報抽出部42が抽出した識別情報Dnに対応する関連情報Rnを情報テーブルTから検索して表示装置29に表示させる。すなわち、第2実施形態では、各台詞Lnの識別情報Dnの受信を契機として、当該台詞Lnの関連情報Rnが表示装置29に順次に表示される。
図11は、第2実施形態における端末装置20の制御装置21が実行する処理のフローチャートである。図11の処理を開始すると、再生制御部46は、情報受信部50が識別情報Dnを受信するまで待機する(SB1:NO)。情報受信部50が識別情報Dnを受信すると(SB1:YES)、再生制御部46は、情報受信部50が受信した識別情報Dnに対応する関連情報Rnを情報テーブルTから検索して表示装置29に表示させる(SB2)。
以上の動作が実行される結果、第2実施形態では、図12に例示される通り、時系列に送信される各台詞Lnの識別情報Dnの受信を契機として当該台詞Lnの関連情報Rnが表示される。他方、例えば突発的事情Eの発生に起因して台詞進行が停止している場合には、配信装置10による識別情報Dnの送信が待機される。したがって、図13に例示される通り、第2実施形態においても、台詞進行の再開後には、台詞進行に並行するように各台詞Lnの関連情報Rnを再生することが可能である。
<変形例>
以上に例示した各態様は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2個以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
(1)前述の各形態では、関連情報Rnを表示装置29に表示したが、関連情報Rnの再生方法は以上の例示に限定されない。例えば、台詞Lnを発音した音声を表す音声信号を関連情報Rnとして台詞Ln毎に記憶装置23に記憶し、情報受信部50が受信した識別情報Dnに対応する関連情報Rnが表す音声を、スピーカやヘッドホン等の放音装置から放音することも可能である。なお、台詞Lnを利用した音声合成で当該台詞Lnの音声を合成することも可能である。以上の説明から理解される通り、再生制御部46は、関連情報Rnを再生装置に再生させる要素として包括される。再生装置は、関連情報Rnを画像として表示する表示装置29、および、関連情報Rnが示す音声を放音する放音装置を包含する。
(2)前述の各形態では、図3を参照して説明した通り、台詞Lnの再生区間の先頭から識別情報Dnを送信したが、台詞Lnの再生区間と識別情報Dnの送信の時点との関係は以上の例示に限定されない。例えば、台詞Lnの再生区間の開始前の時点で識別情報Dnの送信を開始することも可能である。以上の構成によれば、予定時点Pnの直前の時点で台詞進行の停止の有無を判定することが可能である。
(3)前述の各形態では、各台詞Lnを表す文字列を関連情報Rnとして再生したが、関連情報Rnの内容は以上の例示に限定されない。例えば、各台詞Lnを他言語に翻訳した翻訳文の文字列または音声を関連情報Rnとして再生する構成や、ショーを解説する文字列または音声を関連情報Rnとして再生する構成も採用され得る。
また、前述の各形態では、時系列に再生される台詞Lnの関連情報Rnを再生する場合を例示したが、情報提供システム100が利用される場面は、前述の各形態で例示したショーには限定されない。例えば、交通機関(例えば電車,バス),展示施設(例えば博物館,美術館),または観光施設等の各種の施設を案内する音声を時系列で発音する場面でも、前述の各形態で例示した情報提供システム100が利用され得る。以上の例示から理解される通り、情報提供システム100は、時系列に発生する複数の事象(例えば台詞Lnや案内の発音)に並行して送信される各事象の関連情報Rnを提供するためのコンピュータシステムとして包括的に表現される。また、台詞Lnの再生や各種の施設の案内は、時系列的に発生する事象として包括され、前述の各形態で例示した台詞群Gmは、複数の事象を区分した事象群の例示である。例えば同内容を別言語(例えば日本語と外国語)で表現した複数の台詞Lnを表示する場合のように、複数の情報を同時または順次(時系列的)に表示することを、ひとつの事象に含ませることも可能である。
(4)前述の各形態では、各台詞Lnの予定時点Pnの近傍にて情報受信部50が識別情報Dnを受信したか否かに応じて台詞進行の停止の有無を判定したが、各台詞群Gmの先頭以外の台詞Lnについて識別情報Dnを送信する構成は省略され得る。例えば、識別情報Dnを含まない制御信号を所定の間隔(例えば台詞Lnに同期しない任意の周期)で配信装置10から送信する一方、端末装置20では当該間隔で予定時点Pnを順次に特定することも可能である。以上の構成では、停止判定部48は、予定時点Pnの近傍にて情報受信部50が制御信号を受信したか否かに応じて、台詞進行が停止しているか否かを判定する。
(5)前述の各形態では、台詞Lnの音響成分と識別情報Dnの音響成分とを含有する音響信号Xを再生したが、音響信号Xに各台詞Lnの音響成分を含ませない構成も採用され得る。例えば、ショーの出演者の音声を収音した音声信号と、各識別情報Dnの音響成分を表す音響信号とを、ショーの進行に並行して実時間的に混合することで音響信号Xを生成して放音装置に供給することも可能である。また、前述の各形態では、台詞Lnを再生する放音装置18を識別情報Dnの送信に利用したが、台詞Lnの再生用の放音装置とは別個の放音装置から端末装置20に識別情報Dnを送信することも可能である。
(6)前述の各形態では、音波を伝送媒体とする音響通信で識別情報Dnを端末装置20に送信したが、端末装置20に識別情報Dnを送信するための通信方式は音響通信に限定されない。例えば、放音装置18による台詞Lnの放音に同期して、電波や赤外線等の電磁波を伝送媒体とした無線通信で端末装置20に識別情報Dnを送信することも可能である。以上の例示から理解される通り、識別情報Dnの送信には、移動体通信網等の通信網が介在しない近距離無線通信が好適であり、音波を伝送媒体とする音響通信や電磁波を伝送媒体とする無線通信は近距離無線通信の例示である。
(7)前述の各形態では、端末装置20の記憶装置23に事前に記憶された関連情報Rnを再生制御部46が選択的に表示装置29に表示させたが、関連情報Rnの取得先は記憶装置23に限定されない。例えば、複数の関連情報Rnを保持する管理サーバとの間で端末装置20が通信網を介して通信する構成を想定する。以上の構成では、情報抽出部42が抽出した識別情報Dnを指定した情報要求を再生制御部46が管理サーバに送信し、管理サーバは、情報要求で指定された識別情報Dnに対応する関連情報Rnを検索して要求元の端末装置20に送信する。端末装置20の再生制御部46は、管理サーバから受信した関連情報Rnを表示装置29に表示させる。
(8)前述の各形態で例示した端末装置20は、前述の通り、制御装置21とプログラムとの協働で実現される。第1実施形態のプログラムは、コンピュータを、複数の台詞Lnの発生に並行して順次に送信される各台詞Lnの識別情報Dnを受信可能な情報受信部50、複数の台詞Lnの各々の発生が予定される予定時点Pnを順次に特定する時点特定部44、各台詞Lnの予定時点Pnの近傍にて情報受信部50が当該台詞Lnの識別情報Dnを受信したか否かに応じて複数の台詞Lnの進行が停止しているか否かを判定する停止判定部48、および、複数の台詞Lnを時間的に区分した複数の台詞群Gmの各々について、当該台詞群Gmの先頭の台詞Lnに対応する予定時点Pnの到来を契機として、当該台詞群Gmに属する各台詞Lnの関連情報Rnを表示装置29に表示させる再生制御部46として機能させるプログラムであり、再生制御部46は、複数の台詞Lnの進行が停止していると停止判定部48が判定した場合に、表示装置29に表示させる関連情報Rnの更新を待機し、当該判定後に情報受信部50が識別情報Dnを受信すると関連情報Rnの更新を再開する。第2実施形態のプログラムは、コンピュータを、複数の台詞Lnの発生に並行して順次に送信される各台詞Lnの識別情報Dnを受信可能な情報受信部50、および、情報受信部50が受信した識別情報Dnに対応する台詞Lnの関連情報Rnを表示装置29に表示させる再生制御部46として機能させる。
なお、第1実施形態および第2実施形態のプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体や磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体を包含し得る。