JP2020188591A - モータの回転子 - Google Patents

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Abstract

【課題】トルク低下を防ぎつつ振動を抑制し、効率も向上させることができる同期モータの回転子を提供する。【解決手段】界磁巻線を有する同期モータの回転子11において、d軸からある角度θまでを中央領域11A、前記角度θから磁極端までを周辺領域11Bとしたとき、前記中央領域11Aは、ステータ内接円とロータ外端面を構成する外周面との距離であるギャップ長を一定とし、前記周辺領域11Bは、d軸から離れるに従い、ステータ内接円とロータ外端面を構成する外周面との距離であるギャップ長を徐々に大きくするので、トルクリプル(振動・騒音)を抑制できるだけでなく、トルクの低下を低減することができる。【選択図】図3

Description

本発明は、同期モータの回転子に関する。詳しくは、電動車両(電気自動車、ハイブリッド車両、プラグインハイブリッド車両等)用モータにおいて、特にロータに界磁巻線を有する同期モータにおいて、トルク低下を防ぎつつ振動を抑制し、効率も向上させるように改良したものである。
従来技術に係る同期モータの回転子1を図1に示す。図1では、界磁巻線を省略した。上記同期モータの回転子1の一極分1aの拡大図を図2に示す。
図2に示すように、界磁巻線を有する同期モータの振動抑制手法としては、一点鎖線で示すステータ内接円Sに比べてロータ外端面Tを構成する外周面の曲率半径を小さくする手法が一般的に知られている。
この手法によれば、d軸(磁極が作る磁束の方向)が位置するロータ先端から離れるに従って、ステータ内接円Sとロータ外端面Tとの距離であるギャップ長が次第に大きくなる。
なお、特許文献1に示すように、d軸を中心として、ステータ内接円とロータ外端面との隙間(ギャップ長)を非対称とする例もある。
特開平05−252675号公報
上述した手法では、トルクリプル(振動・騒音)を抑制できるが、ステータ内接円Sとロータ外端面Tとの距離であるギャップ長を一定とする場合よりもトルクが低下する、言い換えれば、モータ体格が大きくなる問題があった。
上記課題を解決する第1発明に係る同期モータの回転子は、界磁巻線を有する同期モータの回転子において、d軸からある角度θまでを中央領域、前記角度θから磁極端までを周辺領域としたとき、前記中央領域は、ステータ内接円とロータ外端面を構成する外周面との距離であるギャップ長が一定であり、前記周辺領域は、d軸から離れるに従い、徐々にギャップ長が大きくなることを特徴とする。
上記課題を解決する第2発明に係る同期モータの回転子は、第1発明において、前記周辺領域のロータ外端面は、平面となっていることを特徴とする。
上記課題を解決する第3発明に係る同期モータの回転子は、第1発明において、前記周辺領域のロータ外端面を構成する外周面の曲率半径は、中央領域のロータ外端面の曲率半径より小さいことを特徴とする。
上記課題を解決する第4発明に係る同期モータの回転子は、第1発明において、前記角度θは電気角で、0°<θ≦66°、とすることを特徴とする。
上記課題を解決する第5発明に係る同期モータの回転子は、第4発明において、前記角度θは電気角で、30°≦θ≦60°、とすることを特徴とする。
上記課題を解決する第6発明に係る同期モータの回転子は、第1発明において、ロータ傘部で、かつ、d軸からある角度θ’の位置に、軸方向に貫通する貫通孔を設け、前記角度θ’は電気角で、32°≦θ’≦60°とすることを特徴とする。
本発明によれば、トルクリプル(振動・騒音)を抑制できるだけでなく、トルクの低下を低減することができる。
従来技術に係る同期モータのロータを示す断面図である。 従来技術に係る同期モータのロータの一極分を示す拡大断面図である。 本発明の実施例1に係る同期モータのロータを示す断面図である。 本発明の実施例2に係る同期モータのロータを示す断面図である。 本発明の実施例3に係る同期モータのロータを示す断面図である。 本発明の実施例4に係る同期モータのロータを示す断面図である。 本発明の実施例1に係る解析結果であるトルク変化率を示すグラフである。 本発明の実施例1に係る解析結果であるトルクリプル変化率を示すグラフである。 本発明の実施例4に係る解析結果であるトルク変化率を示すグラフである。 本発明の実施例4に係る解析結果である鉄損変化率を示すグラフである。
本発明について、図面に示す実施例を参照して詳細に説明する。
[実施例1]
本発明の実施例1に係る界磁巻線12を有する同期モータの回転子(一極分)11を図3に示す。
図3に示すように、ロータ先端であるd軸からある角度θまで(中央領域11A)においては、ギャップ長を一定に保つ。つまり、中央領域11Aにおいては、ロータ外端面Tを構成する外周面の曲率半径をステータ内接円Sに比較してごくわずか小さくする、或いは、ほぼ同じとする。即ち、ステータ内接円とロータ外線円とはほぼ等しくする。
更に、角度θから磁極端(q軸)にかけて(周辺領域11B)においては、d軸から離れるに従い、ステータ内接円Sとロータ外端面Tを構成する外周面との距離であるギャップ長を徐々に大きくする。d軸とq軸とは電気的、磁気的に直交する。
詳しくは、角度θから磁極端にかけての周辺領域11Bでは、中央領域11Aよりロータ外端面Tを構成する外周面のR(曲率半径)を小さくした曲面とする。
なお、図3においては、周辺領域11Bのロータ外端面Tを構成する外周面を実線で描き、ロータ外端面Tを外れた部分の円弧を破線で示した。実線及び破線で示す円弧の中心は、d軸から離れた位置にある。
ここで、「ギャップ長」とはステータ内接円Sとロータ外端面Tを構成する外周面との距離である。
このように、周辺領域11Bでギャップ長を徐々に広げることにより、ギャップ円周上の磁束密度分布が正弦波に近づき従来技術と同様に振動や騒音(トルクリプル、電磁加振力)の低減効果がある。
さらに中央領域11Aはギャップ長が一定であるため、界磁磁束経路の磁気抵抗の増加が抑制され、トルクの低下を低減することができる。
本実施例に係る同期モータの解析結果を図7,8に示す。最大ギャップ長(ロータq軸端とステータ内接円Sの距離)は一定としている。
θ=0°は背景技術で説明した通りであり、θ=90°はギャップ長一定(振動対策無し)と同義となる。なお、角度θは、電気角で表す。
解析は負荷(電流値)3段階で行った。
低負荷:常用領域(市街地走行想定)、
中負荷:長時間定格トルク、
高負荷:瞬時最大トルク
グラフはθ=0°(背景技術)を基準とした変化率で示している。
図7に示すように、低負荷、中負荷では角度θ(電気角)を大きくすると、θ=30〜60°程度でトルク最大となり、さらに角度θを大きくするとトルクは下がっていく。図8に示すように、トルクリプルはθを大きくするとθ=30°までは減少し、θ=66°付近までほぼ一定、それより大きくなると急激に増加している。
即ち、角度θの範囲を電気角で30〜66°とすれば、従来技術よりもトルクリプルを低減できる。
さらに、トルクも従来技術や振動対策無しの場合より向上できる。
つまり同じトルクを出力する場合に電流(銅損)を低減できるため、効率向上も期待できる。
図7に示すように、高負荷では低、中負荷とトルク値の傾向が若干異なり、トルクのピークがθ=60〜75°付近に移動している。
界磁電流、電機子電流がともに大きい高負荷時はロータ先端が磁気飽和に近づくためである。図8に示すように、トルクリプルの傾向は負荷によらずθが66°以上で急激に増加する。
よってθを60°付近に設定すれば、トルク値はロータ外周の曲率を変更しない場合と同等のトルクが得られ、トルクリプルは従来技術と同等まで下げることができる。
以上から角度θの範囲は電気角で、
0°<θ≦66°
が好ましく。
より好ましくは、
30°≦θ≦60°
とすれば従来技術より優れた特性となる。
この範囲から、低負荷時の効率(燃費・電費)を優先するか、最大トルクを優先するかで角度θを決定すれば良い。
なお、上記の解析結果は6極72スロットでの結果だが、6極36スロットや8極48スロット等他のコンビネーションでも同等の効果が得られる。
[実施例2]
本発明の実施例2に係る界磁巻線22を有する同期モータの回転子(一極分)21を図4に示す。
図4に示すように、ロータ先端であるd軸からある角度θまで(中央領域21A)においては、ギャップ長を一定に保つ点は、実施例1と共通である。
また、本実施例においても、角度θから磁極端部にかけて(周辺領域21B)においては、d軸から離れるに従い、ステータ内接円Sとロータ外端面Tを構成する外周面との距離であるギャップ長を徐々に大きくするのである点でも、実施例1と共通する。
但し、周辺領域21Bにおいて、ギャップ長を曲線的に大きくするのではなく、直線的に大きくする。つまり、本実施例では、周辺領域21Bのロータ外端面Tが直線状の切欠きをなす平面となっている。
その他は、実施例1と同様である。
なお、中央領域21Aと周辺領域21Bの境界のコーナーに湾曲Rをつけても良い。
本実施例のように、周辺領域21Bのロータ外端面Tが直線状の切欠きとなす平面となっていても、実施例1と同様の効果が期待できる。
[実施例3]
本発明の実施例3に係る界磁巻線32を有する同期モータの回転子(一極分)31を図5に示す。
図5に示すように、ロータ先端であるd軸からある角度θまで(中央領域31A)においては、ギャップ長を一定に保ち、角度θから磁極端(q軸)にかけて(周辺領域31B)においては、d軸から離れるに従い、ステータ内接円Sとロータ外端面Tを構成する外周面との距離であるギャップ長を徐々に大きくする。
詳しくは、角度θから磁極端にかけての周辺領域31Bでは、中央領域31Aよりロータ外端面Tを構成する外周面のR(曲率半径)を小さくした曲面とする。
なお、図5においては、周辺領域11Bのロータ外端面Tを構成する外周面を実線で描き、ロータ外端面Tを外れた部分の円弧を破線で示した。実線及び破線で示す円弧の中心は、d軸である中心線上に位置する。
その他は、実施例1と同様である。
本実施例では、周辺領域11Bのロータ外端面Tを構成する外周面の円弧が、d軸である中心線上に位置する点で実施例1と異なるが、実施例1と同様の効果が期待できる。
[実施例4]
本発明の実施例4に係る界磁巻線(図示省略)を有する同期モータの回転子(一極分)41を図6に示す。
本実施例は、実施例1〜3と同様な構成で、さらにロータコアの界磁巻線部41aより外周側(傘部分)41bで、かつ、d軸から電気角である角度θ’の位置に軸方向に貫通する貫通孔42を設ける。図中では、θ’はθよりも小さい場合を示している。貫通孔42の形状は円だけでなく楕円や三角、菱形等でも良い。
貫通孔42を設けることで磁束が整列され、鉄損を低減できる。さらに、界磁巻線のボビンの位置決めをするガイドの役割も果たす。
本実施例の解析結果を図9、10に示す。図9、10では、ロータ外接円からの距離(径方向位置)を3パターンとしたものである。
A:2.8mm、B:4.3mm、C:5.8mm
結果は貫通孔なしを基準とした変化率で表している。
図9に示すように、トルクは貫通孔の径方向位置によらず似た傾向になっており、θ’が電気角32°以上で貫通孔が無い場合より大きいトルクとなっている。
図10に示すように、鉄損も貫通孔の径方向位置を変えても傾向は同じであり、貫通孔が無い場合より鉄損が低減している。
よって、貫通孔42の位置を電気角で32°以上60°以下とすれば、トルクは向上し鉄損は低減する、つまりモータ効率を向上させることができる。
実施例1〜3と組み合わせればトルクリプルも低減できることが期待できる。
本発明は、同期モータの回転子として広く産業上利用可能なものである。
1 同期モータの回転子
1a 回転子の一極分
11,21,31,41 同期モータの回転子(一極分)
11A,21A,31A 中央領域
11B,21B,31B 周辺領域
12,22,32 界磁巻線
41a 界磁巻線部
41b 傘部分
42 貫通穴

Claims (6)

  1. 界磁巻線を有する同期モータの回転子において、d軸からある角度θまでを中央領域、前記角度θから磁極端までを周辺領域としたとき、前記中央領域は、ステータ内接円とロータ端部を構成する外周面との距離であるギャップ長が一定であり、前記周辺領域は、d軸から離れるに従い、徐々にギャップ長が大きくなることを特徴とする同期モータの回転子。
  2. 請求項1記載の同期モータの回転子において、
    前記周辺領域のロータ外端面は、平面となっていることを特徴とする同期モータの回転子。
  3. 請求項1記載の同期モータの回転子において、
    前記周辺領域のロータ外端面を構成する外周面の曲率半径は、前記中央領域のロータ外端面を構成する外周面の曲率半径より小さいことを特徴とする同期モータの回転子。
  4. 請求項1記載の同期モータの回転子において、
    前記角度θは電気角で、
    0°<θ≦66°、
    とすることを特徴とする同期モータの回転子。
  5. 請求項4記載の同期モータの回転子において、
    前記角度θは電気角で、
    30°≦θ≦60°、
    とすることを特徴とする同期モータの回転子。
  6. 請求項1記載の同期モータの回転子において、
    ロータ傘部で、かつ、d軸からある角度θ’の位置に、軸方向に貫通する貫通孔を設け、
    角度θ’は電気角で、
    32°≦θ’≦60°、
    とすることを特徴とする同期モータの回転子。
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