JP2020172869A - エンジンのピストン - Google Patents

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Abstract

【課題】ピストンがオイル誘導部の位置で破損することを未然に防止する。【解決手段】ピストン5は、気筒2(シリンダ)の内壁面に対向する外周面70と、この外周面70に形成されたオイルリング溝73と、このオイルリング溝73に装着されたオイルリング75と、ピストン5の反スラスト側の領域(高圧領域)に設けられるオイル誘導部74とを備える。オイルリング溝73は、内底面73aと、この内底面73aの上端から伸びる上側面73bと、内底面73aの下端から伸びて上側面73bと対向する下側面73cとで構成される。オイル誘導部74は、オイルリング溝73の下側面73cに形成された凹部であって当該下側面73cの外周端Edから内底面73aの手前側の所定位置までピストン径方向に延びる凹部741からなる。【選択図】図7

Description

本発明は、エンジンのピストンに関する。
ピストンがシリンダ内を往復運動するレシプロ型のエンジンでは、ピストンの外周に形成された溝に、エンジンオイルの余剰分を掻き落とすためのオイルリングが装着されている。オイルリングが装着されたオイルリング溝にはオイル誘導部が設けられ、オイルリングによって掻き落とされたオイルがこのオイル誘導部を通じてピストンの下方に滴下される。
例えば、特許文献1には、オイル誘導部として、ピストン側壁を貫通してシリンダ壁面側とピストン内側とを連通させるオイル戻し孔がオイルリング溝に設けられたピストンが開示されており、当該ピストンには、そのスラスト側及び反スラスト側の各々に、複数のオイル戻し孔が設けられている。なお、スラスト側とは、ピストンのうち、燃焼工程において燃焼圧力によりシリンダ壁面に押し付けられる側を指し、反スラスト側とは、ピストンの径方向においてスラスト側とは反対側を指す。
特開2016−223583号公報
近年、ガソリンエンジンの燃焼態様として、火花点火をきっかけに混合気の一部を火炎伝播により強制的に燃焼(SI燃焼)させ、その他の混合気を自着火により燃焼(CI燃焼)させることを企図した部分圧縮着火燃焼(SPCCI燃焼)が知られている。例えば、特開2018−87566号公報には、主に高回転域でSI燃焼が実行され、それ以外の運転域ではSPCCI燃焼が実行されるように、エンジン各部を制御する技術が開示されている。
この種のエンジンでは、SI燃焼が実行されるべき高回転域(SI領域)での出力及び熱効率(燃費)の向上を図るべく、従来のエンジン(全運転域においてSI燃焼のみが実行されるエンジン)に比して点火時期が進角される傾向がある。ところが、このように点火時期が進角されることで、SI領域において意図しないCI燃焼が起こる場合があり、最悪の場合にはピストンを破損するおそれがある。
「発明を実施するための形態」で詳細に説明するが、これは、例えばピストンのスラスト側が排気ポート側である場合、燃焼室のうち温度の高いスラスト側でCI燃焼が発生し、これに起因して、当該スラスト側から反スラスト側に向かってCI燃焼が伝搬するようにピストン外縁に沿って発生することに起因する。つまり、このCI燃焼による燃焼圧力が反スラスト側においてピストンとシリンダ壁面との間の狭い隙間に伝搬し、オイルリング溝の位置を支点としてピストンの上端部をスラスト側に押圧する力が作用してピストンを破損する場合があるのである。具体的には、ピストンのうち、オイルリング溝の内底面と、これに繋がる側面と、オイル戻し孔の内壁面との3面が交わる位置(境目となる位置)に応力が集中してクラックが発生する場合がある。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされものであり、オイル誘導部においてピストンが破損することを未然に防止することが可能な技術を提供する、ことを目的とする。
本発明の一局面に係るエンジンのピストンは、シリンダの内壁面に沿って上下方向に往復移動するピストンを備えたエンジンの前記ピストンであって、前記シリンダの内壁面に対向する外周面と、前記外周面に形成されて当該外周面の全周に亘って延在するオイルリング溝と、前記オイルリング溝に装着されたオイルリングと、前記オイルリング溝における周方向の複数の位置に設けられて前記オイルリングによって掻き落とされたオイルを誘導する複数のオイル誘導部と、を備え、前記オイルリング溝は、内底面と、この内底面の上端からピストン径方向外向きに伸びる上側面と、前記内底面の下端からピストン径方向外向きに伸びて前記上側面に対向する下側面とで構成され、前記複数のオイル誘導部は、前記外周面のうち周方向における他の領域よりも高い燃焼圧力を受ける高圧領域に設けられる第1オイル誘導部を含み、前記第1オイル誘導部は、前記下側面に形成された凹部であって前記下側面の外周端から前記内底面の手前側の所定位置までピストン径方向に延びる凹部からなるものである。
このピストンによれば、少なくとも高圧領域に設けられる第1オイル誘導部は、オイルリング溝の下側面に形成された凹部であって当該下側面の外周端からオイルリングの内底面の手前側の所定位置までピストン径方向に延びる凹部からなる。このような構造では、オイルリングの内底面と、下側面と、第1オイル誘導部(凹部)の内側面との3面が交わる位置(3面の境目となる位置)が物理的に存在しないため、高圧領域においてピストン上端部を当該高圧領域とは反対側に押圧する力が作用しても応力の集中が抑制される。従って、前記3面が交わる従来のピストンのようなクラックの発生を抑制でき、オイル誘導部においてピストンが破損することを未然に防止することができる。
上記のピストンにおいて、前記凹部は、前記外周端から前記内底面に向かって断面積が小さくなるように形成されているのが好適である。
この構造によれば、オイルリング溝の内底面に相対的に近い位置の第1オイル誘導部(凹部)の占有面積が相対的に遠い位置の当該占有面積よりも小さくなるため、前記押圧力に対するピストンの耐力がより大きくなる。これによりクラック発生がより起き難くなる。
上記の各ピストンにおいて、前記高圧領域は、前記外周面のうち、スラスト側とは径方向における反対側である反スラスト側の領域である。
すなわち、反スラスト側は、燃焼工程においてシリンダ壁面とピストンの外周面との間に燃焼圧力が伝搬してピストン上端部がスラスト側に押圧されるため、上記クラック等の発生リスクが他の部分に比べて高い。そのため、上記のようなピストンの構成は、当該反スラスト側を上記高圧領域とするピストンに有用である。
この場合、前記複数のオイル誘導部は、前記外周面のうち、当該ピストンの径方向におけるスラスト側の領域に設けられる第2オイル誘導部を含み、前記第2オイル誘導部は、オイルリング溝の前記内底面に形成されて前記シリンダの壁面側と当該ピストンの内側とを連通させる貫通孔を有する。
この構造によれば、ピストンの外周面のうち高圧領域よりも低い燃焼圧力を受けるスラスト側の領域では、貫通孔(第2オイル誘導部)を通じてピストン内部へオイルを誘導しながら当該オイルを効率良く滴下させることができ、また、ピストンの外周面のうち高圧領域である反スラスト側の領域では、クラックの発生を抑制しながら凹部(第1オイル誘導部)を通じてオイルを円滑に滴下させることが可能となる。
上記の各ピストンにおいて、当該ピストンの径方向における前記外周端から前記内底面までの距離をL、前記径方向における前記外周端から前記凹部の末端までの距離をRとするとき、前記距離Rと前記距離Lとの比であるR/Lが0.69以上1.0未満であるのが好適である。前記R/Lは、0.70以上であるのがより好適である。
この構造によれば、オイルリング溝の内底面に到達しない範囲でピストンの径方向における前記凹部の長さを可及的に長く確保しながら、すなわちオイルリング溝内のオイルをピストンの外周面側に円滑に誘導できるオイル誘導部を設けながら、前記クラックの発生を抑制することが可能となる。換言すれば、R/Lが0.69未満の場合にはオイルリング溝内にオイルが残留し易くやる一方、R/Lが1以上となると、オイルリングの内底面に孔が形成されて、当該内底面と、下側面と、第1オイル誘導部(凹部)の内側面との3面が交わる部分が存在することとなり、当該部分への応力集中が生じるおそれが出てくる。
なお、燃焼室において前記ピストンの反スラスト側に点火プラグの着火部が配置されている場合には、反スラスト側の燃焼圧力が相対的に高くなるため、反スラスト側においてピストン上端部がスラスト側に押圧され易く、上記クラック等の発生リスクが高い。
従って、上記各態様のピストンの構成は、前記点火プラグの着火部が、燃焼室の中心よりも前記ピストンの反スラスト側に配置されているような場合にも有用となる。
上記の各態様に係るエンジンのピストンによれば、オイル誘導部においてピストンが破損することを抑制することが可能となる。
本発明に係るピストンが適用されるエンジンの全体構成を概略的に示すシステム図である。 上記エンジンが備える1つの気筒の模式的な斜視図である。 上記エンジンの制御系統を示すブロック図である。 上記エンジンの運転領域を燃焼形態の相違によって区分けした運転マップである。 本発明に係るピストンの斜視図である。 上記ピストンの側面図(図5のVI矢視図)である。 上記ピストンの断面図(図6のVII−VII線断面図)である。 オイルリング溝とオイルリングを示すピストンの断面図である。 オイルリングを示す図8のIX矢視図である。 第1オイル誘導部の長さと、応力と、通路面積との関係を示すグラフである。 第1オイル誘導部を示すピストンの要部断面図である。 SI領域でCI燃焼が発生した状況を示す燃焼室内の平面模式図である。 クラックの発生原理を説明するための気筒(シリンダ)及びピストンの断面図である。 ピストンの要部斜視図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
[1.エンジンの全体構成]
図1は、本発明が適用される車両用エンジン(以下、単にエンジンという)の好ましい実施形態を示す図である。この図に示されるエンジンは、走行用の動力源として車両に搭載される4サイクルのガソリン直噴エンジンであり、エンジン本体1と、エンジン本体1に導入される吸気が流通する吸気通路30と、エンジン本体1から排出される排気ガスが流通する排気通路40と、排気通路40を流通する排気ガスの一部を吸気通路30に還流する外部EGR装置50とを備えている。
エンジン本体1は、気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、気筒2を上から閉塞するようにシリンダブロック3の上面に取り付けられたシリンダヘッド4と、気筒2に往復摺動可能に挿入されたピストン5とを有している。エンジン本体1は、典型的には複数の(例えば4つの)気筒を有する多気筒型のものであるが、ここでは簡略化のため、1つの気筒2のみに着目して説明を進める。
ピストン5の上方には燃焼室6が画成されており、この燃焼室6には、ガソリンを主成分とする燃料が、後述するインジェクタ15からの噴射によって供給される。そして、供給された燃料が燃焼室6で空気と混合されつつ燃焼し、その燃焼による膨張力を受けてピストン5が上下方向に往復運動する。
ピストン5の下方には、エンジン本体1の出力軸であるクランク軸7が設けられている。クランク軸7は、コネクティングロッド8を介してピストン5と連結され、ピストン5の往復運動(上下運動)に応じて中心軸回りに回転駆動される。
気筒2の幾何学的圧縮比、つまりピストン5が上死点にあるときの燃焼室6の容積とピストン5が下死点にあるときの燃焼室の容積との比は、後述するSPCCI燃焼(部分圧縮着火燃焼)に好適な値として、13以上30以下、好ましくは14以上18以下の高圧縮比に設定される。幾何学的圧縮比を14以上の高圧縮比に設定することで、燃焼室6内において混合気に圧縮着火が発生し易い環境とすることができる。
シリンダブロック3には、クランク軸7の回転角度(クランク角)およびクランク軸7の回転数(エンジン回転数)を検出するクランク角センサSN1が設けられている。
シリンダヘッド4には、吸気通路30から供給される空気を燃焼室6に導入するための吸気ポート9と、燃焼室6で生成された排気ガスを排気通路40に導出するための排気ポート10と、吸気ポート9の燃焼室6側の開口を開閉する吸気弁11と、排気ポート10の燃焼室6側の開口を開閉する排気弁12とが設けられている。
図2は、1つの気筒2を模式的な斜視図にて示している。本実施形態のエンジンのバルブ形式は、図2に示すように、吸気2バルブ×排気2バルブの4バルブ形式である。すなわち、シリンダヘッド4には、2つの吸気ポート9と、これらの開口を各々開閉する2つの吸気弁11と、2つの排気ポート10と、これらの開口を各々開閉する2つの排気弁12とが設けられている。
吸気弁11および排気弁12は、シリンダヘッド4に配設された一対のカム軸等を含む動弁機構により、クランク軸7の回転に連動して開閉駆動される。
吸気弁11用の動弁機構には、吸気弁11の開閉時期を変更可能な吸気S-VT13が内蔵されている。同様に、排気弁12用の動弁機構には、排気弁12の開閉時期を変更可能な排気S-VT14が内蔵されている。吸気S-VT13(排気S-VT14)は、いわゆる位相式の可変機構であり、電動モータの作動により吸気弁11(排気弁12)の開弁時期および閉弁時期を同時にかつ同量だけ変更する。
シリンダヘッド4には、燃焼室6に燃料(ガソリン)を噴射するインジェクタ15と、インジェクタ15から燃焼室6に噴射された燃料と吸入空気とが混合された混合気に点火する点火プラグ16とが設けられている。この点火プラグ16の着火部16aは、燃焼室6において吸気ポート9に臨む側(反スラスト側)、換言すれば燃焼室6の中心よりも吸気ポート9に近い側に配置されている。
吸気通路30は、吸気ポート9と連通するようにシリンダヘッド4の一側面に接続されている。吸気通路30の上流端から取り込まれた空気(新気)は、吸気通路30および吸気ポート9を通じて燃焼室6に導入される。吸気通路30には、その上流側から順に、吸気中の異物を除去するエアクリーナ31と、吸気の流量を調整する開閉可能なスロットル弁32と、吸気を圧縮しつつ送り出す過給機33と、過給機33により圧縮された吸気を冷却するインタークーラ35と、サージタンク36とが設けられている。
吸気通路30の各部には、吸気の流量を検出するエアフローセンサSN2と、吸気の温度を検出する吸気温センサSN3と、吸気の圧力を検出する吸気圧センサSN4とが設けられている。エアフローセンサSN2および吸気温センサSN3は、吸気通路30におけるエアクリーナ31とスロットル弁32との間の部位に設けられ、当該部位を通過する吸気の流量および温度を検出する。吸気圧センサSN4は、サージタンク36に設けられ、当該サージタンク36内の吸気の圧力を検出する。
過給機33は、エンジン本体1と機械的に連係された機械式の過給機(スーパーチャージャ)である。過給機33としては、例えばリショルム式、ルーツ式、または遠心式といった公知の過給機のいずれかを用いることができる。
過給機33とエンジン本体1との間には、締結/解放を電気的に切り替えることが可能な電磁クラッチ34が介設されている。電磁クラッチ34が締結されると、エンジン本体1から過給機33に駆動力が伝達されて、過給機33による過給が行われる。一方、電磁クラッチ34が解放されると、上記駆動力の伝達が遮断されて、過給機33による過給が停止される。
吸気通路30には、過給機33をバイパスするためのバイパス通路38が設けられている。バイパス通路38は、サージタンク36と後述するEGR通路51とを互いに接続している。バイパス通路38には開閉可能なバイパス弁39が設けられている。
排気通路40は、排気ポート10と連通するようにシリンダヘッド4の他側面に接続されている。燃焼室6で生成された既燃ガスは、排気ポート10および排気通路40を通じて外部に排出される。
排気通路40には触媒コンバータ41が設けられている。触媒コンバータ41には、排気通路40を流通する排気ガス中に含まれる有害成分(HC、CO、NOx)を浄化するための三元触媒41aと、排気ガス中に含まれる粒子状物質(PM)を捕集するためのGPF(ガソリン・パティキュレート・フィルタ)41bとが内蔵されている。
外部EGR装置50は、排気通路40と吸気通路30とを接続するEGR通路51と、EGR通路51に設けられたEGRクーラ52およびEGR弁53とを有している。EGR通路51は、排気通路40における触媒コンバータ41よりも下流側の部位と、吸気通路30におけるスロットル弁32と過給機33との間の部位とを互いに接続している。EGRクーラ52は、EGR通路51を通じて排気通路40から吸気通路30に還流される排気ガス(外部EGRガス)を熱交換により冷却する。EGR弁53は、EGRクーラ52よりも下流側(吸気通路30に近い側)のEGR通路51に開閉可能に設けられ、EGR通路51を流通する排気ガスの流量を調整する。
[2.制御系統]
図3は、エンジンの制御系統を示すブロック図である。本図に示されるPCM100は、エンジン等を統括的に制御するためのマイクロプロセッサであり、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されている。
PCM100には各種センサによる検出信号が入力される。例えば、PCM100は、上述したクランク角センサSN1、エアフローセンサSN2、吸気温センサSN3、吸気圧センサSN4と電気的に接続されており、これらのセンサによって検出された情報(つまりクランク角、エンジン回転数、吸気流量、吸気温、吸気圧)がPCM100に逐次入力されるようになっている。
また、車両には、当該車両を運転するドライバーにより操作されるアクセルペダルの開度(以下、アクセル開度という)を検出するアクセルセンサSN5と、車両の走行速度(以下、車速という)を検出する車速センサSN6と、が設けられており、これらのセンサSN5、SN6による検出信号もPCM100に逐次入力される。
PCM100は、上記各センサからの入力情報に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつエンジンの各部を制御する。すなわち、PCM100は、吸気S-VT13、排気S-VT14、インジェクタ15、点火プラグ16、スロットル弁32、電磁クラッチ34、バイパス弁39、EGR弁53等と電気的に接続されており、上記演算等の結果に基づいてこれらの機器にそれぞれ制御用の信号を出力する。
[3.運転状態に応じた制御]
図4は、エンジンの回転数/負荷に応じた制御の相違を説明するための運転マップである。本図に示すように、エンジンの運転領域は、燃焼形態の相違によって2つの運転領域A1,A2に大別される。それぞれ第1運転領域A1、第2運転領域A2とすると、第2運転領域A2は、回転数が高い高速領域であり、第1運転領域A1は、第2運転領域A2以外の残余の領域、つまり回転数が低いか中程度の低・中速領域である。これら第1・第2運転領域A1,A2では、それぞれ次のような燃焼制御が実行される。
<第1運転領域>
エンジンの低・中速領域である第1運転領域A1では、SI燃焼とCI燃焼とを組み合わせた部分圧縮着火燃焼(以下、これをSPCCI燃焼という)が実行される。SI燃焼とは、点火プラグ16から発生する火花により混合気に点火し、その点火点から周囲へと燃焼領域を拡げていく火炎伝播により混合気を強制的に燃焼させる燃焼形態のことである。CI燃焼とは、ピストン5の圧縮等により十分に高温・高圧化された環境下で混合気を自着火により燃焼させる燃焼形態のことである。そして、これらSI燃焼とCI燃焼とを組み合わせたSPCCI燃焼とは、混合気が自着火する寸前の環境下で行われる火花点火により燃焼室6内の混合気の一部をSI燃焼させ、当該SI燃焼の後に(SI燃焼に伴うさらなる高温・高圧化により)燃焼室6内の他の混合気を自着火によりCI燃焼させる、という燃焼形態のことである。なお、「SPCCI」は「Spark Controlled Compression Ignition」の略である。
SPCCI燃焼では、SI燃焼による熱発生とCI燃焼による熱発生とがこの順に連続して発生する。このSI燃焼とCI燃焼との比率を運転条件に応じてコントロールすることがSPCCI燃焼を安定させる上で重要となる。当実施形態では、SPCCI燃焼(SI燃焼およびCI燃焼)による全熱発生量に対するSI燃焼による熱発生量の割合であるSI率が適正な値になるようにエンジンの各部が制御される。
SPCCI燃焼が行われる第1運転領域A1では、このSI率が予め定められた目標値に一致するように、エンジンの各部が制御される。すなわち、第1運転領域A1では、エンジン負荷・回転数が異なる種々の条件ごとに、SI率の目標値である目標SI率がそれぞれ定められている。そして、点火プラグ16による火花点火の時期(点火時期)、インジェクタ15からの燃料の噴射量/噴射時期、およびEGR率(外部EGR率および内部EGR率)といった複数の制御量が、上記目標SI率を実現可能な組合せとなるように制御される。なお、外部EGR率とは、燃焼室6内の全ガスのうち外部EGRガス(EGR通路51を通じて燃焼室6に還流される排気ガス)が占める重量割合のことであり、内部EGR率とは、燃焼室6内の全ガスのうち内部EGRガス(内部EGRにより燃焼室6に残留する既燃ガス)が占める重量割合のことである。
例えば、点火時期および燃料の噴射量/噴射時期は、上記目標SI率などを考慮して予め定められたマップにより決定される。すなわち、マップには、エンジン負荷・回転数の条件ごとに、上記目標SI率を実現するのに適した点火時期および燃料の噴射量/噴射時期がそれぞれ記憶されている。PCM100は、このマップに記憶された点火時期および噴射量/噴射時期に従って、インジェクタ15および点火プラグ16を制御する。
一方、外部EGR率および内部EGR率は、所定のモデル式を用いた演算により決定される。すなわち、PCM100は、燃焼サイクルごとに、上記目標SI率を実現するために火花点火の時点で必要とされる筒内温度(目標筒内温度)を所定のモデル式を用いて算出するとともに、この算出した目標筒内温度に基づいて、EGR弁53の開度および吸・排気弁11,12のバルブタイミングを決定する。より具体的に、PCM100は、吸気温センサSN3により検出される吸入空気(新気)の温度と、燃焼室6の圧縮が実質的に開始される時点である吸気弁11の閉弁時期(IVC)とを含む各種パラメータを、当該パラメータを入力要素とする上記モデル式に代入することにより、上記目標筒内温度を実現するのに必要な外部EGR率および内部EGR率を算出する。そして、算出された外部EGR率を実現するのに必要なEGR弁53の開度を目標開度として算出し、この目標開度が実現されるようにEGR弁53を制御する。
なお、上記第1運転領域A1においては、図4に示される過給ラインTの下側領域で過給機33がOFF状態とされ、過給ラインTの上側領域で過給機33がON状態とされる。過給機33がOFF状態とされる過給ラインTの下側領域、つまり第1運転領域A1の中低負荷側の領域では、電磁クラッチ34が解放されて過給機33とエンジン本体1との連結が解除されるとともに、バイパス弁39が全開とされることにより、過給機33による過給が停止される。一方、過給機33がON状態とされる過給ラインTの上側領域、つまり第1運転領域A1の高負荷側の領域では、電磁クラッチ34が締結されて過給機33とエンジン本体1とが連結されることにより、過給機33による過給が行われる。
<第2運転領域>
第1運転領域A1よりも回転数が高い第2運転領域A2では、通常のSI燃焼が実行される。例えば、少なくとも吸気行程の一部と重複する所定期間にわたりインジェクタ15から燃料が噴射されるとともに、圧縮行程後期に点火プラグ16による火花点火が実行される。そして、この火花点火をきっかけにSI燃焼が開始され、燃焼室6内の混合気の全てが火炎伝播により燃焼する。なお、第2運転領域A2では、その全領域で過給機33がON状態とされる。
[4.ピストンの構造]
続いて、図5〜図7を参照して、ピストン5の構造について説明する。図5は、ピストンの斜視図、図6は、ピストンの側面図(図5のVI矢視図)、図7は、ピストンの断面図(図6のVII−VII線断面図)である。各図には、エンジン本体1のフロント側、リア側という意味においてF側、R側との標記が付され、吸気ポート9及び排気ポート10と各々対向する側であるという意味においてIN側、EX側との表記が付されている。
ピストン5は、ピストンヘッド5Aと、ピストンヘッド5Aの外周が下方に延設されてなる一対のスカート部5Sa、5Sbとを含む。ピストンヘッド5Aは円柱体からなり、燃焼室6の壁面の一部(底面)を形成する冠面60を上面に備えると共に、気筒2の内壁面と摺接する外周面70とを備える。ピストンヘッド5Aの下方には、ピン孔を区画するピストンボス5Bが設けられている。ピストンボス5Bの前記ピン孔には、コネクティングロッド8との連結のためのピストンピンが挿通される。
前記一対のスカート部5Sa、5Sbのうち、一方側のスカート部5Saは、ピストンヘッド5Aの外周面のうちスラスト側に設けられ、他方側のスカート部5Sbは、ピストンヘッド5Aの外周面のうち反スラスト側に設けられている。これらスカート部5Sa、5Sbが気筒2の内壁面に摺接することで、ピストン5の往復運動の際の首振り揺動が抑制される。なお、スラスト側とは、ピストン5のうち、燃焼工程において燃焼圧力により気筒2の壁面(シリンダ壁面)に押し付けられる側を指し、反スラスト側とは、ピストン5の径方向においてスラスト側とは反対側(周方向に180°離間した側)を指す。当例では、図2に示す通り、ピストン5のうち、排気ポート10に臨む側がスラスト側であり、吸気ポート9に臨む側が反スラスト側である。
ピストンヘッド5Aの前記冠面60は、ペントルーフ型の燃焼室天井面と対向する面である。冠面60は、その径方向の概ね中央部分に配置された椀状のキャビティ61を含む。キャビティ61は、インジェクタ15から燃料の噴射を受ける部分であって、冠面60が下方に凹設された部分である。
冠面60のうちキャビティ61を囲む外周部分には、F側凸部62F、R側凸部62R、IN側平面部63、EX側平面部64、IN側斜面部65及びEX側斜面部66が配置されている。F側凸部52Fはキャビティ51のF側に、R側凸部52RはR側に、各々隣接する凸面であり、各々燃焼室天井面のペントルーフ形状に沿う山型の形状を有している。IN側平面部63はキャビティ61のIN側に、EX側平面部64はEX側に、各々位置する平面である。IN側斜面部65は、キャビティ61のIN側端縁とIN側平面部63との間に配置された斜面である。EX側斜面部66は、キャビティ61のEX側端縁とEX側平面部64との間に配置された斜面である。
ピストンヘッド5Aの前記外周面70には、ピストンリングが嵌め込まれるリング溝が複数備えられている。具体的には、冠面60に近い側から順に、第1コンプレッションリング溝71、第2コンプレッションリング溝72及びオイルリング溝73が形成されている。各リング溝71〜73は、互いに平行に外周面70の全周に亘って形成されている。
第1、第2のコンプレッションリング溝には、図外のコンプレッションリング(トップリング、セカンドリング)が装着され、前記オイルリング溝73にはオイルリング75(図8に示す)が装着されている。
コンプレッションリングは、燃焼室6で発生した燃焼ガスがクランク室側に漏洩しないようにピストン5と気筒2の内壁面との間をシールするものである。オイルリング75は、気筒2の内壁面に付着した余分はオイルを掻き落として気筒2の内壁面のオイル量をコントロールするものある。
図示を省略するが、コンプレッションリング(トップリング、セカンドリング)は、各々気筒軸方向に偏平なリングからなる。一方、オイルリング75は、いわゆる3ピース型のオイルリングからなる。
図8は、オイルリング溝73とオイルリング75を示すピストン5の要部断面図であり、図9は、オイルリング75を示す図8のIX矢視図である。図8及び図9に示すように、オイルリング75は、上下一対のサイドレール76と、これらサイドレール76の間に介設されて当該サイドレール76をピストン5の径方向外側へ付勢するスペーサエキスパンダ77とを備えている。各サイドレール76は、気筒軸方向偏平なリングであり、スペーサエキスパンダ77は、周方向に亘って規則的に上下に変化する側面視波形の形状を有するリングである。スペーサエキスパンダ77には、各サイドレール76の内周部に当接して当該サイドレール76を径方向外側に押圧する傾斜面を備えた耳部77aが形成されている。これにより各サイドレール76が気筒2の内壁面に押し付けられている。
オイルリング溝73は、図8に示すように、内底面73aと、この内底面73aの上端からピストン5の径方向外向きに伸びる上側面73bと、前記内底面73aの下端からピストン5の径方向外向きに伸びて前記上側面73aに対向する下側面73cとで構成されている。オイルリング溝73には、オイルリング75によりオイルリング溝73内に掻き落されたたオイルを下方(クランク室側)に滴下させるために誘導するオイル誘導部74が設けられている。
オイル誘導部74は、オイルリング溝73の周方向における複数の位置に設けられている。詳しくは、図7に示すように、ピストン5の中心軸回りにEX側、IN側、F側、R側に対応する90°間隔の4つの領域Re1〜Re4(EX側領域Re1、IN側領域Re2、F側領域Re3、R側領域Re4という)を規定した場合に、各領域Re1〜Re4に各々2つのオイル誘導部74が設けられている。F側領域Re3の2つのオイル誘導部74は、ピストン5とコネクティングロッド8とを連結する前記ピストンピンの中心軸Ax1を境にその両側の互いに対象な位置に設けられており、R側領域Re4の2つのオイル誘導部74も同様に前記中心軸Ax1を境にその両側の互いに対象な位置に設けられている。
また、EX側領域Re1の2つのオイル誘導部74は、前記中心軸Ax1に直交する直交軸Ax2を境にその両側の互いに対象な位置に設けられており、IN側領域Re2の2つのオイル誘導部74も同様に前記直交軸Ax2を境にその両側の互いに対象な位置に設けられている。なお、EX側領域Re1の2つのオイル誘導部74は、ピストン5の周方向において、EX側のスカート部5Saの両端よりも内側の位置に設けられており、IN側領域Re2の2つのオイル誘導部74は、ピストン5の周方向において、IN側のスカート部5Sbの両端よりも内側の位置(図5、図6参照)に設けられている。
ここで、図7に示すように、前記複数のオイル誘導部74のうち、IN側領域Re2(すなわち反スラスト側)の各オイル誘導部74(本発明の第1オイル誘導部に相当する)は、オイルリング溝73の下側面73cに形成された断面半円形状の凹部741からなる。
この凹部741は、下側面73cの外周端Edから内底面73aの手前側の所定位置までピストン5の径方向に延びている。なお、オイルリング溝73の下側面73cと内底面73aとの間に明確な境界線(交差線)が存在する場合には、当該凹部741は、オイルリング溝73の下側面73cの外周端Edから境界線(交差線)の手前側の所定位置まで延びている、と表現することができる。
図7及び図8に示すように、凹部741は、外周端Ed側からオイルリング溝73の内底面73a側に向かって先細りに形成されている。詳しくは、凹部741は、一定幅を保って外周端Edから内底面73a側に向かって延びるストレート部741aと、その末端(先端)に繋がり、当該末端から内底面73aに向かって先窄まりとなる先窄まり部741bとを有する。
一方、IN側領域Re2以外のEX側領域Re1、F側領域Re3及びR側領域Re4の各オイル誘導部74(本発明の第2オイル誘導部に相当する)は、オイルリング溝73の下側面73cに形成されてピストン5の径方向に延びる断面半円形の凹部742と、この凹部742に連続してオイルリング溝73の内底面73aに形成された貫通孔743とを備えている。EX側領域Re1、F側領域Re3及びR側領域Re4の各オイル誘導部74は、貫通孔743を通じて気筒2の壁面側とピストン5の内側の空間Spとを連通させる。
[5.作用効果]
上記のようなピストン5によると、気筒2内を上死点から下死点に向かって移動するときに、オイルリング75が気筒2の内壁面に摺接し、ピストン5と気筒2の内壁面との間に存在する余分なオイルが掻き落とされる。掻き落とされたオイルは、上側のサイドレール76とスペーサエキスパンダ77との間や、下側のサイドレール76と下側面73cとの隙間を介してオイルリング溝73内に導入された後、オイル誘導部74を通じてクランクケース側に滴下される。
この際、EX側領域Re1、F側領域Re3及びR側領域Re4については、オイルリング溝73内のオイルが、主にオイル誘導部74(すなわち貫通孔743)を通じてピストン5の内側の空間Spに誘導され、当該空間Sp内の壁面を伝ってクランクケース内に滴下される。一方、IN側領域Re2については、オイルリング溝73内のオイルが、オイル誘導部74(すなわち凹部741)を通じてピストン5の外周面70側に戻され、当該外周面70を伝ってクランクケース内に滴下されることとなる。
上記のピストン5では、このように、IN側領域Re2のオイル誘導部74がその他の領域Re1、Re3,Re4のオイル誘導部74とは異なり、貫通孔(743)を備えない凹部741のみの構造となっている。当該ピストン5では、このような構成により、SI燃焼が実行されるべき第2運転領域A2において意図しないCI燃焼が発生したような場合でも、当該ピストン5が破損することが抑制され、高度な耐久性が達成される。以下、この点について図12〜図14を参照しつつ説明する。
図12は、第2運転領域A2(SI領域)でCI燃焼が発生した場合の状況を示す燃焼室6内の平面模式図であり、図13は、クラックの発生原理を説明するための気筒2(シリンダ)及びピストン5の断面図であり、図14は、ピストンの要部斜視図である。
なお、図13及び図14では、説明の便宜上、IN側領域Re2のオイル誘導部74が凹部742と貫通孔743とを備えたものと仮定して図示している。
上記の通り、エンジン本体1においては、第1運転領域A1よりも回転数が高い第2運転領域A2ではSI燃焼が実行される。この第2運転領域A2では、少なくとも吸気行程の一部と重複する所定期間にわたりインジェクタ15から燃料が噴射されるとともに、圧縮行程後期に点火プラグ16による火花点火が実行される。この火花点火をきっかけにSI燃焼が開始され、燃焼室6内の混合気の全てが火炎伝播により燃焼する。ところが、SI燃焼が主にピストン中央部のキャビティ61内で進むことで、ピストン5の周縁部に未燃ガスが発生し、温度が比較的高くなる排気ポート10側においてこの未燃ガスが自己着火し意図しないCI燃焼が発生する場合がある。排気ポート10側でCI燃焼が発生すると、その燃焼熱によりピストン5の周縁部の未燃ガスが連鎖的に自己着火し、図12に示すように、排気ポート10側から吸気ポート9側、すなわちスラスト側から反スラスト側に向かってCI燃焼が伝搬するようにピストン外縁に沿って発生する場合がある。
そして、ピストン5の両側を各々伝搬してきたCI燃焼による燃焼圧力が反スラスト側で合流してピストン5と気筒2の内壁面との隙間に伝搬し、図13に示すように、反スラスト側、すなわちIN側領域Re2におけるオイルリング溝73の位置を支点としてピストン5の上端部をスラスト側に押圧力F1で押圧する。ここで、IN側領域Re2のオイル誘導部74が、図14に示すように、その他の領域Re1、Re3,Re4のオイル誘導部74と同様に凹部742と貫通孔743とを備えていると仮定すると、前記押圧力F1によって、オイルリング溝73の内底面73aと、これに繋がる下側面73cと、オイル誘導部74の内壁面74a(すなわち凹部742及び貫通孔743の内壁面)との3面が交わる位置、換言すれば3面の境目となる位置(図14中の丸枠で示す位置)に応力が集中し、当該位置にクラックが発生する場合がある。
しかし、上記実施形態のピストン5のIN側領域Re2のオイル誘導部74は、実際には、図5〜図7に示した通り、その他の領域Re1、Re3,Re4のオイル誘導部74とは異なり貫通孔743を備えておらす、しかも、凹部741は、オイルリング溝73の下側面73cのうち、その外周端Edから内底面73aの手前側の所定位置までにしか設けられていない。つまり、この実施形態のピストン5によれば、オイルリング溝73の内底面73aと、これに繋がる下側面73cと、オイル誘導部74の内壁面(凹部741の内壁面)との3面が交わるような位置が物理的に存在しない。従って、上記のような意図しないCI燃焼の発生により、ピストン5のIN側領域Re2の上端部がスラスト側に押圧力F1で押圧されたとしても応力の集中が抑制される。従って、上記クラックの発生が抑制され、これによりピストン5の耐久性が高められる。
なお、上記実施形態では、燃焼室6においてピストン5のIN側、すなわち燃焼室6の中心よりも反スラスト側に点火プラグ16の着火部16aが配置されており、上記のような意図しないCI燃焼の発生に拘わらず(SI燃焼においても)、反スラスト側の燃焼圧力がスラスト側の燃焼圧力に比して高くなる傾向がある。そのため、反スラスト側においてピストン上端部がスラスト側に押圧され易く、上記クラック等の発生リスクが少なからずあるが、このようなクラックの発生も効果的に抑制される。
また、上記実施形態によれば、IN側領域Re2のオイル誘導部74である前記凹部741は、外周端Ed側からオイルリング溝73の内底面73a側に向かって先細りに形成されている。このような凹部741の形状によれば、オイルリング溝73の内底面73aに相対的に近い位置における当該凹部741の占有面積が相対的に遠い位置の占有面積よりも小さくなるため、前記押圧力F1に対するピストン5の耐力がより大きくなる。従って、この点でもピストン5の耐久性が高められる。
特に、前記凹部741は、一定の幅を保って外周端Edから内底面73a側に向かって延びるストレート部741aと、その末端に繋がる先窄まり部741bとで構成されており、先細りでありながらもストレート部741aの部分によって比較的大きなオイルの通路面積が確保される。従って、ピストン5の耐久性向上に寄与する一方で、オイルリング溝73内のオイルを、オイル誘導部74(凹部741)を通じて円滑に外周面70側に誘導することができる。
図10は、図11に示すように、オイルリング溝73の下側面73cの外周端Edから内底面73aまでの距離をL(mm)、同外周端Edから凹部741の末端(先端)までの距離をR(mm)としたときの、距離Lに対する距離Rの比(R/L)と、凹部741により形成されるオイルの通路面積(mm)と、ピストン5に働く応力(MPa)との関係を示したグラフである。距離R、Lは何れもピストン5の径方向の距離であり、図10中のR/Lの値が1を超える範囲は、オイルリング溝73の内底面73aに、凹部741に連続して孔が形成されていることを示している。
通路面積は、スペーサエキスパンダ77の内側端面の位置Pi(図8参照)における通路断面積(凹部741の内部空間の断面積)である。従って、オイルの通路面積は、凹部741の前記距離Rが前記位置Piに達した後の所定の範囲内では漸増し、凹部741のストレート部741aの先端が前記位置Piを超える長さになると一定となる。
応力は、オイル誘導部74の近傍であってかつオイルリング溝73における内底面73aと下側面73cとの境界付近に作用する応力である。同図に示すように、応力は、凹部741の前記距離Rが長くなるに伴い大きくなる。これは距離Rが伸びて前記境界付近に凹部741が形成されることで応力集中し易くなるためと考えられる。
ところで、オイルリング溝73に溜まったオイルは、図8の白抜き矢印に示すように凹部741(オイル誘導部74)を通じてピストン5の外周面70側に誘導される。そのため、当該誘導性を考慮すると、凹部741による通路面積は大きく、又凹部741の前記距離Rは長いのが望ましい。一方、応力集中によるピストン5の耐力低下を考慮すると、凹部741による通路面積は小さく、又凹部741の距離Rは、距離L未満であるのが望ましい。これらの点を総合的に勘案し、上記実施形態のピストン5において、IN側領域Re2のオイル誘導部74を構成する凹部741については、前記R/Lが、0.69、好ましくは0.70以上1.0未満の範囲に設定されている。これにより、応力集中によるピストン5の著しい耐力低下を伴うことなく、オイルの誘導性が高度に達成されている。
[6.変形例等]
上述した実施形態のピストン5は、本発明に係るエンジンのピストンの好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、ピストン5の周方向おける各域Re1〜Re4には各々2つのオイル誘導部74が設けられているが、各域Re1〜Re4のオイル誘導部74の数や配置は実施形態に限定されるものではない。例えば各域Re1〜Re4のオイル誘導部74は3つ以上であってもよいし、また、各域Re1〜Re4のオイル誘導部74の数は互いに異なっていてもよい。
また、上記実施形態では、IN側領域Re2のオイル誘導部74を構成する凹部741は、ストレート部741aとその末端(先端)に繋がる先細り部741bとを有しているが、ストレート部741aのみを有する形状であってもよい。また、凹部741は断面円形状であるがそれ以外の形状であってもよい。
1 エンジン本体
2 気筒
5 ピストン
60 冠面
70 外周面
71 第1コンプレッションリング
72 第2コンプレッションリング
73 オイルリング溝
73a 内底面
73b 上側面
73c 下側面
74 オイル誘導部
741 凹部
741a ストレート部
741b 先窄まり部
75 オイルリング

Claims (7)

  1. シリンダの内壁面に沿って上下方向に往復移動するピストンを備えたエンジンの前記ピストンであって、
    前記シリンダの内壁面に対向する外周面と、
    前記外周面に形成されて当該外周面の全周に亘って延在するオイルリング溝と、
    前記オイルリング溝に装着されたオイルリングと、
    前記オイルリング溝における周方向の複数の位置に設けられて前記オイルリングによって掻き落とされたオイルを誘導する複数のオイル誘導部と、を備え、
    前記オイルリング溝は、内底面と、この内底面の上端からピストン径方向外向きに伸びる上側面と、前記内底面の下端からピストン径方向外向きに伸びて前記上側面に対向する下側面とで構成され、
    前記複数のオイル誘導部は、前記外周面のうち周方向における他の領域よりも高い燃焼圧力を受ける高圧領域に設けられる第1オイル誘導部を含み、
    前記第1オイル誘導部は、前記下側面に形成された凹部であって前記下側面の外周端から前記内底面の手前側の所定位置までピストン径方向に延びる凹部からなる、ことを特徴とする、エンジンのピストン。
  2. 請求項1に記載のエンジンのピストンにおいて、
    前記凹部は、前記外周端から前記内底面に向かって断面積が小さくなるように形成されている、ことを特徴とする、エンジンのピストン。
  3. 請求項1又2に記載のエンジンのピストンにおいて、
    前記高圧領域は、前記外周面のうち、スラスト側とは径方向の反対側である反スラスト側の領域である、ことを特徴とする、エンジンのピストン。
  4. 請求項3に記載のエンジンのピストンにおいて、
    前記複数のオイル誘導部は、前記外周面のうち、スラスト側の領域に設けられる第2オイル誘導部を含み、
    前記第2オイル誘導部は、オイルリング溝の前記内底面に形成されて前記シリンダの壁面側と当該ピストンの内側とを連通させる貫通孔を有する、ことを特徴とする、エンジンのピストン。
  5. 請求項1乃至4の何れか一項に記載のエンジンのピストンにおいて、
    当該ピストンの径方向における前記外周端から前記内底面までの距離をL、前記径方向における前記外周端から前記凹部の末端までの距離をRとするとき、前記距離Rと前記距離Lとの比であるR/Lが0.69以上1.0未満である、ことを特徴とする、エンジンのピストン。
  6. 請求項5に記載のエンジンのピストンにおいて、
    前記R/Lは0.70以上である、ことを特徴とする、エンジンのピストン。
  7. 請求項1乃至6の何れか一項に記載のエンジンのピストンにおいて、
    前記エンジンは点火プラグを備え、
    前記点火プラグの着火部は、燃焼室の中心よりも前記ピストンの反スラスト側に配置されている、ことを特徴とする、エンジンのピストン。
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