JP2020169117A - 切削工具、及びセラミックス焼結体 - Google Patents

切削工具、及びセラミックス焼結体 Download PDF

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恵人 小嶋
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Abstract

【課題】アルミナ系工具、窒化珪素系工具よりも耐摩耗性・耐欠損に優れることに加えて、欠損時の損傷形態をフレーキング損傷に抑制することで、寿命を向上できる切削工具を提供する。【解決手段】切削工具1は、硬質相を15体積%以上97体積%以下含むとともに、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びサイアロンからなる群より選択される少なくとも1種を含むセラミックス焼結体2から構成される。硬質相には、すくい面3に沿った方向に圧縮応力が残留し、かつ、圧縮応力の方向と垂直な方向に引張応力が残留している。引張応力は、30MPa以上300MPa以下であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、切削工具、及びセラミックス焼結体に関する。
セラミックス材料は、鋳鉄高速加工用の切削工具として応用されている。この高速加工に用いられる切削工具として、アルミナ系工具、窒化珪素系工具が用いられており、耐摩耗性能及び耐欠損性能の向上に対し、下記の取り組みがなされている。
まず、アルミナ系工具について説明する。アルミナの粒成長抑制成分として添加される炭化チタン等の硬質分散粒子を添加した黒セラミック系工具は、硬度・強度に優れ、白セラミック系工具よりも耐摩耗性に優れた工具となっている(特許文献1参照)。また、アルミナに炭化タングステン、ジルコニアを添加した工具は、高強度・高硬度なことに加えて、熱伝導率に優れ、難削材である耐熱合金加工への応用が提案されている(特許文献2参照)。
次に、窒化珪素系工具について説明する。窒化珪素系工具は、靱性が高く、かつ熱膨張係数が小さいため、耐欠損性に優れ、鋳鉄の仕上げから粗加工用途に使用されている。(特許文献3参照)
特開平3−290356号公報 国際公開第2015/019391号公報 特開2006−175561号公報
しかし、アルミナ系工具については、以下の課題がある。すなわち、アルミナ系工具は、耐摩耗性に優れた工具であるが、靱性が低く耐欠損性に劣る。このため、アルミナ系工具の使用用途は仕上げ加工等、負荷の少ない加工用途に限られる。特許文献1の技術においては、炭化チタンの粒成長抑制効果によってアルミナの高強度化がなされているものの、依然として耐欠損性に課題があり、加工領域は仕上げ加工領域に限られる。
窒化珪素系工具については、以下の課題がある。すなわち、窒化珪素系工具は、耐欠損性に優れた工具であるが、被削材との反応性が高く、耐摩耗性に劣る。窒化珪素系工具は、仕上げ加工用途では、アルミナ系工具やCBN工具よりも耐摩耗性に劣るため、加工用途は粗加工や断続加工に限られている。
これらセラミック系の既存工具は、上記の様な課題に加えて、脆性材料であるために工具の刃先脱落による欠損が生じやすい。このような欠損形態では、再研磨による工具の再利用は不可能である。
本発明は上記の課題を鑑みてなされたものであり、アルミナ系工具、窒化珪素系工具よりも耐摩耗性・耐欠損性に優れることに加えて、欠損時の損傷形態をフレーキング損傷に抑制することで、寿命を向上できる切削工具を提供するものである。本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
〔1〕硬質相を15体積%以上97体積%以下含むとともに、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びサイアロンからなる群より選択される少なくとも1種を含むセラミックス焼結体から構成される切削工具であって、
前記硬質相には、すくい面に沿った方向に圧縮応力が残留し、かつ、前記圧縮応力の方向と垂直な方向に引張応力が残留しており、
前記引張応力は、30MPa以上300MPa以下であることを特徴とする切削工具。
〔2〕前記セラミックス焼結体の表面には、Tiの炭化物、Tiの窒化物、Tiの炭窒化物、Tiの炭酸化物、Tiの窒酸化物、及びTiの炭窒酸化物からなる少なくとも1種の表面被覆層が形成されていることを特徴とする、〔1〕に記載の切削工具。
〔3〕前記硬質相は、炭化タングステンまたは炭窒化チタンを主成分とする、〔1〕または〔2〕に記載の切削工具。
〔4〕硬質相を15体積%以上97体積%以下含むとともに、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びサイアロンからなる群より選択される少なくとも1種を含むセラミックス焼結体であって、
前記硬質相には、圧縮応力が残留し、かつ、前記硬質相には、前記圧縮応力の方向と垂直な方向に、引張応力が残留しており、
前記引張応力は、30MPa以上300MPa以下であることを特徴とするセラミックス焼結体。
〔5〕前記硬質相は、炭化タングステンまたは炭窒化チタンを主成分とする、〔4〕に記載のセラミックス焼結体。
〔1〕の効果
切削工具が、特定割合の硬質相を含み、かつ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びサイアロンからなる群より選択される少なくとも1種を含むセラミックス焼結体から構成されることで、切削工具の機械特性が向上して、切削工具の耐摩耗性能及び耐欠損性能が向上する。
硬質相には、すくい面に沿った方向に圧縮応力が残留している。これにより、硬質相を構成する粒子(特に、逃げ面を構成する粒子)の脱粒を抑制できるため、切削工具の耐摩耗性能が向上する。
加えて、圧縮応力の垂直方向に引張応力が働くことで、すくい面の近傍にて生じやすいクラックの進展方向をすくい面に沿った方向に誘導できる。
これにより、工具欠損時の損傷形態をフレーキング損傷に抑制することができる。このように、工具欠損時の損傷形態がフレーキング損傷に抑制されると、切削工具は再研磨によって再利用可能となる。つまり、切削工具を長寿命化できる。
引張応力が、30MPa以上300MPa以下の範囲内にあることで、耐欠損性能を維持したまま、欠損方向の誘導効果が極めて良好に得られる。
〔2〕の効果
表面に、特定の表面被覆層が形成されていることで、表面の硬質化、及び表面における硬質相を構成する粒子の酸化を抑制でき、切削工具の耐摩耗性能を向上できる。
〔3〕の効果
硬質相の主成分を、特に硬度に優れる炭化タングステンまたは炭窒化チタンとすることで、切削工具の耐摩耗性を向上できる。
〔4〕の効果
上記セラミックス焼結体は、機械的特性に優れ、切削工具に好適に利用できる。
〔5〕の効果
硬質相の主成分を、特に硬度に優れる炭化タングステンまたは炭窒化チタンとすることで、上記セラミックス焼結体の耐摩耗性を向上できる。
セラミックス切削工具の一例の斜視図である。 セラミックス焼結体の製造方法を説明するグラフである。 残留応力が調整されるメカニズムを説明する模式図である。 残留応力が調整されるメカニズムを説明する模式図である。 残留応力が調整されるメカニズムを説明する模式図である。 残留応力が調整されるメカニズムを説明する模式図である。 セラミックス切削工具の一例の断面図である。
以下、本発明を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「〜」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。
1.切削工具1
切削工具1は、硬質相を15体積%以上97体積%以下含むとともに、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びサイアロンからなる群より選択される少なくとも1種を含むセラミックス焼結体2から構成される(図1参照)。切削工具1は、すくい面3と、逃げ面5とを有する。硬質相には、すくい面3に沿った方向に圧縮応力21が残留し、かつ、圧縮応力21の方向と垂直な方向に引張応力23が残留している。引張応力は、30MPa以上300MPa以下であることを特徴とする。
なお、切削工具1の形状は特に限定されない。
(1)硬質相
セラミックス焼結体2における硬質相の含有割合は、耐摩耗性能及び耐欠損性能の観点から、セラミックス焼結体全体を100体積%とした場合に、15体積%以上97体積%以下であり、45体積%以上75体積%以下が好ましい。
硬質相は、炭化タングステン(WC)、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)及びこれらの相互固溶体を主成分とする。これらの中でも、炭化タングステンまたは炭窒化チタンを主成分とすることが好ましい。ここで「主成分」とは、硬質相を100体積%とした場合に、上記成分が80体積%以上であることを意味する。硬質相に、周期律表の4〜6族の元素が固溶していてもよい。例えば、硬質相に、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)が含まれていてもよい。硬質相の主成分以外の好適な成分として、炭化タンタル(TaC)、炭化ニオブ(NbC)が例示される。
(2)アルミナ
アルミナ(Al)は、アルミニウム(Al)、酸素(O)よりなるセラミックスの結晶粒子であり、硬度が高いことに加えて化学的に安定であることが特徴である。アルミナの結晶相として、α相、β相、γ相が存在するが、これらの結晶相種及び相比率については、特に限定されない。
(3)窒化アルミニウム
窒化アルミニウム(AlN)はアルミニウム(Al)、窒素(N)よりなるセラミックスの結晶粒子であり、Feに対する耐反応性が高く、熱伝導性に優れることが特徴である。
(4)窒化ケイ素
窒化ケイ素(Si)は、ケイ素(Si)、窒素(N)よりなるセラミックスの結晶粒子であり、原料となる窒化珪素に焼結助剤等を加えて焼結される。窒化ケイ素は、等軸状の粒子形状を有したα相と針状の粒子形状を有したβ相が存在し、これらの構成比率によって靱性や硬度の特性を制御できる。β−窒化珪素は針状組織が絡み合った組織となるため、高靭性であり、α−窒化珪素は等軸状の粒子形状であるため、β−窒化珪素と比較して低靭性ではあるが、硬度が高い特徴を有する。セラミックス焼結体2に含まれる窒化ケイ素において、これらの結晶相種及び構成比率は、特に限定されない。
(5)サイアロン
サイアロン(SiAlON)は、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)、窒素(N)よりなるセラミックスの結晶粒子である。サイアロンは原料となる窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、シリカ等のSi、Al、O、Nといった構成元素を含む原料粉末に焼結助剤等を加えて焼結して成る。サイアロン粒子には組成式Si6−ZAl8−Z(0<Z≦4.2)で表されるβ−サイアロンと、組成式Mx(Si,Al)12(O,N)16(0<X≦2、MはMg,Ca,Sc,Y,Dy,Er,Yb,Lu等の、侵入型となって固溶する元素を示す。)で示されるα−サイアロン等が存在している。β−サイアロンは窒化珪素と同様に針状組織が絡み合った組織となるため、高靭性であり、α−サイアロンは等軸状の粒子形状であるため、β−サイアロンと比較して低靭性ではあるが、硬度が高い特徴を有する。サイアロンにおいて、α−サイアロンとβ−サイアロンとの比率は、特に限定されない。
(6)硬質相の応力
硬質相には、すくい面3に沿った方向に圧縮応力21が残留し、かつ、圧縮応力21の方向と垂直な方向に引張応力23が残留している。この引張応力23は、30MPa以上300MPa以下である。
上記圧縮応力21を残留させることで、硬質相を構成する粒子(特に、逃げ面を構成する粒子)の脱粒を抑制できるため、切削工具の耐摩耗性能が向上する。
上記引張応力23を30MPa以上にすることで、欠損方向を所望方向へ誘導する誘導効果が十分に得られる。なお、所望方向とは、欠損時の損傷形態をフレーキング損傷にする方向である。所望方向にクラック25が入ることで、欠損時の損傷形態をフレーキング損傷にできる。
また、上記引張応力を300MPa以下にすることで、引張応力23による切削工具1の強度の低下を抑制して、切削工具1全体の耐欠損性能が維持できる。
なお、硬質相の残留応力(圧縮応力21、引張応力23)は、sinΨ法を用いて測定する。具体的には、残留応力は、Cu−Kαを用いたX線回折装置で測定する。
(7)表面被覆層6
切削工具1では、セラミックス焼結体2の表面には、Tiの炭化物、Tiの窒化物、Tiの炭窒化物、Tiの炭酸化物、Tiの窒酸化物、及びTiの炭窒酸化物からなる少なくとも1種の表面被覆層6が形成されていることが好ましい(図7参照)。表面に、表面被覆層6が形成されていることで、表面の硬質化、及び表面における硬質相を構成する粒子の酸化を抑制でき、切削工具1の耐摩耗性能を向上できる。
Tiの炭化物、Tiの窒化物、Tiの炭窒化物、Tiの炭酸化物、Tiの窒酸化物、Tiの炭窒酸化物は、特に限定されないが、TiN、TiAlN、TiAlCrNを好適な例として挙げることができる。
表面被覆層6の厚みは、特に限定されない。表面被覆層6の厚みは、耐摩耗性の観点から、0.02μm以上30.0μm以下が好ましく、0.05μm以上15.0μm以下がより好ましく、0.1μm以上10.0μm以下が更に好ましい。
2.セラミックス焼結体2
セラミックス焼結体2は、硬質相を15体積%以上97体積%以下含むとともに、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びサイアロンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。硬質相には、圧縮応力21が残留し、かつ、硬質相には、圧縮応力21の方向と垂直な方向に、引張応力23が残留している。引張応力は、30MPa以上300MPa以下であることを特徴とする。
セラミックス焼結体2における「硬質相」「アルミナ」「窒化アルミニウム」「窒化ケイ素」「サイアロン」「硬質相の応力」については、上述の「1.切削工具1」における「硬質相」「アルミナ」「窒化アルミニウム」「窒化ケイ素」「サイアロン」「硬質相の応力」の記載がそのまま適用される。
3.切削工具1及びセラミックス焼結体2の製造方法
切削工具1及びセラミックス焼結体2の好ましい製造方法について、以下に説明する。
WC原料、Al原料、AlN原料、Si原料、ランタノイドの酸化物原料等の原料を、所定の配合比になるように秤量して、溶媒を加えてから、例えば10hr〜25hr予備粉砕・混合を行う。次に、このように調製した混合物に、分散剤を加えて、更に粉砕・混合を例えば40hr〜60hr行ってスラリーを得る。
スラリーを乾燥させて原料粉末を作製する。原料粉末をAr又はN雰囲気下でホットプレス(例えば、1400℃〜1900℃、10MPa〜40MPaの条件でのホットプレス)をしてセラミックス焼結体2が製造される。
そして、セラミックス焼結体2を研磨加工して、切削工具1が製造される。
なお、硬質相に生じる残留応力(圧縮応力21、引張応力23)の絶対値、及び種類(圧縮応力21又引張応力23)は、ホットプレス時の脱圧を制御することによって、すなわち加圧状態からの圧力の抜き方を制御することによって、調整できる。
例えば、硬質相に圧縮応力21のみを残留させるには、ホットプレス時のプレス加圧を炉内温度が十分低温(500℃以下)になるまで保持すればよい(図2のA参照)。
硬質相に圧縮応力21及び引張応力23を残留させるには、ホットプレス時のプレス加圧を焼成温度で、所定時間維持した後に、所定の速度で脱圧すればよい(図2のB,C,D参照)。
引張応力の値は、ホットプレス時の脱圧速度を0.5MPa/min〜10MPa/minの間で変化させることでコントロールできる。
残存残留が調整されるメカニズムの詳細は明らかでないが、次のように推定される。但し、本発明は、この推定メカニズムによって何ら限定解釈されるものではない。推定メカニズムを図3〜6を参照して説明する。ホットプレス時に、被焼成体11は図3に示されるように、上下型13,13からプレス圧15,15と、側壁17,17から側圧19を受ける。この状態から、脱圧していくと、図4に示すようにプレス圧15,15が弱まっていく。そして、最終的には、図5に示すようにプレス圧15,15が無くなる。この図5の場合においても、側圧19,19は残っており、この側圧19,19を受けて、図6のように、セラミックス焼結体2に圧縮応力21と引張応力23とが残留するものと推測される。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
なお、実験例2,4,5,6,8,9,11,12,14,15,16,17,18,19,22,23,24,25,26,27は実施例であり、その他の実験例は比較例である。
表において、実験例を「No」を用いて示す。また、表において「1*」のように、「*」が付されている場合には、比較例であることを示している。
1.実験A
(1)セラミックス焼結体の作製
市販の平均粒径0.5μm以下のWC原料、平均粒径1.0μm以下のTiC原料、TiCN原料、平均粒径0.7μm以下のAl原料、平均粒径1.0μm以下のAlN原料、平均粒径0.2μm以下のSi原料、平均粒径1.0μm以下のランタノイドの酸化物原料、平均粒径1.0μm以下のNbC原料、TaC原料を用いて、表1の配合比となるように、各種混合粉末を作製した。これらの混合粉末にアセトンを加えて、20hr予備粉砕・混合を行った。その後、分散剤(全粉末量に対して2wt%)を入れて、52hr粉砕・混合した。粉砕・混合後、得られたスラリーを湯煎乾燥にて、アセトンの抜気を行い、粉末を作製した。得られた粉末を、実験例1〜17はAr雰囲気下(実験例1〜17)で、実験例18〜19はN雰囲気下(実験例18〜19)で、それぞれホットプレス(1400℃〜1900℃、10〜40MPaの条件でのホットプレス)を行うことでセラミックス焼結体を作製した。実験例20〜21は、まず室温、100MPaで一軸成形した後、得られた成形体を次のように焼成することでセラミックス焼結体を作製した。実験例20は、無加圧のアルゴン雰囲気下で、1750℃で2時間保持して焼成(一次焼成)した後、150MPaのアルゴン雰囲気下で、1700℃で2時間保持してHIP焼成(熱間等方圧加圧法による焼成)した。実験例21は、0.2MPaの窒素雰囲気下で、1750℃で2時間保持して焼成(一次焼成)した後、150MPaのアルゴン雰囲気下で、1700℃で2時間保持してHIP焼成した(熱間等方圧加圧法による焼成)。
Figure 2020169117
なお、表1の配合組成において、「%」は、全体を100体積%とした場合の体積%(vol%)を意味している。ここで、より具体的に、配合組成を説明する。2成分以上の配合組成が示され、成分が%表示されている場合には、当該成分がその%であり、残部の成分割合は100%から各成分の合計割合を引いて求められる。例えば、実験例1の「Al−75%WC」は、75vol%WCと、25vol%Alとからなる。また、実験例14の「Al−70%WC−5%TiC」は、70vol%WCと、5vol%TiCと、25vol%Alとからなる。実験例20の「Al−TiC」は、75vol%Alと、25vol%TiCとからなるいわゆる黒セラミックである。
表1には、上述のように原料粉末の組成(配合)が示されているが、この組成は焼成後にも変化しないから、各セラミックス焼結体の組成と同等である。そして、焼成後の各セラミックス焼結体を機械加工して、切削工具としているのであるから、結局、原料粉末の組成は切削工具の組成と同等である。
硬質相に生じる残留応力(圧縮応力、引張応力)の絶対値、及び種類(圧縮応力又引張応力)は、ホットプレス時の脱圧速度を制御することによって、すなわち加圧状態からの圧力の抜き方を制御することによって調整した。表1の残留応力の欄において、「−」(マイナス)の符号が付いた数値は圧縮応力を示し、無印(プラス)の数値は引張応力を示している。
硬質相に圧縮応力のみを残留させた実験例1(No.1)には、ホットプレス時のプレス加圧を炉内温度が十分低温(500℃以下)になるまで保持して作製した。すなわち、実験例1では、焼成温度から温度を下げる降温時においても、焼成温度時と同じプレス加圧を引き続き維持した(図2のA参照)。
実験例2〜19では、硬質相に圧縮応力及び引張応力が残留している。実験例2〜19は、焼成温度の保持完了後に、プレス加圧の圧力を所定の速度で低下する、すなわち脱圧することで作製した(図2のB,C,D参照)。
引張応力の値は、ホットプレス時(焼成温度から温度を下げる降温時)の脱圧速度を0.5MPa/min〜10MPa/minの間で変化させることでコントロールした。
具体的には、焼成温度での保持完了後、降温時に脱圧速度を小さくすることで、引張応力を小さくし、他方、焼成温度の保持完了後、降温時に脱圧速度を大きくすることで、引張応力を大きくした。
セラミックス焼結体の室温強度、室温硬度を評価した。
(2)切削工具の作製
上記の方法で作製したセラミックス焼結体を研磨加工することでISO SNGN432型の寸法となるように加工し、切削工具を作製した。
(3)評価試験方法
(3.1)室温強度
セラミックス焼結体の室温強度は、JIS R 1601によって測定した。
(3.2)室温硬度
セラミックス焼結体の室温硬度は、JIS R 1610によって測定した。
(3.3)硬質相の残留応力
X線回折法により、セラミックス焼結体の硬質相の応力状態を次の条件で評価した。即ち、X線回折装置を用いたsinΨ法により、セラミックス焼結体におけるホットプレスの加圧軸と平行な方向の残留応力を並傾法で測定し、ホットプレスの加圧軸に垂直な方向の残留応力を、側傾法で測定した。X線は、励起条件:40kV、コリメーター径:Φ2mmとした。
なお、実験例20,21は、製造方法の性質上、引張応力と圧縮応力とが共に残留することは考えられないので、残留応力は測定していない。したがって、表において「−」と記載されている。
(3.4)耐摩耗性試験
切削工具について、普通鋳鉄耐摩耗性評価試験を行った。試験条件は下記の通りである。切削加工後の切削工具の逃げ面を、デジタルマイクロスコープを用いて拡大観察し、摩耗幅を逃げ面摩耗量として評価した。逃げ面摩耗量を単に摩耗量ともいう。

・チップ形状:SNGN432−TN
・チップ方向:圧縮残留応力がすくい面と平行、かつ引張残留応力がすくい面に垂直な方向。(図1参照)
・被削材:FC200(鋳肌付)
・切削速度:500m/min
・切込み量:1.5mm
・送り量:0.5mm/rev.
・切削環境:乾式施削試験
・評価:〔1〕0.1km加工後の逃げ面摩耗量
〔2〕工具欠損まで加工した場合の損傷形態確認
・判定基準:
耐摩耗性能:
「A」 摩耗量≦0.50mm
「B」 0.50mm<摩耗量≦1.00mm
「C」 1.00mm<摩耗量
耐欠損性能(欠損時の損傷形態):
「B」フレーキング損傷
「C」欠損(刃先脱落)
(4)評価結果
評価結果を表1に併記する。
実験例2,4,5,6,8,9,11,12,14,15,16,17,18,19は、下記要件(a)(b)(c)(d)(e)を全て満たしている。

・要件(a):硬質相を15体積%以上97体積%以下含む。
・要件(b):アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びサイアロンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
・要件(c):すくい面の平行方向に圧縮応力が残留している。
・要件(d):すくい面の垂直方向(圧縮応力の方向と垂直な方向)に引張応力が残留している。
・要件(e):要件(d)の引張応力は、30MPa以上300MPa以下である。
実験例2,4,5,6,8,9,11,12,14,15,16,17,18,19は、いずれも耐摩耗性能の評価が「A」又は「B」であり、しかも、欠損時の損傷形態がフレーキング損傷であった。
その他の実験例では、耐摩耗性能の評価が「C」又は欠損時の損傷形態が「C」(刃先脱落)であった。
以下、詳細に説明する。
まず、切削工具における残留応力の制御について検討する。実験例1と実験例2の結果を比較すると、切削工具のすくい面に対して垂直な方向に対して、引張応力が残留することで、破壊損傷の形態をフレーキングに抑制できることが分かる。これは、引張応力がその方向に粒子間の結合を解くように作用することによって、クラックの進展方向がすくい面に沿った方向に誘導されたためだと考えられる。
次に、硬質相量、硬質相成分、引張応力値について検討する。実験例3,4,5,6,8,9,11,12,13の比較から、硬質相量を15体積%以上とすることにより、硬度と強度の向上が図れるため、耐欠損性と耐摩耗性に優れた切削工具が得られることが分かる。但し、硬質相量が97体積%以上となると硬質相の酸化摩耗によって耐摩耗性能が低下することが分かる。
また、実験例2〜13の実験結果を考慮すると、硬質相量を45体積%〜75体積%とすると、耐摩耗性能の評価が「A」となり、耐摩耗性能が向上するため、より好ましいことが分かる。
また、実験例4,5,6,8,9,11,12,14,15,16,17,18,19のいずれにおいても引張応力の残留により、フレーキング損傷に抑制できることが分かる。引張応力値が要件(e)を満たさない、すなわち、引張応力が30MPa未満である実験例7については、引張応力による欠損の誘導効果が不十分となるため、フレーキング損傷とならない。また、引張応力値が要件(e)を満たさない、すなわち、引張応力が300MPaより大きい実験例10では、引張応力が過剰となるため、強度低下により欠損することが分かる。
また、実験例14〜17の結果より、硬質相中にNbCやTaCを固溶体として含んでいても、同様の効果が得られることが分かる。
次に、残部(ここでは、硬質相以外の相を指す)の種類について検討する。実験例16〜19の結果より、Al相以外にも、AlN相、Si相及びSiAlON相を複合化させた場合でも、耐摩耗性能の評価が「A」であり、しかも、欠損時の損傷形態がフレーキング損傷であった。
以上の結果から、上記要件(a)(b)(c)(d)(e)を満たすことで、耐摩耗性・耐欠損性に優れ、かつ欠損時の損傷をフレーキング損傷に抑制できることが分かった。
2.実験B
実験Bでは、実験例22〜27が実施例に該当し、実験例28は参考例に該当する。
実験Aと同様な方法で得た実験例2,4,12,14,19,21のセラミックス焼結体(基体)の表面に、表2に示すように、TiN、TiAlN、TiAlCrNを被覆して切削工具を作製し、耐摩耗性試験を行った。耐摩耗性試験は、実験Aの場合と同様な方法で行った。
試験結果を表2に示す。
Figure 2020169117
実験例22〜27では、いずれも摩耗量を更に低減できることが確認できた。すなわち、上記要件(a)(b)(c)(d)(e)を満たし、かつ、切削工具の表面にTi化合物系の表面被覆層を形成させることで、更に耐摩耗性に優れる切削工具となることが確認された。
なお、従来品(実験例21)に表面被覆層を形成した実験例28では、表面被覆層が無い実験例21よりも摩耗量は低下したが、基準値(1.00mm)以下とはならなかった。
以上の結果から、上記要件(a)(b)(c)(d)(e)を満たし、かつ、表面にTi化合物系の表面被覆層を形成させることで、従来品(窒化珪素系工具)よりも、耐摩耗性及び耐欠損性に優れた切削工具となることが確認された。
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形又は変更が可能である。
1 …切削工具
2 …セラミックス焼結体
3 …すくい面
5 …逃げ面
6 …表面被覆層
11…被焼成体
13…上下型
15…プレス圧
17…側壁
19…側圧
21…圧縮応力
23…引張応力
25…クラック

Claims (5)

  1. 硬質相を15体積%以上97体積%以下含むとともに、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びサイアロンからなる群より選択される少なくとも1種を含むセラミックス焼結体から構成される切削工具であって、
    前記硬質相には、すくい面に沿った方向に圧縮応力が残留し、かつ、前記圧縮応力の方向と垂直な方向に引張応力が残留しており、
    前記引張応力は、30MPa以上300MPa以下であることを特徴とする切削工具。
  2. 前記セラミックス焼結体の表面には、Tiの炭化物、Tiの窒化物、Tiの炭窒化物、Tiの炭酸化物、Tiの窒酸化物、及びTiの炭窒酸化物からなる少なくとも1種の表面被覆層が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の切削工具。
  3. 前記硬質相は、炭化タングステンまたは炭窒化チタンを主成分とする、請求項1または2に記載の切削工具。
  4. 硬質相を15体積%以上97体積%以下含むとともに、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びサイアロンからなる群より選択される少なくとも1種を含むセラミックス焼結体であって、
    前記硬質相には、圧縮応力が残留し、かつ、前記硬質相には、前記圧縮応力の方向と垂直な方向に、引張応力が残留しており、
    前記引張応力は、30MPa以上300MPa以下であることを特徴とするセラミックス焼結体。
  5. 前記硬質相は、炭化タングステンまたは炭窒化チタンを主成分とする、請求項4に記載のセラミックス焼結体。
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