本発明は、クランク回転駆動力を交互に入力する二つの入力回転体を備えたクランク回転駆動伝達機構に関する。
従来、このようなクランク回転駆動伝達機構としては、例えば、以下の特許文献1に示すものがあった。即ち、この文献に係る技術は、フィットネスマシンに発電機と蓄電池を組み合わせ、発電効率が良く電力を広範に利用しようとするものである。
このクランク回転駆動伝達機構は、ペダルを人力で操作するエアロバイクやステッパーなどのフィットネスマシンに搭載され、ペダルにより駆動されて発電を行うアウターローター型DCブラシレス永久磁石同期発電機若しくはポールチェンジDCブラシレス永久磁石同期発電機を備え、この同期発電機に接続され、同期発電機による発電を制御する発電機コントローラーと、同期発電機に接続され、蓄電する蓄電池と、この蓄電池に接続され、蓄電池に蓄電された電気を変換して出力するDC/ACインバーターとを備えている。
このステッパーと称する装置では、例えば、左右の180度の回転位相差を持たした固定連結のペダルクランクが前後に配備され、左右のペダルでリンク状につながれている。各ペダルクランク先端の回転軸受けに取付けられた左右の二つのペダルを両脚で交互に踏み込み回転駆動を発電機に伝達する。踏み込み動作で回転するペダルクランクの上死点、下死点はフライホィールを取り付けて回避する機構としている。
また、発電機コントローラーには、ペダル位置センサーが接続され、ペダルがおおよそ水平状態から下方に強く踏み込まれる位置をペダル位置センサーが検出し、この検出値が入力された発電機コントローラーは、それに応じて発電パルスを制御し、発電負荷を増やし、発電量が増強される。
一方のペダルが最も低い位置に達し、他方のペダルが最も高い位置に達した際には、ペダル位置センサーがそれを検出し、この検出値が入力された発電機コントローラーは、それに応じて発電パルスを制御し、発電負荷を減らし、通常発電量に戻すようになっている。
このように、この従来装置によれば、フライホィールを取り付け、180度回転位相差を持たせた固定連結ペダルクランクを前後に配備して、平行リンク構造となるように左右のペダルがペダルクランク先端の回転軸受けに取り付けられていて、その左右のペダルを交互に踏み込む機構のフィットネスマシンの使用で得られる発電電力を広範に利用でき、しかも高い発電効率で発電することができるとのことである。
上記従来技術では、発電効率の根本となるのは作用者によるペダルの操作量である。ペダルを踏み込む際には、例えば、ペダルが最も前方にある位置など、回転軸に対してペダル位置のモーメントが大きくなる位置では発電機に入力される外力は大きくなる。しかし、ペダルが最も低い位置に近い場合は前記モーメントが小さく、発電機に入力される外力が小さくなる。上記従来技術は、そのような入力の大きくなる位置と小さくなる位置とで発電負荷を変更し、発電効率を高めようとするものであった。
しかし、この技術においては、主として以下の三つの課題がある。
(1) 作用者はペダルを最上位置から最下位置まで連続的に漕がなければならず、ペダルが発電機に入力する外力が小さくなる位置にある場合にも所定の負荷が求められる。そのため、作用者の運動によって発せられる運動エネルギーの一部は発電に寄与せず、発電効率を高めるにも限界があった。
(2) 踏み込み動作で回転するペダルクランクの上死点・下死点をフライホィールにより回避する機構では、フライホィールの慣性力のばらつきで、初めて踏み込む時の位置や、継続的に踏み込む時の位置にばらつきが生じ、踏み込みのタイミングがうまく取れない。また、継続的な踏み込みの途中で、一方のペダルの踏み込み動作が不十分となり、他方のペダルの取り付くペダルクランクが上死点を確実に越えることができない場合がある。従って、連続した交互のペダル踏み込み動作が出来ず、なめらかで連続した発電機回転が行えない。
(3) さらに、180度回転位相差を持たせて固定したペダルクランクアームの先端の回転軸受に取り付けた二つのペダルを交互に踏み込む機構では、二つのペダルの動きが互いに規制を受けて、時間的に全く同時連動する。このため、例えば、左右の脚で二つのペダルの交互踏み込みする場合に、一方の脚の踏み込みの反発力が即、他方の脚に伝わり違和感を覚える。また、人の脚の入れ替え時の体重移動に必要な時間が十分に取れないため、作用者のペースで体重移動が出来ず安定した連続動作が行えない等、人間工学的な問題を有し、持続力等の体力が不十分な高齢者等には向かない。
このように従来の駆動伝達機構の問題点に鑑み、駆動力の伝達効率がよく、健常者はもちろん、高齢者やリハビリテーション中の作用者にとっても、容易で安定した連続動作が行えるクランク回転駆動伝達機構が求められている。
(特徴構成)
本発明に係るクランク回転駆動伝達機構の特徴構成は、
交互に駆動回転が行われる第1クランクアームおよび第2クランクアームと、
前記第1クランクアームの駆動回転に連動して駆動回転入力が行われる第1入力回転体、および前記第2クランクアームの駆動回転に連動して駆動回転入力が行われる第2入力回転体と、
前記第1クランクアームの駆動回転を、前記第1入力回転体を介して前記第2入力回転体および前記第2クランクアームに従動回転として回転角速度を高めて伝達する第1伝達経路と、前記第2クランクアームの駆動回転を、前記第2入力回転体を介して前記第1入力回転体および前記第1クランクアームに従動回転として回転角速度を高めて伝達する第2伝達経路と、
前記第1入力回転体への駆動回転入力に際し、前記第2伝達経路の伝達を遮断する第1クラッチと、
前記第2入力回転体への駆動回転入力に際し、前記第1伝達経路の伝達を遮断する第2クラッチと、
前記第1伝達経路および前記第2伝達経路のうち、少なくとも何れか一方から出力回転を取り出す出力部と、を備えた点にある。
(効果)
本構成のクランク回転駆動伝達機構では、第1クランクアームと第2クランクアームとを交互に駆動回転させて、第1入力回転体と第2入力回転体とに回転入力を行う。第1クランクアームおよび第2クランクアームは一方が他方を従動回転させるものの、互いに異なる回転角速度で回転する。第1クランクアームと第2クランクアームとのあいだには、第1伝達経路と第2伝達経路とが並設されており、例えば、第1クランクアームに駆動回転力を付与するとき、第1クランクアームに入力された駆動力が出力部から取り出されると共に、当該入力された駆動力の一部が第1伝達経路を介して第2クランクアームに伝達され、第2クランクアームを従動させる。その際、第2クランクアームの回転角速度は第1クランクアームの回転角速度よりも大きくなるように設定してある。
このため、例えば、第1クランクアームの先端にペダルを設けておき、このペダルを特定方向に押し込んで下死点近くまで駆動回転させるとき、他方の第2クランクアームはこれよりも大きな回転角速度で従動回転する結果、上死点を越えた位置まで回動することができる。これに続けて第2クランクアームを押し込むが、第2クランクアームは上死点を越えているため、位置的および負荷的に押込み操作が極めて容易となる。このようなクランク回転が交互に連続する結果、効率的な出力回転の取り出しが可能となる。
(特徴構成)
本発明に係るクランク回転駆動伝達機構にあっては、
前記第1クラッチおよび前記第2クラッチの各々が、
駆動回転を伝達する第1クラッチ部材および第2クラッチ部材と、
前記第1入力回転体または前記第2入力回転体と一体的に結合される第1カム板と、
前記第1クラッチ部材と一体的に結合される回転軸および第2カム板と、
前記第1クラッチ部材を前記第2クラッチ部材に押し付けてクラッチ入り状態とさせる付勢部材と、を備えると共に、
駆動回転入力される側の前記第1入力回転体または前記第2入力回転体と一体的に結合される前記第1カム板と、遮断する側の前記第1クラッチまたは前記第2クラッチにある前記第2カム板との各々に傾斜駆動当接面を設けて、前記第1カム板と前記第2カム板とが当該傾斜駆動当接面で滑動しつつ相対回転して前記第1クラッチ部材を前記付勢部材の付勢力に抗する方向あるいは付勢力の働く方向に移動させて前記第1クラッチまたは前記第2クラッチをクラッチ切り状態あるいは入り状態にさせることを可能とし、しかも、互いの当接を外さずに当該傾斜駆動当接面での押圧状態を維持して一体的に回転駆動を伝達させることができるように前記第1クラッチ部材の移動の全距離を設定する移動規制部を設けたカム機構を備えるものとすることができる。
(効果)
本構成のクランク回転駆動伝達機構では、例えば、初期の状態では第1カム板と、第2カム板とは対向密着しており、第1クランクアームおよび第1入力回転体に駆動力が入力された瞬間には、第1クラッチおよび第2クラッチが入り状態にある。つまり、第1伝達経路および第2伝達経路の双方が連結状態にあり、回転角速度を高めて伝達する部分の二つの伝達経路が閉ループ状態となる。このため、当該伝達経路上に配置されたギヤどうしの伝達回転角速度に不一致が生じ、回転がロックされ、第1クランクアームおよび第1入力回転体の駆動回転が一旦阻止される。
しかし、引き続き第1クランクアームおよび第1入力回転体に駆動力を加えると、第1入力回転体と一体的に結合される第1カム板が第1クラッチ部材と一体的に結合される第2カム板と互いの傾斜駆動当接面で滑動しつつ相対回転するカム機構によって、遮断するべき第1クラッチを少なくともクラッチ切り状態とさせる移動距離だけ第1クラッチの第1クラッチ部材が第2クラッチ部材に対して付勢部材の付勢力に抗する方向に移動する。このため、第1クランクアームおよび第1入力回転体に入力された駆動力は、連結状態にある第2クラッチが設けられた第1伝達経路を介して第2入力回転体および第2クランクアームに伝達される。
第1クラッチ部材が第2クラッチ部材に対して切り状態となった後、例えば、第1入力回転体に駆動回転が入力される間は第1クラッチ部材の切り状態を維持しつつ、第1入力回転体と一体的に結合される第1カム板と、第1クラッチ部材と回転軸を介して一体的に結合される第2カム板とが互いの傾斜駆動当接面での押圧状態を維持し一体化回転して駆動回転を伝達する。
このとき、駆動回転の負荷が大きければ、第1カム板と第2カム板との互いの傾斜駆動当接面での滑動により、第2カム板および回転軸を介して第1クラッチ部材はさらに前記付勢部材の付勢力に抗する方向即ち、第2クラッチ部材から離間する方向に移動を継続する場合があるが、第1カム板と第2カム板との互いの傾斜駆動当接面は一定以上の面積を維持し、互いの係合が外れないように全移動距離を設定する移動規制部を設けたカム機構としている。
それによって、第2カム板に伝わる移動規制部による移動抵抗力が、第1入力回転体に加わる駆動力による移動力と釣り合う状態で、第1カム板と第2カム板は、第1入力回転体に加わる駆動力に基づき、互いの傾斜駆動当接面で押圧反力を発生させつつ一体化し、駆動回転力の伝達が確実に発生して、第1クランクアームおよび第1入力回転体への駆動回転により、第2クランクアームおよび第2入力回転体が、第1クランクアームおよび第1入力回転体より速い回転角速度で従動する。
これに続いて、第2クランクアームおよび第2入力回転体に駆動力を加えると、後述するように、一旦、連結状態にある第1伝達経路を介する逆方向伝達にて、クラッチを構成するカム機構により第1クラッチをクラッチ入り状態に戻すまで、第2クランクアームおよび第2入力回転体が僅か回転し、さらに駆動力を継続して加えると、その後は第1クランクアームおよび第1入力回転体に駆動力を加えるときと同様の動作態様により遮断するべき第2クラッチをクラッチ切り状態とさせ、その結果、第1クランクアームおよび第1入力回転体が、第2クランクアームおよび第2入力回転体の駆動回転より速い回転角速度で従動する。
さらに継続的に、第1クランクアームと第2クランクアームとを交互に駆動回転させて、第1入力回転体と第2入力回転体とに回転入力を行う場合には、駆動側のクランクアームが一旦、僅か回転し、その時点で入り状態である遮断するべき側のクラッチを介して、その時点で切り状態である伝達するべき側のクラッチを、クラッチを構成するカム機構により入り状態に戻し、さらに続けて駆動力を加えると、その後は本来、遮断するべき側のクラッチをクラッチ切り状態とさせる態様が繰り返される。
このように本構成の第1クラッチおよび第2クラッチを有することで、第1クランクアームおよび第1入力回転体と、第2クランクアームおよび第2入力回転体に交互に駆動力を入力するだけで、駆動回転の伝達経路が容易に切り替わる。これによって、各種の装置に適用される汎用性の高いクランク回転駆動伝達機構を得ることができる。
(特徴構成)
本発明に係るクランク回転駆動伝達機構にあっては、
前記第1クランクアームおよび前記第2クランクアームのうち何れか一方が、押し込み作動クランクの回転における上死点を越えた第1位置から下死点の手前の第2位置まで駆動回転される間に、他方が前記第2位置から前記第1位置まで従動回転するように駆動伝達構成がなされ、
前記第1クランクアームの先端に第1作用部を、前記第2クランクアームの先端に第2作用部を、設け、前記第1作用部に対して特定方向に当接する第1ペダルと、前記第2作用部に対して前記特定方向に当接する第2ペダルとが、交互に往復移動するように構成することができる。
(効果)
本構成のように、交互に往復動作する第1ペダルと第2ペダルを備えることで、例えば両ペダルを人の脚で駆動する際に、通常の自転車ペダルを漕ぐときのクランクアームを回転させる場合に比べ、負荷が掛った状態の脚の前後運動を減らすことができる。よって、体力が十分でない作用者であっても体重を利用する等で両ペダルを容易に操作することができる。
また、本構成のクランク回転駆動伝達機構は、例えば、第1クランクアームおよび第2クランクアームを交互に回転駆動する際に一方のアームを下死点の所定角度手前まで回転駆動すると、他方のアームは必ず上死点を所定角度越えた位置まで回転する。このため、同一経路を往復移動する第1ペダルおよび第2ペダルを装着した場合でも、ペダルの踏込開始の位置がフライホィール使用の場合のようにばらつくことがなく、確実に上死点を越えるために、効率が悪く負荷が極めて大きくなる上死点付近を回避でき、ペダル踏み込み操作を容易に行うことができる。
(特徴構成)
本発明に係るクランク回転駆動伝達機構にあっては、
前記第1クランクアームおよび前記第2クランクアームが前記第2位置に到達したとき、前記第1ペダルおよび前記第2ペダルの停止位置を設定するストッパーを備え、当該ストッパーに前記第1ペダルおよび前記第2ペダルの前記特定方向への動作に対向する付勢力を保持させてあると好都合である。
(効果)
例えば、ペダルを特定方向に踏み込んで第1クランクアームを回転させる場合、踏み込み終了位置は必ずしも一定にならない。また特定方向に沿った下死点の近傍では、ペダルの踏み込み方向と第1クランクアームの先端が向かう方向とが直角に近づくため、第1クランク軸に作用する外力のうち第1クランク軸の回転駆動に寄与する分力が小さくなる。
そこで、ペダルの踏み込み方向と第1クランクアームの先端が向かう方向とが大きく乖離する前にペダルの踏み込みを前記ストッパーにより中断することで、第1クランクアームおよび第1入力回転体の回転駆動に殆んど寄与しない無駄な踏込動作を減らすことができる。
また、ストッパーに付勢力を発揮させることで、例えば第1ペダルを踏み込み、第1ペダルがストッパーに当接する際の衝撃を緩和することができる。よって、脚に作用する負担が軽減され、長時間の操作が可能となる。
さらに、本構成であれば、第1ペダルおよび第2ペダルを交互に踏みこむことにより、第1クランクアームおよび第2クランクアームを交互に駆動および従動回転をさせるため、第1ペダルの踏み込みをストッパーで中断しても、他方の第2ペダルを踏み込むことで第1クランクアームは回転を続ける。第1ペダルに当接していた第1クランクアームの第1作用部はペダルから離間して円弧状に下死点に向かい、さらに下死点を越えて円弧状に移動して、再度、第1ペダルに当接する。このように、第1ペダルの踏み込みが終了したのち、第2クランクアームの回転力に基づき第1クランクアームの第1作用部によって強制的に押し上げられるまでの時間を確保することができる。
このとき、作用者の脚は第2ペダルを踏み込み始めているから、その反動作、あるいは体重が掛かっている場合は体重移動の開始で第1ペダルに掛る力は減少し始める。ストッパーには付勢力が作用しているため、第1ペダルが下死点の側から押し上げられ、第1作用部が第1ペダルに再度当接するまでの時間がさらに長くなる。そのため、第1ペダルに載せている脚が第1クランクアームの第1作用部によって第2クランクアームの回転力で強制的に押し上げられるタイミングをさらに一定時間遅らせ、第1ペダルに載せている脚の作動や体重移動を一定時間遅らせることができる。これにより、通常の固定連結ペダルクランクアームを回転させるときのように、一方の脚の踏み込みの反発力が、直ちに他方の脚に伝わって違和感を生じさせるようなことがなく、作用者のタイミングで円滑な踏込運動を継続することができる。
尚、第1ペダルが付勢力によって上昇を始めた後に第1作用部が当接すれば、両者の相対速度が小さくなっているため、当接時の衝撃がより緩和され違和感の少ない装置を得ることができる。
第1実施形態に係るクランク回転駆動伝達機構の適用例を示す斜視図
ペダルとクランクアームの動作態様を示す説明図
クランクアームの動作態様を示す説明図
クランク回転駆動伝達機構のギヤ列を示す斜視図
クラッチの駆動伝達構成図
クラッチの構造と駆動態様を示す部分的正面図含む上半断面図
ペダルとストッパーの動作態様を示す説明図
第2実施形態に係るペダルとストッパーの動作態様を示す説明図
本発明のクランク回転駆動伝達機構の他の適用例を示す斜視図
本発明のクランク回転駆動伝達機構K(以降においては「駆動伝達機構K」と略称する)は、一対のクランクアームAR,ALを交互に駆動回転させて出力を取り出す機構であって、特に、各クランクアームAR,ALが駆動回転する場合と、従動回転する場合とで回転角速度が変化し、その結果、各クランクアームAR,ALどうしの相対回転角速度が変化する点に特徴を有する。以下、本発明に係る各実施形態つき図面を参照しながら説明する。
〔第1実施形態〕
(概要)
本発明に係る駆動伝達機構Kは、例えば、図1に示すように左右のペダルPを交互に並進移動させる健康器具や、図9に示すように自転車タイプの健康器具などに適用可能である。まず、図1乃至図7に基づき、第1実施形態に係る駆動伝達機構Kについて説明する。
図1は、本発明のペダルPを含めた駆動伝達機構Kを一種のステアクライマーに適用した例である。このステアクライマーは、平行リンク1によって上下に往復移動する第1ペダルPRと第2ペダルPLとを備えている。本実施形態では、第1ペダルPRを右ペダルPRと称し、第2ペダルPLを左ペダルPLと称する。右ペダルPRと左ペダルPLとの間には機構部K1(図4参照)を有する。この機構部K1には、後述するギヤ列とクラッチCおよび出力部J2等が備えられている。
作用者はハンドルHに手を掛けつつ左ペダルPLおよび右ペダルPRを交互に踏み込み、入力軸J1を回転させる。本構成では、例えば両ペダルPを人の脚で駆動する際に、通常の自転車のクランク回転作動のような負荷が掛かった状態の脚の前後運動を減らすことができ、体力が十分でない高齢者やリハビリテーション中の作用者であっても体重を利用する等で両ペダルPを容易に操作することができる。また、機構部K1に所定の負荷を掛けることで筋力アップの効果を得ることができる。
また、機構部K1に発電機等を装備して発電さらには蓄電を行うこともできる。作用者は、モニターMにより、自己の運動量や発電量等を確認することができ、さらには機構部K1の負荷を調節することができる。
駆動伝達機構Kは、交互に駆動回転が行われる第1クランクアームARおよび第2クランクアームALを有する。第1クランクアームARの先端からは、第1クランクアームARに直交する棒状の第1作用部SRが機構部K1とは反対の方向に延出し、同じく第2クランクアームALの先端からは第2作用部SLが延出している。尚、以降においては、第1クランクアームARを右アームAR、第2クランクアームALを左アームALと称し、第1作用部SRを右作用部SR、第2作用部SLを左作用部SLと称する。
図2および図3に示すように、この駆動伝達機構Kでは、右アームARと左アームALが連続回転するとき、一方が駆動側となり他方が従動側となる。駆動回転する場合と従動回転する場合とで回転角速度が変化するため、右アームARと左アームALの相対回転角速度が途中で切り替わり、互いの相対回転位相が変化しながら回転する。
図2は、例えば右ペダルPRと右アームARの動作態様を示す説明図である。右ペダルPRは平行リンク1で支持されており上下に並進往復する。右ペダルPRは右アームARの先端に設けた棒状の右作用部SRに当接しており、右ペダルPRを踏み込むことで右アームARが下げられる。本実施形態では、右ペダルPRを踏み込むときに、右作用部SRに対して右ペダルPRの下面が特定方向に当接しつつ、当接面に沿う方向に右作用部SRが右ペダルPRに対し相対的に移動する。右ペダルPRと右作用部SRには、例えば右作用部SRと相対回転可能な筒状のローラーを外挿しておき、当接面である右ペダルPRの下面に沿って移動する際の摩擦抵抗を低減すると良い。
この駆動伝達機構Kでは、左アームALおよび左作用部SL、あるいは右アームARおよび右作用部SRの回転角速度が変化する。図2および図3に示すように、右アームARおよび右作用部SRが反時計方向に回転するが、上死点TDCを所定角度α分越えた第1位置1pから下死点BDCの所定角度β分手前の第2位置2pまでの第1領域1r、即ち、回転角度θの範囲には後述するように、右アームARおよび第1入力回転体Gaに駆動力を加えてから駆動回転に寄与しない左アームALに向けて伝達するべき第2クラッチC2を一旦、クラッチ切り状態から入り状態に戻すまでの回転角度γ´と、それに引き続く右アームARに係り遮断するべき第1クラッチC1を切り状態とするまでの回転角度γが含まれる。従って、(θ−γ´−γ)の角度範囲では第1回転角速度1sで回転する。一方、第2位置2pから下死点BDCおよび上死点TDCを越え第1位置1pに至るまでの第2領域2r即ち、(180+α+β)の角度範囲では、右アームARおよび右作用部SRは、第1回転角速度1sよりも速い第2回転角速度2sで回転する。
ここで、回転角度のα、β、θ、γおよびγ´は一周全回転を360分割した角度を1度としたときの角度数を表す数値とする。前述の回転角度γ´は、例えば右アームARの踏み込み開始時の反時計方向への回転角度であるが、これは、直前の左アームALの反時計方向への駆動回転によってクラッチ切り状態とされていた第2クラッチC2を再び入り状態に復帰させるための角度である。一方、γは引き続いての右アームARの同方向への回転によって、第1クラッチC1を切り状態とするまでの回転角度である。
上死点TDCから第1位置1pまでの所定角度αは必ずしも一定でなく、その設定には一定の余裕を持たせるのが良い。例えば右ペダルPRを踏み込む際には、踏み込みを終えるときの右アームARおよび右作用部SRの位置、即ち、下死点BDC手前の所定角度βも必ずしも一定ではない。しかし、その場合でも左アームALおよび左作用部SLが第1位置1pの近傍まで戻っていると次の左ペダルPLの踏み込みが容易となる。このように、ペダルを踏み込んだ側のクランクアームおよび作用部の下限位置がばらついた場合でも、そのばらつきの想定される範囲を十分に考慮して、他方のクランクアームが確実に上死点TDCを越えるように基準の所定角度αおよびβを設定する。
つまり、各クランクアームが小さい回転角速度で回る第1領域1r(駆動側)での駆動回転に寄与する回転角度が(180−α−β−γ´−γ)=(θ−γ´−γ)、大きな回転角速度で回る第2領域2r(従動側)での回転角度が(180+α+β)であり、従って、基本的には駆動側クランクアームから従動側クランクアームに至る駆動伝達増速比率が(180+α+β)/(θ−γ´−γ)になるように、駆動伝達経路を設定する。
このように、ペダルPを踏み込んだ側のクランクアームおよび作用部を第1位置1pから第2位置2pまで回転させると、他方のクランクアームおよび作用部が第2位置2pから第1位置1pまで戻るように構成することで、右アームARおよび右作用部SRと、左アームALおよび左作用部SLは各々に対応する右ペダルPRおよび左ペダルPLの踏み込みに際して必ず上死点TDCを越えた位置に設定される。よって、健常者はもちろん高齢者やリハビリテーション中の作用者にとっても踏み込みの開始動作が軽く円滑なものとなる。このようなクランク回転が交互に連続する結果、効率的で安定した出力回転の取り出しが可能となる。
図2に示すように、右ペダルPRはその先端にある右作用部SRの回転に伴って上下動するが、右作用部SRが第2位置2pを過ぎて当該第2位置2pから下の領域を移動する際にはストッパーBによって下降が止められる。よって、下死点BDCにある右作用部SRは右ペダルPRから離間している。これは、右作用部SRが下死点BDCに近付くほど、右ペダルPRに下向きに作用する外力のうち右アームARおよび右作用部SRの回転に寄与する分力が小さくなるため、この状態での入力を省略するものである。
図3(a)(b)(c)は、右アームARおよび右作用部SRと、左アームALおよび左作用部SLの相対位置を示したものである。例えば、図3(a)において破線で示した左アームALおよび左作用部SLが第1位置1pにあるとき、実線で示した右アームARおよび右作用部SRは第2位置2pにある。図3(b)に示すように、左ペダルPLの踏み込みにより、左アームALおよび左作用部SLが前記の(θ−γ´−γ)の角度のおよそ半分の高さまで回転したとき、右アームARおよび右作用部SRは前記の(180+α+β)の角度のおよそ半分の高さまで持ち上げられる。さらに左ペダルPLを踏み込むと、図3(c)に示すように、左アームALおよび左作用部SLが第2位置2pまで回転し、右アームARおよび右作用部SRは第1位置1pまで回動する。
本構成であれば、左ペダルPLの踏み込みにより、左アームALおよび左作用部SLが下死点BDCに近い第2位置2pに到達すると右アームARおよび右作用部SRが第1位置1pに復帰しているから、作用者は右ペダルPRの踏み込みを容易に開始することができる。よって、左ペダルPLについては、第2位置2pから下死点BDCに向かう領域での踏み込み操作は不要である。
図1および図2に示すように、左ペダルPLの踏み込みにより、下死点BDCを通過した右作用部SRは右ペダルPRに再び当接し、右ペダルPRを持ち上げようとする。このとき、右ペダルPRの持ち上げに係る右作用部SRの回転角速度は、左ペダルPLの踏み込みに係る左作用部SLの回転角速度よりも大きいから、右ペダルPRの慣性などによっては右ペダルPRの持ち上げ負荷が大きくなるとも考えられる。ただし、この状態では、作用者は左脚に力を加えており、体重の移動に伴い右脚は脱力しているため、右ペダルPRの持ち上げは容易に行われる。
(ギヤ列)
図4には、図3(a)のクランクアームの位置関係に対応させた機構部K1のギヤ列を示す。本実施形態のギヤ列では、右アームARと左アームALとの間に第1伝達経路T1と第2伝達経路T2とが設けられる。これら第1伝達経路T1および第2伝達経路T2は、図4に2組のギヤ列のセットとして一点鎖線で区切った第1セットS1と第2セットS2とを組み合わせて構成される。
例えば、第1セットS1は、右アームARを端部に有しクランク軸芯X1の周りに回転する右クランク軸2Rと、右クランク軸2Rに一体に設けられたアームギヤGAと、当該アームギヤGAと歯合して第1クラッチ軸芯X2の周りに回転し、駆動力が最初に入力される第1入力回転体Gaとしての第1ギヤG1と、当該第1ギヤG1と同軸芯で回転する第2ギヤG2と、当該第2ギヤG2と第1クラッチC1を介して連結される第5ギヤG5と、第2ギヤG2と歯合し第1カウンター軸芯X3の周りに回転する第3ギヤG3と、第3ギヤG3と同軸芯上で回転する第4ギヤG4とで構成される。
第2セットS2も第1セットS1と同じ構成であるが、第2セットS2の第1ギヤG1は第2入力回転体Gbとして機能し、第2セットS2の第1ギヤG1・第2ギヤG2・第5ギヤG5は、第2クラッチ軸芯X4の周りに回転可能であり、第3ギヤG3および第4ギヤG4は第2カウンター軸芯X5の周りで回転可能である。
図4に示すように、このような第1セットS1と同じ構成を有する第2セットS2とが対向する形で、右クランク軸2Rと第2セットS2の左クランク軸2Lとを共にクランク軸芯X1の上で一致させた状態に配置されている。
この状態で、第1伝達経路T1は、右クランク軸2Rから第1セットS1のアームギヤGA→第1ギヤG1→第2ギヤG2→第3ギヤG3→第4ギヤG4→第2セットS2の第5ギヤG5→第2クラッチC2→第2ギヤG2→第1ギヤG1→アームギヤGA→左クランク軸2Lの順で伝達される経路である。
一方の第2伝達経路T2は、左クランク軸2Lから第2セットS2のアームギヤGA→第1ギヤG1→第2ギヤG2→第3ギヤG3→第4ギヤG4→第1セットS1の第5ギヤG5→第1クラッチC1→第2ギヤG2→第1ギヤG1→アームギヤGA→右クランク軸2Rの順で伝達される経路である。
図3に示した、各クランクアームAR,ALの上死点TDCを越えた角度である所定角度αと、下死点BDCの手前の角度である所定角度βの合計角度は、駆動回転の回転角速度を高めて従動回転に伝達する回転角速度増大比率(180+α+β)/(θ−γ´−γ)を変更することで設定できる。例えば、本実施形態では、第1クラッチ軸芯X2と第1カウンター軸X3、および第2クラッチ軸X4と第2カウンター軸X5の各軸間距離を変えずに第4ギヤG4と第5ギヤG5の歯数を変えて回転角速度増大比率を変更することができる。そのため、第4ギヤG4と第5ギヤG5の入れ替え脱着が容易にできる構造とする。
第1伝達経路T1、第2伝達経路T2の双方において、駆動回転の回転角速度を高めて従動回転に伝達する回転角速度増大は複数箇所のギヤ歯合伝達で段階的に行ってもよいし、1箇所のギヤ歯合伝達で行ってもよい。いずれにしても、特に本実施形態では、第1伝達経路T1、第2伝達経路T2の双方の伝達経路において、第4ギヤG4の歯数に対して第5ギヤG5の歯数が少なく構成されて回転角速度増大比率の大部分を担わせるようにしている。これらの構成により、具体的には後述するクラッチCの機能と合わせて、第1伝達経路T1は、右アームARの駆動回転を左アームALに従動回転として(180+α+β)/(θ−γ´−γ)の比率で回転角速度を高めて伝達し、第2伝達経路T2は、左アームALの駆動回転を右アームARに従動回転として(180+α+β)/(θ−γ´−γ)の比率で回転角速度を高めて伝達する。
右アームARおよび左アームALの右クランク軸2Rあるいは左クランク軸2Lへの取付けは、適切な角度で割り出し調節が可能なスプライン2a等の回転方向に係合するはめ合い部を持ち、例えば左右ペダルの往復踏み込み運動を行う場合の作用者の脚の踏込み方向からみた上死点TDC、下死点BDCから所定角度αおよびβを割り出してはめ込めるように構成してある。
(クラッチ)
図4乃至図6に示すように、第1セットS1および第2セットS2における第2ギヤG2と第5ギヤG5との間にはクラッチCを設けてある。第1セットS1にあるものが第1クラッチC1であり、第1入力回転体Ga即ち、第1ギヤG1への回転入力に際して第2ギヤG2と第5ギヤG5との伝達を切り操作して第2伝達経路T2の伝達を遮断する。一方、第2セットS2にあるものが第2クラッチC2であり、第2入力回転体Gb即ち、第1ギヤG1への回転入力に際して第2ギヤG2と第5ギヤG5との伝達を切り操作して第1伝達経路T1の伝達を遮断する。
第1クラッチC1および第2クラッチC2の構成につき、図5には第1クラッチC1の構成を示す。尚、第1クラッチC1と第2クラッチC2の構成は同じである。
第1クラッチC1は、機構本体を構成する第1フレームK1aに固定された内軸3と、この内軸3に外挿され、内軸3と軸方向および回転方向に摺動可能状態ではめ合う外軸4と、後述するように外軸4に支持されている種々の部材および部品によって構成される。第1フレームK1aのボス部にねじ込まれた内軸3の軸段部の内部小径側には第1ベアリングCr1が設けられ、後述する第2クラッチ部材Cbと第5ギヤG5が回転支持される。
外軸4は、第1クラッチC1を構成するバネ受部材Cgおよび第2ベアリングCr2を介して第2フレームK1bに回転支持されるが、バネ受部材Cgとは第1クラッチ軸芯X2に沿う方向および回転方向共に摺動可能状態ではめ合っている。
第1クラッチC1は、駆動回転を伝達する第1クラッチ部材Caおよび第2クラッチ部材Cbを有する。第1クラッチ部材Caは、内面に雌ネジが切られた筒状の部材であって、外軸4の軸方向に沿って形成された一対の前後壁Ca1と、当該前後壁Ca1を残して削り込まれた平面で構成される4面の第1クラッチ面Ccとを有し、前後壁Ca1のあいだで各々の第1クラッチ面Ccにボール部材Cdを一つずつ保持している。それぞれのボール部材Cdは、前後壁Ca1よりも外側に所定寸法張り出しており、後述の第2クラッチ部材Cbに当接可能である。
一方の円筒状の第2クラッチ部材Cbには、ボール部材Cdが内側から当接可能な円錐穴状の第2クラッチ面Ceを備えている。第2クラッチ部材Cbには第5ギヤG5が一体的に結合されている。
第2クラッチ部材Cbに挿入された第1クラッチ部材Caのボール部材Cdは、例えばコイルスプリングで構成された付勢部材Cfによって、第2クラッチ部材Cbの第2クラッチ面Ceに押し付けられ、前後壁Ca1のあいだで第1クラッチ面Ccと第2クラッチ面Ceとで挟持される。第1クラッチ部材Caは、外軸4の一方の端部に切られる雄ネジにねじ込まれた上に第1固定部材Cm1によって外軸4に一体的に結合され、さらに、隣接する第1クラッチ面Ccどうしの間に設けた雌ネジ部11aに固定ネジ11bをねじ込んで固定するようになっている。
付勢部材Cfの端部は、筒状のバネ受部材Cgによって反力支持され、バネ受部材Cgは第2ベアリングCr2を介して第2フレームK1bによって反力支持されている。この状態で、第1クラッチ部材Caと第2クラッチ部材Cbとが相対回転することで、ボール部材Cdが、平面上の第1クラッチ面Ccに沿って第1クラッチ軸芯X2に対する周方向に移動させられ、第1クラッチ面Ccと第2クラッチ面Ceとで形成されるくさび状の隙間の狭い側に押し寄せられて係合し、第1クラッチ部材Caと第2クラッチ部材Cbとの相対回転が阻止される。
第1クラッチ部材Caのボール部材Cdを、第2クラッチ部材Cbの第2クラッチ面Ceに十分な付勢力で押し付けることができるよう、付勢部材Cfの付勢力は調節可能である。即ち、第2ベアリングCr2に反力支持されるバネ受部材Cgと第1クラッチ部材Caとの間隔を調節する。
具体的にはまず、外軸4の第1クラッチ部材Caが取付く方の端部と反対側の他端部から、沈みキーである第2キー部材72と第1クラッチ軸芯X2の方向に滑り移動が可能な状態に第2ギヤG2を挿入する。これにより、第2ギヤG2は、外軸4に対して相対回転不能かつ第1クラッチ軸芯X2の方向に沿って移動自在となる。次に、第2ギヤG2のボス部外径に回転滑り可能のスラスト受けリング8aを外挿させ、次に第1ギヤG1を、摺動軸受8bを介して回転自在に外挿させる。第1ギヤG1には、後述する第1カム板Ch1が結合されている。さらに第2カム板Ch2を、第3キー部材73を効かして外軸4に外挿し、こちら側の外軸4の端部に切られる雄ネジに第2固定部材Cn1および第2ロックナットCn2をねじ込み結合する。
次に、第2ギヤG2および第1ギヤG1を組込んだ外軸4を、第2ベアリングCr2を介して第2フレームK1bに回転支持されるバネ受部材Cgに摺動軸受8cを介して挿入し、付勢部材Cfをバネ受部材Cgにはめ込む。その後、外軸4の第2ギヤG2および第1ギヤG1が取付く反対側のネジ端部に対し、第1クラッチ部材Caを、工具等を使用して付勢部材Cfをその付勢力に抗して所定長さ縮めるまでねじ込んだ後、第1固定部材Cm1で固定結合する。このとき、内軸3のねじ込み深さを変えることで付勢部材Cfの全長が変化し、付勢力の調節が可能となる。
続いて、その状態の第1クラッチ部材Caに第2クラッチ部材Cbおよび第5ギヤG5を外挿する。一方、第1フレームK1a外側から、そのボス部のネジ穴に内軸3をねじ込みながら、その内軸3の先端から第1ベアリングCr1を介して第2クラッチ部材Cbおよび第5ギヤG5をはめ込む。尚、第1フレームK1aのボス部のネジ穴にねじ込まれる内軸3は、二つの筒状の摺動部材8dを介して外軸4に内挿され、外軸4の内径部に対して軸方向および回転方向に摺動可能状態に設置される。
第1フレームK1aの外側方向の内軸3の端部には、ネジ部3aと、工具を装着する角軸部3bが形成してある。角軸部3bを回すことで内軸3は第1フレームK1aの内部に螺入され、ネジ部3aの近傍に形成された段部3cによって第1ベアリングCr1を内部に押圧する。これにより、第2クラッチ部材Cbが第1クラッチ部材Caにあるボール部材Cdに当接し、さらに第1クラッチ部材Caおよび外軸4を第1ギヤG1の方向に向けて押圧する。
第1クラッチ部材Caのボール部材Cdを、第2クラッチ部材Cbの第2クラッチ面Ceに押し付ける付勢部材Cfの付勢力を十分に発揮させるために、第2クラッチ部材Cbが第1クラッチ部材Caにあるボール部材Cdに当接するまで内軸3をねじ込んだ後、付勢部材Cfをさらに若干の追加長さを縮め、第1クラッチ部材Caにあるボール部材Cdと第2クラッチ部材Cbの第2クラッチ面Ceとの当接面に、十分な付勢部材Cfによる押圧力が掛かるようにする。
このとき、付勢部材Cfを縮める追加長さ分、外軸4を第2ギヤG2および第1ギヤG1の方向に移動させ、第2カム板Ch2の前後で隙間が生じるので、第1クラッチC1の入切の動作性能を高めるため、第2固定部材Cn1および第2ロックナットCn2を締めてその隙間を詰める。また、同時に内軸3のネジ部3aにも第3ロックナット3dを締結しておくようにする。
第1クラッチC1において、第1クラッチ部材Caと第2クラッチ部材Cbとの係合を解除するには、第1クラッチ部材Caを第2クラッチ部材Cbに対して第1クラッチ軸芯X2の延出方向に沿って離間する方向に移動させる。これによりボール部材Cdは、円錐穴状の第2クラッチ面Ceから離間する方向に移動し、係合状態が解除される。
外軸4には、図5に示すように、第2ギヤG2が軸方向に相対移動可能とする第2キー部材72で回転を同期するように係合し、第1ギヤG1は、自身に形成したボス部内径が、回転方向および軸方向に摺動可能に第2ギヤG2のボス部に外挿されている。従って、第1ギヤG1は、第1クラッチC1の切り操作中は、第2ギヤG2と相対回転し、第1クラッチC1の切り操作が終了した後は、第2ギヤG2と一体的に回転する。第1ギヤG1の側面にはカム爪Cjが形成された第1カム板Ch1がボルト9などで一体的に結合されている。
第1カム板Ch1に隣接する位置にはカム溝Ckが形成された第2カム板Ch2が設けられていて、第2カム板Ch2と共にカム機構Ciの主要構成部品となる。第2カム板Ch2は、外軸4と一体的に回転し、かつ、外軸4の軸方向に移動できるよう第3キー部材73を用いて外軸4に取り付けられた上、外軸4の端部に設けたネジ部に、第2固定部材Cn1および第2ロックナットCn2を用いて一体的に結合される。これにより、第1カム板Ch1のカム爪Cjと、第2カム板Ch2のカム溝Ckとを対向密着させ、相対回転あるいは押圧一体回転させるカム機構Ciが構成される。
図5および図6に示すように、第1ギヤG1のボス部の一方の側面は、前述のスラスト受けリング8aを介して第2ギヤG2の一方の側面に当接している。第1ギヤG1の他方の側面には第1カム板Ch1が一体的に結合されていて、第1ギヤG1および第1カム板Ch1は、第2ギヤG2と第2カム板Ch2とで形成される隙間に挟まれている。
第2ギヤG2の他方の側面G2aは、第2フレームK1bに軸方向が規制されて取り付く第2ベアリングCr2の内輪側面に当接している。これにより第1ギヤG1および第2ギヤG2は、軸方向に沿う一方側の端部位置が設定される。尚、第2ベアリングCr2の内輪のうち反対側の側面にはバネ受部材Cgが当接しており、バネ受部材Cgも軸方向に沿う一方側の端部位置が設定される。図6(a)に示すように、第2ギヤG2の一部は、バネ受部材Cgの一部に外挿させる状態にし、外軸4の軸方向に沿うサイズのコンパクト化を図っている。
このような第1クラッチC1および第2クラッチC2を図4に示すように組み合わせた本構成の駆動伝達機構Kは次のように機能する。第1クラッチC1および第2クラッチC2が入り状態にある初期の状態では第1カム板Ch1のカム爪Cjと、第2カム板Ch2のカム溝Ckとが対向密着しており、右アームARおよびアームギヤGAに駆動力を加え、第1ギヤG1に駆動力が入力されても、第1伝達経路T1および第2伝達経路T2が連結状態にあって、全体の駆動伝達経路の内、回転角速度を高めて伝達する経路が部分的に閉ループとなる。そのため、当該伝達経路上での伝達回転角速度の不一致が生じ、回転伝達がロックされ、例えば、右アームARおよび第1ギヤG1即ち、第1入力回転体Gaの回転が一旦、阻止される。
しかし、引き続き右アームARおよびアームギヤGAに駆動力を加え、第1ギヤG1に駆動力が入力されると、第1ギヤG1と一体的に回転する第1カム板Ch1が、第1クラッチ部材Caと一体的に回転する第2カム板Ch2と相対回転する。これにより、第1カム板Ch1に設けられたカム爪Cjの傾斜駆動当接面Cj1と、第2カム板Ch2に設けられたカム溝Ckの傾斜駆動当接面Ck1とのあいだで押圧状態での滑りが生じる。この結果、第2カム板Ch2が、外軸4と共に第1クラッチ軸芯X2の方向に第1クラッチC1が切り状態となるまでスライド移動し、図6(b)に示すように、第1セットS1にある第1クラッチC1の第1カム板Ch1と第2カム板Ch2とのあいだに間隔d1が一旦、生じる。
その結果、第2伝達経路T2にある遮断するべき第1クラッチC1だけが切り状態となり、右アームARおよび第1入力回転体Gaに入力された駆動力は、連結状態にある第2クラッチC2が設けられた第1伝達経路T1を介して第2入力回転体Gb、左アームALに伝達される。第1ギヤG1に駆動回転力が入力され続ける限り、第1カム板Ch1と第2カム板Ch2は傾斜駆動当接面Cj1,Ck1どうしの押圧状態が維持され一体化回転し、第1クラッチC1も切り状態が維持される。
第1カム板Ch1と第2カム板Ch2とのあいだに間隔d1が生じた後、駆動回転の負荷が大きければ、第1カム板Ch1の傾斜駆動当接面Cj1と第2カム板Ch2の傾斜駆動当接面Ck1とがさらに滑動し、第2カム板Ch2は第1カム板Ch1からより離間する方向に移動する場合がある。
ただし、第2カム板Ch2がさらに外方に移動すると、外軸4に段部4aを設けること等により構成した移動規制部により、第1カム板Ch1と第2カム板Ch2との最大間隔が一定の値に設定される。即ち、第2カム板Ch2がさらに外方に押されるとき、外軸4に形成した段部4aが第2ギヤG2の側面G2aに当接するから、第1ギヤG1と第2カム板Ch2との距離は一定以上には広がらない。この結果、第2カム板Ch2に伝わる移動規制部による移動抵抗力が、第1入力回転体Gaに加わる駆動力による移動力と釣り合う状態で、第1カム板Ch1は、第1ギヤG1と第2カム板Ch2とに挟持固定されて一体化回転することとなり、図6(b)に示すように、この状態での第1クラッチC1の第1カム板Ch1と第2カム板Ch2との間隔が最大のdTとなる。
尚このとき、第2セットS2にある第2クラッチC2が入り状態にあり、第2セットS2にある第1伝達経路T1上の外軸4を介して第2ギヤG2および第2カム板Ch2が従動回転するときは、第2カム板Ch2のカム溝Ckに設けた従動当接面Ck2が、第1カム板Ch1のカム爪Cjに設けた従動当接面Cj2を押圧する。これら従動当接面Ck2,Cj2は第2クラッチ軸芯X4周りの回転方向に対して略垂直に形成してあり、第2カム板Ch2の回転駆動力を第1ギヤG1に確実に伝達することができる。
引き続いて、左アームALおよびアームギヤGAに駆動力を加え、第2入力回転体Gbに駆動力が入力されようとするときは、第2セットS2にある第1伝達経路T1上の第2クラッチC2は入り状態にあるが、第1セットS1にある第2伝達経路T2上の第1クラッチC1は切り状態のままで、そちらの第1カム板Ch1と第2カム板Ch2との間隔はd1〜dTとなっており、カム溝Ckに設けた従動当接面Ck2と、第1カム板Ch1のカム爪Cjに設けた従動当接面Cj2とは対向密着せず隙間の空いた状態になっている。
従って、左アームALおよびアームギヤGAに駆動力を加え、第2入力回転体Gbに駆動力を入力すると、まず、逆方向のルートで連結状態にある第1伝達経路T1を介して、切り状態にある第2伝達経路T2上の第1クラッチC1の第1カム板Ch1と第2カム板Ch2とを、隙間の空いた各従動当接面Ck2,Cj2が当接する方向に相対回転させて、d1〜dTである第1カム板Ch1と第2カム板Ch2との間隔をゼロとさせ、その結果、第1クラッチC1を入り状態とさせる。
さらに、左アームALおよびアームギヤGAに駆動力を加え、第2入力回転体Gbに駆動力が入力されると、右アームARおよびアームギヤGAに駆動力を加えるときと同様に伝達経路の部分的閉ループにより回転伝達ロックが生じ、左アームALおよび第2入力回転体Gbの駆動回転が一旦、阻止される。
これにより、次に左アームALおよびアームギヤGAに駆動力が加えられ、第2入力回転体Gbとしての第1ギヤG1に駆動力が入力されると、右アームARおよびアームギヤGAに駆動力を加えるときと同様の動作態様により、遮断するべき第2クラッチC2だけが切り状態となり、入力された駆動力は、入り状態にある第1クラッチC1が設けられた第2伝達経路T2を介して第1入力回転体Ga、右アームARに伝達される。
このとき、第1セットS1にある第1クラッチC1が入り状態にあり、第2セットS2にある第2クラッチC2が入り状態にあるときと同様に、第1セットS1にある第2カム板Ch2のカム溝Ckに設けた従動当接面Ck2と、第1カム板Ch1のカム爪Cjに設けた従動当接面Cj2は第1クラッチ軸芯X2周りの回転方向に対して略垂直に形成してあり、第2カム板Ch2の回転駆動力を第1ギヤG1に確実に伝達することができる。
さらに継続的に、右アームARと左アームALとを交互に駆動回転させて、各アームギヤGAに回転入力を行う場合には、駆動側のクランクアームが一旦、僅か回転し、その時点で入り状態である遮断するべき側のクラッチCを介して、その時点で切り状態である伝達するべき側のクラッチCを、クラッチCを構成するカム機構Ciにより入り状態に戻し、さらに続けて駆動力を加えると、その後は本来、遮断するべき側のクラッチCをクラッチ切り状態とさせる態様が繰り返される。
また、前述の右アームARの踏み込み開始から踏み込み終了までの回転角度θは左アームALの踏み込みの場合も同様の角度であり、このθには、駆動伝達させる側のクラッチCを切り状態から入り状態に戻すまでの回転角度γ´と、遮断させる側のクラッチCを入り状態から切り状態とするまでの回転角度γとが含まれ、いずれも実際の駆動回転に寄与しない。この回転角度θに対する回転角度γ´およびγの割合は、傾斜駆動当接面Cj1,Ck1の回転径と傾斜角の設定で極力小さなものにすることが可能である。
カム機構Ciの動作態様をさらに詳細に説明する。図5に示すように、カム爪Cjは、第1ギヤG1および第1カム板Ch1の回転方向に対して傾斜した傾斜駆動当接面Cj1と、回転方向に対して略垂直な従動当接面Cj2とを備えている。一方、第2カム板Ch2のカム溝Ckにも同様な傾斜駆動当接面Ck1と従動当接面Ck2が形成されている。これにより、例えば、右アームARへの駆動回転力の入力によって第1ギヤG1即ち、第1入力回転体Gaおよびそれと一体的に結合されている第1カム板Ch1が図6(b)に示す方向に回転する場合、回転駆動力を伝達する第2ギヤG2以降のギヤ列に例えば、伝達経路の部分的閉ループにより回転伝達ロックが生じる等の所定以上の駆動抵抗が存在すると、第1カム板Ch1のカム爪Cjの傾斜駆動当接面Cj1が第2カム板Ch2のカム溝Ckの傾斜駆動当接面Ck1に当接して、第1カム板Ch1が第2カム板Ch2に対して押圧状態で滑動しつつ相対回転する。すると、傾斜駆動当接面Cj1および傾斜駆動当接面Ck1のくさび効果によって、第2カム板Ch2が一体的に係合されている外軸4と共に第1クラッチ軸芯X2の方向にスライドして移動して第1カム板Ch1と第2カム板Ch2とのあいだの間隔がd1となり、外軸4に一体固定されている第1クラッチ部材Caが第2クラッチ部材Cbから離間する。その結果、第1クラッチC1が切り状態となる。
このとき、第2クラッチC2は切れておらず、第1セットS1の第2ギヤG2の回転は、第1伝達経路T1を介して、第2セットS2の第2ギヤG2に伝達される。この第2ギヤG2と外軸4、第2カム板Ch2および第1カム板Ch1を介して連動する第1ギヤG1即ち、第2入力回転体Gbは、左アームALに連結されたアームギヤGAと歯合しているが、左アームALでは作用者の踏み込みが終了した段階であるからアームギヤGAおよび第2入力回転体Gbは駆動側の方向にはほぼ静止したままである。この結果、第2セットS2の第2ギヤG2に連動して回転しようとする第2カム板Ch2の従動当接面Ck2が、静止している第1ギヤG1即ち、第2入力回転体Gbに一体的に結合されている第1カム板Ch1の従動当接面Cj2を押圧して一体化し、第1ギヤG1即ち、第2入力回転体Gbさらに、アームギヤGAおよび左アームALを従動させる
またこのとき、駆動回転の負荷が大きい場合等に、第1クラッチ部材Caはさらに第2クラッチ部材Cbから離間する方向に移動を継続することがある。しかし、その場合でも全移動距離dTを設定する移動規制部を設けたカム機構Ciとしているので、第1カム板Ch1と第2カム板Ch2は、互いの傾斜駆動当接面Cj1,Ck1で一定以上の面積を維持し、その係合が損なわれずに押圧反力を発生させつつ一体化され、駆動回転力の伝達が確実に行なわれる。
一方、左アームALへの駆動回転力の入力によって、第2入力回転体Gbとしての第1ギヤG1が回転する場合も同様の理由により、第1クラッチC1は切れていないので第2セットS2の第2ギヤG2の回転は、第2伝達経路T2を介して、第1セットS1の第2ギヤG2に伝達され、第1セットS1の第2ギヤG2に連動して回転しようとする第2カム板Ch2の従動当接面Ck2が、静止している第1ギヤG1即ち、第1入力回転体Gaに一体的に結合されている第1カム板Ch1の従動当接面Cj2を押圧して一体化し、第1ギヤG1即ち、第1入力回転体Gaさらに、アームギヤGAおよび右アームARを従動させる。
このとき、右アームARへの駆動回転力の入力が行われるときと同様に、全移動距離dTを設定する移動規制部を設けたカム機構Ciにより、第1カム板Ch1と第2カム板Ch2は、互いの傾斜駆動当接面Cj1,Ck1で一定以上の面積を維持し、その係合が損なわれずに押圧反力を発生させつつ一体化され、駆動回転力の伝達が確実に行なわれる。
また、前述のように右アームARおよびアームギヤGAへの駆動回転力の入力に引き続いて、左アームALおよびアームギヤGAに駆動力を加え、第2入力回転体Gbに駆動力が入力されようとするときは、第1セットS1にある第2伝達経路T2上の第1クラッチC1は切り状態のままで、そちらの第1カム板Ch1と第2カム板Ch2との間隔はd1〜dTとなっており、カム溝Ckに設けた従動当接面Ck2と、第1カム板Ch1のカム爪Cjに設けた従動当接面Cj2とは対向密着せず隙間の空いた状態になっている。
従って、左アームALおよびアームギヤGAに駆動力を加え、第2入力回転体Gbに駆動力が入力されると、まず、逆方向のルートで連結状態にある第1伝達経路T1を介して、切り状態にある第2伝達経路T2上の第1クラッチC1の第1カム板Ch1と第2カム板Ch2との隙間の空いた各従動当接面Ck2,Cj2が当接する方向に相対回転して、d1〜dTである第1カム板Ch1と第2カム板Ch2との間隔がゼロとなり、その結果、第1クラッチC1が入り状態となる。そしてさらに、左アームALおよびアームギヤGAに駆動力を加えると、伝達経路の部分的閉ループにより回転伝達ロックが生じる結果、前述のカム機構Ciの動作態様により第2クラッチC2が切り状態となる。
尚、駆動側のカム機構Ciのカム爪Cjおよびカム溝Ckに形成されている傾斜駆動当接面Cj1,Ck1が傾斜面であるのに対し、従動当接面Cj2,Ck2が第1カム板Ch1および第2カム板Ch2の回転方向に対して略垂直面である場合は、従動側のクランク負荷がかなり大きい場合でも確実に作動させることができる。しかし例えば、何れか一方のペダルPの特定方向の踏み込み操作で、踏み込んだ側のクランクアームおよび入力回転体に特定方向の回転駆動力が入力されるときに、他方のペダルが障害物等でロックされていると本機器の損傷を来したり、障害物が人体の一部の場合は傷害を引き起こす可能性がある。これらの可能性をなくすためと、従動側クランクに多少の負荷が掛かっても、駆動側のカム機構Ciのカム爪Cjが確実に先に滑りクラッチCが切り状態となるように、従動当接面Cj2,Ck2は第1カム板Ch1および第2カム板Ch2の回転方向に対して垂直面でないが傾斜駆動当接面Cj1,Ck1の傾斜角度よりも垂直に近い角度を有する傾斜面としてもよい。
このように第1クラッチC1および第2クラッチC2を設けることで、例えば、押し込み作動クランクの回転において、右アームARと左アームALとに駆動力を交互に入力するだけで駆動回転の伝達経路が容易に切り替わり、右アームARと左アームALとの回転角速度を変化させ、上死点TDCを越えた第1位置1pから下死点BDCの手前の第2位置2pまでを駆動回転範囲とする上死点TDCおよび下死点BDC回避の駆動伝達構成としたクランク回転の駆動伝達機構Kを得ることができる。
本構成の駆動伝達機構Kは、図4に示すように、右アームARまたは左アームALに加えた力を取り出す出力部J2を備えている。この例では、第1セットS1のアームギヤGAに出力用回転体のスプロケットJ2aを設けた。スプロケットJ2aの回転はチェーンなどを介して発電機6のスプロケットJ2bに伝達され、発電機6に設けた回転電機子等を回転させる。尚、スプロケットJ2a、J2bおよびチェーンに代わる適切な出力取り出し手段も可能である。ここで生じた電力は蓄電池に充電しておいてもよい。また、発電機6の代わりに摩擦などを利用した負荷部材を設けておき、健康器具として用いることも可能である。
(ストッパー)
図7に示すように、本構成の駆動伝達機構Kには、作用者が右ペダルPRあるいは左ペダルPLを違和感なく踏み込めるようにストッパーBを設けてある。ストッパーBは、例えば、一種のステアクライマーのベース10に設けてあり、上向きに付勢された出退部Baを有する。具体的には、互いにネジ係合された筒状のケースBbおよび基部Bcを備えており、基部Bcがベース10に固定してある。ケースBbを基部Bcに対して回転させることで、出退部Baの設定高さを変更することができる。
出退部BaとケースBbのあいだには、ケースBbを上向きに付勢するコイルバネなどの付勢部材Bdが内装されており、この付勢部材Bdを受け止める底部材BeがケースBbに螺合してある。底部材Beの高さを変更することで、付勢部材Bdの付勢力を調節することができる。
底部材Beの上面には、例えばリング状のゴム等で形成した弾性部材Bfが設けてある。これにより、例えば出退部Baが右ペダルPRによって押し下げられたとき、出退部Baの下端部が衝撃を吸収しつつ受け止められる。その結果、作用者がペダルPを踏み込んだ際の踏み込み感を良好なものにする。
図7(a)は例えば右ペダルPRの下面が出退部Baに当接し、さらに、右ペダルPRが踏み込まれ付勢部材Bdが縮み込んで、出退部Baの下端部が弾性部材Bfに当接した状態である。右ペダルPRの可動部の下端がこれにより決定される。
図7(a)では、作用者の脚が右ペダルPRを踏み続けている状態であり、この後、踏力が作用し始めた左ペダルPLの回転に伴って右アームARが回転し、右アームARの右作用部SRが右ペダルPRの下面から離間する。
図7(b)は、右作用部SRが右ペダルPRの下面に再び当接した状態である。この状態では、作用者の脚の踏み込み力が少なくなっており、付勢部材Bdのストローク上限まで右ペダルPRが持ち上げられている。この後、右アームARがさらに従動回転し、右ペダルPRが出退部Baから離れる。
本構成によれば、弾性部材BfによってペダルPへの衝撃が吸収される効果の他、作用者がペダルPを踏み込んだあとペダルPが押し戻されるまでの時間を長く感じるという効果が得られる。作用者がペダルPの踏み込みを終了したと感じる状態は、図7(a)の出退部Baが弾性部材Bfに当接した瞬間である。一方、ペダルPが押し戻されたと感じる状態は、図7(b)のペダルPの裏に右作用部SRが再度当接した瞬間である。
図7(a)の状態から図7(b)の状態にかけて、出退部Baは付勢部材Bdのストロークh3の分だけ上方に変位しており、右作用部SRがペダルPから下方に離間する瞬間の位置と、右作用部SRがペダルPに再度当接する瞬間の位置とに高程差が生じる。よって、作用者は、ペダルPを踏み込んでいる時間を長く感じることとなる。これにより、例えば右ペダルPRに載せている脚には運動を一定時間遅れる感覚が生まれ、作用者が自己のタイミングとペースで円滑な踏込運動を持続することができる。
尚、右ペダルPRが付勢部材Bdによって上昇を始めた後に右作用部SRが当接すれば、両者の相対速度が小さくなっているため、当接時の衝撃がより緩和され違和感の少ない装置を得ることができる。
〔第2実施形態〕
図8(a)(b)には、一種のステアクライマーに使用するペダルPの別実施形態を示す。これらの状態は、図7の各図に示した状態と同じである。ただし、本実施形態では、ペダルPの下面の内、右作用部SRの当接面に傾斜部Paを設け、例えば、右作用部SRがペダルPから離間する瞬間の右作用部SRの高さと、右作用部SRが再びペダルPに当接する瞬間の右作用部SRの高さの差を増大させている。
図8(a)(b)に示したように、右作用部SRがペダルPから下方に離間する瞬間の右作用部SRの高さh1と、右作用部SRが再びペダルPの傾斜部Paに当接する瞬間の高さh2とのあいだには、ペダルPの傾斜部Paの効果もあって行程差(h2−h1)が生じる。本構成であれば、作用者が感じるペダルPの踏み込み終了の瞬間から再度ペダルPが持ち上げられる瞬間までの時間がより長く設定される。このように踏み込んだ脚が停止する時間がより長くなることで、階段を上る模擬動作がより自然なものとなる。
ペダルPの下面の内、右作用部SRの当接面は、上記の如く右作用部SRが離間する位置と再度当接する位置とで高さが異なっており、ペダルPの持ち上げに際して右作用部SRがペダルPの下面に沿って摺接する際に過度な障害が生じないものであれば何れの形状であっても良い。例えば、ペダルPのつま先方向に行くほど上方にカーブする凸曲面であってもよい。
〔第3実施形態〕
本発明の駆動伝達機構Kは、図9に示すように通常の自転車のペダルPを持った背もたれのあるリカンベント式自転車の健康器具に適用することもできる。この実施形態では左ペダルPLおよび右ペダルPRが特定の踏み込み方向に各々当接する対象としての右作用部SRおよび左作用部SL自体が、左右のペダルPの回転芯となっている。この場合でも、踏み込む側のペダルPが踏み込む方向に沿った上死点TDCを超えた位置まで戻るように設定できるから、健常者はもちろん、高齢者やリハビリテーション中の作用者にとっても踏み込みの初期動作が非常に楽なものとなる。尚、このようにクランクアームの先端に設けた作用部を中心に回転するペダルPに、作用者自身の重力がほとんど掛からない両脚を掛けて漕ぐ場合には、左右のペダルPが下死点BDC近傍で停止する領域を特に設けなくてもよい。
さらに、本発明の駆動伝達機構Kは、実際に道路を走行する自転車に適用することもできる。例えば上り坂を走行するような場合に、ペダルPの位置が上死点TDCを越えているから、体力の消耗の少ない走行を行うことができる。
〔他の実施形態〕
カム爪Cjおよびカム溝Ckの構成については、第1カム板Ch1にカム溝Ckを設け、第2カム板Ch2にカム爪Cjを設けてもよい。
各クランクアームは、左右の第1入力回転体Gaおよび第2入力回転体Gbに直接取り付け、第1クラッチ軸芯X2と第2クラッチ軸芯X4とを同一軸芯にする構成でもよい。
クラッチCは、本実施形態のように第1クラッチ部材Caにボール部材Cdを、円筒状の第2クラッチ部材Cbの円錐穴面に当接させるものの他に、ボール部材Cdを円錐ころに変えるものでもよい。また例えば、第1クラッチ部材Caと第2クラッチ部材Cbとの相対する面が、第1クラッチ軸芯X2に垂直または平行な面、あるいは傾斜した面で平面状または円筒状、あるいは円錐状等の任意の摩擦面を形成しておくものでもよい。さらに、摩擦面ではなく、係脱可能な適切な噛み合い凹凸面または機構を形成しておいてもよい。
また、クラッチCは、電磁式のものや流体式のものでクランクアームの動きやクランクアームへの入力の大きさなどをセンシングしてクラッチCを切るものであっても良い。このとき、クラッチCを設ける位置は第1伝達経路T1および第2伝達経路T2上であれば、本実施形態の位置に限定する必要はない。
さらに、作用者が押し込み作動により駆動回転力を入力するものの他、作用者に代わり機械的にアクチュエータ等が入力するものであっても良い。その際のクラッチCの入切の信号は無線あるいは有線で伝達することができる。
本発明に係るクランク回転駆動伝達機構は、例えば押し込み作動や小回転角回転の駆動力を交互に入力して回転出力を得るような装置に対して広く適用することができる。
1p 第1位置
2p 第2位置
AR 第1クランクアーム
AL 第2クランクアーム
B ストッパー
BDC 下死点
C1 第1クラッチ
C2 第2クラッチ
Ca 第1クラッチ部材
Cb 第2クラッチ部材
Cf 付勢部材
Ci カム機構
Cj1 傾斜駆動当接面
Ck1 傾斜駆動当接面
Ga 第1入力回転体
Gb 第2入力回転体
J2 出力部
K クランク回転駆動伝達機構
P ペダル
PR 第1ペダル
PL 第2ペダル
SR 第1作用部
SL 第2作用部
T1 第1伝達経路
T2 第2伝達経路
TDC 上死点
本発明は、クランク回転駆動力を交互に入力する二つの入力回転体を備えたクランク回転駆動伝達機構に関する。
従来、このようなクランク回転駆動伝達機構としては、例えば、以下の特許文献1に示すものがあった。即ち、この文献に係る技術は、フィットネスマシンに発電機と蓄電池を組み合わせ、発電効率が良く電力を広範に利用しようとするものである。
このクランク回転駆動伝達機構は、ペダルを人力で操作するエアロバイクやステッパーなどのフィットネスマシンに搭載され、ペダルにより駆動されて発電を行うアウターローター型DCブラシレス永久磁石同期発電機若しくはポールチェンジDCブラシレス永久磁石同期発電機を備え、この同期発電機に接続され、同期発電機による発電を制御する発電機コントローラーと、同期発電機に接続され、蓄電する蓄電池と、この蓄電池に接続され、蓄電池に蓄電された電気を変換して出力するDC/ACインバーターとを備えている。
このステッパーと称する装置では、例えば、左右の180度の回転位相差を持たした固定連結のペダルクランクが前後に配備され、左右のペダルでリンク状につながれている。各ペダルクランク先端の回転軸受けに取付けられた左右の二つのペダルを両脚で交互に踏み込み回転駆動を発電機に伝達する。踏み込み動作で回転するペダルクランクの上死点、下死点はフライホィールを取り付けて回避する機構としている。
また、発電機コントローラーには、ペダル位置センサーが接続され、ペダルがおおよそ水平状態から下方に強く踏み込まれる位置をペダル位置センサーが検出し、この検出値が入力された発電機コントローラーは、それに応じて発電パルスを制御し、発電負荷を増やし、発電量が増強される。
一方のペダルが最も低い位置に達し、他方のペダルが最も高い位置に達した際には、ペダル位置センサーがそれを検出し、この検出値が入力された発電機コントローラーは、それに応じて発電パルスを制御し、発電負荷を減らし、通常発電量に戻すようになっている。
このように、この従来装置によれば、フライホィールを取り付け、180度回転位相差を持たせた固定連結ペダルクランクを前後に配備して、平行リンク構造となるように左右のペダルがペダルクランク先端の回転軸受けに取り付けられていて、その左右のペダルを交互に踏み込む機構のフィットネスマシンの使用で得られる発電電力を広範に利用でき、しかも高い発電効率で発電することができるとのことである。
上記従来技術では、発電効率の根本となるのは作用者によるペダルの操作量である。ペダルを踏み込む際には、例えば、ペダルが最も前方にある位置など、回転軸に対してペダル位置のモーメントが大きくなる位置では発電機に入力される外力は大きくなる。しかし、ペダルが最も低い位置に近い場合は前記モーメントが小さく、発電機に入力される外力が小さくなる。上記従来技術は、そのような入力の大きくなる位置と小さくなる位置とで発電負荷を変更し、発電効率を高めようとするものであった。
しかし、この技術においては、主として以下の三つの課題がある。
(1) 作用者はペダルを最上位置から最下位置まで連続的に漕がなければならず、ペダルが発電機に入力する外力が小さくなる位置にある場合にも所定の負荷が求められる。そのため、作用者の運動によって発せられる運動エネルギーの一部は発電に寄与せず、発電効率を高めるにも限界があった。
(2) 踏み込み動作で回転するペダルクランクの上死点・下死点をフライホィールにより回避する機構では、フライホィールの慣性力のばらつきで、初めて踏み込む時の位置や、継続的に踏み込む時の位置にばらつきが生じ、踏み込みのタイミングがうまく取れない。また、継続的な踏み込みの途中で、一方のペダルの踏み込み動作が不十分となり、他方のペダルの取り付くペダルクランクが上死点を確実に越えることができない場合がある。従って、連続した交互のペダル踏み込み動作が出来ず、なめらかで連続した発電機回転が行えない。
(3) さらに、180度回転位相差を持たせて固定したペダルクランクアームの先端の回転軸受に取り付けた二つのペダルを交互に踏み込む機構では、二つのペダルの動きが互いに規制を受けて、時間的に全く同時連動する。このため、例えば、左右の脚で二つのペダルの交互踏み込みする場合に、一方の脚の踏み込みの反発力が即、他方の脚に伝わり違和感を覚える。また、人の脚の入れ替え時の体重移動に必要な時間が十分に取れないため、作用者のペースで体重移動が出来ず安定した連続動作が行えない等、人間工学的な問題を有し、持続力等の体力が不十分な高齢者等には向かない。
このように従来の駆動伝達機構の問題点に鑑み、駆動力の伝達効率がよく、健常者はもちろん、高齢者やリハビリテーション中の作用者にとっても、容易で安定した連続動作が行えるクランク回転駆動伝達機構が求められている。
(特徴構成)
本発明に係るクランク回転駆動伝達機構の特徴構成は、
交互に駆動回転が行われる第1クランクアームおよび第2クランクアームと、
前記第1クランクアームの駆動回転に連動して駆動回転入力が行われる第1入力回転体、および前記第2クランクアームの駆動回転に連動して駆動回転入力が行われる第2入力回転体と、
前記第1クランクアームの駆動回転を、前記第1入力回転体を介して前記第2入力回転体および前記第2クランクアームに従動回転として回転角速度を高めて伝達するギヤ列を有する第1伝達機構と、前記第2クランクアームの駆動回転を、前記第2入力回転体を介して前記第1入力回転体および前記第1クランクアームに従動回転として回転角速度を高めて伝達するギヤ列を有する第2伝達機構と、
前記第1入力回転体への駆動回転入力に際し、前記第2伝達機構の伝達を遮断する第1クラッチと、
前記第2入力回転体への駆動回転入力に際し、前記第1伝達機構の伝達を遮断する第2クラッチと、
前記第1伝達機構および前記第2伝達機構のうち、少なくとも何れか一方から出力回転を取り出す出力部と、を備えた点にある。
(効果)
本構成のクランク回転駆動伝達機構では、第1クランクアームと第2クランクアームとを交互に駆動回転させて、第1入力回転体と第2入力回転体とに回転入力を行う。第1クランクアームおよび第2クランクアームは一方が他方を従動回転させるものの、互いに異なる回転角速度で回転する。第1クランクアームと第2クランクアームとのあいだには、第1伝達機構と第2伝達機構とが並設されており、例えば、第1クランクアームに駆動回転力を付与するとき、第1クランクアームに入力された駆動力が出力部から取り出されると共に、当該入力された駆動力の一部が第1伝達機構を介して第2クランクアームに伝達され、第2クランクアームを従動させる。その際、第2クランクアームの回転角速度は第1クランクアームの回転角速度よりも大きくなるように設定してある。
このため、例えば、第1クランクアームの先端にペダルを設けておき、このペダルを特定方向に押し込んで下死点近くまで駆動回転させるとき、他方の第2クランクアームはこれよりも大きな回転角速度で従動回転する結果、上死点を越えた位置まで回動することができる。これに続けて第2クランクアームを押し込むが、第2クランクアームは上死点を越えているため、位置的および負荷的に押込み操作が極めて容易となる。このようなクランク回転が交互に連続する結果、効率的な出力回転の取り出しが可能となる。
(特徴構成)
本発明に係るクランク回転駆動伝達機構にあっては、
前記第1クラッチおよび前記第2クラッチの各々が、
駆動回転を伝達する第1クラッチ部材および第2クラッチ部材と、
前記第1入力回転体または前記第2入力回転体と一体的に結合される第1カム板と、
前記第1クラッチ部材と一体的に結合される回転軸および第2カム板と、
前記第1クラッチ部材を前記第2クラッチ部材に押し付けてクラッチ入り状態とさせる付勢部材と、を備えると共に、
駆動回転入力される側の前記第1入力回転体または前記第2入力回転体と一体的に結合される前記第1カム板と、遮断する側の前記第1クラッチまたは前記第2クラッチにある前記第2カム板との各々に傾斜駆動当接面を設けて、前記第1カム板と前記第2カム板とが当該傾斜駆動当接面で滑動しつつ相対回転して前記第1クラッチ部材を前記付勢部材の付勢力に抗する方向あるいは付勢力の働く方向に移動させて前記第1クラッチまたは前記第2クラッチをクラッチ切り状態あるいは入り状態にさせることを可能とし、しかも、互いの当接を外さずに当該傾斜駆動当接面での押圧状態を維持して一体的に回転駆動を伝達させることができるように前記第1クラッチ部材の移動の全距離を設定する移動規制部を設けたカム機構を備えるものとすることができる。
(効果)
本構成のクランク回転駆動伝達機構では、例えば、初期の状態では第1カム板と、第2カム板とは対向密着しており、第1クランクアームおよび第1入力回転体に駆動力が入力された瞬間には、第1クラッチおよび第2クラッチが入り状態にある。つまり、第1伝達機構および第2伝達機構の双方が連結状態にあり、回転角速度を高めて伝達する部分の二つの伝達経路が閉ループ状態となる。このため、当該伝達経路上に配置されたギヤどうしの伝達回転角速度に不一致が生じ、回転がロックされ、第1クランクアームおよび第1入力回転体の駆動回転が一旦阻止される。
しかし、引き続き第1クランクアームおよび第1入力回転体に駆動力を加えると、第1入力回転体と一体的に結合される第1カム板が第1クラッチ部材と一体的に結合される第2カム板と互いの傾斜駆動当接面で滑動しつつ相対回転するカム機構によって、遮断するべき第1クラッチを少なくともクラッチ切り状態とさせる移動距離だけ第1クラッチの第1クラッチ部材が第2クラッチ部材に対して付勢部材の付勢力に抗する方向に移動する。このため、第1クランクアームおよび第1入力回転体に入力された駆動力は、連結状態にある第2クラッチが設けられた第1伝達機構を介して第2入力回転体および第2クランクアームに伝達される。
第1クラッチ部材が第2クラッチ部材に対して切り状態となった後、例えば、第1入力回転体に駆動回転が入力される間は第1クラッチ部材の切り状態を維持しつつ、第1入力回転体と一体的に結合される第1カム板と、第1クラッチ部材と回転軸を介して一体的に結合される第2カム板とが互いの傾斜駆動当接面での押圧状態を維持し一体化回転して駆動回転を伝達する。
このとき、駆動回転の負荷が大きければ、第1カム板と第2カム板との互いの傾斜駆動当接面での滑動により、第2カム板および回転軸を介して第1クラッチ部材はさらに前記付勢部材の付勢力に抗する方向即ち、第2クラッチ部材から離間する方向に移動を継続する場合があるが、第1カム板と第2カム板との互いの傾斜駆動当接面は一定以上の面積を維持し、互いの係合が外れないように全移動距離を設定する移動規制部を設けたカム機構としている。
それによって、第2カム板に伝わる移動規制部による移動抵抗力が、第1入力回転体に加わる駆動力による移動力と釣り合う状態で、第1カム板と第2カム板は、第1入力回転体に加わる駆動力に基づき、互いの傾斜駆動当接面で押圧反力を発生させつつ一体化し、駆動回転力の伝達が確実に発生して、第1クランクアームおよび第1入力回転体への駆動回転により、第2クランクアームおよび第2入力回転体が、第1クランクアームおよび第1入力回転体より速い回転角速度で従動する。
これに続いて、第2クランクアームおよび第2入力回転体に駆動力を加えると、後述するように、一旦、連結状態にある第1伝達機構を介する逆方向伝達にて、クラッチを構成するカム機構により第1クラッチをクラッチ入り状態に戻すまで、第2クランクアームおよび第2入力回転体が僅か回転し、さらに駆動力を継続して加えると、その後は第1クランクアームおよび第1入力回転体に駆動力を加えるときと同様の動作態様により遮断するべき第2クラッチをクラッチ切り状態とさせ、その結果、第1クランクアームおよび第1入力回転体が、第2クランクアームおよび第2入力回転体の駆動回転より速い回転角速度で従動する。
さらに継続的に、第1クランクアームと第2クランクアームとを交互に駆動回転させて、第1入力回転体と第2入力回転体とに回転入力を行う場合には、駆動側のクランクアームが一旦、僅か回転し、その時点で入り状態である遮断するべき側のクラッチを介して、その時点で切り状態である伝達するべき側のクラッチを、クラッチを構成するカム機構により入り状態に戻し、さらに続けて駆動力を加えると、その後は本来、遮断するべき側のクラッチをクラッチ切り状態とさせる態様が繰り返される。
このように本構成の第1クラッチおよび第2クラッチを有することで、第1クランクアームおよび第1入力回転体と、第2クランクアームおよび第2入力回転体に交互に駆動力を入力するだけで、駆動回転の伝達機構が容易に切り替わる。これによって、各種の装置に適用される汎用性の高いクランク回転駆動伝達機構を得ることができる。
(特徴構成)
本発明に係るクランク回転駆動伝達機構にあっては、
前記第1クランクアームおよび前記第2クランクアームのうち何れか一方が、押し込み作動クランクの回転における上死点を越えた第1位置から下死点の手前の第2位置まで駆動回転される間に、他方が前記第2位置から前記第1位置まで従動回転するように駆動伝達構成がなされ、
前記第1クランクアームの先端に第1作用部を、前記第2クランクアームの先端に第2作用部を、設け、前記第1作用部に対して特定方向に当接する第1ペダルと、前記第2作用部に対して前記特定方向に当接する第2ペダルとが、交互に往復移動するように構成することができる。
(効果)
本構成のように、交互に往復動作する第1ペダルと第2ペダルを備えることで、例えば両ペダルを人の脚で駆動する際に、通常の自転車ペダルを漕ぐときのクランクアームを回転させる場合に比べ、負荷が掛った状態の脚の前後運動を減らすことができる。よって、体力が十分でない作用者であっても体重を利用する等で両ペダルを容易に操作することができる。
また、本構成のクランク回転駆動伝達機構は、例えば、第1クランクアームおよび第2クランクアームを交互に回転駆動する際に一方のアームを下死点の所定角度手前まで回転駆動すると、他方のアームは必ず上死点を所定角度越えた位置まで回転する。このため、同一経路を往復移動する第1ペダルおよび第2ペダルを装着した場合でも、ペダルの踏込開始の位置がフライホィール使用の場合のようにばらつくことがなく、確実に上死点を越えるために、効率が悪く負荷が極めて大きくなる上死点付近を回避でき、ペダル踏み込み操作を容易に行うことができる。
(特徴構成)
本発明に係るクランク回転駆動伝達機構にあっては、
前記第1クランクアームおよび前記第2クランクアームが前記第2位置に到達したとき、前記第1ペダルおよび前記第2ペダルの停止位置を設定するストッパーを備え、当該ストッパーに前記第1ペダルおよび前記第2ペダルの前記特定方向への動作に対向する付勢力を保持させてあると好都合である。
(効果)
例えば、ペダルを特定方向に踏み込んで第1クランクアームを回転させる場合、踏み込み終了位置は必ずしも一定にならない。また特定方向に沿った下死点の近傍では、ペダルの踏み込み方向と第1クランクアームの先端が向かう方向とが直角に近づくため、第1クランク軸に作用する外力のうち第1クランク軸の回転駆動に寄与する分力が小さくなる。
そこで、ペダルの踏み込み方向と第1クランクアームの先端が向かう方向とが大きく乖離する前にペダルの踏み込みを前記ストッパーにより中断することで、第1クランクアームおよび第1入力回転体の回転駆動に殆んど寄与しない無駄な踏込動作を減らすことができる。
また、ストッパーに付勢力を発揮させることで、例えば第1ペダルを踏み込み、第1ペダルがストッパーに当接する際の衝撃を緩和することができる。よって、脚に作用する負担が軽減され、長時間の操作が可能となる。
さらに、本構成であれば、第1ペダルおよび第2ペダルを交互に踏みこむことにより、第1クランクアームおよび第2クランクアームを交互に駆動および従動回転をさせるため、第1ペダルの踏み込みをストッパーで中断しても、他方の第2ペダルを踏み込むことで第1クランクアームは回転を続ける。第1ペダルに当接していた第1クランクアームの第1作用部はペダルから離間して円弧状に下死点に向かい、さらに下死点を越えて円弧状に移動して、再度、第1ペダルに当接する。このように、第1ペダルの踏み込みが終了したのち、第2クランクアームの回転力に基づき第1クランクアームの第1作用部によって強制的に押し上げられるまでの時間を確保することができる。
このとき、作用者の脚は第2ペダルを踏み込み始めているから、その反動作、あるいは体重が掛かっている場合は体重移動の開始で第1ペダルに掛る力は減少し始める。ストッパーには付勢力が作用しているため、第1ペダルが下死点の側から押し上げられ、第1作用部が第1ペダルに再度当接するまでの時間がさらに長くなる。そのため、第1ペダルに載せている脚が第1クランクアームの第1作用部によって第2クランクアームの回転力で強制的に押し上げられるタイミングをさらに一定時間遅らせ、第1ペダルに載せている脚の作動や体重移動を一定時間遅らせることができる。これにより、通常の固定連結ペダルクランクアームを回転させるときのように、一方の脚の踏み込みの反発力が、直ちに他方の脚に伝わって違和感を生じさせるようなことがなく、作用者のタイミングで円滑な踏込運動を継続することができる。
尚、第1ペダルが付勢力によって上昇を始めた後に第1作用部が当接すれば、両者の相対速度が小さくなっているため、当接時の衝撃がより緩和され違和感の少ない装置を得ることができる。
第1実施形態に係るクランク回転駆動伝達機構の適用例を示す斜視図
ペダルとクランクアームの動作態様を示す説明図
クランクアームの動作態様を示す説明図
クランク回転駆動伝達機構のギヤ列を示す斜視図
クラッチの駆動伝達構成図
クラッチの構造と駆動態様を示す部分的正面図含む上半断面図
ペダルとストッパーの動作態様を示す説明図
第2実施形態に係るペダルとストッパーの動作態様を示す説明図
本発明のクランク回転駆動伝達機構の他の適用例を示す斜視図
本発明のクランク回転駆動伝達機構K(以降においては「駆動伝達機構K」と略称する)は、一対のクランクアームAR,ALを交互に駆動回転させて出力を取り出す機構であって、特に、各クランクアームAR,ALが駆動回転する場合と、従動回転する場合とで回転角速度が変化し、その結果、各クランクアームAR,ALどうしの相対回転角速度が変化する点に特徴を有する。以下、本発明に係る各実施形態つき図面を参照しながら説明する。
〔第1実施形態〕
(概要)
本発明に係る駆動伝達機構Kは、例えば、図1に示すように左右のペダルPを交互に並進移動させる健康器具や、図9に示すように自転車タイプの健康器具などに適用可能である。まず、図1乃至図7に基づき、第1実施形態に係る駆動伝達機構Kについて説明する。
図1は、本発明のペダルPを含めた駆動伝達機構Kを一種のステアクライマーに適用した例である。このステアクライマーは、平行リンク1によって上下に往復移動する第1ペダルPRと第2ペダルPLとを備えている。本実施形態では、第1ペダルPRを右ペダルPRと称し、第2ペダルPLを左ペダルPLと称する。右ペダルPRと左ペダルPLとの間には機構部K1(図4参照)を有する。この機構部K1には、後述するギヤ列とクラッチCおよび出力部J2等が備えられている。
作用者はハンドルHに手を掛けつつ左ペダルPLおよび右ペダルPRを交互に踏み込み、入力軸J1を回転させる。本構成では、例えば両ペダルPを人の脚で駆動する際に、通常の自転車のクランク回転作動のような負荷が掛かった状態の脚の前後運動を減らすことができ、体力が十分でない高齢者やリハビリテーション中の作用者であっても体重を利用する等で両ペダルPを容易に操作することができる。また、機構部K1に所定の負荷を掛けることで筋力アップの効果を得ることができる。
また、機構部K1に発電機等を装備して発電さらには蓄電を行うこともできる。作用者は、モニターMにより、自己の運動量や発電量等を確認することができ、さらには機構部K1の負荷を調節することができる。
駆動伝達機構Kは、交互に駆動回転が行われる第1クランクアームARおよび第2クランクアームALを有する。第1クランクアームARの先端からは、第1クランクアームARに直交する棒状の第1作用部SRが機構部K1とは反対の方向に延出し、同じく第2クランクアームALの先端からは第2作用部SLが延出している。尚、以降においては、第1クランクアームARを右アームAR、第2クランクアームALを左アームALと称し、第1作用部SRを右作用部SR、第2作用部SLを左作用部SLと称する。
図2および図3に示すように、この駆動伝達機構Kでは、右アームARと左アームALが連続回転するとき、一方が駆動側となり他方が従動側となる。駆動回転する場合と従動回転する場合とで回転角速度が変化するため、右アームARと左アームALの相対回転角速度が途中で切り替わり、互いの相対回転位相が変化しながら回転する。
図2は、例えば右ペダルPRと右アームARの動作態様を示す説明図である。右ペダルPRは平行リンク1で支持されており上下に並進往復する。右ペダルPRは右アームARの先端に設けた棒状の右作用部SRに当接しており、右ペダルPRを踏み込むことで右アームARが下げられる。本実施形態では、右ペダルPRを踏み込むときに、右作用部SRに対して右ペダルPRの下面が特定方向に当接しつつ、当接面に沿う方向に右作用部SRが右ペダルPRに対し相対的に移動する。右ペダルPRと右作用部SRには、例えば右作用部SRと相対回転可能な筒状のローラーを外挿しておき、当接面である右ペダルPRの下面に沿って移動する際の摩擦抵抗を低減すると良い。
この駆動伝達機構Kでは、左アームALおよび左作用部SL、あるいは右アームARおよび右作用部SRの回転角速度が変化する。図2および図3に示すように、右アームARおよび右作用部SRが反時計方向に回転するが、上死点TDCを所定角度α分越えた第1位置1pから下死点BDCの所定角度β分手前の第2位置2pまでの第1領域1r、即ち、回転角度θの範囲には後述するように、右アームARおよび第1入力回転体Gaに駆動力を加えてから駆動回転に寄与しない左アームALに向けて伝達するべき第2クラッチC2を一旦、クラッチ切り状態から入り状態に戻すまでの回転角度γ´と、それに引き続く右アームARに係り遮断するべき第1クラッチC1を切り状態とするまでの回転角度γが含まれる。従って、(θ−γ´−γ)の角度範囲では第1回転角速度1sで回転する。一方、第2位置2pから下死点BDCおよび上死点TDCを越え第1位置1pに至るまでの第2領域2r即ち、(180+α+β)の角度範囲では、右アームARおよび右作用部SRは、第1回転角速度1sよりも速い第2回転角速度2sで回転する。
ここで、回転角度のα、β、θ、γおよびγ´は一周全回転を360分割した角度を1度としたときの角度数を表す数値とする。前述の回転角度γ´は、例えば右アームARの踏み込み開始時の反時計方向への回転角度であるが、これは、直前の左アームALの反時計方向への駆動回転によってクラッチ切り状態とされていた第2クラッチC2を再び入り状態に復帰させるための角度である。一方、γは引き続いての右アームARの同方向への回転によって、第1クラッチC1を切り状態とするまでの回転角度である。
上死点TDCから第1位置1pまでの所定角度αは必ずしも一定でなく、その設定には一定の余裕を持たせるのが良い。例えば右ペダルPRを踏み込む際には、踏み込みを終えるときの右アームARおよび右作用部SRの位置、即ち、下死点BDC手前の所定角度βも必ずしも一定ではない。しかし、その場合でも左アームALおよび左作用部SLが第1位置1pの近傍まで戻っていると次の左ペダルPLの踏み込みが容易となる。このように、ペダルを踏み込んだ側のクランクアームおよび作用部の下限位置がばらついた場合でも、そのばらつきの想定される範囲を十分に考慮して、他方のクランクアームが確実に上死点TDCを越えるように基準の所定角度αおよびβを設定する。
つまり、各クランクアームが小さい回転角速度で回る第1領域1r(駆動側)での駆動回転に寄与する回転角度が(180−α−β−γ´−γ)=(θ−γ´−γ)、大きな回転角速度で回る第2領域2r(従動側)での回転角度が(180+α+β)であり、従って、基本的には駆動側クランクアームから従動側クランクアームに至る駆動伝達増速比率が(180+α+β)/(θ−γ´−γ)になるように、伝達機構を設定する。
このように、ペダルPを踏み込んだ側のクランクアームおよび作用部を第1位置1pから第2位置2pまで回転させると、他方のクランクアームおよび作用部が第2位置2pから第1位置1pまで戻るように構成することで、右アームARおよび右作用部SRと、左アームALおよび左作用部SLは各々に対応する右ペダルPRおよび左ペダルPLの踏み込みに際して必ず上死点TDCを越えた位置に設定される。よって、健常者はもちろん高齢者やリハビリテーション中の作用者にとっても踏み込みの開始動作が軽く円滑なものとなる。このようなクランク回転が交互に連続する結果、効率的で安定した出力回転の取り出しが可能となる。
図2に示すように、右ペダルPRはその先端にある右作用部SRの回転に伴って上下動するが、右作用部SRが第2位置2pを過ぎて当該第2位置2pから下の領域を移動する際にはストッパーBによって下降が止められる。よって、下死点BDCにある右作用部SRは右ペダルPRから離間している。これは、右作用部SRが下死点BDCに近付くほど、右ペダルPRに下向きに作用する外力のうち右アームARおよび右作用部SRの回転に寄与する分力が小さくなるため、この状態での入力を省略するものである。
図3(a)(b)(c)は、右アームARおよび右作用部SRと、左アームALおよび左作用部SLの相対位置を示したものである。例えば、図3(a)において破線で示した左アームALおよび左作用部SLが第1位置1pにあるとき、実線で示した右アームARおよび右作用部SRは第2位置2pにある。図3(b)に示すように、左ペダルPLの踏み込みにより、左アームALおよび左作用部SLが前記の(θ−γ´−γ)の角度のおよそ半分の高さまで回転したとき、右アームARおよび右作用部SRは前記の(180+α+β)の角度のおよそ半分の高さまで持ち上げられる。さらに左ペダルPLを踏み込むと、図3(c)に示すように、左アームALおよび左作用部SLが第2位置2pまで回転し、右アームARおよび右作用部SRは第1位置1pまで回動する。
本構成であれば、左ペダルPLの踏み込みにより、左アームALおよび左作用部SLが下死点BDCに近い第2位置2pに到達すると右アームARおよび右作用部SRが第1位置1pに復帰しているから、作用者は右ペダルPRの踏み込みを容易に開始することができる。よって、左ペダルPLについては、第2位置2pから下死点BDCに向かう領域での踏み込み操作は不要である。
図1および図2に示すように、左ペダルPLの踏み込みにより、下死点BDCを通過した右作用部SRは右ペダルPRに再び当接し、右ペダルPRを持ち上げようとする。このとき、右ペダルPRの持ち上げに係る右作用部SRの回転角速度は、左ペダルPLの踏み込みに係る左作用部SLの回転角速度よりも大きいから、右ペダルPRの慣性などによっては右ペダルPRの持ち上げ負荷が大きくなるとも考えられる。ただし、この状態では、作用者は左脚に力を加えており、体重の移動に伴い右脚は脱力しているため、右ペダルPRの持ち上げは容易に行われる。
(ギヤ列)
図4には、図3(a)のクランクアームの位置関係に対応させた機構部K1のギヤ列を示す。本実施形態のギヤ列では、右アームARと左アームALとの間に第1伝達機構T1と第2伝達機構T2とが設けられる。これら第1伝達機構T1および第2伝達機構T2は、図4に2組のギヤ列のセットとして一点鎖線で区切った第1セットS1と第2セットS2とを組み合わせて構成される。
例えば、第1セットS1は、右アームARを端部に有しクランク軸芯X1の周りに回転する右クランク軸2Rと、右クランク軸2Rに一体に設けられたアームギヤGAと、当該アームギヤGAと歯合して第1クラッチ軸芯X2の周りに回転し、駆動力が最初に入力される第1入力回転体Gaとしての第1ギヤG1と、当該第1ギヤG1と同軸芯で回転する第2ギヤG2と、当該第2ギヤG2と第1クラッチC1を介して連結される第5ギヤG5と、第2ギヤG2と歯合し第1カウンター軸芯X3の周りに回転する第3ギヤG3と、第3ギヤG3と同軸芯上で回転する第4ギヤG4とで構成される。
第2セットS2も第1セットS1と同じ構成であるが、第2セットS2の第1ギヤG1は第2入力回転体Gbとして機能し、第2セットS2の第1ギヤG1・第2ギヤG2・第5ギヤG5は、第2クラッチ軸芯X4の周りに回転可能であり、第3ギヤG3および第4ギヤG4は第2カウンター軸芯X5の周りで回転可能である。
図4に示すように、このような第1セットS1と同じ構成を有する第2セットS2とが対向する形で、右クランク軸2Rと第2セットS2の左クランク軸2Lとを共にクランク軸芯X1の上で一致させた状態に配置されている。
この状態で、第1伝達機構T1は、右クランク軸2Rから第1セットS1のアームギヤGA→第1ギヤG1→第2ギヤG2→第3ギヤG3→第4ギヤG4→第2セットS2の第5ギヤG5→第2クラッチC2→第2ギヤG2→第1ギヤG1→アームギヤGA→左クランク軸2Lの順で伝達される経路を持つ。
一方の第2伝達機構T2は、左クランク軸2Lから第2セットS2のアームギヤGA→第1ギヤG1→第2ギヤG2→第3ギヤG3→第4ギヤG4→第1セットS1の第5ギヤG5→第1クラッチC1→第2ギヤG2→第1ギヤG1→アームギヤGA→右クランク軸2Rの順で伝達される経路を持つ。
図3に示した、各クランクアームAR,ALの上死点TDCを越えた角度である所定角度αと、下死点BDCの手前の角度である所定角度βの合計角度は、駆動回転の回転角速度を高めて従動回転に伝達する回転角速度増大比率(180+α+β)/(θ−γ´−γ)を変更することで設定できる。例えば、本実施形態では、第1クラッチ軸芯X2と第1カウンター軸X3、および第2クラッチ軸X4と第2カウンター軸X5の各軸間距離を変えずに第4ギヤG4と第5ギヤG5の歯数を変えて回転角速度増大比率を変更することができる。そのため、第4ギヤG4と第5ギヤG5の入れ替え脱着が容易にできる構造とする。
第1伝達機構T1、第2伝達機構T2の双方において、駆動回転の回転角速度を高めて従動回転に伝達する回転角速度増大は複数箇所のギヤ歯合伝達で段階的に行ってもよいし、1箇所のギヤ歯合伝達で行ってもよい。いずれにしても、特に本実施形態では、第1伝達機構T1、第2伝達機構T2の双方の伝達機構において、第4ギヤG4の歯数に対して第5ギヤG5の歯数が少なく構成されて回転角速度増大比率の大部分を担わせるようにしている。これらの構成により、具体的には後述するクラッチCの機能と合わせて、第1伝達機構T1は、右アームARの駆動回転を左アームALに従動回転として(180+α+β)/(θ−γ´−γ)の比率で回転角速度を高めて伝達し、第2伝達機構T2は、左アームALの駆動回転を右アームARに従動回転として(180+α+β)/(θ−γ´−γ)の比率で回転角速度を高めて伝達する。
右アームARおよび左アームALの右クランク軸2Rあるいは左クランク軸2Lへの取付けは、適切な角度で割り出し調節が可能なスプライン2a等の回転方向に係合するはめ合い部を持ち、例えば左右ペダルの往復踏み込み運動を行う場合の作用者の脚の踏込み方向からみた上死点TDC、下死点BDCから所定角度αおよびβを割り出してはめ込めるように構成してある。
(クラッチ)
図4乃至図6に示すように、第1セットS1および第2セットS2における第2ギヤG2と第5ギヤG5との間にはクラッチCを設けてある。第1セットS1にあるものが第1クラッチC1であり、第1入力回転体Ga即ち、第1ギヤG1への回転入力に際して第2ギヤG2と第5ギヤG5との伝達を切り操作して第2伝達機構T2の伝達を遮断する。一方、第2セットS2にあるものが第2クラッチC2であり、第2入力回転体Gb即ち、第1ギヤG1への回転入力に際して第2ギヤG2と第5ギヤG5との伝達を切り操作して第1伝達機構T1の伝達を遮断する。
第1クラッチC1および第2クラッチC2の構成につき、図5には第1クラッチC1の構成を示す。尚、第1クラッチC1と第2クラッチC2の構成は同じである。
第1クラッチC1は、機構本体を構成する第1フレームK1aに固定された内軸3と、この内軸3に外挿され、内軸3と軸方向および回転方向に摺動可能状態ではめ合う外軸4と、後述するように外軸4に支持されている種々の部材および部品によって構成される。第1フレームK1aのボス部にねじ込まれた内軸3の軸段部の内部小径側には第1ベアリングCr1が設けられ、後述する第2クラッチ部材Cbと第5ギヤG5が回転支持される。
外軸4は、第1クラッチC1を構成するバネ受部材Cgおよび第2ベアリングCr2を介して第2フレームK1bに回転支持されるが、バネ受部材Cgとは第1クラッチ軸芯X2に沿う方向および回転方向共に摺動可能状態ではめ合っている。
第1クラッチC1は、駆動回転を伝達する第1クラッチ部材Caおよび第2クラッチ部材Cbを有する。第1クラッチ部材Caは、内面に雌ネジが切られた筒状の部材であって、外軸4の軸方向に沿って形成された一対の前後壁Ca1と、当該前後壁Ca1を残して削り込まれた平面で構成される4面の第1クラッチ面Ccとを有し、前後壁Ca1のあいだで各々の第1クラッチ面Ccにボール部材Cdを一つずつ保持している。それぞれのボール部材Cdは、前後壁Ca1よりも外側に所定寸法張り出しており、後述の第2クラッチ部材Cbに当接可能である。
一方の円筒状の第2クラッチ部材Cbには、ボール部材Cdが内側から当接可能な円錐穴状の第2クラッチ面Ceを備えている。第2クラッチ部材Cbには第5ギヤG5が一体的に結合されている。
第2クラッチ部材Cbに挿入された第1クラッチ部材Caのボール部材Cdは、例えばコイルスプリングで構成された付勢部材Cfによって、第2クラッチ部材Cbの第2クラッチ面Ceに押し付けられ、前後壁Ca1のあいだで第1クラッチ面Ccと第2クラッチ面Ceとで挟持される。第1クラッチ部材Caは、外軸4の一方の端部に切られる雄ネジにねじ込まれた上に第1固定部材Cm1によって外軸4に一体的に結合され、さらに、隣接する第1クラッチ面Ccどうしの間に設けた雌ネジ部11aに固定ネジ11bをねじ込んで固定するようになっている。
付勢部材Cfの端部は、筒状のバネ受部材Cgによって反力支持され、バネ受部材Cgは第2ベアリングCr2を介して第2フレームK1bによって反力支持されている。この状態で、第1クラッチ部材Caと第2クラッチ部材Cbとが相対回転することで、ボール部材Cdが、平面上の第1クラッチ面Ccに沿って第1クラッチ軸芯X2に対する周方向に移動させられ、第1クラッチ面Ccと第2クラッチ面Ceとで形成されるくさび状の隙間の狭い側に押し寄せられて係合し、第1クラッチ部材Caと第2クラッチ部材Cbとの相対回転が阻止される。
第1クラッチ部材Caのボール部材Cdを、第2クラッチ部材Cbの第2クラッチ面Ceに十分な付勢力で押し付けることができるよう、付勢部材Cfの付勢力は調節可能である。即ち、第2ベアリングCr2に反力支持されるバネ受部材Cgと第1クラッチ部材Caとの間隔を調節する。
具体的にはまず、外軸4の第1クラッチ部材Caが取付く方の端部と反対側の他端部から、沈みキーである第2キー部材72と第1クラッチ軸芯X2の方向に滑り移動が可能な状態に第2ギヤG2を挿入する。これにより、第2ギヤG2は、外軸4に対して相対回転不能かつ第1クラッチ軸芯X2の方向に沿って移動自在となる。次に、第2ギヤG2のボス部外径に回転滑り可能のスラスト受けリング8aを外挿させ、次に第1ギヤG1を、摺動軸受8bを介して回転自在に外挿させる。第1ギヤG1には、後述する第1カム板Ch1が結合されている。さらに第2カム板Ch2を、第3キー部材73を効かして外軸4に外挿し、こちら側の外軸4の端部に切られる雄ネジに第2固定部材Cn1および第2ロックナットCn2をねじ込み結合する。
次に、第2ギヤG2および第1ギヤG1を組込んだ外軸4を、第2ベアリングCr2を介して第2フレームK1bに回転支持されるバネ受部材Cgに摺動軸受8cを介して挿入し、付勢部材Cfをバネ受部材Cgにはめ込む。その後、外軸4の第2ギヤG2および第1ギヤG1が取付く反対側のネジ端部に対し、第1クラッチ部材Caを、工具等を使用して付勢部材Cfをその付勢力に抗して所定長さ縮めるまでねじ込んだ後、第1固定部材Cm1で固定結合する。このとき、内軸3のねじ込み深さを変えることで付勢部材Cfの全長が変化し、付勢力の調節が可能となる。
続いて、その状態の第1クラッチ部材Caに第2クラッチ部材Cbおよび第5ギヤG5を外挿する。一方、第1フレームK1a外側から、そのボス部のネジ穴に内軸3をねじ込みながら、その内軸3の先端から第1ベアリングCr1を介して第2クラッチ部材Cbおよび第5ギヤG5をはめ込む。尚、第1フレームK1aのボス部のネジ穴にねじ込まれる内軸3は、二つの筒状の摺動部材8dを介して外軸4に内挿され、外軸4の内径部に対して軸方向および回転方向に摺動可能状態に設置される。
第1フレームK1aの外側方向の内軸3の端部には、ネジ部3aと、工具を装着する角軸部3bが形成してある。角軸部3bを回すことで内軸3は第1フレームK1aの内部に螺入され、ネジ部3aの近傍に形成された段部3cによって第1ベアリングCr1を内部に押圧する。これにより、第2クラッチ部材Cbが第1クラッチ部材Caにあるボール部材Cdに当接し、さらに第1クラッチ部材Caおよび外軸4を第1ギヤG1の方向に向けて押圧する。
第1クラッチ部材Caのボール部材Cdを、第2クラッチ部材Cbの第2クラッチ面Ceに押し付ける付勢部材Cfの付勢力を十分に発揮させるために、第2クラッチ部材Cbが第1クラッチ部材Caにあるボール部材Cdに当接するまで内軸3をねじ込んだ後、付勢部材Cfをさらに若干の追加長さを縮め、第1クラッチ部材Caにあるボール部材Cdと第2クラッチ部材Cbの第2クラッチ面Ceとの当接面に、十分な付勢部材Cfによる押圧力が掛かるようにする。
このとき、付勢部材Cfを縮める追加長さ分、外軸4を第2ギヤG2および第1ギヤG1の方向に移動させ、第2カム板Ch2の前後で隙間が生じるので、第1クラッチC1の入切の動作性能を高めるため、第2固定部材Cn1および第2ロックナットCn2を締めてその隙間を詰める。また、同時に内軸3のネジ部3aにも第3ロックナット3dを締結しておくようにする。
第1クラッチC1において、第1クラッチ部材Caと第2クラッチ部材Cbとの係合を解除するには、第1クラッチ部材Caを第2クラッチ部材Cbに対して第1クラッチ軸芯X2の延出方向に沿って離間する方向に移動させる。これによりボール部材Cdは、円錐穴状の第2クラッチ面Ceから離間する方向に移動し、係合状態が解除される。
外軸4には、図5に示すように、第2ギヤG2が軸方向に相対移動可能とする第2キー部材72で回転を同期するように係合し、第1ギヤG1は、自身に形成したボス部内径が、回転方向および軸方向に摺動可能に第2ギヤG2のボス部に外挿されている。従って、第1ギヤG1は、第1クラッチC1の切り操作中は、第2ギヤG2と相対回転し、第1クラッチC1の切り操作が終了した後は、第2ギヤG2と一体的に回転する。第1ギヤG1の側面にはカム爪Cjが形成された第1カム板Ch1がボルト9などで一体的に結合されている。
第1カム板Ch1に隣接する位置にはカム溝Ckが形成された第2カム板Ch2が設けられていて、第2カム板Ch2と共にカム機構Ciの主要構成部品となる。第2カム板Ch2は、外軸4と一体的に回転し、かつ、外軸4の軸方向に移動できるよう第3キー部材73を用いて外軸4に取り付けられた上、外軸4の端部に設けたネジ部に、第2固定部材Cn1および第2ロックナットCn2を用いて一体的に結合される。これにより、第1カム板Ch1のカム爪Cjと、第2カム板Ch2のカム溝Ckとを対向密着させ、相対回転あるいは押圧一体回転させるカム機構Ciが構成される。
図5および図6に示すように、第1ギヤG1のボス部の一方の側面は、前述のスラスト受けリング8aを介して第2ギヤG2の一方の側面に当接している。第1ギヤG1の他方の側面には第1カム板Ch1が一体的に結合されていて、第1ギヤG1および第1カム板Ch1は、第2ギヤG2と第2カム板Ch2とで形成される隙間に挟まれている。
第2ギヤG2の他方の側面G2aは、第2フレームK1bに軸方向が規制されて取り付く第2ベアリングCr2の内輪側面に当接している。これにより第1ギヤG1および第2ギヤG2は、軸方向に沿う一方側の端部位置が設定される。尚、第2ベアリングCr2の内輪のうち反対側の側面にはバネ受部材Cgが当接しており、バネ受部材Cgも軸方向に沿う一方側の端部位置が設定される。図6(a)に示すように、第2ギヤG2の一部は、バネ受部材Cgの一部に外挿させる状態にし、外軸4の軸方向に沿うサイズのコンパクト化を図っている。
このような第1クラッチC1および第2クラッチC2を図4に示すように組み合わせた本構成の駆動伝達機構Kは次のように機能する。第1クラッチC1および第2クラッチC2が入り状態にある初期の状態では第1カム板Ch1のカム爪Cjと、第2カム板Ch2のカム溝Ckとが対向密着しており、右アームARおよびアームギヤGAに駆動力を加え、第1ギヤG1に駆動力が入力されても、第1伝達機構T1および第2伝達機構T2が連結状態にあって、全体の伝達機構の内、回転角速度を高めて伝達する経路が部分的に閉ループとなる。そのため、当該伝達経路上での伝達回転角速度の不一致が生じ、回転伝達がロックされ、例えば、右アームARおよび第1ギヤG1即ち、第1入力回転体Gaの回転が一旦、阻止される。
しかし、引き続き右アームARおよびアームギヤGAに駆動力を加え、第1ギヤG1に駆動力が入力されると、第1ギヤG1と一体的に回転する第1カム板Ch1が、第1クラッチ部材Caと一体的に回転する第2カム板Ch2と相対回転する。これにより、第1カム板Ch1に設けられたカム爪Cjの傾斜駆動当接面Cj1と、第2カム板Ch2に設けられたカム溝Ckの傾斜駆動当接面Ck1とのあいだで押圧状態での滑りが生じる。この結果、第2カム板Ch2が、外軸4と共に第1クラッチ軸芯X2の方向に第1クラッチC1が切り状態となるまでスライド移動し、図6(b)に示すように、第1セットS1にある第1クラッチC1の第1カム板Ch1と第2カム板Ch2とのあいだに間隔d1が一旦、生じる。
その結果、第2伝達機構T2にある遮断するべき第1クラッチC1だけが切り状態となり、右アームARおよび第1入力回転体Gaに入力された駆動力は、連結状態にある第2クラッチC2が設けられた第1伝達機構T1を介して第2入力回転体Gb、左アームALに伝達される。第1ギヤG1に駆動回転力が入力され続ける限り、第1カム板Ch1と第2カム板Ch2は傾斜駆動当接面Cj1,Ck1どうしの押圧状態が維持され一体化回転し、第1クラッチC1も切り状態が維持される。
第1カム板Ch1と第2カム板Ch2とのあいだに間隔d1が生じた後、駆動回転の負荷が大きければ、第1カム板Ch1の傾斜駆動当接面Cj1と第2カム板Ch2の傾斜駆動当接面Ck1とがさらに滑動し、第2カム板Ch2は第1カム板Ch1からより離間する方向に移動する場合がある。
ただし、第2カム板Ch2がさらに外方に移動すると、外軸4に段部4aを設けること等により構成した移動規制部により、第1カム板Ch1と第2カム板Ch2との最大間隔が一定の値に設定される。即ち、第2カム板Ch2がさらに外方に押されるとき、外軸4に形成した段部4aが第2ギヤG2の側面G2aに当接するから、第1ギヤG1と第2カム板Ch2との距離は一定以上には広がらない。この結果、第2カム板Ch2に伝わる移動規制部による移動抵抗力が、第1入力回転体Gaに加わる駆動力による移動力と釣り合う状態で、第1カム板Ch1は、第1ギヤG1と第2カム板Ch2とに挟持固定されて一体化回転することとなり、図6(b)に示すように、この状態での第1クラッチC1の第1カム板Ch1と第2カム板Ch2との間隔が最大のdTとなる。
尚このとき、第2セットS2にある第2クラッチC2が入り状態にあり、第2セットS2にある第1伝達機構T1上の外軸4を介して第2ギヤG2および第2カム板Ch2が従動回転するときは、第2カム板Ch2のカム溝Ckに設けた従動当接面Ck2が、第1カム板Ch1のカム爪Cjに設けた従動当接面Cj2を押圧する。これら従動当接面Ck2,Cj2は第2クラッチ軸芯X4周りの回転方向に対して略垂直に形成してあり、第2カム板Ch2の回転駆動力を第1ギヤG1に確実に伝達することができる。
引き続いて、左アームALおよびアームギヤGAに駆動力を加え、第2入力回転体Gbに駆動力が入力されようとするときは、第2セットS2にある第1伝達機構T1上の第2クラッチC2は入り状態にあるが、第1セットS1にある第2伝達機構T2上の第1クラッチC1は切り状態のままで、そちらの第1カム板Ch1と第2カム板Ch2との間隔はd1〜dTとなっており、カム溝Ckに設けた従動当接面Ck2と、第1カム板Ch1のカム爪Cjに設けた従動当接面Cj2とは対向密着せず隙間の空いた状態になっている。
従って、左アームALおよびアームギヤGAに駆動力を加え、第2入力回転体Gbに駆動力を入力すると、まず、逆方向のルートで連結状態にある第1伝達機構T1を介して、切り状態にある第2伝達機構T2上の第1クラッチC1の第1カム板Ch1と第2カム板Ch2とを、隙間の空いた各従動当接面Ck2,Cj2が当接する方向に相対回転させて、d1〜dTである第1カム板Ch1と第2カム板Ch2との間隔をゼロとさせ、その結果、第1クラッチC1を入り状態とさせる。
さらに、左アームALおよびアームギヤGAに駆動力を加え、第2入力回転体Gbに駆動力が入力されると、右アームARおよびアームギヤGAに駆動力を加えるときと同様に伝達経路の部分的閉ループにより回転伝達ロックが生じ、左アームALおよび第2入力回転体Gbの駆動回転が一旦、阻止される。
これにより、次に左アームALおよびアームギヤGAに駆動力が加えられ、第2入力回転体Gbとしての第1ギヤG1に駆動力が入力されると、右アームARおよびアームギヤGAに駆動力を加えるときと同様の動作態様により、遮断するべき第2クラッチC2だけが切り状態となり、入力された駆動力は、入り状態にある第1クラッチC1が設けられた第2伝達機構T2を介して第1入力回転体Ga、右アームARに伝達される。
このとき、第1セットS1にある第1クラッチC1が入り状態にあり、第2セットS2にある第2クラッチC2が入り状態にあるときと同様に、第1セットS1にある第2カム板Ch2のカム溝Ckに設けた従動当接面Ck2と、第1カム板Ch1のカム爪Cjに設けた従動当接面Cj2は第1クラッチ軸芯X2周りの回転方向に対して略垂直に形成してあり、第2カム板Ch2の回転駆動力を第1ギヤG1に確実に伝達することができる。
さらに継続的に、右アームARと左アームALとを交互に駆動回転させて、各アームギヤGAに回転入力を行う場合には、駆動側のクランクアームが一旦、僅か回転し、その時点で入り状態である遮断するべき側のクラッチCを介して、その時点で切り状態である伝達するべき側のクラッチCを、クラッチCを構成するカム機構Ciにより入り状態に戻し、さらに続けて駆動力を加えると、その後は本来、遮断するべき側のクラッチCをクラッチ切り状態とさせる態様が繰り返される。
また、前述の右アームARの踏み込み開始から踏み込み終了までの回転角度θは左アームALの踏み込みの場合も同様の角度であり、このθには、駆動伝達させる側のクラッチCを切り状態から入り状態に戻すまでの回転角度γ´と、遮断させる側のクラッチCを入り状態から切り状態とするまでの回転角度γとが含まれ、いずれも実際の駆動回転に寄与しない。この回転角度θに対する回転角度γ´およびγの割合は、傾斜駆動当接面Cj1,Ck1の回転径と傾斜角の設定で極力小さなものにすることが可能である。
カム機構Ciの動作態様をさらに詳細に説明する。図5に示すように、カム爪Cjは、第1ギヤG1および第1カム板Ch1の回転方向に対して傾斜した傾斜駆動当接面Cj1と、回転方向に対して略垂直な従動当接面Cj2とを備えている。一方、第2カム板Ch2のカム溝Ckにも同様な傾斜駆動当接面Ck1と従動当接面Ck2が形成されている。これにより、例えば、右アームARへの駆動回転力の入力によって第1ギヤG1即ち、第1入力回転体Gaおよびそれと一体的に結合されている第1カム板Ch1が図6(b)に示す方向に回転する場合、回転駆動力を伝達する第2ギヤG2以降のギヤ列に例えば、伝達経路の部分的閉ループにより回転伝達ロックが生じる等の所定以上の駆動抵抗が存在すると、第1カム板Ch1のカム爪Cjの傾斜駆動当接面Cj1が第2カム板Ch2のカム溝Ckの傾斜駆動当接面Ck1に当接して、第1カム板Ch1が第2カム板Ch2に対して押圧状態で滑動しつつ相対回転する。すると、傾斜駆動当接面Cj1および傾斜駆動当接面Ck1のくさび効果によって、第2カム板Ch2が一体的に係合されている外軸4と共に第1クラッチ軸芯X2の方向にスライドして移動して第1カム板Ch1と第2カム板Ch2とのあいだの間隔がd1となり、外軸4に一体固定されている第1クラッチ部材Caが第2クラッチ部材Cbから離間する。その結果、第1クラッチC1が切り状態となる。
このとき、第2クラッチC2は切れておらず、第1セットS1の第2ギヤG2の回転は、第1伝達機構T1を介して、第2セットS2の第2ギヤG2に伝達される。この第2ギヤG2と外軸4、第2カム板Ch2および第1カム板Ch1を介して連動する第1ギヤG1即ち、第2入力回転体Gbは、左アームALに連結されたアームギヤGAと歯合しているが、左アームALでは作用者の踏み込みが終了した段階であるからアームギヤGAおよび第2入力回転体Gbは駆動側の方向にはほぼ静止したままである。この結果、第2セットS2の第2ギヤG2に連動して回転しようとする第2カム板Ch2の従動当接面Ck2が、静止している第1ギヤG1即ち、第2入力回転体Gbに一体的に結合されている第1カム板Ch1の従動当接面Cj2を押圧して一体化し、第1ギヤG1即ち、第2入力回転体Gbさらに、アームギヤGAおよび左アームALを従動させる
またこのとき、駆動回転の負荷が大きい場合等に、第1クラッチ部材Caはさらに第2クラッチ部材Cbから離間する方向に移動を継続することがある。しかし、その場合でも全移動距離dTを設定する移動規制部を設けたカム機構Ciとしているので、第1カム板Ch1と第2カム板Ch2は、互いの傾斜駆動当接面Cj1,Ck1で一定以上の面積を維持し、その係合が損なわれずに押圧反力を発生させつつ一体化され、駆動回転力の伝達が確実に行なわれる。
一方、左アームALへの駆動回転力の入力によって、第2入力回転体Gbとしての第1ギヤG1が回転する場合も同様の理由により、第1クラッチC1は切れていないので第2セットS2の第2ギヤG2の回転は、第2伝達機構T2を介して、第1セットS1の第2ギヤG2に伝達され、第1セットS1の第2ギヤG2に連動して回転しようとする第2カム板Ch2の従動当接面Ck2が、静止している第1ギヤG1即ち、第1入力回転体Gaに一体的に結合されている第1カム板Ch1の従動当接面Cj2を押圧して一体化し、第1ギヤG1即ち、第1入力回転体Gaさらに、アームギヤGAおよび右アームARを従動させる。
このとき、右アームARへの駆動回転力の入力が行われるときと同様に、全移動距離dTを設定する移動規制部を設けたカム機構Ciにより、第1カム板Ch1と第2カム板Ch2は、互いの傾斜駆動当接面Cj1,Ck1で一定以上の面積を維持し、その係合が損なわれずに押圧反力を発生させつつ一体化され、駆動回転力の伝達が確実に行なわれる。
また、前述のように右アームARおよびアームギヤGAへの駆動回転力の入力に引き続いて、左アームALおよびアームギヤGAに駆動力を加え、第2入力回転体Gbに駆動力が入力されようとするときは、第1セットS1にある第2伝達機構T2上の第1クラッチC1は切り状態のままで、そちらの第1カム板Ch1と第2カム板Ch2との間隔はd1〜dTとなっており、カム溝Ckに設けた従動当接面Ck2と、第1カム板Ch1のカム爪Cjに設けた従動当接面Cj2とは対向密着せず隙間の空いた状態になっている。
従って、左アームALおよびアームギヤGAに駆動力を加え、第2入力回転体Gbに駆動力が入力されると、まず、逆方向のルートで連結状態にある第1伝達機構T1を介して、切り状態にある第2伝達機構T2上の第1クラッチC1の第1カム板Ch1と第2カム板Ch2との隙間の空いた各従動当接面Ck2,Cj2が当接する方向に相対回転して、d1〜dTである第1カム板Ch1と第2カム板Ch2との間隔がゼロとなり、その結果、第1クラッチC1が入り状態となる。そしてさらに、左アームALおよびアームギヤGAに駆動力を加えると、伝達経路の部分的閉ループにより回転伝達ロックが生じる結果、前述のカム機構Ciの動作態様により第2クラッチC2が切り状態となる。
尚、駆動側のカム機構Ciのカム爪Cjおよびカム溝Ckに形成されている傾斜駆動当接面Cj1,Ck1が傾斜面であるのに対し、従動当接面Cj2,Ck2が第1カム板Ch1および第2カム板Ch2の回転方向に対して略垂直面である場合は、従動側のクランク負荷がかなり大きい場合でも確実に作動させることができる。しかし例えば、何れか一方のペダルPの特定方向の踏み込み操作で、踏み込んだ側のクランクアームおよび入力回転体に特定方向の回転駆動力が入力されるときに、他方のペダルが障害物等でロックされていると本機器の損傷を来したり、障害物が人体の一部の場合は傷害を引き起こす可能性がある。これらの可能性をなくすためと、従動側クランクに多少の負荷が掛かっても、駆動側のカム機構Ciのカム爪Cjが確実に先に滑りクラッチCが切り状態となるように、従動当接面Cj2,Ck2は第1カム板Ch1および第2カム板Ch2の回転方向に対して垂直面でないが傾斜駆動当接面Cj1,Ck1の傾斜角度よりも垂直に近い角度を有する傾斜面としてもよい。
このように第1クラッチC1および第2クラッチC2を設けることで、例えば、押し込み作動クランクの回転において、右アームARと左アームALとに駆動力を交互に入力するだけで駆動回転の伝達機構が容易に切り替わり、右アームARと左アームALとの回転角速度を変化させ、上死点TDCを越えた第1位置1pから下死点BDCの手前の第2位置2pまでを駆動回転範囲とする上死点TDCおよび下死点BDC回避の駆動伝達構成としたクランク回転の駆動伝達機構Kを得ることができる。
本構成の駆動伝達機構Kは、図4に示すように、右アームARまたは左アームALに加えた力を取り出す出力部J2を備えている。この例では、第1セットS1のアームギヤGAに出力用回転体のスプロケットJ2aを設けた。スプロケットJ2aの回転はチェーンなどを介して発電機6のスプロケットJ2bに伝達され、発電機6に設けた回転電機子等を回転させる。尚、スプロケットJ2a、J2bおよびチェーンに代わる適切な出力取り出し手段も可能である。ここで生じた電力は蓄電池に充電しておいてもよい。また、発電機6の代わりに摩擦などを利用した負荷部材を設けておき、健康器具として用いることも可能である。
(ストッパー)
図7に示すように、本構成の駆動伝達機構Kには、作用者が右ペダルPRあるいは左ペダルPLを違和感なく踏み込めるようにストッパーBを設けてある。ストッパーBは、例えば、一種のステアクライマーのベース10に設けてあり、上向きに付勢された出退部Baを有する。具体的には、互いにネジ係合された筒状のケースBbおよび基部Bcを備えており、基部Bcがベース10に固定してある。ケースBbを基部Bcに対して回転させることで、出退部Baの設定高さを変更することができる。
出退部BaとケースBbのあいだには、ケースBbを上向きに付勢するコイルバネなどの付勢部材Bdが内装されており、この付勢部材Bdを受け止める底部材BeがケースBbに螺合してある。底部材Beの高さを変更することで、付勢部材Bdの付勢力を調節することができる。
底部材Beの上面には、例えばリング状のゴム等で形成した弾性部材Bfが設けてある。これにより、例えば出退部Baが右ペダルPRによって押し下げられたとき、出退部Baの下端部が衝撃を吸収しつつ受け止められる。その結果、作用者がペダルPを踏み込んだ際の踏み込み感を良好なものにする。
図7(a)は例えば右ペダルPRの下面が出退部Baに当接し、さらに、右ペダルPRが踏み込まれ付勢部材Bdが縮み込んで、出退部Baの下端部が弾性部材Bfに当接した状態である。右ペダルPRの可動部の下端がこれにより決定される。
図7(a)では、作用者の脚が右ペダルPRを踏み続けている状態であり、この後、踏力が作用し始めた左ペダルPLの回転に伴って右アームARが回転し、右アームARの右作用部SRが右ペダルPRの下面から離間する。
図7(b)は、右作用部SRが右ペダルPRの下面に再び当接した状態である。この状態では、作用者の脚の踏み込み力が少なくなっており、付勢部材Bdのストローク上限まで右ペダルPRが持ち上げられている。この後、右アームARがさらに従動回転し、右ペダルPRが出退部Baから離れる。
本構成によれば、弾性部材BfによってペダルPへの衝撃が吸収される効果の他、作用者がペダルPを踏み込んだあとペダルPが押し戻されるまでの時間を長く感じるという効果が得られる。作用者がペダルPの踏み込みを終了したと感じる状態は、図7(a)の出退部Baが弾性部材Bfに当接した瞬間である。一方、ペダルPが押し戻されたと感じる状態は、図7(b)のペダルPの裏に右作用部SRが再度当接した瞬間である。
図7(a)の状態から図7(b)の状態にかけて、出退部Baは付勢部材Bdのストロークh3の分だけ上方に変位しており、右作用部SRがペダルPから下方に離間する瞬間の位置と、右作用部SRがペダルPに再度当接する瞬間の位置とに高程差が生じる。よって、作用者は、ペダルPを踏み込んでいる時間を長く感じることとなる。これにより、例えば右ペダルPRに載せている脚には運動を一定時間遅れる感覚が生まれ、作用者が自己のタイミングとペースで円滑な踏込運動を持続することができる。
尚、右ペダルPRが付勢部材Bdによって上昇を始めた後に右作用部SRが当接すれば、両者の相対速度が小さくなっているため、当接時の衝撃がより緩和され違和感の少ない装置を得ることができる。
〔第2実施形態〕
図8(a)(b)には、一種のステアクライマーに使用するペダルPの別実施形態を示す。これらの状態は、図7の各図に示した状態と同じである。ただし、本実施形態では、ペダルPの下面の内、右作用部SRの当接面に傾斜部Paを設け、例えば、右作用部SRがペダルPから離間する瞬間の右作用部SRの高さと、右作用部SRが再びペダルPに当接する瞬間の右作用部SRの高さの差を増大させている。
図8(a)(b)に示したように、右作用部SRがペダルPから下方に離間する瞬間の右作用部SRの高さh1と、右作用部SRが再びペダルPの傾斜部Paに当接する瞬間の高さh2とのあいだには、ペダルPの傾斜部Paの効果もあって行程差(h2−h1)が生じる。本構成であれば、作用者が感じるペダルPの踏み込み終了の瞬間から再度ペダルPが持ち上げられる瞬間までの時間がより長く設定される。このように踏み込んだ脚が停止する時間がより長くなることで、階段を上る模擬動作がより自然なものとなる。
ペダルPの下面の内、右作用部SRの当接面は、上記の如く右作用部SRが離間する位置と再度当接する位置とで高さが異なっており、ペダルPの持ち上げに際して右作用部SRがペダルPの下面に沿って摺接する際に過度な障害が生じないものであれば何れの形状であっても良い。例えば、ペダルPのつま先方向に行くほど上方にカーブする凸曲面であってもよい。
〔第3実施形態〕
本発明の駆動伝達機構Kは、図9に示すように通常の自転車のペダルPを持った背もたれのあるリカンベント式自転車の健康器具に適用することもできる。この実施形態では左ペダルPLおよび右ペダルPRが特定の踏み込み方向に各々当接する対象としての右作用部SRおよび左作用部SL自体が、左右のペダルPの回転芯となっている。この場合でも、踏み込む側のペダルPが踏み込む方向に沿った上死点TDCを超えた位置まで戻るように設定できるから、健常者はもちろん、高齢者やリハビリテーション中の作用者にとっても踏み込みの初期動作が非常に楽なものとなる。尚、このようにクランクアームの先端に設けた作用部を中心に回転するペダルPに、作用者自身の重力がほとんど掛からない両脚を掛けて漕ぐ場合には、左右のペダルPが下死点BDC近傍で停止する領域を特に設けなくてもよい。
さらに、本発明の駆動伝達機構Kは、実際に道路を走行する自転車に適用することもできる。例えば上り坂を走行するような場合に、ペダルPの位置が上死点TDCを越えているから、体力の消耗の少ない走行を行うことができる。
〔他の実施形態〕
カム爪Cjおよびカム溝Ckの構成については、第1カム板Ch1にカム溝Ckを設け、第2カム板Ch2にカム爪Cjを設けてもよい。
各クランクアームは、左右の第1入力回転体Gaおよび第2入力回転体Gbに直接取り付け、第1クラッチ軸芯X2と第2クラッチ軸芯X4とを同一軸芯にする構成でもよい。
クラッチCは、本実施形態のように第1クラッチ部材Caにボール部材Cdを、円筒状の第2クラッチ部材Cbの円錐穴面に当接させるものの他に、ボール部材Cdを円錐ころに変えるものでもよい。また例えば、第1クラッチ部材Caと第2クラッチ部材Cbとの相対する面が、第1クラッチ軸芯X2に垂直または平行な面、あるいは傾斜した面で平面状または円筒状、あるいは円錐状等の任意の摩擦面を形成しておくものでもよい。さらに、摩擦面ではなく、係脱可能な適切な噛み合い凹凸面または機構を形成しておいてもよい。
また、クラッチCは、電磁式のものや流体式のものでクランクアームの動きやクランクアームへの入力の大きさなどをセンシングしてクラッチCを切るものであっても良い。このとき、クラッチCを設ける位置は第1伝達機構T1および第2伝達機構T2上であれば、本実施形態の位置に限定する必要はない。
さらに、作用者が押し込み作動により駆動回転力を入力するものの他、作用者に代わり機械的にアクチュエータ等が入力するものであっても良い。その際のクラッチCの入切の信号は無線あるいは有線で伝達することができる。
本発明に係るクランク回転駆動伝達機構は、例えば押し込み作動や小回転角回転の駆動力を交互に入力して回転出力を得るような装置に対して広く適用することができる。
1p 第1位置
2p 第2位置
AR 第1クランクアーム
AL 第2クランクアーム
B ストッパー
BDC 下死点
C1 第1クラッチ
C2 第2クラッチ
Ca 第1クラッチ部材
Cb 第2クラッチ部材
Cf 付勢部材
Ci カム機構
Cj1 傾斜駆動当接面
Ck1 傾斜駆動当接面
Ga 第1入力回転体
Gb 第2入力回転体
J2 出力部
K クランク回転駆動伝達機構
P ペダル
PR 第1ペダル
PL 第2ペダル
SR 第1作用部
SL 第2作用部
T1 第1伝達機構
T2 第2伝達機構
TDC 上死点