JP2020164896A - オーステナイト系耐熱合金部材 - Google Patents

オーステナイト系耐熱合金部材 Download PDF

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Abstract

【課題】クリープ破断強度および耐再熱割れ性の両方に優れたオーステナイト系耐熱合金部材を提供する。【解決手段】化学組成が、質量%で、C:0.009%以下、Si:2.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.040%以下、S:0.0001〜0.0100%、O:0.01%以下、N:0.020%以下、Cr:25.0〜38.0%、Ni:40.0〜60.0%、W:3.0〜10.0%、Ti:0.01〜1.20%、Al:0.30%以下、B:0.0001〜0.010%、Zr:0.0001〜0.50%、Co:0〜1.0%、Cu:0〜1.0%、Mo:0〜1.0%、V:0〜0.5%、Nb:0〜0.5%、残部:Feおよび不純物であり、合金中に含まれる粒子径が50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が50〜500個/μm3である、オーステナイト系耐熱合金部材。【選択図】 なし

Description

本発明は、オーステナイト系耐熱合金部材に係り、特に、クリープ破断強度および耐再熱割れ性に優れるオーステナイト系耐熱合金部材に関する。
近年、環境負荷軽減の観点から発電用ボイラなどでは運転条件の高温・高圧化が世界的規模で進められており、過熱器管および再熱器管の材料として使用されるオーステナイト系耐熱合金部材には、より優れたクリープ破断強度を有することが求められている。
このような技術的背景のもと、種々のオーステナイト系耐熱合金に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、表面加工を施して330HV以上となる塑性加工硬化層を表面に形成させた後、その硬化した表面部分に対して、十分な再結晶を生じさせるとともに再結晶粒内または粒界にCr炭化物を分散して析出させるための局部的な加熱処理を施して、耐粒界腐食性と耐応力腐食割れ性を高めた、オーステナイト系合金構造物とその製造法が開示されている。
また、特許文献2には、結晶粒の微細化を行うとともに、結晶粒界に析出するSを抑制することにより、熱間加工性を向上させた、高Ni、高Crステンレス鋼が開示されている。特許文献3には、Ni基合金製品が提案されている。このNi基合金製品は、Wを活用して高温強度を高めるとともに、有効B量を管理することにより、熱間加工性を改善するとともに溶接割れを防止した、特に大型製品として好適なオーステナイト系耐熱合金製品である。
さらに、特許文献4には、Cr、TiとZrの活用によりα−Cr相を強化相としてクリープ強度を高めた、オーステナイト系耐熱合金ならびに、その合金からなる耐熱耐圧部材およびその製造方法が提案されている。特許文献5には、多量のWを含有させるとともにAlとTiとを活用して、固溶強化とγ’相の析出強化によって強度を高めた、Ni基耐熱合金が提案されている。
そして、特許文献6および7には、熱間加工時の割れ性に優れ、厚肉、大型高温部材として好適に用いることのできる、オーステナイト系耐熱合金部材が提案されている。特許文献8には、HAZの液化割れおよびHAZの脆化割れをともに防止できるとともに、溶接施工中に発生する溶接作業性に起因した欠陥も防止でき、さらに、高温でのクリープ強度にも優れるオーステナイト系耐熱合金が提案されている。
特開2000−265249号公報 特開2002−80942号公報 特開2011−63838号公報 国際公開第2009/154161号 国際公開第2010/038826号 特開2014−34725号公報 特開2014−145109号公報 特開2010−150593号公報
過熱器管および再熱器管の材料として使用されるオーステナイト系耐熱合金部材には、より優れたクリープ破断強度を有するとともに、溶接後熱処理時または使用時に問題となる再熱割れを回避できる優れた耐再熱割れ性を有することも求められる。一般に、より優れたクリープ破断強度および耐再熱割れ性の両方を得ることは困難であり、特許文献1〜8のいずれにおいても、上述の課題解決には至っておらず、改善の余地が残されている。
本発明は上記の問題を解決し、クリープ破断強度および耐再熱割れ性の両方に優れたオーステナイト系耐熱合金部材を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記のオーステナイト系耐熱合金部材を要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.009%以下、
Si:2.0%以下、
Mn:3.0%以下、
P:0.040%以下、
S:0.0001〜0.0100%、
O:0.01%以下、
N:0.020%以下、
Cr:25.0〜38.0%、
Ni:40.0〜60.0%、
W:3.0〜10.0%、
Ti:0.01〜1.20%、
Al:0.30%以下、
B:0.0001〜0.010%、
Zr:0.0001〜0.50%、
Co:0〜1.0%、
Cu:0〜1.0%、
Mo:0〜1.0%、
V:0〜0.5%、
Nb:0〜0.5%、
残部:Feおよび不純物であり、
合金中に含まれる粒子径が50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が50〜500個/μmである、
オーステナイト系耐熱合金部材。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Co:0.01〜1.0%、
Cu:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
V:0.01〜0.5%、および
Nb:0.01〜0.5%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)に記載のオーステナイト系耐熱合金部材。
(3)前記化学組成が、質量%で、
C:0.0001〜0.009%、
を含有する、
上記(1)または(2)に記載のオーステナイト系耐熱合金部材。
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、耐再熱割れ性と長時間クリープ破断強度との両方に優れる。
本発明者らは前記した課題を解決するために、オーステナイト系耐熱合金の耐再熱割れ性とクリープ破断特性とを詳細に調査した結果、以下の知見を得るに至った。
一般的に、優れたクリープ破断強度を得るためには、所定量以上のCを含有させることにより、粒界の析出強化を行う必要があると考えられている。しかしながら、多量のCを含有させると、炭化物による粒内析出強化に伴い粒界弱化が生じることとなり、再熱割れが生じる原因となる。すなわち、耐再熱割れ性とクリープ破断特性との間には、いわゆるトレードオフの関係が存在することとなる。
そこで、本発明者らが上記の問題を解決するために検討した結果、α−Cr相といった析出物を活用することにより、C含有量を低減したとしても優れたクリープ破断強度を確保することが可能になることを見出した。そして、C含有量を低減することにより、炭化物の粒内析出強化によって相対的に発生する粒界弱化が抑制され、耐再熱割れ性を向上させることが可能になる。
さらに、合金中に予め、極めて微細なTi炭硫化物および/またはTi硫化物を所定量以上析出させることによって、使用環境中において、α−Cr相を粒内に微細析出させることができることを見出した。粒内に微細析出したα−Cr相は、粒界に析出した場合に比べて、クリープ破断強度を向上させる効果が高い。
本発明は上記知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.009%以下
Cは、一般的には、オーステナイトを安定にするとともに粒界に微細な炭化物を形成し、高温でのクリープ破断強度を向上させる元素であることが知られている。しかしながら、本発明においては、C含有量が過剰になると耐再熱割れ性の低下を招く。このため、C含有量は0.009%以下とする。C含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.005%以下であるのがより好ましい。
なお、C含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端な低減は製造コストの上昇を招く。そのため、C含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0005%以上であるのがより好ましく、0.0008%以上であるのがさらに好ましい。
Si:2.0%以下
Siは、脱酸作用を有するとともに、高温での耐食性および耐酸化性の向上に有効な元素である。しかしながら、Siが過剰に含有された場合にはオーステナイトの安定性が低下して、靱性およびクリープ破断強度の低下を招く。そのため、Si含有量は2.0%以下とする。Si含有量は1.5%以下であるのが好ましく、1.0%以下であるのがより好ましく、0.5%以下であるのがさらに好ましい。
なお、Si含有量について特に下限を設ける必要はない。しかし、Si含有量を極端に低減すると、脱酸効果が十分に得られず合金の清浄度が大きくなって清浄性が劣化する。また、高温での耐食性および耐酸化性の向上効果も得難くなり、製造コストも大きく上昇する。そのため、Si含有量は0.02%以上とするのが好ましく、0.05%以上とするのがより好ましい。
Mn:3.0%以下
Mnは、Siと同様、脱酸作用を有するだけでなく、オーステナイトの安定化にも寄与する元素である。しかしながら、Mn含有量が過剰になると脆化を招き、さらに、靱性およびクリープ延性の低下も生じる。そのため、Mn含有量は3.0%以下とする。Mn含有量は2.8%以下であるのが好ましく、2.5%以下であるのがより好ましい。
なお、Mn含有量についても特に下限を設ける必要はない。しかし、Mn含有量を極端に低減すると、脱酸効果が十分に得られず合金の清浄性を劣化させる。また、熱間加工性が劣化するだけでなく、オーステナイト安定化効果が得難くなり、製造コストも大きく上昇する。そのため、Mn含有量は0.005%以上とするのが好ましく、0.010%以上とするのがより好ましい。
P:0.040%以下
Pは、不純物として合金中に含有され、多量に含まれる場合には、熱間加工性および溶接性を著しく低下させ、さらに、長時間使用後のクリープ延性も低下させる。そのため、P含有量は0.040%以下とする。P含有量は0.030%以下であるのが好ましく、0.020%以下であるのがより好ましい。
なお、Pの含有量は可能な限り低減することが好ましいが、極度の低減は製造コストの増大を招く。そのため、P含有量は0.0005%以上とするのが好ましく、0.0008%以上とするのがより好ましい。
S:0.0001〜0.0100%
Sは、強化相であるα−Cr相の析出核となるTi炭硫化物および/またはTi硫化物を形成するために必要な元素である。この効果を十分に得るためには、S含有量を0.0001%以上とする必要がある。しかしながら、Sが多量に含まれる場合には、熱間加工性および溶接性が著しく低下し、さらに、長時間使用後のクリープ延性も低下する。したがって、S含有量は0.0001〜0.0100%とする。S含有量は0.0003%以上であるのが好ましく、0.0005%以上であるのがより好ましい。また、S含有量は0.0090%以下であるのが好ましく、0.0080%以下であるのがより好ましい。
O:0.01%以下
O(酸素)は、不純物として合金中に含まれ、その含有量が過剰になると熱間加工性が低下し、さらに靱性および延性の劣化を招く。このため、O含有量は0.01%以下とする。O含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.005%以下であるのがより好ましい。
なお、O含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端な低減は製造コストの上昇を招く。そのため、O含有量は0.0005%以上とするのが好ましく、0.0008%以上とするのがより好ましい。
N:0.020%以下
Nは、オーステナイトを安定にするのに有効な元素であるものの、過剰に含有されると、高温での使用中に多量の微細窒化物が粒内に析出してクリープ延性および靱性の低下を招く。そのため、N含有量は0.020%以下とする。N含有量は0.018%以下であるのが好ましく、0.015%以下であるのがより好ましい。
なお、N含有量について特に下限を設ける必要はない。しかし、N含有量を極端に低減すると、オーステナイトを安定にする効果が得難くなるだけでなく、製造コストも大きく増加する。そのため、N含有量は0.0005%以上とするのが好ましく、0.0008%以上とするのがより好ましい。
Cr:25.0〜38.0%
Crは、高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。また、α−Cr相として析出し、クリープ破断強度の向上にも寄与する。上記の効果を得るためには、Cr含有量を25.0%以上とする必要がある。しかしながら、Cr含有量が38.0%を超えると、高温でのオーステナイトの安定性が劣化してクリープ破断強度の低下を招く。したがって、Cr含有量は25.0〜38.0%とする。Cr含有量は25.5%以上であるのが好ましく、26.0%以上であるのがより好ましい。また、Cr含有量は37.5%以下であるのが好ましく、37.0%以下であるのがより好ましい。
Ni:40.0〜60.0%
Niは、オーステナイトを得るために有効な元素であり、長時間使用時の組織安定性を確保するために必須の元素である。また、NiTiとして析出し、クリープ破断強度の向上にも寄与する。上述のCr含有量の範囲において、上記したNiの効果を十分に得るためには、Ni含有量を40.0%以上とする必要がある。しかしながら、Niは高価な元素であり、多量に含有させるとコストの増大を招く。したがって、Ni含有量は40.0〜60.0%とする。Ni含有量は41.0%以上であるのが好ましく、42.0%以上であるのがより好ましい。また、Ni含有量は58.0%以下であるのが好ましく、56.0%以下であるのがより好ましい。
W:3.0〜10.0%
Wは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ破断強度の向上に大きく寄与する元素である。その効果を十分に発揮させるためには、W含有量を3.0%以上とする必要がある。しかしながら、Wを過剰に含有させても効果は飽和し、かえってクリープ破断強度を低下させる。さらに、Wは高価な元素であるため、過剰に含有させるとコストの増大を招く。したがって、W含有量は3.0〜10.0%とする。W含有量は3.5%以上であるのが好ましく、4.0%以上であるのがより好ましい。また、W含有量は9.5%以下であるのが好ましく、9.0%以下であるのがより好ましい。
Ti:0.01〜1.20%
Tiは、強化相であるα−Cr相の析出核となるTi炭硫化物および/またはTi硫化物を形成するために必要な元素であり、加えて、強化相であるNiTiの形成にも必要な元素でもある。それらの効果を得るためには、Ti含有量を0.01%以上とする必要がある。しかしながら、Ti含有量が過剰になると炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。したがって、Ti含有量は0.01〜1.20%とする。Ti含有量は0.05%以上であるのが好ましく、0.10%以上であるのがより好ましい。また、Ti含有量は1.10%以下であるのが好ましく、1.00%以下であるのがより好ましい。
Al:0.30%以下
Alは、脱酸作用を有する元素である。しかしながら、Al含有量が過剰になると合金の清浄性が著しく劣化して、熱間加工性および延性が低下する。そのため、Al含有量は0.30%以下とする。Al含有量は0.20%以下であるのが好ましく、0.10%以下であるのがより好ましい。
なお、Alの含有量について特に下限を設ける必要はない。しかし、Al含有量を極端に低減すると、脱酸効果が十分に得られず合金の清浄性を逆に劣化させるとともに、製造コストの上昇を招く。そのため、Al含有量は0.0005%以上とするのが好ましい。Alの脱酸効果を安定して得るとともに、良好な清浄性を確保するためには、Al含有量は0.001%以上とするのがより好ましい。
B:0.0001〜0.010%
Bは、高温での使用中に粒界に偏析して粒界を強化するとともに粒界炭化物を微細分散させることにより、クリープ破断強度を向上させるのに必要な元素である。加えて、耐再熱割れ性の向上にも寄与する。これらの効果を得るためにはB含有量を0.0001%以上とする必要がある。しかしながら、B含有量が過剰になると、溶接性が劣化することに加えて、熱間加工性が劣化する。したがって、B含有量は0.0001〜0.010%とする。B含有量は0.0005%以上であるのが好ましく、0.001%以上であるのがより好ましい。また、B含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.006%以下であるのがより好ましい。
Zr:0.0001〜0.50%
Zrは、クリープ破断強度を向上させる作用を有する。すなわち、Zrは、粒界強化元素であり、高温でのクリープ破断強度向上に寄与し、さらに、クリープ延性の向上にも寄与する。この効果を得るためにはZr含有量を0.0001%以上とする必要がある。しかしながら、Zr含有量が0.50%を超えると熱間加工性が低下する。したがって、Zr含有量は0.0001〜0.50%とする。Zr含有量は0.30%以下であるのが好ましい。
本発明のオーステナイト系耐熱合金の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。Feは安価な原料であるため、0.1%〜20.0%含まれることが好ましい。また、ここで「不純物」とは、合金を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本発明のオーステナイト系耐熱合金には、さらに、Co、Cu、Mo、VおよびNbから選択される1種以上の元素を含有させてもよい。
Co:0〜1.0%
Coは、クリープ破断強度を向上させる作用を有する。すなわち、Coは、Niと同様オ−ステナイト生成元素であり、相安定性を高めてクリープ破断強度の向上に寄与する。そのため、Coを含有させてもよい。しかしながら、Coは極めて高価な元素であるため、Coを過剰に含有させると大幅なコスト増を招く。したがって、Co含有量は1.0%以下とする。Co含有量は0.8%以下であるのが好ましい。一方、上記の効果を得たい場合は、Co含有量を0.01%以上とするのが好ましい。
Cu:0〜1.0%
Cuは、クリープ破断強度を向上させる作用を有する。すなわち、Cuは、NiおよびCoと同様オーステナイト生成元素であり、相安定性を高めてクリープ破断強度の向上に寄与する。そのため、Cuを含有させてもよい。しかしながら、Cuが過剰に含有された場合には熱間加工性の低下を招く。したがって、Cu含有量は1.0%以下とする。Cu含有量は0.8%以下であるのが好ましい。一方、上記の効果を得たい場合は、Cu含有量を0.01%以上とするのが好ましい。
Mo:0〜1.0%
Moは、クリープ破断強度を向上させる作用を有する。すなわち、Moは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ破断強度を向上させる作用を有する。そのため、Moを含有させてもよい。しかしながら、Moが過剰に含有された場合にはオーステナイトの安定性が低下して、かえってクリープ破断強度の低下を招く。したがって、Mo含有量は1.0%以下とする。Mo含有量は0.8%以下であるのが好ましい。一方、上記の効果を得たい場合は、Mo含有量を0.01%以上とするのが好ましい。
V:0〜0.5%
Vは、クリープ破断強度を向上させる作用を有する。すなわち、Vは、CまたはNと結合して微細な炭化物または炭窒化物を形成し、クリープ破断強度を向上させる作用を有する。そのため、Vを含有させてもよい。しかしながら、Vが過剰に含有された場合、炭化物または炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性の低下を招く。したがって、V含有量は0.5%以下とする。V有量は0.4%以下であるのが好ましい。一方、上記の効果を得たい場合は、V含有量を0.01%以上とするのが好ましい。
Nb:0〜0.5%
Nbは、Vと同様にCまたはNと結合して微細な炭化物または炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ破断強度向上に寄与する。そのため、Nbを含有させてもよい。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると炭化物または炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。したがって、Nb含有量は0.5%以下とする。Nb有量は0.4%以下であるのが好ましい。一方、上記の効果を得たい場合は、Nb含有量を0.01%以上とするのが好ましい。
上記のCo、Cu、Mo、VおよびNbは、そのうちのいずれか1種のみ、または、2種以上の複合的に含有させることができる。これらの元素を複合して含有させる場合の合計量は、4.0%であってもよい。
2.Ti炭硫化物およびTi硫化物
上述のように、本発明において、当該オーステナイト系耐熱合金部材の長時間クリープ破断強度を得るためには、α−Cr相の析出核として作用する、微細なTi炭硫化物およびTi硫化物の個数密度の合計量を適切に制御する必要がある。具体的には、合金中に含まれる50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度を、50〜500個/μmの範囲に制御する必要がある。
合金中のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が50個/μmを下回る場合、十分なα−Cr相を得られず優れたクリープ破断強度を得ることができない。一方、合金中のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が500個/μmを超える場合、α−Cr相の粗大化が早まり、かえってクリープ破断強度が低下するばかりか、耐再熱割れ性だけでなく、クリープ延性および靭性も劣化する。クリープ破断強度向上の観点からは、合金中のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度は100個/μm以上であることが好ましい。
本発明において、合金中に含まれる50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度は透過電子顕微鏡(TEM)によって測定する。具体的には、試料から厚さ100nmの薄膜を作製し、TEMにより観察する。この時の倍率は100000倍とする。そして、Ti炭硫化物またはTi硫化物と特定されたものの面積を画像処理により測定し、円相当径が50nm以下であるTi炭硫化物およびTi硫化物の個数の合計を計測する。そして、計測された合計個数を視野の体積で除することにより、合計個数密度を求める。
3.製造方法
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材の製造方法については特に制限はないが、例えば、上述の化学組成を有する鋼塊または鋳片に、熱間加工を施すことによって製造することができる。また、当該熱間加工の後に、必要に応じて熱間押出等の異なる方法の熱間加工をさらに施してもよい。
さらに上記の工程の後、微細なTi炭硫化物および/またはTi硫化物を析出させるために、1100〜1250℃の温度範囲まで加熱して保持した後に、300℃までの平均冷却速度が0.1〜5℃/sとなる条件で室温まで冷却する。
または、微細なTi炭硫化物および/またはTi硫化物の析出量をより多くするためには、上記の工程の後、以下に説明する2段階での冷却を行うのが好ましい。
まず、1100〜1250℃の温度範囲から500〜1000℃の温度域まで0.01〜1℃/sの平均冷却速度で冷却する(第1冷却工程)。そして、当該温度域で1〜10h保持する(保持工程)。続いて、500〜1000℃の温度域から300℃までの平均冷却速度が0.01〜1℃/sとなる条件で室温まで冷却する(第2冷却工程)。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有するオーステナイト系耐熱合金1〜20を実験室溶解してインゴットを作製した。そして、上記インゴットに対して熱間での鍛造および圧延による成形を行った後、表2に示す条件で最終熱処理を施し、試験材を得た(試験No.1〜25)。
なお、最終熱処理での加熱温度は、表2に示す「第1冷却工程」における「冷却開始温度」と同じである。2段階での冷却(2段冷却)を行う場合においては、第1冷却工程における平均冷却速度は、冷却開始温度から保持温度までの間における平均冷却速度を意味し、第2冷却工程における平均冷却速度は、保持温度から300℃までの間における平均冷却速度を意味する。また、1段階での冷却(1段冷却)を行う場合においては、第1冷却工程における平均冷却速度は、冷却開始温度から300℃までの間における平均冷却速度を意味する。
Figure 2020164896
Figure 2020164896
その後、各試験材からTEM観察用試験片を切り出しTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度の測定を行った。具体的には、各試験材から厚さ100nmの薄膜を作製し、TEMにより観察した。この時の倍率は100000倍とした。そして、Ti炭硫化物またはTi硫化物と特定されたものの面積を画像処理により測定し、円相当径が50nm以下であるTi炭硫化物およびTi硫化物の個数の合計を計測した。そして、計測された合計個数を視野の体積で除することにより、合計個数密度を求めた。
次に、各合金板の肉厚中央部から、JIS Z 2241(2011)に記載される直径6mm、標点距離30mmの丸棒クリープ破断試験片を採取して、700℃、170MPaの条件でクリープ破断試験を行った。試験は、JIS Z 2271(2010)に準拠して行った。なお、クリープ破断時間が、2000h以上となるものを合格(○)とし、2000h未満のものを不合格(×)とした。
また、上記形状の丸棒引張試験片を用いて、700℃において10−6/sの極低歪速度で引張試験を行い、破断絞りを測定した。なお、上述の歪速度10−6/sは、通常の高温引張試験における歪速度の1/100〜1/1000という非常に遅い歪速度である。したがって、この極低歪速度で引張試験した際の破断絞りを測定することによって、耐再熱割れ感受性の相対評価を行うことができる。
具体的には、上述の極低歪速度で引張試験した際の破断絞りが大きい場合、耐再熱割れ感受性が低く、再熱割れ防止に対する効果が大きいと評価することができる。なお、破断絞りが、20%以上となるものを合格(○)とし、20%未満のものを不合格(×)とした。
それらの結果を表2に併せて示す。
表2に示すように、50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が本発明の規定範囲内である試験No.1〜19は、クリープ破断強度が良好な結果を示した。これに対して、50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が本発明の規定から外れる試験No.20〜25は、十分なクリープ破断強度が得られなかった。加えて、50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が過剰であった試験No.23〜25では、耐再熱割れ性も劣る結果となった。
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、耐再熱割れ性と長時間クリープ破断強度との両方に優れる。このため、本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、発電用ボイラの過熱器管、再熱器管等の材料としてのみならず、主蒸気管、再熱蒸気管等の大径、厚肉の高温部材として使用されるのに好適である。

Claims (3)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.009%以下、
    Si:2.0%以下、
    Mn:3.0%以下、
    P:0.040%以下、
    S:0.0001〜0.0100%、
    O:0.01%以下、
    N:0.020%以下、
    Cr:25.0〜38.0%、
    Ni:40.0〜60.0%、
    W:3.0〜10.0%、
    Ti:0.01〜1.20%、
    Al:0.30%以下、
    B:0.0001〜0.010%、
    Zr:0.0001〜0.50%、
    Co:0〜1.0%、
    Cu:0〜1.0%、
    Mo:0〜1.0%、
    V:0〜0.5%、
    Nb:0〜0.5%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    合金中に含まれる粒子径が50nm以下のTi炭硫化物およびTi硫化物の合計個数密度が50〜500個/μmである、
    オーステナイト系耐熱合金部材。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Co:0.01〜1.0%、
    Cu:0.01〜1.0%、
    Mo:0.01〜1.0%、
    V:0.01〜0.5%、および
    Nb:0.01〜0.5%、
    から選択される1種以上を含有する、
    請求項1に記載のオーステナイト系耐熱合金部材。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    C:0.0001〜0.009%、
    を含有する、
    請求項1または請求項2に記載のオーステナイト系耐熱合金部材。

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