JP2020164383A - カーボンナノチューブ線材、カーボンナノチューブ線材の製造方法及び電線 - Google Patents

カーボンナノチューブ線材、カーボンナノチューブ線材の製造方法及び電線 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、湿式紡糸により比較的長い糸状のカーボンナノチューブ線材が製造可能であり、配向性、導電性及び強度に優れたカーボンナノチューブ線材及びその製造方法を提供することである。【解決手段】本発明に係るカーボンナノチューブ線材10は、複数のカーボンナノチューブ11aで構成されるカーボンナノチューブ集合体11からなる。また、複数のカーボンナノチューブ11a,11a,・・・において、平均長さが10μm以上であり、平均径が2.0nm以下である。また、カーボンナノチューブ線材10は、カーボンナノチューブ線材10の重さに対して8質量%以上45質量%以下の分散剤を含んでいる。【選択図】図1

Description

本発明は、カーボンナノチューブ線材及びその製造方法に関し、特に比較的長い糸状のカーノンナノチューブを湿式紡糸により製造可能であり、かつ、得られた糸状のカーボンナノチューブを用いて作製されたカーボンナノチューブ線材に関する。また、本発明はそのようなカーボンナノチューブ線材を備える電線に関する。
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ということがある。)は、様々な特性を有する素材であり、多くの分野への応用が期待されている。
例えば、CNTは、軽量であると共に、導電性、熱伝導性、機械的強度等の諸特性に優れるため、線材の材料として用いることが考えられる。
CNTを線材として使用する場合、CNTの高配向化が高導電化に寄与することが知られている。また、アスペクト比が高いCNTは、CNT単体の導電性も高いことも公知である。アスペクト比が高い、すなわち長いCNTを使用すると、CNT同士の絡まりが強いため、さらなる高導電化が期待できるが、その一方で、高配向化が難しい。そのため、高いアスペクト比を有するCNTを高配向化させる技術の開発が望まれている。
また、CNT線材の製造方法の1つに、CNTを含む分散液を作製し、その分散液を凝固液(溶剤)中にてノズル等を介して吐出し、固化しながら繊維化する湿式紡糸が知られている。湿式紡糸では、凝固液中でCNT分散液を吐出して糸状のCNT線材を形成させるため、低粘度のCNT分散液を用いることも可能である。しかしながら、電線用途として高導電性のCNT線を作製するためには、高濃度のCNT分散液を用いてCNT密度の高い線材を作製する必要がある。CNTを均一に分散させるため、CNT分散液には、通常、分散剤(界面活性剤)が含まれるが、分散剤と配向性との関係については明らかにされていない。
特許文献1には、長尺でアスペクト比が高いCNTを含む分散液は、CNTが互いに絡み合いネットワーク構造を容易に形成するため、粘度が高く、また、せん断応力を加えるとネットワーク構造が解体され、CNT分散液の粘度が下がることが記載されている。しかしながら、CNTの配向性、CNTの湿式紡糸については記載されていない。また、CNT分散液中に導電性を阻害する要因である樹脂が含まれているため、導電性が劣ってしまうことが予想される。
国際公開第2016/080327号
上記事情に鑑み、本発明の目的は、湿式紡糸により比較的長い糸状のカーボンナノチューブ線材が製造可能であり、配向性、導電性及び強度に優れたカーボンナノチューブ線材及びその製造方法を提供することである。また、本発明のさらなる目的は、そのようなカーボンナノチューブ線材を備える電線を提供することである。
本発明者は、上記問題に対して鋭意検討を行った結果、カーボンナノチューブを含む分散液に高いせん断力を負荷しながら湿式紡糸を行うことにより、比較的長い糸状のカーボンナノチューブ線材が製造可能であるとの知見を得た。また、分散液中に含まれる分散剤の含有量を調製し、得られるカーボンナノチューブ線材に含まれる分散剤の量を適切に制御することで、高い配向性を有するカーボンナノチューブ線材が得られるとの知見を得た。そして、このような製法により得られたカーボンナノチューブ線材は、配向性が高く、その上、比較的長いカーボンナノチューブ同士が互いに絡み合ったネットワーク構造を形成するため、これにより、導電性及び強度に優れたカーボンナノチューブ線材が得られることを見出した。
すなわち、本発明の要旨構成は、以下の通りである。
[1]複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体からなるカーボンナノチューブ線材であって、
前記複数のカーボンナノチューブにおいて、平均長さが10μm以上であり、平均径が2.0nm以下であり、かつ、
前記カーボンナノチューブ線材の重さに対して8質量%以上45質量%以下の界面活性剤を含むことを特徴とする、カーボンナノチューブ線材。
[2]前記複数のカーボンナノチューブにおいて、平均アスペクト比が25×10以上80×10以下である、[1]に記載のカーボンナノチューブ線材。
[3]前記カーボンナノチューブ線材の重さに対して30質量%以上の分散剤を含む、[1]または[2]に記載のカーボンナノチューブ線材。
[4]前記カーボンナノチューブ線材の重さに対して40質量%以上の分散剤を含む、[3]に記載のカーボンナノチューブ線材。
[5][1]乃至[4]までのいずれかに記載のカーボンナノチューブ線材を備える電線。
[6]水と、平均長さが10μm以上かつ平均径が2.0nm以下である複数のカーボンナノチューブと、前記水の量に対して0.5質量%以上5.0質量%以下の分散剤とを含むカーボンナノチューブ分散液を作製する工程と、
凝固液中で前記カーボンナノチューブ分散液を1.0m/分以上10000m/分以下の吐出速度で吐出して、カーボンナノチューブを線材化する工程と、
を含むことを特徴とする、カーボンナノチューブ線材の製造方法。
[7]前記複数のカーボンナノチューブにおいて、平均アスペクト比が25×10以上80×10以下である、[6]に記載のカーボンナノチューブ線材の製造方法。
本発明によれば、カーボンナノチューブを線材化する工程において、分散液中に含まれる分散剤の含有量を調製し、得られるカーボンナノチューブ線材に含まれる分散剤の量を適切に制御することで、配向性が高いカーボンナノチューブ線材を得ることができる。また、カーボンナノチューブを含む分散液を所定の吐出速度で吐出することにより、比較的長い糸状のカーボンナノチューブ線材を製造することができる。このような製法により、配向性、導電性及び強度に優れたカーボンナノチューブ線材を作製することが可能である。また、このようなカーボンナノチューブ線材を備える電線も同様に、配向性、導電性及び強度に優れた導体を備える電線として使用できる。
図1は、本発明の実施形態例に係るカーボンナノチューブ線材の構成の一例を示す概略図である。 図2(a)は、SAXSによる複数のカーボンナノチューブ集合体の散乱ベクトルqの二次元散乱像の一例を示す図であり、図2(b)は、アジマスプロット二次元散乱像において、透過X線の位置を原点とする任意の散乱ベクトルqの方位角−散乱強度の一例を示すグラフである。 図3は、本発明の実施形態例に係るカーボンナノチューブ線材の製造方法の一例を示すフローチャートである。
以下に、本発明の実施形態例に係るカーボンナノチューブ線材について、図面を用いながら詳細に説明する。
<カーボンナノチューブ線材>
図1に示されるように、本発明に係るカーボンナノチューブ線材10は、複数のCNT11a,11a,・・・で構成されるCNT集合体11からなる。CNT集合体11は、1層以上の層構造を有する複数のCNT11a,11a,・・・で構成されており、CNT線材10は、CNT集合体11の単数から、または複数が束ねられて形成されている。ここで、CNT線材とはCNTの割合が90質量%以上のCNT線材を意味する。なお、CNT線材におけるCNT割合の算定においては、メッキとドーパントは除かれる。CNT集合体11の長手方向が、CNT線材10の長手方向を形成しているため、CNT集合体11は、線状となっている。CNT線材10における複数のCNT集合体11,11,・・・は、その長軸方向がほぼ揃って配向している。CNT線材10は、1本のCNT線材10からなる素線(単線)である。素線としてのCNT線材10の直径は、特に限定されないが、例えば、0.005mm以上4.0mm以下である。また、複数本のCNT線材10をさらに撚り合わせることにより、CNT線材10の撚り線を形成することができる。
CNT線材10は、複数のCNT11a,11a,・・・と分散剤(界面活性剤)とを含む分散液を用いて、CNT線材10に所定量の分散剤が含まれるように、例えば、後述する湿式紡糸により作製される。分散剤は導電性を有するため、作製したCNT線材10において、所定量の分散剤が残存することにより、CNT間に適当量の分散剤が存在し、電子の授受が行われやすくなる。一方、CNT分散液中に含まれる分散剤の含有量に応じて、CNT分散液中でCNTが凝集し、得られるCNT線材に空隙が発生すると、CNTの配向性にも影響を及ぼす可能性がある。そのため、CNT線材10は、CNT線材10の重さに対して8質量%以上45質量%以下の分散剤を含んでいる。
CNT線材が含有する分散剤の量が8質量%未満になるように分散液を調製すると、分散剤を含む分散液を用いて、湿式紡糸によりCNT線材を作製する際、分散液中で分散剤によるCNTの分散が十分ではなく、CNTが凝集する傾向にある。そのため、均一な濃度をもつCNT分散液が得られない、すなわち得られるCNT線材には空隙が発生し、CNTの高配向化が実現できない。また、空隙の発生に伴い、CNT同士の繋がりの形成が阻害され、CNT線材に優れた強度および導電性を付与することができなくなる。一方、CNT線材が含有する分散剤の量が45質量%を超えるように分散液を調製すると、分散液中に含まれる分散剤の量が多すぎるため、CNT分散液中に泡立ちが増大し、その泡立ちに起因してCNT線材に空隙が発生する。さらに、CNT分散液中で分散剤同士の絡まりも起こりやすくなり、その分散剤の絡まりによって、CNTは高配向化しづらくなる。そのため、CNTに優れた強度および導電性を付与することができなくなる。このように、CNT線材10に含まれる分散剤の量が8質量%以上45質量%以下の範囲に制御されることにより、強度および導電性に優れ、高い配向性を有するCNT線材10を得ることができる。
また、CNT線材10は、CNT線材10の重さに対して30質量%以上の分散剤を含むことが好ましく、40質量%以上の分散剤を含むことがより好ましい。CNT線材10に含まれる分散剤の含有量が30質量%以上である場合、強度および導電性をより向上させることができる。特に、CNT線材10に含まれる分散剤の含有量が40質量%以上である場合、強度および導電性を顕著に高めることができる。
[CNT集合体]
CNT集合体11は、複数のCNT11aの束であり、CNT11aの長手方向が、CNT集合体11の長手方向を形成している。CNT集合体11における複数のCNT11a,11a,・・・は、その長軸方向がほぼ揃って配向している。CNT集合体11の円相当直径は、例えば、20nm以上1000nm以下であり、より典型的には、20nm以上80nm以下である。
[CNT]
CNT集合体11を構成するCNT11aは、単層構造又は複層構造を有する筒状体が糸状に形成された物質であり、単層構造のCNTはSWNT(single-walled nanotube)、複層構造のCNTはMWNT(multi-walled nanotube)と呼ばれる。図1では、便宜上、2層構造を有するCNT11aのみを記載しているが、CNT集合体11には、3層構造を有するCNTまたは単層構造の層構造を有するCNTも含まれていてもよく、3層構造を有するCNTまたは単層構造の層構造を有するCNTから形成されていてもよい。但し、CNTが4層構造以上であると、CNTの径のサイズおよび分布が大きくなり、CNT同士が絡みにくくなる。そのため、CNTは、単層構造、2層構造または3層構造であることが好ましく、単層構造または2層構造であることがより好ましく、2層構造であることがさらに好ましい。
2層構造を有するCNT11aでは、六角形格子の網目構造を有する2つの筒状体T1,T2が略同軸で配された3次元網目構造体となっており、DWNT(double-walled nanotube)と呼ばれる。構成単位である六角形格子は、その頂点に炭素原子が配された六員環であり、他の六員環と隣接してこれらが連続的に結合している。
CNT11aの性質は、上記筒状体のカイラリティ(chirality)に依存する。カイラリティは、アームチェア型、ジグザグ型、及びカイラル型に大別され、アームチェア型は金属性、ジグザグ型は半導体性および半金属性、カイラル型は半導体性および半金属性の挙動を示す。従って、CNT11aの導電性は、筒状体がいずれのカイラリティを有するかによって大きく異なる。
一方で、半導体性の挙動を示すカイラル型のCNT11aに電子供与性もしくは電子受容性を持つ物質(異種元素)をドープすることにより、カイラル型のCNT11aが金属性の挙動を示すことが分かっている。また、一般的な金属では、異種元素をドープすることによって金属内部での伝導電子の散乱が起こって導電性が低下するが、これと同様に、金属性の挙動を示すCNT11aに異種元素をドープした場合には、導電性の低下を引き起こす。
[CNTの長さ]
複数のCNT11a,11a,・・・において、平均長さの下限値は10μm以上であり、50μm以上であることが好ましい。平均長さが10μm未満であると、長いCNTが少な過ぎるため、長さ方向(長手方向)の導電パスが短く、優れた導電性を得ることが困難である。また、長いCNT同士の繋がりが少ないため、優れた強度を得ることも困難となる。一方、CNTの平均長さが長いほど、高アスペクト比を有するCNT同士が互いに絡まって繋がりを形成しやすい。これにより、CNT線材の長さ方向(長手方向)に沿って安定して導電性が付与され、また、CNT同士の絡み合いにより強度も向上する。複数のCNT11a,11a,・・・において、平均長さの上限値は特に制限はないが、湿式紡糸により形成されるCNT線材がノズルから円滑に吐出されるようにするため、平均長さの上限値は120μm以下であることが好ましい。
[CNTの径]
複数のCNT11a,11a,・・・において、平均径は2.0nm以下であり、1.8nm以下であることが好ましい。平均径が2.0nmより大きいと、高アスペクト比を有するCNTの割合が少なくなるためCNT線材に高い配向性および導電性を付与させることができない。また、CNT同士が互いに絡まった繋がりを形成しにくいため、CNT線材に優れた強度を付与させることが困難である。一方、複数のCNT11a,11a,・・・において、平均径の下限値は特に制限はないが、湿式紡糸により形成されるCNT線材がノズルから円滑に吐出されるようにするため、平均径の下限値は1.2nm以上であることが好ましい。
[CNTのアスペクト比]
複数のCNT11a,11a,・・・において、平均アスペクト比は5×10以上100×10以下であることが好ましく、25×10以上80×10以下であることがより好ましい。平均アスペクト比が5×10以上100×10以下であることにより、比較的長いCNT同士の繋がりが形成され、導電性、強度に優れたCNT線材10を得ることができる。特に、平均アスペクト比が25×10以上80×10以下であることにより、CNTが高配向につまりやすく、また密度も高くなるため、より高い強度を付与することができる。また、平均アスペクト比が同じCNT同士では、上述したCNT線材10に含まれる分散剤の量が多いほど、より高い配向性を付与できる傾向にあり、その結果、導電性及び強度もより向上させることができる。
[CNTの配向性]
図2(a)は、小角X線散乱(SAXS)による複数のCNT集合体11,11,・・・の散乱ベクトルqの二次元散乱像の一例を示す図であり、図2(b)は、二次元散乱像において、透過X線の位置を原点とする任意の散乱ベクトルqの方位角−散乱強度の関係を示すアジマスプロットの一例を示すグラフである。
SAXSは、数nm〜数十nmの大きさの構造等を評価するのに適している。例えば、SAXSを用いて、以下の方法でX線散乱画像の情報を分析することで、外径が数nmであるCNT11aの配向性及び外径が数十nmであるCNT集合体11の配向性を評価することができる。例えば、CNT線材についてX線散乱像を分析すると、図2(a)に示すように、CNT集合体の散乱ベクトルq(q=2π/d:dは格子面間隔)のx成分であるqよりも、y成分であるqの方が相対的に狭く分布している。また、図2(a)と同じCNT線材について、SAXSのアジマスプロットを分析した結果、図2(b)に示すアジマスプロットにおけるアジマス角の半値幅Δθは、48°である。これらの分析により、CNT線材10において、複数のCNT11a,11a,・・・及び複数のCNT集合体11,11,・・・の配向性を評価できる。
複数のCNT11a,11a,・・・及び複数のCNT集合体11,11,・・・が良好な配向性を有することにより、CNT線材10の熱は、CNT11aおよびCNT集合体11の長手方向に沿って円滑に伝達しながら放熱されやすくなる。従って、CNT線材10は、上記CNT11a及びCNT集合体11の配向性を調節することで、放熱ルートを長手方向、径の断面方向にわたり調節できるので、金属製の芯線と比較して優れた放熱特性を発揮する。なお、ここでいう配向性とは、CNT線材の長手方向へのベクトルVに対する内部のCNT及びCNT集合体のベクトルの角度差のことを指す。
[密度]
本発明に係るCNT線材10は、密度が0.7g/cm以上であることが好ましく、1.0g/cm以上であることがより好ましい。密度が0.7g/cm以上であることにより、CNTが高密度でパッキングされ、強度を高めることができる。
[CNT線材の製造方法]
本発明に係るCNT線材10の製造方法は、CNT分散液を作製する工程と、CNTを線材化する工程を含む。図3は、本実施形態におけるCNT線材10の製造方法の一例を示すフローチャートである。図3に示されるように、本実施形態では、水と、所定の大きさのCNTと、所定量の分散剤とを含むCNT分散液を作製する工程(ステップS1)と、CN分散液を所定の吐出速度で吐出してCNTを線材化する工程(ステップS2)と、を含んでいる。
(ステップS1)
CNT分散液を作製する工程では、まず、CNT分散液の原料であるCNTを準備する。CNT11aは、浮遊触媒法(特許第5819888号公報)、基板法(特許第5590603号公報)等の方法により作製することができ、好ましくは浮遊触媒法により作製される。浮遊触媒法の条件は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法により適宜設計することができる。これにより、複数のCNT11a,11a,・・・が作製される。
CNT分散液を作製する工程では、分散剤(界面活性剤)が溶解した溶液中に、複数のCNT11a,11a,・・・を加えて超音波分散等の分散処理をしてCNT分散液を作製する。CNT分散液には、溶媒としての水と、所定の大きさを有する複数のCNT11a,11a,・・・と、所定量の分散剤とが含まれている。但し、CNT分散液には、導電性が阻害され、配向性も劣化する要因となるPVP等の樹脂は含まれない。CNT分散液中に含まれる複数のCNT11a,11a,・・・の含有量は、水の量(100質量%)に対して0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。CNT分散液は、水の量(100質量%)に対して0.5質量%以上5.0質量%以下の分散剤を含んでいる。分散液中に含まれる分散剤の含有量を適切な範囲に調製することにより、得られるCNT線材10に含まれる分散剤の量が適切に制御される。その結果、高い配向性を有するカーボンナノチューブ線材を作製することができる。
分散剤として使用される界面活性剤は、特に限定されるものではないが、例えば、陰イオン性界面活性剤等が挙げられ、特にコール酸ナトリウムが好ましい。このような界面活性剤は、1種単独であってもよく、2種以上を併用してもよい。
CNT線材10が、高アスペクト比を有する複数のCNT11a,11a,・・・から形成されるようにするため、CNT分散液中に含まれる複数のCNT11a,11a,・・・の平均長さは10μm以上であり、CNTの平均径は2.0nm以下である。CNT分散液中に含まれる複数のCNT11a,11a,・・・の大きさは、CNT分散液中で制御してもよく、複数のCNT11a,11a,・・・の作製段階で制御してもよい。このように、CNT分散液は、高アスペクト比を有する複数のCNT11a,11a,・・・を含むため、ゲル状またはペースト状の比較的高粘度のCNT分散液として存在する。ノズル内のせん断力にはCNT同士の絡まりを解き、高配向化させる効果があるが、CNTの短尺化には影響を与えないことを確認している。したがって、分散液中のCNTの平均長さと湿式紡糸後のCNTの紡糸線が有する平均長さは実質変化しない。
(ステップS2)
次に、ステップS1で作製したCNT分散液を所定の吐出速度で吐出してCNTを線材化する。CNTの線材化は、湿式紡糸により行われる。湿式紡糸とは、所定の分散液を凝固液(溶剤)中にてノズル等を介して吐出し、固化しながら繊維化する紡糸技術である。このような湿式紡糸は、例えば、特許第5135620号公報、特許第5131571号公報、特許第5288359号公報等に記載されている。高アスペクト比を有する複数のCNT11a,11a,・・・から形成されるCNT線材10を作製するため、作製したCNT分散液に高いせん断力を負荷しながら湿式紡糸を行う。そのため、CNTを線材化する工程では、凝固液中にCNT分散液を1.0m/分以上10000m/分以下の吐出速度で吐出させる。1.0m/分以上10000m/分以下の範囲の吐出速度は、1/s以上のせん断力の負荷に相当し得るため、CNT分散液に高いせん断力が負荷されているとみなすことができる。尚、高いせん断力とは、低い剪断力よりも大きいことを意味し、低い剪断力は、0.1Pa以上1Pa未満の範囲を意味する。凝固液には、例えば、イソプロパノール等が使用される。これにより、CNTの紡糸線として、比較的長い糸状のCNT線材10を作製することができ、このようなCNT線材10は、配向性、導電性及び強度に優れている。
<特性>
[配向性]
本発明に係るCNT線材10は、配向性として、アジマス角が40°未満であることが好ましく、30°未満であることがより好ましく、20°未満であることがさらに好ましい。アジマス角が40°未満であれば、配向性に優れていると評価できる。
[導電性]
本発明に係るCNT線材10は、導電性として、体積抵抗率が8.0×10−5Ω・cm未満であることが好ましく、4.0×10−5Ω・cm未満であることがより好ましく、1.0×10−5Ω・cm未満であることがさらに好ましい。体積抵抗率が8.0×10−5Ω・cm未満であれば、導電性に優れていると評価できる。
[強度]
本発明に係るCNT線材10は、引張強度が100MPa以上であることが好ましく、150MPa以上であることがより好ましく、200MPa以上であることがさらに好ましい。引張強度が100MPa以上であれば、強度に優れていると評価できる。
本発明に係るCNT線材10は、自動車、電気機器、制御機器等の様々な分野における電力線、信号線としての電線に使用することができる。本発明に係るCNT線材10を備える電線は、上記の特性を有するため、特に、車両用のワイヤハーネス、モーター等の一般電線としての使用に好適である。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<CNT線材の作製>
実施例1〜12、比較例1〜6について、以下のようにしてCNT線材を作製した。
[実施例1〜12、比較例1〜3、6について]
浮遊触媒法で、表1の各実施例及び比較例に示される所定の長さを及び所定の径を有する短いCNTをそれぞれ作製した。得られた各CNTを遠心分離し、さらにフィルタを介して分画することにより、径および長さが異なる複数のCNTサンプルの分散液を作製した。分画した複数のCNTサンプルの平均長さおよび平均径をそれぞれ測定した。このように長さおよび径の大きさが調整された複数のCNTサンプル25mgを、5mlの水と、分散剤として含有量を変化させたコール酸ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製)が溶解されている溶液に加え、超音波分散機(「NR−50M」株式会社マイクロテック・ニチオン製)により、25(室温)℃で1時間分散処理をし、CNT分散液を作製した。作製した分散液をシリンジに入れ、10m/分の吐出速度でイソプロパノールの凝固液(富士フィルム和光純薬株式会社製)に吐出した後に引き上げ、乾燥させることで、糸状のCNT線材を作製した。
[比較例4、5]
比較例4では、CNTサンプルの分散液を作製する際、コール酸ナトリウムに代えて2000mgのポリビニルピロリドン(PVP)を添加した。比較例5では、コール酸ナトリウムに代えて300mgのポリイミド(PI)をさらに添加し、溶媒として水の代わりにNMP(N−メチルピロリドン)を用いた。
<測定項目>
実施例1〜12および比較例1〜6で使用したCNTの平均長さ、平均径については以下のように測定した。
[平均長さ]
CNTの平均長さは、CNT分散液中に存在するCNTを、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いてSEM画像から算出した。具体的には、倍率が10000倍であるSEM画像に存在する任意のCNTの長さを測定した。これを別のCNT200本でも同様に行い、その平均値を平均長さとして算出した。尚、CNT分散液中に存在するCNTの平均長さとCNT線材が有するCNTの平均長さは、紡糸から影響を受けないため同等であると評価した。
[平均径]
CNTの平均径は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いてTEM画像から算出した。具体的には、CNT分散液をCuグリッドに滴下し、加速電圧200kV、倍率は20万倍で観察し、CNTの幅方向の側面(径方向の側面)において、CNTの長手方向(長さ方向)と直交する端と端を結んだ線を直径として測定した。これを別のCNT200本でも同様に行い、その平均値を平均径として算出した。尚、CNT分散液中に存在するCNTの平均径とCNT線材が有するCNTの平均径は、紡糸から影響を受けないため同等であると評価した。
[平均アスペクト比]
平均アスペクト比は、上述の測定により得られた平均長さを平均径で除することで算出した。
[分散剤の含有量]
TG(熱重量測定)により、CNT線材に存在する分散剤の対イオンであるNaの量を測定し、そのmol量を計算した。対イオンであるNaのmol量は分散剤のmol量と等しいとみなし、CNT線材に含まれる分散剤の量を算出した。すなわち、CNT線材に含まれる分散剤の含有量(残存量)は、以下の式により算出される。CNT線材の重さは、分析てんびん(「XP6」METTLER TOLEDO社製)で測定した。
分散剤の含有量[質量%]=(分散剤の重さ[g]/CNT線材の重さ[g])×100
[密度]
CNT線材の密度を測定した。具体的には、超高速・高精度寸法測定器(株式会社キーエンス製)を用いてCNT線材の素線径を測定、ノギスでCNT線材の長さを測定してCNT線材の体積を計算した。得られた体積の値と、界面活性剤の含有量の測定で求めたCNT線材の重さからCNT線材の密度を算出した。
<評価項目>
上記のようにして作製したCNT線材について、以下の評価を行った。
[配向性]
CNT線材の配向性の評価として、小角X線散乱によりCNT線材のアジマス角を測定した。アジマス角が20°未満の場合を「◎」、20°以上30°未満の場合を「○」、30°以上40°未満の場合を「△」、40°以上の場合を「×」と評価し、「△」以上であれば、配向性に優れていると評価した。
[導電性]
CNT線材の導電性の評価として、四端子法により体積抵抗率を測定した。具体的には、抵抗測定機にCNT線材を接続し、四端子法により抵抗測定を実施した。体積抵抗率rは、r=RA/L(R:抵抗、A:CNT線材の断面積、L:測定長さ)の計算式に基づいて算出した。体積抵抗率が1.0×10−5Ω・cm未満の場合を「◎」、1.0×10−5Ω・cm以上4.0×10−5Ω・cm未満の場合を「○」、4.0×10−5Ω・cm以上8.0×10−5Ω・cm未満の場合を「△」、8.0×10−5Ω・cm以上の場合を「×」と評価し、「△」以上であれば、導電性に優れていると評価した。
[強度]
CNT線材の強度の評価として、引張強度を測定した。具体的には、CNT線材の引張強度を万能試験機の引張試験により測定した。ロードセルは100Nとし、試験速度は6mm/minで測定した。マイクロスコープで観察し得たCNT線材の直径から断面積を求めた。引張強度sは、s=F/A(F:試験力、A:CNT線材の断面積)の計算式に基づいて算出した。引張強度が200MPa以上の場合を「◎」、150MPa以上200MPa未満の場合を「○」、100MPa以上150MPa未満の場合を「△」、100MPa未満の場合を「×」と評価し、「△」以上であれば、強度に優れていると評価した。
作製したCNT線材の測定および評価結果について、下記表1に示す。
表1に示すように、実施例1〜12は、いずれも高い配向性を有し、導電性及び強度も優れるCNT線材が得られた。特に、CNT線材が30質量%以上45質量%以下の分散剤を含む実施例1、5〜7、9〜11では、強度および導電性がより向上し、CNT線材が40質量%以上の分散剤を含む実施例5、9では、強度および導電性共に顕著に優れていた。また、平均アスペクト比が25×10以上80×10以下である場合、高密度化が図れ、強度がより向上した。
一方、CNT線材が含有する分散剤の量が8質量%未満である比較例1では、CNT分散液に存在するCNTの凝集部分に起因して発生する空隙により、CNTの高配向化が実現できず、導電性及び強度も劣っていた。また、CNT線材が含有する分散剤の量が50質量%を超える比較例3では、分散液中に形成される泡立ち、分散剤の凝集に起因して発生する空隙により、CNT同士の繋がりの形成が阻害され、CNTの導電性及び強度が劣っていた。
平均径が2.0nmより大きい比較例2では、高アスペクト比を有するCNTの割合が少なく、CNT同士が互いに絡まった繋がりを形成しにくいため、高い配向性および導電性及び優れた強度を付与させることができなかった。また、平均長さが10μm未満である比較例6では、長いCNTが少な過ぎるため優れた導電性が得られず、また、長いCNT同士の繋がりが少ないため、優れた強度も得られなかった。
また、CNT分散液中に、分散剤に代えてPVP又はPIの樹脂を含む比較例4、5では、これらの樹脂により導電性が阻害され、導電性に劣っていた。また、粘度が高い樹脂を含むCNT分散液中ではせん断がCNTに伝わりづらくなり、CNTの高配向化が実現できないため、配向性に劣っていた。
10 カーボンナノチューブ線材
11 カーボンナノチューブ集合体
11a カーボンナノチューブ

Claims (7)

  1. 複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体からなるカーボンナノチューブ線材であって、
    前記複数のカーボンナノチューブにおいて、平均長さが10μm以上であり、平均径が2.0nm以下であり、かつ、
    前記カーボンナノチューブ線材の重さに対して8質量%以上45質量%以下の分散剤を含むことを特徴とする、カーボンナノチューブ線材。
  2. 前記複数のカーボンナノチューブにおいて、平均アスペクト比が25×10以上80×10以下である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ線材。
  3. 前記カーボンナノチューブ線材の重さに対して30質量%以上の分散剤を含む、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ線材。
  4. 前記カーボンナノチューブ線材の重さに対して40質量%以上の分散剤を含む、請求項3に記載のカーボンナノチューブ線材。
  5. 請求項1乃至4までのいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ線材を備える電線。
  6. 水と、平均長さが10μm以上かつ平均径が2.0nm以下である複数のカーボンナノチューブと、前記水の量に対して0.5質量%以上5.0質量%以下の分散剤とを含むカーボンナノチューブ分散液を作製する工程と、
    凝固液中で前記カーボンナノチューブ分散液を1.0m/分以上10000m/分以下の吐出速度で吐出して、カーボンナノチューブを線材化する工程と、
    を含むことを特徴とする、カーボンナノチューブ線材の製造方法。
  7. 前記複数のカーボンナノチューブにおいて、平均アスペクト比が25×10以上80×10以下である、請求項6に記載のカーボンナノチューブ線材の製造方法。
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