JP2020160207A - 樹脂グレージング及びそれを用いたヘッドアップディスプレイ - Google Patents

樹脂グレージング及びそれを用いたヘッドアップディスプレイ Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、1/4波長板が1層である為、円偏光から直線偏光への変換効率による輝度の低減を抑えることができ、更には製造工程の簡略化にも資するものである。この構成によって、省エネルギー、高輝度、二重像の防止が実現されたヘッドアップ用樹脂グレージング、及びそれを用いたヘッドアップディスプレイを提供することができる。【解決手段】(A)少なくとも1層の光反射層、(B)1層の1/4波長板、及び(C)透明樹脂基材を有するヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。【選択図】図1

Description

本発明は、例えばヘッドアップディスプレイに利用するのに好適な樹脂グレージング、及びこれを用いたヘッドアップディスプレイに関する。より詳細には、二重像の発生を抑制し、かつ輝度を向上することが出来る為、表示画像の視認性を高めることができる樹脂グレージングに関する。
自動車や航空機等の運転者に情報を表示する方法として、ナビゲーションシステムやヘッドアップディスプレイ(以下、「HUD」ともいう)等が用いられている。HUDは液晶表示体(以下、「LCD」ともいう)等の画像投影手段から投射された画像を、例えば自動車のフロントガラス等に投影するシステムである。
画像表示手段から出射した出射光は、反射鏡にて反射し、さらにフロントガラスで反射した後、観察者へ到達する。観察者はフロントガラスに投影された画像を見ているが、画像はフロントガラスよりも遠方の画像位置にあるように見える。この方法では、運転者はフロントガラスの前方を注視した状態でほとんど視線を動かすことなく、様々な情報を入手することができるため、視線を移さなければならなかった従来のカーナビゲーションに比べ安全である。
HUDは、表示情報を実際にフロントガラスから見える景色に重ねて投影されるため、視界を遮ることなく、明るく見やすい画像を表示することが望ましい。そのためには、前景が十分に見えるだけの透過性と、HUDの反射画像が十分に見えるだけの反射性を兼ね備える必要がある。しかし一方で、表示光はフロントガラスの室内側と室外側の2つの表面で反射されるため、反射像が二重像となり、表示情報が見づらいという問題があった。
この問題に対して、偏光方向を90°変えることができる旋光子を自動車用フロントガラスに用いることにより、反射像が二重像になるという問題を改善できることが知られている。例えば、特許文献1には、フィルム状の旋光子を内部に具備する自動車用フロントガラスに、S偏光の表示光をブリュースター角で入射した場合には、車内側のフロントガラスの表面でS偏光の一部を反射させ、当該表面を透過したS偏光を旋光子によりP偏光に変換し、さらに車外側のフロントガラスの表面でP偏光の全てを車外に出射して二重像を防ぐことが開示されている。また、特許文献1には、自動車用フロントガラスに、P偏光の表示光をブリュースター角で入射した場合には、車内側のフロントガラスの表面ではP偏光を反射させず、当該表面を透過したP偏光を旋光子によりS偏光に変換し、かつ、車外側のフロントガラスの表面でS偏光のほぼ全てを反射させ、再度旋光子によりS偏光をP偏光に変換させて二重像を防ぐことが開示されている。
また、特許文献2ではP偏光の表示光をブリュースター角で入射させた後、1/4波長板で円偏光に変換し、コレステリック液晶層で反射させ、反射しなかった透過光は再度P偏光に変換して車外に出射して二重像を防ぐことが開示されている。
一方、車体のフロントウインドウは通常無機ガラスが用いられているが、近年、軽量化による燃費低減、周囲部品との一体形成性、デザイン性の観点から樹脂化が求められている。
フロントウインドウの樹脂化の際にはガラスの様な中間膜を介した合わせガラスの構成ではなく、一枚の透明基材が主構成部材となると予想される。この場合にも二重像の改善が要求されている上、変換効率の影響を受けた輝度の低下や、省エネルギーについて更なる改善が要求されている。また、複数の機能性フィルムを積層しての課題解決は、製造工程の複雑化を引き起こすといった問題も有している。
特開平6−40271号公報 国際公開2016/056617
本発明は、フロントウインドウの樹脂化の際に、二重像の発生を効果的に抑制し、かつ輝度を向上することが出来る為、表示画像の視認性を高めることができる樹脂グレージングを提供するものである。また、複数の機能性フィルムを積層して、上記課題を解決する場合と異なり、製造工程の簡略化にもつながるものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)少なくとも1層の光反射層、(B)1層の1/4波長板、及び(C)透明樹脂基材を有するヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージングを用いる事で上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
即ち、本発明は、以下1)〜9)に関するものである。
1)
(A)少なくとも1層の光反射層、(B)1層の1/4波長板、及び(C)透明樹脂基材を有するヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。
2)
上記(A)が、(PRL−1)400nm以上500nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層、(PRL−2)500nm以上600nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層、及び(PRL−3)600nm以上700nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層から選択される少なくとも1層である上記1)に記載のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。
3)
上記(A)が、(RPI−4)700nm以上950nm以下の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層を有する上記1)又は2)に記載のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。
4)
上記(A)が、少なくとも2層の光反射層を有し、当該光反射が反射する偏光が全て同じ向きであることを特徴とする上記1)乃至3)のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。
5)
上記(A)がコレステリック液晶層を有する光反射層である上記1)乃至4)のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。
6)
上記(B)はブリュースター角に傾斜した状態での遅相軸の角度が45°になる位置関係で積層されている上記1)乃至5)のいずれか一項に記載のアップディスプレイ用樹脂グレージング。
7)
上記(C)が厚さ0.05mm以上25mm以下である上記1)乃至6)のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。
8)
上記(A)、(B)、(C)が、この順番で積層されている上記1)乃至7)のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。
9)
上記8)に記載のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージングを有し、(A)側から円偏光を入射するヘッドアップディスプレイシステム。
本発明は、1/4波長板が1層である為、円偏光−直線偏光間の変換効率による輝度の低減を抑えることができ、更には製造工程の簡略化にも資するものである。この構成によって、省エネルギー、高輝度、二重像の防止が実現されたヘッドアップ用樹脂グレージング、及びそれを用いたヘッドアップディスプレイを提供することができる。
本発明に従う樹脂グレージングの一実施形態を示す概略断面図である。 本発明に従うヘッドアップディスプレイシステムの一実施形態を示す概略断面図である。
本発明を詳細に説明する。
本発明のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージングは、(A)少なくとも1層の光反射層、(B)1層の1/4波長板、及び(C)透明基材を有する。
<(A)少なくとも1層の光反射層>
本発明の樹脂グレージングが有する光反射層は、
(A−1)コレステリック液晶を用いた光反射層、
(A−2)高屈折率層と低屈折率層の繰り返し多層構造を有する光反射層、
(A−3)少なくともAu、Ag、Cu、Alのいずれかを含有する光反射層等を挙げることができる。なお、本発明において(A−1)〜(A−3)はいずれか一つを有すれば良いが、複数を組み合わせても良い。また、(A−2)、(A−3)の構成では、透過する光が円偏光でなくなる場合もあり、1/4波長板によるP偏光への変換が不十分になる場合もある。従って本発明においては、(A−1)コレステリック液晶を用いた光反射層を用いる態様が特に好ましい。
[(A−1)コレステリック液晶を用いた光反射層]
(A−1)コレステリック液晶を用いた光反射層は、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面では角度がずれるという具合に、該平面の法線方向に分子軸の角度が次々にずれていく構造である。このような分子軸の方向がねじれていく構造はカイラル構造と呼ばれる。該平面の法線(カイラル軸)はコレステリック液晶層の厚み方向に略平行になっていることが好ましい。
コレステリック液晶材料に光が入射すると、特定波長領域の左回り及び右回りのうち一方の円偏光が反射される。カイラル構造において分子軸がねじれる時の回転軸を表すらせん軸と、コレステリック液晶材料の法線とが平行である場合、カイラル構造のピッチ長pと反射される円偏光の波長λcとは下記数式(1)および式(2)の関係を有する。
Figure 2020160207
Figure 2020160207
数式(1)及び数式(2)中、λcは反射させる波長領域の中心波長、nは液晶化合物の短軸方向の屈折率、nは液晶化合物の長軸方向の屈折率、nは(n+n)/2、θは光の入射角(面法線からの角度)を表す。
これより、反射させる波長領域の中心波長は、コレステリック液晶材料におけるカイラル構造のピッチ長に依存する。このカイラル構造のピッチ長を変えることにより反射させる中心波長を変えることができる。
コレステリック液晶材料の層数は、1層でもよく、2層以上でもよい。層数が2層以上あると、反射できる近赤外線の波長帯域を広げることができるので好ましい。
コレステリック液晶材料を2層以上にする場合、反射させる波長領域を広範囲にすることを目的として、ピッチ長の異なるコレステリック液晶層を組み合わせることが好ましく、製造コスト、可視光透過率等を鑑みて適切な組み合わせを用いることができる。
[(A−2)高屈折率層と低屈折率層の繰り返し多層構造を有する光反射層]
(A−2)高屈折率層と低屈折率層の繰り返し多層構造を有する光反射層は、高屈折率材料層(以下高屈折率層とも言う)と低屈折率材料層(以下低屈折率層とも言う)とを交互に積層して構成される。高屈折率層の屈折率は、好ましくは、1.60〜2.40程度であり、より好ましくは1.80〜2.10程度である。低屈折率層の屈折率は1.30〜1.50程度であり、好ましくは1.34〜1.50程度であり、両者は、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.3、より好ましくは少なくとも0.4の屈折率の差を有することが好ましい。
それぞれの光学膜厚(屈折率nと膜厚dとの積nd)は反射させる波長領域の中心波長をλcとすると、λc/4となるように制御されている。高屈折率材料としては酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ハフニウム等が用いられ、低屈折率材料としては、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、フッ化セリウム等が用いられる。
前記高屈折率材料層、低屈折率材料層はスパッタリング、蒸着、スプレー等、公知の方法で作製することができる(例えば、特許第3397824号)。また、各屈折率材料層の微粒子をマトリックスに分散させて塗布する方法でも構わない。その際可視透過率、ヘイズ値を考慮して粒子径は200nm以下が好ましい。
(A−2)高屈折率層と低屈折率層の繰り返し多層構造を有する熱線反射膜の特性を高効率(高反射)にするには、層数を多くすることが必要である。しかし層数を多くすると、各膜厚のバラツキ、製造コストの上昇等の問題があるので、3層以上、11層以下が好ましい。
[(A−3)少なくともAu、Ag、Cu、Alのいずれかを含有する光反射層]
(A−3)少なくともAu、Ag、Cu、Alのいずれかを含有する光反射層は、金属導体の自由電子の電磁波遮蔽効果により生じる反射を原理としている。金属単層から成り、蒸着、スパッタリングといった乾式コーティングにより作製される。金属単層で高い反射率が得られるためコーティング回数が少なく製造プロセスへの負荷を少なくすることができる。
本願発明に用いられる光反射フィルムを構成する光反射層としては、上記(A−1)〜(A−3)の光反射層を複数層組み合わせたものも意味する。本明細書中、光反射層を構成する各層を光反射膜と表現する。
上記光反射層のうち、好ましくは(A−1)コレステリック液晶を用いた光反射層である。コレステリック液晶層は、円偏光を選択反射する偏光子である。
光反射層は、画像表示手段から出射される光の波長に対して反射する必要があるため、可視光における青、緑、赤色の偏光に対して反射させる必要がある。一方で、自動車のフロントガラスのように法的に可視光透過率の規制があるような場合は、偏光フィルタ等によって特定の偏光成分だけを取りだす処理が施されていない光、いわゆる通常光に対する反射率が高すぎると透過率が低下し、使用できなくなってしまうため、通常光に対する光反射膜の反射率を適切に制御しなければならない。
光反射層は、好ましくは、400nm以上500nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25% 以下である光反射膜PRL−1と、500nm以上600nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射膜PRL−2と、600nm以上700nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射膜PRL−3のうち1つ以上を含み、互いに異なる中心反射波長をもつ少なくとも2つ以上の光反射膜が積層されてなる積層体である。このことは、光反射層8が、例えば、光反射膜PRL−1、PRL−2、PRL−3のうちのいずれか1つの光反射層しか含んでいない場合には、光反射膜PRL−1、PRL−2、PRL−3のいずれか1つのみの光反射膜と、これらの光反射膜とは異なる中心反射波長をもつ他の光反射膜からなる群から選択される少なくとも1 つ以上の光反射膜との積層構造で構成されることを意味しており、この場合、光反射層を構成する光反射膜の層数は、少なくとも2 つ以上である。また、光反射膜PRL−1、PRL−2、PRL−3のそれぞれの通常光に対する反射率は、好ましくは、10% 以上25%以下、さらに好ましくは、15%以上20%以下程度とするのがよい。なお、各光反射層の中心反射波長での通常光に対する反射率は、上記の範囲内に調整できれば、いずれも同じあっても異なっていてもよい。ここで、「PRL」は、PolarizedlightingReflectionLayerの略記であり、光反射層を意味するアルファベット表記である。
本願の明細書及び特許請求の範囲において、中心反射波長は、各光反射層の最大反射率の80%に相当する短波長側の波長と長波長側の波長の平均となる波長を意味する。例えば、PRL−1の最大反射率が20%であった場合、その80%に相当する16%の反射率を示す短波長側の波長をλ1、長波長側の波長をλ3とすると、下記式(3)で示されるλ2が中心反射波長となる。
(λ1+λ3)/2=λ2 (3)
また、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうち1つ以上を用いていれば、これらの光反射層は、各光反射層の反射帯域の広さに応じて積層数を調整することが可能である。HUDの画像表示手段からの光を所望とする分反射することが可能であれば、PRL−1、PRL−2、PRL−3のいずれか1層であってもよく、2層を積層してもよいし、3層共に積層してもよい。さらに、光反射膜の反射帯域を調整したい場合は、積層される光反射層には、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3とは異なる中心反射
波長をもつさらなる光反射層を用いることも可能であるが、後述する1/4 波長板による円偏光から直線偏光への変換の際に、同じ向きの直線偏光に変換する必要性があるために、積層される各光反射層は、いずれも同じ向きの偏光を反射する特性を有することが必要である。
光反射層として用いられるコレステリック液晶層は、キラリティを持つネマチック液晶やネマチック液晶にカイラル剤を添加した光反射層調製用組成物を硬化させてなる。カイラル剤の種類や量により、螺旋の向きや反射波長を任意に設計できることから、ネマチック液晶にカイラル剤を添加してコレステリック液晶を得る方法が好ましい。ネマチック液晶は、いわゆる電界で操作する液晶とは異なり、螺旋配向状態を固定化して使用されるため、重合性基を有するネマチック液晶モノマーを用いることが好ましい。
重合性基を有するネマチック液晶モノマーは、分子内に重合性基を有し、ある温度範囲あるいは濃度範囲で液晶性を示す化合物である。重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、カルコニル基、シンナモイル基、およびエポキシ基等が挙げられる。また、液晶性を示すためには分子内にメソゲン基があることが好ましく、メソゲン基とは、例えばビフェニル基、ターフェニル基、(ポリ)安息香酸フェニルエステル基、(ポリ)エーテル基、ベンジリデンアニリン基、およびアセナフトキノキサリン基等のロッド状、板状、ならびにトリフェニレン基、フタロシアニン基、およびアザクラウン基等の円盤状の置換基、即ち液晶相挙動を誘導する能力を有する基を意味する。ロッド状または板状基を有する液晶化合物はカラミティック液晶として当該技術分野で既知である。このような重合性基を有するネマチック液晶モノマーは具体的には特開2003−315556号公報および特開2004−29824号公報に記載の重合性液晶や、PALIOCOLORシリーズ(BASF社製)、RMMシリーズ(Merck社製)等が挙げられる。これら重合性基を有するネマチック液晶モノマーは単独でも、あるいは複数混合して用い
ることができる。
カイラル剤としては、上記重合性基を有するネマチック液晶モノマーを右巻きあるいは左巻き螺旋配向させることができ、重合性基を有するネマチック液晶モノマーと同様に重合性基を有する化合物が好ましい。そのようなカイラル剤としては、例えば、PaliocolorLC756(BASF社製)、および特開2002−179668号公報に記載されている化合物等が挙げられる。このカイラル剤の種類により、反射する円偏光の向きが決まり、さらには、ネマチック液晶に対するカイラル剤の添加量に応じて、光反射層の反射波長を変えることができる。例えば、カイラル剤の添加量を多くするほど、短波長側の波長を反射する光反射層を得ることができる。カイラル剤の添加量は、カイラル剤の種類と反射させる波長によっても異なるが、通常光に対する光反射層の中心反射波長λ2を、所望の波長領域に調整するため、重合性基を有するネマチック液晶モノマー100質量部に対し、0.5〜30質量部程度が好ましく、より好ましくは1〜20質量部程度であり、さらに好ましくは3〜10質量部程度である。
さらに、光反射層調製用組成物には、重合性基を有するネマチック液晶モノマーと反応可能な液晶性を有しない重合性化合物を添加することも可能である。そのような化合物としては例えば紫外線硬化型樹脂等が挙げられる。紫外線硬化型樹脂としては、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと1,6−ヘキサメチレン−ジ−イソシアネートとの反応生成物、イソシアヌル環を有するトリイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとの反応生成物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロン−ジ−イソシアネートとの反応生成物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタアクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、トリグリセロール−ジ−(メタ)アクリレート、プロピレングリコール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ポリプロピレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール−ジ−(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、1,6−ヘキサンジオール−ジ−(メタ)アクリレート、グリセロール−ジ−(メタ)アクリレート、エチレングリコール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ジエチレングリコール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(メタアクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビスフェノールA−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2 − エトキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、ブチルグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、およびブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独または複数混合して用いることができる。これら液晶性を持たない紫外線硬化型樹脂は液晶性を失わない程度に添加しなければならず、好ましくは、重合性基を有するネマチック液晶モノマー100質量部に対して0.1〜20質量部、より好ましくは1.0〜10質量部程度である。
重合性基を有するネマチック液晶モノマーや他の重合性化合物が紫外線硬化型である場
合、これらを含む光反射層調製用組成物を紫外線により硬化させるために、光重合開始剤
が光反射層調製用組成物に添加される。光重合開始剤としては例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1(BASF社製イルガキュアー907)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製イルガキュアー184)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(BASF社製イルガキュアー2959)、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(Merck社製ダロキュアー953)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(Merck社製ダロキュアー1116)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(BASF社製イルガキュアー1173)、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(BASF社製イルガキュアー651)等のベンゾイン系化合物、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン(日本化薬製カヤキュアーMBP)等のベンゾフェノン系化合物、チオキサントン、2−クロルチオキサントン(日本化薬製カヤキュアーCTX)、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン(カヤキュアーRTX)、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロオチオキサントン( 日本化薬製カヤキュアーCTX)、2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬製カヤキュアーDETX)、および2,4−ジイソプロピルチオキサントン(日本化薬製カヤキュアーDITX)等のチオキサントン系化合物等が挙げられる。好ましい光重合開始剤としては、例えば、IrgacureTPO、IrgacureTPO−L、IrgacureOXE01、IrgacureOXE02、Irgacure1300、Irgacure184、Irgacure369、Irgacure379、Irgacure819、Irgacure127、Irgacure907またはIrgacure1173(いずれもBASF社製)、特に好ましくはIrgacureTPO、IrgacureTPO−L、IrgacureOXE01、IrgacureOXE02、Irgacure1300およびIrgacure907が挙げられる。これらの光重合開始剤は1種類単独で、または複数を任意の割合で混合して使用することができる。
光重合開始剤としてベンゾフェノン系化合物やチオキサントン系化合物を用いる場合には、光重合反応を促進させるために、助剤を併用することも可能である。そのような助剤としては例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ミヒラーケトン、4,4’―ジエチルアミノフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、および4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン系化合物が挙げられる。
光重合開始剤および助剤の添加量は、光反射層調製用組成物の液晶性に影響を与えない範囲で使用することが好ましく、その量は、当該組成物中の紫外線で硬化する化合物100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部以下、より好ましくは2〜8 質量部以下程度である。また、助剤は光重合開始剤に対して、0.5〜2倍量程度であることが好ましい。
コレステリック液晶を用いて光反射層を作製する方法としては、例えば、重合性基を有するネマチック液晶モノマーに、所望とする波長を反射するように右巻きもしくは左巻きとなるカイラル剤を必要量添加する。次にこれらを溶剤に溶解し、光重合開始剤を添加する。このような溶剤は、使用する液晶モノマーやカイラル剤等を溶解できれば、特に限定されるものではないが、シクロペンタノンの使用が好ましい。その後、この溶液をPETフィルム等のプラスチック基板上に厚みができるだけ均一になるように塗布し、加熱にて溶剤を除去させながら、基板上でコレステリック液晶となって所望の螺旋ピッチで配向するような温度条件で一定時間放置させる。このとき、プラスチックフィルム表面を塗布前にラビングまたは延伸等の配向処理をしておくことで、コレステリック液晶の配向をより均一にすることができ、光反射層としてのヘーズ値を低減することが可能となる。次いでこの配向状態を保持したまま、高圧水銀灯等で紫外線を照射し、配向を固定化させることにより、光反射膜を構成するのに用いられる各光反射層が得られる。ここで、右巻き螺旋配向となるカイラル剤を選択した場合、得られる光反射層は右回り円偏光を選択的に反射し、左巻き螺旋配向となるカイラル剤を選択した場合、得られる光反射層は、左回り円偏光を選択的に反射する。この特定の円偏光を選択的に反射する現象を選択反射と言い、選択反射している波長帯域を選択反射領域という。
光反射層の通常光に対する反射率を調整する他の方法としては、光反射層作製時における光反射層の厚さを変えることが挙げられる。通常、光反射層が厚くなればなるほど、反射率は向上するが、理論的な最大反射率である50%以上にはならない。従って、通常光に対する反射率を5%以上25%以下にするためには、理論的な最大反射率における厚さの約半分以下にすることが好ましく、使用するコレステリック液晶やカイラル剤の種類などに応じて、各光反射層の厚さは、例えば0.1〜3μm程度であり、また、通常光に対する各光反射層の反射率を所望の範囲内に調整できれば、各光反射層の厚さは、いずれも同じあっても異なっていてもよい。
光反射膜は、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうち、1つ以上を含むことが好ましい。各光反射層の半値幅が広い場合は、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうちいずれか1層または2層が含まれることにより可視光領域の大部分をカバーできるが、各光反射層の半値幅が狭い場合は、反射させる偏光の多色化を実現するため、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3の3つ全てを積層させることがより好ましい。例えば、半値幅が100nm以上200nm未満の狭い範囲の場合には、光反射膜は、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3の3層全てを含み、また、半値幅が200nm以上500nm未満の場合には、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうちいずれか1層または2層を含む等、半値幅に応じて光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3の積層数を適宜調整することができる。また、積層する光反射層の中心反射波長は、例えば100〜300nm程度離れている場合には、積層された反射スペクトルが、可視光領域全体、好ましくは400〜700nmの波長領域全体に渡って例えば5%以上、好ましくは10%以上となるように、適度に重なり合うように設計する。このように設計された光反射層は、明るい画像表示を可能とし、かつ多彩なカラー表示に対応することができる。
光反射層を積層する手段は、特に制限はなく、例えば、光反射層上に直接他の光反射層を積層したり、粘着剤や接着剤からなる接着層を介して間接的に積層する方法等が挙げられる。粘着剤としては、アクリル系やゴム系の粘着剤が挙げられるが、接着性や保持力等を調整しやすいアクリル系粘着剤が好ましい。接着剤としては、紫外線硬化型樹脂組成物や熱硬化型樹脂組成物、およびこれらの混合物が挙げられる。紫外線硬化型樹脂の場合は、アクリロイル基、あるいはエポキシ基を有するモノマーを複数混合した組成物を光重合開始剤の存在下で、紫外線を照射することにより硬化させて接着させることができる。熱硬化型樹脂組成物の場合は、エポキシ基を有するモノマーを複数混合した組成物を酸触媒の存在下で加熱することにより硬化させて接着することができる。または、アミノ基、カルボキシル基、水酸基を有する複数のモノマーやポリマーからなる組成物をイソシアネート基やメラミンを有する化合物の存在下で加熱することにより硬化させて接着することができる。
光反射層は、入射する光の角度によって反射波長が変化する場合がある。例えば、コレステリック液晶層からなる光反射層の場合、中心反射波長λ2は、光反射層の正面方向から傾けていくに従って短波長側へシフトする。このとき、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3が短波長側へシフトしても、それよりも長波長側にある光反射層が、代わりに反射することで、表示画像の色変化を抑制できるが、大きく傾けた場合は、PRL−3の帯域を反射することができなくなり、表示画像の色、特に赤色表示が不鮮明となって正しい色で映すことができないという問題が発生することがある。こうした現象は、自動車用の樹脂グレージング全面でHUDを行う場合、運転者から最も離れた助手席側や樹脂グレージング上方に表示された画像を見る際に起こりうる。そのような場合、中心反射波長が700nm以上950nm以下、好ましくは720nm以上900nm以下、より好ましくは730nm以上900nm以下、さらに好ましくは730nm以上850nm以下であって、中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下、好ましくは10%以上20%以下、より好ましくは15%以上、20%以下であって、かつ、PRL−1、PRL−2、PRL−3と同じ向きの偏光を反射する特性をもつ光反射層PRL−4をさらに積層することによって改善することができる。このような構成を有する光反射膜8により、樹脂グレージング全面を均一な画質で表示することができ、表示画像を斜めから見ると表示色が変化し難いという特性を有する。さらに、光反射膜8を含む樹脂グレージングそのものが斜めから観察しても着色せずに、自動車のデザインに影響を及ぼさない。
光反射層PRL−4は、中心反射波長が近赤外線領域にあること以外は、他の光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3と同じである。光反射層PRL−4は正面方向では可視光域に反射域を持たないため、透明であるが、光反射層PRL−4を傾けることによって、反射帯域が短波長側へシフトし、可視光域で反射するようになる。その際、光反射層PRL−3の反射帯域にシフトするように中心反射波長を設定することで、斜めから見た場合においても、正面方向と同じ色の画像を見ることができる。
光反射層PRL−4は、接着層を介して他の光反射層と共に積層される。光反射層PRL−4の中心反射波長での通常光に対する反射率は他の光反射層、特にPRL−3と同じにすることが好ましく、反射率5%以上25%以下であることが好ましく、さらに好ましくは、10%以上25%以下、さらに好ましくは、15%以上20%以下程度とするのがよい。また偏光の向きは、一緒に積層した他の光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3と同じ向き、特に光反射層PRL−3と同じ向きにするのがよい。光反射層PRL−4を積層する順番に特に制限はなく、厚さ方向に任意の位置に配置することができる。
光反射層PRL−4は近赤外線領域に反射帯域を持つため、太陽光に対して遮熱効果も有する。従って、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうちの1つ以上と、光反射層PRL−4とを含む光反射膜は、自動車の樹脂グレージングに用いることで、高い可視光透過率を有しながら、HUDにおける投影画像の視認性を向上させることができるだけでなく、HUDにおける表示画像の角度依存性をも改善し、さらには、遮熱効果により車内の温度の上昇抑制にも寄与することができる。特に、光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうち1層のみを用いる場合には、PRL−4をさらに積層することが好ましい。光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3のうちのいずれか1層と、光反射層PRL−4との2層の積層により、少ない積層数で、多色表示及び近赤外領域からのシフトによる可視光反射の補正効果の両方を実現することが可能となる。
光反射層を構成する各光反射膜の反射帯域は、少ない積層数で効率よく光源からの複数の波長の光を反射させることと、傾斜に伴う短波長シフトによる反射帯域の変化を抑制するために、広い方が好ましく、半値幅で100nm以上、500nm以下、より好ましくは150nm以上、400nm以下、さらに好ましくは150nm以上、350nm以下程度が良い。半値幅が100nm未満になると、傾斜に伴う波長シフトにより、反射波長が光源の波長と大きくずれてしまい、明るさを向上する効果が低下するだけでなく、上記PRL−4のような近赤外領域からのシフトによる可視光反射の補正効果が限定的となる傾向がある。また、半値幅を100nm未満、特に50nm以下に維持したまま反射率を下げることは困難である場合が多い。一方、半値幅が500nmを超えると、反射率が大幅に低下するため、5%以上の反射率を得ることが困難になり、望ましくない。また、例えば、各光反射層において同一材料のコレステリック液晶を使用した場合、各光反射層の半値幅が広ければ反射率が低くなり、半値幅が狭いと反射率が高くなる傾向がある。よって、各光反射層の半値幅を適切に調整することにより、特定の偏光の反射率をより有効に向上させることができる。なお、ここでいう半値幅とは、光反射層の最大反射率の50%に相当する、長波長側の波長と短波長側の波長とで区画された波長の幅のことを意味する。例えば、最大反射率の50%に相当する短波長側の波長が450nm、長波長側の波長が550nmである場合には、半値幅は100nmである。最大反射率の50%に相当する波長は、選択反射領域の最大反射率から選択反射領域以外の反射率の平均値(例えば、350nm〜950nmにおける平均値)を引くことにより、選択反射由来の反射率を基準として求めることができる。例えば、選択反射領域の最大反射率の値が30%で、選択反射率以外の反射率の平均値(反射率のベースライン)が6%である場合、最大反射率の50%に相当する波長は、30%から(30−6)/2を引いた18%の反射率を示す波長を意味する。
[(B)1層の1/4波長板]
本発明の樹脂グレージングは(B)1層の1/4波長板を有する。
(B)1/4波長板とは、円偏光を直線偏光に変換する機能を持つ位相差素子であり、例えば、ポリカーボネートやシクロオレフィンポリマーからなるフィルムを位相差が波長の1/4となるように一軸延伸したり、水平配向する重合性液晶を位相差が波長の1/4となるような厚さで配向させたりすることによって得ることができる。この1/4波長板は単独で用いてもよいし、波長分散による位相差のずれが大きい場合には、広帯域1/4波長板と呼ばれる位相差素子を用いてもよい。広帯域1/4波長板とは位相差の波長依存性が低減した位相差素子であり、例えば、同じ波長分散をもつ1/2波長板と1/4波長板とをそれぞれの遅相軸の成す角が60度となるように積層したものや、位相差の波長依存性を低減したポリカーボネート系位相差素子(帝人社製:ピュアエースWR−S)等が挙げられる。さらには、ヘッドアップディスプレイのように、光の入射角が1/4波長板に対して斜めから入射する場合、位相差素子によっては、光の入射角度によって位相差が変化する場合がある。このような場合に、より厳密に位相差を合わせる方法として、例えば、位相差素子の屈折率を調整した位相差素子を用いることにより、入射角に伴う、位相差の変化を抑制することができる。そのような例としては、位相差素子の面内での遅相軸方向の屈折率をnx、面内でnxと直交する方向の屈折率をny、厚さ方向の屈折率をnzとするとき、下記式(4)で示されるNz係数が、好ましくは0.3〜1.0、より好ましくは0.5〜0.8程度となるように制御する。
Nz=(nx−nz)/(nx−ny)(4)
また、用いる位相差フィルムの遅相軸あるいは進相軸がロール状の1/4波長板の長尺方向に対して45度となっている場合、ロール状の1/4波長板と、同様にロール状の光反射膜とをロールツウロールで積層することにより、ロールの長尺方向に対し、遅相軸あるいは進相軸が45度である本発明の光制御フィルムを得ることができる。
また、ロール状の1/4波長板とロール状の光反射膜とをロールツウロールで積層する以外にも、1/4波長板上に直接光反射層を積層してもよい。1/4波長板上に直接光反射層が積層されることにより、ラビングなどの配向処理無しにヘイズ値の低い光反射層を得ることができる。このような場合、コレステリック液晶との優れた密着性および偏光に対する反射率の向上の観点から、重合性液晶から作製した1/4波長板の使用が特に好ましい。
1/4波長板が重合性液晶層を含む場合、重合性液晶層を構成する液晶組成物が支持基板上に塗布される。このような支持基板は、1/4波長板がHUDに使用される際、表示画像の視認性を保つために、可視光領域において、透明であることが好ましく、具体的には波長380〜780nmの可視光線透過率が50%以上であればよく、70%以上であれば好ましく、85%以上であることがより好ましい。また、支持基板は、着色されていてもよいが、着色されていないか、着色が少ないことが好ましい。さらに、支持基板の屈折率は1.2〜2.0であることが好ましく、1.4〜1.8であることがより好ましい。支持基板の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよく、好ましくは5μm〜1000μmであり、より好ましくは10μm〜250μmであり、特に好ましくは15μm〜150μmである。
支持基板は、単層であっても2層以上の積層体であってもよい。支持基板の例としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、アクリル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンおよびポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。これらのなかでも、複屈折性の少ないトリアセチルセルロース(TAC)、ポリオレフィンおよびアクリルなどが好ましい。
次に、上記の重合性基を有するネマチック液晶モノマーを用いて、1/4波長板を作製する方法を説明する。このような方法としては、例えば、重合性基を有するネマチック液晶モノマーを溶剤に溶解させ、次いで光重合開始剤を添加する。このような溶剤は、使用する液晶モノマーを溶解できれば、特に限定されるものではないが、例えば、シクロペンタノン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、シクロペンタノンおよびトルエン等が好ましい。その後、この溶液を支持基板として用いられるPETフィルムまたはTACフィルム等のプラスチック基板上に厚みができるだけ均一になるように塗布し、加熱により溶剤を除去させながら、支持基板上で液晶となって配向するような温度条件で一定時間放置させる。このとき、プラスチックフィルム表面を塗布前に所望とする配向方向にラビング処理、あるいは偏光照射により光配向性を発揮する光配向材料をプラスチックフィルム表面に成膜し偏光照射する等の配向処理をしておくことで、液晶の配向をより均一にすることができる。これにより、1/4波長板の遅相軸を所望とする角度に制御し、かつ、1/4波長板のヘーズ値を低減することが可能となる。次いでこの配向状態を保持したまま、高圧水銀灯等でネマチック液晶モノマーに紫外線を照射し、液晶の配向を固定化させることにより、所望とする遅相軸を有する1/4波長板を得ることができる。
なお本願発明は、1/4波長板の主な役割は、(A)少なくとも1層の光反射層を透過した円偏光を直線偏光(P偏光)に変換するものである。これによって、外側に配置する透明基材からの反射を低減し、二重像を抑制することが可能である。従って、1/4波長板を複数枚使用し、円偏光とP偏光の変換箇所を多くすると、それだけ変換効率の影響を受け、省エネルギー性や輝度に悪影響を及ぼす。
[(C)透明樹脂基材]
本発明の樹脂グレージングは、(C)透明基材を有する。透明基材は、ヘッドアップディスプレイ用途に適するものであれば特に制限はないが、可視光透過率やヘイズ値については一定の制約がある。例えば可視光透過率が70%以上であることが好ましくは、更に好ましくは75%以上であり、80%以上、85%以上、特に好ましくは90%以上である。また、ヘイズ値は好ましくは2%以下であり、更に好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0.5%以下である。また、光学異方性がないことが好ましい。
本発明の樹脂グレージングでは、(C)透明基材の厚さが0.5mm以上25mm以下である場合が好ましい。更に好ましい上限は20mmであり、特に好ましい上限は15mmである。また更に好ましい下限は1mmであり、特に好ましい下限は1.5mmである。
透明樹脂基材としては、例えば環状ポリオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ABS、ポリフェニレンエーテル樹脂等などが挙げられる。このうち好ましくはポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂である。
特にポリカーボネート樹脂は透明性に優れるとともに、衝撃吸収性が高く衝突時の安全性が向上し、さらに、耐衝撃性に優れ軽衝突においては破損しにくいので好ましい。
ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等には、本発明の特性が損なわれない範囲で、主成分の樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合して樹脂組成物として用いることができる。
さらに、必要に応じて公知の添加剤(赤外線遮蔽材、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、染顔料、熱線吸収能を有する化合物、各種安定剤、酸化防止剤、離型剤、ブルーイング剤、加水分解改良剤、難燃剤、滴下防止剤、帯電防止剤等)、各種充填材等を配合した樹脂組成物としてもよい。
ポリカーボネート樹脂としては、それ自体公知のものを採用でき、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、イソソルビド、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が例示され、これらはホモポリマーに限られず、共重合されても良い。特に好ましいのは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、イソソルビドからなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂である。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量としては、10,000〜40,000であることが好ましい。粘度平均分子量が10,000以上であると強度に優れる点で好ましく、また、粘度平均分子量が40,000以下であると成形性に優れる点で好ましい。
なお本明細書中における「〜」は、上記の通り、以上以下を意味する。すなわち「〜」を挟んだ両数値は含むものとする。
上記のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηSP)を次式に代入して求めたものである。
式:ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c
上記の式において、[η]は極限粘度を表し、[η]=1.23×10−4M0.83であり、また、c=0.7である。
このようなポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を求める手法は、例えば、特開2002−129003号公報の段落[0033]〜[0034]に説明されている。
本願発明の樹脂グレージングに使用する(C)透明樹脂基材としては、2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを繰り返し単位に有するポリカーボネート樹脂が好ましい。当該ポリカーボネート樹脂は、樹脂製部品の硬度を高くすることができることから、透視歪量の変化をより小さくできるので好ましい。さらに、ビスフェノールAと併用する場合には、樹脂製部品の耐衝撃性を保持したまま、硬度を高くすることができるのでより好ましい。
本発明のフロントウインドウ用透明基材、又は光反射層の表面には、耐候性および耐摩耗性を改善するために、ハードコート層を設けてもよく、耐候性および耐摩耗性の観点からは好ましい態様である。ハードコート層としては、それ自体公知のものを採用でき、アクリル樹脂層を湿式コーティングする方法、オルガノシロキサン系樹脂の硬化膜を湿式コーティングする方法、有機珪素化合物のプラズマCVD層を設ける方法、特開2013−170209号公報等に記載の鱗片状の金属酸化物微粒子からなるナノシート層を積層する方法などを上げることができ、これらは単独に限らず組合せて用いても良い。
好ましいハードコート層としては、例えば、樹脂基板の表面に熱硬化型のアクリル樹脂層を湿式コーティングし、さらにその上に熱硬化型のオルガノシロキサン系樹脂の硬化膜を、樹脂基板に湿式コーティングする方法で形成することができる。また、樹脂基板の表面に光硬化型のアクリル樹脂層を湿式コーティングする方法で形成することができる。
なお透明基材にポリカーボネート樹脂を用いる場合、同じ樹脂系であるポリカーボネート系の1/4波長板を、透明基材の射出成形時に一体成型することが製造工程の簡略化にも資するため好ましい。
[製造方法]
本発明の樹脂グレージングは、例えば以下の方法で製造することができる。
(A)少なくとも1層の光反射層と(B)1層の1/4波長板の積層フィルムを透明基材に貼り合わせる方法や、(A)少なくとも1層の光反射層を(B)1層の1/4波長板と透明基材の一体成型基材に貼り合せる方法としては、例えば、粘着剤もしくは接着剤を光学フィルムの片側に塗布し、次いで、透明樹脂基材に貼り合わせる方法または、透明樹脂基材に粘着剤もしくは接着剤を塗布し、次いで、光学フィルムを貼り合わせる方法などが挙げられる。粘着剤や接着剤には特に制限はないが、後に剥がすことがある場合は、リワーク性に優れた粘着性がよく、例えばシリコーン粘着剤やアクリル系粘着剤等が好ましい。
光学フィルムを中間膜を介して貼り合せる場合は、透明基材および光学フィルムの間に、中間膜を配置し、高温・高圧にて圧着することによる方法が上げられる。このとき、中間膜としては、ポリビニルブチラール系樹脂(PVB)、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂(EVA)を用いることができる。これらは合わせガラス用中間膜として汎用的であるために好ましく、機能性樹脂窓としての品質ニーズに整合し得るようなものであれば、特に限定されるものではない。
本発明に係る機能性樹脂窓は、普通自動車、小型自動車、軽自動車などともに、大型特殊自動車、小型特殊自動車のフロントウインドウ、サイドウインドウ、リアウインドウ、ルーフウインドウとして使用できる。さらには、鉄道車両、船舶、航空機の窓としても、また、建材用および産業用の窓材としても使用できる。使用の形態であるが、UVカットや調光機能を有する部材と、積層あるいは貼合して用いることができる。
本発明のヘッドアップディスプレイ用機能性樹脂窓の一例である図2について、説明する。
[ヘッドアップディスプレイ]
図2に示されるように、ヘッドアップディスプレイは、機能性樹脂窓10と、画像表示するための表示画像投射手段11とを備える。ヘッドアップディスプレイは、1/4波長板12と、反射鏡13とを、任意の構成要素としてさらに備える。
なお、本願発明においては、機能性樹脂窓10に到達する光が円偏光であれば、表示画像投射手段11から出射される光は円偏光であっても直線偏光であっても良い。ただし、直線偏光が表示画像投射手段11から出射される場合には、円偏光へ変換する必要がある為、例えば上記1/4波長板12を備える構成が好ましい。
光反射層がコレステリック液晶層から形成される場合は、前記表示画像投射手段11から出射された光が、光反射層の選択反射する円偏光と同じ向きの円偏光として、機能性樹脂窓に入射することが好ましい。これは、光反射層が円偏光を選択的に反射するため、円偏光の方がより高い反射率を得ることができ、機能性樹脂窓の透過率を落とさずに明るい表示画像を得ることができるためである。さらに、機能性樹脂窓10および表示画像投射手段11等は、投射光が光反射層側の面から機能性樹脂窓に入射するように配置されることが好ましい。光反射層に直接、投射光が入射することにより、投射光のロスなく、効率的に光反射層で反射され、表示画像が明るくなるため、省エネルギー効果がある。
機能性樹脂窓10は、車外側に透明樹脂基材1を有し、車内側に光反射フィルム3が配置されるように構成されている。このため、光反射フィルム3を通過した円偏光は、1/4波長板2により直線偏光に変換される。このとき、直線偏光がP偏光となるように1/4波長板2の遅相軸または進相軸を調整して変換し、さらに、車外側の透明基材1への入射角をブリュースター角またはその近傍になるように光路16を調整することで、車外側の透明樹脂基材1での反射率を大幅に低減することができるため、ゴースト現象が改善される。
表示画像投射手段11は、投射光が最終的に機能性樹脂窓10に到達するまでに所望の円偏光となっていれば特に制限はないが、液晶表示装置(LCD)、有機ELディスプレイ等が挙げられる。表示画像投射手段11が液晶表示装置である場合、出射光は通常直線偏光となっているため、そのまま用いるか、図2のように1/4波長板12を設置して円偏光に変換することが可能である。あるいは自動車の場合は例えばダッシュボードのような光出射口に偏光板や円偏光板、1/4波長板を配置して最適な偏光に調整することも可能である。有機ELの場合は、1/4波長板12と表示画像投射手段11との間に偏光板を配置すればよい。あるいは上記液晶ディスプレイと同様に、光出射口に偏光板や円偏光板、1/4波長板を配置して最適な偏光に調整すればよい。また使用される光源もレーザー光源やLED光源等特に制限はない。これらの光源の発光スペクトルに対応するように光反射層の中心反射波長を設定することで、より効果的に表示画像を明るく投影できる。
以下、実施例、比較例により本発明を詳細に説明する。実施例において部は質量部を意味する。なお、本願発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[光反射層形成用塗布液(液晶組成物)の調製]
下記表に示す組成の光反射層形成用塗布液(R1)、(R2)、(R3)、および(R4)をそれぞれ調製した。
なお光反射層形成用塗布液は、以下単に塗布液と表現する場合もある。
塗布液(R1)の組成表
Figure 2020160207
次に、塗布液(R1)のカイラル剤の処方量を下表に示す量に変更する以外は同様の処方にて塗布液(R2)、(R3)、および(R4)を調製した。
各塗布液(R2)〜(R4)のカイラル剤処方量
Figure 2020160207
[光反射フィルムの作製例]
調製した塗布液(R1)、(R2)、(R3)及び(R4)を用い、下記の手順にてそれぞれ光反射層PRL−1、光反射層PRL−2、光反射層PRL−3及び光反射層PRL−4を作製し、次いでそれらを積層して光反射フィルムを作製した。プラスチック基板としては、特開2002−90743号公報の実施例1に記載された方法で下塗り層無し面を予めラビング処理した東洋紡績製PETフィルム(商品名 A4100、厚さ50μm)を使用した。
(1)各塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後にそれぞれ得られる各光反射層の厚みが0.5μmになるように、各PETフィルムのラビング処理面上に室温にて塗布した。
(2)各塗布膜を、150℃にて5分間加熱して溶剤を除去するとともに、コレステリック液晶相とした。次いで、高圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング社製)を120W出力、5〜10秒間UV照射し、コレステリック液晶相を固定して、PETフィルム上に光反射層を得た。
(3)(1)〜(2)にて作製した、PETフィルム上の光反射層PRL−1(塗布液(R1)使用)と光反射層PRL−2(塗布液(R2)使用)の光反射層側同士を、アクリル系粘着剤(綜研化学社製、アクリル粘着剤SKダイン906)を用いて積層した。
(4)光反射層PRL−2のPETフィルムを剥離した。
(5)(1)〜(2)と同様に作製したPETフィルム上の光反射層PRL−3(塗布液(R3)使用)の光反射層側と、(4)における光反射層PRL−2のうちPETフィルムを剥離させた光反射層側同士を、(3)と同じアクリル系粘着剤を用いて積層した。
(6)光反射層PRL−3のPETフィルムを剥離した。
(7)(1)〜(3)と同様に作製したPETフィルム上の光反射層PRL−4(塗布液(R4)使用)の光反射層側と、(5)における光反射層PRL−3の光反射層側同士を、(3)と同じアクリル系粘着剤を用いて積層した。
(7)最後に、積層した光反射層PRL−1と、PRL−4の両外側にあるPETフィルムを剥離した。
こうして、光反射層PRL−1、光反射層PRL−2、光反射層PRL−3、光反射層PRL−4の順序で積層された4層からなる光反射フィルムを得た。光反射フィルムの厚さは2.0μmであった。各光反射層(PRL−1〜4)の特徴を表3に示す。光反射層PRL−1、PRL−2、PRL−3、及びPRL−4の中心反射波長は、表3からもわかるように、それぞれ450nm(半値幅は123nm)、540nm(半値幅は131nm)、650nm(半値幅は148nm)、800nm(半値幅は178nm)であり、かつ光反射層PRL−1、PRL2、PRL−3、及びPRL−4の中心反射波長における反射率は、それぞれ20.2%、20.8%、22.4%、19.6%であった。
各光反射層の反射特性
Figure 2020160207
各光反射層の反射率のベースラインは約7%
得られた光反射フィルムの正面方向における可視光の平均透過率は約77%であり、550nm付近における反射率は約22%であった。また、得られた光反射フィルムを正面から50°傾けた位置から見ても、赤色領域の透過率の変化はなく、正面方向と同様の色味であった。
[実施例1]
(1)
<光反射フィルムと1/4波長板の貼合>
光反射フィルムの作製例によって作成された光反射フィルムの光反射層PRL−4側に、広帯域1/4波長板(帝人社製:ピュアエースWR−S)を粘着剤にて貼り合わせて、光学フィルムを得た。この光学フィルムを、厚さが0.38mmの1枚のポリビニルブチラール中間膜とラミネーターにて加圧圧着を行った。
(2)
<透明樹脂基材材料>
ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量22,400のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1225WP)を用いた。
<ポリカーボネート樹脂ペレット作成>
前記ポリカーボネート樹脂パウダー99.430質量部、Cs0.33WO3(平均粒子径5nm)約23%および有機分散樹脂からなる赤外線遮蔽剤(住友金属鉱山(株)製YMDS−874)0.07(0.16)質量部、ベンゾトリアジン系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティケミカルズ社製:Tinuvin1577)0.300質量部、リン系安定剤(クラリアントジャパン(株)製P−EPQ)0.030質量部、ヒンダードフェノール系安定剤(旭電化工業(株)製AO412S)0.050質量部、脂肪酸フルエステル(コグニスジャパン(株)製:VPG861)0.100質量部、脂肪酸部分エステル(理研ビタミン(株)製:リケマールS−100A)0.020質量部の割合で計量して混合しブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
なお、赤外線遮蔽剤の含有量は括弧内に示したYMDS−874に含まれる無機系赤外線遮蔽材料Cs0.33WO3の量である。(括弧外の数字はYMDS−874の樹脂組成物中の質量部を表す。)PC(ポリカーボネート樹脂)に添加する添加剤はそれぞれ配合量の10〜100倍の濃度を目安に予めPCとの予備混合物として作成した後、ブレンダーによる全体の混合を行った。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX30α(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を使用した。混練ゾーンはベント口手前に1箇所のタイプとした。押出条件は吐出量20kg/h、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第1供給口からダイス部分まで280℃とした。尚、上記の樹脂組成物の製造はHEPAフィルターを通した清浄な空気が循環する雰囲気において実施し、また作業時に異物の混入がないよう十分に注意して行った。得られた樹脂組成物について、厚み6mmの成形板を作製してJIS K7105の規格でヘイズを測定したところ1.3であった。
<成形方法:射出圧縮成形>
上記の樹脂材料のペレットをプラテンの4軸平行制御機構を備えた射出プレス成形可能な大型成形機((株)名機製作所製:MDIP2100、最大型締め力33540kN)を用いて、透明基材を射出圧縮成形した。
射出成形用金型としては、日立金属(株)社製CENA−Vで作製した。射出圧縮成形はシリンダ温度280℃、ホットランナー設定温度280℃、金型温度は固定側100℃、可動側100℃、プレスストローク:2mm、中間型締め状態から最終型締め状態までの金型の移動速度0.02mm/秒、および加圧の保持時間:600秒の条件で行った。圧縮時の圧力は25MPaとし、該圧力で加圧の保持時間中保持した。射出速度はゲート部充填までの領域で5mm/秒、それ以降の領域で18mm/秒とした。また可動側金型パーティング面は最終の前進位置において固定側金型パーティング面に接触しないものとした。ランナはモールドマスターズ社製のバルブゲート型のホットランナー(直径16mmφ)を用いた。充填完了直前に型圧縮を開始し、オーバーラップは0.5秒とした。充填完了後直ちにバルブゲートを閉じて溶融樹脂がゲートからシリンダへ逆流しない条件とした。かかる成形においては、その4軸平行制御機構により、傾き量および捩れ量を表すtanθは約0.000025以下で保持された。
(3)
(1)で得られた中間膜/1/4波長板/光反射フィルムを、(2)で得られたポリカーボネート樹脂の透明基材と、加圧・加熱することにより本願発明の機能グレージングを得た。具体的には、まず、透明基材上に、上記積層物を、透明樹脂基材/中間膜/1/4波長板/光反射フィルムの順になるように重ねた。次に透明基材のエッジ部からはみ出した光学フィルムの余分な部分を切断・除去した。これをゴムバッグで包み、90℃に加熱したオートクレーブ中で10分間脱気し、予備接着した。これを室温まで冷却後、ゴムバッグから取り出し、再度、オートクレーブ中で135℃、12kg/cmの高圧下で30分間加熱・加圧し、外観が良好な光学フィルムを圧着した機能性樹脂窓を作製した。得られた機能性樹脂窓の可視光透過率は78%であった。
(4)図1に示すような配置でヘッドアップディスプレイを作製した。表示画像投射手段11としては液晶プロジェクター、1/4波長板12としては、高帯域1/4波長板(帝人社製:ピュアエースWR−S)、反射鏡13は市販の鏡を用い、機能性樹脂窓10は、上記(3)で作製した機能性樹脂窓を用いた。反射フィルムが車内側になるように配置した。
<表示画像の評価>
暗室内にて、投影機から、機能性ガラスへ円偏光の画像を投影したところ、ゴーストはほとんど観察されず、表示画像を極めて鮮明に見ることができた。また、観察位置を斜め方向(正面方向から約50度)に傾けても、表示画像の色は変化がなく、正面方向と同様に鮮明であった。
[比較例1]
実施例1の光学フィルムの光の入射側に1/4波長板を貼り合せた以外は実施例1と同様の作製法により、樹脂グレージングを作製した。具体的には、実施例1の(1)で得られた中間膜/1/4波長板/光反射フィルムの光反射フィルム側に1/4波長板をそれぞれの遅相軸あるいは進相軸が直交するように粘着剤にて貼り合せて、光反射フィルムが2枚の1/4波長板の各々の遅相軸あるいは進相軸が直交した1/4波長板に挟持されるように光学フィルムを得た。さらに、実施例1の(4)の1/4波長板の代わりに偏光板を用いて投影する光をp偏光とする以外は実施例1と同様の作製法により、HUDを作製した。これを実施例1と同様の方法により裸眼にて観察したところ、ゴーストはほとんど観察されず、表示画像を極めて鮮明に見ることができた。また、観察位置を斜め方向(正面方向から約50度)に傾けても、表示画像の色は変化がなく、正面方向と同様に鮮明であったが、光の入射側に設けた1/4波長板における直線偏光から円偏光への変換効率による光のロスにより輝度が暗くなった。また、貼り合せる機能性フィルムの層数が増えたことで、製造工程が煩雑化し、生産性が悪くなった。
[比較例2]
実施例1の(C)をポリカーボネート樹脂から合わせガラスに変更した以外は実施例1と同様の作製法により、樹脂グレージングを作製した。具体的には、実施例1の(1)で得られた中間膜/1/4波長板/光反射フィルムを、厚さが2mmのガラス2枚と厚さが0.76mmの1枚のポリビニルブチラール中間膜とガラス/中間膜/ガラス/中間膜/1/4波長板/光反射フィルムの順になるように重ねた。次にガラスのエッジ部からはみ出した光学フィルムの余分な部分を切断・除去した。これをゴムバッグで包み、90℃に加熱したオートクレーブ中で10分間脱気し、予備接着した。これを室温まで冷却後、ゴムバッグから取り出し、再度、オートクレーブ中で135℃、12kg/cmの高圧下で30分間加熱・加圧し、外観が良好な光学フィルムを圧着した機能性樹脂窓を作製した。得られた機能性樹脂窓の可視光透過率は78%であった。
(C)が合わせガラスの場合にも、ゴーストはほとんど観察されず、表示画像を極めて鮮明に見ることができた。また、観察位置を斜め方向(正面方向から約50度)に傾けても、表示画像の色は変化がなく、正面方向と同様に鮮明であったが、樹脂グレージングの重さが極めて重くなった為、車の燃費への影響が懸念される。
[参考例]
実施例1の(4)の1/4波長板を使用せず、入射する光をランダム光とする以外は実施例1と同様の作製法により、HUDを作製した。これを実施例1と同様の方法により裸眼にて観察したところ、ゴースト現象が低減するものの、ゴースト現象が現われてしまい、表示画像の視認性の評価にバラツキが生じた。
本発明は、フロントウインドウの樹脂化の際に、透明樹脂基材の車内側に1/4波長板1層と円偏光反射層を設けることにより、二重像の発生を効果的に抑制し、かつ、投射光のロスや直線偏光から円偏光への変換効率による輝度の低減を抑えることができるために表示画像の視認性を高めることができるとともに、光源輝度の省エネルギー化に寄与することができ、更には製造工程の簡略化にも資するものである。また、複数の機能性フィルムを積層して、上記課題を解決する場合と異なり、製造工程の簡略化にもつながるものである。

Claims (9)

  1. (A)少なくとも1層の光反射層、(B)1層の1/4波長板、及び(C)透明樹脂基材を有するヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。
  2. 前記(A)が、(PRL−1)400nm以上500nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層、(PRL−2)500nm以上600nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層、及び(PRL−3)600nm以上700nm未満の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層から選択される少なくとも1層である請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。
  3. 前記(A)が、(RPI−4)700nm以上950nm以下の中心反射波長をもち該中心反射波長での通常光に対する反射率が5%以上25%以下である光反射層を有する請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。
  4. 前記(A)が、少なくとも2層の光反射層を有し、当該光反射が反射する偏光が全て同じ向きであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。
  5. 前記(A)がコレステリック液晶層を有する光反射層である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。
  6. 前記(B)はブリュースター角に傾斜した状態での遅相軸の角度が45°になる位置関係で積層されている請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアップディスプレイ用樹脂グレージング。
  7. 前記(C)が厚さ0.05mm以上25mm以下である請求項1乃至6のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。
  8. 前記(A)、(B)、(C)が、この順番で積層されている請求項1乃至7のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージング。
  9. 請求項8に記載のヘッドアップディスプレイ用樹脂グレージングを有し、(A)側から円偏光を入射するヘッドアップディスプレイシステム。
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