JP2020155800A - スピーカーシステム - Google Patents

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Susumu Fujiwara
奨 藤原
中村 輝男
Teruo Nakamura
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Abstract

【課題】高音質な音場空間を実現するスピーカーシステムを提供する。【解決手段】スピーカーシステムは、音場空間に設置されるキャビネットと、キャビネットに設けられ、音を放射する複数のスピーカーユニットと、音場空間を予め決められた角度毎に分けたときに、複数のスピーカーユニットから放射される音の位相と時間との関係を示す位相特性が、角度毎に一致するようにスピーカーユニットを制御する制御部と、を備える。【選択図】図5

Description

本発明は、音場空間に設置されるキャビネットに設けられる複数のスピーカーユニットを備えるスピーカーシステムに関する。
従来、2つのスピーカーボックスによってステレオ再生が行われるスピーカーシステムが知られている。また、近年、音場空間に設置されるキャビネットに設けられる複数のスピーカーユニットを備えるスピーカーシステムが知られている。この場合、それぞれのスピーカーユニットにそれぞれ左(Lch)信号及び右(Rch)信号が供給されることによって、ステレオ再生が行われる。
このようなスピーカーシステムとして、ネットワーク環境下において、単一のキャビネットで音楽再生及び音声応答するスマートスピーカーと呼称される製品が提案されている。このスピーカーシステムは、WEBによる検索機能を有し、各種電気製品等の動作を制御する製品であり、パソコンのキーボード等の入力手段とは異なり、音声によるWEB検索及び製品操作を行うことができる。これは、音声応答を行うスピーカー、音声入力を行うマイクロフォン及びネットワークを介して種々の処理を行う制御装置を組み合わせた製品であり、新規の製品形態ではない。このため、家庭内の任意の位置に載置することができる形状及び寸法を有する製品が登場している。また、充電機能及び無線入力機能等を有している製品は、可搬性にも優れる。現状、ユーザがスマートスピーカーにおいて所望の音楽を検索して、音楽再生が行われたり、個人所有のメディアデバイスから無線又は有線によって送信される音楽がスマートスピーカーによって再生されたりする使用方法が知られている。しかし、このように新しい音楽再生手段が提供されてきているにも関わらず、多くの既存品は再生される音の品質が低いため、ユーザに不満が生じている。
特許文献1には、小型及び薄型の無指向性のスピーカーシステムが開示されている。特許文献1は、複数のスピーカーユニットの背面同士が同一軸上に設置され、キャビネットの幅がスピーカーユニットの口径以下である。特許文献2には、特許文献1と同様に、スピーカーユニットの背面同士が同一軸上に設置されたスピーカーシステムが開示されている。特許文献2は、円筒状のキャビネットの両端部にスピーカーユニットが装着され、互いのスピーカーユニットが個別のキャビネットとして利用することができるように、キャビネットの中心部に仕切り板が設けられ、それぞれのスピーカーユニットのキャビネット内の容積が確保されている。
特許文献3には、縦型キャビネットの底面側から音を放射し、机等に反射させることによって、音の広がり感を得ようとするラウドスピーカが開示されている。特許文献3は、音を放出するための複雑な風路が複数設けられており、風路の共鳴を利用して再生周波数帯域の拡大を図ろうとするものである。特許文献4には、キャビネット内部の定在波の影響を受けない位置にスピーカーユニットを装着することによって、スピーカーユニットの性能に応じた放射音のみキャビネットの外部に放射しようとする無反動スピーカーシステムが開示されている。
特開2014−3390号公報 特開2016−82567号公報 特表2017−536001号公報 特許第4126082号公報
しかしながら、特許文献1に開示されたスピーカーシステムにおいて、口径以下の幅及び3mm〜5mm程度の板厚を有するキャビネットの前面側に、例えば口径が10cm以下の小型のスピーカーユニットが装着される場合、スピーカーユニットの奥行方向の寸法は、40mm程度以下でなければならない。振動板の厚み及び駆動系の全長等が考慮されると、極めて薄い振動板が必要となったり、振動板を駆動するボイスコイルボビンの全長が制限されたりする。このため、スピーカーユニットの振動振幅量が得られず、振幅量の制限による入出力効率の低下及び歪音の発生等が生じ、高音質の再生が困難である。
また、特許文献2に開示されたスピーカーシステムは、小型化される場合、互いのスピーカーユニットの背面同士の容積が小さくなるため、低音の再生が困難となる虞がある。更に、特許文献3に開示されたラウドスピーカは、構造が複雑化し、机上設置時の反射を利用することによって音が放射される方向が乱れ、再生音の歪みが発生する虞がある。更にまた、特許文献4に開示された無反動スピーカーシステムにおいて、キャビネットの定在波は、キャビネットの端部で最も大きな密の部分が生じる反面、キャビネット内を伝搬する定在波の状態によって、開口面で位相が打ち消されることによる疎の部分となる。更に、スピーカーから放射される音は、一定の周波数のみではないため、キャビネット内には、複数の周波数に対応する定在波、共振周波数且つ高次の定在波等が発生する。従って、これらの成分を全て抑制することは困難であり、その結果、再生音が歪みを含む音質となる。
また、小型キャビネット内に複数のスピーカーユニットが装着される場合、互いのスピーカーユニットの背面から放射される音波が振動板に直接的又は間接的に影響することによって、振動板の振動のリニアリティが阻害され、放射音に歪みが発生する。また、それぞれのスピーカーユニットが近接するため、キャビネットの外部に放射された再生音は、キャビネット端面で回折現象を引き起こしたり、それぞれのスピーカーユニットから放射された音の伝搬時間の違いによる位相変動が位相差による音の増減を引き起こしたりする。このため高音質な音が放射されず、音の広がり感が得られないため、狭い音場空間で再生されるような音が放射される。このように、一つのキャビネットに複数のスピーカーユニットが設けられるスピーカーシステムにおいて、高音質な音場空間を実現することが望まれている。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、高音質な音場空間を実現するスピーカーシステムを提供するものである。
本発明に係るスピーカーシステムは、音場空間に設置されるキャビネットと、キャビネットに設けられ、音を放射する複数のスピーカーユニットと、音場空間を予め決められた角度毎に分けたときに、複数のスピーカーユニットから放射される音の位相と時間との関係を示す位相特性が、角度毎に一致するようにスピーカーユニットを制御する制御部と、を備える。
本発明によれば、制御部が、複数のスピーカーユニットから放射される音の位相と時間との関係を示す位相特性が、角度毎に一致するようにスピーカーユニットを制御する。このため、ユーザは、音場空間のいずれの位置においても、均一な再生音を聴くことができる。このように、スピーカーシステムは、高音質な音場空間を実現することができる。
本発明の実施の形態1に係るスピーカーシステムを示す側面図である。 本発明の実施の形態1に係るスピーカーシステムを示す上面図である。 本発明の実施の形態1の変形例に係るスピーカーシステムを示す側面図である。 本発明の実施の形態1に係るスピーカーシステムの音の到来状況を示す模式図である。 本発明の実施の形態1に係る制御部を示す機能ブロック図である。 本発明の実施の形態1に係る測定手段の具体例を示す図である。 本発明の実施の形態1に係る測定手段の具体例を示す図である。 本発明の実施の形態1に係る遅延手段の具体例を示す図である。 本発明の実施の形態1に係る制御部の制御結果を示す図である。 本発明の実施の形態1に係る制御部の制御結果を示す図である。 本発明の実施の形態1に係るスピーカーシステムの音場空間を示す模式図である。 比較例に係るスピーカーシステムの音場空間を示す模式図である。 本発明の実施の形態2に係るスピーカーシステムを示す側面図である。 本発明の実施の形態2に係るマイクロフォンの指向性を示す模式図である。 本発明の実施の形態2における反射体による音の反射を示す模式図である。 本発明の実施の形態2における反射体による音の反射を示すグラフである。 本発明の実施の形態2に係る制御部を示す機能ブロック図である。 本発明の実施の形態2に係る減衰手段の具体例を示す図である。 本発明の実施の形態3に係るスピーカーシステムを示す側面図である。
以下、本発明に係るスピーカーシステムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本発明を限定するものではない。方向を表す用語としては、例えば、「上」、「下」、「右」、「左」、「前」又は「後」等が挙げられる。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るスピーカーシステム1を示す側面図であり、図2は、本発明の実施の形態1に係るスピーカーシステム1を示す上面図である。図1及び図2に示すように、スピーカーシステム1は、キャビネット2と、複数のスピーカーユニット3と、制御部4とを備えている。
(キャビネット2)
キャビネット2は、ユーザが音楽等を聴く音場空間7に設置される内部空間2aが形成された筐体であり、例えば高さ方向に延びる円筒状をなしている。キャビネット2の内部の容積は、例えば1l以下の小容積である。なお、キャビネット2は、直方体状をなしてもよいし多角形状をなしてもよい。
(スピーカーユニット3)
スピーカーユニット3は、キャビネット2の内部空間2aに設けられ、音を放射するものである。スピーカーユニット3は、キャビネット2の内部に複数設けられており、本実施の形態1では、スピーカーユニット3が2個の場合について例示している。2個のスピーカーユニット3のうち、一方をRch(Right channel)とし、他方をLch(Left channel)とする。
スピーカーユニット3は、フレーム31と、振動板32と、磁気回路部33とを有する。フレーム31は、スピーカーユニット3の外郭を構成するものであり、キャビネット2に取り付けられる。振動板32は、例えばコーン状をなしており、音波と電気信号とを変換するものである。フレーム31がキャビネット2に取り付けられると、振動板32は、キャビネット2から露出する。磁気回路部33は、スピーカーユニット3の背面に設けられ、磁場を発生させる。磁気回路部33は、磁場の発生により生じる力によって、振動板32を振動させる。
複数のスピーカーユニット3は、背面の磁気回路部33同士が対向するように、キャビネット2に設けられている。この場合、磁気回路部33同士が略接触する配置となる。従って、スピーカーユニット3の前面の振動板32は、キャビネット2の外部に向いて、キャビネット2から露出する。よって、キャビネット2の周囲の全域に音が放射される。
スピーカーユニット3が小型化されると、スピーカーユニット3を小容積のキャビネット2に容易に装着することができる。しかし、振動板32の小口径化に伴う出力音圧レベルの低下及び磁気回路部33の薄肉化に伴う磁束の低下等の要因によって、振動板32のピストン駆動距離が短くなる。このため、入力信号の強弱に対する追従性が悪化し、音を放射することができる周波数帯域が狭い等の問題が生じる虞がある。更に、入力信号に対する再現性の悪さ及び再生音に含まれる歪み等によって、満足する音質が得られない虞がある。このため、スピーカーユニット3として、再生周波数帯域の拡大、入力信号に対する追従性を確保して歪み音を低下させる強力な磁気回路部33の採用、できる限り大きい振動板32の口径及び信号追従性が良好な支持材の確保等が求められる。
図3は、本発明の実施の形態1の変形例に係るスピーカーシステム100を示す側面図である。図3に示すように、変形例では、複数のスピーカーユニット103は、磁気回路部33同士が対向する位置から逸れるように、キャビネット2に設けられている。この場合、例えば磁気回路部33同士が上下方向に配置される。従って、複数のスピーカーユニット103が千鳥配置される。これにより、キャビネット102の径を小さくすることができる。従って、キャビネット102の大型化を回避することができ、可搬性に優れる。なお、キャビネット102が直方体状である場合、キャビネット102の幅を小さくすることができる。
図4は、本発明の実施の形態1に係るスピーカーシステム1の音の到来状況を示す模式図である。図4に示すように、音を聴取するユーザを模したダミーヘッド6が、スピーカーシステム1の正面に配置されている場合について例示する。先ず、Lchのスピーカーユニット3の音の到来状況について説明する。Lchのスピーカーユニット3はダミーヘッド6の左耳に近いため、Lchの音はダミーヘッド6の左耳に直接到来する。一方、Lchのスピーカーユニット3はダミーヘッド6の右耳まで遠いため、Lchの音はダミーヘッド6の右耳に、左耳よりも余分な伝搬時間を掛けて到来する。即ち、Lchの音は、ダミーヘッド6の左耳に到達するよりも、ダミーヘッド6の右耳に到達する方が遅い。
次に、Rchのスピーカーユニット3の音の到来状況について説明する。Rchのスピーカーユニット3はダミーヘッド6の右耳に近いため、Rchの音はダミーヘッド6の右耳に直接到来する。一方、Rchのスピーカーユニット3はダミーヘッド6の左耳まで遠いため、Rchの音はダミーヘッド6の左耳に、右耳よりも余分な伝搬時間を掛けて到来する。即ち、Rchの音は、ダミーヘッド6の右耳に到達するよりも、ダミーヘッド6の左耳に到達する方が遅い。
このように、それぞれのスピーカーユニット3からの再生音の位相特性が一致し、それぞれのスピーカーユニット3の中央部分でのみ、2つのスピーカーユニット3からの合成音場が形成される。このため、ユーザにおけるステレオの音場空間7は、それぞれのスピーカーユニット3の中央部分となる。従って、音の広がり感が狭くなる虞がある。図1及び図2に示すような磁気回路部33同士が近接している単一のキャビネット2が採用されている場合、2つの独立したキャビネット2を有するスピーカーシステム1に比べて、スピーカーユニット3同士の距離が近い。このため、音の放射範囲の拡大化には限界がある。そこで、本実施の形態1では、制御部4が、スピーカーユニット3から放射される音の位相特性を信号処理することによって、音の放射状態を自由に調整する。これにより、単一のキャビネット2のみでも、音の広がり感の向上、低位感の向上及び再生音の高性能化が実現される。
(制御部4)
図5は、本発明の実施の形態1に係る制御部4を示す機能ブロック図である。制御部4は、例えばCPU及びメモリからなる。制御部4は、音場空間7を予め決められた角度毎に分けたときに、複数のスピーカーユニット3から放射される音の位相と時間との関係を示す位相特性が、角度毎に一致するようにスピーカーユニット3を制御する。図5に示すように、制御部4は、AD変換手段41と、アルゴリズム群4aと、DA変換手段44と、増幅手段45とを有している。
(AD変換手段41)
AD変換手段41は、例えばアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する電子回路である。AD変換手段41は、無線又は有線によって入力信号を受信すると、アナログ電気信号である入力信号をデジタル電気信号に変換する。
(アルゴリズム群4a)
アルゴリズム群4aは、例えば制御部4が実行する複数のプログラムからなる。アルゴリズム群4aは、測定手段42と、遅延手段43とを有する。
(測定手段42)
図6は、本発明の実施の形態1に係る測定手段42の具体例を示す図である。測定手段42は、複数のスピーカーユニット3から放射される音の位相特性を、角度毎に測定する。測定手段42は、例えば頭部伝達関数(HRTF)手法を用いて実行される。図6に示すように、測定手段42は、音場空間7を例えば90度毎に分ける。ここで、スピーカーシステム1の正面を0度及び360度方向とし、Lchのスピーカーユニット3に対向する位置を90度方向とし、スピーカーシステム1の裏正面を180度方向とし、Rchのスピーカーユニット3に対向する位置を270度方向とする。
測定手段42は、先ず、ダミーヘッド6が0度方向の位置に載置された状態で、2つのスピーカーユニット3から放射される音の位相特性を測定する。測定手段42は、更に、ダミーヘッド6が90度方向、180度方向及び270度方向の位置に載置された状態で、2つのスピーカーユニット3から放射される音の位相特性を測定する。なお、本実施の形態1では、測定手段42が、90度毎に位相特性を測定する場合について例示しているが、90度より細かい例えば角度5度毎に位相特性を測定してもよいし、90度より粗い角度毎に位相特性を測定してもよい。
測定手段42は、ダミーヘッド6が0度方向の位置に載置された状態の位相特性と、ダミーヘッド6が90度方向の位置に載置された状態の位相特性との平均を、0度方向〜90度方向の範囲Aにおける位相特性とする。また、測定手段42は、ダミーヘッド6が90度方向の位置に載置された状態の位相特性と、ダミーヘッド6が180度方向の位置に載置された状態の位相特性との平均を、90度方向〜180度方向の範囲Bにおける位相特性とする。測定手段42は、ダミーヘッド6が180度方向の位置に載置された状態の位相特性と、ダミーヘッド6が270度方向の位置に載置された状態の位相特性との平均を、180度方向〜270度方向の範囲Cにおける位相特性とする。また、測定手段42は、ダミーヘッド6が270度方向の位置に載置された状態の位相特性と、ダミーヘッド6が0度方向の位置に載置された状態の位相特性との平均を、270度方向〜0度方向の範囲Dにおける位相特性とする。
図7は、本発明の実施の形態1に係る測定手段42の具体例を示す図である。図6の例では、測定手段42が、音場空間7を二次元的に区画する場合について例示している。これに加え、測定手段42は、図7に示すように、音場空間7を三次元的に区画して、複数のスピーカーユニット3から放射される音の位相特性を、角度毎に測定するようにしてもよい。これにより、スピーカーシステム1は、ステレオ音声に限らず、サラウンド音声を実現することができる。
(遅延手段43)
遅延手段43は、測定手段42によって測定された角度毎の位相特性が一致するように、各位相特性を遅延させる。遅延手段43は、例えば適応信号処理であり、スピーカーユニット3から放射される音の指向特性を制御するものである。遅延手段43は、周波数帯域別における遅延時間処理であり、例えばFIR(Finite Impulse Response)処理といった任意の計算処理によるデジタル信号処理である。遅延手段43は、複数のスピーカーユニット3から放射される音がスピーカーユニット3からHRTF測定点までに空間を伝搬する際の音響特性の時間特性を一致させる。
図8は、本発明の実施の形態1に係る遅延手段43の具体例を示す図である。ここで、測定手段42及び遅延手段43は、ユーザが実際に音を聴くよりも前に、位相特性を測定して遅延する。本実施の形態1では、遅延手段43は、全ての位相特性が一致するように、各位相特性を遅延させる。図8に示すように、遅延手段43は、先ず、0度方向〜90度方向の範囲Aの位相特性を、任意の位相特性と一致するように遅延させる(遅延制御A)。次に、遅延手段43は、90度方向〜180度方向の範囲Bの位相特性を、任意の位相特性と一致するように遅延させる(遅延制御B)。
そして、遅延手段43は、180度方向〜270度方向の範囲Cの位相特性を、任意の位相特性と一致するように遅延させる(遅延制御C)。更に、遅延手段43は、270度方向〜0度(360度)方向の範囲Dの位相特性を、任意の位相特性と一致するように遅延させる(遅延制御D)。これにより、全ての位相特性が、任意の位相特性となり、一致する。なお、遅延制御A後に出力される制御信号A、遅延制御B後に出力される制御信号B、遅延制御C後に出力される制御信号C及び遅延制御D後に出力される制御信号Dは、実施の形態2で説明するマイクロフォン205と連携制御が可能である。
図9は、本発明の実施の形態1に係る制御部4の制御結果を示す図である。先ず、図9の上図に示すように、音を聴取するユーザを模したダミーヘッド6が、スピーカーシステム1の正面、即ち、Lch及びRchの中央部分に配置されている場合について例示する。なお、図3に示す変形例に係るスピーカーシステム1についても、計測条件は同様であるが、この場合、スピーカーユニット3の振動板32である放射面は、上下方向となるため、各スピーカーユニット3の上下方向の中央部分が、計測する中心位置となる。
このように、上下方向の位置が異なるスピーカーユニット3においても、HRTF手法を用いて、各スピーカーユニット3の上下方向の中央部分に、スピーカーユニット3から放射される音の音像定位が可能となる。ここで、Lchの音がダミーヘッド6の左耳に直接到来する場合を到来音Aとし、Lchの音がダミーヘッド6の右耳に到来する場合を到来音Bとする。また、Rchの音がダミーヘッド6の右耳に直接到来する場合を到来音Cとし、Rchの音がダミーヘッド6の左耳に到来する場合を到来音Dとする。
図9の左図に示すように、到来音Bの位相特性は、到来音Aの位相特性に比べて遅れており、到来音Dの位相特性は、到来音Cの位相特性に比べて遅れている。この場合、伝搬時間単位で位相変化が発生しており、聴取点では位相変化による音質変動が生じる。本実施の形態1は、遅延手段43が、各位相特性を遅延させることによって、位相乱れがない位相特性とする。これにより、図9の右図に示すように、到来音A、到来音B、到来音C及び到来音Dの位相特性が一致する。
図10は、本発明の実施の形態1に係る制御部4の制御結果を示す図である。次に、図10の上図に示すように、音を聴取するユーザを模したダミーヘッド6が、スピーカーシステム1の側面、例えば、Lchの軸上に配置されている場合について例示する。この場合、Lchの音は、ダミーヘッド6の右耳及び左耳に直接到来するものの、Rchの音は、ダミーヘッド6の右耳及び左耳のいずれにも、Lchの音よりもかなり遅く到来する。
図10の左図に示すように、到来音Aの位相特性及び到来音Bの位相特性は、ほぼ同様であり、到来音Cの位相特性及び到来音Dの位相特性も、ほぼ同様である。そして、到来音Cの位相特性及び到来音Dの位相特性は、到来音Aの位相特性及び到来音Bの位相特性に比べて遅れている。遅延手段43は、各位相特性を遅延させることによって、位相乱れがない位相特性とする。これにより、図10の右図に示すように、到来音A、到来音B、到来音C及び到来音Dの位相特性が一致する。
(DA変換手段44)
図5に示すように、DA変換手段44は、例えばデジタル電気信号をアナログ電気信号に変換する電子回路である。DA変換手段44は、測定手段42及び遅延手段43から出力されたデジタル電気信号を、アナログ電気信号に変換する。
(増幅手段45)
増幅手段45は、電気信号を増幅するものである。増幅手段45は、DA変換手段44によって変換されたアナログ電気信号を増幅してスピーカーユニット3に出力する。
本実施の形態1によれば、制御部4が、複数のスピーカーユニット3から放射される音の位相と時間との関係を示す位相特性が、角度毎に一致するようにスピーカーユニット3を制御する。このため、ユーザは、音場空間7のいずれの位置においても、均一な再生音を聴くことができる。このように、スピーカーシステム1は、高音質な音場空間7を実現することができる。
図11は、本発明の実施の形態1に係るスピーカーシステム1の音場空間7を示す模式図である。更に、本実施の形態1の制御部4は、複数のスピーカーユニット3から放射される音の位相特性を、角度毎に測定する測定手段42と、測定手段42によって測定された角度毎の位相特性が一致するように各位相特性を遅延させる遅延手段43と、を有する。これにより、図11に示すように、ユーザは、音場空間7のいずれの位置においても、ステレオ音声又はサラウンド音声を聴取することができる。
このように、各聴取位置において、複数のスピーカーユニット3から放射された音の位相特性が一致している。このため、単一のキャビネット2であっても、キャビネット2を中心とした周囲360度のいずれの位置においても、ユーザは、スピーカーユニット3から放射された音の位相特性が一致した歪みがない放射音を聴くことができる。なお、スピーカーシステム1は、キャビネット2の形状に関わらず、歪みがない再生音を提供することができる。
図12は、比較例に係るスピーカーシステム1aの音場空間7を示す模式図である。ここで、本実施の形態1に係るスピーカーシステム1の比較例について説明する。図12に示すように、比較例に係るスピーカーシステム1aは、音場空間7の位相特性が不一致である。これにより、スピーカーシステム1aの正面及び裏正面には、ステレオ音声又はサラウンド音声が届くものの、Lchのスピーカーユニット3に対向する位置には、Lchの音のみ届き、Rchのスピーカーユニット3に対向する位置には、Rchの音のみ届く。即ち、ユーザは、特定の範囲にいなければ、歪みがないステレオ音声又はサラウンド音声を聴くことができない。
これに対し、本実施の形態1は、各聴取位置において、複数のスピーカーユニット3から放射された音の位相特性が一致している。このため、単一のキャビネット2であっても、キャビネット2を中心とした周囲360度のいずれの位置においても、ユーザは、スピーカーユニット3から放射された音の位相特性が一致した歪みがない放射音を聴くことができる。
なお、図3に示す変形例に係るスピーカーシステム100は、Rchのスピーカーユニット103とLchのスピーカーユニット103とが近い。このため、Rchのスピーカーユニット103から放射された音がユーザの左耳に届き易く、Lchのスピーカーユニット103から放射された音がユーザの右耳に届き易い。即ち、位相特性がよりずれ易い。
本実施の形態1は、制御部4が、音場空間7を予め決められた角度毎に分けたときに、複数のスピーカーユニット103から放射される音の位相と時間との関係を示す位相特性が、角度毎に一致するようにスピーカーユニット103を制御する。このため、複数のスピーカーユニット103が、磁気回路部33同士が対向する位置から逸れるように設けられていても、ユーザは、スピーカーユニット103から放射された音の位相特性が一致した歪みがない放射音を聴くことができる。このように、本実施の形態1の制御部4は、複数のスピーカーユニット3が、磁気回路部33同士が対向する位置から逸れるように設けられている場合に、顕著な効果を奏する。
実施の形態2.
図13は、本発明の実施の形態2に係るスピーカーシステム200を示す側面図である。本実施の形態2は、マイクロフォン205を備えている点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態2では、実施の形態1と共通する部分は同一の符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
(マイクロフォン205)
図13に示すように、マイクロフォン205は、キャビネット2に設けられ、複数のスピーカーユニット3から放射された音を収集する。マイクロフォン205は、音声の入力機能に加え、スピーカーシステム200の音場空間7の状態を自動又は手段で計測するために必要な室内環境の音響特性の入力機能も有する。マイクロフォン205は、キャビネット2の上部に例えば2個設けられている。なお、マイクロフォン205の数は、1個でもよいし、3個以上でもよい。また、マイクロフォン205は、キャビネット2の上部に限らず、キャビネット2のいずれの位置に設けられてもよい。
図14は、本発明の実施の形態2に係るマイクロフォン205の指向性を示す模式図である。図14に示すように、2個のマイクロフォン205は、キャビネット2の四隅のうち対向する2隅に設けられている。マイクロフォン205は、所定の範囲内の音を収集する指向性を有している。一方のマイクロフォン205(A)の指向性範囲は、キャビネット2の全周囲の半分の領域Aに渡る。他方のマイクロフォン205(B)の指向性範囲は、キャビネット2の全周囲の残りの半分の領域Bに渡る。このように、2個のマイクロフォン205は、キャビネット2の四隅のうち対向する2隅に設けられているため、キャビネット2の全周囲の音を収集することができる。なお、マイクロフォン205の数が増加すれば、指向感度を細かく調整することができるため、音の検出性能が向上するものの、コストが増加する。従って、マイクロフォン205の数は、コストと検出性能とを考慮して適宜選択される。
図15は、本発明の実施の形態2における反射体208による音の反射を示す模式図である。図15に示すように、キャビネット2の近傍に壁等の反射体208が存在する場合、スピーカーユニット3から放射される音が反射体208で反射する。特に、スピーカーユニット3がユーザに対向していない場合に、スピーカーユニット3から放射される音は反射体208に届き易い。反射体208で反射した音は、スピーカーユニット3から放射されて反射していない音と共に、ユーザの耳に届く。
図16は、本発明の実施の形態2における反射体208による音の反射を示すグラフである。図16に示すように、概して、キャビネット2の外面に沿いつつ伝搬する回折音等の位相特性は、緩やかに傾斜する波形である。これに対し、壁等の室内構造物である反射体208に反射した音は、二次成分である反射成分のピークレベルが、一次成分である直接伝搬成分に対し遅れており、同等に近い出力レベルとなって検出される場合がある。この場合、制御部204は、反射体208とスピーカーユニット3との間の反射に伴うインパルス的な現象と判断し、スピーカーユニット3の出力特性を変化させる。
このように、スピーカーユニット3から直接到達する音以外に、反射体208によって反射されて伝搬時間が遅くなった音が、ユーザに到達する場合がある。この場合、ユーザは、直接音に反射音が混入したことにより位相が乱れた歪み音を聴くことになる。本実施の形態2は、指向感度を調整して検出範囲を特定化したマイクロフォン205が、空間を伝搬する音響信号の方向を定め、制御部204が、反射体208との距離が種々変化することが想定される反射音を遮断する。
図17は、本発明の実施の形態2に係る制御部204を示す機能ブロック図である。制御部204のアルゴリズム群204aは、測定手段42と、遅延手段43と、判定手段246と、減衰手段247とを有している。このうち、測定手段42及び遅延手段43は、実施の形態1の測定手段42及び遅延手段43と同様である。
(判定手段246)
判定手段246は、マイクロフォン205によって収集された音の位相特性に基づいて、複数のスピーカーユニット3から放射された音を反射する反射体208の有無を判定する。判定手段246は、図16に示すグラフのように、直接音の位相特性から逸脱した位相特性がマイクロフォン205によって検出された場合、反射体208があると判定する。一方、判定手段246は、直接音の位相特性から逸脱した位相特性がマイクロフォン205によって検出されない場合、反射体208がないと判定する。なお、反射体208の位置は、いずれのマイクロフォン205が直接音の位相特性から逸脱した位相特性を検出したかによって、特定することができる。
(減衰手段247)
図18は、本発明の実施の形態2に係る減衰手段247の具体例を示す図である。減衰手段247は、判定手段246によって反射体208があると判定された場合、反射体208側の音圧を減衰する。即ち、図18に示すように、反射体208側の音場空間7が、消音域となる。これにより、スピーカーユニット3から反射体208側に放射された音の出力信号が低減し、反射体208によって反射した音がユーザに伝搬しない。
本実施の形態2によれば、スピーカーシステム200は、キャビネット2に設けられ、複数のスピーカーユニット3から放射された音を収集するマイクロフォン205を更に備える。そして、制御部204は、マイクロフォン205によって収集された音の位相特性に基づいて、複数のスピーカーユニット3から放射された音を反射する反射体208の有無を判定する判定手段246を有する。また、制御部204は、判定手段246によって反射体208があると判定された場合、反射体208側の音圧を減衰する減衰手段247と、を有する。このため、スピーカーユニット3から反射体208側に放射された音の出力信号が低減し、反射体208によって反射した音がユーザに伝搬しない。よって、ユーザは、反射波の影響が低減された再生音を聴くことができる。
実施の形態3.
図19は、本発明の実施の形態3に係るスピーカーシステム300を示す側面図である。本実施の形態3は、制御部4を備えていない点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態3では、実施の形態1と共通する部分は同一の符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
図19に示すように、複数のスピーカーユニット303は、磁気回路部33同士が対向する位置から逸れるように、キャビネット302に設けられている。この場合、例えば磁気回路部33同士が上下方向において千鳥配置される。これにより、キャビネット302の径を小さくすることができる。従って、キャビネット302の大型化を回避することができ、可搬性に優れる。なお、キャビネット302が直方体状である場合、キャビネット302の幅を小さくすることができる。
1,1a スピーカーシステム、2 キャビネット、2a 内部空間、3 スピーカーユニット、4 制御部、4a アルゴリズム群、6 ダミーヘッド、7 音場空間、31 フレーム、32 振動板、33 磁気回路部、41 AD変換手段、42 測定手段、43 遅延手段、44 DA変換手段、45 増幅手段、100 スピーカーシステム、102 キャビネット、103 スピーカーユニット、200 スピーカーシステム、204 制御部、204a アルゴリズム群、205 マイクロフォン、208 反射体、246 判定手段、247 減衰手段、300 スピーカーシステム、302 キャビネット、303 スピーカーユニット。

Claims (6)

  1. 音場空間に設置されるキャビネットと、
    前記キャビネットに設けられ、音を放射する複数のスピーカーユニットと、
    前記音場空間を予め決められた角度毎に分けたときに、複数の前記スピーカーユニットから放射される音の位相と時間との関係を示す位相特性が、前記角度毎に一致するように前記スピーカーユニットを制御する制御部と、
    を備えるスピーカーシステム。
  2. 前記制御部は、
    複数の前記スピーカーユニットから放射される音の位相特性を、前記角度毎に測定する測定手段と、
    前記測定手段によって測定された前記角度毎の位相特性が一致するように、各位相特性を遅延させる遅延手段と、を有する
    請求項1記載のスピーカーシステム。
  3. 前記キャビネットに設けられ、複数の前記スピーカーユニットから放射された音を収集するマイクロフォンを更に備え、
    前記制御部は、
    前記マイクロフォンによって収集された音の位相特性に基づいて、複数の前記スピーカーユニットから放射された音を反射する反射体の有無を判定する判定手段と、
    前記判定手段によって前記反射体があると判定された場合、前記反射体側の音圧を減衰する減衰手段と、を有する
    請求項1又は2記載のスピーカーシステム。
  4. 複数の前記スピーカーユニットは、背面に磁気回路部を有し、
    前記磁気回路部同士が対向するように、前記キャビネットに設けられている
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のスピーカーシステム。
  5. 複数の前記スピーカーユニットは、背面に磁気回路部を有し、
    前記磁気回路部同士が対向する位置から逸れるように、前記キャビネットに設けられている
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のスピーカーシステム。
  6. 音場空間に設置されるキャビネットと、
    前記キャビネットに設けられ、背面に磁気回路部を有し、音を放射する複数のスピーカーユニットと、を備え、
    複数の前記スピーカーユニットは、
    前記磁気回路部同士が対向する位置から逸れるように、前記キャビネットに設けられている
    スピーカーシステム。
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