以下、本発明の実施形態に係る水中探知システム1について、図面を参照しつつ説明する。
[水中探知システムの構成]
図1は、本発明の実施形態に係る水中探知システム1の構成を示すブロック図である。本実施形態の水中探知システム1は、例えば、漁船などの船舶に設けられている。以下では、水中探知システム1を備えている船舶を「自船」という。なお、図1では、受信機8及び処理装置5が有する構成要素のうちの一部のみを図示している。
図1に示すように、本実施形態に係る水中探知システム1は、スキャニングソナー10と、処理装置5と、第2表示装置6とを備えている。水中探知システム1は、一般的に知られているスキャニングソナー10に、処理装置5及び第2表示装置6が外付けされた構成となっている。
スキャニングソナー10は、送受波器2と、送受信装置3と、第1表示装置4とを備えている。
送受波器2は、超音波を送受信する機能を有し、自船の船底に取り付けられている。例えば一例として、送受波器2は、略円筒形状であって、その軸方向が鉛直方向に沿い、半径方向が水平方向に沿うように配置されている。
詳細には、送受波器2は、略円筒形状の筐体と、この筐体の外周面に取り付けられた複数の送受波素子としての超音波振動子(図示省略)とを有している。超音波振動子は、超音波を水中に送信するとともに、エコーを受信し、このエコーを電気信号に変換して受信機8へ出力する。なお、本実施形態において、送受波器2は、筐体が円筒形の場合を示したが、形状は特に限定されるものではなく、例えば、球形等のように他の形状とすることもできる。
図2は、送受波器2から送波される第1送信波の送波範囲を模式的に示す図である。また、図3は、送受波器2から送波される第2送信波の送波範囲を模式的に示す図である。図2及び図3では、自船Sに搭載された送受波器2から送波される送信波の送波範囲が、ドットハッチングが施された箇所によって模式的に表されている。
本実施形態では、送受波器2からは、2種類の送信波、具体的には図2に示すような第1送信波、及び図3に示すような第2送信波が送波される。送受波器2は、自船を中心とする水平方向の全方位へ送信波を送波する。
第1送信波は、鉛直方向におけるビーム幅θ1が比較的狭い送信波である。第1送信波のビーム幅θ1は、例えば一例として8度程度であるが、これに限らず、20度未満であればよい。第1送信波が送波される領域を、以下では2次元的領域Z1と称する。このように、第1送信波が送波される領域を2次元的領域Z1と称する理由は、以下の通りである。すなわち、第1送信波の鉛直方向におけるビーム幅θ1は、送受波器2で実現可能な最小の鉛直方向のビーム幅、或いはそれに近い値である。よって、第1送信波が送波される領域は、空間的な拡がりが比較的狭い領域であるため、本明細書では、その領域を、2次元的領域Z1と称する。
第2送信波は、鉛直方向におけるビーム幅θ2が第1送信波よりも広い送信波である。第2送信波のビーム幅θ2は、例えば一例として30度程度であるが、これに限らず、20度以上であればよい。第2送信波が送波される領域を、以下では3次元的領域Z2と称する。このように、第2送信波が送波される領域を3次元的領域Z2と称する理由は、以下の通りである。すなわち、第1送信波の鉛直方向におけるビーム幅θ1は、上述のように比較的狭いビーム幅であるのに対し、20度以上のビーム幅θ2を有する第2送信波は、第1送信波と比べて十分にビーム幅が広いと考えることができる。よって、本明細書では、このように十分にビーム幅が広い第2送信波が送波される3次元的な拡がりが比較的大きい領域を、3次元的領域Z2と称する。
送受波器2では、例えば一例として、第1送信波の送信及び該第1送信波の反射波の受信が行われる送受信が複数回行われた後、第2送信波の送信及び該第2送信波の反射波の受信が行われる送受信が1回、行われる。すなわち、本実施形態では、第2送信波が送波される頻度は、第1送信波が送波される頻度よりも少ない。
送受信装置3は、送受切替部3aと、送信機7と、受信機8とを備えている。送受信装置3は、ハードウェア・プロセッサ9(例えば、CPU、FPGA等)、アナログ回路、及び不揮発性メモリ等のデバイスで構成される。ハードウェア・プロセッサ9は、以下で詳しく説明する第1制御部7b、直交検波部13、第1ビーム形成部14、フィルタ部15、及び第1画像生成部16として機能する。例えば、CPUが不揮発性メモリからプログラムを読み出して実行することにより、ハードウェア・プロセッサ9が、第1制御部7b、直交検波部13、第1ビーム形成部14、フィルタ部15、及び第1画像生成部16として機能する。
送受切替部3aは、送受波器2に対する信号の送信と受信とを切り替えるためのものである。具体的には、送受切替部3aは、送受波器2を駆動させるための駆動信号を送受波器2へ送信するときは、送信機7が出力する駆動信号を送受波器2へ出力する。一方、送受切替部3aは、受信信号を送受波器2から受信するときは、送受波器2が受信した受信信号を受信機8へ出力する。
送信機7は、送受波器2から送波される送信波の基となる駆動信号を生成するためのものである。送信機7は、送信回路部7aと、第1制御部7bとを有している。
送信回路部7aは、第1制御部7b、及び詳しくは後述する処理装置5の第2制御部20によって制御されることにより、駆動信号を生成する。具体的には、送信回路部7aは、各超音波振動子に対応して設けられている送信回路(図示省略)を有し、各送信回路が第1制御部7bによって適宜、制御されることにより、第1駆動信号を生成する。第1駆動信号とは、送受波器2から送波される第1送信波(上述したような、鉛直方向におけるビーム幅が8度程度の送信波)の基となる信号である。また、送信回路部7aは、各送信回路が第2制御部20によって制御されることにより、第2駆動信号を生成する。第2駆動信号とは、送受波器2から送波される第2送信波(上述したような、鉛直方向におけるビーム幅が30度程度の送信波)の基となる信号である。
第1制御部7bは、送信回路部7aが有する複数の送信回路のそれぞれを適宜、制御することにより、送信回路部7aに第1駆動信号を生成させる。
図4は、受信機8の構成を示すブロック図である。受信機8は、アナログ部11と、A/D変換部12と、直交検波部13と、第1ビーム形成部14と、フィルタ部15と、第1画像生成部16とを有している。アナログ部11及びA/D変換部12は、送信波の反射波に基づいて受信信号を生成する受信回路部として設けられている。
アナログ部11は、送受波器2からの電気信号を増幅するとともに、その帯域を制限することで不要な周波数成分を除去する。アナログ部11は、第1送信波の反射波から得られた電気信号、及び第2送信波の反射波から得られた電気信号、の双方に対して処理を行う。
A/D変換部12は、アナログ部11で生成された電気信号を、デジタル信号としての受信信号に変換する。A/D変換部12は、第1送信波の反射波から得られた電気信号を処理して第1受信信号を生成し、第2受信波の反射波から得られた電気信号を処理して第2受信信号を生成する。
直交検波部13は、各超音波振動子から得られた第1受信信号及び第2受信信号に直交検波処理を適用して、I信号及びQ信号を生成する。これらの信号は、I信号を実部、Q信号を虚部とする複素信号として処理される。直交検波部13は、A/D変換部12から出力される受信信号が第1受信信号である場合、生成した複素信号を、第1複素信号として第1ビーム形成部14へ出力する。一方、直交検波部13は、A/D変換部12から出力される受信信号が第2受信信号である場合、生成した複素信号を、第2複素信号として処理装置5へ出力する。なお、直交検波部13から処理装置5への第2複素信号の出力は、それらの第2複素信号が、送受信装置3が有する記憶部(図示省略)に一旦記憶された後に行われてもよい。
なお、ここでは、直交検波部13で第2複素信号を生成した後、その第2複素信号を処理装置5へ出力する例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、A/D変換部12で生成された第2受信信号が処理装置5へ出力された後、処理装置5内で直交検波処理が行われてもよい。
第1ビーム形成部14は、特定の複数の超音波振動子から得られた第1複素信号にビーム形成処理(具体的には、整相加算)を行って、特定の方向に鋭い指向性を有する単一の超音波振動子によって得られるものと等価な信号である第1ビーム信号を生成する。第1ビーム形成部14は、ビーム形成処理を行う対象となる超音波振動子の組合せを変えながらこの処理を繰り返し行うことによって、各方位に指向性を有する多数の第1ビーム信号を生成する。第1ビーム形成部14は、図2を参照して、鉛直方向に比較的狭いビーム幅θ1(例えば一例として8度程度)を有する第1ビーム信号を生成する。
フィルタ部15は、第1ビーム形成部14が形成した第1ビーム信号に、帯域制限フィルタ、或いはパルス圧縮フィルタの処理を施すことにより、後述する第1画像(2次元領域画像)を生成するための2次元画像用信号を生成する。
第1画像生成部16は、フィルタ部15で生成された2次元画像用信号の振幅(具体的には、複素信号の絶対値)に基づいて、自船周囲における物標の分布を示す2次元領域画像を生成する。具体的には、第1画像生成部16は、自船の送受波器2の位置を頂点とした円錐面上の分布を上方から視た画像(以下、水平モード画像H1と称する場合もある)、或いは、送受波器2を含む鉛直面上の分布を示す画像(以下、垂直モード画像V1と称する場合もある)、を生成する。なお、第1画像生成部16で生成される画像は、ビーム幅が比較的狭い第1送信波から得られる信号に基づいて生成される画像であり、空間的な拡がりのない2次元的な面状の領域から得られた画像である。なお、水平モード画像H1が得られる領域は、図2におけるドットハッチングが施された領域である。
図5は、第1表示装置4に表示される表示画面4aの一例を模式的に示す図である。第1表示装置4の表示画面4aには、第1画像生成部16で生成された水平モード画像H1及び垂直モード画像V1が表示される。例えば一例として、本水中探知システム1が有するキーボード等の操作機器(図示省略)をユーザが適宜、操作することにより、第1表示装置4に、水平モード画像H1と垂直モード画像V1とを切り替えて表示したり、或いはこれらを同時に表示したりすることができる。図5では、自船Sを基準とした2時の方位に魚群が存在している例が図示されている。
第1表示装置4では、エコー強度が高い信号が得られたエリアが高密度のドットハッチングが付されたエリアで示され、エコー強度が中程度の信号が得られたエリアが中密度のドットハッチングが付されたエリアで示され、エコー強度が低い信号が得られたエリアが低密度のドットハッチングが付されたエリアで示されている。以下では、高密度のドットハッチングが付されたエリアを高エコー強度エリアと称し、中密度のドットハッチングが付されたエリアを中エコー強度エリアと称し、低密度のドットハッチングが付されたエリアを低エコー強度エリアと称する。なお、実際の第1表示装置4では、高エコー強度エリアは赤色で示され、中エコー強度エリアは緑色で示され、低エコー強度エリアは青色で示されている。
処理装置5は、スキャニングソナー10の送受信装置3とケーブル等により接続された機器であって、例えば一例としてPC(パーソナルコンピュータ)で構成されている。処理装置5は、詳しくは後述するが、送受信装置3で処理された受信信号のうちの一部を処理するためのものである。
ところで、本実施形態に係る水中探知システム1は、スキャニングソナー10によって自船付近の2次元的領域Z1に含まれる物標が投影された画像(具体的には、水平モード画像H1及び垂直モード画像V1)を生成できるだけでなく、以下で詳しく説明する処理装置5によって、自船付近の3次元状の領域である3次元的領域Z2(図3参照)に含まれる物標が投影された画像をも生成することができる。本水中探知システム1では、操作機器(図示省略)を介したユーザからの所定指示がない限りは、スキャニングソナー10によって、2次元的領域Z1に含まれる物標が投影された画像が生成される。一方、本実施形態に係る水中探知システム1では、ユーザからの所定指示があった場合には、処理装置5及びスキャニングソナー10等が以下で説明するような動作を行うことにより、自船付近の3次元的領域Z2に含まれる物標が投影された画像が生成される。なお、ここで説明したユーザの所定指示とは、図3のドットハッチングで示されるような3次元的領域Z2に含まれる物標が投影された画像を生成させる指示である。以下では、この所定指示を、3次元領域画像生成指示と称する。
図6は、処理装置5の構成を示すブロック図である。処理装置5は、第2制御部20と、第2ビーム形成部21と、フィルタ部22と、第2画像生成部23とを有している。
第2制御部20は、ユーザによる3次元領域画像生成指示を受けて、送信回路部7aが有する複数の送信回路のそれぞれを適宜、制御することにより、送信回路部7aに第2駆動信号を生成させる。第2制御部20は、例えば送受波器2の形状が円筒形である場合には、鉛直方向のシェーディング係数の関数がシンク関数になるように、駆動信号の振幅と位相とを制御する。
第2ビーム形成部21には、直交検波部13からの第2複素信号が入力される。第2ビーム形成部21は、特定の複数の超音波振動子から得られた第2複素信号にビーム形成処理(具体的には、整相加算)を行って、特定の方向に鋭い指向性を有する単一の超音波振動子によって得られるものと等価な信号である第2ビーム信号を生成する。第2ビーム形成部21は、ビーム形成処理を行う対象となる超音波振動子の組合せを変えながらこの処理を繰り返し行うことによって、各方位に指向性を有する多数の第2ビーム信号を生成する。第2ビーム形成部21は、第2送信波のビーム幅θ2よりも狭いビーム幅を有する第2ビーム信号を生成し、そのチルト角を徐々に変えることにより、第2送信波が送波された範囲をスキャンする。なお、これらのビーム信号に基づいて生成される各3次元領域画像用データ(詳しくは後述する)の位置情報は、第2送信波が送波されてから受波されるまでの時間から得られる送受波器2から反射対象までの距離、及び第2ビーム信号の方位、に基づいて算出される。
フィルタ部22は、第2ビーム形成部が形成した第2ビーム信号に、帯域制限フィルタ、或いはパルス圧縮フィルタの処理を施すことにより、後述する第2画像(3次元領域画像)を生成するための3次元領域画像用データを生成する。この3次元領域画像用データは、3次元的領域Z2に含まれる各位置から得られた信号であって、各信号が得られた3次元的な位置及びエコー強度を情報として有している。
第2画像生成部23は、フィルタ部22で生成された3次元領域画像用データの振幅(具体的には、複素信号の絶対値)に基づいて、自船周囲における物標の分布を示す画像を生成する。具体的には、第2画像生成部23は、3次元的領域Z2(図3参照)から得られる信号に基づいて、第2画像としての3次元領域画像を生成する。
図7は、上側水平面画像H2Uの一例を模式的に示す図である。また、図8は、下側水平面画像H2Lを生成する過程で生成される下方視水平面画像H2L’を模式的に示す図である。また、図9は、下側水平面画像H2Lの一例を模式的に示す図である。本実施形態では、第2画像生成部23は、3次元領域画像として、図7に一例として示す上側水平面画像H2U、及び図9に一例として示す下側水平面画像H2L、を生成する。
図10は、第2画像生成部23が生成する上側水平面画像H2U及び下側水平面画像H2Lの生成過程を模式的に示す図である。図10では、3次元直交座標にプロットされた3次元領域画像用データSgが所定平面(具体的には、上下前後方向に拡がる平面)で切断された断面が図示されている。図10に示す3次元領域画像用データSgは、上述した場合と同様、赤色で示された(図10では高密度のドットハッチングが付された)高エコー強度エリアSHと、緑色で示された(図10では中密度のドットハッチングが付された)中エコー強度エリアSMと、青色で示された(図10では低密度のドットハッチングが付された)低エコー強度エリアSLと、で構成される。
上側水平面画像H2Uは、3次元領域画像用データSgが該3次元領域画像用データSgよりも上方に位置する上側水平面PHUに投影されることにより生成される。一方、下側水平面画像H2Lは、3次元領域画像用データSgが該3次元領域画像用データSgよりも下方に位置する下側水平面PHLに投影されることにより生成される。
より詳しくは、第2画像生成部23は、以下のようにして上側水平面画像H2Uを生成する。具体的には、第2画像生成部23は、図10を参照して、3次元領域画像用データSgを上方から視た場合において、最も手前側(上側)に見える色を上側水平面PHUに付すことにより、上側水平面画像H2Uを生成する。但し、本実施形態では、緑色及び青色で示されるエリアSM,SLについて適当な透過度を設定することにより、手前側が青色で覆われている緑色のエリアSMが上側水平面PHUに投影され、手前側が青色及び緑色の少なくともいずれか一方に覆われている赤色のエリアSHが上側水平面PHUに投影される。なお、手前側が青色及び緑色の少なくともいずれか一方に覆われている赤色のエリアSHについては、赤色とは別の色(例えば一例として黄土色)で表示される。これにより、図7に示すような上側水平面画像H2Uが生成される。
また、第2画像生成部23は、以下のようにして下側水平面画像H2Lを生成する。まず、第2画像生成部23は、下側水平面画像H2Lの基となる下方視水平面画像H2L’を生成する。
具体的には、第2画像生成部23は、図10を参照して、3次元領域画像用データSgを下方から視た場合において、最も手前側(下側)に見える色を下側水平面PHLに付すことにより、下方視水平面画像H2L’を生成する。但し、本実施形態では、上述した場合と同様、緑色及び青色で示されるエリアSM,SLについて適当な透過度を設定することにより、手前側が青色で覆われている緑色のエリアSMが下側水平面PHLに投影され、手前側が青色及び緑色の少なくともいずれか一方に覆われている赤色のエリアSHが下側水平面PHLに投影される。なお、手前側が青色及び緑色の少なくともいずれか一方に覆われている赤色のエリアSHについては、赤色とは別の色(例えば一例として黄土色)で表示される。これにより、図8に示すような下方視水平面画像H2L’が生成される。
そして、第2画像生成部23は、下方視水平面画像H2L’に基づき、下側水平面画像H2Lを生成する。具体的には、第2画像生成部23は、図8を参照して、下方視水平面画像H2L’における、自船Sに対応する位置を通り且つ前後方向に延びる前後軸Lに対して、下方視水平面画像H2L’を鏡映させる。これにより、下側水平面画像H2Lが生成される。
第2表示装置6には、第2画像生成部23によって生成された3次元領域画像が表示される。本実施形態の場合、第2表示装置6には、上側水平面画像H2U及び下側水平面画像H2Lが表示される。
[水中探知システムの動作]
図11は、水中探知システム1の動作を説明するためのフローチャートである。以下では、図11を参照して、水中探知システム1が有するスキャニングソナー10及び処理装置5の動作を説明する。
まず、水中探知システム1が起動されると、スキャニングソナー10が通常動作を開始する(ステップS1)。スキャニングソナー10の通常動作とは、以下で説明するような一連の動作である。通常動作では、まず、送受波器2から狭いビーム幅θ1を有する第1送信波が送波され、その反射波が送受波器2によって受波される。送受波器2によって受波された反射波が、受信機8の各構成要素によって処理されることにより、水平モード画像H1及び垂直モード画像V1が生成される。第1表示装置4には、図5に示すように、これらの水平モード画像H1及び垂直モード画像V1が表示される。なお、垂直モード画像V1を生成するために送信される送信波は、鉛直方向におけるビーム幅が比較的広い送信波である。
上述のような通常動作中において、ユーザによる3次元領域画像生成指示がない場合(ステップS3のNo)、スキャニングソナー10は引き続き通常動作を行う。一方、ユーザによる3次元領域画像生成指示があった場合(ステップS3のYes)、水中探知システム1は、以下のステップS4からステップS6で示すように動作する。具体的には、ステップS2で3次元領域画像生成指示があると、第2制御部20が送信回路部7aに第2駆動信号を生成させる。そうすると、ステップS4では、送受波器2がその第2駆動信号に基づき第2送信波を送波する。第2送信波の反射波は、送受波器2によって受波された後、アナログ部11、A/D変換部12、及び直交検波部13によって処理され、第2複素信号が生成される(ステップS5)。これらの第2複素信号は、生成される毎に、或いは記憶部(図示省略)に一旦記憶された後にまとめて、処理装置5の第2ビーム形成部21に転送される(ステップS6)。
なお、ステップS6において、第2複素信号が処理装置5へ転送される時間の少なくとも一部と、通常動作中における第1画像が生成される時間の少なくとも一部とは、重なっている。本実施形態では、第2複素信号の転送処理と通常動作とが並行して行われる。当該第2複素信号の転送処理を行う間にスキャニングソナー10が通常動作を行うことにより、通常動作時に生成される画像(具体的には、水平モード画像H1及び垂直モード画像V1)の更新レートをほとんど低下させることなく、3次元領域画像を生成するためのデータの転送処理を行うことができる。
ステップS7では、第2複素信号を受けた処理装置5が、該第2複素信号の処理を行う。具体的には、ステップS7では、第2ビーム形成部21によって第2複素信号から第2ビーム信号が生成され、フィルタ部22によってその第2ビーム信号に対してフィルタ処理が施された3次元領域画像用データSgが生成される。そして、その3次元領域画像用データSgに基づいて、上側水平面画像H2U及び下側水平面画像H2Lが生成される。このように生成された上側水平面画像H2U及び下側水平面画像H2Lは、第2表示装置6に表示される(ステップS8)。その後、ユーザによる3次元領域画像生成の停止指示がない場合(ステップS9のNo)、3次元領域画像の生成が引き続き行われる。一方、ユーザによる3次元領域画像生成の停止指示があった場合(ステップS9のYes)、3次元領域画像の生成が停止される。なお、第2画像(上側水平面画像H2U及び下側水平面画像H2L)が生成される時間の少なくとも一部と、通常動作中における第1画像が生成される時間の少なくとも一部とは、重なっている。これにより、各画像を並行して生成できるため、各画像の更新レートの低下を防止できる。
ところで、従来より、超音波ビームを水中に送信して3次元的領域をスキャンし、受信したエコーに基づいてスキャン領域内の水中情報(例えば魚群)を3次元画像として表示する水中探知装置(例えばソナー)が開示されている。特許文献1に開示されるソナーでは、所定の3次元的領域に対して無指向性の送信ビームが形成される。一方、受信時には、ビーム幅が狭い受信ビームとしてのペンシルビームが形成され、その受信ビームが3次元的領域内においてスキャンされる。
また、一般的なスキャニングソナーでは、鉛直方向のビーム幅が狭い送信波が自船を中心とした全方位に一度に送波された後、同じく鉛直方向のビーム幅が狭い受信ビームが自船を中心として回転させられる。これにより、ソナーが搭載された自船を基準とした所望のチルト角方向付近に存在する魚群を探知することができる。
上述した一般的なスキャニングソナーを用いて3次元的な広がりを持つ領域を探知しようとした場合、鉛直方向に狭いビーム幅を有するビームのチルト角を徐々に変化させることにより、3次元的領域をスキャンすることが考えらえる。しかしそうすると、通常のスキャニングソナーと比べて演算負荷が極端に大きくなる。そうすると、装置が大型化し、製造コストも高くなってしまう。一方、装置を大型化することなく上述のように3次元領域をスキャンすることも考えられるが、そうすると、画像の更新周期が長くなるため、リアルタイムな情報を得にくい、という問題がある。
[効果]
この点につき、本実施形態に係る水中探知システム1では、鉛直方向において比較的狭いビーム幅θ1を有する第1送信波の反射波から得られた第1受信信号に基づいて、従来のスキャニングソナーと同程度の更新速度で水平モード画像H1及び垂直モード画像V1を生成することができる。しかも、水中探知システム1では、第1送信波のビーム幅θ1よりもビーム幅θ2が広い第2送信波の反射波から得られた第2受信信号に基づいて、3次元的領域Z2に含まれる物標の画像H2U,H2Lをも得ることができる。こうすると、従来と同等の更新速度で水平モード画像H1及び垂直モード画像V1を得つつ、3次元的領域Z2に含まれる物標の分布についても把握することができる。
従って、水中探知システム1によれば、システム全体のコストを抑えつつ、ユーザにとって利便性の高い水中探知システムを提供することができる。
また、水中探知システム1によれば、第1送信波の反射波から得られた第1受信信号に基づいて2次元領域画像(本実施形態の場合、水平モード画像H1及び垂直モード画像V1)が生成される一方、第1送信波とはビーム幅が異なる第2送信波の反射波から得られた第2受信信号に基づいて3次元領域画像(本実施形態の場合、上側水平面画像H2U及び下側水平面画像H2L)が生成される。
水中探知システムにおいて、物標を探知できるエリアは送信波のビーム幅に依存するため、水中探知システム1のようにビーム幅が広い送信波を用いて物標探知を行えば、3次元的な広がりを持つ空間に含まれる物標を探知できる。そして、その3次元空間で探知された物標を3次元領域画像に投影させることができる。よって、水中探知システム1によれば、それぞれが異なるビーム幅を有する各送信波に対応する各受信信号に基づいて、異なる特性を有するエコー画像を生成することができる。具体的には、狭いビーム幅θ1を有する第1送信波によって得られた2次元領域画像によれば、空間的な拡がりのない2次元的な領域(本実施形態の場合、2次元的領域Z1)から物標を探知できる。これにより、物標の位置を正確に把握できる。一方、広いビーム幅θ2を有する第2送信波によって得られた3次元領域画像によれば、空間的な拡がりを有する3次元的な領域(本実施形態の場合、3次元的領域Z2)から物標を探知できる。これにより、広範囲な空間において物標を探知できる。すなわち、水中探知システム1によれば、例えばユーザが3次元領域画像を確認して所望の魚群の位置を大まかに把握した後、2次元領域画像を確認してその魚群のより正確な位置を把握することなどが可能となるため、利便性に優れた水中探知システムを提供することができる。
また、水中探知システム1によれば、第1送信波のビーム幅が20度未満(具体的には、約8度)に設定される一方、第2送信波のビーム幅が20度以上(具体的には、約30度)に設定される。これにより、第1送信波によって探知される2次元的領域、及び第2送信波によって探知される3次元的領域を設定することができる。
また、水中探知システム1によれば、従来から知られているスキャニングソナー10に、PC等で構成された処理装置5を接続することにより、容易に3次元的領域から得られた信号に基づく画像(3次元領域画像)を生成することが可能になる。すなわち、水中探知システム1によれば、大幅な設備の変更を伴うことなく、低コストで、3次元領域画像を生成可能な水中探知システムを提供できる。
また、水中探知システム1では、スキャニングソナー10から処理装置5へ受信信号が転送されている間、スキャニングソナー10が通常動作を行う。これにより、通常動作時に生成される2次元領域画像の更新レートをほとんど低下させることなく、3次元領域画像を生成するためのデータの転送処理を行うことができる。
また、水中探知システム1では、2次元的領域Z1から得られたエコー信号に基づく2次元領域画像が第1表示装置4に表示される一方、3次元領域画像が第2表示装置6に表示される。これにより、ユーザは、各領域Z1,Z2から得られた画像を視認することができる。
また、水中探知システム1では、処理装置5がPC(パーソナルコンピュータ)で構成されている。これにより、比較的安価に処理装置5を構成することができる。
また、水中探知システム1では、第2送信波が送波される頻度は、第1送信波が送波される頻度よりも少ない。これにより、スキャニングソナー10の更新レートを大きく低下させることなく、3次元領域画像を生成することができる。
また、水中探知システム1では、第1画像は、第1送信波が送波される2次元的領域Z1に含まれる物標のエコーに基づいて得られる画像であり、第2画像は、第2送信波が送波される3次元的領域Z2に含まれる物標のエコーに基づいて得られる画像である。これにより、水中探知システム1では、3次元的なボリュームの少ない2次元的領域Z1から得られたエコーに基づく第1画像と、3次元的領域Z2から得られたエコーに基づく第2画像とを得られるため、利便性に優れた水中探知システムを提供できる。
ところで、従来の水中探知システムの表示装置では、探知領域から得られた受信信号に基づいて生成された画像用信号を上方から視た水平面画像が表示されていた。しかしこの場合、魚群が上下方向に重なって存在していた場合に、下側の魚群を見逃してしまう可能性がある。
この点につき、水中探知システム1では、鉛直方向に魚群が重なって位置している場合であっても、上側の魚群の位置については上側水平面画像H2Uで把握でき、且つ下側の魚群の位置については下側水平面画像H2Lで把握できる。具体的には、図7及び図9を参照して、図7におけるエコー像A、及び図9におけるエコー像Cはともに魚群からのエコーである。本水中探知システム1のように、上側水平面画像H2U及び下側水平面画像H2Lを表示装置に表示することで、上下方向に重なる2つの魚群をともに把握することができる。すなわち、水中探知システム1によれば、魚群の探知漏れを防止できる。なお、図7におけるエコー像Bは、自船の航跡を示すエコー像である。
ところで、3次元領域画像用データSgを単に下方から視た下方視水平面画像H2L’では、その画像において、自船右舷側の魚群が画面上における左側に表示され、自船左舷側の魚群が画面上における右側に表示される。そうすると、ユーザがこの画像を見た場合、魚群の位置を直感的に把握しにくくなる。具体的には、下方視水平面画像H2L’を示す図8におけるエコー像Cは、実際には自船の左舷側に位置しているが、下方視水平面画像H2L’では右側に位置することになる。
この点につき、水中探知システム1では、上述のような下方視水平面画像H2L’を鏡映させることにより、下側水平面画像H2Lを生成している。こうすると、自船右舷側の魚群が画面上における右側に表示され、自船左舷側の魚群が画面上における左側に表示される。これにより、ユーザが魚群の位置を直感的に把握しやすくなる。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
(1)図12は、変形例に係る水中探知システムの第2表示装置に表示される3次元領域画像の一例を示す図である。上述した実施形態では、3次元領域画像として、上側水平面画像H2U及び下側水平面画像H2Lの双方を第2表示装置6に表示したが、これに限らず、上側水平面画像H2U及び下側水平面画像H2Lのいずれか一方だけであってもよい。或いは、3次元領域画像として、図12に示すような斜視画像H2Tを表示してもよい。斜視画像H2Tとは、3次元領域画像用データSgを、鉛直面及び水平面の双方に交差する傾斜面に投影して得られた画像である。すなわち、斜視画像H2Tとは、3次元領域画像用データSgを斜め方向から視た画像である。このように、斜視画像H2Tを第2表示装置6に表示することで、魚群の位置をより直感的に把握しやすくなる。なお、斜視画像H2Tは、3次元領域画像用データSgを斜め上方から視た画像であってもよく、又は、3次元領域画像用データSgを斜め下方から視た画像であってもよい。
(2)図13は、変形例に係る水中探知システム1aの構成を示すブロック図である。上記実施形態では、従来から知られているスキャニングソナー10とは別体のPC等で構成された処理装置5をスキャニングソナー10と接続することにより水中探知システム1を構成する例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、図13に示すように、上記実施形態に係る水中探知システム1で説明した処理装置5が有する各構成要素を、スキャニングソナー10a内に組み込んだ構成としてもよい。図13に示す送受信装置3bは、送信機7cに第2制御部20が組み込まれ、受信機8aに第2画像生成部23が組み込まれた構成を有している。なお、図13での図示は省略しているが、上記実施形態における第2ビーム形成部21及びフィルタ部22は、受信機8aに組み込まれている。また、水中探知システム1aでは、2次元領域画像及び3次元領域画像が、第1表示装置4に表示される。
以上のように、本変形例に係る水中探知システム1aによれば、上記実施形態に係る水中探知システム1で必要であったPC等で構成された処理装置5が不要となり、この処理装置5を構成する各構成要素をスキャニングソナー10a中に組み込むことができる。これにより、水中探知システムを小型化することができる。
(3)図14は、変形例に係る水中探知システムの第2表示装置に表示される2つの3次元領域画像の一例を示す図であって、図14(A)は上側水平面画像H2Uを示す図、図14(B)は鉛直面画像V2を示す図である。
本変形例の第2表示装置には、上側水平面画像H2U及び後方視鉛直面画像V2Bが表示される。後方視鉛直面画像V2Bは、3次元領域画像用データSgが、該3次元領域画像用データSgよりも後方に位置していて上下左右方向に拡がる鉛直面に投影されることにより生成される画像である。
そして、本変形例に係る水中探知システムでは、図14(A)を参照して、ユーザが、第2表示装置に表示された上側水平面画像H2Uにおける任意の1点(例えば図14(A)における点P1)をマウス等の操作機器を用いて選択すると、双方の画像H2U,V2Bにカーソルが表示される。具体的には、上側水平面画像H2Uには、ユーザによって選択された点P1を通過する上側水平面十字カーソルCS1(第1マーク)が表示されるとともに、後方視鉛直面画像V2Bには、点P1に対応する位置を通過し画面上において上下方向に延びる垂直カーソルCSBH(第2マーク)が表示される。上側水平面十字カーソルCS1は、画面上において上下方向に延びる垂直バーBvと、左右方向に延びる水平バーBhとで構成されている。
以上のように、本変形例によれば、3次元領域画像用データSgに基づいて、上側水平面画像H2U及び鉛直面画像V2が生成されるため、それらを対応付けて視認することにより、所望の魚群の水中における位置を把握することができる。
また、本変形例によれば、ユーザによって選択された点P1を通過する十字カーソルCS1が上側水平面画像H2Uに表示されるとともに、その点P1に対応する位置を通過する垂直カーソルCSBHが後方視鉛直面画像V2Bに表示される。これにより、それらのカーソルを基準として、所望の魚群の位置を正確に把握することができる。
(4)図15は、変形例に係る水中探知システムの第2表示装置に表示される上側水平面画像H2Uの一例を示す図である。また、図16は、図15に示す上側水平面画像H2Uに対応して表示される鉛直面画像V2であって、図16(A)は後方視鉛直面画像V2B、図16(B)は左方視鉛直面画像V2Lである。
本変形例の第2表示装置には、上側水平面画像H2U、後方視鉛直面画像V2B、及び左方視鉛直面画像V2Lが表示される。左方視鉛直面画像V2Lは、3次元領域画像用データSgが、該3次元領域画像用データSgよりも左方(左舷側)に位置していて上下前後方向に拡がる鉛直面に投影されることにより生成される。
そして、本変形例に係る水中探知システムでは、図15を参照して、ユーザが、第2表示装置に表示された上側水平面画像H2Uにおける任意の1点(例えば図15における点P2)をマウス等の操作機器を用いて選択すると、上述した3つ全ての画像H2U,V2B,V2Lにカーソルが表示される。具体的には、上側水平面画像H2Uには、ユーザによって選択された点P2を通過する上側水平面十字カーソルCS1(第1マーク)が表示される。また、後方視鉛直面画像V2B及び左方視鉛直面画像V2Lには、それぞれ、点P2に対応する位置を通過し画面上において上下方向に延びる垂直カーソルCSBH,CSLH(第2マーク)が表示される。
以上のように、本変形例によれば、3次元領域画像用データSgに基づいて、上側水平面画像H2U、後方視鉛直面画像V2B、及び左方視鉛直面画像V2Lが生成されるため、それらを対応付けて視認することにより、所望の魚群の水中における位置をより正確に把握することができる。
また、本変形例によれば、ユーザによって選択された点P2を通過する十字カーソルCS1が上側水平面画像H2Uに表示されるとともに、その点P2に対応する位置を通過する垂直カーソルCSBH,CSLHが後方視鉛直面画像V2B及び左方視鉛直面画像V2Lに表示される。これにより、それらのカーソルを基準として、所望の魚群の位置をより正確に把握することができる。
(5)図17は、変形例に係る水中探知システムの第2表示装置に表示される後方視鉛直面画像V2Bの一例を示す図である。また、図18は、図17に示す後方視鉛直面画像V2Bに対応して表示される上側水平面画像H2Uである。また、図19は、図17に示す後方視鉛直面画像V2Bに対応して表示される下側水平面画像H2Lである。
本変形例では、ユーザが、魚群を探知したい所望の深さ範囲を入力すると、その深さ範囲を示す深さ範囲目盛Rが後方視鉛直面画像V2Bに表示されるとともに、上側水平面画像H2U及び下側水平面画像H2Lについては、その深さ範囲に含まれるエコー像のみが表示される。こうすると、ユーザが探知したい深さ範囲以外に存在する魚群、或いは不要なエコー像(例えば図7における航跡に起因するエコー像B)を表示画面から除外することができるため、所望の魚群のエコー像については確実に表示しつつ、表示不要なエコー像を画面上から削除することができる。
(6)図20は、変形例に係る水中探知システムの第2表示装置に表示される上側水平面画像H2Uの一例を示す図である。また、図21は、図20に示す上側水平面画像H2Uに対応して表示される鉛直面画像V2であって、図21(A)は後方視鉛直面画像V2B、図21(B)は左方視鉛直面画像V2Lである。
本変形例では、ユーザが、魚群を探知したい所望の方位範囲を入力すると、その方位範囲を示す直線L1及び直線L2が上側水平面画像H2Uに表示されるとともに、後方視鉛直面画像V2B及び左方視鉛直面画像V2Lについては、その方位範囲に含まれるエコー像のみが表示される。こうすると、ユーザが探知したい方位範囲以外に存在する魚群を表示画面から除外することができるため、所望の魚群のエコー像については確実に表示しつつ、表示不要なエコー像を画面上から削除することができる。
(7)上述した実施形態では、自船を基準とした所定の距離範囲までに含まれるエコー像を表示する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ユーザが、魚群を探知したい所望の距離範囲を入力すると、その距離範囲に含まれるエコー像のみが各3次元領域画像に表示されるような水中探知システムを構成してもよい。
(8)上述した実施形態及び変形例では、各画像での着色をエコーレベルに対応させて表示したが、これに限らない。具体的には、図示は省略するが、各画像での着色を深度に対応させてもよい。こうすると、例えば水平面画像と斜視画像とを表示することで、各魚群の深度を容易に把握できる。
(9)上述した実施形態では、自船を基準とした所定の距離範囲までに含まれる受信信号の全てを対象として信号処理を行う例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、例えばユーザが、予め、魚群を探知したい距離範囲、方位範囲、深度範囲等を入力し、それらの範囲に含まれるエコー信号のみを信号処理の対象としてもよい。これにより、ユーザが必要としない範囲から得られたエコー信号の信号処理を省略することができるため、送受信装置にかかる演算負荷を小さくすることができる。
(10)図22は、変形例に係る水中探知システムの第2表示装置に表示される上側水平面画像H2Uの一例を示す図である。また、図23は、図22に示す上側水平面画像H2Uに対応して表示される鉛直面画像V2であって、図23(A)は後方視鉛直面画像V2B、図23(B)は左方視鉛直面画像V2L、である。また、図24は、本変形例に係る水中探知システムの第2表示装置に表示される下側水平面画像H2Lの一例を示す図である。また、図25は、図24に示す下側水平面画像H2Lに対応して表示される鉛直面画像V2であって、図25(A)は後方視鉛直面画像V2B、図25(B)は左方視鉛直面画像V2L、である。
本変形例では、ユーザが、いずれかの3次元領域画像において、その位置を同定したい魚群のエコー像をマウスカーソル等でクリックした場合、他の3次元領域画像においてその位置が表示される。例えば、図22及び図23を参照して、ユーザが、図22に示す上側水平面画像H2Uの点P3の位置をクリックすると、該上側水平面画像H2Uの点P3を中心とする上側水平面十字カーソルCS1(第1マーク)が表示される。この上側水平面十字カーソルCS1は、画面上において上下方向に延びる垂直バーBvと、左右方向に延びる水平バーBhとで構成されている。このとき、図23(A)に示す後方視鉛直面画像V2Bにおける点P3に対応する座標位置に、該座標位置を中心とする後方視鉛直面十字カーソルCS2(第2マーク)が表示され、且つ、図23(B)に示す左方視鉛直面画像V2Lにおける点P3に対応する座標位置に、該座標位置を中心とする左方視鉛直面十字カーソルCS3(第2マーク)が表示される。これにより、各3次元領域画像に表示される魚群の対応関係をより容易に把握することができる。なお、点P3の深さ位置としては、選択された点P3が含まれるエコー強度範囲(図22に示す例の場合、クロスハッチングで示されるエコー強度範囲)における最も上方側の深さ位置が選択される。
同様に、図24及び図25を参照して、ユーザが、図24に示す下側水平面画像H2Lの点P4の位置をクリックすると、該下側水平面画像H2Lの点P4を中心とする下側水平面十字カーソルCS4(第1マーク)が表示される。このとき、図25(A)に示す後方視鉛直面画像V2Bにおける、点P4に対応する座標位置に、該座標位置を中心とする後方視鉛直面十字カーソルCS2(第2マーク)が表示され、且つ、図25(B)に示す左方視鉛直面画像V2Lにおける、点P4に対応する座標位置に、該座標位置を中心とする左方視鉛直面十字カーソルCS3(第2マーク)が表示される。なお、点P4の深さ位置としては、選択された点P4が含まれるエコー強度範囲(図24に示す例の場合、クロスハッチングで示されるエコー強度範囲)における最も下方側の深さ位置が選択される。
なお、ここでは、上側水平面画像H2U又は下側水平面画像H2Lにおいてある位置が選択された場合、後方視鉛直面画像V2B及び左方視鉛直面画像V2Lにおける、前記選択された位置に対応する位置に各十字カーソルCS2,CS3が表示される例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、複数の3次元領域画像のうちのいずれかにおいてある位置が選択された場合、他の3次元領域画像における、前記選択された位置に対応する位置に、第2十字カーソルが表示されてもよい。
また、ここでは、第1マーク及び第2マークが十字カーソルである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば一例として、第1マーク及び第2マークは、○印或いは×印等であってもよい。
(11)図26は、上記実施形態に係る水中探知システム1の他の動作例を示すフローチャートである。上述した実施形態では、図11を参照して、ユーザによる3次元領域画像生成の停止指示があるまで、3次元領域画像の生成が引き続き行われる例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、図26のフローチャートに示すように、一旦3次元領域画像が生成された後、次にユーザから新たに3次元領域画像生成指示があるまで、その3次元領域画像を更新しないようにしてもよい。或いは、3次元領域画像の更新周期をユーザが指定できるようにしてもよい。
(12)上述した実施形態に係る水中探知システム1に、自船のロール角及びピッチ角を検出可能なセンサを設け、処理装置5が、それらのセンサによって検出されたロール角及びピッチ角に応じた座標変換が施された座標上に3次元領域画像を表示してもよい。これにより、船体動揺の影響を受けることなく、魚群の空間分布を正しく把握できる。
(13)上述した実施形態に係る水中探知システム1では、垂直モード画像V1を生成するための送信波として、鉛直方向に比較的広いビーム幅を有する送信波を用いた。この送信波は、垂直モード画像V1を生成するために送波される送信波である。しかし、この送信波を送信せずとも、垂直モード画像V1を生成するための送信波として、3次元領域画像を生成するために送波された第2送信波を用いてもよい。第2送信波は、鉛直方向におけるビーム幅が比較的広い送信波であるため、垂直モード画像V1を生成するための送信波としても流用することができる。このように、3次元領域画像を生成するための第2送信波を、垂直モード画像生成用の送信波として流用することにより、垂直モード画像V1を生成するためだけに送波された送信波を送波する必要がなくなる。これにより、スキャニングソナーの通常動作時における画像の更新レートの低下を抑制しつつ、3次元領域画像を表示できる。