JP2020148435A - 全熱交換素子用紙及び全熱交換素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、透湿性、耐湿性、強度と気体遮蔽性に優れた全熱交換素子用紙を提供することである。【解決手段】基材シートを含有してなる全熱交換素子用紙において、基材シートが吸放湿性合成繊維と天然パルプとを含有し、天然パルプの長さ加重平均繊維長が0.7〜1.7mmであり、天然パルプの繊維長ヒストグラムにおいて、0.5〜1.5mmの間に最大頻度ピークを有し、1.0mm以上の繊維長を有する繊維の割合が25.0%以上であり、基材シートに含まれる全繊維成分に対して、吸放湿性合成繊維の含有率が2〜10質量%であることを特徴とする全熱交換素子用紙。【選択図】なし
Description
本発明は、ビル、事務所、店舗、住居等で、快適な空間を維持するために、室内に新鮮な外気を供給すると共に、室内の汚れた空気を排出する全熱交換器に搭載される、顕熱(温度)と潜熱(湿度)の交換を同時に行う全熱交換素子と、全熱交換素子に使用される全熱交換素子用紙に関するものである。
室内の空調において、冷暖房効率に優れた換気方法として、新鮮な外気を供給する給気流と室内の汚れた空気を排出する排気流との間で、温度(顕熱)と共に湿度(潜熱)の交換も同時に行う全熱交換がよく知られている。
全熱交換を行う全熱交換素子では、給気流と排気流が、全熱交換素子用紙を挟んで、互いに独立した流路で形成されており、その間で全熱交換が行われるため、このような全熱交換素子を備えた全熱交換器で室内の換気を行えば、冷暖房に必要なエネルギーを大きく抑制することが可能となる。
全熱交換素子には、直交流型と対向流型があり、全熱交換用紙を加工して作製される。いずれも専用の機械を用いて作製されるが、特に、対向流型の場合、全熱交換素子用紙に、室内及び室外の空気を通すための流路を確保するための樹脂枠を取り付ける工程がある。一般的に作業効率の観点から、射出成型機が用いられるが、この時、全熱交換素子用紙の強度が不足すると、射出される樹脂の圧力により、全熱交換素子用紙が破れてしまい、全熱交換素子として全く機能しなくなる。
また、これまでの全熱交換素子用紙は、多孔質系素材を用いているため、例えば、二酸化炭素などの汚れた気体成分の通気性も有していて、全熱交換する際に、給気と排気が全熱交換素子内部で混合し、換気の効率が低下するという欠点を有していた。この給気と排気の混合は、全熱交換器にとっては、致命的な欠陥である。給気と排気が混合する全熱交換器では、室内外の空気をエネルギーで回収しながら交換しているのではなく、ただ単に室内の汚れた空気をかき回しているだけという評価になりかねない。このように、室内外の空気が混合しているようでは、換気の目的が果たせず、全熱交換器として全く機能しなくなる。
また、全熱交換器の普及に伴い、様々な場所や環境下に、全熱交換器が設置されるようになってきた。給気流と排気流との温度差や湿度差が小さい場合には問題ないが、例えば、外気の温度が低い寒冷地の結露が起こりやすい環境下や室内の湿度が高い浴室など、給気流と排気流との温度差や湿度差が大きい環境下では、全熱交換を行うに際し、全熱交換素子用紙が高湿度の条件に曝される場合がある。このような状態が続くと、全熱交換素子用紙は、多量の水分を保持することができなくなり、全熱交換素子用紙から水が滴下する、いわゆる「水垂れ」を発生する場合がある。水垂れを発生した場合、吸湿剤の種類によっては、補強材として使用している金属製の外枠に錆が発生し、また、水垂れが継続する場合は、全熱交換素子が型崩れを起こし、全熱交換器として全く機能しなくなる。
このような理由から、全熱交換素子を作製する場合に全熱交換素子用紙が破れることがない強度に優れ、給気と排気が混合することがない気体遮蔽性に優れ、水垂れの発生がない耐湿性に優れた全熱交換素子用紙が求められている。このような要望に対し、繊維径が0.3〜50μm、厚みが0.1〜1.0mmのガラス繊維や合成繊維または天然繊維などからなる不織布あるいは織り布のシート基材表面にバインダー、溶融繊維あるいは接着パウダーの接着媒体を付けて、その上に繊維径が0.01〜0.5μmの超極細繊維の薄い層を重ね乾燥固着して一体にしたシート部材(例えば、特許文献1)が開示されている。しかし、シート基材の強度は保てるものの、経済面に問題があり、気体遮蔽性と耐湿性に関しては効果が見られなかった。
また、パーチメント処理された繊維基材と、該繊維基材中に含まれる吸湿剤とを有し、かつ、透湿度が1000g/m2・24hr以上である透湿性シート(例えば、特許文献2)が開示されている。しかし、耐湿性には効果がなく、繊維基材の強度と気体遮蔽性には改善の余地があった。また、カナダ変法ろ水度で150ml以下に叩解した天然パルプを含む紙からなる全熱交換素子用紙(例えば、特許文献3)が開示されている。しかし、気体遮蔽性は問題ないものの、十分な強度と耐湿性を得ることはできなかった。また、パルプを主体とする紙基材からなり、該紙基材中に塩化カルシウムが10〜25質量%含まれ、かつ、吸湿率が15〜30%である全熱交換器エレメント用原紙(例えば、特許文献4)が開示されている。しかし、耐湿性を得るには十分とは言えず、強度と気体遮蔽性を両立させるには、改善の余地があった。
また、木材パルプ100質量部中の針葉樹パルプが40質量部以上でショッパーフリーネスでの叩解度が40°SR以上である木材パルプからなる原紙に吸湿剤と防炎剤を含浸させた全熱交換素子用紙であって、該全熱交換素子用紙のJIS Z−0208に準拠した透湿度試験による透湿度が6,000g/m2・24時間以上で、JIS Z−2150に準拠した防炎試験による炭化長が10cm以下であり、JIS P−8117に準拠した透気度試験による透気度が500秒/100ml以上であると共に、二酸化炭素の移行率が1%以下である全熱交換素子用紙(例えば、特許文献5)が開示されている。しかし、耐湿性には効果がなく、強度と気体遮蔽性を両立させるには、改善の余地があった。
さらに、繊維性多孔質部材に表面処理剤を含む薬剤を含有させた透湿性気体遮蔽物を用いた全熱交換器(例えば、特許文献6及び7)が開示されている。特許文献6には、ホワイト・カーボンとセルロース繊維を混抄した繊維性多孔質部材に吸湿剤と難燃剤のうち少なくとも吸湿剤を含む高分子物質を含浸または塗布することにより含有させた透湿性気体遮蔽物を用いて全熱交換すべき二種の気流を仕切ったことを特徴とする全熱交換器が開示されている。また、特許文献7には、極細性多孔質部材に表面処理剤を含む薬剤を含有せしめた透湿性気体遮蔽物を用いて全熱交換すべき二種の気流を仕切ったことを特徴とする全熱交換器が開示され、表面処理剤として粒径が0.01〜0.1μmのコロイダルアルミナとコロイダルシリカが記載されている。しかしながら、特許文献6及び7で開示されている薬剤を含有させた多孔質部材を用いても、気体遮蔽性と強度、耐湿性を満足させるには改良の余地があった。
本発明の課題は、全熱交換器用の素子を構成するための全熱交換素子用紙において、透湿性、耐湿性、強度と気体遮蔽性に優れた全熱交換素子用紙を提供することである。
本発明に係る課題は、下記手段によって解決することができる。
(1)基材シートを含有してなる全熱交換素子用紙において、基材シートが吸放湿性合成繊維と天然パルプとを含有し、天然パルプの長さ加重平均繊維長が0.7〜1.7mmであり、天然パルプの繊維長ヒストグラムにおいて、0.5〜1.5mmの間に最大頻度ピークを有し、1.0mm以上の繊維長を有する繊維の割合が25.0%以上であり、基材シートに含まれる全繊維成分に対して、吸放湿性合成繊維の含有率が2〜10質量%であることを特徴とする全熱交換素子用紙。
(2)天然パルプの繊維長ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に、0.0〜0.5mmの間にピークを有する上記(1)記載の全熱交換素子用紙。
(3)上記(1)又は(2)に記載の全熱交換素子用紙を使用して形成される全熱交換素子。
(2)天然パルプの繊維長ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に、0.0〜0.5mmの間にピークを有する上記(1)記載の全熱交換素子用紙。
(3)上記(1)又は(2)に記載の全熱交換素子用紙を使用して形成される全熱交換素子。
本発明の全熱交換素子用紙は、基材シートが吸放湿性合成繊維と天然パルプとを含有し、天然パルプの長さ加重平均繊維長が0.7〜1.7mmであり、天然パルプの繊維長ヒストグラムにおいて、0.5〜1.5mmの間に最大頻度ピークを有し、1.0mm以上の繊維長を有する繊維の割合が25.0%以上であり、基材シートに含まれる全繊維成分に対して、吸放湿性合成繊維の含有率が2〜10質量%であり、天然パルプ繊維と吸放湿性合成繊維とが絡み合うように基材シート中に存在することにより、透湿性、耐湿性、強度と気体遮蔽性を良好なものにすることができる。
また、天然パルプの繊維長ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に、0.0〜0.5mmの間にピークを有する全熱交換素子用紙は、強度を損なうことなく、より細かな繊維が、繊維間の隙間を塞ぐことにより、給気と排気の混合を起こさないより優れた気体遮蔽性を有する。
以下、本発明の全熱交換素子用紙について詳細に説明する。
本発明の全熱交換素子用紙における基材シートについて説明する。本発明における基材シートは、天然パルプを原料として、湿式抄紙法にて製造されるシートであることが好ましい。天然パルプとしては、広葉樹晒しクラフトパルプ(略称:LBKP、英文表記:Hardwood Bleached Kraft Pulp)、針葉樹晒しクラフトパルプ(略称:NBKP、英文表記:Softwood Bleached Kraft Pulp)、広葉樹晒しサルファイトパルプ(略称:LBSP、英文表記:Hardwood Bleached Sulfite Pulp)、針葉樹晒しサルファイトパルプ(略称:NBSP、英文表記:Softwood Bleached Sulfite Pulp)、広葉樹未晒クラフトパルプ(略称:LUKP、英文表記:Hardwood Unbleached Kraft Pulp)、針葉樹未晒クラフトパルプ(略称:NUKP、英文表記:Softwood Unbleached Kraft Pulp)等の木材パルプ繊維を単独又は複数配合して使用することが好ましい。その他として、綿、コットンリンター、麻、竹、サトウキビ、トウモロコシ、ケナフ等の植物繊維;羊毛、絹等の動物繊維;レーヨン、キュプラ、リヨセル等のセルロース再生繊維を単独又は複数配合して使用することもできる。
本発明では、図1に示したように、天然パルプの繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.5〜1.5mmの間に最大頻度ピークを有し、1.0mm以上の繊維長を有する割合が25.0%以上である。全熱交換素子用紙から全熱交換素子を作製する工程において、1.0mm以上の繊維を絡み合わせることで、全熱交換素子用紙の強度が強くなると共に、気体遮蔽性も向上する。最大頻度ピークは、0.7〜1.2mmの間にあることがより好ましい。1.0mm以上の繊維長を有する割合が35.0%以上であることがより好ましい。1.0mm以上の繊維長を有する繊維の割合は、強度を強くする点で高い方が望ましいが、60%程度あれば十分である。
また、天然パルプの繊維長ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に、0.0〜0.5mmの間にピーク(第2ピーク)を有する全熱交換素子用紙は、より細かな繊維が、繊維間の隙間を塞ぐことにより、強度を維持しながら、給気と排気の混合を起こさない優れた気体遮蔽性を有する。
本発明の天然パルプの繊維長及び繊維長分布ヒストグラムは、JIS P8226:2006(偏光法)「パルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法」に準じて、OpTest Equipment Inc.Canada社製ファイバークオリティーアナライザーを使用して測定した。
本発明における「繊維長」、「平均繊維長」及び「繊維長分布」とは、上記に従って測定・算出される「長さ加重繊維長」、「長さ加重平均繊維長」及び「長さ加重繊維長分布」を意味する。また、「1.0mm以上の繊維の割合」とは、「1.0mm以上の繊維長を有する繊維の割合」を意味し、上記に従って測定・算出された「長さ加重繊維長分布」において、その中の「1.0mm以上の繊維の割合」を求めた数値を意味する。
天然パルプは、ビーター、PFIミル、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、また、顔料等の分散や粉砕に使用するボールミル、ダイノミル、摩砕装置、高速の回転刃により剪断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間で、剪断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕機、繊維懸濁液に少なくとも20MPaの圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより、繊維に剪断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等が挙げられる。この中でも特に、リファイナーが好ましい。これら叩解、分散設備の種類、処理条件(繊維濃度、温度、圧力、回転数、リファイナーの刃の形状、リファイナーのプレート間のギャップ、処理回数)の調整により、目的の天然パルプの繊維長分布を達成することが可能となる。
本発明の全熱交換素子用紙における基材シートの製法としては、一般的な長網抄紙機、円網抄紙機等を用いて、天然パルプをシート状に形成する湿式抄紙法が挙げられる。
本発明の全熱交換素子用紙における基材シートは、吸放湿性合成繊維を含有している。吸放湿性合成繊維について説明する。吸放湿性合成繊維としては、温度20℃、相対湿度40%RHにおける吸湿率R1(%)と、温度20℃、相対湿度90%RHにおける吸湿率R2(%)との差(吸湿率差R2−R1)が40%以上である繊維を用いることが好ましい。吸湿率R1と吸湿率R2の差が40%未満の場合、目的とする透湿性が得られない場合がある。吸湿率R1と吸湿率R2の差が40%以上の場合は良好な透湿性を得ることができ、55%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。なお、「吸湿率」とは、各条件下で24時間放置して吸湿させた繊維の質量W1とその繊維の絶乾質量W2との差(W1−W2)をその繊維の絶乾質量で除し、100を乗じた値((W1−W2)/W2×100)である。吸湿率R1と吸湿率R2の差の上限値は、200%であることが好ましい。
上記特性を備えた吸放湿性合成繊維の例としては、架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩系繊維、架橋アクリレート系繊維、後加工によりその表面を加水分解させたアクリル繊維、芯部に吸放湿剤を含有させた芯鞘複合型ポリアミド繊維、ポリアルキレンオキサイド変性物からなる芯成分とポリアミドからなる鞘成分で構成された芯鞘複合型ポリアミド繊維などが挙げられる。吸放湿性合成繊維は既に市販されており、例えば、帝人フロンティア社製ベルオアシス(登録商標)、東洋紡社製モイスファイン(登録商標)やユニチカトレーディング社製ハイグラ(登録商標)LUなどを挙げることができる。これらの繊維を単独又は組み合わせて使用することができる。
本発明において、吸放湿性合成繊維の繊維径は5〜40μmが好ましく、より好ましくは10〜35μmであり、さらに好ましくは20〜30μmである。繊維径が5μm未満の場合、十分な透湿性や耐湿性が得られない場合があり、40μm超えの場合、均一な地合の基材シートが得られにくく、気体遮蔽性に劣る場合がある。また、吸放湿性合成繊維の繊維長は1〜20mmが好ましく、より好ましくは2〜10mmであり、さらに好ましくは3〜5mmである。繊維長が1mm未満の場合、十分な透湿性や耐湿性が得られない場合があり、繊維長が20mm超えの場合、均一な地合の基材シートが得られず、気体遮蔽性に劣る場合がある。
本発明において、より高い吸湿性を得るためには、基材シートに含まれる全繊維成分に対して、吸放湿性合成繊維の含有率は2〜10質量%であることが好ましく、3〜5質量%であることがさらに好ましい。吸放湿性合成繊維の含有率が2質量%未満の場合、吸放湿性合成繊維を含有させることによって得られると期待した吸湿性が得られない問題が発生する場合があり、一方、含有率が10質量%を超えた場合、強度と気体遮蔽性が低下する問題が発生する場合がある。
本発明の全熱交換素子用紙における基材シートの製造方法は、特に制限はないが、吸放湿性合成繊維を基材シートにできるだけ均一に含有させることができる湿式抄紙法を用いることが好ましい。即ち、天然パルプと吸放湿性合成繊維を含む水分散スラリーに、必要に応じて、歩留まり助剤等の各種薬品を適宜選択して添加し、通常の湿式抄紙法によって抄紙することで製造できる。その際に使用する抄紙機については、一般的な長網抄紙機、円網抄紙機等を用いることができる。また、抄紙時にはカチオン性高分子等の歩留まり助剤を使用することができる。カチオン性高分子には、例えばカチオン化澱粉、カチオン性ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン、カチオン変性グアーガム、カチオン変性ポリビニルアルコール、その他のカチオン性高分子等があり、特に限定されることなく使用可能である。
基材シートには、必要とする密度、平滑度、保湿性を得るために、有機顔料等の各種填料、接着剤、サイズ剤、定着剤、歩留まり剤、紙力増強剤等の各種配合剤を適宜含有することができる。
基材シートには、必要とする密度、平滑度、透気度、強度を得るために、抄紙機に設置されたサイズプレス、ロールコーター等で、表面サイズプレスを施してもよい。表面サイズプレス液の成分としては、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、ポリビニルアルコール等の各種合成バインダーが適宜使用できる。
基材シートには、必要とする密度、平滑度、透気度、強度を得るために、カレンダー処理を施してもよい。カレンダー装置としては、硬質ロール同士、弾性ロール同士及び硬質ロールと弾性ロールの対の組み合わせからなる群から選ばれる1種以上の組合せロールを有する装置が好適に使用される。具体的には、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等を使用することができる。
全熱交換素子用紙の坪量、厚み、密度等に関しては特に制限はないが、交換効率の観点から、坪量は低く、厚みは薄く、密度は高いものが好ましい。坪量は30〜90g/m2の範囲が好ましく、40〜60g/m2の範囲がより好ましい。厚みは30〜90μmの範囲が好ましく、40〜60μmの範囲がより好ましい。密度は0.7〜1.2g/cm3の範囲が好ましく、0.8〜1.1g/cm3の範囲がより好ましい。
全熱交換素子用紙には、難燃性を付与する目的で、難燃剤を付着することができる。難燃剤としては、無機系難燃剤、無機リン系化合物、含窒素化合物、塩素系化合物、臭素系化合物等がある。例えば、ホウ砂とホウ酸の混合物、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン、リン酸アミド、塩素化ポリオレフィン、臭化アンモニウム、非エーテル型ポリブロモ環状化合物等の水溶液若しくは水に分散可能である難燃剤が挙げられる。難燃性のレベルとしては、JIS A 1322:1966で測定される炭化長が10cm未満であることが好ましい。難燃剤の付着量としては、特に制限はなく、使用する難燃剤にもよるが、5g/m2〜10g/m2の範囲であることが好ましい。10g/m2よりも多く付着させても良いが、効果は頭打ちとなる。
全熱交換素子用紙には、防カビ性を付与する目的で、防カビ剤を付着することができる。防カビ剤としては、一般的に防カビ剤として市販されているものが使用できる。例えば、有機窒素化合物、硫黄系化合物、有機酸エステル類、有機ヨウ素系イミダゾール化合物、ベンザゾール化合物等が挙げられる。防カビ性のレベルとしては、JIS Z 2911:2010で測定される菌糸の発育が認められない状態が好ましい。防カビ剤の付着量としては、0.5g/m2〜5g/m2の範囲であることが好ましい。5g/m2よりも多く付着させても良いが、効果は頭打ちとなる。
全熱交換素子用紙には、湿度交換効率を改善させる目的で、吸湿剤を付着することができる。吸湿剤としては、無機酸塩、有機酸塩、無機質填料、多価アルコール、尿素類、吸湿(吸水)性高分子等がある。例えば、無機酸塩としては、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等がある。有機酸塩としては、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等がある。無機質填料としては、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、タルク、クレー等がある。多価アルコールとしては、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリグリセリン等がある。尿素類としては、尿素、ヒドロキシエチル尿素等がある。吸湿(吸水)性高分子としては、ポリアスパラギン酸、ポリアクリル酸、ポリグルタミン酸、ポリリジン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びそれらの塩又は架橋物、カラギーナン、ペクチン、ジェランガム、寒天、キサンタンガム、ヒアルロン酸、グアーガム、アラビアゴム、澱粉及びそれらの架橋物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、コラーゲン、アクリルニトリル系重合体ケン化物、澱粉/アクリル酸塩グラフト共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸塩共重合体ケン化物、澱粉/アクリルニトリルグラフト共重合体、アクリル酸塩/アクリルアミド共重合体、ポリビニルアルコール/無水マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキサイド系、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、多糖類/アクリル酸塩グラフト自己架橋体等がある。目的とする透湿度に応じて、種類や付着量を選んで用いられる。コスト面と透湿度の観点から、塩化カルシウム、塩化リチウム及び塩化マグネシウムの群から選ばれる1種以上の吸湿剤を使用することが好ましい。特に好ましい吸湿剤は塩化カルシウムである。塩化カルシウムと他の吸湿剤とを併用しても良い。
吸湿剤の付着量は、特に制限はない。使用する吸湿剤の種類にもよるが、JIS Z 0208:1976の評価方法を用い、23℃、相対湿度50%の条件下で測定された透湿度が300g/m2・24時間以上であることが好ましい。この範囲であれば、湿熱交換性能に優れた全熱交換素子が得ることができる。吸湿剤の付着量としては、使用する吸湿剤の種類にもよるが、ある程度の付着量から湿熱交換性能が頭打ちになることもあり、2g/m2〜15g/m2の範囲であることが好ましく、4g/m2〜10g/m2の範囲であることがより好ましい。透湿度としては300g/m2・24時間〜1500g/m2・24時間の範囲が好ましく、400g/m2・24時間〜1000g/m2・24時間の範囲がより好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものでない。なお、実施例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」を表す。
[濾水度]
濾水度の測定方法としては、JIS P 8121−2:2012のカナダ標準濾水度試験方法に準拠して測定した。ただし、比較例4に関しては、測定できなかったため、パルプを絶乾で0.5g採取し、ふるい板を80メッシュの平織りブロンズワイヤーにした以外は、JIS P 8121−2:2012のカナダ標準濾水度試験方法に準拠する方法にて測定した。
濾水度の測定方法としては、JIS P 8121−2:2012のカナダ標準濾水度試験方法に準拠して測定した。ただし、比較例4に関しては、測定できなかったため、パルプを絶乾で0.5g採取し、ふるい板を80メッシュの平織りブロンズワイヤーにした以外は、JIS P 8121−2:2012のカナダ標準濾水度試験方法に準拠する方法にて測定した。
(実施例1〜7、比較例1〜8)
NBKPを濃度3%で離解した後、ダブルディスクリファイナー及びデラックスファイナーを用いて調製し、表1記載の各物性値の天然パルプを得た。その後、該天然パルプと吸放湿性合成繊維として、帝人フロンティア社製ベルオアシス(登録商標、架橋ポリアクリル酸ナトリウム系繊維、吸湿率差R2−R186%、繊維径28μm、繊維長3mm)とを混合して水懸濁液とし、次いで、長網抄紙機により、坪量50g/m2の全熱交換素子用紙の基材シートを製造した。各例における基材シート中の天然パルプと吸湿性合成繊維の含有率を表1に示した。さらに、ニップコーターにて、速度55m/min、ニップ圧340kPaの条件で、吸湿剤として塩化カルシウムを4g/m2含浸し、乾燥して、全熱交換素子用紙を得た。
NBKPを濃度3%で離解した後、ダブルディスクリファイナー及びデラックスファイナーを用いて調製し、表1記載の各物性値の天然パルプを得た。その後、該天然パルプと吸放湿性合成繊維として、帝人フロンティア社製ベルオアシス(登録商標、架橋ポリアクリル酸ナトリウム系繊維、吸湿率差R2−R186%、繊維径28μm、繊維長3mm)とを混合して水懸濁液とし、次いで、長網抄紙機により、坪量50g/m2の全熱交換素子用紙の基材シートを製造した。各例における基材シート中の天然パルプと吸湿性合成繊維の含有率を表1に示した。さらに、ニップコーターにて、速度55m/min、ニップ圧340kPaの条件で、吸湿剤として塩化カルシウムを4g/m2含浸し、乾燥して、全熱交換素子用紙を得た。
実施例1〜7及び比較例1〜8の全熱交換素子用紙について、以下に示す方法により評価を行った。評価結果を表1に示す。
[透湿性:全熱交換素子用紙の透湿度評価方法]
JIS Z0208:1976に規定される透湿度試験方法に準じ、温度20℃、相対湿度65%の条件にて透湿度測定を実施した。
JIS Z0208:1976に規定される透湿度試験方法に準じ、温度20℃、相対湿度65%の条件にて透湿度測定を実施した。
◎:透湿度が600g/m2・24時間以上で高く、極めて良好。
○:透湿度が400g/m2・24時間以上、600g/m2・24時間未満で高く、良好。
△:透湿度が300g/m2・24時間以上、400g/m2・24時間未満で許容範囲内。
×:透湿度が300g/m2・24時間未満で低く、使用不可。
○:透湿度が400g/m2・24時間以上、600g/m2・24時間未満で高く、良好。
△:透湿度が300g/m2・24時間以上、400g/m2・24時間未満で許容範囲内。
×:透湿度が300g/m2・24時間未満で低く、使用不可。
[耐湿性:全熱交換素子用紙の耐湿性の評価方法]
耐湿性の評価としては、全熱交換素子用紙を用いて、縦200mm、横200mm、高さ250mm、一段の高さ4mmの全熱交換素子を作製した。この時、スペーサーとしては、70g/m2の晒しクラフト用紙を用いた。この全熱交換素子を、30℃、相対湿度90%の条件で、48時間放置し、水垂れの有無や全熱交換素子の形状変化を目視にて評価した。評価基準としては、以下の通りである。
耐湿性の評価としては、全熱交換素子用紙を用いて、縦200mm、横200mm、高さ250mm、一段の高さ4mmの全熱交換素子を作製した。この時、スペーサーとしては、70g/m2の晒しクラフト用紙を用いた。この全熱交換素子を、30℃、相対湿度90%の条件で、48時間放置し、水垂れの有無や全熱交換素子の形状変化を目視にて評価した。評価基準としては、以下の通りである。
◎:水垂れや形状変化が全くなく、極めて良好。
○:水垂れや形状変化が少なく、良好。
△:水垂れや形状変化が多少あるが、許容範囲内。
×:水垂れや形状変化があり、使用不可。
○:水垂れや形状変化が少なく、良好。
△:水垂れや形状変化が多少あるが、許容範囲内。
×:水垂れや形状変化があり、使用不可。
[強度:全熱交換素子用紙の強度評価方法]
強度の評価としては、全熱交換素子用紙を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下で24時間調湿した後、流れ方向に、試験幅15mm、試験長さ180mm、伸張速度20mm/minの条件で、引張強度を測定した。評価基準としては、以下の通りである。
強度の評価としては、全熱交換素子用紙を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下で24時間調湿した後、流れ方向に、試験幅15mm、試験長さ180mm、伸張速度20mm/minの条件で、引張強度を測定した。評価基準としては、以下の通りである。
○:引張強度が1.5kN/m以上で強く、良好。
△:引張強度が1.0kN/m以上、1.5kN/m未満で許容範囲内。
×:引張強度が1.0kN/m未満で弱く、使用不可。
△:引張強度が1.0kN/m以上、1.5kN/m未満で許容範囲内。
×:引張強度が1.0kN/m未満で弱く、使用不可。
[遮蔽性:全熱交換素子用紙の気体遮蔽性(二酸化炭素漏洩量)評価方法]
気体遮蔽性の評価としては、全熱交換素子用紙を用いて、縦200mm、横200mm、高さ250mm、一段の高さ4mmの全熱交換素子を作製した。この時、スペーサーとしては、70g/m2の晒しクラフト用紙を用いた。この全熱交換素子の給気側より窒素:酸素が79:21で含まれる合成空気ガスを通気させ、排気側には一定濃度で二酸化炭素を含んだ汚染ガスを通気させて換気を行った。給気側の出口において二酸化炭素濃度を測定し、排気側入口における二酸化炭素濃度と比較して%表示にて二酸化炭素漏洩量を算出した。評価基準としては、以下の通りである。
気体遮蔽性の評価としては、全熱交換素子用紙を用いて、縦200mm、横200mm、高さ250mm、一段の高さ4mmの全熱交換素子を作製した。この時、スペーサーとしては、70g/m2の晒しクラフト用紙を用いた。この全熱交換素子の給気側より窒素:酸素が79:21で含まれる合成空気ガスを通気させ、排気側には一定濃度で二酸化炭素を含んだ汚染ガスを通気させて換気を行った。給気側の出口において二酸化炭素濃度を測定し、排気側入口における二酸化炭素濃度と比較して%表示にて二酸化炭素漏洩量を算出した。評価基準としては、以下の通りである。
○:二酸化炭素の漏洩量が1%未満で少なく、良好。
△:二酸化炭素の漏洩量が1%以上、5%未満で許容範囲内。
×:二酸化炭素の漏洩量が5%以上と多く、使用不可。
△:二酸化炭素の漏洩量が1%以上、5%未満で許容範囲内。
×:二酸化炭素の漏洩量が5%以上と多く、使用不可。
実施例1〜3と比較例1〜3との比較から、基材シートを含有してなる全熱交換素子用紙であり、基材シートが吸放湿性合成繊維と天然パルプとを含有し、天然パルプの長さ加重平均繊維長が0.7〜1.7mmであり、天然パルプの繊維長ヒストグラムにおいて、0.5〜1.5mmの間に最大頻度ピークを有し、1.0mm以上の繊維長を有する繊維の割合が25.0%以上であり、基材シートに含まれる全繊維成分に対して、吸放湿性合成繊維の含有率が2〜10質量%である全熱交換素子用紙(実施例1〜3)は、透湿性がより優れた全熱交換素子用紙であることがわかる。比較例1〜3の全熱交換素子用紙は、吸放湿性合成繊維の含有率が2質量%未満又は10質量%超えであることから、実施例1〜3と比較して、透湿度が低いことがわかる。また、比較例3では、強度と気体遮蔽性が得られないことがわかる。
実施例1及び実施例4〜7と比較例4〜8との比較から、基材シートを含有してなる全熱交換素子用紙であり、基材シートが吸放湿性合成繊維と天然パルプとを含有し、天然パルプの長さ加重平均繊維長が0.7〜1.7mmであり、天然パルプの繊維長ヒストグラムにおいて、0.5〜1.5mmの間に最大頻度ピークを有し、1.0mm以上の繊維長を有する繊維の割合が25.0%以上であり、基材シートに含まれる全繊維成分に対して、吸放湿性合成繊維の含有率が2〜10質量%である全熱交換素子用紙は、強度と気体遮蔽性に優れた全熱交換素子用紙であることがわかる。比較例4及び比較例5から、1.0mm以上の繊維の割合が25.0%未満である場合、強度が得られないことがわかる。また、比較例6〜8から、平均繊維長が1.7mmより大きい場合、及び/又は、最大頻度ピークの繊維長が0.5〜1.5mmの範囲にない場合、気体遮蔽性が得られないことがわかる。
0.0〜0.5mmの範囲に第2ピークを有する実施例1、4及び6は、0.0〜0.5mmの範囲に第2ピークを有しない実施例5及び7に比べ、気体遮蔽性が優れることがわかる。
本発明の全熱交換素子用紙は、新鮮な空気を供給すると共に、室内の汚れた空気を排出する際に、温度(顕熱)と共に湿度(潜熱)の交換を行う全熱交換器の全熱交換素子に使用される。
Claims (3)
- 基材シートを含有してなる全熱交換素子用紙において、基材シートが吸放湿性合成繊維と天然パルプとを含有し、天然パルプの長さ加重平均繊維長が0.7〜1.7mmであり、天然パルプの繊維長ヒストグラムにおいて、0.5〜1.5mmの間に最大頻度ピークを有し、1.0mm以上の繊維長を有する繊維の割合が25.0%以上であり、基材シートに含まれる全繊維成分に対して、吸放湿性合成繊維の含有率が2〜10質量%であることを特徴とする全熱交換素子用紙。
- 天然パルプの繊維長ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に、0.0〜0.5mmの間にピークを有する請求項1記載の全熱交換素子用紙。
- 請求項1又は2に記載の全熱交換素子用紙を使用して形成される全熱交換素子。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019048099A JP2020148435A (ja) | 2019-03-15 | 2019-03-15 | 全熱交換素子用紙及び全熱交換素子 |
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Publications (1)
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Family Applications (1)
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JP2019048099A Pending JP2020148435A (ja) | 2019-03-15 | 2019-03-15 | 全熱交換素子用紙及び全熱交換素子 |
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2019
- 2019-03-15 JP JP2019048099A patent/JP2020148435A/ja active Pending
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