JP2020147494A - ジルコニア焼結体 - Google Patents

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祐貴 牛尾
Yuki Ushio
祐貴 牛尾
悠軌 伊藤
Yuki Ito
悠軌 伊藤
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Sho Azechi
翔 畦地
浩之 藤崎
Hiroyuki Fujisaki
浩之 藤崎
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Abstract

【課題】層毎の焼結挙動の相違を考慮した着色剤及びその含有量の選定を要せず、色調の変化を有する積層体、その前駆体、又はそれらの製造方法の少なくともいずれかを提供する。【解決手段】安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤とを含むジルコニア層が2層以上積層した構造を有し、なおかつ、各ジルコニア層に含まれる着色剤及びその含有量が互いに等しく、少なくとも、安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤とを含む第1のジルコニア層11と、前記第1のジルコニア層に含まれるジルコニアと安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤とを含む、第2のジルコニア層12と、を備えることを特徴とする焼結体100。【選択図】図1

Description

本開示はジルコニアの層が積層した組成物、更にはジルコニア積層体に関する。
ジルコニア(ZrO)焼結体は、主としてジルコニアを含む原料粉末を成形及び焼結することで製造される。焼結や仮焼といった熱処理によって、原料粉末は熱収縮及び緻密化するが、原料粉末の特徴、特に原料粉末の組成、によって熱処理時の挙動が異なる。
0.1質量%未満の添加剤の含有量が異なるに過ぎない原料粉末同士であっても、これを積層させた成形体を熱処理した場合、組成差により層毎の焼結挙動が異なる。このような不具合を生じさせずに色調の変化を有する積層体を得るために、特別な調整や処理が必要とされていた(例えば、特許文献1及び2)。
特許文献1には、ドーパントでコーティングすることによって原料粉末の組成及び熱収縮挙動を調整し、これを成形することによって、異なる色調の積層体からなる焼結体が得られることが開示されている。また、特許文献2には、上下層の粉末が混合した境界層を形成するような振動を与えて積層させて成形することによって、着色剤の含有量が異なる層からなり、色調の変化を有する積層体からなる焼結体が得られることが開示されている。
特表2016−527017号公報 特開2014−218389号公報
特許文献1及び2で開示された積層体は、層間の添加剤の含有量を変えることで色調の変化を付与していた。しかしながら、これらの積層体においては、所望する色調に加え、着色剤の含有量の相違に由来する層毎の焼結挙動の相違を考慮した上で、層毎の着色剤及びその含有量を選定する必要があった。
本開示は、層毎の焼結挙動の相違を考慮した着色剤及びその含有量の選定を要せず、色調の変化を有する積層体、その前駆体、又はそれらの製造方法の少なくともいずれかを提供することを目的とする。別の観点からは、歯科用補綴部材として適した積層体、その前駆体、又はそれらの製造方法の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
本発明者らは、色調の変化を有する積層体を作製するに際し、積層体の大部分を占めるジルコニアの状態に着目した。その結果、ジルコニアの安定化剤の含有量が異なる原料粉同士を積層させることで、従来の積層体とは異なる機構により、積層体に色調の変化が付与されることを見出した。
すなわち、本開示の要旨は以下のとおりである。
[1] 安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤とを含むジルコニア層が2層以上積層した構造を有し、なおかつ、各ジルコニア層に含まれる着色剤及びその含有量が互いに等しく、少なくとも、
安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤とを含む第1のジルコニア層と、
前記第1のジルコニア層に含まれるジルコニアと安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤とを含む、第2のジルコニア層と、
を備えることを特徴とする焼結体。
[2] 前記第2のジルコニア層に含まれる安定化剤を含有するジルコニアの安定化剤の含有量が1.5mol%以上7.0mol%以下である上記[1]に記載の焼結体。
[3] 前記第2のジルコニア層に含まれる安定化剤を含有するジルコニアの安定化剤の含有量が4.5mol%以上7.0mol%以下である上記[1]又は[2]に記載の焼結体。
[4] 前記第1のジルコニア層に含まれる安定化剤を含有するジルコニアの安定化剤の含有量が3.3mol%以上5.5mol%以下である上記[1]乃至[3]のいずれかひとつに記載の焼結体。
[5] 前記第1のジルコニア層の安定化剤含有量と前記第2のジルコニア層の安定化剤含有量の差が0.2mol%以上である上記[1]乃至[4]のいずれかひとつに記載の焼結体。
[6] 安定化剤が、イットリア(Y)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)及びセリア(CeO)、酸化プラセオジム(Pr11)、酸化ネオジム(Nd)、酸化テルビウム(Tb)、酸化エルビウム(Er)及び酸化イッテルビウム(Yb)の群から選ばれる1種以上である上記[1]乃至[5]のいずれかひとつに記載の焼結体。
[7] 前記着色剤が、遷移金属元素及びランタノイド系希土類元素の少なくともいずれかである上記[1]乃至[6]のいずれかひとつに記載の焼結体。
[8] 着色剤の含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下である上記[1]乃至[7]のいずれかひとつに記載の焼結体。
[9] 前記ジルコニア層の少なくとも1層がアルミナを含む上記[1]乃至[8]のいずれかひとつに記載の焼結体。
[10] JIS B 7524:2008に準拠したシクネスゲージを使用して測定される反りが1.0mm以下である上記[1]乃至[9]のいずれかひとつに記載の焼結体。
[11] 試料厚み1.0mmにおけるCIE標準光源D65に対する全光線透過率が30%以上50%以下であるジルコニア層を有する上記[1]乃至[10]のいずれかひとつに記載の焼結体。
[12] 安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む粉末組成物からなる粉末組成物層が2層以上積層した構造を有し、なおかつ、各粉末組成物層に含まれる着色剤及びその含有量が互いに等しく、少なくとも、
安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第1の粉末組成物層と、
前記第1の粉末組成物層に含まれるジルコニアと安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第2の粉末組成物層と、
を備え、
前記第1の粉末組成物層と、前記第2の粉末組成物層との結合剤の含有量の差が0.01質量%を超える成形体を、1200℃以上1600℃以下で焼結する工程、を有することを特徴とする上記[1]乃至[11]のいずれかひとつに記載の焼結体の製造方法。
[13] 安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む粉末組成物からなる粉末組成物層が2層以上積層した構造を有し、なおかつ、各粉末組成物層に含まれる着色剤及びその含有量が互いに等しく、少なくとも、
安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第1の粉末組成物層と、
前記第1の粉末組成物層に含まれるジルコニアと安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第2の粉末組成物層と、
を備え、
前記第1の粉末組成物層と、前記第2の粉末組成物層との結合剤の含有量の差が0.01質量%を超える成形体を、800℃以上1200℃未満で仮焼して仮焼体とする工程、及び、
仮焼体を1200℃以上1600℃以下で焼結する工程、を有する、ことを特徴とする上記[1]乃至[11]のいずれかひとつに記載の焼結体の製造方法。
[14] 前記結合剤がポリビニルアルコール、ポリビニルブチラート、ワックス及びアクリル系樹脂の群から選ばれる1種以上である上記[12]又は[13]に記載の製造方法。
[15] 前記粉末組成物層に含まれる粉末組成物が造粒された状態の粉末である上記[12]乃至[14]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[16] 上記[1]乃至[11]のいずれかひとつに記載の焼結体を含む歯科材料。
本開示により、層毎の焼結挙動の相違を考慮した着色剤及びその含有量の選定を要せず、色調の変化を有する積層体、その前駆体、又はそれらの製造方法のいずれかを提供することができる。更には、歯科用補綴部材として適した積層体、その前駆体、又はそれらの製造方法の少なくともいずれかを提供することができる。
ジルコニア層が2層積層した構造を有する焼結体の断面を示す模式図 ジルコニア層が3層積層した構造を有する焼結体の断面を示す模式図 反りの測定方法を示す模式図 三点曲げ強度の測定方法を示す模式図 ネッキング構造を有するジルコニアを示す模式図
以下、本開示の焼結体について、実施形態の一例を示しながら説明する。
本実施形態は、安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤とを含むジルコニア層が2層以上積層した構造を有し、なおかつ、各ジルコニア層に含まれる着色剤及びその含有量が互いに等しく、少なくとも、
安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤とを含む第1のジルコニア層と、
前記第1のジルコニア層に含まれるジルコニアと安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤とを含む、第2のジルコニア層と、
を備えることを特徴とする焼結体、である。
本実施形態の焼結体は、多層構造を有する組成物、いわゆる積層体であり、焼結組織からなる積層体である。本実施形態において、焼結組織は、主として、焼結後期段階のジルコニアからなる構造である。
本実施形態の焼結体は、安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤とを含むジルコニア層(以下、単に「ジルコニア層」ともいう。)を有する。ジルコニア層は、主として安定化剤を含有するジルコニアの結晶粒子からなる。従って、本実施形態の焼結体は、安定化剤を含有するジルコニア結晶粒子からなるジルコニアと、着色剤とを含む層、を2以上備えた積層体、とみなすこともできる。
図1は、本実施形態の焼結体の構造の一例を示す模式図であり、安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤とを含むジルコニア層が2層積層した構造を有する焼結体(100)の断面を模式的に示している。図1では、層が積み重なった方向(以下、「積層方向」ともいう。)をY軸方向に示し、各層の広がる方向(以下、「水平方向」ともいう。)をX軸方向に示している。
焼結体(100)は、ジルコニア層のうち、安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤とを含む第1のジルコニア層(以下、「第1層」ともいう。)(11)と、前記第1のジルコニア層に含まれるジルコニアとは安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤とを含む第2のジルコニア層(以下、「第2層」ともいう。)(12)を備え、なおかつ、第1層(11)と、第2層(12)と、が隣接して積層する構造を有する焼結体として示している。安定化剤の含有量が異なるジルコニアを含むジルコニア層が積層した構造を有することで、焼結体が、安定化剤の含有量差や透光性などの相乗的な作用に基づく色調変化が視認されうる積層体となる。なお、焼結体(100)では、第1層と第2層とが界面を介して接している状態を示している。しかしながら、本実施形態の焼結体は視認できる界面を有さない状態で積層していてもよく、さらに、層間の界面は直線的なものに限定されない。
焼結体(100)は、第1層と第2層との厚みを同程度で示している。しかしながら、本実施形態の焼結体は、各層の厚み(以下、「層厚」ともいう。)が、それぞれ、異なっていてもよく、第1層又は第2層のいずれかの層厚が厚くてもよい。例えば、第1層と第2層の層厚は、以下の関係を満たすこと、更には安定化剤含有量が少ないジルコニア層の層厚に対する、安定化剤含有量が多いジルコニア層の層厚が厚いこと、が例示できる。い。層厚は、1mm以上20mm以下、更には2mm以上15mm以下、また更には3mm以上10mm以下であることが挙げられる。
high≧Dlow、好ましくは2×Dlow≧Dhigh≧Dlow
但し、Dhighは安定化剤含有量が高いジルコニア層の層厚であり、Dlowは安定化剤含有量が少ないジルコニア層の層厚である。
本実施形態の焼結体の形状は任意であり、球状、楕円状、円板状、円柱状、立方体状、直方体状及び多面体状の群から選ばれる少なくとも1種や、クラウン、ブリッジ、オンレー及びアンレー等の歯科補綴材料をはじめとする歯科材料に適した形状、その他目的とする用途に応じた任意の形状であればよい。なお、本実施形態において、球状は、略球状等、真球以外の真球類似形体を含み、多面体状は、略多面体状等、多面体以外に多面体類似形状を含んでいてもよい。
本実施形態の焼結体の寸法は任意であり、縦10mm以上120mm以下、横12mm以上120mm以下、及び、高さ6mm以上40mm以下であることが例示できる。また、本実施形態の焼結体の積層方向の厚み、すなわち焼結体の高さ、は任意であるが、例えば、4mm以上40mm以下、更には5mm以上30mm以下であることが挙げられる。
本実施形態の焼結体は、第1層及び第2層は隣接して積層した状態であることが好ましい。また、第1層及び第2層は、それぞれ、積層方向に最も下の層(以下、「最下層」ともいう。)又は積層方向に最も上の層(以下、「最上層」ともいう。)に位置することが好ましい。好ましくは、第1層又は第2層の一方の層が最下層に位置し、なおかつ、第1層又は第2層の他方の層が最上層に位置することが好ましい。
本実施形態の焼結体は、安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤とを含むジルコニア層が2層以上積層した構造を有していればよく、ジルコニア層が3層以上、更には4層以上積層した構造を有していてもよい。層の増加によって、焼結体が、質感の細かな変化が視認されうる積層体となる。より自然歯と同様な質感とする場合、本実施形態の焼結体は、ジルコニア層が2層以上10層以下、更には2層以上5層以下、また更には2層以上4層以下が積層した構造であることが例示できる。
第1層及び第2層以外のジルコニア層(以下、「第三層」ともいう。)は、第1層及び第2層に含まれるジルコニアの安定化剤の含有量の最小値以上、最大値以下の安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤とを含む、ジルコニア層であればよい。本実施形態の焼結体は複数の第三層を含んでいてもよい。
第三層の積層順序は任意であるが、第1層と第2層に第三層が挟持された構造であることが好ましい。複数の第三層(1層目の第三層を「第3層」、2層目以上の第三層を「第4層」、「第5層」等ともいう。)を備える場合、本実施形態の焼結体は、積層方向の安定化剤の含有量の変化が一定となる、すなわち増加(又は減少)となる、ように、ジルコニア層が積層した構造を有すること、が好ましい。なお、本実施形態において、第1層と第2層との間に第三層が挟持された構造とは、積層方向に第1層と第2層の間に第三層が位置する構造であり、第三層が第1層及び第2層の両層と直接隣接して積層された構造に限定されない。また、本実施形態において第1、第2、第3・・・は説明のための便宜的に付与した番号であり、積層順等の順列や積層状態を意味するものではない。
図2は、本実施形態の焼結体の構造の他の一例を示す模式図であり、ジルコニア層が3層積層した構造を有する焼結体(200)の断面を示す模式図である。焼結体(200)は、第1層(21)及び第2層(22)に加え、第3層(23)が積層した構造を有し、第1層(21)と、第2層(22)との間に第3層(23)が挟持された構造を有している。
第4層、第5層等複数のジルコニア層を含む場合、安定化剤の含有量が、積層方向に一定に変化するようにジルコニア層が積層する構造であることが好ましい。これにより、安定化剤の含有量差や透光性の相乗的な作用に基づき、色調のグラデーションが形成され得る。
本実施形態の焼結体は、JIS B 7524:2008に準拠したシクネスゲージを使用して測定される反り(以下、単に「反り」ともいう。)が1.0mm以下であることが好ましい。ジルコニア層を2層以上備えた構造を有する焼結体は、焼結によって積層方向(又は積層方向の反対方向)に反った形状となる。このような焼結体を水平板上に配置すると、焼結体と水平板とに隙間が形成される。
本実施形態における反りはJIS B 7524:2008に準拠したシクネスゲージ(以下、単に「ゲージ」ともいう。)を使用して測定される値である。本実施形態の焼結体の反りは、好ましくは0.3mm以下、より好ましくは0.2mm以下、更に好ましくは0.1mm以下、更により好ましくは0.05mm以下である。焼結体は反りを有さない(反りが0mmであること)が好ましいが、本実施形態の焼結体はゲージで測定できない程度の反りを有していてもよい(反りが0mm以上)。本実施形態の焼結体は反りが0mmを超え、更には0.01mm以上であることが例示できる。反りは0.06mm以下、更には0.05mm以下、また更には測定限界以下(0.03mm未満)であることが好ましい。
反りは、焼結体の凸部が水平板と接するように配置した状態で形成される隙間に挿入できるゲージの厚みの最大値により測定することができる。図3は、反りの測定方法を示す模式図である。焼結体(300)は、円板状試料の断面を示しており、積層方向(Y軸方向)に反った状態の焼結体を示している。図3では、説明のため、焼結体(300)の反りを強調して示している。図3で示すように、反りの測定に際しては、凹凸形状の焼結体(300)の凸部が水平板(31)と接するように配置する。これにより、焼結体(300)と水平板(31)とが接した面(以下、「底面」ともいう。)と、水平板(31)との間に隙間が形成される。当該隙間にゲージを挿入し、挿入できたゲージの厚みの最大値をもって、反りが測定できる。図3において、ゲージ(32A)は、焼結体(300)の底面の下部に位置しており、隙間に挿入できた状態を示し、一方、ゲージ(32B)は、焼結体(300)の底面の下部に位置しておらず、隙間に挿入できない状態を示している。図3におけるゲージ(32A)及び(32B)は、互いに、厚みが1段階(例えば、0.01mm)異なるゲージであり、焼結体(300)の反りは、ゲージ(32A)の厚みとなる。なお、説明の簡便化のため、図3においては、ゲージ(32A)及び(32B)の両方を挿入した図として示しているが、反りの測定は厚みの薄いゲージから順番に、隙間に挿入することにより測定すればよい(例えば、ゲージ(32A)を使用して測定した後に、これを取り除き、次いでより厚いゲージ(32B)を使用して測定する、など)。
本実施形態の焼結体は、焼結体の寸法に対する反り(以下、「変形量」ともいう。)、が1.0以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.15以下であることが更に好ましい。変形量は0以上、更には0.01以上、また更には0.05以上であることが例示できる。
変形量は、以下の式から求めることができる。
変形量=(反り:mm)/(焼結体の寸法:mm)×100
焼結体の寸法は、反りの方向に対して垂直となる方向の焼結体の大きさである。図3における焼結体(300)は積層方向(Y軸方向)に反っているため、焼結体(300)の寸法は、積層方向と垂直となる水平方向(X軸方向)の焼結体の大きさ(33)である。寸法はノギスやマイクロメーター等を使用した公知の測定方法で測定できる。例えば、円板状や円柱状の積層体の場合、ノギスを使用して、上端の直径及び下端の直径を各4点ずつ測定し、上端及び下端の直径の平均値を求め、求まった値の平均値をもって積層体の寸法とすることが挙げられる。
本実施形態において、反り及び変形量は、円板状形状の試料を測定試料として測定される値であることが好ましく、直径5mm以上120mm以下の円板形状の試料を測定試料として測定される値であることがより好ましい。
本実施形態の焼結体は、安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤とを含むジルコニア層からなる。ジルコニア層はジルコニアを主成分とする層であり、当該ジルコニアは安定化剤を含有するジルコニア(以下、「安定化剤含有ジルコニア」ともいう。)である。本実施形態の焼結体及びジルコニア層は、安定化剤含有ジルコニア及び着色剤のみならず、ハフニア(HfO)等の不可避不純物を含んでいてもよい。
本実施形態の焼結体において、ジルコニアは、ジルコニアゾルが熱処理されたジルコニアが焼結された状態のジルコニアであることが好ましく、ジルコニウム化合物の加水分解で得られたジルコニアゾルが熱処理されたジルコニアが焼結した状態のジルコニアであることがより好ましく、オキシ塩化ジルコニウムが加水分解したジルコニアゾルが熱処理されたジルコニアが焼結された状態のジルコニアであることが更に好ましい。
ジルコニア層に含まれるジルコニアは、焼結したジルコニア、すなわちジルコニア結晶粒子であることが挙げられる。
安定化剤はジルコニアの相転移を抑制する機能を有するものであればよい。安定化剤は、ジルコニアを着色する機能を有する元素を含まず、相転移を抑制する機能を有する安定化剤(以下、「非着色安定化剤」ともいう。)、及び、ジルコニアを着色する機能を有する元素を含み、相転移を抑制する機能を有する安定化剤(以下、「着色安定化剤」ともいう。)の少なくともいずれかが挙げられ、非着色安定化剤及び着色安定化剤であってもよく、少なくとも非着色安定化剤を含むことが好ましい。
具体的な安定化剤として、イットリア(Y)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)、セリア(CeO)、酸化プラセオジム(Pr11)、酸化ネオジム(Nd)、酸化テルビウム(Tb)、酸化エルビウム(Er)及び酸化イッテルビウム(Yb)の群から選ばれる1種以上が例示できる。
非着色安定化剤として、イットリア、カルシア、マグネシア及びセリアの群から選ばれる1種以上が例示でき、イットリア及びセリアの少なくともいずれかであることが好ましく、イットリアであることがより好ましい。
着色安定化剤として、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化テルビウム(テルビア)、酸化エルビウム(エルビア)及び酸化イッテルビウムの群から選ばれる1種以上が例示でき、酸化テルビウム及び酸化エルビウムの少なくともいずれかであることが好ましい。
安定化剤はジルコニアに含有された状態であり、ジルコニアに固溶された状態である。また、本実施形態の焼結体は、未固溶の安定化剤を含まないこと、すなわち、ジルコニアに固溶していない安定化剤を含まないこと、が好ましい。本実施形態において、「未固溶の安定化剤を含まないこと」とは、後述のXRD測定及びXRDパターンの解析において、安定化剤に由来するXRDピークが確認されないことであり、安定化剤に由来するXRDピークが確認されない程度であれば、未固溶の安定化剤を含むことは許容され得る。 第1層に含まれる安定化剤含有ジルコニアの安定化剤の含有量(以下、「第1層の安定化剤含有量」ともいう。)は3.3mol%以上であり、3.5mol%以上であることが好ましく、3.7mol%以上であることがより好ましく、4mol%以上であることが更に好ましく、4.1mol%以上であることが更により好ましく、4.2mol%以上であることが更により好ましい。第1層の安定化剤含有量は、6.0mol%以下であり、更には5.8mol%以下、また更には5.5mol%以下、また更には5.0mol%以下であることが挙げられる。第1層の安定化剤含有量として3.3mol%以上6.0mol%以下、3.5mol%以上5.0mol%以下、4mol%以上6.0mol%以下、更には4mol%以上5.0mol%未満が例示できる。
第2層に含まれる安定化剤含有ジルコニアの安定化剤の含有量(以下、「第2層の安定化剤含有量」ともいう。)は、第1層の安定化剤含有量と異なっていればよいが、第1層の安定化剤含有量に対し、第2層の安定化剤含有量が多いことが好ましい。すなわち、本実施形態の焼結体は、ジルコニアの安定化剤の含有量が3.3mol%未満であるジルコニア層を含まないことが好ましい。これにより、自然歯により近い色調を呈する焼結体が得られやすくなる。
第2層の安定化剤含有量は1.5mol%以上、更には2.0mol%以上、また更には3.0mol%以上であればよいが、4.0mol%以上が好ましく、4.0mol%を超えることがより好ましく、4.5mol%以上であることが更に好ましく、5.0mol%以上であることが更に好ましく、5.0mol%を超えることが更により好ましい。また、第2層の安定化剤含有量は、7.0mol%以下、更には6.5mol%以下、また更には6.0mol%以下、また更には5.8mol%以下であることが挙げられる。第1層と第2層との安定化剤の含有量が異なり、なおかつ、両層の安定化剤含有量がこの範囲であることによって、焼結体が、自然歯に近い質感として視認されうる質感を呈しやすくなる。第2層の安定化剤含有量として、1.5mol%以上7.0mol%以下、更には3.0mol%以上6.5mol%以下、また更には3.9mol%以上6.5mol%以下、また更には4.5mol%以上6.5mol%以下、また更には5.0mol%以上6.5mol%以下、また更には5.0mol%を超え6.0mol%以下が挙げられる。
本実施形態の焼結体は、少なくとも、第1のジルコニア層と、安定化剤の含有量が4.5mol%以上、更には5mol%以上であるジルコニアを含むジルコニア層と、を備えることが好ましく、第1のジルコニア層と、安定化剤の含有量が5mol%を超えるジルコニアを含むジルコニア層と、を備えることがより好ましい。他の実施形態として、本実施形態の焼結体は、第1層の安定化剤含有量が4.0mol%以上5.1mol%以下であり、第2層の安定化剤含有量が4.5mol%以上6.0mol%以下であることがより好ましい。さらに、第1層の安定化剤含有量が3.3mol%以上4.5mol%以下であり、第2層の安定化剤含有量が4.5mol%を超え5.8mol%以下であることが更に好ましく、第1層の安定化剤含有量が3.8mol%以上4.3mol%以下であり、第2層の安定化剤含有量が4.7mol%以上5.5mol%以下であることが更に好ましくい。
第三層に含まれる安定化剤含有ジルコニアの安定化剤の含有量(以下、「第三層の安定化剤含有量」ともいう。)は、第1層及び第2層に含まれるジルコニアの安定化剤の含有量の最小値以上最大値以下であり、第1層及び第2層に含まれるジルコニアの安定化剤の含有量の最小値を超え最大値未満であることが好ましい。第三層の安定化剤含有量は、1.5mol%以上7.0mol%以下、更には3.0mol%以上6.5mol%以下、また更には4.0mol%以上6.0mol%以下であることが例示できる。第1層に含まれるジルコニアの安定化剤の含有量が4.0mol%であり、第2層に含まれるジルコニアの安定化剤の含有量が6.0mol%である場合、第三層のジルコニアの安定化剤の含有量は4.0mol%以上6.0mol%以下であること、好ましくは4.0mol%を超え6.0mol%未満であることが挙げられる。なお、第三層の安定化剤含有量が、第1層又は第2層の安定化剤含有量と同じである場合、第三層の安定化剤含有量と同じ安定化剤含有量のジルコニア層であって、最上層又は最下層に位置するジルコニア層を第1層又は第2層とみなせばよい。
第1層の安定化剤含有量と第2層の安定化剤含有量の差は0.2mol%以上であることが好ましく、0.5mol%以上であることがより好ましく、0.7mol%以上であることが更に好ましく、1.0mol%以上であることが更に好ましく、1.2mol%以上であることが更により好ましい。安定化剤含有量の差が大きくなるほど、ジルコニア層間の色調の差が大きくなる傾向がある一方、反りが大きくなる場合もある。第1層の安定化剤含有量と第2層の安定化剤含有量の差が2.5mol%未満、更には2.0mol%以下、また更には1.7mol%以下であれば、焼結体の色調変化が自然歯と同等の色調変化になりやすい。第1層の安定化剤含有量と第2層の安定化剤含有量の差が0.7mol%以上2.5mol%未満であり、なおかつ、反りが0.5mm以下であることがより好ましい。
本実施形態の焼結体は、隣接して積層するジルコニア層同士の安定化剤の含有量の差が、0.5mol%以上3.0mol%以下、更には1.0mol%以上2.5mol%以下、また更には1.2mol%以上2.0mol%以下である構造を含むことが好ましい。
本実施形態の焼結体の安定化剤の含有量(焼結体全体としての安定化剤の含有量)は任意であるが、例えば、1.5mol%を超え7.0mol%未満、更には2.5mol%以上6.5mol%以下、また更には3.0mol%以上6.0mol%以下、また更には3.5mol%以上5.8mol%以下であることが挙げられ、4.1mol%以上5.5mol%以下であることが好ましく、4.2mol%以上5.0mol%以下であることがより好ましく、4.2mol%以上4.8mol%以下であることがより好ましい。焼結体の安定化剤含有量は、下式から求められ、各ジルコニア層の厚みにより異なる。
焼結体の安定化剤含有量
=(第1層の層厚/焼結体の高さ)×第1層の安定化剤含有量
+(第2層の層厚/焼結体の高さ)×第2層の安定化剤含有量
+・・・
+(第n層の層厚/焼結体の高さ)×第n層の安定化剤含有量
第1層の安定化剤含有量は3.3mol%以上であるため、例えば、第2層の安定化剤含有量が3.3mol%超である場合、層厚が等しい2層のジルコニア層を備えた焼結体においては、焼結体の安定化剤含有量が3.3mol%超となる。
本実施形態の焼結体は、第1層の安定化剤含有量が3.3mol%以上5.0mol%以下であり、第2層の安定化剤含有量が4.6mol%以上6.0mol%以下であり、なおかつ、第1層の安定化剤含有量と第2層の安定化剤含有量の差が0.7mol%以上1.8mo%以下でありであることが好ましく、第1層のイットリア含有量が3.8mol%以上4.5mol%以下であり、第2層のイットリア含有量が5.0mol%を超え5.5mol%以下であり、なおかつ、第1層のイットリア含有量と第2層のイットリア含有量の差が1.0mol%以上1.6mo%以下であることがより好ましい。
本実施形態において、安定化剤の含有量は、ジルコニア及び安定化剤の合計に対する安定化剤のモル割合である。安定化剤の含有量の算出において、各安定化剤の含有量は上述の酸化物換算して求めればよい。例えば、安定化剤としてイットリアとエルビアが含まれる場合、安定化剤の含有量(mol%)は(Y+Er)/(ZrO+Y+Er)×100から求められる。
本実施形態における着色剤は、ジルコニアを着色する機能を有する元素である。具体的な着色剤として、遷移金属元素及びランタノイド系希土類元素の少なくともいずれかが例示でき、好ましくは、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、ガドリウム(Gd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)及びイッテルビウム(Yb)の群から選ばれる1種以上、より好ましくは、鉄、コバルト、マンガン、プラセオジム、ガドリウム、テルビウム及びエルビウムの群から選ばれる1種以上、更に好ましくは鉄、コバルト、テルビウム及びエルビウムの群から選ばれる1種以上が挙げられる。
本実施形態の焼結体に含まれる着色剤は、酸化物の状態で含まれる着色剤(以下、「酸化物着色剤」ともいう。)、及び、着色安定化剤など、ジルコニアに固溶した状態で含まれる着色剤の少なくともいずれかであればよい。好ましい酸化物着色剤として、鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンの群から選ばれる1種以上が挙げられ、鉄及びコバルトの少なくともいずれかであることがより好ましい。本実施形態の焼結体は2種以上の着色剤を含んでいてもよく、例えば、2種以上5種以下、更には3種以上4種以下、の着色剤を含んでいてもよい。本実施形態の焼結体は、少なくとも着色安定化剤を含むことが好ましく、少なくともテルビウム及びエルビウムのいずれかを含むことがより好ましく、少なくともテルビウム及びエルビウムを含むことが更に好ましい。
各ジルコニア層に含まれる着色剤の種類及び含有量が等しい。そのため、焼結体を製造するに際して、各層の着色剤の含有量を変化させる必要はない。これに加え、含まれる着色剤の種類が等しいため、同系色のグラデーション等、焼結体により自然な色調変化が付与され得る。なお、本実施形態における「着色剤の含有量が等しい」とは、本実施形態の積層体の効果を奏し得る程度に層間の着色剤の含有量が等しいことであり、焼結体に色調の変化が付与され、なおかつ、その製造過程において、各層間の着色剤の含有量差に由来する焼結挙動の相違が生じない着色剤の含有量差は許容され得る。
本実施形態の焼結体の着色剤の含有量は、本実施形態の焼結体の質量に対する、酸化物換算した着色剤の質量割合として0質量%を超え1.5質量%以下、好ましくは0.01質量%以上1.0質量%以下、より好ましくは0.03質量%以上0.8質量%以下、更に好ましくは0.04質量%以上0.3質量%以下である。例えば、安定化剤としてイットリア(非着色安定化剤)とエルビア(着色安定化剤)を含有し、なおかつ、アルミナとコバルト(酸化物着色剤)が含まれる場合、着色剤の含有量(質量%)は(Co+Er)/(ZrO+Y+Er+Co+Al)×100から求められる。着色剤の酸化物換算は、酸化プラセオジムはPr11は、酸化ネオジムはNd、酸化テルビウムはTb、酸化エルビウムはEr及び酸化イッテルビウムはYb、鉄はFe、コバルトはCo、ニッケルはNiO及びマンガンはMnとすればよい。
各ジルコニア層は、着色剤の含有量が互いに等しい。そのため、各ジルコニア層に含まれる着色剤の含有量、すなわち、各ジルコニア層の質量に対する、酸化物換算した各ジルコニア層に含まれる着色剤の質量割合、は上述の焼結体の着色剤の含有量と等しくなる。
本実施形態の焼結体はアルミナを含んでいてもよく、少なくとも1層のジルコニア層がアルミナを含むことが好ましい。本実施形態の焼結体のアルミナ含有量は、焼結体の重量に対するアルミナの重量の割合として、0質量%以上であればよく、0質量%以上0.15質量%以下であること、更には0質量%以上0.10質量%以下、また更には0質量%以上0.07質量%以下であることが挙げられる。アルミナを含有する場合、アルミナ含有量は0質量%を超え0.15質量%以下、好ましくは0.005質量%以上0.10質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上0.70質量%以下であることが挙げられる。
各ジルコニア層のアルミナ含有量も上述と同じ範囲であることが例示できる。各ジルコニア層のアルミナ含有量は、仮焼段階の熱収縮挙動への影響を与える場合がある。各ジルコニア層のアルミナ含有量は任意であり、各ジルコニア層は、アルミナ含有量が異なっていてもよいが、アルミナ含有量が等しいことが好ましい。ジルコニア層同士のアルミナ含有量が異なる場合、隣接するジルコニア層のアルミナ含有量の差は0質量%を超え1.0質量%以下、更には0質量%を超え0.5質量%以下、また更には0質量%を超え0.03質量%以下、更には0.005質量%以上0.01質量%以下であることが例示できる。例えば、アルミナ(Al)を含有し、非着色安定化剤がイットリア(Y)及び着色安定化剤がエルビア(Er)であるジルコニアからなるジルコニア層の場合、アルミナ含有量は{Al/(ZrO+Y+Er+Al)}×100(質量%)として求めることができる。
本実施形態の焼結体は、実質的に、シリカ(SiO)及びチタニア(TiO)のいずれかを含まないことが好ましい。
本実施形態の焼結体は、少なくとも、結晶相が正方晶(T相)及び立方晶(C相)の少なくとも1つであるジルコニアを含むジルコニア層を含むことが好ましく、少なくとも、正方晶を主相とするジルコニアを含むジルコニア層を含むことがより好ましく、正方晶を主相とするジルコニアを含むジルコニア層と、立方晶を主相とするジルコニアを含むジルコニア層と、を含むことが更に好ましい。なお、本実施形態における「主相」とは、ジルコニアの結晶相の中で、最も存在割合(ピークの積分強度の割合)が多い結晶相を意味する。該存在割合は焼結体表面のXRDパターンから求めることができる。
焼結体表面のXRDパターンの測定条件として、以下の条件が例示できる。
線源 :CuKα線(λ=1.541862Å)
測定モード :ステップスキャン
スキャン条件:毎秒0.000278°
測定範囲 :2θ=10−140°
照射幅 :一定(10mm)
得られたXRDパターンをRietveld解析し、正方晶及び立方晶の割合(ピークの積分強度の割合)を求め、割合の高い結晶相を主相とすればよい。XRDパターンの測定及びRietveld解析は、汎用の粉末X線回折装置(例えば、X’pert PRO MPD、スペクトリス社製)及び、解析ソフトウェア(例えば、RIETAN−2000)により行うことができる。
本実施形態の焼結体はJIS R 1634に準じた方法で測定される密度が5.7g/cm以上6.3g/cm以下であること、好ましくは5.9g/cm以上6.1g/cm以下であることが例示できる。この範囲の密度は、相対密度として99%以上に相当し、実用的な強度を備えた、いわゆる緻密な焼結体、となる密度である。
本実施形態の焼結体及びジルコニア層の色調は、L表色系で示される明度Lが60以上90以下、好ましくは76.5以上85以下であり、色相aが−5以上15以下、好ましくは−3以上10以下であり、なおかつ、色相bが0以上45以下、好ましくは3以上35以下であること、が例示できる。色調がこの範囲であることで、焼結体が自然歯と類似した色調を呈する。
本実施形態の焼結体は、色調の変化を有するため、最上層と最下層の彩度Cが異なることが好ましい。彩度Cは鮮やかさを示す指標であり、L表色系で示される色相a及びbから、C={(a+(b0.5より求められる。最上層と最下層の彩度Cの差の絶対値(△C)が0.1以上15.0以下であること、更には0.3以上10.0以下、また更には1.0以上5.0以下、また更には1.5以上3.0以下であることが例示できる。△Cがこの範囲であることで、自然歯に近い鮮やかさのグラデーションを有する積層体として視認され得る。同様に、最上層と最下層の明度Lの差の絶対値(△L)が1.0以上15.0以下、更には1.5以上5.0以下であることが例示できる。
色調(L、a及びb)及びCは、JIS Z 8722の幾何条件cに準拠した照明・受光光学系を備えた分光測色計を使用し、SCI方式で測定された値を使用し、求めることができる。分光測色計として、例えば、コニカミノルタ社製のCM−700dが例示できる。色調及びCの具体的な測定条件として、測定試料を黒色板の上に配置して測定する方法(いわゆる黒バック測定)において、以下の条件が例示できる。
光源 : D65光源
視野角 : 10°
測定方式 : SCI
本実施形態の焼結体は、少なくとも、透光感を有するジルコニア層を含むことが好ましい。さらに、少なくとも、試料厚み1.0mmにおけるCIE標準光源D65に対する全光線透過率(以下、単に「全光線透過率」ともいう。)が30%以上50%以下、更には32%以上45%以下、更には35%以上42%以下であるジルコニア層を有することが好ましい。本実施形態の焼結体は、その呈色によって吸収する光の波長が異なる。そのため、透光性の指標としては、CIE標準光源D65のように、異なる波長を含む光に対する全光線透過率が適している。
本実施形態の焼結体は、隣接して積層するジルコニア層の全光線透過率の差が1%以上10%以下であることが好ましく、1.5%以上5%以下であることがより好ましい。
本実施形態の焼結体の全光線透過率が30%以上50%以下、更には32%以上45%以下、更には35%以上42%以下であることが好ましい。本実施形態の焼結体の全光線透過率は、焼結体の任意の個所を水平方向に切り出し、これを試料厚み1mmとなるように加工した測定試料として測定すればよい。
全光線透過率は、JIS K 7361に準じた方法で測定し、CIE標準光源D65を入射光とし、当該入射光に対する拡散透過率と直線透過率を合計した透過率の値として求めることができる。厚み1mm及び表面粗さ(Ra)≦0.02μmのサンプルを測定試料とし、一般的な濁度計(ヘーズメーター;例えば、NDH2000、NIPPON DENSOKU製)を使用してCIE標準光源D65の光を当該試料に照射し、積分球により透過光を集光することで試料の透過率(拡散透過率及び直線透過率)は測定され、これを全光線透過率とすればよい。
本実施形態の焼結体は、JIS R 1601に準じた方法で測定される三点曲げ強度が500MPa以上であることが好ましく、550MPa以上であることがより好ましく、600MPa以上であることがより好ましい。三点曲げ強度は、1100MPa未満であること、更には1000MPa以下であることが例示できる。
図4は2層のジルコニア層からなる焼結体(400)の三点曲げ強度の測定の様子を示す模式図である。焼結体(400)は層厚が異なるジルコニア層が2層積層した構造を有する焼結体として示している。図4において、X軸方向に積層方向を、及び、Y軸方向に水平方向を示している。三点曲げ強度の測定に供する測定試料は、幅及び厚みを積層方向とし、長さを水平方向として作製された直方体形状の焼結体である。測定試料の寸法は幅4mm、厚み3mm及び長さ45mmである。図4で示すように、三点曲げ強度は、測定試料(400)の長さに対して垂直となるように荷重(41)を印加して測定すればよい。測定試料は、荷重(41)が支点間距離(42)の中間に印加されるよう、配置すればよい。支点間距離は30mmである。
本実施形態の焼結体は、装飾部材、構造材料や光学材料等、公知のジルコニアの用途に供することができるが、義歯、例えばクラウン、ブリッジ等、の歯科材料として好適に使用することができ、本実施形態の焼結体を含む歯科材料とすることができる。
次に、本実施形態の焼結体の製造方法について説明する。
本実施形態の製造方法は、
安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む粉末組成物からなる粉末組成物層が2層以上積層した構造を有し、なおかつ、各粉末組成物層に含まれる着色剤及びその含有量が互いに等しく、少なくとも、
安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第1の粉末組成物層と、
前記第1の粉末組成物層に含まれるジルコニアと安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第2の粉末組成物層と、
を備え、
前記第1の粉末組成物層と、前記第2の粉末組成物層との結合剤の含有量の差が0.01質量%を超える成形体を、1200℃以上1600℃以下で焼結する工程、を有することを特徴とする焼結体の製造方法、である。
また、本実施形態の別の製造方法は、
安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む粉末組成物からなる粉末組成物層が2層以上積層した構造を有し、なおかつ、各粉末組成物層に含まれる着色剤及びその含有量が互いに等しく、少なくとも、
安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第1の粉末組成物層と、
前記第1の粉末組成物層に含まれるジルコニアと安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第2の粉末組成物層と、
を備え、
前記第1の粉末組成物層と、前記第2の粉末組成物層との結合剤の含有量の差が0.01質量%を超える成形体を、800℃以上1200℃未満で仮焼して仮焼体とする工程、及び、
仮焼体を1200℃以上1600℃以下で焼結する工程、を有する、ことを特徴とする焼結体の製造方法、である。
また、本実施形態の更なる別の製造方法は、
安定化剤を含有し、ネッキング構造を有するジルコニアと、着色剤とを含むジルコニア組成物層が2層以上積層した構造を有し、なおかつ、各ジルコニア組成物層に含まれる着色剤及びその含有量が互いに等しく、少なくとも、
安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤とを含む第1のジルコニア組成物層と、
前記第1のジルコニア組成物層に含まれるジルコニアと安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤とを含む第2のジルコニア組成物層と、
を備える仮焼体を、1200℃以上1600℃以下で焼結する工程、を有する、ことを特徴とする焼結体の製造方法、である。
本実施形態の製造方法に供する成形体は、
安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む粉末組成物からなる粉末組成物層が2層以上積層した構造を有し、なおかつ、各粉末組成物層に含まれる着色剤及びその含有量が互いに等しく、少なくとも、
安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第1の粉末組成物層と、
前記第1の粉末組成物層に含まれるジルコニアと安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第2の粉末組成物層と、
を備え、
前記第1の粉末組成物層と、前記第2の粉末組成物層との結合剤の含有量の差が0.01質量%を超える成形体、である。
結合剤を含む粉末組成物によって、ジルコニアの凝集強度が向上し、割れや欠け等の、成形時の欠陥発生が抑制されることが知られている。得られる成形体の強度を均一にするため、通常、成形体の作製に供する粉末組成物中の結合剤は、その含有量を均一にする必要がある。これに対し、本実施形態における成形体は、結合剤が、成形体の強度向上のみならず、層間の結合剤含有量を相違させることで、積層した層間の応力発生を抑制する、という従来とは異なる機能をも奏すると考えられる。その結果、成形時の変形が抑制され、安定化剤の含有量が異なるジルコニアを含む粉末組成物同士が積層した積層体からなる成形体が、過度な欠陥を生じさせることなく熱処理できると考えられる。
本実施形態の製造方法に供する成形体について、以下、上述の焼結体と異なる主な点について説明する。
本実施形態の製造方法に供する成形体は、
安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む粉末組成物からなる粉末組成物層が2層以上積層した構造を有し、なおかつ、各粉末組成物層に含まれる着色剤及びその含有量が互いに等しく、少なくとも、
安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第1の粉末組成物層と、
前記第1の粉末組成物層に含まれるジルコニアと安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第2の粉末組成物層と、
を備え、
前記第1の粉末組成物層と、前記第2の粉末組成物層との結合剤の含有量の差が0.01質量%を超える成形体、である。
成形体は、多層構造を有する組成物、いわゆる積層体であり、粉末組成物からなる積層体である。成形体は、仮焼体又は焼結体の前駆体として供することができる。
成形体は、ジルコニア層を有する代わりに、安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む粉末組成物からなる粉末組成物層(以下、「粉末層」ともいう。)を有し、図1又は図2で示した積層構造、と同等な構造を有する。従って、成形体は、安定化剤を含有するジルコニアの粉末と、結合剤とを含む層、を2以上備えた積層体、とみなすこともできる。成形体において、安定化剤及び着色剤は、ジルコニアに固溶した状態であってもよく、酸化物又はその前駆体の状態であってもよい。前駆体として、硫化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物及びオキシ水酸化物の群から選ばれる1以上、更には塩化物、水酸化物、オキシ水酸化物の群から選ばれる1以上、が例示できる。また、着色剤は少なくとも酸化物を含むことが好ましい。
成形体は、反りが1.0mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがより好ましく、0.2mm以下であることが更に好ましく、0.1mm以下であることが更により好ましく、0.05mm以下であることが更により好ましい。成形体は反りを有さない(反りが0mmであること)が好ましいが、ゲージで測定できない程度の反りを有していてもよい(反りが0mm以上)。成形体は反りが0mmを超え、更には0.01mm以上であることが例示できる。反りは0.06mm以下、更には0.05mm以下、また更には測定限界以下(0.03mm未満)であることが好ましい。
成形体は、変形量が1.0以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.15以下であることが更に好ましい。変形量は0以上、更には0.01以上、また更には0.05以上であることが例示できる。
粉末層に含まれるジルコニアは、ジルコニアゾルが熱処理されたジルコニアであることが好ましく、ジルコニウム化合物の加水分解で得られたジルコニアゾルが熱処理されたジルコニアであることがより好ましく、オキシ塩化ジルコニウムが加水分解したジルコニアゾルが熱処理されたジルコニアであることが更に好ましい。
粉末層に含まれるジルコニアはジルコニア粉末であることが好ましい。ジルコニア粉末は、平均粒子径が0.3μm以上0.7μm以下であることが好ましく、0.4μm以上0.5μm以下であることが好ましい。
粉末層に含まれる着色剤は、ジルコニア粉末と混合された状態及びジルコニアに固溶した状態の少なくともいずれかであることが好ましい。また、着色剤粉末とジルコニア粉末とが混合された状態であってもよい。
粉末層に含まれる結合剤は、1200℃以下で気化する結合剤であることが好ましく、有機結合剤であることがより好ましく、室温下(例えば10℃〜30℃)で流動性を有する有機結合剤であることが更に好ましい。また、結合剤は、可塑剤や離型剤を含んでいなくてもよい。有機結合剤として、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラート、ワックス及びアクリル系樹脂の群から選ばれる1種以上、好ましくはポリビニルアルコール及びアクリル系樹脂の1種以上であり、より好ましくはアクリル系樹脂である。本実施形態において、アクリル系樹脂は、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの少なくともいずれかを含む重合体である。粉末組成物に含まれるアクリル系樹脂は、セラミックスの結合剤として使用されるものであればよい。具体的なアクリル系樹脂として、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸共重合体及びメタクリル酸共重合体の群から選ばれる1種以上、並びに、これらの誘導体、が例示できる。
第1の粉末層(以下、「第1粉末層」ともいう。)に含まれる安定化剤含有ジルコニアの安定化剤の含有量、第2の粉末層(以下、「第2粉末層」ともいう。)に含まれる安定化剤含有ジルコニアの安定化剤の含有量、及び、第3の粉末層(以下、「第3粉末層」ともいう。)に含まれる安定化剤含有ジルコニアの安定化剤の含有量は、それぞれ、第1層、第2層及び第3層の安定化剤含有量と同じであればよい。
成形体及び各粉末層の安定化剤及び着色剤の含有量は任意であるが、上述の本実施形態の焼結体と同様であればよい。
成形時の欠陥を抑制する観点から、各粉末層の結合剤の含有量は、1.5質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上8.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以上6.0質量%以下であることが更に好ましく、2.5質量%以上5.5質量%以下であることが更により好ましい。
成形体は、第1粉末層と、第2粉末層との結合剤の含有量の差(以下、「結合剤量差」ともいう。)が0.01質量%を超え、0.03質量%以上であることが好ましい。このように、成形体は、第1粉末層と第2粉末層の結合剤の含有量が異なる。これにより成形時の応力発生が抑制される。応力発生抑制の観点から、結合剤量差は、0.01質量%を超え5質量%以下、更には0.03質量%以上3.5質量%以下であることが挙げられ、好ましくは0.04質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上2質量%以下、更に好ましくは0.06質量%以上1.5質量%以下、更により好ましくは0.07質量%以上1質量%以下である。別の実施形態において、結合剤量差は0.01質量%以上0.5質量%以下、更には0.02質量%以上0.3質量%以下、また更には0.03質量%以上0.1質量%以下、が挙げられる。
結合剤の含有量は、粉末層中の粉末組成物から結合剤を除いたもの重量に対する結合剤の重量割合({結合剤/(粉末組成物−結合剤)}×100)であり、粉末組成物の製造にあたり、結合剤以外の粉末組成物の構成成分(例えば、酸化物換算した安定化剤、ジルコニア及びアルミナ)の合計質量を求めた後、これに対する目的とする結合剤の質量割合を求め、粉末組成物を製造することが挙げられる。
成形体の反りを抑制するため、各粉末層の結合剤の含有量は隣接する粉末層の安定化剤の含有量に応じて調整することが好ましい。第1粉末層と第2粉末層が
第1粉末層に対し、第2粉末層は安定化剤及び結合剤の含有量が多いこと、
第1粉末層に対し、第2粉末層は安定化剤及び結合剤の含有量が少ないこと、
第1粉末層に対し、第2粉末層は安定化剤の含有量が多く、結合剤の含有量が少ないこと、及び
第1粉末層に対し、第2粉末層は安定化剤の含有量が少なく、結合剤の含有量が多いこと、のいずれかであることが例示でき、
第1粉末層に対し、第2粉末層は安定化剤の含有量が多く、結合剤の含有量が少ないこと、又は
第1粉末層に対し、第2粉末層は安定化剤の含有量が少なく、結合剤の含有量が多いこと、のいずれかであることが好ましい。第1粉末層と第2粉末層とは、安定化剤及び結合剤の含有量が異なっていればよいが、成形体の反りが抑制される傾向があるため、結合剤量差が大きいことが好ましく、また、第1粉末層及び第2粉末層のうち一方の粉末層が、他方の粉末層に対して安定化剤の含有量が少なく、なおかつ、結合剤の含有量が多いこと、が好ましい。
また、隣接して積層した粉末層において、安定化剤の含有量が少ないジルコニアを含む一方の粉末層は、他方の粉末層よりも結合剤含有量が多いことが好ましい。さらに、隣接して積層した粉末層であり、なおかつ、いずれか一方の粉末層に含まれるジルコニアが、安定化剤の含有量が異なる2以上のジルコニアが混合されたジルコニアである場合、安定化剤の含有量が少ないジルコニアを含む一方の粉末層は、他方の粉末層よりも結合剤含有量が少ないことが好ましい。
操作性の観点から、粉末層に含まれる粉末組成物は、ジルコニア粉末、着色剤及び結合剤が造粒された状態の粉末(以下、「造粒粉末」ともいう。)であることが好ましく、噴霧乾燥等によって顆粒状に造粒された造粒粉末(以下、「粉末顆粒」ともいう。)であることがより好ましい。
造粒粉末の粒子径は任意であるが、平均凝集径として1μm以上150μm以下、好ましくは1μm以上100μm以下、より好ましくは5μm以上50μm以下、更に好ましくは5μm以上30μm以下が例示できる。別の実施形態として20μm以上50μm以下が例示できる。
本実施形態において、平均凝集径は体積粒度分布測定における累積50%に相当する径である。体積粒度分布は汎用の装置(例えば、MT3100II、マイクロトラック・ベル社製)により、測定することができる値であり、球形近似した粒子の体積径である。
成形体は、少なくとも、正方晶又は立方晶を主相とするジルコニアを含む粉末層を含むことがより好ましい。
成形体は、密度が2.4g/cm以上3.7g/cm以下であること、好ましくは、3.1g/cm以上3.5g/cm以下であること例示できる。この範囲の密度は、相対密度は40%〜60%に相当する。
成形体の密度は、重量測定により求まる重量、及び、寸法測定により求まる体積から求められる。
成形体に含まれるジルコニア層の色調は、これを焼結して得られる焼結体と異なっていてもよく、色調の変化を有さなくてもよい。
成形体及び各粉末層は不透明であり、全光線透過率が0%であるが、測定誤差を考慮した場合、全光線透過率が0%以上0.2%以下であることが例示できる。
成形体は、仮焼又は焼結時に供する際の割れや欠けが生じない程度の強度を有していればよい。
成形体は、粉末組成物を積層させ、これを成形することで得られる。各粉末組成物は、公知の方法でジルコニア粉末と結合剤とを所望する任意の割合で混合することで得られる。成形は加圧成形であることが好ましい。例えば、最下層に対応する組成を有する粉末組成物を成形型に充填し、最下層とする。その後、最下層に隣接する層の組成に対応する組成を有する粉末組成物を、最下層の上に充填する。3層以上の粉末層が積層した構造を有する成形体とする場合、同様な操作を繰返し、必要な粉末組成物を積層させればよい。最上層の組成に対応する組成を有する粉末組成物を充填した後、任意の圧力で一軸加圧成形して予備成形体を得、これを冷間静水圧プレス(以下、「CIP」ともいう。)処理することで、成形体が得られる。積層時は、振動機を使用した振動等、層間に混合層を形成させる振動を与える必要はない。また、一軸加圧成形は、最上層に対応する組成を有する粉末組成物の充填後に行うことが好ましく、最上層に対応する組成を有する粉末組成物を充填する前の加圧は行わないことが好ましい。
一軸加圧成形の成形圧は15MPa以上200MPa以下であることが好ましく、18MPa以上100MPa以下であることがより好ましい。一軸加圧成形は、成形圧が高くなるに伴い、成形体の反りが抑制される傾向がある。CIP処理の圧力は、成形圧98MPa以上392MPa以下が挙げられる。
本実施形態の製造方法に供する仮焼体について、以下、上述の焼結体と異なる主な点について説明する。
本実施形態の製造方法に供する仮焼体は、
安定化剤を含有し、なおかつ、ネッキング構造を有するジルコニアと、着色剤とを含むジルコニア組成物層が2層以上積層した構造を有し、なおかつ、各ジルコニア組成物層に含まれる着色剤及びその含有量が互いに等しく、少なくとも、
安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤とを含む第1のジルコニア組成物層と、
前記第1のジルコニア組成物層に含まれるジルコニアと安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤とを含む第2のジルコニア組成物層と、
を備える仮焼体、である。
仮焼体は、多層構造を有する組成物、いわゆる積層体であり、ネッキング構造を有する組織、いわゆる仮焼粒子、からなる積層体である。仮焼体は、必要に応じて加工され、焼結体の前駆体として供することができ、また、予備焼結体や、半焼結体とも称呼される。
ネッキング構造は、焼結温度未満で熱処理されたジルコニアが有する構造であり、ジルコニア粒子が相互に化学的に癒着した構造である。図5に示すように、仮焼体が有するジルコニア組成物層に含まれるジルコニア(51)は、粉末組成物中のジルコニアの粒子形状の一部が確認できる。本実施形態において、ネッキング構造を有する組織は、焼結初期段階のジルコニアからなる構造である。これは、焼結組織、すなわち焼結後期段階のジルコニア結晶粒子からなる構造とは異なる。従って、本実施形態の仮焼体は、安定化剤を含有するジルコニアのネッキング構造を有するジルコニア粒子からなるジルコニアと、着色剤とを含む層、を2以上備えた積層体、とみなすこともできる。
仮焼体は、ジルコニア層を有する代わりに、安定化剤を含有し、なおかつ、ネッキング構造を有するジルコニアと、着色剤とを含むジルコニア組成物層(以下、「組成物層」ともいう。)を有し、図1又は図2で示した積層構造、と同等な構造を有する。仮焼体において、安定化剤及び着色剤は、ジルコニアに固溶した状態であってもよく、酸化物又はその前駆体の状態であってもよい。
仮焼体は、反りが1.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましく、0.3mm以下であることが更に好ましく、0.2mm以下であることが更により好ましく、0.1mm以下であることが更により好ましく、0.05mm以下であることが更により好ましい。仮焼体は反りを有さない(反りが0mmであること)が好ましいが、ゲージで測定できない程度の反りを有していてもよい(反りが0mm以上)。仮焼体は反りが0mmを超え、更には0.01mm以上であることが例示できる。反りは0.06mm以下、更には0.05mm以下、また更には測定限界以下(0.03mm未満)であることが好ましい。
仮焼体は、変形量が1.0以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.15以下であることが更に好ましい。変形量は0以上、更には0.01以上、また更には0.05以上であることが例示できる。
仮焼体に含まれるジルコニアは、ジルコニアゾルが熱処理されたジルコニアが焼結温度未満で熱処理された状態であることが好ましく、ジルコニウム化合物の加水分解で得られたジルコニアゾルが熱処理されたジルコニアが焼結温度未満で熱処理された状態であることがより好ましく、オキシ塩化ジルコニウムが加水分解したジルコニアゾルが熱処理されたジルコニアが焼結温度未満で熱処理された状態であることが更に好ましい。
第1の組成物層(以下、「第1組成物層」ともいう。)に含まれる安定化剤含有ジルコニアの安定化剤の含有量、第2の組成物層(以下、「第2組成物層」ともいう。)に含まれる安定化剤含有ジルコニアの安定化剤の含有量、及び、第三の組成物層(以下、「第三組成物層」ともいう。)に含まれる安定化剤含有ジルコニアの安定化剤の含有量は、それぞれ、第1層、第2層及び第三層の安定化剤含有量と同じであればよい。
仮焼体及び各組成物層の安定化剤の含有量は任意であるが、上述の本実施形態の焼結体と同様であればよい。
仮焼体は、少なくとも、正方晶又は立方晶を主相とするジルコニアを含むジルコニア組成物層を含むことがより好ましい。
仮焼体は、密度が2.4g/cm以上3.7g/cm以下であること、好ましくは、3.1g/cm以上3.5g/cm以下であること例示できる。この範囲の密度は、相対密度は40%〜60%に相当する。仮焼体はCAD/CAM加工等の加工に適した強度を有する積層体であればよい。
仮焼体の密度は、重量測定により求まる重量、及び、寸法測定により求まる体積から求められる。
仮焼体に含まれるジルコニア層の色調は、これを焼結して得られる焼結体と異なっていてもよく、色調の変化を有さなくてもよい。
仮焼体及び各組成物層は不透明であり、全光線透過率は0%であるが、測定誤差を考慮した場合、全光線透過率が0%以上0.2%以下であることが例示できる。
仮焼体は、CAD/CAMや切削などの加工の際の欠陥が発生しにくい程度の強度を有していればよい。
成形体を焼結温度未満の温度で処理することで、成形体が仮焼体となる。仮焼方法及び仮焼条件は公知の方法を使用することができる。
仮焼時の保持温度(以下、「仮焼温度」ともいう。)は、800℃以上1200℃以下、好ましくは900℃以上1150℃以下、より好ましくは950℃以上1100℃以下が挙げられる。
仮焼温度における保持時間(以下、「仮焼時間」ともいう。)は、好ましくは0.5時間以上5時間以下、より好ましくは0.5時間以上3時間以下である。
仮焼工程における雰囲気(以下、「仮焼雰囲気」ともいう。)は、還元性雰囲気以外の雰囲気であることが好ましく、酸素雰囲気又は大気雰囲気の少なくともいずれかであることがより好ましく、大気雰囲気であることが更に好ましい。
本実施形態の製造方法では、成形体及び仮焼体のいずれか(以下、これらをまとめて「成形体等」ともいう。)を、1200℃を超え1600℃以下で処理する。これにより成形体等が焼結体となる。焼結に先立ち、成形体等を任意の形状に加工してもよい。
焼結方法及び焼結条件は公知の方法を使用することができる。焼結方法として常圧焼結、HIP処理、SPS及び真空焼結の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。工業的な焼結方法として汎用されているため、焼結方法は好ましくは常圧焼結、より好ましくは大気雰囲気下の常圧焼結である。焼結方法は常圧焼結のみであることが好ましく、常圧焼結後の加圧焼結を行わないことがより好ましい。これにより、焼結体を、常圧焼結体として得ることができる。本実施形態において、常圧焼結とは、焼結時に被焼結物に対して外的な力を加えず、単に加熱することによって焼結する方法である。
焼結時の保持温度(以下、「焼結温度」ともいう。)は1200℃以上1600℃以下であり、好ましくは1300℃以上1580℃以下、より好ましくは1400℃以上1560℃以下、更に好ましくは1430℃以上1560℃以下、更により好ましくは1480℃以上1560℃以下である。別の実施形態において、焼結温度は1450℃以上1650℃以下であり、好ましくは1500℃以上1650℃以下、より好ましくは1550℃以上1650℃以下である。
焼結温度までの昇温速度は50℃/時間以上800℃/時間以下が挙げられ、好ましくは100℃/時間以上800℃/時間以下、より好ましくは150℃/時間以上800℃/時間以下、更に好ましくは150℃/時間以上700℃/時間以下である。
焼結温度での保持時間(以下、「焼結時間」ともいう。)は、焼結温度により異なるが、好ましくは1時間以上5時間以下、より好ましくは1時間以上3時間以下、更に好ましくは1時間以上2時間以下である。
焼結の雰囲気(以下、「焼結雰囲気」ともいう。)は、還元性雰囲気以外の雰囲気であることが好ましく、酸素雰囲気又は大気雰囲気の少なくともいずれかであることがより好ましく、大気雰囲気であることが更に好ましい。大気雰囲気とは、主として窒素及び酸素からなり、酸素濃度が18〜23体積%程度であることが例示できる。
焼結工程における好ましい焼結条件として、大気雰囲気下の常圧焼結、が挙げられる。
以下、実施例を用いて本実施形態の焼結体について説明する。しかしながら、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
(反り及び変形量)
円板形状の成形体、仮焼体又は焼結体を測定試料とし、以下の式から、それぞれの変形量を求めた。
変形量=(反り:mm)/(寸法:mm)×100
反りの測定は図3に示した測定法により行った。測定試料の凸部が水平板に接するように測定試料を配置した。水平板と底面の間に形成された空隙にJIS B 7524:2008に準拠したシクネスゲージ(製品名:75A19、永井ゲージ製作所社製)を挿入して、反りを測定した。測定は、水平板上と平行に配置したゲージを、水平板と測定試料の底面との間に形成された空隙に挿入し、当該空隙に挿入できたゲージの最大の厚みとなるゲージ厚を計ることで行い、当該ゲージ厚を反りとした。なお、反りは、単体のゲージ又はゲージの組合せることによって、ゲージ厚0.03mmから0.01mm刻みで順次測定した。
測定試料の寸法は、ノギスを使用して上端の直径及び下端の直径を各4点ずつ測定し、上下端の直径の平均値を求めた。
(全光線透過率)
JIS K 7361の方法に準じた方法によって、試料の全光線透過率を測定した。標準光源D65を測定試料に照射し、当該測定試料を透過した光束を積分球によって検出することによって、全光線透過率を測定した。測定には一般的なヘーズメーター(装置名:ヘーズメーターNDH2000、NIPPON DENSOKU製)を使用した。
測定試料として円板形状の試料を使用し、測定に先立ち、当該試料の両面を鏡面研磨し、試料厚み1mm及び表面粗さ(Ra)が0.02μm以下とした。
(平均凝集径)
平均凝集径は、マイクロトラック粒度分布計(装置名:MT3100II、マイクロトラック・ベル社製)に、粉末顆粒試料を投入して測定した。累積体積が50%となる粒子径を平均凝集径とした。
(結晶相)
積層体試料の結晶相は、以下の条件によるXRD測定により測定した。測定装置として、一般的なXRD装置(装置名:X’pert PRO MPD、スペクトリス社製)を使用した。
線源 :CuKα線(λ=1.541862Å)
測定モード :ステップスキャン
スキャン条件:毎秒0.000278°
測定範囲 :2θ=10−140°
照射幅 :一定(10mm)
得られたXRDパターンのRietveld解析を解析ソフト(RIETAN−2000)を使用して行い、正方晶及び立方晶の割合(ピークの積分強度の割合)を求め、割合の高い結晶相を主相とした。
(△L及び△C
一般的な分光測色計(装置名:CM−700d、コニカミノルタ社製)を使用して色調を測定した。測定条件は以下のとおりである。
光源 : D65光源
視野角 : 10°
測定方式 : SCI
焼結体試料は、実施例については直径20mm×厚さ5.6mmの円板形状のもの、参考例については直径20mm×厚さ2.8mmの円板形状のものを使用した。焼結体試料の両表面を鏡面研磨した。測定試料を黒色板の上に配置し、研磨後の両表面を評価面とし、それぞれ、色調(L、a及びb)を測定した(黒バック測定)。測定された各表面のLの差の絶対値を△Lとし、a及びbから求められたCの差の絶対値を△Cとして求めた。色調評価有効面積は直径10mmを採用した。
合成例1(ジルコニア粉末の合成)
(ジルコニア粉末A1)
オキシ塩化ジルコニウム水溶液を加水分解反応して水和ジルコニアゾルを得た。イットリア濃度が5.2mol%になるように、塩化イットリウムを当該水和ジルコニアゾルに添加した後に、これを180℃で乾燥した。乾燥後のジルコニアゾルを1160℃で2時間焼成した後、蒸留水で水洗し、大気中、110℃で乾燥した。これにα−アルミナ、酸化テルビウム及び蒸留水を混合してスラリーとし、これをボールミルで22時間処理することで、アルミナを0.05質量%及び酸化テルビウムを0.07質量%含み、残部が5.2mol%イットリア含有ジルコニアである粉末を含むスラリーを得た。
ボールミル処理後、スラリー中の混合粉末重量に対するバインダー(結合剤)の重量割合が3.07質量%となるように、アクリル酸系バインダー(アクリル系樹脂)をスラリーに添加して混合した。混合後のスラリーを180℃で噴霧乾燥し、アクリル酸系バインダー(アクリル系樹脂)を3.07質量%及びアルミナを0.05質量%及び酸化テルビウムを0.07質量%(安定化剤として0.01mol%)含み、残部が5.2mol%イットリア含有ジルコニアからなり、平均凝集径が45μmの粉末顆粒を得た。
(ジルコニア粉末A2)
イットリアを4.75mol%及び酸化テルビウムを0.175質量%としたこと、並びに、バインダーの重量割合が3.04質量%となるように、アクリル酸系バインダーをスラリーに添加して混合したこと以外はジルコニア粉末A1と同様な方法で、アクリル酸系バインダーを3.04質量%及びアルミナを0.05質量%及び酸化テルビウムを0.175質量%(安定化剤として0.03mol%)含み、残部が4.75mol%イットリア含有ジルコニアからなり、平均凝集径が45μmの粉末顆粒を得た。
(ジルコニア粉末A3乃至A14)
オキシ塩化ジルコニウム水溶液を加水分解反応して水和ジルコニアゾルを得た。塩化イットリウム及び/又は酸化エルビウムを当該水和ジルコニアゾルに添加した後に、これを180℃で乾燥した。乾燥後のジルコニアゾルを1160℃で2時間焼成した後、蒸留水で水洗し、大気中、110℃で乾燥した。これに酸化テルビウム及び/又は酸化コバルト、α−アルミナ、及び蒸留水を混合してスラリーとした。
得られたスラリーを使用したこと以外は、ジルコニア粉末A1と同様な方法で下表の組成を有し、アクリル酸系バインダー、アルミナ、酸化コバルト及び酸化テルビウムを含有し、残部がイットリア及び/又はエルビア含有ジルコニアからなるジルコニア粉末A3乃至A14を得た。
合成例2
(ジルコニア粉末B1)
イットリアを4.0mol%としたこと、及び、バインダーの重量割合が3.10質量%となるように、アクリル酸系バインダーをスラリーに添加して混合した以外はジルコニア粉末A1と同様な方法で、アクリル酸系バインダーを3.10質量%及びアルミナを0.05質量%及び酸化テルビウムを0.07質量%(安定化剤として0.01mol%)含み、残部が4.0mol%イットリア含有ジルコニアからなり、平均凝集径が46μmの粉末顆粒を得た。
(ジルコニア粉末B2)
イットリアを4.0mol%及び酸化テルビウムを0.175質量%としたこと、並びに、バインダーの重量割合が3.07質量%となるように、アクリル酸系バインダーをスラリーに添加して混合した以外はジルコニア粉末A1と同様な方法で、アクリル酸系バインダーを3.07質量%及びアルミナを0.05質量%及び酸化テルビウムを0.175質量%(安定化剤として0.03mol%)含み、残部が4.0mol%イットリア含有ジルコニアからなり、平均凝集径が46μmの粉末顆粒を得た。
(ジルコニア粉末B3乃至11)
オキシ塩化ジルコニウム水溶液を加水分解反応して水和ジルコニアゾルを得た。塩化イットリウム及び酸化エルビウムを当該水和ジルコニアゾルに添加した後に、これを180℃で乾燥した。乾燥後のジルコニアゾルを1160℃で2時間焼成した後、蒸留水で水洗し、大気中、110℃で乾燥した。これに酸化テルビウム及び酸化コバルト、α−アルミナ、及び蒸留水を混合してスラリーとした。
得られたスラリーを使用したこと以外は、ジルコニア粉末B1と同様な方法で下表の組成を有し、アクリル酸系バインダー、アルミナ、酸化コバルト及び酸化テルビウムを含有し、残部がイットリア及びエルビア含有ジルコニアからなるジルコニア粉末B3乃至B14を得た。
合成例3
オキシ塩化ジルコニウム水溶液を加水分解反応して水和ジルコニアゾルを得た。塩化イットリウム及び酸化エルビウムを当該水和ジルコニアゾルに添加した後に、これを180℃で乾燥した。乾燥後のジルコニアゾルを1160℃で2時間焼成した後、蒸留水で水洗し、大気中、110℃で乾燥した。これにオキシ水酸化鉄若しくは、オキシ水酸化鉄及び酸化コバルト、α−アルミナ、及び蒸留水を混合してスラリーとした。
得られたスラリーを使用したこと以外は、ジルコニア粉末A1と同様な方法で下表の組成を有し、アクリル酸系バインダー、アルミナ、オキシ水酸化鉄、若しくはオキシ水酸化鉄及び酸化コバルトを含有し、残部がイットリア及びエルビア含有ジルコニアからなるジルコニア粉末C1及びC2を得た。
合成例4
着色剤、安定化剤及び結合剤を下表の通りにしたこと以外は、合成例3と同様な方法で、アクリル酸系バインダー、アルミナ、オキシ水酸化鉄、若しくはオキシ水酸化鉄及び酸化コバルトを含有し、残部がイットリア及びエルビア含有ジルコニアからなるジルコニア粉末D1及びD2を得た。
実施例1
(成形体)
内径48mmの金型に、25gのジルコニア粉末A1を充てんした後、金型をタッピングし第1粉末層とした。第1粉末層の上に同量のジルコニア粉末B1を充てんし、金型をタッピングした後、98MPaの圧力で一軸加圧プレス成形を行った。その後、圧力196MPaでCIP処理して2層からなる積層体を得、これを本実施例の成形体とした。第1粉末層の安定化剤含有量は5.21mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量は4.01mol%であり、層間のイットリア含有量の差は1.2mol%であり、バインダー含有量の差は0.02質量%であった。また、本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.07質量%であった。
(仮焼体)
成形体を昇温速度20℃/時、仮焼温度1000℃及び仮焼時間2時間で仮焼し、積層体を得、本実施例の仮焼体とした。
(焼結体)
仮焼体を昇温速度100℃/時、焼結温度1500℃及び焼結時間2時間で焼成し、積層体を得、本実施例の焼結体とした。
当該焼結体の安定化剤含有量は4.6mol%であった。本実施例の焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、2.33及び2.64であり、色調変化を有する積層体であることが確認できた。
成形体、仮焼体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であった。
実施例2
内径48mmの金型に、25gのジルコニア粉末A2を充てんした後、金型をタッピングし第1粉末層とした。第1粉末層の上に同量のジルコニア粉末B2を充てんし、金型をタッピングした後、49MPaの圧力で一軸加圧プレス成形を行った。その後、圧力196MPaでCIP処理して積層体を得、これを本実施例の成形体とした。第1粉末層の安定化剤含有量は4.78mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量は4.03mol%であり、層間のイットリア含有量の差は0.75mol%であり、バインダー含有量の差は0.03質量%であった。また、本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.175質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。
当該焼結体の安定化剤含有量は4.375mol%であった。本実施例の焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、1.13及び0.34であり、色調変化を有する積層体であることが確認できた。
これらの実施例より、各層の着色剤の含有量が等しいにもかかわらず、色調変化が付与された積層体が得られることが分かる。
成形体、仮焼体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であった。
実施例3
ジルコニア粉末A1及びB1の代わりに、ジルコニア粉末A3及びB3を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が5.40mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.96mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.44mol%であり、結合剤量差が0.05質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.166質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.68mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、3.99及び2.16であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体、仮焼体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であった。
実施例4
ジルコニア粉末A1及びB1の代わりに、ジルコニア粉末A4及びB4を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が5.25mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.90mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.35mol%であり、結合剤量差が0.07質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.393質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.58mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、3.32及び1.91であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体、仮焼体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であった。
実施例5
ジルコニア粉末A1及びB1の代わりに、ジルコニア粉末A5及びB5を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が5.05mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.78mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.27mol%であり、結合剤量差が0.05質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.727質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.42mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、2.96及び1.86であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体、仮焼体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であった。
実施例6
ジルコニア粉末A1及びB1の代わりに、ジルコニア粉末A6及びB6を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が5.43mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.96mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.47mol%であり、結合剤量差が0.06質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.067質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.69mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、4.20及び2.80であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体、仮焼体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であった。
実施例7
ジルコニア粉末A1及びB1の代わりに、ジルコニア粉末A7及びB7を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が5.17mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.91mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.26mol%であり、結合剤量差が0.06質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.413質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.54mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、3.10及び2.09であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体、仮焼体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であった。
実施例8
ジルコニア粉末A1及びB1の代わりに、ジルコニア粉末A8及びB8を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が5.38mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.87mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.51mol%であり、結合剤量差が0.06質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.08質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.63mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、3.67及び2.37であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体、仮焼体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であった。
実施例9
ジルコニア粉末A1及びB1の代わりに、ジルコニア粉末A9及びB9を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が4.95mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.59mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.36mol%であり、結合剤量差が0.06質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.665質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.27mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、2.20及び2.64であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体、仮焼体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であった。
実施例10
ジルコニア粉末A1及びB1の代わりに、ジルコニア粉末A10及びB10を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が5.21mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.85mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.36mol%であり、結合剤量差が0.09質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.405質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.53mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、3.70及び1.83であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体、仮焼体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であった。
実施例11
ジルコニア粉末A1及びB1の代わりに、ジルコニア粉末A11及びB11を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が5.22mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.82mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.39mol%であり、結合剤量差が0.07質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.217質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.52mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、3.30及び2.28であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体、仮焼体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であった。
実施例12
内径110mmの金型を使用したこと、19.8MPaの圧力で一軸加圧プレス成形を行ったこと、並びに、ジルコニア粉末A1及びB1の代わりに、ジルコニア粉末A3及びB3を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が5.40mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.96mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.44mol%であり、結合剤量差が0.05質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.166質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.68mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、3.99及び2.16であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体、仮焼体及び焼結体は、それぞれ、反りが0.05mm、0.09mm及び0.05mmであり、変形量は0.05、0.09及び0.06であった。
実施例13
内径110mmの金型を使用したこと、並びに、ジルコニア粉末A6及びB6を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が5.43mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.96mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.47mol%であり、結合剤量差が0.06質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.067質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.69mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、4.20及び2.80であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であったが、仮焼体は反りが0.06mm及び変形量が0.06であった。
実施例14
内径110mmの金型を使用したこと、並びに、ジルコニア粉末A13及びB7を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が5.17mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.91mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.26mol%であり、結合剤量差が0.06質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.413質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.54mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、3.27及び2.25であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であったが、仮焼体は、反りが0.19mm及び変形量が0.18であった。
実施例15
内径110mmの金型を使用したこと、並びに、ジルコニア粉末A14及びB11を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が5.22mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.82mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.40mol%であり、結合剤量差が0.05質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.217質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.52mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、3.14及び2.22であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体は反りが測定限界未満(0.03mm未満)であったが、仮焼体及び焼結体は、それぞれ、反りが0.19mm及び0.03mm、変形量が0.18及び0.04であった。
これらの実施例より、層間のアルミナの含有量差が小さいほど、特に仮焼体の反りが抑制される傾向があることが確認できた。
実施例16
内径110mmの金型を使用したこと、98MPaの圧力で一軸加圧プレス成形を行ったこと、並びに、ジルコニア粉末A1及びB1の代わりに、ジルコニア粉末C1及びD1を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が5.19mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.93mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.26mol%であり、結合剤量差が0.05質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.150質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.56mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、4.27及び2.92であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であったが、仮焼体は、反りが0.12mm及び変形量が0.11であった。
実施例17
内径110mmの金型を使用したこと、98MPaの圧力で一軸加圧プレス成形を行ったこと、並びに、ジルコニア粉末A1及びB1の代わりに、ジルコニア粉末C2及びD2を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で、第1粉末層の安定化剤含有量が5.09mol%及び第2粉末層の安定化剤含有量が3.99mol%であり、層間の安定化剤含有量の差が1.10mol%であり、結合剤量差が0.05質量%である、本実施形態の成形体を得た。本実施例の成形体、並びに、第1粉末層及び第2粉末層の着色剤の含有量はいずれも0.232質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。焼結体の安定化剤含有量は4.54mol%であった。
焼結体の△L及び△Cは、それぞれ、4.93及び2.71であり、色調変化が付与された積層体であった。また、成形体及び焼結体は、いずれも、反りが測定限界未満(0.03mm未満)であったが、仮焼体は、反りが0.16mm及び変形量が0.15であった。
比較例1
内径110mmの金型に、25gの酸化鉄を0.094質量%及び酸化コバルトを0.0045質量%含み、残部が4mol%イットリア含有ジルコニアからなるジルコニア粉末を充てんした後、金型をタッピングし第1粉末層とした。第1粉末層の上に同量の4mol%イットリア含有ジルコニアからなるジルコニア粉末を充てんし、金型をタッピングして第2粉末層とした後、98MPaの圧力で一軸加圧プレス成形を行った。その後、圧力196MPaでCIP処理して2層からなる積層体を得、これを本比較例の成形体とした。層間のイットリア含有量の差は0mol%、及び、結合剤量差は0.02質量%であった。
当該成形体を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で仮焼体を作製したところ、反りが0.67mmであった。
第1層及び第2層のイットリア含有量が同じであり、着色剤の含有量が0.139質量%異なる本比較例の仮焼体では、仮焼体に大きな反りが発生した。
参考例1
内径48mmの金型に、ジルコニア粉末A1を充てんした後、金型をタッピングした後、49MPaの圧力で一軸加圧プレス成形を行った。その後、圧力196MPaでCIP処理して成形体を得た。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。
得られた焼結体は、0.05質量%のアルミナを含有し、残部が5.2mol%イットリア及び0.01mol%酸化テルビウム含有ジルコニアからなり、その結晶相は、主相を正方晶とし、正方晶及び立方晶からなっていた。また、当該焼結体の全光線透過率は42%であった。
参考例2
内径48mmの金型に、ジルコニア粉末A2を充てんした後、金型をタッピングした後、49MPaの圧力で一軸加圧プレス成形を行った。その後、圧力196MPaでCIP処理して成形体を得た。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。
得られた焼結体は、0.05質量%のアルミナを含有し、残部が4.75mol%イットリア及び0.03mol%酸化テルビウム含有ジルコニアからなり、その結晶相は、主相を正方晶プライムとし、正方晶及び立方晶からなっていた。また、当該焼結体の全光線透過率は40%であった。
参考例3
内径48mmの金型に、ジルコニア粉末B1を充てんした後、金型をタッピングした後、49MPaの圧力で一軸加圧プレス成形を行った。その後、圧力196MPaでCIP処理して成形体を得た。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。
得られた焼結体は、0.05質量%のアルミナを含有し、残部が4.0mol%イットリア及び0.01mol%酸化テルビウム含有ジルコニアからなり、その結晶相は、主相を正方晶とし、正方晶及び立方晶からなっていた。また、当該焼結体の色調はLが78.51、aが0.18及びbが25.06であり、全光線透過率は40%であった。
参考例4
内径48mmの金型に、ジルコニア粉末B2を充てんした後、金型をタッピングした後、49MPaの圧力で一軸加圧プレス成形を行った。その後、圧力196MPaでCIP処理して成形体を得た。
当該成形体を使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で仮焼体及び焼結体を得た。
得られた焼結体は、0.05質量%のアルミナを含有し、残部が4.0mol%イットリア及び0.03mol%酸化テルビウム含有ジルコニアからなり、その結晶相は、主相を立方晶とし、正方晶及び立方晶からなっていた。また、当該焼結体の色調はLが77.88、aが6.02及びbが31.70であり、全光線透過率は38%であった。
100、200、300、400:ジルコニア焼結体
11、21 :第1層
12、22 :第2層
23 :第3層
32A、32B :シクネスゲージ
33 :焼結体の大きさ
41 :荷重
42 :支点間距離
51 :ネッキング構造を有するジルコニア

Claims (16)

  1. 安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤とを含むジルコニア層が2層以上積層した構造を有し、なおかつ、各ジルコニア層に含まれる着色剤及びその含有量が互いに等しく、少なくとも、
    安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤とを含む第1のジルコニア層と、
    前記第1のジルコニア層に含まれるジルコニアと安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤とを含む、第2のジルコニア層と、
    を備えることを特徴とする焼結体。
  2. 前記第2のジルコニア層に含まれる安定化剤を含有するジルコニアの安定化剤の含有量が1.5mol%以上7.0mol%以下である請求項1に記載の焼結体。
  3. 前記第2のジルコニア層に含まれる安定化剤を含有するジルコニアの安定化剤の含有量が4.5mol%以上7.0mol%以下である請求項1又は2に記載の焼結体。
  4. 前記第1のジルコニア層に含まれる安定化剤を含有するジルコニアの安定化剤の含有量が3.3mol%以上5.5mol%以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の焼結体。
  5. 前記第1のジルコニア層の安定化剤含有量と前記第2のジルコニア層の安定化剤含有量の差が0.2mol%以上である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の焼結体。
  6. 安定化剤が、イットリア(Y)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)及びセリア(CeO)、酸化プラセオジム(Pr11)、酸化ネオジム(Nd)、酸化テルビウム(Tb)、酸化エルビウム(Er)及び酸化イッテルビウム(Yb)の群から選ばれる1種以上である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の焼結体。
  7. 前記着色剤が、遷移金属元素及びランタノイド系希土類元素の少なくともいずれかである請求項1乃至6のいずれか一項に記載の焼結体。
  8. 着色剤の含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の焼結体。
  9. 前記ジルコニア層の少なくとも1層がアルミナを含む請求項1乃至8のいずれか一項に記載の焼結体。
  10. JIS B 7524:2008に準拠したシクネスゲージを使用して測定される反りが1.0mm以下である請求項1乃至9のいずれか一項に記載の焼結体。
  11. 試料厚み1.0mmにおけるCIE標準光源D65に対する全光線透過率が30%以上50%以下であるジルコニア層を有する請求項1乃至10のいずれか一項に記載の焼結体。
  12. 安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む粉末組成物からなる粉末組成物層が2層以上積層した構造を有し、なおかつ、各粉末組成物層に含まれる着色剤及びその含有量が互いに等しく、少なくとも、
    安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第1の粉末組成物層と、
    前記第1の粉末組成物層に含まれるジルコニアと安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第2の粉末組成物層と、
    を備え、
    前記第1の粉末組成物層と、前記第2の粉末組成物層との結合剤の含有量の差が0.01質量%を超える成形体を、1200℃以上1600℃以下で焼結する工程、を有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の焼結体の製造方法。
  13. 安定化剤を含有するジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む粉末組成物からなる粉末組成物層が2層以上積層した構造を有し、なおかつ、各粉末組成物層に含まれる着色剤及びその含有量が互いに等しく、少なくとも、
    安定化剤の含有量が3.3mol%以上であるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第1の粉末組成物層と、
    前記第1の粉末組成物層に含まれるジルコニアと安定化剤の含有量が異なるジルコニアと、着色剤と、結合剤とを含む第2の粉末組成物層と、
    を備え、
    前記第1の粉末組成物層と、前記第2の粉末組成物層との結合剤の含有量の差が0.01質量%を超える成形体を、800℃以上1200℃未満で仮焼して仮焼体とする工程、及び、
    仮焼体を1200℃以上1600℃以下で焼結する工程、を有する、ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の焼結体の製造方法。
  14. 前記結合剤がポリビニルアルコール、ポリビニルブチラート、ワックス及びアクリル系樹脂の群から選ばれる1種以上である請求項12又は13に記載の製造方法。
  15. 前記粉末組成物層に含まれる粉末組成物が造粒された状態の粉末である請求項12乃至14のいずれか一項に記載の製造方法。
  16. 請求項1乃至11のいずれか一項に記載の焼結体を含む歯科材料。
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