JP2020143345A - 硫酸溶液の製造方法 - Google Patents
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第2発明の硫酸溶液の製造方法は、第1発明において、前記アノードを構成する金属は、少なくともニッケルまたはコバルトのいずれかを含有することを特徴とする。
第3発明の硫酸溶液の製造方法は、第1発明または第2発明において、前記アノード側電極に、金属を溶解させるために電流が流れ込んでいる状態を正通電とした場合に、前記アノード側電極に供給される電流の1周期における正通電の時間の比率が、0.9以上0.99以下であることを特徴とする。
第2発明によれば、アノードを構成する金属が、少なくともニッケルまたはコバルトのいずれかを含有することにより、製造された硫酸溶液を二次電池の正極として使用することができる。
第3発明によれば、正通電の時間の比率が、電流の1周期に対して0.9以上0.99以下であることにより、不動態化をより抑制でき、効率よく硫酸溶液を製造することができる。
(電解槽本体11)
電解槽本体11は、内部に硫酸溶液を保持することができる構成をしている。電解槽本体11を構成する材料は公知の材料である。電解槽本体11は、隔膜12によりアノード側電極13が内部に位置するアノード室21と、カソード側電極14が内部に位置するカソード室22と、を含んで構成されている。電解槽本体11の外側には、アノード側電極13、およびカソード側電極14に接続している直流電源17が設けられている。なお図1では、直流電源17からアノード側電極13、またはカソード側電極14と接続した線は電線を表し、この線に沿った矢印は電流の向きを示している。
電解槽10に用いられるアノード側電極13には、複数の形態がある。例えばニッケルの酸性溶液を得ようとする場合、アノード側電極13の一つ目の形態としては、工業的に電解精製ないし電解採取した板状の金属ニッケル(電気ニッケル)が該当する。また、二つ目の形態としては、チタン等の酸に対し不溶性の材質でできたバスケットに、小さく切断した金属ニッケルを充填したものが該当する。二つ目の形態の場合、全部が溶解し終わる前に交換する必要があったり、金属を切断するコストおよび手間がかかったりするが、無駄なく効率的に溶解することができる。一つ目の形態の場合、溶解し終わった後はアノード側電極13全体を交換する必要がある。交換は所定の大きさに到達したときに行われる。所定の大きさよりも小さくなった金属ニッケルは、二つ目の形態のバスケットに充填し溶解する2段階の溶解方法を用いることもできる。
カソード側電極14には、ニッケルあるいはコバルトの板状の金属が好適に用いられる。また、チタン板の表面にニッケルまたはコバルトがめっき等によりコーティングされている板でも良い。
隔膜12は、電解槽本体11の槽内をアノード室21とカソード室22とに分割する。隔膜12は、液体またはイオンの通過を抑制している。具体的に隔膜12としては、濾布が好適に用いられる。濾布の他にも中性膜・陰イオン交換膜・陽イオン交換膜など様々な種類の隔膜12を用いることができる。
電解槽本体11のアノード室21には、アノード室21からの硫酸溶液を取出すための取出管15が設けられている。電解槽本体11のカソード室22には、カソード室22へ新たな硫酸、または硫酸溶液を供給するための供給管16が設けられている。
直流電源17は、一定の値の直流電流を一方向に連続的に供給する機能だけでなく、電極へ供給する電流の流れる方向を周期的に逆転させるPR(Period Reverse)通電が可能な機能を有している。「PR通電」では、電極へ供給する電流の流れる方向が逆転するので、溶解させることを目的とする金属を溶解するためのアノードとして働くアノード側電極13は、一定の周期ごとにカソードとして作用し、カソード側電極14は、一定の周期ごとにアノードとして作用する。なお、直流電源17では、正通電での電流値および逆通電での電流値はそれぞれ任意に設定可能である。
平均電流密度 = 正電流密度×a−逆電流密度×(1−a)・・数1
なお、PR電解における1周期が短い(すなわち逆通電に切り替わる頻度が多い)方が不働態化膜を効果的に除去できる。
さらに、逆通電の電流密度と通電時間の積(すわなち逆電流の電流量)が同じ場合では逆通電の電流密度が大きくその分通電時間が短い方が効果的に不働態化膜を除去できる効果がある。
(初期電解液供給工程)
本発明に係る硫酸溶液の製造方法では、最初に、第1実施形態に係る電解槽10に、硫酸溶液を、初期電解液として供給する(初期電解液供給工程)。初期電解液は、アノード室21およびカソード室22の両方に供給される。初期電解液は、以下の記載にあるような硫酸濃度であることが好ましい。液面の位置は、アノード室21の液面よりもカソード室22の液面が高くなるようにすることが好ましい。
アノード側電極13表面で不働態化の発生を抑制するために、電解液(酸溶解液)に塩化物イオンなどを添加することが効果的であることが知られている。しかしながら前述したように得た酸溶解液中の塩化物イオンの濃度が増加する課題がある。リチウムイオン電池の正極材のように高純度な硫酸ニッケル溶液が必要な場合、塩化ニッケル溶液も原料に用いることができるなどある程度の塩化物濃度は許容できるが、できるだけ塩化物イオン濃度の上昇は抑えることが好ましい。
初期電解液として供給される硫酸(「フリー硫酸」あるいは「遊離硫酸」ともいう)の濃度の値はできるだけ小さいほうが好ましい。硫酸の濃度の値が小さいと、電解槽10から取出された、金属イオンを含有する硫酸溶液を中和するための薬剤費用が低減できるためである。
本発明に係る硫酸溶液の製造方法では、次に、第1実施形態に係る電解槽10に設けられたアノード側電極13とカソード側電極14とに電流を供給するとともに、アノード室21から、アノード側電極13を構成する金属が溶解した金属溶解電解液を取出す。この際、アノード側電極13とカソード側電極14とに供給される電流は、周期的に流れる方向を逆転させている(電解液取出工程)。この金属溶解電解液は、電解槽10から取出されると硫酸溶液となる。金属溶解電解液は、以下の記載にあるような金属イオン濃度、電解液温度であることが好ましい。なお、電解液取出工程は、アノード側電極13等に電流を供給すると同時に金属溶解電解液を取出す場合と、電流の供給が終わった後に金属溶解電解液を取出す場合が含まれる。
本発明に係る硫酸溶液の製造方法で製造された硫酸溶液の金属イオン濃度は、硫酸溶液の用途により決定される。たとえば2次電池の正極材に用いるニッケル原料として硫酸溶液が用いられる場合には、硫酸溶液のニッケルイオンの濃度が90〜100g/リットル程度の高濃度のニッケルイオンを含有する硫酸溶液が必要となる。コバルトの場合も同様である。
電解槽10内の電解液温度は高い方が好ましい。電解液温度が高いとアノード溶解するニッケルが不動態化することを抑制できる。ただし、電解液温度を高くするほど電解槽10などの設備材質の耐熱性および加熱に要するコストがかかるため、生産性およびコストを考慮し最も経済的な条件に設定することが望ましい。工業的に一般的な材料である塩化ビニールの耐熱を考慮すると、電解液温度は65℃以下、好ましくは50〜60℃程度の温度が好ましい。
本発明に係る硫酸溶液の製造方法により硫酸溶液を製造すると、短時間で効率よく金属イオンを含有した硫酸溶液が得られる。この際に加えた電流が、金属の溶解にどの程度寄与しているかを電流効率として算出した。電流効率は、以下の数2に示すように、アノード側電極13の重量減少分からカソード側電極14の重量増加分を減じたものを、通電量から求めた理論溶解量で除した百分率で求めた。PR通電、すなわち供給される電流が、周期的に流れる方向を逆転させている場合、1周期に占める逆通電の時間の比率に相当する以上の効率低下が考えられるため、電流効率が70%以上であれば効率よく電解できていると判断した。
電流効率(%)=(アノード側電極13の減少重量 − カソード側電極14の増加重量)/理論溶解量 × 100・・数2
本発明に係る電解槽10では、アノード側電極13側の溶液の電気伝導度またはpHを公知の測定機器を用いて測定し、硫酸の供給量および通電する電流の調整など操業管理に用いることも可能である。
実施例1では、通水性が0.1リットル/(m2・s)の濾布を隔膜12として、アノード室21とカソード室22が分離された電解槽10が用いられた。また、電解槽10では、アノード側電極13およびカソード側電極14として、金属ニッケル板が電極間距離45mmで設置された。それぞれの有効面積は32cm2とした。
PR通電での電流密度、通電時間およびそれぞれの電極の有効面積以外のパラメータは実施例1と同じである。実施例2のそれぞれの電極の有効面積は20cm2である。また、PR通電では、正通電のときの電流密度は1640A/m2、通電時間は97.5msとし、逆通電のときの電流密度は1640A/m2、通電時間は2.5msとした。この場合デューティ比は0.975、平均電流密度は1600A/m2となる。実施例2の金属溶解前の条件を表1に示す。
PR通電での1周期の時間、電流密度、通電時間およびそれぞれの電極の有効面積以外のパラメータは実施例1と同じである。実施例3では、PR通電での1周期の時間は50msとした。また実施例3のそれぞれの電極の有効面積は16cm2である。また、PR通電では、正通電のときの電流密度は2170A/m2、通電時間は49msとし、逆通電のときの電流密度は6520A/m2、通電時間は1msとした。この場合デューティ比は0.98、平均電流密度は2000A/m2となる。実施例3の金属溶解前の条件を表1に示す。
PR通電ではなく一方向に直流電流を供給したこと以外のパラメータは実施例1と同じである。比較例1では、電流密度(平均電流密度の欄に記載)を1000A/m2とした。比較例1の金属溶解前の条件を表1に示す。
PR通電での電流密度、通電時間以外のパラメータは実施例1と同じである。比較例2のPR通電では、正通電のときの電流密度は1430A/m2、通電時間は85msとし、逆通電のときの電流密度は1430A/m2、通電時間は15msとした。この場合デューティ比は0.85、平均電流密度は1001A/m2となる。比較例2の金属溶解前の条件を表1に示す。
PR通電での電流密度、通電時間、それぞれの電極の有効面積以外のパラメータは実施例1と同じである。比較例3のそれぞれの電極の有効面積は16cm2である。また、PR通電では、正通電のときの電流密度は2130A/m2、通電時間は97msとし、逆通電のときの電流密度は2130A/m2、通電時間は3msとした。この場合デューティ比は0.97、平均電流密度は2000A/m2となる。比較例3の金属溶解前の条件を表1に示す。
初期電解液としてアノード室21に以下の硫酸溶液が供給された点以外のパラメータは比較例1と同じである。比較例4のアノード室21の初期電解液は、水に硫酸ニッケルを溶解し、硫酸および塩酸で調製することで、ニッケルイオン濃度が100g/リットル、硫酸濃度が33g/リットル、塩化物イオン濃度が3g/リットルとなっているものである。比較例2の金属溶解前の条件を表1に示す。
12 隔膜
13 アノード側電極
14 カソード側電極
15 取出管
15a 開口
17 直流電源
21 アノード室
22 カソード室
Claims (3)
- 槽内が隔膜によりアノード室およびカソード室に分けられた電解槽に、硫酸溶液を初期電解液として供給する初期電解液供給工程と、
前記電解槽に設けられたアノード側電極とカソード側電極とに電流を供給するとともに、前記アノード室から、前記アノード側電極を構成する金属が溶解した金属溶解電解液を取出す電解液取出工程と、
を含んで構成されており、
供給される前記電流が、周期的に流れる方向を逆転させている、
ことを特徴とする硫酸溶液の製造方法。 - 前記アノードを構成する金属は、少なくともニッケルまたはコバルトのいずれかを含有する、
ことを特徴とする請求項1記載の硫酸溶液の製造方法。 - 前記アノード側電極に、金属を溶解させるために電流が流れ込んでいる状態を正通電とした場合に、
前記アノード側電極に供給される電流の1周期における正通電の時間の比率が、0.9以上0.99以下である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の硫酸溶液の製造方法。
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