JP2020141901A - 人工肺 - Google Patents

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崇王 安齊
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Abstract

【課題】ポリメトキシエチルアクリレートより耐久性を向上でき、基材の構成材料の種類によらず、基板に被膜を形成できる技術を提供する。【解決手段】疎水性高分子材料からなる複数のガス交換用多孔質中空糸膜3を有する人工肺1であって、前記中空糸膜の内表面または前記外表面が、70モル%以上90モル%以下のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位および10モル%以上30モル%以下のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有しかつ重量平均分子量が20万以上の共重合体を含む被膜で被覆される人工肺。【選択図】図1

Description

本発明は、人工肺に関する。特に、本発明は、体外血液循環において、血液中の二酸化炭素を除去し、血液中に酸素を添加するための中空糸膜型人工肺、特に中空糸膜外部血液灌流型人工肺に関する。
多孔質膜を使用した中空糸膜型人工肺は、心臓疾患の開心術時における体外循環装置や循環補助用人工心肺装置として、一般に広く使用されている。膜型人工肺は主に中空糸膜を用い、その中空糸膜を介して血液のガス交換を行うものである。人工肺への血液の灌流方式として、中空糸膜の内側に血液を流し、中空糸膜の外側にガスを流す内部灌流方式と、逆に血液を中空糸膜の外側へ流し、ガスを中空糸膜の内側へ流す外部灌流方式とがある。
中空糸膜型人工肺は、中空糸膜の内表面または外表面が血液と接触するため、血液と接触する中空糸膜の内表面または外表面が血小板の粘着(付着)や活性化に影響を与える虞がある。特に、中空糸膜の外表面が血液と触れる外部灌流型人工肺は、血液の流れに乱れを発生させるため、血小板系の粘着(付着)や活性化に影響を与えやすい。
このような課題を考慮して、血小板の粘着や活性化の抑制・防止効果を有する物質について様々な研究がなされていた。例えば、特許文献1では、中空糸膜の外面または外面層にポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)の被膜を形成することが記載されている。また、非特許文献1では、80〜100モル%の2−メトキシエチルアクリレート(MEA)と20〜0モル%のヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)との共重合体(MEA−HEMA共重合体)の被膜が血小板の粘着を抑制できることが報告される。
特開平11−114056号公報
Biomacromolecules, Vol.3, No.1, 2002, pp.36-41
特許文献1に記載のPMEAの被膜は血小板の粘着および活性化が少なく、高い生体適合性を示す。一方、重篤な心臓疾患では開心手術はかなり長時間にわたる場合がある。このため、より長時間抗血栓性を維持できる(耐久性に優れる)人工肺(抗血栓性材料)が求められている。
また、非特許文献1に記載のMEA−HEMA共重合体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板には被膜を形成できるが、人工肺に通常使用されるポリオレフィン基板には被膜を形成できない(キャスト膜形成性に劣る)。ゆえに、非特許文献1に記載のMEA−HEMA共重合体は、人工肺に通常使用される中空糸膜(特にポリオレフィン製中空糸膜)への被覆には適さない。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、人工肺に通常使用される基板を被覆でき、かつポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)で被覆した場合より耐久性を向上できる技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、特定の組成および分子量を有するアルコキシアルキル(メタ)アクリレート−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート共重合体であれば、PMEAより高い耐久性を発揮でき、ポリオレフィン基板に対しても被膜を形成できることを知得した。本発明は、上記知見に基づいて完成した。
すなわち、上記目的は、疎水性高分子材料からなる複数のガス交換用多孔質中空糸膜を有する人工肺であって、前記中空糸膜は、内腔を形成する内表面と、外表面とを有しており、前記内表面または前記外表面のいずれか一方が、下記(a)および(b)を満たす共重合体を含む被膜で被覆される人工肺によって達成できる:
(a)前記共重合体は、70モル%以上90モル%以下の下記式(1):
のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)および10モル%以上30モル%以下の下記式(2):
のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(2)を有し(構成単位(1)および構成単位(2)の合計は100モル%である);および
(b)前記共重合体は、20万以上の重量平均分子量(Mw)を有する。
本発明に係る共重合体によれば、人工肺に通常使用される基板に被膜を形成でき、共重合体の被膜が形成される中空糸膜を有する人工肺はポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)の被膜が形成される中空糸膜を有する人工肺に比して耐久性に優れる。
図1は、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺の一実施形態を示す断面図である。 図2は、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺に使用される中空糸膜の拡大断面図である。 図3は、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺の他の実施形態を示す断面図である。 図4は、図3のA−A線断面図である。 図5は、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺に使用される内側筒状部材の一例を示す正面図である。 図6は、図5に示した内側筒状部材の中央縦断面図である。 図7は、図5のB−B線断面図である。 図8は、実施例16及び比較例6〜8のキャスト膜を示す写真である。
本発明の人工肺は、疎水性高分子材料からなる複数のガス交換用多孔質中空糸膜を有する人工肺であって、前記中空糸膜は、内腔を形成する内表面と、外表面とを有しており、前記内表面または前記外表面のいずれか一方が、下記(a)および(b)を満たす共重合体を含む被膜で被覆される:
(a)前記共重合体は、70モル%以上90モル%以下の下記式(1):
のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)および10モル%以上30モル%以下の下記式(2):
のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(2)を有し(構成単位(1)および構成単位(2)の合計は100モル%である);および
(b)前記共重合体は、20万以上の重量平均分子量(Mw)を有する。
本明細書において、上記式(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを単に「アルコキシアルキル(メタ)アクリレート」または「本発明に係るアルコキシアルキル(メタ)アクリレート」と、上記式(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)を単に「構成単位(1)」または「本発明に係る構成単位(1)」と、も称する。同様にして、上記式(2)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを単に「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート」または「本発明に係るヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート」と、上記式(2)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(2)を単に「構成単位(2)」または「本発明に係る構成単位(2)」と、も称する。また、構成単位(1)及び構成単位(2)を有する共重合体を単に「共重合体」または「本発明に係る共重合体」とも称する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの双方を包含する。同様にして、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の双方を包含し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方を包含する。
本発明の人工肺では、中空糸膜の内表面または前記外表面のいずれか一方が、本発明に係る共重合体を含む被膜で被覆されることを特徴とする。当該構成を有する人工肺は、ポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)の被膜を有する人工肺に比して耐久性に優れる(血液循環時間を延長できる)。また、上記共重合体であれば、基材を構成する材料の種類によらず、基板に被膜を形成できる(キャスト膜形成性に優れる)。ここで、本発明の構成による上記作用効果の発揮のメカニズムは以下のように推測される。なお、本発明は下記推測に限定されるものではない。
本発明に係る共重合体は、(a)70モル%以上90モル%以下の構成単位(1)および10モル%以上30モル%以下の構成単位(2)を有する;ならびに(b)重量平均分子量(Mw)が20万以上である。本発明に係る組成(構成(a))によって、基材への共重合体の被覆(吸着量)およびタンパク質の吸着の抑制・防止がバランスよく両立できる。具体的には、高分子材料に吸水された水は、その状態によって自由水(0℃で融解し、共重合体または不凍水と弱い相互作用をしている水)、中間水(昇温過程で0℃より低温で凍結し、共重合体または不凍水と中間的な相互作用をしている水)、および不凍水(共重合体との強い相互作用により−100℃でも凍結しない水)に分類される。例えば、高分子材料基材を血液中に入れると、基材表面に不凍水の層(不凍水層)が形成される。血栓形成の原因となるタンパク質等の生体成分は、血液等の体液中で水和殻を形成して安定して存在する。しかし、不凍水層に接触すると、この生体成分の水和殻が破壊され、基材に吸着・活性化し、基材上での血栓形成が誘導される。ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、非イオン性で親水性である。このヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(2)を導入することにより、共重合体の中間水含量(親水性)が増加し、中間水層が不凍水層上にさらに形成される。中間水層には生体成分は吸着しにくいまたは吸着しない。また、中間水層の厚みは、共重合体の中間水含量に比例する。10モル%以上の割合で構成単位(2)を有する共重合体の被膜が表面に形成された基材では、中間水層が生体成分の水和殻と基材表面の不凍水層との間に介在し、血栓形成の原因となるタンパク質等の生体成分の基材への吸着(結合)を抑制する。一方、共重合体の基材への吸着(共重合体被膜の形成しやすさ)は、構成単位(1)の組成に比例する。70モル%以上の割合で構成単位(1)を有する共重合体であれば、人工肺の中空糸膜に通常使用される基材(特にポリオレフィン基材)に十分量吸着できる。このように、構成単位(1)の組成(ポリマー吸着量)と、構成単位(2)の組成(タンパク質の吸着の抑制・防止効果)と、はトレードオフの関係にあるが、構成単位(1)および(2)の組成を適切に調節することにより、人工肺に通常使用される材料の基材(特にポリオレフィン基材)への吸着量を維持しつつ、生体成分の基材への吸着を抑制・防止できる。
また、本発明に係る組成(構成(b))によって、塗膜形成時の形状を維持できる(キャスト膜形成性に優れる)。上記非特許文献1に記載されるMEA−HEMA共重合体をポリプロピレン基材に塗布したところ、塗工(キャスト)時の形状を維持できなかった(キャスト膜形成性に劣る)(下記比較例6〜8参照)。本発明者らは、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材に対してはキャスト膜形成性を示すのに対して、プロピレン基材ではキャスト膜形成性を示さない原因について検討を行った。その結果、非特許文献1で使用されるPET基材及びMEA−HEMA共重合体は、双方ともエステル基(−C(=O)−O−)を有し、溶解度パラメーターが近いため、親和性が高く、PET基材上に良好に被膜を形成できる(キャスト膜形成性を示す)。これに対して、ポリプロピレン基材は、MEA−HEMA共重合体と溶解度パラメーターが乖離しているため、親和性が低い。このため、上記非特許文献1に記載されるMEA−HEMA共重合体ではポリオレフィン基材に塗工(キャスト)時の形状を維持できなかった(キャスト膜形成性に劣る)と考えた。上記課題を解決するためにさらに検討を行った。その結果、課題解決手段の一つに共重合体の重量平均分子量(Mw)があり、Mwの小さい共重合体は重合体長が短いため、共重合体同士が十分絡み合えず、コート液(ゆえに塗膜)で絡み合いがとけやすく、塗工(キャスト)時の形状を維持できないと推測した。このため、本発明者らは、共重合体の重量平均分子量(Mw)についてさらに検討を行った。その結果、重量平均分子量(Mw)が20万以上と、重合体長を長く設定した共重合体であれば上記課題を解決できることを見出した。すなわち、Mwが20万以上の共重合体は、コート液中で多数の部位で相互に絡み合う(凝集力が高くなる)。このコート液を基材上にコートすると、共重合体同士は複雑に絡み合った状態を維持しつつ、塗膜が形成される。このため、本発明に係る共重合体膜はコート時の形状を維持でき(キャスト膜形成性に優れ)かつ被膜は高い強度を有し、耐久性を向上できる。
したがって、本発明に係る共重合体被膜で中空糸膜面を被覆してなる人工肺は、抗血栓性に優れる共重合体を十分量中空糸膜に吸着できる。また、本発明の人工肺は、強靱な共重合体被膜を中空糸膜面に形成できる。このため、本発明の人工肺は、抗血栓性生体適合(血小板の粘着/付着の抑制・防止効果、および血小板の活性化の抑制・防止効果)に優れ、特に生体成分の基材への吸着を有効に抑制・防止でき、耐久性を向上できる(血液循環時間を延長できる)。
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。具体的には、以下では、好ましい形態として、中空糸膜外部血液灌流型人工肺について説明するが、本発明の人工肺は中空糸膜内部血液灌流型人工肺であってもよく、この場合でも下記実施の形態を適宜変更することによって適用できる。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
[人工肺]
本発明の人工肺を図面を参照しながら以下で説明する。
図1は、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺の一実施形態の断面図である。図2は、本発明の中空糸膜外部血液灌流型人工肺に使用されているガス交換用多孔質中空糸膜の拡大断面図である。図3は、本発明の人工肺の他の実施形態の断面図である。
図1において、本発明の人工肺1は、多数のガス交換用多孔質中空糸膜3をハウジング2内に収納し、中空糸膜3の外面側に血液が流れ、中空糸膜3の内部に酸素含有ガスが流れるタイプの人工肺である。そして、図2において、血液接触部となる中空糸膜3の外表面3a’(場合によってはさらに外面層3a)に本発明に係る共重合体18が被覆されている。本発明に係る共重合体18の被覆(被膜)は、中空糸膜3の外表面3a’に形成される。図2では、中空糸膜外部血液灌流型人工肺に使用される中空糸膜の外表面3a’に本発明に係る共重合体18の被覆(被膜)が形成された形態を示している。かような形態の中空糸膜は、外表面3a’側に血液が接触し、内表面3c’側に酸素含有ガスが流通される。なお、本発明では、上述したように、中空糸膜内部血液灌流型人工肺としてもよい。よって、中空糸膜は、上記形態とは逆の構成、すなわち、内表面3c’に本発明に係る共重合体18の被覆(被膜)が形成された形態としてもよい。好ましくは、本発明の人工肺は、中空糸膜外部血液灌流型人工肺である。すなわち、本発明の好ましい形態では、中空糸膜は、酸素含有ガスが流れる前記内腔を有する内表面と、血液と接触する外表面と、とを有し、前記外表面が前記共重合体を含む被膜で被覆される。なお、本実施形態では、共重合体から構成される被膜が血液接触部となる中空糸膜3の外面に形成されているが、被膜は共重合体に加えて他の成分を含んでもよい。ここで、他の成分としては、特に制限されないが、他の抗血栓性物質(例えば、ヘパリン)、架橋剤、増粘剤、防腐剤、pH調整剤などが挙げられる。好ましくは、被膜は共重合体のみから構成される。
なお、本明細書において、「共重合体が中空糸膜の外表面を被覆する」とは、共重合体を含む被覆(被膜)が中空糸膜の外表面(血液が流れる側の表面)または外表面および外面層に形成されることを意図する。なお、本発明に係る共重合体の被覆(被膜)は、中空糸膜の血液接触部(外表面)の少なくとも一部に形成されればよいが、抗血栓性生体適合(血小板の粘着/付着の抑制・防止効果、および血小板の活性化の抑制・防止効果)などの観点から、中空糸膜の血液接触部(外表面)全体に形成されることが好ましい。すなわち、本発明に係る共重合体は、前記人工肺の血液接触部(外表面)全体を被覆することが好ましい。
図2に係る実施形態において、本発明に係る共重合体は、中空糸膜3の内部層3bまたは内面層3cに存在してもよいが、中空糸膜3の内部層3bまたは内面層3cには実質的に存在していないことが好ましい。本明細書において、「本発明に係る共重合体が中空糸膜3の内部層3bまたは内面層3cには実質的に存在していない」とは、中空糸膜の内面(酸素含有ガスが流れる側の表面)付近に、本発明に係る共重合体の浸透が観察されないことを意味する。
本実施形態に係る中空糸膜型人工肺1は、血液流入口6と血液流出口7とを有するハウジング2と、ハウジング2内に収納された多数のガス交換用多孔質中空糸膜3からなる中空糸膜束と、中空糸膜束の両端部をハウジング2に液密に支持する一対の隔壁4,5とを有し、隔壁4,5とハウジング2の内面および中空糸膜3の外面間に形成された血液室12と、中空糸膜3の内部に形成されたガス室と、ガス室と連通するガス流入口8およびガス流出口9とを有するものである。
具体的には、本実施形態の中空糸膜型人工肺1は、筒状ハウジング2と、筒状ハウジング2内に収納されたガス交換用中空糸膜3の集合体と、中空糸膜3の両端部をハウジング2に液密に保持する隔壁4,5とを有し、筒状ハウジング2内は、第1の流体室である血液室12と第2の流体室であるガス室とに区画され、筒状ハウジング2には血液室12と連通する血液流入口6および血液流出口7が設けられている。
そして、筒状ハウジング2の端部である隔壁4の上方には中空糸膜3の内部空間であるガス室に連通する第2の流体流入口であるガス流入口8を有するキャップ状のガス流入側ヘッダー10が取り付けられている。よって、隔壁4の外面とガス流入側ヘッダー10の内面により、ガス流入室13が形成されている。このガス流入室13は、中空糸膜3の内部空間により形成されるガス室と連通している。
同様に、隔壁5の下方に設けられ中空糸膜3の内部空間に連通する第2の流体流出口であるガス流出口9を有するキャップ状のガス流出側ヘッダー11が取り付けられている。よって、隔壁5の外面とガス流出側ヘッダー11の内面により、ガス流出室14が形成されている。
中空糸膜3は、疎水性高分子材料からなる多孔質膜であり、公知の人工肺に使用される中空糸膜と同様のものが使用され、特に制限されない。このように中空糸膜(特に中空糸膜の内面)が疎水性高分子材料からなることにより、血漿成分の漏出を抑制することができる。多孔質膜に使用される材質としては、公知の人工肺に使用される中空糸膜と同様の疎水性高分子材料が使用できる。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート等の高分子材料などが挙げられる。これらのうち、ポリオレフィン樹脂が好ましく使用され、ポリプロピレンがより好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、中空糸膜は、ポリオレフィン樹脂で構成される。本発明のより好ましい形態では、中空糸膜は、ポリプロピレンで構成される。
中空糸膜の内径は、特に制限されないが、好ましくは50〜300μm、より好ましくは80〜200μmである。中空糸膜の外径は、特に制限されないが、好ましくは100〜400μm、より好ましくは130〜200μmである。中空糸膜の肉厚(膜厚)は、好ましくは20μm以上50μm未満、より好ましくは25μm以上50μm未満、さらにより好ましくは25〜45μm、さらに好ましくは25〜40μm、さらに好ましくは25〜35μm、特に好ましくは、25〜30μmである。なお、本明細書において、「中空糸膜の肉厚(膜厚)」とは、中空糸膜の内表面と外表面との間の肉厚を意図し、式:[(中空糸膜の外径)−(中空糸膜の内径)]/2で算出される。中空糸膜の肉厚の下限を上記のようにすることによって、中空糸膜の強度を十分確保できる。また、製造上の手間やコストの点でも満足でき、大量生産の観点からも好ましい。また、中空糸膜の空孔率は、好ましくは5〜90体積%、より好ましくは10〜80体積%、特に好ましくは30〜60体積%である。中空糸膜の細孔径は、好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.05〜1μmである。中空糸膜の製造方法は、特に制限されず、公知の中空糸膜の製造方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、中空糸膜は、延伸法または固液相分離法により壁に微細孔が形成されてなることが好ましい。
筒状ハウジング2を構成する材料もまた、公知の人工肺のハウジングに使用されるのと同様の材料が使用できる。具体的には、ポリカーボネート、アクリル・スチレン共重合体、アクリル・ブチレン・スチレン共重合体などの疎水性合成樹脂が挙げられる。ハウジング2の形状は、特に制限されないが、例えば円筒状であり、透明体であることが好ましい。透明体で形成することにより、内部の確認を容易に行うことができる。
本実施形態における中空糸膜の収納量は、特に制限されず、公知の人工肺と同様の量が適用できる。例えば、ハウジング2内に、その軸方向に向けて並列に約5,000〜100,000本の多孔質中空糸膜3が収納されている。さらに、中空糸膜3は、ハウジング2の両端に中空糸膜3の両端がそれぞれ開口した状態で隔壁4,5により液密状態に固定されている。隔壁4,5は、ポリウレタン、シリコーンゴムなどのポッティング剤で形成される。ハウジング2内の上記隔壁4,5ではさまれた部分は、中空糸膜3の内部側のガス室と中空糸膜3の外側の血液室12とに仕切られている。
本実施形態では、ガス流入口8を有するガス流入側ヘッダー10およびガス流出口9を有するガス流出側ヘッダー11が、ハウジング2に液密に取り付けられている。これらヘッダーも、いずれの材料で形成されてもよいが、例えば、上述のハウジングに用いられる疎水性高分子材料(疎水性合成樹脂)により形成されうる。ヘッダーはいずれの方法によって取り付けられてもよいが、例えば、ヘッダーは、超音波、高周波、誘導加熱などを用いた融着、接着剤を用いた接着または機械的に嵌合させることによって、ハウジング2に取り付けられる。また、締め付けリング(図示しない)を用いてもよい。中空糸膜型人工肺1の血液接触部(ハウジング2の内面、中空糸膜3の外面)は、全て疎水性材料により形成されることが好ましい。
図2に示されるように、この中空糸膜型人工肺1の少なくとも血液接触部となる中空糸膜3の外表面3a’(さらには場合によっては外面層3a;以下、同様)には、本発明に係る共重合体18が被覆されている。中空糸膜の内部層3bまたは内面層3cには、この共重合体が実質的存在していないことが好ましい。共重合体が実質的に存在していないため、中空糸膜の内部層または内面層が膜の基材自身が持つ疎水性の特性がそのまま保持され、血漿成分の漏出(リーク)を有効に防止できる。また、中空糸膜3は、中央にガス室を形成する通路(内空)3dを備えている。加えて、中空糸膜3は、その外表面3a’と内表面3c’を連通する開口部3eを有している。かような構成を有する中空糸膜は、本発明に係る共重合体18によって被覆された外表面3a’側に血液が接触し、一方、内表面3’側に酸素含有ガスが流通される形態で使用される。すなわち、本発明における好ましい形態は、中空糸膜3が、酸素含有ガスが流れる内空を形成する内表面3c’と、血液と接触する外表面3a’と、を有し、外表面3a’が、本発明に係る共重合体で被覆される形態(すなわち、外部灌流型)である。
本発明に係る共重合体を使用することにより、中空糸膜の外表面または内表面に、共重合体の被覆を均一に形成できる。このため、中空糸膜の血液接触部での血小板の粘着/付着および活性化をさらに抑制・防止できる。また、被覆が中空糸膜から剥離するのも抑制・防止できる。
本実施形態に係る共重合体の被覆は、人工肺の中空糸膜の外表面または内表面に必須に形成されるが、外表面または内表面に加えて、他の構成部材(例えば、血液接触部全体)に形成されてもよい。当該構成をとることにより、人工肺の血液接触部全体において、血小板の粘着/付着および活性化をさらにより有効に抑制・防止できる。また、血液接触面の接触角が低くなるので、プライミング作業が容易となる。なお、この場合には、本発明に係る共重合体の被覆は血液が接触する他の構成部材に形成されることは好ましいが、血液接触部以外の中空糸膜もしくは中空糸膜の他の部分(例えば、隔壁中に埋没する部分)には、共重合体が被覆されていなくてもよい。このような部分は、血液と接触しないので、共重合体を被覆しなくても特に問題とならない。
また、本発明の人工肺は、図3に示すようなタイプのものであってもよい。図3は、本発明の人工肺の他の実施形態を示す断面図である。また、図4は、図3のA−A線断面図である。
図3において、人工肺20は、側面に血液流通用開口32を有する内側筒状部材31と、内側筒状部材31の外面に巻き付けられた多数のガス交換用多孔質中空糸膜3からなる筒状中空糸膜束22と、筒状中空糸膜束22を内側筒状部材31とともに収納するハウジング23と、中空糸膜3の両端を開口した状態で、筒状中空糸膜束22の両端部をハウジングに固定する隔壁25,26と、ハウジング23内に形成された血液室17と連通する血液流入口28および血液流出口29a、29bと、中空糸膜3の内部と連通するガス流入口24およびガス流出口27とを有するものである。
本実施形態の人工肺20は、図3および図4に示されるように、ハウジング23は、内側筒状部材31を収納する外側筒状部材33を備え、筒状中空糸膜束22は内側筒状部材31と外側筒状部材33間に収納されており、さらに、ハウジング23は、内側筒状部材内と連通する血液流入口または血液流出口の一方と、外側筒状部材内部と連通する血液流入口または血液流出口の他方とを備えている。
具体的には、本実施形態の人工肺20では、ハウジング23は、外側筒状部材33、内側筒状部材31内に収納され、先端が内側筒状部材31内で開口する内筒体35を備える。内筒体35の一端(下端)には、血液流入口28が形成されており、外側筒状部材の側面には、外方に延びる2つの血液流出口29a,29bが形成されている。なお、血液流出口は、一つであってもまたは複数であってもよい。
そして、筒状中空糸膜束22は、内側筒状部材31の外面に巻き付けられている。つまり、内側筒状部材31が筒状中空糸膜束22のコアとなっている。内側筒状部材31の内部に収納された内筒体35は、先端部が第1の隔壁25付近にて開口している。また、内側筒状部材31より突出する下端部に血液流入口28が形成されている。
そして、内筒体35、中空糸膜束22が外面に巻き付けられた内側筒状部材31、さらに、外側筒状部材33は、それぞれがほぼ同心的に配置されている。そして、中空糸膜束22が外面に巻き付けられた内側筒状部材31の一端(上端)および外側筒状部材33の一端(上端)は、第1の隔壁25により、両者の同心的位置関係が維持されるとともに、内側筒状部材内部および外側筒状部材33と中空糸膜の外面との間により形成される空間が外部と連通しない液密状態となっている。
また、内筒体35の血液流入口28より若干上方となる部分、中空糸膜束22が外面に巻き付けられた内側筒状部材31の他端(下端)および外側筒状部材33の他端(下端)は、第2の隔壁26により、両者の同心的位置関係が維持されるとともに、内筒体35と内側筒状部材内部間に形成される空間および外側筒状部材33と中空糸膜の外面との間により形成される空間が外部と連通しない液密状態となっている。また、隔壁25,26は、ポリウレタン、シリコーンゴムなどのポッティング剤で形成される。
よって、本実施形態の人工肺20では、内筒体35の内部により形成される血液流入部17a、内筒体35と内側筒状部材間に形成される実質的に筒状空間となっている第1の血液室17b、中空糸膜束22と外側筒状部材33との間に形成される実質的に筒状空間となっている第2の血液室17cを備え、これらにより血液室17が形成されている。
そして、血液流入口28から流入した血液は、血液流入部17a内に流入し、内筒体35(血液流入部17a)内を上昇し、内筒体35の上端35a(開口端)より流出し、第1の血液室17b内に流入し、内側筒状部材31に形成された開口32を通過して、中空糸膜に接触し、ガス交換がなされた後、第2の血液室17cに流入し、血液流出口29a,29bより流出する。
また、外側筒状部材33の一端には、ガス流入口24を備えるガス流入用部材41が固定されており、同様に、外側筒状部材33の他端には、ガス流出口27を有するガス流出用部材42が固定されている。なお、内筒体35の血液流入口28は、このガス流出用部材42を貫通して外部に突出している。
外側筒状部材33としては、特に制限されないが、円筒体、多角筒、断面が楕円状のものなどが使用できる。好ましくは円筒体である。また、外側筒状部材の内径は、特に制限されず、公知の人工肺に使用される外側筒状部材の内径と同様でありうるが、32〜164mm程度が好適である。また、外側筒状部材の有効長(全長のうち隔壁に埋もれていない部分の長さ)もまた、特に制限されず、公知の人工肺に使用される外側筒状部材の有効長と同様でありうるが、10〜730mm程度が好適である。
また、内側筒状部材31の形状は、特に制限されないが、例えば、円筒体、多角筒、断面が楕円状のものなどが使用できる。好ましくは円筒体である。また、内側筒状部材の外径は、特に制限されず、公知の人工肺に使用される内側筒状部材の外径と同様でありうるが、20〜100mm程度が好適である。また、内側筒状部材の有効長(全長のうち隔壁に埋もれていない部分の長さ)もまた、特に制限されず、公知の人工肺に使用される内側筒状部材の有効長と同様でありうるが、10〜730mm程度が好適である。
内側筒状部材31は、側面に多数の血液流通用開口32を備えている。開口32の大きさは、筒状部材の必要強度を保持する限り、総面積が大きいことが好ましい。このような条件を満足するものとしては、例えば、正面図である図5、図5の中央縦断面図である図6、さらに図5のB−B線断面図である図7に示されるように、開口32を筒状部材の外周面に等角度間隔で複数(例えば、4〜24個、図では、長手方向に8個)設けた環状配置開口を、筒状部材の軸方向に等間隔で複数組(図では、8組/周)設けたものが好適である。さらに、開口形状は、丸、多角形、楕円形などでもよいが、図5に示すような、長円形状のものが好適である。
また、内筒体35の形状は、特に制限されないが、例えば、円筒体、多角筒、断面が楕円状のものなどが使用できる。好ましくは円筒体である。また、内筒体35の先端開口と第1の隔壁25との距離は、特に制限されず、公知の人工肺に使用されるのと同様の距離が適用できるが、20〜50mm程度が好適である。また、内筒体35の内径もまた、特に制限されず、公知の人工肺に使用される内筒体の内径と同様でありうるが、10〜30mm程度が好適である。
筒状中空糸膜束22の厚さは、特に制限されず、公知の人工肺に使用される筒状中空糸膜束の厚さと同様でありうるが、5〜35mmが好ましく、特に10mm〜28mmであることが好ましい。また、筒状中空糸膜束22の外側面と内側面間により形成される筒状空間に対する中空糸膜の充填率もまた、特に制限されず、公知の人工肺における充填率が同様にして適用できるが、40〜85%が好ましく、特に45〜80%が好ましい。また、中空糸膜束22の外径は、公知の人工肺に使用される中空糸膜束の外径と同様でありうるが、30〜170mmが好ましく、特に、70〜130mmが好ましい。ガス交換膜としては、上述したものが使用される。
そして、中空糸膜束22は、内側筒状部材31に中空糸膜を巻き付けること、具体的には、内側筒状部材31をコアとして、中空糸膜ボビンを形成させ、形成された中空糸膜ボビンの両端を、隔壁による固定の後、コアである内側筒状部材31とともに中空糸膜ボビンの両端を切断することにより、形成することができる。なお、この切断により、中空糸膜は、隔壁の外面において開口する。なお、中空糸膜の形成方法は、上記方法に限定されるものではなく、他の公知の中空糸膜の形成方法を同様にしてあるいは適宜修飾して使用してもよい。
特に、中空糸膜は、1本あるいは複数本同時に、実質的に平行でかつ隣り合う中空糸膜が実質的に一定の間隔となるように内側筒状部材31に巻きつけられることが好ましい。これにより、血液の偏流をより有効に抑制できる。また、中空糸膜は、隣り合う中空糸膜との距離が、以下に制限されないが、中空糸膜の外径の1/10〜1/1となっていることが好ましい。さらに、中空糸膜は、隣り合う中空糸膜との距離が、30〜200μmが好ましく、特に好ましくは50〜180μmである。
さらに、中空糸膜束22は、中空糸膜が、1本あるいは複数本(好ましくは、2〜16本)同時に、かつ隣り合うすべての中空糸膜が実質的に一定の間隔となるように内側筒状部材31に巻きつけられることによって、形成されたものであるとともに、中空糸膜を内側筒状部材上に巻き付ける際に、内側筒状部材31を回転させるための回転体と中空糸膜を編み込むためのワインダーとが、下記式(A)の条件で動くことによって内側筒状部材31に巻きつけられることにより形成されたものであることが好ましい。
上記条件とすることによって、血液偏流の形成をより少ないものとすることができる。このときの巻取り用回転体の回転数とワインダー往復数の関係であるnは、特に制限されないが、通常、1〜5の整数であり、好ましくは2〜4の整数である。
なお、上記他の実施形態に係る人工肺では、血液が筒状中空糸膜束22の内側より流入し、中空糸膜束22を通過した血液が中空糸膜束22の外側に流れた後、人工肺20より流出するタイプのものとなっているが、これに限られるものではない。上記他の実施形態とは逆に、血液が筒状中空糸膜束22の外側より流入し、中空糸膜束22を通過した血液が中空糸膜束22の内側に流れた後、人工肺20より流出するタイプのものであってもよい。
また、中空糸膜型人工肺20においても、図2に示すように、この中空糸膜型人工肺1の少なくとも中空糸膜3の外表面3a’(さらには外面層3a)に、本発明に係る共重合体18が被覆されていることが好ましい。ここで、本発明に係る共重合体は、中空糸膜3の内部層3bまたは内面層3cに存在してもよいが、中空糸膜3の内部層3bまたは内面層3cには実質的に存在していないことが好ましい。また、中空糸膜3は、中央にガス室を形成する通路3dを備えている。ここで、中空糸膜の好ましい形態(内径、外径、肉厚、空孔率など)は、特に制限されないが、上記図1において記載したのと同様の形態が採用できる。
本実施形態に係る人工肺20では、中空糸膜3は互いに接触するとともに何重にも積み重ねられたいわゆるボビン状となっている。本実施形態では、共重合体の被覆は、均一に中空糸膜の外表面または内表面に形成される。なお、本実施形態では、血液流路が複雑でかつ狭い部分を多く備え、ガス交換能には優れるが、血小板の粘着/付着および活性化の点においては、ボビンタイプでない外部血液灌流型の人工肺より劣る場合がある。しかしながら、上述したように、共重合体の被覆は均一であるため、中空糸膜の血液接触部での血小板の粘着/付着および活性化が少ない。また、被覆(特にコートむら部分)が中空糸膜から剥離するのも抑制・防止できる。
また、本実施形態に係る共重合体の被覆は、人工肺の中空糸膜の外表面または内表面に必須に形成されるが、外表面または内表面に加えて、他の構成部材(例えば、血液接触部全体)に形成されてもよい。当該構成をとることにより、人工肺の血液接触部全体において、血小板の粘着/付着および活性化をさらにより有効に抑制・防止できる。また、血液接触面の接触角が低くなるので、プライミング作業が容易となる。なお、この場合には、本発明に係る共重合体の被覆は血液が接触する他の構成部材に形成されることは好ましいが、血液接触部以外の中空糸膜もしくは中空糸膜の他の部分(例えば、隔壁中に埋没する部分、中空糸相互の接触部)には、共重合体が被覆されていなくてもよい。このような部分は、血液と接触しないので、共重合体を被覆しなくても特に問題とならない。
(本発明に係る共重合体)
本発明に係る共重合体は、70モル%以上90モル%以下の下記式(1):
のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)および10モル%以上30モル%以下の下記式(2):
のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(2)を有する。ここで、構成単位(1)および構成単位(2)の合計は100モル%である。
共重合体は、構成単位(1)および構成単位(2)、ならびに必要であれば下記に詳述する他のモノマーを有する。ここで、各構成単位の配置は、特に制限されず、ブロック状(ブロック共重合体)でもよいしランダム状(ランダム共重合体)でもよいし交互状(交互共重合体)でもよい。好ましくは、本発明に係る共重合体は、ランダム共重合体である。
アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(構成単位(1))は、共重合体の基材への吸着を促進する。また、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(構成単位(1))は、共重合体に抗血栓性を付与する。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(構成単位(2))は、共重合体の中間水含量(親水性)を増加させる(生体成分の吸着(結合)を抑制・防止する)。これらの構成単位(1)、(2)を上記したような組成で有する共重合体は、共重合体の基材への吸着(共重合体被膜の形成しやすさ)と、生体成分の吸着(結合)の抑制・防止と、を良好なバランスにて発揮できる。
共重合体を構成する構成単位(1)は、構成単位(1)および構成単位(2)の合計(100モル%)に対して、70モル%以上90モル%以下であり、構成単位(2)は、構成単位(1)および構成単位(2)の合計(100モル%)に対して、10モル%以上30モル%以下である。ここで、構成単位(2)の含有量が10モル%未満であると、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(構成単位(2))による効果(生体成分の吸着(結合)の抑制・防止効果)が発揮されず、人工肺に適用時の耐久性に劣る(下記比較例5参照)。他方、構成単位(2)の含有量が30モル%を超えると、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートの含有量が少なすぎ、共重合体が基材に吸着できない(下記比較例1〜3参照)。基材への吸着性と生体成分の吸着(結合)の抑制・防止効果とのバランスのさらなる向上などの観点から、構成単位(1)は、構成単位(1)および構成単位(2)の合計に対して、80モル%以上90モル%以下であり、かつ構成単位(2)は、構成単位(1)および構成単位(2)の合計に対して、10モル%以上20モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、構成単位(1)は、構成単位(1)および構成単位(2)の合計に対して、80モル%以上90モル%未満であり、かつ構成単位(2)は、構成単位(1)および構成単位(2)の合計に対して、10モル%を超えて20モル%以下である。すなわち、本発明の好ましい形態によると、共重合体は、80モル%以上90モル%以下の前記式(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)および10モル%以上20モル%以下の前記式(2)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(2)を有する共重合体(構成単位(1)および構成単位(2)の合計は100モル%である)である。本発明のより好ましい形態によると、共重合体は、80モル%以上90モル%未満の前記式(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)および10モル%を超えて20モル%以下の前記式(2)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(2)を有する共重合体(構成単位(1)および構成単位(2)の合計は100モル%である)である。なお、当該モル%は、共重合体を製造する際の全単量体の合計仕込み量(モル)に対する各単量体の仕込み量(モル)の割合と実質的に同等である。また、共重合体における各構成単位の割合は、NMR、IR等の公知の手段を用い、各構成単位に含まれる基のピーク強度を分析することで確認することができる。
本発明に係る共重合体は、構成単位(1)及び構成単位(2)を必須に含むが、構成単位(1)及び構成単位(2)に加えて、他のモノマーに由来する構成単位をさらに有していてもよい。ここで、他のモノマーは、所望の特性(共重合体の基材への吸着と、生体成分の吸着(結合)の抑制・防止と、のバランス)を阻害しないものであれば特に制限されない。具体的には、他のモノマーとしては、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、エチレン、プロピレン、N−ビニルアセトアミド、N−イソプロペニルアセトアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等がある。共重合体が他のモノマーに由来する構成単位をさらに有する場合の他のモノマーに由来する構成単位の含有量は、所望の特性(共重合体の基材への吸着と、生体成分の吸着(結合)の抑制・防止と、のバランス)を阻害しないものであれば特に制限されないが、構成単位(1)及び構成単位(2)の合計に対して、0モル%を超えて10モル%未満であることが好ましく、3〜8モル%程度であることがより好ましい。なお、当該モル%は、共重合体を製造する際の全単量体の合計仕込み量(モル)に対するその他の単量体の仕込み量(モル)の割合と実質的に同等である。
基材への吸着性と生体成分の吸着(結合)の抑制・防止効果とのバランスのさらなる向上などの観点から、共重合体は、他のモノマーに由来する繰り返し単位を含まない、すなわち、本発明に係る共重合体が構成単位(1)及び構成単位(2)のみから構成されることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態によると、共重合体は、前記構成単位(1)および前記構成単位(2)から構成される。
また、共重合体の重量平均分子量(Mw)は、20万以上である。ここで、Mwが20万未満であると、共重合体長が短く、コート液中で重合体同士が十分絡み合わない。このため、塗工(キャスト)時の形状を維持できず、基材上に被膜を所望の形状に形成できない(下記比較例6〜8参照)。共重合体の重量平均分子量(Mw)は、キャスト膜形成性(被膜形成性)、被膜安定性などの観点から、好ましくは35万を超え、さらに好ましくは39万以上である。なお、共重合体の重量平均分子量(Mw)の上限は特に制限されないが、溶媒溶解性、塗工性などの観点から、例えば100万以下であり、好ましくは70万以下であり、特に好ましくは55万未満である。本発明の好ましい形態では、共重合体の重量平均分子量(Mw)は、20万以上100万以下である。本発明のより好ましい形態では、共重合体の重量平均分子量(Mw)は、35万を超え70万以下である。本発明の特に好ましい形態では、共重合体の重量平均分子量(Mw)は、39万以上55万未満である。
本明細書において、共重合体の重量平均分子量(Mw)は、標準物質としてポリスチレンを、移動相としてテトラヒドロフラン(THF)をそれぞれ使用するゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)により測定した値を採用するものとする。具体的には、共重合体をテトラヒドロフラン(THF)に10mg/mlの濃度となるように溶解し、試料を調製する。このようにして調製された試料について、GPCシステムLC−20((株)島津製作所製)にGPCカラムLF−804(昭和電工(株)製)を取り付け、移動相としてTHFを流し、標準物質としてポリスチレンを用いて、共重合体のGPCを測定する。標準ポリスチレンで較正曲線を作製した後、この曲線に基づいて共重合体の重量平均分子量(Mw)を算出する。
本発明に係る組成を有する共重合体は、適度な中間水含量を有する(中空糸膜上に適切な厚みの中間水層を形成できる)。具体的には、本発明に係る共重合体は、0.06〜0.12g/g、好ましくは0.06g/g以上0.12g/g未満、より好ましくは0.06g/gを超えて0.10g/g以下の中間水含量を有する。本発明に係る組成および上記中間水含量双方を満足する共重合体は、中空糸膜(特にポリオレフィン製中空糸膜)に十分量吸着しつつ、十分な厚みの中間水層を介して血液等の生体成分の水和構造と不凍水との接触を抑え、生体成分の吸着(結合)をさらに抑制・防止できる。このため、かような共重合体は生体適合性により一層優れたものとなる。
本明細書において、共重合体の中間水含量は、下記方法に従って測定された値である。
(共重合体の中間水含量の測定)
1.平衡含水率の測定
共重合体をスパーテルで適量(約0.1g)採取し、過剰量(共重合体の重量の、少なくとも100倍の重量)の超純水中に1週間室温(25℃)で浸漬して、共重合体を平衡含水させ、試料を得た。次に、この試料を適量(約0.01g)採取し、試料表面の過剰な水分を低発塵クリーンワイプで吸い取った後、予め重量を測定したガラスシャーレに乗せ、素早く(3分以内に)重量を測定する(含水重量(g))。さらに、この試料を120℃で1時間真空乾燥させ、デシケーター内で30分間放冷後、重量を測定する(乾燥重量(g))。このようにして測定された含水重量及び乾燥重量に基づいて、下記式に従って、平衡含水率(重量%)を求める。
2.水和構造割合の測定
共重合体の水和構造割合(中間水含量、自由水含量、不凍水含量)を、Cold crystallization of water in hydrated poly(2-methoxyethyl acrylate) (PMEA) Polymer International 49: 1709-1713 (2000)を参照して測定する。
詳細には、上記1.と同様にして平衡含水させた試料を作製する。この試料について、下記の条件にて示差走査熱量測定(DSC)による分析を行い、水の低温結晶化(Cold Crystallization)及び融解挙動を測定する。そして、共重合体に吸着した水を、自由水(0℃で融解し、共重合体または不凍水と弱い相互作用をしている水)、中間水(昇温過程で0℃より低温で凍結し、共重合体または不凍水と中間的な相互作用をしている水)、および不凍水(共重合体との強い相互作用により−100℃でも凍結しない水)に分類し、上記1.で求めた平衡含水率(重量%)、−40℃の低温結晶化熱量(−ΔHcc(mJ))及び0℃の融解熱量(ΔHm(mJ))に基づいて、以下のようにして試料中に存在する各水和構造の割合を算出する。具体的には、中間水含量(g/g)、ならびに必要に応じて自由水含量(g/g)および不凍水含量(g/g)を求める。
<DSC測定条件>
温度範囲: −90℃(10分間保持)→50℃
昇温速度: 2.5℃/min
測定雰囲気:窒素ガス 50ml/min
測定容器: アルミニウム製ハーメチックパン
使用装置: DSC Q100 TA instruments 社製
<各水和構造の重量および割合の算出方法>
「平衡含水率(重量%)=不凍水(重量%)+中間水(重量%)+自由水(重量%)」と定義し、以下の方法にて、各水和構造の重量および割合を算出する。
中間水含量(g/g):−40℃の低温結晶化熱量(−ΔHcc(mJ))を水の凝固熱量334J/g(化学便覧基礎編改訂4版、社団法人日本化学会編)で除算し、中間水の重量(mg)を求めた。また、中間水の重量(mg)を測定試料の重量(mg)で除算し、中間水含量(g/g)を求める。
自由水含量(g/g):0℃の融解熱量(ΔHm(mJ))を水の融解熱量334J/gで除算し、中間水と自由水の合計重量(mg)を求める。合計重量から上記中間水の重量を減算し、自由水の重量(mg)を求める。また、自由水の重量(mg)を測定試料の重量(mg)で除算し、自由水含量(g/g)を求める。
不凍水含量(g/g):測定試料の重量(mg)に平衡含水率(重量%)を乗算し、平衡含水量(mg)を求める。この平衡含水量から上記中間水の重量及び自由水の重量を減算し、不凍水の重量(mg)を求める。また、不凍水の重量(mg)を測定試料の重量(mg)で除算し、不凍水含量(g/g)を求める。
本発明に係る共重合体は、70モル%以上90モル%以下の構成単位(1)及び10モル%以上30モル%以下の構成単位(2)を有する。ここで、構成単位(1)は、下記式(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来である。なお、共重合体を構成する構成単位(1)は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。すなわち、構成単位(1)は、1種単独の下記式(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位のみから構成されても、あるいは2種以上の下記式(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位から構成されてもよい。なお、後者の場合、各構成単位は、ブロック状に存在しても、ランダム状に存在してもよい。また、構成単位(1)が2種以上の下記式(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位から構成される場合には、上記構成単位(1)の組成は、構成単位(1)および構成単位(2)の合計に対する、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の合計の割合(モル比(モル%))である。
上記式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基である。Rは、炭素原子数2〜3のアルキレン基である。ここで、炭素原子数2〜3のアルキレン基としては、エチレン基(−CHCH−)、トリメチレン基(−CHCHCH−)、及びプロピレン基(−CH(CH)CH−または−CHCH(CH)−)がある。これらのうち、共重合体の基材への吸着のさらなる向上などの観点から、Rは、エチレン基(−CHCH−)、プロピレン基が好ましく、エチレン基(−CHCH−)がより好ましい。また、Rは、炭素原子数1〜3のアルキル基である。ここで、炭素原子数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、及びイソプロピル基がある。これらのうち、共重合体の基材への吸着のさらなる向上などの観点から、Rは、メチル基、エチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
すなわち、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシプロピルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、エトキシブチルアクリレート、プロポキシメチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、プロポキシメチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート等がある。これらのうち、共重合体の基材への吸着のさらなる向上などの観点から、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレートであることが好ましく、メトキシエチル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、メトキシエチルアクリレート(MEA)であることが特に好ましい。
構成単位(2)は、下記式(2)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来である。なお、共重合体を構成する構成単位(2)は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。すなわち、構成単位(2)は、1種単独の下記式(2)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位のみから構成されても、あるいは2種以上の下記式(2)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位から構成されてもよい。なお、後者の場合、各構成単位は、ブロック状に存在しても、ランダム状に存在してもよい。また、構成単位(2)が2種以上の下記式(2)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位から構成される場合には、上記構成単位(2)の組成は、構成単位(1)および構成単位(2)の合計に対する、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の合計の割合(モル比(モル%))である。
上記式(2)中、Rは、水素原子またはメチル基である。Rは、炭素原子数2〜3のアルキレン基である。ここで、炭素原子数2〜3のアルキレン基としては、エチレン基(−CHCH−)、トリメチレン基(−CHCHCH−)、及びプロピレン基(−CH(CH)CH−または−CHCH(CH)−)がある。これらのうち、共重合体への抗血栓性をさらなる付与などの観点から、Rは、エチレン基(−CHCH−)、トリメチレン基(−CHCHCH−)が好ましく、エチレン基(−CHCH−)がより好ましい。
すなわち、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシイソプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシイソプロピルメタクリレート等がある。これらのうち、共重合体への抗血栓性をさらなる付与などの観点から、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであることが好ましく、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)であることがより好ましい。
本発明に係る共重合体は、特に制限されず、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、リビングラジカル重合法、マクロ開始剤を用いた重合法、重縮合法等など、従来公知の重合法を適用して作製可能である。具体的には、例えば、本発明に係る共重合体がブロック共重合体である場合には、リビングラジカル重合法またはマクロ開始剤を用いた重合法が好ましく使用される。リビングラジカル重合法としては、特に制限されないが、例えば特開平11−263819号公報、特開2002−145971号公報、特開2006−316169号公報等に記載される方法、ならびに原子移動ラジカル重合(ATRP)法などが、同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。
または、例えば、本発明に係る共重合体がランダム共重合体である場合には、上記式(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、上記式(2)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートならびに必要であればこれらと共重合し得る単量体(他のモノマー、共重合性単量体)の一種または二種以上を重合溶媒中で重合開始剤と共に撹拌して、単量体溶液を調製し、上記単量体溶液を加熱することにより、共重合させる方法が好ましく使用される。上記方法において、単量体溶液の調製で使用できる重合溶媒は、上記使用される単量体を溶解できるものであれば特に制限されない。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール、ポリエチレングリコール類などの水性溶媒;トルエン、キシレン、テトラリン等の芳香族系溶媒;及びクロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒などが挙げられる。これらのうち、単量体の溶解しやすさなどを考慮すると、メタノールが好ましい。また、単量体溶液中の単量体濃度は、特に制限されないが、単量体溶液中の単量体濃度は、通常15〜60重量%であり、より好ましくは37〜55重量%であり、特に好ましくは40〜50重量%である。なお、上記単量体濃度は、単量体溶液中の、上記式(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよび上記式(2)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートならびに使用する際にはこれらと共重合し得る単量体(他のモノマー、共重合性単量体)の合計濃度を意味する。
重合開始剤は特に制限されず、公知のものを使用すればよい。好ましくは、重合安定性に優れる点で、ラジカル重合開始剤であり、具体的には、過硫酸カリウム(KPS)、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン)]ハイドレート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシピバレート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(セカンダリーブチル)パーオキシジカーボネート、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物が挙げられる。また、例えば、上記ラジカル重合開始剤に、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸等の還元剤を組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。重合開始剤の配合量は、単量体合計量1モルに対して、0.0005〜0.005モルが好ましい。このような重合開始剤の配合量であれば、各単量体の共重合が効率よく進行する。
上記重合開始剤は、上記式(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよび上記式(2)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートならびに使用する際にはこれらと共重合し得る単量体(他のモノマー、共重合性単量体;以下、同様)と、重合溶媒とそのまま混合されてもよいが、予め他の溶媒に溶解した溶液の形態で単量体及び重合溶媒とそのまま混合されてもよい。後者の場合、他の溶媒としては、重合開始剤を溶解できるものであれば特に制限されないが、上記重合溶媒と同様の溶媒が例示できる。また、他の溶媒は、上記重合溶媒と同じであってもまたは異なってもよいが、重合の制御のしやすさなどを考慮すると、上記重合溶媒と同じ溶媒であることが好ましい。また、この場合の他の溶媒における重合開始剤の濃度は、特に制限されないが、混合のしやすさなどを考慮すると、重合開始剤の添加量が、他の溶媒100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
また、重合開始剤を溶液の形態で使用する場合には、単量体(アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び必要に応じて用いられる共重合性単量体)を重合溶媒に溶解した溶液を、重合開始剤溶液の添加前に予め脱気処理を行ってもよい。脱気処理は、例えば、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスにて、上記溶液を10秒〜5時間程度バブリングすればよい。脱気処理の際は、上記溶液を30℃〜80℃程度、好ましくは下記の重合工程における重合温度に調温してもよい。
次に、上記単量体溶液を加熱することにより、各単量体を共重合する。ここで、共重合方法は、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などの公知の重合方法が採用でき、好ましくは製造が容易なラジカル重合を使用する。
重合条件は、上記式(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよび上記式(2)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートならびに使用する際にはこれらと共重合し得る単量体(他のモノマー、共重合性単量体)が共重合できる条件であれば特に制限されない。具体的には、共重合温度は、好ましくは30〜80℃であり、より好ましくは40〜55℃である。また、共重合時間は、好ましくは1〜24時間であり、好ましくは5〜12時間である。上記したような条件であれば、各単量体の共重合が効率よく進行する。また、重合工程におけるゲル化を有効に抑制・防止すると共に、高い製造効率を達成できる。
また、必要に応じて、連鎖移動剤、重合速度調整剤、界面活性剤、およびその他の添加剤を、重合の際に適宜使用してもよい。
重合反応を行う雰囲気は特に制限されるものではなく、大気雰囲気下、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気等で行うこともできる。また、重合反応中は、反応液を攪拌してもよい。
重合後の重合体は、再沈澱法(析出法)、透析法、限外濾過法、抽出法など一般的な精製法により精製することができる。
精製後の重合体は、凍結乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥、または加熱乾燥等、任意の方法によって乾燥することもできるが、重合体の物性に与える影響が小さいという観点から、凍結乾燥または減圧乾燥が好ましい。
上記により、本発明に係る共重合体が製造される。
(人工肺の製造方法)
本発明の人工肺では、中空糸膜の外表面または内表面が上記したような本発明に係る共重合体および溶媒を含む溶液(コート液)で被覆する。すなわち、本発明は、疎水性高分子材料からなる複数のガス交換用多孔質中空糸膜を有する人工肺の製造方法であって、前記中空糸膜は、内腔を形成する内表面と、外表面とを有しており、前記内表面または前記外表面のいずれか一方を、下記(a)および(b)を満たす共重合体および溶媒を含む溶液で被覆することを有する、製造方法をも提供する:
(a)前記共重合体は、70モル%以上90モル%以下の下記式(1):
のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)および10モル%以上30モル%以下の下記式(2):
のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(2)を有し(構成単位(1)および構成単位(2)の合計は100モル%である);および
(b)前記共重合体は、20万以上の重量平均分子量(Mw)を有する。
以下では、本発明の人工肺の製造方法の好ましい形態について説明する。なお、本発明は、本発明に係る共重合体を含む溶液で中空糸膜の外表面または内表面を被覆する以外は、下記好ましい形態に限定されない。また、共重合体は、上記と同様の定義であるため、ここでは説明を省略する。
まず、人工肺(例えば、図1または図3のような構造のもの)を組み立てた後、人工肺の血液流通側に、本発明に係る共重合体を溶解させた共重合体含有溶液(コート液)を接触させる(流通させる)。これによって、中空糸膜の外表面または内表面(すなわち、血液接触部)に本発明に係る共重合体を被覆する。または、共重合体含有溶液による中空糸膜の被覆は、人工肺組立前に行ってもよい。
ここで、共重合体含有溶液(コート液)中の本発明に係る共重合体の濃度は、特に制限されない。被覆の形成しやすさ、コートむらの低減効果などを考慮すると、好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは0.2〜10重量%である。上記したような濃度であれば、十分量の共重合体を中空糸膜の所望の面(血液接触部)に均一に被覆できる。
共重合体含有溶液の調製に使用される溶媒は、本発明に係る共重合体を溶解できるものであれば特に制限されない。共重合体の溶解性などの観点から、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、ポリエチレングリコール類などの水性溶媒;アセトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のフラン系溶媒などが挙げられる。上記溶媒は、1種単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。共重合体の溶解性、中空糸膜の細孔の酸素含有ガスが流れる側の表面(内表面または外表面)までの共重合体含有溶液の浸透を防止する観点から、溶媒が水を含むことが好ましく、水とアルコール(特に、メタノール、エタノール)との混合溶媒であることが好ましい。共重合体を水とアルコールとの混合溶媒に溶解する際の、水とアルコールとの混合比(水:アルコール(体積比))は、特に制限されない。本発明に係る共重合体の溶解性をさらに向上する、さらには中空糸膜の細孔の酸素含有ガスが流れる側の表面(内表面または外表面)までの共重合体含有溶液の浸透を防止するなどの観点から、水とアルコールとの混合比(水:アルコール(体積比))は、1.2〜4:1であることが好ましく、1.4〜3:1であることがより好ましい。なお、2種以上のアルコールを使用する場合には、上記混合比は、水の量(体積)とアルコールの合計量(体積)との割合である。
本発明では、中空糸膜の外表面または内表面を共重合体含有溶液と接触(共重合体含有溶液の人工肺の血液流通側への流通)させて、中空糸膜の外表面または内表面に共重合体の塗膜を形成する。ここで、共重合体含有溶液の中空糸膜の外表面または内表面への塗布量は特に制限されない。
また、共重合体の被覆方法は、特に制限されないが、充填、ディップコーティング(浸漬法)、噴霧、スピンコーティング、滴下、ドクターブレード、刷毛塗り、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、混合溶液含浸スポンジコート等、従来公知の方法を適用することができる。
また、共重合体の塗膜の形成条件は、特に制限されない。例えば、共重合体含有溶液と中空糸膜との接触時間(共重合体含有溶液の中空糸膜の血液流通側への流通時間)は、塗膜(被覆層)の形成しやすさ、コートむらの低減効果などを考慮すると、0.5〜5分が好ましく、1〜3分がより好ましい。また、共重合体含有溶液と中空糸膜との接触温度(共重合体含有溶液の中空糸膜の血液流通側への流通温度)は、塗膜の形成しやすさ、コートむらの低減効果などを考慮すると、5〜40℃が好ましく、15〜30℃がより好ましい。
共重合体含有溶液中空糸膜の外表面または内表面への塗布量は、特に制限されないが、乾燥後の塗膜(被覆層)の厚みが5nm〜20μm程度となるような量であるであることが好ましい。なお、1回の接触(塗布)にて上記厚みが得られない場合には、接触(塗布)工程を所望の厚みが得られるまで、塗布工程(または塗布工程及び下記乾燥工程)を繰り返してもよい。
上記共重合体含有溶液との接触後に、塗膜を乾燥させることによって、本発明に係る共重合体を含む被膜(被覆)を中空糸膜の外表面または内表面に形成する。ここで、乾燥条件は、本発明に係る共重合体による被覆(被膜)が中空糸膜の外表面または内表面に形成できる条件であれば特に制限されない。具体的には、乾燥温度は、5〜50℃が好ましく、15〜40℃がより好ましい。また、乾燥時間は、60〜400分が好ましく、120〜300分がより好ましい。また、好ましくは5〜40℃、より好ましくは15〜30℃のガスを中空糸膜に連続してまたは段階的に流通させることによって、塗膜を乾燥してよい。ここで、ガスの種類は、塗膜に何ら影響を及ぼさず、塗膜を乾燥できるものであれば特に制限されない。具体的には、空気、および窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスなどが挙げられる。また、ガスの流通量は、塗膜を十分乾燥できる量であれば特に制限されないが、好ましく5〜150L/分であり、より好ましく30〜100L/分である。
上記により、中空糸膜の外表面側に共重合体の被覆(被膜)を形成し、人工肺が製造される。本発明に係る共重合体は、十分量で中空糸膜に吸着できる。また、本発明に係る共重合体によれば、強靱な被膜を中空糸膜面に形成できる。このため、本発明の人工肺は、抗血栓性生体適合(血小板の粘着/付着の抑制・防止効果、および血小板の活性化の抑制・防止効果)、特に血小板の粘着/付着の抑制・防止効果に優れ、耐久性を向上できる(血液循環時間を延長できる)。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「重量%」および「重量部」を意味する。
製造例1:重合体(1)の合成
20ml容量のガラス製耐圧試験管に、メトキシエチルアクリレート(MEA)1.8g(0.0138mol)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.2g(0.0015mol)、およびメタノール2.8gを加えた後、窒素ガスを10秒間バブリングして、モノマー溶液を調製した。このモノマー溶液に、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(2,2'-Azobis(4-methoxy-2,4-dimethylvaleronitrile))0.004g(0.013mmol)を加えた後、45℃に設定したヒートブロックで6時間加熱して、重合反応を行い、重合液を得た。この重合液をエタノール50mlに加え、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、メトキシエチルアクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートとの重合体(1)(MEA:HEMA=90:10(モル比))を得た。この重合体(1)の重量平均分子量(Mw)および中間水含量を測定したところ、それぞれ、390,000および0.06g/gであった。
製造例2:重合体(2)の合成
20ml容量のガラス製耐圧試験管に、メトキシエチルアクリレート(MEA)1.6g(0.0123mol)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.4g(0.0031mol)、およびメタノール2.8gを加えた後、窒素ガスを10秒間バブリングして、モノマー溶液を調製した。このモノマー溶液に、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(2,2'-Azobis(4-methoxy-2,4-dimethylvaleronitrile))0.004g(0.013mmol)を加えた後、45℃に設定したヒートブロックで6時間加熱して、重合反応を行い、重合液を得た。この重合液をエタノール50mlに加え、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、メトキシエチルアクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートとの重合体(2)(MEA:HEMA=80:20(モル比))を得た。この重合体(2)の重量平均分子量(Mw)および中間水含量を測定したところ、それぞれ、410,000および0.08g/gであった。
製造例3:重合体(3)の合成
20ml容量のガラス製耐圧試験管に、メトキシエチルアクリレート(MEA)1.4g(0.0108mol)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.6g(0.0046mol)、およびメタノール2.8gを加えた後、窒素ガスを10秒間バブリングして、モノマー溶液を調製した。このモノマー溶液に、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(2,2'-Azobis(4-methoxy-2,4-dimethylvaleronitrile))0.004g(0.013mmol)を加えた後、45℃に設定したヒートブロックで6時間加熱して、重合反応を行い、重合液を得た。この重合液をエタノール50mlに加え、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、メトキシエチルアクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートとの重合体(3)(MEA:HEMA=70:30(モル比))を得た。この重合体(3)の重量平均分子量(Mw)および中間水含量を測定したところ、それぞれ、430,000および0.12g/gであった。
製造例4:重合体(4)の合成
20ml容量のガラス製耐圧試験管に、メトキシエチルアクリレート(MEA)1.2g(0.009mol)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.8g(0.006mol)、およびメタノール2.8gを加えた後、窒素ガスを10秒間バブリングして、モノマー溶液を調製した。このモノマー溶液に、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(2,2'-Azobis(4-methoxy-2,4-dimethylvaleronitrile))0.004g(0.013mmol)を加えた後、45℃に設定したヒートブロックで6時間加熱して、重合反応を行い、重合液を得た。この重合液をエタノール50mlに加え、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、メトキシエチルアクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートとの重合体(4)(MEA:HEMA=60:40(モル比))を得た。この重合体(4)の重量平均分子量(Mw)および中間水含量を測定したところ、それぞれ、400,000および0.08g/gであった。
製造例5:重合体(5)の合成
20ml容量のガラス製耐圧試験管に、メトキシエチルアクリレート(MEA)2.0g(0.015mol)およびメタノール3.5gを加えた後、窒素ガスを10秒間バブリングして、モノマー溶液を調製した。このモノマー溶液に、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(2,2'-Azobis(4-methoxy-2,4-dimethylvaleronitrile))0.004g(0.013mmol)を加えた後、45℃に設定したヒートブロックで6時間加熱して、重合反応を行い、重合液を得た。この重合液をエタノール50mlに加え、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、メトキシエチルアクリレートの重合体(5)(MEA:HEMA=100:0(モル比))を得た。この重合体(5)の重量平均分子量(Mw)および中間水含量を測定したところ、それぞれ、350,000および0.03g/gであった。
製造例6:重合体(6)の合成
50ml容量のガラス製耐圧試験管に、メトキシエチルアクリレート(MEA)1.6g(0.0123mol)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.4g(0.0031mol)、およびメタノール18gを加えた後、窒素ガスを10秒間バブリングして、モノマー溶液を調製した。このモノマー溶液に、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(2,2'-Azobis(4-methoxy-2,4-dimethylvaleronitrile))0.004g(0.013mmol)を加えた後、45℃に設定したヒートブロックで6時間加熱して、重合反応を行い、重合液を得た。この重合液をエタノール50mlに加え、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、メトキシエチルアクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートとの重合体(6)(MEA:HEMA=80:20(モル比))を得た。この重合体(6)の重量平均分子量(Mw)および中間水含量を測定したところ、それぞれ、55,000および0.08g/gであった。
製造例7:重合体(7)の合成
50ml容量のガラス製耐圧試験管に、メトキシエチルアクリレート(MEA)1.6g(0.0123mol)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.4g(0.0031mol)、およびメタノール11gを加えた後、窒素ガスを10秒間バブリングして、モノマー溶液を調製した。このモノマー溶液に、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(2,2'-Azobis(4-methoxy-2,4-dimethylvaleronitrile))0.004g(0.013mmol)を加えた後、45℃に設定したヒートブロックで6時間加熱して、重合反応を行い、重合液を得た。この重合液をエタノール50mlに加え、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、メトキシエチルアクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートとの重合体(7)(MEA:HEMA=80:20(モル比))を得た。この重合体(7)の重量平均分子量(Mw)および中間水含量を測定したところ、それぞれ、110,000および0.08g/gであった。
製造例8:重合体(8)の合成
50ml容量のガラス製耐圧試験管に、メトキシエチルアクリレート(MEA)1.6g(0.0123mol)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.4g(0.0031mol)、およびメタノール9gを加えた後、窒素ガスを10秒間バブリングして、モノマー溶液を調製した。このモノマー溶液に、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(2,2'-Azobis(4-methoxy-2,4-dimethylvaleronitrile))0.004g(0.013mmol)を加えた後、45℃に設定したヒートブロックで6時間加熱して、重合反応を行い、重合液を得た。この重合液をエタノール50mlに加え、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、メトキシエチルアクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートとの重合体(8)(MEA:HEMA=80:20(モル比))を得た。この重合体(8)の重量平均分子量(Mw)および中間水含量を測定したところ、それぞれ、150,000および0.08g/gであった。
実施例1〜9、比較例1〜4:人工肺へのコート性試験(吸着量)
上記製造例1〜5で得られた重合体(1)〜(5)について、下記方法により、人工肺へのコート性を評価した。各重合体を、下記表1に示される重合体濃度になるように、それぞれ、水、エタノール及びメタノールの混合溶媒(水、エタノール及びメタノールの混合比=6:3:1(体積比))に溶解し、コート液(1)〜(13)を調製した。内径190μm、外径290μm、肉厚50μmのポリプロピレン製のガス交換用多孔質中空糸膜(ポリプロピレン製多孔質膜)をハウジングに収納し、膜面積が1.5mである、特開平11−114056号公報の図1の構造を有する人工肺(中空糸膜外部血液灌流型人工肺)を作製した。この人工肺に、上記にて調製したコート液をそれぞれ充填し、2分間静置した。その後、充填したコート液を人工肺から回収した。回収後のコート液中の重合体の210nmでの吸光度を分光光度計により測定した。上記コート液(コート前)の吸光度を同様にして分光光度計により測定し、得られた吸光度に基づいて、回収後のコート液中の重合体の濃度(コート後)を、算出した(X(重量%))。充填前後のコート液中の重合体濃度差(=表1に記載の重合体濃度(重量%)−X(重量%))から、下記式により人工肺へのポリマー吸着量(mg)を算出した。結果を下記表1に示す。
上記表1の結果から、本発明に係る重合体(1)〜(3)は、ポリプロピレン製多孔質膜に十分量吸着できるのに対して、本発明に係る組成から外れる重合体(4)はポリプロピレン製多孔質膜に吸着できないことが分かる。
実施例10〜15、比較例5:抗血栓性試験(血液循環持続時間)
上記製造例1〜3及び5で得られた重合体(1)〜(3)及び(5)について、下記方法により、人工肺への抗血栓性を評価した。コート液(2)、(4)〜(8)及び(13)を、それぞれ、上記実施例及び比較例と同様にして調製した。次に、上記実施例及び比較例と同じ人工肺(中空糸膜外部血液灌流型人工肺)を準備した。この人工肺に、上記にて調製したコート液をそれぞれ充填し、2分間静置した。その後、充填したコート液を除去して、80L/minの流通量で空気を流して、中空糸膜を室温(25℃)で300分間乾燥して、被覆をポリプロピレン製多孔質膜の内表面に形成し、人工肺(2)、(4)〜(8)及び(13)をそれぞれ作製した。
軟質塩化ビニル製のチューブ、貯血槽および上記にて作製した各人工肺から構成される血液循環回路(2)、(4)〜(8)及び(13)をそれぞれ作製した。人工肺の血液インポート手前に圧力センサーを設置した。回路内を520mlの生理食塩水で満たした後、ローラーポンプで生理食塩水を循環し、回路内の気泡を除去した。回路内から生理食塩水を220ml除去し、ヘパリン添加ブタ血液200mlを充填した。生理食塩水希釈後の血中ヘパリン濃度は、0.2U/mlとした。
流速2.0L/minで血液循環を行った。血液循環を開始してから血液インポート手前に設置した圧力センサーの指示値が300mmHgを超えるまでの時間を血液循環持続時間(分)とした。結果を下記表2に示す。表2において、血液循環持続時間が長いほど、長い期間血栓形成が抑制される(耐久性に優れる)ことを示す。
上記表2の結果から、本発明に係る重合体(1)〜(3)の被膜を有する人工肺は、メトキシエチルアクリレートのホモポリマー(重合体(5))の被膜を有する人工肺に比して、血液循環持続時間(耐久性)を有意に向上できることが分かる。ここで、重合体(5)はポリプロピレン製基材に十分量吸着できている(上記表1)にもかかわらず、血液循環持続時間(耐久性)が劣るのは、中間水含量が少ない(生体成分の吸着を抑制・防止する中間水層が薄い)ためであると考えられる。
実施例16、比較例6〜8:コート被膜形成性試験
上記製造例2及び6〜8で得られた重合体(2)及び(6)〜(8)について、下記方法により、コート被膜形成性を評価した。各重合体をメタノールに溶解し、10重量%溶液を調製した。2軸延伸ポリプロピレンフィルム(FOP50、フタムラ化学株式会社製)に各溶液を50μL滴下し、室温(25℃)にて乾燥して、キャスト膜(2)及び(6)〜(8)をポリプロピレンフィルム上に作製した。上記にて得られたキャスト膜の形状を肉眼で観察し、キャスト膜形成性を下記基準に従い評価した。結果を下記表3および図8に示す。
(キャスト膜形成性)
1:キャスト時の円形は、完全に崩壊
2:キャスト時の円形は崩れているが、半円程度は維持
3:キャスト時の円形を維持できる
上記表3及び図8の結果から、本発明に係る重合体(2)は優れたキャスト膜形成性を示すのに対して、重量平均分子量(Mw)が本発明から外れる重合体(6)〜(8)はキャスト時の塗膜の形状を維持できないことが分かる。
1…中空糸膜外部血液灌流型人工肺、
2…ハウジング、
3…中空糸膜、
3a…外面層、
3a’…外表面、
3b…内部層、
3c…内面層、
3c’…内表面、
3d…通路(内空)、
3e…開口部、
4,5…隔壁、
12…血液室、
6…血液流入口、
7…血液流出口、
13…ガス流入室、
14…ガス流出室、
18…共重合体、
17…血液室、
20…中空糸膜外部血液灌流型人工肺、
32…血液流通用開口、
31…内側筒状部材、
22…筒状中空糸膜束、
23…ハウジング、
25,26…隔壁、
28…血液流入口、
29a,29b…血液流出口、
8,24…ガス流入口、
9,27…ガス流出口。

Claims (5)

  1. 疎水性高分子材料からなる複数のガス交換用多孔質中空糸膜を有する人工肺であって、
    前記中空糸膜は、内腔を形成する内表面と、外表面とを有しており、
    前記内表面または前記外表面のいずれか一方が、下記(a)および(b)を満たす共重合体を含む被膜で被覆される人工肺:
    (a)前記共重合体は、70モル%以上90モル%以下の下記式(1):
    のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)および10モル%以上30モル%以下の下記式(2):
    のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(2)を有し(構成単位(1)および構成単位(2)の合計は100モル%である);および
    (b)前記共重合体は、20万以上の重量平均分子量(Mw)を有する。
  2. 前記共重合体は、80モル%以上90モル%以下の上記式(1)のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)および10モル%以上20モル%以下の上記式(2)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(2)を有する(構成単位(1)および構成単位(2)の合計は100モル%である)、請求項1に記載の人工肺。
  3. 前記共重合体が、前記構成単位(1)および前記構成単位(2)から構成される、請求項1または2に記載の人工肺。
  4. 前記中空糸膜は、ポリオレフィン樹脂で構成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工肺。
  5. 前記中空糸膜は、酸素含有ガスが流れる前記内腔を有する前記内表面と、血液と接触する前記外表面と、とを有し、
    前記外表面が前記共重合体を含む被膜で被覆される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の人工肺。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115552063A (zh) * 2021-07-29 2022-12-30 日本血液技术股份有限公司 无纺布基材、液体净化用纤维材料、该材料的制造方法及具备该材料的清洗器

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