JP2020140091A - 回折光学素子、光学系および光学機器 - Google Patents

回折光学素子、光学系および光学機器 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な回折効率を実現しつつ透過率差が小さい回折光学素子、光学系および光学機器を提供すること。【解決手段】回折光学素子は、第1ベース部および第1格子部を含む第1の回折格子と、第2ベース部および第2格子部を含む第2の回折格子とを有し、第1の回折格子の材料の設計波長における第1消衰係数、第2の回折格子の材料の設計波長における第2消衰係数を各々適切に設定し、光軸に垂直な方向において、第1の領域と、第2格子部の格子高さが第1の領域よりも低い第2の領域とを有し、第1ベース部の厚さに第1消衰係数を乗じた第1乗算値と第2ベース部の厚さに第2消衰係数を乗じた第2乗算値との合計値の第1の領域における平均値は、合計値の第2の領域の光軸側半分における平均値よりも小さい。【選択図】図2

Description

本発明は、回折光学素子、光学系および光学機器に関する。
回折作用を有する回折光学素子によって光学系の色収差を補正する方法が知られている。また、回折光学素子の格子ピッチを変化させることで、回折光学素子に非球面的な効果を持たせる方法が知られている。
特許文献1および特許文献2には、透明な材料に染料や顔料を加えることで、単位格子内での透過率差を相殺する回折光学素子が開示されている。
特開2016−53736号公報 特開2012−220899号広報
しかしながら、特許文献1および特許文献2の回折光学素子では、回折格子を透過する全体の光量が減少してしまう。
これを解決するために、光束が平均化されにくい一部の領域のみにおいて透過率差を相殺する相殺手段を設けてもよいが、その場合、相殺手段を有する領域と有さない領域間で透過率差が生じてしまう。また、相殺手段によっては、回折効率が低下してしまう。
本発明は、良好な回折効率を実現しつつ透過率差が小さい回折光学素子、光学系および光学機器を提供することを目的とする。
本発明の一側面としての回折光学素子は、第1ベース部および第1格子部を含む第1の回折格子と、第2ベース部および第2格子部を含む第2の回折格子とを有し、第1の回折格子の材料の設計波長における第1消衰係数をkL、第2の回折格子の材料の設計波長における第2消衰係数をkFとするとき、
0.0001<kL<0.0200
0.001<kF<0.500
なる条件式を満たし、光軸に垂直な方向において、第1の領域と、第2格子部の格子高さが第1の領域よりも低い第2の領域とを有し、第1ベース部の厚さに第1消衰係数を乗じた第1乗算値と第2ベース部の厚さに第2消衰係数を乗じた第2乗算値との合計値の第1の領域における平均値は、合計値の第2の領域の光軸側半分における平均値よりも小さいことを特徴とする。
本発明によれば、良好な回折効率を実現しつつ透過率差が小さい回折光学素子、光学系および光学機器を提供することができる。
実施例1の回折光学素子の正面図および側面図である。 実施例1の回折光学素子の部分断面図である。 比較例の回折光学素子の部分断面図である。 実施例1の回折光学素子の領域1における回折効率特性を示している。 比較例の回折光学素子の回折効率特性を示している。 実施例1の回折光学素子の各格子形状を表している。 実施例1の回折光学素子のkBsumを示している。 実施例1の回折光学素子の平均透過率を示している。 比較例の回折光学素子の平均透過率を示している。 実施例2の回折光学素子の部分断面図である。 実施例2の回折光学素子の各格子形状を表している。 実施例2の回折光学素子のkBsumを示している。 実施例2の回折光学素子の平均透過率を示している。 実施例3の回折光学素子の各格子形状を表している。 実施例3の回折光学素子のkBsumを示している。 実施例3の回折光学素子の平均透過率を示している。 実施例4の回折光学素子の各格子形状を表している。 実施例4の回折光学素子のkBsumを示している。 実施例4の回折光学素子の平均透過率を示している。 実施例5の回折光学素子の部分断面図である。 実施例5の回折光学素子の各格子形状を表している。 本発明の実施例5の回折光学素子のkBsumの値を示す図。 実施例5の回折光学素子の平均透過率を示している。 実施例6の光学系の構成図である。 実施例7の光学系の構成図である。 実施例8の撮像装置の要部概略図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
図1(a)および図1(b)はそれぞれ、本実施例の回折光学素子1の正面図および側面図である。図2は、回折光学素子1を図1(a)のA−A’線で切断した場合の部分断面図である。ただし、図2は、格子高さの方向へデフォルメされた図となっている。
回折光学素子1は、素子部2,3,12を有し、素子部2,3,12の全体で1つの回折光学素子として作用する。
素子部2は、透明基板4と、透明基板4上に設けられたベース部6および格子部8からなる格子形成層(第3の回折格子GH)とを有する。ベース部6および格子部8は、同一部材であってもよいし、異なる部材であってもよい。ベース部6および格子部8が異なる部材である場合、接合等により1つの部材として機能するように構成されていればよい。
素子部12は、透明基板5と、透明基板5上に設けられたベース部11および格子部(第2の格子部)10からなる第3格子形成層(第2の回折格子GF)とを有する。ベース部11および格子部10は、同一部材であってもよいし、異なる部材であってもよい。ベース部11および格子部10が異なる部材である場合、接合等により1つの部材として機能するように構成されていればよい。
素子部3は、ベース部7および格子部(第1格子部)9を有し、格子部8と格子部10との間に設けられている。ベース部7および格子部9により回折格子(第1の回折格子GL)が構成される。ベース部7および格子部9は、同一部材であってもよいし、異なる部材であってもよい。ベース部7および格子部9が異なる部材である場合、接合等により1つの部材として機能するように構成されていればよい。格子部9は、格子部9a,9bから構成される。格子部9a,9bはそれぞれ、格子斜面を介して格子部8,10に密着している。
格子部8,9,10は、同心円状の格子形状を有し、径方向(光軸に垂直な方向)における格子ピッチが変化すること、および光軸Oから徐々に格子高さが減少および増加することによってレンズ作用を有する。
本実施例では、回折光学素子1は、径方向に沿って複数の領域を有し、それぞれの領域に応じて各格子部の格子高さおよび各ベース部の厚さを変更した構成となっている。本実施例では、回折光学素子1は、光軸Oに近い領域1(第1の領域)と光軸Oから離れた領域2(第2の領域)とで構成されている。
なお、図2において、領域1の格子が2つ表示されているが、本発明はこれに限定されない。各領域の格子数は、設計者により適宜設定可能である。
本実施例では、回折光学素子1に入射させる光の波長領域、すなわち使用波長領域は可視領域である。各格子部を構成する材料および各格子部の格子高さは、可視領域全体で1次の回折光の回折効率を高くするように選択される。
以下、回折光学素子1の具体的な構成について説明する。格子部8を形成する第1の材料として、アクリル系樹脂にZrO2微粒子を混合させた樹脂(Nd=1.6199,νd=43.2,θgF=0.564)が用いられる。第1の材料は、可視領域で吸収が少なく、波長550nmにおける消衰係数kは6.8×10−6である。
格子部9を形成する第2の材料として、アクリル系樹脂にITO微粒子を混合させた樹脂(Nd=1.5660,νd=19.0,θgF=0.418)が用いられる。第2の材料は、可視領域で吸収を有し、波長550nmにおける消衰係数kは9.0×10−4である。
格子部10を形成する第3の材料として、ニオブ酸化物とチタン酸化物を混合した無機材料(Nd=2.2260、νd=8.27、θgF=0.537)が用いられる。第3の材料は、可視域で吸収を有し、波長550nmにおける消衰係数kは1.96×10−1である。
なお、本発明において、アッベ数νd、部分分散比θgFの定義は一般に用いられるものと同じであり、フラウンホーファー線のg線、F線、d線、C線に対する屈折率をそれぞれNg,NF,Nd,NCとするとき、それぞれ次式で表される。
νd=(Nd−1)/(NF−NC) (a)
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC) (b)
格子部9aの領域1における格子高さは10.30μmであり、1つの輪帯内において、格子高さが低い箇所と高い箇所の間で約14.7%の透過率差が生じる。格子部10の領域1における格子高さは0.035μmであり、格子高さが低い箇所と高い箇所の間で約14.5%の透過率差が生じる。本実施例では、領域1において、回折光学素子1の径方向のうち、格子部9の格子高さが増減する方向と格子部10の格子高さが増減する方向は反対方向である。言い換えると、格子部9の径方向に対する透過率差の増減の方向は格子部10の径方向に対する透過率差の増減の方向と反対となっている。そのため、格子部9で発生する輪帯内における透過率差を、格子部10を用いてキャンセルさせることができるため、回折光学素子1の全体として輪帯内における透過率差を少なくすることができる。
以下、本実施例の回折格子の位相差と回折効率の関係について説明する。回折光学素子1において、波長λでの回折次数mの回折光の回折効率が最大となる条件は、光路長差Φ(λ)が以下の式(c)を満足することである。
Φ(λ)=−(n02−n01)×dL+(n03−n02)×dF
=mλ (c)
式(c)において、n01,n02,n03はそれぞれ、第1から第3の材料の波長λの光に対する屈折率である。また、dLは格子部8,9aの格子高さ、dFは格子部9b,10の格子高さである。
本実施例では、図2の0次回折光から上向きに回折する光の回折次数を負の回折次数、0次回折光から下向きに回折する光の回折次数を正の回折次数とする。入射側の格子部8が、格子高さが図中下から上に減少する格子形状を有する場合、式(c)での格子高さdL,dFの符号は正となる。
また、任意の波長λでの回折効率η(λ)は、以下の式(d)で表される。
η(λ)=sinc〔π{m−Φ(λ)/λ}〕 (d)
式(d)において、mは評価すべき回折光の次数、Φ(λ)は波長λの光に対する回折光学素子1の1つの単位格子における光路長差である。また、sinc(x)は、{sin(x)/x}で表される関数である。
また、回折光学素子1の設計波長は550nmである。本実施例の回折格子は、領域1において、格子高さdL,dFがそれぞれ、10.30μm,0.035μmである場合に可視波長域で最も回折効率が高い状態となる。
本実施例の回折光学素子1においては、格子部9b,10の格子高さは非常に低いため、実質的な位相差は格子部8,9aで得られている。そのため、格子部8,9において、適切な材料選択をすることで、高い回折効率を得ることができる。本実施例では、格子部9は低屈折率高分散材料から構成され、格子部8はそれよりも高い屈折率を有する高屈折率低分散材料から構成されている。また、格子部10は、格子部8と同様に低分散材料から構成されていることが望ましいが、本実施例では、格子高さを低くして格子部10による透過率低下を少なくするために、高屈折率で比較的分散が大きい材料で構成されている。そのため、回折光学素子1の全体として、格子部10を用いない構成に対して、回折効率は若干低くなる。
回折光学素子1では、第2の材料の設計波長における消衰係数(第1消衰係数)をkL、第3の材料の設計波長における消衰係数(第2消衰係数)をkFとしたとき、以下の条件式(1)および条件式(2)を満たす。
0.0001<kL<0.0200 (1)
0.001<kF<0.500 (2)
なお、ここでいう消衰係数とは、厚さDの材料層に入る波長λ0の光の入射光量をI0、射出された光の光量をI1としたとき、以下の式(e)で与えられるものである。
式(1)の下限値を下回ると、所望の屈折率が得られにくくなり、高い回折効率を得ることが困難となる。式(1)の上限値を上回ると、格子部9の輪帯内における透過率差が大きくなり、格子部10での補正が困難となる。
式(2)の下限値を下回ると、格子部10の格子高さが高くなるため、可視域全域で高い回折効率を得ることが困難となる。式(2)の上限値を上回ると、格子部10の格子高さやベース部11の厚さの敏感度が高くなるため、製造難易度が高くなるため、好ましくない。
また、条件式(1)および条件式(2)の数値範囲をそれぞれ、以下の条件式(2a)および条件式(2a)の範囲とすることが好ましい。
0.0002<kL<0.005 (1a)
0.005<kF<0.400 (2a)
また、条件式(1)および条件式(2)の数値範囲をそれぞれ、以下の条件式(2b)および条件式(2b)の範囲とすることがさらに好ましい。
0.0004<kL<0.002 (1b)
0.01<kF<0.35 (2b)
以下、比較例を用いながら回折光学素子1の回折効率について説明する。図3は、比較例の回折光学素子の部分断面図である。比較例の回折光学素子では、格子部8,9は実施例1と同様の材料構成を有し、格子部9の格子高さd1を10.8μmとしている。ただし、比較例の回折光学素子は、格子部10を有さない。
図4は、本実施例の回折光学素子1の領域1において、格子先端を連ねた包絡面の法線に対して垂直に光線が入射した場合の設計次数である1次での回折効率特性を示している。図5は、比較例の回折光学素子に、格子先端を連ねた包絡面の法線に対して垂直に光線が入射した場合の設計次数である1次での回折効率特性を示している。実施例1の回折光学素子1では、比較例の回折光学素子と同様に、可視域全域において、非常に高い回折効率を得ている。
以下、本実施例の回折格子の位相変調効果と透過率との関係について説明する。光軸Oを基準とする垂直方向(径方向)の位置(mm)をR、回折光の回折次数をm、設計波長(nm)をλ0、位相係数(i=2,4,6…)をCiとするとき、回折光学素子1の回折面の位相関数Ph(R)は、以下の式(f)によって表される。
Ph(R)=(C2×R−2+C4×R−4+・・・)/(m×λ0) (f)
本実施例では、式(f)において、位相係数C2,C4はそれぞれ、−5.710E−5,−8.331E−9、回折次数mは+1、設計波長λ0は550nmである。なお、「E±XX」は「×10±XX」を意味する。
また、有効径半径は25mmである。以降の記述において、径比率とは有効径半径を1.0とした場合の所定の場所における比率値を示す。ここで、有効径とは、回折光学素子1の物体側の面を通過する光束のうち最も光軸から離れた位置を通過する光束の物体側の面上の径を言う。または、物体側の面上で研磨仕上げされた部分の径、あるいは回折光学素子1を保持するメカ部材によって決定される径や回折光学素子1の外径であってもよい。
式(f)に示されるように、回折光学素子1の位相変調効果は、光軸Oから離れるにつれて大きくなる。格子部8,9,10の格子斜面の面形状は、位相関数に基づいて決定される。
また、回折光学素子1の位相段差は、光軸Oから所定距離だけ離れた位置において位相関数Phをm×λ分ずらすことによって形成する。各位相段差によって不連続に区切られた領域がそれぞれの輪帯となる。位相段差とは、格子部の格子斜面の段差量である。
具体的には、本実施例では、格子部9aの面形状は、以下の式(g)で表される関数DL(R,i)を満たすように設定される。
DL(R,i)=(−Ph(R)−i+1)×d+dL (g)
ここで、関数DL(R,i)は、格子部9aのベース部7からの厚さを示している。Rは光軸Oからの距離、iは第i輪帯の輪帯番号、dLは格子部9aの各輪帯の格子高さである。
また、格子部10の面形状は、以下の式(h)で表される関数DF(R,i)を満たすように設定される。
DF(R,i)=(Ph(R)+i)×dF (h)
ここで、関数DF(R,i)は、格子部10のベース部11からの厚さを示している。dFは、格子部10の各輪帯の格子高さである。
本実施例の回折光学素子1では、第1輪帯において光軸Oから離れるにつれて関数DL(R,i)は増加し、関数DF(R,i)は減少する構成となっている。
図2に示されるように、回折光学素子1では、中心部(光軸付近)においてピッチが広く、周辺部にいくにつれてピッチが小さくなる構成となっており、回折ピッチPは165〜3101μmである。
なお、ピッチが狭い領域においては、1つの輪帯内に透過率差があっても、光束内の透過率差が平均化されやすくなるため、目立ちにくくなる。そのため、ピッチが狭い領域において、格子部10の格子高さを低くして、透過率差の補正量を少なくしても、光束内の透過率差が平均化されるため画像への影響が小さくなる。
また、前述したように、格子部10の格子高さを低くすると、比較例の回折光学素子の構成に近くなるため、より高い回折効率を得ることができる。
以上のことを考慮して、本実施例の回折光学素子1では、格子部10の中心部から離れた領域2における格子高さ(第2の高さ)を領域1における格子高さ(第1の高さ)に比べて低くしている。具体的には、中心部から数えて第3番目の輪帯以降(径比率=0.175以降)の領域2において格子高さを0としている。なお、格子部9aの領域2における格子高さは比較例と同様に10.8μmとしている。
また、本実施例の回折光学素子1では、ベース部7,11の領域2における厚さ(B2L,B2F)を領域1における厚さ(B1L,B1F)に対して変化する構成としている。領域2において、ベース部7,11の厚さを変えずに格子部10の格子高さを低くすると、輪帯を通る平均透過率が高くなってしまう。そのため、領域1の輪帯を通る光束の平均透過率と領域2の輪帯を通る光束の平均透過率に差が生じ、取得される画像内に濃淡ムラが発生してしまう。
ここで、ベース部7の厚さに設計波長における消衰係数を乗じた第1乗算値をkBL、ベース部11の厚さに設計波長における消衰係数を乗じた第2乗算値をkBFとし、kBLとkBFの合計値をkBsumとする。本実施例の回折光学素子1では、合計値kBsumの領域1における平均値kBsum1が、合計値kBsumの領域2の中心側半分(光軸側半分)の領域における平均値kBsum2よりも小さくなる構成としている。その結果、領域1の輪帯を通る光束の平均透過率と領域2の輪帯を通る光束の平均透過率を近づけた構成の回折光学素子1を得ることができる。
図6は、本実施例の回折光学素子1の各格子形状を表している。図6(a)は、回折光学素子1の各径比率の場所における格子部9a,10の格子高さを示している。図6(a)において、実線は格子部9aの格子高さを示し、図中左側の軸数値を参照し、破線は格子部10の格子高さを示し、図中右側の軸数値を参照している。なお、以下の実施例における図においても同様である。
図6(b)〜図6(d)はそれぞれ、回折光学素子1の各径比率の場所におけるベース部7,11,6の厚さを示している。
図6(e)は、回折光学素子1の透明基板4,5を除いた総厚、すなわちベース部6,7,11の厚さの合計と、格子部9a,10の格子高さの合計を足した値を示している。
図7は、本実施例の回折光学素子1における合計値kBsumを示している。合計値kBsumは、第3番目の輪帯以降(径比率=0.175以降)の領域2において領域1よりも高い値となるように設定されている。
図8は本実施例の回折光学素子1における透過率平均値を示し、図9は比較例の回折光学素子における透過率平均値を示している。図8および図9の透過率平均値は、有効径直径の1/25となる範囲の透過率の平均をプロットしたものである。なお、以下の実施例においても同様である。本実施例の回折光学素子1では、比較例の回折光学素子に対して、第1輪帯内(径比率0〜0.124)における透過率変化が少なく、かつ径方向の領域間においても透過率変化が緩やかである。
また、格子部9,10の間で輪帯内における透過率差を効果的に低減する必要がある。そのため、格子部9a,10の領域1における格子高さの平均値をそれぞれd1La,d1Fa、設計波長をλ0としたとき、以下の条件式(3)を満たすことが望ましい。
−0.001<(d1La×kL−d1Fa×kF)/λ0<0.011 (3)
条件式(3)の下限値を下回ると、透過率差の補正が過補正となり逆に輪帯内の透過率差が低下してしまうため好ましくない。条件式(3)の上限値を上回ると、輪帯内の透過率差が十分に補正されず、画像に影響を与えてしまうため好ましくない。
また、条件式(3)の数値範囲を、以下の条件式(3a)の範囲とすることが好ましい。
−0.0005<(d1La×kL−d1Fa×kF)/λ0<0.010 (3a)
また、条件式(3)の数値範囲を、以下の条件式(3b)の範囲とすることがさらに好ましい。
0<(d1La×kL−d1Fa×kF)/λ0<0.009 (3b)
さらに、以下の条件式(4)も満たすことで、同様に輪帯内の透過率差を良好に補正することができる。
0.2<d1Fa×kF/d1La×kL<1.1 (4)
条件式(4)の下限値を下回ると、輪帯内の透過率差が十分に補正されず、条件式(4)式の上限値を上回ると、透過率差の補正が過補正となり逆に輪帯内の透過率差が低下してしまうため好ましくない。
また、条件式(4)の数値範囲を、以下の条件式(4a)の範囲とすることが好ましい。
0.25<d1Fa×kF/d1La×kL<1.05 (4a)
また、条件式(4)の数値範囲を、以下の条件式(4b)の範囲とすることがさらに好ましい。
0.3<d1Fa×kF/d1La×kL<1.0 (4b)
また、光束内の透過率差を少なくするためには、格子部10による透過率補正を行う領域の範囲を適切に設定する必要がある。具体的には、回折光学素子1の有効径をRe、光軸Oから領域1の端部までの距離をRe1としたとき、以下の条件式(5)を満たすことが望ましい。
1<Re/Re1<20 (5)
条件式(5)の下限値を下回ると、中心部の補正領域が多くなり、中心部の透過率が低い領域が増えてしまうため好ましくない。条件式(5)の上限値を上回ると、光束内の透過率差が平均化されやすくなるため、本発明の構成を必要としなくなる。
また、条件式(5)の数値範囲を、以下の条件式(5a)の範囲とすることが好ましい。
1.5<Re/Re1<18.5 (5a)
また、条件式(5)の数値範囲を、以下の条件式(5b)の範囲とすることがさらに好ましい。
2<Re/Re1<17 (5b)
前述したように、本実施例の回折光学素子1は、全体の位相差のうち、格子部8,9aで大部分の位相差を得ることで広い波長域で高い回折効率を得ることができる。そのため、格子部10の領域2における格子高さを低くすることが望ましい。具体的には、格子部10の領域2における格子高さの平均値をd2Faとしたとき、以下の条件式(6)を満たすことが望ましい。
0≦d2Fa/d1Fa<0.5 (6)
条件式(6)の上限値を上回ると、格子部10の領域2における格子高さが高くなり、領域2内における回折効率が低くなってしまう。
また、条件式(6)の数値範囲を、以下の条件式(6a)の範囲とすることが好ましい。
0≦d2Fa/d1Fa<0.35 (6a)
また、条件式(6)の数値範囲を、以下の条件式(6b)の範囲とすることがさらに好ましい。
0≦d2Fa/d1Fa<0.2 (6b)
また、格子部10の格子高さを低くするためには、第3の材料の屈折率を高くする必要がある。そのためには、第3の材料を金属酸化物とすることが望ましい。この場合、格子部10は、例えば薄膜を構成する材料を真空蒸着等の物理蒸着手法やスピンコート法等で薄膜形状に成膜した後、リソグラフィー法やナノインプリント法等によりパターニングしてエッチング法等で選択的に形成すればよい。また、マスクパターンを用いて蒸着法等で選択的に形成してもよい。
また、ベース部7の厚さの平均値をBLaとしたとき、以下の条件式(7)を満たすことが望ましい。
0.1<BLa/d1La<1.5 (7)
条件式(7)の下限値を下回ると、ベース部7の厚さが薄くなるため、領域1と領域2の間でのベース部7の厚さの調整が困難になるとともに、製造が困難となる。条件式(7)の上限値を上回ると、回折光学素子1の全体の透過率が下がってしまうため好ましくない。
また、条件式(7)の数値範囲を、以下の条件式(7a)の範囲とすることが好ましい。
0.11<BLa/d1La<1.15 (7a)
また、条件式(7)の数値範囲を、以下の条件式(7b)の範囲とすることがさらに好ましい。
0.12<BLa/d1La<0.8 (7b)
領域1から領域2にかけて格子部10の格子高さを低くしつつ、領域間の透過率差を少なくするためには、ベース部11の領域2における厚みがある程度厚いことが望ましい。具体的には、ベース部11の領域2の中心側半分の領域における厚さの平均値をB2Faとしたとき、以下の条件式(8)を満たすことが望ましい。
0<B2Fa/d1Fa<0.9 (8)
条件式(8)の下限値を下回ると、領域間の透過率差を補正するために、ベース部7の厚さが厚くなりすぎてしまい、好ましくない。条件式(8)の上限値を上回ると、回折光学素子1の全体の透過率が低下してしまうため好ましくない。
また、条件式(8)の数値範囲を、以下の条件式(8a)の範囲とすることが好ましい。
0.025<B2Fa/d1Fa<0.8 (8a)
また、条件式(8)の数値範囲を、以下の条件式(8b)の範囲とすることがさらに好ましい。
0.05<B2Fa/d1Fa<0.7 (8b)
ここで、d線における第1の材料および第2の材料のアッべ数をνd1、νd2とするとき、以下の式(9),(10)を満足することが望ましい。条件式(9),(10)を満足することで、高い回折効率を得ることができる。
νd1>35 (9)
νd2<25 (10)
このとき、回折格子を形成する材料のうち、少なくとも1つの材料の部分分散比θgFが以下の条件式(11)を満足することが望ましい。条件式(11)を満足することで、高い回折効率を有する回折光学素子1を取得することができる。
θgF−(−1.665E−07×νd+5.213E−05×νd
−5.656E−03×νd+0.7278)<−0.0272 (11)
図10は、本実施例の回折光学素子1の部分断面図である。本実施例の回折光学素子1は実施例1の回折光学素子1と同じ材料で構成されているが、格子部10の位置が実施例1の回折光学素子1とは異なる。
第3の素子部12は、透明基板4と、透明基板4上に設けられたベース部11および格子部10からなる第3格子形成層とを有する。
第2の素子部3は、透明基板5と、透明基板5上に設けられたベース部7および格子部9からなる第2格子形成層とを有する。
第1の素子部2は、ベース部6および格子部8を有し、格子部9,10との間に設けられている。格子部8は、格子部8a,8bから構成されている。
本実施例の回折光学素子1は、実施例1の回折光学素子1と同様に、径方向によって複数の領域を有し、それぞれの領域に応じて各格子部の格子高さおよび各ベース部の厚さを変更した構成となっている。
なお、図10において、領域1の格子が2つ表示されているが、本発明はこれに限定されない。各領域の格子数は、設計者により適宜設定可能である。
本実施例の回折光学素子1では、式(f)の位相係数の値は実施例1の回折光学素子1と同一であり、設計波長は550nm、有効径半径は25mmである。
本実施例の回折格子は、領域1において、格子高さdL,dFがそれぞれ、10.33μm、0.035μmである場合に可視波長域で最も回折効率が高い状態となる。
本実施例の回折光学素子1では、実施例1の回折光学素子1と同様、中心部から離れた領域2において、格子部10の格子高さを低くしている。具体的には、中心部から数えて第4番目の輪帯以降(径比率=0.215以降)の領域2において格子高さを0としている。なお、格子部9の領域2における格子高さは10.82μmとしている。
また、本実施例の回折光学素子1では、ベース部7,11の領域2における厚さが領域1における厚さに対して変化する構成としている。
図11は、本実施例の回折光学素子1の各格子形状を表している。図11(a)は、回折光学素子1の各径比率の場所における格子部9,10の格子高さを示している。図11(b)〜図11(d)はそれぞれ、回折光学素子1の各径比率の場所におけるベース部7,11,6の厚さを示している。図11(e)は、回折光学素子1の透明基板4,5を除いた総厚、すなわちベース部6,7,11の厚さの合計と、格子部9,10の格子高さの合計を足した値を示している。
図12は、本実施例の回折光学素子1における合計値kBsumを示している。合計値kBsumは、領域2の中心側半分の領域において領域1よりも高い値となるように設定されている。
図11に示されるように、本実施例の回折光学素子1では、領域2内において、各ベース部の厚さを緩やかに変化させている。具体的には、領域2内において、ベース部11の厚さを外周部に向けて減少する構成としている。その結果、図12に示されるように、合計値kBsumが領域2内において、外周部に向けて徐々に減少する。
図13は、本実施例の回折光学素子1における透過率平均値を示している。図13に示されるように、本実施例では、第1輪帯内における透過率変化が少なく、かつ径方向の領域間においても透過率変化が緩やかな回折光学素子1を得ることができる。
また、領域2内において合計kBsumを外周部に向けて減少させることにより、外周部において、実施例1の回折光学素子1よりも透過率を高めることができ、より好ましい構成の回折光学素子1となっている。
また、領域2において、合計値kBsumの最大値をkB2max、最小値をkBminとしたとき、以下の条件式(12)を満たすことが望ましい。
0.1<kB2min/kB2max<1.1 (12)
条件式(12)の下限値を下回ると、領域2内における透過率変化が大きくなるため、画像として目立ってしまい好ましくない。条件式(12)の上限値を上回ると、周辺部において透過率を高くすることができないため、回折光学素子1の全体としての透過率が低下してしまう。
また、条件式(12)の数値範囲を、以下の条件式(12a)の範囲とすることが好ましい。
0.125<kB2min/kB2max<1.075 (12a)
また、条件式(12)の数値範囲を、以下の条件式(12b)の範囲とすることがさらに好ましい。
0.15<kB2min/kB2max<1.05 (12b)
本実施例の回折光学素子1は、図10の構成を有し、実施例2の回折光学素子1と比べて回折格子を形成する材料や構成を若干変更したものである。第1の材料と第2の材料は、実施例2と同一である。
本実施例では、第3の材料として、無機材料であるITO(インジウム・スズ酸化物)(Nd=1.9811、νd=15.54、θgF=0.364)が用いられる。第3の材料は、可視域で吸収を有し、波長550nmにおける消衰係数kは4.73×10−2である。
格子部9の領域1における格子高さは9.95μmであり、格子部10の領域1における格子高さは0.1μmである。格子部10の径方向に対する透過率差の増減の方向は、格子部9と反対の方向となっているため、回折光学素子1の全体として透過率差が少なくなる構成となっている。
本実施例の回折光学素子1では、式(f)の位相係数の値は実施例1の回折光学素子1と同一であり、設計波長は550nm、有効径半径は25mmである。
本実施例の回折光学素子1では、実施例1の回折光学素子1と同様、中心部から離れた領域2において、格子部10の格子高さを低くしている。本実施例では、格子部10の格子高さを領域1および領域2内において徐々に変化させている。格子部10の格子高さの変化率が最も大きい場所は、第4番目の輪帯と第5番目の輪帯の境界(径比率=0.248)であり、第1〜第4輪帯を領域1、第5輪帯以降を領域2としている。
ここで、格子高さの変化率Δdは、所定の輪帯mの格子高さをdm、前後1輪帯(当該輪帯を含めて合計3輪帯)の格子高さの平均値をdaveとしたとき、以下の式(i)から計算される。なお、格子部9の領域2における格子高さを10.82μmとしている。
Δd=dave−dm (i)
また、本実施例の回折光学素子1では、ベース部7,11の領域2における厚さが領域1における厚さに対して変化する構成としている。
図14は、本実施例の回折光学素子1の各格子形状を表している。図14(a)は、回折光学素子1の各径比率の場所における格子部9,10の格子高さを示している。図14(b)〜図14(d)はそれぞれ、回折光学素子1の各径比率の場所におけるベース部7,11,6の厚さを示している。図14(e)は、回折光学素子1の透明基板4,5を除いた総厚、すなわちベース部6,7,11の厚さの合計と、格子部9,10の格子高さの合計を足した値を示している。
図15は、本実施例の回折光学素子1における合計値kBsumを示している。合計値kBsumは、領域2の中心側半分の領域において領域1よりも高い値となるように設定されている。
図14に示されるように、本実施例の回折光学素子1では、領域2内において、各ベース部の厚さを緩やかに変化させている。具体的には、領域2内において、ベース部11の厚さを外周部に向けて減少する構成としている。その結果、図15に示されるように、合計値kBsumが領域2内において、外周部に向けて徐々に減少する。
図16は、本実施例の回折光学素子1における透過率平均値を示している。図16に示されるように、本実施例では、第1輪帯内における透過率変化が少なく、かつ径方向の領域間においても透過率変化が緩やかな回折光学素子1を得ることができる。
また、領域2において、合計値kBsumを外周部に向けて減少させることにより、外周部において透過率を高めることができ、より好ましい構成の回折光学素子1となっている。
本実施例の回折光学素子1は、図10の構成を有し、実施例2の回折光学素子1と比べて回折格子を形成する材料や構成を若干変更したものである。第1の材料と第2の材料は、実施例2と同一である。
本実施例では、第3の材料として、無機材料であるチタン酸化物(Nd=2.1291、νd=4.84、θgF=0.499)が用いられる。第3の材料は、可視域で吸収を有し、波長550nmにおける消衰係数kは2.05×10−1である。
格子部9の領域1における格子高さは10.41μmであり、格子部10の領域1における格子高さは0.03μmである。格子部10の径方向に対する透過率差の増減の方向は、格子部9と反対の方向となっているため、回折光学素子1の全体として透過率差が少なくなる構成となっている。
本実施例の回折光学素子1では、式(f)の位相係数の値は実施例1の回折光学素子1と同一であり、設計波長は550nm、有効径半径は25mmである。
本実施例の回折光学素子1では、実施例1の回折光学素子1と同様、中心部から離れた領域2において、格子部10の格子高さを低くしている。本実施例では、格子部10の格子高さを領域1および領域2内において徐々に変化させている。格子部10の格子高さの変化率が最も大きい場所は、第5番目の輪帯と第6番目の輪帯の境界(径比率=0.277)であり、第1〜第5輪帯を領域1、第5輪帯以降を領域2としている。なお、格子部9の領域2における格子高さを10.82μmとしている。
また、本実施例の回折光学素子1では、ベース部7,11の領域2における厚さが領域1における厚さに対して変化する構成としている。
また、実施例1〜3の回折光学素子1では、各ベース部の厚さは、1つの輪帯内においては同じ厚さであり、輪帯間で離散的に変化する構成であったが、本実施例の回折光学素子1では、各ベース部の厚さを連続的に変化させた構成としている。
図17は、本実施例の回折光学素子1の各格子形状を表している。図17(a)は、回折光学素子1の各径比率の場所における格子部9と格子部10の格子高さを示している。図17(b)〜図17(d)はそれぞれ、回折光学素子1の各径比率の場所におけるベース部7,11,6の厚さを示している。図17(e)は、回折光学素子1の透明基板4,5を除いた総厚、すなわちベース部6,7,11の厚さの合計と、格子部,10の格子高さの合計を足した値を示している。
図18は、本実施例の回折光学素子1における合計値kBsumを示している。合計値kBsumは、領域2の中心側半分の領域において領域1よりも高い値となるように設定されている。
図17に示されるように、本実施例の回折光学素子1では、領域2内において、各ベース部の厚さを緩やかに変化させている。具体的には、領域2内において、ベース部11の厚さを外周部に向けて減少する構成としている。その結果、図18に示されるように、合計値kBsumが領域2内において、外周部に向けて徐々に減少する。
図19は、本実施例の回折光学素子1における透過率平均値を示している。図19に示されるように、本実施例では、第1輪帯内における透過率変化が少なく、かつ径方向の領域間においても透過率変化が緩やかな回折光学素子1を得ることができる。
また、領域2において、合計値kBsumを外周部に向けて減少させることにより、外周部において透過率を高めることができ、より好ましい構成の回折光学素子1となっている。
図20は、本実施例の回折光学素子1の部分断面図である。本実施例の回折光学素子1は実施例1の回折光学素子1と同じ材料で構成されているが、第1の透明基板4が設けられていない。
格子部9aの領域1における格子高さは10.448μmであり、格子部10の領域1における格子高さは0.025μmである。格子部10の径方向に対する透過率差の増減の方向は、格子部9と反対の方向となっているため、回折光学素子1の全体として透過率差が少なくなる構成となっている。
本実施例の回折光学素子1では、式(f)の位相係数の値は実施例1の回折光学素子1と同一であり、設計波長は550nm、有効径半径は25mmである。
本実施例の回折光学素子1では、実施例1の回折光学素子1と同様、中心部から離れた領域2において、格子部10の格子高さを低くしている。本実施例では、格子部10の格子高さを領域1および領域2内において徐々に変化させている。格子部10の格子高さの変化率が最も大きい場所は、第3番目の輪帯と第4番目の輪帯の境界(径比率=0.215)であり、第1〜第3輪帯を領域1、第4輪帯以降を領域2としている。なお、格子部9aの領域2における格子高さを10.82μmとしている。
また、本実施例の回折光学素子1では、ベース部7,11の領域2における厚さが領域1における厚さに対して変化する構成としている。
図21は、本実施例の回折光学素子1の各格子形状を表している。図21(a)は、回折光学素子1の各径比率の場所における格子部9a,10の格子高さを示している。図21(b)〜図21(d)はそれぞれ、回折光学素子1の各径比率の場所におけるベース部7,11,6の厚さを示している。図21(e)は、回折光学素子1の透明基板4,5を除いた総厚、すなわちベース部6,7,11の厚さの合計と、格子部9aおよび格子部10の格子高さの合計を足した値を示している。
図22は、本実施例の回折光学素子1における合計値kBsumを示している。合計値kBsumは、領域2の中心側半分の領域において領域1よりも高い値となるように設定されている。
図21に示されるように、本実施例の回折光学素子1では、領域2内において、各ベース部の厚さを緩やかに変化させている。具体的には、領域2内において、ベース部7,11の厚さを外周部に向けて減少する構成としている。その結果、図22に示されるように、合計値kBsumが領域2内において、外周部に向けて徐々に減少する。
図23は、本実施例の回折光学素子1における透過率平均値を示している。図23に示されるように、本実施例では、第1輪帯内における透過率変化が少なく、かつ径方向の領域間においても透過率変化が緩やかな回折光学素子1を得ることができる。
また、領域2において、合計値kBsumを外周部に向けて減少させることにより、外周部において透過率を高めることができ、より好ましい構成の回折光学素子1となっている。
実施例1から実施例4の回折光学素子1のように、各回折格子を透明基板4,5で挟んだ構成とする場合、各素子部の総厚を領域に応じて一定とする必要がある。本実施例のように透明基板を片側だけに設けた場合においても、各素子部の総厚を一定範囲内とすることで、成形安定性が向上するとともに、環境変動に対する変化が少ない回折光学素子1を得ることができる。
具体的には、所定の1つの輪帯内でのベース部の厚さと格子部の格子高さの合計値をBsum、合計値Bsumの、領域1における平均値をB1sum、領域2における平均値をB2sumとしたとき、以下の条件式(13)を満たすことが望ましい。
0.8<B1sum/B2sum<1.2 (13)
また、条件式(13)の数値範囲を、以下の条件式(13a)の範囲とすることが好ましい。
0.9<B1sum/B2sum<1.1 (13a)
以下の表1は、各実施例の回折光学素子1の各条件式に対応した値を表している。
本実施例では、実施例1乃至5の何れかの回折光学素子1と同様の特性を有する回折光学素子を備える光学系について説明する。屈折光学素子と回折光学素子を共に用いることで、光学系の色収差が低減されることが知られている。本実施例の光学系も、回折光学素子1によって色収差を低減する。本実施例の光学系は、例えば、撮像装置の光学系として用いることができる。
図24は、本実施例の光学系100の構成図である。光学系100は、複数の光学素子101および絞り102を有する。光学系100は、被写体像を結像面103に結像する。複数の光学素子101のうちの1つは回折光学素子1であり、その他は屈折光学素子(レンズ)である。
実施例1乃至5で説明したように、回折光学素子1は広い波長域において高い回折効率を有している。これにより、回折光学素子1に起因するフレアやゴーストの発生を低減することができるため、高品位な像を得ることができる。
さらに、回折光学素子1の輪帯内における透過率差、および領域間における透過率変化が少ない構成となっているため、撮影した画像においても画像領域内での透過率差が少ない。
なお、本実施例では、絞り102の近傍に配置された平板ガラスに回折光学素子1を設けているが、本発明はこれに限定されない。回折光学素子1をレンズの凹面又は凸面上に設けてもよい。また、本実施例では光学系100が1つの回折光学素子1を有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。光学系100は、複数の回折光学素子を有していてもよい。
本実施例では、実施例1乃至5の何れかの回折光学素子1と同様の特性を有する回折光学素子1を備える、実施例6とは異なる光学系について説明する。本実施例の光学系は、例えば、双眼鏡の観察光学系として用いることができる。
図25は、本実施例の光学系200の構成図である。光学系200は、対物レンズ部201、プリズム205および接眼レンズ部206を有する。観察者は瞳面207に眼を配置することで、接眼レンズ部206を通して対象物を観察することができる。
対物レンズ部201は、屈折光学素子(レンズ)と回折光学素子1を有する。これによって結像面203における色収差を低減している。本実施例の回折光学素子1は、実施例1乃至5の何れかの回折光学素子1と同様の特性を有する。
実施例1乃至5で説明したように、回折光学素子1は、広い波長域において高い回折効率を有する。これにより、回折光学素子1に起因するフレアやゴーストの発生を低減することができるため、高品位な像を得ることができる。
さらに、回折光学素子1の輪帯内における透過率差、および領域間における透過率変化が少ない構成となっているため、撮影した画像においても画像領域内での透過率差が少ない。
なお、本実施例では、対物レンズ部201に配置された平板ガラスに回折光学素子1を設けているが、本発明はこれに限定されない。回折光学素子1をレンズの凹面または凸面上に設けてもよい。また、本実施例では光学系200が1つの回折光学素子1を有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。光学系200は、複数の回折光学素子を有していてもよい。
また、本実施例では、対物レンズ部201に回折光学素子1が配置されている場合について説明したが、プリズム205の表面や接眼レンズ部206に回折光学素子1を配置してもよい。ただし、回折光学素子1を結像面203よりも物体側に設けることで、対物レンズ部201における色収差を低減することができるため、回折光学素子1は結像面203よりも物体側に設けることが好ましい。
また、本実施例では双眼鏡の観察光学系について説明したが、本発明の回折光学素子は望遠鏡等の光学系にも適用することができる。また、レンズシャッターカメラやビデオカメラなどの光学式ファインダにも適用することができる。
図26は、本実施例の撮像装置(光学機器)としてのデジタルカメラ300の要部概略図である。デジタルカメラ300は、実施例6の光学系100を保持する保持部材であるレンズ部301と本体部302を有する。光学系100の結像面103には、CCDやCMOSセンサなどの撮像素子303が配置される。デジタルカメラ300が光学系100を有することで、フレアやゴーストの発生を低減した高品位な画像を得ることができる。
なお、図26では、レンズ部301と本体部302とが一体となった例を示しているが、
撮像装置本体に対して着脱可能なレンズ装置に本発明を適用してもよい。このようなレンズ装置は、例えば一眼カメラ用の交換レンズとして用いられる。この場合、図26は、光学系100を有するレンズ部301が本体部302に装着されている状態と見ることもできる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
1 回折光学素子
7 ベース部(第1ベース部)
9 格子部(第1格子部)
10 格子部(第2格子部)
11 ベース部(第2ベース部)
GL 第1の回折格子
GF 第2の回折格子

Claims (15)

  1. 第1ベース部および第1格子部を含む第1の回折格子と、
    第2ベース部および第2格子部を含む第2の回折格子とを有し、
    前記第1の回折格子の材料の設計波長における第1消衰係数をkL、前記第2の回折格子の材料の設計波長における第2消衰係数をkFとするとき、
    0.0001<kL<0.0200
    0.001<kF<0.500
    なる条件式を満たし、
    光軸に垂直な方向において、第1の領域と、前記第2格子部の格子高さが前記第1の領域よりも低い第2の領域とを有し、
    前記第1ベース部の厚さに前記第1消衰係数を乗じた第1乗算値と前記第2ベース部の厚さに前記第2消衰係数を乗じた第2乗算値との合計値の前記第1の領域における平均値は、前記合計値の前記第2の領域の光軸側半分における平均値よりも小さいことを特徴とする回折光学素子。
  2. 前記第1格子部および前記第2格子部の格子高さは、前記回折光学素子の径方向において変化し、
    前記第1の領域において、前記回折光学素子の径方向のうち、前記第1格子部の格子高さが増加する方向と前記第2格子部の格子高さが増加する方向は反対方向であることを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子。
  3. 前記第1格子部および前記第2格子部の格子高さは、前記回折光学素子の径方向において変化し、
    前記第1乗算値をkBL、前記第2乗算値をkBF、前記第1格子部の前記第1の領域における格子高さの平均値をd1La、前記第2格子部の前記第1の領域における格子高さの平均値をd1Fa、設計波長をλ0とするとき、
    −0.001<(d1La×kL−d1Fa×kF)/λ0<0.011
    なる条件式を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の回折光学素子。
  4. 前記第1格子部および前記第2格子部の格子高さは、前記回折光学素子の径方向において変化し、
    前記第1乗算値をkBL、前記第2乗算値をkBF、前記第1格子部の前記第1の領域における格子高さの平均値をd1La、前記第2格子部の前記第1の領域における格子高さの平均値をd1Faとするとき、
    0.2<d1Fa×kF/d1La×kL<1.1
    なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の回折光学素子。
  5. 前記回折光学素子の有効径をRe、前記回折光学素子の光軸から前記第1の領域の端部までの距離をRe1としたとき、
    1<Re/Re1<20
    なる条件式を満たすことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の回折光学素子。
  6. 前記合計値は、前記第2の領域において、前記回折光学素子の径方向に沿って変化することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の回折光学素子。
  7. 前記合計値は、前記第2の領域において、前記回折光学素子の光軸から離れるにつれて小さくなることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の回折光学素子。
  8. 前記合計値の前記第2の領域における最大値をkB2max、前記合計値の前記第2の領域における最大値をkBminとしたとき、
    0.1<kB2min/kB2max<1.1
    なる条件式を満たすことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の回折光学素子。
  9. 前記第1格子部および前記第2格子部の格子高さは、前記回折光学素子の径方向において変化し、
    前記第1格子部の前記第1の領域における格子高さの平均値をd1La、前記第2格子部の前記第2の領域における格子高さの平均値をd2Faとしたとき、
    0≦d2Fa/d1Fa<0.5
    なる条件式を満たすことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の回折光学素子。
  10. 前記第1格子部および前記第2格子部の格子高さは、前記回折光学素子の径方向において変化し、
    前記第1格子部の前記第1の領域における格子高さの平均値をd1La、前記第1ベース部の厚さの平均値をBLaとしたとき、
    0.1<BLa/d1La<1.5
    なる条件式を満たすことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の回折光学素子。
  11. 前記第1格子部および前記第2格子部の格子高さは、前記回折光学素子の径方向において変化し、
    前記第2格子部の前記第1の領域における格子高さの平均値をd1Fa、前記第2ベース部の前記第2の領域の光軸側半分における厚さの平均値をB2Faとしたとき、
    0<B2Fa/d1Fa<0.9
    なる条件式を満たすことを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の回折光学素子。
  12. 第3ベース部および第3格子部を有し、前記第1の回折格子および前記第2の回折格子の材料とは異なる材料からなる第3の回折格子を更に有し、
    所定の1つの輪帯内において、前記第1のベース部、前記第2のベース部および前記第3のベース部の厚さと、前記第1の格子部および前記第2の格子部の格子高さとの合計値の前記第1の領域と前記第2の領域における平均値をそれぞれ、B1sum、B2sumとしたとき、
    0.8<B1sum/B2sum<1.2
    なる条件式を満たすことを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の回折光学素子。
  13. 前記第2の回折格子の材料は金属酸化物であることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の回折光学素子。
  14. 複数の光学素子を有し、前記複数の光学素子の少なくとも1つは請求項1乃至13の何れか一項に記載の回折光学素子であることを特徴とする光学系。
  15. 請求項1乃至13の何れか一項に記載の回折光学素子と、
    該回折光学素子を保持する保持部材と、を有することを特徴とする光学機器。
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