JP2020132522A - 環状アセタールラクトン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水酸基とカルボキシル基を同時に保護し、かつ、必要な条件下でそれらの機能を再現することのできる潜在機能を備え、様々な極性〜無極性環境中で使用でき、生分解性及び生体親和性を有する有機材料の原料として有用な環状アセタールラクトン誘導体を製造することができる環状アセタールラクトン誘導体の製造方法を提供する。【解決手段】3−ヒドロキシアルカン酸と、フラン環を有するアルデヒドとから、フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aを製造する。また、フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aと、マレイミド化合物とから、鎖延長した環状アセタールラクトン誘導体Bを製造する。【選択図】なし
Description
本発明は、有機材料の原料として有用な環状アセタールラクトン誘導体の製造方法に関する。
3−ヒドロキシアルカン酸は、微生物による発酵生産が可能なバイオマス原料である。この原料を基にして得られる有機材料は、生分解性及び生体親和性に優れていると推察されており、多くのバイオメディカル用途への利用展開が期待されている。
この3−ヒドロキシアルカン酸を原料にして様々な有機材料に展開するには、二つの手法が可能である。第一の手法は、分子内に存在する水酸基とカルボキシル基を分子間で脱水縮合させて、例えば、ポリマーの主鎖として活用する手法であり、第二の手法は、3−ヒドロキシアルカン酸を側鎖に結合させ、その機能を利用する手法である。
しかし、第一の手法で得られる有機材料はプラスチック材料として十分な分子量には至らないことが知られている。そこで、高分子量のプラスチック材料を製造するために環状モノマーに変換し、それを開環重合する方法が一般的にとられている。そして、3−ヒドロキシアルカン酸を原料にして環状モノマーに変換する方法の一つとして、環状アセタールラクトンへの変換が検討されてきた。
この環状アセタールラクトンの製造方法については、既に、下記に示す反応式(1)のように、3−ヒドロキシアルカン酸とケトン類或いはアルデヒド類との反応によって合成する技術が開示されている(例えば、特許文献1、非特許文献1、及び非特許文献2)。この方法において、アルデヒド類を原料とし、四塩化炭素、ベンゼン、又はジクロロメタンを溶媒に用いて反応を行うと、環状アセタールラクトンが50〜70%の収率で得られるのに対し、ケトン類を原料にして行うと、環状アセタールラクトンの収率は10%以下まで著しく低下することが記載されている。
また、近年では、環状アセタールラクトンを下記に示す反応式(2)に従って、3−ヒドロキシアルカン酸とビニルエーテル化合物から合成する方法が開示されている(特許文献2)。この環状アセタールラクトンの合成法は、アセタール化反応とカルボン酸エステル化反応を同時に或いは逐次的に一連の反応として進め、生成物として環状アセタールラクトンを製造する方法である。このアセタール化反応は、水酸基の保護のために用いられる方法であり、カルボン酸エステル化反応は、フィッシャーエステル化合成反応として知られている。
一方、第二の手法では、その水酸基とカルボキシル基の反応性を利用することで、様々な方法をとることが可能である。例えば、特許文献3には、水酸基を利用してエステル化反応によって3−ヒドロキシアルカン酸をポリマーの側鎖に導入する方法が開示されている。
テトラヘドロン(Tetrahedron)、29巻、1311−1316頁(1973)
アンゲバンデ ヘミ−インターナショナル エディション イン イングリッシュ(Angewandte Chemie−International Edition in English)、25巻、2号、頁178−180(1986)
しかしながら、第一の手法に係る製造方法で製造される環状アセタールラクトン単体では、安定性及び重合性に欠け、実際の用途展開において用途が非常に限定されるという問題がある。
また、第二の手法に係る製造方法は、カルボキシル基や水酸基などを残し、その反応性を利用するものであり、カルボキシル基や水酸基の高い極性が、それらを導入した有機材料の取り扱いを極性溶剤のみに制限するという問題点があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、水酸基とカルボキシル基を同時に保護し、かつ、必要な条件下でそれらの機能を再現することのできる潜在機能を備え、様々な極性〜無極性環境中で使用でき、生分解性及び生体親和性を有する有機材料の原料として有用な環状アセタールラクトン誘導体を製造することができる環状アセタールラクトン誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
また、第二の手法に係る製造方法は、カルボキシル基や水酸基などを残し、その反応性を利用するものであり、カルボキシル基や水酸基の高い極性が、それらを導入した有機材料の取り扱いを極性溶剤のみに制限するという問題点があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、水酸基とカルボキシル基を同時に保護し、かつ、必要な条件下でそれらの機能を再現することのできる潜在機能を備え、様々な極性〜無極性環境中で使用でき、生分解性及び生体親和性を有する有機材料の原料として有用な環状アセタールラクトン誘導体を製造することができる環状アセタールラクトン誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的に沿う第1の発明に係る環状アセタールラクトン誘導体の製造方法は、3−ヒドロキシアルカン酸と、フラン環を有するアルデヒドとから、フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体A(以下、単に環状アセタールラクトン誘導体Aともいう)を製造する。
前記目的に沿う第2の発明に係る環状アセタールラクトン誘導体の製造方法は、フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aと、マレイミド化合物とから、鎖延長した環状アセタールラクトン誘導体B(以下、単に環状アセタールラクトン誘導体Bともいう)を製造する。
第2の発明に係る環状アセタールラクトン誘導体の製造方法において、前記フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aは、3−ヒドロキシアルカン酸と、フラン環を有するアルデヒドとから製造されることが好ましい。
第1又は第2の発明に係る環状アセタールラクトン誘導体の製造方法において、前記3−ヒドロキシアルカン酸は、3−ヒドロキシ酪酸であることが好ましい。
第1の発明に係る環状アセタールラクトン誘導体の製造方法は、3−ヒドロキシアルカン酸の水酸基とカルボキシル基をアセタールラクトン環内にアセタールエステルとして組み入れ、外部刺激に応じてカルボキシル基、水酸基、さらには3−ヒドロキシアルカン酸を出現或いは放出し、それらの機能を発現させることができる環状アセタールラクトン誘導体Aを製造することができ、様々な極性〜無極性環境中で使用できる生分解性や生体親和性を有する有機材料を製造する上で好適である。
第2の発明に係る環状アセタールラクトン誘導体の製造方法は、フラン環とマレイミド化合物をディールスアルダー反応によって鎖延長して、低分子量から高分子量に至る幅広い分子量範囲の有機材料である環状アセタールラクトン誘導体Bを製造することができる。
続いて、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
本発明の第1の実施の形態に係る環状アセタールラクトン誘導体の製造方法は、3−ヒドロキシアルカン酸と、フラン環を有するアルデヒドとから脱水反応によってフラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aを製造するものである。
本実施の形態において、3−ヒドロキシアルカン酸とは、下記に示す構造式(3)の構造を持つ化合物である。ここで、側鎖R1は、水素原子又は炭素数1〜10の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、若しくはアリール基であり、塩素又はフッ素等の置換基を単数若しくは複数含有した基である。好ましくは、水素又は炭素数1〜5のアルキル基若しくはアルケニル基が溶剤への溶解性及び後処理の容易さから好適である。さらに好ましくは、水素又は炭素数1〜3のアルキル基が入手の容易さから好適である。好適に用いられる化合物名を具体的に挙げると、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ酪酸、(R)−3−ヒドロキシ酪酸、(S)−3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシイソ吉草酸、又は3−ヒドロキシカプロン酸である。この中で、とりわけ、(R)−3-ヒドロキシ酪酸は、生合成により製造することができ、医療及び薬品用途等に広く利用できる可能性があるため、特に好適である。
本発明の第1の実施の形態に係る環状アセタールラクトン誘導体の製造方法は、3−ヒドロキシアルカン酸と、フラン環を有するアルデヒドとから脱水反応によってフラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aを製造するものである。
本実施の形態において、3−ヒドロキシアルカン酸とは、下記に示す構造式(3)の構造を持つ化合物である。ここで、側鎖R1は、水素原子又は炭素数1〜10の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、若しくはアリール基であり、塩素又はフッ素等の置換基を単数若しくは複数含有した基である。好ましくは、水素又は炭素数1〜5のアルキル基若しくはアルケニル基が溶剤への溶解性及び後処理の容易さから好適である。さらに好ましくは、水素又は炭素数1〜3のアルキル基が入手の容易さから好適である。好適に用いられる化合物名を具体的に挙げると、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ酪酸、(R)−3−ヒドロキシ酪酸、(S)−3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシイソ吉草酸、又は3−ヒドロキシカプロン酸である。この中で、とりわけ、(R)−3-ヒドロキシ酪酸は、生合成により製造することができ、医療及び薬品用途等に広く利用できる可能性があるため、特に好適である。
本実施の形態において、フラン環を有するアルデヒドとは、下記に示す構造式(4)の構造を持つ化合物である。ここで、側鎖R2は、炭素数1〜5の範囲の二価のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、又は二価のアリール基である。好ましくは、炭素数1〜5の二価のアルキレン基又はアルケニレン基が溶剤への溶解性及び後処理の容易さから好適である。さらに好ましくは、炭素数1〜5の二価のアルキレン基が入手の容易さから好適である。側鎖R3は、水素又は炭素数1〜5の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、若しくはアリール基であり、アルデヒド基、ケトン基、塩素、ケイ素、フッ素又は硫黄等の置換基を単数若しくは複数含有した基である。好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基、アルデヒド基、又はケトン基が溶剤への溶解性及び後処理の容易さから好適である。さらに好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基又はアルデヒド基が入手の容易さ及び多官能化の機能展開の面から好適である。
本本実施の形態において、フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aとは、下記に示す構造式(5)の構造を持つ環状化合物である。ここで、側鎖R1、R2、R3は、上記において述べた通りである。
本実施の形態において、フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aは、先に説明したように、下記に示す反応式(6)に従って、3−ヒドロキシアルカン酸と、フラン環を有するアルデヒド化合物とから合成される。本実施の形態においては、反応式(6)に示したように、アセタール化反応とカルボン酸エステル化反応を同時に或いは逐次的に一連の反応として進め、生成物として環状アセタールラクトン誘導体Aを製造する。ここで、アセタール化反応は水酸基の保護のために用いられる方法である。
本実施の形態において、アセタールラクトン化反応を効率的に進めるために、酸触媒を用いることが好ましい。酸触媒としては、従来公知の酸触媒が何ら制限なく使用可能である。特に、好適に用いられる酸触媒としては、パラトルエンスルホン酸、メチルスルホン酸、硫酸、塩酸、若しくはリン酸、又はスルホン酸基を固体物質に担持させた担持型酸触媒等がある。ここで担持型酸触媒は、母体構造がマクロレティキュラー(MR)型のものやゲル型のものがあり、触媒機能を有する酸性基は水素イオン形に転換されている。MR型の代表的な担持型酸触媒(固体酸触媒)としてアンバーリストが好適に用いられる。アンバーリストは非極性溶媒系でも使用でき、さらに、反応終了後、濾過によって簡単に反応系と分離することができるため、最も好適に用いられる酸触媒である。
3−ヒドロキシアルカン酸とフラン環を有するアルデヒドは、その組成比として、等モル反応が最も好ましいが、反応後の後処理や生成物の精製プロセスに応じて、いずれか一方を過剰量添加する方法も実施可能な態様である。したがって、3−ヒドロキシアルカン酸とフラン環を有するアルデヒドの仕込み組成モル比は、一般的に、1:0.5〜1:2で好適に実施される。
本実施の形態のフラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aの製造方法においては、反応を制御するために、溶剤を用いることが好ましい。好適に用いられる溶剤としては、非極性で活性水素及び活性カルボニルを持たない溶剤が好ましい。具体的には、塩化メチレン若しくはクロロホルム等のハロゲン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、又は石油エーテル等が挙げられる。これらの溶剤は、その中に含有する水分が反応を阻害する場合があるため、脱水した後に使用することがより効果的である。反応温度は、20〜100℃、好ましくは50〜80℃が好ましいが、用いる溶剤の還流温度で制御するのが正確かつ簡便で好ましい方法である。
本実施の形態のフラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aの製造方法において、アセタールラクトン化反応の終了後、例えば、酸触媒としてアンバーリストを使用した場合、触媒を濾過操作で取り除くことができる。その後、分液操作により生成物を分離することができる。具体的には、例えば、反応混合物に非極性溶媒と、それと混和しない極性溶媒を加え、生成物を非極性溶媒中に抽出することができる。ここで、非極性溶媒としては、塩化メチレン若しくはクロロホルム等のハロゲン系溶剤又はトルエン若しくはキシレン等の芳香族系溶剤が好適に使用される。一方、極性溶媒としては、水が最も好適に使用される。非極性溶剤に抽出された生成物は、濃縮し、必要に応じてカラム分離のような精製操作を、例えば、ヘキサン:酢酸エチル=2:1(容量比)の混合溶液を用いて行うことによって、フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aを得ることができる。
本発明の第2の実施の形態に係る環状アセタールラクトン誘導体の製造方法は、フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aと、マレイミド化合物とから、鎖延長した環状アセタールラクトン誘導体Bを製造するものである。この製造方法では、下記反応式(7)に示すように、フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aとマレイミド化合物との付加反応によって、鎖延長した環状アセタールラクトン誘導体Bを生成する。ここで、側鎖R1、R2、R3は、上記において述べた通りである。また、側鎖R4、R5は、水素原子又は炭素数1〜10の範囲のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、若しくはアリール基であり、塩素又はフッ素等の置換基を単数若しくは複数含有した基である。好ましくは、水素又は炭素数1〜5のアルキル基若しくはアルケニル基が溶剤への溶解性及び後処理の容易さから好適である。さらに好ましくは、水素又は炭素数1〜3のアルキル基が入手の容易さから好適である。さらに、側鎖R6は、水素原子又は炭素数1から5のアルキル基、ビニル基、アクリロイルオキシアルキル基、若しくはメタクリロイルオキシアルキル基のような重合性基であり、より好ましくは、立体障害の少ない水素原子又はビニル基、アクリロイルオキシアルキル基、若しくはメタクリロイルオキシアルキル基のような重合性基が好適である。
上記反応式(7)に示した反応は、ディールスアルダー反応として一般公知の反応であるが、環状アセタールラクトン誘導体Aに対して、ディールスアルダー反応が用いられた例は無く、環状アセタールラクトン構造がディールスアルダー反応条件下で安定に保存されることは、本発明の製造方法において初めて見出された知見である。
本実施の形態の鎖延長した環状アセタールラクトン誘導体Bの製造方法において、マレイミド化合物とは、下記構造式(8)に示す化学構造を有する化合物である。ここで、側鎖R4、R5、R6は、上記に示した通りである。
本実施の形態において用いるディールスアルダー反応を効率的に進めるための触媒は特に不要である。アセタールラクトン環が酸及び塩基に攻撃され易いため、触媒を用いないディールスアルダー反応は本発明の製造方法において好ましい反応である。ディールスアルダー反応は、1:1の付加反応であるため、フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aとマレイミド化合物との組成比として、等モル反応が最も好ましいが、反応後の後処理及び生成物の精製プロセスに応じて、いずれか一方を過剰量添加する方法も実施可能な態様である。したがって、フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aとマレイミド化合物の仕込み組成モル比は、一般的に、1:0.8〜1:1.2の範囲で好適に実施される。ただし、ディールスアルダー反応は、その逆反応であるレトロディールスアルダー反応との平衡反応であるため、その平衡をディールスアルダー反応側に偏らせる必要がある。そのための条件として、基質の濃度条件及び温度条件等の制御が必要である。
基質濃度条件としては、より高濃度が好ましく、実際上、無溶媒の条件が最も好ましく実施される。しかしながら、反応を効率的に行わせるためには基質を均一に混合する必要があるため、反応に先立ち、基質であるフラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aとマレイミド化合物を溶解する溶剤を必要量利用して溶解し、均一混合することも好適な態様の一つである。このために用いる溶剤としては、クロロホルム若しくは塩化メチレン等のハロゲン系溶剤、アセトン若しくはメチルエチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン若しくはキシレン等の芳香族系溶剤、ジエチルエーテル若しくはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、又はエチレンカーボネート等のカーボネート系溶剤が好適に用いられる。これらの溶剤は、基質を溶解可能な最低量に近い量で用いることが好ましく、均一混合後、減圧等の操作により容易に除去可能なことも重要な要件の一つである。
温度条件としては、ディールスアルダー反応を速やかに進め、かつレトロディールスアルダー反応を抑制するために、30〜100℃の温度範囲、より好ましくは50〜80℃の温度範囲が好適である。
本実施の形態の鎖延長した環状アセタールラクトン誘導体Bの製造方法において、ディールスアルダー反応の終了後、溶出操作により生成物を分離することができる。具体的には、例えば、反応混合物に溶解可能な溶剤を加え、生成物を当該溶媒中に抽出することができる。ここで、生成物を溶解可能な溶剤としては、酢酸エチル等のエステル系溶剤又はトルエン若しくはキシレン等の芳香族系溶剤が好適に使用される。溶剤に抽出された生成物は、濃縮し、必要に応じてカラム分離のような精製操作を、例えば、ヘキサン:酢酸エチル=4:1(容量比)の混合溶液から酢酸エチル100%に順次溶剤組成を変化させていくような方法で行うことによって、鎖延長した環状アセタールラクトン誘導体Bを精製して得ることができる。
以上説明した本実施の形態に係る環状アセタールラクトン誘導体Bの製造方法は、3−ヒドロキシアルカン酸を原料にして、様々な極性〜無極性環境中で使用できる生分解性や生体親和性を有する有機材料を製造する上で好適な方法である。この方法により製造される有機材料は、外部刺激に応じてアセタールラクトン環内の3−ヒドロキシアルカン酸由来のカルボキシル基、水酸基、さらには3−ヒドロキシアルカン酸を出現或いは放出し、それらの機能を発現させることができ、バイオメディカルや吸着分離機能材料等の多様な用途に好適に用いることができる。なお、鎖延長した環状アセタールラクトン誘導体Bの製造に用いる環状アセタールラクトン誘導体Aは、フラン環を有していればよく、3−ヒドロキシアルカン酸と、フラン環を有するアルデヒドとから製造されたものに限定されない。
以下、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明するが、これらの実施例は何ら本発明の技術的範囲を制限するものではない。
(実施例1)
環状アセタールラクトン誘導体Aを下記に示す反応式(9)に従って合成した。
環状アセタールラクトン誘導体Aを下記に示す反応式(9)に従って合成した。
まず、300mlフラスコに3−ヒドロキシ酪酸を3.8g(36.2mmol)加え、続いて1,2−ジクロロメタンを100ml加えた後、撹拌子を入れ完全に溶解するまで攪拌した。次に、3−(5−メチル−2−フリル)プロピオアルデヒドを5g(36.2mmol)加え、触媒としてアンバーリストを100mg加えた。Dean−Stark装置を組み、60℃で6時間、ジクロロメタンを加熱還流させた。反応の進行は、環化エステル化反応によって生じ、Dean−Stark装置のトラップに溜まる水の量を確認して判断した。6時間後、還流操作を終了し、水100mlとクロロホルム100mlを加え、分液漏斗を用いて分液操作を行い、得られた有機層を濃縮し、さらにヘキサン/酢酸エチル(2:1容量比)の混合溶媒でカラム分離を行った。得られた生成物の重量は4.2g(18.8mmol)であり、収率換算すると52%であった。
得られた環状アセタールラクトン誘導体Aの化学構造の確認は、1H−核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル測定装置及び赤外吸収(FTIR)スペクトル測定装置を用いて行った。生成物の1H−NMRスペクトルを図1に、FTIRスペクトルを図2に示す。
また、分子量は、高速原子衝撃質量分析法(FAB−MS)によって、分子イオンの確認を行った。図1及び図2に基づく化学構造の特性データは以下の通りである。
1H−NMR(500MHz,CDCl3) δ(ppm):5.86(d,2H)、5.33(t,1H)、4.01(m,1H)、2.76(t,2H)、2.67(d,2H)、2.40(dd,2H)、2.11(m,3H)、1.34(d,3H)
FTIR(cm−1):2976、2923、1748、1385、1288、1253、1020、964、791
FAB−MS(M/e):223((M−1)+)、224(M+)、225((M+1)+)、247((M+Na)+)
以上の結果から、目的化合物である環状アセタールラクトン誘導体Aが生成したことを確認した。
また、分子量は、高速原子衝撃質量分析法(FAB−MS)によって、分子イオンの確認を行った。図1及び図2に基づく化学構造の特性データは以下の通りである。
1H−NMR(500MHz,CDCl3) δ(ppm):5.86(d,2H)、5.33(t,1H)、4.01(m,1H)、2.76(t,2H)、2.67(d,2H)、2.40(dd,2H)、2.11(m,3H)、1.34(d,3H)
FTIR(cm−1):2976、2923、1748、1385、1288、1253、1020、964、791
FAB−MS(M/e):223((M−1)+)、224(M+)、225((M+1)+)、247((M+Na)+)
以上の結果から、目的化合物である環状アセタールラクトン誘導体Aが生成したことを確認した。
(実施例2)
環状アセタールラクトン誘導体Bを下記に示す反応式(10)に従って合成した。
環状アセタールラクトン誘導体Bを下記に示す反応式(10)に従って合成した。
まず、50ml容量のサンプル瓶に、実施例1で合成した環状アセタールラクトン誘導体Aを1129.7mg(5.04mmol)と、マレイミドを491.0mg(5.04mmol)加え、さらにクロロホルムを30ml加えて撹拌子を用いて完全に溶けるまで攪拌した。その後、この溶液を直径約8cmのシャーレに移し、蓋をして80℃のオーブン中で6時間加熱した。その後、反応生成物をヘキサン:酢酸エチル=4:1(容量比)の混合溶媒を用いてカラム精製を行った。得られた環状アセタールラクトン誘導体Bの重量は572.8mg(1.86mmol)であり、収率は37%であった。
得られた環状アセタールラクトン誘導体Bの化学構造の確認は、1H−核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル測定装置、及び赤外吸収(FTIR)スペクトル測定装置を用いて行った。また、分子量は、高速原子衝撃質量分析法(FAB−MS)によって、分子イオンの確認を行った。生成物の1H−NMRスペクトルを図3に、FTIRスペクトルを図4に示す。図3及び図4に基づく化学構造の特性データは以下の通りである。
1H−NMR(500MHz,CDCl3) δ(ppm):6.33(m,2H)、5.41(t,1H)、4.06(m,1H)、2.95(dd,2H)、2.89(dd,2H)、2.55(m,4H)、1.35(d,3H)、1.26(m,3H)
FTIR(cm−1):3400−3200(−NH)、1750(C=O)、1255(環状エーテルC−O−C)、1190(C−O−C)
FAB−MS(M/e):322((M+1)+)、344((M+Na)+)
以上の結果から、目的化合物である環状アセタールラクトン誘導体Bが生成したことを確認した。
1H−NMR(500MHz,CDCl3) δ(ppm):6.33(m,2H)、5.41(t,1H)、4.06(m,1H)、2.95(dd,2H)、2.89(dd,2H)、2.55(m,4H)、1.35(d,3H)、1.26(m,3H)
FTIR(cm−1):3400−3200(−NH)、1750(C=O)、1255(環状エーテルC−O−C)、1190(C−O−C)
FAB−MS(M/e):322((M+1)+)、344((M+Na)+)
以上の結果から、目的化合物である環状アセタールラクトン誘導体Bが生成したことを確認した。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
Claims (4)
- 3−ヒドロキシアルカン酸と、フラン環を有するアルデヒドとから、フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aを製造することを特徴とする環状アセタールラクトン誘導体の製造方法。
- フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aと、マレイミド化合物とから、鎖延長した環状アセタールラクトン誘導体Bを製造することを特徴とする環状アセタールラクトン誘導体の製造方法。
- 請求項2記載の環状アセタールラクトン誘導体の製造方法において、前記フラン環を有する環状アセタールラクトン誘導体Aは、3−ヒドロキシアルカン酸と、フラン環を有するアルデヒドとから製造されることを特徴とする環状アセタールラクトン誘導体の製造方法。
- 請求項1又は3記載の環状アセタールラクトン誘導体の製造方法において、前記3−ヒドロキシアルカン酸は、3−ヒドロキシ酪酸であることを特徴とする環状アセタールラクトン誘導体の製造方法。
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