以下、本発明に係る評価装置、評価方法、及び評価プログラムの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
以下の説明においては、三次元グローバル座標系を設定して各部の位置関係について説明する。所定面の第1軸と平行な方向をX軸方向とし、第1軸と直交する所定面の第2軸と平行な方向をY軸方向とし、第1軸及び第2軸のそれぞれと直交する第3軸と平行な方向をZ軸方向とする。所定面はXY平面を含む。
<第一実施形態>
[評価装置]
図1は、本実施形態に係る評価装置100の一例を模式的に示す図である。本実施形態に係る評価装置100は、被験者の視線を検出し、検出結果を用いることで認知機能障害及び脳機能障害の評価を行う。評価装置100は、例えば被験者の瞳孔の位置と角膜反射像の位置とに基づいて視線を検出する方法、又は被験者の目頭の位置と虹彩の位置とに基づいて視線を検出する方法等、各種の方法により被験者の視線を検出することができる。
図1に示すように、評価装置100は、表示装置10と、画像取得装置20と、コンピュータシステム30と、出力装置40と、入力装置50と、入出力インターフェース装置60とを備える。表示装置10、画像取得装置20、コンピュータシステム30、出力装置40及び入力装置50は、入出力インターフェース装置60を介してデータ通信を行う。表示装置10及び画像取得装置20は、それぞれ不図示の駆動回路を有する。
表示装置10は、液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)又は有機ELディスプレイ(organic electroluminescence display:OLED)のようなフラットパネルディスプレイを含む。本実施形態において、表示装置10は、表示部11を有する。表示部11は、画像等の情報を表示する。表示部11は、XY平面と実質的に平行である。X軸方向は表示部11の左右方向であり、Y軸方向は表示部11の上下方向であり、Z軸方向は表示部11と直交する奥行方向である。表示装置10は、ヘッドマウント型ディスプレイ装置であってもよい。ヘッドマウント型ディスプレイの場合、ヘッドマウントモジュール内に画像取得装置20のような構成が配置される。
画像取得装置20は、被験者の左右の眼球EBの画像データを取得し、取得した画像データをコンピュータシステム30に送信する。画像取得装置20は、撮影装置21を有する。撮影装置21は、被験者の左右の眼球EBを撮影することで画像データを取得する。撮影装置21は、被験者の視線を検出する方法に応じた各種カメラを有する。例えば被験者の瞳孔の位置と角膜反射像の位置とに基づいて視線を検出する方式の場合、撮影装置21は、赤外線カメラを有し、例えば波長850[nm]の近赤外光を透過可能な光学系と、その近赤外光を受光可能な撮像素子とを有する。また、例えば被験者の目頭の位置と虹彩の位置とに基づいて視線を検出する方式の場合、撮影装置21は、可視光カメラを有する。撮影装置21は、フレーム同期信号を出力する。フレーム同期信号の周期は、例えば20[msec]とすることができるが、これに限定されない。撮影装置21は、例えば第1カメラ21A及び第2カメラ21Bを有するステレオカメラの構成とすることができるが、これに限定されない。
また、例えば被験者の瞳孔の位置と角膜反射像の位置とに基づいて視線を検出する方式の場合、画像取得装置20は、被験者の眼球EBを照明する照明装置22を有する。照明装置22は、LED(light emitting diode)光源を含み、例えば波長850[nm]の近赤外光を射出可能である。なお、例えば被験者の目頭の位置と虹彩の位置とに基づいて視線ベクトルを検出する方式の場合、照明装置22は設けられなくてもよい。照明装置22は、撮影装置21のフレーム同期信号に同期するように検出光を射出する。照明装置22は、例えば第1光源22A及び第2光源22Bを有する構成とすることができるが、これに限定されない。
コンピュータシステム30は、評価装置100の動作を統括的に制御する。コンピュータシステム30は、演算処理装置30A及び記憶装置30Bを含む。演算処理装置30Aは、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを含む。記憶装置30Bは、ROM(read only memory)及びRAM(random access memory)のようなメモリ又はストレージを含む。演算処理装置30Aは、記憶装置30Bに記憶されているコンピュータプログラム30Cに従って演算処理を実施する。
出力装置40は、フラットパネルディスプレイのような表示装置を含む。なお、出力装置40は、印刷装置を含んでもよい。入力装置50は、操作されることにより入力データを生成する。入力装置50は、コンピュータシステム用のキーボード又はマウスを含む。なお、入力装置50が表示装置である出力装置40の表示部に設けられたタッチセンサを含んでもよい。
本実施形態に係る評価装置100は、表示装置10とコンピュータシステム30とが別々の装置である。なお、表示装置10とコンピュータシステム30とが一体でもよい。例えば評価装置100がタブレット型パーソナルコンピュータを含んでもよい。この場合、当該タブレット型パーソナルコンピュータに、表示装置、画像取得装置、コンピュータシステム、入力装置、出力装置等が搭載されてもよい。
図2は、評価装置100の一例を示す機能ブロック図である。図2に示すように、コンピュータシステム30は、表示制御部31と、注視点検出部32と、領域設定部33と、判定部34と、演算部35と、評価部36と、入出力制御部37と、記憶部38とを有する。コンピュータシステム30の機能は、演算処理装置30A及び記憶装置30B(図1参照)によって発揮される。なお、コンピュータシステム30は、一部の機能が評価装置100の外部に設けられてもよい。
表示制御部31は、移動物体の最終到達点を被験者に注視させる課題を表示部11に表示させる。言い換えると、表示制御部31は、被験者に視認させる評価用映像を表示装置10の表示部11に表示させる。評価用映像は、移動規則に従って移動する移動経路と最終到達点とを被験者に注視させる課題の映像である。評価用映像には、移動経路と、最終到達点とを含む。移動経路は、指定された始点から最終到達点までの経路である。移動経路は、移動規則に従って一意に定まる。評価用映像には、移動経路を最終到達点まで移動経路に沿って移動する移動物体を含んでもよい。評価用映像には、さらに移動経路を拘束する拘束物と、最終到達点とは異なる比較到達点とを含んでもよい。移動規則は、例えば、自然法則でもよいし、迷路またはあみだくじのような人為的な法則であってもよい。評価用映像は、教示用映像と設問映像と回答映像とを含む。評価用映像は、教示用映像と設問映像と回答映像とのすべてを含む映像に限定されず、例えば、設問映像のみであってもよい。評価用映像の表示形態は、映像に限定されず、複数の静止画を順番に示してもよい。
注視点検出部32は、被験者の注視点の位置を示す位置データを検出する。本実施形態において、注視点検出部32は、画像取得装置20によって取得される被験者の左右の眼球EBの画像データに基づいて、三次元グローバル座標系で規定される被験者の視線ベクトルを検出する。注視点検出部32は、検出した被験者の視線ベクトルと表示装置10の表示部11との交点の位置データを、被験者の注視点の位置データとして検出する。つまり、本実施形態において、注視点の位置データは、三次元グローバル座標系で規定される被験者の視線ベクトルと、表示装置10の表示部11との交点の位置データである。注視点検出部32は、規定のサンプリング周期毎に被験者の注視点の位置データを検出する。このサンプリング周期は、例えば撮影装置21から出力されるフレーム同期信号の周期(例えば20[msec]毎)とすることができる。
領域設定部33は、表示装置10の表示部11に表示された評価用映像に対応した特定領域を設定する。本実施形態では、領域設定部33は、評価用映像に含まれる移動物体に対応した移動物体領域A(図5参照)、移動物体が移動規則に従って移動する移動経路に対応した移動経路領域A1(図6参照)、移動物体の最終到達点に対応した最終到達点領域A4(図6参照)を特定領域として設定する。設定された領域は、本実施形態では、表示部11に表示されないものとするが、これに限定されず、表示部11に表示してもよい。
判定部34は、注視点の位置データに基づいて、課題が表示される表示期間、言い換えると、表示動作が行われる表示期間に注視点が特定領域に存在するか否かをそれぞれ判定し、判定データを出力する。本実施形態では、判定部34は、注視点の位置データに基づいて、注視点が、特定領域である移動物体領域A、移動経路領域A1及び最終到達点領域A2に存在するか否かを判定し、判定データを出力する。例えば、判定部34は、注視点が特定領域に存在すると判定する場合、当該特定領域の判定値であるカウント値を「1」加算して判定データを出力する。判定部34は、例えば判定周期毎に注視点が特定領域に存在するか否かを判定する。判定周期としては、例えば撮影装置21から出力されるフレーム同期信号の周期(例えば20[msec]毎)とすることができる。つまり、判定部34の判定周期は、注視点検出部32のサンプリング周期と同一である。
演算部35は、判定部34の判定結果である判定データに基づいて、表示期間における注視点の移動の経過を示す注視点データを算出する。本実施形態では、演算部35は、注視点データとして、判定部34の判定データに基づいて、表示期間に注視点が特定領域に存在した存在時間を示す時間データを算出する。より詳しくは、演算部35は、教示映像が表示される時間範囲T4に注視点が移動物体領域Aに存在した第1時間データと、設問映像が表示される時間範囲T7に注視点が移動経路領域A1に存在した第2時間データと、時間範囲T7に注視点が最終到達点領域A2に存在した第3時間データとを時間データとして算出する。また、演算部35は、特定領域について注視点が存在すると判定された判定回数をカウントするカウンタを有する。また、演算部35は、評価用映像の再生時間を管理する管理タイマと、表示装置10の表示部11に評価用映像が表示されてからの経過時間を検出する検出タイマを有する。
評価部36は、注視点データである時間データに基づいて、被験者の評価結果を示す評価データを求める。評価データは、表示動作において表示装置10の表示部11に表示される移動物体に対して被験者がどの程度追視しているか、移動物体の移動経路を正しく推測できたか、最終到達点を正しく推測できたかを示すデータである。
入出力制御部37は、画像取得装置20及び入力装置50の少なくとも一方からのデータ(眼球EBの画像データ、入力データ等)を取得する。また、入出力制御部37は、表示装置10及び出力装置40の少なくとも一方にデータを出力する。入出力制御部37は、被験者に対する課題をスピーカ等の出力装置40から出力してもよい。
記憶部38は、上記の位置データ、判定データ、注視点データである時間データ、及び評価データを記憶する。また、記憶部38は、評価用映像を表示する処理と、表示部を観察する被験者の注視点の位置を検出する処理と、表示部において、特定領域を設定する処理と、注視点の位置データに基づいて、注視点が特定領域に存在するか否かをそれぞれ判定し、判定データを出力する処理と、判定データに基づいて、被験者の評価データを求める処理と、評価データを出力する処理とをコンピュータに実行させる評価プログラムを記憶する。
[評価方法]
次に、本実施形態に係る評価方法について説明する。本実施形態に係る評価方法では、上記の評価装置100を用いることにより、被験者の認知機能障害及び脳機能障害を評価する。本実施形態では、所定の位置に提示された移動物体が、移動規則に従って、所定の移動経路を経て最終的に到達する場所を、被検者に推測させる課題のコンテンツである。例えば、評価用映像の上部に配置された玉(移動物体)MA1が、移動規則に従って、転がりながら所定の移動経路を経て最終的に到達する場所を、被検者に推測させる課題である。
認知機能障害及び脳機能障害の症状は、空間認知能力、推測を修正する能力、及び、追視能力に影響することが知られている。被験者が認知機能障害及び脳機能障害者ではない場合、評価用映像で示される空間を正確に認知して、移動物体の移動経路を正確に推測可能である。また、被験者が認知機能障害及び脳機能障害者ではない場合、正しい移動経路が提示されると、間違った推測を修正可能である。さらに、被験者が認知機能障害及び脳機能障害者ではない場合、移動物体及び提示された正しい移動経路を追視可能である。一方、被験者が認知機能障害及び脳機能障害者である場合、評価用映像で示される空間を正確に認知できず、移動物体の移動経路を正確に推測できないことがある。また、被験者が認知機能障害及び脳機能障害者である場合、正しい移動経路が提示されても、間違った推測を修正できないことがある。さらに、被験者が認知機能障害及び脳機能障害者である場合、移動物体及び提示された正しい移動経路を追視できないことがある。
このため、例えば以下の手順を行うことにより、被験者を評価することが可能である。まず、表示装置10の表示部11に、落下する前の玉MA1と、玉MA1が移動する移動経路を拘束する拘束物である障害物MB11〜MB16とを示す。被験者に、落下した玉MA1が収容されるカップを推測させる。被験者が正しい移動経路と最終到達点とを注視できるかを検出することにより、被験者を評価することが可能である。また、教示時または回答時、被験者が落下する玉MA1を注視できるかを検出することにより、被験者を評価することが可能である。
図3に被験者の評価時に表示される評価用映像のタイムチャートを示す。図3は、表示部に評価用映像の各映像が表示されるタイミングの一例を示すタイムチャートである。時間は、t0からスタートして、t0→t1→t2→t3→t4→t5→t6→t7→t8→t9→t10と移行する。また、t0以上t1未満を時間範囲T1、t1以上t2未満を時間範囲T2、t2以上t3未満を時間範囲T3、t3以上t4未満を時間範囲T4、t4以上t5未満を時間範囲T5、t5以上t6未満を時間範囲T6、t6以上t7未満を時間範囲T7、t7以上t8未満を時間範囲T8、t8以上t9未満を時間範囲T9、t9以上t10未満を時間範囲T10としている。
まず、評価用映像が再生されると、教示映像が開始する(図3のt0)。時間範囲T1〜T3では図4が表示されている。次に、「手をはなすと、玉は落ちていきます」とナレーションが入る(図3のt1)。次に、図4で表示されている、「手をはなすと、玉は落ちていきます」という文が消えていく(図3のt2)。ナレーションは、文字を表示してもよいし、音声を出力してもよい。
図4は、表示制御部31が表示装置10に表示させる評価用映像の一例を示す図である。表示制御部31は、表示装置10の表示部11に、移動規則に従って移動する移動経路と最終到達点とを被験者に注視させる課題の教示映像を表示させる。本実施形態では、表示制御部31は、表示装置10の表示部11に、移動物体である落下する前の玉MA1と、玉MA1が移動する移動経路を拘束する拘束物である障害物MB11〜MB16と、落下先候補の3つのカップMC1〜MC3とを表示させる。
玉MA1は、表示装置10の表示部11の上部に表示される。玉MA1は、手から離れると重力によって落下し、また、障害物MB11〜MB16によって移動経路が拘束される移動規則に従って移動する。
障害物MB11〜MB16は、玉MA1より下側に表示される板状の障害物である。障害物MB11〜MB16は、玉MA1の落下の経路を誘導する障害物である。障害物MB11〜MB16の形状は、これに限定されず、他の物品であってもよい。障害物MB11〜MB16は、鉛直方向に対して傾斜して配置されている。障害物MB11〜MB16の上を、玉MA1が転がりながら落下する。障害物MB11〜MB16は、相互に離間して配置されている。障害物MB11〜MB16は、玉MA1の落下を規制しながら、最終到達点であるカップMC1へ誘導する。
カップMC1は、表示装置10の表示部11の左下部に表示される。カップMC1は、上側に向かって開口したカップ状である。カップMC1は、手から離れた玉MA1が、障害物MB11、障害物MB12、障害物MB14の上を転がりながら落下して到達する位置に表示される。
カップMC2、カップMC3は、表示装置10の表示部11の中央下部と右下部とに表示される。カップMC2、カップMC3は、上側に向かって開口したカップ状である。カップMC2、カップMC3は、カップMC1と同じ形状、大きさである。カップMC2、カップMC3は比較到達点であり、手から離れた玉MA1が、障害物MB11、障害物MB12、及び、障害物MB14の上を転がりながら落下して到達する位置とは異なる位置に表示される。
また、表示制御部31は、時間範囲T1において、被験者に玉MA1の移動経路を推測させるため、教示の説明文を表示してもよい。説明文は、例えば、表示装置10の表示部11の上辺に沿った領域に表示される。説明文は、例えば、「手をはなすと、玉は落ちていきます」と表示される。説明文に代えて、音声で説明してもよい。
時間範囲T1〜T3が経過した後、時間範囲T4〜T5では、図5に示す教示映像が表示される。まず、手から玉MA1が離れて、転がり落ちていく(図3のt3)。転がり落ちた玉MA1は最終的にカップMC1に収まり(図3のt4)、教示映像が終了(図3のt5)する。
図5は、表示制御部31が表示装置10に表示させる評価用映像の一例を示す図である。図5は、図4の後に表示される。表示制御部31は、表示装置10の表示部11に、玉MA1を支えていた指が離され、玉MA1が障害物MB11〜MB16の間を通って落下していく映像を表示させる。表示制御部31は、表示装置10の表示部11に、落下した玉MA1が画面下部にある3つのカップMC1〜MC3のうち左のカップMC1に収まる映像を表示させる。
領域設定部33は、時間範囲T4において、特定領域として、表示装置10の表示部11には表示されないが、玉MA1に対応した移動物体領域Aを設定する。移動物体領域Aは、例えば玉MA1を含む範囲に設定される。移動する玉MA1の中心位置は予め分かっている。領域設定部33は、玉MA1を中心と設定した所定サイズの領域を、玉MA1の中心位置の移動に合わせて移動する移動物体領域Aとして設定する。
被験者は、教示映像において、玉MA1の動きを注視する。認知症など認知機能障害・脳機能障害のある被検者の場合、追視能力が低下するなどして、転がりながら落下する玉MA1を追視することが困難になる。移動物体領域Aに注視点が集まれば、被検者は、目の追従性に問題が少ないことがわかる。
教示映像の終了後、設問映像が開始する(図3のt5)。時間範囲T6〜T8では、図6に示す設問映像が表示される。次に「玉は、どこに落ちるでしょう?」というナレーションが入る(図3のt6)。次に、「玉は、どこに落ちるでしょう?」という文が、「実際に転がします」に入れ替わる(図3のt7)。設問映像が終了(図3のt8)する。ナレーションは、文字を表示してもよいし、音声を出力してもよい。
図6は、表示制御部31が表示装置10に表示させる評価用映像の一例を示す図である表示制御部31は、表示装置10の表示部11に、移動規則に従って移動する移動経路と最終到達点とを被験者に注視させる課題の設問映像を表示させる。表示制御部31は、表示装置10の表示部11に、落下する前の玉MA1と、教示映像と異なる配置の障害物MB21〜MB29と、説明文とを表示させる。説明文は、例えば、「玉は、どこに落ちるでしょう?」と表示される。説明文に代えて、音声で説明してもよい。
領域設定部33は、時間範囲T7において、特定領域として、表示装置10の表示部11には表示されないが、玉MA1の移動経路に対応した移動経路領域A1と、最終到達点であるカップMC2に対応した最終到達点領域A2とを設定する。領域設定部33は、例えば移動する玉MA1の軌跡に基づいて移動経路領域A1を設定する。移動経路領域A1は、玉MA1の軌跡に対応して、表示装置10の表示部11の図中の上部から下部まで、障害物MB21、障害物MB22、障害物MB24、障害物MB29に沿って延びた状態で設定される。カップMC2を中心と設定した所定サイズの領域が、最終到達点領域A2として設定される。
被検者は、設問映像において、玉MA1がどの経路を通り、最終的に3つのカップMC1〜MC3のうち、どのカップに収まるのかを注視する。認知症など認知機能障害・脳機能障害のある被検者の場合、空間認知機能が低下するなどして、玉MA1がどの経路を通ることができるのかを正確に推測することが困難になる。移動経路領域A1と最終到達点領域A2とに注視点が集まれば、被検者が玉MA1の移動経路を正しく推測できており、空間認知能力に問題が少ないとわかる。
また、設問映像の表示時に視線を計測することで、一度で素早く玉MA1が落下する経路を推測できているのか、あるいは何度もスタート位置から推測を繰り返しているのかなど、被検者の思考過程を記録し、診断の補助とすることが可能になる。
ここで、図7を参照しながら、被験者の思考過程について説明する。図7は、第一実施形態に係る表示制御部が表示部に表示させる評価用映像と被験者の思考過程の一例の記録を示す図である。太い矢印は、被験者の注視点の経路MF1を示している。経路MF1から、被験者が、最終到達点領域A2までの推測に失敗し、最終到達点領域A2への途中の分岐点などで繰り返し推測を行っていることがわかる。このように、経路MF1を、診断の補助として使用することによって、被験者をより適切に診断することが可能になる。
設問映像の終了後、回答映像が開始する。時間範囲T9〜T10では、図8に示す回答映像が表示される。まず、手から玉MA1が離れて転がり落ちていく(図3のt8)。次に、玉MA1がカップMC2に収まり(図3のt9)、回答映像が終了して評価用映像が終了する(図3のt10)。
図8は、表示制御部31が表示装置10に表示させる評価用映像の一例を示す図である。図8は、図6の後に表示される。表示制御部31は、表示装置10の表示部11に、課題の回答映像を表示させる。表示制御部31は、表示装置10の表示部11に、説明文として、例えば、「実際に転がします」と表示させる。説明文に代えて、音声で説明してもよい。表示制御部31は、表示装置10の表示部11に、例えば、玉MA1が手から離れて、障害物MB21、障害物MB22、障害物MB24、障害物MB29に沿って転がりながら落下して、カップMC2に収容される移動経路ME2を表示させる。
回答映像を表示することにより、被験者に対して、玉MA1の移動経路ME2を直観的に知らせることができる。なお、回答映像は表示しなくてもよい。このようにして、時間範囲T10が経過した後、評価用映像の再生が終了する。なお、時間範囲T10においては、評価用映像が終了した旨が表示装置10の表示部11に表示されてもよい。
上記の時間範囲T4において、判定部34は、注視点が移動物体領域Aに存在するか否かを判定し、判定データを出力する。また、演算部35は、時間範囲T4において、判定データに基づいて、注視点が移動物体領域Aに存在した存在時間を示す第1時間データ(移動物体領域存在時間データ)を算出する。
上記の時間範囲T7において、判定部34は、注視点が移動経路領域A1または最終到達点領域A2に存在するか否かをそれぞれ判定し、判定データを出力する。また、演算部35は、時間範囲T7において、判定データに基づいて、最終到達点領域A2に存在する時間を示す第2時間データ(最終到達点領域存在時間データ)、及び、注視点が移動経路領域A1に存在する時間を示す第3時間データ(移動移動経路領域存在時間データ)を算出する。
また、本実施形態において、判定部34において注視点が存在すると判定された回数が多いほど、移動物体領域A、移動経路領域A1または最終到達点領域A2に注視点が存在した存在時間が長いと推定することができる。したがって、本実施形態において、時間データは、例えば、移動物体領域A、移動経路領域A1または最終到達点領域A2について表示期間内に判定部34で注視点が存在すると判定された回数とすることができる。つまり、時間データは、表示期間内に移動物体領域A、移動経路領域A1または最終到達点領域A2で検出される注視点の数とすることができる。演算部35は、判定部34に設けられるカウンタのカウント結果を用いて時間データを算出可能である。
本実施形態において、評価部36は、時間データに基づいて評価データを求める場合、例えば、以下のように行うことができる。
まず、演算部35に設けられるカウンタは、時間範囲T4において第1時間データをカウントし、時間範囲T7において第2時間データ及び第3時間データをカウントする。ここで、第1時間データのカウンタのカウント結果をカウンタ値CNT1とし、第2時間データのカウンタのカウント結果をカウンタ値CNT2とし、第3時間データのカウンタのカウント結果をカウンタ値CNT3とする。
この場合、評価部36は、評価データを求めるための評価値ANSを、以下のように求めることができる。例えば、時間範囲T4において、被験者の注視点が移動物体領域Aに存在した時間の長さを判断することにより、評価値ANSを求めることができる。被験者が玉MA1に追従して視線を合わせ続けている場合、移動物体領域Aを注視する時間が長くなる。時間範囲T4において、移動物体領域Aに存在する注視点の存在時間が長いほど、カウンタ値CNT1の値が大きくなる。また、例えば、時間範囲T7において、被験者の注視点が移動経路領域A1または最終到達点領域A2に存在した時間の長さを判断することにより、評価値ANSを求めることができる。被験者が玉MA1の移動経路を正しく推測して視線を合わせ続けている場合、移動経路領域A1または最終到達点領域A2を注視する時間が長くなる。時間範囲T7において、移動経路領域A1または最終到達点領域A2に存在する注視点の存在時間が長いほど、カウンタ値CNT2とカウンタ値CNT3との値が大きくなる。これらにより、カウンタ値CNT1、CNT2、CNT3の合計値が所定値以上か否かを判断することで、評価値ANSを求めることができる。例えば、カウンタ値CNT1、CNT2、CNT3の合計値が所定値以上である場合、被験者が認知機能障害及び脳機能障害者である可能性は低いと評価することができる。また、カウンタ値CNT1、CNT2、CNT3の合計値が所定値未満である場合、被験者が認知機能障害及び脳機能障害者である可能性は高いと評価することができる。
なお、所定値としては、例えば認知機能障害及び脳機能障害者ではない被験者のカウンタ値CNT1、CNT2、CNT3の平均値、または当該平均値に基づいて設定される値等を用いることができる。また、所定値として、例えば認知機能障害及び脳機能障害者ではない被験者のカウンタ値CNT1、CNT2、CNT3の最低値を用いてもよい。この場合、予め所定値を年齢及び性別ごとに設定しておき、被験者の年齢及び性別に応じた値を用いるようにしてもよい。
また、評価部36は、例えば以下の式(1)により評価値ANSを求めることができる。カウンタ値CNT1は、教示時に被験者が玉MA1を追視できていたかの評価となる。カウンタ値CNT2は、正解の回答の部分となるので、この計数値の評価が最も高くなる。カウンタ値CNT3は、正解の回答を導く部分となるので、この計数値の評価が高くなる。
ANS=(K1×CNT1)+(K2×CNT2)+(K3×CNT3)・・・(1)
上記の式(1)において、定数K1、K2、K3は、重みづけのための定数である。定数K1、K2、K3については、例えば、K1<K3<K2とすることができる。この場合、第1時間データの影響よりも第3時間データの影響に重みをつけ、さらに、第3時間データの影響よりも第2時間データの影響に重みをつけた評価値ANSを求める。
なお、定数K1、K2、K3をそれぞれ等しい値(例えば、1)とし、重みづけをすることなく評価値ANSを求めてもよい。このように、第1時間データ、第2時間データ及び第3時間データに基づいて評価データを求めることにより、時間範囲T4〜T5における追視能力、推測を修正する能力、時間範囲T6〜T8における空間認知能力を細分化して評価することができる。
評価部36は、評価値ANSが所定のしきい値以上か否かを判断して、評価の判定を行う。例えば評価値ANSがしきい値以上である場合、被験者が認知機能障害及び脳機能障害である可能性は低いと評価を判定することができる。また、評価値ANSが所定のしきい値以上ではない場合、被験者が認知機能障害及び脳機能障害である可能性は高いと評価を判定することができる。
本実施形態において、入出力制御部37は、評価部36が評価結果を出力した場合、評価結果に応じて、例えば「被験者は認知機能障害及び脳機能障害者である可能性が低いと思われます」の文字データや、「被験者は認知機能障害及び脳機能障害者である可能性が高いと思われます」の文字データ等を出力装置40に出力させる。
次に、本実施形態に係る評価方法の一例について、図9を参照しながら説明する。図9は、第一実施形態に係る評価方法の一例を示すフローチャートである。
表示制御部31は、評価用映像の再生を開始させる(ステップS101)。表示装置10の表示部11には、図4、図5、図6、図8に示す評価用映像が順に表示される。そして、ステップS102に進む。
演算部35は、評価用映像の再生時間を管理するタイマをリセットする(ステップS102)。より詳しくは、演算部35は、評価用映像の再生時間を管理する管理タイマと、図3に示すタイムチャートにおける時間範囲T1〜時間範囲T10のうち現在再生されている評価用映像がどの期間に属するかを検出する検出タイマとをリセットして、それぞれ計測を開始させる。そして、ステップS103に進む。
判定部34は、特定領域内に注視点がある時間を測定するためのカウンタ値CNT1、CNT2、CNT3をそれぞれ0にリセットして計測を開始させる(ステップS103)。本実施形態は、カメラの1フレームごとに1回の注視点測定を行うため、1フレームごとに、注視している領域に対応して計数することにより注視時間を計測することが可能である。そして、ステップS104に進む。
注視点検出部32は、表示装置10の表示部11に表示された評価用映像を被験者に見せた状態で、規定のサンプリング周期(例えば20[msec])毎に、表示装置10の表示部11における被験者の注視点の位置データを検出する(ステップS104)。そして、ステップS105に進む。
演算部35は、瞬きなどにより注視点を検出できない場合を考量して、注視点の検出に失敗したか否かを判定する(ステップS105)。演算部35は、注視点の検出に失敗したと判定する場合(ステップS105でYes)、ステップS110に進む。演算部35は、注視点の検出に失敗していないと判定する場合(ステップS105でNo)、ステップS106に進む。
注視点の検出に失敗していないと判定する場合(ステップS105でNo)、演算部35は、教示映像を表示する期間であるか否かを判定する(ステップS106)。より詳しくは、演算部35は、検出タイマの検出結果により、時間範囲T1〜T5であるか否かの判定を行う。演算部35は、検出タイマの検出結果が時間範囲T1からT5までの範囲に該当し、教示映像を表示する期間であると判断する場合(ステップS106のYes)、ステップS108に進む。演算部35は、検出タイマの検出結果が時間範囲T1からT5までの範囲に該当せず、教示映像を表示する期間ではないと判断する場合(ステップS106のNo)、ステップS107に進む。
教示映像を表示する期間ではないと判断された場合(ステップS106のNo)、演算部35は、設問映像を表示する期間であるか否かを判定する(ステップS107)。より詳しくは、演算部35は、検出タイマの検出結果により、時間範囲T6〜T8であるか否かの判定を行う。演算部35は、検出タイマの検出結果が時間範囲T6からT8までの範囲に該当し、設問映像を表示する期間であると判断する場合(ステップS107のYes)、ステップS109に進む。演算部35は、検出タイマの検出結果が時間範囲T6からT8までの範囲に該当せず、設問映像を表示する期間ではないと判断する場合(ステップS107のNo)、ステップS110に進む。
演算部35は、後述する教示処理を実行する(ステップS108)。そして、ステップS110に進む。
演算部35は、後述する設問処理を実行する(ステップS109)。そして、ステップS110に進む。
演算部35は、管理タイマの検出結果に基づいて、評価用映像の再生が完了する時刻に到達したか否かを判断する(ステップS110)。演算部35により評価用映像の再生が完了する時刻に到達していないと判断された場合(ステップS110のNo)、上記のステップS104以降の処理を繰り返し行う。演算部35により評価用映像の再生が完了する時刻に到達したと判断された場合(ステップS110のYes)、ステップS111に進む。
表示制御部31は、評価用映像の再生を停止させる(ステップS111)。そして、ステップS112に進む。
評価部36は、上記の処理結果から得られる時間データに基づいて、評価値ANSを算出する(ステップS112)。そして、ステップS113に進む。
入出力制御部37は、評価部36で求められた評価データを出力する(ステップS113)。この処理を終了する。
つづいて、教示処理の一例について、図10を参照しながら説明する。図10は、教示処理の一例を示すフローチャートである。
演算部35は、検出タイマの検出結果により、時間範囲T4であるか否かの判定を行う(ステップS121)。演算部35は、検出タイマの検出結果が、時間範囲T4であると判定する場合(ステップS121でYes)、ステップS122に進む。演算部35は、検出タイマの検出結果が、時間範囲T4ではないと判定する場合(ステップS121でNo)、処理を終了する。
演算部35により検出タイマの検出結果が時間範囲T4であると判断された場合(ステップS121のYes)、領域設定部33は、被検者が見るべき領域を注視しているかを確認するため、特定領域として、移動物体領域Aを設定する(ステップS122)。そして、ステップS123に進む。
判定部34は、被験者の注視点が移動物体領域Aに存在するか否かを判定する(ステップS123)。判定部34が被験者の注視点が移動物体領域Aに存在すると判定する場合(ステップS123でYes)、ステップS124に進む。判定部34が被験者の注視点が移動物体領域Aに存在しないと判定する場合(ステップS123でNo)、処理を終了する。
判定部34により注視点が移動物体領域Aに存在すると判定された場合(ステップS123のYes)、演算部35は、カウンタ値CNT1を+1する(ステップS124)。演算部35は、判定データとしてカウンタ値CNT1を出力する。
つづいて、設問処理の一例について、図11を参照しながら説明する。図11は、設問処理の一例を示すフローチャートである。
演算部35は、検出タイマの検出結果により、時間範囲T7であるか否かの判定を行う(ステップS131)。演算部35は、検出タイマの検出結果が、時間範囲T7であると判定する場合(ステップS131のYes)、ステップS132に進む。演算部35は、検出タイマの検出結果が、時間範囲T7ではないと判定する場合(ステップS131でNo)、処理を終了する。
演算部35により検出タイマの検出結果が時間範囲T7であると判断された場合(ステップS131のYes)、領域設定部33は、被検者が見るべき領域を注視しているかを確認するため、特定領域として、移動経路領域A1と最終到達点領域A2とを設定する(ステップS132)。そして、ステップS133に進む。
判定部34は、被験者の注視点が最終到達点領域A2に存在するか否かを判定する(ステップS133)。判定部34が被験者の注視点が最終到達点領域A2に存在すると判定する場合(ステップS133でYes)、ステップS135に進む。判定部34が被験者の注視点が最終到達点領域A2に存在しないと判定する場合(ステップS133でNo)、ステップS134に進む。
判定部34が被験者の注視点が最終到達点領域A2に存在しないと判定する場合(ステップS133でNo)、被験者の注視点が移動経路領域A1に存在するか否かを判定する(ステップS134)。判定部34が被験者の注視点が移動経路領域A1に存在すると判定する場合(ステップS134でYes)、ステップS136に進む。判定部34が被験者の注視点が移動経路領域A1に存在しないと判定する場合(ステップS134でNo)、処理を終了する。
判定部34により注視点が最終到達点領域A2に存在すると判定された場合(ステップS133のYes)、演算部35は、カウンタ値CNT2を+1する(ステップS135)。演算部35は、判定データとしてカウンタ値CNT2を出力する。
判定部34により注視点が移動経路領域A1に存在すると判定された場合(ステップS134のYes)、演算部35は、カウンタ値CNT3を+1する(ステップS136)。演算部35は、判定データとしてカウンタ値CNT3を出力する。
以上のように、本実施形態に係る評価装置100は、画像を表示する表示部11と、被験者の注視点の位置データを検出する注視点検出部32と、移動規則に従って移動する移動経路と最終到達点とを被験者に注視させる課題を表示部11に表示する表示動作を行う表示制御部31と、移動経路に対応した移動経路領域A1と、最終到達点に対応した最終到達点領域A2とを設定する領域設定部33と、注視点の位置データに基づいて、表示動作が行われる表示期間に注視点が移動経路領域A1及び最終到達点領域A2に存在するか否かの判定を行う判定部34と、判定部34における判定結果に基づいて、表示期間における注視点の移動の経過を示す注視点データを算出する演算部35と、注視点データに基づいて、被験者の評価データを求める評価部36とを備える。
本実施形態に係る評価方法は、表示部11に画像を表示する表示ステップと、表示部11を観察する被験者の注視点の位置データを検出する注視点検出ステップと、移動規則に従って移動する移動経路と最終到達点とを被験者に注視させる課題を表示部11に表示する表示動作を行う表示制御ステップと、移動経路に対応した移動経路領域A1と、最終到達点に対応した最終到達点領域A2とを設定する領域設定ステップと、注視点の位置データに基づいて、表示動作が行われる表示期間に注視点が移動経路領域A1及び最終到達点領域A2に存在するか否かの判定を行う判定ステップと、判定ステップによる判定結果に基づいて、表示期間における注視点の移動の経過を示す注視点データを算出する演算ステップと、注視点データに基づいて、被験者の評価データを求める評価ステップとを含む。
本実施形態に係る評価プログラムは、表示部11に画像を表示する表示ステップと、表示部11を観察する被験者の注視点の位置データを検出する注視点検出ステップと、移動規則に従って移動する移動経路と最終到達点とを被験者に注視させる課題を表示部11に表示する表示動作を行う表示制御ステップと、移動経路に対応した移動経路領域A1と、最終到達点に対応した最終到達点領域A2とを設定する領域設定ステップと、注視点の位置データに基づいて、表示動作が行われる表示期間に注視点が移動経路領域A1及び最終到達点領域A2に存在するか否かの判定を行う判定ステップと、判定ステップによる判定結果に基づいて、表示期間における注視点の移動の経過を示す注視点データを算出する演算ステップと、注視点データに基づいて、被験者の評価データを求める評価ステップとをコンピュータに実行させる。
本実施形態によれば、表示期間に被験者の注視点が特定領域に存在する時間データが求められ、時間データに基づいて被験者の評価データを求められる。このため、評価装置100は、表示期間における被験者の視線の動きにより、被験者の空間認知能力、推測を修正する能力、及び、追視能力を評価することができる。これにより、評価装置100は、被験者の評価を高精度に行うことが可能となる。
本実施形態では、演算部35は、時間範囲T4T4〜T5に注視点が移動物体領域Aに存在した第1時間データと、時間範囲T7に注視点が移動経路領域A1に存在した第2時間データと、時間範囲T7に注視点が最終到達点領域A2に存在した第3時間データとを算出し、評価部36は、第1時間データ、第2時間データ及び第3時間データに基づいて評価データを求める。これにより、本実施形態は、時間範囲T4〜T5における追視能力、推測を修正する能力、時間範囲T6〜T8における空間認知能力を細分化して評価することができる。
また、本実施形態に係る評価装置100において、評価部36は、第1時間データの影響よりも第2時間データの影響に重みをつけ、さらに、第2時間データの影響よりも第3時間データの影響に重みをつけて評価データを求める。第2時間データ、第3時間データに重みをつけて評価値ANSを求めることにより、効率的に評価データを得ることができる。
また、本実施形態に係る評価装置100において、領域設定部33は、教示映像が表示される時間範囲T4において、玉MA1の軌跡に基づいて移動物体領域Aを特定領域として設定する。これにより、玉MA1の移動に応じて移動物体領域Aを精度よく設定することができるため、精度の高い時間データを得ることができる。
また、本実施形態に係る評価装置100において、領域設定部33は、設問映像が表示される時間範囲T7において、玉MA1の移動経路に対応した移動経路領域A1と、最終到達点であるカップMC2に対応した最終到達点領域A2とを特定領域として設定する。これにより、移動経路領域A1と最終到達点領域A2とを精度よく設定することができるため、精度の高い時間データを得ることができる。
また、本実施形態に係る評価装置100において、表示制御部31は、教示映像において、玉MA1の正しい移動経路を表示させる。これにより、玉MA1がどのように落下するかを被験者に知らせることができる。被験者は、玉MA1がどのように落下するかを知ることにより、自身の推測が誤っている場合、推測を修正する機会が得られる。これにより、推測を修正する能力を、評価に含めることができる。
<第二実施形態>
図12ないし図15を参照しながら、本実施形態に係る評価装置100について説明する。図12は、第二実施形態に係る表示制御部31が表示装置10に表示させる評価用映像の一例を示す図である。図13は、第二実施形態に係る表示制御部が表示部に表示させる評価用映像と被験者の思考過程の一例を示す図である。図14は、第二実施形態に係る評価方法の一例を示すフローチャートである。図15は、設問処理の一例を示すフローチャートである。評価装置100は、基本的な構成は第一実施形態の評価装置100と同様である。以下の説明においては、第一実施形態の評価装置100と同様の構成要素には、同一の符号または対応する符号を付し、その詳細な説明は省略する。本実施形態は、領域設定部33と判定部34と評価部36との処理が、第一実施形態と異なる。
領域設定部33は、表示装置10の表示部11に表示された評価用映像に対応した特定領域及び比較領域を設定する。領域設定部33は、時間範囲T7において、評価用映像に含まれる特定領域以外の領域の少なくとも一部に比較領域を設定する。本実施形態では、時間範囲T7において、領域設定部33は、移動経路領域A1と最終到達点領域A2とに加えて、比較到達点に対応した比較到達点領域B1、B2を比較領域として設定する。
判定部34は、注視点の位置データに基づいて、注視点が移動経路領域A1と、最終到達点領域A2及び比較到達点領域B1、B2のうち少なくとも最終到達点領域A2とに存在するか否かの判定を行う。
図12は、表示制御部31が表示装置10に表示させる評価用映像の一例を示す図である。図12が表示されている時間範囲T7において、領域設定部33は、特定領域として、表示装置10の表示部11には表示されないが、移動経路領域A1と、最終到達点領域A2とを設定する。領域設定部33は、表示装置10の表示部11には表示されないが、比較領域として、比較到達点領域B1、B2を設定する。カップMC1を中心と設定した所定サイズの領域が、比較到達点領域B1として設定されている。カップMC3を中心と設定した所定サイズの領域が、比較到達点領域B2として設定されている。
比較到達点領域B1と比較到達点領域B2とに注視点が集まれば、被検者が玉MA1の移動経路を正しく推測できておらず、空間認知能力に問題を有するとわかる。また、比較到達点領域B1と比較到達点領域B2とに対する視線を計測することで、一度で素早く玉MA1が落下する経路を推測できているのか、あるいは何度も推測を繰り返しているのかなど、被検者の思考過程を記録し、診断の補助とすることが可能になる。
ここで、図13を参照しながら、被験者の思考過程について説明する。太い矢印は、被験者の注視点の経路MF2を示している。経路MF2から、被験者が、最終到達点領域A2がどこになるか推測できず、最終到達点領域A2と、比較到達点領域B1と比較到達点領域B2とで迷ってしまい、視線が行き来したことがわかる。このように、経路MF2を、診断の補助として使用することによって、被験者をより適切に診断することが可能になる。
判定部34は、時間範囲T7において、注視点が移動経路領域A1と、最終到達点領域A2及び比較到達点領域B1、B2のうち少なくとも最終到達点領域A2とに存在するか否かをそれぞれ判定し、判定データを出力する。また、演算部35は、時間範囲T7において、判定データに基づいて、最終到達点領域A2に注視点が存在する時間を示す第2時間データ(最終到達点領域存在時間データ)と、比較到達点領域B1、B2に注視点が存在する時間を示す第3時間データ(比較到達点領域存在時間データ)と、注視点が移動経路領域A1に存在する時間を示す第4時間データ(移動移動経路領域存在時間データ)を算出する。
評価部36は、例えば以下の式(2)により評価値ANSを求めることができる。カウンタ値CNT1は、教示時に被験者が玉MA1を追視できていたかの評価となる。カウンタ値CNT2は、正解の回答の部分となるので、この計数値の評価が最も高くなる。カウンタ値CNT3は、間違った回答であるので、この計数値の評価が低くなる。カウンタ値CNT4は、正解の回答を導く部分となるので、この計数値の評価が高くなる。
ANS=(K1×CNT1)+(K2×CNT2)+(K3×CNT3)+(K4×CNT4)・・・(2)
上記の式(2)において、定数K1、K2、K3、K4は、重みづけのための定数である。定数K1、K2、K3、K4については、例えば、K1<K3<K4<K2とすることができる。この場合、第1時間データの影響よりも第3時間データの影響に重みをつけ、第3時間データの影響よりも第4時間データの影響に重みをつけ、さらに、第4時間データの影響よりも第2時間データの影響に重みをつけた評価値ANSを求める。
次に、本実施形態に係る評価方法の一例について、図14を参照しながら説明する。ステップS141、ステップS142、ステップS144ないしステップS153の処理は、図9に示すフローチャートのステップS101、ステップS102、ステップS104ないしステップS113と同様の処理である。
判定部34は、特定領域内に注視点がある時間を測定するためのカウンタ値CNT1、CNT2、CNT3、CNT4をそれぞれ0にリセットして計測を開始させる(ステップS143)。そして、ステップS144に進む。
つづいて、設問処理の一例について、図15を参照しながら説明する。ステップS161、ステップS163、ステップS165、ステップS166の処理は、図11におけるステップS131、ステップS133、ステップS134、ステップS135と同様の処理である。
演算部35により検出タイマの検出結果が時間範囲T7であると判断された場合(ステップS161のYes)、領域設定部33は、被検者が見るべき領域を注視しているかを確認するため、特定領域として、移動経路領域A1と最終到達点領域A2とを設定し、比較領域として、比較到達点領域B1、B2を設定する(ステップS162)。そして、ステップS163に進む。
判定部34が被験者の注視点が最終到達点領域A2に存在しないと判定する場合(ステップS163でNo)、被験者の注視点が比較到達点領域B1、B2に存在するか否かを判定する(ステップS164)。判定部34が被験者の注視点が比較到達点領域B1、B2に存在すると判定する場合(ステップS164でYes)、ステップS167に進む。判定部34が被験者の注視点が比較到達点領域B1、B2に存在しないと判定する場合(ステップS164でNo)、ステップS165に進む。
判定部34により注視点が比較到達点領域B1、B2に存在すると判定された場合(ステップS164のYes)、演算部35は、カウンタ値CNT3を+1する(ステップS167)。演算部35は、判定データとしてカウンタ値CNT3を出力する。
判定部34により注視点が移動経路領域A1に存在すると判定された場合(ステップS165のYes)、演算部35は、カウンタ値CNT4を+1する(ステップS168)。演算部35は、判定データとしてカウンタ値CNT4を出力する。
以上のように、本実施形態は、表示期間に被験者の注視点が特定領域及び比較領域に存在する時間データが求められ、時間データに基づいて被験者の評価データを求められる。本実施形態は、被験者が、最終到達点ではないカップMC1、MC3に対応する比較到達点領域B1、B2を注視したことを判定して評価することができる。本実施形態によれば、被験者の評価を高精度に行うことができる。
<第三実施形態>
図16ないし図18を参照しながら、本実施形態に係る評価装置100について説明する。図16は、第三実施形態に係る表示制御部31が表示装置10に表示させる評価用映像の一例を示す図である。図17は、第三実施形態に係る評価方法の一例を示すフローチャートである。図18は、設問処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態は、領域設定部33と評価部36との処理が、第一実施形態と異なる。
領域設定部33は、表示装置10の表示部11に表示された評価用映像に対応した特定領域及び比較領域を設定する。本実施形態では、時間範囲T7において、領域設定部33は、最終到達点領域A2に加えて、拘束物のうち移動物体の移動経路上に位置する拘束物に対応した拘束物領域A3を特定領域として設定する。領域設定部33は、時間範囲T7において、拘束物のうち移動物体の移動経路から外れて位置する拘束物に対応した拘束物領域B3を比較領域として設定する。領域設定部33は、比較到達点に対応した比較到達点領域B1、B2を比較領域として設定する。
判定部34は、注視点の位置データに基づいて、注視点が拘束物領域A3または拘束物領域B3と、最終到達点領域A2及び比較到達点領域B1、B2のうち少なくとも最終到達点領域A2とに存在するか否かの判定を行う。
図16は、表示制御部31が表示装置10に表示させる評価用映像の一例を示す図である。図16が表示されている時間範囲T7において、領域設定部33は、特定領域として、表示装置10の表示部11には表示されないが、最終到達点領域A2と、拘束物領域A3とを設定する。領域設定部33は、比較領域として、表示装置10の表示部11には表示されないが、比較到達点領域B1、B2と、拘束物領域B3とを設定する。玉MA1が落下する際に接触する拘束物を中心と設定した所定サイズの領域が、拘束物領域A3として設定されている。玉MA1が落下する際に接触しない拘束物を中心と設定した所定サイズの領域が、拘束物領域B3として設定されている。
最終到達点領域A2と拘束物領域A3とに注視点が集まれば、被検者が玉MA1の移動経路を正しく推測できて、空間認知能力に問題が少ないことがわかる。比較到達点領域B1、B2と拘束物領域B3とに注視点が集まれば、被検者が玉MA1の移動経路を正しく推測できておらず、空間認知能力に問題を有するとわかる。また、拘束物領域A3と拘束物領域B3とに対する視線を計測することで、玉MA1が落下する経路を適切に推測できているのか、あるいは偶然推測できているのかなど、被検者の思考過程を記録し、診断の補助とすることが可能になる。
判定部34は、時間範囲T7において、注視点が拘束物領域A3または拘束物領域B3と、最終到達点領域A2及び比較到達点領域B1、B2のうち少なくとも最終到達点領域A2と、に存在するか否かをそれぞれ判定し、判定データを出力する。また、演算部35は、時間範囲T7において、判定データに基づいて、注視点が最終到達点領域A2に注視点が存在する時間を示す第2時間データ(最終到達点領域存在時間データ)と、比較到達点領域B1、B2に注視点が存在する時間を示す第3時間データ(比較到達点領域存在時間データ)と、拘束物領域A3に注視点が存在する時間を示す第4時間データ(拘束物領域存在時間データ)と、拘束物領域B3に注視点が存在する時間を示す第5時間データ(拘束物領域存在時間データ)を算出する。
評価部36は、例えば以下の式(3)により評価値ANSを求めることができる。カウンタ値CNT1は、教示時に被験者が玉MA1を追視できていたかの評価となる。カウンタ値CNT2は、正解の回答の部分となるので、この計数値の評価が最も高くなる。カウンタ値CNT3は、間違った回答であるので、この計数値の評価が低くなる。カウンタ値CNT4は、正解の回答を導く部分となるので、この計数値の評価が高くなる。カウンタ値CNT5は、間違った回答であるので、この計数値の評価が低くなる。
ANS=(K1×CNT1)+(K2×CNT2)+(K3×CNT3)+(K4×CNT4)+(K5×CNT5)・・・(3)
上記の式(3)において、定数K1、K2、K3、K4、K5は、重みづけのための定数である。定数K1、K2、K3、K4、K5については、例えば、K1<K5<K3<K4<K2とすることができる。この場合、第1時間データの影響よりも第5時間データの影響に重みをつけ、第5時間データの影響よりも第3時間データの影響に重みをつけ、第3時間データの影響よりも第4時間データの影響に重みをつけ、さらに、第4時間データの影響よりも第2時間データの影響に重みをつけた評価値ANSを求める。
次に、本実施形態に係る評価方法の一例について、図17を参照しながら説明する。ステップS171、ステップS172、ステップS174ないしステップS183の処理は、図9に示すフローチャートのステップS101、ステップS102、ステップS104ないしステップS113と同様の処理である。
判定部34は、特定領域内に注視点がある時間を測定するためのカウンタ値CNT1、CNT2、CNT3、CNT4、CNT5をそれぞれ0にリセットして計測を開始させる(ステップS173)。そして、ステップS174に進む。
つづいて、設問処理の一例について、図18を参照しながら説明する。ステップS191ないしステップS194、ステップS197、ステップS198の処理は、図15におけるステップS161ないしステップS164、ステップS166、ステップS167と同様の処理である。
判定部34が被験者の注視点が比較到達点領域B1、B2に存在しないと判定する場合(ステップS194でNo)、被験者の注視点が拘束物領域A3に存在するか否かを判定する(ステップS195)。判定部34が被験者の注視点が拘束物領域A3に存在すると判定する場合(ステップS195でYes)、ステップS199に進む。
判定部34が被験者の注視点が拘束物領域A3に存在しないと判定する場合(ステップS195でNo)、被験者の注視点が拘束物領域B3に存在するか否かを判定する(ステップS196)。判定部34が被験者の注視点が拘束物領域B3に存在すると判定する場合(ステップS196でYes)、ステップS200に進む。判定部34が被験者の注視点が拘束物領域B3に存在しないと判定する場合(ステップS196でNo)、処理を終了する。
判定部34により注視点が拘束物領域A3に存在すると判定された場合(ステップS195のYes)、演算部35は、カウンタ値CNT4を+1する(ステップS199)。演算部35は、判定データとしてカウンタ値CNT4を出力する。
判定部34により注視点が拘束物領域B3に存在すると判定された場合(ステップS196のYes)、演算部35は、カウンタ値CNT5を+1する(ステップS200)。演算部35は、判定データとしてカウンタ値CNT5を出力する。
以上のように、本実施形態は、表示期間に被験者の注視点が特定領域及び比較領域に存在する時間データが求められ、時間データに基づいて被験者の評価データを求められる。本実施形態は、被験者が、玉MA1が落下時に接触しない拘束物に対応する拘束物領域B3を注視したことを判定して評価することができる。本実施形態によれば、被験者の評価を高精度に行うことができる。
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
また、上記実施形態では、評価部36は、評価値ANSを求める場合、カウンタ値CNT1、CNT2、CNT3などにそれぞれ定数を乗じた値を加算する例を説明したが、これに限定されない。例えば、評価部36は、カウンタ値CNT1、CNT2、CNT3などの各値を個別に判断することで、評価値ANSを求めてもよい。
また、上記実施形態では、評価装置100を、認知機能障害及び脳機能障害者である可能性を評価する評価装置として用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、評価装置100は、発達障がいなどの認知機能障害及び脳機能障害者ではない被験者の空間認知能力、推測を修正する能力、及び、追視能力を評価する評価装置として用いてもよい。
第三実施形態において、拘束物領域B3のうち、拘束物領域A3に隣接する拘束物に対応する拘束物領域と、拘束物領域A3から離れた拘束物に対応する拘束物領域とを区別して注視点が存在するかを判定してもよい。これにより、被験者の評価をより高精度に行うことができる。
例えば、回答映像を表示する時間範囲T9〜T10において、判定部34は、注視点が移動物体領域Aに存在するか否かを判定し、判定データを出力してもよい。これにより、被験者の評価をより高精度に行うことができる。
このように、本発明は、最終結果だけで判断することなく途中経過を利用することにより、最終結果の選択の確からしさを向上させ、結果として評価の精度を向上することができる。また、迷路やあみだくじのように、途中経過が表示される設問に対して本発明を利用することができる。