この目的は、請求項1の特徴を有する冷媒、請求項12の特徴を有する試験チャンバー、及び請求項18の特徴を有する冷媒の使用によって達成される。
本発明に係る、少なくとも1つの熱交換器を有する冷却回路を備えた冷却装置用の冷媒は、熱交換器内で相転移を起こし、二酸化炭素、ペンタフルオロエタン、及び少なくとも1つの他の成分により構成される冷媒混合物であって、冷媒混合物における二酸化炭素の質量分率が20〜74質量%、ペンタフルオロエタンの質量分率が8〜65質量%であって、他の成分はフルオロメタンである。
出願の優先日におけるドイツの業界標準DIN8960の最新版によると、二酸化炭素(CO2)がR744との名称で冷媒又は成分としても知られており、フルオロメタン(CH3F)がR41との名称で知られており、ペンタフルオロエタン(C2HF5)がR125との名称で知られており、ジフルオロメタン(CH2F2)がR32との名称で知られている。
本発明は、二酸化炭素と、GWPが低く、不燃性又は限定された程度においてのみ可燃性である、1つ以上のフッ素化冷媒との冷媒混合物を提供する。二酸化炭素の質量分率が増加すると、冷媒混合物の凝固点が上昇するため、二酸化炭素の割合は、可能な限り低くする必要がある。しかし、二酸化炭素の質量分率が低いと、二酸化炭素のGWP低減効果が低下する。これが、部分的にフッ素化された冷媒が、改善された難燃性効果も有するが、その一方で、二酸化炭素よりもはるかに高いGWPを示す理由である。特に、ペンタフルオロエタン及びフルオロメタンは、望ましくない高GWPをもたらす相当量のフッ素原子を含んでいる。しかし、驚くべきことに、二酸化炭素の質量分率が20〜74質量%であって、ペンタフルオロエタン及びフルオロメタンを含む冷媒混合物は、例えば2500未満の十分に低いGWPを実現できることがわかった。また、ペンタフルオロエタンの難燃性効果は、二酸化炭素よりも比較的大きいことがわかった。更に、ペンタフルオロエタンと二酸化炭素の好ましくない特性は、冷媒混合物の3番目の成分としてフルオロメタンを添加することにより低減できる。したがって、ペンタフルオロエタン及びフルオロメタンを含む冷媒混合物は、不燃性として分類できる。同時に、フルオロメタンは、ペンタフルオロエタンと混合するよりも、二酸化炭素と混合する方が凝固点が低くなる。その結果、ペンタフルオロエタン、フルオロメタン、及び二酸化炭素の混合物は、単独のペンタフルオロエタン及び二酸化炭素よりも低い凝固点を達成できる。したがって、フルオロメタンは、冷媒混合物を不燃性とするために二酸化炭素の一定の質量分率が必要な、冷媒混合物の凝固点を大幅に低下させる。しかし、同時に、フルオロメタンは、最終的に高い圧縮温度をもたらし、可燃性である。そのため、フルオロメタンは、二酸化炭素の唯一の混合共存物として、制限された中でのみ適当である。ペンタフルオロエタンは、冷媒混合物の凝固点をフルオロメタンほど下げることはできないが、二酸化炭素よりも大きな難燃効果があり、これは有利である。
その結果、冷媒混合物は、3つの要素からなる混合物とすることができる。
冷媒混合物におけるフルオロメタンの質量分率は、7〜25質量%とすることができる。冷媒混合物の凝固点は、前記範囲のフルオロメタンを添加することにより、大幅に下げることができる。この低下は、冷媒混合物の凝固点が意図した蒸発温度よりも低くなるように、同時に、蒸発温度に関連する蒸気圧が周囲の圧力よりも高いか又は僅かに低くなるように、設定できる。
好ましくは、フルオロメタンの質量分率が13〜21質量%であってもよい。
特に好ましくは、フルオロメタンの質量分率は15〜19質量%である。
二酸化炭素の質量分率は、26〜34質量%とすることができる。ペンタフルオロエタンは不燃性であり、このことは、前記質量分率における二酸化炭素、ペンタフルオロエタン、及びフルオロメタンから構成された混合物も不燃性であることを意味する。ペンタフルオロエタンのGWP3150は、他の可能な成分のGWPよりも大幅に高くなっている。したがって、冷媒混合物のGWPを低下させるために、冷媒混合物において、部分的にそれを他の物質と置き換えてもよい。更に、ペンタフルオロエタンの難燃性効果は、二酸化炭素よりも大きい。これは、凝固点を更に低下させ、不燃性が確保されるが、GWPが増加することになる冷媒混合物において、二酸化炭素の質量分率を低下させることが可能であることを意味する。。
好ましくは、二酸化炭素の質量分率は28〜51質量%であってもよい。
ペンタフルオロエタンの質量分率は、49〜57質量%とすることができる。前記のように、二酸化炭素、ペンタフルオロエタン、及びフルオロメタンの混合物は、特に好ましいことが証明されている。その結果、この冷媒混合物は、示された3つの成分のみで構成される。この冷媒混合物は、約1barの蒸気圧で4.1Kから15.6Kの温度グライドを有していてもよい。更に、この冷媒混合物は、濃度に依存して凝固点を低下させる。そのため、質量分率が指定された質量分率から逸脱した場合には、異なる温度で、可燃性及び不燃性の冷媒混合物が生じる。
好ましくは、ペンタフルオロエタンの質量分率は51〜55質量%であってもよい。
次の表1に、前記実施形態における冷媒の例を示す。
更に、冷媒は、4K〜16Kの温度グライドを有することができる。冷媒の温度グライドは、冷却装置を合理的な方法で操作できるように、16Kを超えるべきではない。
冷媒は、100年を通して、相対CO2換算値を2300未満、好ましくは2000未満、特に好ましくは1000未満とすることができる。その結果、冷媒は、環境に殆ど害を及ぼさないことも可能である。
冷媒は不燃性であり得る。冷媒が不燃性である場合、冷媒の可燃性に関して特別な安全対策を講じる必要がないため、特に冷却回路と試験チャンバーは、より費用対効果の高い設計が可能である。この場合、冷媒は、少なくとも火災クラスC及び/又は冷媒安全グループA1に分類されることはない。更に、冷却回路は、輸送方法に関係なく、輸送前に冷媒を充填できるため、冷却回路の配送及び輸送がより簡単になる。可燃性の冷媒が使用される場合には、作動開始までに設置場所では充填できない可能性がある。更に、不燃性の冷媒は、発火源の存在下において使用できる。
空気を調整するための本発明に係る試験チャンバーは、試験材料を受ける機能を有し、外部環境に対して封止可能であり断熱された試験空間と、試験空間の温度を制御するための温度制御装置とを備え、温度制御装置の使用により、試験空間内において−70℃から+180℃までの温度を達成可能であり、温度制御装置は、本発明に係る冷媒と、熱交換器と、圧縮機と、凝縮器と、膨張要素と、を有する冷却回路を含む冷却装置を備える。本発明に係る試験チャンバーの利点については、本発明に係る冷媒の利点に関する説明を参照する。
温度制御装置により、試験空間内に、−80℃から+180℃、好ましくは−90℃から+180℃、特に好ましくは−100℃から+180℃までの温度を実現できる。混合流体カスケードシステムと異なり、冷媒に含まれる全ての成分を有する冷媒を、膨張要素により、一度に蒸発させることができる。二酸化炭素の凝固点が−56.6℃であるため、二酸化炭素の質量分率が大きい冷媒混合物は、原則として、−56.6℃未満の温度に達するのに適していない。しかし、本発明に係る冷媒の使用は、冷媒の露点温度を−70℃未満にすることを可能にする。
冷却回路は、内部熱交換器を有することができる。内部熱交換器は、膨張要素の上流側及び凝縮器の下流側の、冷却回路における高圧側と、圧縮機の上流側及び熱交換器の下流側の、冷却回路における低圧側とを接続できる。内部熱交換器の使用及び内部熱交換器による高圧側の液化冷媒の冷却により、−56℃未満の温度に簡単に到達できる。内部熱交換器により冷却された冷媒の蒸発温度は、冷却されていない冷媒の蒸発温度と比較して、膨張要素において低下させることができる。したがって、内部熱交換器を介して、低圧側から高圧側に移動する冷却能力は、少なくとも部分的に、好ましくは排他的に、膨張要素での冷媒の蒸発温度を下げるために使用できる。更に、まず第一に、温度グライドを有する非共沸性冷媒の使用が可能になる。この場合において、冷媒の露点温度、即ち冷媒の露点の位置を、内部熱交換器にシフトさせることができるからである。非共沸性冷媒における温度グライドの結果として、達成された冷媒の露点温度は、比較的高く、その結果として、熱交換器の更なる冷却を妨げ得る。
したがって、冷媒の一部のみが熱交換器において蒸発し得るので、冷媒の湿った蒸気の一部における使用できない部分が内部熱交換器内にシフトし得る。全体として、これにより、冷媒は、二酸化炭素を含み、環境に優しく、その一方で、試験空間内に低温を実現するために使用されるための非共沸特性を有することが可能となる。更に、温度グライドの一部、即ち冷媒の湿った蒸気の一部が試験空間内の熱交換器から内部熱交換器内にシフトする場合には、非共沸性冷媒によって、比較的改善された温度安定性を達成できる。この場合、熱交換器を介した冷却能力の出力は、温度グライドの部分のみで生み出される。これは、冷却回路における冷媒の露点のシフトは、熱交換器の温度安定性に殆ど影響を与えないことを意味する。更に、単一の熱交換器を使用して、流体、つまり、この場合における試験空間内の空気を冷却してもよい。
熱交換器は、冷媒の一部のみが熱交換器において蒸発できるように寸法を設定できる。これにより、冷媒の露点、即ち露点温度の位置を熱交換器から内部熱交換器にシフトさせることができるという利点がある。非共沸性冷媒の温度グライドにより、熱交換器における冷媒の部分的な蒸発は、内部熱交換器内における冷媒の残りの蒸発よりも、熱交換器においてより低い温度に達することになる。
試験チャンバーに係る1つの実施形態において、熱交換器は、試験空間に配置できる。この場合、熱交換器は、また、ファンによって循環される空気が熱交換器と接触可能となるように、試験空間における空調スペース内に配置できる。これにより、熱交換器を介した冷却装置によって、試験空間における循環される空気を直接的に試験空間において冷却できる。試験チャンバーは、ただ一つの単独の冷却回路として、冷却回路を有することができる。この場合、冷却回路は、直接的に試験空間に接続される。
試験チャンバーに係る他の実施形態において、凝縮器は、冷却装置の他の冷却回路におけるカスケード式熱交換器であってもよい。それに応じて、試験チャンバーは、少なくとも2つの冷却回路を有することができる。その場合、冷却回路は、冷却装置における2段目を形成してもよく、冷却回路の上流側に配置される他の冷却回路は、冷却装置における1段目を形成してもよい。この場合、凝縮器は、カスケード式熱交換器、又は冷却回路のための熱交換器として機能する。試験チャンバーに係る本実施形態は、試験空間において、特に低い温度を実現できる。
温度制御装置は、試験空間内に、ヒータ及び加熱式熱交換器を有する加熱装置を備えていてもよい。加熱装置は、加熱式熱交換器によって試験空間内の温度を上昇させることができるように、加熱式熱交換器を加熱する電気抵抗ヒータであってもよい。制御装置を用いることにより、熱交換器と加熱式熱交換器が、試験空間内を循環する空気の冷却又は加熱のために特別に制御可能な場合は、温度制御装置を用いて、前述した温度範囲内に収まる温度を試験空間内に実現できる。±1K、好ましくは±0.3Kから±0.5K又は±0.3K未満の温度の時間的な安定性を、試験材料又は試験材料の作動状態とは独立して、試験間隔の最中に、試験空間内に実現できる。試験間隔は、試験材料が本質的に一定の温度、又は気候条件に曝されることになる、全試験期間における時間区分である。加熱式熱交換器は、冷媒が流通可能であり且つ電気抵抗ヒータの加熱要素を備える、共有される熱交換器の本体が実現できるように、冷却回路における熱交換器と組み合わせてもよい。凝縮器は、空冷式、水冷式、又は他の冷却剤により冷却できる。一般に、凝縮器は、任意の適切な流体を用いて冷却され得る。重要なことは、冷媒が完全に液化するまで冷媒を凝縮させるように、凝縮器に生じる熱的な負荷を空冷又は水冷によって消散させることである。
少なくとも1つの制御可能な第2膨張要素を有する第1バイパスを、冷却回路において実現できる。この場合、第1バイパスは、内部熱交換器の上流側と凝縮器の下流側において冷却回路と接続され、制御可能な付加的内部冷却システムとして実現できる。このため、第1バイパスは、冷媒の再注入装置を形成できる。その結果、冷媒は、低圧側において、内部熱交換器の制御可能な第2膨張要素から再利用され得る。この場合、第1バイパスは、内部熱交換器の冷却回路上流側の低圧側及び熱交換器の下流側に接続できる。第2膨張要素により冷却された、即ち温度レベルが低下した冷媒は、内部熱交換器を通過して、内部熱交換器の高圧側において、冷媒の冷却を強化できる。また、この方法により、内部熱交換器の冷却能力を更に正確に制御できる。
少なくとも1つの第3膨張要素を有する第2バイパスを、冷却回路に形成できる。この場合、第2バイパスは、凝縮器の膨張要素下流側及び内部熱交換器の上流側をバイパスして、冷媒が、冷媒における吸入気体温度及び/又は吸入気体圧力を、冷却回路の低圧側における圧縮機の上流側で制御可能となるように、第3膨張要素によって定量で供給できる。これを通じて、数ある中で、例えば、圧縮機装置でもよい圧縮機が、過度に加熱されてダメージを受けることを防止できる。その結果として、静的な液体状の冷媒(still-liquid refrigerant)を加えることで、圧縮機の上流側における気体の冷媒を、第3膨張要素を作動させることにより第2バイパスを介して冷却できる。第3膨張要素は、制御装置によって作動させることができる。この制御装置は、圧縮機の上流側における冷却回路内において、それ自体が圧力及び/又は温度センサーに結合されている。吸入気体温度が、第2バイパスを介して30℃以下に設定されていれば特に有効である。また、冷媒は、圧縮機の作動時間を制御できるように、定量で供給できる。一般に、圧縮機、又は圧縮機装置は、過度に頻繁に繰り返しオンオフされることは望ましくない。圧縮機の作動時間を長くすると、圧縮機の耐用年数を長くすることができる。例えば、圧縮機を自動的にオフ状態にするのを遅らせて、圧縮機の作動期間を長くするために、冷媒は、第2バイパスを介して、膨張要素又は凝縮器を通過するように案内してもよい。
少なくとも1つの他の膨張要素を含む他のバイパスを冷却回路に形成できる。この他のバイパスは、冷媒の吸入気体温度及び/又は吸入気体圧力を、冷却回路の低圧側における圧縮機の上流側で制御でき、及び/又は、冷却回路の高圧側と低圧側との間における圧力差を等しくできるように、圧縮機の下流側と凝縮器の上流側とをバイパスする。第2バイパスは、磁力弁などの、設定可能な又は制御可能な弁を更に備えていてもよい。他の膨張要素を介して、高圧側と低圧側とを接続すると、システムが停止した場合に、圧縮された気体状の冷媒が冷却回路の高圧側から低圧側に徐々に流れることを保証する。これにより、膨張要素が閉じている場合であっても、高圧側と低圧側との間の段階的な圧力の均等化が保証される。他の膨張要素の横断面の大きさは、高圧側から低圧側に流れる冷媒が冷却装置の通常の動作に僅かな影響しか及ぼさないように、決めることができる。同時に、圧縮機の上流側に位置する気体状の冷媒は、他のバイパスを介して液体状の冷媒を加えることにより冷却できる。
更に、内部熱交換器は、補助的な冷却部又は熱交換器、特にプレート式熱交換器として実現できる。その補助的な冷却部は、互いに接触している冷却回路の2つのライン部によって、簡単に実現できる。
膨張要素は、スロットルと磁力弁を備えていてもよい。この場合、スロットル及び磁力弁を介して冷媒を定量で供給できる。そのスロットルは、磁力弁を用いて冷媒を案内できる調整可能な弁又は毛細管とすることができる。磁力弁自体は、制御装置を用いて作動させることができる。
また、温度制御装置は、冷却回路内に、少なくとも1つの圧力センサ、及び/又は、少なくとも1つの温度センサを有する制御装置を備えることができる。この場合、温度及び/又は圧力の測定値に応じて、制御装置を用いて磁力弁を作動させるようにすることができる。制御装置は、センサから出力されるデータセットを処理するデータ処理手段を有し、磁力弁を制御するようにしてもよい。この場合、冷却装置の機能は、例えば、適切なコンピュータプログラムを介して使用される冷媒に合わせて調整できる。更に、試験チャンバーの致命的な又は望ましくない作動状態による損傷から試験チャンバーと試験材料を保護するために、必要に応じて、故障を知らせ、試験チャンバーを停止させてもよい。
本発明に基づいて使用される場合、冷媒は、質量分率が20〜74質量%の二酸化炭素と、質量分率が8〜65質量%のペンタフルオロエタンと、少なくとも1つの他の成分とにより構成され、他の成分はフルオロメタンである冷媒混合物により構成される。冷媒は、試験チャンバーの試験空間内の空気を調整するために使用され、試験空間は、試験材料を受ける機能を有し且つ外部環境に対して封止可能で且つ断熱されている。試験チャンバーの温度制御装置の冷却装置は、冷媒と、熱交換器と、圧縮機と、凝縮器と、膨張要素とを有する冷却回路を備え、試験空間内において、−60℃から+180℃、好ましくは−70℃から+180℃、特に好ましくは−80℃から+180℃までの温度を達成するために使用される。
冷媒は、冷却回路における内部熱交換器により冷却され得る。内部熱交換器は、膨張要素の上流側及び凝縮器の下流側の、冷却回路における高圧側と、圧縮機の上流側及び熱交換器の下流側の、冷却回路における低圧側とに接続されており、内部熱交換器による高圧側の冷媒の冷却は、膨張要素における蒸発温度を下げるために使用できる。高圧側の冷媒の蒸発温度が低下している間、低圧側における冷媒の吸入圧力を一定に保つことができる。その場合、吸入圧力の関数として追加的な吸入圧力の制御及び膨張要素の制御など、システムをとても複雑にすることは、必ずしも必要ではない。特に、圧縮機は、冷却回路の作動状態に関係なく、一定の出力で作動させることも可能である。特に、ピストンポンプを圧縮機として使用する場合において、長期間の耐用期間を実現するためには、ピストンポンプを一定の速度で長時間作動させることが不可欠である。
高圧側の冷媒は、内部熱交換器による低圧側の一定の吸入圧力によって、低圧側の冷媒により冷却され得る。その結果、冷媒は、膨張要素から内部熱交換器までを含む冷却回路の蒸発部において、一定の吸入圧力で蒸発できる。冷媒の吸入圧力、又は蒸発圧力が一定の場合、冷媒は、蒸発温度が低い膨張要素から、蒸発温度が高い内部熱交換器へ、冷媒の温度グライドに応じて、蒸発できる。温度グライドから生じる露点温度は、冷却される流体、又は試験空間における空気の温度よりも高くし得る。冷媒の蒸発温度が、同じ吸入圧力における試験空間で冷却される空気の温度と等しくなると、空気はそれ以上冷却できなくなる。しかし、他の熱交換器で達する露点温度は、内部熱交換器の高圧側における冷媒の液体温度よりも低くなる。これは、冷媒の液体温度を更に下げることができるということを意味する。したがって、膨張要素の下流側における蒸発温度は、吸入圧力を変えることなく下げることができ、試験空間の空気の実現すべき更なる冷却を可能にする。
この結果として、膨張要素を介して送られた冷媒の第1部分は、熱交換器において蒸発でき、冷媒の第2部分は、内部熱交換器において蒸発できる。冷却回路において冷媒が蒸発する蒸発部は、膨張要素から内部熱交換器に及んでいてもよい。蒸発部は、内部熱交換器を通過していてもよい。この場合、冷媒の露点は、圧縮機の上流側における内部熱交換器の出口であってもよい。第1部分/第2部分の比率は、試験空間又は熱交換器における温度の関数として、冷却回路の作動中に変化してもよい。例えば、熱交換器の温度と試験空間における温度との差が比較的大きい場合、熱交換器の冷媒の加熱が促進される場合がある。その結果として、冷媒の露点が内部熱交換器の入口、又は圧縮機の上流側における熱交換器の出口にシフトする。この種の露点のシフトは、試験空間において、比較的低い温度又は目標温度が実現されない限り、許容できる。熱交換器の温度が試験空間における温度に近づくと、露点がシフトし、これにより、第2部分が冷媒の第1部分に対して大きくなる。
高圧側における冷媒の蒸発温度は、自己制御によって下げることができる。熱交換器の温度に応じて、蒸発しなくなった冷媒は、熱交換器から流れ方向に排出される。これは、熱交換器の温度が、この場合においては、冷媒の相転移を引き起こすのに十分ではないためである。この結果として、湿った蒸気、又は液体状の冷媒は、内部熱交換器において再び蒸発する。これは、高圧側と低圧側との温度差が熱交換器よりも常に大きくなるためである。膨張要素の上流側における液体状の冷媒の温度が、内部熱交換器における熱交換によって低下した場合、膨張要素の上流側における冷媒のエネルギー密度と、熱交換器において達成可能な温度差が増加する。膨張要素、熱交換器、及び内部熱交換器の相互作用は、原則として、制御する必要はない。
特に好ましくは、冷却装置は、専ら冷媒の臨界点以下でのみ作動する。冷却装置が冷媒の三重点以下で作動する場合には、冷媒が超臨界状態に達することを防ぐことができる。このため、冷却装置は、超臨界状態で作動するように構成する必要がなく、冷却装置の製造コストを節約できる。
特に、内部熱交換器により高圧側における冷媒の蒸発温度を下げている間において、一定の吸入圧力を維持できる。この結果、内部熱交換器を介した高圧側における冷媒の冷却は、膨張要素における冷媒の蒸発温度を下げるために、部分的に又は排他的に利用され得る。
冷媒の露点温度は、温度範囲における最低温度よりも高くすることができる。最新技術から知られている試験チャンバーにおいては、この場合におけるこの種の冷媒では、冷媒の露点温度に実質的に相当する比較的高い最低温度を除いて、温度範囲の最低温度に達することができない。しかしながら、本発明に係る試験チャンバーにおいては、露点温度が温度範囲において達成可能な最低温度よりも高い冷媒は、高圧側の液体状の冷媒が内部熱交換器によって冷却されるため、使用できる。これは、膨張要素における冷媒の蒸発温度を比較的低くできることを意味する。
冷媒は、0.3から5barまでの吸入圧力又は蒸発圧力で完全に蒸発できる。その圧力範囲内において冷媒を使用すると、冷却回路における低圧側を構築するために、特別な耐圧部品や構成要素を使用する必要がないため、冷却回路において費用対効果の高い製造が可能になる。
また、冷媒は、5〜35barまでの凝縮圧力で完全に凝縮できる。ここでも、高圧側は、比較的高い圧力に適応する必要のない部品と構成要素とを使用して構築できる。
使用における他の態様は、装置に係る請求項1を引用した従属項の特徴部の記載から明らかである。
以下、本発明の好ましい実施形態を、添付された図面を参照して詳細に説明する。