JP2020124897A - シミュレーション装置、造形システム、シミュレーション方法及びプログラム - Google Patents

シミュレーション装置、造形システム、シミュレーション方法及びプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】熱膨張層を有する媒体が過度に大きく膨張することを抑制することが可能なシミュレーション装置、造形システム、シミュレーション方法及びプログラムを提供する。【解決手段】シミュレーション装置30aにおいて、設定部311は、加熱により膨張する熱膨張層を有する媒体に印刷される、電磁波を熱に変換する変換層の濃度を設定する。温度導出部312は、設定部311により設定された濃度の変換層に電磁波が照射された場合における変換層の温度を導出する。温度補正部313は、温度導出部312により導出された温度を、媒体上における周囲の温度に基づいて補正する。高さ導出部314は、温度補正部313により補正された温度で媒体が加熱された場合に媒体が膨張する膨張高さを導出する。警告部316は、高さ導出部314により導出された膨張高さが所定の閾値よりも高い場合に警告を発する。【選択図】図19

Description

本発明は、シミュレーション装置、造形システム、シミュレーション方法及びプログラムに関する。
加熱により膨張する熱膨張層を有する媒体を膨張させて造形物を製造する技術が知られている。例えば、特許文献1,2は、造形物として、3次元状の広がりを有する画像である立体画像の形成方法を開示している。具体的に説明すると、特許文献1,2に開示された方法では、熱膨張層を有する熱膨張性シートの裏面に光吸収特性に優れた材料でパターンを形成し、形成されたパターンに照射手段によって光(電磁波)を照射することで加熱する。これにより、熱膨張性シートにおけるパターンが形成された部分が膨張して盛り上がり、立体画像が形成される。
特開昭64−28660号公報 特開2001−150812号公報
上記のような造形物を製造する技術において、熱膨張層を有する媒体を加熱させた際に媒体内で熱伝導が生じることにより、熱膨張層が想定とは異なる温度に加熱される場合がある。このような場合、媒体をユーザが望む高さに精度良く膨張させることが難しくなる。そのため場合によっては、媒体を過度に大きく膨張させることがある。
本発明は、以上のような課題を解決するためのものであり、熱膨張層を有する媒体が過度に大きく膨張することを抑制することが可能なシミュレーション装置、造形システム、シミュレーション方法及びプログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るシミュレーション装置は、
加熱により膨張する熱膨張層を有する媒体に形成される、電磁波を熱に変換する変換層の濃度を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された前記濃度の前記変換層に電磁波が照射された場合における前記変換層の温度を導出する温度導出手段と、
前記温度導出手段により導出された前記温度を、前記媒体上における周囲の温度に基づいて補正する温度補正手段と、
前記温度補正手段により補正された前記温度で前記媒体が加熱された場合に前記媒体が膨張する膨張高さを導出する高さ導出手段と、
前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが所定の閾値よりも高い場合に警告を発する警告手段と、
を備えることを特徴とする。
本発明によれば、熱膨張層を有する媒体が過度に大きく膨張することを抑制することができる。
本発明の実施形態1に係る熱膨張性シートの断面図である。 図1に示した熱膨張性シートに変換層が形成された例を示す図である。 図2に示した熱膨張性シートにおいて変換層が形成された部分が膨張した例を示す図である。 実施形態1に係る造形システムの概略構成を示す図である。 実施形態1に係るシミュレーション装置の構成を示すブロック図である。 実施形態1において、熱膨張性シートに形成される変換層の濃度が設定された例を示す図である。 実施形態1において、変換層の濃度と温度との関係の例を示す図である。 (a)は、実施形態1において、熱膨張性シート上の一部の領域に設定された変換層の濃度の例を示す図である。(b)は、(a)に示した濃度に対応する温度の例を示す図である。(c)は、(b)に示した温度を周囲への熱伝導を考慮して補正した例を示す図である。(d)は、(b)に示した温度に対応する膨張高さの例を示す図である。(e)は、(c)に示した補正後の温度に対応する膨張高さの例を示す図である。 (a)は、熱伝導が生じない理想的な状況で熱膨張性シートが膨張する様子を示す図である。(b)は、熱伝導が生じる実際の状況で熱膨張性シートが膨張する様子を示す図である。 実施形態1において、熱膨張性シート上で隣接する位置の間における温度差の導出例を示す図である。 実施形態1に係るシミュレーション装置に記憶されている熱伝導データの例を示す図である。 実施形態1において、熱膨張性シートの温度と膨張高さとの関係の例を示す図である。 実施形態1において、熱膨張性シートの膨張後の状態をプレビュー表示した例を示す図である。 実施形態1に係る印刷装置の構成を示す斜視図である。 実施形態1に係る膨張装置の内部の構成を模式的に示す図である。 実施形態1に係るシミュレーション装置により実行される処理の流れを示すフローチャートである。 実施形態1に係る造形システムにより実行される造形物の製造処理の流れを示すフローチャートである。 (a)〜(e)は、実施形態1において熱膨張性シートに造形物が製造される様子を段階的に示す図である。 本発明の実施形態2に係るシミュレーション装置の構成を示すブロック図である。 実施形態2において、熱膨張性シート上に設定された大きさが異なる2つの膨張領域の例を示す。 実施形態2に係るシミュレーション装置に記憶されている閾値データの例を示す図である。 実施形態2に係るシミュレーション装置により表示される警告画面の例を示す図である。 実施形態2に係るシミュレーション装置により実行される警告処理の流れを示すフローチャートである。 実施形態2に係るシミュレーション装置により表示される警告画面の変形例を示す第1の図である。 実施形態2に係るシミュレーション装置により表示される警告画面の変形例を示す第2の図である。 実施形態2に係るシミュレーション装置により表示される警告画面の変形例を示す第3の図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
(実施形態1)
<熱膨張性シート10>
図1に、本発明の実施形態1に係る造形物を造形するための熱膨張性シート10の断面構成を示す。熱膨張性シート10は、予め選択された部分が加熱により膨張することによって造形物が造形される媒体である。造形物とは、立体的な形状を有する物体であって、2次元状のシートにおいて、シートのうちの一部分がシートの表面から外側への方向に膨張することによって造形される。造形物は、立体物又は立体画像とも言う。造形物の形状は、単純な形状、幾何学形状、文字等の形状一般を含む。
言い換えると、実施形態1の造形物は、3次元空間内の特定の2次元面を基準とし、その2次元面に垂直な方向又は斜めの方向に凹凸を有する物体である。このような造形物は、立体(3次元)画像に含まれるが、所謂3Dプリンタ技術によって製造される立体画像と区別するため、2.5次元(2.5D)画像又は擬似3次元(pseudo-3D)画像と呼ぶ。また、このような造形物を製造する技術は、立体画像印刷技術に含まれるが、所謂3Dプリンタと区別するため、2.5次元印刷技術又は擬似3次元印刷技術と呼ぶ。
図1に示すように、熱膨張性シート10は、基材11と、熱膨張層12と、インク受容層13とを、備えている。なお、図1は、造形物が造形される前、すなわちどの部分も膨張していない状態における熱膨張性シート10の断面を示している。以下では、熱膨張性シート10のインク受容層13側を表側と呼び、基材11側を裏側と呼ぶ。
基材11は、熱膨張性シート10の元となるシート状の媒体である。基材11は、熱膨張層12とインク受容層13とを支持する支持体であって、熱膨張性シート10の強度を保持する役割を担う。基材11として、例えば、一般的な印刷用紙を用いることができる。或いは、基材11の材質は、合成紙、キャンバス地等の布、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のプラスチックフィルムであっても良く、特に限定されるものではない。
熱膨張層12は、基材11の上側に積層されており、所定の膨張温度以上に加熱されることによって膨張する層である。熱膨張層12は、バインダと、バインダ内に分散配置された熱膨張剤と、を含む。バインダは、エチレン酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の熱可塑性樹脂である。熱膨張剤は、具体的には、プロパン、ブタン等の低沸点で気化する物質を、熱可塑性樹脂の外殻に内包した、粒径が約5〜50μmの熱膨張性のマイクロカプセル(マイクロパウダー)である。熱膨張剤は、例えば80℃から120℃程度の温度に加熱されると、内包している物質が気化し、その圧力によって発泡及び膨張する。このようにして、熱膨張層12は、吸収した熱量に応じて膨張する。熱膨張剤は、発泡剤とも呼ぶ。
インク受容層13は、熱膨張層12の上側に積層された、インクを吸収して受容する層である。インク受容層13は、インクジェット方式のプリンタに用いられる印刷用のインク、レーザ方式のプリンタに用いられる印刷用のトナー、ボールペン又は万年筆のインク、鉛筆の黒鉛等を受容する。インク受容層13は、これらを表面に定着させるための好適な材料によって形成される。インク受容層13の材料として、例えば、インクジェット用紙に用いられているインク受容層を用いることができる。
なお、図1に示すように、X方向とY方向とを熱膨張性シート10の表面に平行な方向として定め、Z方向を熱膨張性シート10の表面に垂直な方向として定める。以降の図でも同様である。
熱膨張性シート10の表側又は裏側の面のうちの膨張させたい部分には、電磁波を熱に変換する変換層14が形成される。図2に、一例として、熱膨張性シート10の表側の面、すなわちインク受容層13の表面の一部に変換層14が形成された状態を示す。
変換層14は、電磁波を吸収することにより発熱する材料を含む層であって、例えばカーボン分子を含むインクで形成された層である。カーボン分子は、黒色(カーボンブラック)又は他の色のインクに含まれ、電磁波を吸収して熱に変換する電磁波熱変換材料(発熱剤)の一種である。カーボン分子は、電磁波を吸収して熱振動することで熱を発生する。熱膨張性シート10において、カーボン分子を含む変換層14が形成された部分が加熱されると、その部分の熱膨張層12が膨張する。その結果、図3に示すように、熱膨張性シート10のうちの変換層14が形成された部分が表側に向けて(+Z方向に)盛り上がり、隆起(バンプ)が形成される。このような熱膨張層12の隆起(バンプ)によって凸若しくは凹凸形状を造ることにより、熱膨張性シート10に造形物が製造される。
熱膨張性シート10における膨張させる位置及び膨張高さを組み合わせることにより、多彩な造形物を得ることができる。また、造形(造型)によって視覚又は触覚を通じて美感又は質感を表現することを「加飾(造飾)」と呼ぶ。
なお、図1から図3に示した熱膨張性シート10は一例であり、大きさ、厚み等が異なる様々な種類の熱膨張性シート10を使用することができる。或いは、インク受容層13を備えない熱膨張性シート10を用いても良いし、表側又は裏側に剥離可能な剥離層を備える熱膨張性シート10を用いても良いし、他の任意の材料による層を備える熱膨張性シート10を用いても良い。
また、変換層14は、図4に示したように熱膨張性シート10の表側の面に形成されることに限らず、熱膨張性シート10の裏側の面、すなわち基材11側の面に形成されても良い。熱膨張性シート10の表側の面に形成された変換層14が発熱することにより熱膨張性シート10が発泡及び膨張することを表発泡(表面発泡)と呼び、熱膨張性シート10の裏側の面に形成された変換層14が発熱することにより熱膨張性シート10が発泡及び膨張することを裏発泡(裏面発泡)と呼ぶ。
<造形システム1>
次に、図4を参照して、熱膨張性シート10に造形物を造形する造形システム1について説明する。図4に示すように、造形システム1は、シミュレーション装置30と、印刷装置40と、膨張装置50と、を備える。
<シミュレーション装置30>
シミュレーション装置30は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等の情報処理装置であって、膨張装置50において熱膨張性シート10がどのように膨張するかをシミュレーションにより見積もる機能を有する。また、シミュレーション装置30は、ユーザ操作に従って各種設定を受け付け、印刷装置40及び膨張装置50の動作を制御する。
図5に、シミュレーション装置30の構成を示す。図5に示すように、シミュレーション装置30は、制御部31と、記憶部32と、入力受付部33と、表示部34と、記録媒体駆動部35と、通信部36と、を備える。これら各部は、信号を伝達するためのバスによって接続されている。
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUは、例えばマイクロプロセッサ等であって、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部である。制御部31において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、シミュレーション装置30全体の動作を制御する。
記憶部32は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部32は、制御部31によって実行されるプログラム及びデータを記憶している。特に、記憶部32は、図5に示すように、濃度−温度変換テーブル321と、温度−高さ変換テーブル322と、熱伝導データ323と、を記憶している。
入力受付部33は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパッド、タッチパネル等の入力装置を備えており、ユーザからの操作入力(ユーザ操作)を受け付ける。例えば、ユーザは、入力受付部33を操作することによって、造形物を造形するために使用する熱膨張性シート10の種類や、熱膨張性シート10に形成される変換層14の位置及び濃度を設定することができる。
表示部34は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を備えており、制御部31による制御のもとで様々な画像を表示する。例えば、表示部34は、熱膨張性シート10に造形物を製造するための設定画面や、シミュレーション装置30によるシミュレーション結果を表示する。
記録媒体駆動部35は、可搬型の記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出す。可搬型の記録媒体とは、CD(Compact Disc)−ROM、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、USB(Universal Serial Bus)規格のコネクタが備えられているフラッシュメモリ等である。例えば、記録媒体駆動部35は、造形データを可搬型の記録媒体から読み出して取得する。
通信部36は、印刷装置40及び膨張装置50を含む外部の装置と通信するためのインタフェースを備える。シミュレーション装置30は、フレキシブルケーブル、有線LAN(Local Area Network)等の有線、又は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等の無線を介して印刷装置40及び膨張装置50と接続されている。通信部36は、制御部31の制御の下、これらのうちの少なくとも1つの通信規格に従って、印刷装置40、膨張装置50、及びその他の外部の機器と通信する。
制御部31は、図5に示すように、機能的に、設定部311と、温度導出部312と、温度補正部313と、高さ導出部314と、出力部315と、を備える。これらは、それぞれ設定手段、温度導出手段、温度補正手段、高さ導出手段、警告手段及び出力手段として機能する。制御部31において、CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して、そのプログラムを実行して制御することにより、これら各部として機能する。
設定部311は、熱膨張性シート10を膨張させて造形物を製造するために必要となる情報を設定する。例えば、設定部311は、熱膨張性シート10の種類を設定する。ユーザは、入力受付部33を操作することにより、所望の造形物を製造するために使用する熱膨張性シート10の種類を設定することができる。設定部311は、ユーザから受け付けられた入力に従って、熱膨張性シート10の種類を設定する。また、設定部311は、熱膨張性シート10を膨張させる処理として、表発泡か裏発泡か、又は表発泡と裏発泡との両方を実行するかを、ユーザから受け付けられた入力に従って設定する。
更に、設定部311は、熱膨張性シート10に形成される変換層14の濃度を設定する。変換層14の濃度が高いほど、所定量の電磁波を照射された場合における単位面積当たりの変換層14の発熱量が大きくなるため、熱膨張性シート10はより大きく膨張する。そのため、設定部311は、熱膨張性シート10を膨張させる程度に応じて、変換層14の濃度を設定する。
図6に、熱膨張性シート10上に変換層14の濃度を設定した例を示す。設定部311は、入力受付部33によりユーザから受け付けられた入力に従って、例えば図6に示すように、印刷装置40において熱膨張性シート10に形成される変換層14の位置と濃度とを設定する。
具体的に説明すると、設定部311は、ユーザから受け付けられた入力に従って、熱膨張性シート10の外縁に位置する余白領域22を除く領域を、膨張させる領域である膨張領域20と、膨張させない領域である非膨張領域21と、に分ける。そして、設定部311は、膨張領域20のうちのより大きく膨張させる部分には、変換層14の濃度をより高い濃度(図6ではより濃い、すなわち黒に近い色)に設定する。一方で、設定部311は、非膨張領域21及び余白領域22における変換層14の濃度を0(図6では白色)に設定する。なお、余白領域22は、熱膨張性シート10内における熱伝導を、熱膨張性シート10の外縁に近い位置まで精度良く計算できるようにするために設けられた領域である。
より詳細には、設定部311は、熱膨張性シート10上の複数の位置における変換層14の濃度を設定する。そのために、設定部311は、熱膨張性シート10上の余白領域22まで含めた領域を、X方向にI個、Y方向にJ個、合わせてI×J個の領域に分ける。設定部311は、I×J個の領域のそれぞれにおける変換層14の濃度を設定する。
ここで、余白領域22にも変換層14の濃度を設定する理由は、後述する熱膨張性シート10内における熱膨張性シート10の表面に沿った方向への熱伝導をシミュレーションする際に、熱膨張性シート10の外縁から外側に向けて熱が逃げ出す様子をシミュレーションできるようにするためである。
図6の下部に、熱膨張性シート10上における一部の領域(図6において破線で囲った領域)であって、位置(i,j)を中心とする3×3の9個の位置に設定された濃度の例を示す。具体的には、図6の下部は、熱膨張性シート10上における膨張領域20と非膨張領域21とにまたがる9個の位置に設定された濃度の例を示している。
図6に示すように、設定部311は、非膨張領域21における濃度、すなわち変換層14が形成されない位置における濃度を0に設定する。そして、設定部311は、膨張領域20における濃度、すなわち変換層14が形成される位置における濃度を、その濃度が高いほど大きい値に設定する。このように、設定部311は、熱膨張性シート10上においてI×J個の領域に分けられた複数の位置における変換層14の濃度を、例えば0から255までの256階調で設定する。
なお、変換層14の濃度が設定されるI×J個の領域の細かさ、すなわち各位置の間隔(解像度)は、熱膨張性シート10が膨張することで形成される隆起(バンプ)の精度に応じて定められている。具体的に説明すると、I×J個の領域に分けられた複数の位置の間隔は、サンプリングの定理を考慮して、熱膨張性シート10が膨張することで形成可能な隆起の、熱膨張性シート10の表面に沿った方向(すなわちXY平面に平行な方向)における幅の最小値以下に定められている。例えば、熱膨張性シート10が膨張することで形成可能な隆起の幅の最小値が0.5mmである場合、濃度が設定される複数の位置の間隔は、0.5mmの半分よりも小さい0.2mmに定められる。言い換えると、変換層14の濃度は、熱膨張性シート10上においてX方向及びY方向に0.2mm間隔で設定される。
設定部311は、このようにユーザから受け付けられた入力に従って、熱膨張性シート10上の各位置に形成される変換層14の濃度を設定する。設定部311は、制御部31が入力受付部33と協働することにより実現される。
なお、設定部311は、表発泡と裏発泡との両方を実行する場合には、熱膨張性シート10上の各位置における変換層14の濃度を、熱膨張性シート10の表側の面と裏側の面とのそれぞれに設定する。これに対して、表発泡と裏発泡とのうちの一方のみを実行する場合、設定部311は、熱膨張性シート10上の各位置における変換層14の濃度を、熱膨張性シート10の表側の面と裏側の面とのうちの一方のみに設定する。
図5に戻って、温度導出部312は、設定部311により設定された濃度の変換層14に電磁波が照射された場合における変換層14の温度を導出する。温度導出部312は、設定部311により設定された濃度に対応する温度を導出するために、記憶部32に記憶されている濃度−温度変換テーブル321を参照する。濃度−温度変換テーブル321は、変換層14の濃度と、その濃度の変換層14に膨張装置50において電磁波が照射された場合における変換層14の温度と、の対応関係を予め定めたテーブルである。
図7に、濃度−温度変換テーブル321により定められる変換層14の濃度と温度との対応関係の例を示す。図7に示すように、変換層14の濃度がより高くなるほど、その濃度の変換層に所定量の電磁波が照射された場合に変換層はより大きく発熱するため、変換層14の温度はより高くなる。温度導出部312は、このような濃度と温度との対応関係に基づいて、熱膨張性シート10上の複数の位置のそれぞれに設定された変換層14の濃度から、対応する温度を計算する。
温度導出部312は、熱膨張性シート10上の複数の位置(1,1)〜(I,J)のそれぞれについて、設定部311により設定された変換層14の濃度から対応する温度を計算する。具体的に図8(a)、(b)に、図6に示した9個の位置に設定された変換層14の濃度から対応する温度を計算した例を示す。ここで、図8(b)に示す温度の値は、摂氏で表される温度の値を定数倍(例えば10倍)した値である。
温度導出部312は、図7に示した濃度と温度との対応関係に基づいて、濃度が0に設定された位置の温度として、最低温度に対応する値を計算し、より高い濃度が設定された位置ほど、対応する温度としてより高い値を計算する。その結果、図8(a)に示す各位置における濃度の値から、図8(b)に示す温度の値が導出される。
図5に戻って、温度補正部313は、温度導出部312により導出された温度を、熱膨張性シート10上における周囲の温度に基づいて補正する。熱膨張性シート10に電磁波が照射されると、熱膨張性シート10のうちの変換層14が形成された部分は膨張する。図9(a)、(b)に、変換層14が形成された部分の拡大図を示す。熱膨張性シート10が膨張する際、理想的には、図9(a)に示すように、変換層14が形成された部分が鉛直方向に膨張し、且つ、変換層14が形成されていない部分が膨張しないことで、膨張領域20と非膨張領域21との間には鋭いエッジが形成される。しかしながら、実際には、熱膨張性シート10の内部で熱が伝導により移動するため、変換層14で生じた熱は、変換層14が形成されていない部分にも拡散する。そのため、実際には、図9(b)に示すように、膨張領域20と非膨張領域21との境界はなだらかになる。
温度補正部313は、熱膨張性シート10内における熱膨張性シート10の表面に沿った方向(すなわちXY平面に平行な方向)への熱伝導に関するシミュレーションを行う。これにより、温度補正部313は、設定部311により設定された濃度で形成された変換層14に電磁波が照射された場合における熱膨張性シート10上の実際の温度分布を見積もる。
具体的に説明すると、温度補正部313は、予め定められた条件に基づいて、熱伝導に関するシミュレーションを行う。シミュレーションの条件は、熱膨張性シート10上の複数の位置(1,1)〜(I,J)の間における温度差と、熱膨張性シート10に応じて定められる熱伝導係数と、に基づいて定められている。すなわち、温度補正部313は、温度導出部312により導出された温度と周囲の温度との温度差と、熱伝導係数と、に基づいて、熱伝導に関するシミュレーションを行う。そして、温度補正部313は、シミュレーションの結果に基づいて、温度導出部312により導出された温度を補正する。
より詳細には、温度補正部313は、熱膨張性シート10上の複数の位置(1,1)〜(I,J)のそれぞれについて、温度導出部312により導出された温度を、熱膨張性シート10上の各位置と、複数の位置(1,1)〜(I,J)のうちの各位置に隣接する隣接位置と、の間の温度差に基づいて補正する。第1に、温度補正部313は、温度導出部312により導出された温度と周囲の温度との温度差の累積値ΔTを計算する。温度導出部312により導出された位置(i,j)における温度をT(i,j)と表すと、温度補正部313は、下記(1)式に従って、位置(i,j)における温度差の累積値ΔT(i,j)を計算する。
ΔT(i,j)={T(i−1,j)−T(i,j)}+{T(i+1,j)−T(i,j)}+{T(i,j−1)−T(i,j)}+{T(i,j+1)−T(i,j)}+{T(i−1,j−1)−T(i,j)}+{T(i−1,j+1)−T(i,j)}+{T(i+1,j−1)−T(i,j)}+{T(i+1,j+1)−T(i,j)} …(1)
具体的に説明すると、温度補正部313は、熱膨張性シート10上の位置(i,j)に対して、横方向(X方向)に隣接する2つの位置(i−1,j),(i+1,j)と、縦方向(Y方向)に隣接する2つの位置(i,j−1),(i,j+1)と、斜め方向に隣接する4つの位置(i−1,j−1),(i−1,j+1),(i+1,j−1),(i+1,j+1)と、の周囲8個の隣接位置との間で温度差を計算する。そして、温度補正部313は、周囲8個の隣接位置との間の温度差の和を計算することで、位置(i,j)における温度差の累積値ΔT(i,j)を計算する。
例えば、位置(i,j)を中心とする9個の位置における温度が図8(b)に示したように分布している場合、温度補正部313は、図10に示すように、中心位置と周囲の8個の位置のそれぞれと間における温度差を計算し、それらを加算することで累積値ΔT(i,j)を計算する。なお、図10において、矢印上の数字は、中心位置と周囲の位置との間における差分値を表している。図10に示す例では、下記(2)式のように、温度差の累積値ΔT(i,j)として“−642”との値が得られる。
ΔT(i,j)=(700−918)+(918−918)+(964−918)+(878−918)+(700−918)+(700−918)+(878−918)+(964−918)
=−218+0+46−40−218−218−40+46
=−642 …(2)
温度補正部313は、このような温度差の累積値ΔTを、熱膨張性シート10上に設定された複数の位置(1,1)〜(I,J)のそれぞれについて計算する。これにより、温度補正部313は、複数の位置(1,1)〜(I,J)のそれぞれにおける温度差の累積値ΔT(1,1)〜ΔT(I,J)を得る。
このようにして温度差の累積値ΔT(i,j)を計算すると、温度補正部313は、第2に、計算した累積値ΔT(i,j)と熱伝導係数とを用いて、温度導出部312により導出された温度を補正する。熱伝導係数をkと表すと、温度補正部313は、下記(3)式に従って、位置(i,j)における補正後の温度T’(i,j)を計算する。
T’(i,j)=T(i,j)+ΔT(i,j)/k …(3)
具体的に説明すると、温度補正部313は、温度差の累積値ΔT(i,j)を熱伝導係数kで除算して得られた値を、温度導出部312により導出された温度T(i,j)に加算する。例えば、熱伝導係数kの値が30であり、且つ、上記(2)式により計算されたように温度差の累積値ΔT(i,j)の値が“−642”である場合、下記(4)式のように、補正後の温度T’(i,j)として“897”との値が得られる。そのため、温度補正部313は、位置(i,j)における温度を、温度導出部312により導出された値“918”から“897”に補正する。言い換えると、温度補正部313は、位置(i,j)における温度を、周囲に熱が逃げることにより温度が低下すると見積もる。
T’(i,j)=918+(−642)/30
≒897 …(4)
ここで、熱伝導係数kは、熱膨張性シート10における熱の伝わりにくさを示す指標値であって、熱膨張性シート10内を熱が伝わりにくいほど大きな値となる。熱伝導係数kは、記憶部32に記憶されている熱伝導データ323に予め定められている。図11に、熱伝導データ323の例を示す。図11に示すように、熱伝導データ323は、熱伝導係数kとして、例えばシートA、シートB、シートCという熱膨張性シート10の種類に応じて異なる値を定めている。すなわち、シミュレーションの条件は、熱膨張性シート10の種類に応じて異なるように定められている。
熱膨張性シート10の種類とは、具体的には、熱膨張性シート10に含まれる層の材質、厚み等である。変換層14に電磁波が照射されることで生じる熱は、熱膨張性シート10に含まれる複数の層のそれぞれを伝わって拡散する。その際の熱の伝わりやすさ及び伝わりにくさは、各層の材質、厚み等に依存する。例えば、変換層14が熱膨張性シート10の表側の面に形成される場合、変換層14で生じた熱の周囲への拡がり方は、インク受容層13の材質や厚みに大きく依存する。具体的には、熱膨張性シート10に含まれる層の材質が熱をより伝えやすいほど、熱膨張性シート10の内部で熱は周囲に拡がりやすく、層の材質が熱をより伝えにくいほど、熱膨張性シート10の内部で熱は周囲に拡がりにくい。また、熱をより伝えやすい材質で形成された層の厚みがより厚いほど、熱膨張性シート10の内部で熱は周囲に拡がりやすく、熱をより伝えにくい材質で形成された層の厚みがより薄いほど、熱膨張性シート10の内部で熱は周囲に拡がりやすい。
より詳細には、一方で、変換層14が熱膨張性シート10の裏側の面に形成される場合、変換層14で生じた熱の周囲への拡がり方は、基材11の材質や厚みに大きく依存する。また、熱膨張性シート10がインク受容層13を備えるか否か、或いは基材11、熱膨張層12及びインク受容層13以外の層を備えるか否か等によっても、熱膨張性シート10内における熱の伝わり方は変わる。
また、図11に示すように、熱伝導データ323は、変換層14が熱膨張性シート10の表側の面に形成される場合と裏側の面に形成される場合とで、異なる値に定められている。すなわち、シミュレーションの条件は、熱膨張性シート10の表側と裏側とのどちらの面に変換層14が形成されるかに応じて、異なるように定められている。
これは、変換層14が熱膨張性シート10の表側の面に形成される場合と裏側の面に形成される場合とで、変換層14で生じた熱の周囲への拡がり方が異なるためである。通常、変換層14が熱膨張性シート10の裏側の面に形成される場合の方が、表側の面に形成される場合に比べて、裏側から表側までの距離を熱が伝導する際に周囲に拡がりやすい。そのため、変換層14が熱膨張性シート10の裏側の面に形成される場合の方が、表側の面に形成される場合に比べて、熱伝導係数kは、小さい値に定められている。
このように、温度補正部313は、使用される熱膨張性シート10の種類と、熱膨張性シート10の表側と裏側とのどちらの面に変換層14を形成するかと、に応じて、熱伝導データ323に定められている複数の熱伝導係数kのうちから、使用する熱伝導係数kを選択する。そして、温度補正部313は、選択された熱伝導係数kを用いて、熱膨張性シート10上の各位置における温度を補正する。
更に、温度補正部313は、熱膨張性シート10上の各位置とその隣接位置との温度差に基づいて補正された各位置における温度を、補正後における各位置とその隣接位置との間の温度差に基づいて更に補正する処理を、予め指定された回数繰り返す。上述したような横方向、縦方向及び斜め方向における周囲8個の隣接位置との温度差に基づく1回の補正処理では、熱膨張性シート10内における熱伝導の考慮は、隣接位置との間に限られる。しかしながら、実際には、熱膨張性シート10内における熱は、隣接位置だけでなく、より広い範囲に伝わる。そのため、温度補正部313は、補正処理を複数回繰り返すことで、より広い範囲に熱が伝導する様子をシミュレーションする。
具体的に説明すると、温度補正部313は、熱膨張性シート10上の複数の位置(1,1)〜(I,J)のそれぞれについて、隣接位置との温度差に基づく補正処理により得られた補正後の温度T’(i,j)を、上記(1)、(3)式における温度T(i,j)に代入する。これにより、1回の補正処理が実行された温度T’(i,j)に基づいて、2回の補正処理が実行された温度T’(i,j)が得られる。
このように、温度補正部313は、隣接位置との温度差に基づく温度の補正処理を予め指定された回数実行することで、熱膨張性シート10内のより広い範囲への熱伝導を見積もる。補正処理を実行した回数が多いほど、より広い範囲に熱が伝導する様子をシミュレーションすることができる。なお、補正処理を実行する回数は、ユーザにより指定されても良いし、デフォルト値が予め設定されていても良い。
図8(c)に、図8(b)に示した位置(i,j)を中心とする9個の位置における温度が、温度補正部313により補正された例を示す。図8(c)に示すように、図8(b)において周囲よりも温度が高い部分の温度は、周囲に熱が逃げることで低下し、周囲よりも温度が低い部分の温度は、周囲から熱を吸収することで上昇する。このように、温度補正部313により周囲への熱伝導を考慮して温度が補正されることで、図8(c)に示す温度分布は、図8(b)に比べてなだらかになる。
図5に戻って、高さ導出部314は、温度補正部313により補正された温度で熱膨張性シート10が加熱された場合に熱膨張性シート10が膨張する膨張高さを導出する。ここで、膨張高さは、熱膨張性シート10が熱せられて膨張した場合に形成される隆起(バンプ)の高さである。高さ導出部314は、温度補正部313により補正された温度から膨張高さを導出するために、記憶部32に記憶されている温度−高さ変換テーブル322を参照する。温度−高さ変換テーブル322は、変換層14の温度と、その温度で熱膨張性シート10が加熱された場合に熱膨張性シート10が膨張する膨張高さと、の対応関係を予め定めたテーブルである。
図12に、熱膨張性シート10の温度と膨張高さとの対応関係の例を示す。図12に示すように、熱膨張性シート10の温度がより高くなるほど、熱膨張層12に含まれる熱膨張剤がより大きく膨張するため、熱膨張性シート10の膨張高さはより高くなる。高さ導出部314は、このような温度と膨張高さとの対応関係に基づいて、温度補正部313により補正された温度から、対応する膨張高さを計算する。
高さ導出部314は、熱膨張性シート10上の複数の位置(1,1)〜(I,J)のそれぞれについて、温度補正部313により補正された温度から対応する膨張高さを計算する。具体的に図8(e)に、図8(c)に示した9個の位置における温度補正部313により補正された温度から、対応する膨張高さを計算した例を示す。高さ導出部314は、図12に示した温度と膨張高さとの対応関係に基づいて、より高い温度の位置ほど膨張高さとしてより高い値を計算する。その結果、図8(c)に示す各位置における温度の値から、図8(e)に示す膨張高さの値が導出される。
比較のために、図8(d)に、図8(b)に示した9個の位置における温度補正部313により補正される前の温度から、温度−高さ変換テーブル322に基づいて、対応する膨張高さを導出した例を示す。図8(d)では、温度が補正されていないため、変換層14が形成されない非膨張領域21の膨張高さは0と導出される。そのため、膨張領域20と非膨張領域21との間で膨張高さに大きな差が生じる。
これに対して、図8(e)では、熱伝導を考慮して温度が補正されているため、非膨張領域21であってもある程度の高さに膨張し、一方で膨張領域20の膨張高さは補正前に比べて若干低下する。そのため、膨張領域20と非膨張領域21との間における膨張高さの差は、図8(d)に比べて小さくなる。このように、熱膨張性シート10内における熱伝導を考慮して温度を補正することで、熱膨張性シート10の各位置におけるより実際に近い膨張高さを見積もることができる。
図5に戻って、出力部315は、シミュレーション装置30によるシミュレーション処理により得られた結果を出力する。具体的に説明すると、出力部315は、熱膨張性シート10上の各位置が、高さ導出部314により導出された膨張高さに膨張した状態を模擬的に表す画像を生成する。そして、出力部315は、生成した画像を表示部34にプレビュー表示する。
図13に、熱膨張性シート10の膨張後の状態がプレビュー表示された例を示す。このようなプレビュー表示により、ユーザは、現在の設定で変換層14が形成された熱膨張性シート10の膨張後の状態を確認することができる。言い換えると、ユーザは、所望の造形物が得られるか否かを、実際に熱膨張性シート10を膨張させる前に確認することができる。
ユーザは、プレビュー表示を確認した結果、所望の造形物が得られると判断した場合、現在の設定で熱膨張性シート10に変換層14を形成して膨張処理を実行するように、入力受付部33を介して指示を入力することができる。一方で、所望の造形物が得られないと判断した場合、ユーザは、変換層14が形成される位置又は濃度を設定し直すことができる。
ユーザから変換層14を形成する指示が入力された場合、出力部315は、印刷データを印刷装置40に出力する。印刷データは、熱膨張性シート10の表側の面又は裏側の面に形成される変換層14の位置と濃度とを示すデータである。出力部315は、通信部36を介して印刷装置40と通信し、印刷データを印刷装置40に送信する。そして、出力部315は、送信した印刷データに従って印刷装置40に印刷を実行させることにより、熱膨張性シート10の表側の面又は裏側の面に変換層14を形成させる。出力部315は、制御部31が表示部34及び通信部36と協働することによって実現される。
<印刷装置40>
印刷装置40は、熱膨張性シート10に画像を印刷する印刷ユニットである。印刷装置40は、シミュレーション装置30により設定された濃度の変換層14を、熱膨張性シート10の表側の面又は裏側の面に形成する。印刷装置40は、一例として、インクを微滴化し、被印刷媒体に対して直接に吹き付ける方式で画像を印刷するインクジェットプリンタである。
図14に、印刷装置40の詳細な構成を示す。図14に示すように、印刷装置40は、熱膨張性シート10が搬送される方向である副走査方向D1(Y方向)に直交する主走査方向D2(X方向)に往復移動可能なキャリッジ41を備える。
キャリッジ41には、印刷を実行する印刷ヘッド42と、インクを収容したインクカートリッジ43(43k,43c,43m,43y)が取り付けられている。インクカートリッジ43k,43c,43m,43yには、それぞれ、ブラックK、シアンC、マゼンタM、及びイエローYの色インクが収容されている。各色のインクは、印刷ヘッド42の対応するノズルから吐出される。
キャリッジ41は、ガイドレール44に滑動自在に支持されており、駆動ベルト45に狭持されている。キャリッジ41は、モータ45mの回転により駆動ベルト45が駆動することで、印刷ヘッド42及びインクカートリッジ43と共に、主走査方向D2に移動する。
フレーム47の下部には、印刷ヘッド42と対向する位置に、プラテン48が設けられている。プラテン48は、主走査方向D2に延在しており、熱膨張性シート10の搬送路の一部を構成している。熱膨張性シート10の搬送路には、給紙ローラ対49a(下のローラは不図示)と排紙ローラ対49b(下のローラは不図示)とが設けられている。給紙ローラ対49aと排紙ローラ対49bとは、プラテン48に支持された熱膨張性シート10を副走査方向D1に搬送する。
印刷装置40は、いずれも図示しないが、CPU等の制御部と、ROM、RAM、不揮発性メモリ等の記憶部と、を備えている。制御部において、CPUがRAMをワークメモリとして用いながらROMに格納された制御プログラムを実行することにより、印刷装置40の動作を制御する。また、印刷装置40は、フレキシブル通信ケーブル46を介してシミュレーション装置30と接続されている。印刷装置40は、制御部の制御のもと、フレキシブル通信ケーブル46を介してシミュレーション装置30から印刷データを取得する。そして、印刷装置40は、取得した印刷データに従って、熱膨張性シート10に印刷を実行する。
具体的に説明すると、印刷装置40は、給紙ローラ対49a及び排紙ローラ対49bを制御して、熱膨張性シート10を搬送させる。また、印刷装置40は、モータ45mを回転させてキャリッジ41を移動させ、印刷ヘッド42を主走査方向D2の適切な位置に搬送させる。そして、印刷装置40は、印刷ヘッド42に、搬送される熱膨張性シート10に向けてインクを噴射させる。これにより、印刷装置40は、熱膨張性シート10の表面に、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKを含むカラーインクのうちの少なくとも1色のインクでカラー画像を印刷する。
<膨張装置50>
膨張装置50は、印刷装置40による印刷により変換層14が形成された熱膨張性シート10に電磁波を照射することにより、熱膨張性シート10を発熱させて膨張させる膨張ユニットである。膨張装置50は、加熱装置、照射装置等と呼ぶこともできる。
図15に、膨張装置50の内部の構成を示す。図15に示すように、膨張装置50は、熱膨張性シート10を搬送する搬送ローラ対52a,52bと、熱膨張性シート10に向けて電磁波を照射する照射部60と、を備える。
搬送ローラ対52a,52bは、搬入部から搬入された熱膨張性シート10を搬送ガイド(図示を省略)に沿って搬送する。搬送ローラ対52aは、照射部60よりも搬入部の側に設置されており、搬入部から搬入された熱膨張性シート10を照射部60により電磁波が照射される位置に搬送する。搬送ローラ対52bは、照射部60よりも搬出部の側に設置されており、照射部60により電磁波が照射された後の熱膨張性シート10を搬出部に搬送する。
搬送ローラ対52a,52bは、それぞれ一対のローラを備えており、一対のローラによって熱膨張性シート10を挟持する。一対のローラは、搬送モータ(図示を省略)と接続されており、搬送モータの回転に伴う駆動力を動力源として回転する。搬送モータは、例えばパルス電力に同期して動作するステッピングモータである。このような構成により、搬送ローラ対52a,52bは、熱膨張性シート10を、その表側の面又は裏側の面を照射部60に向けながら搬送する。
照射部60は、電磁波を照射する機構であって、搬送ローラ対52a,52bにより搬送される熱膨張性シート10に向けて電磁波を照射する。図15に示すように、照射部60は、ランプヒータ61と、反射板62と、冷却ファン63と、を備える。
ランプヒータ61は、例えばハロゲンランプであって、熱膨張性シート10に対して、近赤外領域(波長750〜1400nm)、可視光領域(波長380〜750nm)、又は、中赤外領域(波長1400〜4000nm)の電磁波を照射する。
反射板62は、照射部60から照射された電磁波を受ける被照射体であって、ランプヒータ61から照射された電磁波を熱膨張性シート10に向けて反射する。反射板62は、ランプヒータ61の上側を覆うように配置されており、ランプヒータ61から上側に向けて照射された電磁波を下側に向けて反射する。反射板62によって、ランプヒータ61から照射された電磁波を効率良く熱膨張性シート10に照射することができる。
反射板62の上側には、冷却ファン63が設けられている。冷却ファン63は、膨張装置50の外部から空気を吸い込んで反射板62に空気を送る。これにより、冷却ファン63は、ランプヒータ61が点灯することによって加熱された反射板62を冷却する。
膨張装置50は、いずれも図示しないが、CPU等の制御部と、ROM、RAM、不揮発性メモリ等の記憶部と、を備えている。制御部において、CPUがRAMをワークメモリとして用いながらROMに格納された制御プログラムを実行することにより、膨張装置50の動作を制御する。また、膨張装置50は、適宜の通信ケーブル(図示を省略)を介してシミュレーション装置30と接続されており、シミュレーション装置30の制御のもとで動作する。
ユーザは、印刷装置40において表側又は裏側の面に変換層14が形成された熱膨張性シート10を、変換層14が形成された面を照射部60の側に向けて搬入部に挿入する。膨張装置50は、搬送ローラ対52a,52bを駆動させることにより、搬入部から搬入された熱膨張性シート10を搬送し、搬送される熱膨張性シート10に向けて照射部60から電磁波を照射する。熱膨張性シート10に電磁波が照射されると、熱膨張性シート10のうちの変換層14が形成された部分は、変換層14に含まれる電磁波熱変換材料が電磁波を熱に変換することにより発熱する。熱膨張層12に含まれる熱膨張剤が膨張を開始する温度にまで熱せられると、熱膨張性シート10は膨張を開始する。このようにして膨張した熱膨張性シート10は、膨張装置50の搬出部から外部に搬出される。
<造形システム1の処理フロー>
以上のように構成された造形システム1において実行される処理の流れについて説明する。第1に、図16に示すフローチャートを参照して、シミュレーション装置30により実行される処理の流れについて説明する。
図16に示す処理において、シミュレーション装置30の制御部31は、熱膨張性シート10の種類及び表裏を設定する(ステップS1)。具体的に説明すると、制御部31は、入力受付部33を介してユーザから受け付けられた入力に従って、造形物を製造するために使用する熱膨張性シート10の大きさ、厚み、層構成等の種類を設定する。また、制御部31は、同じくユーザから受け付けられた入力に従って、表発泡のみを実行するか、裏発泡のみを実行するか、又は表発泡と裏発泡との両方を実行するかを設定する。
熱膨張性シート10の種類及び表裏を設定すると、制御部31は、入力受付部33を介してユーザから受け付けられた入力に従って、熱膨張性シート10に形成される変換層14の濃度を設定する(ステップS2)。具体的に説明すると、制御部31は、例えば図6に示したように変換層14が形成される膨張領域20と変換層14が形成されない非膨張領域21とを設定する。そして、制御部31は、膨張領域20において、より大きく膨張させる部分により高い濃度を設定する。
変換層14の濃度を設定すると、制御部31は、設定した濃度を対応する温度に変換する(ステップS3)。具体的に説明すると、制御部31は、記憶部32に記憶されている濃度−温度変換テーブル321を参照して、熱膨張性シート10上の各位置に設定した変換層14の濃度から、その濃度の変換層14に電磁波が照射された場合における変換層14の温度を導出する。
濃度を温度に変換すると、制御部31は、熱膨張性シート10上の各位置における温度を、隣接位置との温度差に応じて補正する(ステップS4)。具体的に説明すると、制御部31は、熱膨張性シート10上の複数の位置(1,1)〜(I,J)のそれぞれについて、横方向(X方向)、縦方向(Y方向)及び斜め方向に隣接する8個の位置との間における温度差の累積値ΔTを計算する。そして、制御部31は、計算した累積値ΔTを、ステップS1で設定された熱膨張性シート10の種類及び表裏に応じて定められた熱伝導係数kで除算し、除算により得られた値を補正値として、ステップS3で得られた熱膨張性シート10上の各位置における温度を補正する。
このようにして温度を補正すると、制御部31は、指定された回数の補正を実行したか否かを判定する(ステップS5)。指定された回数の補正を実行していない場合(ステップS5;NO)、制御部31は、処理をステップS4に戻す。そして、制御部31は、隣接位置との間の温度差に基づいて既に補正された熱膨張性シート10上の各位置における温度を、更に隣接位置との間の温度差に基づいて補正する。このように、制御部31は、指定された回数の補正を実行するまで、ステップS4における補正処理を繰り返す。これにより、制御部31は、変換層14で生じた熱が熱膨張性シート10内で徐々に拡散する様子をシミュレーションする。
最終的に、指定された回数の補正を実行すると(ステップS5;YES)、制御部31は、温度の補正処理を終了する。続いて、制御部31は、補正後の温度を対応する膨張高さに変換する(ステップS6)。具体的に説明すると、制御部31は、記憶部32に記憶されている温度−高さ変換テーブル322を参照して、熱膨張性シート10上の各位置における温度から、その温度で熱膨張性シート10が加熱された場合における熱膨張性シート10の各位置における膨張高さを導出する。
補正後の温度を膨張高さに変換すると、制御部31は、熱膨張性シート10の膨張後の状態を表示する(ステップS7)。具体的には図13に示したように、制御部31は、ステップS6で得られた膨張高さに熱膨張性シート10が膨張した状態を模擬的に表す画像を生成し、表示部34に表示する。
熱膨張性シート10の膨張後の状態を表示すると、制御部31は、ユーザから印刷指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS8)。ユーザは、プレビュー表示を確認した結果、所望の造形物が得られると判断した場合、現在の設定で熱膨張性シート10に変換層14を形成するように印刷指示を入力する。
印刷指示を受け付けていない場合(ステップS8;NO)、制御部31は、処理をステップS2に戻す。この場合、ユーザは、熱膨張性シート10上の各位置に形成される変換層14の濃度を再設定する。そして、制御部31は、再設定後の濃度に対してステップS3からステップS7の処理を実行する。すなわち、制御部31は、再設定後の濃度から対応する温度を導出し、導出された温度を周囲の温度に基づいて補正し、補正された温度から対応する膨張高さを導出し、得られた結果をプレビュー表示する。このように、ユーザは、プレビュー画面を見ながら、所望の造形物が得られると判断するまで、熱膨張性シート10上の各位置に形成される変換層14の濃度を繰り返し調整することができる。
一方で、印刷指示を受け付けると(ステップS8;YES)、制御部31は、通信部36を介して印刷装置40と通信して、変換層14の印刷データを印刷装置40に出力する(ステップS9)。これにより、制御部31は、ステップS2で設定された濃度の変換層14を熱膨張性シート10に形成させる。以上により、図16に示したシミュレーション装置30における処理は終了する。
なお、熱膨張性シート10の表側の面と裏側の面との両方に変換層14を形成する場合には、図16に示したステップS1からステップS9の処理を表側の面と裏側の面とのそれぞれについて実行する。
第2に、図17に示すフローチャート及び図18(a)〜(e)に示す熱膨張性シート10の断面図を参照して、印刷装置40及び膨張装置50において実行される造形物の製造処理の流れについて説明する。
第1に、ユーザは、造形物が製造される前の熱膨張性シート10を準備し、入力受付部33を介して、カラー画像データ、表発泡データ及び裏発泡データを指定する。そして、ユーザは、熱膨張性シート10を、その表側の面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート10の表側の面に変換層14を形成する(ステップS101)。具体的に、印刷装置40は、指定された表発泡データに従って、熱膨張性シート10の表側の面にカーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、図18(a)に示すように、インク受容層13上に変換層14が形成される。
第2に、ユーザは、変換層14が形成された熱膨張性シート10を、その表側の面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート10に対して表発泡工程を実施する(ステップS102)。具体的に、膨張装置50は、照射部60によって熱膨張性シート10の表側の面に電磁波を照射する。熱膨張性シート10の表側の面に形成された変換層14は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、図18(b)に示すように、熱膨張性シート10のうちの変換層14が形成された領域が膨張し、盛り上がる。
第3に、熱膨張層12の一部が膨張した熱膨張性シート10を、その表側の面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート10の表側の面にカラーインク層15を形成する(ステップS103)。具体的に、印刷装置40は、指定されたカラー画像データに従って、熱膨張性シート10の表側の面に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを吐出する。その結果、図18(c)に示すように、インク受容層13上にカラーインク層15が形成される。
第4に、ユーザは、カラーインク層15が形成された熱膨張性シート10を、その裏側の面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート10に対して乾燥工程を実施する(ステップS104)。具体的に説明すると、膨張装置50は、照射部60によって熱膨張性シート10を裏側の面に電磁波を照射する。これにより、熱膨張性シート10の表側の面に形成されたカラーインク層15中に含まれる溶媒を揮発させ、カラーインク層15を乾燥させる。
第5に、ユーザは、カラーインク層15が形成された熱膨張性シート10を、その裏側の面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート10の裏側の面に変換層14を形成する(ステップS105)。具体的に、印刷装置40は、指定された裏発泡データに従って、熱膨張性シート10の裏側の面にカーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、図18(d)に示すように、基材11の裏側の面に変換層14が形成される。
第6に、ユーザは、変換層14が形成された熱膨張性シート10を、その裏側の面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート10に対して裏発泡工程を実施する(ステップS106)。具体的に、膨張装置50は、照射部60によって熱膨張性シート10の裏側の面に電磁波を照射する。熱膨張性シート10の裏側の面に形成された変換層14は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、図18(e)に示すように、熱膨張性シート10のうちの変換層14が形成された領域が膨張し、盛り上がる。
以上のような手順によって、熱膨張性シート10の表面上に造形物が製造される。
なお、変換層14は表側のみ又は裏側のみに形成されてもよい。表側の変換層14のみを利用して熱膨張層12を膨張させる場合、上記の処理のうちステップS101〜S104を実施する。一方、裏側の変換層14のみを利用して熱膨張層12を膨張させる場合、上記の処理のうち、ステップS103〜S106を実施する。また、ステップS105,S106における裏発泡工程を、ステップS101,S102における表発泡工程よりも前に実施しても良いし、ステップS103,S104におけるカラーインク層15の形成及び乾燥工程を、ステップS101,S102における表発泡工程よりも前に実施しても良い。或いは、ステップS101における表側の変換層14の形成と、ステップS103におけるカラーインク層15の形成を実施した後で、ステップS102における表発泡工程を実施しても良い。このように、上記ステップS101〜S106の順番を様々に入れ替えて実施しても良い。
以上説明したように、実施形態1に係るシミュレーション装置30は、設定された濃度の変換層14に電磁波が照射された場合における変換層14の温度を、熱膨張性シート10上の周囲の温度に基づいて補正し、補正された温度で熱膨張性シート10が加熱された場合における熱膨張性シート10の膨張高さを導出する。その際、シミュレーション装置30は、熱膨張性シート10に応じて定められた条件に基づいて、熱膨張性シート10内における熱伝導に関するシミュレーションを行い、シミュレーションの結果に基づいて温度を補正する。言い換えると、シミュレーション装置30は、熱膨張性シート10内で生じる熱伝導の仕方が、使用される熱膨張性シート10に応じて異なることを考慮して温度を補正し、補正した温度に基づいて膨張高さを導出する。これにより、使用される熱膨張性シート10が様々に変わったとしても、熱膨張性シート10の膨張高さを精度良く見積もることができる。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。
図19に、実施形態2に係るシミュレーション装置30aの構成を示す。図19に示すように、実施形態2に係るシミュレーション装置30aは、制御部31と、記憶部32と、入力受付部33と、表示部34と、記録媒体駆動部35と、通信部36と、を備える。制御部31は、機能的に、設定部311と、温度導出部312と、温度補正部313と、高さ導出部314と、出力部315と、警告部316と、を備える。これらのうちの警告部316以外の機能は実施形態1と同様であるため、説明を省略する。また、記憶部32は、濃度−温度変換テーブル321と、温度−高さ変換テーブル322と、熱伝導データ323と、閾値データ324と、を記憶している。これらのうちの閾値データ324以外は実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
警告部316は、高さ導出部314により導出された膨張高さが所定の閾値よりも高い場合に、警告を発する。所定の閾値は、熱膨張性シート10が過度に大きく膨張しないように予め定められた膨張高さの上限値である。膨張高さが高くなり過ぎると、熱膨張性シート10の表面が照射部60に接触する、熱膨張性シート10を搬送ローラ対52a,52bで挟持できない等、膨張装置50において適切に処理できないおそれがある。そのため、警告部316は、高さ導出部314により導出された膨張高さが所定の閾値を超える場合に、ユーザに変換層14の濃度を設定し直すように促す警告を発する。
特に、上述したように、変換層14で生じた熱は周囲に逃げるため、ユーザが設定した変換層14の濃度に対して、実際に熱膨張性シート10を膨張させると、ユーザが想定した膨張高さが得られない場合がある。例えば、図20に示す細い線状の膨張領域20aを膨張させる場合、膨張領域20aの熱は周囲に逃げやすい。仮に、図12に示した温度と膨張高さとの対応関係において膨張高さが1mmとなる温度が160℃である場合、膨張領域20aを160℃で加熱させても、周囲に熱が逃げるため、1mmの膨張高さは得られない。すなわち、1mmの高さに膨張させるためには、160℃を超える温度(例えば190℃)で膨張領域20aを加熱させる必要がある。そして、変換層14の濃度もそれに応じてより高く設定する必要がある。
これに対して、図20に示す相対的に面積が広い膨張領域20bを膨張させる場合、膨張領域20bの中央部分の熱は、周囲も加熱されるため逃げにくい。そのため、膨張領域20bの中央部分は、他の部分と同じ濃度の変換層14が形成された場合、より高く膨張する傾向がある。その結果として、膨張高さが想定外に高くなり過ぎる場合がある。
このように、膨張領域20の大きさや形状に応じて変換層14の濃度と実際の膨張高さとの関係が変化するため、膨張高さを精度良く調整することが難しい。そのため、膨張装置50において適切に処理できなくなる程度にまで、膨張高さが想定外に高くなり過ぎることもある。そこで、警告部316は、高さ導出部314により周囲への熱伝導を考慮して導出された膨張高さが所定の閾値を超える場合に、ユーザに警告を報知する。
所定の閾値は、記憶部32に記憶されている閾値データ324に予め定められている。図21に、閾値データ324の一例を示す。図21に示すように、閾値データ324は、所定の閾値として、熱膨張性シート10の種類ごとに、3つの閾値TH1〜TH3を定めている。
第1の閾値TH1は、変換層14が熱膨張性シート10の表側の面に形成される場合に用いられる閾値である。警告部316は、変換層14が熱膨張性シート10の表側の面に形成される場合、高さ導出部314により導出された膨張高さが第1の閾値TH1よりも高いか否かを判定する。より詳細には、警告部316は、熱膨張性シート10上の複数の位置(1,1)〜(I,J)のうちのいずれかの位置における膨張高さが第1の閾値TH1よりも高いか否かを判定する。判定の結果、いずれかの位置における膨張高さが第1の閾値TH1よりも高い場合、警告部316は、膨張装置50の表発泡工程において熱膨張性シート10を適切に処理できない可能性があると判定して、警告を発する。
図22に、警告部316により発せられる警告の例を示す。例えば図22に示すように、警告部316は、「膨張高さが上限値を超えています。変換層の濃度を設定し直して下さい。」との警告メッセージを、表示部34に表示する。ユーザは、このような警告メッセージを見ることで、変換層14の濃度の設定が適切でなく、再設定の必要があることを容易に把握することができる。
第2の閾値TH2は、変換層14が熱膨張性シート10の裏側の面に形成される場合に用いられる閾値であって、第1の閾値TH1とは異なる値に設定されている。警告部316は、変換層14が熱膨張性シート10の裏側の面に形成される場合、高さ導出部314により導出された膨張高さが第2の閾値TH2よりも高いか否かを判定する。より詳細には、警告部316は、熱膨張性シート10上の複数の位置(1,1)〜(I,J)のうちのいずれかの位置における膨張高さが第2の閾値TH2よりも高いか否かを判定する。判定の結果、いずれかの位置における膨張高さが第2の閾値TH2よりも高い場合、警告部316は、図22に示したものと同様の警告を発する。
第3の閾値TH3は、変換層14が熱膨張性シート10の表側の面と裏側の面との両方に形成される場合に用いられる閾値である。変換層14が熱膨張性シート10の表側の面と裏側の面との両方に形成される場合、警告部316は、変換層14が表側の面に形成される場合における膨張高さと、変換層14が裏側の面に形成される場合における膨張高さと、の和が第3の閾値TH3よりも高いか否かを判定する。
より詳細には、警告部316は、熱膨張性シート10上の複数の位置(1,1)〜(I,J)のそれぞれについて、変換層14が表側の面と裏側の面とに形成される場合における膨張高さの和を計算する。そして、警告部316は、複数の位置(1,1)〜(I,J)のうちのいずれかの位置における膨張高さの和が第3の閾値TH3よりも高いか否かを判定する。判定の結果、いずれかの位置における膨張高さの和が第3の閾値TH3よりも高い場合、警告部316は、図22に示したものと同様の警告を発する。
図23に、変換層14が熱膨張性シート10の表側の面と裏側の面との両方に形成される場合における警告部316により実行される警告処理の流れを示す。図23に示す警告処理は、図16に示したシミュレーション装置30の処理における膨張高さの導出処理(ステップS6)とプレビュー表示処理(ステップS7)との間に実行される。
図23に示す警告処理を開始すると、警告部316は、第1に、変換層14が表側の面に形成される場合に図16のステップS6で導出された膨張高さが第1の閾値TH1よりも高いか否かを判定する(ステップS201)。変換層14が表側の面に形成される場合における膨張高さが第1の閾値TH1よりも低い場合(ステップS201;NO)、警告部316は、第2に、変換層14が裏側の面に形成される場合に図16のステップS6で導出された膨張高さが第2の閾値TH2よりも高いか否かを判定する(ステップS202)。変換層14が裏側の面に形成される場合における膨張高さが第2の閾値TH2よりも低い場合(ステップS202;NO)、警告部316は、第3に、変換層14が表側の面に形成される場合における膨張高さと、変換層14が裏側の面に形成される場合における膨張高さと、の和が第3の閾値TH3よりも高いか否かを判定する(ステップS203)。膨張高さの和が第3の閾値TH3よりも低い場合(ステップS203;NO)、警告部316は、警告を発することなく、図23に示した警告処理を終了する。
これに対して、ステップS201〜S203における判定の結果、変換層14が表側の面に形成される場合における膨張高さが第1の閾値TH1よりも高い場合(ステップS201;YES)、変換層14が裏側の面に形成される場合における膨張高さが第2の閾値TH2よりも高い場合(ステップS202;YES)、又は、膨張高さの和が第3の閾値TH3よりも高い場合(ステップS203;YES)には、警告部316は、図22に示したように警告を発する(ステップS204)。このように3つの閾値TH1〜TH3を用いて膨張高さが上限値を超えるか否かを判定することで、状況に応じて的確に警告を発することができる。
更に、図21に示すように、閾値データ324は、所定の閾値として、例えばシートA、シートB、シートCという熱膨張性シート10の種類に応じて異なる値を定めている。ここで、熱膨張性シート10の種類とは、例えば、熱膨張性シート10の厚み、熱膨張性シート10に含まれる層の構成等である。熱膨張性シート10の厚みや層の構成が異なると、適正な膨張高さの範囲が変わるため、膨張高さの上限値も変わる。そのため、閾値データ324は、3つの閾値TH1,TH2,TH3を、熱膨張性シート10の種類に応じて個別に定めている。警告部316は、使用される熱膨張性シート10の種類に応じて、閾値データ324に定められている複数の閾値のうちから、使用する閾値を選択する。
以上説明したように、実施形態2に係るシミュレーション装置30aは、設定された濃度の変換層14に電磁波が照射された場合における変換層14の温度を、熱膨張性シート10上の周囲の温度に基づいて補正し、補正された温度で熱膨張性シート10が加熱された場合における熱膨張性シート10の膨張高さを導出する。そして、シミュレーション装置30aは、導出された膨張高さが所定の閾値よりも高い場合、警告を発する。これにより、熱膨張性シート10内で生じる熱伝導に起因して熱膨張性シート10をユーザが望む膨張高さに膨張させることが難しい場合であっても、熱膨張性シート10が上限を超えて過度に膨張することを抑制することができる。その結果として、膨張装置50において適切に処理できなくなることを抑制することができる。
なお、警告部316は、図22に示したように警告メッセージを表示することに限らず、他の方法で警告を発しても良い。例えば、警告部316は、熱膨張性シート10における、高さ導出部314により導出された膨張高さが所定の閾値よりも高い部分を、高さ導出部314により導出された膨張高さが所定の閾値よりも低い部分とは異なる表示態様で表示部34に表示させても良い。異なる表示態様で表示させるとは、例えば色やハッチングを変える、枠の線幅を太くする等である。
図24に、熱膨張性シート10上に3つの膨張領域20c〜20eが設定された場合における表示例を示す。例えば図24に示すように、線状の膨張領域20cの全体、及び、円状の膨張領域20eの外縁部における膨張高さが所定の閾値よりも高い場合、警告部316は、これらの部分をそれ以外の部分とは異なる色で表示部34に表示させる。これにより、ユーザは、膨張領域20c〜20eのうちの膨張高さが高すぎる部分を容易に確認することができ、変換層14の濃度をより的確に再設定することができる。
また、警告部316は、膨張させる候補として複数の熱膨張性シート10が指定された場合には、複数の熱膨張性シート10のそれぞれに対する警告を、シート毎に比較可能なように同時に表示部34に表示させても良い。具体的に説明すると、実施形態1で述べたように、温度補正部313により熱伝導のシミュレーションに用いられる条件は、熱膨張性シート10の種類や表裏に応じて異なるように設定されている。そのため、温度補正部313は、複数の熱膨張性シート10のそれぞれについて、互いに異なる条件に基づいて、温度導出部312により導出された温度を補正する。高さ導出部314は、複数の熱膨張性シート10のそれぞれについて、温度補正部313により補正された温度から膨張高さを導出する。警告部316は、複数の熱膨張性シート10のそれぞれにおける、高さ導出部314により導出された膨張高さが所定の閾値よりも高い部分を、高さ導出部314により導出された膨張高さが所定の閾値よりも低い部分とは異なる表示態様で表示部34に表示させる。
図25に、種類が異なる4つの熱膨張性シート10であるシートA〜シートDに対する警告が同時に表示部34に表示された例を示す。図25に示すように、警告部316は、表示部34内を4つの表示領域に分割し、3つの膨張領域20c〜20eが設定されたシートA〜シートDの画像を表示させる。そして、警告部316は、シートA〜シートDのそれぞれについて、膨張領域20c〜20e内における膨張高さが所定の閾値よりも高い部分を、それ以外の部分とは異なる色で表示させる。熱膨張性シート10の種類が異なると周囲への熱の伝わり方が異なるため、図25に示すように、膨張高さが所定の閾値を超える部分がシートA〜シートDの間で異なる。
更に、図26に、4つの熱膨張性シート10に対する警告が同時に表示部34に表示された別の例を示す。図26の例では、警告部316は、シートA〜シートDの画像を、表示部34の下側の表示領域に並べて表示させ、表示部34の上側の表示領域には、シートA〜シートDのうちのユーザにより選択された1つのシートの画像を拡大して表示させる。図26は、シートCが選択された場合の例を示している。このとき、警告部316は、図25と同様に、シートA〜シートDのそれぞれについて、膨張領域20c〜20e内における膨張高さが所定の閾値よりも高い部分を、それ以外の部分とは異なる色で表示させる。
このように、警告部316は、複数の熱膨張性シート10のそれぞれにおいて膨張高さが所定の閾値を超える部分を1つの画面内に同時に表示させる。これにより、ユーザは、設定した濃度の変換層14で熱膨張性シート10を膨張させた場合に、熱膨張性シート10のどの部分が過度に膨張しすぎるかを、異なる複数の熱膨張性シート10の間で比較しながら確認することができる。
なお、警告部316は、図24から図26に示したように膨張領域20c〜20eを平面的に表示させることに限らず、図13に示したように膨張領域20c〜20eが膨張した状態を立体的に表示させた上で、膨張高さが所定の閾値よりも高い部分をそれ以外の部分とは異なる表示態様で表示させても良い。
また、所定の閾値である3つの閾値TH1,TH2,TH3のそれぞれは、熱膨張性シート10において膨張させる領域として設定可能な最小のサイズの領域が膨張可能な最大の膨張高さに応じて定められても良い。熱膨張性シート10において膨張させる領域として設定可能な最小のサイズは、例えば小さいドット状や細い線状の領域を膨張させる場合に、その領域のサイズとして設定可能な最小値であって、熱膨張性シート10に形成可能な隆起(バンプ)の精度により定められる。
例えば図20に示したようなサイズが小さい膨張領域20aは、上述したように、熱が周囲に逃げやすい。そのため、膨張領域20aは、高い濃度の変換層14が形成されても、高く膨張しにくい。すなわち、膨張領域20aの膨張可能な最大の膨張高さは、よりサイズが大きい膨張領域20bに比べて低くなる。このような膨張可能な最大の膨張高さが低い領域であっても適正に膨張できるようにするために、所定の閾値は、設定可能な最小のサイズの領域が膨張可能な最大の膨張高さに応じて定められても良い。例えば、最小のサイズの膨張領域が膨張可能な最大の膨張高さが1mmである場合、その倍の2mmが閾値として定められる。
警告部316は、このようにして定められた閾値と高さ導出部314により導出された高さとを比較して、膨張高さが閾値よりも高い場合に警告を発する。このように膨張領域が膨張可能な高さの下限に合わせて閾値を設定することで、どのようなサイズや形状の膨張領域であっても適正に膨張させることができる。
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上記実施形態では、温度補正部313は、温度導出部312により導出された熱膨張性シート10上の各位置における温度を、周囲の温度との間における温度差と、熱伝導係数kと、に基づいて補正した。しかしながら、本発明において、温度補正部313は、上記以外の条件に基づいて、熱膨張性シート10上の各位置における温度を補正しても良い。例えば、上記実施形態では、温度補正部313は、横方向、縦方向及び斜め方向に隣接する8個の隣接位置との温度差の累積値ΔTを計算した。しかしながら、本発明において、温度補正部313は、より少ない又はより多い数の隣接位置との温度差の累積値ΔTを計算しても良い。また、温度補正部313は、熱膨張性シート10における熱の伝わりにくさを示す熱伝導係数kに限らず、熱膨張性シート10における熱の伝わりやすさを示す指標値を用いても良い。このように、温度補正部313は、熱膨張性シート10内における熱伝導に基づいて熱膨張性シート10上の各位置における温度を見積もることができれば、どのような手法で温度を補正しても良い。
また、シミュレーションの条件として、温度補正部313が隣接位置との温度差に基づいて温度を補正する補正処理の回数は、熱膨張性シート10の種類に応じて異なる値に定められていても良い。具体的に説明すると、使用する熱膨張性シート10に含まれる各層の材質、厚み等によって、熱膨張性シート10内の熱の伝わりやすさは変わる。そのため、使用する熱膨張性シート10が熱をより伝えやすい場合には、熱をより伝えにくい場合よりも補正処理の回数をより多くすることで、より広い範囲に熱が伝導する様子をシミュレーションするようにしても良い。
或いは、補正処理の回数は、変換層14が熱膨張性シート10の表側の面に形成される場合と裏側の面に形成される場合とで、異なる値に定められていても良い。変換層14が熱膨張性シート10の裏側の面に形成される場合の方が、表側の面に形成される場合に比べて、裏側から表側までの距離を熱が伝導する際に周囲に拡がりやすい。そのため、変換層14が熱膨張性シート10の裏側の面に形成される場合には、表側の面に形成される場合よりも補正処理の回数をより多くすることで、より広い範囲に熱が伝導する様子をシミュレーションするようにしても良い。
上記実施形態では、シミュレーション装置30,30aは、熱膨張性シート10に変換層14を形成した場合における熱膨張性シート10内の熱伝導をシミュレーションすることにより、熱膨張性シート10の膨張高さを導出した。しかしながら、本発明において、シミュレーション装置30,30aは、熱膨張性シート10以外の媒体に対して、同様の処理を実行しても良い。例えば、媒体は、金属、プラスチック、木材等の適宜の材質の物体上に、熱膨張剤を含むインクが塗布されることで熱膨張層12が形成されたものであっても良い。媒体は、シート状であることに限らず、立体的な形状を有するものであっても良い。このように、造形物を製造するために膨張させる対象は、加熱により膨張する熱膨張層12を有する媒体であれば、どのような媒体であっても良い。
上記実施形態では、膨張装置50は、熱膨張性シート10を搬送する搬送機構を備えており、搬送される熱膨張性シート10に対して、位置が固定された照射部60から電磁波を照射する方式で、熱膨張性シート10を膨張させた。しかしながら、本発明において、膨張装置50は、熱膨張性シート10の表面に沿って照射部60を移動させる移動機構を備えており、位置が固定された熱膨張性シート10に対して照射部60を移動させながら電磁波を照射する方式で、熱膨張性シート10を膨張させても良い。
上記実施形態では、シミュレーション装置30,30aと印刷装置40と膨張装置50とは、それぞれ独立した装置であった。しかしながら、本発明において、シミュレーション装置30,30aと印刷装置40と膨張装置50とのうちの少なくともいずれか2つが一体となっていても良い。例えば、シミュレーション装置30,30aの機能が膨張装置50の一部として組み込まれていても良い。
上記実施形態において、シミュレーション装置30,30aの制御部31は、CPUを備えており、CPUの機能によって、設定部311、温度導出部312、温度補正部313、高さ導出部314、出力部315及び警告部316の各部として機能した。しかし、本発明に係るシミュレーション装置30,30aにおいて、制御部31は、CPUの代わりに、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、各種制御回路等の専用のハードウェアを備え、専用のハードウェアが、設定部311、温度導出部312、温度補正部313、高さ導出部314、出力部315及び警告部316の各部として機能しても良い。この場合、各処理を個別のハードウェアで実行しても良いし、各処理をまとめて単一のハードウェアで実行しても良い。また、各処理のうち、一部を専用のハードウェアによって実行し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実行しても良い。
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えたシミュレーション装置30,30aとして提供できることはもとより、プログラムの適用により、コンピュータに、上記実施形態で例示したシミュレーション装置30,30aの各機能を実現させることもできる。すなわち、上記実施形態で例示したシミュレーション装置30,30aによる各機能構成を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置等を制御するCPU等が実行できるように適用することができる。
このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記1)
加熱により膨張する熱膨張層を有する媒体に形成される、電磁波を熱に変換する変換層の濃度を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された前記濃度の前記変換層に電磁波が照射された場合における前記変換層の温度を導出する温度導出手段と、
前記温度導出手段により導出された前記温度を、前記媒体上における周囲の温度に基づいて補正する温度補正手段と、
前記温度補正手段により補正された前記温度で前記媒体が加熱された場合に前記媒体が膨張する膨張高さを導出する高さ導出手段と、
前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが所定の閾値よりも高い場合に警告を発する警告手段と、
を備えることを特徴とするシミュレーション装置。
(付記2)
前記警告手段は、前記変換層が前記媒体の表側の面に形成される場合には、前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが第1の閾値よりも高い場合に前記警告を発し、前記変換層が前記媒体の裏側の面に形成される場合には、前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが第2の閾値よりも高い場合に前記警告を発する、
ことを特徴とする付記1に記載のシミュレーション装置。
(付記3)
前記警告手段は、前記変換層が前記媒体の表側の面と裏側の面との両方に形成される場合には、前記変換層が前記表側の面に形成される場合に前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さと、前記変換層が前記裏側の面に形成される場合に前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さと、の和が第3の閾値よりも高い場合に前記警告を発する、
ことを特徴とする付記2に記載のシミュレーション装置。
(付記4)
前記所定の閾値は、前記媒体の種類に応じて異なる、
ことを特徴とする付記1から3のいずれか1つに記載のシミュレーション装置。
(付記5)
前記警告手段は、前記媒体における、前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが前記所定の閾値よりも高い部分を、前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが前記所定の閾値よりも低い部分とは異なる表示態様で表示部に表示させる、
ことを特徴とする付記1から4のいずれか1つに記載のシミュレーション装置。
(付記6)
前記温度補正手段は、複数の媒体のそれぞれについて、互いに異なる条件に基づいて、前記温度導出手段により導出された前記温度を補正し、
前記高さ導出手段は、前記複数の媒体のそれぞれについて、前記温度補正手段により補正された前記温度から前記膨張高さを導出し、
前記警告手段は、前記複数の媒体のそれぞれにおける、前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが前記所定の閾値よりも高い部分を、前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが前記所定の閾値よりも低い部分とは異なる表示態様で前記表示部に同時に表示させる、
ことを特徴とする付記5に記載のシミュレーション装置。
(付記7)
前記所定の閾値は、前記媒体において膨張させる領域として設定可能な最小のサイズの領域が膨張可能な最大の膨張高さに応じて定められている、
ことを特徴とする付記1から6のいずれか1つに記載のシミュレーション装置。
(付記8)
前記設定手段は、前記媒体上の複数の位置における前記濃度を設定し、
前記温度導出手段は、前記複数の位置のそれぞれについて、前記設定手段により設定された前記濃度から前記温度を導出し、
前記温度補正手段は、前記複数の位置のそれぞれについて、前記温度導出手段により導出された前記温度を、各位置と、前記複数の位置のうちの前記各位置に隣接する隣接位置と、の間の温度差に基づいて補正し、
前記高さ導出手段は、前記複数の位置のそれぞれについて、前記温度補正手段により補正された前記温度から前記膨張高さを導出する、
ことを特徴とする付記1から7のいずれか1つに記載のシミュレーション装置。
(付記9)
付記1から8のいずれか1つに記載のシミュレーション装置と、
前記設定手段により設定された前記濃度の前記変換層を前記媒体に形成する印刷装置と、
前記印刷装置により前記変換層が形成された前記媒体に電磁波を照射することにより、前記媒体を膨張させる膨張装置と、
を備えることを特徴とする造形システム。
(付記10)
加熱により膨張する熱膨張層を有する媒体に形成される、電磁波を熱に変換する変換層の濃度を設定し、
設定された前記濃度の前記変換層に電磁波が照射された場合における前記変換層の温度を導出し、
導出された前記温度を、前記媒体上における周囲の温度に基づいて補正し、
補正された前記温度で前記媒体が加熱された場合に前記媒体が膨張する膨張高さを導出し、
導出された前記膨張高さが所定の閾値よりも高い場合に警告を発する、
ことを特徴とするシミュレーション方法。
(付記11)
コンピュータを、
加熱により膨張する熱膨張層を有する媒体に形成される、電磁波を熱に変換する変換層の濃度を設定する設定手段、
前記設定手段により設定された前記濃度の前記変換層に電磁波が照射された場合における前記変換層の温度を導出する温度導出手段、
前記温度導出手段により導出された前記温度を、前記媒体上における周囲の温度に基づいて補正する温度補正手段、
前記温度補正手段により補正された前記温度で前記媒体が加熱された場合に前記媒体が膨張する膨張高さを導出する高さ導出手段、
前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが所定の閾値よりも高い場合に警告を発する警告手段、
として機能させるためのプログラム。
1…造形システム、10…熱膨張性シート、11…基材、12…熱膨張層、13…インク受容層、14…変換層、15…カラーインク層、20,20a,20b,20c,20d,20e…膨張領域、21…非膨張領域、22…余白領域、30,30a…シミュレーション装置、31…制御部、32…記憶部、33…入力受付部、34…表示部、35…記録媒体駆動部、36…通信部、40…印刷装置、41…キャリッジ、42…印刷ヘッド、43,43k,43c,43m,43y…インクカートリッジ、44…ガイドレール、45…駆動ベルト、45m…モータ、46…フレキシブル通信ケーブル、47…フレーム、48…プラテン、49a…給紙ローラ対、49b…排紙ローラ対、50…膨張装置、52a,52b…搬送ローラ対、60…照射部、61…ランプヒータ、62…反射板、63…冷却ファン、311…設定部、312…温度導出部、313…温度補正部、314…高さ導出部、315…出力部、316…警告部、321…濃度−温度変換テーブル、322…温度−高さ変換テーブル、323…熱伝導データ、324…閾値データ

Claims (11)

  1. 加熱により膨張する熱膨張層を有する媒体に形成される、電磁波を熱に変換する変換層の濃度を設定する設定手段と、
    前記設定手段により設定された前記濃度の前記変換層に電磁波が照射された場合における前記変換層の温度を導出する温度導出手段と、
    前記温度導出手段により導出された前記温度を、前記媒体上における周囲の温度に基づいて補正する温度補正手段と、
    前記温度補正手段により補正された前記温度で前記媒体が加熱された場合に前記媒体が膨張する膨張高さを導出する高さ導出手段と、
    前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが所定の閾値よりも高い場合に警告を発する警告手段と、
    を備えることを特徴とするシミュレーション装置。
  2. 前記警告手段は、前記変換層が前記媒体の表側の面に形成される場合には、前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが第1の閾値よりも高い場合に前記警告を発し、前記変換層が前記媒体の裏側の面に形成される場合には、前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが第2の閾値よりも高い場合に前記警告を発する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
  3. 前記警告手段は、前記変換層が前記媒体の表側の面と裏側の面との両方に形成される場合には、前記変換層が前記表側の面に形成される場合に前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さと、前記変換層が前記裏側の面に形成される場合に前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さと、の和が第3の閾値よりも高い場合に前記警告を発する、
    ことを特徴とする請求項2に記載のシミュレーション装置。
  4. 前記所定の閾値は、前記媒体の種類に応じて異なる、
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
  5. 前記警告手段は、前記媒体における、前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが前記所定の閾値よりも高い部分を、前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが前記所定の閾値よりも低い部分とは異なる表示態様で表示部に表示させる、
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
  6. 前記温度補正手段は、複数の媒体のそれぞれについて、互いに異なる条件に基づいて、前記温度導出手段により導出された前記温度を補正し、
    前記高さ導出手段は、前記複数の媒体のそれぞれについて、前記温度補正手段により補正された前記温度から前記膨張高さを導出し、
    前記警告手段は、前記複数の媒体のそれぞれにおける、前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが前記所定の閾値よりも高い部分を、前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが前記所定の閾値よりも低い部分とは異なる表示態様で前記表示部に同時に表示させる、
    ことを特徴とする請求項5に記載のシミュレーション装置。
  7. 前記所定の閾値は、前記媒体において膨張させる領域として設定可能な最小のサイズの領域が膨張可能な最大の膨張高さに応じて定められている、
    ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
  8. 前記設定手段は、前記媒体上の複数の位置における前記濃度を設定し、
    前記温度導出手段は、前記複数の位置のそれぞれについて、前記設定手段により設定された前記濃度から前記温度を導出し、
    前記温度補正手段は、前記複数の位置のそれぞれについて、前記温度導出手段により導出された前記温度を、各位置と、前記複数の位置のうちの前記各位置に隣接する隣接位置と、の間の温度差に基づいて補正し、
    前記高さ導出手段は、前記複数の位置のそれぞれについて、前記温度補正手段により補正された前記温度から前記膨張高さを導出する、
    ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載のシミュレーション装置と、
    前記設定手段により設定された前記濃度の前記変換層を前記媒体に形成する印刷装置と、
    前記印刷装置により前記変換層が形成された前記媒体に電磁波を照射することにより、前記媒体を膨張させる膨張装置と、
    を備えることを特徴とする造形システム。
  10. 加熱により膨張する熱膨張層を有する媒体に形成される、電磁波を熱に変換する変換層の濃度を設定し、
    設定された前記濃度の前記変換層に電磁波が照射された場合における前記変換層の温度を導出し、
    導出された前記温度を、前記媒体上における周囲の温度に基づいて補正し、
    補正された前記温度で前記媒体が加熱された場合に前記媒体が膨張する膨張高さを導出し、
    導出された前記膨張高さが所定の閾値よりも高い場合に警告を発する、
    ことを特徴とするシミュレーション方法。
  11. コンピュータを、
    加熱により膨張する熱膨張層を有する媒体に形成される、電磁波を熱に変換する変換層の濃度を設定する設定手段、
    前記設定手段により設定された前記濃度の前記変換層に電磁波が照射された場合における前記変換層の温度を導出する温度導出手段、
    前記温度導出手段により導出された前記温度を、前記媒体上における周囲の温度に基づいて補正する温度補正手段、
    前記温度補正手段により補正された前記温度で前記媒体が加熱された場合に前記媒体が膨張する膨張高さを導出する高さ導出手段、
    前記高さ導出手段により導出された前記膨張高さが所定の閾値よりも高い場合に警告を発する警告手段、
    として機能させるためのプログラム。
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