以下、一実施形態の無線通信装置について図面を用いて説明する。まず、図1を用いて、本実施形態の無線通信装置100の全体的な構成及び動作を説明する。
図1において、制御部1は、無線通信装置100の全体を制御する。制御部1は、マイクロコンピュータ又は中央処理装置(CPU)によって構成することができる。制御部1は、送受信部2が接続されている。制御部1と送受信部2との間には、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)3が設けられている。
送受信部2は、送信部と受信部とが一体的に構成された回路ブロックである。送信部と受信部とが別々に構成されていてもよい。送受信部2には、電波を送受信するためのアンテナ4が接続されている。
送受信部2は、自己の無線通信装置100(自局)と、他の無線通信装置(相手局)との間で、半二重通信方式で信号を送信又は受信する。変調方式は、アナログ変調であってもよいし、デジタル変調であってもよい。自局と相手局との間で送受信されるデジタル変調信号及びアナログ変調信号には、音声信号以外の制御データや各種の付加情報が含まれていることがある。送受信部2は、受信信号がデジタル変調信号である場合、デジタル変調信号から受信デジタルデータを復調し、復調した受信デジタルデータをDSP3に出力する。送受信部2は、受信信号がアナログ変調信号である場合、アナログ変調信号から音声信号を復調し、復調した音声信号を制御部1に出力する。
DSP3は、受信デジタルデータから制御データ及び各種の付加情報のデータを復号して制御部1に出力する。また、DSP3は、受信デジタルデータから音声データを復号してD/A変換し、D/A変換で得られた音声信号を制御部1に出力する。
DSP3には、マイクロホン5が接続されている。マイクロホン5は、無線通信装置100のユーザが発した音声を収音して音声信号に変換し、音声信号をDSP3に供給する。
DSP3は、入力された音声信号をA/D変換した後、送信デジタルデータに符号化し、送受信部2に出力する。送受信部2は、送信デジタルデータをデジタル変調信号に変調し、アンテナ4から送出する。
送受信部2がアナログ音声信号を送信する場合には、マイクロホン5より出力される音声信号を送受信部2に供給すればよい。送受信部2は、音声信号を変調してアンテナ4から送出する。
制御部1には、不揮発性メモリ6、記録媒体7、スピーカ8、ディスプレイ9、プッシュ・トゥ・トーク(PTT)スイッチ10、操作部11、及び全地球航法衛星システム(GNSS)モジュール12が接続されている。
不揮発性メモリ6は、無線通信装置100における各種の設定状態を記憶する。不揮発性メモリ6は、例えば、Electrically Erasable Programmable Read Only Memory(EEPROM)である。
制御部1は、DSP3から供給された音声信号をスピーカ8に供給する。スピーカ8は、入力された音声信号を電気音響変換して発音させる。
制御部1は、DSP3から供給された音声信号をデジタル音声信号に変換し、所定の形式の音声ファイルとして、記録媒体7に記録させることができる。記録媒体7は、無線通信装置100に内蔵されている記録媒体であってもよいし、無線通信装置100に対して着脱自在の記録媒体であってもよい。記録媒体7は、一例としてフラッシュメモリによって構成されたメモリカードである。
制御部1は、記録媒体7から音声ファイルを読み出し、音声ファイルに含まれる音声データを再生することができる。具体的には、制御部1は、音声ファイルに含まれるデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換して、スピーカ8に供給する。
制御部1は、ディスプレイ9に各種の情報を表示させることができる。本実施形態に関連する画面表示としては、制御部1は、再生中の音声データに付加されたチャプタに関する情報をディスプレイ9に表示させる。
ユーザが発話して音声信号を送信するとき、ユーザはPTTスイッチ10を押す。PTTスイッチ10が押されていないPTTオフの状態では、PTTスイッチ10はハイの電圧を制御部1に供給する。PTTスイッチ10が押されたPTTオンの状態では、PTTスイッチ10はローの電圧を制御部1に供給する。制御部1は、PTTスイッチ10からの電圧のローとハイとを識別することによって、PTTオンとPTTオフの状態を判別することができる。
記録媒体7に記録された音声データを再生中にPTTスイッチ10が押されると、制御部1は、再生中の音声データに付加されたチャプタに基づいて送信設定を一時的に変更し、音声データの送り元又は送り先を送信先として信号を送信する。以下、簡単な操作で送信設定を一時的に変更し、受信信号の送り元又は送り先に対して呼び返す機能をダイレクトリプライと称する。例えば、ダイレクトリプライ時、制御部1は、受信信号の送り元を信号の送り先に設定し、信号を送信する。制御部1は、中継局を介して受信した受信信号の送り先については中継局の設定を行う。
操作部11は、例えば、各種の操作キー、クリックエンコーダ、アナログボリュームを含む。ここでは、操作部11を1つのブロックとして記載しているが、操作キー、クリックエンコーダ、アナログボリュームは互いに異なる位置に設けられていてもよい。本実施形態に関連する操作としては、操作部11は、再生中の音声データに対するダイレクトリプライの相手を選択する際に用いられる。具体的には、操作部11は、音声データの送り元又は送り先のいずれをダイレクトリプライの相手とするか選択する際に用いられる。
GNSSモジュール12は、全地球航法衛星システム用の衛星からの電波を受信するアンテナと、アンテナが出力するGNSS信号を受信する受信部とを含む。GNSSは、一例として全地球測位システム(GPS)である。
GNSSモジュール12は、無線通信装置100が位置する場所の位置情報を取得して、制御部1に供給する。GNSSモジュール12は、自局の位置情報を取得する位置情報取得部である。DSP3は、付加情報として位置情報を示すデータを付加して、送受信部2に供給することができる。送受信部2は、音声信号を送信する際に、自局の位置情報を示すデータを併せて送信する場合がある。
図1において、白抜きの矢印は、構成要素間を接続するバスを示している。バスの代わりに通常の信号接続線を用いる場合があってもよい。
図2を用いて、制御部1の具体的な内部構成を説明する。図2に示すように、制御部1は、デジタル信号検出部101、チャプタ生成部102、受信音声変換部103、録音データ生成部104、記録再生制御部105、音声信号抽出部106、音声出力制御部107、付加情報抽出部108、表示制御部109、およびPTT操作検出部110を有する。制御部1が備える各部は、演算処理装置、記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
デジタル信号検出部101は、DSP3から供給された付加情報から無線部ヘッダを検出して、チャプタ生成部102に供給する。無線部ヘッダは、受信信号の送り元の中継局コールサイン(R1)、送り先の中継局コールサイン(R2)、送り元コールサイン、及び送り先のコールサイン(UR)を含む。送り元コールサインは、受信信号の送り元を示すコールサインである。
チャプタ生成部102は、音声データに付加するチャプタを生成して、録音データ生成部104に供給する。チャプタは、音声データの区切りを示す情報である。本実施形態では、チャプタ生成部102は、音声データの送り元コールサインが変化したタイミングを示すチャプタを生成する。チャプタ生成部102は、例えば受信信号の状態が変化したタイミングを示すチャプタなどの別の種類のタイミングを示すチャプタを生成してもよい。別の種類のチャプタに関する説明は省略する。
受信音声変換部103は、A/D変換機能により音声信号をデジタルの音声データに変換し、音声データを録音データ生成部104に供給する。
録音データ生成部104は、音声データにチャプタを付加して、記録媒体7に記録する音声ファイルを生成する。
記録再生制御部105は、録音データ生成部104が生成した音声ファイルを記録媒体7に記録する。また、記録再生制御部105は、記録媒体7に記録されている音声ファイルを読み出し、音声ファイルに含まれる音声データを再生するように音声信号抽出部106及び音声出力制御部107を制御するとともに、音声データに付加した付加情報に基づく画面を表示するように付加情報抽出部108及び表示制御部109を制御する。さらに、記録再生制御部105は、音声データを再生中にPTTスイッチ10が押されたときは、音声データの再生を中断し、音声データの送り元又は送り先を信号の送信先と設定し、マイクロホン5に入力されたユーザの発した音声等を含む信号を送信するように無線通信装置100を制御する。
音声信号抽出部106は、音声ファイルから再生位置の音声データを抽出し、音声出力制御部107に供給する。
音声出力制御部107は、音声データに対してD/A変換等の信号処理を施し、スピーカ8より発音させる。
付加情報抽出部108は、音声ファイルからチャプタに関する情報を抽出する。
表示制御部109は、再生中のチャプタに関する情報に基づいて画面を生成し、ディスプレイ9に表示させる。音声データの再生位置が新たなチャプタに変わったとき、表示制御部109は、新たなチャプタに関する情報に基づいて画面を更新する。
PTT操作検出部110は、PTTスイッチ10の押下状態を検出する。
次に、音声データに付加するチャプタについて説明する。
図3は、音声データにチャプタを付加する例を示す図である。図3の例では、送り元コールサインが切り替わったタイミングでチャプタC1〜C5を音声データに付加している。この音声データは、受信信号から抽出されて、記録媒体7に記録された音声データである。
各チャプタC1〜C5は、音声データを含む受信信号の送り元又は送り先に対して呼び返しができるように、受信信号の送り元、送り先、及び中継された経路を示す経路情報などの管理情報を含む。経路情報は、中継局の情報を意味するが、その詳細は後述するアシスト局、レピータ局、ゲートウェイの情報が含まれる。具体的には、チャプタは、チャプタが付加されたタイミングを示す音声データ上での位置(アドレス)、送り元のコールサイン、送り元の中継局コールサイン、送り先の中継局コールサイン、及び送り先のコールサインを含む。以下、チャプタのデータをチャプタデータと称する。チャプタデータが含む管理情報は、受信信号の無線部ヘッダから取得できる。
無線通信の規格において、無線部ヘッダ内での各種コールサインを示す文字列の位置は決められている。無線通信の規格は、一例として、日本アマチュア無線連盟が規格化したD−STARがある。もちろん、無線通信の規格はD−STARに限定されない。
図4に示すように、D−STARで用いられるD−STARフレームは、無線部ヘッダとデータで構成される。無線部ヘッダは、ビット同期、フレーム同期、フラグ1−3、ID、及びP_FCSからなる。ビット同期は、ビットのタイミングを取るための同期信号である。フレーム同期は、D−STARフレームの開始点を知るための同期信号である。フラグ1−3には、送信するデータの区別等の情報がセットされる。IDは、送り先中継局コールサイン、送り元中継局コールサイン、送り先コールサイン、及び送り元コールサインを含む。P_FCSは、フラグ1−3とIDに対するエラーチェック用の巡回冗長検査(CRC)である。無線部ヘッダのうち、フラグ1−3、ID、及びP_FCSは、雑音に対してエラー検出及び訂正ができるように、誤り訂正符号が付与され、インターリーブ処理が施される。
データは、音声セグメントとデータセグメントを交互に含む。データは、最後にラストフレームを含む。音声セグメントは、音声が圧縮された音声データを含む。データセグメントは、通信データを含む。データセグメントには、1個目と21個目毎に再同期のための再同期信号が挿入される。
制御部1は、無線部ヘッダの送り元コールサインを検出するとともに、送り先中継局コールサイン(R2)、送り元中継局コールサイン(R1)、及び送り先コールサイン(UR)を無線部ヘッダ情報として検出する。
図5に示すフローチャートを用いて、制御部1が音声データにチャプタを付加する処理を説明する。
制御部1は、操作部11によって録音開始の指示がなされたか否かを判定する(ステップS101)。録音開始の指示がなされなければ、制御部1は、ステップS101の処理を繰り返す。
録音開始の指示がなされた場合、制御部1は、受信信号のデータに含まれる音声データの録音を開始する(ステップS102)。
制御部1は、無線部ヘッダの送り元コールサインを取得する(ステップS103)。
制御部1は、送り元コールサインが変わったか否かを判定する(ステップS104)。例えば、受信信号の送り元の無線通信装置が変わると送り元コールサインが変わる。送り元コールサインが変わっていなければ、制御部1は、ステップS107に処理を進める。
送り元コールサインが変わっている場合、制御部1は、受信信号から無線部ヘッダ情報を取得し(ステップS105)、送り元コールサインが変わったときの録音位置に、送り元コールサインと無線部ヘッダ情報を含むチャプタを付加する(ステップS106)。
制御部1は、操作部11によって録音停止の指示がなされたか否かを判定する(ステップS107)。録音開始の指示がなされなければ、制御部1は、音声データの録音を続け、ステップS103に処理を進める。
録音停止の指示がなされた場合、制御部1は、音声データの録音を停止する(ステップS108)。録音された音声データは、付加されたチャプタとともに記録媒体7に音声ファイルとして記録される。
ここで、記録媒体7に記録する本実施形態の音声ファイルについて説明する。
本実施形態では、音声ファイルのファイル形式をWAVフォーマットとし、WAVフォーマットで規定されている関連データリストチャンク(Associated Data List Chunk)にチャプタデータを含ませる。音声ファイルのファイル形式はWAVフォーマットに限定されるものではない。
図6に示すように、リストチャンクは、チャンクID、チャンクデータサイズ、タイプID、及びリスト領域(List of Text Labels and Names)を含む。チャンクIDには“list”の文字列が入る。チャンクデータサイズにはリスト領域のサイズが入る。タイプIDには“adtl”の文字列が入る。リスト領域には、リストチャンクの実体、つまりチャプタデータが入る。
チャプタデータは、例えば、図7に示すように、4バイトのチャプタアドレス、8バイトの送り元コールサイン、及び24バイトの無線部ヘッダ情報で構成する。チャプタアドレスは、チャプタを付加した音声データ上での位置を示す情報である。
図8を用いて、リストチャンクの具体例を説明する。図8の1つの区画は1バイトのデータである。図8の先頭の4バイトはチャンクID、その次の4バイトはチャンクデータサイズ、さらにその次の4バイトはタイプIDである。タイプIDより後がリスト領域であり、チャプタアドレスから始まる36バイトのチャプタデータが記録される。図8の例では、3つのチャプタデータが記録されている。
図8では、理解しやすいようにチャプタデータの先頭のチャプタアドレスにハッチングを付している。最初のチャプタのチャプタアドレスは0x00400000、送り元コールサインは“J001”、無線部ヘッダ情報のR1は“J**YYYA”、R2は“J**YYYA”、URは“CQCQCQ”である。次のチャプタのチャプタアドレスは0x00500000、送り元コールサインは“K001”、無線部ヘッダ情報のR1は“J**YYYA”、R2は“J**YYYA”、URは“J**KKK”である。さらに次のチャプタのチャプタアドレスは0x00600000、送り元コールサインは“A001”、無線部ヘッダ情報のR1は“J**YYYA”、R2は“J**ZZZA”、URは“CQCQCQ”である。
複数種類のチャプタを含む場合、チャプタデータに、チャプタの種類を示すチャプタタイプを含めてもよい。
図9を用いて、音声ファイルのリストチャンクからチャプタデータを読み出す処理について説明する。
制御部1は、音声ファイルから音声データに付加されたチャンクを取得し、チャンクのチャンクIDが“list”であるか否か判定する(ステップS201)。チャンクIDが“list”でなければ、制御部1は処理を終了する。
制御部1は、リストチャンクのデータを制御部1の保持するRAMに展開し(ステップS202)、RAMに展開したデータからチャンクデータサイズを取得する(ステップS203)。
制御部1は、タイプIDが“adtl”であるか否か判定する(ステップS204)。タイプIDが“adtl”でなければ、制御部1は処理を終了する。
制御部1は、データの読み出し位置をリスト領域の先頭に進め、チャンクデータサイズ内で、以下のステップS205〜S207の処理を繰り返し実行する。
制御部1は、チャプタアドレスを取得し、データの読み出し位置を4バイト進める(ステップS205)。
制御部1は、送り元コールサインを取得し、データの読み出し位置を8バイト進める(ステップS206)。
制御部1は、無線部ヘッダ情報を取得し、データの読み出し位置を24バイト進める(ステップS207)。
制御部1は、上記ステップS205〜S207の一連の処理で、1つのチャプタデータを取得する。
データの読み出し位置がチャンクデータサイズ内であれば、制御部1は、ステップS205に処理を進めて、次のチャプタデータを取得する。
データの読み出し位置がチャンクデータサイズを超えると、チャプタデータを全て取得したことになるので、制御部1は処理を終了する。
図10を用いて、音声データ再生中にダイレクトリプライする処理について説明する。
制御部1は、操作部11によって再生開始指示がなされたか否かを判定する(ステップS301)。再生開始の指示がなされなければ、制御部1は、ステップS301の処理を繰り返す。
再生開始の指示がなされると、制御部1は、音声データの再生を開始する(ステップS302)。音声データの再生に際して、制御部1は、図9の処理を実行し、再生する音声データのチャプタデータを取得しておく。
制御部1は、音声データの再生位置を示す再生アドレスを取得する(ステップS303)。
制御部1は、再生アドレスから再生中のチャプタを特定し、チャプタデータに基づいて生成した画面をディスプレイ9に表示させる(ステップS304)。再生中のチャプタは、チャプタアドレスから特定できる。再生アドレスよりも前のチャプタアドレスを持つチャプタのうち、最もチャプタアドレスの小さいチャプタが再生中のチャプタである。
図11の表示画面300では、チャプタデータに含まれる送り元中継局コールサイン(R1)、送り元(送り元コールサイン)、及び送り先(UR)が上から順に表示されている。具体的には、表示画面300には、“J**YYYA”(R1)、“J001”(送り元コールサイン)、及び“CQCQCQ”(UR)が表示されている。送り元にダイレクトリプライが可能な場合、アイコン301が送り元のコールサイン(送り元コールサイン)を示す文字列の横に表示される。アイコン301は、ダイレクトリプライが可能であることを示す文字、記号、又は画像である。
送り先(UR)にもダイレクトリプライが可能な場合、制御部1は、送り元又は送り先をアイコン301で選択可能な状態で表示する。操作部11を用いてアイコン301を動かし、ダイレクトリプライする相手を選択できる。PTTスイッチ10が押されると、制御部1は、アイコン301が選択しているコールサインに対してダイレクトリプライする。送り先にダイレクトリプライが可能な通信は、自局宛以外の通信、つまり他者間の通信である。送り先がCQ又は自局宛の場合は、送り先にはダイレクトリプライができず、ダイレクトリプライの相手は送り元に定まる。
制御部1は、操作部11によって再生停止指示がなされたか否かを判定する(ステップS305)。再生停止の指示がなされた場合、制御部1は、音声データの再生を停止し(ステップS312)、処理を終了する。
再生停止の指示がなされなければ、制御部1は、PTTスイッチ10が押されたか否かを判定する(ステップS306)。PTTスイッチ10が押されてなければ、制御部1は、ステップS303〜S306の処理を繰り返す。音声データの再生中、チャプタが変わると、表示画面も新たなチャプタのチャプタデータに合わせて更新される。
PTTスイッチ10が押されると、制御部1は、音声データの再生を一時停止し(ステップS307)、再生位置のチャプタデータに基づいてダイレクトリプライをする(ステップS308)。具体的には、制御部1は、チャプタデータから送り元コールサインを取得し、送り元コールサインを送信先に設定して送信信号を生成する。送受信部2は、送信信号の送信を開始する。送信先は図4の送り先コールサイン(UR)で示すところに設定される。ステップS304においてダイレクトリプライの相手として送り先(UR)が選択されていた場合、制御部1は、チャプタデータから無線部ヘッダ情報を取得し、無線部ヘッダ情報のURを送信先に設定して送信信号を生成する。送受信部2は、送信の送信を開始する。中継局の設定が必要な場合、制御部1は、チャプタデータから無線部ヘッダ情報を取得し、無線部ヘッダ情報の送り元中継局コールサイン(R1)を送り先中継局コールサインに設定して送信信号を生成する。送受信部2は、送信信号の送信を開始する。
ダイレクトリプライを開始すると、制御部1は、PTTスイッチ10が離されたか否かを判定する(ステップS309)。PTTスイッチ10が離されてなければ、制御部1はダイレクトリプライを続ける。
PTTスイッチ10が離されると、制御部1は、ダイレクトリプライを終了し(ステップS310)、ステップS307で停止した再生位置から音声データの再生を再開する(ステップS311)。
(再送ヘッダを利用してチャプタデータを生成する実施例)
次に、再送ヘッダからチャプタデータを生成する実施例について説明する。
D−STARフレームの無線部ヘッダは、データの送信に先立って1回送信されるだけである。無線通信装置100が無線部ヘッダを取り逃すと、データを受信して音声データを録音できたとしても、データの送り元及び経路などの管理情報を取得できず、チャプタデータを生成できない。
無線通信装置は、データセグメントを使用して無線部ヘッダと同じ内容の再送ヘッダを送信することができる。再送ヘッダは、無線部ヘッダのうち、フラグ1−3、ID、及びP_FCSを含み、ビット同期とフレーム同期は含まず、誤り訂正符号は付与されない。再送ヘッダは、複数個のデータセグメントに分割されて送信される。再送ヘッダは、繰り返して送信してもよい。
無線部ヘッダを受信できなかった場合、無線通信装置100は、再送ヘッダからチャプタデータを生成できる。しかしながら、再送ヘッダからチャプタデータを生成する場合、以下の2つの問題が存在していた。
第1に、再送ヘッダには誤り訂正符号が付与されないため信頼性が乏しいという問題がある。
そこで、本実施形態の無線通信装置100は、同一データ内の再送ヘッダを複数回受信し、複数の再送ヘッダが一致した場合は、再送ヘッダは正しいと判定する。例えば、再送ヘッダを2〜3回受信し、受信した全ての再送ヘッダが同一である場合、再送ヘッダは正しいと判定する。
無線通信装置100は、正しいと判定した再送ヘッダからチャプタデータを生成する。データの受信及び録音開始から再送ヘッダが正しいと判定できるまで時間が経過し、録音が続けられるが、データの受信及び録音を開始した位置をチャプタの示すタイミングとする。
第2に、D−STARフレームがインターネット網を介して転送されるとき、無線部ヘッダの内容はゲートウェイによって書き換えられるが、再送ヘッダの内容は書き換えられないという問題がある。
図12を用いて、ゲートウェイによってD−STARフレームの無線部ヘッダが書き換えられるケースについて説明する。
図12に示す通信環境では、複数のゾーンZ1,Z2がゲートウェイGW1,GW2を介してインターネット網に接続されている。各ゾーンZ1,Z2は、1以上のレピータエリアA1〜A4で構成されている。各レピータエリアA1〜A4は、レピータ局によって形成される。レピータエリアA1,A2間およびレピータエリアA3,A4間のそれぞれはアシスト局と幹線により接続されている。端末局は、その端末局が存在するレピータエリアA1〜A4を形成するレピータ局に接続する。図12では端末局100A,100Bのみを図示しているが、各レピータエリアA1〜A4には複数の端末局が存在する。端末局は、直接、あるいはレピータ局を介して他の端末局と通信する。レピータ局、アシスト局、ゲートウェイ、及び端末局には、識別情報としてコールサインが付与される。
例えば、ゾーンZ1,Z2をまたいで、レピータエリアA1に属する端末局100AがレピータエリアA4に属する端末局100Bと通信する場合を考える。端末局100Aは、図13Aに示すヘッダ情報H1のように、送り先中継局のコールサインにはゾーンZ1のゲートウェイGW1のコールサイン“J¥1TTT G”を設定し、送り元中継局のコールサインにはレピータエリアA1のレピータ局のコールサイン“J¥1YYY”を設定する。また、端末局100Aは、送り元コールサインには端末局100Bのコールサイン“J¥1WWW”を設定し、自局コールサインには端末局100Aのコールサイン“J¥1QQQ”を設定する。
ヘッダ情報H1を含むフレームは、レピータエリアA1のレピータ局で受信されて、ゲートウェイGW1に転送される。ゲートウェイGW1は、他のゾーンZ2へのフレームを受信すると、インターネット網上の管理サーバに送り先の端末局100Bの情報を問い合せて、ヘッダ情報H1の中継局のコールサインを書き換える。具体的には、図13Aのヘッダ情報H2のように、送り先中継局のコールサインを端末局100Bが存在するレピータエリアA4のレピータ局のコールサイン“J¥1SSS”に書き換え、送り元中継局のコールサインをゾーンZ2のゲートウェイGW2のコールサイン“J¥1VVV G”に書き換える。
ヘッダ情報H1がヘッダ情報H2に書き換えられたフレームは、インターネット網を介して、ゲートウェイGW2に転送される。ゲートウェイGW2は、ヘッダ情報H2に従ってフレームをレピータエリアA4のレピータ局に転送し、レピータ局はフレームをレピータエリアA4内に送信する。端末局100Bは、ヘッダ情報H2を含むフレームを受信する。
端末局100Bが呼び返す場合、受信したフレームのヘッダ情報H2に基づいて無線部ヘッダを設定する。具体的には、端末局100Bは、図13Bのヘッダ情報H3のように、送り先中継局のコールサインにヘッダ情報H2の送り元中継局のコールサイン“J¥1VVV G”を設定する。
ゲートウェイGW2は、ヘッダ情報H3を含むフレームをゲートウェイGW1に転送する際、図13Bに示すように、ヘッダ情報H3の中継局のコールサインをヘッダ情報H4のように書き換える。具体的には、送り先中継局のコールサインをレピータエリアA1のレピータ局のコールサイン“J¥1YYY”に書き換え、送り元中継局のコールサインをゲートウェイGW1のコールサイン“J¥1TTT G”に書き換える。
このように、ゾーンを超えて転送されるフレームは、無線部ヘッダの中継局のコールサインがゲートウェイによって書き換えられる。
ところが、データセグメントを使用して送信される再送ヘッダは書き換えられずにゾーンを超えて転送される。図12の例では、端末局100Bの受信する再送ヘッダの情報は、端末局100Aが設定したヘッダ情報H1のままであり、端末局100Aの受信する再送ヘッダの情報は、端末局100Bが設定したヘッダ情報H3のままである。そのため、ゾーンを超えたフレームでは、無線部ヘッダと再送ヘッダとの間に差異が発生し、再送ヘッダだけでは正常に相手を呼び出すことができないケースが発生する。
そこで、本実施形態の無線通信装置100は、無線通信装置100自身の送信設定と再送ヘッダの内容に基づいて無線部ヘッダを推定する。具体的には、無線通信装置100の送信設定がDR(D−STAR REPEATER)モードであって、レピータを使用する場合、再送ヘッダの送り元中継局コールサインと自身のアクセスレピータのコールサインが同じであれば、フレームはゲートウェイにより転送されていないと判定される。つまり、無線通信装置100は、再送ヘッダの情報は無線部ヘッダと同じであると推定する。再送ヘッダの送り元中継局コールサインと自身のアクセスレピータのコールサインが異なる場合、フレームはゲートウェイにより転送されたと判定される。この場合、無線通信装置100は、再送ヘッダの情報は無線部ヘッダと異なると判定し、再送ヘッダの送り元中継局コールサインを自身のアクセスレピータのゲートウェイコールサインに差し替え、再送ヘッダの送り先中継局コールサインを自身のアクセスレピータのコールサインに差し替えて、無線部ヘッダを生成する。
無線通信装置100は、音声データを録音し、音声データにチャプタを付加するときに、再送ヘッダから推定した無線部ヘッダを用いてチャプタデータを生成してもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、記録媒体7は、送り元コールサインと無線部ヘッダ情報を含むチャプタデータを付与した音声データを記録しており、制御部1は、音声データの再生中にPTTスイッチ10が押されると、再生位置に対応するチャプタデータから送り元コールサインを取得し、送り元コールサインを送信先として設定し、信号を送信する。これにより、録音した音声データを再生中に、簡易な操作で音声データの送り元に対して信号を送信することができる。無線部ヘッダ情報に含まれる送り先のコールサイン(UR)が信号の送信先として設定できるときは、送り元コールサインとURとを選択可能に表示し、選択されたコールサインにダイレクトリプライする。