[1.液体移送システムの全体構成]
本発明の発明者の見地によれば、例えば、バイオテクノロジーなどの技術分野において、液体を正確に、かつ汚染されることなく移送しなければならない場合がある。例えば、食品の安全性を検査したり食中毒の原因を調査したりするために、菌による食品の汚染の有無を検査する場合に、液体を移送することがある。このような検査には、バイオテクノロジーの技術分野における実験・検査手法に習熟した技能者が必要であり、教育を含め人材の確保には相当程度の困難が伴う。また、人手による作業である以上、外部からの菌の混入や人為的ミスに起因する信頼性低下を避けることは難しい。そこで、本発明の発明者は、容器に入れられた液体を移送する場合に、外部からの菌の混入を防止するために鋭意研究開発を行った結果、新規かつ独創的な液体移送システム等に想到した。以降、本実施形態に係る液体移送システム等を詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る液体移送システムの全体構成を示す斜視図であり、図2は、液体移送システムの全体構成を示す上面図である。液体移送システムSは、薬品工場や食品工場などの施設に配置され、原則としてクリーンルーム内の無菌環境に置かれるものとする。図1及び図2に示すように、液体移送システムSは、第1ロボット10A、第2ロボット10B、輸液バッグ11、輸液バッグ固定治具12、治具仮置場13、輸液バッグ廃棄口14、ろ過ユニット15、ろ過ユニット置場16、ろ過ユニット廃棄口17、電磁波発生装置18、ヒートカッターユニット19、洗浄ボトル20、半田ごてユニット21、シャーレ22、シャーレ置場23、ピンセット24、及びフレアユニット25を含む。
第1ロボット10A及び第2ロボット10Bは、産業用ロボットである。以降、第1ロボット10A及び第2ロボット10Bを特に区別しないときは、単にロボット10と記載する。本実施形態では、第1ロボット10A及び第2ロボット10Bの2台を説明するが、液体移送システムに含まれるロボット10の台数は、任意であってよく、例えば、1台だけであってもよいし、3台以上であってもよい。ロボット10は、汎用の多関節ロボットであってよく、例えば、垂直多関節型、水平多関節型、又はガントリ型といった種々の形式のロボットを適用可能である。
例えば、ロボット10は、ロボットアーム、ロボットハンド、及びセンサ類を含む。ロボットアームの数は、任意であってよく、1本のみであってもよいし、複数本であってもよい。ロボットハンドは、作業用ハンド又はエンドエフェクタとも呼ばれる。例えば、ロボットハンドは、ロボットアームの先端に取り付けられ、対象物を把持して所定の位置まで運ぶ。ロボットアーム及びロボットハンドの動作に必要な動力は、ロボット10の内部を通る電力線により供給される。電力線から供給される電力によって内部のモータが回転し、ロボットアームの移動や姿勢が制御されたり、ロボットハンドの移動や開閉が制御されたりする。なお、モータは、回転式に限られず、リニア式であってもよい。センサ類は、任意のセンサであってよく、例えば、トルクセンサ、モータエンコーダ、力センサ、温度センサ、又はモーションセンサなどを利用可能である。
ロボット10は、ロボットコントローラにより制御される。ロボットコントローラは、ロボット10を制御するコンピュータである。ロボットコントローラは、特定のロボット10に特化した専用機器であってもよいが、本実施形態では、汎用コンピュータであるものとする。なお、図1及び図2では、ロボットコントローラの図示を省略している。例えば、ロボットコントローラ1は、ロボット10が動作するテーブルの下に配置されていてもよいし、ロボット10から離れた場所に配置されていてもよい。
図3は、ロボットコントローラ1のハードウェア構成を示す図である。図3に示すように、ロボットコントローラ1は、CPU1A、記憶部1B、及び通信部1Cを含む。CPU1Aは、少なくとも1つのプロセッサを含む。記憶部1Bは、RAM等の揮発性メモリとハードディスク等の不揮発性メモリを含み、各種プログラムやデータを記憶する。CPU1Aは、これらプログラムやデータに基づいて各種処理を実行する。通信部1Cは、有線通信用又は無線通信用の通信インタフェースを含み、他の装置との通信を行う。ロボットコントローラ1は、通信部1Cを介してロボット10と通信可能に接続される。
本実施形態では、1台のロボットコントローラ1が第1ロボット10A及び第2ロボット10Bの両方を制御する場合を説明するが、複数のロボットコントローラ1が存在してもよい。例えば、第1ロボット10Aを制御するロボットコントローラ1と、第2ロボット10Bを制御するロボットコントローラ1と、が存在してもよい。また、ロボットコントローラ1は、ロボット10以外の機器を制御してもよく、例えば、輸液バッグ廃棄口14の開閉、ろ過ユニット廃棄口17の開閉、及び電磁波発生装置18による電磁波の発生を制御してもよい。
また、記憶部1Bに記憶されるものとして説明するプログラム及びデータは、ネットワークを介してロボットコントローラ1に供給されるようにしてもよい。また、ロボットコントローラ1のハードウェア構成は、上記の例に限られず、種々のハードウェアを適用可能である。例えば、ロボットコントローラ1は、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体を読み取る読取部(例えば、光ディスクドライブやメモリカードスロット)や外部機器と直接的に接続するための入出力部(例えば、USB端子)を含んでもよい。この場合、情報記憶媒体に記憶されたプログラムやデータが読取部又は入出力部を介して、ロボットコントローラ1に供給されるようにしてもよい。
図1及び図2に戻り、ロボット10は、輸液バッグ11を把持し、当該輸液バッグ11内の液体を移送するための動作を行う。輸液バッグ11は、所定の位置に配置されていればよく、例えば、ロボット10が配置された机の上に配置されていてもよいし、輸液バッグを吊るすためのテーブルに収納されていてもよい。
輸液バッグ11は、液体を輸送するための袋であり、例えば、ポリ塩化ビニル製やポリエチレン製などのバッグである。輸液バッグ11には、任意の液体が入れられてよく、例えば、医薬品、食品、又は飲料などが入れられる。本実施形態では、輸液バッグ11内の液体の菌検査が行われるので、当該液体は、検査対象の液体(検体)ということができる。
輸液バッグ11は、液体が入れられる容器の一例である。このため、本実施形態で「輸液バッグ」と記載した箇所は、「容器」と読み替えることができる。容器は、液体を入れることができる入れ物(器)であればよく、輸液バッグ11に限られない。例えば、キャップ付きのボトル、蓋付きのボトル、飲料などを入れるハンディパックやスティック、又は調味料などの詰め替え用パックといった任意の種類の容器を適用可能である。なお、ボトルは、ソフトバッグと呼ばれることもある。本実施形態では、容器には、ある程度の空気が入れられているものとするが、空気が入れられていなくてもよい。
例えば、輸液バッグ11は、ゴムやプラスチックなどの栓と、バッグの本体部分と、を含む。本体部分は、任意の形状であってよく、例えば、四角形であってもよいし、角が丸みを帯びた形状であってもよい。本実施形態では、輸液バッグ11は、本体部分よりも栓の付近が細くなっている。以降、輸液バッグ11のうち、栓が付けられて先細りになっている場所を首部と記載する。
輸液バッグ11の本体部分は柔らかいので、ロボット10に、本体部分を把持させたまま液体を移送させるのは非常に困難である。また、輸液バッグ11の首部は、他の部分よりも固く作られておりロボット10に把持させることはできるが、首部は細く本体部分は重いので、ロボット10に首部を把持させたまま輸液バッグ11を傾けさせても、本体部分がうまく持ち上がらず、液体を移送させるのは困難である。
そこで、本実施形態では、輸液バッグ固定治具12で輸液バッグ11を固定し、ロボット10に輸液バッグ固定治具12を把持させるようにしている。輸液バッグ11は、予め輸液バッグ固定治具12に格納されていてもよいが、本実施形態では、ロボット10が輸液バッグ11を輸液バッグ固定治具12に格納する場合を説明する。
輸液バッグ固定治具12は、液体が入れられた輸液バッグ11が開口される部分を含む領域を露出させて、輸液バッグ11を格納する。当該領域は、輸液バッグ11のうち、輸液バッグ固定治具12から露出した領域であり、後述する殺菌装置による殺菌の対象となる領域である。輸液バッグ固定治具12は、金属や樹脂などの任意の素材で作製されてよいが、本実施形態では、後述するように紫外線などの電磁波を利用して殺菌が行われるので、輸液バッグ11内の液体の菌を殺さないように、輸液バッグ固定治具12は、電磁波を遮断可能な素材で作製される。この素材としては、電磁波の遮断率が所定値以上の素材であればよく、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、又はニッケルなどである。
図4は、輸液バッグ固定治具12の斜視図である。図4に示すように、輸液バッグ固定治具12は、輸液バッグ11が吊るされる第1の面12Aと、第1の面12Aとヒンジ12Cにより接続される第2の面12Bを含み、開閉可能となっている。例えば、第1の面12Aは、ロボット10に開閉させるための開閉部12Dを含む。ロボット10は、開閉部12Dの穴にロボットハンドを差し込んで水平方向に移動することによって、第1の面12Aを開閉する。
なお、扉の開閉自体は、種々の方法によって行われるようにしてよく、例えば、ロボット10は、開閉部12Dをロボットハンドで把持して扉を開閉してもよいし、開閉部12Dを押して扉を開閉してもよい。また、開閉部12Dは、第2の面12Bに備えられていてもよいし、第1の面12Aと第2の面12Bの両方に備えられていてもよい。
輸液バッグ固定治具12は、第1の面12Aと第2の面12Bを係止させるための係止部12Eを含む。例えば、係止部12Eは、開閉のために用いられる口金を含む。係止部12Eは、輸液バッグ固定治具12が閉じた状態で第1の面12Aに対し、開く向きに一定の力が加わると、第1の面12Aと第2の面12Bが係止された状態が解除される。また例えば、係止部12Eは、輸液バッグ固定治具12が開いた状態で第1の面12Aに対し、扉が閉じる向きに一定の力が加わると、口金が互いにかみ合い、第1の面12Aと第2の面12Bが係止される。なお、口金ではなく、磁石などを利用して第1の面12Aと第2の面12Bを係止させてもよい。
輸液バッグ固定治具12は、ロボット10に把持させるための取手部12Fを含む。例えば、取手部12Fは、ロボット10のロボットハンドの形状に合うように溝が設けられており、ロボット10は、取手部12Fの溝にロボットハンドをはめて挟み込むことにより、輸液バッグ11を把持する。なお、取手部12Fは、任意の形状であってよく、例えば、ロボットハンドを差し込む穴が設けられていてもよい。この場合、ロボット10は、取手部12Fの穴にロボットハンドを差し込むことによって、輸液バッグ固定治具12を把持する。
第1の面12Aの上面には、輸液バッグ11を吊るすためのフック12Gが備えられている。フック12Gは、輸液バッグ11の首部の形状に合うように、丸みを帯びた窪みが設けられており、輸液バッグ11の首部を差し込むことができる。フック12Gの窪みの幅は、輸液バッグ11の首部の幅よりも広く、輸液バッグ11の栓の幅よりも狭い。このため、輸液バッグ11の首部がフック12Gの窪みに差し込まれると、フック12Gは、輸液バッグ11の栓を支持し、輸液バッグ11がフック12Gに吊るされた状態となる。
第2の面12Bの上面には、フック12Gの窪みと同様の形状の窪みが形成されている。フック12Gの窪みと、第2の面12Bの上面の窪みと、は互いに対向しており、フック12Gに輸液バッグ11を吊るした状態で輸液バッグ固定治具12を閉めると、輸液バッグ11の首部は、第1の面12Aと第2の面12Bに挟まれる。これにより、輸液バッグ11は、輸液バッグ固定治具12の内部で固定される。
本実施形態では、輸液バッグ固定治具12は、輸液バッグ11の本体部分の全てを覆うのではなく、一部分を露出させる。例えば、輸液バッグ固定治具12が閉じられて輸液バッグ11が格納されると、図4の12Hの符号で示す位置から、輸液バッグ11の一部が露出される(後述する図11参照)。また、本実施形態では、後述する治具仮置場13に輸液バッグ固定治具12を配置するために、第2の面12Bの表面には突起が設けられている。
図5(A)は、輸液バッグ固定治具12の背面図であり、図5(B)は、輸液バッグ固定治具12の側面図である。ここでの背面とは、図4における裏側であり、図5(A)の背面図は、第2の面12Bを正面から見た様子を示している。図5(B)の側面図は、開閉部12D、係止部12E、及び取手部12Fを正面から見た様子を示しており、図5(A)の輸液バッグ固定治具を左側から見た図である。
図5(A)及び図5(B)に示すように、第2の面12Bの表面には、輸液バッグ固定治具12を治具仮置場13に引っかけて固定するための引っかけ部材12Iを含む。引っかけ部材12Iは、任意の形状の凸部を有し、治具仮置場13には、引っかけ部材12Iを引っかけるための溝が設けられている。ロボット10は、輸液バッグ固定治具12を把持し、引っかけ部材12Iを治具仮置場13の溝にはめることによって、輸液バッグ固定治具12を治具仮置場13に配置する。
次に、輸液バッグ固定治具12の内部構造について説明する。図6(A)は、輸液バッグ固定治具12の上面図である。図6(A)の符号12Hに示す穴から見えるように、第1の面12Aの内側には、案内部材12Jが設けられている。後述する図6(C)に示すように、その下には、広がり抑止部材12Kが設けられている。第2の面12Bの内側には、案内部材12Lが設けられている。なお、案内部材12J及び12Lは、広がり抑止部材12Kの下に設けられてもよい。
案内部材12J及び12Lは、輸液バッグ11が吊るされた状態で第1の面12Aが閉じる場合に、輸液バッグ11の縁が広がり抑止部材12Kに触れるようにガイドする役割を果たす。例えば、輸液バッグ固定治具12が閉じられた場合に、案内部材12J及び12Lは互いに接触してもよいし、接触しないようにわずかに隙間が空けられていてもよい。隙間が開けられる場合には、輸液バッグ11の縁の厚さ程度であり、輸液バッグ固定治具12に輸液バッグ11が格納された場合に、輸液バッグ11の縁が案内部材12Jと12Kの間に挟まれるようにしてもよい。図6(A)に示すように、本実施形態では、輸液バッグ固定治具12を上から見ると、案内部材12J及び12Lに隠れて広がり抑止部材12Kが見えないようになっている。即ち、案内部材12J及び12Lによって形成されるV字型の溝は、広がり抑止部材12KのV字型の溝よりも輸液バッグ11側に配置され、輸液バッグ11の縁を案内部材12J及び12Lで確実に挟み、輸液バッグ11の縁を広がり抑止部材12Kに確実に触れさせるようになっている。
図6(B)は、輸液バッグ固定治具12のA−A線断面図である。図6(B)に示すように、第1の面12Aの上面の窪みと、第2の面12Bの上面の窪みと、は互いに対向するように設けられており、輸液バッグ固定治具12が閉じられた場合に、輸液バッグ11の首部が挟まるようになる。なお、本実施形態では、2種類の窪みが設けられているものとするが、窪みは、1つだけであってもよいし、3つ以上であってもよい。
図6(C)は、輸液バッグ固定治具12のB−B線断面図である。図6(C)に示すように、第1の面12Aの内側には、広がり抑止部材12Kと、飛び出し抑止部材12Mと、が設けられている。広がり抑止部材12Kは、液体が移送される場合の輸液バッグ11の横方向への広がりを、輸液バッグ11を押さえつけることによって抑止する。例えば、広がり抑止部材12Kには、輸液バッグ11が格納された場合に輸液バッグ11の横の縁がはまるように、テーパ状の溝が設けられている。なお、広がり抑止部材12Kは、輸液バッグ11の縁に触れて支持可能な形状であればよく、テーパ状の溝以外にも、例えば、丸みを帯びた溝であってもよい。
飛び出し抑止部材12Mは、輸液バッグ11が吊るされた状態で第1の面12A又は第2の面12Bが閉じる場合に、輸液バッグ11が外側に飛び出ることを抑止する。飛び出し抑止部材12Mは、第1の面12Aに備えられている。輸液バッグ11の縁が外側に飛び出ないようにカギ状(鉤状)になっている。飛び出し抑止部材12Mによって輸液バッグ11の縁が飛び出るのを抑止することによって、輸液バッグ固定治具12を閉じたときに、輸液バッグ11の縁が第1の面12Aと第2の面12Bに挟まることを防止する。例えば、第1の面12Aに輸液バッグ11が吊るされた場合に、輸液バッグ11が第1の面12Aから離れる向きに移動しようとすると、飛び出し抑止部材12Mは、輸液バッグ11を第1の面12A方向に押さえつけて、外に飛び出すことを抑止する。なお、飛び出し抑止部材12Mにも、テーパ状の溝が設けられていてもよい。
図1及び図2に戻り、治具仮置場13は、輸液バッグ固定治具12に輸液バッグ11を格納するために、輸液バッグ固定治具12を一時的に配置する場所である。別の言い方をすれば、治具仮置場13は、ロボット10が輸液バッグ固定治具12に輸液バッグ11を格納するための作業を行う場所である。例えば、治具仮置場13は、第2の面12Bに設けられた引っかけ部材12Iと係合する溝を有する。ロボット10は、治具仮置場13の溝に引っかけ部材12Iを引っかけることにより、輸液バッグ固定治具12を治具仮置場13に配置する。
輸液バッグ廃棄口14は、液体の移送が完了した輸液バッグ11を廃棄する場所である。輸液バッグ廃棄口14は、常時空いた状態としてもよいし、ロボットコントローラ1などのコンピュータにより、輸液バッグ廃棄口14の開閉が制御されてもよい。
ろ過ユニット15は、汎用のろ過ユニットであり、所定の位置に配置されている。例えば、ろ過ユニット15は、ロボット10が配置された机の上に配置されていてもよいし、ろ過ユニット15を収納するための台に配置されていてもよい。ロボット10は、における特定の場所に収納されたろ過ユニット15を、ろ過ユニット置場16に移動して配置する。
図7は、ろ過ユニット15の一例を示す図である。図7は、ろ過ユニット15の個々の部品を分解した様子を示している。例えば、ろ過ユニット15は、カバー15A、ファネル15B、メンブレンフィルタ15C、及びベース15Dを含み、これらは取り外し可能となっている。ろ過ユニット15は、液体をろ過するためのフィルタを有するユニットであればよいが、本実施形態では、菌検査が行われるので、使用前のろ過ユニット15の内部は、無菌状態が保たれているものとする。なお、ろ過ユニット15は、図5の例に限られず、メンブレンフィルタ15Cとベース15Dの間にパッドが敷かれていてもよい。
図1及び図2に戻り、ろ過ユニット置場16は、輸液バッグ11内の液体を移送してろ過するために、ろ過ユニット15を配置する場所である。本実施形態では、ろ過ユニット置場16には吸引パイプが接続されており、吸引器を利用した吸引ろ過が可能となっている。なお、吸引ろ過を利用せずに、自然ろ過を利用してもよい。吸引器は、常時吸引する状態としてもよいし、ロボットコントローラ1などのコンピュータにより、吸引のオン/オフが制御されてもよい。
ろ過ユニット廃棄口17は、ろ過ユニットを廃棄する場所である。ろ過ユニット廃棄口は、常時空いた状態としてもよいし、ロボットコントローラ1などのコンピュータにより、ろ過ユニット廃棄口17の開閉が制御されてもよい。
電磁波発生装置18は、電磁波を発射させて殺菌する。例えば、電磁波発生装置18は、電磁波を照射する面を少なくとも1つ有し、所定方向に電磁波を発生させて殺菌する。電磁波発生装置18は、輸液バッグ11や後述する洗浄ボトル20の表面を殺菌するために利用され、殺菌作用のある電磁波(光を含む)を発生させる。例えば、電磁波は、紫外線、エックス線、ガンマ線、電子線、又はパルス光などを利用すればよく、電磁波発生装置18は、紫外線発生装置、エックス線発生装置、ガンマ線発生装置、電子線発生装置、又はパルス光発生装置であってよい。電磁波発生装置18は、電磁波を常時発生させてもよいし、ロボットコントローラ1などのコンピュータにより、電磁波のオン/オフが制御されてもよい。
電磁波発生装置18は、殺菌装置の一例である。このため、本実施形態で「電磁波発生装置」と記載した箇所は、「殺菌装置」と読み替えることができる。殺菌装置は、殺菌能力を有する任意の装置であってよく、電磁波発生装置18に限られない。例えば、熱を利用して殺菌する加熱装置、オゾンを利用して殺菌するオゾン発生装置、超音波を利用して殺菌する超音波発生装置、アルコールを噴射して殺菌するアルコール噴射装置、又は除菌スプレーを噴射して殺菌するスプレー噴射装置といった任意の種類の殺菌装置を適用可能である。
ヒートカッターユニット19は、汎用のヒートカッターを含む。ヒートカッターは、電流によって刃を加熱して物体を焼き切るカッターである。本実施形態では、ヒートカッターユニット19は、ヒートカッターに常時電流を流しておき、刃の温度を所定範囲に保つ場合を説明するが、ヒートカッターを利用する場面が近づいた場合にだけ電流が流れるようにしてもよい。例えば、ヒートカッターユニット19は、輸液バッグ11の一部を切断して開口部(注ぎ口)を作成するために用いられる。ヒートカッターは、熱を利用して輸液バッグ11を切断するので、切断面及びその付近は、ヒートカッターの熱によって殺菌される。また、輸液バッグ11内の液体がヒートカッターに付着したとしても、ヒートカッターの熱によって、付着した液体の菌は殺菌される。
ヒートカッターユニット19のヒートカッターは、輸液バッグ11を切断する切断装置の一例である。このため、本実施形態で「ヒートカッター」と記載した箇所は「切断装置」と読み替えることができる。切断装置は、物体を切断可能な任意の装置であってよく、ヒートカッターに限られない。例えば、超音波を利用して切断する超音波カッター、複数の歯で挟むことにより物体を切断する裁断機、又は熱を用いない通常のカッターといった任意の種類の切断装置を適用可能である。ただし、ヒートカッターのように殺菌能力を有しないカッターを利用する場合には、ある輸液バッグ11内の液体の菌が、次に切断する輸液バッグ11内の液体に混入しないように、刃の部分が殺菌されたり、使い捨ての刃が利用されたりする。
なお、本実施形態では、輸液バッグ11の一部を切断することによって開口部を作成する場合を説明するが、開口部は、他の任意の方法によって作成可能である。例えば、輸液バッグ11に穴をあけることによって開口部が作成されてもよいし、輸液バッグ11に切り込み用のノッチが付いている場合には、ロボット10に、ノッチに沿って輸液バッグ11を引っ張らせることにより開口部が作成されてもよい。
洗浄ボトル20は、ろ過ユニット15のファネル15B内を洗浄するための洗浄液が入れられたボトルである。ここでの洗浄とは、ファネル15Bの内壁に付着した物体を洗い流す(落とす)という意味であり、殺菌ではない。洗浄ボトル20は、洗浄液が入れられたボトルであり、例えば、ポリ塩化ビニル製やポリエチレン製などのボトルである。洗浄ボトル20は、キャップ付きのボトルであってもよいし、蓋付きのボトルであってもよい。
洗浄液は、任意の種類であってよく、例えば、生理食塩水や滅菌水などである。ただし、洗浄液に菌が含まれていると、メンブレンフィルタ15C上に洗浄液の菌が混入し、輸液バッグ11内の液体の検査をすることができなくなるので、洗浄液は、無菌の状態とする。更に、洗浄液に殺菌作用があると、メンブレンフィルタ15C上の菌(輸液バッグ11内の液体の菌)が殺菌されてしまうので、洗浄液は、殺菌作用を持たないものとする。
洗浄ボトル20は、洗浄液が入れられる第2の容器(第1の容器は、検査対象の液体が入れられる容器)の一例である。このため、本実施形態で「洗浄ボトル」と記載した箇所は、「第2の容器」と読み替えることができる。第2の容器は、洗浄液の入れ物(器)であればよく、ボトルに限られない。例えば、輸液バッグ、缶、又はパックといった任意の種類の容器を適用可能である。
半田ごてユニット21は、汎用の半田ごてを含む。半田ごては、任意の種類を適用可能であり、例えば、ニクロム線ヒーター又はセラミックヒータを用いた電熱式の半田ごてである。例えば、半田ごてユニット21は、洗浄ボトル20の本体部分に穴をあけて開口部(注ぎ口及び空気穴)を作成するために用いられる。半田ごては、熱を利用して洗浄ボトル20に穴をあけるので、穴及びその付近は、半田ごての熱によって殺菌される。
半田ごては、開孔装置の一例である。このため、本実施形態で「半田ごて」と記載した箇所は「開孔装置」と読み替えることができる。開孔装置は、物体に穴をあけることが可能な任意の装置であってよく、半田ごてに限られない。例えば、ピン、ドリル、又は刃物を利用して穴をあけるユニットであってもよい。ただし、半田ごてのように殺菌能力を有しない開孔装置を利用する場合には、ある輸液バッグ11内の液体の菌が、次に切断する輸液バッグ11内の液体に混入しないように、先端部分が殺菌されていたり、使い捨てのピンなどが利用されたりする。
なお、本実施形態では、洗浄ボトル20の本体部分に穴をあけることによって開口部を作成する場合を説明するが、開口部は、他の任意の方法によって作成可能である。例えば、洗浄ボトル20がキャップ付きのボトルである場合には、キャップをひねって開栓するボトルキャッパーを利用してもよいし、洗浄ボトル20の首部を切断することによって開口部が作成されてもよい。
シャーレ22は、ペトリ皿とも呼ばれ、培地として利用される。本実施形態では、輸液バッグ11に入れられた液体は、ろ過ユニット15のファネル15B内に移送され、ファネル15Bの下部にあるメンブレンフィルタ15Cによって、液体内の菌が捕捉される。このため、メンブレンフィルタ15C上の菌の有無を検査するために、シャーレ22には、メンブレンフィルタ15Cが入れられる。
シャーレ置場23は、シャーレ22を一時的に配置する場所である。ロボット10は、に収納されたシャーレ22を、シャーレ置場23に移動させて配置する。ロボット10は、シャーレ22の蓋を取り、メンブレンフィルタ15Cをピンセット24でつまんでシャーレ22内に格納する。ピンセット24に菌が付着していると、メンブレンフィルタ15C上に菌が混入してしまうので、ピンセット24は、任意のタイミングでフレアユニット25によって殺菌される。
なお、液体移送システムSの構成は、上記の例に限られない。例えば、輸液バッグ11には、自身の識別情報を示すバーコードが付与されていてもよく、液体移送システムSは、当該バーコードを読み取るためのバーコードリーダと、当該バーコードが示す識別情報をラベルに印刷するためのラベルプリンタと、を含んでいてもよい。識別情報は、輸液バッグ11を一意に識別可能な情報であり、例えば、シリアルナンバー又は個体識別情報である。輸液バッグ11の識別情報は、二次元コードなどの他のコード情報に含まれていてもよいし、カメラの画像を解析することによって取得されてもよい。識別情報が印刷されたラベルは、シャーレ22に貼り付けられるようにしてもよい。
[2.液体移送システムにおけるロボットの動作]
次に、液体移送システムSにおけるロボット10の動作を説明する。液体移送システムSでは、第1ロボット10Aと第2ロボット10Bが協力して、輸液バッグ11内の液体をろ過ユニット15に移送し、メンブレンフィルタ15Cをシャーレ22内に入れる。本実施形態では、第1ロボット10Aは、主にろ過ユニット15やシャーレ22の配置などを担当し、第2ロボット10Bは、主に輸液バッグ11の殺菌や液体の移送などを担当する。
以降説明する動作は、ロボットコントローラ1のCPU1Aが、記憶部1Bに記憶されたプログラム及びパラメータに従ってロボット10を制御することによって行われる。例えば、プログラム及びパラメータには、ロボット10の時系列的な位置情報が定義されており、ロボットコントローラ1は、位置情報に基づいてロボットアームやロボットハンドを移動させる。また例えば、プログラム及びパラメータには、ロボットハンドの開閉のタイミング及びその強さも定義されており、ロボットコントローラ1は、これらタイミング及び強さに基づいてロボットハンドを開閉させる。以降説明する第1ロボット10Aの動作と第2ロボット10Bの動作とは、並行して行われる。
[2−1.第1ロボットの動作]
図8は、第1ロボット10Aの動作を示すフロー図である。図8に示すように、まず、第1ロボット10Aは、所定の位置に配置されたろ過ユニット15の所までロボットハンドを移動させ、ろ過ユニット15を把持してろ過ユニット置場16上に移動させて配置する(S101)。
第1ロボット10Aは、特定の位置に収納されたシャーレ22の所までロボットハンドを移動させ、シャーレ置場23に移動させて配置する(S102)。なお、輸液バッグ11にバーコードが付与されている場合には、バーコードが示す識別情報がラベルに印刷されてシャーレ22に貼り付けられてもよい。
第1ロボット10Aは、後述する第2ロボット10BのS207の動作によって、ヒートカッターユニット19付近に輸液バッグ固定治具12が移動した場合に、輸液バッグ固定治具12から露出した輸液バッグ11の先をつまみ、第2ロボット10Bと協力して、輸液バッグ11の露出部分をヒートカッターユニット19のヒートカッターで切断する(S103)。S103の動作の詳細は、後述する図13で説明する。
第1ロボット10Aは、輸液バッグ11の切れ端を、ろ過ユニット廃棄口17の上に移動させ、ロボットハンドを開いて切れ端を捨てる(S104)。第1ロボット10Aは、ろ過ユニット置場16上にロボットハンドを移動させ、ろ過ユニット15のカバー15Aを把持して外し、ろ過ユニット廃棄口17の上にカバー15Aを移動させ、ロボットハンドを開いてカバー15Aを捨てる(S105)。
第1ロボット10Aは、所定の位置に配置されたピンセット24の所までロボットハンドを移動させ、ピンセット24を把持してフレアユニット25で殺菌し、元の位置に戻す(S106)。その後、第1ロボット10Aは、後述する第2ロボット10BのS209〜S211の動作によって、輸液バッグ11内の液体と洗浄ボトル20内の洗浄液の移送が完了するのを待機する(S107)。
第1ロボット10Aは、シャーレ置場23上にロボットハンドを移動させ、シャーレ置場23に配置されたシャーレ22のカバーを外し、シャーレ置場23に配置する(S108)。第1ロボット10Aは、ロボットハンドを移動させてピンセット24を把持し、ピンセット24でメンブレンフィルタ15Cをつまんでシャーレ22に入れる(S109)。なお、ろ過ユニット15のファネル15Bは、後述するS217の動作によって外されており、ピンセット24でメンブレンフィルタ15Cをつまめる状態になっている。
第1ロボット10Aは、ピンセット24をフレアユニット25で殺菌し、元の位置に戻す(S110)。第1ロボット10Aは、シャーレ置場23上にロボットハンドを移動させ、シャーレ置場23に配置されたシャーレ22のカバーを被せ、シャーレ22を所定の場所に移動させて配置し(S111)、動作を終了する。
[2−2.第2ロボットの動作]
図9は、第2ロボット10Bの動作を示すフロー図である。図9に示すように、まず、第2ロボット10Bは、所定の位置に配置された輸液バッグ固定治具12を把持し、治具仮置場13に移動させて配置し、開閉部12Dの穴にロボットハンドを差し込んで第1の面12Aを開ける(S201)。
第2ロボット10Bは、所定の位置に収納された輸液バッグ11の所までロボットハンドを移動し、輸液バッグ11の首部を把持する(S202)。なお、S202の動作が行われた後に、バーコードリーダによって輸液バッグ11のバーコードが読み取られ、ラベルプリンタによって輸液バッグ11の識別情報がラベルに印刷されてもよい。
第2ロボット10Bは、治具仮置場13に輸液バッグ11を移動させ、輸液バッグ固定治具12のフック12Gに輸液バッグ11を吊るす(S203)。第2ロボット10Bは、輸液バッグ11が飛び出し抑止部材12Mよりも奥に配置されるように、輸液バッグ11の下部を押し込む(S204)。第2ロボット10Bは、開閉部12Dの穴にロボットハンドを差し込んで第1の面12Aを閉じる(S205)。S203〜S205の動作の詳細は、後述する図10及び図11で説明する。
第2ロボット10Bは、輸液バッグ固定治具12を把持し、輸液バッグ11内の液体が電磁波に当たらないように(液体が輸液バッグ固定治具12で隠れるように)輸液バッグ固定治具12の姿勢を制御し、電磁波発生装置18に入れて露出部分を殺菌する(S206)。S206の動作の詳細は、後述する図12で説明する。
第2ロボット10Bは、輸液バッグ固定治具12を、ヒートカッターユニット19付近に移動させ、輸液バッグ11内の液体がヒートカッターに当たらないように(液体が輸液バッグ固定治具12で隠れるように)輸液バッグ固定治具12の姿勢を制御し、第1ロボット10Aと協力して、輸液バッグ11の露出部分をヒートカッターで切断する(S207)。S207の動作の詳細は、後述する図13で説明する。
その後、第2ロボット10Bは、第1ロボット10AのS105の動作により、ろ過ユニット置場16におけるろ過ユニット15のカバー15Aが外されるのを待機する(S208)。
第2ロボット10Bは、輸液バッグ固定治具12をろ過ユニット置場16上に移動させ、輸液バッグ固定治具12を傾けて輸液バッグ11内の液体をファネル15B内に移送する(S209)。第2ロボット10Bは、液体をある程度移送した後に、輸液バッグ固定治具12を起こして輸液バッグ11内に空気を入れる(S210)。第2ロボット10Bは、S159の動作とS160の動作とを所定回数(例えば、2回〜5回程度)繰り返し、輸液バッグ11内の液体を完全にファネル15B内に移送させる(S211)。
第2ロボット10Bは、輸液バッグ固定治具12を治具仮置場13に移動させて配置する(S212)。第2ロボット10Bは、所定の位置に収納された洗浄ボトル20を把持し、電磁波発生装置18に入れて殺菌する(S213)。第2ロボット10Bは、洗浄ボトル20を、半田ごてユニット21付近に移動させ、洗浄ボトル20に穴をあける(S214)。S214の動作の詳細は、後述する図15で説明する。
第2ロボット10Bは、洗浄ボトル20をろ過ユニット置場16上に移動させ、洗浄ボトル20を傾けて所定量の洗浄液をファネル15B内に移送する(S215)。S215の動作の際には、洗浄液をファネル15B内に貯めるために、吸引部による吸引が一定時間停止し、洗浄液の移送が完了した後に、吸引部による吸引が再開される。
第2ロボット10Bは、洗浄ボトル20を元の位置に戻す(S216)。第2ロボット10Bは、ろ過ユニット15上に移動してファネル15Bを把持し、ファネル15Bを輸液バッグ廃棄口14に移動させて捨てる(S217)。第2ロボット10Bは、第1ロボット10AのS110の動作により、メンブレンフィルタ15Cが取り除かれるのを待機する(S218)。
第2ロボット10Bは、メンブレンフィルタ15Cが取り除かれた後に、ろ過ユニット15上に移動してベース15Dを把持し、ベース15Dを輸液バッグ廃棄口14に移動させて捨てる(S219)。第2ロボット10Bは、治具仮置場13における輸液バッグ固定治具12の第1の面12Aを開き、輸液バッグ11を取り出して輸液バッグ廃棄口14に捨て(S220)、動作を終了する。
なお、第1ロボット10A及び第2ロボット10Bが周期的に動作する場合、上記説明した動作は、各周期における動作となる。このため、次の周期が訪れた場合には、同様の動作が行われて、次の輸液バッグ11内の液体が移送される。ただし、輸液バッグ固定治具12は治具仮置場13に配置済みであり、洗浄ボトル20には既に穴が開けられているので、次の周期では、S201の動作とS214の動作は省略され、これらの動作が行われていた期間は、第2ロボット10Bは待機する。
[2−3.一部の動作の詳細]
次に、輸液バッグ固定治具12に輸液バッグ11を格納する動作(S203〜S205の動作)、輸液バッグ11を殺菌する動作(S206の動作)、輸液バッグ11を切断する動作(S103及びS207の動作)、輸液バッグ11内の液体を移送する動作(S209〜S211の動作)、及び洗浄ボトル20に穴をあける動作(S214の動作)の詳細を参照して説明する。なお、以降説明する図面では、簡略化のために、特に参照する必要のない符号については省略し、第1ロボット10A及び第2ロボット10Bのロボットハンドも省略する。
図10及び図11は、輸液バッグ固定治具12に輸液バッグ11を格納する動作の詳細を示す図である。図10に示すように、ロボット10は、開閉部12Dの穴にロボットハンドを差し込み、そのまま水平方向にロボットハンドを移動させて第1の面12Aを開く。ロボット10は、所定の位置に配置された輸液バッグ11の首部を把持し、第1の面12Aのフック12Gにかける。
図10に示すように、輸液バッグ11の横幅は、第1の面12A及び第2の面12Bの内側の横幅と略同じであり、輸液バッグ11の縁が第1の面12A及び第2の面12Bの内壁に触れるようになっている。本実施形態では、広がり抑止部材12Kと飛び出し抑止部材12Mとの間の距離は、液体が入れられて膨らんだ状態の輸液バッグ11の幅と略同じとなっている。
通常であれば、輸液バッグ11内の液体が移送されると、輸液バッグ11の膨らみが徐々になくなるので、右端と左端が広がるように輸液バッグ11が変形する。このため、輸液バッグ11の開口部も徐々に閉じていき、最終的には液体の表面張力によって、開口部が完全に閉じた状態になってしまう。輸液バッグ11の開口部が閉じてしまうと、内部の液体を外に移送することができなくなる。この点、本実施形態では、広がり抑止部材12Kと飛び出し抑止部材12Mとが輸液バッグ11を両側から押さえつけているので、輸液バッグ11の外側への広がりが抑止され、輸液バッグ11の開口部が閉じることが防止される。
次いで、図11に示すように、ロボット10は、ロボットハンドを利用して、輸液バッグ11の左下付近を飛び出し抑止部材12Mの奥側に押し込む。これにより輸液バッグ11が飛び出し抑止部材12Mによって抑えられ、輸液バッグ固定治具12内に輸液バッグ11が確実に収まるようになる。ロボット10は、開閉部12Dの穴にロボットハンドを差し込み、そのまま水平方向にロボットハンドを移動させて第1の面12Aを閉じる。その際に、案内部材12J及び12Kが互いに近づき、輸液バッグ11の縁を外に逃げないように挟み込み、輸液バッグ11の縁が広がり抑止部材12Kのテーパ状の溝に確実にはまるようになっている。
図12は、輸液バッグ11を殺菌する動作の詳細を示す図である。図12に示すように、ロボット10は、輸液バッグ11の露出部分が上を向き、内部の液体の水面が露出しないように(水面が輸液バッグ固定治具12で隠れるように)、輸液バッグ固定治具12の姿勢を調整し、電磁波発生装置18に輸液バッグ固定治具12を入れて露出部分を殺菌する。
輸液バッグ11の露出部分は、両面とも菌が付着している可能性があるので、両面とも殺菌する必要がある。この点、電磁波発生装置18は、露出部分の両側から電磁波を照射して両面を一度に殺菌してもよいが、この場合は複数台の電磁波発生装置18が必要になるので、本実施形態では、1台の電磁波発生装置18を利用して、片面ずつ殺菌するようにしている。
例えば、電磁波発生装置18の本体部分18Aは、向かって左方向を向いており、電磁波を左方向に照射する。この場合、まず、ロボット10は、電磁波発生装置18の左側の穴に輸液バッグ固定治具12を入れ、露出部分の右側の面を殺菌する。その後、電磁波発生装置18の本体部分18Aが反転し、向かって右方向に電磁波を照射可能な状態になる。ロボット10は、電磁波発生装置18の右側の穴に輸液バッグ固定治具12を入れ、露出部分の左側の面を殺菌する。以上のように、本実施形態では、電磁波発生装置18の本体部分18Aが回転し、輸液バッグ11の露出部分を片面ずつ交互に殺菌することにより、1台の電磁波発生装置18で両面の殺菌を可能としている。
洗浄ボトル20の殺菌も、輸液バッグ11と同様の手順によって行われる。例えば、電磁波発生装置18の本体部分18Aは、輸液バッグ11の殺菌が終了すると、再び反転して元の向き(向かって左方向)に戻る。ロボット10は、電磁波発生装置18の左側の穴に洗浄ボトル20を入れ、右側の面を殺菌する。その後、電磁波発生装置18の本体部分18Aが反転し、ロボット10は、電磁波発生装置18の右側の穴に洗浄ボトル20を入れ、左側の面を殺菌する。なお、輸液バッグ11は、電磁波によって内部の液体の菌が死滅しないように、輸液バッグ固定治具12で覆うようにしているが、洗浄ボトル20の洗浄液は、原則として無菌状態なので、特に治具で覆う必要はない。
図13は、輸液バッグを切断する動作の詳細を示す図である。図13に示すように、ロボット10は、輸液バッグ11の露出部分が上を向き、内部の液体の水面が露出しないように(水面が輸液バッグ固定治具12で隠れるように)、輸液バッグ固定治具12の姿勢を調整し、ヒートカッターユニット19のヒートカッターに露出部分を押し当てて切断する。
例えば、第1ロボット10Aは、輸液バッグ11の切れ端になる部分をロボットハンドでつまみ、第2ロボット10Bは、輸液バッグ固定治具12の取手部12Fをロボットハンドで把持する。この状態で、第1ロボット10A及び第2ロボット10Bは、ヒートカッターユニット19に向けて同じ速度で同じ方向に移動し、輸液バッグ11の露出部分をヒートカッターの刃に押し当てて切断する。第1ロボット10A及び第2ロボット10Bが所定距離だけ移動すると、輸液バッグ11の切断が完了する。輸液バッグ11の露出部分の先端は、切り離された状態となるが、第1ロボット10Aが把持しているので、切れ端11Aが落ちないようになっている。また、輸液バッグ11の本体部分11Bは、開口部があけられた状態となる。
図14は、輸液バッグ11内の液体を移送する動作の詳細を示す図である。図14に示すように、ロボット10は、輸液バッグ固定治具12を傾けることにより、露出した開口部から中の液体を移送する。本実施形態では、開口部が1つであり、輸液バッグ11内に空気が十分に入らずに輸液バッグ11の中に液体が残ることがある。このため、ロボット10は、液体をある程度移送すると、輸液バッグ固定治具12を起こし、輸液バッグ11内に空気を入れて、中の液体を外に出しやすくしている。また、広がり抑止部材12Kと飛び出し抑止部材12Mによって輸液バッグ11の横の広がりが抑えられ、液体の表面張力によって開口部が閉じることが防止される。
図15は、洗浄ボトル20に穴をあける動作の詳細を示す図である。図15に示すように、ロボット10は、半田ごてユニット21の半田ごての先端に、洗浄ボトル20の空気が入っている部分を押し当てることによって、洗浄ボトル20の肩部分に穴をあける。ロボット10は、洗浄ボトル20をそのまま引き抜くと、半田の熱によって融解した容器が糸をひき、穴から洗浄液をうまく注げなくなる(糸を引いた部分によって洗浄液が飛び散ってしまう)可能性があるので、回転させながら半田ごてを引き抜くことにより、糸を引くことを防止している。
なお、半田ごてによってあけられる穴が小さい場合には、洗浄液の移送時にうまく空気が入らないので、本実施形態では、ロボット10は、洗浄液の注ぎ穴だけでなく、空気穴もあける。空気穴については、洗浄液を注ぐわけではないので、特に回転させて引き抜かなくてもよい。空気穴は、注ぎ穴の反対方向に開けられる。
以上のように、液体移送システムSは、輸液バッグ固定治具12に輸液バッグ11を格納し、電磁波発生装置18を利用して露出部分を殺菌し、ヒートカッターユニット19を利用して輸液バッグ11の露出部分を切断することによって、容器に入れられた液体を移送する場合に、外部からの菌の混入を防止するようにしている。以降、液体移送システムSで実現される機能について説明する。
[3.液体移送システムで実現される機能]
図16は、液体移送システムSで実現される機能を示す機能ブロック図である。ここでは、ロボットコントローラ1で実現される機能について説明する。図16に示すように、ロボットコントローラ1では、データ記憶部100、開閉制御部101、第1把持制御部102、第1殺菌制御部103、第1開口制御部104、切り離し制御部105、移送制御部106、第2把持制御部107、第2殺菌制御部108、第2開口制御部109、及び洗浄制御部110が実現される。データ記憶部100は記憶部1Bを主として実現され、他の各機能はCPU1Aを主として実現される。図8及び図9に示す動作は、以降説明する機能により実行される動作の一例である。
[3−1.データ記憶部]
データ記憶部100は、ロボット10を制御するためのデータを記憶する。例えば、データ記憶部100は、ロボット10の時系列的な位置と、ロボットハンドを開閉させるタイミング及び強さと、が定義されたプログラム及びパラメータを記憶する。これらのプログラム及びパラメータは、ティーチングによって予め作成されているものとする。
[3−2.開閉制御部]
開閉制御部101は、輸液バッグ固定治具12を把持するロボット10に、輸液バッグ固定治具12が開いた状態で第1の面12Aに輸液バッグ11を吊るさせ、第1の面12Aを閉じさせる。例えば、開閉制御部101は、ロボット10に、輸液バッグ固定治具12の開閉部12Dを利用して、第1の面12Aを開けさせる。開閉制御部101は、ロボット10に、輸液バッグ11の首部を把持させて、第1の面12Aのフック12Gに輸液バッグ11を吊るさせる。開閉制御部101は、ロボット10に、開閉部12Dを利用して、第1の面12Aを閉じさせる。
本実施形態では、第1の面12Aに飛び出し抑止部材12Mが設けられているので、開閉制御部101は、輸液バッグ固定治具12を把持するロボット10に、第1の面12Aが閉じる前に、吊るされた状態の輸液バッグ11の縁を、飛び出し抑止部材12Mの奥に押し込ませる。開閉制御部101は、ロボット10に、第1の面12Aの内側正面から、輸液バッグ11をロボットハンドで触れさせ、第1の面12Aに対して所定距離移動させることによって、輸液バッグ11を飛び出し抑止部材12Mの奥に押し込ませる。
なお、本実施形態では、第2の面12Bが治具仮置場13に固定され、第1の面12Aを開閉する場合を説明するが、開閉制御部101は、第1の面12Aを治具仮置場13に固定し、第2の面12Bを開閉してもよい。即ち、開閉制御部101は、第1の面12A又は第2の面12Bの何れかを開閉すればよい。開閉制御部101が第2の面12Bを開閉する場合には、開閉制御部101は、第2の面12Bを閉じる前に、輸液バッグ11の縁を、飛び出し抑止部材12Mの奥に押し込ませることになる。
[3−3.第1把持制御部]
第1把持制御部102は、ロボット10に輸液バッグ固定治具12を把持させる。例えば、第1把持制御部102は、ロボット10に、輸液バッグ固定治具12の取手部12F付近にロボットハンドを近づけさせ、ロボットハンドを閉じさせて取手部12Fを把持させる。また例えば、第1把持制御部102は、ロボット10に、輸液バッグ固定治具12を把持させた状態で、ロボットハンドを開かせて取手部12Fを離す。
例えば、輸液バッグ固定治具12が所定の位置に配置されている場合、第1把持制御部102は、ロボット10に、所定の位置に配置された輸液バッグ固定治具12付近にロボットハンドを近づけさせ、ロボットハンドを閉じさせて取手部12Fを把持させる。また例えば、輸液バッグ固定治具12が治具仮置場13に配置されている場合、第1把持制御部102は、ロボット10に、治具仮置場13に配置された輸液バッグ固定治具12付近にロボットハンドを近づけさせ、ロボットハンドを閉じさせて取手部12Fを把持させる。
[3−4.第1殺菌制御部]
第1殺菌制御部103は、電磁波発生装置18に、把持された輸液バッグ固定治具12から露出した領域を殺菌させる。第1殺菌制御部103は、輸液バッグ固定治具12を電磁波発生装置18に近づけて、輸液バッグ11の露出部分を殺菌させる。電磁波発生装置18は、所定方向に対して電磁波を照射するので、第1殺菌制御部103は、電磁波発生装置18から見て所定方向側に輸液バッグ固定治具を移動させ、露出部分に電磁波を当てることで殺菌させる。なお、電磁波の発生タイミングは、第1殺菌制御部103によって制御されてもよいし、電磁波発生装置18に予めスケジューリングさせておくようにしてもよい。
電磁波は、輸液バッグ11を透過するので、第1殺菌制御部103は、把持された輸液バッグ固定治具12から液体が露出しない状態で、開口される部分を含む領域を殺菌させる。輸液バッグ固定治具12から液体が露出しない状態とは、液体の水面が輸液バッグ固定治具12の筐体よりも低い状態である。第1殺菌制御部103は、輸液バッグ固定治具12から液体が露出しないように、輸液バッグ固定治具12の姿勢を制御する。例えば、図11に示すように、第1殺菌制御部103は、輸液バッグ11の露出部分が上を向き、輸液バッグ11内の液体が輸液バッグ固定治具12で完全に隠れるように、輸液バッグ固定治具12の姿勢を制御する。
本実施形態では、1台の電磁波発生装置18を利用して輸液バッグ11の両面が殺菌されるので、第1殺菌制御部103は、把持された輸液バッグ固定治具12を、電磁波発生装置18から見て所定方向側に配置し、輸液バッグ11が開口される部分を含む領域の一面を殺菌させた後に、輸液バッグ固定治具12を移動させ、残りの面を殺菌させる。先述したように、電磁波発生装置18は、輸液バッグ11の一面を殺菌させた後に反転する。電磁波発生装置18の反転は、第1殺菌制御部103によって制御されてもよいし、電磁波発生装置18に予めスケジューリングさせておくようにしてもよい。
なお、第1殺菌制御部103は、電磁波発生装置18を移動させることによって、輸液バッグ11の残りの面を殺菌させてもよい。例えば、第1殺菌制御部103は、輸液バッグ11の一面を殺菌させた後に、輸液バッグ固定治具12を移動させるのではなく、電磁波発生装置18を反対側に移動させ、当該反対側から電磁波を発生させることによって、輸液バッグ11の残りの面を殺菌させてもよい。第1殺菌制御部103は、輸液バッグ固定治具12及び電磁波発生装置18の少なくとも一方を移動させるようにすればよく、これらの両方を移動させてもよい。
[3−5.第1開口制御部]
第1開口制御部104は、開口装置に、把持された輸液バッグ固定治具12から露出した部分を開口させる。本実施形態では、切断装置が開口装置に相当するので、第1開口制御部104は、切断装置に、把持された輸液バッグ固定治具12から露出した部分を切断させる。更に、本実施形態では、ヒートカッターが切断装置に相当するので、第1開口制御部104は、ヒートカッターに、把持された治具から露出した部分を切断させる。
第1開口制御部104は、ロボット10に、輸液バッグ固定治具12を把持させたままヒートカッターユニット19付近に移動させ、輸液バッグ11の露出部分をヒートカッターの刃に押し当てさせる。第1開口制御部104は、ヒートカッターの刃が輸液バッグ11に触れた状態で、ロボット10に、輸液バッグ固定治具12をヒートカッターの方に移動させ、輸液バッグ11が露出した部分を切断させる。
なお、本実施形態では、ロボット10に輸液バッグ固定治具12を移動させることによって、輸液バッグ11の露出部分を切断させる場合を説明するが、輸液バッグ固定治具12が移動するのではなく、ヒートカッターユニット19が移動することによって、輸液バッグ11の露出部分を切断させてもよい。この場合、第1開口制御部104は、ヒートカッターの刃が通過する位置に輸液バッグ11の露出部分を配置させ、切断が完了するまで輸液バッグ固定治具12を固定させるようにすればよい。他にも例えば、輸液バッグ固定治具12とヒートカッターユニット19の両方が移動することによって、輸液バッグ11の露出部分が切断されてもよい。
本実施形態では、第1開口制御部104は、切り離される部分が把持された状態で、ヒートカッターに、把持された輸液バッグ固定治具12から露出した部分を切断させる。第1開口制御部104は、後述する切り離し制御部105により第1ロボット10Aが輸液バッグ11の切れ端部分を把持した場合に、第2ロボット10Bを、第1ロボット10Aと同じ方向に同じ速度で移動させることによって、輸液バッグ11の露出部分をヒートカッターの刃に押し当てて切断する。
[3−6.切り離し制御部]
切り離し制御部105は、輸液バッグ固定治具12を把持するロボット10とは異なるロボット10に、容器が切り離される部分を把持させる。本実施形態では、第1ロボット10Aが輸液バッグ11の切れ端部分を把持し、第2ロボット10Bが輸液バッグ固定治具12を把持するので、切り離し制御部105は、第2ロボット10Bにより輸液バッグ固定治具12がヒートカッターユニット19付近に移動した場合に、第1ロボット10Aに、輸液バッグ11の露出部分の先を把持させる。切り離し制御部105は、第1ロボット10Aを、第2ロボット10Bを同じ方向に同じ速度で移動させることによって、輸液バッグ11の露出部分をヒートカッターの刃に押し当てて切断する。
[3−7.移送制御部]
移送制御部106は、輸液バッグ固定治具12を傾けることにより、殺菌及び開口された輸液バッグ11の液体を移送する。移送制御部106は、ロボット10に、ろ過ユニット15のファネル15B上部に輸液バッグ11の開口部が位置するように、輸液バッグ固定治具12を移動させ、その位置で輸液バッグ固定治具12を所定角度だけ傾けさせることによって、輸液バッグ11の開口部からファネル15B内部に液体を注がせる。
本実施形態では、移送制御部106は、把持された輸液バッグ固定治具12を傾けて液体を移送した後に、当該治具を起こして輸液バッグ11内に空気を入れ、当該輸液バッグ固定治具12を再び傾けて液体を再び移送する。移送制御部106は、ロボット10に、輸液バッグ固定治具12を所定角度だけ傾けさせた後に、輸液バッグ固定治具12を所定角度だけ起こし、輸液バッグ11内に空気をいれさせる。移送制御部106は、ロボット10に、輸液バッグ固定治具12を所定角度だけ傾けさせることによって、空気が入れられた輸液バッグ11の開口部からファネル15B内部に液体を再び注がせる。2回目の角度は、1回目の角度と同じであってもよいし、1回目の角度よりも大きくてもよい。
なお、移送制御部106は、ロボット10に、輸液バッグ固定治具12を傾ける動作と、輸液バッグ固定治具12を起こす動作と、を複数回繰り返させてもよい。この場合、輸液バッグ固定治具12を傾ける角度は、全て同じであってもよいし、次第に大きくなるようにしてもよい。
[3−8.第2把持制御部]
第2把持制御部107は、ロボット10に、洗浄液が入れられた洗浄ボトル20を把持させる。例えば、第2把持制御部107は、ロボット10に、洗浄ボトル20付近にロボットハンドを近づけさせ、ロボットハンドを閉じさせて洗浄ボトル20を把持させる。また例えば、第2把持制御部107は、ロボット10に、洗浄ボトル20を把持させた状態で、ロボットハンドを開かせて洗浄ボトル20を離す。例えば、洗浄ボトル20が所定の位置に配置されている場合、第2把持制御部107は、ロボット10に、所定の位置に配置された洗浄ボトル20付近にロボットハンドを近づけさせ、ロボットハンドを閉じさせて洗浄ボトル20を把持させる。
[3−9.第2殺菌制御部]
第2殺菌制御部108は、電磁波発生装置18に、把持された洗浄ボトル20が開口される部分を含む領域を殺菌させる。第2殺菌制御部108は、輸液バッグ固定治具12を電磁波発生装置18に近づけて、洗浄ボトル20の表面を殺菌させる。電磁波発生装置18は、所定方向に対して電磁波を照射するので、第2殺菌制御部108は、電磁波発生装置18から見て所定方向側に洗浄ボトル20を移動させ、洗浄ボトル20に電磁波を当てることで殺菌させる。なお、電磁波の発生タイミングは、第2殺菌制御部108によって制御されてもよいし、電磁波発生装置18に予めスケジューリングさせておくようにしてもよい。
本実施形態では、1台の電磁波発生装置18を利用して洗浄ボトル20の両面が殺菌されるので、第2殺菌制御部108は、把持された洗浄ボトル20を、電磁波発生装置18から見て所定方向側に配置し、洗浄ボトル20が開孔される部分の一面を殺菌させた後に、洗浄ボトル20を移動させ、残りの面を殺菌させる。先述したように、電磁波発生装置18は、洗浄ボトル20の一面を殺菌させた後に反転する。電磁波発生装置18の反転は、第2殺菌制御部108によって制御されてもよいし、電磁波発生装置18に予めスケジューリングさせておくようにしてもよい。
なお、第2殺菌制御部108は、電磁波発生装置18を移動させることによって、洗浄ボトル20の残りの面を殺菌させてもよい。例えば、第2殺菌制御部108は、洗浄ボトル20の一面を殺菌させた後に、洗浄ボトル20を移動させるのではなく、電磁波発生装置18を反対側に移動させ、当該反対側から電磁波を発生させることによって、洗浄ボトル20の残りの面を殺菌させてもよい。第2殺菌制御部108は、洗浄ボトル20及び電磁波発生装置18の少なくとも一方を移動させるようにすればよく、これらの両方を移動させてもよい。
[3−10.第2開口制御部]
第2開口制御部109は、開口装置に、把持された洗浄ボトル20の部分を開口させる。本実施形態では、半田ごてユニット21が開口装置に相当するので、第2開口制御部109は、半田ごてユニット21に、把持された洗浄ボトル20を開孔させる。第2開口制御部109は、ロボット10に、洗浄ボトル20を把持させたまま半田ごてユニット21付近に移動させ、洗浄ボトル20の表面を半田ごての先端に押し当てさせる。第2開口制御部109は、洗浄ボトル20の表面が半田ごての先端に触れた状態で、ロボット10に、洗浄ボトル20を半田ごてユニット21の方に移動させ、洗浄ボトル20を開孔する。
その後、第2開口制御部109は、ロボット10に、洗浄ボトル20を半田ごてユニット21とは逆方向に移動させ、洗浄ボトル20を半田ごてから離す。その際に、第2開口制御部109は、ロボット10に、円を描くように洗浄ボトル20を移動させ、洗浄ボトル20が半田ごてから円を描くようにして抜けるようにする。第2開口制御部109は、ロボット10に、洗浄ボトル20の反対側に空気穴を作成するように、洗浄ボトル20を把持させたまま半田ごてユニット21付近に移動させ、洗浄ボトル20の表面を半田ごての先端に押し当てさせ、空気穴を作成する。
なお、本実施形態では、ロボット10に洗浄ボトル20を移動させることによって、洗浄ボトル20を開孔させる場合を説明するが、洗浄ボトル20が移動するのではなく、半田ごてユニット21が移動することによって、洗浄ボトル20を開孔させてもよい。この場合、第2開口制御部109は、半田ごての先端が通過する位置に洗浄ボトル20を配置させ、開孔が完了するまで洗浄ボトル20を固定させるようにすればよい。他にも例えば、洗浄ボトル20と半田ごてユニット21の両方が移動することによって、洗浄ボトル20が開孔されてもよい。
[3−11.洗浄制御部]
洗浄制御部110は、把持された洗浄ボトル20を傾けることにより、輸液バッグ11の液体の移送先の容器を洗浄する。本実施形態では、ろ過ユニット15のファネル15Bが移送先の容器に相当するので、洗浄制御部110は、洗浄ボトル20内の洗浄液をファネル15Bに移送することによって、ファネル15Bの内壁を洗浄する。洗浄制御部110は、ロボット10に、ろ過ユニット15のファネル15B上部に洗浄ボトル20の開口部が位置するように、洗浄ボトル20を移動させ、その位置で洗浄ボトル20を所定角度だけ傾けさせることによって、洗浄ボトル20の開口部からファネル15B内部に洗浄液を注がせる。
以上説明した液体移送システムSによれば、液体が入れられた輸液バッグ11の一部を露出させた状態で輸液バッグ固定治具12に輸液バッグ11を格納し、露出した輸液バッグ11の一部を殺菌及び開口させて液体を移送させることにより、輸液バッグ11の開口部付近に菌が付着していたとしても、その菌を殺菌した状態で液体が移送されるので、外部からの菌の混入を防止することができる。例えば、開口部だけを殺菌した場合には、輸液バッグ11の開口部付近に付着した菌が残ったままとなり、輸液バッグ11を傾けたときに菌が落下する可能性があるが、輸液バッグ固定治具12から露出した部分を殺菌することで、開口部付近を確実に殺菌することができ、開口部付近に付着した菌が落下することを防止し、外部からの菌の混入を確実に防止することができる。
また、輸液バッグ11の一部を露出させた状態で輸液バッグ固定治具12に輸液バッグ11を格納し、露出した輸液バッグ11の一部を殺菌及び切断させて液体を移送させることにより、輸液バッグ11の切断面付近に菌が付着していたとしても、その菌を殺菌した状態で液体が移送されるので、外部からの菌の混入を防止することができる。例えば、注ぎ口がない輸液バッグ11であったとしても、切断装置によって輸液バッグ11の一部を切断して注ぎ口を作成することができ、より確実に、外部からの菌の混入を防止し、輸液バッグの中身を移送することができる。
また、輸液バッグ11を切断するための切断装置としてヒートカッターを利用することで、ヒートカッターの熱によって切断面を殺菌し、外部からの菌の混入を確実に防止することができる。また、ある輸液バッグ11内の液体に存在する菌が、切断の際にヒートカッターの刃に付着しても、当該菌はヒートカッターの熱で死滅するので、別の輸液バッグ11を切断する際に菌が混入することを防止(クロスコンタミネーションの防止)することもできる。また、切断工程において切断面の殺菌も済ませることで、輸液バッグ11内の液体をより迅速に移送することができ、工程を短縮することができる。
また、輸液バッグ11が切り離される部分が第1ロボット10Aにより把持された状態で、切断装置に輸液バッグ11を切断させることで、輸液バッグ11から切り離された部分が落下することを防止することができる。例えば、輸液バッグ11から切り離された部分が、移送先の輸液バッグ11に落下した場合には、当該部分が異物として混入してしまうが、このような異物混入を防止することができる。
また、電磁波発生装置18を利用して殺菌する場合、輸液バッグ11の中身に電磁波が当たると液体の菌が殺菌されてしまうが、輸液バッグ固定治具12により電磁波を遮断することにより、輸液バッグ11内の液体の菌が殺菌されることを防止することができる。
また、輸液バッグ11を片面ずつ殺菌することにより、1台の電磁波発生装置18で両面を殺菌させることができ、コストを削減することができる。更に、本実施形態のように、電磁波発生装置18を反転させて輸液バッグ11の両面を殺菌させる場合には、電磁波発生装置18を移動させる必要がなくなるので、省スペース化を図ることができる。
また、洗浄液が入れられた洗浄ボトル20が開口される部分周辺を殺菌させ、当該部分を開口させて洗浄液を移送させることにより、洗浄ボトル20の開口部付近に菌が付着していたとしても、その菌を殺菌した状態で液体が移送されるので、菌の混入を防止することができる。また、洗浄液を利用して移送先のファネル15Bを洗浄することにより、移送先のファネル15Bの壁面に付着した検体の菌を確実にメンブレンフィルタ15Cにキャッチさせることができる。
また、輸液バッグ11の中身を全て移送する場合、開口部が1箇所のため空気が中にうまく入らず内面同士が密着し、液体が輸液バッグ11の外に出きらずに中に残ることが多いため、一度に全ての中身を移送することが難しい。この点、第2ロボット10Bは、ある程度液体を移送すると、ひとたび輸液バッグ固定治具12を起こして輸液バッグ11内に空気を入れるので、内面同士が密着することを防止し、輸液バッグ11の中身を移送させやすくなる。
また、輸液バッグ11から液体を移送する場合に、輸液バッグ11が横方向に広がると、液体の表面張力によって開口部付近が閉じてしまい、輸液バッグ11の中身を十分に移送できないことがあるが、広がり抑止部材12Kで輸液バッグ11の横方向への広がりを防止することにより、開口部が閉じることを防止し、輸液バッグ11の中身を確実に移送することができる。
また、広がり抑止部材12Kにテーパ状の溝を設けておき、輸液バッグ11が格納された場合に輸液バッグ11の横の縁を溝にはめることにより、輸液バッグ11を横方向に固定し、輸液バッグ11の横方向への広がりをより確実に抑止することができる。
また、輸液バッグ11が吊るされる第1の面12Aに広がり抑止部材12Kを備えることにより、輸液バッグ11を吊るした際に、輸液バッグ11の端を確実に広がり抑止部材12Kに接触させることができ、輸液バッグ11の横方向への広がりをより確実に抑止することができる。
また、輸液バッグ11が外側に飛び出ることを抑止する飛出し抑止部材12Mにより、輸液バッグ固定治具12を閉じる場合に輸液バッグ11がはみ出してしまい、輸液バッグ11が輸液バッグ固定治具12に挟まるといったことを防止できる。飛び出し抑止部材12Mが輸液バッグ11の横の縁に触れる場合には、輸液バッグ11が横方向に広がることを抑止することもできる。
また、輸液バッグ固定治具12を閉じる前に、輸液バッグ11の縁を飛び出し抑止部材12Mの奥に押し込むことにより、輸液バッグ固定治具12を閉じる場合に輸液バッグ11がはみ出ることを、より確実に防止することができる。
また、輸液バッグ11の縁が広がり抑止部材12Kに触れるように案内する案内部材12J,12Kにより、輸液バッグ11を確実に広がり抑止部材12Kに触れるようにすることができる。
[4.変形例]
なお、本発明は、以上に説明した実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
[4−1.液体がボトルに入れられる場合の変形例]
例えば、実施形態では、検査対象の液体が輸液バッグ11に入れられる場合を説明したが、検査対象の液体は、ボトル(ソフトバッグ)に入れられてもよい。この場合、ロボット10は、ボトルを固定するボトル固定治具にボトルを格納し、ボトル固定治具を把持しすることによって、ボトルの露出部分の殺菌及び開口をしたり、ボトル内の液体の移送をしたりしてもよい。
図17は、検査対象の液体が入れられたボトルとボトル固定治具の一例を示す図である。図17に示すように、検査対象の液体がボトル26に入れられる場合、ボトル26の形状に合わせて作製されたボトル固定治具27に、ボトル26が入れられる。例えば、ロボット10は、ボトル固定治具27を治具仮置場13に配置し、ボトル26を把持してボトル固定治具27内に格納する。
ボトル26の殺菌方法は、実施形態で説明した洗浄ボトル20と同様である。ただし、図17に示すように、ボトル26は、ボトル固定治具27によって覆われており、ロボット10は、電磁波発生装置18で殺菌させる場合に、露出部分に液面が現れないように、ボトル固定治具27の姿勢を制御する。
また、ボトル26の開孔方法は、実施形態で説明した洗浄ボトル20と同様である。ロボット10は、把持されたボトル固定治具27から露出したボトル26の部分を半田ごてに押し当てて、回転させながら引く抜くことにより開孔させる。空気穴の開孔方法についても、実施形態で説明した通りである。ロボット10は、殺菌及び開孔されたボトル26をろ過ユニット15のファネル15B上に移動させ、ボトル固定治具27を傾けることによって、ボトル26内の液体をファネル15Bに移送する。なお、ボトル26の場合、空気穴があいているので、実施形態のように、治具を傾ける動作と起こす動作を繰り返さなくてもよい。
本変形例によれば、ボトル26の一部を露出させた状態でボトル固定治具27にボトル26を格納し、露出したボトル26の一部を殺菌及び開孔して液体を移送させることにより、ボトル26の開孔部付近に菌が付着していたとしても、その菌を殺菌した状態で液体が移送されるので、外部からの菌の混入を防止することができる。例えば、ボトルキャップなどがないボトル26であったとしても、開孔装置によってボトル26の一部を開孔して注ぎ口を作成することができ、より確実に、外部からの菌の混入を防止し、輸液バッグの中身を移送することができる。
また、ボトル26を開口するための開孔装置として半田ごてを利用することで、半田ごての熱によって開孔部を殺菌し、外部からの菌の混入を確実に防止することができる。また、あるボトル26内の液体に存在する菌が、穴をあける際に開孔装置に付着しても、半田ごての熱で菌が死滅するため、別のボトル26に穴をあける際に液体に混入することを防止することもできる。また、開孔工程において開孔部の殺菌も済ませることで、ボトル26内の液体をより迅速に移送することができ、工程を短縮することができる。
[4−2.その他変形例]
また例えば、切断装置又は開孔装置が開口装置に相当する場合を説明したが、開口装置は、容器を開口可能な装置であればよく、他の装置であってもよい。例えば、検査対象の液体がキャップ付きのボトルに入れられる場合、開口装置は、ボトルキャッパーであってもよい。開孔制御部は、ボトルキャッパーを利用してボトルを開封する。実施形態及び変形例で説明した切断、開孔、及び開封は、開口の一例である。また例えば、容器を殺菌してから開口する場合を説明したが、容器を開口してから殺菌してもよい。例えば、ボトルキャッパーを利用してキャップが外された後に、注ぎ口付近が殺菌されてもよい。
また例えば、実施形態では、容器内の液体の全てが移送される場合を説明したが、容器内の一部の液体だけが移送されてもよい。また例えば、実施形態では、洗浄ボトル20の洗浄液によりファネル15B内が洗浄される場合を説明したが、この工程は省略してもよい。また例えば、輸液バッグ固定治具12の第1の面12Aの表面と治具仮置場13にマグネットを取り付けておき、第1の面12Aのマグネットと、治具仮置場13のマグネットと、が付くようにしてもよい。
また例えば、実施形態では、第1の面12Aに設けられた広がり抑止部材12Kと飛び出し抑止部材12Mによって、輸液バッグ11の外側への広がりを抑止する場合を説明したが、輸液バッグ固定治具12の内面の横幅が、液体が入れられて膨らんだ状態の輸液バッグ11の横幅と略同じである場合には、内面が輸液バッグ11の両端に触れて外側への広がりをある程度防止できるので、広がり抑止部材12Kと飛び出し抑止部材12Mの少なくとも一方を省略してもよい。また例えば、広がり抑止部材12Kと飛び出し抑止部材12Mは、第2の面12B側に備えられていてもよい。また例えば、案内部材12J,12Lは省略してもよい。
また例えば、各機能がロボットコントローラ1で実現される場合を説明したが、複数のコンピュータで各機能が分担されてもよい。例えば、複数のロボットコントローラ1で各機能分担されてもよいし、パーソナルコンピュータやサーバコンピュータによって各機能が分担されてもよい。また例えば、液体移送システムSが菌検査の場面で利用される場合を説明したが、治具の内部の構造については、菌検査以外の場面でも適用可能であり、洗剤や調味料のパックの中身をロボットに移送させる場合にも同様の治具が利用されてもよい。この場合、特にパックの表面を殺菌する必要がないので、殺菌の工程については省略してもよい。
また、以上説明した実施形態は具体例として示したものであり、本明細書にて開示される発明をこれら具体例の構成やデータ格納例そのものに限定するものではない。当業者はこれら開示された実施形態に種々の変形、例えば、物理的構成の形状や数、データ構造、処理の実行順を変更したりしてもよい。本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。