JP2020122569A - 筒状回転部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドーナツ形状の金属円板から筒状回転部品を得る製造方法において、絞り加工によるシワや割れの発生を抑える製造方法で製造され、絞り加工によるシワや割れの発生が抑えられた筒状回転部品を提供する。【解決手段】本発明は、筒状回転部品100Bの板厚内部における介在物の存在量の分布が、内径表層における存在量をd(内径)、板厚中心における存在量をd(板厚中心)としたとき、d(板厚中心)>d(内径)の関係を満たす分布を示す筒状回転部品100Bである。【選択図】図1

Description

本発明は金属板を素材として作製される筒状回転部品に関する。特に、圧延鋼板を素材として作製される転がり軸受や回転ころ等の軌道輪や歯車部品等として用いられる筒状回転部品に関する。
現在、転がり軸受けや回転ころ、歯車部品等筒状形状を有する回転部品には特殊鋼の丸棒から製造されるシームレス鋼管が多く使用されている(特許文献1参照)。
シームレス鋼管の素材となる特殊鋼の丸棒にはAlやMnS、TiN等の介在物が偏在しており、その存在量は中心に向かうにつれて増加して中心部で最大となる。シームレス鋼管は、丸棒の中心部をマンネスマン穿孔により拡げて成形されるため、介在物の存在は鋼管内周部で最も多く、外周に向かうほど減少する。
介在物は疲労破壊の起点となることから、摺動部品表層又は表層付近に介在物の存在量が増えると疲労特性、回転体であれば転動疲労特性が著しく低下することが知られている(特許文献2参照)。そのため、シームレス鋼管を素材として用いて筒状回転部品を製造する場合に、所望の疲労特性を得るためには、介在物の影響が低くなる程度まで内周から外周に向けて切削する等、機械加工による除去が必要となり、材料歩留まりが低下してしまう。
そこで、材料歩留まりよく筒状回転部品を製造する方法として、鋼板を素材とし中心部分に穴のあいたドーナツ形状の円板に絞り加工を施して筒状回転部品を成形する方法が知られている(特許文献3、特許文献4参照)。
前述の介在物の存在量は鋼板の板厚中心に向うにつれて増加して中心部で最大となるため、鋼板を素材として筒状回転部品を製造する場合には、シームレス鋼管を素材とする場合のように介在物を除去するための内周側の切削が不要となり、材料歩留まりを向上させることができる。
特開2007−130673号公報 特開2012−214892号公報 特開平7−155877号公報 特開2009−226422号公報
特許文献3に記載の筒状構造体の製造方法は、図16Aに示すように、押え板によりドーナツ形状の板材の縁を押さえて、パンチにより板材の穴広げを行うものである。そのため、図16B(a)に示すように押え板によってパンチ駆動方向への板材の流動が阻害されることにより、引張りの力が発生し割れにいたる(図16(b)参照)。また、図16C(a)に示すように、ダイスの肩部に曲げ加工が付与されるため、ダイス肩部近傍の板材の外周線l(曲げ加工後に線長が伸びる)と中立軸線l(曲げ加工前後で線長変化しない)との線長差Δl−lにより割れが発生する場合があり(図16C(b)参照)、その傾向は板厚が厚くなるほど顕著となる。
そこで、押え板を用いない特許文献4に記載の筒状構造体の製造方法(図17A参照)を適用すると、図17Bに示すように、金属円板にシワが発生し、金型に引っかかりを生じることで引張り力を生じ割れにいたる場合が存在する。
従って、本発明は、ドーナツ形状の金属円板から筒状回転部品を得る製造方法において、絞り加工によるシワや割れの発生を抑える製造方法、金型及び筒状回転部品を提供することを目的とする。
本発明は、筒状回転部品の板厚内部における介在物の存在量の分布が、内径表層における存在量をd(内径)、板厚中心における存在量をd(板厚中心)としたとき、d(板厚中心)>d(内径)の関係を満たす分布を示す筒状回転部品に関する。
また、前記介在物は、MnS、SiO、Al、TiNの群の中から選ばれる少なくとも1種以上を含んでいてもよい。
本発明の製造方法は、中間成形工程においてパンチ及びダイスのテーパ面同士で金属円板の両面全体を押圧して絞り加工するので、シワや割れの発生を抑えることができ、最終成形工程において更に絞り加工を施して所望の形状の筒状回転部品を得ることができる。
本発明の実施形態に係る製造方法の各工程を示す図である。 本発明の実施形態の変形例に係る製造方法の各工程を示す図である。 本発明の実施例1の説明図である。 本発明の実施例1−1で得られた筒状回転部品の外観写真を示す。 本発明の実施例2の説明図である。 本発明の比較例1の説明図である。 本発明の比較例1で得られた筒状回転部品の外観写真を示す。 特許文献1に記載の金型を使用した比較例2−1の説明図である。 特許文献2に記載の金型を使用した比較例2−2の説明図である。 内径肉厚及び外径肉厚の残存比の説明図である。 介在物の一例を示す光学顕微鏡写真である。 介在物の存在量の調査方法の説明図である。 介在物の存在量を測定した結果を示す図である。 内側面の転動疲労試験機の概略構成を示す図である。 外側面の転動疲労試験機の概略構成を示す図である。 実施例4−1と比較例6(シームレスパイプを素材とする筒状回転部品)の内側面の転動疲労試験結果を示す。 実施例5−1と比較例6(シームレスパイプを素材とする筒状回転部品)の外側面の転動疲労試験結果を示す。 特許文献1に記載の製造方法の説明図である。 図16Aに示す製造方法において発生する引張り力に起因する割れについての説明図である。 図16Aに示す製造方法において発生する曲げに起因する割れについての説明図である。 特許文献2に記載の製造方法の説明図である。 図17Aに示す製造方法において発生するシワに起因する割れについての説明図である。
以下、本発明の筒状回転部品の製造方法及び製造装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の筒状回転部品は、転がり軸受や回転ころ等の軌道輪や歯車部品等に用いられるものであり、高い転動疲労特性が求められる。
<実施形態>
図1は、本実施形態に係る筒状回転部品の製造方法の各工程を説明するための図であり、所定の内径D及び外径D、板厚Hを有し中心部分に穴が形成されたドーナツ形状の金属円板100を穴拡げ絞り加工により成形する。本実施形態の穴拡げ絞り加工は、中央部に穴が形成された金属板の外周部において縮みフランジ変形、同時に金属板の内周部において伸びフランジ変形により筒状回転部品を得る成形加工である。
金属円板100の形状は、最終形状である所望の筒状回転部品100Bの体積から、内径D、外径D及び板厚Hを決定すればよい。
金属円板100の素材としては、圧延鋼板等の金属板を用いることができる。圧延鋼板は、板厚中心に向かうにつれて介在物が多く偏在するため、絞り加工を施して圧延鋼板の表面が負荷のかかる面となるように成形することで、高い転動疲労特性を得ることができる。よって、清浄度を高めた鋼板を用いなくとも、十分な転動疲労特性が得られる。
本実施形態の製造方法は、図1に示すように、大きく分けて(a)中間成形工程と(b)最終成形工程とに分かれる。従来では、金属円板を所望の形状に成形するための1種類の金型のみで穴拡げ絞り加工が施されていたが(図16A及び図17A参照)、本実施形態の製造方法では、2種類の金型を用いて、中間成形工程において所望の最終形状とは異なる円錐台形状の中間成形品100Aを成形し、その後、最終成形工程にて、更に穴拡げ絞り加工を施して所望の形状の筒状回転部品を成形する。
図1(a)に示すように、中間成形工程では、所定のテーパが付与された中間成形工程用パンチ10A及びダイス20Aの金型で金属円板100の両面全体を押圧して穴拡げ絞り加工を施して、中間成形品100Aを得る。このように、パンチ10A及びダイス20Aのテーパ面同士で金属円板100の両面全体を挟み込むので、従来の金属円板の縁を押え板で押さえて絞り加工する場合(図16B参照)に比べて、引張りや曲げによる割れの発生を低減できる。また、従来の金属円板の縁を押え板で押さえないで絞り加工する場合(図17B)に比べて、シワの発生を低減でき、それに伴う割れの発生も低減できる。
パンチ10A及びダイス20Aのテーパ面は、加工方向との成す角の角度がそれぞれθ及びθであり、本実施形態では、肉厚が一定の筒状回転部品を得るため、θ=θとした。
また、パンチ10A及びダイス20Aのθ及びθを25度以上とすることで、割れの発生を抑えて中間成形品100Aを製造することができ、また、θ及びθを30度以上とすることで、微小シワの発生を抑えて中間成形品100Aを製造することができる。
図1(b)に示すように、最終成形工程では、所望の形状の筒状回転部品を成形できる最終成形工程用パンチ10B及びダイス20Bの金型で、中間成形品100Aに対して更に絞り加工を施して、筒状回転部品100Bを得る。パンチ10B及びダイス20Bとしては、中間形成工程に用いられるパンチ及びダイスよりもテーパ角度(θ及びθ)の小さいものが用いられる。本実施形態では、内径がD´、外径がD´の筒状回転部品を得るため、パンチ10Bは外径がD´の円柱形状を備え、ダイス20Bは、内径がD´の環状形状を備えるように構成した(θ及びθはいずれも0度)。
尚、本明細書において、「中間成形工程」とは、金属円板又は中間成形品の両面全体をテーパ面同士で押圧しつつ穴拡げ絞り加工を施すことを示す。また、「最終成形工程」とは、中間成形品の両面全体をテーパ面で押圧せずに穴拡げ絞り加工を施す工程を示す。
次に、金属円板100から筒状回転部品100Bに成形される際の伸びフランジ率λについて説明する。
穴拡げ絞り加工前である金属円板100の内径Dと最終成形工程で得られた筒状回転部品の内径D´から伸びフランジ率λは、λ(%)=(D´−D)D×100と表され、加工前の内径Dに対して最終成形工程で得られた内径D´が大きすぎると、割れが発生するおそれがあるため、伸びフランジ率λが90%以下となるように金属円板100の形状を設定することが好ましい。
以上説明した本実施形態の筒状回転部品の製造方法によれば、以下のような効果を奏する。
(1)所定の内径D及び外径Dを有するドーナツ形状の金属円板100から筒状回転部品100Bを得る製造方法を、所定のテーパが付与されたパンチ10A及びダイス20Aのテーパ面同士で金属円板100の両面全体を押圧して穴拡げ絞り加工を施すことにより円錐台形状の中間成形品100Aを得る中間成形工程と、所望の形状パンチ10B及びダイス20Bで、中間成形品100Aを押圧して更に穴拡げ絞り加工を施すことにより筒状回転部品100Bを得る最終成形工程と、を含むものとした。これにより、穴拡げ絞り加工途中の割れやシワの発生を抑えて金属円板100から筒状回転部品100Bを成形することができる。また、金属円板の素材として鋼板を用いた場合は、十分な転動疲労特性を有する筒状回転部品100Bとすることができる。
(2)本発明の製造方法を、金属円板100の加工前の内径をDとし、最終成形工程で得られた筒状回転部品100Bの内径をD´とする場合に、λ=(D´−D)/D×100で表される伸びフランジ率λが90%以下となる条件で加工を行うものとした。これにより、割れの発生を抑えて筒状回転部品100Bを製造することができる。
(3)中間成形工程のパンチ10A及びダイス20Aのテーパ面と加工方向との成す角の角度θ、θを30度以上とするものとした。これにより、微小シワの発生を抑えて筒状回転部品100Bを製造することができる。
<変形例>
次に、本実施形態の変形例について、図2を参照して説明する。変形例では、中間成形工程においてパンチ及びダイスのテーパ面と加工方向との成す角の角度を変えて、複数回に分けて穴拡げ絞り加工を施す点が、図1に示した実施形態と異なる。このように中間成形工程を複数回に分けることでより良好に穴拡げ絞り加工を施すことができる。
図2(a)に示すように、中間成形工程における1回目の穴拡げ絞り加工では、所定のテーパが付与されたパンチ10A1及びダイス20A1の金型で金属円板100の両面全体を押圧して穴拡げ絞り加工を施して、中間成形品100A1を得る。
パンチ10A1及びダイス20A1のテーパ面は、加工方向との成す角の角度がそれぞれθp1及びθd1であり、本変形例では、肉厚が一定の筒状回転部品を得るため、θp1=θd1とした。
図2(b)に示すように、中間成形工程における2回目の穴拡げ絞り加工では、所定のテーパが付与されたパンチ10A2及びダイス20A2の金型で中間成形品100A1の両側面全体を押圧して穴拡げ絞り加工を施して、中間成形品100A2を得る。
パンチ10A2及びダイス20A2のテーパ面は、加工方向との成す角の角度がそれぞれθp2及びθd2であり、本変形例では、肉厚が一定の筒状回転部品を得るため、θp2=θd2とした。2回目の穴拡げ絞り加工に用いるパンチ10A2及びダイス20A2におけるテーパ面の加工方向との成す角度θp2及びθd2は、1回目の穴拡げ絞り加工に用いるパンチ10A1及びダイス20A1のテーパ面の加工方向との成す角度θp1及びθd1よりも小さく設定される。
図2(c)に示すように、最終成形工程では、所望の形状の筒状回転部品を成形できるパンチ10B及びダイス20Bの金型で、中間成形品100A2に対して更に穴拡げ絞り加工を施して、筒状回転部品100Bを得る。本実施形態では、内径がD´、外径がD´の筒状回転部品を得るため、パンチ10Bは外径がD´の円柱形状を備え、ダイス20Bは、内径がD´の環状形状を備えるように構成した。
以上説明した変形例の筒状回転部品の製造方法によれば、以下のような効果を奏する。
(4)中間成形工程において、パンチ及びダイスのテーパ面と加工方向との成す角の角度を変えて、複数回の穴拡げ絞り加工を施すものとした。これにより、中間成形工程を1回で行う場合に比べてより良好に絞り加工を行うことができる。
以下に、図3〜図15Bを参照して、本発明の製造方法で筒状回転部品100Bを製造した実施例及び従来の製造方法で製造した比較例等について説明する。
金属円板100の素材としては、板厚が6mmのSUJ2鋼板を用いた。表1に示す絞り加工条件で、中間成形工程及び最終成形工程の穴拡げ絞り加工を行った。
伸びフランジ率λの値を変えて、実施例及び比較例の筒状回転部品を製造した。図3に示す金型で製造した筒状回転部品の実施例1−1〜実施例1−3は、λ=0%の条件であり、図5に示す金型で製造した筒状回転部品の実施例2−1〜実施例2−3は、λ=85%の条件であり、図6に示す比較例1は、λ=100%の条件である。
また、図1に示す金型で製造した筒状回転部品として、実施例1−1’〜実施例1−3’、実施例2−1’〜実施例2−3’の筒状回転部品を製造した。実施例1−1’〜実施例1−3’は、それぞれ実施例1−1〜実施例1−3に対応する実施例であり、実施例2−1’〜実施例2−3’は、それぞれ実施例2−1〜実施例2−3に対応する実施例である。
また、図4に実施例1−1の筒状回転部品の外観写真を示し、図7に比較例1の筒状回転部品の外観写真を示した。
また、従来の製造方法と比較するため、図8に示す特許文献1に記載の金型により製造した筒状回転部品を比較例2とし、図9に示す特許文献2に記載の金型により製造した筒状回転部品を比較例3とした。
実施例及び比較例で用いた金属円板100の形状を表2に示す。また、これらの絞り加工試験結果をまとめた結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例1−1〜実施例2−3と比較例1における伸びフランジを比較すると、伸びフランジ率λが90%以下の実施例1−1〜実施例2−3によれば、図4に示すように割れずに穴拡げ絞り加工できることが確認された。また、伸びフランジ率λが100%の比較例1では、最終成形工程において、図7に示すように割れが発生した。
また、中間成形工程における1回目の穴拡げ絞り加工のテーパ面の角度θp1、θd1が25度以上であれば、最終成形工程後に微小シワが発生するものの良好に絞り加工できることが確認された。また、1回目の穴拡げ絞り加工のテーパ面の角度θp1、θd1が30度以上であれば、微小シワを発生させずに絞り加工できることが確認された。尚、この微小シワは、後に行う切削加工により取り除くことができ、最終製品形状や強度には影響しない程度のシワである。
また、1回の中間成形工程の後に最終成形工程を行う実施例1−1’〜実施例1−3’、実施例2−1’〜実施例2−3’においても、穴拡げ絞り加工のテーパ面の角度θp1、θd1が25度以上であれば、最終成形工程後に微小シワが発生するものの良好に絞り加工できることが確認された。また、穴拡げ絞り加工のテーパ面の角度θp1、θd1が40度以上であれば、微小シワを発生させずに穴拡げ絞り加工できることが確認された。
また、実施例2−1〜実施例2−3と同じ条件の金属円板100を用いて、つまり、同じ伸びフランジ率λ=85%の条件で、従来の金型で中間成形工程を経ずに最終成形工程のみで穴拡げ絞り加工を行った比較例2−1及び比較例2−2では、割れが発生して筒状回転部品を製造することはできなかった。
次に、穴拡げ絞り加工により得られた筒状回転部品を切削加工する場合に、その切削量が転動疲労特性に与える影響について説明する。
図10を参照して、筒状回転部品の内側面及び外側面の切削量を表す指標である内径肉厚及び外径肉厚の残存比について説明する。
図10に、穴拡げ絞り加工後の筒状回転部品100Bを筒状形状における軸方向から見た模式図を示す。絞り加工後の板厚をt、板厚中心(肉厚中心)までの厚さをtmc =t/2、絞り加工後の内径をD´、絞り加工後の外径をD´、切削加工後の内径:D1c´、切削加工後の外径:D2cとすると、内径削り厚さはtmc1=(D1c´−D´)/2、外径削り厚さはtmc2=(D´−D2c´)/2で表せる、よって、切削加工後の内径肉厚は、:t= tmc−tmc1、切削加工後の外径肉厚は、t=tmc −tmc2
となり、内径肉厚の残存比はt/tmc、外径肉厚の残存比はt/tmcで求めることができる。
図11に金属円板100の素材として用いられる鋼板内に見られる介在物を光学顕微鏡により観察した一例を示す。図11において黒っぽく見える粒子がAlやMnS、TiN等の介在物である。
介在物には、金属円板の素材が鋼である場合、一般に加工によって粘性変形したA系介在物、加工方向に集団で不連続的に粒状に並んだB系介在物、また、粘性変形をしないで不規則に分散したC系介在物の3種類がある。それぞれ代表的な非金属介在物として、A系介在物としては細長状で硫化物のMnS、けい酸塩のSiO等、B系介在物としてはAl等、C系介在物としては粒状酸化物が知られている。
これら非金属介在物は、JIS G0555「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」に準拠して、顕微鏡観察により数を数えることができる。例えば、試験片を切断採取し、その面を研磨仕上げによって鏡面とし、エッチングは行わずに倍率400倍の光学顕微鏡により観察して、介在物の数を数えることができる。
次に、図12を参照して、筒状回転部品に存在する介在物の存在量を調査する方法について説明する。図12(a)に示すように、筒状回転部品から2mm×12mm×3mmの直方体を切り出し、更に図12(b)に示すように、6つに切り分けて2mm×12mm×0.5mmの直方体の試験片を6つ作成する。この際、3つ目と4つ目の試験片の間が板厚中心(肉厚中心)となるように試験片を切り出し、測定位置は、板厚中心を0mmとし、そこから内側面側を負の値で表し、外側面側を正の値で表すものとする。
光学顕微鏡により、試験片の表面に現れた介在物の個数を数え、1mm当たりの個数に換算する。介在物の個数は、各試験片の外側面側の表面のみ、又は内側面側の表面のみを対象として数える。また、数えた介在物の個数は、試験片の面積である2mm×12mmで除して1mm当たりの個数に換算した。本実施形態では、各試験片の外側面側の表面の介在物の数を数えた。
このような方法で、介在物の存在量を測定した結果を図13に示す。本発明の製造方法により得られた筒状回転部品を実施例3とし、マンネスマン穿孔法によるSUJ2シームレス鋼管(内径10mm、外径22mm、肉厚6mm)を、シームレス鋼管の管軸方向に沿って13mmの長さで切断して得られた筒状回転部品を比較例3とした。実施例3の筒状回転部品は、表3に示す実施例1−1により製造された筒状回転部品に相当する。実施例3及び比較例3の筒状回転部品は、いずれも内径11.9mm、外径20.1mm、高さ12.1mmとなるように切削加工が施されたものである。
図13の結果から、実施例3では、板厚中心付近において介在物が多く存在するが、内側面に向かうにつれて、及び外側面に向かうにつれて介在物の存在量は減少している。つまり、筒状回転部品の板厚内部における介在物の存在量の分布が、内径表層における存在量をd(内径)、板厚中心における存在量をd(板厚中心)としたとき、d(板厚中心)>d(内径)の関係を満たしており、また、外径表層における存在量をd(外径)としたとき、d(板厚中心)>d(外径)の関係を満たしている。一方、比較例3のシームレス鋼管を素材とするものでは、内側面側ほど介在物の存在量が多く、外側面に向かうにつれて介在物の存在量が減少することが確認された。
次に、内外径肉厚の残存比が転動疲労特性に与える影響を調べるため、内外径肉厚の残存比を変えて転動疲労の試験体を作製した。
図14A及び図14Bを参照して、転動疲労試験機について説明する。
図14Aに示す内側面の転動疲労試験では、筒状回転部品の試験体の外側面にシャフトS1を当接させ、試験体の内側面と鋼球Bとを当接させる(図14A(a)参照)。鋼球Bは、シャフトS2に埋まるように配置されており(図14A(b)参照)、シャフトS1を図14Aに示す方向に回転させながら荷重をかけて試験体に当接させることにより、試験体が回転し、内側面に当接する鋼球Bが転動するように構成される。
図14Bに示す外側面の転動疲労試験では、筒状回転部品の試験体の内側面にシャフトS4を当接させ、試験体の外側面と鋼球Bとを当接させる(図14B(a)参照)。鋼球Bは、シャフトS3に埋まるように配置されており(図14B(b)参照)、シャフトS4を図14Bに示す方向に回転させながら、シャフトS3で荷重をかけて試験体に当接させることにより、試験体が回転し、外側面に当接する鋼球Bが転動するように構成される。
内径肉厚及び外径肉厚の残存比を変えて実施例及び比較例の筒状回転部品を製造し、表4に示す熱処理条件で熱処理を施し、精密仕上げ加工を施して、実施例4−1〜実施例4−3及び比較例4(内径肉厚の存在比変更)、実施例5−1〜実施例5−3及び比較例5−1及び比較例5−2(外径肉厚の存在比変更)とした。尚、穴拡げ絞り加工後の切削加工では、所望の形状に0.1mmの仕上げ代を残して切削を行い、熱処理後の精密仕上げ加工にて0.1mm程度の研削を行い所望の形状とした。
また、これらの実施例及び比較例について、表5に示す試験条件で転動疲労試験を行った。内径肉厚の残存比と転動疲労特性の関係を表6に、外径肉厚の残存比と転動疲労特性の関係を表7に示す。表7において、実施例及び比較例の筒状回転部品の高さは、いずれも12mmである。
尚、転動疲労試験結果については、表5の条件においてn=16の試験における累積破損確率を求め、シームレス鋼管を素材とする筒状回転部品と同等以上の特性を有する場合を○、同等未満の特性を有する場合を×とした。
表6に示すように、筒状回転部品の製造方法が切削加工工程を含む場合には、内径肉厚の残存比が0.37以上においては、良好な転動疲労特性が得られた。また、表7に示すように、外径肉厚の残存比が0.49以上においては、良好な転動疲労特性が得られた。
次に、筒状回転部品の内径側を切削加工した実施例4−1(表6)と、外径側を切削加工した実施例5−1(表7)と、シームレス鋼管を素材とする筒状回転部品の比較例6について、転動疲労試験を行った。
比較例6の筒状回転部品は、まず、マンネスマン穿孔法による外径22mm、内径10mm、肉厚6mmのSUJ2シームレス鋼管を素材とし、これに引き抜き加工を行って、外径21.5mm、内径9.8mmの形状とした。続いて、実施例4−1や実施例5−1と同様に熱処理と仕上げ加工を行って、外径20mm、内径12mmの形状とした。すなわち、比較例6の内径肉厚残存比は実施例4−1と同じであり、外径肉厚残存比は実施例5−1と同じである。
転動疲労試験の結果のうち、内側面についての試験結果を図15Aに、外側面についての試験結果を図15Bに示す。
実施例4−1及び実施例5−1の筒状回転部品は、内側面においては、比較例6のシームレス鋼管よりも転動疲労特性が高く、外側面においては、比較例6のシームレス鋼管と同等の転動疲労特性を示した。
よって、シームレス鋼管を素材として筒状回転部品を製造する場合に比べて、本発明の製造方法によれば、内側面を大幅に切削する必要がないので、材料歩留まりを向上させ、切削にかかる時間を少なくできるので生産性を向上させることができる。また、内側面及び外側面の転動疲労特性の差がほとんどないので、ラジアル軸受の内輪及び外輪に好適に用いることができる。
以上、本発明の筒状回転部品の製造方法の実施形態、変形例及び実施例について説明したが、本発明は、上述した実施形態、変形例及び実施例に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上述の実施例では中間成形工程において2回又は1回の穴拡げ絞り加工を施す一例を示したが、これに限らない。必要に応じて更に多くの回数に分けて穴拡げ絞り加工を行ってもよい。
10A、10A1、10A2、10B パンチ
20A、20A1、20A2、20B ダイス
100 金属円板
100A、100A1、100A2 中間成形品
100B 筒状回転部品

Claims (2)

  1. 筒状回転部品の板厚内部における介在物の存在量の分布が、内径表層における存在量をd(内径)、板厚中心における存在量をd(板厚中心)としたとき、
    d(板厚中心)>d(内径)
    の関係を満たす分布を示す筒状回転部品。
  2. 前記介在物は、MnS、SiO、Al、TiNの群の中から選ばれる少なくとも1種以上を含む、請求項1に記載の筒状回転部品。
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