JP2020117443A - イソプロパノール水溶液の製造方法、イソプロパノールの製造方法、及び前記方法により得られたイソプロパノール水溶液又はイソプロパノールの使用 - Google Patents
イソプロパノール水溶液の製造方法、イソプロパノールの製造方法、及び前記方法により得られたイソプロパノール水溶液又はイソプロパノールの使用 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】微生物発酵により得られた培養液から純度の高いイソプロパノールの水溶液を製造する方法、該水溶液から純度の高いイソプロパノールを製造する方法、及び前記方法により得られたイソプロパノール水溶液又はイソプロパノールの使用を提供すること。【解決手段】微生物発酵によるイソプロパノール、アセトン及び水を含む培養液又は微生物発酵中の培養槽からのガスに含まれるイソプロパノール及びアセトンを含む低沸点成分を水により捕捉した水溶液を接触水素化することにより、イソプロパノール及び水から実質的になるイソプロパノール水溶液に変換する工程を含むイソプロパノール水溶液の製造方法、前記イソプロパノール水溶液の蒸留及び膜分離により含水率0.1質量%以下のイソプロパノールを得る工程を含むイソプロパノールの製造方法、並びに前記イソプロパノール水溶液又は前記イソプロパノールの洗浄剤、希釈剤等としての使用。【選択図】なし
Description
本開示はイソプロパノール水溶液の製造方法、イソプロパノールの製造方法、及び前記方法により得られたイソプロパノール水溶液又はイソプロパノールの使用に関する。
イソプロパノールは種々の工業用途において用いられている低級アルコールであり、例えばそれ自体で洗浄剤、希釈剤等に用いられている他、アセトン等の物質を製造するための原料としても用いられている。
従来、イソプロパノールの製造は、石油を分解して得られるプロピレンを濃硫酸に吸収させ、これに水を作用させて製造する間接法、プロピレンの水和反応により製造する直接法が用いられてきた。例えば、特開平8−291092号公報は、強酸性の固体触媒の存在下に、プロピレンと水とを高温高圧で直接液相水和させてイソプロパノールを製造する方法を開示している。
一方、近年では、組換え微生物を用いたイソプロパノールの製造も試みられている。例えば、国際公開第2009/008377号においては、組換え微生物を用いたイソプロパノール生産が記載されている。
本開示の一実施形態は、微生物発酵により得られた培養液から純度の高いイソプロパノールの水溶液を製造する方法、該水溶液から純度の高いイソプロパノールを製造する方法、及び前記方法により得られたイソプロパノール水溶液又はイソプロパノールの使用を提供することを課題とする。
本開示の態様は以下のものを含む。
<1> 微生物発酵により得られるイソプロパノール、アセトン及び水を含む培養液を接触水素化することにより、イソプロパノール及び水から実質的になるイソプロパノール水溶液に変換する工程を含む、イソプロパノール水溶液の製造方法。
<2> 接触水素化によりイソプロパノール水溶液に変換する前記工程の前に、イソプロパノール、アセトン及び水を含む前記培養液を膜精製する工程をさらに含む、<1>に記載の製造方法。
<3> 接触水素化によりイソプロパノール水溶液に変換する前記工程の前に、イソプロパノール、アセトン及び水を含む前記培養液を蒸留に供する工程をさらに含む、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<4> 接触水素化によりイソプロパノール水溶液に変換する前記工程の後に、前記イソプロパノール水溶液に対し膜精製及び蒸留のうちの少なくとも1種を行う工程をさらに含む、<1>〜<3>のうちいずれか1つに記載の製造方法。
<5> 微生物発酵中の通気により培養容器から排出されたガスに含まれるイソプロパノール及びアセトンを含む低沸点成分を水により捕捉した水溶液を接触水素化することにより、イソプロパノール及び水から実質的になる水溶液に変換する工程を含む、イソプロパノール水溶液の製造方法。
<6> 前記接触水素化に用いる触媒がPd、Ni、Co、Ru及びCu−Znから選ばれる少なくとも1種を含む、<1>〜<5>のうちいずれか1つに記載の製造方法。
<7> <1>〜<6>のうちいずれか1つに記載の製造方法により得られたイソプロパノール水溶液に対して蒸留及び膜分離を行い、含水率0.1質量%以下のイソプロパノールを得る工程を含む、イソプロパノールの製造方法。
<8>
<1>〜<6>のうちいずれか1つに記載の製造方法により得られたイソプロパノール水溶液又は<7>に記載の製造方法により得られたイソプロパノールの、洗浄剤又は希釈剤としての使用。
<2> 接触水素化によりイソプロパノール水溶液に変換する前記工程の前に、イソプロパノール、アセトン及び水を含む前記培養液を膜精製する工程をさらに含む、<1>に記載の製造方法。
<3> 接触水素化によりイソプロパノール水溶液に変換する前記工程の前に、イソプロパノール、アセトン及び水を含む前記培養液を蒸留に供する工程をさらに含む、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<4> 接触水素化によりイソプロパノール水溶液に変換する前記工程の後に、前記イソプロパノール水溶液に対し膜精製及び蒸留のうちの少なくとも1種を行う工程をさらに含む、<1>〜<3>のうちいずれか1つに記載の製造方法。
<5> 微生物発酵中の通気により培養容器から排出されたガスに含まれるイソプロパノール及びアセトンを含む低沸点成分を水により捕捉した水溶液を接触水素化することにより、イソプロパノール及び水から実質的になる水溶液に変換する工程を含む、イソプロパノール水溶液の製造方法。
<6> 前記接触水素化に用いる触媒がPd、Ni、Co、Ru及びCu−Znから選ばれる少なくとも1種を含む、<1>〜<5>のうちいずれか1つに記載の製造方法。
<7> <1>〜<6>のうちいずれか1つに記載の製造方法により得られたイソプロパノール水溶液に対して蒸留及び膜分離を行い、含水率0.1質量%以下のイソプロパノールを得る工程を含む、イソプロパノールの製造方法。
<8>
<1>〜<6>のうちいずれか1つに記載の製造方法により得られたイソプロパノール水溶液又は<7>に記載の製造方法により得られたイソプロパノールの、洗浄剤又は希釈剤としての使用。
本開示によれば、微生物発酵により得られた培養液から純度の高いイソプロパノールの水溶液を製造する方法、該水溶液から純度の高いイソプロパノールを製造する方法、及び前記方法により得られたイソプロパノール水溶液又はイソプロパノールの使用を提供することができる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
<イソプロパノール水溶液の第1の製造方法>
本開示に係るイソプロパノール水溶液の第1の製造方法は、微生物発酵により得られるイソプロパノール、アセトン及び水を含む培養液を接触水素化することにより、イソプロパノール及び水から実質的になるイソプロパノール水溶液に変換する工程を含む。ここで、「実質的にイソプロパノール及び水からなる」という表現は、水溶液中におけるイソプロパノール及び水以外の成分の総含有量が5質量%以下であることを表し、好ましくは水溶液中におけるイソプロパノール及び水以外の成分の総含有量が1質量%以下であることを表し、より好ましくは水溶液中におけるイソプロパノール及び水以外の成分の総含有量が0.5質量%以下であることを表し、いっそう好ましくは水溶液中におけるイソプロパノール及び水以外の成分の総含有量が0.1質量%以下であることを表す。
本開示に係るイソプロパノール水溶液の第1の製造方法は、微生物発酵により得られるイソプロパノール、アセトン及び水を含む培養液を接触水素化することにより、イソプロパノール及び水から実質的になるイソプロパノール水溶液に変換する工程を含む。ここで、「実質的にイソプロパノール及び水からなる」という表現は、水溶液中におけるイソプロパノール及び水以外の成分の総含有量が5質量%以下であることを表し、好ましくは水溶液中におけるイソプロパノール及び水以外の成分の総含有量が1質量%以下であることを表し、より好ましくは水溶液中におけるイソプロパノール及び水以外の成分の総含有量が0.5質量%以下であることを表し、いっそう好ましくは水溶液中におけるイソプロパノール及び水以外の成分の総含有量が0.1質量%以下であることを表す。
イソプロパノールは、工業用途では例えば洗浄剤、希釈剤等として、日常品では例えば消毒用品、清掃用品として、また、さらなる用途として例えば自動車等の燃料タンクの水抜き剤として使用されている。イソプロパノールが洗浄剤として用いられる場合、例えば、電子部品の洗浄、金属部品の前処理洗浄、ドライクリーニング溶剤等に用いられる、イソプロパノールが希釈剤として用いられる場合、例えば塗料、インク、及び接着剤を薄める希釈剤として用いられ、イソプロパノールが消毒用品又は清掃用品として用いられる場合、脱脂作用の必要な消毒薬、クリーンルームの清掃剤、コピー機やDVDのクリーナーなどに利用されている。
これらの用途においては他のアルコール種も使用可能であり、例えばメチルアルコール、エチルアルコ―ル、ブチルアルコールなどが使用可能なアルコール種として挙げられる。しかし、メチルアルコールはイソプロパノールの約3倍の蒸気圧があり、短時間で蒸発してしまうため、汚れを除去する効率が低い。また、エチルアルコールは、酒税の適用のため、コストが高くなりやすい。さらに、ブチルアルコールは、臭気があり、また水への溶解度が100mLの水に対して約10g未満と低いため、使用適性が低い。これらの事情から、上記用途には、性能、コスト、安全性を考慮して、イソプロパノールが使用されている。
イソプロパノールは従来、石油を出発原料として製造されてきた。石油分解によりプロピレンを得て、これを水和することによりイソプロパノールを製造する方法を実施するためには、プロピレンを水和させるための設備が必要となり、石油原料自体のコストもかかる。また、石油は限りある資源であり、石油を原料とする製造方法はサステイナブル(持続可能)な方法ではない。
これに対して微生物発酵によりイソプロパノールを製造する方法が開発されてきた。この方法は、植物由来原料を用いているため、サステイナブルな方法である。また、植物由来原料を用いることができることから、上記の石油を利用する方法に比べてコスト面でも有利である。しかし、微生物発酵によりイソプロパノールを製造する場合には、通常、イソプロパノールと共にアセトンが副生してしまう。イソプロパノールの工業用途においてはイソプロパノールの純度が高いことが求められるため、このアセトンの共在は、工業的な利用の上で好ましくない。しかし、イソプロパノールに共在しているアセトンを蒸留等により除去しようとすれば、相当量のイソプロパノールも同時に除去されてしまい、イソプロパノールの収率は低くなってしまうため、工業的には採用が難しい。このように、微生物発酵により得られたイソプロパノール含有生成物の利用可能性は制限されていた。
これに対して、本開示に係るイソプロパノール水溶液の第1の製造方法によれば、微生物発酵により得られた培養液を用いて、水以外の成分の総量に対するイソプロパノールの量の割合が高い、つまり水を除いて考えた場合にイソプロパノールの純度が高い、イソプロパノール水溶液を得ることができる。本開示に係るイソプロパノール水溶液の第1の製造方法では、アセトンは接触水素化によりイソプロパノールに変換される。このように、微生物発酵により得られたイソプロパノール含有培養液に共在するアセトンを接触水素化により除去しようとする試みは、本開示において初めて試みられたものである。また、微生物発酵により得られた前記培養液中におけるイソプロパノール、アセトン及び水以外の成分の含有量は低い(例えば5質量%以下である)ため、アセトンを除去することによりイソプロパノール及び水から実質的になるイソプロパノール水溶液を得ることができる。
本開示に係るイソプロパノール水溶液の第1の製造方法(以下単に、イソプロパノール水溶液の第1の製造方法とも称する)によれば、石油を出発原料とした場合と比較して、サステイナビリティ(持続可能性)高く、またコスト面でもより効率的に、水を除いて考えた場合に純度の高いイソプロパノール水溶液を得ることができる。例えば、イソプロパノール水溶液の第1の製造方法により得られた水溶液中におけるアセトンの濃度は、接触水素化によってイソプロパノールの濃度の1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%、さらに好ましくは0.01質量%以下、いっそう好ましくは0.001質量%以下とすることができる。
イソプロパノール水溶液の第1の製造方法における微生物発酵においては、例えば、イソプロパノール生産能を有する任意の組換え微生物であってもよい。前記組換え微生物におけるイソプロパノール生産能は、微生物が元々有しているイソプロパノール生産経路を改変(例えば増強)したものであっても、微生物に新たにイソプロパノール生産経路を導入したものでもよい。このような改変及び導入は、遺伝子組換えによって行うことができる。具体的には、イソプロパノール生産経路に関係する酵素の遺伝子、転写調節因子等のDNAの改変又は導入を、プラスミド等公知の手段を用いて行うことができる。
前記組換え微生物としては、例えばイソプロパノールを生産するためのイソプロパノール生産系を備えた大腸菌が好適なものとして挙げられる。その例としては、国際公開第2009/008377号、国際公開第2011/034031号、国際公開第2011/111,638号、及び国際公開第2012/020833号等の公報に記載されたイソプロパノール生産大腸菌が挙げられる。大腸菌は本来イソプロパノールを生産する系を有していないため、本発明におけるイソプロパノール生産大腸菌は、遺伝子組換えにより導入又は改変したイソプロパノール生産能力を保有する大腸菌である。このようなイソプロパノール生産系は、対象となる大腸菌にイソプロパノールを生産させるものであればいずれのものであってもよい。また、イソプロパノール生産系の少なくとも一部が、遺伝子組み換えによる導入又は改変されていればよい。遺伝子組換えによる導入又は改変には公知の方法を用いることができ、例えばゲノムへの相同組換え、プラスミドによる導入等が挙げられる。
前記イソプロパノール生産大腸菌は、好ましくは、イソプロパノールの生産に関与する酵素活性を強化した大腸菌である。「遺伝子組換えにより」とは、生来の遺伝子の塩基配列に対して異なる配列を有する外来の塩基配列の挿入、あるいは遺伝子のある部分の置換、欠失又はこれらの組み合わせによって塩基配列上の変更が生じているものであれば全て包含し、例えば、突然変異が生じた結果得られたものであってもよい。
前記イソプロパノール生産大腸菌は、アセト酢酸デカルボキシラーゼ活性、イソプロパノールデヒドロゲナーゼ活性、CoAトランスフェラーゼ活性及びチオラーゼ活性の4種類の酵素活性が、菌体外から付与され若しくは菌体内において発現増強され、又はこれら双方がなされていることが更に好ましい。
ここでチオラーゼとは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号2.3.1.9に分類され、アセチルCoAからアセトアセチルCoAを生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
アセト酢酸デカルボキシラーゼとは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号4.1.1.4に分類され、アセト酢酸からアセトンを生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
アセト酢酸デカルボキシラーゼとは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号4.1.1.4に分類され、アセト酢酸からアセトンを生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
イソプロパノールデヒドロゲナーゼとは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.1.1.80に分類され、アセトンからイソプロパノールを生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
CoAトランスフェラーゼとは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号2.8.3.8に分類され、アセトアセチルCoAからアセト酢酸を生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
CoAトランスフェラーゼとは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号2.8.3.8に分類され、アセトアセチルCoAからアセト酢酸を生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
イソプロパノール生産系を備えているイソプロパノール生産大腸菌の例として、WO2009/008377号に記載のpIPA/B株又はpIaaa/B株を例示できる。また、該大腸菌の例には、イソプロパノールの生産に関与する酵素のうち、CoAトランスフェラーゼ活性とチオラーゼ活性の増強は該大腸菌のゲノム上の各遺伝子の発現を強化することで行い、イソプロパノールデヒドロゲナーゼ活性とアセト酢酸デカルボキシラーゼ活性の増強は各遺伝子の発現をプラスミドで強化した株(pIa/B::atoDAB株と呼ぶことがある)を含む。
更に効果的にイソプロパノール生産性を向上させた組換え大腸菌を使用してもよく、そのような例として不活化されたGntR活性、不活化されたグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(Pgi)活性、不活化されたホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(Gnd)活性と強化されたグルコース−6−リン酸−1−デヒドロゲナーゼ(Zwf)活性が挙げられる。これらの組み合わせにより、これ以外の各因子又は酵素の組み合わせと比してイソプロパノールの生産性を驚異的に向上させることできる。
グルコース−6−リン酸イソメラーゼ(Pgi)とは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号5.3.1.9に分類され、D−グルコース−6−リン酸からD−フルクトース−6−リン酸を生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
グルコース−6−リン酸−1−デヒドロゲナーゼ(Zwf)とは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.1.1.49に分類され、D−グルコース−6−リン酸からD−グルコノ−1,5−ラクトン−6−リン酸を生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
グルコース−6−リン酸−1−デヒドロゲナーゼ(Zwf)の遺伝子としては、上述した各由来生物から得られるチオラーゼをコードする遺伝子の塩基配列を有するDNA又はその公知の塩基配列に基づいて合成された合成DNA配列を利用することができる。
ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(Gnd)とは、国際生化学連合(I.U.B.)酵素委員会報告に準拠した酵素番号1.1.1.44に分類され、6−ホスホ−D−グルコン酸からD−リブロース−5−リン酸とCO2を生成する反応を触媒する酵素の総称を指す。
イソプロパノール生産大腸菌の好ましい態様としては、上記pIPA/B株、pIaaa/B株又はpIa/B::atoDAB株のGntR活性を不活化した株又はpIa/B::atoDAB株のGntR活性とグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(Pgi)活性を不活化し、グルコース−6−リン酸−1−デヒドロゲナーゼ(Zwf)活性を強化した株又はpIa/B::atoDAB株のGntR活性とグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(Pgi)活性とホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(Gnd)活性を不活化し、グルコース−6−リン酸−1−デヒドロゲナーゼ(Zwf)活性を強化した株などが挙げられる。
イソプロパノール水溶液の第1の製造方法における微生物発酵は、イソプロパノール生産微生物を用いた培養により植物由来原料等の原料からイソプロパノールを生産するものである。
植物由来原料を用いる場合、具体的には、植物由来原料を含有する基質液を培養槽に供給してイソプロパノール生産微生物を培養する。培養は、基質液を全量最初から培養槽に供給しておき、発酵終了後に細胞懸濁液を取り出すバッチ式で行ってもよいし、基質液を連続的に培養槽に供給し、発酵終了後に細胞懸濁液を取り出すセミバッチ式で行ってもよいし、基質液を連続的に培養槽に供給し、培養槽から細胞懸濁液を連続的に抜き出す連続式で行ってもよい。連続式の場合、供給された基質液と等量の細胞懸濁液を培養槽から抜取ることにより、培養槽内で液量をほぼ一定とすることができる。
植物由来原料を用いる場合、具体的には、植物由来原料を含有する基質液を培養槽に供給してイソプロパノール生産微生物を培養する。培養は、基質液を全量最初から培養槽に供給しておき、発酵終了後に細胞懸濁液を取り出すバッチ式で行ってもよいし、基質液を連続的に培養槽に供給し、発酵終了後に細胞懸濁液を取り出すセミバッチ式で行ってもよいし、基質液を連続的に培養槽に供給し、培養槽から細胞懸濁液を連続的に抜き出す連続式で行ってもよい。連続式の場合、供給された基質液と等量の細胞懸濁液を培養槽から抜取ることにより、培養槽内で液量をほぼ一定とすることができる。
基質液のフィードの方法は、特に限定されるものではなく、一定速度でフィードするchemo stat法や、炭素源(植物由来原料)のロスを少なくするために断続的にフィードする方法などが挙げられる。断続的にフィードする方法としては、例えば、pHstat法が挙げられる。このpHstat法は、炭素源(植物由来原料)をフィードして一旦停止したときに培養槽内の炭素源(植物由来原料)が枯渇すると生ずるpHの上昇及び溶存酸素濃度の上昇、排気二酸化炭素濃度の低下を指標として、フィードを再開する方法である。
上記の「連続的な供給」又は「連続的な抜き取り」との用語には、培養槽内の液量がほぼ一定に維持されている限り、如何なる態様のフィード方法も包含される。なお、「培養槽内の液量がほぼ一定」とは、イソプロパノール製造開始における培養槽内の液量と比較したときの液量の変動が0容量%〜10容量%の範囲内を意味し、連続運転の安定性の観点から好ましくは0容量%〜5容量%の範囲内を意味する。
培養槽の容量(大きさ)としては、特に制限はなく、物質生産に通常用いられる培養槽が適用可能である。また、培養槽に充填される液の液量は、用いられる培養槽の容量に応じて適宜設定可能である。
なお、基質液の糖濃度や培養槽内の温度、pHなどの培養条件は、定常状態が維持できれば特に制限はなく、当該業者が容易に類推できる条件でよい。
微生物発酵における培養は、イソプロパノールの生産効率の観点から、好気培養であることが好ましい。本発明において好気培養とは、空気または酸素がある状態で行う培養を意味し、菌体の酸素摂取速度が1mmol/L/h以上となる酸素がある状態を指す。酸素摂取速度(oxygene uptake rate:OUR)とは、単位時間、単位細胞懸濁液あたりに菌体が消費する酸素の量を示す。OURは排ガス分析法によって以下の式2から求めたものを用いる。
(式2)
OUR=7.22×106/V×(QiPiyi/Ti−QoPoyo/To)
V:培養槽中の液量(L)
Qi:空気入口における空気流量(L/min)
Qo:空気出口における空気流量(L/min)
Pi:空気入口における空気圧(MPa)
Po:空気出口における空気圧(MPa)
Ti:空気入口における絶対温度(K)
To:空気出口における絶対温度(K)
yi:空気入口における酸素のモル分率
yo:空気出口における酸素のモル分率
なお上記式2に基づいてOURを求める際に、空気流量、空気圧、絶対温度の値が空気入り口及び出口で無視できる程度の差しかないときには1カ所での測定値を適用してもよい。また、上記圧力及び空気圧は、絶対圧力を指す。
OUR=7.22×106/V×(QiPiyi/Ti−QoPoyo/To)
V:培養槽中の液量(L)
Qi:空気入口における空気流量(L/min)
Qo:空気出口における空気流量(L/min)
Pi:空気入口における空気圧(MPa)
Po:空気出口における空気圧(MPa)
Ti:空気入口における絶対温度(K)
To:空気出口における絶対温度(K)
yi:空気入口における酸素のモル分率
yo:空気出口における酸素のモル分率
なお上記式2に基づいてOURを求める際に、空気流量、空気圧、絶対温度の値が空気入り口及び出口で無視できる程度の差しかないときには1カ所での測定値を適用してもよい。また、上記圧力及び空気圧は、絶対圧力を指す。
OURは10mmol/L/h〜250mmol/L/hであることが好ましく、20mmol/L/h〜200mmol/L/hであることがより好ましく、50mmol/L/h〜200mmol/L/hであることがより好ましく、100mmol/L/h〜180mmol/L/hであることが更に好ましい。
微生物発酵で用いられる植物由来原料は、植物から得られる炭素源であり、植物由来原料であれば特に制限されない。本発明においては、根、茎、幹、枝、葉、花、種子等の器官、それらを含む植物体、それら植物器官の分解産物を指し、更に植物体、植物器官、またはそれらの分解産物から得られる炭素源のうち、微生物が培養において炭素源として利用し得るものも、植物由来原料に包含される。
このような植物由来原料に包含される炭素源には、一般的なものとしてデンプン、スクロース、グルコース、フルクトース、キシロース、アラビノース等の糖類、及びこれら成分を多く含む草木質分解産物、セルロース加水分解物など、並びに、これらの組み合わせを挙げることができ、更には植物油由来のグリセリン又は脂肪酸も、上記炭素源に含んでもよい。
植物由来原料の例示としては、穀物等の農作物、トウモロコシ、米、小麦、大豆、サトウキビ、ビート、綿等、及びこれらの組み合わせを好ましく挙げることができ、その原料としての使用形態は、未加工品、絞り汁、粉砕物等、特に限定されない。また、上記の炭素源のみの形態であってもよい。
イソプロパノール生産微生物の培養に用いられる培地としては、炭素源、窒素源、無機イオン、及び乳酸を生産するために微生物が要求する有機微量元素、核酸、ビタミン類等が含まれた通常用いられる培地であれば特に制限はない。
微生物発酵における培養に際して、pH、温度条件は特別の制限はなく、例えばpH4〜9、好ましくはpH6〜8、温度20℃〜50℃、好ましくは25℃〜42℃、圧力0〜5MPa、好ましくは0〜3MPaの範囲内でpHと温度を適切に制御しながら培養することができる。
微生物発酵における培養に際して、pH、温度条件は特別の制限はなく、例えばpH4〜9、好ましくはpH6〜8、温度20℃〜50℃、好ましくは25℃〜42℃、圧力0〜5MPa、好ましくは0〜3MPaの範囲内でpHと温度を適切に制御しながら培養することができる。
培養槽へ供給される基質液は、炭素源となる植物由来原料を含む溶液のみであってもよく、また、炭素源となる植物由来原料を含む溶液と前記培地との混合液であってもよい。より効率的な培養を行うためには、前記植物由来原料を含む培地を基質液として供することが好ましい。
培養槽へ供給される場合、基質液における植物由来原料の量は、該原料の溶解度の観点から、炭素源として60質量%以下とすることができ、イソプロパノール生産性の観点から5質量%〜50質量%とすることができる。
培養槽へ供給される場合、基質液における植物由来原料の量は、該原料の溶解度の観点から、炭素源として60質量%以下とすることができ、イソプロパノール生産性の観点から5質量%〜50質量%とすることができる。
前記細胞懸濁液中への気体の通気量は、特に制限はないが、通気攪拌槽で培養し、気体として空気のみを用いる場合には、一般的に0.02vvm〜3.0vvm(vvm;通気容量〔mL〕/液容量〔mL〕/時間〔分〕)であり、好ましくは0.1vvm〜2.0vvmである。培養装置の種類により、適したOURに調整するための通気量は異なるが、例えば気泡塔で培養する場合の通気量の一例として、0.02vvm〜10.0vvmに調整することが挙げられる。
培養は、培養開始から細胞懸濁液中の植物由来原料が消費されるまで、又はイソプロパノール生産微生物の活性がなくなるまで継続させることができる。培養工程の期間は、混合物中のイソプロパノール生産微生物の数及び活性並びに、植物由来原料の量により異なるが、一般に、1時間以上、好ましくは4時間以上であればよい。一方、植物由来原料又はイソプロパノール生産微生物の再投入を行うことによって、培養期間は無制限に連続することができるが、処理効率の観点から、一般に5日間以下、好ましくは72時間以下とすることができる。その他の条件は、通常の培養に用いられる条件をそのまま適用すればよい。
前記培養槽から細胞懸濁液を抜き取り、遠心分離等により細胞を除去することにより、イソプロパノール、アセトン及び水を含む培養液を得ることができる。この培養液中には、イソプロパノール、アセトン及び水以外にも、植物由来原料、培地成分等が存在しており、具体的には糖類、有機酸、アンモニア、無機塩などが含まれうる。
本開示においては、培養槽中に格納された細胞を含む懸濁液を細胞懸濁液と称し、細胞懸濁液のうち細胞以外の部分を培養液と称する。培養液は、細胞懸濁液を公知の方法により遠心分離して細胞を除去することにより得ることができる。
イソプロパノール水溶液の第1の製造方法は、接触水素化によりイソプロパノール水溶液に変換する工程の前に、イソプロパノール、アセトン及び水を含む培養液を膜精製する工程(以下単に膜精製工程Aとも称する)をさらに含んでいてもよい。膜精製工程Aにより、培養液中に含まれるイソプロパノール、アセトン及び水以外の成分をさらに低減することができる。膜精製に用いる膜としては、精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)、ナノフィルター(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)から選ばれる1種又は複数種を用いることが出来る。無機塩など微小成分まで除去する観点から、ナノフィルター及び逆浸透膜から選ばれる1種又は複数種を用いることが好ましく、ナノフィルターと逆浸透膜の両方を用いる(例えば、ナノフィルターで処理した培養液をさらに逆浸透膜で処理する)ことがさらに好ましい。
また、イソプロパノール水溶液の第1の製造方法は、接触水素化によりイソプロパノール水溶液に変換する工程の前に、イソプロパノール、アセトン及び水を含む培養液を蒸留に供する工程(以下単に蒸留工程Pとも称する)をさらに含んでいてもよい。蒸留工程Pにより、培養液中に含まれるイソプロパノール、アセトン及び水以外の成分をさらに低減することができる。蒸留の条件は、培養液からイソプロパノールを含む留分が効率よく得られる条件とすればよい。水の沸点に比べてイソプロパノール及びアセトンの沸点は低いため、蒸留により、蒸留前よりも水の含有率が低下したイソプロパノール含有留分を得ることが可能である。
膜精製工程Aと蒸留工程Pを両方行う場合には、その順序は限定されるわけではないが、膜精製を先に行い、膜精製された培養液を蒸留することがイソプロパノール、アセトン及び水以外の成分の除去効率の観点から好ましい。膜精製工程A及び蒸留工程Pのうちの少なくとも1つを行って得られる溶液は、培養槽から抜き出した細胞懸濁液から細胞を除去した液体そのもの(粗培養液)ではもはやなく、精製培養液とも呼べるものであるが、本開示においては「培養液」の用語の指す範囲にはこのような精製培養液も含まれる。なお、粗培養液に対して行う処理は、上記の膜精製及び蒸留に限定はされず、これら以外の処理を行ってもよい。膜精製及び蒸留以外の処理を行った場合でも、接触水素化にまだ供されていない溶液については本開示において培養液と称する。
粗培養液中におけるイソプロパノール及びアセトンの濃度は培養条件によって大きく変わりうるが、アセトンの量はイソプロパノールの量に対して、通常、5質量%〜20質量%程度含まれる。上記の蒸留を行っても、通常、イソプロパノールの量に対して2質量%〜10質量%程度の量のアセトンが残留してしまう。
イソプロパノール水溶液の第1の製造方法においては、イソプロパノール、アセトン及び水を含む培養液を接触水素化することにより、イソプロパノール及び水から実質的になるイソプロパノール水溶液を得る。接触水素化により、イソプロパノールの量に対するアセトンの量は1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%、さらに好ましくは0.01質量%以下、いっそう好ましくは0.001質量%以下とすることができる。
接触水素化は、触媒の存在下で気相を水素に置換することにより行うことができる。接触水素化に使用する触媒としては、接触水素化によりアセトンをイソプロパノールに変換する目的を達成できるものである限り制限はなく、例えば、金属種としてRu、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、Au、Co、Ni、及びCuのうち1種又は2種以上を含む触媒を使用することができる。さらにAl、Zn、Crなどの追加の金属種を含んでいても構わない。また、これらの触媒は、均一触媒であっても不均一触媒であってもよく、それぞれ単独で使用しても2種以上を併用しても構わない。不均一触媒は、反応後に濾過などの簡便な方法により触媒を除去できるため好ましい。
具体的な触媒としては、例えば、Pd/C、Pd/Al2O3、Ni/Al2O3、Ru/Al2O3、酸化白金、白金黒、ラネーニッケル、ラネーコバルト、Cu−酸化亜鉛、Cu−酸化クロムなどが挙げられる。これらのうち、Pd/C、Pd/Al2O3、Ni/Al2O3、酸化白金、ラネーニッケル、ラネーコバルト、Cu−酸化亜鉛、及びCu−酸化クロムが好ましく、Pd/C、Pd/Al2O3、Ni/Al2O3、Ru/Al2O3、ラネーニッケル、ラネーコバルト、Cu−酸化亜鉛、及びCu−酸化クロムがより好ましい。触媒の使用量は、例えば、接触水素化に供される培養液の質量に対して0.2質量%〜10質量%とすることができる。
具体的な触媒としては、例えば、Pd/C、Pd/Al2O3、Ni/Al2O3、Ru/Al2O3、酸化白金、白金黒、ラネーニッケル、ラネーコバルト、Cu−酸化亜鉛、Cu−酸化クロムなどが挙げられる。これらのうち、Pd/C、Pd/Al2O3、Ni/Al2O3、酸化白金、ラネーニッケル、ラネーコバルト、Cu−酸化亜鉛、及びCu−酸化クロムが好ましく、Pd/C、Pd/Al2O3、Ni/Al2O3、Ru/Al2O3、ラネーニッケル、ラネーコバルト、Cu−酸化亜鉛、及びCu−酸化クロムがより好ましい。触媒の使用量は、例えば、接触水素化に供される培養液の質量に対して0.2質量%〜10質量%とすることができる。
接触水素化は常圧(大気圧)で行っても、加圧した水素下で行っても構わない。また、接触水素化の温度は特に限定されず、常温(例えば25℃)であっても、加熱下(例えば40℃〜80℃)であっても構わない。常圧かつ常温にて接触水素化を行うことは、特殊な設備を設ける必要がなくなる観点から好ましい。
また、接触水素化を行う時間は特に限定されず、例えば10分〜5時間とすることができる。接触水素化の詳細については、例えば、特許第2786272号公報の記載を参照してもよい。
また、接触水素化を行う時間は特に限定されず、例えば10分〜5時間とすることができる。接触水素化の詳細については、例えば、特許第2786272号公報の記載を参照してもよい。
特に、接触水素化される培養液が、上記の精製培養液である場合などは、接触水素化により得られるイソプロパノール水溶液における、イソプロパノールの純度(水を除いて考えた純度)をさらに向上させることができる。
接触水素化により得られたイソプロパノール水溶液をさらに膜精製工程に供してもよい(この工程を膜精製工程Bとも称する)。膜精製工程Bの条件としては、膜精製工程Aの説明に記載された条件と同様の条件を例示として挙げることができる。膜精製工程Bは、膜精製工程Aの代わりに又は膜精製工程Aに加えて行ってもよい。膜精製工程Bを行うことにより、水溶液中におけるイソプロパノール及び水以外の夾雑物をさらに低減することができる。
接触水素化により得られたイソプロパノール水溶液をさらに蒸留工程に供してもよい(この工程を蒸留工程Qとも称する)。蒸留工程Qの条件としては、蒸留工程Pの説明に記載された条件と同様の条件を例示として挙げることができる。蒸留工程Qは、蒸留工程Pの代わりに又は蒸留工程Pに加えて行ってもよい。蒸留工程Qを行うことにより、水溶液中におけるイソプロパノール及び水以外の夾雑物をさらに低減することができる。膜精製工程Bと蒸留工程Qを両方行う場合には、その順序は限定されるわけではないが、膜精製工程Bを先に行い、膜精製されたイソプロパノール水溶液を蒸留することがイソプロパノール及び水以外の成分の除去効率の観点から好ましい。
このようにして得られた、アセトンが除去されたイソプロパノール水溶液の用途は特に限定されないが、洗浄用途や、印刷版用の湿し水添加剤など、上記で例示された用途等の用途に用いることができる。
<イソプロパノール水溶液の第2の製造方法>
本開示に係るイソプロパノール水溶液の第2の製造方法(以下単に、イソプロパノール水溶液の第2の製造方法とも称する)は、微生物発酵中の通気により培養槽から排出されたガスに含まれるイソプロパノール及びアセトンを含む低沸点成分を水により捕捉した水溶液を接触水素化することにより、イソプロパノール及び水から実質的になる水溶液に変換する工程を含む。
本開示に係るイソプロパノール水溶液の第2の製造方法(以下単に、イソプロパノール水溶液の第2の製造方法とも称する)は、微生物発酵中の通気により培養槽から排出されたガスに含まれるイソプロパノール及びアセトンを含む低沸点成分を水により捕捉した水溶液を接触水素化することにより、イソプロパノール及び水から実質的になる水溶液に変換する工程を含む。
微生物発酵のための培養の最中に通気を行う場合、培養槽にガスが供給され、また、培養槽からガスが排出される。培養槽に供給されるガスは、空気であっても、空気よりも酸素濃度を増加させたガスであってもよい。培養槽から排出されたガスには、細胞懸濁液から蒸発した成分も含まれ、この中にはイソプロパノール、アセトンなどの低沸点成分が含まれる。ここで、低沸点成分とは1気圧において水の沸点(100℃)よりも低い沸点を有する成分のことを指す。培養槽から排出されたガスに含まれるこれらの低沸点成分は、水により捕捉することができる。
前記混合物にガス(気体)を供給しながらイソプロパノール生産微生物を培養(通気培養)するために適用可能な培養装置としては、培養槽と、培養槽に連結されて培養槽内の混合液の内部に気体を供給する供給路と、前記培養槽に連結されて培養槽内の気体を回収する回収路を備えている培養装置を挙げることができる。このような培養装置としては、例えば、図1に示される培養装置を挙げることができる。
図1は、通気培養に適用可能な培養装置の一例(培養装置10)を概念的に図示したものである。培養装置10は、培養槽12とトラップ槽40とを備えており、培養槽12とトラップ槽40とは連結管30で連結されている。培養槽12及びトラップ槽40は、内部の雰囲気が槽の外部へ漏れ出ないように密閉可能とされている。
培養槽12の内部には、イソプロパノール生産微生物Bと植物由来原料Mとを含む混合物14(細胞懸濁液)が収容されている。混合物14の量は、培養槽12の容量の約半量となる量で充填されていればよく、培養槽12の容量や培養装置10の規模に応じて適宜調整すればよい。培養槽12は、微生物を用いて工業的に物質を生産するために通常用いられる物質で構成されていればよく、特に限定されない。また培養装置10は、常温常圧で処理可能であればよいが、必要に応じて加熱加圧も可能なように加熱装置又は加圧装置を備えたものであってもよい。
培養槽12には、装置外部から気体を注入するための注入管16が連結されている。注入管16の一端は培養装置10の外部に備えられた図示しないエアレーション装置に接続されている。注入管16の他端は、培養槽12の内部の底部周辺に開口している。培養槽12に収容される混合物14の液面は、注入管16の開口部よりも上方となるように混合物14の容量は予め調整されている。
また培養槽12には、培養槽12の外部に設けられたモータ部22と、モータ部22に連結した攪拌部24とを備えた攪拌装置20が備えられている。攪拌部24は、プロペラ羽根などの形状を採り、培養槽12の底部周辺に配置されている。
モータ部22には、図示しない駆動制御装置が接続されており、攪拌部24を所定の回転数で回転させるようにモータ部22の駆動を制御している。攪拌部24の回転数は、特に制限はないが、一般的に100rpm〜1,000rpmであり、200rpm〜800rpmで行うことが好ましい。
トラップ槽40の内部には、捕捉液としてのトラップ液42が収容されている。トラップ槽40の上部には、トラップ槽40内の気体をトラップ槽40外部へ排出するための排出管44が取り付けられている。
連結管30の一端は、培養槽12の上部で開口しており、培養槽12内の気体を培養槽12外部へ誘導可能にしている。また連結管30の他端は、トラップ槽40の底部周辺に延伸して開口しており、トラップ槽40に収容される捕捉液の液面は、連結管30の開口部よりも上方となるように予め調整されている。
なお、連結管30には、積極的に連結管30の内部を冷却する冷却器が備えられていてもよい。これにより連結管30を気体が通過する際に、気体を積極的に液化することができる。
なお、連結管30には、積極的に連結管30の内部を冷却する冷却器が備えられていてもよい。これにより連結管30を気体が通過する際に、気体を積極的に液化することができる。
次に、培養装置10の作用について説明する。培養装置10の培養槽12に、イソプロパノール生産微生物Bと植物由来原料Mを含む混合物14を、混合物14の液面が注入管16の端部よりも充分に上となる位置まで注入する。攪拌装置20のモータ部22の電源をオンにして、攪拌部24を所定の回転数で回転させる。なお、培養槽12に予め所定量の培地を収容しておき、適温に調整しておいてから、所定の合計量となるようにイソプロパノール生産微生物Bと植物由来原料Mとを含む混合物を添加して混合物14としてもよい。
所定量の混合物14を培養槽12に収容し、図示しないエアレーション装置の電源をオンにして培養槽12へ気体を注入する。これにより、培養槽12の内部において、混合物中に気体が注入されて、通気培養を開始する。
通気培養を開始すると、混合物14中では、イソプロパノール生産微生物Bが植物由来原料を資化しながらイソプロパノールの生産を開始する。生産されたイソプロパノールは菌体から混合物中に放出されるが、その一部は混合物に溶解し、大部分は混合物から蒸散する。これにより、イソプロパノールが混合物から分離する。混合物から分離したイソプロパノールは、培養槽12上部から、通気培養の排気として連結管30に進入して、トラップ槽40へ移動する。
連結管30を通過する際に、排気中のイソプロパノールの一部は冷却されて液化する。
連結管30を通過する際に、排気中のイソプロパノールの一部は冷却されて液化する。
トラップ槽40へ移動した排気中のイソプロパノールは、トラップ槽40の底部に開口する連結管30の他端からトラップ槽40に進入し、トラップ液42(例えば水)中へ注入される。このときトラップ液42では、排気の注入によりバブリングが生じる。このときイソプロパノール及びアセトンは、トラップ液42に溶解する。一方、イソプロパノール及びアセトンと共に培養槽12からトラップ槽40へ移動した排気中の揮発性の夾雑物のうちイソプロパノール及びアセトン以外の成分は、トラップ液への溶解度が高くないため、トラップ液42から気相へと放出され、トラップ槽40上部に開口した排出管44を通して最終排気としてトラップ槽40の外部へ排出される。
培養槽12内で発生するイソプロパノールの量を、図示しない採取機構で採取しながら確認し、イソプロパノールの生産が終了もしくは低下したことが確認できた場合、又は所定時間の経過後に、処理を終了する。
処理終了後のトラップ液42には、イソプロパノール及びアセトンが溶解している。イソプロパノール水溶液の第2の製造方法によれば、このトラップ液42の水溶液を接触水素化することで、アセトンをイソプロパノールに変換し、イソプロパノール及び水から実質的になる水溶液を得ることができる。ここでいう「イソプロパノール及び水から実質的になる」は、上記(イソプロパノール水溶液の第1の製造方法の説明中)で定義したとおりの意味を有する。
イソプロパノール水溶液の第2の製造方法における接触水素化の条件、使用する触媒等の詳細については、イソプロパノール水溶液の第1の製造方法における接触水素化の説明において記載した事項を適用することができる。また、イソプロパノール水溶液の第2の製造方法において、接触水素化の前及び/又は後に追加しうる任意工程、得られる水溶液の成分濃度、水溶液の用途等の詳細についても、イソプロパノール水溶液の第1の製造方法の説明において記載した事項を適用することができる。トラップ液42のように、微生物発酵中の通気により培養槽から排出されたガスに含まれるイソプロパノール及びアセトンを含む低沸点成分を水により捕捉した水溶液(以下トラップ水とも称する)においても、イソプロパノールと共にアセトンが共在している。このため、水以外の成分中において高い純度を有するイソプロパノールは、上記水溶液から製造することは困難と考えられてきた。しかし、イソプロパノール水溶液の第2の製造方法によれば、接触水素化によりアセトンをイソプロパノールに変換することでアセトンを除去できる。このように、接触水素化を用いてトラップ水中でイソプロパノールと共在するアセトンを除去する試みはこれまでなされたことはなかった。
イソプロパノール水溶液の第2の製造方法においては、トラップ水中に含まれる成分は培養温度においてある程度の蒸気圧を有し、かつ水溶性の成分に限定されるため、トラップ水中においてイソプロパノール及びアセトン以外の夾雑物の量は細胞懸濁液中と比べて低下している。このため、イソプロパノール水溶液の第2の製造方法により、イソプロパノール及び水から実質的になる水溶液を得ることができる。
なお、図1における培養槽12内の混合物14は、イソプロパノール水溶液の第1の製造方法に使用して、イソプロパノール水溶液の製造に用いてもよい。
培養装置10に設けられた培養槽12、トラップ槽40、連結管30等の各部品、部材の形状は、初期の作用を損なわない限り適宜変更することができる。
また、培養装置10に、混合物14又はイソプロパノール生産微生物を培養槽12へ連続的に投入するための投入部や排出部を設けてもよい。これにより、イソプロパノールの連続的な生産が可能となる。
また、培養装置10に、混合物14又はイソプロパノール生産微生物を培養槽12へ連続的に投入するための投入部や排出部を設けてもよい。これにより、イソプロパノールの連続的な生産が可能となる。
<イソプロパノールの製造方法>
本開示に係るイソプロパノールの製造方法は、イソプロパノール水溶液の第1の製造方法又はイソプロパノール水溶液の第2の製造方法により得られたイソプロパノール水溶液に対して蒸留及び膜分離を行い、含水率0.1質量%以下のイソプロパノールを得る工程を含む。
本開示に係るイソプロパノールの製造方法は、イソプロパノール水溶液の第1の製造方法又はイソプロパノール水溶液の第2の製造方法により得られたイソプロパノール水溶液に対して蒸留及び膜分離を行い、含水率0.1質量%以下のイソプロパノールを得る工程を含む。
イソプロパノール水溶液の第1の製造方法又はイソプロパノール水溶液の第2の製造方法により得られたイソプロパノール水溶液は、上記のとおり、水を除いて考えたイソプロパノールの純度が高く、例えば、水以外の成分の総量中におけるイソプロパノールの量の割合が90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上、いっそう好ましくは99.5質量%以上とすることができる。
しかしながら、イソプロパノールの用途によっては水の共在も許容されない場合があり、前記イソプロパノール水溶液から水を除去することが必要となりうる。例えばJIS K1522(2012)においては、イソプロパノールの規格として水分が1.0質量%であることが求められている。水とイソプロパノールとは共沸混合物を形成するため、単に蒸留しただけでは一定程度以上には水を除去することができない。
そこで、イソプロパノール水溶液に対して蒸留に代えて膜透過を行うことにより、又は蒸留に加えて膜透過を行うことにより、水分の除去を行う。膜透過技術としては、例えば、パーべーパレーション(透過気化)技術を利用して水分の除去を行う。パーべーパレーション技術によりイソプロパノールから水分を除去する場合、水分を吸着するポリマー膜又はセラミック膜を用いて、イソプロパノールが膜透過する際にイソプロパノールを蒸発させ、一方、水分は膜透過させない。この結果、膜の透過側のイソプロパノールを回収することで、イソプロパノールからの水分の除去を行うことができる。イソプロパノールの膜透過の際にイソプロパノールを蒸発させるには、典型的には膜透過側の空間を減圧すればよい。パーベーパレーションの条件等については、パーベーパレーションにおいて一般的に使用されている条件を適用すればよい。パーべーパレーション技術によれば、共沸混合物を形成する成分間であっても分離することが可能である。パーべーパレーション技術に使用可能な膜は、有限会社桐山製作所、株式会社三井E&Sパワーシステムズなどから市販されている。
そこで、イソプロパノール水溶液に対して蒸留に代えて膜透過を行うことにより、又は蒸留に加えて膜透過を行うことにより、水分の除去を行う。膜透過技術としては、例えば、パーべーパレーション(透過気化)技術を利用して水分の除去を行う。パーべーパレーション技術によりイソプロパノールから水分を除去する場合、水分を吸着するポリマー膜又はセラミック膜を用いて、イソプロパノールが膜透過する際にイソプロパノールを蒸発させ、一方、水分は膜透過させない。この結果、膜の透過側のイソプロパノールを回収することで、イソプロパノールからの水分の除去を行うことができる。イソプロパノールの膜透過の際にイソプロパノールを蒸発させるには、典型的には膜透過側の空間を減圧すればよい。パーベーパレーションの条件等については、パーベーパレーションにおいて一般的に使用されている条件を適用すればよい。パーべーパレーション技術によれば、共沸混合物を形成する成分間であっても分離することが可能である。パーべーパレーション技術に使用可能な膜は、有限会社桐山製作所、株式会社三井E&Sパワーシステムズなどから市販されている。
本開示に係るイソプロパノールの製造方法によれば、例えば90質量%以上という高い純度のイソプロパノールを得ることができる。こうして得られた高純度イソプロパノールの用途は特に限定されず、洗浄剤、希釈剤等として用いることができる。つまり、一実施形態においては、前記イソプロパノール水溶液の第1の製造方法又は前記イソプロパノール水溶液の第2の製造方法により得られたイソプロパノール水溶液、及び前記イソプロパノールの製造法により得られたイソプロパノールは、洗浄用途又は希釈用途に(言い換えれば、洗浄剤又は希釈剤として)用いることができる。
[実施例1]
<細胞の培養に用いる培地の組成>
3リットルの培養槽を用い、イソプロパノール生産大腸菌、培地、グルコース、コーンスティープリカー(CSL)からなる混合物及び図1に示す培養装置を用いて、通気培養を行った。イソプロパノール生産大腸菌としては、国際公開第2012/020833号の段落0184の表4に記載のpIa/B::atoDAB ΔgntR株を用いた。この株は、エシェリヒア・コリB株において、イソプロピルアルコールの生産に関与する酵素のうちCoAトランスフェラーゼ活性とチオラーゼ活性の増強は該大腸菌のゲノム上の各遺伝子の発現を強化することで行い、イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ活性とアセト酢酸デカルボキシラーゼ活性の増強は各遺伝子の発現をプラスミドで強化し、さらに転写抑制因子GntRの遺伝子を破壊したものである。培養装置の培養槽は3リットル容のガラス製のものを使用した。通気により培養槽から排出された気体(アウトガス)を捕捉するための3リットル容のトラップ槽には、トラップ液としての水(トラップ水)を1.8Lの量で注入して使用した。なお、培養槽には廃液管を設置して、糖や中和剤の流加により増量した細胞懸濁液を適宜培養槽外に排出した。
前培養としてアンピシリン50μg/mLを含むLB Broth, Miller液体培地(Difco244620)50mLを入れた500mL容三角フラスコに各評価株を植菌し、一晩、培養温度30℃、120rpmで攪拌培養を行った。前培養45mLを、以下に示す組成の培地855gの入った3L容の培養槽(ABLE社製培養装置BMS−PI)に移し、培養を行った。培養は大気圧下、通気量0.9L/min、撹拌速度550rpm、培養温度30℃、pH7.0(NH3水溶液で調整)で行った。培養開始から8時間後までの間、50wt/wt%のグルコース水溶液を10g/L/時間の流速で添加した。その後は50wt/wt%のグルコース水溶液を20g/L/時間の流速で、培養槽内にグルコースがなるべく残存しないように適宜添加した。培養開始から72時間培養を行い、細胞培養液及びトラップ液を得た。
<培地組成> コーンスティープリカー(日本食品化工製):20g/L
Fe2SO4・7H2O:0.1g/L
K2HPO4:2g/L
KH2PO4:2g/L
MgSO4・7H2O:2g/L
(NH4)2SO4:2g/L
アデカノールLG126(株式会社ADEKA)0.1g/L
(残部:水)
遠心分離により細胞培養液から細胞を除去し、HPLCで定法に従って得られた培養液の組成分析を行ったところ、イソプロパノール、アセトン及び水を、それぞれ、4.3質量%、0.4質量%、及び93.4質量%含むことが分かった。なお、その他の含有物として、糖類、有機酸、アンモニア、無機塩などが微量成分として観測された。
<細胞の培養に用いる培地の組成>
3リットルの培養槽を用い、イソプロパノール生産大腸菌、培地、グルコース、コーンスティープリカー(CSL)からなる混合物及び図1に示す培養装置を用いて、通気培養を行った。イソプロパノール生産大腸菌としては、国際公開第2012/020833号の段落0184の表4に記載のpIa/B::atoDAB ΔgntR株を用いた。この株は、エシェリヒア・コリB株において、イソプロピルアルコールの生産に関与する酵素のうちCoAトランスフェラーゼ活性とチオラーゼ活性の増強は該大腸菌のゲノム上の各遺伝子の発現を強化することで行い、イソプロピルアルコールデヒドロゲナーゼ活性とアセト酢酸デカルボキシラーゼ活性の増強は各遺伝子の発現をプラスミドで強化し、さらに転写抑制因子GntRの遺伝子を破壊したものである。培養装置の培養槽は3リットル容のガラス製のものを使用した。通気により培養槽から排出された気体(アウトガス)を捕捉するための3リットル容のトラップ槽には、トラップ液としての水(トラップ水)を1.8Lの量で注入して使用した。なお、培養槽には廃液管を設置して、糖や中和剤の流加により増量した細胞懸濁液を適宜培養槽外に排出した。
前培養としてアンピシリン50μg/mLを含むLB Broth, Miller液体培地(Difco244620)50mLを入れた500mL容三角フラスコに各評価株を植菌し、一晩、培養温度30℃、120rpmで攪拌培養を行った。前培養45mLを、以下に示す組成の培地855gの入った3L容の培養槽(ABLE社製培養装置BMS−PI)に移し、培養を行った。培養は大気圧下、通気量0.9L/min、撹拌速度550rpm、培養温度30℃、pH7.0(NH3水溶液で調整)で行った。培養開始から8時間後までの間、50wt/wt%のグルコース水溶液を10g/L/時間の流速で添加した。その後は50wt/wt%のグルコース水溶液を20g/L/時間の流速で、培養槽内にグルコースがなるべく残存しないように適宜添加した。培養開始から72時間培養を行い、細胞培養液及びトラップ液を得た。
<培地組成> コーンスティープリカー(日本食品化工製):20g/L
Fe2SO4・7H2O:0.1g/L
K2HPO4:2g/L
KH2PO4:2g/L
MgSO4・7H2O:2g/L
(NH4)2SO4:2g/L
アデカノールLG126(株式会社ADEKA)0.1g/L
(残部:水)
遠心分離により細胞培養液から細胞を除去し、HPLCで定法に従って得られた培養液の組成分析を行ったところ、イソプロパノール、アセトン及び水を、それぞれ、4.3質量%、0.4質量%、及び93.4質量%含むことが分かった。なお、その他の含有物として、糖類、有機酸、アンモニア、無機塩などが微量成分として観測された。
<培養液の精製>
上記で得られた培養液を日東電工株式会社製ナノフィルター膜(NF膜)、次いで日東電工株式会社製逆浸透膜(RO膜)で処理し、その後蒸留を行った。留分の組成分析を行ったところ、イソプロパノール、アセトン及び水を、それぞれ、80.6質量%、3.2質量%及び16.2質量%含むことが分かった。実施例1で観測された糖類、有機酸、アンモニア、無機塩は全く観測されなかった。この留分を精製培養液として以下の処理に供した。
上記で得られた培養液を日東電工株式会社製ナノフィルター膜(NF膜)、次いで日東電工株式会社製逆浸透膜(RO膜)で処理し、その後蒸留を行った。留分の組成分析を行ったところ、イソプロパノール、アセトン及び水を、それぞれ、80.6質量%、3.2質量%及び16.2質量%含むことが分かった。実施例1で観測された糖類、有機酸、アンモニア、無機塩は全く観測されなかった。この留分を精製培養液として以下の処理に供した。
<精製培養液の接触水素化>
上記で得られた精製培養液を、マグネチックスターラーを備えた100mlのフラスコに10.0g秤量した。この精製培養液に、触媒としてエヌ・イーケムキャット社製Pd/C(5 % Pd/C粉末 Kタイプ(約54.9%含水品))を0.1g加えた、さらに、気相部を常圧の水素で置換した。その後、室温において、マグネチックスターラーを500rpm(回転/分)の回転数で用いて撹拌することで前記触媒が懸濁した状態で接触水素化反応を行い、3時間後、反応系内を窒素にて置換した。接触水素化反応中は、反応により吸収された分の水素を反応系に補うようにした。濾過により触媒を取り除いた後、濾液の分析を行ったところ、イソプロパノール、アセトン及び水が、それぞれ、83.8質量%、0質量%及び16.2質量%含まれていることが分かった。この結果は、使用した精製培養液中に含まれていたアセトンが全てイソプロパノールに変換されたイソプロパノール水溶液が得られたことを示している。
上記で得られた精製培養液を、マグネチックスターラーを備えた100mlのフラスコに10.0g秤量した。この精製培養液に、触媒としてエヌ・イーケムキャット社製Pd/C(5 % Pd/C粉末 Kタイプ(約54.9%含水品))を0.1g加えた、さらに、気相部を常圧の水素で置換した。その後、室温において、マグネチックスターラーを500rpm(回転/分)の回転数で用いて撹拌することで前記触媒が懸濁した状態で接触水素化反応を行い、3時間後、反応系内を窒素にて置換した。接触水素化反応中は、反応により吸収された分の水素を反応系に補うようにした。濾過により触媒を取り除いた後、濾液の分析を行ったところ、イソプロパノール、アセトン及び水が、それぞれ、83.8質量%、0質量%及び16.2質量%含まれていることが分かった。この結果は、使用した精製培養液中に含まれていたアセトンが全てイソプロパノールに変換されたイソプロパノール水溶液が得られたことを示している。
[実施例2〜実施例7]
接触水素化反応において、表1に示す触媒を、表1に示す質量で使用し、表1に示す反応時間とした以外は全て実施例1と同様に操作し、得られた濾液の分析を行った。表1に示す通り、いずれの触媒を使用した場合にも、精製培養液中に含まれていたアセトンが全てイソプロパノールに変換されたイソプロパノール水溶液が得られたことが分かった。なお、表1中の「エヌ・イーケムキャット社」は、エヌ・イー ケムキャット株式会社を、「日揮触媒化成社」は日揮触媒化成株式会社を表す。
接触水素化反応において、表1に示す触媒を、表1に示す質量で使用し、表1に示す反応時間とした以外は全て実施例1と同様に操作し、得られた濾液の分析を行った。表1に示す通り、いずれの触媒を使用した場合にも、精製培養液中に含まれていたアセトンが全てイソプロパノールに変換されたイソプロパノール水溶液が得られたことが分かった。なお、表1中の「エヌ・イーケムキャット社」は、エヌ・イー ケムキャット株式会社を、「日揮触媒化成社」は日揮触媒化成株式会社を表す。
[実施例8]
<培養中のアウトガスを捕捉した水溶液の組成>
実施例1に記載した培養中には、空気を培養槽に供給して通気を行ったが、培養槽から排出された気体(アウトガス)は、前述のとおり別途備え付けられた水1.8リットルを含む3リットル容のトラップ槽を通過するようにした。このアウトガスには細胞懸濁液中の低沸点成分が含まれており、その組成分析を行ったところ、イソプロパノール、アセトン及び水が、それぞれ、3.6質量%、1.3質量%、及び95.1質量%含まれていることが分かった。
<培養中のアウトガスを捕捉した水溶液の組成>
実施例1に記載した培養中には、空気を培養槽に供給して通気を行ったが、培養槽から排出された気体(アウトガス)は、前述のとおり別途備え付けられた水1.8リットルを含む3リットル容のトラップ槽を通過するようにした。このアウトガスには細胞懸濁液中の低沸点成分が含まれており、その組成分析を行ったところ、イソプロパノール、アセトン及び水が、それぞれ、3.6質量%、1.3質量%、及び95.1質量%含まれていることが分かった。
<アウトガスを捕捉した水溶液の接触水素化>
上記で得られたアウトガスを捕捉した水溶液を10.0g秤量して、マグネチックスターラーを備えた100mlのフラスコに入れた。この水溶液に触媒としてエヌ・イーケムキャット社製Pd/C(5 % Pd/C粉末 Kタイプ(約54.9%含水品))を0.01g加えた、さらに、気相部を常圧の水素で置換した。その後、室温において、マグネチックスターラーを500rpm(回転/分)の回転数で用いて撹拌することで触媒が懸濁した状態で接触水素化反応を行い、3時間後、反応系内を窒素で置換した。接触水素化反応中は、反応により吸収された分の水素を反応系に補うようにした。濾過により触媒を取り除いた後、濾液の分析を行ったところ、イソプロパノール、アセトン及び水が、それぞれ、4.9質量%、0質量%及び95.1質量%含まれていることが分かった。この結果は、アウトガスを捕捉した水溶液に含まれていたアセトンが全てイソプロパノールに変換されたイソプロパノール水溶液が得られたことを示している。
上記で得られたアウトガスを捕捉した水溶液を10.0g秤量して、マグネチックスターラーを備えた100mlのフラスコに入れた。この水溶液に触媒としてエヌ・イーケムキャット社製Pd/C(5 % Pd/C粉末 Kタイプ(約54.9%含水品))を0.01g加えた、さらに、気相部を常圧の水素で置換した。その後、室温において、マグネチックスターラーを500rpm(回転/分)の回転数で用いて撹拌することで触媒が懸濁した状態で接触水素化反応を行い、3時間後、反応系内を窒素で置換した。接触水素化反応中は、反応により吸収された分の水素を反応系に補うようにした。濾過により触媒を取り除いた後、濾液の分析を行ったところ、イソプロパノール、アセトン及び水が、それぞれ、4.9質量%、0質量%及び95.1質量%含まれていることが分かった。この結果は、アウトガスを捕捉した水溶液に含まれていたアセトンが全てイソプロパノールに変換されたイソプロパノール水溶液が得られたことを示している。
[実施例9〜実施例14]
接触水素化反応において、表2に示す触媒を、表2に示す質量で使用し、表2に示す反応時間とした以外は全て実施例8と同様に操作し、得られた濾液の分析を行った。表2に示す通り、いずれの触媒を使用した場合にも、アウトガスを捕捉した水溶液中に含まれていたアセトンが全てイソプロパノールに変換されたイソプロパノール水溶液が得られたことが分かった。なお、表2中の「エヌ・イーケムキャット社」は、エヌ・イー ケムキャット株式会社を、「日揮触媒化成社」は日揮触媒化成株式会社を表す。
接触水素化反応において、表2に示す触媒を、表2に示す質量で使用し、表2に示す反応時間とした以外は全て実施例8と同様に操作し、得られた濾液の分析を行った。表2に示す通り、いずれの触媒を使用した場合にも、アウトガスを捕捉した水溶液中に含まれていたアセトンが全てイソプロパノールに変換されたイソプロパノール水溶液が得られたことが分かった。なお、表2中の「エヌ・イーケムキャット社」は、エヌ・イー ケムキャット株式会社を、「日揮触媒化成社」は日揮触媒化成株式会社を表す。
[実施例15]
<イソプロパノール水溶液の精製によるイソプロパノールの製造>
実施例8におけるアウトガスを捕捉した水溶液を1,000.0g用い、撹拌装置を備えた3,000mlのフラスコを使用し、触媒を1.0g用いた以外は実施例8と同様の操作により接触水素化を行った。得られた濾液の分析を行ったところ、イソプロパノール、アセトン及び水が、それぞれ、4.9質量%、0質量%、及び95.1質量%含まれていることが分かった。この結果は、アウトガスを捕捉した水溶液中に含まれていたアセトンが全てイソプロパノールに変換されたイソプロパノール水溶液が得られたことを示している。
<イソプロパノール水溶液の精製によるイソプロパノールの製造>
実施例8におけるアウトガスを捕捉した水溶液を1,000.0g用い、撹拌装置を備えた3,000mlのフラスコを使用し、触媒を1.0g用いた以外は実施例8と同様の操作により接触水素化を行った。得られた濾液の分析を行ったところ、イソプロパノール、アセトン及び水が、それぞれ、4.9質量%、0質量%、及び95.1質量%含まれていることが分かった。この結果は、アウトガスを捕捉した水溶液中に含まれていたアセトンが全てイソプロパノールに変換されたイソプロパノール水溶液が得られたことを示している。
この4.9質量%のイソプロパノールを含む水溶液を蒸留し、イソプロパノールと水の共沸組成となるイソプロパノール含量87.7質量%の留分を得て、これを三井造船株式会社製ゼオライト膜脱水装置(PVセパレーター)で膜分離処理した。膜通過により得られた成分の組成分析を行ったところ、含水率は0.1質量%以下であり、イソプロパノール水溶液から高純度のイソプロパノールを精製することができたことが分かった。
10 培養装置
12 培養槽
14 混合物
16 注入管
20 攪拌装置
22 モータ部
24 攪拌部
30 連結管
40 トラップ槽
42 トラップ液
44 排出管
B イソプロパノール生産微生物
M 植物由来原料
12 培養槽
14 混合物
16 注入管
20 攪拌装置
22 モータ部
24 攪拌部
30 連結管
40 トラップ槽
42 トラップ液
44 排出管
B イソプロパノール生産微生物
M 植物由来原料
Claims (8)
- 微生物発酵により得られるイソプロパノール、アセトン及び水を含む培養液を接触水素化することにより、イソプロパノール及び水から実質的になるイソプロパノール水溶液に変換する工程を含む、イソプロパノール水溶液の製造方法。
- 前記接触水素化の前に、イソプロパノール、アセトン及び水を含む前記培養液を膜精製する工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
- 前記接触水素化の前に、イソプロパノール、アセトン及び水を含む前記培養液を蒸留に供する工程をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
- 接触水素化によりイソプロパノール水溶液に変換する前記工程の後に、前記イソプロパノール水溶液に対し膜精製及び蒸留のうちの少なくとも1種を行う工程をさらに含む、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の製造方法。
- 微生物発酵中の通気により培養槽から排出されたガスに含まれるイソプロパノール及びアセトンを含む低沸点成分を水により捕捉した水溶液を接触水素化することにより、イソプロパノール及び水から実質的になる水溶液に変換する工程を含む、イソプロパノール水溶液の製造方法。
- 前記接触水素化に用いる触媒がPd、Ni、Co、Ru及びCu−Znから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の製造方法。
- 請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の製造方法により得られたイソプロパノール水溶液に対し蒸留及び膜分離を行うことにより、含水率0.1質量%以下のイソプロパノールを得る工程を含む、イソプロパノールの製造方法。
- 請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の製造方法により得られたイソプロパノール水溶液又は請求項7に記載の製造方法により得られたイソプロパノールの、洗浄剤又は希釈剤としての使用。
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