以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る伐採状況調査用データ作成方法を説明するために示すフローチャートである。実施形態に係る伐採状況調査用データ作成方法について図1に示すフローチャートを参照して説明する。なお、実施形態に係る伐採状況調査用データ作成の対象となる所定の森林域を調査対象森林域と呼ぶことにする。また、当該調査対象森林域は、例えば、カラマツ、アカマツ、スギ、ヒノキなどの高木となる植栽木による森林域であり、ここでは、カラマツを主体とする森林域であるとする。
実施形態に係る伐採状況調査用データ作成方法は、図1に示すように、調査対象森林域における伐採前の樹冠高画像データを取得する伐採前の樹冠高画像データ取得処理(ステップS10)と、調査対象森林域における伐採後の樹冠高画像データを取得する伐採後の樹冠高画像データ取得処理(ステップS20)と、伐採前の樹冠高画像データと伐採後の樹冠高画像データとの差分を取ることによって、一本以上の伐採木の樹冠からなる樹冠領域における樹冠高が表わされている樹冠高差分画像データを作成する樹冠高画像データ差分処理(ステップS30)と、樹冠高画像データ差分処理によって作成された樹冠高差分画像データに存在するノイズを除去して、ノイズが除去されたノイズ除去済みの樹冠高差分画像データを作成するノイズ除去処理(ステップS40)と、ノイズ除去処理によって作成されたノイズ除去済みの樹冠高差分画像データに基づいて、一本以上の伐採木の樹冠からなる樹冠領域を個々の伐採木の樹冠ごとに区分した伐採木樹冠区分画像データを作成する伐採木樹冠区分処理(ステップS50)と、伐採木樹冠区分処理によって作成された伐採木樹冠区分画像データに基づいて、個々の伐採木に関する資源情報を取得する伐採木資源情報取得処理(ステップS60)と、伐採木資源情報取得処理(ステップS60)によって取得された個々の伐採木に関する資源情報に基づいて伐採木資源量の集計処理を行う伐採木資源量の集計処理(ステップS70)と、を有している。
なお、樹冠高画像データ差分処理(ステップS30)において、伐採前の樹冠高画像データと伐採後の樹冠高画像データとの差分を取る際には、地理情報システム(GIS)100から得られる地理的情報(この場合、都道府県などで整備されている森林の管理台帳などに登録されている森林域の境界データ)を用いて、伐採前の樹冠高画像データと伐採後の樹冠高画像データとの差分を取る。
続いて、上述のステップS40の処理、すなわち、ノイズ除去済みの樹冠高差分画像データを作成するノイズ除去処理について説明する。当該ノイズ除去処理(ステップS40)には、樹冠高画像データ差分処理(ステップS30)によって作成された樹冠高差分画像データから、最大樹冠高を抽出する最大樹冠高抽出処理(ステップS41)と、伐採木の樹冠候補とするための樹冠高の閾値(第1閾値とする。)を最大樹冠高に基づいて設定し、樹冠高差分画像データにおいて当該第1閾値以上の樹冠高を有する領域を「伐採木樹冠候補領域」として抽出して、「伐採木樹冠候補領域抽出済みの樹冠高差分画像データ」を作成する伐採木樹冠候補領域抽出処理(ステップS42)と、伐採木樹冠候補領域の面積に閾値(第2閾値とする。)を設定して、伐採木樹冠候補領域の面積が第2閾値未満となっている小面積の伐採木樹冠候補領域を「伐採木樹冠候補領域抽出済みの樹冠高差分画像データ」から除去して、「小面積伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像データ」を作成する小面積伐採木樹冠候補領域除去処理(ステップS43)と、伐採木樹冠候補領域における長手方向長さを当該伐採木樹冠候補領域における短手方向長さで徐算して得られた値に閾値(第3閾値とする。)を設定して、伐採木樹冠候補領域が第3閾値以上の細長い伐採木樹冠候補領域を前記「小面積伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像データ」から除去して、「細長伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像データ」を作成する細長樹冠候補領域除去処理(ステップS44)と、伐採木樹冠候補領域の内側に存在する伐採木候補領域内ノイズを「細長伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像データ」から除去して、「伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像データを」作成する伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去処理(ステップS45)と、が含まれている。
なお、上述した「伐採木樹冠候補領域」というのは、伐採木の樹冠となり得る樹冠の領域であり、当該伐採木樹冠候補領域は、1本の樹木の樹冠によって形成される単木樹冠の領域だけでなく、複数の樹木による樹冠が繋がることによって形成される樹冠の領域も含むものである。
続いて、図1に示したフローチャートにおける各処理(ステップS10〜ステップS70)について説明する。
図1における伐採前の樹冠高画像データ取得処理(ステップS10)で取得する伐採前の樹冠高画像データ及び伐採後の樹冠高画像データ取得処理(ステップS20)で取得する伐採後の樹冠高画像データは、調査対象森林域を含む地域を上空から撮影して得られた伐採前の空撮画像データに基づいて作成する方法や調査対象森林域を含む地域に上空からレーザー光を照射して得られたレーザー計測データに基づいて作成する方法などを例示できるが、実施形態に係る伐採状況調査用データ作成方法においては、調査対象森林域を含む地域を伐採前及び伐採後にそれぞれ上空から撮影した空撮画像データに基づいて作成するものとする。
図2は、伐採前の樹冠高画像データ及び伐採後の樹冠高画像データの作成手順を説明するために示すフローチャートである。図2(a)は伐採前の樹冠高画像データの作成手順を説明するために示すフローチャートであり、図2(b)は伐採後の樹冠高画像データの作成手順を説明するために示すフローチャートである。伐採前の樹冠高画像データの作成手順は、図2(a)に示すように、伐採前の調査対象森林域を含む地域を上空から撮影することにより、伐採前の空撮画像データを作成する伐採前の空撮画像データ作成処理(ステップS11)と、当該伐採前の空撮画像データから伐採前の3次元点群データを作成する伐採前の3次元点群データ作成処理(ステップS12)と、伐採前の3次元点群データと地理情報システム(GIS)100から得られる地理的情報とに基づいて伐採前の調査対象森林域画像データを作成する伐採前の調査対象森林域画像データ作成処理(ステップS13)と、伐採前の調査対象森林域画像データに基づいて、当該調査対象森林域に存在する樹木の樹冠高が表わされている伐採前の樹冠高画像データを作成する伐採前の樹冠高画像データ作成処理(ステップS14)とを有する。
伐採後樹冠高画像データの作成手順も、基本的には、図2(a)と同様であり、それぞれのステップにおいて伐採後のデータを作成する点が異なるだけである。すなわち、図2(b)に示すように、伐採後の空撮画像データを作成する伐採後の空撮画像データ作成処理(ステップS21)と、伐採後の3次元点群データを作成する伐採後の3次元点群データ作成処理(ステップS22)と、伐採後の調査対象森林域画像データを作成する伐採後の調査対象森林域画像データ作成処理(ステップS23)と、伐採後における調査対象森林域に存在する樹木の樹冠高が表わされている伐採後の樹冠高画像データを作成する伐採後の樹冠高画像データ作成処理(ステップS24)とを有する。
ここで、伐採前及び伐採後の空撮画像データから伐採前及び伐採後の3次元点群データを作成する処理についてさらに説明する。
図3は、調査対象森林域を含む地域を上空から撮影した伐採前の空撮画像及び伐採後の空撮画像を示す図である。図3(a)は伐採前の調査対象森林域を含む地域を上空から撮影した伐採前の空撮画像を示す図であり、図3(b)は伐採後の調査対象森林域を含む地域を上空から撮影した伐採後の空撮画像を示す図である。また、図3に示す調査対象森林域はカラマツを主体とする森林域であり、図3(a)は夏(7月初旬)に撮影した空撮画像であり、図3(b)は、秋(11月初旬)に撮影した空撮画像である。
また、図3において、外側の枠線A1で囲まれた領域が調査対象森林域であり、約9.44haの面積となっている。実施形態に係る伐採状況調査用データ作成方法においては、枠線A1で囲まれている調査対象森林域が伐採状況調査用データ作成の対象となる森林域であるとしている。但し、実施形態に係る伐採状況調査用データ作成方法を、より分かり易くするために、調査対象森林域内(枠線A1で囲まれた領域内)の特定の領域を「精度検証地」として、枠線A2で囲まれた領域を設定し、必要に応じて、当該精度検証地(枠線A2で囲まれた領域)において詳細な説明を行う場合もある。精度検証地(枠線A2で囲まれた領域)は、約0.53haの面積となっている。
なお、図3はモノクロ画像であるため、図3においては、季節の変化による樹冠の色の変化が読み取れないが、図3の元となるカラー画像上では、季節による樹冠の色の変化が読み取れる。すなわち、図3(a)は初夏に撮影した空撮画像であるため、カラマツの樹冠は緑となっており、図3(b)は晩秋に撮影した空撮画像であるため、カラマツの樹冠は黄色からさらに茶色となっている。なお、図3(b)は伐採後の空撮画像であるため、調査対象領域内には、樹木が伐採された領域(黒色で表わされている領域)が散在している。
なお、上空から調査対象森林域を含む地域を撮影するには、航空機、ドローンなどを用いることができるが、実施形態に係る伐採状況調査用データ作成方法においては、ドローンを用いることとする。
このようにして、調査対象森林域を含む地域を上空から撮影した伐採前の空撮画像データ及び伐採後の空撮画像データが作成されると、それぞれの空撮画像に対応する空撮画像データから伐採前及び伐採後の3次元点群データをそれぞれ作成する(ステップS12及びステップS22)。なお、3次元点群データの作成は、調査対象地域を含む地域をドローンに搭載されているカメラで、撮影箇所を例えば80%程度を重複させ、かつ、ずらしながら撮影し、その画像データ(空撮画像データ)から、公知の3次元形状復元技術であるSFM(Structure from Motion)によって、歪みのない地図補正されたオルソ画像を作成して、作成したオルソ画像から3次元点群データを作成することができる。
具体的には、伐採前及び伐採後の調査対象森林域を含む地域全体をドローンに搭載されているカメラで、80%程度を重複させ、かつ、ずらしながら数百枚撮影して、その撮影画像から、SFMによって、歪みのない地図補正されたオルソ画像を作成する。このようにして作成されたオルソ画像に基づいて、高さが表わされている伐採前及び伐採後の3次元点群データを作成することができる。なお、SFMについては、下記の公知文献1に記載されている。
公知文献1:Linda G. Shapiro; George C. Stockman (2001). Computer Vision. Prentice Hall.
このようにして作成された伐採前及び伐採後の3次元点群データから図3(a)及び図3(b)における枠線A1で囲まれている調査対象林域の画像データを抽出して、伐採前及び伐採後の調査対象森林域画像データを作成する(ステップS13及びステップS23)。すなわち、伐採前及び伐採後の調査対象森林域画像データは、地理情報システム(GIS)100から得られる地理的情報を用いて、伐採前及び伐採後の3次元点群データから調査対象となる森林域(調査対象森林域)の画像データを抽出して、伐採前及び伐採後の調査対象森林域画像データとする。
このようにして作成された伐採前及び伐採後の調査対象森林域画像データに基づいて、当該調査対象森林域に存在する樹木の樹冠高を表す樹冠高画像データ(伐採前及び伐採後の樹冠高画像データ)を作成する(ステップS14及びステップS24)。
伐採前及び伐採後の樹冠高画像データの作成は、伐採前及び伐採後の調査対象森林域画像データ作成処理(ステップS13及びステップS23)によって作成された伐採前及び伐採後の調査対象森林域画像データに基づいて、伐採前及び伐採後の調査対象森林域に存在する樹木の樹冠高(地表からの樹冠の高さ)を表す樹冠高画像データを作成する。
具体的には、伐採前の樹冠高画像データは、伐採前において作成された調査対象森林域画像データに基づいて、メッシュ化されたデジタル表層モデルデータ(樹木などの表層の標高を表すデータ)とデジタル標高モデルデータ(地表の標高を表すデータ)を作成し、各メッシュにおいてデジタル表層モデルデータとデジタル標高モデルデータとの差分を取ることによって、各メッシュにおいて樹冠高が表わされた樹冠高画像データを作成する。
一方、伐採後の樹冠高画像データは、伐採後において作成された調査対象森林域画像データに基づいて、メッシュ化されたデジタル表層モデルデータ(樹木などの表層の標高を表すデータ)とデジタル標高モデルデータ(地表の標高を表すデータ)を作成し、各メッシュにおいてデジタル表層モデルデータとデジタル標高モデルデータとの差分を取ることによって、各メッシュごとに樹冠高が表わされた樹冠高画像データを作成する。
ここで、メッシュサイズは、調査対象森林域画像の地上分解能に基づいて設定することができるが、メッシュサイズを大きくし過ぎると、算定される森林資源情報の精度に課題が生じる場合もあり、また、逆にメッシュサイズを小さくし過ぎると、処理すべきデータ量が多くなる。このため、メッシュサイズは、調査対象森林域の面積、当該調査対象森林域における森林の状況及び算定される森林資源情報の精度などを考慮して最適なサイズに設定することが好ましく、例えば、50cm×50cm程度のメッシュサイズに設定可能であり、また、さらに小さいメッシュサイズの設定も可能である。
なお、伐採前の樹冠高画像データ作成処理(ステップS14)及び伐採後の樹冠高画像データ作成処理(ステップS24)は、それぞれメッシュごとに行われるため、例えば、メッシュサイズを50cm×50cmとした場合には、個々の樹木の樹冠において、50cm×50cmのメッシュごとに樹冠高が得られることとなる。
このようにして作成された伐採前の樹冠高画像データ及び伐採後の樹冠高画像データを、それぞれコンピューターなどの情報処理装置に保存させておくことによって、伐採前の樹冠高画像データに対応する伐採後の樹冠高画像及び伐採後の樹冠高画像データに対応する伐採後の樹冠高画像を随時ディスプレイ上にそれぞれ表示させることができる。
図4は、ディスプレイ上に表示された伐採前の樹冠高画像及び伐採後の樹冠高画像を示す図である。なお、図4(a)は伐採前の樹冠高画像であり、図4(b)は伐採後の樹冠高画像である。図4の枠線A1内及び枠線A2内において、黒色で表わされている部分は、樹木が存在しない部分(地面など樹冠高がゼロの部分)である。なお、図4(b)は伐採後の樹冠高画像であるため、樹木が伐採された部分(黒色で表わされている部分)が図4(a)に比べて、より多く散在している。
続いて、前述した図1に示すフローチャートに沿って実施形態に係る伐採状況調査用データ作成処理を行う。すなわち、コンピューターなどの情報処理装置が記憶している伐採前の樹冠高画像データを取得する伐採前樹冠高画像データ取得処理(ステップS10)と、伐採後樹冠高画像データを取得する伐採後の樹冠高画像データ取得処理(ステップS20)をそれぞれ行って、伐採前の樹冠高画像データと伐採後の樹冠高画像データとの差分を取る樹冠高画像データ差分処理(ステップS30)以降の処理を行う。以下、樹冠高画像データ差分処理(ステップS30)以降の処理について詳細に説明する。
樹冠高画像データ差分処理(ステップS30)は、伐採前の樹冠高画像データと伐採後の樹冠高画像データとを、地理情報システム(GIS)100から得られる地理的情報を用いて重ね合わせて画像間の差分処理を行うことによって、伐採前の樹冠高画像データと伐採後の樹冠高画像データとの差分を表す樹冠高差分画像データを作成するものである。当該樹冠高差分画像データは、一本以上の伐採木の樹冠からなる樹冠領域における樹冠高が表わされたものとなっている。ここで、「一本以上の伐採木の樹冠からなる樹冠領域」というのは、一本の伐採木の樹冠からなる樹冠領域の場合もあり、また、複数の伐採木の樹冠が平面的に連なった樹冠領域の場合もあるということを指している。
樹冠高画像データ差分処理(ステップ30)によって作成された樹冠高差分画像データを、コンピューターなどの情報処理装置に保存させておくことによって、当該樹冠高差分画像データに対応する樹冠高差分画像を随時、ディスプレイ上に表示させることができる。
図5は、ディスプレイ上に表示された樹冠高差分画像を示す図である。図5(a)は調査対象領域(枠線A1で囲まれた領域)全体の樹冠高差分画像を示すであり、図5(b)は図5(a)における精度検証地(枠線A2で囲まれた領域)及びその周辺を拡大した拡大画像を示す図である。
ここで、精度検証地(枠線A2で囲まれた領域)に注目すると、図5(b)に示すように、伐採前と伐採後とにおいて同じ樹木が残っている領域(変化がない領域)は、黒で表わされ、伐採された領域(変化が大きい領域)は、白で表わされる。なお、黒で表わされている領域(以下、黒領域ともいう。)は、変化がない領域であるため、伐採されずに樹木が残っている領域だけではなく、元々樹木が存在しない領域の場合もある。また、白で表わされている領域(以下、白領域ともいう。)は伐採された樹木(伐採木)の樹冠候補となり得る領域である。なお、当該白領域は、一本の伐採木の樹冠からなる樹冠領域の場合もあり、複数の伐採木の樹冠が平面的に連なった樹冠領域の場合もある。
樹冠高画像データ差分処理(ステップ30)によって作成された樹冠高差分画像データには、当該樹冠高画像データ差分処理によって生じる種々のノイズが存在する。樹冠高画像データ差分処理によって生じる種々のノイズを、「樹冠高画像データ差分処理によるノイズ」と呼ぶことにする。当該「樹冠高画像データ差分処理によるノイズ」は、後述するノイズ除去処理(ステップS40)によって除去する。
また、図5において、灰色で示されている部分が生じているが、これは、伐採後において伐採された樹木の周辺に下層植生が残っていることによるもの、伐採前と伐採後とにおける空撮の時期の違いによるもの、伐採前と伐採後とにおける空撮する際のカメラの角度の違いなどによるものなどであり、これらも「樹冠高画像データ差分処理によるノイズ」に含まれるものとする。
なお、伐採前の樹冠高画像データと伐採後の樹冠高画像データとの差分を取ることによって得られた樹冠高差分画像において、伐採された樹木の領域(図5(b)における白領域)は、当該伐採された樹木(伐採木)の樹冠高の情報を有している。
このように、樹冠高画像データ差分処理(ステップS30)において、伐採前の樹冠高画像データと伐採後の樹冠高画像データとの差分処理を行うことにより、樹冠高差分画像データが作成される。続いて、当該樹冠高差分画像データに存在する種々のノイズすなわち「樹冠高画像データ差分処理によるノイズ」をノイズ除去処理(ステップS40)によって除去して、「樹冠高画像データ差分処理によるノイズ」が除去された「ノイズ除去済みの樹冠高差分画像データ」を作成する。
ノイズ除去処理(ステップS40)は、「樹冠高画像データ差分処理によるノイズ」が除去された「ノイズ除去済みの樹冠高差分画像データ」を作成するものであり、まずは、最大樹冠高抽出処理(ステップS41)を行う。この最大樹冠高抽出処理(ステップS41)は、樹冠高画像データ差分処理(ステップS30)によって作成された樹冠高差分画像データのうち、最大樹冠高(maxH)を抽出するものである。ここで抽出された最大樹冠高(maxH)は、調査対象森林域内(枠線A1内)に存在する樹木のうちの最も樹高の高い樹木の樹高であるとも言える。
続いて、伐採木樹冠候補領域抽出処理(ステップS42)を行う。伐採木樹冠候補領域抽出処理は、伐採木の樹冠候補とするための樹冠高の閾値(第1閾値とする。)を最大樹冠高に基づいて設定し、樹冠高差分画像データにおいて当該第1閾値以上の樹冠高を有する領域を「伐採木樹冠候補領域」として抽出して、「伐採木樹冠候補領域抽出済みの樹冠高差分画像データ」を作成する処理である。ここで、第1閾値は次のようにして設定している。
すなわち、伐採対象となる樹木を樹高の高い順から上層木、中層木及び下層木としたとき、第1閾値としては、これら上層木、中層木及び下層木の樹木の樹冠の上下方向の高さ(樹冠の下端部から樹冠の頂点までの高さ)がそれぞれ樹高のおよそ1/2であること、中層木及び下層木は、上層木の最大樹冠高(maxH)のおよそ1/2の樹冠高であることがそれぞれ経験値として得られていることから、上層木に加えて中層木及び下層木も伐採木に含まれるような閾値を第1閾値として設定する。
ここでは、第1閾値として、最大樹冠高値(maxH)の1/5を設定し、最大樹冠高(maxH)の1/5以上の樹冠高を有する樹冠高画像データを樹冠高差分画像データから抽出して「伐採木樹冠候補領域抽出済みの樹冠高差分画像データ」とする。これにより、最大樹冠高値(maxH)の1/5未満の薮などの下層植生などはノイズとして除去されることとなる。なお、第1閾値は、最大樹冠高値(maxH)の1/5に限られるものではなく、適宜最適な値を設定することができる。
このような樹冠高候補領域抽出処理を行うことによって、樹冠高差分画像データにおいて最大樹冠高値(maxH)の1/5未満の領域は画素値がゼロとされる。これにより、伐採木樹冠候補領域が抽出された樹冠高画像データ、すなわち、「伐採木樹冠候補領域抽出済みの樹冠高差分画像データ」を作成することができる。このようにして作成された「伐採木樹冠候補領域抽出済みの樹冠高差分画像データ」をコンピューターなどの情報処理装置に保存しておくことにより、当該「伐採木樹冠候補領域抽出済みの樹冠高差分画像データ」に対応する「伐採木樹冠候補領域抽出済みの樹冠高差分画像」を、随時、ディスプレイに表示させることができる。
図6は、ディスプレイ上に表示された「伐採木樹冠候補領域抽出済みの樹冠高差分画像」を示す図である。伐採木樹冠高候補抽出処理によって、樹冠高差分画像データ(図5(b)参照。)から、最大樹冠高値(maxH)の1/5未満の下層植生などはノイズとして画素値がゼロ(黒)とされている。このため、図6において、白領域は、上層木、中層木及び下層木を含む伐採木樹冠候補領域となる。なお、このような伐採木樹冠候補領域抽出処理を行っても、まだ、樹冠高画像データ差分処理によるノイズは残存している。
続いて、「伐採木樹冠候補領域抽出済みの樹冠高差分画像データ」から、伐採木樹冠候補領域の面積が所定面積以下となっている小面積の伐採木樹冠候補領域を除去して、「小面積伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像データ」を作成する小面積伐採木樹冠候補領域除去処理(ステップS43)を行う。小面積樹冠領域は、図6においては多数存在しているが、例えば、細かい白領域N1を例示できる。
小面積伐採木樹冠候補領域除去処理は、具体的には、図6に示した「伐採木樹冠候補領域抽出済みの樹冠高差分画像」における伐採木樹冠候補領域(図6の白領域)のうち、多数の細かい小面積伐採木樹冠候補領域(例えば、図6おける細かい領域N1)を小面積樹冠ノイズとして除去する処理を行う。
なお、伐採木樹冠候補領域が小面積であるか否かは、調査対象森林域に存在する下層木の樹冠面積未満の値を閾値(第2閾値とする。)として入力して、伐採木樹冠候補領域の面積が第2閾値未満か否かで判定する。具体的には、伐採対象となる下層木の樹冠面積がおよそ10m2であることが経験値として得られていることから、それよりも小面積(例えば、8m2とする。)を第2閾値として設定する。そして、「伐採木樹冠候補領域抽出済みの樹冠高差分画像データ」から、当該第2閾値未満の面積を有する小面積伐採木樹冠候補領域を除去する。これにより、下層木よりも小面積(例えば、8m2とする。)未満の伐採木樹冠候補領域はノイズとして除去できる。なお、第2閾値は、8m2に限られるものではなく、適宜最適な値を設定することができる。
このように、「伐採木樹冠候補領域抽出済みの樹冠高差分画像データ」から、第2閾値未満の伐採木樹冠候補領域を小面積伐採木樹冠候補領域として除去した樹冠高差分画像データを、「小面積伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像データ」とする。
当該「小面積伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像データ」をコンピューターなどの情報処理装置に保存しておくことにより、当該「小面積伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像データ」に対応する「小面積伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像」を、随時、ディスプレイに表示させることができる。
図7は、ディスプレイ上に表示された「小面積伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像」を示す図である。図7に示す「小面積伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像」は、図6に示した「伐採木樹冠候補領域抽出済みの樹冠高差分画像」に多数存在している小面積樹冠領域(例えば、図6において細かい白領域N1など)が除去されたものとなっている。
このようにして、小面積樹冠領域除去処理(ステップS43)によって、小面積樹冠領域除去済みの樹冠高差分画像データが作成されると、続いて、伐採木樹冠候補領域における長手方向長さを当該伐採木樹冠候補領域における短手方向長さで徐算して得られた値が閾値(第3閾値とする。)以上の細長い樹冠領域を「小面積樹冠領域除去済みの樹冠高差分画像データ」から除去して、「細長樹冠領域除去済みの樹冠高差分画像データ」を作成する細長樹冠領域除去処理(ステップS44)を行う。
細長樹冠は、図7においては複数存在しているが、例えば、細長い白領域N2を例示できる。この細長樹冠は、例えば、伐採木ではない樹冠であっても伐採前の空撮画像と伐採後の空撮画像とで撮影角度の違いや撮影位置のずれが生じていたりすることにより、樹冠高画像データ差分処理(ステップS30)を行った際に生じる場合がある。このため、このような細長樹冠を伐採木の樹冠候補から外す処理を行う。
細長樹冠領域除去処理は、具体的には、図7に示した「小面積伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像」における伐採木樹冠候補領域(図7の白領域)のうち、細長い伐採木樹冠候補領域(例えば、図7における細長い白領域N2)を細長樹冠ノイズとして除去する処理を行う。
なお、細長樹冠か否かの判定は、「面積伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高画像データ」において、伐採木樹冠候補領域における長手方向長さを当該伐採木樹冠候補領域における短手方向長さで徐算して得られた値の大きさによって細長伐採木樹冠候補領域であるか否かを判定する。具体的には、伐採対象となる樹木における樹冠を平面視したときの長手方向の長さ(Lmaxとする。)を短手方向の長さ(Lminとする。)で徐算して得られた値の大きさは、4以上にはなりにくいということが経験値として得られていることから、第3閾値をnとしたとき、例えば「n=4」を設定する。そして、伐採木樹冠候補領域が第3閾値(n=4)以上の細長い伐採木樹冠候補領域を「小面積伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像データ」から除去する。これにより、極端に細長い伐採木樹冠候補領域はノイズとして除去できる。なお、第3閾値nはn=4に限られることなく、適宜最適な値を設定することができる。
このような細長伐採木樹冠候補領域除去処理を行うことによって、「細長伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像データ」を作成できる。作成された「細長樹冠候補域除去済みの樹冠高差分画像データ」を、コンピューターなどの情報処理装置に保存しておくことにより、当該細長伐採木樹冠候補領域除去画像データに対応する細長伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高画像を、随時、ディスプレイ上に表示させることができる。
図8は、ディスプレイ上に表示された細長伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像を示す図である。図8に示す細長樹冠除去済みの樹冠高差分画像は、図7に示した小面積伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像から細長い樹冠(例えば、図7における細長い白領域N2)がノイズとして除去されたものとなっている。
このようにして、細長伐採木樹冠候補領域除去処理(ステップS45)によって、細長伐採木樹冠候補領域が除去された「細長伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像データ」が作成されると、当該「細長伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像データ」から、伐採木樹冠候補領域内(白領域内)に存在するノイズ(伐採木樹冠候補領域内ノイズN3とする。)を除去する伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去処理を行う(ステップS45)。
伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去処理は、具体的には、図8に示した「細長伐採木樹冠候補領域除去済みの樹冠高差分画像」における伐採木樹冠候補領域(図8の白領域)のうち、当該伐採木樹冠候補領域内(白領域内)に存在する画素値がゼロの領域(黒領域)を伐採木樹冠候補領域内ノイズN3として除去する処理である。なお、伐採木樹冠候補領域内(白領域内)に存在する画素値がゼロの黒領域、すなわち、伐採木樹冠候補領域内ノイズN3というのは、周囲が伐採木樹冠候補領域(白領域)で囲まれて島のように存在するに画素値がゼロの黒領域を指している。
このように、採木樹冠候補領域内ノイズN3は、周囲が伐採木樹冠候補領域(白領域)で囲まれて島のように存在するに画素値がゼロの黒領域であるとしている。このため、伐採木樹冠候補領域内(白領域内)に画素値がゼロの黒領域が存在しているかのように見える黒領域(画素値がゼロの領域)が存在していたとしても、当該黒領域が伐採木樹冠候補領域(白領域)の外側に存在する黒領域に繋がりを有している黒領域(例えば、図8における黒領域D)については、当該黒領域(例えば、図8における黒領域D)を伐採木樹冠候補領域内ノイズN3としない。
上述の伐採木樹冠候補領域内ノイズN3は、上空から調査対象森林域を撮影したときに、樹冠に隙間などによる空間がある場合などにおいて、当該空間を通して地面が撮影されてしまうことによって生じるものである。すなわち、ある樹木について考えた場合、当該樹木の樹冠に空間が存在すると、当該樹木を伐採前に撮影した画像には、樹冠の空間部を通して地面が撮影されることとなり、当該樹木の伐採前の撮影画像と当該樹木の伐採後の撮影画像との差分を取ると、空間部に対応する部分は樹冠高に変化がないため、画素値はゼロ(黒)となる。このような伐採木樹冠領域内ノイズN3は、伐採木の樹冠に存在していた隙間に由来するノイズとも言える。当該伐採木樹冠領域内ノイズN3は、本来は、当該樹木の樹冠として考えてよい領域である。このため、伐採木樹冠候補領域内(図8の白領域内)に存在する伐採木樹冠候補領域内ノイズN3(画素値がゼロの黒領域)は、白で塗りつぶす処理を行う。
なお、伐採木樹冠候補領域内には、伐採木の樹冠に存在している樹冠の隙間に由来するノイズだけなく、1つの樹木の樹冠と当該1つの樹木に近接している樹木の樹冠との間に元々存在している空間による画素値がゼロの黒領域(例えば、図8において、符号N4で示す黒領域)が幾つか存在している場合もある。
伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去処理(ステップS44)を行うと、このような樹冠と樹冠との間に元々存在する空間による画素値ゼロの黒領域N4に対しても白で塗りつぶす処理がなされることとなるが(図9参照。)、当該黒領域N4については、後述する伐採木樹冠区分処理(ステップS50)で空間として再現できる。
このような伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去処理を行うことによって、「伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像データ」を作成できる。作成された「伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像データ」を、コンピューターなどの情報処理装置に保存させておくことにより、当該「伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像データ」に対応する「伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像」を、随時、ディスプレイ上に表示させることができる。
図9は、ディスプレイ上に表示された「伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像」を示す図である。図9に示す伐採木樹冠領域内ノイズ除去画像は、図8に示した細長樹冠領域除去画像(枠線A1内)から、伐採木樹冠候補領域(図8の白領域)内に存在する画素値がゼロの黒領域(伐採木樹冠候補領域内ノイズN3及び樹冠と樹冠との間に元々存在する空間による画素値ゼロの黒領域N4)が伐採木樹冠候補領域内ノイズとして除去されたものとなっている。
このように、伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去処理(ステップS45)が行われた伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高画像(図9参照。)は、伐採木樹冠高候補領域抽出処理(ステップS42)が行われた「伐採木樹冠高候補領域抽出済みの樹冠高差分画像データ」から、小面積伐採木樹冠候補領域除去処理(ステップS43)を行い、さらに、細長樹冠候補除去処理(ステップS44)が行われ、加えて、伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去処理(ステップS45)が行われた樹冠高画差分画像となっている。従って、伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去処理(ステップS45)によって作成された「伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像データ」は、各種のノイズが除去された伐採木樹冠高画像データとなる。
以上のようにして、「伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像データ」が作成されると、当該伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像データを用いて、伐採木樹冠区分処理を行う(ステップS50)。当該伐採木樹冠区分処理(ステップS50)は、「樹冠高画像データ差分処理によるノイズ」が除去された「樹冠高差分画像」(図9参照。)に存在する伐採木樹冠候補領域(白領域)を、個々の樹木の樹冠に区分する処理を行って、伐採木樹冠区分画像データを作成する。
すなわち、図9に示す「伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像」における伐採木樹冠候補領域(白領域)は、複数樹木の樹冠が繋がっていたり、一部が重なり合っていたりしている状態として表わされているため、個々の樹木の樹冠として区分されているものではない。このため、図9に示す「伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像」における伐採木樹冠候補領域を個々の樹木(伐採木)の樹冠に区分する処理を行う。
当該伐採木樹冠区分処理は、具体的には、「伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像データ」と、樹冠高が表わされている「樹冠高差分画像データ」とを用いて行う。すなわち、「伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像データ」は、図9の「伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像」に示すように2値画像データであるため、樹冠高の情報を有していない。このため、伐採木樹冠区分処理を行う際には、図5(b)の「樹冠高差分画像の拡大画像」に示すような樹冠高の情報を有している「樹冠高差分画像データ」を参照して、伐採木樹冠区分処理を行う。
図9に示す「伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去済みの樹冠高差分画像」における伐採木樹冠候補領域から個々の樹木(伐採木)の樹冠に区分する伐採木樹冠区分処理は、下記に示す公知文献2に記載されている単木樹冠抽出のインディヴィジュアル・ツリー・ディテクション法(Individual tree detection method)を用いることができる。この場合、伐採木樹冠区分処理は、単木樹冠抽出のインディヴィジュアル・ツリー・ディテクション法を用い、樹冠の縁部の樹冠高が樹冠の頂点の樹冠高よりも低いことを利用して行う。
公知文献2:J Hyypp・ M Inkinen,”Detecting and estimating attributes for single trees using laser scanner“, The photogrammetric journal of Finland 16 (2), 1999年、27-42
伐採木樹冠区分処理(ステップS50)を行うことによって、個々の伐採木の樹冠が個々の伐採木ごとに区分された伐採木樹冠区分画像データが作成される。当該伐採木樹冠区分画像データを情報処理装置に保存しておくことにより、随時、伐採木樹冠画像データに対応する伐採木樹冠区分画像をディスプレイ上に表示させることができる。
図10は、ディスプレイ上に表示された伐採木樹冠区分画像を示す図である。図10に示す伐採木樹冠区分画像は、個々の樹木の樹冠が領域分割されたものとなっている。図10において、区分された1つの白抜きの領域(例えば、領域C1)が1本の樹木における樹冠である。
このようにして、伐採木樹冠区分処理(ステップS50)において、個々の樹木(伐採木)に対応する伐採木樹冠区分画像データが作成されると、個々の伐採木に関する資源情報(伐採木資源情報を)を取得する伐採木資源情報取得処理を行う(ステップS60)。
伐採木資源情報取得処理(ステップS60)には、前記伐採木樹冠区分処理ステップによって作成された前記伐採木樹冠区分画像データに基づいて、少なくとも、個々の伐採木の位置情報(x座標及びy座標)、個々の伐採木の樹冠面積及び/又は樹冠直径、個々の伐採木の胸高直径(DBH)、個々の伐採木の樹高、個々の伐採木の材積を伐採木資源情報として取得する処理が含まれている。そして、これらの伐採木資源情報を、個々の伐採木に付されているナンバー(ラベル番号)、樹種などに対応付けたものをデータベース化してコンピューターなどの情報処理装置に保存する。情報処理装置に保存された伐採木資源情報は、随時、ディスプレイ上に表示させることができる。
なお、調査対象森林域における伐採前の個々の樹木に関する資源情報として、個々の樹木の位置情報、個々の樹木の樹冠面積及び/又は樹冠直径、個々の樹木の樹高、個々の樹木の胸高直径及び個々の樹木の材積が、個々の樹木ごとに伐採前資源情報として求められている場合には、当該伐採前資源情報を参照して、個々の伐採木の資源情報を取得するようにしてもよく、また、伐採された個々の樹木(個々の伐採木)に関する資源情報を伐採後において計算などによって求めることによって取得するようにしてもよい。
ここでは、伐採された個々の樹木(個々の伐採木)に関する資源情報を伐採後において計算などによって求めることによって取得するものとする。
伐採された個々の樹木(伐採木)に関する資源情報を伐採後において求める方法について説明する。個々の伐採樹木の樹高は、伐採木樹冠区分処理により区分された個々の伐採木の樹冠に対応する樹冠高画像データの最大値を当該樹木の樹高とすることで求めることができる。
また、樹冠面積は、個々の伐採木の樹冠領域の画素数を積算することによって求めることができ、樹冠直径も当該樹冠領域の画素数に基づいて求めることができる。
また、胸高直径は、樹冠面積又は樹冠直径と、樹高とから重回帰式で求めることができる。なお、重回帰式で胸高直径を求める場合、樹種ごとに現地調査において標準木を10数本程度選び、選んだ標準木の樹冠面積又は樹冠直径、樹高を測定することによって重回帰式の変数を求めることが好ましい。
ところで、「樹冠直径」は、樹冠を平面視したときの樹冠の水平方向の広がりの大きさを表すものであり、また、「胸高直径」は、樹木の幹の太さを表すものであるが、樹冠及び樹木の幹は実際には真円ではないため、厳密には「直径」とは言えないが、この明細書においては、樹冠の水平方向の広がりの大きさを表すものとして「樹冠直径」と表記し、幹の太さを表すものとして「樹冠直径」と表記するものとする。
また、材積は、胸高直径と樹高の2変数材積式から求めることができる。なお、胸高直径と樹高とから材積が求められている早見表は公知であり、このような早見表から材積を求めることができる。当該早見表については、下記文献(公知文献3及び公知文献4)に記載されている。
公知文献3:林野庁計画課、立木幹材積表 東日本編、日本林業調査会、334ページ、2003年
公知文献4:林野庁計画課、立木幹材積表 西日本編、日本林業調査会、320ページ、1970年
図11は、ディスプレイ上に表示された伐採木資源情報の一覧表を示す図である。伐採木資源情報は、図11においては、1,2,3,・・・といった通し番号、個々の伐採木に付されているナンバー(ラベル番号)、個々の伐採木に対応する樹冠の位置情報(x座標及びy座標)、樹種、胸高直径(DBH)、樹高、材積が記録されている。なお、ディスプレイ上に表示させる伐採木資源情報としては、これらの他に、必要に応じて、樹冠直径、樹冠面積などをも含めるようにしてもよい。また、1,2,3、・・・といった通し番号により、当該調査対象森林域において、樹冠として認識された樹冠の数(樹冠数)を求めることができ、それにより、当該調査対象森林域における調査対象樹木の本数を求めることができる。図11に示す伐採木資源情報を一覧表としてディスプレイ上に表示させることによって、調査対象森林域の伐採木の詳細な資源情報を視覚的に把握することができる。
また、個々の伐採木の樹高を、伐採木樹冠区分画像(図11参照。)の個々の樹冠ごとに対応させてディスプレイ上に表示させることによって、個々の伐採木の資源概要を視覚的に把握できる。なお、個々の伐採木の樹高というのは、樹高を表す数値そのものであってもよいが、例えば、樹高を複数段階に区分した樹高区分を表するマークなどを個々の伐採木の樹冠に付した伐採木樹高区分画像をディスプレイ上に表示するようにしてもよい。
図12は、樹高区分を表すマークを精度検証地(枠線A2内)における個々の伐採木の樹冠に付した伐採木樹高区分画像を示す図である。なお、図12において、個々の樹冠に示されている丸印(正確には円形ではないが丸印と表記する。)は、個々の伐採木の樹頂点の位置に付されており、また、当該丸印の大きさが、樹高(m)を段階ごとに表している。ここでは、樹高を、18.6m〜20.0m、20.1m〜25.0m、25.1m〜30.0m、30.1m以上というように、4段階に分けている。
なお、図12はモノクロ画像であるため、図12においては、伐採木の樹高分布が把握しにくいが、図12の元となるカラー画像上では、伐採された樹木を表す丸印が赤の丸印として表示されているため、伐採木の樹高分布を容易に把握することができる。
図13は、調査対象森林域(枠線A1内)における伐採木の分布画像を示す図である。なお、図13において丸印が付されている樹冠は、調査対象森林域(枠線A1内)において伐採された樹木を示している。図13に示す伐採木の分布画像をディスプレイに表示させることによって、調査対象森林域のどの位置の樹木が伐採されたかを視覚的に把握することができる。これにより、例えば、伐採木が調査対象森林域において集中や偏りがなく調査対象森林域の全域に分布しているか、伐り残しはないかなどを、容易に判断できる。
なお、図13はモノクロ画像であるため、図13においては、伐採木の分布が把握しにくいが、図13の元となるカラー画像上では、伐採された樹木を表す丸印が赤の丸印として表示されているため、伐採木の分布を容易に把握することができる。
図12に示す樹高区分画像及び図13に示す伐採木分布画像をディスプレイ上に表示することができることにより、伐採計画を発注した森林所有者や森林管理者は、何処で、どれくらい量が伐採されたか、視覚的に把握することができる。例えば、伐採木が調査対象域の全域に分布しているか、集中や偏りはないかを、容易に判断できる。また、実際に現地に行くときには、これら各情報をプリントアウトしたもの、または、これらを現地で表示可能なモバイル端末を持参し、かつ、GPSを併用することで、熟練者でなくても容易に伐採された樹木の確認ができる。
以上のようにして採木資源情報が取得されると、伐採木資源量の集計処理を行う(ステップS70)。伐採木資源量の集計処理は、伐採木資源情報取得処理(ステップS60)によって取得された前記個々の伐採木資源情報(例えば、図11参照。)に基づいて、伐採木の資源量を伐採前の調査対象森林域内の資源量と比較できるようにそれぞれ集計する。
伐採木資源量の集計処理ステップには、伐採木の本数、伐採木の平均胸高直径、伐採木の平均樹高、伐採木の合計材積を集計するとともに、本数による伐採率及び材積による伐採率を算定する処理が含まれている。
具体的には、伐採前の調査対象森林域に存在する樹木の本数と伐採された樹木(伐採木)の本数、伐採前の調査対象森林域に存在する樹木の平均胸高直径(DBH:cm)と伐採された樹木(伐採木)の平均胸高直径(DBH:cm)、伐採前の調査対象森林域に存在する樹木の平均樹高(m)と伐採された樹木(伐採木)の平均樹高(m)、伐採前の調査対象森林域に存在する樹木の合計材積(m3)と伐採された樹木(伐採木)の合計材積(m3)、伐採前の調査対象森林域に存在する樹木の本数に対する比率(%)、伐採前の調査対象森林域に存在する樹木の材積に対する材積の比率(%)をそれぞれ求めて集計し、集計結果をデータベース化してコンピューターなどの情報処理装置に保存する。これにより、集計結果を一覧表として、随時、ディスプレイ上に表示させることができる。
図14は、ディスプレイ上に表示された伐採木資源量の集計表を示す図である。図145に示す伐採木資源量の集計表によれば、調査対象森林域で伐採された樹木(伐採木)の本数、伐採木の平均胸高直径、伐採木の平均樹高及び伐採木の合計材積と、当該調査対象森林域における伐採前の樹木の本数、平均胸高直径、平均樹高、合計材積とを比較することができる。なお、伐採木資源量の集計表には、図14示すように、伐採率(本数伐採率及び材積伐採率)も記録されている。
図14に示す伐採木資源量の集計表によれば、調査対象森林域で実施された伐採(調査)の状況を容易に把握することができる。また、図14に示す伐採木資源量の集計表を基にすることで、伐採調査業務での補助金支出の算定根拠となる本数伐採率及び材積伐採率が適正伐採率(例えば、本数伐採率30%未満、材積伐採率35%未満)となっているか否かを容易に判定できる。なお、図14に示す伐採木資源量の集計表によれば、本数伐採率は25%であり、材積伐採率は24%であるため、本数伐採率30%未満、材積伐採率35%未満を満たしているため、適正であると判定できる。
以上説明したように、実施形態に係る伐採状況調査用データ作成方法によれば、伐採前の樹冠高画像データと伐採後の樹冠高画像データとの差分を取る樹冠高画像データ差分処理を行うことによって、伐採木の樹冠領域が表わされている樹冠高差分画像データを作成し、樹冠高画像データ差分処理によるノイズを、ノイズ除去処理(ステップS40)によって、最大樹冠高抽出処理(ステップS41)、伐採木樹冠候補領域抽出処理(ステップS42)、小面積伐採木樹冠候補領域除去処理(ステップS43)、細長樹冠候補領域除去処理(ステップS44)及び伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去処理(ステップS45)を行うことにより、ノイズが除去されたノイズ除去済みの樹冠高差分画像データを作成するようにしている。
そして、ノイズ除去済みの樹冠高差分画像データを用いて、伐採木の樹冠領域を個々の伐採木の樹冠ごとに区分した伐採木樹冠区分画像データを作成している。これによって、個々の伐採木を高精度に再現でき、個々の伐採木を高精度に再現した伐採木樹冠区分画像データに基づいて、伐採木資源情報を取得している。これにより、伐採木資源情報を高精度に得ることができる。また、高精度に得られた伐採木資源情報に基づいて伐採木資源量の集計処理を行うようにしているため、当該伐採木資源量の集計処理によって得られた伐採木資源量の集計結果(例えば、図14参照。)は、信頼性の高い伐採木資源量の集計結果となる。
なお、伐採木資源情報取得処理が取得した伐採木資源情報、伐採木資源量の集計処理によって得られた伐採木資源量の集計結果、さらには、図12に示した伐採木の樹高区分画像及び図13に示した伐採木分布画像などは、所定の森林域において樹木の伐採を行った際の伐採状況を調査するための伐採状況調査用データとして使用できる。
以上、実施形態に係る伐採状況調査用データ作成方法について説明したが、続いて、実施形態に係る伐採状況調査用データ作成方法に対応する伐採状況調査用データ作成装置について説明する。
図15は、実施形態に係る伐採状況調査用データ作成方法に対応する伐採状況調査用データ作成装置1を説明するために示す図である。伐採状況調査用データ作成装置1は、図15に示すように、図1におけるステップS10において取得すべき伐採前の樹冠高画像データを記憶している記憶部10と、図1におけるステップS20において取得すべき伐採後の樹冠高画像データを記憶している記憶部20と、図1におけるステップS30の処理を行う樹冠高画像データ差分処理部30と、図1におけるステップS40の処理を行うノイズ除去処理部40と、図1におけるステップS50の処理を行う伐採木樹冠区分処理部50と、図1におけるステップS60の処理を行う伐採木資源情報取得処理部60と、図1におけるステップS70の処理を行う伐採木資源量の集計処理部70とを有する。
図15におけるノイズ除去処理部40には、図1におけるステップS41の処理を行う最大樹冠高抽出部41と、図1におけるステップS42の処理を行う伐採木樹冠候補領域抽出処理部42と、図1におけるステップS43の処理を行う小面積伐採木樹冠候補領域除去処理部43と、図1におけるステップS44の処理を行う細長伐採木樹冠候補領域除去処理部44と、図1におけるステップS45の処理を行う伐採木樹冠候補領域内ノイズ除去処理部45とが含まれている。
このように構成されている伐採状況調査用データ作成装置1を構成する各構成要素が、図1に示すフローチャートに示す手順に沿って処理を行うことにより、実施形態に係る伐採状況調査用データ作成方法と同様に、伐採木資源情報、伐採木資源量の集計結果、さらには、図12に示した伐採木の樹高区分画像及び図13に示した伐採木分布画像などを得ることができ、これらは、所定の森林域において樹木の伐採を行った際の伐採状況を調査するための伐採状況調査用データとして使用できる。
なお、図15に示す伐採状況調査用データ作成装置1に含まれる上記各構成要素(図15参照。)が有する機能がコンピューターのプログラムとしてインストールされており、上記各構成要素に所定のデータを与えることによって、それぞれの構成要素が持つ機能がコンピューターのソフトウエア上で実行される。
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
(1)調査対象森林域に存在する樹木としては、例えば、カラマツ、アカマツ、スギ、ヒノキなどの針葉樹の植栽木を例示し、特に、上記実施形態においては、針葉樹として、カラマツを例にとって説明したが、針葉樹に限られるものではなく、例えば、ブナやナラなどが所定の広さの範囲にまとまって群生している林が存在する場合においては、当該ブナやナラについても同様に実施できる。
(2)上記実施形態においては、ドローンを用いて空撮画像データを得るようにしたが、ドローンに限られるものではなく、例えば、航空機を使用して空撮画像データを得るようにしてもよい。
(3)上記実施形態においては、樹冠高画像データを得るための3次元点群データは、空撮画像データからオルソ画像を作成して、作成したオルソ画像から作成するようにしたが、上空からレーザー光を照射して得られたレーザー計測データに基づいて3次元点群データを得るようにしてもよい。
(4)上記実施形態においては、伐採木樹冠区分処理は、インディヴィジュアル・ツリー・ディテクション法を用いる場合を例示したが、他の方法を用いることもできる。例えば、領域分割法の1つであるWatershedアルゴリズムを用いることができる。
(5)上記実施形態においては、ステップS60が行う伐採木資源情報取得処理としては、伐採された個々の樹木(個々の伐採木)に関する資源情報を伐採後において計算などによって求めることによって取得する場合を例示したが、前述したように、調査対象森林域における伐採前の個々の樹木に関する資源情報として、個々の樹木の位置情報、個々の樹木の樹冠面積及び/又は樹冠直径、個々の樹木の樹高、個々の樹木の胸高直径及び個々の樹木の材積が、個々の樹木ごとの伐採前資源情報として求められている場合には、当該伐採前資源情報を参照して、個々の伐採木の資源情報を取得するようにしてもよい。この場合、ステップS50の伐採木樹冠区分処理によって作成された伐採木樹冠区分画像データに基づいて、伐採された個々の樹木の位置情報を得て、当該位置情報に基づいて、伐採された個々伐採木の資源情報を伐採前森林資源情報から取得する。