以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1が適用されたハードディスク駆動装置200の概略構成を示すための斜視図である。ハードディスク駆動装置200において、スピンドルモータ1は、ハウジング201の底部201aに固定または形成されており、ハードディスク202を回転可能に支持している。カバー(図示せず)とハウジング201とにより、ハードディスク駆動装置200の筐体が形成される。カバー(図示せず)とハウジング201とにより形成される内部の空間Sには、空気より密度の低いガス(例えば、ヘリウム、窒素、もしくはヘリウムと窒素との混合ガス)が充填されている。
ハードディスク駆動装置200は、軸受装置203により揺動可能に支持されているスイングアーム204の先端部に、ヘッド部205を有している。ヘッド部205は、磁気ヘッドが先端に設けられている。ハードディスク駆動装置200では、ヘッド部205が、回転しているハードディスク202上を移動する。これにより、ハードディスク202に情報を記録し、また、ハードディスク202に記録されている情報を読み出すことができる。
図2は、図1に示すスピンドルモータ1における流体動圧軸受20の構成を概略的に示す断面図である。以下、説明の便宜上、図2におけるスピンドルモータ1の軸Y1の方向(以下、軸Y1方向ともいう)における一方側(矢印a方向)を上側とし、他方側(矢印b方向)を下側とする。また、図2におけるスピンドルモータ1の軸Y1に直交して延在する半径方向において軸Y1に近づいていく一方側(矢印c方向)を半径方向内側とし、軸Y1から離れていく他方側(矢印d方向)を半径方向外側とする。以下の説明において、各部材の位置関係や方向を用いて説明するときは、あくまで図面における位置関係や方向を示し、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。
本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1における流体動圧軸受20は、軸部材21と、軸部材21の端部に固定される第1円錐軸受部材としての上側下部円錐軸受部材40および第2円錐軸受部材としての上側上部円錐軸受部材50と、上側下部円錐軸受部材40および上側上部円錐軸受部材50を介して軸部材21に回転自在な状態で支持されたロータ部材31とを備えている。上側上部円錐軸受部材50は、上側下部円錐軸受部材40に当接し、上側上部円錐軸受部材50の円錐面50dとロータ部材31との間で潤滑油Gを保持するテーパシール部Tが形成され、上側下部円錐軸受部材40の円錐軸受面としての下側円錐外面40bとロータ部材31との間で潤滑油Gによる動圧が発生する動圧軸受部DBが設けられている。
すなわち、流体動圧軸受20は、ベースプレート11に固定された軸部材21と、軸部材21が挿通された貫通孔31aを備えるロータ部材31とを備えている。貫通孔31aは、上側に向かって内径が拡大する円錐内面31duと、下側に向かって内径が拡大する円錐内面31dbとを有する。また、スピンドルモータ1は、円錐内面31dと対向する円錐外面としての下側円錐外面40b,上側円錐外面60uを有して軸部材21に固定された円錐軸受部材としての上側円錐軸受部材22,下側円錐軸受部材23とを備えている。
また、スピンドルモータ1は、円錐内面31du、31dbに形成された動圧溝Dを備えている。なお、動圧溝Dは、円錐内面31duと下側円錐外面40bとの少なくともいずれかに形成され、また、円錐内面31dbと上側円錐外面60uとの少なくともいずれかに形成されてもよい。
また、スピンドルモータ1は、円錐内面31duと下側円錐外面40bとの間の隙間および円錐内面31dbと上側円錐外面60uとの間の隙間に充填された潤滑油Gを備えている。上側円錐軸受部材22は、図3に示すように、円錐内面31dと対向して軸部材21に固定された第1円錐軸受部材としての上側下部円錐軸受部材40と、上側下部円錐軸受部材40よりも上側において、上側下部円錐軸受部材40に当接して軸部材21に固定された第2円錐軸受部材としての上側上部円錐軸受部材50とを有している。
下側円錐軸受部材23は、図8に示すように、円錐内面31dと対向して軸部材21に固定された第1円錐軸受部材としての下側上部円錐軸受部材60と、下側上部円錐軸受部材60よりも下側において、下側上部円錐軸受部材60に当接して軸部材21に固定された第2円錐軸受部材としての下側下部円錐軸受部材70とを有している。以下、スピンドルモータ1の構成について具体的に説明する。
スピンドルモータ1は、図2に示すように、ステータ10と、流体動圧軸受20と、ロータ30とを有している。ステータ10は、ベースプレート11と、ベースプレート11に固定されたステータコア12とを有している。ベースプレート11には、軸部材21の下部を挿通して固定するための貫通孔11aと、貫通孔11aと同心の円周壁部11bとが形成されている。また、円周壁部11bの外周面にはステータコア12が固定され、ステータコア12にはコイル13が巻回されている。
流体動圧軸受20は、軸部材21と、軸部材21に挿通された上側円錐軸受部材22および下側円錐軸受部材23とを有している。上側円錐軸受部材22および下側円錐軸受部材23は、軸Y1方向に離間して軸部材21に固定されている。流体動圧軸受20は、例えば、コニカル動圧軸受である。軸部材21は、軸Y1と同軸となっており、略円筒状に形成されている。軸部材21は、例えばマルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS420J2で形成されている。軸部材21の内部には、軸部材21の上面および下面から軸Y1方向に延びる軸孔21aが形成されている。
軸部材21は、軸Y1と同軸となっており、ロータ30のロータ部材31に形成された貫通孔31aに挿通されている。また、軸部材21の下部は、ベースプレート11に形成された貫通孔11aに挿入され、圧入、または圧入および接着により固定されている。上側円錐軸受部材22および下側円錐軸受部材23は、軸部材21の周囲を取り囲むように設けられており、例えばオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS303により形成されている。上側円錐軸受部材22および下側円錐軸受部材23の具体的な構成については後述する。
ロータ30は、ロータ部材31と、ヨーク32と、ロータマグネット33と、エンドキャップ34とを有している。ロータ部材31は、略円筒状に形成されている。また、ロータ部材31には、軸部材21を挿通するための貫通孔31aと、2つの動圧溝部31bと、ヨーク取付部31cとが形成されている。ヨーク取付部31cには、ヨーク32を介してロータマグネット33が固定されている。ロータマグネット33は、永久磁石からなり、ステータコア12に対向して配置されている。
動圧溝部31bは、貫通孔31aの半径方向外側であって、上側円錐軸受部材22および下側円錐軸受部材23と対向する位置に形成されている。動圧溝部31bには、動圧を発生させるための動圧溝Dが形成されている。この動圧溝Dは、例えば、ロータ部材31において貫通孔31aの上側および下側に設けられた円錐内面31du,31dbに電解加工を施すことにより形成することが可能である。
また、円錐内面31duと、上側円錐軸受部材22の上側下部円錐軸受部材40(図3)の下側の面である下側円錐外面40bとは、微小な隙間(図示省略)を隔てて対向している。また、円錐内面31dbと、下側円錐軸受部材23の下側上部円錐軸受部材60(図8)の上側の面である上側円錐外面60uとは、微小な隙間(図示省略)を隔てて対向している。なお、動圧溝Dは、円錐内面31du,31dbではなく、上側円錐軸受部材22の下側円錐外面40bおよび下側円錐軸受部材23の上側円錐外面60uに形成されていてもよく、いずれかに形成されていればよい。
上側円錐軸受部材22の下側円錐外面40bに対向する円錐内面31duは、ロータ部材31の貫通孔31aの上側に向かって内径が拡大している。下側円錐軸受部材23の上側円錐外面60uに対向する円錐内面31dbは、ロータ部材31の貫通孔31aの下側に向かって内径が拡大している。円錐内面31duと上側円錐軸受部材22の下側円錐外面40bとの間の微小な隙間、および円錐内面31dbと下側円錐軸受部材23の上側円錐外面60uとの間の微小な隙間には潤滑油Gが充填されている。
エンドキャップ34は、ロータ部材31に固定される部材である。エンドキャップ34と軸部材21との間には、エンドキャップ34によってロータ部材31の回転を妨げられないように、微小な隙間が形成されている。エンドキャップ34は、接着、または接着および圧入によって、ロータ部材31に固定されている。
ロータ30に固定されたロータマグネット33と、ステータ10に固定されたステータコア12とは、微小な隙間を挟んで対向している。そして、ステータコア12の複数のコイル13に位相の異なる駆動電流を流すと回転磁界が発生し、この回転磁界によってロータマグネット33に回転力が発生する。これにより、ロータ30がステータ10および流体動圧軸受20に対して回転する。
また、ロータ30が流体動圧軸受20に対して回転すると、動圧溝部31bに設けられた動圧溝Dにより、ロータ30の円錐内面31du,31dbと、流体動圧軸受20の上側円錐軸受部材22の下側円錐外面40bおよび下側円錐軸受部材23の上側円錐外面60uとを離間させる動圧が発生する。これにより、円錐内面31du,31dbと下側円錐外面40bおよび上側円錐外面60uとが非接触状態で支持される。そして、円錐内面31du,31dbと下側円錐外面40bおよび上側円錐外面60uとが非接触状態で支持されることにより、ロータ30は、流体動圧軸受20が固定されたステータ10に対して自在に回転する。
図3は、図2に示すスピンドルモータ1における流体動圧軸受20の上側円錐軸受部材22付近の部分の構成を概略的に示す部分拡大断面図であり、図4は、図3に示す上側円錐軸受部材22の上側下部円錐軸受部材40の構成を概略的に示す平面図である。図5は、図4に示す上側下部円錐軸受部材40の構成を概略的に示すA−A断面図であり、図6は、図4に示す上側下部円錐軸受部材40の構成を概略的に示すB−B断面図である。図7は、図3に示す上側円錐軸受部材22の上側上部円錐軸受部材50の構成を概略的に示す断面図である。
スピンドルモータ1において、上側円錐軸受部材22は、円錐内面31duと対向して軸部材21に固定された第1円錐軸受部材としての上側下部円錐軸受部材40と、上側下部円錐軸受部材40よりも上側において、上側下部円錐軸受部材40に当接して軸部材21に固定された第2円錐軸受部材としての上側上部円錐軸受部材50とを有している。
具体的に、上側下部円錐軸受部材40は、図4に示すように略円環状に形成されており、図5,6に示すように略逆円錐状に形成されている。上側下部円錐軸受部材40の略中心には、軸Y1方向に延びる略円筒状の貫通孔40aが形成されている。上側下部円錐軸受部材40の貫通孔40aは、軸部材21と同軸となっており、貫通孔40aの直径は、軸部材21の半径方向外側の面である外周面21dの直径よりも僅かに大きい直径となっている。このため、貫通孔40aは、軸部材21を挿通することができるようになっており、軸部材21の外周面21dとの間の微小な隙間に潤滑油Gを充填することができるようになっている。
上側下部円錐軸受部材40の下側には、ロータ部材31の円錐内面31duと対向する下側円錐外面40bが形成されている。下側円錐外面40bは、貫通孔40aの下側の縁から上側に向かうに連れて拡径されているテーパ面である。下側円錐外面40bは、ロータ部材31において貫通孔31aの上側に設けられた円錐内面31duと対向する位置に配置されるようになっている。下側円錐外面40bの上側の縁は、上側下部円錐軸受部材40の半径方向外側の面である円錐面40dの下側の縁と接続している。
上側下部円錐軸受部材40の円錐面40dは、下側円錐外面40bの上側の縁から上側に向かうに連れて縮径されているテーパ面である。円錐面40dの上側の縁は、上側下部円錐軸受部材40の上側の面である円錐対向面40uの半径方向外側の縁と接続している。上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uは、貫通孔40aの上側の縁から上側に向かうに連れて拡径されているテーパ面である。
上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uには、半径方向内側から半径方向外側に向かって背向して半径方向に延びる一対の上側溝部41が形成されている。具体的に、一対の上側溝部41は、夫々、円錐対向面40uから下側に凹んでいる。一対の上側溝部41は、夫々、軸Y1から半径方向外側に向かうに連れて上側に向かって延びており、一対の上側溝部41の半径方向内側の縁の間に軸Y1が位置している。
一対の上側溝部41は、夫々、半径方向外側から見た形状が略矩形状となっており、円錐対向面40uから下側における所定の深さの位置に半径方向内側から半径方向外側に向かって背向して半径方向外側に向かうに連れて上側に向かってに延びる傾斜面である底面41tを有している。底面41tは、一対の上側溝部41の下側の境界を画成している。
また、一対の上側溝部41は、夫々、円錐対向面40uから底面41tに向かって軸Y1方向に平行に延びる一対の側面41pを有している。一対の側面41pは、夫々、円錐対向面40uと底面41tとの間の境界を画成している。このため、一対の上側溝部41と上側上部円錐軸受部材50の円錐対向面50b(図3)との間に潤滑油Gを充填することができるようになっている。なお、一対の上側溝部41は、半径方向外側から見た形状が略矩形状に限らず、半径方向外側から見た形状が略V状や略半円状となっており、V状溝や半円状溝であってもよい。
貫通孔40aの上側の端部には、貫通孔40aから半径方向内側に向かって突出する、一部が切り欠かれた円環状のフランジ部42が設けられている。フランジ部42は、軸部材21と同軸となっており、フランジ部42の半径方向内側の直径は、軸部材21の外周面21dの直径よりも小さくなっている。このため、上側下部円錐軸受部材40は、軸部材21が貫通孔40aに挿入されると、フランジ部42が軸部材21に圧入されて軸部材21に固定されるようになっている。フランジ部42は、一対の上側溝部41によりその一部が切り欠かれている。なお、フランジ部42は、一部が切り欠かれた円環状に限らず、一部が貫通孔40aから半径方向内側に向かって突出しており、軸部材21に圧入されていればよい。
図7は、図3に示す上側円錐軸受部材22の上側上部円錐軸受部材50の構成を概略的に示す断面図である。上側下部円錐軸受部材40と上側上部円錐軸受部材50とは、軸部材21に圧入されており、上側上部円錐軸受部材50は、上側下部円錐軸受部材40よりも圧入代が大きい。上側下部円錐軸受部材40の圧入代は5〜20μmであり、上側上部円錐軸受部材50の圧入代は15〜30μmである。上側上部円錐軸受部材50の圧入代の長さは、上側下部円錐軸受部材40の長さよりも長くなっている。具体的に、上側上部円錐軸受部材50は、図7に示すように略円筒状に形成されており、上側上部円錐軸受部材50の略中心には、軸Y1方向に延びる略円筒状の貫通孔50aが形成されている。
上側上部円錐軸受部材50の貫通孔50aは、軸部材21と同軸となっており、貫通孔50aの直径は、軸部材21の外周面21dの直径よりも小さい直径となっている。さらに、貫通孔50aの直径は、上側下部円錐軸受部材40のフランジ部42の半径方向内側の直径よりも小さい直径となっている。このため、上側上部円錐軸受部材50は、軸部材21が貫通孔50aに挿入されると、貫通孔50aが軸部材21に圧入されて軸部材21に固定されるようになっている。このとき、上側上部円錐軸受部材50は、上側下部円錐軸受部材40よりも強く圧入されているため、上側下部円錐軸受部材40よりも締結強度を強くして締結強度を確保することができるようになっている。
上側上部円錐軸受部材50の貫通孔50aの圧入代は、15〜30μmの範囲が好ましく、20〜25μmの範囲が更に好ましく、22〜23μmの範囲が最も好ましい。また、上側下部円錐軸受部材40のフランジ部42の圧入代は、5〜20μmの範囲が好ましく、10〜15μmの範囲が更に好ましく、12〜13μmの範囲が最も好ましい。
上側上部円錐軸受部材50の下側には、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと当接する円錐対向面50bが形成されている。円錐対向面50bは、貫通孔50aの下側の縁から上側に向かうに連れて拡径されているテーパ面である。円錐対向面50bは、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと当接する位置に配置されるようになっている。円錐対向面50bは、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと同じ傾斜を有しており、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと当接することができるようになっている。上側下部円錐軸受部材40の一対の上側溝部41と上側上部円錐軸受部材50の円錐対向面50bとにより潤滑油Gを循環する潤滑油循環孔を画成している。円錐対向面50bの上側の縁は、上側上部円錐軸受部材50の半径方向外側の面である円錐面50dの下側の縁と接続している。
上側上部円錐軸受部材50の円錐面50dは、円錐対向面50bの上側の縁から上側に向かうに連れて縮径されているテーパ面である。円錐面50dの上側の縁は、上側上部円錐軸受部材50の上側の面である上面50uの半径方向外側の縁と接続している。円錐面50dは、上側下部円錐軸受部材40の円錐面40dと同じ傾斜を有しており、上側下部円錐軸受部材40の円錐面40dと滑らかに接続することができるようになっている。上側上部円錐軸受部材50の上面50uは、貫通孔50aの上側の縁から半径方向外側に延びる円環状の平面である。
図3に示すように、スピンドルモータ1の組み立て状態において、上側下部円錐軸受部材40は、貫通孔40aが軸部材21に挿通されると共に、フランジ部42が軸部材21に圧入されて、軸部材21に固定されている。上側下部円錐軸受部材40の下側円錐外面40bは、ロータ部材31において貫通孔31aの上側に設けられた円錐内面31duと対向する位置に配置されている。
上側上部円錐軸受部材50は、貫通孔50aが軸部材21に圧入されて挿入され、軸部材21に固定されている。上側上部円錐軸受部材50の円錐対向面50bは、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと同じ傾斜を有しており、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと当接されている。上側下部円錐軸受部材40の一対の上側溝部41と上側上部円錐軸受部材50の円錐対向面50bとにより潤滑油Gを循環する潤滑油循環孔が画成されている。上側上部円錐軸受部材50の円錐面50dは、上側下部円錐軸受部材40の円錐面40dと同じ傾斜を有しており、上側下部円錐軸受部材40の円錐面40dと滑らかに接続されている。
潤滑油Gは、上側下部円錐軸受部材40の貫通孔40aと軸部材21の外周面21dとの間の微小な隙間、および円錐内面31duと上側下部円錐軸受部材40の下側円錐外面40bとの間の微小な隙間に充填されている。また、潤滑油Gは、上側下部円錐軸受部材40の一対の上側溝部41と上側上部円錐軸受部材50の円錐対向面50bとにより画定された潤滑油循環孔、並びにロータ部材31と上側下部円錐軸受部材40の円錐面40dおよび上側上部円錐軸受部材50の円錐面50dとの間に充填されている。すなわち、上側上部円錐軸受部材50の円錐面50dとロータ部材31との間で潤滑油Gを保持するテーパシール部Tが形成され、上側下部円錐軸受部材40の円錐軸受面としての下側円錐外面40bとロータ部材31との間で潤滑油Gによる動圧が発生する動圧軸受部DBが設けられている。
図8は、図2に示すスピンドルモータ1の下側円錐軸受部材23付近の部分の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。スピンドルモータ1において、下側円錐軸受部材23は、円錐内面31dbと対向して軸部材21に固定された第1円錐軸受部材としての下側上部円錐軸受部材60と、下側上部円錐軸受部材60よりも下側において、下側上部円錐軸受部材60に当接して軸部材21に固定された第2円錐軸受部材としての下側下部円錐軸受部材70とを有している。
下側下部円錐軸受部材70は、下側上部円錐軸受部材60に当接し、下側下部円錐軸受部材70の円錐面70dとロータ部材31との間で潤滑油Gを保持するテーパシール部Tが形成され、下側上部円錐軸受部材60の円錐軸受面としての上側円錐外面60uとロータ部材31との間で潤滑油Gによる動圧が発生する動圧軸受部DBが設けられている。具体的に、下側上部円錐軸受部材60は、図4〜6に示す上側下部円錐軸受部材40と同じ部材で形成されている。すなわち、下側上部円錐軸受部材60は、図4に示すように略円環状に形成されており、図5,6に示すように略円錐状に形成されている。図8に示すように、下側上部円錐軸受部材60の略中心には、軸Y1方向に延びる略円筒状の貫通孔60aが形成されている。下側上部円錐軸受部材60の貫通孔60aは、軸部材21と同軸となっており、貫通孔60aの直径は、軸部材21の外周面21dの直径よりも僅かに大きい直径となっている。このため、貫通孔60aは、軸部材21を挿通することができるようになっており、軸部材21の外周面21dとの間の微小な隙間に潤滑油Gを充填することができるようになっている。
下側上部円錐軸受部材60の上側には、ロータ部材31の円錐内面31dbと対向する上側円錐外面60uが形成されている。上側円錐外面60uは、貫通孔60aの上側の縁から下側に向かうに連れて拡径されているテーパ面である。上側円錐外面60uは、ロータ部材31において貫通孔31aの下側に設けられた円錐内面31dbと対向する位置に配置されるようになっている。上側円錐外面60uの下側の縁は、下側上部円錐軸受部材60の半径方向外側の面である円錐面60dの上側の縁と接続している。
下側上部円錐軸受部材60の円錐面60dは、上側円錐外面60uの下側の縁から下側に向かうに連れて縮径されているテーパ面である。円錐面60dの下側の縁は、下側上部円錐軸受部材60の下側の面である円錐対向面60bの半径方向外側の縁と接続している。下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bは、貫通孔60aの下側の縁から下側に向かうに連れて拡径されているテーパ面である。
下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bには、半径方向内側から半径方向外側に向かって背向して半径方向に延びる一対の溝部としての一対の下側溝部61が形成されている。具体的に、一対の下側溝部61は、夫々、円錐対向面60bから上側に凹んでいる。一対の下側溝部61は、夫々、軸Y1から半径方向外側に向かうに連れて下側に向かって延びており、一対の下側溝部61の半径方向内側の縁の間に軸Y1が位置している。
一対の下側溝部61は、夫々、半径方向外側から見た形状が略矩形状となっており、円錐対向面60bから上側における所定の深さの位置に半径方向内側から半径方向外側に向かって背向して半径方向外側に向かうに連れて下側に向かってに延びる傾斜面である底面61tを有している。底面61tは、一対の下側溝部61の下側の境界を画成している。
また、一対の下側溝部61は、夫々、円錐対向面60bから底面61tに向かって軸Y1方向に平行に延びる一対の側面61pを有している。一対の側面61pは、夫々、円錐対向面60bと底面61tとの間の境界を画成している。このため、一対の下側溝部61と下側下部円錐軸受部材70の円錐対向面70uとの間に潤滑油Gを充填することができるようになっている。なお、一対の下側溝部61は、半径方向外側から見た形状が略矩形状に限らず、半径方向外側から見た形状が略逆V状や略半円状となっており、逆V状溝や半円状溝であってもよい。
貫通孔60aの下側の端部には、貫通孔60aから半径方向内側に向かって突出する、一部が切り欠かれた円環状のフランジ部62が設けられている。フランジ部62は、軸部材21と同軸となっており、フランジ部62の半径方向内側の直径は、軸部材21の外周面21dの直径よりも小さくなっている。このため、下側上部円錐軸受部材60は、軸部材21が貫通孔60aに挿入されると、フランジ部62が軸部材21に圧入されて軸部材21に固定されるようになっている。フランジ部62は、一対の下側溝部61によりその一部が切り欠かれている。なお、フランジ部62は、一部が切り欠かれた円環状に限らず、一部が貫通孔60aから半径方向内側に向かって突出しており、軸部材21に圧入されていればよい。
下側上部円錐軸受部材60と下側下部円錐軸受部材70とは、軸部材21に圧入されており、下側下部円錐軸受部材70は、下側上部円錐軸受部材60よりも圧入代が大きい。下側上部円錐軸受部材60の圧入代は5〜20μmであり、下側下部円錐軸受部材70の圧入代は15〜30μmである。下側下部円錐軸受部材70の圧入代の長さは、下側上部円錐軸受部材60の長さよりも長くなっている。具体的に、下側下部円錐軸受部材70は、図7に示す上側上部円錐軸受部材50と同じ部材で形成されている。すなわち、下側下部円錐軸受部材70は、図7に示すように略円筒状に形成されており、下側下部円錐軸受部材70の略中心には、軸Y1方向に延びる略円筒状の貫通孔70aが形成されている。
下側下部円錐軸受部材70の貫通孔70aは、軸部材21と同軸となっており、貫通孔70aの直径は、軸部材21の外周面21dの直径よりも小さい直径となっている。さらに、貫通孔70aの直径は、下側上部円錐軸受部材60のフランジ部62の半径方向内側の直径よりも小さい直径となっている。このため、下側下部円錐軸受部材70は、軸部材21が貫通孔70aに挿入されると、貫通孔70aが軸部材21に圧入されて軸部材21に固定されるようになっている。このとき、下側下部円錐軸受部材70は、下側上部円錐軸受部材60よりも強く圧入されているため、下側上部円錐軸受部材60よりも締結強度を強くすることができるようになっている。
下側下部円錐軸受部材70の貫通孔70aの圧入代は、15〜30μmの範囲が好ましく、20〜25μmの範囲が更に好ましく、22〜23μmの範囲が最も好ましい。また、下側上部円錐軸受部材60のフランジ部62の圧入代は、5〜20μmの範囲が好ましく、10〜15μmの範囲が更に好ましく、12〜13μmの範囲が最も好ましい。
下側下部円錐軸受部材70の上側には、下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bと当接する円錐対向面70uが形成されている。円錐対向面70uは、貫通孔70aの上側の縁から下側に向かうに連れて拡径されているテーパ面である。円錐対向面70uは、下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bと当接する位置に配置されるようになっている。円錐対向面70uは、下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bと同じ傾斜を有しており、下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bと当接することができるようになっている。下側上部円錐軸受部材60の一対の下側溝部61と下側下部円錐軸受部材70の円錐対向面70uとにより潤滑油Gを循環する潤滑油循環孔を画成している。円錐対向面70uの下側の縁は、下側下部円錐軸受部材70の半径方向外側の面である円錐面70dの上側の縁と接続している。
下側下部円錐軸受部材70の円錐面70dは、円錐対向面70uの下側の縁から下側に向かうに連れて縮径されているテーパ面である。円錐面70dの下側の縁は、下側下部円錐軸受部材70の下側の面である下面70bの半径方向外側の縁と接続している。円錐面70dは、下側上部円錐軸受部材60の円錐面60dと同じ傾斜を有しており、下側上部円錐軸受部材60の円錐面60dと滑らかに接続することができるようになっている。下側下部円錐軸受部材70の下面70bは、貫通孔70aの下側の縁から半径方向外側に延びる円環状の平面である。
図8に示すように、スピンドルモータ1の組み立て状態において、下側上部円錐軸受部材60は、貫通孔60aが軸部材21に挿通されると共に、フランジ部62が軸部材21に圧入されて、軸部材21に固定されている。下側上部円錐軸受部材60の上側円錐外面60uは、ロータ部材31において貫通孔31aの下側に設けられた円錐内面31dbと対向する位置に配置されている。
下側下部円錐軸受部材70は、貫通孔70aが軸部材21に圧入されて挿入され、軸部材21に固定されている。下側下部円錐軸受部材70の円錐対向面70uは、下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bと同じ傾斜を有しており、下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bと当接されている。下側上部円錐軸受部材60の一対の下側溝部61と下側下部円錐軸受部材70の円錐対向面70uとにより潤滑油Gを循環する潤滑油循環孔が画成されている。下側下部円錐軸受部材70の円錐面70dは、下側上部円錐軸受部材60の円錐面60dと同じ傾斜を有しており、下側上部円錐軸受部材60の円錐面60dと滑らかに接続されている。
潤滑油Gは、下側上部円錐軸受部材60の貫通孔60aと軸部材21の外周面21dとの間の微小な隙間、および円錐内面31dbと下側上部円錐軸受部材60の上側円錐外面60uとの間の微小な隙間に充填されている。また、潤滑油Gは、下側上部円錐軸受部材60の一対の下側溝部61と下側下部円錐軸受部材70の円錐対向面70uとにより画定された潤滑油循環孔、並びにロータ部材31と下側上部円錐軸受部材60の円錐面60dおよび下側下部円錐軸受部材70の円錐面70dとの間に充填されている。すなわち、下側下部円錐軸受部材70の円錐面70dとロータ部材31との間で潤滑油Gを保持するテーパシール部Tが形成され、下側上部円錐軸受部材60の円錐軸受面としての上側円錐外面60uとロータ部材31との間で潤滑油Gによる動圧が発生する動圧軸受部DBが設けられている。
このように、本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1では、上側円錐軸受部材22が、円錐内面31duと対向して軸部材21に固定された上側下部円錐軸受部材40と、上側下部円錐軸受部材40に当接して軸部材21に固定された上側上部円錐軸受部材50とを有している。このため、上側下部円錐軸受部材40は、上側上部円錐軸受部材50よりも弱く圧入して、上側下部円錐軸受部材40の下側円錐外面40bの変形を抑制し、駆動時にハードディスク202が振動することを抑制することができる。また、上側上部円錐軸受部材50は、上側下部円錐軸受部材40よりも強く圧入して、上側下部円錐軸受部材40よりも締結強度を強くして締結強度を確保することができ、外部からの衝撃に対する耐久力を向上することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1では、下側円錐軸受部材23が、円錐内面31dbと対向して軸部材21に固定された下側上部円錐軸受部材60と、下側上部円錐軸受部材60に当接して軸部材21に固定された第2円錐軸受部材としての下側下部円錐軸受部材70とを有している。このため、下側上部円錐軸受部材60は、下側下部円錐軸受部材70よりも弱く圧入して、下側上部円錐軸受部材60の上側円錐外面60uの変形を抑制し、駆動時にハードディスク202が振動することを抑制することができる。また、下側下部円錐軸受部材70は、下側上部円錐軸受部材60よりも強く圧入して、下側上部円錐軸受部材60よりも締結強度を強くして締結強度を確保することができ、外部からの衝撃に対する耐久力を向上することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1では、上側円錐軸受部材22が、上側下部円錐軸受部材40と、上側上部円錐軸受部材50との2つの円錐軸受部材により構成されている。このため、上側下部円錐軸受部材40の一対の上側溝部41と上側上部円錐軸受部材50の円錐対向面50bとにより潤滑油循環孔を画成することができ、潤滑油循環孔をドリルによる孔加工ではなく、溝加工により形成することができる。従って、上側円錐軸受部材22の潤滑油循環孔を加工する加工時間を削減することができ、上側円錐軸受部材22を作製するコストを削減することができる。
また、本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1では、下側円錐軸受部材23が、下側上部円錐軸受部材60と、下側下部円錐軸受部材70との2つの円錐軸受部材により構成されている。このため、下側上部円錐軸受部材60の一対の下側溝部61と下側下部円錐軸受部材70の円錐対向面70uとにより潤滑油循環孔を画成することができ、潤滑油循環孔をドリルによる孔加工ではなく、溝加工により形成することができる。従って、下側円錐軸受部材23の潤滑油循環孔を加工する加工時間を削減することができ、下側円錐軸受部材23を作製するコストを削減することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る流体動圧軸受80の構成を説明する。図9は、本発明の第2の実施の形態に係る流体動圧軸受80の上側円錐軸受部材90付近の部分の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。図10は、図9に示す上側円錐軸受部材90の上側上部円錐軸受部材91の構成を概略的に示す断面図である。図11は、流体動圧軸受80の下側円錐軸受部材100付近の部分の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。以下、上述の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1と同一のまたは類似する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
本発明の第2の実施の形態に係る流体動圧軸受80は、上述の本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1に対して上側上部円錐軸受部材および下側下部円錐軸受部材の構成が異なる。具体的に、流体動圧軸受80においては、上側上部円錐軸受部材50に代えて上側上部円錐軸受部材91が設けられており、下側下部円錐軸受部材70に代えて下側下部円錐軸受部材101が設けられている。
上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uには、一対の上側溝部41が形成されており、上側上部円錐軸受部材50の円錐対向面91bcと円錐面50dとの間には、円錐対向面40uと離間して対向する環状の連結面91bdが形成されている。円錐対向面40uと連結面91bdとの間には、一対の上側溝部41と連通する環状の油溜まり部92が形成されている。すなわち、上側上部円錐軸受部材91は、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと当接する円錐対向面91bcと、円錐対向面91bcの半径方向外側に上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと離間する連結面91bdとが形成されている。
円錐対向面91bcは、貫通孔50aの下側の縁から上側に向かうに連れて拡径されているテーパ面である。円錐対向面91bcは、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと当接する位置に配置されるようになっている。円錐対向面91bcは、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと同じ傾斜を有しており、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと当接することができるようになっている。円錐対向面91bcの上側の縁は、連結面91bdの下側の縁に接続している。
連結面91bdは、円錐対向面91bcの上側の縁から上側に向かうに連れて拡径されているテーパ面である。連結面91bdは、円錐対向面91bcおよび上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uよりも半径方向に対して大きい傾斜角度を有しており、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと離間することができるようになっている。
図9に示すように、流体動圧軸受80の組み立て状態において、上側円錐軸受部材90は、上側下部円錐軸受部材40と上側上部円錐軸受部材91との間に、上側上部円錐軸受部材91が半径方向内側から半径方向外側に向かって切り欠かれて形成された油溜まり部92を更に有している。具体的に、油溜まり部92は、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと上側上部円錐軸受部材91の連結面91bdとの間に形成された円環状の空間である。油溜まり部92は、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと離間しており、半径方向内側から半径方向外側に向かうに連れて軸Y1方向における幅が大きくなっている。
下側下部円錐軸受部材101は、図10に示す上側上部円錐軸受部材91と同じ部材で形成されている。すなわち、下側下部円錐軸受部材101は、下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60b(図11)と当接する円錐対向面101ucと、円錐対向面101ucの半径方向外側に下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bと離間する連結面101udとが形成されている。
円錐対向面101ucは、貫通孔70aの上側の縁から下側に向かうに連れて拡径されているテーパ面である。円錐対向面101ucは、下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bと当接する位置に配置されるようになっている。円錐対向面101ucは、下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bと同じ傾斜を有しており、下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bと当接することができるようになっている。円錐対向面101ucの下側の縁は、連結面101udの上側の縁に接続している。
連結面101udは、円錐対向面101ucの下側の縁から下側に向かうに連れて拡径されているテーパ面である。連結面101udは、円錐対向面101ucおよび下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bよりも半径方向に対して大きい傾斜角度を有しており、下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bと離間することができるようになっている。
図11に示すように、流体動圧軸受80の組み立て状態において、下側円錐軸受部材100は、下側上部円錐軸受部材60と下側下部円錐軸受部材101との間に、下側下部円錐軸受部材101が半径方向内側から半径方向外側に向かって切り欠かれて形成された油溜まり部102を更に有している。具体的に、油溜まり部102は、下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bと下側下部円錐軸受部材101の連結面101udとの間に形成された円環状の空間である。油溜まり部102は、下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bと離間しており、半径方向内側から半径方向外側に向かうに連れて軸Y1方向における幅が大きくなっている。
このように、本発明の第2の実施の形態に係る流体動圧軸受80では、上側円錐軸受部材90が、上側下部円錐軸受部材40と上側上部円錐軸受部材91との間に、上側上部円錐軸受部材91が半径方向内側から半径方向外側に向かって切り欠かれて形成された油溜まり部92を有している。また、流体動圧軸受80では、下側円錐軸受部材100が、下側上部円錐軸受部材60と下側下部円錐軸受部材101との間に、下側下部円錐軸受部材101が半径方向内側から半径方向外側に向かって切り欠かれて形成された油溜まり部102を更に有している。このため、油溜まり部92,102の領域の分だけ循環油Gを多く溜めておくことができ、循環油Gが枯渇することによる流体動圧軸受80の故障を抑制して、流体動圧軸受80の寿命を向上することができる。
また、本発明の第2の実施の形態に係る流体動圧軸受80では、上側円錐軸受部材90が、上側下部円錐軸受部材40と、上側上部円錐軸受部材91との2つの円錐軸受部材により構成されている。このため、油溜まり部92を溝加工ではなく上側上部円錐軸受部材91の切削加工により形成することができる。従って、油溜まり部92を加工する加工時間を削減することができ、上側円錐軸受部材90を作製するコストを削減することができる。
また、本発明の第2の実施の形態に係る流体動圧軸受80では、下側円錐軸受部材100が、下側上部円錐軸受部材60と、下側下部円錐軸受部材101との2つの円錐軸受部材により構成されている。このため、油溜まり部102を溝加工ではなく下側下部円錐軸受部材101の切削加工により形成することができる。従って、油溜まり部102を加工する加工時間を削減することができ、下側円錐軸受部材100を作製するコストを削減することができる。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る流体動圧軸受110の構成を説明する。図12は、本発明の第3の実施の形態に係る流体動圧軸受110の上側円錐軸受部材90付近の部分の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。図13は、図12に示す上側円錐軸受部材90の油溜まり部111付近の部分の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。以下、上述の第2の実施の形態に係る流体動圧軸受80と同一のまたは類似する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
本発明の第3の実施の形態に係る流体動圧軸受110は、上述の本発明の第2の実施の形態に係る流体動圧軸受80に対して油溜まり部の構成が異なる。具体的に、流体動圧軸受110においては、油溜まり部92に代えて油溜まり部111が設けられている。
本発明の第3の実施の形態に係る上側上部円錐軸受部材91は、円錐対向面91bcおよび連結面91bdが本発明の第2の実施の形態に係る円錐対向面91bcおよび連結面91bdと異なることを除いて第2の実施の形態に係る上側上部円錐軸受部材91と同様に構成されている。すなわち、本発明の第3の実施の形態に係る円錐対向面91bcの半径方向における幅は、本発明の第2の実施の形態に係る円錐対向面91bcの半径方向における幅よりも大きくなっている。また、本発明の第3の実施の形態に係る連結面91bdの半径方向における幅は、本発明の第2の実施の形態に係る連結面91bdの半径方向における幅よりも小さくなっている。
図12に示すように、流体動圧軸受110の組み立て状態において、上側円錐軸受部材90は、上側下部円錐軸受部材40と上側上部円錐軸受部材91との間に、上側上部円錐軸受部材91が半径方向内側から半径方向外側に向かって切り欠かれて形成された油溜まり部111を有している。具体的に、油溜まり部111は、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと上側上部円錐軸受部材91の連結面91bdとの間に形成された円環状の空間である。油溜まり部111は、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uと離間しており、半径方向内側から半径方向外側に向かうに連れて軸Y1方向における幅が大きくなっている。
図12に示すように、油溜まり部111は、上側下部円錐軸受部材40の一対の上側溝部41の底面41tよりも上側に位置している。具体的に、油溜まり部111は、油溜まり部92の軸Y1方向における下側の部分である上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uとの当接部分Pが、上側下部円錐軸受部材40の一対の上側溝部41の底面41tの半径方向外側の縁E1よりも軸Y1方向において上側に配置されている。このため、上側円錐軸受部材90では、油溜まり部111の領域の分だけ循環油Gを確保することができ、循環油Gが枯渇することによる流体動圧軸受80の故障を抑制して、流体動圧軸受80の寿命を更に向上することができる。
図13に示すように、油溜まり部111の半径方向外側の幅は、油溜まり部111の上側の縁とロータ部材31との間の幅よりも小さくなっている。具体的に、油溜まり部111の半径方向外側の縁における幅(開口幅)W1は、油溜まり部111の上側の縁E2と上側上部円錐軸受部材50の円錐面50dに対向するロータ部材31の内周面との間の幅W2よりも小さくなっている。このため、上側円錐軸受部材90は、油溜まり部111内に気泡が留まることを抑制することができ、気泡を循環油Gの界面に排出することができる。
なお、流体動圧軸受110においては、下側円錐軸受部材100の油溜まり部102に代えて油溜まり部111と同一の構造を有する油溜まり部が設けられている。
次に、本発明の第4の実施の形態に係る流体動圧軸受120の構成を説明する。図14は、本発明の第4の実施の形態に係る流体動圧軸受120の上側円錐軸受部材90付近の部分の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。以下、上述の第3の実施の形態に係る流体動圧軸受110と同一のまたは類似する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
本発明の第4の実施の形態に係る流体動圧軸受120は、上述の本発明の第3の実施の形態に係る流体動圧軸受110に対して上側下部円錐軸受部材の一対の上側溝部の構成が異なる。具体的に、流体動圧軸受120においては、上側下部円錐軸受部材40の一対の上側溝部41に代えて上側下部円錐軸受部材121の一対の上側溝部122が設けられている。
一対の上側溝部122は、本発明の第3の実施の形態に係る一対の上側溝部41よりも軸Y1方向における幅(高さ)が小さくなっていることを除いて、本発明の第3の実施の形態に係る一対の上側溝部41と同様に構成されている。すなわち、一対の上側溝部122は、一対の上側溝部122の一対の側面122pの軸Y1方向における高さが一対の上側溝部41の一対の側面41pよりも小さくなっている。このため、一対の上側溝部122と上側上部円錐軸受部材91の円錐対向面91bcおよび連結面91bdとにより画定された潤滑油循環孔に溜まる潤滑油Gを少なくすることができる。従って、循環油Gが枯渇することによる流体動圧軸受80の故障を少量の潤滑油Gにより抑制して、流体動圧軸受80の寿命を更に向上することができる。
また、本発明の第4の実施の形態に係る流体動圧軸受120では、上側円錐軸受部材90が、上側下部円錐軸受部材121と、上側上部円錐軸受部材91との2つの円錐軸受部材により構成されている。このため、上側下部円錐軸受部材121の一対の上側溝部122と上側上部円錐軸受部材91の円錐対向面91bcおよび連結面91bdとにより潤滑油循環孔を画成することができ、潤滑油循環孔をドリルによる孔加工ではなく、溝加工により形成することができる。従って、簡易な加工により上側円錐軸受部材22の潤滑油循環孔を一対の上側溝部122の軸Y1方向における幅(高さ)を小さくすることができる。
なお、流体動圧軸受120においては、下側上部円錐軸受部材60の一対の下側溝部61に代えて上側下部円錐軸受部材121の一対の上側溝部122と同一の構造を有する一対の下側溝部が設けられている。
次に、本発明の第5の実施の形態に係る流体動圧軸受130の構成を説明する。図15は、本発明の第5の実施の形態に係る流体動圧軸受130の上側円錐軸受部材131付近の部分の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。以下、上述の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1と同一のまたは類似する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
本発明の第5の実施の形態に係る流体動圧軸受130は、上述の本発明の第1の実施の形態に係るスピンドルモータ1に対して上側円錐軸受部材の構成が異なる。具体的に、流体動圧軸受130においては、上側円錐軸受部材22の上側下部円錐軸受部材40および上側上部円錐軸受部材50に代えて上側円錐軸受部材131の上側下部円錐軸受部材132および上側上部円錐軸受部材133が設けられている。
上側下部円錐軸受部材132は、上側上部円錐軸受部材133よりも硬度が高い材料により形成されている。上側上部円錐軸受部材133は例えばプラスチック(樹脂)により形成されているこのため、本発明の第5の実施の形態に係る流体動圧軸受130では、上側上部円錐軸受部材133を上側下部円錐軸受部材132よりもコストの低い材料で作製するため、上側円錐軸受部材131を作製するコストを削減することができる。例えば、上側下部円錐軸受部材132および上側上部円錐軸受部材133は、種々の金属や樹脂により形成することができる。
上側下部円錐軸受部材132には、摩耗を抑えるためや下側円錐外面40bの変形を抑えるために、真鍮や銅合金、鉄系や銅系の焼結金属、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属が用いられる。また、上側下部円錐軸受部材132には、硬度を向上させるために無電解ニッケルメッキが施されてもよい。
また、上側下部円錐軸受部材132の下側円錐外面40bにDLC(diamond-like carbon)、鍍金、二硫化モリブデン、フッ素樹脂等の表面処理や窒化処理を施してもよい。このような表面処理や窒化処理により、接触抵抗を小さくして起動負荷トルクを低減でき、高速耐久性を向上することができ、また、回転時のブレが発生しても摩擦、傷、打痕の発生を防止でき、円滑な回転を可能にすることができる。
上側上部円錐軸受部材133には、例えば、熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルイミド(PEI)等を用いることができる。また、2種類以上の熱可塑性樹脂を混合させた材料を用いることもできる。
また、上側上部円錐軸受部材133は、必ずしも熱可塑性樹脂のみにより形成されたものである必要はなく、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物であってもよい。熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂を使用することが可能である。
また、上側上部円錐軸受部材133としては、液晶ポリマー等も広く利用することができる。
なお、流体動圧軸受130においては、下側円錐軸受部材23の下側上部円錐軸受部材60および下側下部円錐軸受部材70に代えて上側円錐軸受部材131の上側下部円錐軸受部材132および上側上部円錐軸受部材133と同一の材料の下側上部円錐軸受部材および下側下部円錐軸受部材を用いることができる。また、本発明の第5の実施の形態に係る流体動圧軸受130の上側円錐軸受部材131の上側下部円錐軸受部材132および上側上部円錐軸受部材133の材料は、本発明の第1〜4の実施の形態に係るスピンドルモータの上側円錐軸受部材および下側円錐部材にも適用することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題および効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
例えば、本発明の第1の実施の形態に係る流体動圧軸受20においては、上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uに、半径方向内側から半径方向外側に向かって背向して半径方向に延びる一対の上側溝部41が形成されている場合を一例に本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、溝部は、上側上部円錐軸受部材50の円錐対向面50bに形成されていてもよい。すなわち、上側上部円錐軸受部材50と対向する上側下部円錐軸受部材40の円錐対向面40uおよび上側下部円錐軸受部材40と対向する上側上部円錐軸受部材50の円錐対向面50bの少なくともいずれかに半径方向に延在する溝部が形成されていればよい。
また、本発明の第1の実施の形態に係る流体動圧軸受20においては、下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bに、半径方向内側から半径方向外側に向かって背向して半径方向に延びる一対の下側溝部61が形成されている場合を一例に本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、溝部は、下側下部円錐軸受部材70の円錐対向面70uに形成されていてもよい。すなわち、下側下部円錐軸受部材70と対向する下側上部円錐軸受部材60の円錐対向面60bおよび下側上部円錐軸受部材60と対向する下側下部円錐軸受部材70の円錐対向面70uの少なくともいずれかに半径方向に延在する溝部が形成されていればよい。