JP2020109747A - 全固体電池および全固体電池の製造方法 - Google Patents

全固体電池および全固体電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】正極合剤層および負極合剤層の少なくとも一方にバインダーが含まれないにもかかわらず、形状が保持された全固体電池等を提供する。【解決手段】全固体電池100は、正極集電体6、非金属からなる導電剤を少なくとも含み、正極集電体6上に形成された正極接合層4、および、少なくとも正極活物質2と固体電解質1とを含み、正極接合層4上に形成された正極合剤層21を有する正極層20と、負極集電体7、および、少なくとも負極活物質3と固体電解質1とを含む負極合剤層31を有する負極層30と、正極合剤層21と負極合剤層31との間に配置され、固体電解質1を含む固体電解質層40と、を備え、正極合剤層21に含まれるバインダーの濃度が100ppm以下であり、正極合剤層21に含まれる溶剤の濃度が50ppm以下である。【選択図】図1

Description

本開示は、正極層、負極層、固体電解質層、それを用いた全固体電池および全固体電池の製造方法に関する。
近年、パソコンおよび携帯電話などの電子機器の軽量化およびコードレス化などにより、繰り返し使用可能な二次電池の開発が求められている。二次電池として、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、鉛畜電池およびリチウムイオン電池などがある。これらの中でも、リチウムイオン電池は、軽量、高電圧および高エネルギー密度といった特徴があることから、注目を集めている。
リチウムイオン電池は、正極層、負極層およびこれらの間に配置された電解質によって構成されており、電解質には、例えば六フッ化リン酸リチウムなどの支持塩を有機溶剤に溶解させた電解液、または固体電解質が用いられる。現在、広く普及しているリチウムイオン電池は、有機溶剤を含む電解液が用いられているため可燃性である。そのため、リチウムイオン電池の安全性を確保するための材料、構造およびシステムが必要である。これに対し、電解質として不燃性である固体電解質を用いることで、上記、材料、構造およびシステムを簡素化できることが期待され、エネルギー密度の増加、製造コストの低減および生産性の向上を図ることができると考えられる。以下、固体電解質を用いたリチウムイオン電池を、「全固体電池」と呼ぶこととする。
固体電解質は、大きくは有機固体電解質と無機固体電解質とに分けることができる。有機固体電解質は、25℃において、イオン伝導度が10−6S/cm程度であり、電解液のイオン伝導度が10−3S/cm程度であることと比べて極めて低い。そのため、有機固体電解質を用いた全固体電池を25℃の環境で動作させることは困難である。無機固体電解質としては、酸化物系固体電解質と硫化物系固体電解質とがある。これらのイオン伝導度は10−4〜10−3S/cm程度であり、比較的イオン伝導度が高い。酸化物系固体電解質は、粒界抵抗が大きい。そこで、粒界抵抗を下げる手段として、粉体の焼結および薄膜化が検討されているが、焼結した場合は高温での処理により、正極あるいは負極の構成元素と固体電解質との構成元素が相互拡散するため、十分な特性を得ることが難しい。そのため、酸化物系固体電解質を用いた全固体電池は、薄膜での検討が主流である。一方で、硫化物系固体電解質は、酸化物系固体電解質と比べて粒界抵抗が小さいため、粉体の圧縮成型のみで、良好な特性が得られることから、近年盛んに研究が進められている。
塗布型全固体電池は、金属箔からなる集電体上に形成され、正極活物質、固体電解質、およびバインダーを含む正極合剤層と、金属箔からなる集電体上に形成され、負極活物質、固体電解質およびバインダーを含む負極合剤層と、正極層と負極層との間に配置され、固体電解質を含む固体電解質層とから構成されている。塗布型全固体電池は、正極合剤層および負極合剤層の各材料を、有機溶剤を用いてスラリー化し、金属箔上に成膜する工程を経て作製される。塗布型全固体電池の作製後に残存する有機溶剤が、正極合剤層および負極合剤層に含まれる固体電解質を変質させることで、イオン伝導度が低下し、全固体電池の電池特性を低下させる。
この問題を解決するために、特許文献1には、正極合剤層および負極合剤層中に、有機溶剤が実質的に含有されない全固体電池が、開示されている。
特開2018−125260号公報
しかしながら、特許文献1に示される製造方法では、正極合剤層や負極合剤層中の有機溶剤濃度が実質的に含まれない50ppm以下にすることで、全固体電池の電池特性低下は抑制することができるが、それだけでは電池特性が十分に得られたとは言えない。十分な電池特性を確保するためには、正極合剤層および負極合剤層中に含まれるバインダーをなくす必要がある。バインダーは、リチウムイオン伝導および電子伝導を阻害するため、充放電特性を低下させる。ただし、バインダーは接着材となることから、バインダーが正極合剤層および負極合剤層に含まれていない場合、十分な接着強度が得られず、製造工程中、正極層および負極層の膜形状を保持するのが難しく、全固体電池を作製するのが困難である。
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、正極合剤層および負極合剤層の少なくとも一方にバインダーが含まれないにもかかわらず、形状が保持された全固体電池等を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示の一形態に係る全固体電池は、(1)正極集電体、(2)非金属からなる導電剤を少なくとも含み、前記正極集電体上に形成された正極接合層、および、(3)少なくとも正極活物質とイオン伝導性を有する固体電解質とを含み、前記正極接合層上に形成された正極合剤層を有する正極層と、(1)負極集電体、および、(2)少なくとも負極活物質とイオン伝導性を有する固体電解質とを含む負極合剤層を有する負極層と、前記正極合剤層と前記負極合剤層との間に配置され、少なくともイオン伝導性を有する固体電解質を含む固体電解質層と、を備え、前記正極合剤層に含まれるバインダーの濃度が100ppm以下であり、前記正極合剤層に含まれる溶剤の濃度が50ppm以下である。
また、本開示の一形態に係る全固体電池は、(1)正極集電体、および、(2)少なくとも正極活物質とイオン伝導性を有する固体電解質とを含む正極合剤層を有する正極層と、(1)負極集電体、(2)非金属からなる第2導電剤を少なくとも含み、前記負極集電体上に形成された負極接合層、および、(3)少なくとも負極活物質とイオン伝導性を有する固体電解質とを含み、前記負極接合層上に形成された負極合剤層を有する負極層と、前記正極合剤層と前記負極合剤層との間に配置され、少なくともイオン伝導性を有する固体電解質を含む固体電解質層と、を備え、前記負極合剤層に含まれるバインダーの濃度が100ppm以下であり、前記負極合剤層に含まれる溶剤の濃度が50ppm以下である。
また、本開示の一形態に係る全固体電池の製造方法は、溶剤の濃度が50ppm以下であり、バインダーの濃度が100ppm以下である正極合剤層を有する正極層と、負極合剤層を有する負極層と、固体電解質層と、を備える全固体電池の製造方法であって、正極集電体上に、少なくとも導電剤を含む正極接合層を形成する工程と、前記正極接合層上に、少なくとも固体電解質と正極活物質とを含む正極合剤粉を塗工する工程と、前記正極合剤粉を前記正極集電体および前記正極接合層と一緒に積層方向上下からプレスすることで、前記正極集電体、前記正極接合層、および正極合剤層の一体化物である正極層を形成する工程と、前記正極層を用いて、全固体電池を形成する工程と、を含む。
また、本開示の一形態に係る全固体電池の製造方法は、溶剤の濃度が50ppm以下であり、バインダーの濃度が100ppm以下である負極合剤層を有する負極層と、正極合剤層を有する正極層と、固体電解質層と、を備える全固体電池の製造方法であって、負極集電体上に、少なくとも導電剤を含む負極接合層を形成する工程と、前記負極接合層上に、少なくとも固体電解質と負極活物質とを含む負極合剤粉を塗工する工程と、前記負極合剤粉を前記負極集電体および前記負極接合層と一緒に積層方向上下からプレスすることで、前記負極集電体、前記負極接合層および前記負極合剤層の一体化物である負極層を形成する工程と、前記負極層を用いて、全固体電池を形成する工程と、を含む。
本開示により、正極合剤層および負極合剤層の少なくとも一方にバインダーが含まれないにもかかわらず、形状が保持された全固体電池等を提供できる。
図1は、本実施の形態に係る全固体電池の概略断面図である。 図2は、本実施の形態に係る正極層の概略断面図である。 図3は、正極層の従来例を示す概略断面図である。 図4は、本実施の形態に係る負極層の概略断面図である。 図5は、本実施の形態に係る負極層において負極接合層が存在しない場合を示す概略断面図である。 図6は、本実施の形態に係る全固体電池において正極層と固体電解質層との界面に空隙が存在する場合の界面付近の概略断面図である。 図7は、本実施の形態に係る全固体電池における正極層と固体電解質層との界面に空隙が存在しない場合の界面付近の概略断面図である。 図8は、本実施の形態に係る全固体電池の製造方法を示す概略断面図である。 図9は、本実施の形態に係る正極層の製造方法を示す概略断面図である。 図10は、本実施の形態に係る正極層の製造方法においてプレス時間が長い場合を示す概略断面図である。 図11は、本実施の形態に係る負極層の製造方法を示す概略断面図である。 図12は、本実施の形態に係る負極層の製造方法においてプレス時間が長い場合を示す概略断面図である。 図13は、本実施の形態に係る固体電解質層の製造方法を示す概略断面図である。 図14は、本実施の形態に係る固体電解質層の製造方法においてプレス時間が長い場合を示す概略断面図である。
本開示の一態様における全固体電池は、(1)正極集電体、(2)非金属からなる第1導電剤を少なくとも含み、前記正極集電体上に形成された正極接合層、および、(3)少なくとも正極活物質とイオン伝導性を有する固体電解質とを含み、前記正極接合層上に形成された正極合剤層を有する正極層と、(1)負極集電体、および、(2)少なくとも負極活物質とイオン伝導性を有する固体電解質とを含む負極合剤層を有する負極層と、前記正極合剤層と前記負極合剤層との間に配置され、少なくともイオン伝導性を有する固体電解質を含む固体電解質層と、を備え、前記正極合剤層に含まれるバインダーの濃度が100ppm以下であり、前記正極合剤層に含まれる溶剤の濃度が50ppm以下である。
これにより、バインダーが含まれない正極合剤層が、正極接合層を介して、正極集電体と接合されることになる。よって、バインダーが正極合剤層に含まれない場合、正極集電体との接着力が弱くなるために、正極合剤層と正極集電体とが剥離しやすくなるが、正極合剤層と正極接合層とは、正極接合層に含まれる導電剤が、正極合剤層に含まれる固体電解質および正極活物質にくい込むことによるアンカー効果により接着されるため、接着力が強くなる。また、正極集電体と正極接合層とは、正極接合層にバインダーが含まれる場合、バインダーを介して接着される。よって、正極接合層を介して、正極合剤層と正極集電体が強い接着力で接合されるため、正極合剤層にバインダーが含まれないことにより、バインダーによる電池特性の低下が無く、電池特性が向上するにも関わらず、形状が保持された全固体電池を提供できる。
また、正極合剤層に溶剤が含まれないことから、正極合剤層に含まれる固体電解質が溶剤によって劣化せず、全固体電池の電池特性が向上する。
また、例えば、前記全固体電池は、前記正極接合層が、前記第1導電剤として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンブラック、グラファイトおよびカーボンファイバーのうち少なくともひとつを含んでもよい。
これにより、正極接合層に導電性炭素材料が含まれることから、導電性炭素材料が塑性変形しやすく、正極合剤層に含まれる固体電解質および正極活物質に対して、アンカー効果が発揮されやすい。
また、例えば、前記全固体電池は、前記正極接合層の目付量が、0.3g/m以上、3g/m以下であってもよい。
これにより、正極接合層の量が一定範囲となるため、正極合剤層および正極集電体との接着に必要な接着力を維持しつつ、使用量を削減できるため、コストを下げることができる。
また、例えば、前記全固体電池は、前記全固体電池の積層方向と垂直な方向から見て、前記正極合剤層に含まれる前記正極活物質および前記固体電解質の少なくとも一方の一部と前記正極接合層とが重なり、前記正極合剤層と前記正極接合層とが重なる領域の積層方向の厚みが2μm以上6μm以下であってもよい。
これにより、正極合剤層に含まれる正極活物質および固体電解質の少なくとも1つが正極接合層に入り込むことになるため、正極接合層と正極合剤層とは、接触面積が大きくなり、さらに接着力が強くなる。
また、例えば、前記全固体電池では、前記全固体電池を積層方向に切断した断面において、前記正極合剤層と前記固体電解質層との界面に存在する空隙であって、前記界面に沿う平らな辺が2μm以上であり、前記辺からの高さが0.5μm以上である空隙の個数が、前記界面の長さ1mmあたり3個以下であってもよい。
これにより、イオン伝導を阻害する空隙の数が少ないことによって、正極合剤層と固体電解質とのイオン伝導が阻害されにくくなり、全固体電池の電池特性が向上する。
また、本開示の一態様における全固体電池は、(1)正極集電体、および、(2)少なくとも正極活物質とイオン伝導性を有する固体電解質とを含む正極合剤層を有する正極層と、(1)負極集電体、(2)非金属からなる第2導電剤を少なくとも含み、前記負極集電体上に形成された負極接合層、および、(3)少なくとも負極活物質とイオン伝導性を有する固体電解質とを含み、前記負極接合層上に形成された負極合剤層を有する負極層と、前記正極合剤層と前記負極合剤層との間に配置され、少なくともイオン伝導性を有する固体電解質を含む固体電解質層と、を備え、前記負極合剤層に含まれるバインダーの濃度が100ppm以下であり、前記負極合剤層に含まれる溶剤の濃度が50ppm以下である。
これにより、バインダーが含まれない負極合剤層が、負極接合層を介して、負極集電体と接合されることになる。よって、バインダーが負極合剤層に含まれない場合、負極集電体との接着力が弱くなるために、負極合剤層と負極集電体とが剥離しやすくなるが、負極合剤層と負極接合層とは、負極接合層に含まれる導電剤が、負極合剤層に含まれる固体電解質および負極活物質にくい込むことによるアンカー効果と固体電解質および負極活物質と密着することによる分子間力とにより接着されるため、接着力が強くなる。また、負極集電体と負極接合層とは、負極接合層にバインダーが含まれる場合、バインダーを介して接着される。よって、負極接合層を介して、負極合剤層と負極集電体が強い接着力で接合されるため、負極合剤層にバインダーが含まれないことにより、バインダーによる電池特性の低下が無く、電池特性が向上するにも関わらず、形状が保持された全固体電池を提供できる。
また、負極合剤層に溶剤が含まれないことから、負極合剤層に含まれる固体電解質が溶剤によって劣化せず、全固体電池の電池特性が向上する。
また、例えば、前記全固体電池は、前記負極接合層が、前記第2導電剤として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイトおよびカーボンファイバーのうち少なくともひとつを含んでもよい。
これにより、負極接合層に導電性炭素材料が含まれることから、導電性炭素材料が塑性変形しやすく、負極合剤層に含まれる固体電解質および負極活物質に対して、アンカー効果が発揮されやすい。
また、例えば、前記全固体電池は、前記負極接合層の目付量が、0.3g/m以上、3g/m以下であってもよい。
これにより、負極接合層の量が一定範囲となるため、負極合剤層および負極集電体との接着に必要な接着力を維持しつつ、使用量を削減できるため、コストを下げることができる。
また、例えば、前記全固体電池は、前記固体電解質層に含まれるバインダー濃度が100ppm以下であり、前記固体電解質に含まれる溶剤の濃度が50ppm以下であってもよい。
これにより、固体電解質層にバインダーが含まれないために、バインダーによる電池特性の低下が無く、全固体電池の電池特性が向上する。また、固体電解質層に溶剤が含まれないことから、固体電解質層に含まれる固体電解質が溶剤によって劣化せず、全固体電池の電池特性が向上する。
また、本発明の一態様における全固体電池の製造方法は、溶剤の濃度が50ppm以下であり、バインダーの濃度が100ppm以下である正極合剤層を有する正極層と、負極合剤層を有する負極層と、固体電解質層と、を備える全固体電池の製造方法であって、正極集電体上に、少なくとも第1導電剤を含む正極接合層を形成する工程と、前記正極接合層上に、少なくとも固体電解質と正極活物質とを含む正極合剤粉を塗工する工程と、前記正極合剤粉を前記正極集電体および前記正極接合層と一緒に積層方向上下からプレスすることで、前記正極集電体、前記正極接合層、および正極合剤層の一体化物である正極層を形成する工程と、前記正極層を用いて、全固体電池を形成する工程と、を含む。
これにより、バインダーが含まれない正極合剤層が、正極接合層を介して、正極集電体と接合される全固体電池が製造される。よって、バインダーが正極合剤層に含まれない場合、正極集電体との接着力が弱くなるために、正極合剤層と正極集電体とが剥離しやすくなるが、正極合剤層と正極接合層とは、正極接合層に含まれる導電剤が、正極合剤層に含まれる固体電解質および正極活物質にくい込むことによるアンカー効果により接着されるため、接着力が強くなる。また、正極集電体と正極接合層とは、正極接合層にバインダーが含まれる場合、バインダーを介して接着される。よって、正極接合層を介して、正極合剤層と正極集電体が強い接着力で接合されるため、正極合剤層にバインダーが含まれないことにより、バインダーによる電池特性の低下が無く、電池特性が向上するにも関わらず、形状が保持された全固体電池を製造できる。さらに、正極合剤層がプレスされることにより、正極合剤層に含まれる固体電解質もアンカー効果および密着による分子間力により接着材として利用できるようになるため、全固体電池の製造中においても形状が保持されやすくなる。
また、正極合剤層に溶剤が含まれないことから、正極合剤層に含まれる固体電解質が溶剤によって劣化せず、電池特性が向上した全固体電池を製造できる。
また、本発明の一態様における全固体電池の製造方法は、溶剤の濃度が50ppm以下であり、バインダーの濃度が100ppm以下である負極合剤層を有する負極層と、正極合剤層を有する正極層と、固体電解質層と、を備える全固体電池の製造方法であって、負極集電体上に、少なくとも第2導電剤を含む負極接合層を形成する工程と、前記負極接合層上に、少なくとも固体電解質と負極活物質とを含む負極合剤粉を塗工する工程と、前記負極合剤粉を前記負極集電体および前記負極接合層と一緒に積層方向上下からプレスすることで、前記負極集電体、前記負極接合層および前記負極合剤層の一体化物である負極層を形成する工程と、前記負極層を用いて、全固体電池を形成する工程と、を含む。
これにより、バインダーが含まれない負極合剤層が、負極接合層を介して、負極集電体と接合される全固体電池が製造される。よって、バインダーが負極合剤層に含まれない場合、負極集電体との接着力が弱くなるために、負極合剤層と負極集電体とが剥離しやすくなるが、負極合剤層と負極接合層とは、負極接合層に含まれる導電剤が、負極合剤層に含まれる固体電解質および負極活物質にくい込むことによるアンカー効果と固体電解質および負極活物質と密着することによる分子間力とにより接着されるため、接着力が強くなる。また、負極集電体と負極接合層とは、負極接合層にバインダーが含まれる場合、バインダーを介して接着される。よって、負極接合層を介して、負極合剤層と負極集電体が強い接着力で接合されるため、負極合剤層にバインダーが含まれないことにより、バインダーによる電池特性の低下が無く、電池特性が向上するにも関わらず、形状が保持された全固体電池を製造できる。
さらに、負極合剤層がプレスされることにより、負極合剤層に含まれる固体電解質および負極活物質もアンカー効果および密着による分子間力により接着材として利用できるようになるため、全固体電池の製造中においても形状が保持されやすくなる。
また、負極合剤層に溶剤が含まれないことから、負極合剤層に含まれる固体電解質が溶剤によって劣化せず、電池特性が向上した全固体電池を製造できる。
また、例えば、前記全固体電池の製造方法において、前記正極層における前記正極合剤層上、および前記負極層における前記負極合剤層上の少なくとも一方に、固体電解質粉を塗工する工程と、前記固体電解質粉を塗工した前記正極層および前記負極層を積層方向上下からプレスすることで、前記固体電解質粉を塗工した前記正極層および前記負極層の少なくとも一方と一体化した固体電解質層を形成する工程と、をさらに含み、前記固体電解質層中の溶剤の濃度が50ppm以下であり、前記固体電解質層中のバインダーの濃度が100ppm以下であってもよい。
これにより、固体電解質層にバインダーが含まれないために、バインダーによる電池特性の低下が無く、電池特性が向上した全固体電池が製造できる。また、固体電解質層に溶剤が含まれないことから、固体電解質層に含まれる固体電解質が溶剤によって劣化せず、電池特性が向上した全固体電池が製造できる。
さらに、固体電解質層がプレスされることにより、固体電解質層に含まれる固体電解質もアンカー効果および密着による分子間力により接着材として利用できるようになるため、全固体電池の製造中においても形状が保持されやすくなる。
また、例えば、前記全固体電池の製造方法において、前記正極合剤粉をプレスする時間が5秒以下であってもよい。
これにより、プレスによる正極合剤層内の固体電解質の焼結の促進が抑制されるため、正極合剤層に固体電解質層を積層する際に接着力が低下しにくくなる。また、正極合剤層が変形しやすい状態も維持される。よって、正極合剤層と固体電解質層との界面の剥離および当該界面における空隙の発生が抑制されることから、イオン伝導の阻害による電池特性の低下が抑制され、電池特性が向上するとともに、形状が保持された全固体電池が製造できる。
また、例えば、前記全固体電池の製造方法において、前記負極合剤粉をプレスする時間が5秒以下であってもよい。
これにより、プレスによる負極合剤層内の固体電解質の焼結の促進が抑制されるため、負極合剤層に固体電解質層を積層する際に接着力が低下しにくくなる。よって、負極合剤層と固体電解質層との界面の剥離が抑制されることから、イオン伝導の阻害による電池特性の低下が抑制され、電池特性が向上するとともに、形状が保持された全固体電池が製造できる。
また、例えば、前記全固体電池の製造方法において、前記固体電解質粉をプレスする時間が5秒以下であってもよい。
これにより、プレスによる固体電解質層内の固体電解質の焼結の促進が抑制されるため、固体電解質層同士を積層する際に接着力が低下しにくくなる。よって、固体電解質層同士の界面の剥離が抑制されることから、イオン伝導の阻害による電池特性の低下が抑制され、電池特性が向上するとともに、形状が保持された全固体電池が製造できる。
以下、本開示の実施の形態に係る全固体電池について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものであり、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態等は一例であり、本開示を限定するものではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうちの、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、本開示を示すために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではなく、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる場合がある。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡素化される場合がある。
また、本明細書において、平行などの要素間の関係性を示す用語、および、平ら、矩形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
また、本明細書において「平面視」とは、全固体電池の積層方向に沿って全固体電池を見た場合を意味し、本明細書における「厚み」とは、全固体電池および各層の積層方向の長さである。
また、本明細書において、全固体電池の構成における「上」および「下」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)および下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」および「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
また、本明細書において、断面図は、全固体電池の中心部を積層方向に切断した場合の断面を示す図である。
(実施の形態)
以下、本実施の形態に係る全固体電池、および、全固体電池を構成する正極層、負極層、固体電解質層について、図面を参照して詳細に説明する。
[A.全固体電池]
本実施の形態に係る全固体電池100について、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る全固体電池100の概略断面図である。
図1に示されるように、本実施の形態に係る全固体電池100は、例えば、正極集電体6と、正極集電体6上に形成された正極接合層4と、正極接合層4上に形成され、固体電解質1および正極活物質2を含む正極合剤層21とを有する正極層20と、負極集電体7と、負極集電体7上に形成された負極接合層5と、負極接合層5上に形成された固体電解質1および負極活物質3を含む負極合剤層31とを有する負極層30と、正極合剤層21と負極合剤層31との間に配置され、少なくともイオン伝導性を有する固体電解質1を含む固体電解質層40と、を備える。正極合剤層21および負極合剤層31はそれぞれ、正極集電体6上に形成された正極接合層4上および負極集電体7上に形成された負極接合層5上に作製される。全固体電池100は、正極集電体6、正極接合層4、正極合剤層21、固体電解質層40、負極合剤層31、負極接合層5および負極集電体7の順に積層された構造を有する。
つまり、全固体電池100は、(1)正極集電体6、(2)非金属からなる導電剤を少なくとも含み、正極集電体6上に形成された正極接合層4、および、(3)少なくとも正極活物質2とイオン伝導性を有する固体電解質1とを含み、正極接合層4上に形成された正極合剤層21を有する正極層20を備える。また、全固体電池100は、(1)負極集電体7、(2)非金属からなる導電剤を少なくとも含み、負極集電体7上に形成された負極接合層5、および、(3)少なくとも負極活物質3とイオン伝導性を有する固体電解質1とを含み、負極接合層5上に形成された負極合剤層31を有する負極層30を備える。また、全固体電池100は、正極合剤層21と負極合剤層31との間に配置され、少なくともイオン伝導性を有する固体電解質1を含む固体電解質層40と、を備える。
正極合剤層21に含まれるバインダーの濃度が100ppm以下であり、正極合剤層21に含まれる溶剤の濃度が50ppm以下である。
また、負極合剤層31に含まれるバインダーの濃度が100ppm以下であり、負極合剤層31に含まれる溶剤の濃度が50ppm以下である。
このように、全固体電池100において、正極合剤層21に含まれる、バインダーの濃度が100ppm以下、および、溶剤の濃度が50ppm以下であり、かつ、負極合剤層31に含まれる、バインダーの濃度が100ppm以下、および、溶剤の濃度が50ppm以下であることが好ましい。
本明細書において、導電剤は、第1導電剤および第2導電剤の一例である。
なお、正極層20、負極層30、および固体電解質層40の詳細な説明については後述する。
[A−1.バインダー]
本実施の形態に係る全固体電池100では、正極合剤層21にバインダーが含まれない。バインダーとは、具体的には、イオン伝導性や電子伝導性を有さず、全固体電池の充放電特性を阻害させる有機材料であり、正極合剤層21内の材料同士および正極合剤層21と他の層とを接着させる役割を担う接着材である。
また、負極合剤層31にバインダーが含まれない。
これにより、全固体電池100のイオン伝導および電子伝導が阻害されないため、充放電特性の良い全固体電池100を得ることができる。
本明細書において、バインダーが含まれないとは、実質的にバインダーが含まれないことを意味し、正極合剤層21および負極合剤層31に含まれるバインダーの濃度が100ppm以下のことである。
正極合剤層21の任意の単位体積あたりのバインダーの平均濃度は、100ppm以下であることが好ましい。すなわち、正極合剤層21のバインダーの濃度は、全体にわたって100ppm以下であることが好ましい。正極合剤層21のバインダーの濃度が、全体にわたって100ppm以下である、とは、正極合剤層21を任意の単位体積に分割した場合に、いずれの単位体積においてもバインダーの濃度が100ppm以下であることを意味する。すなわち、正極合剤層21中にバインダーの濃度が100ppmより大きい箇所が存在せず、正極合剤層21中にバインダーが均一に分布し、正極合剤層21の全体にわたって実質的にバインダーが含まれないことを意味する。この場合、正極合剤層21中の全体にわたってバインダーの濃度が100ppm以下となることで、正極合剤層21の全体にわたって実質的にバインダーが含まれず、全固体電池100のイオン伝導および電子伝導が特に阻害されにくくなる。
なお、本明細書において、濃度とは、特に断りのない限り、重量基準濃度である。
バインダーの測定方法は、特に限定されず、例えば、ガスクロマトグラフィー、質量変化法等を挙げることができる。
[A−2.導電助剤]
本実施の形態に係る全固体電池100では、必要に応じて正極合剤層21に、導電助剤が含まれてもよい。これにより、全固体電池100では、充放電時の正極合剤層21の電子伝導性を向上させることができ、良好な充放電特性が得られる。
また、全固体電池100では、負極合剤層31にも、必要に応じて導電助剤が含まれてよい。これにより、全固体電池100では、充放電時の負極合剤層31の電子伝導性を向上させることができ、良好な充放電特性が得られる。
[A−3.溶剤]
本実施の形態に係る全固体電池100では、正極合剤層21に含まれる溶剤(具体的には、有機溶剤)の濃度が50ppm以下であり、つまり、正極合剤層21に溶剤が含まれない。
また、全固体電池100では、負極合剤層31に含まれる溶剤(具体的には、有機溶剤)の濃度が50ppm以下であり、つまり、負極合剤層31に溶剤が含まれない。
さらに、全固体電池100では、固体電解質層40に含まれる溶剤(具体的には、有機溶剤)の濃度が50ppm以下であってもよく、つまり、固体電解質層40に溶剤が含まれなくてもよい。
本明細書において、溶剤が含まれないとは、実質的に溶剤が含まれないことを意味し、正極合剤層21、負極合剤層31および固体電解質層40に含まれる溶剤の濃度が50ppm以下のことである。
有機溶剤の測定方法は特に限定されず、例えば、ガスクロマトグラフィー、質量変化法等を挙げることができる。
有機溶剤としては、例えば、無極性有機溶剤若しくは極性有機溶剤、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。無極性有機溶剤としては、例えば、ヘプタン、キシレン、トルエン、またはこれらの組み合わせ等を挙げることができる。極性有機溶剤としては、例えば、第三級アミン系溶剤、エーテル系溶剤、チオール系溶剤、エステル系溶剤、またはこれらの組み合わせ等を挙げることができる。第三級アミン系溶剤として、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン等、エーテル系溶剤として、例えば、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等、チオール系溶剤として、例えば、エタンメルカプタン等、エステル系溶剤として、例えば、酪酸ブチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
なお、正極合剤および負極合剤のスラリーの調製に用いる有機溶剤は、例えば、炭化水素系有機溶剤のヘプタン、トルエン、ヘキサン等が挙げられ、脱水処理して水分含有量を低くした炭化水素系有機溶剤が用いられる。
[B.正極層]
本実施の形態における正極層20について、図1を用いて説明する。
本実施の形態における正極層20は、例えば、金属箔等からなる正極集電体6と、正極集電体6上に形成された正極接合層4と、正極接合層4上に形成された正極合剤層21と、を有する。
[B−1.正極合剤層]
正極合剤層21は、少なくとも正極活物質2および固体電解質1を含んでいればよい。本実施の形態に係る全固体電池100では、例えば、図1に示されるように、正極合剤層21は、固体電解質1および正極活物質2を含んでいる。正極合剤層21には、バインダーが含まれない。ここでバインダーが含まれないとは、バインダーの濃度が100ppm以下のことである。
また、正極合剤層21には、必要に応じて導電助剤が含まれていてよい。
[B−1−1.バインダー]
本実施の形態における、全固体電池100は、正極合剤層21に、バインダーが含まれない特徴を有する。
バインダーは、イオン伝導や電子伝導を有せず、全固体電池の充放電特性を低下させる有機材料であり、正極合剤層21内の材料同士および正極合剤層と他の層とを接着させる役割を担う接着材である。
正極合剤層21にバインダーが含まれないことで、全固体電池100のイオン伝導および電子伝導が阻害されないため、充放電特性の良い全固体電池100を得ることができる。
具体的にバインダーとは、例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムおよびウレタンゴム等の合成ゴム、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリビニルアルコールならびに塩素化ポリエチレン(CPE)等が挙げられる。
正極合剤層21には、接着材となるバインダーが含まれないため、固体電解質1が接着材としても用いられる。
正極合剤層21中の固体電解質1と正極活物質2とは、固体電解質1が正極活物質2にくい込むことによるアンカー効果により接着している。
また、正極合剤層21中の固体電解質1同士は、固体電解質1が焼結されることで、接着している。
正極合剤層21と固体電解質層40とは、それぞれの層に含まれる固体電解質1が、焼結されることで、接着している。また、正極合剤層21と固体電解質層40とは、固体電解質層40に含まれる固体電解質1が、正極合剤層21に含まれる正極活物質2にくい込むことでも接着している。
正極合剤層21と正極接合層4との接着については、[B−2.正極接合層]の項で後述する。
製造工程中における、バインダーが含まれない場合における正極層20の形状維持に関しても、製造方法において後述する。
[B−1−2.導電助剤]
以下、本実施の形態における導電助剤について説明する。
本実施の形態に係る全固体電池100には、正極合剤層21に導電助剤が含まれていてもよい。
これにより、正極合剤層21内の電子伝導度を増加させることができるため、正極合剤層21中の電子伝導経路を確保することができ、全固体電池100の内部抵抗を下げることができる。そのため、電子伝導経路を通じて伝導できる電流量が増大するため、全固体電池100の充放電特性が向上する。
本実施の形態における導電助剤としては、正極合剤層21の電子伝導度を向上させるものであれば特に限定しないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー等の導電性炭素材料が挙げられる。導電助剤は、1種を使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
[B−1−3.正極活物質]
以下、本実施の形態における正極活物質2について説明する。
正極活物質2は、負極層30よりも高い電位で結晶構造内にリチウム(Li)などの金属イオンが挿入または離脱され、リチウムなどの金属イオンの挿入または離脱に伴って酸化または還元が行われる物質である。正極活物質2の種類は、全固体電池100の種類に応じて適宜選択され、例えば、酸化物活物質、硫化物活物質等が挙げられる。
本実施の形態における正極活物質2は、例えば、酸化物活物質(リチウム含有遷移金属酸化物)が用いられる。酸化物活物質としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiCoPO、LiNiPO、LiFePO、LiMnPO、これらの化合物の遷移金属を1または2の異種元素で置換することによって得られる化合物等が挙げられる。上記化合物の遷移金属を1または2の異種元素で置換することによって得られる化合物としては、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiNi0.5Mn1.5等、公知の材料が用いられる。正極活物質2は、1種で使用してもよく、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
正極活物質の形状としては、例えば、粒子状および薄膜状などが挙げられる。正極活物質が粒子状である場合、正極活物質の平均粒径(D50)は、例えば、50nm以上50μm以下の範囲が好ましく、1μm以上15μm以下の範囲内であることがより好ましい。正極活物質の平均粒径を50nm以上とすることで、取扱性が良くなりやすく、一方、平均粒径を50μm以下とすることで、平坦な正極層が得られやすいことから、当該範囲が好ましい。なお、本明細書における「平均粒径」は、レーザ解析および散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積基準の平均径である。
正極合剤層21における正極活物質2の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40重量%以上99重量%以下の範囲内であることが好ましく、中でも70重量%以上95重量%以下であることが好ましい。
正極活物質2の表面は、コート層で被覆されていてもよい。正極活物質2(例えば酸化物活物質)と固体電解質1(例えば、硫化物系固体電解質)との反応を抑制することができるからである。コート層の材料としては、例えば、LiNbO、LiPO、LiPON等のLiイオン伝導性酸化物が挙げられる。コート層の平均厚さは、例えば、1nm以上20nm以下の範囲内であることが好ましく、1nm以上10nm以下の範囲内であることがより好ましい。
正極合剤層21に含まれる正極活物質2と固体電解質1との割合は、重量換算で正極活物質/固体電解質=重量比とした場合に、重量比が1以上19以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、2.3以上19以下の範囲内である。この重量比の範囲内が好ましい理由としては、正極合剤層21内でのリチウムイオン伝導経路および電子伝導経路の両方を確保しやすいためである。
[B−1−4.固体電解質]
以下、本実施の形態における固体電解質1について説明する。
図1に示されるように、本実施の形態における正極合剤層21は、正極活物質2と固体電解質1とを含有する。固体電解質1は、伝導イオン種(例えば、リチウムイオン)に応じて適宜選択すればよく、例えば、大きくは硫化物系固体電解質と酸化物系固体電解質とに分けることが出来る。
本実施の形態における硫化物系固体電解質の種類は特に限定しないが、硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−PおよびLiS−Pなどが挙げられ、特に、リチウムイオン伝導性が優れているためLi、PおよびSを含むことが好ましい。硫化物系固体電解質は、1種で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、硫化物系固体電解質は、結晶質であってもよく、非晶質であってもよく、ガラスセラミックスであってもよい。なお、上記「LiS−P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成を用いてなる硫化物系固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。
本実施の形態においては、硫化物系固体電解質の一形態は、LiSおよびPを含む硫化物ガラスセラミックスであり、LiSおよびPの割合は、モル換算でLiS/P=モル比とした場合、モル比が2.3以上4以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、3以上4以下の範囲内である。このモル比の範囲内が好ましい理由としては、電池特性に影響するリチウム濃度を保ちながら、イオン伝導性の高い結晶構造とするためである。
本実施の形態における硫化物系固体電解質の形状としては、例えば、真球状、楕円球状等の粒子形状、薄膜形状等が挙げられる。硫化物系固体電解質材料が粒子形状である場合、硫化物系固体電解質の平均粒径(D50)は、特に限定されるものではないが正極層内の充填率を向上させやすくなるため、40μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。一方、硫化物系固体電解質の平均粒径は、0.001μm以上であることが好ましく、0.01μm以上であることがより好ましい。なお、平均粒径は、例えば、粒度分布計や、SEM(Scanning Electron Microscope)による画像解析により決定できる。
次に、本実施の形態における酸化物系固体電解質について説明する。酸化物系固体電解質の種類は特に限定しないが、LiPON、LiPO、LiSiO、LiSiO、Li0.5La0.5TiO、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO、La0.51Li0.34TiO0.74、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO等が挙げられる。酸化物系固体電解質は、1種を使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、正極合剤層21、負極合剤層31および固体電解質層40の各層に含まれる固体電解質1の種類および粒径は、各層において異なるものを使い分けてもよい。
[B−2.正極接合層]
本実施の形態における正極接合層4について説明する。
正極接合層4の役割は、正極集電体6と正極合剤層21とを正極接合層4を介して接合することである。正極接合層4は、導電剤が主成分であり、バインダーも含まれる。
全固体電池100が正極接合層4を有さない場合、正極合剤層21にバインダーが含まれていないため、正極集電体6と正極合剤層21との接着力が弱く、界面で剥離が発生する不具合が生じやすい。正極集電体6と正極合剤層21との界面は、より接着力が必要となるため、正極接合層4を用いることで、接着力を補強する。
正極集電体6と正極合剤層21との接着の状態を図2および図3を用いて、詳細に説明する。図2は、本実施の形態における正極集電体6が、正極合剤層21と、正極接合層4を介して接合している状態を示した図である。図3は、従来例における、正極接合層4が存在せず、正極集電体6が、正極合剤層21と接合している状態の正極層20を示した図である。図2および図3は、正極集電体6と正極合剤層21との接合部が示された断面図である。
図2に示されるように、正極接合層4と正極合剤層21とは、正極接合層4中の導電剤が、塑性変形し、正極合剤層21中の正極活物質2同士の間、固体電解質1同士の間および正極活物質2と固体電解質1との間にくい込むことによるアンカー効果で主に接着しており、正極接合層4と正極合剤層21との接合に十分な接着力を得ている。正極接合層4は、正極集電体6に比べ柔らかいため、正極活物質2間等にくい込みやすく、アンカー効果が発揮され、より強い接着力によって正極合剤層21と接合される。正極接合層4は、正極合剤層21中にくい込んで、正極合剤層と重なる領域Wを形成している。つまり、積層方向と垂直な方向から見て、正極合剤層21に含まれる正極活物質2および固体電解質1の少なくとも一方の一部と正極接合層4とが重なる。正極合剤層21と正極接合層4とが重なる領域Wの積層方向の厚みは、例えば1μm〜10μmであり、好ましくは2μm〜6μmである。
アンカー効果とは、ある固体が被着材(接合したいもの)のすき間または被着材の表面にある凹凸に入り込み、機械的結合を発生させることである。アンカー効果は、ファスナー効果または投錨効果ともいう。例えば、被着材の凹部の開口が凹部の底面よりも狭い場合は、被着材の凹部に入り込んだ固体は、被着材の凹部の形状に沿って変形し、開口部が狭いことで、被着材の凹部から特にはずれにくくなる。このような場合、特に強いアンカー効果を期待することができる。
本実施の形態では、正極合剤層21中の正極活物質2および固体電解質1によって形成される表面の凹凸(以下、大きな凹凸と称する場合がある)に、正極接合層4中の導電剤が入り込むことでアンカー効果が生じ、高い密着性を得ることができる。さらに、正極合剤層21中の正極活物質2の表面の微小な凹凸および固体電解質1の表面の微小な凹凸にも正極接合層4中の導電剤が入り込むことで、アンカー効果が生じる。このように、正極合剤層21における大きな凹凸および微小な凹凸の両方に導電剤が入り込むことで、よりアンカー効果が生じるため、正極接合層4と正極合剤層21との接着力が高くなる。
一方、図3に示されるように、正極接合層4が存在せず、直接正極集電体6を正極合剤層21に接合させた場合、正極集電体6は、正極接合層4に比べかたく変形量が小さいため、正極活物質2同士の間、固体電解質1同士の間および正極活物質2と固体電解質1との間に十分にくい込むことができない。そのため、十分なアンカー効果を得ることができず、正極集電体6と正極合剤層21との接着力が弱い。正極集電体6が正極合剤層21へくい込む積層方向の長さは、例えば1μmより小さい。
本実施の形態における正極接合層4中に含まれる導電剤同士は、正極接合層4中に含まれるバインダーを介して接着し、形状を保持する。
正極接合層4と正極集電体6とも、正極接合層4に含まれるバインダーを介して接着している。
正極合剤層21と正極集電体6とは、正極接合層4を介して電子伝導を行う。全固体電池100において、充放電特性を維持するために重要な特性は、正極合剤層21中のイオン伝導度および電子伝導度である。正極接合層4においては、バインダーが含まれるために、電子伝導度が低下しても、主成分が導電剤であり充放電特性を維持するために十分な電子伝導度を有することから、全固体電池100の充放電特性への影響はない。
導電剤は、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー等の導電性炭素材料が挙げられる。導電剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記のように導電剤は、金属ではない非金属からなる導電剤を用いる。導電剤として金属を用いないことで、電池の電位が変わるといった問題、および、金属腐食といった問題を防ぐことができる。
具体的にバインダーとは、例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムおよびウレタンゴム等の合成ゴム、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリビニルアルコールならびに塩素化ポリエチレン(CPE)等が挙げられる。
正極接合層4の目付量は、0.1g/m以上、10g/m以下が好ましい。正極接合層4の目付量を0.1g/m以上にすることにより、正極接合層4と正極合剤層21との接合にアンカー効果が発揮されやすく、接着力が強くなるため、正極接合層4と正極合剤層21との界面剥離を抑制できる。
正極接合層4の目付量を10g/m以下にすることで、正極接合層4と正極合剤層21との接着力向上効果を得ながら、正極接合層4の量が多くなることを避けることができ、コストを抑制できる。
正極接合層4の目付量は、0.3g/m以上、3g/m以下が更に好ましい。0.3g/m以上とすることで、正極接合層4と正極合剤層21との接着力がより強くなり、3g/m以下でも十分な接着力を維持できるためである。
ここで本開示における目付量とは、正極接合層4が形成されている正極集電体6の主面における、平面視での正極接合層4の単位面積あたりの重量である。
正極接合層4の厚みは、例えば1μm以上10μm以下の範囲であり、2μm以上6μm以下であることが好ましい。正極接合層4の厚みを1μm以上にすることで、正極接合層4と正極合剤層21との接合にアンカー効果が発揮されやすく、接着力が強くなるため、正極接合層4と正極合剤層21との界面剥離を抑制できる。正極接合層4の厚みを10μm以下にすることで、正極接合層4と正極合剤層21との接着力向上効果を得ながら、正極接合層4の量が多くなることを避けることができ、コストを抑制できる。
正極接合層4に含まれるバインダー量は、0.1重量%以上10重量%以下が好ましい。正極接合層4に含まれるバインダー量を0.1重量%以上にすることで、正極接合層4と、正極集電体6とが接着されやすくなり、この界面での剥離を抑制できる。正極接合層4に含まれるバインダー量を10重量%以下にすることで、正極接合層4の電子伝導性が低下しにくく、全固体電池の充放電特性が向上しやすい。
[B−3.正極集電体]
本実施の形態における正極層20は、例えば、金属箔等からなる正極集電体6を備える。正極集電体6には、例えば、アルミニウム、金、白金、亜鉛、銅、SUS、ニッケル、スズ、チタン、または、これらの2種以上の合金等からなる箔状体、板状体、網目状体等が用いられる。
また、正極集電体6の厚さおよび形状等については、全固体電池の用途に応じて適宜選択してもよい。
[C.負極層]
本実施の形態における負極層30について、図1を用いて説明する。
本実施の形態における負極層30は、例えば、金属箔等からなる負極集電体7と、負極集電体7上に形成された負極接合層5と、負極接合層5上に形成された負極合剤層31と、を有する。
[C−1.負極合剤層]
負極合剤層31は、少なくとも負極活物質3および固体電解質1を含んでいればよい。本実施の形態に係る全固体電池100では、例えば、図1に示されるように、負極合剤層31は、固体電解質1および負極活物質3を含んでいる。負極合剤層31には、バインダーが含まれない。ここでバインダーが含まれないとは、バインダーの濃度が100ppm以下のことである。
また、負極合剤層31には、必要に応じて導電助剤が含まれていてもよい。
[C−1−1.バインダー]
バインダーの種類については、[B.正極層]の項で上述したバインダーを用いればよいため、ここでの説明を省略する。
本実施の形態における、負極合剤層31には、バインダーが含まれない。
バインダーは、イオン伝導や電子伝導を有せず、全固体電池の充放電特性を低下させる有機材料であり、負極合剤層31内の材料同士および負極合剤層と他の層とを接着させる役割を担う接着材である。
負極合剤層31にバインダーが含まれないことで、全固体電池100のイオン伝導および電子伝導が阻害されないため、充放電特性の良い全固体電池100を得ることができる。
負極合剤層31には、接着材となるバインダーが含まれないため、固体電解質1が接着材としても用いられる。負極合剤層31中の固体電解質1と負極活物質3とは、互いにくい込むことによるアンカー効果により接着している。また、固体電解質1と負極活物質3とが、互いに密着することによる、分子間力での接着力も得られる。
負極合剤層31中の固体電解質1同士は、固体電解質1が焼結されることで、接着している。
負極合剤層31と固体電解質層40との接着は、それぞれの層に含まれる固体電解質1が、焼結されることで、接着している。また、固体電解質層40に含まれる固体電解質1と負極合剤層31に含まれる負極活物質3とが、互いにくい込むことでも接着している。また、固体電解質層40に含まれる固体電解質1と負極合剤層31に含まれる負極活物質3とが、互いに密着することによる、分子間力でも接着力も得る。
負極合剤層31と負極接合層5との接着については、[C−2.負極接合層]の項で後述する。
製造工程中における、バインダーが含まれない場合における負極層30の形状維持に関しては、製造方法において後述する。
[C−1−2.導電助剤]
以下、本実施の形態における導電助剤について説明する。
導電助剤の種類については、[B.正極層」の項で上述した導電助剤を用いればよいため、ここでの説明を省略する。
本実施の形態に係る全固体電池100では、負極合剤層31に導電助剤が含まれていてもよい。これにより、負極合剤層31内の電子伝導度を増加させることができるため、負極合剤層31中の電子伝導経路を確保することができ、全固体電池100の内部抵抗を下げることができる。そのため、電子伝導経路を通じて伝導できる電流量が増大するため、全固体電池100の充放電特性が向上する。
[C−1−3.負極活物質]
本実施の形態における負極活物質3について説明する。
負極活物質3は、正極層20よりも低い電位で結晶構造内にリチウムなどの金属イオンが挿入または離脱され、リチウムなどの金属イオンの挿入または離脱に伴って酸化または還元が行われる物質である。
本実施の形態における負極活物質3としては、例えば、リチウム、インジウム、スズ、ケイ素といったリチウムとの易合金化金属、ハードカーボン、黒鉛等の炭素材料、および、LiTi12、SiO等の酸化物活物質等の、公知の材料が用いられる。また、負極活物質としては、上述した負極活物質を適宜混合した複合体等も用いてもよい。
負極合剤層31に含まれる負極活物質3と固体電解質1との割合は、重量換算で負極活物質/固体電解質=重量比とした場合に、重量比が0.6以上19以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、1以上5.7以下の範囲内である。この重量比の範囲内が好ましい理由としては、負極合剤層31内でのリチウムイオン伝導経路と電子伝導経路の両方を確保するためである。
[C−1−4.固体電解質]
固体電解質1については、[B.正極層]の項で上述した固体電解質を用いればよいため、ここでの説明を省略する。
[C−2.負極接合層]
本実施の形態における負極接合層5について説明する。
負極接合層5の役割は、負極集電体7と負極合剤層31とを接着することである。負極接合層5は、導電剤が主成分であり、バインダーも含まれる。
全固体電池100が負極接合層5を有さない場合、負極合剤層31にバインダーが含まれていないため、負極集電体7と負極合剤層31との接着力が弱く、界面で剥離が発生する不具合が生じやすい。負極集電体7と負極合剤層31との界面は、より接着力が必要となるため、負極接合層5を用いることで、接着力を補強する。
接着の状態を図4および図5を用いて、詳細に説明する。図4は、本実施の形態における負極集電体7が、負極合剤層31と、負極接合層5を介して接合している状態を示した図である。図5は、負極層30において負極接合層5が存在しない場合に、負極集電体7が、負極合剤層31と接合している状態を示した図である。図4および図5は、負極集電体7と負極合剤層31との接合部が示された断面図である。
図4に示されるように、負極接合層5と負極合剤層31とは、柔らかい負極接合層5中の導電剤が塑性変形し、負極合剤層31中の柔らかい負極活物質3および固体電解質1とくい込みあうことによるアンカー効果で接着している。また、負極接合層5と負極合剤層31とは、負極接合層5中の導電剤が、負極合剤層31に含まれる負極活物質3および固体電解質1と、密着することによる分子間力でも接着している。負極接合層5と負極合剤層31とは、これらのアンカー効果および分子間力により十分な接着力を得ている。導電剤が金属である場合、他の物質との分子間力を得ることができないが、本実施の形態では導電剤として金属ではない非金属が用いられるため、負極接合層5と負極合剤層31とは、導電剤と負極合剤層31に含まれる負極活物質3および固体電解質1との密着による分子間力を得ている。
一方、図5に示されるように、負極接合層5がなく、直接負極集電体7を負極合剤層31に接合させた場合、負極集電体7が、負極活物質3および固体電解質1にくい込むことで接合しているが、負極集電体7の凹凸および隙間がほとんどないため、くい込んでも抜けやすくアンカー効果による接着力。また、負極集電体7は、金属であるため、他の物質との分子間力が弱い。よって、負極集電体7と負極合剤層31との接着力が弱くなるが、負極合剤層31に含まれる負極活物質3および固体電解質1が柔らかいことから、塑性変形して負極合剤層31と負極集電体7とが接合することになり、負極合剤層31と負極集電体7との密着性が高くなることで、負極合剤層31と負極集電体7との間の剥離が抑制される。
本実施の形態における負極接合層5に含まれる導電剤同士は、負極接合層5に含まれるバインダーを介して接着し、形状を保持する。
また、負極接合層5と負極集電体7とも、負極接合層5に含まれるバインダーを介して接着している。
負極合剤層31と負極集電体7とは、負極接合層5を介して電子伝導を行う。全固体電池100において、充放電特性を維持するために重要な特性は、負極合剤層31中のイオン伝導度および電子伝導度である。負極接合層5においては、バインダーが含まれるために、電子伝導度が低下しても、主成分が導電剤であり充放電特性を維持するために十分な電子伝導度を有することから、全固体電池100の充放電特性への影響はない。
導電剤およびバインダーの種類に関しては、[B.正極層]の項で上述した導電剤およびバインダーを用いればよいため、説明は省略する。
負極接合層5の目付量は、0.1g/m以上、10g/m以下が好ましい。負極接合層5の目付量を0.1g/m以上にすることで、負極接合層5と負極合剤層31との接合にアンカー効果が発揮されやすく、接着力が強くなるため、負極接合層5と負極合剤層31との界面剥離を抑制できる。
負極接合層5の目付量を、10g/m以下にすることで、負極接合層5と負極合剤層31との接着力向上効果を得ながら、負極接合層5の量が多くなることを避けることができ、コストを抑制できる。
負極接合層5の目付量は、0.3g/m以上、3g/m以下が更に好ましい。0.3g/m以上とすることにより、負極接合層5と負極合剤層31との接着力がより強くなり、3g/m以下でも十分な接着力を維持できるためである。
負極接合層5に含まれるバインダー量は、0.1重量%以上10重量%以下が好ましい。負極接合層5に含まれるバインダー量を0.1重量%以上にすることで、負極接合層5と、負極集電体7とが接着されやすくなり、この界面での剥離が発生しにくくなる。10重量%以下にすることで、負極接合層5の電子伝導度が低下しにくく、全固体電池の充放電特性が向上しやすくなる。
[C−3.負極集電体]
本実施の形態における負極層30は、例えば、金属箔等からなる負極集電体7を備える。負極集電体7には、例えば、SUS、金、白金、亜鉛、銅、ニッケル、チタン、スズ、または、これらの2種以上の合金等からなる箔状体、板状体、網目状体等が用いられる。
また、負極集電体7の厚さおよび形状等については、全固体電池の用途に応じて適宜選択してもよい。
[D.固体電解質層]
次に、固体電解質層40について説明する。本実施の形態における固体電解質層40は、少なくともリチウムイオン伝導性を有する固体電解質1を含む。
[D−1.バインダー]
バインダーの種類については、[B.正極層]の項で上述したバインダーを用いればよいため、ここでの説明を省略する。
固体電解質層40には、固体電解質層40のリチウムイオン伝導を阻害し、全固体電池100の充放電特性を低下させるため、バインダーが含まれないことが好ましい。ここでバインダーが含まれないとは、バインダーの含有量が100ppm以下のことである。
バインダーが含まれない場合、固体電解質1を接着材として用いる。固体電解質1同士は、固体電解質1が焼結することで、接着している。
[D−2.固体電解質]
固体電解質1については、[B.正極層]の項で上述した固体電解質を用いればよいため、ここでの説明を省略する。
[E.正極合剤層と固体電解質層の界面]
図6は、本実施の形態に係る全固体電池100において、正極合剤層21と固体電解質層40との界面に空隙41が存在する場合の、正極合剤層21と固体電解質層40との界面付近を示す概略断面図である。
全固体電池100を積層方向に切断した断面において、空隙41は、固体電解質層40の表面が凹むように形成された、正極合剤層21と固体電解質層40との界面に存在する空間である。空隙41は、図6に示されるように、正極合剤層21と固体電解質層40との界面に沿う平らな辺Lを有し、辺Lから垂直な方向の高さHを有する。空隙41は、正極合剤層21と固体電解質層40との界面に存在する空隙であって、Lが2μm以上であり、Hが0.5μm以上である空隙である。なお、本明細書において、正極合剤層21と固体電解質層40との界面には、正極合剤層21と固体電解質層40とが接する面だけではなく、空隙41を囲む面も含まれる。つまり、正極合剤層21と固体電解質層40との界面に存在する空隙41とは、正極合剤層21と固体電解質層40との界面に接する空隙である。また、空隙41は、正極合剤層21の固体電解質層40側の面と、固体電解質層40の正極合剤層21側の面とに囲まれた空間である。
空隙41は、後述する[G.製造方法]の、正極合剤粉を正極集電体6および正極接合層4と一緒に積層方向上下からプレスすることで、正極集電体6、正極接合層4、および正極合剤層21の一体化物である正極層20を形成する正極層一体化工程において、プレス時間が長い場合に発生しやすい。この工程でのプレス時間が長いと、固体電解質1の焼結が促進され、正極合剤層21が変形しにくくなるため、その後の固体電解質層40との一体化工程および積層工程でのプレスにおいて、正極合剤層21と固体電解質層40とがお互いに変形しながら密着しにくい。そのため、正極合剤層21と固体電解質層40との界面に空隙41が形成されることを抑制しにくい。すなわち、正極合剤層21が変形しにくいため、固体電解質層40との一体化工程および積層工程でのプレスの際に、正極合剤層21と固体電解質層40との界面において、界面に沿って平な部分Lを有する空間ができやすく、固体電解質層40の表面が凹むように空隙41が形成されやすい。
全固体電池100を積層方向に切断した断面において、正極合剤層21と固体電解質層40との界面に存在する空隙41の個数は、界面の長さ1mmあたり3個以下であることが好ましい。この場合、正極合剤層21と固体電解質1とのイオン伝導が阻害されにくくなり、全固体電池100の電池特性が向上しやすくなる。正極合剤層21と固体電解質層40との界面存在する空隙41の個数は、界面の長さ1mmあたり2個以下であることがより好ましく、1個以下であることがさらに好ましい。なお、正極合剤層21と固体電解質層40との界面に存在する空隙41の個数は、例えば、一定範囲の全固体電池100の断面のSEM画像から計測することにより決定できる。
正極合剤層21と固体電解質層40との界面には、空隙41が存在しないことが特に好ましい。すなわち、正極合剤層21と固体電解質層40との界面に存在する空隙41の個数は、界面の長さ1mmあたり0個であることが特に好ましい。この場合、正極合剤層21と固体電解質1とのイオン伝導が特に阻害されにくいため、全固体電池の電池特性が特に向上しやすい。
図7は、本実施の形態に係る全固体電池100において、正極合剤層21と固体電解質層40との界面に空隙41が存在しない場合の、正極合剤層21と固体電解質層40との界面付近を示す概略断面図である。図7では、正極合剤層21と固体電解質層40との界面は平らな形状ではなく、正極合剤層21と固体電解質層40とがお互いに変形して密着している。このように、正極合剤層21と固体電解質層40との界面にそって空隙41が形成されていない場合、電池特性が特に向上しやすい。
正極合剤粉を正極集電体6および正極接合層4と一緒に積層方向上下からプレスすることで、正極集電体6、正極接合層4、および正極合剤層21の一体化物である正極層20を形成する正極層一体化工程において、プレス時間を適宜変更することによって、界面における空隙41の個数は、調整することができる。空隙41の形成は、プレス時間が短い場合に抑制されやすい。これは、この工程でのプレス時間が短いと、正極合剤層21が変形しやすい状態が維持されるので、その後の固体電解質層40の一体化工程および積層工程でのプレスにおいて、正極合剤層21と固体電解質層40とがお互いに変形しやすいためであると考えられる。これにより、正極合剤層21と固体電解質層40との界面に空隙41が形成されることを抑制できる。
[F.その他の構成]
本実施の形態に係る全固体電池100は、図示しないが、正極集電体6の正極合剤層21とは反対側の表面に端子(金属製正極リード)を溶接して取り付けられてもよく、負極集電体7の負極合剤層31とは反対側の表面に端子(金属製負極リード)を溶接して取り付けられてもよい。こうして端子が取り付けられて得られた全固体電池、または複数個の上記全固体電池が接続して得られた電池群は、電池用ケースに収納され、正極リードおよび負極リードが電池用ケースの外部に導出され、電池用ケースが封止されるように構成された全固体電池としてもよい。
ここで、電池用ケースとしては、例えば、アルミラミネートフィルム等からなる袋、金属製(例えば、SUS、鉄、アルミニウム等)または樹脂製の任意の形状のケース等が用いられる。
[G.製造方法]
[G−1.全固体電池の製造方法]
本実施の形態に係る全固体電池100の製造方法について、図8を用いて説明する。図8は、全固体電池100の製造方法の一例を示す概略断面図である。
全固体電池100は、例えば、正極層20を準備する正極層成膜工程(図8の(a))と、負極層30を準備する負極層成膜工程(図8の(b))と、固体電解質層40を準備する固体電解質層成膜工程(図8の(c)および(d))と、準備した正極層20、負極層30、および固体電解質層40を、正極合剤層21と負極合剤層31との間に固体電解質層40が配置されるように合わせ積層する積層工程(図8の(e)および(f))と、を有する。
なお、正極層20、負極層30および固体電解質層40を準備する成膜工程については、各層の製造方法の項にて後述するとおりである。
積層工程では、各成膜工程により得られた正極層20、負極層30、および固体電解質層40を、正極合剤層21と負極合剤層31との間に固体電解質層40が配置されるように積層した後、正極集電体6および負極集電体7の積層方向上下から、例えば、400MPaでプレスを行い、全固体電池100を得る。プレスにより、固体電解質層40同士の接合、正極層20と固体電解質層40との接合と、負極層30と固体電解質層40との接合がより強固となる。なお、プレス時に全固体電池100を加熱し、全固体電池100に含まれる固体電解質1の焼結を促進させることで、接合を強化することもできる。
なお、固体電解質層40を準備する固体電解質層成膜工程において、図8では、正極層20および負極層30の両方に、固体電解質層40を製膜する方法が示されているが、正極層20および負極層30のいずれか一方だけに、固体電解質層40を成膜してもよい。
[G−2.正極層の製造方法]
本実施の形態における正極層20の製造方法について、図9および図10を用いて説明する。図9および図10は、正極層20の製造の各工程における断面図である。図9は、後述する正極層一体化工程におけるプレス時間が短い場合を示しており、図10は、後述する正極層一体化工程におけるプレス時間が長い場合を示している。
正極層成膜工程は、有機溶剤濃度が50ppm以下であり、バインダーの濃度が100ppm以下である正極合剤層21を有する正極層20を形成する工程である。正極層成膜工程は、正極集電体6上の少なくとも片面に、少なくとも導電剤を含む正極接合層4を形成する正極接合層形成工程と、正極接合層4が形成されている面の上に、少なくとも固体電解質1と正極活物質2とを含み、必要に応じて導電助剤が添加された正極合剤粉を塗工する正極層塗布工程と、正極合剤粉をプレスすることで、正極集電体6、正極接合層4および正極合剤層21の一体化物である正極層20を形成する正極層一体化工程と、を含む。
[G−2−0.正極接合層形成工程]
正極接合層形成工程は、図9の(a)に示されるように、正極集電体6上に、正極接合層4を形成する工程である。例えば、正極集電体6上に、導電剤とバインダーとを含むペーストを塗布し、乾燥させることにより、正極接合層4を形成する。
[G−2−1.正極層塗布工程]
正極層塗布工程では、まず固体電解質1と正極活物質2とを含み、必要に応じで導電助剤を添加して、それぞれの材料を混ぜることにより分散させ、正極合剤粉を作製する。
また、正極接合層形成工程によって作製した正極接合層4が形成されている正極集電体6を用意する。
図9の(b)に示されるように、得られた正極合剤粉を、正極接合層4上に塗布する。正極合剤粉には、バインダーが含まれていないのが特徴であり、バインダー濃度は100ppm以下である。
正極合剤粉を正極接合層4上に塗布する方法としては、有機溶剤を含まない正極合剤粉を振動フィーダ、テーブルフィーダまたはスクリューフィーダを用いて塗布する方法もしくは静電塗布等がある。これらの方法の中でも、電圧差を利用し、粉末を正極接合層4上にたたきつけることで、正極合剤粉を塗布した直後から、正極合剤粉を正極接合層4上に仮固定できるため、静電塗布が好ましい方法である。
また、上記の製造方法を用いることで、有機溶剤を用いないため、正極合剤層21において有機溶剤の濃度は、50ppm以下となり、有機溶剤による固体電解質1の劣化も防ぐことができる。
有機溶剤の測定方法は特に限定されず、例えば、ガスクロマトグラフィー、質量変化法等を挙げることができる。
[G−2−2.正極層一体化工程]
正極層一体化工程では、図9の(c)に示されるように、正極合剤粉を正極集電体6および正極接合層4と一緒に積層方向上下からプレスすることにより、正極合剤層21、正極接合層4、および正極集電体6からなる一体化物である正極層20を作製する。このプレスする工程により、接着材となるバインダーが正極合剤層21に含まれないにも関わらず、固体電解質1を接着材として利用することができるようになり、引き続き行われる製造工程中も、正極層20から正極合剤粉が脱落することなくハンドリングできるようになる。なお、正極層一体化工程でのプレスは、加熱プレスすれば、より緻密度の高い正極合剤層21を得ることができる。
固体電解質1による接着のメカニズムとしては、次の2つが挙げられる。(1)正極合剤層21中の固体電解質1と正極活物質2とは、固体電解質1が正極活物質2にくい込むことによるアンカー効果により接着する。(2)正極合剤層21中の固体電解質1同士は、互いに密着することで、分子間力により接着したり、互いにくい込むことによるアンカー効果により接着したりする。
また、正極接合層4と正極合剤層21とは、正極接合層4に含まれる導電剤が、塑性変形し、正極合剤層21中の、正極活物質2同士の間、固体電解質1同士の間および正極活物質2と固体電解質1との間にくい込むことによるアンカー効果により接着する。
図9は、上述のように正極層一体化工程においてプレスする時間が短時間の場合を示す図である。プレスする時間を短くすることにより、図9の(c)で示されるように、正極層成膜工程の正極層一体化工程において、固体電解質1の焼結の促進を抑えることができる。これにより、固体電解質層成膜工程(図9の(d))で固体電解質層40を正極合剤層21上に形成したのちに行われる積層工程において(図9の(e)、負極層は図示せず)、固体電解質層40と正極合剤層21との界面は、接着性が良好となる。また、正極合剤層21が変形しやすい状態が維持されるので、その後の固体電解質層40の一体化工程および積層工程でのプレスにおいて、正極合剤層21と固体電解質層40とがお互いに変形しやすく、空隙41が形成されにくい。よって、固体電解質層40と正極合剤層21との界面において、良好なイオン伝導を保つことができるため、全固体電池100の電池特性を向上させることができる。
固体電解質層40と正極合剤層21との接着性が良好となる理由としては、図9の(c)に示される正極層一体化工程の段階で、固体電解質1の焼結を抑制しておくことで、のちに行われる積層工程において、固体電解質層40に含まれる固体電解質1と、正極合剤層21に含まれる固体電解質1との焼結がスムーズに進むためである。
一方、図10は、正極層成膜工程の正極層一体化工程においてプレス時間が長い場合を説明するための図である。
図10の(c)に示されるように、プレスする時間が長い場合には、正極層一体化工程において、固体電解質1の焼結が促進された状態となる。これにより、固体電解質層成膜工程(図10の(d))で固体電解質層40を正極合剤層21上に形成したのちに行われる積層工程において(図10の(e)、負極層は図示せず)、固体電解質層40と正極合剤層21とが接着しにくい。また、正極合剤層21が変形しにくいため、固体電解質層40と正極合剤層21との間で界面剥離8および界面の空隙41が発生しやすい。この界面剥離8および空隙41により、イオン伝導が阻害されやすくなり、全固体電池100の電池特性が向上しない可能性がある。
固体電解質層40と正極合剤層21とが接着しにくいなる理由としては、図10の(c)に示される正極層一体化工程の段階で、固体電解質1の焼結が促進されているため、のちに行われる積層工程において、固体電解質層40に含まれる固体電解質1と、正極合剤層21に含まれる固体電解質1との焼結が促進されにくいためである。
プレスする圧力は、10MPa以上、3000MPa以下であることが好ましい。プレスする圧力を10MPa以上とすることで、十分な接着力を得ることができ、引き続き行われる行程中に固体電解質1および正極活物質2が正極合剤層21から脱落する不具合を抑制できる。また、プレスする圧力を3000MPa以下にすることで、加圧が大きすぎることがなく、正極集電体6が破断する不具合を抑制できる。
正極合剤層21の充填率を増加させる観点から、プレスする圧力は、400MPa以上、3000MPa以下であることがより好ましい。
正極合剤層21の充填率を増加させることで、正極合剤層21において、リチウムイオン伝導性および電子伝導性を向上させることができ、良好な電池特性が得られる。
正極合剤層21の充填率を高めるためには、正極層成膜工程で、高圧でプレスし、充填しておく方がよい。あとの積層工程において、高圧でプレスをする場合には、固体電解質層40が薄いため、負極合剤層31と正極合剤層21とが接触し、短絡する不具合が発生するおそれがある。
なお、充填率とは、ある物体の見かけ体積に対して、その物体の占める全物質の体積の割合を意味する。例えば、正極合剤層21の充填率とは、正極合剤層21の見かけ体積に対する、正極合剤層21を構成している全物質の体積の割合を意味する。プレスする温度は、正極合剤層21に含まれる材料に応じて適宜設定すればよいが、例えば、20℃以上300℃以下である。含まれる固体電解質を軟化させて正極合剤層21の緻密度を向上させるためには加熱して20℃以上にすることが好ましい。一方、加熱しすぎによる焼結が進みすぎることを抑制し、層間を接合する工程で層間が焼結されるため、300℃以下であることが好ましい。
上述した製造方法におけるプレス方法としては、特に制限されることはなく、公知のプレス方法を採用してよい。
上述の方法を用いることで、イオン伝導を阻害するバインダーが含まれない正極合剤層21を有する全固体電池100を作製するこができるので、良好な充放電特性の全固体電池を得ることができる。
また、接着材となるバインダーを含まないが、プレスすることで固体電解質1を接着材として用いることができるため、正極合剤層21から正極活物質2および、固体電解質1が脱落することを抑制でき、良好な充放電特性を有する全固体電池100を得ることができる。
また、正極層一体化工程におけるプレスする時間を短時間化することで、最終的に得られる全固体電池100において正極合剤層21と固体電解質層40との界面の接着が良好な状態を保てるので、イオン伝導が阻害されることがなく、良好な充放電特性を有する全固体電池100を得ることができる。
さらに、正極合剤層21の製造工程において有機溶剤を用いないことから、正極合剤層21には実質的に有機溶剤が含まれないため、有機溶剤による正極合剤層21の低下がなく、良好な充放電特性を有する全固体電池100を作製することができる。
正極層一体化工程におけるプレスする時間は、上述のように固体電解質1の焼結を抑制する観点から、5秒以下が好ましい。プレスする時間を5秒以下にすることにより、固体電解質層40と正極合剤層21との間で界面剥離8および界面の空隙41の発生が抑制されるため、全固体電池100の電池特性が向上するとともに、全固体電池100の形状が保持される。
[G−3.負極層の製造方法]
次に、本実施の形態における負極層30の製造方法について、図11および図12を用いて説明する。図11および図12は、負極層30の製造の各工程における断面図である。図11は、後述する負極層一体化工程におけるプレス時間が短い場合を示しており、図12は、後述する負極層一体化工程におけるプレス時間が長い場合を示している。
負極層30は、使用する材料を負極層30用に変更する点と、好ましいプレス圧力を変更する以外は、上述の正極層20と、基本的に同様の方法により作製することができる。
負極層成膜工程は、有機溶剤濃度が50ppm以下であり、バインダーの濃度が100ppm以下である負極合剤層31を有する負極層30を形成する工程である。負極層成膜工程は、負極集電体7上の少なくとも片面に、少なくとも導電剤を含む負極接合層5を形成する負極接合層形成工程と、形成された負極接合層5上に、少なくとも固体電解質1と負極活物質3とを含み、必要に応じて導電助剤が添加された負極合剤粉を塗工する負極層塗布工程と、負極合剤粉をプレスすることで、負極集電体7、負極接合層5および負極合剤層31の一体化物である負極層30を形成する負極層一体化工程と、を含む。
[G−3−0.負極接合層形成工程]
負極接合層形成工程は、図11の(a)に示されるように、負極集電体7上に、負極接合層5を形成する工程である。例えば、負極集電体7上に、導電剤とバインダーとを含むペーストを塗布し、乾燥させることにより、負極接合層5を形成する。
[G−3−1.負極層塗布工程]
負極層塗布工程では、まず固体電解質1と負極活物質3とを含み、必要に応じで導電助剤を添加して、それぞれの材料を混ぜることにより分散させ、負極合剤粉を作製する。
また、負極接合層形成工程によって作製した負極接合層5が形成されている負極集電体7を用意する。
図11の(b)に示されるように、得られた負極合剤粉を、負極接合層5上に塗布する。負極合剤粉には、バインダーが含まれていないのが特徴であり、バインダー濃度は100ppm以下である。
負極合剤粉を負極接合層5上に塗布する方法としては、有機溶剤を含まない負極合剤粉を振動フィーダ、テーブルフィーダまたはスクリューフィーダを用いて塗布する方法もしくは静電塗布等がある。これらの方法の中でも、電圧差を利用し、粉末を負極接合層5上にたたきつけることで、負極合剤粉を塗布した直後から、負極合剤粉を負極接合層5上に仮固定できるため、静電塗布が好ましい方法である。
また、上記の製造方法を用いることで、有機溶剤を用いないため、負極合剤層31において、有機溶剤の濃度は、50ppm以下となり、有機溶剤による固体電解質1の劣化も防ぐことができる。
[G−3−2.負極層一体化工程]
負極層一体化工程では、図11の(c)に示されるように、負極合剤粉を負極集電体7および負極接合層5と一緒に積層方向上下からプレスすることにより、負極合剤層31、負極接合層5、および負極集電体7からなる一体化物である負極層30を作製する。このプレス工程により、接着材となるバインダーが負極合剤層31に含まれないにも関わらず、固体電解質1を接着材として利用することができるようになり、引き続き行われる行程中も、負極層30から負極合剤粉が脱落することなくハンドリングできるようになる。負極層一体化工程でのプレスは、加熱プレスである。
固体電解質1による接着のメカニズムとしては、次の3つが挙げられる。(1)負極合剤層31中の固体電解質1と負極活物質3とは、互いにくい込むことによるアンカー効果により接着する。(2)固体電解質1と負極活物質3とが、互いに密着することにより、分子間力で接着力を得る。(3)負極合剤層31中の固体電解質1同士は、互いに密着することで、分子間力により接着したり、互いにくい込むことによるアンカー効果により接着したりする。
また、負極接合層5と負極合剤層31とは、負極接合層5と、負極合剤層31に含まれる負極活物質3および固体電解質1とが、密着することによる、分子間力でも接着力を得る。特に、負極合剤層31に含まれる負極活物質3が導電性炭素材料である場合、負極合剤層31は、負極接合層5と強い接着力を得られるので好ましい。負極活物質3が導電性炭素材料であることが好ましい理由としては、負極接合層5の主成分は、導電性炭素材料であり、負極合剤層31に含まれる負極活物質3と同じ材料系になり、材料の親和性が高くなるためである。
図11は、上述のように負極層一体化工程においてプレスする時間が短時間の場合を示す図である。プレスする時間を短くすることにより、図11の(c)で示されるように、負極層成膜工程の負極層一体化工程において、固体電解質1の焼結の促進を抑えることができる。これにより、固体電解質層成膜工程(図11の(d))で、固体電解質層40を負極合剤層31上に形成したのちに行われる積層工程において(図11の(e)、正極層は図示せず)、固体電解質層40と負極合剤層31との界面は、接着性が良好となる。よって、固体電解質層40と負極合剤層31との界面において、良好なイオン伝導を保つことができるため、全固体電池100の電池特性を向上できる。
固体電解質層40と負極合剤層31との接着性が良好となる理由としては、図11の(c)で示される負極層一体化工程の段階で、固体電解質1の焼結を抑制しておくことで、のちに行われる積層工程において、固体電解質層40に含まれる固体電解質1と、負極合剤層31に含まれる固体電解質1との焼結がスムーズに進むためである。
一方、図12は、負極層成膜工程の負極層一体化工程においてプレス時間が長い場合を説明するための図である。
図12の(c)に示されるように、プレスする時間が長い場合には、負極層一体化工程において、固体電解質1の焼結が促進された状態となる。これにより、固体電解質層成膜工程(図12の(d))で、固体電解質層40を負極合剤層31上に形成したのちに行われる積層工程において(図12の(e)、正極層は図示せず)、固体電解質層40と負極合剤層31とが接着しにくく、固体電解質層40と負極合剤層31との間で界面剥離9が発生する。この界面剥離により、イオン伝導が阻害されやすく、全固体電池100の電池特性が向上しない可能性がある。
固体電解質層40と負極合剤層31とが接着しにくい理由としては、図12の(c)に示される負極層一体化工程の段階で、固体電解質1の焼結が促進されているため、のちに行われる積層工程において、固体電解質層40に含まれる固体電解質1と、負極合剤層31に含まれる固体電解質1との焼結が促進されにくいためである。
プレスする圧力は、10MPa以上、3000MPa以下であることが好ましい。プレスする圧力を10MPa以上とすることで、十分な接着力を得ることができ、引き続き行われる行程中に固体電解質1および負極活物質3が負極合剤層31から脱落する不具合を抑制できる。またプレスする圧力を3000MPa以下とすることで、加圧が大きすぎることがなく、負極集電体7が破断する不具合を抑制できる。
負極合剤層31の充填率を増加させる観点から、プレスする圧力は、50MPa以上、1000MPa以下であることがより好ましい。負極合剤層31は、正極合剤層21に比べて変形しやすいので、上述の正極層一体化工程におけるプレス圧力よりも低いプレス圧力で充填率を増加させることが可能である。
負極合剤層31の充填率を増加させることで、負極合剤層31において、リチウムイオン伝導性および電子伝導性を向上させることができ、良好な電池特性が得られる。
負極合剤層31の充填率を高めるためには、負極層成膜工程で、高圧でプレスし、充填しておく方がよい。あとの積層工程において、高圧でプレスをする場合には、固体電解質層40が薄いため、負極合剤層31と正極合剤層21とが接触し、短絡する不具合が発生するおそれがある。
なお、充填率とは、ある物体の見かけ体積に対して、その物体の占める全物質の体積の割合を意味する。例えば、負極合剤層31の充填率とは、負極合剤層31の見かけ体積に対する、負極合剤層31を構成している全物質の体積の割合を意味する。プレスする温度は、負極合剤層31に含まれる材料に応じて適宜設定すればよいが、例えば、20℃以上300℃以下である。含まれる固体電解質を軟化させて負極合剤層31の緻密度を向上させるためには加熱して20℃以上にすることが好ましい。一方、加熱しすぎによる焼結が進みすぎることを抑制し、層間を接合する工程で層間が焼結されるため、300℃以下であることが好ましい。
上述した製造方法におけるプレス方法としては、特に制限されることはなく、公知のプレス方法を採用してよい。
上述の方法を用いることで、イオン伝導を阻害するバインダーが含まれない負極合剤層31を有する全固体電池100を作製するこができるので、良好な充放電特性の全固体電池を得ることができる。
また、接着材となるバインダーを含まないが、プレスすることで固体電解質1を接着材として用いることができるため、負極合剤層31から負極活物質3および、固体電解質1が脱落することを抑制でき、良好な充放電特性を有する全固体電池100を得ることができる。
また、負極層一体化工程におけるプレスする時間を短時間化することで、最終的に得られる全固体電池100において負極合剤層31と固体電解質層40との界面の接着が良好な状態を保てるので、イオン伝導が阻害されることがなく、良好な充放電特性を有する全固体電池100を得ることができる。
さらに、負極合剤層31の製造工程において有機溶剤を用いないことから、負極合剤層31には、実質的に有機溶剤が含まれないため、有機溶剤による負極合剤層31の劣化がなく、良好な充放電特性を有する全固体電池100を作製することができる。
負極層一体化工程におけるプレスする時間は、上述のように固体電解質1の焼結を抑制する観点から、5秒以下が好ましい。プレスする時間を5秒以下にすることにより、固体電解質層40と負極合剤層31との間で界面剥離9が抑制されるため、全固体電池100の電池特性が向上するとともに、全固体電池100の形状が保持される。
[G−4.固体電解質層の製造方法]
本実施の形態における固体電解質層40の製造方法について、図13および図14を用いて説明する。図13および図14は、固体電解質層40の製造の各工程における断面図である。図13は、後述する固体電解質層一体化工程におけるプレス時間が短い場合を示しており、図14は、後述する固体電解質層一体化工程におけるプレス時間が長い場合を示している。
固体電解質層40は、固体電解質1の粉を正極層20および負極層30の少なくとも一方に塗布する点と、好ましいプレス圧力を変更する以外は、上述の正極層20および負極層30と、基本的に同様の方法により作製することができる。
固体電解質層成膜工程は、正極層20の正極合剤層21上および負極層30の負極合剤層31上の少なくとも一方に固体電解質層40を形成する工程である。固体電解質層成膜工程は、正極層20の正極合剤層21上および負極層30の負極合剤層31上の少なくとも片面上に、固体電解質粉を塗工する固体電解質層塗布工程と、固体電解質層塗布工程において固体電解質粉を塗工した正極層20および負極層30を積層方向上下からプレスすることで、固体電解質粉を塗工した正極層20および負極層30との少なくとも一方と一体化した固体電解質層40を形成する固体電解質層一体化工程と、を含む。
正極層20へ固体電解質1を塗布する場合と、負極層30へ固体電解質1を塗布する場合は、塗布される材料が正極層20から負極層30にかわる以外同じ方法であることから、正極層20への塗布する場合について説明する。
[G−4−1.固体電解質層塗布工程]
固体電解質層塗布工程では、まず固体電解質1を含む固体電解質粉を作製する。次に、図13の(a)に示されるように、固体電解質粉を、正極層20の正極合剤層21上に塗布する。
固体電解質粉を正極層20の正極合剤層21上に塗布する方法としては、好ましくは、固体電解質粉を塗布する材料に有機溶剤が含まれない方法であり、さらに好ましくは固体電解質粉を塗布する材料にバインダーが含まれない方法である。有機溶剤が含まれない方法が好ましい理由としては、固体電解質1の有機溶剤による劣化を防ぐことができるためである。また、バインダーが含まない方法が好ましい理由としては、バインダーによるイオン伝導度低下を防ぐことができるためである。
固体電解質粉を塗布する材料に有機溶剤およびバインダーが含まれない方法としては、例えば、固体電解質粉を振動フィーダ、テーブルフィーダまたはスクリューフィーダを用いて塗布する方法もしくは静電塗布等がある。これらの方法の中でも、電圧差を利用し、粉末を正極層20上にたたきつけることで、バインダーが含まれないにもかかわらず、固体電解質粉を塗布した直後から、固体電解質粉を正極層20上に仮固定できるため、静電塗布が好ましい。
上記の製造方法を用いることにより、有機溶剤を用いないため、固体電解質層40において、有機溶剤の濃度は、50ppm以下となり、有機溶剤による固体電解質1の劣化も防ぐことができる。
また、固体電解質粉には、バインダーが含まれていないため、バインダー濃度は100ppm以下である。
[G−4−2.固体電解質層一体化工程]
固体電解質層一体化工程では、図13の(b)に示されるように、固体電解質粉を塗工した正極層20を積層方向上下からプレスすることにより、固体電解質層40と正極層20との一体化物を作製する。このプレスする工程により、接着材となるバインダーが固体電解質層40に含まれないにも関わらず、固体電解質1を接着材として利用することができるようになり、引き続き行われる製造工程中も固体電解質層40から固体電解質粉が脱落することなくハンドリングできるようになる。固体電解質層一体化工程でのプレスは、加熱プレスである。
固体電解質1による接着のメカニズムとしては、固体電解質層40中の、固体電解質1同士は互いに密着することで、分子間力により接着したり、互いにくい込むことによる、アンカー効果により接着したりするためである。
また、固体電解質層40と正極層20とは、固体電解質層40の固体電解質1が、正極合剤層21中の正極活物質2にくい込むアンカー効果により接着する。また、固体電解質層40中の固体電解質1と、正極合剤層21中の固体電解質1とは、互いに密着することで、分子間力により接着したり、互いにくい込むことによる、アンカー効果で接着したりする。
図13は、上述のように固体電解質層一体化工程においてプレスする時間が短時間の場合を示す図である。プレスする時間を短くすることにより、図13の(b)で示されるように、固体電解質層成膜工程の固体電解質層一体化工程において、固体電解質1の焼結の促進を抑えることができる。これにより、引き続き行われる積層工程(図13の(c)および(d))で、固体電解質層40同士の界面は、接着性が良好となる。よって、この固体電解質層40同士の界面において、良好なイオン伝導を保つことができるため、全固体電池100の電池特性を向上できる。
固体電解質層40同士の接着性が良好となる理由としては、図13の(b)で示される固体電解質層一体化工程の段階で、固体電解質1の焼結を抑制しておくことで、引き続き行われる積層工程において、正極層20上方に配置された固体電解質層40の固体電解質1と、負極層30上方に配置された固体電解質層40に含まれる固体電解質1との焼結がスムーズに進むためである。
一方、図14は、固体電解質層成膜工程の固体電解質層一体化工程においてプレス時間が長い場合を説明するための図である。
図14の(b)に示されるように、プレスする時間が長い場合には、固体電解質層一体化工程において、固体電解質1の焼結が促進された状態となる。これにより積層工程(図14の(c)および(d))において、固体電解質層40同士が接着しにくく、固体電解質層40同士の間で界面剥離10が発生する。この界面剥離により、イオン伝導が阻害されやすくなり、全固体電池100の電池特性が向上しない可能性がある。
固体電解質層40同士が接着しにくい理由としては、図14の(b)に示される固体電解質層一体化工程の段階で、固体電解質1の焼結が促進されているため、引き続き行われる積層工程において、正極層20側の固体電解質層40に含まれる固体電解質1と、負極層30側の固体電解質層40に含まれる固体電解質1との焼結が促進されにくいためである。
プレスする圧力は、1MPa以上、1000MPa以下であることが好ましい。プレスする圧力を1MPa以上にすることで、十分な接着力を得ることができ、引き続き行われる行程中に固体電解質1が固体電解質層40から脱落する不具合を抑制できる。プレスする圧力が1000MPa以下である理由は、固体電解質層40は変形しやすいので、1000MPaより高い圧力を加えても、接着力向上効果はみられないためである。プレスする温度は、固体電解質層40に含まれる材料に応じて適宜設定すればよいが、例えば、20℃以上400℃以下である。さらに好ましくは、正極層一体化工程と負極層一体化工程の温度より高い方がよい。各層間の焼結をより促進させることで、接合状態がよくなるからである。一方、イオン伝導度の低下の観点から、加熱温度は400℃以下であることが好ましい。
なお、積層工程においては、負極層30が正極層20の上側に配置されて積層されることが好ましい。正極層20の正極合剤層21上および負極層30の負極合剤層31上に、バインダーを含まない固体電解質層40を形成する方法としては、例えば静電塗布があげたが、静電塗布を用いた場合、固体電解質層40は、正極層20とよりも負極層との方が密着しやすい。よって、より固体電解質層40との密着状態がよい負極層30を、上側に配置させることで、上下反転させた時に負極層30の下に配置される固体電解質層40が脱落しにくくなるため、負極層30が正極層20の上側に配置されて積層されることが好ましい。
なお、上述の固体電解質層成膜工程においては、正極層20および負極層30の両方に、固体電解質層40を製膜する方法について述べたが、正極層20および負極層30のいずれか一方だけに、固体電解質層40を形成してもよい。
上述した製造方法におけるプレス方法としては、特に制限されることはなく、公知のプレス方法を採用してよい。
上述の方法を用いることで、イオン伝導を阻害するバインダーが含まれない固体電解質層40を有する全固体電池100を作製するこができるので、良好な充放電特性の全固体電池を得ることができる。ここでバインダーが含まれないとは、バインダーの含有量が100ppm以下のことである。
また、接着材となるバインダーを含まないが、プレスすることで固体電解質1を接着材として用いることができるため、製造工程中も固体電解質層40から固体電解質1が脱落することを抑制でき、良好な充放電特性を有する全固体電池100を得ることができる。
また、固体電解質層一体化工程におけるプレスする時間を短時間化することで、最終的に得られる全固体電池100において固体電解質層40同士の界面の接着が良好な状態を保てるので、イオン伝導が阻害されることがなく、良好な充放電特性を有する全固体電池100を得ることができる。
なお、好ましい例として固体電解質層40にバインダーが含まれない方法について説明したが、必要に応じて固体電解質層40にバインダーが含まれていてもよい。バインダーが含まれていてもよい理由としては、固体電解質層40が、薄いことから、バインダーが少量含有されていても、イオン伝導を阻害する影響が小さく、全固体電池100の電池特性にほとんど悪影響をおよぼさないためである。
固体電解質層40におけるバインダーの含有量については、接着力の補助を目的とする場合、バインダーが固体電解質1の1重量%以下で十分である。
また、固体電解質層40の製造工程において有機溶剤を用いないことから、固体電解質層40中の有機溶剤濃度は50ppm以下のため、有機溶剤による固体電解質層40の劣化がなく、良好な充放電特性を有する全固体電池100を作製することができる。
固体電解質層一体化工程におけるプレスする時間は、上述のように固体電解質1の焼結を抑制する観点から、5秒以下が好ましい。プレスする時間を5秒以下にすることにより、固体電解質層40同士の間で界面剥離9が抑制されるため、全固体電池100の電池特性が向上するとともに、全固体電池100の形状が保持される。
(その他の実施の形態)
なお、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態は、例示であり、本開示の特許請求に記載の範囲において、技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。また、本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものや、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲に含まれる。
上記実施の形態において、全固体電池は、正極接合層を有する正極層と負極接合層を有する負極層を備えたが、例えば、正極接合層および負極接合層はいずれか一方だけであって、正極接合層を有さない正極層または負極接合層を有さない負極層が全固体電池の形状の保持に必要な最低限のバインダーを含んでもよい。例えば、全固体電池は、(1)正極集電体、(2)正極集電体上に形成された正極接合層、および、(3)正極接合層上に形成された正極合剤層を有する正極層と、(1)負極集電体、および、(2)負極合剤層を有する負極層と、正極合剤層と負極合剤層との間に配置された固体電解質層と、を備え、正極合剤層に含まれるバインダーの濃度が100ppm以下であり、正極合剤層に含まれる溶剤の濃度が50ppm以下であってもよい。また、例えば、全固体電池は、(1)正極集電体、および、(2)正極合剤層を有する正極層と、(1)負極集電体、(2)負極集電体上に形成された負極接合層、および、(3)負極接合層上に形成された負極合剤層を有する負極層と、正極合剤層と負極合剤層との間に配置され、少なくともイオン伝導性を有する固体電解質を含む固体電解質層と、を備え、負極合剤層に含まれるバインダーの濃度が100ppm以下であり、負極合剤層に含まれる溶剤の濃度が50ppm以下であってもよい。
本開示にかかる正極層、負極層、固体電解質層、およびそれを用いた全固体電池は、携帯電子機器等の電源や車載用電池等の様々な電池への応用が期待される。
1 固体電解質
2 正極活物質
3 負極活物質
4 正極接合層
5 負極接合層
6 正極集電体
7 負極集電体
8 界面剥離
9 界面剥離
10 界面剥離
20 正極層
21 正極合剤層
30 負極層
31 負極合剤層
40 固体電解質層
41 空隙
100 全固体電池

Claims (15)

  1. (1)正極集電体、(2)非金属からなる第1導電剤を少なくとも含み、前記正極集電体上に形成された正極接合層、および、(3)少なくとも正極活物質とイオン伝導性を有する固体電解質とを含み、前記正極接合層上に形成された正極合剤層を有する正極層と、
    (1)負極集電体、および、(2)少なくとも負極活物質とイオン伝導性を有する固体電解質とを含む負極合剤層を有する負極層と、
    前記正極合剤層と前記負極合剤層との間に配置され、少なくともイオン伝導性を有する固体電解質を含む固体電解質層と、を備え、
    前記正極合剤層に含まれるバインダーの濃度が100ppm以下であり、前記正極合剤層に含まれる溶剤の濃度が50ppm以下である、
    全固体電池。
  2. 前記正極接合層は、前記第1導電剤として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンブラック、グラファイトおよびカーボンファイバーのうち少なくともひとつを含む、
    請求項1に記載の全固体電池。
  3. 前記正極接合層の目付量は、0.3g/m以上、3g/m以下である、
    請求項1または2に記載の全固体電池。
  4. 前記全固体電池の積層方向と垂直な方向から見て、前記正極合剤層に含まれる前記正極活物質および前記固体電解質の少なくとも一方の一部と前記正極接合層とが重なり、前記正極合剤層と前記正極接合層とが重なる領域の積層方向の厚みが2μm以上6μm以下である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の全固体電池。
  5. 前記全固体電池を積層方向に切断した断面において、前記正極合剤層と前記固体電解質層との界面に存在する空隙であって、前記界面に沿う平らな辺が2μm以上であり、前記辺からの高さが0.5μm以上である空隙の個数が、前記界面の長さ1mmあたり3個以下である、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の全固体電池。
  6. (1)正極集電体、および、(2)少なくとも正極活物質とイオン伝導性を有する固体電解質とを含む正極合剤層を有する正極層と、
    (1)負極集電体、(2)非金属からなる第2導電剤を少なくとも含み、前記負極集電体上に形成された負極接合層、および、(3)少なくとも負極活物質とイオン伝導性を有する固体電解質とを含み、前記負極接合層上に形成された負極合剤層を有する負極層と、
    前記正極合剤層と前記負極合剤層との間に配置され、少なくともイオン伝導性を有する固体電解質を含む固体電解質層と、を備え、
    前記負極合剤層に含まれるバインダーの濃度が100ppm以下であり、前記負極合剤層に含まれる溶剤の濃度が50ppm以下である、
    全固体電池。
  7. 前記負極接合層は、前記第2導電剤として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイトおよびカーボンファイバーのうち少なくともひとつを含む、
    請求項6に記載の全固体電池。
  8. 前記負極接合層の目付量は、0.3g/m以上、3g/m以下である、
    請求項6または7に記載の全固体電池。
  9. 前記固体電解質層に含まれるバインダー濃度が100ppm以下であり、前記固体電解質に含まれる溶剤の濃度が50ppm以下である、
    請求項1〜8のいずれか1項に記載の全固体電池。
  10. 溶剤の濃度が50ppm以下であり、バインダーの濃度が100ppm以下である正極合剤層を有する正極層と、負極合剤層を有する負極層と、固体電解質層と、を備える全固体電池の製造方法であって、
    正極集電体上に、少なくとも第1導電剤を含む正極接合層を形成する工程と、
    前記正極接合層上に、少なくとも固体電解質と正極活物質とを含む正極合剤粉を塗工する工程と、
    前記正極合剤粉を前記正極集電体および前記正極接合層と一緒に積層方向上下からプレスすることで、前記正極集電体、前記正極接合層、および正極合剤層の一体化物である正極層を形成する工程と、
    前記正極層を用いて、全固体電池を形成する工程と、を含む、
    全固体電池の製造方法。
  11. 溶剤の濃度が50ppm以下であり、バインダーの濃度が100ppm以下である負極合剤層を有する負極層と、正極合剤層を有する正極層と、固体電解質層と、を備える全固体電池の製造方法であって、
    負極集電体上に、少なくとも第2導電剤を含む負極接合層を形成する工程と、
    前記負極接合層上に、少なくとも固体電解質と負極活物質とを含む負極合剤粉を塗工する工程と、
    前記負極合剤粉を前記負極集電体および前記負極接合層と一緒に積層方向上下からプレスすることで、前記負極集電体、前記負極接合層および前記負極合剤層の一体化物である負極層を形成する工程と、
    前記負極層を用いて、全固体電池を形成する工程と、を含む、
    全固体電池の製造方法。
  12. 前記正極層における前記正極合剤層上、および前記負極層における前記負極合剤層上の少なくとも一方に、固体電解質粉を塗工する工程と、
    前記固体電解質粉を塗工した前記正極層および前記負極層を積層方向上下からプレスすることで、前記固体電解質粉を塗工した前記正極層および前記負極層の少なくとも一方と一体化した固体電解質層を形成する工程と、をさらに含み、
    前記固体電解質層中の溶剤の濃度が50ppm以下であり、前記固体電解質層中のバインダーの濃度が100ppm以下である、
    請求項10または11に記載の全固体電池の製造方法。
  13. 前記正極合剤粉をプレスする時間が5秒以下である、
    請求項10に記載の全固体電池の製造方法。
  14. 前記負極合剤粉をプレスする時間が5秒以下である、
    請求項11に記載の全固体電池の製造方法。
  15. 前記固体電解質粉をプレスする時間が5秒以下である、
    請求項12に記載の全固体電池の製造方法。
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