JP2020109372A - 放射能測定装置 - Google Patents
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Abstract
Description
放射性物質から放出される放射線が入射されると入射放射線のエネルギーに対応する検出信号を出力する検出部と、
前記検出信号のエネルギー値ごとの計数を示すエネルギー分布である第1エネルギー分布を導出する分析部と、
前記検出部の応答関数を格納する格納部と、
前記第1エネルギー分布に対して、前記応答関数を用いた信号復元演算を行うことにより前記放射性物質の放射線のエネルギー分布である第2エネルギー分布を演算して、前記放射性物質の核種を弁別すると共に、弁別された該放射性物質の放射能強度を演算する演算部と、を備え、
前記検出部は、測定対象物の内部への移動方向に移動可能に構成され、前記移動方向に対する複数の検出位置において、前記測定対象物内の前記放射性物質から放出される放射線を検出し、
前記検出部の前記応答関数は、該検出部を中心とした測定対象領域を複数に区分したそれぞれの検出領域における前記放射性物質から放出される放射線に対応して構成され、
前記演算部は、
前記応答関数を用いた前記信号復元演算を行うことにより、弁別された前記放射性物質の、前記測定対象物内における前記移動方向に対する放射能強度を演算する、
ものである。
また、放射能測定装置の構成は、実際にはさらに複数の部材を備えているが、説明を簡単にするため、説明に必要な部分のみを記載し、他の部分については省略している。
以下、本願の実施の形態1による、放射能測定装置としての放射能強度分布測定装置100について図を用いて説明する。
図1は、実施の形態1による放射能強度分布測定装置100の全体の概略構成を示すブロック図である。
図2は、図1に示す放射線検出部1の概略構成を示す模式図である。
なお、放射能強度分布測定装置100の構成を全て記載した図1と、構成の一部を抜粋した他の図との間で、同一構成部分を図示する際に、同一構成部分のサイズ、縮尺等が異なっている場合もある。これは本実施の形態1以降の各実施の形態においても同様である。
サンプリング部10は、放射線の検出を行う。放射線分析部20は、サンプリング部10において検出された放射線の分析を行う。表示部30は、放射線分析部20による分析結果を表示する。
こうして放射線検出部1は、パイプ3内において、伸縮部2によりコンクリート片Tの深さ方向Yに対して任意の複数の検出位置A(A1、A2・・・AN、但しNは検出位置Aの総数)に固定され、これら複数の検出位置Aにおいてコンクリート片Tに含まれた放射性物質50から放出される放射線を検出する。
放射線検出部1には、NaI(Tl)シンチレーション検出器が用いられる。図2にその詳細を示すように、放射線検出部1は、シンチレータ1aと、光検出器1bと、増幅器としてのプリアンプ1cとを備える。
こうして、放射線検出部1は、コンクリート片Tに含まれた放射性物質50から放出される放射線が入射すると、入射放射線のエネルギーに比例した波高を有する、検出信号としてのパルス信号Gを出力する。出力されたパルス信号Gは、後段の放射線分析部20に入力される。
放射線分析部20は、サンプリング部10から出力される、放射線検出部1からのパルス信号Gを分析するために設けられる。
図1に示すように、放射線分析部20は、波形整形部21と、分析部としての波高分析部22と、演算部としての放射能強度演算部23と、格納部としての応答関数データベース24と、を備える。
波高分析部22は、パルス信号Gのエネルギー値ごとの計数を導出する。
応答関数データベース24は、放射線検出部1の応答関数Kを格納する。
放射能強度演算部23は、波高分析部22の出力結果に対して、後述する応答関数Kを用いた信号復元演算を行うことにより、放射性物質50の核種を弁別すると共に、弁別された放射性物質50の放射能強度を演算する。
波形整形部21は、サンプリング部10から出力される放射線検出部1からのパルス信号Gを受信すると、このパルス信号Gに対して、増幅器21aを用いて予め設定された増幅率での増幅と、後の処理に適した形への波形の整形と、を行う。増幅され、整形されたパルス信号Gは、後段の波高分析部22に入力される。
図3は、実施の形態1による波高分析部22により導出される放射線の波高分布Mの例を示す模式図である。放射線検出部1が、放射性物質50としてのセシウム−137からのガンマ線を測定した場合を示している。
導出された各波高分布Mは、波高分析部22が有する図示しないメモリに、検出位置Aごとに格納されると共に、後段の放射能強度演算部23に入力される。
図4は、実施の形態1による放射能強度演算部23による放射能分析の説明に関する図であって、セシウム−137の崩壊図である。
同図のデータは、単一のエネルギーのガンマ線が放出される場合を表している。
しかしながら、このような波高分布Mに直接基づいて放射性物質の核種を同定する方法は、以下に説明するように分析精度が低くなる場合がある。
通常、放射能強度は、エネルギーピーク部分Mpにおける計数のみから求められ、連続分布部分Mc部における計数は放射線の核種同定に利用出来ないため核種分析に使用されない。そのため、放射線検出部1の測定感度が確保できず、結果として分析精度が低下する。
信号復元演算の例として、逆問題演算の一種であるアンフォールディング法がある。アンフォールディングとは、測定対象である放射線に対して、放射線検出部1との応答関数Kを一定のエネルギー間隔で予め算出しておく。そして、算出した応答関数Kを用いたアンフォールディング演算を行い、放射性物質50からの放射線の実際のエネルギー分布S(放射線源のエネルギースペクトル)を算出する方法である。
こうして放射能強度演算部23は、応答関数データベース24から呼び出した応答関数Kを用いて、波高分析部22にて導出された波高分布Mに対し、信号復元演算を実施し、放射性物質50からの放射線の実際の線源スペクトルである、第2エネルギー分布としてのエネルギー分布Sを復元する。
図5は、実施の形態1による放射線検出部1が測定する検出領域Reを示す模式図である。
図5における上側が図1におけるコンクリート片Tの穴T1の開口部側Y2であり、図5における下側が図1におけるコンクリート片Tの穴T1の底部側Y1になる。
コンクリート片Tに含まれる放射性物質50から放射される放射線は、コンクリート片Tによる自己吸収が生じる。そのため放射線検出部1に届く放射線は、放射線検出部1を中心としたコンクリート片T内における有効体積内、すなわち図5に示す有効半径x内かつ有効深さz内にある円柱状の有効体積内に含まれる放射性物質50から放出されたものとなる。
図6は、実施の形態1による放射線検出部1の、コンクリート片Tの穴T1内の検出位置A(A1〜A5)ごとの検出領域Re(Re1〜Re5)と、コンクリート片Tの深さ方向Yの各深さ領域D(D1〜D5)と、を示す模式図である。
図6では、放射線検出部1がその固定位置を、検出位置A5、A4、A3とずらしながら、各検出位置A5、A4、A3において放射線を検出する状態を示す。
なお、図において検出位置A1、A2に固定された際の放射線検出部1の図示は省略した。
同様に、放射線検出部1を検出位置A3の位置に固定した際は、放射線検出部1は、検出領域Re1、Re2、Re3、Re4、Re5から入射する放射線を足し合わせたスペクトルを検出する。
即ち、検出位置A5において、検出領域Re1〜Re3から入射する放射線を足し合わせたスペクトルが測定されると、その結果は、コンクリート片T内の深さ領域D3〜D5に含まれる放射性物質50からの放射線を足しあわせたスペクトルを測定していることになる。
また同様に、検出位置A3において、検出領域Re1〜Re5から入射する放射線を足し合わせたスペクトルが測定されると、コンクリート片T内の深さ領域D1〜D5からの放射線を足しあわせたスペクトルを測定していることになる。
即ち、各検出位置Aに固定された放射線検出部1にて求められる波高分布Mは、測定対象の検出領域Re3にある放射性物質50からの放射線の影響と、検出領域Re3以外の検出領域Re1、2、4、5にある放射性物質50からの放射線の影響の両方の和となる。
即ち、応答関数K、各検出位置Aに固定された放射線検出部1から導出される波高分布M、および各検出領域Reの実際のエネルギー分布S、の関係は、行列を用いて以下の数式(1)で表される。
また、SI’・・・SV’は、放射線検出部1が検出位置A4に固定された際の、検出領域Re1・・・Re5における実際の放射線のエネルギー分布Sである。
また、SI”・・・SV”は、放射線検出部1が検出位置A3に固定された際の、検出領域Re1・・・Re5における実際の放射線のエネルギー分布Sである。
このように放射線検出部1の検出位置Aごとに、検出領域Reの実際のエネルギー分布Sを定める理由は、検出位置Aごとに測定誤差が生じるためである。
こうして、放射能強度演算部23による上記演算により、各検出領域Reにある放射性物質50から放出される放射線の実際のエネルギー情報のみを含むエネルギー分布Sの情報がそれぞれ抽出される。
このエネルギー分布Sは、検出領域Reごとに復元される。
図7に示すように、復元されたエネルギー分布Sでは、測定対象のセシウム−137の放射線のエネルギー(662keV)と、他の自然放射性核種からの放射線のエネルギーとがそれぞれ区別されて復元されていることが判る。
以下、放射能強度演算部23による放射能強度Iの演算の詳細について説明する。
放射能強度演算部23は、信号復元演算で求められたエネルギー分布Sから、セシウム−137のガンマ線の本数(計数)を測定時間で除する。これにより、コンクリート片Tから単位時間当たりに放射されるセシウム−137のガンマ線の本数が得られる。更に、放射能強度演算部23は、得られたガンマ線の本数を、セシウム−137が壊変する際に特定のガンマ線を放射する割合である放射線放出率Raで除する。これにより、セシウム−137の放射能強度Iが得られる。
前述のように、各検出領域Reの深さ方向Yの領域幅ReHと、コンクリート片T内の各深さ領域Dの深さ方向Yの幅と、それぞれの区分数とは同じに設定される。よって、数式(1)について数式(3)を用いて求められた各検出領域Reのエネルギー分布S(SI〜SV、SI’〜SV’、SI”〜SV”)は、測定対象のコンクリート片Tにおける各深さ領域D1〜D5のエネルギー分布S1〜S5で記載すると以下数式(5)のようになる。
例えば、各列における深さ領域D3のエネルギー分布S3を合計したものを行列の列数3で割ると、深さ領域D3のエネルギー分布S3の平均値が算出される。
このように、放射能強度演算部23は、測定誤差の影響を低減するために、演算された検出位置Aごとの各検出領域Reにおける放射能強度Iから、各検出領域Re(各深さ領域D)の放射能強度Iの平均値を算出する。
なお、放射能強度演算部23は、各検出領域Re(コンクリート片Tの各深さ領域D)における放射能強度Iの平均値を算出するものを示したが、平均値を都度算出するものに限定するものではない。平均値を算出する前の、数式(5)から導出される各検出領域Re(各深さ領域D)の放射能強度Iを用いて、深さ方向Yに対する放射能強度の分布評価を行ってもよい。
なお、複数の検出位置Aおよび検出間隔AHは、放射能強度分布測定装置100の外部から設定可能な構成となっている。そのため、測定時に作業者が放射能強度分布測定装置100のそばで、表示部30に表示された測定結果を確認しながら、検出位置Aおよび検出間隔AHを調整することも可能である。
以下、放射線検出部1が、当該放射線検出部1の深さ方向Yの幅Jよりも小さい距離ずつ、その固定位置を深さ方向Yに対してずらしながら移動する例を示す。
放射線検出部1がその固定位置を、深さ方向Yに対して検出位置A9、A8、A7とずらしながら測定する状態を示す。
また、深さ領域D(D1〜D10)の深さ方向Yの幅は、各検出領域Reの深さ方向Yの幅の半分に設定される。
そして放射能強度演算部23は、演算された各検出領域Reにおける放射能強度Iに基づいて、コンクリート片Tの各深さ領域D(D1〜D10)の放射能強度Iを演算する。
例えば、深さ領域D9における放射能強度Iを演算する場合は、検出位置A9における検出領域Re3と、検出位置A8における検出領域Re3とが重なる範囲(深さ領域D9に相当)で重み付けをとって、放射能強度Iの平均をとればよい。
具体的には、図8に示すように、検出位置A9において測定して得られた検出領域Re3の放射能濃度Wが5Bq/cm3であり、検出領域Re2の放射能濃度Wが10Bq/cm3であったとする。
また、検出位置A8において測定して得られた検出領域Re3の放射能濃度Wが8Bq/cm3であり、検出領域Re2の放射能濃度Wが11Bq/cm3であったとする。
また、検出位置A7において測定して得られた検出領域Re3の放射能濃度Wが9Bq/cm3であり、検出領域Re2の放射能濃度Wが8Bq/cm3であったとする。
この場合、放射能強度演算部23は、深さ領域D5〜D10の放射能濃度Wを、それぞれ以下のように導出する。
そのため、検出領域Reの深さ方向Yの領域幅ReHに依存しない、コンクリート片Tの深さ方向Yの放射能分布評価を行える。
また、測定対象物としてコンクリート片Tを挙げたが、例えば、土壌、あるいは米などの食物でもよく、放射線検出部を内部に挿入できる測定対象物の全てに対して適用可能である。
なお、放射線検出部1を1つとすると、応答関数Kの数を少なくして信号復元演算における演算負荷を低減できる。
さらに、放射線検出部の応答関数は、当該放射線検出部を中心とした測定対象領域を複数に区分したそれぞれの検出領域における放射性物質から放出される放射線に対応して構成される。そして放射能強度演算部は、各検出位置において放射線検出部から導出されるそれぞれの波高分布Mに対して、この応答関数を用いた信号復元演算を行う。
また、検出位置を任意に設定可能であるため、測定対象物内の放射能の分布の状況に合わせた柔軟な放射能強度分布評価が可能になる。
また、放射線検出部が測定対象物の内部において放射線を検出するため、測定対象物の表面から内部の深い位置にある領域からの放射線を検出可能である。これにより、測定対象物の厚みに依らず、深さ方向の放射能強度分布評価を行える。
こうして、測定対象物を深さ方向に所望の数区分した各深さ領域ごとの放射能強度を演算でき、所望の精度の放射能強度分布評価を行える。
また、前記演算部は、演算された検出位置ごとの各検出領域における放射能強度から、各深さ領域における放射能強度の平均値を算出してもよい。この場合においても、検出位置ごとに生じる各検出領域の放射能強度の測定誤差を低減できる。
このような構成とすることで、深さ方向に対する放射能分布を、逆行列を用いた簡便な解法を用いて算出できる。こうして、信号復元演算における演算量が増加する場合であっても、演算速度を確保できる。
このように、一般的に用いられているNaI(Tl)シンチレーション検出器、多重波高分析器を用いることができるため、低コスト化が可能になる。また、NaI(Tl)シンチレーション検出器は、Ge半導体検出器のような冷却器等による冷却が不要である。そのため、冷却器のメンテナンスが不要となり、装置の運用、保守管理を簡素化できる。
信号復元演算を精度良く行うには、応答関数を算出する際において、放射線検出部と測定対象物との位置関係、その間にある物質の密度等が不変であることが望ましい。よって、測定対象物に対してドリル等により所定の径と深さの穴を空けることにより、放射線検出部と測定対象物との位置関係を設定された距離に固定する。これにより、放射線検出部と測定対象物との間の位置関係、およびその間にある空気の密度も変動が生じ難く、従って、不変と考えられる。このように本実施の形態の射能強度分布測定装置は、信号復元演算を適用し、解析する装置として好適である。
以下、本願の実施の形態2を、上記実施の形態1と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。
図9は、実施の形態1による放射能強度分布測定装置200aの全体の概略構成を示すブロック図である。
実施の形態1に示した放射能強度分布測定装置100では、測定時に作業者が装置のそばで測定データを確認し、放射線検出部1の検出位置Aを調整していた。そこで本実施の形態では、省力化を図るため、放射能強度分布測定装置200a自身により、測定対象物の放射性物質の分布状態に合わせて検出位置Aを自動調整する。この検出位置Aの自動調整において放射能強度分布測定装置200aは、放射線検出部1の移動範囲Qを設定し、この設定された移動範囲Q内において、設定された検出間隔ごとに設けられた検出位置Aにおいて放射線検出を行う。
以下、これら判定部228、変更部229による検出位置Aの自動調整について説明する。
先ず、放射能強度演算部23は、設定された第1検出間隔AH1ごとに設けられた複数の検出位置Aにおいて検出された放射線に基づき、実施の形態1と同様に、深さ方向Yに対する放射能強度Iを演算する。放射能強度演算部23は、この演算結果を判定部228に出力する。
そして放射線検出部1は、設定された移動範囲Q内において、設定された第2検出間隔AH2ごとにその固定位置をずらしながら放射線を測定する。
しかしながらこれに限定するものではなく、放射線検出部1は、第1検出間隔AH1で深さ方向Yに対する放射能強度Iを求めた後に、移動範囲Q外においても移動して放射線検出を行ってもよい。この場合、移動範囲Q内においてのみ短い検出間隔の第2検出間隔AH2で放射線検出を行い、移動範囲Q外においては長い検出間隔の第1検出間隔AH1にて放射線検出を行うとよい。
放射能強度分布測定装置200bは、放射性物質50から放出されたベータ線を用いて、第1検出間隔AH1の変更要否の判定と、放射線検出部1の移動範囲Qの設定とを行う。そしてその後に、放射性物質50から放出されたガンマ線を用いて、放射性物質50の核種を弁別すると共に、弁別された該放射性物質50の放射能強度を演算する。
以下、この放射能強度分布測定装置200bの放射線分布評価の詳細を説明する。
また放射線分析部220bは、図9に示した放射線分析部220bに対して、更に、ベータ線波形整形部221aと、演算部としてのベータ線測定部221bとを備える。
なお、放射性物質50の放射能強度Iが設定されたベータ線用の下限の所定値よりも低く、大まかな評価で良い場合等では、第2検出間隔AH2は第1検出間隔AH1よりも大きく設定されてもよい。
そして放射線検出部1および放射線検出部1βは、設定された移動範囲Q内において、設定された第2検出間隔AH2ごとに設けられた検出位置Aにおいてその固定位置をずらしながら放射線を測定する。
このように、ベータ線用検出素子である放射線検出部1βと、ガンマ線用検出素子である放射線検出部1とを組み合わせて使用することによって、放射能強度Iの高い深さ領域Dの判別にはベータ線を用い、放射線核種の弁別についてはガンマ線を用いることができる。
これにより、例えば、放射能強度が高い深さ領域付近においては検出間隔を小さくした放射線検出を行い、放射能強度が低い深さ領域においては検出間隔を大きくした放射線検出を自動で行える。こうして、放射線検出に要する時間を短縮しつつ、測定対象物の放射性物質の分布状態に合わせた放射能強度分布評価を行える。
また、作業者が不要となることから、測定作業者の省力化が実現できる。
例えば、放射能強度が高いと判定された深さ領域付近のみで放射線検出を行い、放射線強度が低いと判定された深さ領域では放射線検出を行わないことで、放射線検出に要する時間を短縮しつつ、測定対象物の放射能強度の分布状態に合わせた放射能強度分布評価が可能となる。
また、判定部および変更部が、放射能強度が第1所定値以上の深さ領域を移動中心として移動範囲を設定することで、確実に放射能強度が高い領域付近における放射能強度分布評価を行える。
以下、本願の実施の形態3を、上記実施の形態3と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。
図11は、実施の形態3による放射能強度分布測定装置300の全体の概略構成を示すブロック図である。
より高精度な放射性物質の放射線分析を実現するためには、放射線検出部1における実測の波高分布Mと応答関数データベース24に格納している放射線検出部1における応答関数Kとの差異とを可能な限り小さくする必要がある。
放射線検出部1は、一般的に温度特性を持っている。このため、放射線検出部1は、設置場所の気温の影響を受け、出力に変動が生じる。また、放射線検出部1は、経年劣化の影響を受け、長期間の使用後、出力に変動が生じる場合がある。このように放射線検出部1の出力に変動が生じた場合、実測の波高分布Mと、応答関数データベース24に格納している応答関数Kとの間に差異が生じるようになり、測定精度に影響を及ぼす可能性がある。
そして、出力変動検出部325は、基準ピーク位置P0と測定ピーク位置P1とから、放射線検出部1の出力の変動量を検知する。出力変動検出部325は、本来あるべきピーク位置からずれを検知した場合、本来あるべき基準ピーク位置P0の情報と現在の測定ピーク位置P1の情報とを補償係数計算部327へ入力する。補償係数計算部327は、補償係数Zを、ピーク位置比(変動量)P0/P1の関数として、以下数式(7)で算出する。
更に、補償係数計算部により波高分布における分布位置を調整する補償係数を算出し、この補償係数に従って、波高分析部が波高分布の分布位置を自動調整する。これにより、放射能強度分布測定装置が有する機器の使用状態、周辺の環境状態に依存せず、高精度な放射線分析を維持できる。
また、波高分布の分布位置の変動の補償を、波高分布のピーク位置に対して補償係数を直接乗算することにより行うため、波高分布の分布位置の調整精度を向上できる。
なお、セシウム−137以外の特徴的なピークの決定条件としては、例えば、エネルギー値が既知であり、且つ、パルス信号Gがカウントされた計数が、設定された第2所定値を越えたものを特徴的なピークとするものでもよい。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
23 放射能強度演算部(演算部)、24 応答関数データベース(格納部)、
221b ベータ線測定部(演算部)、228 判定部(演算部)、
229 変更部(演算部)、325 出力変動検出部(演算部)、
100,200a,200b,300 放射能強度分布測定装置(放射能測定装置)。
Claims (17)
- 放射性物質から放出される放射線が入射されると入射放射線のエネルギーに対応する検出信号を出力する検出部と、
前記検出信号のエネルギー値ごとの計数を示すエネルギー分布である第1エネルギー分布を導出する分析部と、
前記検出部の応答関数を格納する格納部と、
前記第1エネルギー分布に対して、前記応答関数を用いた信号復元演算を行うことにより前記放射性物質の放射線のエネルギー分布である第2エネルギー分布を演算して、前記放射性物質の核種を弁別すると共に、弁別された該放射性物質の放射能強度を演算する演算部と、を備え、
前記検出部は、測定対象物の内部への移動方向に移動可能に構成され、前記移動方向に対する複数の検出位置において、前記測定対象物内の前記放射性物質から放出される放射線を検出し、
前記検出部の前記応答関数は、該検出部を中心とした測定対象領域を複数に区分したそれぞれの検出領域における前記放射性物質から放出される放射線に対応して構成され、
前記演算部は、
前記応答関数を用いた前記信号復元演算を行うことにより、弁別された前記放射性物質の、前記測定対象物内における前記移動方向に対する放射能強度を演算する、
放射能測定装置。 - 各前記検出領域は、前記測定対象領域を前記移動方向に区分したものであり、
前記演算部は、
各前記検出領域における前記第2エネルギー分布をそれぞれ演算して、各前記検出領域における前記放射性物質の核種を弁別し、
弁別された前記放射性物質の各前記検出領域における放射能強度をそれぞれ演算することにより、前記放射性物質の前記測定対象物内における前記移動方向に対する放射能強度を演算する、
請求項1に記載の放射能測定装置。 - 前記演算部は、
演算された各前記検出領域における前記放射性物質の放射能強度に基づいて、
前記測定対象物を前記移動方向に対して複数に区分した各区分領域における前記放射性物質の放射能強度を演算する、
請求項2に記載の放射能測定装置。 - 前記演算部は、
前記検出位置ごとに、各前記検出領域における放射能強度をそれぞれ演算し、
演算された前記検出位置ごとの各前記検出領域における放射能強度から、各前記検出領域における放射能強度の平均値を算出する、
請求項3に記載の放射能測定装置。 - 前記演算部は、
演算された前記検出位置ごとの各前記検出領域における放射能強度から、前記各区分領域における放射能強度の平均値を算出する、
請求項4に記載の放射能測定装置。 - 複数の前記検出位置は、設定された第1検出間隔ごとに設けられ、
前記演算部は、
前記第1検出間隔ごとに検出された放射線に基づき前記移動方向に対する放射能強度を演算し、該放射能強度に基づいて、前記第1検出間隔を調整した第2検出間隔を設定する、
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の放射能測定装置。 - 前記演算部は、
前記第1検出間隔ごとに検出された放射線に基づき前記移動方向に対する放射能強度を演算し、該放射能強度に基づいて、前記検出部が前記移動方向に対して移動する移動範囲を設定する、
請求項6に記載の放射能測定装置。 - 前記検出部は、前記放射性物質から放出されたベータ線を含む放射線を検出可能に構成され、
前記演算部は、
前記測定対象物内における前記移動方向に対する前記ベータ線の放射能強度を演算し、
前記移動範囲を、前記移動方向に対する前記ベータ線の放射能強度に基づいて設定する、
請求項7に記載の放射能測定装置。 - 前記演算部は、
前記第1検出間隔ごとに検出された放射線により放射能強度が演算された各前記区分領域の内、放射能強度が第1所定値以上の放射能強度を有する前記区分領域を移動中心として前記移動範囲を設定し、
前記移動範囲内において、前記第2検出間隔を前記第1検出間隔よりも小さくなるように設定する、
請求項7または請求項8に記載の放射能測定装置。 - 前記検出部の前記応答関数は、
全ての前記検出領域に対応するように構成された、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の放射能測定装置。 - 前記演算部は、
各前記検出領域における前記放射性物質の放射線の前記第2エネルギー分布を、各前記検出位置における前記第1エネルギー分布と、前記検出部の前記応答関数と、を用いて行列で表し、前記行列に基づいて演算する、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の放射能測定装置。 - 前記検出部は、前記入射放射線のエネルギーに対応する波高を有するパルス信号を前記検出信号として出力し、
前記分析部は、前記パルス信号の波高ピーク値ごとの該パルス信号の計数を示す波高分布を前記第1エネルギー分布として導出する、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の放射能測定装置。 - 前記応答関数は、前記測定対象物と前記検出部との位置関係、前記測定対象物と前記検出部との間の気体の密度に基づいて設定された、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の放射能測定装置。 - 前記応答関数は、前記測定対象物の材質および密度に基づいて設定された、
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の放射能測定装置。 - 前記演算部は、前記第1エネルギー分布における放射線のエネルギーの分布位置の変動量を計測し、前記変動量に基づいて、前記第1エネルギー分布におけるエネルギーの分布位置を調整する、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の放射能測定装置。 - 前記演算部は、
所定の測定環境において導出された前記第1エネルギー分布において、計数が第2所定値を超えた前記検出信号の計数のピーク位置である第1エネルギー値を基準ピーク位置として記録し、前記基準ピーク位置が記録された後に導出される前記第1エネルギー値を測定ピーク位置として記録し、
前記基準ピーク位置と前記測定ピーク位置とから前記変動量を導出して、前記変動量に基づいて、前記測定ピーク位置が前記基準ピーク位置に位置するように、前記第1エネルギー分布における放射線のエネルギーの分布位置を調整する、
請求項15に記載の放射能測定装置。 - 前記演算部は、前記変動量に基づき補正係数を算出し、
前記分析部は、前記補正係数を前記第1エネルギー分布における計数の各ピーク位置のエネルギー値にそれぞれ乗算することにより、前記第1エネルギー分布における放射線のエネルギーの分布位置を調整する、
請求項15または請求項16に記載の放射能測定装置。
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