JP2020106836A - 電気変位材料、これを用いた光学素子、マイクロレンズアレイ、及び光学素子の作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】駆動電圧が低減された電気変位材料と、その応用技術を提供する。【解決手段】ゲル状の高分子材料に、25℃での負イオンの輸率が0.4以上であるイオン液体、または25℃での負イオンの輸率が0.2以上のイオン性界面活性剤が添加された電気変位材料を、第1の電極と第2の電極の間に配置して光学素子を作製する。この光学素子では、電気変位材料を変形させる印加電圧のレベルが低減され、低減された電圧の印加によって、第1の電極または前記第2の電極の表面に光散乱体が形成される。【選択図】図3
Description
本発明は、電気変位材料と、これを用いた光学素子、マイクロレンズアレイ、及び光学素子の作製方法に関する。
光学顕微鏡、小型プロジェクタなどの高解像イメージングの分野で、マイクロレンズアレイ(MLA)が用いられている。最近では、VR(バーチャルリアリティ)コンテンツを視聴するHMD(ヘッドマウントディスプレイ)にもMLAが適用されており、微小な光学素子をアクティブに制御する技術への要望が高い。
一方、人工筋肉アクチュエータに適用される高分子柔軟アクチュエータや(たとえば、特許文献1参照)、位置決め装置に適用される高分子ゲルのアクチュエータ(たとえば、特許文献2参照)が提案されている。前者の高分子柔軟アクチュエータは、ポリ塩化ビニルを1〜50重量部、可塑剤を50〜150重量部、イオン液体を1〜30重量部を含むゲルで構成されている。
電圧の印加により光学素子の形状を可逆的に制御できるならば、簡易な構成で光学特性を調整することができるはずである。その場合、光学素子に印加される駆動電圧は、低いほうが望ましい。
本発明は、駆動電圧が低減された電気変位材料と、その応用技術を提供することを目的とする。
本発明では、電気変位材料の駆動電圧を低減するために、電気変位材料を構成する高分子材料に、所定の条件を満たすイオン液体またはイオン性界面活性剤を添加する。
第1の態様では、電気変位材料は、
ゲル状の高分子材料と、
25℃での負イオンの輸率が0.4以上であるイオン液体と、
を含む。
ゲル状の高分子材料と、
25℃での負イオンの輸率が0.4以上であるイオン液体と、
を含む。
第2の態様では、電気変位材料は、
ゲル状の高分子材料と、
25℃での負イオンの輸率が0.2以上であるイオン性界面活性剤と、
を含む。
ゲル状の高分子材料と、
25℃での負イオンの輸率が0.2以上であるイオン性界面活性剤と、
を含む。
上記の構成と手法により、駆動電圧が低減された電気変位材料と、その応用技術が実現される。
図1は、実施形態の電気変位材料11を用いた光学素子10の基本構成と動作を説明する図である。実施形態の電気変位材料11は、ゲル状の高分子材料(ポリマーゲル)に所定の条件を満たすイオン液体、またはイオン性界面活性剤が添加されたものである。図1の例では、電気変位材料11は電極12と電極13の間に配置され、電圧の印加により変位して電極13の表面に光散乱体15を形成する。
光散乱体15は、凸形状を有する。本明細書及び特許請求の範囲で「凸形状」という場合は、変形したポリマーゲルの少なくとも一部が電極13の表面13s(ゼロ面)から積層方向の上方に突出した状態を意味し、図1のように凸面のみで形成される形状に限られるものではない。
図2(A)及び図2(B)に示す変形例のように、凸形の光散乱体の中央付近が凹状にくぼんだ形状も、光散乱体15全体としてみたときに電極13の開口14から突出しており、光散乱効果を有する。図2(A)のように、光散乱体15Aの頂点がわずかにくぼんだ状態だけではなく、図2(B)のように、光散乱体15Bの中央部が電極13の表面13sよりも下方にある場合も、「凸形状」に含まれる。
高分子材料として、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリウレタン(PU)、ポリスチレン(PSt)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)、シリコーンゴム(SR)等を用いることができる。好ましい構成例では、使用波長に対して透明な高分子または樹脂材料が用いられる。実施形態では、一例として、電場の作用による変位が大きく、取扱いが容易なPVCを用いる。
ポリマーゲルに、所定の条件を満たすイオン液体、またはイオン性界面活性剤を添加することで、電気変位材料11の駆動電圧を低減することができる。別の言い方をすると、イオン液体またはイオン性界面活性剤の添加により、電気変位材料11の変形効率を高めることができる。
イオン液体は、カチオン(正の電荷を帯びたイオン)とアニオン(負の電荷を帯びたイオン)で構成される塩であり、25℃で液体のものをいう。所定の条件のひとつは、イオン液体が、25℃で一定値以上のアニオン(負イオン)輸率をもつことである。この条件の詳細については、後述する。
イオン性界面活性剤は、カチオンとアニオンの少なくとも一方を含み、分子内に親水基と疎水基の双方を持つ物質である。所定の条件のひとつは、イオン性界面活性剤が25℃で一定値以上のアニオン(負イオン)輸率を持つことである。この条件の詳細についても後述する。
好ましい構成例では、高分子材料に対するイオン液体の重量割合は、0.2 wt%以上、1.5 wt%以下であり、より好ましくは、0.3 wt%以上、1.0 wt%以下である。高分子材料の重量を1(または100%)としたときに、この重量割合のイオン液体を混合することで、電気変位材料11の駆動電圧を低減することができる。この根拠については後述する。
イオン性界面活性剤を用いる場合は、高分子材料に対するイオン性界面活性剤の重量割合は、0.1 wt%以上、1.5 wt%以下である。高分子材料の重量を1(または100%)としたときに、この重量割合のイオン性界面活性剤を混合することで、電気変位材料11の駆動電圧を低減することができる。
ポリマーゲルに適切な可塑剤を添加してもよいし、溶媒に溶解させてもよい。可塑剤を用いる場合は、アジピン酸ジブチル(DBA:dibutyl adipate)、アジピン酸ジエチル(DEA:diethyl adipate)、セバシン酸ジエチル(DES:diethyl sebacate)、フタル酸ジオクチル(DOP:dioctyl phthalate)、フタル酸ジエチル(DEP:diethyl phthalate)等を用いることができる。溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系の溶媒を用いることができる。
電極12と電極13は、導電性を有する材料であれば、特に制限はない。電極12と電極13の少なくとも一方を金属で形成する場合は、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、インジウム(In)、パラジウム(Pd)、リチウム(Li)、ニオブ(Nb)、これらの合金などを用いることができる。電極12と電極13の少なくとも一方をITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)等の透明な酸化物半導体材料で形成してもよいし、導電性ポリマー、導電性カーボン等を用いてもよい。
電気変位材料11を用いた光学素子10は、電極12と電極13の間に電気変位材料11を挟み込んで電圧を印加することで駆動される。図1及び図2の例では、電極12が陰極、電極13は陽極となる。電極13は、電圧の印加によって電気変位材料11の一部が電極13の表面13sから突出することのできる構成となっており、図1及び図2の例では、電極13にミクロンオーダーの開口14が形成されている。
開口14に替えて、電気変位材料11の変位に追従して変形することのできる光透過性の非導電領域を電極13に設けてもよい。また、電極13を単層の導電層として構成する替わりに、樹脂等の絶縁シートの両面と開口内を導電膜でコーティングしたものを用いてもよい。
図1(A)は、電圧が印加されていない状態を示す。電極12と電極13は、電気変位材料11の層と面接触しており、電気変位材料11は、表面がフラットな状態で開口14の内部にある。このときの電気変位材料11の表面位置は、高さ方向(積層方向)で電極13の表面13sよりも低い。
図1(B)、図2(A)、及び図2(B)のように、電極12と電極13の間に電圧が印加されると、陰極である電極12から電気変位材料11に電子が注入される。一方、陽極となる電極13の開口14の側壁は、プラスに帯電する。電子を含む電気変位材料11は電極13の開口14の端面に引き付けられる。
このとき、イオン液体中に所定の輸率を示すアニオン(負イオン)が存在することにより、電気変位材料11は開口14の端面に、より効率的に引き付けられる。同様に、イオン性界面活性剤中に所定の輸率を示すアニオン(負イオン)が存在することにより、電気変位材料11は、開口14の端面により効率的に引き付けられる。ゲルの弾性により、微細な開口14から電気変位材料11が隆起し、電極13の表面13sから突出して光散乱体15を形成する。
電気変位材料11の変形は、電圧応答特性に基づくものであるが、ゲルの弾性を利用している。電気変位材料11は、電圧印加の下で、開口14から隆起して、電極13の表面13sの位置を超える突起となる。電気変位材料11の組成が均一であれば、同じレベルの電圧を印加することで、開口14の中心に対してほぼ対称な突起状の光散乱体15(光散乱体15A及び15Bを含む)を形成することができる。
電気変位材料11の変形は可逆的であり、電圧の印加を停止することで、図1(B)の初期状態に戻すことができる。また、印加する電圧のレベルに応じて、光散乱体15の高さを調整することができる。
電極13の開口14の形状は、円、楕円、多角形等、目的に応じて決定することができる。開口14の径は、光学素子10の用途に応じて適宜設定することができ、たとえば、1mm未満、好ましくは50〜300μmである。開口14の径が1mm以上になると、電圧印加の下でゲルの弾性を利用して電気変位材料を開口14から突出させることが困難になる。開口の径を50〜300μmとすることで、印加電圧に対するポリマーゲルの変形効率を高めて、中心に対してほぼ対称に突出する光散乱体15を形成することができる。
光学素子10の作製手順は以下のとおりである。ゲル状の高分子材料と、所定の条件を満たすイオン液体、またはイオン性界面活性剤を混合して電気変位材料11を用意する。高分子材料に適宜、可塑剤を組み合わせてもよい。この電気変位材料11を電極12の上に、キャスト法等によって塗布する。電気変位材料11の層の上に、開口14のパターンが形成された電極13を配置する。電気変位材料11が溶媒を含む場合は、塗布後、自然乾燥により溶媒を蒸発させた後に、電極13を配置してもよい。電極12と電極13の間に所定の電圧を印加することで、電極13の表面に光散乱体15を形成する。
電気変位材料11の厚さは、開口14のサイズ、形成したい光散乱体15の高さ、用いる電極12,13の厚さ等に応じて適宜決定されるが、一例として、1mm以下、好ましくは0.1mm〜0.5mmである。電気変位材料11の厚さが0.1mm以下のときは多少はハンドリングしにくくなるが、あくまでも電極13の開口サイズとの兼ね合いがあるので、微細な多数のレンズを有するマイクロレンズアレイシートを作製する場合は、電気変位材料11の厚さが0.1mm以下になる場合もあり得る。
(イオン液体の添加)
図3は、種々のイオン液体を添加したときの電気変位材料11の電圧応答特性を示す。重量平均分子量が230000のPVCをテトラヒドロフラン(THF)の溶媒に溶解させたたポリマーゲルを準備し、種々のイオン液体を添加して複数種類のサンプルを作製する。各サンプルを図1のように一対の電極間に挟み込み、印加電圧を変えてピーク高さの電圧依存性を測定する。参照例として、イオン液体が添加されていないポリマーゲルを用いて、同じくピーク高さの電圧依存性を測定する。ここで、ピーク高さというときは、電極13の表面13sからの高さhが最も高い部分の値をいう。
図3は、種々のイオン液体を添加したときの電気変位材料11の電圧応答特性を示す。重量平均分子量が230000のPVCをテトラヒドロフラン(THF)の溶媒に溶解させたたポリマーゲルを準備し、種々のイオン液体を添加して複数種類のサンプルを作製する。各サンプルを図1のように一対の電極間に挟み込み、印加電圧を変えてピーク高さの電圧依存性を測定する。参照例として、イオン液体が添加されていないポリマーゲルを用いて、同じくピーク高さの電圧依存性を測定する。ここで、ピーク高さというときは、電極13の表面13sからの高さhが最も高い部分の値をいう。
より具体的には、下部電極となる電極12の上に、サンプルと参照例のポリマーゲルを厚さ300μmに塗布する。ポリマーゲルの上に、上部の電極13として、直径100μmのホールが形成された厚さ20μmの金属薄膜を配置する。電極12と電極13の間に印加する電圧を0Vから400Vの間で変化させて、電極13から突出する光散乱体15のピーク高さhを測定する。
ラインAは、イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウム=テトラフルオロボラート(EMI-BF4)を添加したサンプルAのピーク高さの電圧依存性を示す。PVCに対するEMI−BF4の重量割合は0.5 wt%である。EMIはカチオン、BF4はアニオンである。
ラインBは、イオン液体として1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム=テトラフルオロボラート(OMI-BF4)を添加したサンプルBのピーク高さの電圧依存性を示す。PVCに対するOMI−BF4の重量割合は0.5 wt%である。OMIはカチオン、BF4はアニオンである。
ラインCは、イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウム=ジシアナミド(EMI-DCA)を添加したサンプルCのピーク高さの電圧依存性を示す。PVCに対するEMI−DCAの重量割合は、0.5 wt%である。EMIはカチオン、DCA(C2N3)はアニオンである。
ラインDは、イオン液体としてテトラブチルホスホニウム=テトラフルオロボラート(TBP−BF4)を添加したサンプルDのピーク高さの電圧依存性を示す。PVCに対するTBP−BF4の重量割合は、0.1 wt%である。TBPはカチオン、BF4はアニオンである。
ラインEは、イオン液体としてテトラブチルホスホニウム=テトラフルオロボラート(TBP−BF4)を添加したサンプルEのピーク高さの電圧依存性を示す。イオン液体の種類はサンプルDと同じであるが、PVCに対するTBP−BF4の重量割合は0.5 wt%である。TBPはカチオン、BF4はアニオンである。
ラインFは、イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウム=トリフルオロメタンスルフォンイミド(EMI−TFSI)を添加したサンプルFのピーク高さの電圧依存性を示す。PVCに対するEMI−TFSIの重量割合は0.5 wt%である。EMIはカチオン、TFSIはアニオンである。
ラインGは、イオン液体としてテトラブチルホスホニウム=メタンスルホン酸(TBP−MES)を添加したサンプルGのピーク高さの電圧依存性を示す。PVCに対するTBP−MESの重量割合は、0.5 wt%である。TBPはカチオン、MESはアニオンである。
ラインWは、参照例としてイオン液体が添加されていないサンプルWのPVCポリマーゲルのピーク高さの電圧依存性を示す。
図3の測定結果から、イオン液体を添加しない場合でも、誘電分極が生じるポリマーゲルを用いることで、電圧印加によりポリマーゲルが変形する。イオン液体を添加していないサンプルWでは、一定電圧を超えると、印加電圧に対してほぼリニアに光散乱体15の高さが増大している。しかし、サンプルWを電極13の表面13sから20μmの高さに突出させるには、400Vの電圧が必要である。
これに対し、イオン液体としてEMI−BF4を0.5 wt%添加したサンプルAと、OMI−BF4を0.5 wt%添加したサンプルBは、100V以下の電圧印加で、電気変位材料11を20μm以上の高さに駆動することができる。特に、サンプルAは、50Vの電圧印加で20μmの高さ、200Vの電圧印加で、40μm弱の高さに変位する。サンプルBも、100Vの電圧印加で25μmの高さ、200Vの電圧印加で30μmの高さに変位する。
EMI−DCAを0.5 wt%添加したサンプルCは、イオン液体を添加しないサンプルWと比較して、約半分の印加電圧(210〜220V)で同じ20μmのピーク高さを得ることができ、変形効率を大きく向上している。
TBP−BF4を0.1 wt%添加したサンプルDは、50Vの電圧印加で電極13の表面13sから光散乱体15を突出させることができるが、電圧を高くしても、ピーク高さは10μm未満のままであり、50Vから400Vの範囲でピーク高さの変化が小さい。サンプルDでは、電圧制御により光散乱体15の高さを精度良く調整することが難しい。
TBP−BF4を0.5 wt%添加したサンプルE、EMI−TFSIを0.5 wt%添加したサンプルF、及びTBP−MESを0.5 wt%添加したサンプルGは、400Vの電圧を印加しても、電極13の表面13sから光散乱体15を突出させることができない。
図3の測定結果から、イオン液体の種類(すなわち物性)と添加量の少なくとも一方が電気変位材料11の駆動電圧の低減に関与していると考えられる。
<ポリマーゲルの変位とイオン液体の物性の関係>
図4は、ポリマーゲルの変位とイオン液体の物性の関係を示す図である。イオン液体として、図3のサンプルA〜Gに加えて、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム=フルオロスルホニルイミド(EMI−FSI)を添加したサンプルHの物性も併せて測定する。
図4は、ポリマーゲルの変位とイオン液体の物性の関係を示す図である。イオン液体として、図3のサンプルA〜Gに加えて、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム=フルオロスルホニルイミド(EMI−FSI)を添加したサンプルHの物性も併せて測定する。
各種のイオン液体を添加したサンプルA〜Hで、変位がプラスのものは、電圧の印加によりポリマーゲルが電極13の表面13sから突出して光散乱体15が形成されたものを示す。変位がマイナスのものは、電圧を印加しても電極13の表面13sからポリマーゲルが突出しないものである。
各イオン液体の物性として、導電率、電位窓のサイズ、25℃での負イオンの拡散係数と輸率を測定する。用いたイオン液体の中には、25℃で固体のものもあるため、80℃に加熱して溶融したものについては、80℃での負イオンの拡散係数と輸率を測定する。
上述のパラメータのうち、まず導電率について検討する。サンプルCは、サンプルA,Bと比較して導電率が2桁小さいが、サンプルCを添加したポリマーゲルはプラスに変位している。これに対し、サンプルHは、サンプルCよりもはるかに導電率が大きいが、ポリマーゲルはプラスに変位していない。イオン液体の導電率は、ポリマーゲルの変形効率に直接関係しないと考えられる。
電位窓は、図1の系で電気化学的に安定性が保たれる電位領域のことである。電位窓が広いほど(数値が大きいほど)、系が電気化学的に安定する範囲が広い。サンプルAとサンプルFの電位窓は同じ広さであるにもかかわらず、サンプルAのポリマーゲルはプラスに変位し、サンプルFのポリマーゲルは、プラスの変位が得られていない。イオン液体の電位窓の広さも、ポリマーゲルの変形効率に直接関係しないと考えられる。
次に、25℃でのアニオン(負イオン)の拡散係数と輸率について検討する。イオン液体に含まれる正負イオンの拡散係数は、測定機器として、固体NMR(Varian社製のVNMR System)を用いて測定する。測定手順は、キャピラリーにイオン液体を注入し、装置にセットする。所定温度(この場合は25℃と80℃)で磁場の変化に対するシグナル強度を計測し、Stokes-Einsteinの式から正負イオンの拡散係数を算出する。
負イオンの輸率は、イオン液体に電流を流した際に、全電流に対するアニオンが担う電流の割合を表わす。負イオンの輸率は、上記で求めた負イオンの拡散係数と正イオンの拡散係数の総和に対する負イオンの拡散係数の比(Danion/(Dcation+Danion))として計算される。
サンプルA、B、C、F、Hに用いられたイオン液体は、25℃で液体であり、パルス磁場勾配NMR装置を用いた測定結果から、各イオン液体の負イオンの拡散係数と輸率を算出した。プラスの変位が得られたサンプルA、B,Cで、25℃でのイオン液体の負イオンの輸率は、いずれも0.4以上である。これに対し、プラスの変位が得られないサンプルFとHで用いられたイオン液体の25℃での負イオンの輸率は0.4よりも小さい。ここから、室温での負イオンの輸率がポリマーゲルの変形効率に影響していると考えられる。
なお、プラスの変位が得られたサンプルDに添加されたイオン液体TBP−BF4は、用いた液体クロマトグラフの加熱可能温度(80℃)では溶融しないため、拡散係数を測定することができなかった。
プラスの変位が得られないサンプルGに添加されたイオン液体TBP−MESも25℃で固体であるため、拡散係数を測定することができない。このイオン液体を80℃に加熱したところ、溶融したので負イオンの拡散係数と輸率を計算したところ、輸率は0.6であった。
図4の結果から、電気変位材料11に添加されるイオン液体の特性として、25℃での負イオンの輸率が0.4以上のものが望ましいとわかる。
図3及び図4から、イオン液体のアニオンのサイズ(分子量)が小さいほうが、ポリマーゲルの変形効率に寄与することが推定される。一方、イオン液体のカチオンのサイズは、変形効率にはそれほど寄与していないと考えられる。しかし、サンプルDの変形効率が十分でないことから、カチオンの種類によっては、陰極の劣化に影響している可能性がある。これについては、図7を参照して後述する。
なお、サンプルGで用いられたイオン液体のアニオンサイズもカチオンサイズも中程度であるが、イオン液体が25℃で固体であるため、攪拌によってポリマーゲル中に分散されても、ゲルの変形効率にはそれほど寄与していないものと考えられる。
以上から、BF4―及びDCA以外にも、アニオンとしてイオンサイズが比較的小さいCl−やBr―を用いることができる。また、カチオンとして、陰極の劣化に影響しないものを選択することで、種々のイオン液体を用いることができる。たとえば、Li−BF4―をイオン液体として用い得る。
<イオン液体の添加量とポリマーゲルの変位の関係>
図5は、イオン液体の添加量とポリマーゲルの変位の関係を示す図である。横軸は、ポリマーゲルの高分子材料に対するイオン液体の含有量(wt%)、縦軸が変位のピーク高さである。
図5は、イオン液体の添加量とポリマーゲルの変位の関係を示す図である。横軸は、ポリマーゲルの高分子材料に対するイオン液体の含有量(wt%)、縦軸が変位のピーク高さである。
高分子材料として、分子量が230000のPVCを用い、イオン液体としてサンプルAのEMI−BF4を用いる。EMI−BF4の添加量を0 wt%から5.0 wt%の範囲で変化させる。また、印加電圧を0V、50V、100V、200V、400Vと変える。
印加する電圧のレベルに拠らず、イオン液体の添加量が、0.2 wt%〜1.5 wt%の範囲でプラスの変位が得られる。また、0.3 wt%〜1.0 wt%の範囲で、変位が最大になる。この範囲のイオン液体の添加により、100V以下の電圧印加で、電極13の表面に光散乱体15を形成することができる。イオン液体の添加量が5.0 wt%のときは、電圧をオフにしても変形が戻らないメモリー現象が発生する。
図5から、高分子に対するイオン液体の重量比率は、0.2 wt%〜1.5 wt%が望ましく、より好ましくは、0.3 wt%〜1.0 wt%であることがわかる。これは、図3の結果とも一致する。
図6は、電気変位材料への電圧印加により形成される光散乱体の光拡散分布の評価結果を、イオン液体の添加量ごとに示す図である。イオン液体としてEMI−BF4を用い、EMI−BF4の添加量を変えた電気変位材料11で、図1の光学素子10を作製する。電気変位材料11は、高分子としてPVCを含み、可塑剤としてアジピン酸ジブチル(DBA)を含む。PVCとDBAの総量に対するDBAの含有割合は83 wt%である。
陰極となる電極12を、厚さ150μmのITOで形成し、電極12と電極13の間に挟んだ電気変位材料11に電圧を印加して光散乱体15を形成する。ITOで形成される電極12の側にレーザを配置し、光散乱体15が形成される側にスクリーンを配置する。電極12の裏面側から、赤色平行光のレーザ光を光学素子10に入射して、スクリーンでの光拡散状態を観察する。
スクリーンは、光散乱体15の光出射側で、光散乱体15の焦点よりも遠い位置に配置されている。光散乱体15の焦点で一度集光された後の光拡散を、スクリーン上で観察する。光学素子10の光散乱体15の径は100μm、高さは0〜40μm程度と小さく、その焦点位置は光学素子10のきわめて近傍にあり、肉眼での観察が困難だからである。光散乱体15の焦点を超えた位置での光拡散を観察することで、集光状態を評価することができる。
イオン液体が添加されていないサンプル(「w/o IL」と表記)では、200Vの電圧を印加しても電極13の表面から突出する光散乱体15が形成されない。光学素子10の裏面から入射された赤色平行光は、集光されずに平行光のまま光学素子10を透過し、印加電圧のレベルにかかわらず、スクリーン上に同じサイズのスポットが形成されている。
EMI−BF4が0.05 wt%添加されたサンプルでは、100Vの電圧印加により、電極13の表面でポリマーゲルがわずかに膨らむが、集光機能が不十分であり、スクリーン位置でほぼ平行光のスポットが維持されている。200Vの電圧印加で、ピーク高さが10μm程度の(曲率の緩やかな)光散乱体15が形成される。いったん光散乱体15の焦点位置で集光された光は、拡散して広がり、スクリーン上にスポットは現れない。
EMI−BF4が0.5 wt%添加されたサンプルでは、50Vの電圧印加により、電極13の表面に光散乱体15が形成され、集光後に拡散し始めた光がスクリーン位置で観察される。100Vの電圧と200Vの電圧印加では、50V印加時よりもピーク高さが大きい、すなわち曲率が急な光散乱体15が電極13の表面に形成される。光学素子の裏側から入射した光は、集光された後に大きく拡散し、スクリーン位置でスポットは観察されない。これらの評価結果は、図5の測定結果と一致する。
図6の光拡散分布から、印加電圧を調整することにより、光散乱体15の焦点距離を可変にできることが確認される。実施形態の光学素子10は、可変焦点レンズ、または可変形状レンズとして用いることができる。
<イオン液体(カチオン)の陰極劣化への影響>
図7は、イオン液体の陰極劣化への影響を示す図である。試験用のサンプルとして、金属基板上に、種々のイオン液体を添加したPVCゲルを塗布し、PVCゲルの上に対向電極としてITO電極を配置する。
図7は、イオン液体の陰極劣化への影響を示す図である。試験用のサンプルとして、金属基板上に、種々のイオン液体を添加したPVCゲルを塗布し、PVCゲルの上に対向電極としてITO電極を配置する。
塗布するPVCゲルの種類は、サンプルA(0.5 wt%のEMI−BF4を含む)、サンプルB(0.5 wt%のOMI−BF4を含む)、サンプルC(0.5 wt%のEMI−DCAを含む)、サンプルD(0.1 wt%のTBP−BF4を含む)、サンプルH(0.5 wt%のEMI−FSIを含む)、及びサンプルG(0.5 wt%のTBP−MESを含む)の6種類である。このうち、図3でプラスの変位が得られたのは、サンプルA〜Dである。サンプルDは、イオン液体の重量割合を他のサンプルと同じ0.5wt%にした場合、変位が得られないので、添加量を0.1 wt%に減らしたサンプルである。
金属基板を正極、ITOを負極として、PVCゲルに印加する電圧レベルを変えながらITO側から電極の表面状態を観察する。
変位効果がなかったサンプルGは、50Vという低い印加電圧でITO(陰極)の劣化が観察される。また、サンプルDでも電圧印加によるITO電極の劣化が観察される。これは、カチオンがITO電極の劣化に影響しているためと考えられる。これに対し、変位効果の高いサンプルA〜Cでは、印加電圧を上げてもITO電極の劣化は観察されていない。
図3〜図7の考察から、25℃で負イオンの輸率が0.4以上のイオン液体を添加することで、イオン液体を添加しないポリマーゲルと比較して、低い印加電圧で大きな変形を得ることができる。特に、サンプルAとサンプルBのように、アニオンサイズが小さいイオン液体を用いると、100V以下の電圧範囲で、ピーク高さを大きく変えることができ、光散乱体15の制御が容易である。すなわち、印加電圧のレベルに応じて、光散乱体15を出現させ、その高さを調整することができる。これらのサンプルでは、光学素子10の駆動時に、陰極に対する悪影響も少ない。
(イオン性界面活性剤の添加)
図8は、種々のイオン性界面活性剤を添加したときの電気変位材料11の電圧応答特性を示す。重量平均分子量が230000のPVCをテトラヒドロフラン(THF)の溶媒に溶解させたたポリマーゲルを準備し、種々のイオン性界面活性剤を添加して複数種類のサンプルを作製する。各サンプルを図1のように一対の電極間に挟み込み、印加電圧を変えてピーク高さの電圧依存性を測定する。参照例として、イオン性界面活性剤が添加されていないポリマーゲルを用いて、同じくピーク高さの電圧依存性を測定する。ここで、ピーク高さというときは、電極13の表面13sからの高さhが最も高い部分の値をいう。
図8は、種々のイオン性界面活性剤を添加したときの電気変位材料11の電圧応答特性を示す。重量平均分子量が230000のPVCをテトラヒドロフラン(THF)の溶媒に溶解させたたポリマーゲルを準備し、種々のイオン性界面活性剤を添加して複数種類のサンプルを作製する。各サンプルを図1のように一対の電極間に挟み込み、印加電圧を変えてピーク高さの電圧依存性を測定する。参照例として、イオン性界面活性剤が添加されていないポリマーゲルを用いて、同じくピーク高さの電圧依存性を測定する。ここで、ピーク高さというときは、電極13の表面13sからの高さhが最も高い部分の値をいう。
より具体的には、下部電極となる電極12の上に、サンプルと参照例のポリマーゲルを厚さ300μmに塗布する。ポリマーゲルの上に、上部の電極13として、直径100μmのホールが形成された厚さ30μmの金属薄膜を配置する。電極12と電極13の間に印加する電圧を0Vから400Vの間で変化させて、電極13から突出する光散乱体15のピーク高さhを測定する。
ラインKは、イオン性界面活性剤としてリン酸系の界面活性剤、具体的には、脂肪族リン酸エステルを添加したサンプルKのピーク高さの電圧依存性を示す。PVCに対する脂肪族リン酸エステルの重量割合は1.0 wt%である。
ラインLは、イオン性界面活性剤としてスルホン酸系の界面活性剤、具体的には、ラウリルスルホン酸ナトリウムを添加したサンプルLのピーク高さの電圧依存性を示す。PVCに対するラウリルスルホン酸ナトリウムの重量割合は1.0 wt%である。
ラインMは、イオン性界面活性剤としてカルボン酸系の界面活性剤、具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウムを添加したサンプルMのピーク高さの電圧依存性を示す。PVCに対するポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウムの重量割合は1.0 wt%である。
ラインNは、イオン性界面活性剤としてホウ酸系の界面活性剤、具体的には、テトラデシルボレート(ホウ酸エステル)を添加したサンプルNのピーク高さの電圧依存性を示す。PVCに対するホウ酸エステルの重量割合は1.0 wt%である。
ラインW'は、参照例としてイオン性界面活性剤が添加されていないサンプルW'のPVCポリマーゲルのピーク高さの電圧依存性を示す。
図8の測定結果から、イオン性界面活性剤を添加しない場合でも可塑剤もしくはポリマーが負電荷を帯び電圧印加によりポリマーゲルが変形する。イオン性界面活性剤を添加していないポリマーゲルのサンプルW'では、一定電圧を超えると、印加電圧に対してほぼリニアに光散乱体15の高さが増大している。しかし、サンプルW'を電極13の表面13sから20μmの高さに突出させるには、400Vの電圧が必要である。
これに対し、イオン性界面活性剤液体として脂肪族リン酸エステルを1.0 wt%添加したサンプルKと、ラウリルスルホン酸ナトリウムを1.0 wt%添加したサンプルLは、300V以下の電圧印加で、電気変位材料11を20μm以上の高さに駆動することができる。特に、サンプルKは、250Vの電圧印加で20μmの高さに変位する。サンプルMとサンプルNも、イオン性界面活性剤が添加されていないサンプルW'と比較して、同じ印加電圧での変形効率が高い。
なお、非イオン性の界面活性剤をポリマーゲルに添加したときは、イオン性界面活性剤を添加しないサンプルW'と同程度の電圧応答性しか示さない。
図9は、サンプルKで用いたリン酸エステル(商品名:アデカコールPS440E)の1H−NMR自己拡散係数の測定結果を示す。上述のように、負イオンの輸率は、負イオンの自己拡散係数Danionと正イオンの自己拡散係数Dcationの総和に対する負イオンの自己拡散係数の比(Danion/(Dcation+Danion))として計算される。
正イオンの自己拡散係数は3.2×10-12、負イオンの自己拡散係数は、1.0×10-12である。正イオンの自己拡散係数は、図10の1H−NMRスペクトルのピーク1から求められる。負イオンの自己拡散係数は、図10の1H−NMRスペクトルのピーク2〜7の平均である。
この値に基づいて計算される負イオンの輸率は、0.23である。図8〜10の結果から、イオン性界面活性剤の負イオンの輸率が2.0以上であるときに、ポリマーゲルは電極13に形成された開口14の側面に沿って効果的に変形すると考えられる。
<マイクロレンズアレイへの適用例>
図11は、実施形態の電気変位材料11を適用したマイクロレンズアレイ100の模式図である。マイクロレンズアレイ100は、電極13の表面13sに複数の光散乱体15の配列を有する。
図11は、実施形態の電気変位材料11を適用したマイクロレンズアレイ100の模式図である。マイクロレンズアレイ100は、電極13の表面13sに複数の光散乱体15の配列を有する。
マイクロレンズアレイ100は、一対の電極12と電極13の間に、電気変位材料11が挟持された三層の積層構造を有する。電気変位材料11は、上述したように、ゲル状の高分子材料(ポリマーゲル)に、所定のイオン液体、またはイオン性界面活性剤が添加されている。添加されるイオン液体は、25℃で負イオンの輸率が0.4以上のものを用いる。イオン液体の添加量は、高分子材料の重量に対して、0.2 wt%〜1.5 wt%であることが望ましく、より好ましくは、0.3 wt%〜1.0 wt%である。イオン性界面活性剤を添加する場合は、25℃で負イオンの輸率が0.2以上のものを用いる。イオン性界面活性剤の添加量は、高分子材料の重量に対して、0.1 wt%〜1.5 wt%であることが望ましい。
高分子材料として、PVC、PMMA、PU、PSt、PVAc、PVA、PC、PET、PAN、SR等のポリマーゲルを用いることができる。ポリマーゲルに、DBA、DEA、DES、DOP、DEP等の可塑剤を添加してもよい。
電極12と電極13の間に電圧を印加することで、陽極となる電極13の表面13sに光散乱体15の配列を形成することができる。印加電圧は200V以下であり、添加するイオン液体の種類によっては、100V以下の電圧印加で20μm以上の高さの光散乱体15の配列を形成することができる。
一例として、光散乱体15の径は100μm、中心間のピッチは150μm、隣接する2つの光散乱体15の間隔は50μmである。マイクロレンズアレイ100は、フィルム状の電極13に形成されたミクロンオーダーの開口とポリマーゲルの電圧変位特性を利用して形成されており、電極13の表面13sに、均一な凸形状の光散乱体15が配列されている。
電極12と電極13の間に印加される電圧のレベルに応じて、光散乱体15の配列を出現させ、及び/または光散乱体15の高さを調整することができる。
マイクロレンズアレイにおいても、電極13を単層の導電層で構成する替わりに、所定の開口が形成された樹脂等の絶縁シートの両面と開口内を導電膜でコーティングしたものを用いてもよい。あるいは、開口に替えて、電気変位材料11の変位に追従して変形することのできる光透過性の非導電領域を電極13に設けてもよい。
マイクロレンズアレイ100の光散乱体15の配列はマトリクス配列に限定されず、互い違いの配列にしてもよい。あるいは、電極13の開口14の形状を六角形にして細密配置にしてもよい。
以上、特定の実施例に基づいて本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施例に限定されない。たとえば、図1の光学素子10と、図11のマイクロレンズアレイ100は、両面に光散乱体15を有する構成に拡張することが可能である。陰極である電極12を共通電極として用い、電極12の両面に電気変位材料11を配置し、陽極となる2つの電極13で挟むことで、電圧印加により、光学素子またはマイクロレンズアレイシートの両面に光散乱体15を発生させることができる。中間に配置される電極12を透明電極にすることで、両側が凸のレンズユニットを形成することができる。マイクロアレイ100の光散乱体として、図2(A)の形状の光散乱体15A、または図2(B)の形状の光散乱体15Bを用いてもよい。
実施形態のマイクロレンズアレイ100は、撮像装置や照明装置に適用可能である。マイクロレンズアレイ100の光散乱体15を、CCD(charge coupled device)、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)センサなどの複数の撮像素子の配列に対応して配置することで、高解像、高精度の撮像装置を実現することができる。
マイクロレンズアレイ100を照明装置に適用する場合は、LEDランプ等の光源の出力側の全面にマイクロレンズアレイ100を配置することで、光拡散を制御して、輝度を高く保った状態で拡散光を平行光に変換することができる。さらに、微細な発光素子、または複数の発光素子の配列の出力面の近傍に実施形態の光学素子10、またはマイクロレンズアレイ100を配置することで、顕微鏡用、産業用等の照明装置に適用することもできる。
マイクロレンズアレイ100は、1mm以下の薄型に形成され、陽極、陰極ともに透明化することができるので、超薄型カメラ、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、マイクロレンズアレイ(MLA)シート等への適用のほか、内視鏡システム等の医療の分野にも適用可能である。単一の光散乱体15を有する光学素子10も、医療、画像形成の分野で光拡散シート、レンズシート等に適用することができる。
実施形態の光学素子とマイクロレンズアレイは、複雑な機構を用いずに、低減された駆動電圧で、様々な配向分布をもつ光散乱体を発生させることができる。
10 光学素子
11 電気変位材料
12 電極(第1の電極)
13 電極(第2の電極)
14 開口
15,15A、15B 光散乱体
100 マイクロレンズアレイ
11 電気変位材料
12 電極(第1の電極)
13 電極(第2の電極)
14 開口
15,15A、15B 光散乱体
100 マイクロレンズアレイ
Claims (9)
- ゲル状の高分子材料と、
25℃での負イオンの輸率が0.4以上であるイオン液体と、
を含むことを特徴とする電気変位材料。 - 前記高分子材料に対する前記イオン液体の重量比率は0.2wt%以上、1.5 wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の電気変位材料。
- 前記イオン液体の融点は25℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気変位材料。
- ゲル状の高分子材料と、
25℃での負イオンの輸率が0.2以上であるイオン性界面活性剤と、
を含むことを特徴とする電気変位材料。 - 第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極の間に配置される請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気変位材料と、
を有し、前記第1の電極と前記第2の電極の間に電圧が印加されたきに、前記電気変位材料が前記第1の電極または前記第2の電極の表面に光散乱体を形成することを特徴とする光学素子。 - 前記光散乱体が形成される電極は陽極であることを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
- 前記第1の電極と前記第2の電極の少なくとも一方は、透明電極であることを特徴とする請求項5または6に記載の光学素子。
- 第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極の間に配置される請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気変位材料と、
を有し、電圧印加の下で前記第1の電極と前記第2の電極のいずれか一方の電極表面に複数の光散乱体の配列を有することを特徴とするマイクロレンズアレイ。 - ゲル状の高分子材料に、25℃での負イオンの輸率が0.4以上であるイオン液体、または25℃での負イオンの輸率が0.2以上のイオン性界面活性剤を添加して電気変位材料を準備し、
第1の電極の上に前記電気変位材料を配置して電気変位層を形成し、
前記電気変位層の上に第2の電極を配置し、
前記第1の電極と前記第2の電極の間に電圧を印加して前記電気変位層を変形させて、前記第2の電極の表面に光散乱体を形成する、
工程を含む光学素子の作製方法。
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