JP2020106599A - 眼鏡レンズの設計方法および製造方法 - Google Patents

眼鏡レンズの設計方法および製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】実際に眼鏡を使用する際の輻輳時の状況を反映させた眼鏡レンズを提供する。【解決手段】装用者の眼の輻輳時における、単眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸と、両眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸との間のトーション差角δを用いて累進屈折力眼鏡レンズを設計する。トーション差角δは、sinδ=−2mt(1+l+nt)/{(1+l)(1+l+2nt+(1−l)t2)}から得られ、X方向を光軸方向で角膜から網膜に向かう方向、Y方向を天地の天の方向、Z方向をそれらに垂直で右眼において耳から鼻に向かう方向としたとき、l、m、n:眼球の向く方向の単位ベクトルa*=l×i*+m×j*+n×k*における各係数で、i*はX方向のベクトル、j*はY方向のベクトル、k*はZ方向のベクトルであり、t:右眼の場合はtanφ、左眼の場合は−tanφ、φ:α/5〜α/3の範囲の一つの値、α:輻輳角【選択図】図1

Description

本発明は、眼鏡レンズの設計方法および製造方法に関する。
特許文献1の[0037]−[0043]には、ドンデルス・リスティング法則により決められる乱視軸方向を前提に、乱視面の形状を、眼の屈折異常の度数および乱視成分をすべての眼位で矯正するように設計する技術が記載されている。
特開平11−72754号公報
以降の説明において、X方向を光軸方向であって角膜から網膜に向かう方向とし、Y方向を天地の天の方向とし、Z方向をそれらに垂直な方向であって右眼において耳から鼻に向かう方向とする。
図1は、眼鏡レンズの装用者の眼の輻輳時における眼球回旋の様子を示す平面図である。
特許文献1で使用するドンデルス・リスティング法則だと、任意方向へ向いたときの眼球の姿勢は、眼球が第一眼位(まっすぐ前方遠くを見るときの方向)から任意方向に向かって所定の回転軸に沿って回転して得られる。その眼球の回転軸は、Y−Z平面上(図1中のListing‘s plane)に存在する。
特許文献1で使用するドンデルス・リスティング法則は、片眼のみで見た場合(以降、単眼視と称する。)を前提とする。その一方、ものを見るときは両眼視であり、その際には両眼を輻輳してものを見る。両眼視においても、任意方向へ向いたときの眼球の姿勢は、眼球が第一眼位(まっすぐ前方遠くを見るときの方向)から任意方向に向かって所定の回転軸に沿って回転して得られる。但し、特許文献1で使用するドンデルス・リスティング法則とは異なり、両眼視の際の各眼の眼球の回転軸は、図1に示すように、Y−Z平面上から外れる平面(図1中のVelocity plane)に存在する。
以降、特許文献1で使用するような従来のドンデルス・リスティング法則のことを「単眼視リスティング法則」とも称し、両眼視の場合でのドンデルス・リスティング法則のことを「両眼視リスティング法則」とも称する。
実際に眼鏡が使用されるときは、通常、両眼視である。特許文献1に記載の技術だと、単眼視を前提とした輻輳時の状況を、両眼視にて適用していることになる。
本発明の一実施例は、実際に眼鏡を使用する際の輻輳時の状況を反映させた眼鏡レンズの提供を可能とすることを目的とする。
本発明の第1の態様は、
累進屈折力レンズである眼鏡レンズの装用者の眼の輻輳時における、単眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸と、両眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸との間のトーション差角δを用いて眼鏡レンズを設計する、眼鏡レンズの設計方法である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
累進屈折力レンズである片眼用の累進屈折力レンズである眼鏡レンズにおいては、処方値の一つである乱視軸Axの値に対して片眼のトーション差角δを減じた値を新たな乱視軸Ax1’として使用し、もう一方の片眼用の累進屈折力レンズである眼鏡レンズにおいては、処方値の一つである乱視軸Axの値に対してもう一方の片眼のトーション差角δを減じた値を新たな乱視軸Ax2’として使用し、一対の眼鏡レンズを設計する設計工程を有する。
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の態様であって、
トーション差角δを以下の(式1)を用いて得るトーション差角取得工程と、
設計工程と、
を有する。
但し、X方向を光軸方向であって角膜から網膜に向かう方向とし、Y方向を天地の天の方向とし、Z方向をそれらに垂直な方向であって右眼において耳から鼻に向かう方向としたとき、
l、m、n : 眼球の向く方向の単位ベクトル
=l×i+m×j+n×k ・・・(式2)
における各係数であり、iはX方向でのベクトル、
はY方向でのベクトル、kはZ方向でのベクトルであり、
t : 右眼の場合はtanφ、左眼の場合は−tanφ
φ : α/5〜α/3の範囲の一つの値
α : 輻輳角
である。
本発明の第4の態様は、第1〜第3のいずれかの態様に記載の態様であって、
眼球軸は、角膜頂点と中心窩とを通過する眼軸に対して垂直な軸であって眼球にとって上下方向の上下軸、または、眼軸および上下軸に対して垂直な軸であって眼球にとって左右方向の左右軸である。
本発明の第5の態様は、
累進屈折力レンズである眼鏡レンズの装用者の眼の輻輳時における、単眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸と、両眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸との間のトーション差角δを用いて眼鏡レンズを設計し、設計に基づき眼鏡レンズを加工する、眼鏡レンズの製造方法である。
本発明の一実施例によれば、実際に眼鏡を使用する際の輻輳時の状況を反映させた眼鏡レンズの提供が可能となる。
図1は、眼鏡レンズの装用者の眼の輻輳時における眼球回旋の様子を示す平面図である。 図2は、回転軸Bの単位ベクトルbを法線とする平面にaとxとを投影させた場合の説明図である。 図3は、一般式としての例示であって、nを軸にしてrがθだけ回転した後のr’を求める様子を示す説明図である。
本明細書においては「〜」は所定の値以上且つ所定の値以下のことを指す。
また、本明細書においては、ベクトルにはを付す、またはベクトルに該当する記号を数式中にて太字で表現する。
以下、本発明の一態様について述べる。以下における説明は例示であって、本発明は例示された態様に限定されるものではない。
[本発明の一態様に係る眼鏡レンズの設計方法]
本発明の一態様に係る眼鏡レンズの評価方法は、以下の通りである。
「累進屈折力レンズである眼鏡レンズの装用者の眼の輻輳時における、単眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸と、両眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸との間のトーション差角(Torsion difference angle)δを用いて眼鏡レンズを設計する、眼鏡レンズの設計方法。」
眼球軸とは、角膜頂点と中心窩とを通過するいわゆる眼軸(すなわちX軸)以外の軸であって、トーション差角δを表すことが可能な軸のことである。トーション差角δは眼軸周りの角度であるため、眼軸以外の軸により、トーション差角δを表すことが可能である。
眼球軸は、具体的には、角膜頂点と中心窩とを通過する眼軸に対して垂直な軸であって眼球にとって上下方向の上下軸(眼球Y軸)、または、眼軸および上下軸に対して垂直な軸であって眼球にとって左右方向の左右軸(眼球Z軸)のことである。
上下軸とは、眼球が無限遠の物体を見ているときの眼球の最底部から天頂部に至る方向の軸のことである。
左右軸とは、眼球が無限遠の物体を見ているときの眼球の水平方向での最も耳寄り部分から最も鼻寄り部分に至る方向の軸のことである。
ちなみに、上下軸、左右軸以外の方向を軸として任意で定義しても構わない。但しその場合、(式1)に相当する式を新たに導出する必要がある。そのため、本発明の一態様のように、眼軸から求まる上下軸、左右軸を使用するのが好ましい。
以下、説明の便宜上、上下軸を例示するが、左右軸を使用する場合でも(式1)よってトーション差角δを表現可能である。
単眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の上下軸は、図1に示すようにY軸そのものである。その一方、両眼視リスティング法則に基づく場合、眼球回旋後の上下軸は、Y軸そのものからずれる。つまり本明細書におけるトーション差角δとは、単眼視リスティング法則に基づいて眼球が回旋した後の眼球の上下軸(または左右軸)と、両眼視リスティング法則に基づいて眼球が回旋した後の眼球の上下軸(または左右軸)との間の成す角度のことである。
特許文献1に記載の技術だと、単眼視を前提とした輻輳時の状況を、両眼視にて適用している。その一方、本発明の一態様によれば、単眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸からのトーション差角δを用いて眼鏡レンズを設計する。すなわち「単眼視リスティング法則」に基づく眼球回旋後の眼球軸と、単眼視リスティング法則を両眼視の場合に対応させた「両眼視リスティング法則」に基づく眼球回旋後の眼球軸との間のトーション差角δを用いて眼鏡レンズを設計する。
その結果、実際に眼鏡を使用する際の輻輳時の状況を反映させた眼鏡レンズの提供が可能となる。これは、眼鏡店で眼鏡レンズの度数を確認する際に用いる装用度数(いわゆるチェック度数)を正確化できることを意味する。また、本発明の一態様ならば、特殊な装置を必要とすることなく、正確な装用度数が得られるという利点もある。
[本発明の一態様に係る眼鏡レンズの評価方法の詳細]
以下、本発明の一態様の更なる具体例、好適例および変形例について説明する。
本発明の一態様に係る眼鏡レンズは累進屈折力レンズである。以降、特記無い限り眼鏡レンズは累進屈折力レンズのことを指す。詳しく言うと、一対の左右眼用の累進屈折力レンズであり、右眼用の累進屈折力レンズと左眼用の累進屈折力レンズである。
本明細書における累進屈折力レンズは、第一の屈折力を有する第一屈折部、該第一の屈折力よりも度数の高い第二の屈折力を有する第二屈折部、及び該第一屈折部から該第二屈折部へ屈折力が累進的に変化する累進屈折部を有する。第二の屈折部はレンズの中心から下方に配置され、第一の屈折部は第二の屈折部の上方に配置される。
累進屈折力レンズが遠近両用レンズの場合、第一の屈折部は遠方距離(例:無限遠)に対応する度数を備える遠用部、第二の屈折部は該遠方距離に比べて近方の距離に対応する度数を備える近用部を意味する。
累進屈折力レンズが中近レンズの場合、第一の屈折部は中間距離(例:1m程度)に対応する度数を備える中間部、第二の屈折部は該中間距離に比べて近方の距離(例:読書距離40cm)に対応する度数を備える近用部を意味する。
また、本明細書における累進屈折力レンズは物体側の面および眼球側の面の少なくともいずれかが累進面であればよい。本発明の一態様では眼球側の面が累進面であり、物体側の面を球面とする内面累進レンズを例示する。
(トーション差角取得工程)
本工程では、トーション差角δを上記の(式1)を用いて得る。以下、(式1)の導出について、図1を用いて説明する。なお、以下の例においては右眼のトーション差角δを得る場合を挙げる。
ちなみに、正中面上の物体を見る場合だと、左右眼の方向が対称となる。その場合、左眼のトーション差角δは、δと絶対値としては同じとなる一方、右眼と左眼とでは、第一眼位から任意方向に向かって回転する際の方向がZ方向において逆なので、δの逆の符号が付される。
その一方で、正中面上以外の位置すなわち斜めの位置の物体を見る場合だと、左右眼の方向が非対称となる。その場合、右眼のトーション差角δと左眼のトーション差角δは絶対値として同じにならない。この場合、各眼のトーション差角δ(すなわちδまたはδ)を上記の(式1)を用いて得ることになる。その際、後掲の(式5)のtの値(ひいてはφの値)を各眼ごとに正しく設定する。
本発明の一態様においては、説明の簡略化のために、正中面上の物体を見る場合を仮定する。
図1中のφは、α/5〜α/3の範囲の一つの値を用いればよいが、本発明の一態様においてはα/4を例示する。つまり以降の例では、両眼同時に第一眼位から任意方向に向かって回転する際の各眼球の回転軸を有する平面であるVelocity planeがα/4だけY−Z平面上から傾いた場合について述べる。
両眼視においてVelocity planeがα/4だけY−Z平面上から傾いた場合、第1眼位単位ベクトルxは以下の通りである。
両眼視において到達眼位単位ベクトルaは以下の通りである。なお、到達眼位とは、両眼が輻輳している状態の眼位(輻輳時の眼位)を指し、近方視に限定されない。
l、m、n : まっすぐ前方遠くを見るときの眼位を第1眼位としたときの
第1眼位単位ベクトルをiとしたときの、輻輳時の眼位単位ベクトル
=l×i+m×j+n×k ・・・(式2)
における各係数であり、iはX方向でのベクトル、
はY方向でのベクトル、kはZ方向でのベクトルである。
なお、まっすぐ前方遠くを見るときの第一眼位の場合、l=1,m=0,n=0、つまり、a=iである。
トーション差角δを得るためには、両眼視における第1眼位単位ベクトルxから到達眼位単位ベクトルaまで回転角θにて回転した状態の眼球の上下軸と、単眼視における第1眼位単位ベクトルから到達眼位単位ベクトルまで回転角θにて回転した状態の眼球の上下軸を求める必要がある。従来の手法にて、片眼視における回転角θとその回転軸は得ることができる。そのため、本発明の一態様においては新たに両眼視における回転角θとその回転軸Bを求める必要がある。
第1眼位から到達眼位へ回転する軸は、第1眼位単位ベクトルxおよび到達眼位単位ベクトルaと等角の位置にある。つまり、x+aとx×aが成す平面内に、回転軸Bは存在する。この回転軸BのベクトルBは以下のように示される。
回転軸BのベクトルBは、Y−Z平面上からα/4だけ傾いたVelocity plane上にある。そのため、以下の式が成り立つ。
t : 右眼の場合はtanφ、左眼の場合は−tanφ
φ : 図1のX−Z平面における、Listing‘s planeをY軸周りに回転させてVelocity planeになる際の回転角。α/5〜α/3の範囲の一つの値(本発明の一態様だとα/4)
α : 輻輳角
(式5)を変形させると以下の式となる。
(式4)および(式6)から以下の式が成り立つ。
その結果、回転軸Bの単位ベクトルbは以下の式にて表される。
次に、両眼視における回転角θを求める。
図2は、回転軸Bの単位ベクトルbを法線とする平面にaとxとを投影させた場合の説明図である。
回転角θを求めるために、図2に示すように、bを法線とする平面にaとxとを投影させた場合、以下の式が成り立つ。
とxの長さ(絶対値、スカラー)は以下の式にて得られる。
但し、Mは以下の式で表される。
(式9)〜(式13)から、以下の式が導き出される。
(式14)により、両眼視における回転軸Bの回転角θが得られる。
次に、両眼視における回転角θの場合の眼球座標軸を求める。
図3は、一般式としての例示であって、nを軸にしてrがθだけ回転した後のr’を求める様子を示す説明図である。
図3に示すr’を求めるための一般式は以下の導出により(式15)という形で得られる。
(式15)を用いる場合、回転軸Bをθだけ回転することによりx軸はx に変化する。その式が以下の式である。
(式15)を用いる場合、回転軸Bをθだけ回転することによりy軸はy に変化する。その式が以下の式である。
(式15)を用いる場合、回転軸Bをθだけ回転することによりz軸はz に変化する。その式が以下の式である。
以上の[数16]〜[数18]をまとめたものが以下の式である。以下の式は、両眼視リスティング法則に基づき回転角θにて回転した後の眼球座標軸を表す。この眼球座標軸のうちy が、両眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球にとっての上下軸(下から上に向かう方向)を表す。なお、z が、両眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球にとっての左右軸(耳から鼻に向かう方向)を表す。
なお、単眼視リスティング法則に基づく眼球座標軸は、図1におけるφがゼロすなわちαがゼロの場合である。つまり(式5)にてt=0となる。その結果、単眼視リスティング法則に基づく眼球座標軸は以下の式にて表される。この眼球座標軸のうちy10 が、片眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球にとっての上下軸(下から上に向かう方向)を表す。なお、z10 が、両眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球にとっての左右軸(耳から鼻に向かう方向)を表す。
以上の結果、以下の導出過程により、(式1)が得られる。その結果、トーション差角δを算出できる。なお、上下軸の代わりに左右軸を用いた場合でも同じ(式1)が得られる。
(設計工程)
本工程においては、トーション差角取得工程にて得られたトーション差角δを基に眼鏡レンズを設計する。
従来の手法だと、眼鏡レンズの残存非点収差は、単眼リスティング法則で決められた到達眼位の座標系で評価されていた。たとえ残存非点収差が完全に補正されたようにみえても、両眼視リスティング法則で決められた到達眼位の座標系で評価すると、トーション差角δによる残存非点収差が存在する。
残存非点収差の定義は以下の通りである。
本来、眼鏡レンズの装用者が任意の第三眼位(輻輳後眼位)へ眼を回旋させた、光軸である主光線と眼鏡レンズの交点の近辺では、眼の屈折異常の度数及び乱視成分を完全に矯正するように設計されることが理想である。しかしながら、実際には眼の屈折異常の度数及び乱視成分を部分的にしか矯正できない場合がある。矯正しきれなかった屈折異常成分を残存収差と呼ぶ。そしてこの残存収差は、残存非点収差と平均度数誤差の二つの収差量で表される。本発明の一態様においては、残存非点収差について取り扱う。
本発明の一態様においては、眼鏡レンズ上の各点の残存非点収差の計算過程で、単眼視リスティング法則の代わりに両眼視リスティング法則を使用する。そして、単眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸(上下軸、左右軸)と、両眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸(上下軸、左右軸)との間のトーション差角δを用いて設計工程を行う。
本発明の一態様においては、処方値の一つである乱視軸Axにトーション差角δを反映させて眼鏡レンズを設計するのが好ましい。トーション差角δと同様、乱視軸Axも眼軸(X軸)周りでの角度である。そのため、乱視軸Axはトーション差角δの影響を受けやすい。その結果、トーション差角δを反映させた場合の、残存非点収差の改善効果が大きい。
反映手法の一例を挙げると、片眼用の累進屈折力レンズである眼鏡レンズにおいては、処方値の一つである乱視軸Axの値に対して片眼のトーション差角δを減じた値を新たな乱視軸Ax1’として使用し、もう一方の片眼用の累進屈折力レンズである眼鏡レンズにおいては、処方値の一つである乱視軸Axの値に対してもう一方の片眼のトーション差角δを減じた値を新たな乱視軸Ax2’として使用するのが好ましい。
具体的な作業内容としては、乱視軸Axの値と乱視軸Axの値とが等しい場合を仮定して以下説明する。
例えば、左右の眼鏡レンズにおいて乱視軸Axがともに90°であり、下方30度、正中面(左右眼回旋中心の中点を通過し、左右眼回旋中心のを通過する直線に垂直な平面)上近方30cm(300mm)の点を見るケースを計算してみる。
PDは左右眼ともに32mmとする。
この場合、各パラメータは以下の通りとなる。
輻輳角α=2×arcsin(32/300)=12.25度
φ=α/4=3.06度
右眼:t=tanφ=0.053486、方向余弦はl=0.861085、m=0.497147、n=0.106667。
左眼:t=−tanφ=−0.053486、方向余弦はl=0.861085、m=0.497147、n=−0.106667。
これらのパラメータを(式1)に代入して計算すると、
右眼のトーション差角δ=−1.632°
左眼のトーション差角δ=+1.632°
という値が得られる。
この場合、
右眼用の眼鏡レンズの乱視軸Axを90−δ=91.632°
とし、
左眼用の眼鏡レンズの乱視軸Axを90−δ=88.368°
として眼鏡レンズの設計を行うことにより、残存非点収差を解消することができる。
なお、段落0032でも述べたが、上記の例は、対象物が正中面と仮定しているため、左右眼のトーション差角は絶対値が同じで符号が逆である一方、斜め方向にある対象物だと、δとδは必ずしもその関係にはならない。
以上の結果、トーション差角δによる残存非点収差を低減する(好適には無くす(キャンセルする))ことが可能となる。
また、処方値の一つである乱視度数Cの絶対値がゼロを超え、更には1.0D以上(好ましくは2.0D以上、更に好ましくは3.0D以上)であると残存非点収差の改善効果が大きい。
また、到達眼位が近方視に限定されないと述べたが、眼の輻輳角が大きくなる、近方視での輻輳時だと改善効果が大きい。
(残存非点収差の確認も含めた一連の作業)
以下、トーション差角δの数学的な求め方を適用したうえでの、トーション差角取得工程および設計工程における一連の作業例を記載する。本発明の一態様での該作業例では光線追跡法を使用する。
まず、トーション差角δを適用する前の眼鏡レンズの仮想光学モデルを構築する。眼鏡レンズ配置や眼球配置等を含む仮想光学モデルにおける基準レンズモデルの構築においては、眼鏡レンズの処方値(球面度数S、乱視度数C、乱視軸Ax、加入度数ADD、プリズム値Δ等)を使用する。仮想光学モデルの構築は、特許第5969631号明細書に記載の手法を採用すればよいため、ここでは詳細は省略する。
次に、特許第5969631号明細書に記載のように、眼鏡レンズ設計用コンピュータ(不図示)により、異なる物体距離上に配置される複数の物体面を含む基準物体面を、基準レンズモデルに基づき、生理的に左右眼の調節力が等しくなることに対応して左右共通に定義する。眼鏡レンズの設計上使用される物体面には、近用度数測定基準点における近用度数に対応する物体距離、遠用度数測定基準点における遠用度数(基準度数)に対応する物体距離(5000mmなど無限遠とみなせる距離)の夫々に配置される物体面が含まれる。
次に、特許第5969631号明細書に記載のように、眼鏡レンズ設計用コンピュータは、光線追跡等を用いた光学計算処理を行うことにより、物体面上の任意の点からの主光線が通過する、左右の各基準レンズモデル上(ここではレンズ外面上)の位置(基準側主光線通過位置)を計算する。ここで主光線は、基準物体面上の任意の点から眼球回旋中心に向かう光線として定義される。そして、眼鏡レンズ設計用コンピュータは、基準レンズモデルの外面全域に基準側主光線通過位置が配置されるように、各物体面の任意の各点に対応する基準側主光線通過位置を計算する。
この作業により、装用者が眼鏡レンズを介して物体面上の点を見るときの、眼鏡レンズ上での光線の通過点を確定させる。それと同時に、光線追跡測定によって輻輳角も得られる。そして光線追跡測定および数学的な手法によって、トーション差角δも得られる。
例えば、瞳孔間距離(PD)を64mm、視距離を40cm、眼球下方回旋角を30°に設定し、正中面上の物体を見ると仮定した場合、右眼のsinδ=−0.0217となり、すなわち右眼のδ=−1.243°となる。左眼の場合はδ=1.243°となる。
以上の情報を基に、眼鏡レンズ上での各点の残存非点収差を計算する。その結果、本発明の一態様ならば、実際に眼鏡を使用する際の輻輳時の状況が累進屈折力レンズである左右眼用各々の眼鏡レンズに反映された結果、残存非点収差を解消できる。
なお、本発明の一態様である眼鏡レンズの設計方法を使用して眼鏡レンズを製造する方法についても、本発明の技術的思想が反映されている。その態様は以下の通りである。
「累進屈折力レンズである眼鏡レンズの装用者の眼の輻輳時における、単眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸と、両眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸との間のトーション差角δを用いて眼鏡レンズを設計し、設計に基づき眼鏡レンズを加工する、眼鏡レンズの製造方法。」
以上に本発明の一態様を説明したが、上述した開示内容は、本発明の例示的な一態様を示すものである。すなわち、本発明の技術的範囲は、上述の例示的な一態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
以下、本発明の一実施例を説明する。本発明は以下の実施例には限定されない。
瞳孔間距離(PD)を70mm、目標物までの視距離を33cm、眼球下方回旋角を20°に設定する。そしてトーション差角δ=2°と仮定した。この状態で、乱視度数Cが1.00D、2.00D、3.00Dをそれぞれ想定した。
単眼リスティング則で計算された残存非点収差は、C=1.00Dの場合だと0.035D、C=2.00Dの場合だと0.07D、C=3.00Dの場合だと0.105Dであった。なお、残存非点収差の算出方法は、本発明の一態様に記載の手法を採用した。その際、特定の設計の累進屈折力レンズのレンズモデルを使用するのではなく、あくまでPD、視距離、眼球下方回旋角およびCを基に算出した。
そして、本発明の一態様に記載の手法にて、各眼用の累進屈折力レンズの乱視軸Axの値を新たな値にした場合、C=1.00Dの場合も、C=2.00Dの場合も、C=3.00Dの場合も、残存非点収差がゼロ(0.000D)となった。つまり本発明の一実施例により、実際に眼鏡を使用する際の輻輳時の状況が累進屈折力レンズである左右眼用各々の眼鏡レンズに反映された結果、残存非点収差がゼロになることがわかった。
<総括>
以下、本開示の「眼鏡レンズの設計方法および製造方法」について総括する。
本開示の一実施例は以下の通りである。
累進屈折力レンズである眼鏡レンズの装用者の眼の輻輳時における、単眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸と、両眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸との間のトーション差角δを用いて眼鏡レンズを設計する、眼鏡レンズの設計方法。

Claims (5)

  1. 累進屈折力レンズである眼鏡レンズの装用者の眼の輻輳時における、単眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸と、両眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸との間のトーション差角δを用いて眼鏡レンズを設計する、眼鏡レンズの設計方法。
  2. 累進屈折力レンズである片眼用の累進屈折力レンズである眼鏡レンズにおいては、処方値の一つである乱視軸Axの値に対して前記片眼のトーション差角δを減じた値を新たな乱視軸Ax1’として使用し、もう一方の片眼用の累進屈折力レンズである眼鏡レンズにおいては、処方値の一つである乱視軸Axの値に対して前記もう一方の片眼のトーション差角δを減じた値を新たな乱視軸Ax2’として使用し、一対の眼鏡レンズを設計する設計工程を有する、請求項2に記載の眼鏡レンズの設計方法。
  3. 前記トーション差角δを以下の(式1)を用いて得るトーション差角取得工程と、
    前記設計工程と、
    を有する、請求項2に記載の眼鏡レンズの設計方法。
    但し、X方向を光軸方向であって角膜から網膜に向かう方向とし、Y方向を天地の天の方向とし、Z方向をそれらに垂直な方向であって右眼において耳から鼻に向かう方向としたとき、
    l、m、n : 眼球の向く方向の単位ベクトル
    =l×i+m×j+n×k ・・・(式2)
    における各係数であり、iはX方向でのベクトル、
    はY方向でのベクトル、kはZ方向でのベクトルであり、
    t : 右眼の場合はtanφ、左眼の場合は−tanφ
    φ : α/5〜α/3の範囲の一つの値
    α : 輻輳角
    である。
  4. 前記眼球軸は、角膜頂点と中心窩とを通過する眼軸に対して垂直な軸であって眼球にとって上下方向の上下軸、または、前記眼軸および前記上下軸に対して垂直な軸であって眼球にとって左右方向の左右軸である、請求項1〜3のいずれかに記載の眼鏡レンズの設計方法。
  5. 累進屈折力レンズである眼鏡レンズの装用者の眼の輻輳時における、単眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸と、両眼視リスティング法則に基づく眼球回旋後の眼球軸との間のトーション差角δを用いて眼鏡レンズを設計し、前記設計に基づき眼鏡レンズを加工する、眼鏡レンズの製造方法。


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