JP2020105396A - ポリ乳酸誘導体、その製造方法、ポリ乳酸誘導体の凝集物の形成方法、及び口腔用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】様々な用途に利用することができる新規ポリ乳酸誘導体、その製造方法、及びそれを用いたポリ乳酸誘導体の凝集物の形成方法を提供する。酸性環境下で局所堆積物を形成することができる口腔用組成物を提供する。【解決手段】本発明のポリ乳酸誘導体は、下記の一般式(1)で表されるポリ乳酸誘導体である。一般式(1)において、R1〜R5のうち一つがオキシアルキレン基を含み、特定のアセタール構造を含む置換基を示し、残り4個のうち一つがアルコキシ基を示し、残り3個がそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステル基、又は水酸基を示す。nは、2〜20,000の整数を示す。【選択図】なし
Description
本発明は、新規なポリ乳酸誘導体、その製造方法、ポリ乳酸誘導体の凝集物の形成方法、及び新規なポリ乳酸誘導体を含有する口腔用組成物に関する。
ポリ乳酸は、植物由来の原料から得られる乳酸あるいはその誘導体がエステル結合により重合した高分子化合物であり、物理的及び化学的性質が優れている上に、生体親和性、生分解性を有することから、安全性に優れ、生体や環境への負荷が小さい高分子材料として注目されている。特に、ポリ乳酸は、生体内で分解吸収されることからドラッグデリバリーシステム(DDS)の担体や医療用接着剤等の医用材料への利用が期待されている。ポリ乳酸は、反応性に富む官能基を有していないため、従来より反応性置換基をポリ乳酸に導入し、機能性を向上させるための研究が行われている。例えば、特許文献1は、ポリ乳酸の片末端にアルデヒド基を有する反応性置換基として植物由来の原料から得られるバニリンやHMFを用いたポリ乳酸誘導体について開示する。
本発明の目的は、様々な用途に利用することができる新規ポリ乳酸誘導体、その製造方法、及びそれを用いたポリ乳酸誘導体の凝集物の形成方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、酸性環境下で局所堆積物を形成することができる口腔用組成物を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、酸性環境下で局所堆積物を形成することができる口腔用組成物を提供することにある。
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、従来知られていない新規なポリ乳酸誘導体を得たことに基づくものである。また、新規なポリ乳酸誘導体が酸性環境下で短時間に局所堆積物を形成することを見出したことに基づくものである。
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、下記の一般式(1)で表されるポリ乳酸誘導体を要旨とする。
R1〜R5のうち一つが下記一般式(2)又は一般式(3)で表される置換基を示し、残り4個のうち一つがアルコキシ基を示し、残り3個がそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステル基、又は水酸基を示す。
nは、2〜20,000の整数を示す。
R6〜R9のうちの一つが、オキシアルキレン基を含む基を示し、
残りの3個が、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、又はエステル基を示す。
R10〜R15のうちの一つが、オキシアルキレン基を含む基を示し、
残りの5個が、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、又はエステル基を示す。
前記ポリ乳酸誘導体において、前記オキシアルキレン基を含む基は、下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される置換基を示すことが好ましい。
Xは、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、
Yは、水素原子、ハロゲン原子、アルデヒド基、アルキル基、又はエステルを示し、
mは、1〜10の整数を示す。
前記ポリ乳酸誘導体において、前記一般式(1)は、R1がアルコキシ基であり、R4が一般式(2)又は一般式(3)で表される置換基であることが好ましい。
前記ポリ乳酸誘導体は、細胞増殖用担体前駆体、薬剤送達用担体、又は患部被覆材として用いられてもよい。
前記ポリ乳酸誘導体は、細胞増殖用担体前駆体、薬剤送達用担体、又は患部被覆材として用いられてもよい。
本発明の別の態様は、前記ポリ乳酸誘導体の製造方法であって、
下記一般式(6)の一つのアルデヒド基に下記一般式(7)に示されるジオール化合物を縮合させ、前記一般式(2)の置換基を形成し、下記一般式(9)で表される化合物を形成する工程、又は、
下記一般式(6)の一つのアルデヒド基に下記一般式(8)に示されるジオール化合物を縮合させ、前記一般式(3)の置換基を形成し、下記一般式(9)で表される化合物を形成する工程、
次に、下記一般式(9)で表される化合物を重合開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合する工程を含むポリ乳酸誘導体の製造方法。
下記一般式(6)の一つのアルデヒド基に下記一般式(7)に示されるジオール化合物を縮合させ、前記一般式(2)の置換基を形成し、下記一般式(9)で表される化合物を形成する工程、又は、
下記一般式(6)の一つのアルデヒド基に下記一般式(8)に示されるジオール化合物を縮合させ、前記一般式(3)の置換基を形成し、下記一般式(9)で表される化合物を形成する工程、
次に、下記一般式(9)で表される化合物を重合開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合する工程を含むポリ乳酸誘導体の製造方法。
R16〜R20のうち一つがアルデヒド基を示し、残り4個のうち一つがアルコキシ基を示し、残り3個がそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステル基、又は水酸基を示す。
下記一般式(6)で表される化合物を重合開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合し、下記一般式(10)で表される化合物を形成する工程、
次に、下記一般式(10)の一つのアルデヒド基に下記一般式(7)に示されるジオール化合物を縮合させ、前記一般式(2)の置換基を形成する工程、又は、
下記一般式(10)の一つのアルデヒド基に下記一般式(8)に示されるジオール化合物を縮合させ、前記一般式(3)の置換基を形成する工程を含むポリ乳酸誘導体の製造方法。
R16〜R20のうち一つがアルデヒド基を示し、残り4個のうち一つがアルコキシ基を示し、残り3個がそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステル基、又は水酸基を示す。
本発明の別の態様は、前記ポリ乳酸誘導体を含む粒子を懸濁させた中性〜アルカリ性の水を、酸性に変化させることにより不溶性のポリ乳酸誘導体の凝集物を析出させるポリ乳酸誘導体の凝集物の形成方法を要旨とする。
本発明の別の態様は、前記ポリ乳酸誘導体を含有する口腔用組成物を要旨とする。
本発明によれば、様々な用途に利用することができる新規ポリ乳酸誘導体が提供される。また、本発明の口腔用組成物は、酸性条件下で局所堆積物を形成できる。
(第1実施形態)
以下、本発明のポリ乳酸誘導体を具体化した第1実施形態について説明する。本実施形態のポリ乳酸誘導体は、下記に示される一般式(1)で表される。
以下、本発明のポリ乳酸誘導体を具体化した第1実施形態について説明する。本実施形態のポリ乳酸誘導体は、下記に示される一般式(1)で表される。
置換基を構成するハロゲン原子の具体例として、例えばフッ素、塩素、ヨウ素、臭素等が挙げられる。置換基を構成するアルコキシ基の具体例として、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。一般式(1)は、R1がアルコキシ基であり、R4が一般式(2)又は一般式(3)で表される置換基であることが好ましい。
nは、乳酸の重合度を表し、具体的には2〜20,000の整数を示す。乳酸はR体であってもS体であってもいずれでもよい。また、R体とS体とを混合したポリ乳酸であってもよい。nの好ましい下限は、目的に応じて適宜設定されるが、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。n数を大きくする場合、ポリ乳酸誘導体の分子量が大きくなるとともに、疎水性が高くなる。それにより特定条件下における沈殿や凝集効果を高めることができる。nの好ましい上限は、目的に応じて適宜設定されるが、10,000以下が好ましく、1,000以下がより好ましい。n数を小さくする場合、ポリ乳酸誘導体の分子量が小さくなるとともに、疎水性が低くなる。それによりポリ乳酸誘導体を水に懸濁させやすくなる。
一般式(2)で表される置換基は、下記に示される構造を有する。
一般式(3)で表される置換基は、下記に示される構造を有する。
一般式(2)又は一般式(3)において、オキシアルキレン基を含む基は、下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される置換基であることが好ましい。
mは、オキシアルキレン基を構成するアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、具体的には1〜10の整数を示すことが好ましい。mの好ましい下限は、目的に応じて適宜設定されるが、2以上がより好ましい。m数を大きくする場合、親水性が高くなる。それによりポリ乳酸誘導体を水に懸濁させやすくなる。mの好ましい上限は、目的に応じて適宜設定されるが、8以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。m数を小さくする場合、ポリ乳酸誘導体の分子量が小さくなるとともに、親水性が低くなる。それにより特定条件下における沈殿や凝集効果を早めることができる。
次に、本実施形態のポリ乳酸誘導体の製造方法について説明する。
本実施形態のポリ乳酸誘導体の製造方法は、公知の方法を適用して合成することができるが、例えば以下の2つの方法を採用することにより合成することができる。
本実施形態のポリ乳酸誘導体の製造方法は、公知の方法を適用して合成することができるが、例えば以下の2つの方法を採用することにより合成することができる。
まず、下記一般式(6)の一つのアルデヒド基に下記一般式(7)に示されるジオール化合物を縮合させ、アセタール結合により前記一般式(2)の置換基を形成し、下記一般式(9)で表される化合物を形成する工程が行われる。又は、下記一般式(6)の一つのアルデヒド基に下記一般式(8)に示されるジオール化合物を縮合させ、アセタール結合により前記一般式(3)の置換基を形成し、下記一般式(9)で表される化合物を形成する工程が行われる。
上記アセタールを形成する縮合反応は可逆反応である。反応pHは、適宜設定されるが、反応を進行させる観点から中性以上のpHが適用されることが好ましく、具体的にはpH6.5を超えるpHが好ましく、pH7以上がより好ましく、pH7.5以上がさらに好ましい。また、反応温度は、特に限定されないが、好ましくは20〜90℃、より好ましくは50〜80℃、さらに好ましくは70〜80℃である。反応時間は、反応温度等により適宜設定されるが、好ましくは5分〜24時間である。また、アセタールを形成する縮合反応は、酸性条件下で縮合させ、後工程でアルカリ条件下で精製を行ってもよい。精製は、カラムクロマトグラフィーを用い、中性以上のpHを有する移動相を使用することにより行うことができる。
一般式(6)に示される化合物は、特定条件下における沈殿や凝集効果を高める観点、生体適応性、入手容易性等の観点からR19がアルデヒド基、R16がメトキシ基、その他が水素原子であるバニリンが好ましく選択される。
次に、上記一般式(9)で表される化合物を重合開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合する工程が行われることにより本実施形態のポリ乳酸誘導体が製造される。ラクチドを構成する単量体である乳酸はL−乳酸であってもD−乳酸であってもいずれでもよい。両方を含むポリ乳酸により合成されてもよい。また、反応温度は、特に限定されないが、好ましくは100〜140℃、より好ましくは110〜130℃である。反応時間は、反応温度等により適宜設定されるが、好ましくは30分〜5時間である。反応を進行させるために、触媒、例えば2−エチルヘキサン酸すず(II)(Tin(II) 2-ethylhexanoate、又はTin(II) octoate(以下、「Sn(Oct)2」と略す))等を使用することが好ましい。
また、下記に示されるように、モノマーであるラクチドを開環重合する反応を先に行ってもよい。
まず、上記一般式(6)で表される化合物を重合開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合し、下記一般式(10)で表される化合物を形成する工程が行われる。反応条件は、上述したモノマーであるラクチドを開環重合させる反応を参酌することができる。
まず、上記一般式(6)で表される化合物を重合開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合し、下記一般式(10)で表される化合物を形成する工程が行われる。反応条件は、上述したモノマーであるラクチドを開環重合させる反応を参酌することができる。
次に、前記一般式(10)の一つのアルデヒド基に前記一般式(7)に示されるジオール化合物を縮合させ、アセタール結合により前記一般式(2)の置換基を形成する工程が行われることにより本実施形態のポリ乳酸誘導体が製造される。又は、前記一般式(10)の一つのアルデヒド基に前記一般式(8)に示されるジオール化合物を縮合させ、アセタール結合により前記一般式(3)の置換基を形成する工程が行われることにより本実施形態のポリ乳酸誘導体が製造される。アセタール結合の反応条件は、上述した反応条件を参酌することができる。
ラクチドと重合開始剤とのモル比は、一般式(1)におけるn数の要件を満たすように調整できれば、特に限定されない。例えば、最終的に得られるポリ乳酸誘導体を中性以上の条件で懸濁させ、酸性条件下で不溶性のポリ乳酸誘導体の凝集物を得る場合、その沈殿効率を向上させる観点から20:1〜2:1であることが好ましく、10:1〜2:1であることがより好ましい。
次に、本実施形態のポリ乳酸誘導体の作用について説明する。
本実施形態のポリ乳酸誘導体は、上述したようにアルコキシ基及びアルデヒド基を有するベンゼン環(例えばバニリン)にエステル結合によりポリ乳酸、及びアセタール結合により一般式(2)又は一般式(3)で表される置換基が結合している。一般式(2)又は一般式(3)で表される置換基は、親水性基としてオキシアルキレン基を含んでいる。そのため、ポリ乳酸誘導体は、疎水性のポリ乳酸部分と、親水性のオキシアルキレン基の両方を含んでいる。
本実施形態のポリ乳酸誘導体は、上述したようにアルコキシ基及びアルデヒド基を有するベンゼン環(例えばバニリン)にエステル結合によりポリ乳酸、及びアセタール結合により一般式(2)又は一般式(3)で表される置換基が結合している。一般式(2)又は一般式(3)で表される置換基は、親水性基としてオキシアルキレン基を含んでいる。そのため、ポリ乳酸誘導体は、疎水性のポリ乳酸部分と、親水性のオキシアルキレン基の両方を含んでいる。
アセタール結合は、酸性条件下において加水分解し、アルデヒド基を有する一般式(10)で表される化合物と、一般式(7)又は一般式(8)で表される化合物に分解する。つまり、中性以上の環境下から酸性環境下に変化した場合、ポリ乳酸誘導体から親水性基が遊離するため、疎水性ポリ乳酸誘導体が凝集し、粒径が大きくなった凝集体が析出沈殿する。
本実施形態のポリ乳酸誘導体は、かかる作用を利用した各種分野の用途に適用することができる。例えば薬剤送達用担体、細胞増殖用担体前駆体、患部被覆材等として使用することができる。
例えば薬剤送達用担体は、ポリ乳酸誘導体に薬剤を担持させ、所定の雰囲気下において薬剤を沈着させることにより薬剤を送達することができる。例えば歯周疾患、歯肉炎、う蝕、口内炎、口臭等の口腔内疾患において、病巣部は、酸性に変化している。ポリ乳酸誘導体に薬剤を担持させ、酸性の病巣部でポリ乳酸誘導体の凝集体を沈着させることにより局所的に薬剤を送達することができる。ポリ乳酸誘導体への薬剤の担持は、公知の方法を適宜採用することができ、例えば共有結合、イオン結合、静電結合等の化学的な結合、抱合、吸着、細孔中への充填等を適用することができる。
また、ポリ乳酸誘導体が酸性条件下において凝集した凝集物は、優れた細胞増殖性を示す足場を形成する。したがって、ポリ乳酸誘導体は、優れた細胞増殖性を示す細胞増殖用の担体を形成するための細胞増殖用担体前駆体として使用することができる。例えば、酸性の病巣部において細胞を再生させるために、細胞増殖担体を病巣部に形成することができる。また、例えば骨、歯等の硬組織上の細胞を再生するために細胞増殖用担体前駆体を適用し、細胞増殖用担体をその表面に形成し、細胞が増殖しやすい足場を設けるために使用することができる。また、組織を再生することが容易でない硬組織自体の再生のために使用してもよい。細胞の種類は、特に限定されないが、例えば歯肉、歯槽部粘膜、歯根膜、歯頚部粘膜上皮等の歯周組織を構成する細胞等が挙げられる。細胞増殖用担体を形成した後、適用される細胞の形態は、特に限定されず、例えば浮遊状態の懸濁細胞を適用してもよく、組織培養された細胞を移植してもよい。
ポリ乳酸誘導体が酸性条件下において凝集した凝集物は、局所に凝集するため、患部を保護する患部被覆材として適用することができる。また、乳酸誘導体の凝集物は、洗浄等により容易に沈着部から脱落しないため、好ましくは口腔内の患部に適用される。例えば歯肉炎、口内炎等の粘膜炎症部の被覆、知覚過敏部位の被覆等に適用することができる。
本実施形態のポリ乳酸誘導体によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、例えば薬剤送達用担体、細胞増殖用担体前駆体、患部被覆材等の様々な分野の様々な用途に利用できるポリ乳酸誘導体を提供することができる。
(1)本実施形態では、例えば薬剤送達用担体、細胞増殖用担体前駆体、患部被覆材等の様々な分野の様々な用途に利用できるポリ乳酸誘導体を提供することができる。
(2)本実施形態のポリ乳酸誘導体は、弱酸性の水溶液中においても凝集堆積性を示す。したがって、例えば水溶液を基剤とする医薬品、医薬部外品として、より安全に各種用途に適用することができる。また、より生体に負担の少ない環境下において凝集堆積性の効能を発揮することができる。
(3)本実施形態のポリ乳酸誘導体が薬剤送達用担体として適用するに際し、ポリ乳酸誘導体の構成化合物としてバニリンが適用された場合、バニリン自体も抗炎症作用を有するため、酸性の病巣部において局所的に抗炎症成分を送達させることができる。また、ポリ乳酸も生体適合性に優れるため、より安全性の高いポリ乳酸誘導体を適用することができる。
(第2実施形態)
本実施形態のポリ乳酸誘導体の凝集物の形成方法を具体化した第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態について、下記の記載以外は、第1実施形態のポリ乳酸誘導体と同様の構成が適用される。
本実施形態のポリ乳酸誘導体の凝集物の形成方法を具体化した第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態について、下記の記載以外は、第1実施形態のポリ乳酸誘導体と同様の構成が適用される。
本実施形態のポリ乳酸誘導体の凝集物の形成方法は、第1実施形態のポリ乳酸誘導体を含む粒子を懸濁させた中性〜アルカリ性の水を、酸性に変化させることにより不溶性のポリ乳酸誘導体の凝集物を析出させる方法である。
第1実施形態のポリ乳酸誘導体は、上述したようにポリ乳酸誘導体は、疎水性のポリ乳酸部分と、親水性のオキシアルキレン基の両方を構造体中に含んでいる。pHが中性以上の環境下においては、水中で微粒子を形成し懸濁されている。微粒子の大きさは、ポリ乳酸の重合度によって変化するが、例えばレーザー回折・散乱式粒度分布測定法において1nm〜1000nm程度である。中性〜アルカリ性の水とは、好ましくはpH6.5を超え、より好ましくはpH7.0以上である。pH6.5を超える場合、親水性基を有する一般式(2)又は一般式(3)で表される置換基のアセタール結合がより安定に維持され、より安定に微粒子を水中に懸濁させることができる。
ポリ乳酸の凝集物を生じさせる酸性条件は、好ましくはpH6.5以下の弱酸性、より好ましくはpH6.0以下、さらに好ましくはpH5.5以下である。pHが低いほど、アセタール結合の切断を促進させ、微粒子の凝集を促進させる。
本実施形態のポリ乳酸誘導体の凝集物の形成方法によれば、第1実施形態の効果に加えて以下のような効果を得ることができる。
(4)本実施形態では、例えば細胞の増殖のための足場の形成方法、薬剤の送達方法、患部被覆方法として適用することができる。また、ポリ乳酸誘導体が懸濁した水溶液の透過率の変化、沈殿物の量等を観察することにより、pH変化の検知方法等として適用することができる。
(4)本実施形態では、例えば細胞の増殖のための足場の形成方法、薬剤の送達方法、患部被覆方法として適用することができる。また、ポリ乳酸誘導体が懸濁した水溶液の透過率の変化、沈殿物の量等を観察することにより、pH変化の検知方法等として適用することができる。
(第3実施形態)
本実施形態の口腔用組成物を具体化した第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態について、下記の記載以外は、第1,2実施形態と同様の構成が適用される。
本実施形態の口腔用組成物を具体化した第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態について、下記の記載以外は、第1,2実施形態と同様の構成が適用される。
本実施形態の口腔用組成物は、第1実施形態のポリ乳酸誘導体を含有する。口腔用組成物の適用目的は、特に限定されず、例えば有効成分が上述したポリ乳酸誘導体である観点から、かかる有効成分の効能を発揮するための組成物が挙げられる。第1実施形態のポリ乳酸誘導体は、上述したように酸性条件下で凝集し、沈着する性質、つまり局所堆積性を有する。例えば歯周疾患、歯肉炎、う蝕、口内炎、口臭等の口腔内疾患において、酸性の病巣部にポリ乳酸誘導体に担持させた薬剤を送達するための薬剤送達用の口腔用組成物が挙げられる。また、酸性の病巣部において細胞を再生させるために、細胞増殖担体を病巣部に形成するための細胞増殖担体形成用の口腔用組成物が挙げられる。また、ポリ乳酸誘導体が酸性条件下において凝集した凝集物は、局所に凝集するため、患部を保護する患部被覆用の口腔用組成物として適用することができる。例えば歯肉炎、口内炎等の炎症部被覆用の口腔用組成物、知覚過敏緩和用の口腔用組成物として適用することができる。
口腔用組成物の適用形態は、特に限定されず、例えば医薬品、医薬部外品、化粧品として使用することができる。口腔用組成物の用途としては、公知の口腔用組成物に併用してもよい。例えば練歯磨剤、洗口剤、含漱剤、液体歯磨剤、バイオフィルム分散剤、口臭予防剤、歯茎マッサージ剤、口腔用湿潤付与剤、舌苔除去剤、口腔内塗布剤、口腔殺菌剤、咽喉殺菌剤、口腔咽喉剤、歯周病治療剤、義歯装着剤、義歯コーティング剤、義歯安定化剤、義歯保存剤、義歯洗浄剤、インプラントケア剤等が挙げられる。
本実施形態の口腔用組成物の剤型は特に限定されるものではないが、例えば水、アルコール等の基剤を含有することにより、液剤、懸濁・乳化剤、軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、スプレー剤、ジェル剤、ガム剤、粉末剤、飴剤等に適用することができる。口腔用組成物は、適用目的、形態、用途等に応じて、前述した成分以外の成分、例えば抗菌剤、抗炎症剤、香料、湿潤剤、界面活性剤、研磨剤、アルコール類、増粘剤、甘味成分、薬用成分、安定剤、pH調整剤等を配合してもよい。これら各成分は、口腔用組成物に配合される公知のものを使用することができる。これらの成分は、それぞれ1種のみを適用してもよく、2種以上を組み合わせて適用してもよい。
本実施形態の口腔用組成物によれば、第1,2実施形態の効果に加えて以下のような効果を得ることができる。
(5)本実施形態の口腔用組成物では、有効成分として第1実施形態のポリ乳酸誘導体を含有する。第1実施形態のポリ乳酸誘導体は、酸性条件下で凝集し、沈着する性質、つまり局所堆積性を有する。したがって、酸性の病巣部にポリ乳酸誘導体に担持させた薬剤を送達するための薬剤送達用の口腔用組成物、細胞を再生させるため、細胞増殖担体を形成するための細胞増殖担体形成用の口腔用組成物等として適用することができる。また、患部被覆用の口腔用組成物、例えば歯肉炎、口内炎等の炎症部被覆用の口腔用組成物、知覚過敏緩和用の口腔用組成物として適用することができる。
(5)本実施形態の口腔用組成物では、有効成分として第1実施形態のポリ乳酸誘導体を含有する。第1実施形態のポリ乳酸誘導体は、酸性条件下で凝集し、沈着する性質、つまり局所堆積性を有する。したがって、酸性の病巣部にポリ乳酸誘導体に担持させた薬剤を送達するための薬剤送達用の口腔用組成物、細胞を再生させるため、細胞増殖担体を形成するための細胞増殖担体形成用の口腔用組成物等として適用することができる。また、患部被覆用の口腔用組成物、例えば歯肉炎、口内炎等の炎症部被覆用の口腔用組成物、知覚過敏緩和用の口腔用組成物として適用することができる。
(6)ポリ乳酸誘導体のアセタール結合は、酸性条件下において極めて短時間に加水分解し、アルデヒド基を有する一般式(10)で表される化合物と、上記一般式(7)又は一般式(8)で表される化合物に分解する。例えば口腔用組成物を洗口剤、含漱剤等の用途において、たとえ数秒から数分の短い処方時間であっても、短時間でポリ乳酸誘導体の凝集物を生成させ、沈着させることができる。また、一度口内に沈着したポリ乳酸誘導体の凝集物は、容易に洗い流されることがない。
(7)ポリ乳酸は、安全性に優れ、また加水分解するため、生体適合性に優れる。また、ポリ乳酸の分解により、沈着させた凝集物から例えばバニリン、ポリ乳酸誘導体に担持させた薬剤等の有効成分を徐放させることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、ポリ乳酸誘導体が適用される分野、用途は特に限定されない。
・上記実施形態において、ポリ乳酸誘導体が適用される分野、用途は特に限定されない。
・上記実施形態において、ポリ乳酸誘導体の製造方法も上述した方法に限定されない。例えばポリ乳酸部分の重合方法も上述したラクチド開環重合法のみならず、直接脱水重縮合法によって合成してもよい。
・上記実施形態のポリ乳酸誘導体、ポリ乳酸誘導体の凝集物の形成方法、及び口腔用組成物は、ヒトに適用される医薬品、医薬部外品、化粧品のみならず、家畜等の飼養動物に対する医薬品等に適用してもよい。
以下に試験例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<試験例1:バニリン−アセタールの合成>
(a)アルデヒド基とジオール基とのアセタール結合
前記一般式(6)で表される化合物としてバニリンを使用した。前記一般式(7)で表される化合物として、オキシアルキレン基としてエチレンオキサイド(3モル付加)を含む2,5,8,11−テトラオキサテトラデカン−13,14−ジオール(2,5,8,11-tetraoxatetradecane-13,14-diol)(1,2−ヒドロキシ−4,7,10,13−テトラオキサテトラデカン)を使用した。
<試験例1:バニリン−アセタールの合成>
(a)アルデヒド基とジオール基とのアセタール結合
前記一般式(6)で表される化合物としてバニリンを使用した。前記一般式(7)で表される化合物として、オキシアルキレン基としてエチレンオキサイド(3モル付加)を含む2,5,8,11−テトラオキサテトラデカン−13,14−ジオール(2,5,8,11-tetraoxatetradecane-13,14-diol)(1,2−ヒドロキシ−4,7,10,13−テトラオキサテトラデカン)を使用した。
下記化24の反応式に示されるように、バニリンbのアルデヒド基に2,5,8,11−テトラオキサテトラデカン−13,14−ジオールのジオール基をアセタール結合させたバニリン−アセタール化合物a(4−(4−(2,5,8,11−テトラオキサドデシル)−1,3−ジオキソラン−2−イル)−2−メトキシフェノール:4-(4-(2,5,8,11-tetraoxadodecyl)-1,3-dioxolan-2-yl)-2-methoxyphenol)を合成した。
まず、300mLの二口ナスフラスコにモレキュラシーブス4A(MS4A)を加え、窒素置換後、バニリン5.0g(33mmol)とp−トルエンスルホン酸0.567g(3.3mmol)を量りとり、テトラヒドロフラン20mLに溶解させ、室温で10分間攪拌した。次に2,5,8,11−テトラオキサテトラデカン−13,14−ジオール19.57g(82mmol)をゆっくり滴下し、5時間加熱(70〜80℃)還流を行った。NH4Cl水溶液で反応を停止させ、セライト濾過によりMS4Aを取り除いた後、CH2Cl2で抽出し蒸留水で洗浄した。有機層を分離しNa2SO4により乾燥し、綿栓濾過によりNa2SO4を取り除いた後、エバポレーターで溶媒を留去し濃縮することで粗成生物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(移動相pH7〜8、溶媒:ヘキサン:アセトン:トリメチルアミン=3:6:1)によって精製を行い、バニリン−アセタール化合物a(4−(4−(2,5,8,11−テトラオキサドデシル)−1,3−ジオキソラン−2−イル)−2−メトキシフェノール)を得た(収率:60%)。構造の確認を核磁気共鳴分光法(1H NMR(400 MHz, r.t., in CDCl3))の結果を図1(a)に示す。 また、質量分析法(mass spectrometry)の結果を図1(b)に示す。
上記化24に示される反応は可逆的な反応であり、pHが酸性条件下に置かれると、上記バニリン−アセタール化合物aは、バニリンbと2,5,8,11−テトラオキサテトラデカン−13,14−ジオールに加水分解する。
参考までにバニリン−アセタール化合物aをpH7の中性環境下からpH5の酸性環境下に変化させた場合の経時変化(5分後、24時間後)を1H NMRスペクトル(in D2O)の結果として図2に示す。
図2に示されるように、バニリン−アセタール化合物aに相当するピークが、pH5の環境下において時間の経過とともに減少していくことが確認される。一方、分解産物であるバニリンbのピークが時間の経過とともに上昇していくことが確認される。
<試験例2:ポリ乳酸誘導体の合成>
下記化25に示される反応により、各実施例のポリ乳酸誘導体を合成した。(L,L)−ラクチドをモノマー(M)として、バニリン−アセタール化合物a(I)を開始剤(I)として用いた。モノマー(M)と開始剤(I)のモル比(M/I)が表1の実施例1〜4に示される比率となるように、0.1〜10gの(L,L)−ラクチドと、所定量のバニリン−アセタール化合物a(I)をアンプル管に導入し、内部を窒素置換した。ここに、1mol%に調製したSn(Oct)2のトルエン溶液1.1mLを加え、120℃に設定したオイルバスで2時間加熱することにより、(L,L)−ラクチドの重合を進行させた。得られた反応混合物をクロロホルム10mLに溶解させ、これを200mLのメタノールに入れ、再沈澱したメタノール不溶部を回収した。各実施例の収率を表1に示す。なお、表1において、「a」は、数平均分子量(Mn)の理論値を示す。「b」は、NMRスペクトルで解析した数平均分子量(Mn)を示す。「c」は、RIモードで解析した数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及びPDI(分子量分布)を示す。「d」は、UVモードで解析した数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及びPDIを示す。
下記化25に示される反応により、各実施例のポリ乳酸誘導体を合成した。(L,L)−ラクチドをモノマー(M)として、バニリン−アセタール化合物a(I)を開始剤(I)として用いた。モノマー(M)と開始剤(I)のモル比(M/I)が表1の実施例1〜4に示される比率となるように、0.1〜10gの(L,L)−ラクチドと、所定量のバニリン−アセタール化合物a(I)をアンプル管に導入し、内部を窒素置換した。ここに、1mol%に調製したSn(Oct)2のトルエン溶液1.1mLを加え、120℃に設定したオイルバスで2時間加熱することにより、(L,L)−ラクチドの重合を進行させた。得られた反応混合物をクロロホルム10mLに溶解させ、これを200mLのメタノールに入れ、再沈澱したメタノール不溶部を回収した。各実施例の収率を表1に示す。なお、表1において、「a」は、数平均分子量(Mn)の理論値を示す。「b」は、NMRスペクトルで解析した数平均分子量(Mn)を示す。「c」は、RIモードで解析した数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及びPDI(分子量分布)を示す。「d」は、UVモードで解析した数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及びPDIを示す。
上記のように得られたポリ乳酸誘導体は、試験例1(b)において参酌されるように、中性条件から酸性条件下に置かれると、バニリンのアルデヒド基と2,5,8,11−テトラオキサテトラデカン−13,14−ジオールのジオール基とのアセタール結合が加水分解する。具体的には、下記化26に示されるように、バニリン−ポリ乳酸のエステル化合物と、親水性基としての2,5,8,11−テトラオキサテトラデカン−13,14−ジオールに加水分解する。アセタール結合を有するポリ乳酸誘導体は、オキシアルキレン基を有するため水溶性であり、水中においてナノ粒子の状態で懸濁している。そして、加水分解により生じたバニリン−ポリ乳酸のエステル化合物は、疎水性であり、析出によりナノ粒子が凝集し、粗大粒子を形成する。
アセタール結合を有するポリ乳酸誘導体を水に懸濁させ、酸性条件下に変化させた場合の水溶液の透過率(%)より、親水性基の分解率(%)を測定した。
本試験において使用したポリ乳酸誘導体は、試験例2と同様の合成方法にてモノマー(M)と開始剤(I)のモル比(M/I)が20:1と、10:1と、5:1と、1:1のものをそれぞれ新たに合成した。
各実施例の収率を表2に示す。なお、表2において、「a」は、数平均分子量(Mn)の理論値を示す。「b」は、NMRスペクトルで解析した数平均分子量(Mn)を示す。「c」は、RIモードで解析した数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及びPDI(分子量分布)を示す。「d」は、UVモードで解析した数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及びPDIを示す。
分解率(%)は、(B−A)/(透過率100%−A)×100により求めた。各試料において測定をn数繰り返し、平均値を求めた。結果を表3に示す。
(b)電子顕微鏡を用いた粒子の観察1
各ポリ乳酸誘導体について、pHを変化させた場合のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を図3に示す。本試験において実施例5,8,9のポリ乳酸誘導体を使用した。図3の上段から実施例5,8,9のポリ乳酸誘導体を順に示す。一番左側の列のSEM画像は、pH7水溶液中における各例の粒子の状態を示す。スケールバーは、いずれも2.0μmである。いずれもナノ粒子の形態(nanostructures)を有していることが確認される。
各ポリ乳酸誘導体について、pHを変化させた場合のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を図3に示す。本試験において実施例5,8,9のポリ乳酸誘導体を使用した。図3の上段から実施例5,8,9のポリ乳酸誘導体を順に示す。一番左側の列のSEM画像は、pH7水溶液中における各例の粒子の状態を示す。スケールバーは、いずれも2.0μmである。いずれもナノ粒子の形態(nanostructures)を有していることが確認される。
真ん中の列、及び一番右側の列のSEM画像は、水溶液をpH5.0の条件に変化させた際の各例の粒子の状態を示す。スケールバーは、実施例5(20:1)が真ん中の画像及び右側の画像がそれぞれ5.0μm、実施例8(5:1)が50.0μm及び10.0μm、実施例9(1:1)が50.0μm及び10.0μmである。いずれも粒子が凝集し、粗大粒子(aggregate-structures)を形成していることが確認される。
(c)電子顕微鏡を用いた粒子の観察2
ポリ乳酸誘導体について、酸性条件下において凝集体を形成した後、水洗浄したものについてSEM画像を図4に示す。
ポリ乳酸誘導体について、酸性条件下において凝集体を形成した後、水洗浄したものについてSEM画像を図4に示す。
上記実施例8(M:I=5:1)のポリ乳酸誘導体を所定量の水に懸濁させた後、3500rpmで2分間遠心し、その上清をアルミホイル上に所定量スポットし、ドライヤーで2分程度乾燥させた。その時のSEM画像を図4(A)に示す。スケールバーは、3.0μmである。図4(A)に示されるように、ナノ粒子の形態を有していることが確認される。
次に、上記と同様の方法にて、上清をアルミホイル上に所定量スポットした。その後、pH2.0の緩衝液を所定量添加し、ドライヤーで2分程度乾燥させた。その時のSEM画像を図4(B)に示す。スケールバーは、左から3.0μm、5.0μmである。図4(B)に示されるように、網目構造が形成されていることが確認される。
次に、上記と同様の方法にて、上清をアルミホイル上に所定量スポットした。その後、pH5.0の緩衝液を所定量添加し、ドライヤーで2分程度乾燥させた。その後、シリンジを使用し、乾燥したスポットの表面を水で洗浄し、ドライヤーで2分程度乾燥させた。その時のSEM画像を図4(C),(D)に示す。スケールバーは、左から5.0μm、3.0μm、5.0μmである。図4(C),(D)に示されるように、水洗浄後であっても網目構造が維持されていることが確認される。
なお、図4の「EMEM」の表記は、上記水洗浄する工程において、水洗浄前にEMEM(イーグル最小必須培地)で洗浄したものを示す。スケールバーは、左から2.0μm、50.0μmである。
(d)粒径分布の測定
動的光散乱法(Dynamic Light Scattering:DLS)を用いて粒子径を測定した。本試験において実施例6,8のポリ乳酸誘導体を使用した。ポリ乳酸誘導体の試料をそれぞれ0.05gをpH9の緩衝液10mLに懸濁し、37℃で3500rpmで3分間遠心した。得られた上清0.6mLを動的光散乱法を用いた粒子径測定機を用いて粒子径を測定した。次に、同じ試料にpH5.0の緩衝液3.0mLを加え、5分以内に同じ測定機を用いて粒子径を測定した。結果を図5(a)(b)に示す。
動的光散乱法(Dynamic Light Scattering:DLS)を用いて粒子径を測定した。本試験において実施例6,8のポリ乳酸誘導体を使用した。ポリ乳酸誘導体の試料をそれぞれ0.05gをpH9の緩衝液10mLに懸濁し、37℃で3500rpmで3分間遠心した。得られた上清0.6mLを動的光散乱法を用いた粒子径測定機を用いて粒子径を測定した。次に、同じ試料にpH5.0の緩衝液3.0mLを加え、5分以内に同じ測定機を用いて粒子径を測定した。結果を図5(a)(b)に示す。
図5に示されるように、溶液のpHを9.0から5.0に低下させると、平均粒子径が大きくなっていることが確認される。水溶液のpHを酸性条件下に変化させることにより、ポリ乳酸誘導体が凝集していることが粒子径によっても確認された。
<試験例4:細胞親和性>
各種ポリ乳酸誘導体を細胞培養の足場剤として使用し、細胞の増殖性を試験し、各種ポリ乳酸誘導体の細胞親和性について評価した。本試験においては、上述した実施例6(M:I=10:1)のポリ乳酸誘導体を使用した。
各種ポリ乳酸誘導体を細胞培養の足場剤として使用し、細胞の増殖性を試験し、各種ポリ乳酸誘導体の細胞親和性について評価した。本試験においては、上述した実施例6(M:I=10:1)のポリ乳酸誘導体を使用した。
比較例1,2は、ポリエチレングリコール(PEG)を重合開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合することにより得られたポリ乳酸−ポリエチレングリコール−ポリ乳酸を使用した。具体的に比較例1は、モノマーとしてL乳酸(モノマーユニットとしてL−ラクチド)を使用して得られたポリ乳酸誘導体であり、ポリ(L)乳酸−ポリエチレングリコール−ポリ(L)乳酸の重合物である。比較例2は、モノマーとしてD乳酸(モノマーユニットとしてD−ラクチド)を使用して得られたポリ乳酸誘導体であり、ポリ(D)乳酸−ポリエチレングリコール−ポリ(D)乳酸の重合物である。下記表4に比較例1,2の分析結果を示す。a)は、1H NMRバンドからの積分値より求められたエチレンオキサイド(EO)/モノマーユニットのモル比を示し、b)が仕込み量を示す。c)は、1H NMRバンドからの積分値より求められた数平均分子量(Mn)を示す。d)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析から求められた数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を示す。
準備した歯肉上皮細胞(細胞株Ca9-22)を1.8×105mL個になるようにMEM(培地)で調節し、各ウェルに300μLを添加し、37℃、5%CO2で16時間培養した。培養終了後、アラマーブルーで4時間に反応させ、励起光570nm、吸収光585nmの蛍光で細胞生存率を測定した。得られた数値は平均±標準偏差として下記表に記載する。表中の*は、p<0.05 vs 陰性Control(Dunnett検定)を示す。
Claims (9)
- 下記の一般式(1)で表されるポリ乳酸誘導体。
R1〜R5のうち一つが下記一般式(2)又は一般式(3)で表される置換基を示し、残り4個のうち一つがアルコキシ基を示し、残り3個がそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステル基、又は水酸基を示す。
nは、2〜20,000の整数を示す。
R6〜R9のうちの一つが、オキシアルキレン基を含む基を示し、
残りの3個が、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、又はエステル基を示す。
R10〜R15のうちの一つが、オキシアルキレン基を含む基を示し、
残りの5個が、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、又はエステル基を示す。 - 前記オキシアルキレン基を含む基は、下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される置換基を示す請求項1に記載のポリ乳酸誘導体。
Xは、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、
Yは、水素原子、ハロゲン原子、アルデヒド基、アルキル基、又はエステルを示し、
mは、1〜10の整数を示す。 - 前記一般式(1)は、R1がアルコキシ基であり、R4が一般式(2)又は一般式(3)で表される置換基である請求項1又は2に記載のポリ乳酸誘導体。
- 前記ポリ乳酸誘導体は、細胞増殖用担体前駆体、薬剤送達用担体、又は患部被覆材として用いられる請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリ乳酸誘導体。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリ乳酸誘導体の製造方法であって、
下記一般式(6)の一つのアルデヒド基に下記一般式(7)に示されるジオール化合物を縮合させ、前記一般式(2)の置換基を形成し、下記一般式(9)で表される化合物を形成する工程、又は、
下記一般式(6)の一つのアルデヒド基に下記一般式(8)に示されるジオール化合物を縮合させ、前記一般式(3)の置換基を形成し、下記一般式(9)で表される化合物を形成する工程、
次に、下記一般式(9)で表される化合物を重合開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合する工程を含むポリ乳酸誘導体の製造方法。
R16〜R20のうち一つがアルデヒド基を示し、残り4個のうち一つがアルコキシ基を示し、残り3個がそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステル基、又は水酸基を示す。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリ乳酸誘導体の製造方法であって、
下記一般式(6)で表される化合物を重合開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合し、下記一般式(10)で表される化合物を形成する工程、
次に、下記一般式(10)の一つのアルデヒド基に下記一般式(7)に示されるジオール化合物を縮合させ、前記一般式(2)の置換基を形成する工程、又は、
下記一般式(10)の一つのアルデヒド基に下記一般式(8)に示されるジオール化合物を縮合させ、前記一般式(3)の置換基を形成する工程を含むポリ乳酸誘導体の製造方法。
R16〜R20のうち一つがアルデヒド基を示し、残り4個のうち一つがアルコキシ基を示し、残り3個がそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステル基、又は水酸基を示す。
- 前記ラクチドと重合開始剤とのモル比は、20:1〜2:1である請求項5又は6に記載のポリ乳酸誘導体の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリ乳酸誘導体を含む粒子を懸濁させた中性〜アルカリ性の水を、酸性に変化させることにより不溶性のポリ乳酸誘導体の凝集物を析出させるポリ乳酸誘導体の凝集物の形成方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリ乳酸誘導体を含有する口腔用組成物。
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