JP2020104237A - リアルタイム振動測定ユニット - Google Patents

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Kengo Yamamoto
憲吾 山本
貴行 山内
Takayuki Yamauchi
貴行 山内
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Koji Murakami
浩二 村上
雅史 荒木
Masafumi Araki
雅史 荒木
松田 亮
Akira Matsuda
亮 松田
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Abstract

【課題】切削装置等の回転加工装置で用いる回転ツールの実加工中の異常振動等の必要な振動信号を高感度に検知することができるリアルタイム振動測定ユニットを提供する。【解決手段】リアルタイム振動測定ユニット1は、回転加工装置の主軸に把持されるツールホルダユニット本体部3と、ツールホルダユニット本体部の下方で把持される回転ツール10と、ツールホルダユニット本体部内の空間内で延びて回転ツールとツールホルダユニット本体部内の空間上方とを繋ぐ振動伝達部材12と、振動伝達部材の上端に伝達された回転ツールの実加工中の振動をリアルタイムに計測する振動センサ13と、振動センサからの実加工中の電気信号を受信する電子回路7と、電子回路から出力された信号を無線送信方式でリアルタイムで外部ユニットに送信する送信手段と、を備えている。【選択図】図2

Description

本発明は、切削加工装置等の回転加工装置に用いる回転ツール(ドリル等の一般的な回転工具や摩擦攪拌接合用の回転ツール(以下、単に「回転工具」とも称する))の実加工中の異常振動を高感度で検出することができるリアルタイム振動測定ユニットに関するものである。
マシンニング切削加工装置等の回転加工装置において、被加工物の製品精度や製造効率、加工製品の歩留まりを考慮すると加工時の工具の状態の評価、例えば摩耗や疲労、破損、びびり等の評価することが要求される。従来、ツール評価は、装置メーカや工具メーカがその装置や工具ごとに一般化する評価基準、学術的に標準化された評価に基づいて行われていた。これに対して加工時における実際の工具についてのリアルタイム検証はできていなかった。
これに対して出願人は回転工具の加工中の温度測定し得るツールホルダユニットを開発・提供し、この測定結果に基づく異常予知技術についても開発・提供してきた(特許文献1、特許文献2)。一方、工具の破損等の重要な要因として温度以外に振動があることも知られている。しかしながら、この回転工具の振動についても加工中にリアルタイム評価する方法が提供されておらず、各加工現場で熟練工の目視や回転加工装置の振動から間接的に推測する等にゆだねられている現状があった。
出願人は、この点にも注目しており、回転工具の異常振動を前記ツールホルダでリアルタイムに検出し無線送信を介して外部ユニットで分析し得る技術を開発し、提供している(特許文献3、特許文献1等参照)。
しかしながら、実加工中の回転工具は高温で強負荷が作用した状態であり、振動センサを回転工具に配設することはできず、振動センサへの負担が少ないツールホルダ側に配設する必要がある。その一方、振動は伝達経路中に種々の部材に接触等の物理的な干渉があったり、経路が複雑化したりすると振動の減衰やノイズの混在等が生じるものであり、高感度の測定を達成するのが難しかった。この点は、回転工具の温度や振動等の異常検出を総合的に検出するツールホルダユニットを提供してきた出願人にとってもツールホルダ内で回転工具の振動をいかに高感度に検出し得るかは大きな開発課題であった。
また、長時間の加工を行い回転工具が破断する場合には、回転工具の温度が十分に上昇してから破断するため、実加工中にリアルタイムに温度測定していると事前に異常な温度変化を検出することができ、上記出願人が提供する技術を活用すれば破断を事前予知することが可能であるが、回転工具がそもそも欠陥を有している場合には実加工を開始し、十分に温度上昇する前に破断してしまう又は通常の温度上昇を経ずに破断してしまうこともある。このような場合には、温度測定するだけでは不十分であり振動の高感度測定も必要であるという実加工中のリアルタイム温度測定を達成したからこそ生じた現場ニーズもある。
国際公開公報WO2015−022967 国際公開公報WO2016−111336 特開2018−054611 国際公開公報WO2016−136919
このような事情に鑑みて本発明は創作されたものであり、切削装置等の回転加工装置で用いる回転ツールの実加工中の異常振動等の必要な振動信号を高感度に検知することができるリアルタイム振動測定ユニットを提供することを目的とする。
具体的に本発明は、回転加工装置による加工中の回転ツールの振動を検知する回転加工装置の主軸に交換可能に把持するリアルタイム振動測定ユニット(例えば実施形態におけるツールホルダユニット1参照)であって、
回転加工装置の主軸に把持されて主軸の回転軸線に沿って軸回転可能であり、内部に空間(例えば実施形態における空間1a参照)を設けた筒状のツールホルダ本体部(例えば実施形態におけるシャンク3参照)と、
前記ツールホルダ本体部の下方で把持されて前記回転軸線に沿って軸回転可能な回転ツール(例えば実施形態における切削工具10参照)と、
その下端を前記回転ツールに結合し、該下端から上端まで回転軸線に略沿って前記ツールホルダ本体部の空間内で延びており、その上端を該ツールホルダ本体部の空間内の上方に装着された固定部(例えば実施形態におけるフランジ部材11参照)にその上端を固定する振動伝達部材(例えば実施形態におけるパイプ12参照)と、
前記固定部に固定された前記振動伝達部材の上端に伝達された回転ツールの実加工中の振動をリアルタイムに計測する振動センサ(例えば実施形態における加速度センサ13照)と、
前記振動センサからの実加工中の電気信号を受信する電子回路(例えば実施形態における電子回路7参照)と、
該電子回路から出力された信号を無線送信方式でリアルタイムにで外部ユニット(例えば実施形態におけるパーソナルコンピュータ22等参照)に送信する送信手段と、を備える。
本発明のリアルタイム振動測定ユニットでは、回転加工装置の主軸に装着し下端で回転ツールを把持するツールホルダ本体部内で回転ツールでの振動を測定する際に、振動を高感度に検出し得る構成が提供されている。具体的には概ね、切削工具等の回転ツールとツールホルダ本体部内の空間の上部との間で回転軸線方向に沿って例えば無接触で延びる振動伝達部材を配設し、この振動伝達部材で回転ツールの振動をツールホルダの空間上部まで伝達し、そこで振動を検出する構成となっている。この構成を採用すれば、増幅した回転ツールの振動のみを増幅して振動センサの位置まで伝達することができる。回転ツール等の振動は、振動の極大(腹)と極小(節)などの位置が空間的に移動しない定常波が形成されており、回転ツール等の振動を増幅させて振動センサで検出するには振動伝達部材で回転ツール等の振動を伝達し振動の腹の位置に振動センサを配設することで増幅した振動を検出することができる。本リアルタイム振動測定ユニットのように回転ツールとツールホルダ本体部内の空間上部の固定部とを連結し、振動の腹(又は少なくとも振幅が大きくなる部分)に位置する固定部側に振動センサを配設すると増幅した振動を検出することができる。とりわけ高温であり他部材との干渉が多く振動センサを配設し難い回転ツール近傍よりも離間しており振動センサを水平面に配設するスペースを確保し得る固定部側まで振動を伝達し、さらに増幅させて検出でき、回転ツールの破損等を高精度に検出する機能を有する点で非常に有益な構成である。むしろこの振動伝達部材は、比較的長く一定の張力が作用し他の部材と干渉しない部材(振動の節もない)で振動を伝達するものであるため回転ツールでの振動を振動センサの位置にノイズなく増幅して伝達することができ、高精度な振動増幅器として機能することとなる。
また、具体的に本リアルタイム振動測定ユニットにおいて、前記ツールホルダ本体部の下端には、ツールホルダ本体部内に配設して回転ツールの上端を把持するコレット部材(例えば実施形態におけるコレットチャック5参照)を有し、
該コレット部材は、前記回転軸線に沿って回転ツールを把持可能なツール用貫通孔が穿けられており、その外周に配設されたチャック部材(例えば実施形態におけるミーリングチャック4参照)を絞め込むことで前記ツール用貫通孔の内径を拡縮させることで回転ツールを固定する。
本リアルタイム振動測定ユニットによれば、コレット部材に回転ツールを把持するためのツール用貫通孔が設けられ、このコレット部材で回転ツールを把持した状態でチャック部材をで絞め込んでいくので回転ツールを回転軸線に対して容易に中心出しすることができ、回転ツールが回転軸線に対してオフセットすることによる振動を排除して加工に起因する振動のみを得ることができる。
また、前記回転ツールにはその上端から前記回転軸線に沿った所定以上深さの振動伝達部材用の挿入孔(例えば実施形態における穿孔10b参照)が穿けられており、該所定以上深さの挿入孔に前記振動伝達部材の下端を挿入し、固定する、ことが好ましい。
この構成によれば回転ツールの上方から所定以上の挿入孔を穿けて、その挿入孔に振動伝達部材の下端をしっかりと挿入して固定している。後述するように振動伝達部材は回転ツールに所定以上(後述の例では5mm)の挿入孔を穿けて、この挿入孔に振動伝達部材の下端を挿入することで、振動センサに伝達する振動のうち特定の周波数の振動のみを増幅することができる。したがって、例えば後述するように振動センサとして加速度センサを用いる場合、挿入孔の深さを回転ツールの破損時の特定周波数の加速度をが増幅するように設定すれば、回転ツールの破損の予兆が高感度に検知することも可能となる。
また、前記回転ツールは、その上端から下方に穿けられた半貫通孔又は貫通孔(例えば実施形態における半貫通孔10a参照)を設け、前記振動伝達部材は、中空の管状部材でありその下端が前記回転ツールの半貫通孔又は貫通孔に接続され、
前記回転ツールの半貫通孔又は貫通孔には熱電対(例えば実施形態における熱電対6参照)の下端が挿入・固定され、該熱電対は、該半貫通孔又は貫通孔から前記振動伝達部材の内部を通って前記電子回路に接続され、該電子回路は、熱電対からの実加工中の電気信号を受信することで前記回転ツールの実加工中の温度をリアルタイムに測定し、
前記送信手段は、前記電子回路から出力された振動信号及び温度信号を無線送信方式でリアルタイムで外部ユニットに送信しても良い
この構成のリアルタイム振動測定ユニットの場合、回転ツールに半貫通孔等を穿けて熱電対を挿入して直接的に回転ツールの温度変化を直接的にリアルタイムに温度測定することができるため、振動のみならず温度の変化をも同時検出することができるので、実加工中の回転ツールの状態を多角度から分析・評価することができる。また、本リアルタイム振動測定ユニットに熱電対を用いたリアルタイム温度測定機能を付加した場合、回転ツールの温度上昇が不十分で異常検出が難しい加工初期段階であっても振動による異常検出を行うことができるため回転ツールの破損に結び付くような欠陥を最初期に検出することができ、回転ツールの破損による加工失敗を未然防止することができ、製品加工時の歩留まりを大幅に改善することができる。
また、本リアルタイム振動測定ユニットのように振動伝達部材を中空の管状部材にすると回転ツール内に熱電対(補償導線を含む)を挿入し、電子回路まで他部材に干渉させずに接続する構成にするとツールホルダ本体部内の空間確保のみならず、熱電対の振動によるブレを低減でき温度信号を高感度に伝達し得る機能を有する(回転ツールの振動伝達中の熱電対の振動の影響も低減する)。
また、ツールホルダの空間内の上方に装着された固定部は、前記電子回路及び電子回路の電源となる充電式電池を収容する容器の底部に装着された前記回転軸線中心の略円板状又は略筒状のフランジ部材(例えば実施形態におけるフランジ部材11参照)であり、
前記振動伝達部材は、前記フランジ部材の底面の前記回転軸線中心の位置に固定され、前記振動センサは、前記フランジ部材の底面に前記容器内で水平平面上に回転軸線中心に対して径方向対称の位置に配列された一対の加速度センサと、これと略90°位相が異なる位置に配列された一対の加速度センサとで構成される、ことが好ましい。
本リアルタイム振動測定ユニットによれば電子回路や電池を収容する容器と別に振動伝達部材から伝達された振動を直接受けるフランジ部材を設け、容器内に配設された電子回路(電子基板)等の水平平面上にこれに加速度センサを配列しているため振動を高感度に検出し得る。また、本リアルタイム振動測定ユニットのようにフランジ部材に加速度センサを配列すると、後述するように径方向及び回転方向の振動を検知できるため増幅された振動を精緻に検知・分析することが可能となる。
上述するように本発明のリアルタイム振動測定ユニットは、回転加工装置で用いる回転ツールの異常振動等の所望の振動信号を増幅して高感度にリアルタイムで検知することができる。
(a)には、マシニングセンタの回転主軸に本振動測定ユニットの一例が把持された状態の写真図が示され、(b)には(a)の本振動測定ユニットからのデータを受信し、分析する外部端末の例示写真が示されている。 本振動測定ユニットの実施形態としてツールホルダユニットに振動伝達部材を装着した状態でのツールホルダユニットの略縦断面図が模式的に示されている。 所謂シース型の熱電対の写真図例であり、(a)は熱電対の後端近傍のシースと酸化マグネシウム粉末を除去し、素線が露出した状態を示す写真図であり、(b)はその断面写真である。 フランジ部材の底部に加速度センサが配列された例が示されている。 熱電対及び加速度センサからの温度及び振動の電気信号の流れの一例を示すブロック図である。 従来式の振動伝達部材(パイプ)がないツールホルダユニットにおける切削工具の振動を検出した実施結果を示しており、(a)(b)(c)の切削工具の直径は、それぞれ直径D=2mm、直径D=1mm、直径D=0.5mmである。 図2に示す振動伝達部材を有するツールホルダユニット1における切削工具の振動を検出した実施結果を示しており、(a)〜(c)は、全て切削工具の直径が図6(c)同様に直径D=0.5mmであり、(a)は図6と同様のパイプなしの場合を示してる。また(b)及び(c)はともに、切削工具を上端から穿孔し直径D=1mmのパイプの下端を穿孔内に挿入しており、そのうち(b)は穿孔内にパイプを深さ5mm挿入、(c)は穿孔内にパイプを深さ26mm挿入した場合を示している。
≪装置構成例≫
図1(a)は、回転加工装置としてマシニングセンタの回転主軸2に本発明のリアルタイム振動測定ユニットとしてのツールホルダユニット1の一例が把持された状態の写真図を示している。このツールホルダユニット1は、通常のツールホルダと同様にその上部を回転主軸2に連結して下部で工具を把持するものであるが、通常のツールホルダと異なり加工中の回転ツール(図23の符号10参照)の状態をリアルタイムに検出できる機能を有するユニットとして形成されている。具体的には、加工中の回転ツールの温度や振動を測定し、そのデータをデジタル化して外部に無線送信し、外部端末で受信し、分析する。
図1(b)は、図1(a)のツールホルダユニット1からのデータを受信し、分析する外部端末の例示写真である。無線送受信機(レシーバ)21はツールホルダ1からのデジタルデータを受信し、コンピュータ22に送信する。無線送受信機21から送信されたデータを受信したコンピュータ22は内部の専用ソフトウェアで処理(又は演算)してディスプレイ上に表示している。
≪ツールホルダユニット1≫
図2は、本振動測定ユニットの実施形態としての回転主軸2にツールホルダユニット1が把持された状態の模式的な縦断面図が示されており、ツールホルダユニット1の下端では回転ツールとしての切削工具(ドリル)10が把持され、後述する振動伝達部材12が装着された存在しない例が示されている。また、図3には図2のツールホルダユニットに振動伝達部材12を装着した状態でのツールホルダユニット1の略縦断面図が模式的に示されている。
ツールホルダユニット1は、上端が先細りするシャンク3を有し、シャンク3の上端を回転主軸21(図1参照)に挿入し、回転主軸2から下方に延びた連結部(図示せず)2sをシャンク3内の連結孔3aに入れ子状に挿入して下端で連結することで、回転主軸2とシャンク3とを連結する。これによりツールホルダユニット1は回転主軸2と協動回転する。また、ツールホルダユニット1はシャンク3の下方でミーリングチャック4が連結される。
ツールホルダユニット1の内部は、上記連結孔3aと連結して拡径し下端まで延びる空間1aを有している。この空間1aの下方では切削工具把持用のコレットチャック5が挿入されており、コレットチャック5はその中心線に沿って延びる貫通孔に切削工具10を挿入し、ミーリンクチャック4を回転させてコレットチャック5を絞め込むことでコレットチャック5を介してひいてはツールホルダユニット1に切削工具10をしっかりと把持・固定する。
(切削工具(回転ツール))
切削工具10としては、ドリル、エンドミル、及び、タップ等で構成可能であり、加工対象物の切削加工に用いる工具である。図2〜図3に示す切削工具10には、穴あけ加工を施すことによって貫通孔又は半貫通孔10a(以下、単に「半貫通孔10a」とも称する。)が形成されている。この半貫通孔10aは、ツールホルダユニット1の空間1aと同軸状の孔であって、半貫通孔10a内の下方に熱電対6が装着される。なお、図2では、切削工具10の半貫通孔10aとして上端から下端に至る途中まで穿孔し底部が閉鎖された半貫通孔が示されているが、上端から下端まで貫通させる場合も採用され得る。
(熱電対)
切削工具10の貫通孔10aに装着される熱電対6は所謂シース型の熱電対であり、先端が半貫通孔10aの下方又は底部に装着された状態で、その後端が空間1a内を電子回路7に接続される。電子回路7は充電式の電池9とともに空間1a内の上部に配設された金属製の容器8に収納されている。電子回路7は例えば、複数の電子基板で構成しても良い。容器8内の底部には金属製のフランジ部材11が配設されており、電子回路7が複数の電子基板で構成される場合には、その一部の基板をフランジ部材11と兼用にしても良い。このフランジ部材11には熱電対6の上端(前記後端)が接続され、ることで熱電対6と電子回路7とが電気的に接続される。
熱電対6は、異なる材料の2本の素線(金属線)を接続した1つの回路を作ったものであり、2本の素線の接点に温度差を与えると回路に発生する電圧を電子回路7で検出して電圧に基づいて温度を測定する構成の温度計測手段である。熱電対の語は、狭義には接点近傍部を「熱電対」と称することもあり、2本の素線の接点を温度測定部として素線全体を絶縁した素子全体を熱電対と称することもある(本明細書における熱電対6は後者を意味する)。
熱電対6は、図34に示すようにいわゆる所謂シース型の熱電対である。熱電対6は2つの素線6a、6bが互いに短絡しないように外套としてのシース6c内に配設されており、シース6c内には絶縁性の高い酸化マグネシウム粉末を充填している。なお、図34(a)は熱電対6の後端近傍であり、シース6cと酸化マグネシウム粉末を除去し、素線6a、6bが露出した状態を示す写真図であり、図34(b)はその断面写真である。また、熱電対6は、サーミスタ、及び、白金測温抵抗体等の温度測定素子でも代替可能である。
(振動伝達部材)
図23に示す例では、空間1a内で切削工具10の上端から容器8の底部フランジ部材11まで延びる振動伝達部材としてのパイプ12が配設される。このパイプ12は金属製等の管状部材であり、内部に熱電対6のシース6cが挿入されてその容器8の底部に連結され、熱電対6の素線6a、6bの端部が容器8内の電子回路7に接続されるフランジ部材11に接続される(なお、シース6c自体も管状部材と言え、パイプ12の内部にシース6cを挿入する場合以外にシース6c自体をパイプ12として振動伝達させても良い)。パイプ12の下端は、例えば切削工具10の半貫通孔10aに沿って繋がった穿孔10bに挿入・固定される等により切削工具10に連結される。また、振動伝達部材12はフランジ部材11に接続されるまで空間1a内の他の部材に無接触で干渉していない。
(加速度センサ(振動センサ))
フランジ部材11や容器8等には振動センサ13が配設される。振動センサ13は切削工具10の振動を検知し得る位置であれば良く、例えば水平平面上にあるフランジ部材11やフランジ部材11としても機能する電子基板(電子回路)7に設けられた略平面部に振動センサとしての加速度センサ13が配設される。図45には複数配列された電子基板のうちの底部の1枚をフランジ部材11として加速度センサ13を配列したフランジ部材11の底部に加速度センサ13が配列された例が示されている(上下方向(Z方向)から見た模式図で示している)。図45においてX方向とはそれぞれ矢印xxに示すようにツールホルダユニット1に対して回転軸線方向に垂直な任意の横方向の一つであり、Y方向とはそれぞれ矢印yyに示すように矢印xxから軸周りに90°回転した方向である。ここに示す加速度センサ13は圧電式加速度センサであり、回転軸線Оを中心に対向する位置に2個で1対となって、それぞれX方向用、Y方向用に直交に2対の13a、13bが配設される。そして、Y方向、X方向の加速度Ay1、Ay 2、Ax1、Ax 2 (矢印参照)が検出でき、これに基づいて加速度センサ13a、13bの位置でのX方向の加速度Ax、Y方向の加速度Ay、接線方向の加速度Am'、接線方向の角加速度Amが算出され、回転方向の加速度がわかる。その結果、フランジ部材11に到達した切削工具10等の振動を検出できる。なお、図4ではX方向用、Y方向用に直交に2個2対の13a、13bが配設された例が示されているが、スペースを考慮して2個1対の加速度センサ13a又は13bが配設される場合もある。
(電子回路及び電池)
熱電対6や加速度センサ13からの電気信号は、容器8内のフランジ部材11を経由して容器8内の電子回路7に送信される。電子回路7は、高速回転や他部材との無線の干渉等を考慮すると容器8内(空間1a)の外周側に配設されることが好ましい。電子回路7における電気信号の流れについては後述する。また、電池9は、充電用の端子・ケーブル15で外部電力を得る充電型の電池であって容器8内に設けられて電子回路7に接続して電源供給される。
(電気信号の流れ)
図56は、熱電対6及び加速度センサ13からの温度及び振動の電気信号の流れの一例を示すブロック図である。なお、図56においては有線方式の電気信号の伝送路を実線で示し、無線方式の電気信号の伝送路を破線で示している。まず、切削工具10の温度変化による熱電対6から発生した電流は、基準接点を0℃に補正するために電子回路7内の零接点補償回路7aにより0℃を基準とする熱起電力を加算し、電位差増幅部7bで電子差増幅してA/D変換器7cによりアナログ信号をデジタル信号に変換し、マイコン7dで送信データを処理して無線送受信機(アンテナ)14で外部送信する。
また、上述する2対の加速度センサ13からのアナログ信号は、電子回路7内のオペアンプ等の振動増幅回路7eにより、インピーダンスを整合し、電圧増幅し、減算・平均化回路7gに応じたゲイン調整が行われる。振動増幅回路7eからの出力信号は共振周波数の影響低減のためローパスフィルタ7fにより高周波数がカットされ、減算・平均化回路7gで受信される。
減算・平均化回路7gでは、減算回路や加算回路でXY方向、回転方向の振動信号を出力し、RMS (二乗平均平方根)等による平均化処理をし、加速度の実効値を出力する。そして、A/D変換器7cによりアナログ信号をデジタル信号に変換し、マイコン7dで送信データを処理して、図3に示すように容器8からシャンク3の外周側に有線接続された無線受信機(アンテナ)14で外部に無線送信する。なお、減算・平均化回路7gは、並進加速度を算出し、回転で加算する回路の場合も考えられる。
無線送信された温度情報と振動情報とは、無線受信機21で受信されて、シリアルUSB変換器等を介して専用ソフトウェアをインストールしたパーソナルコンピュータ22で処理されてディスプレイ上に表示される。
(実施例)
以下、図2に示す従来式の振動伝達部材がないツールホルダユニット1と図23に示すような振動伝達部材12を有するツールホルダユニット1とで切削工具10の振動を検出した実施結果が図67〜図78に示されている。振動伝達部材としては径が1mm(=Φ1)の管状のステンレスパイプ12(以下、単に「パイプ12」とも称する)を使用し、切削工具10の上端から所定径Dで深さL(図23参照)の穿孔10bを形成し、パイプ12の上端をフランジ部材11に結合し、空間1aを通過して下端を切削工具10に形成した穿孔10bに挿入している。
まず、図67はパイプ12がなく熱電対6がそのままフランジ部材11まで接続している場合(図2中のパイプ12がない場合)における切削加工中の切削工具10の振動結果のグラフ図を示している。このグラフ図の横軸は時間(Time[s])、縦軸は加速度センサ13に基づく電圧(Voltage[V])であり、XY方向の加速度(Radial)と回転方向の加速度(Rotational)との2つの加速度を示している。
図67(a)(b)(c)のは、それぞれ切削工具10の直径は、それぞれ直に径D=2mm、直径D=1mm、直径D=0.5mmであるの穿孔を形成している。図67(a)の例では、回転数に応じた所定時間ごとに振動のピーク(グラフ図中の(1)参照)を検出し、切削送り中の振動を検知していることがわかる。また、グラフ図中の(2)のピーク以降は、振動ピークが検出されないことから(2)で切削工具10の破損を検知していると考えられ、実際に切削工具10の破損が見られた。
図67(b)の例では、図67(a)よりも切削送り中の振動が僅かしか検出していないが(グラフ図中の(1)参照)、グラフ図中の(2)で大きな振動ピークを検出しており、実際に切削工具10の破損が見られた。また、図67(c)の例では、切削送り中の振動がほとんど検出されず(グラフ図中の(1)参照)、グラフ図中の(2)で僅かに振動ピークを検出しており、実際に切削工具10の破損が見られた。
図67(a)〜(c)のパイプ12なしの実験結果を見る限り、切削工具10の破損時には振動検出していることは共通するが、切削送り中の振動と明確な差を得るほどの振動ピークを検知していない場合もあり、又、パイプ12穿孔の直径Dの大きさと振動増幅との定常的な関係性も見出し難く、シャンク3その他の周辺部材や被切削物、回転数等の加工条件全般の影響を受けていることがわかる。
次に、図78は上述したように全て直径D=0.5mmの切削工具10の穿孔10bにパイプ12の下端を挿入し、その上端をフランジ部材11に連結した場合における切削加工中の切削工具10の振動結果のグラフ図を示している(図78(a)は比較対象として図67(c)と同一の実験結果を示している)。なお、熱電対6は図2に示すようにパイプ12内を通過してフランジ部材11まで接続している。このグラフ図も図67と同様に横軸を時間(Time[s])、縦軸を加速度センサ13に基づく電圧(Voltage[V])とし、XY方向の加速度(Radial)と回転方向の加速度(Rotatinal)との2つの加速度を示している。
図78(a)は、パイプ12なしである。切削工具10に径D=0.5mmの穿孔を形成している。また、図78(b)及び(c)はともに、切削工具10を上端から下方に穿孔し直に径D=1mmのパイプの下端を穿孔10b内に挿入しており穿孔を形成し、そのうち(b)は穿孔10b内にパイプを深さ5mm挿入、(c)は穿孔10b内にパイプを深さ26mm挿入している。この穿孔にパイプ12の下端を5mm挿入している。図78(c)は、切削工具10に径D=1mmの穿孔を形成し、この穿孔にパイプ12の下端を26mm挿入している。
図78(b)の例では、図67(c)と同様に切削送り中の振動がほとんど検出されず(グラフ図中の(1)参照)、グラフ図中の(2)で僅かに振動ピークを検出しており、実際に切削工具10の破損が見られた。この結果からパイプ12の切削工具10への挿入深さが浅い場合は、振動増幅効果はほとんど見られないことがわかる。また、図7(b)は、切削工具10の穿孔の直径が同一でパイプ12なしの図6(b)よりも切削工具10の直径が異なる図67(c)に近似しており、このことからも切削工具10の直穿孔の径Dは加工条件等の変化による振動検知を超えるほどの振動増幅を検知できる要因ではないこともわかる。
図78(c)の例では、図78(a)(及び図67(c))と同様に切削送り中の振動はほとんど検出されていないが(グラフ図中の(1)参照)、グラフ図中の(2)に示すように切削工具10の破損時のみに大きな振動ピークを検知しており、このとき実際に切削工具10の破損が見られた。この結果からパイプ12の切削工具10への挿入深さが深い場合は、切削工具10の破損時のみに振動が増幅されて高感度に検知されていることがわかる。このことからパイプ12は特定特有の周波数に対して増幅率が高く、パイプ12を深く挿入し連結性を上げることで切削工具10破損時特定特有の周波数の振動の周波数を増幅してフランジ部材11まで伝達していると考えられる。したがって、図23のツールホルダユニット1のように切削工具10から加速度センサ12の配設位置まで他の部材と干渉することなく振動伝達部材12で連結する場合など切削工具10の定常波の振動が大きくなった位置(例えば振動の腹の位置)に加速度センサ12を配設することで少なくとも工具破損等の特定の振動を高感度に検出することができる。
以上、本発明のリアルタイム振動測定ユニットの構成例やその実証結果を説明してきたが回転工具の振動を振動伝達部材により増幅して振動センサに伝達するという本発明の技術思想を用いた種々の変形例や改良例が存在することは当業者に明らかである。
例えば上記実施例では、振動伝達部材として金属製のパイプ12を用いて、その下端を切削工具10の穿孔10b孔に挿入し、上端を加速度センサ13を配設したフランジ部材11に連結する例を示してきたが、パイプ12の長さや肉厚、材質はツールホルダユニット1の形状や把持予定の回転工具等に応じて破損時の振動の増幅率が高い他のものを採用することができる。また、熱電対6による温度測定を行わないツールホルダユニット1などでは振動伝達部材12としては中実の棒状部材を採用することも可能である。さらに、振動センサとしての加速度センサは圧電型やサーボ型、ひずみゲージ式、半導体式等が考えられ、振動伝達部材12の上端は振動センサの配設位置の近傍の他の位置に連結することも考えられる。
1・・・リアルタイム振動測定ユニット(ツールホルダユニット)
1a・・・空間
2・・・回転主軸
3・・・シャンク(ツールホルダユニット本体部)
3a・・・連結孔
4・・・ミーリングチャック(チャック部材)
5・・・コレットチャック(コレット部材)
6・・・熱電対
6a、6b・・・素線
7・・・電子回路
7a・・・零点補償回路
7b・・・電位差増幅部
7c・・・A/D変換器
7d・・・マイコン
7e・・・振動増幅回路
7f・・・ローパスフィルタ
7g・・・減算・平均化回路
7h・・・A/D変換器
8・・・容器
9・・・電池
10・・・回転ツール(切削工具)
10a・・・半貫通孔(半貫通孔又は貫通孔)
10b・・・穿孔(挿入孔)
11・・・フランジ部材(固定部)
12・・・振動伝達部材(パイプ)
13・・・加速度センサ(振動センサ)
14・・・無線送受信機(アンテナ)
21・・・無線送受信機(レシーバ)
22・・・コンピュータ(パーソナルコンピュータ)

Claims (5)

  1. 回転加工装置による加工中の回転ツールの振動を検知する回転加工装置の主軸に交換可能に把持するリアルタイム振動測定ユニットであって、
    回転加工装置の主軸に把持されて主軸の回転軸線に沿って軸回転可能であり、内部に空間を設けた筒状のツールホルダ本体部と、
    前記ツールホルダ本体部の下方で把持されて前記回転軸線に沿って軸回転可能な回転ツールと、
    その下端を前記回転ツールに結合し、該下端から上端まで回転軸線に略沿って前記ツールホルダ本体部の空間内で延びており、その上端を該ツールホルダ本体部の空間内の上方に装着された固定部にその上端を固定する振動伝達部材と、
    前記固定部に固定された前記振動伝達部材の上端に伝達された回転ツールの実加工中の振動をリアルタイムに計測する振動センサと、
    前記振動センサからの実加工中の電気信号を受信する電子回路と、
    該電子回路から出力された信号を無線送信方式でリアルタイムにで外部ユニットに送信する送信手段と、を備える
    ことを特徴とするリアルタイム振動測定ユニット。
  2. 前記ツールホルダ本体部の下端には、ツールホルダ本体部内に配設して回転ツールの上端を把持するコレット部材を有し、
    該コレット部材は、前記回転軸線に沿って回転ツールを把持可能なツール用貫通孔が穿けられており、その外周に配設されたチャック部材を絞め込むことで前記ツール用貫通孔の内径を拡縮させることで回転ツールを固定する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のリアルタイム振動測定ユニット。
  3. 前記回転ツールにはその上端から前記回転軸線に沿った所定以上深さの振動伝達部材用の挿入孔が穿けられており、該所定以上深さの挿入孔に前記振動伝達部材の下端を挿入し、固定する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリアルタイム振動測定ユニット。
  4. 前記回転ツールは、その上端から下方に穿けられた半貫通孔又は貫通孔を設け、前記振動伝達部材は、中空の管状部材でありその下端が前記回転ツールの半貫通孔又は貫通孔に接続され、
    前記回転ツールの半貫通孔又は貫通孔には熱電対の下端が挿入・固定され、該熱電対は、該半貫通孔又は貫通孔から前記振動伝達部材の内部を通って前記電子回路に接続され、該電子回路は、熱電対からの実加工中の電気信号を受信することで前記回転ツールの実加工中の温度をリアルタイムに測定し、
    前記送信手段は、前記電子回路から出力された振動信号及び温度信号を無線送信方式でリアルタイムで外部ユニットに送信する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリアルタイム振動測定ユニット。
  5. 該ツールホルダの空間内の上方に装着された固定部は、前記電子回路及び電子回路の電源となる充電式電池を収容する容器の底部に装着された前記回転軸線中心の略円板状又は略筒状のフランジ部材であり、
    前記振動伝達部材は、前記フランジ部材の底面の前記回転軸線中心の位置に固定され、前記振動センサは、前記容器内で水平平面上に回転軸線中心に対して径方向対称の位置に配列された一対の加速度センサと、これと略90°位相が異なる位置に配列された一対の加速度センサとで構成される、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のリアルタイム振動測定ユニット。
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