JP2020103047A - 生簀用枠体 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐食性に優れ、長期使用に耐える生簀用枠体を提供すること。【解決手段】生簀用枠体1は、鋼管によって形成される枠体115と、枠体115の全長にわたって枠体115の表面に隙間なく密着するように設置される浮体100と、浮体100から露出し、少なくとも海水の飛沫部にある金属部分が、強度及び剛性を基準とした設計板厚より防食速度に基づいて算出される腐食代の分だけ厚い金具(係留金具13、中間吊り金具14、及び支柱支持金具113)と、を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、魚類の養殖に用いられ、長期間の使用に耐える鋼製の生簀用枠体に関するものである。
海水魚の養殖施設の多くは生簀網方式である。この生簀網方式は浮力を有する枠体に生簀網を取り付け、これを係留装置により所定の位置に設置する。生簀網方式は、フロート支持枠方式、連結フロート式、浮体支持枠方式に分類される。
フロート支持枠方式の生簀は、鋼枠体にフロートを取り付け、フロートの浮力により鋼枠体を浮上させ、鋼枠体から生簀網を吊り下げる。フロート支持枠方式の枠体は一般的に鋼管トラス型であり、内海において一辺15m程度までの角型生簀、直径20m程程度までの円形生簀に多用されている。
連結フロート方式は、フロートをロープで直接連結し、ロープに生簀網を取り付ける方式となっている。
浮体支持枠方式は、高密度ポリエチレンパイプの内部に発泡スチロールを詰め込み、パイプそのものを浮体とし、このパイプに支柱を立て、支柱に取り付けた網枠から生簀網を吊り下げる。
浮体支持枠方式の別種のものとして、鋼管の外径にほぼ等しい内径を有する半円筒型の発泡樹脂体を鋼管の周囲に固定し、鋼管と発泡樹脂体を一体化した複合管を浮体とした枠体に、支柱を立て、支柱に取り付けた網枠から生簀網を吊り下げた生簀枠が提案されている(例えば、特許文献1。)。
国内で数多く使用されているフロート支持枠方式の鋼枠体は、亜鉛メッキと鋼材の腐食のため耐用性に難点があり、一般的に耐用年数は4〜7年とされている。そのため、鋼枠体の耐用年数をのばし、長期耐用生簀の開発が期待されてきた。
養殖生簀が設置される海洋域の腐食環境についてみると、海面からのレベルにより海中部、飛沫部、海塩粒子帯部に分けられる。海中部と飛沫部の境界は海面のレベルであり、飛沫部と海塩粒子帯部の境界は、その場所の波の高さや波の破砕状況等により異なるが、養殖の行われる内海では海面+20cm程度のレベルとされている。
この海洋環境のもとにおける鋼材と溶融亜鉛メッキの耐食性についての研究及び試験データーの蓄積が進められてきた(例えば、非特許文献2。)。
非特許文献1によれば、鋼の平均腐食速度は海上大気部において最大0.128mm/年、飛沫部において最大0.272mm/年、海中部において最大0.090mm/年と実測されている。飛沫部は常時海水の飛沫を受け、乾湿を繰り返し、常時酸素が供給されるため鋼の腐食環境として最悪である。
また非特許文献2によれば、海岸地帯における亜鉛メッキの耐食年数は試験データーより、常時海水飛沫を受ける場所における耐用年数は5〜10年であり、ほとんどの海岸地帯大気部での耐用年数は25〜50年としている。
従って、生簀が長期耐用(10年以上)であるためには飛沫部における亜鉛めっきの腐食が考慮されなければならない。
現状の養殖生簀の多くはフロート支持枠方式であり、枠体には鋼材が用いられ、腐食対策として通常亜鉛メッキがされているが、亜鉛メッキされていても腐食が激しく、生簀枠体は4〜7年の耐用年数しか得られていない。
その原因は、フロート支持枠方式の枠体は、枠体を構成する内枠、外枠、横枠、及び斜め枠と縦枠の下部が腐食環境最悪の飛沫部にあり、早期に腐食が進行するためである。
現状のフロート支持枠方式の枠体で長期の耐用年数を得るには、腐食代を持たせて部材肉厚を厚くすること、樹脂コーティングした鋼管を使用すること、繊維テープを鋼管に巻き付け樹脂を含浸してFRPライニングすること等があるが、このような方法では経済コストとならない問題があった。
浮体支持枠方式の高密度ポリエチレンパイプ枠体は、腐食がなく、長期耐用可能であるが価格が高く、一般的に使用できるようにはなっていない。
特許文献1の生簀枠体は、飛沫部にあるにもかかわらず発泡樹脂体に被覆されていない部所の鋼管があり、飛沫部にある鋼管、金具類の腐食が早期に進行して長期間の使用に耐える生簀となっていなかった。
本発明が解決しようとする課題は、耐食性に優れ、長期使用に耐える生簀用枠体を提供することである。
本発明は、鋼管によって形成される枠体と、前記枠体の全長にわたって前記枠体の表面に隙間なく密着するように設置される浮体と、前記浮体から露出し、少なくとも飛沫部にある金属部分が、強度及び剛性を基準とした設計板厚より防食速度に基づいて算出される腐食代の分だけ厚い金具と、を備える生簀用枠体を提供する。
本発明によれば、耐食性に優れ、長期使用に耐える生簀用枠体を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態の生簀用枠体1を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本実施形態の生簀用枠体1の斜視図、図2は生簀用枠体1の図1におけるAA断面図、図3は生簀用枠体1の図1におけるBB断面図、図4は生簀用枠体1のCC断面図である。
図1から図4に示すように、本実施形態の生簀用枠体1は、枠体部10、支柱部11、上枠12、係留金具13と中間吊り金具14とを備える。
枠体部10は、矩形又は円形の閉鎖環状に形成された枠体115と、枠体115の全長を被覆するように設置される浮体100と、浮体100を補強する表面補強材103を備える。
枠体115は、通常鋼管によって形成される。例えば、10m×10mの角型の生簀の場合、枠体115の径は110mm〜150mmであり、厚さは4mm〜6mmであることが、重量を抑えつつ強度と剛性を確保する点から望ましい。
浮体100は、浮力の大きい樹脂、例えば発泡スチロールなどの発泡性樹脂によって形成される。
浮体100は製作・組立の観点から浮体ブロックを枠体に取り付けて形成する。
本実施形態においては、内側半径が枠体115の鋼管外径に等しく、長さが1.5から2.5mの半円筒形の浮体ブロックを枠体115の全長にわたって、表面に隙間なく密着するように取り付ける。
本実施形態においては、浮体ブロックの厚みが110mmであり、浮体の直径は360mmとなっている。
枠体115への浮体100の取り付けには、主にエポキシ樹脂などの接着剤が使われ、枠体と浮体、浮体上下は接着により一体化する。取り付けの強度、信頼性向上のためにジベル117も用いられる。
枠体115の表面に隙間なく密着するように浮体100が設置されるため、枠体115の鋼管は海水腐食環境に接触すること無く、腐食を回避することが可能となる。
浮体100には、人が乗って作業する、流木が衝突する、鳥が止まってついばむ、大きな波力を受ける等により損傷する恐れがあるが、浮体100に使われる発泡樹脂体の材料強度は十分に大きくはないため、任意の表面補強材103によって被覆・補強する。
表面補強材103は、長期の耐用性を得るためにはウレタンなどの樹脂によるコーティングが望ましいが、繊維の布を軟質の合成樹脂フィルムによって挟んだ、いわゆるターポリンシートなどの耐水性の布帛であってもよく、その具体的な材料は問わない。
枠体115には、間隔をあけて、上方に向けて、支柱112を取り付けるための浮体から露出する管状の支柱支持金具113と、水平方向外向きに浮体から露出する係留金具13及び中間吊り金具14と、が設けられる。
支柱支持金具113は支柱を支えるための金具であり、係留金具13はロープやワイヤーを通してアンカーに固定し、生簀を係留するための金具であり、中間吊り金具14は網の形状を保つために網の底部に重りとして設置する底枠を吊り下ろすための金具である。これらの金具は鋼などの金属を用いて形成される。
支柱112は鉛直方向上方に延びる垂直部と、生簀用枠体1の内側方向に傾く傾斜部とを有する。支柱112は垂直部を支柱支持金具113に挿入して、ボルト114などの取り付け具によって取り付けられる。
支柱112の上端には網116を係止するための上枠12が取り付けられる。
上枠12は、強度と剛性を確保する点から、閉鎖環状に形成される。
金属によって形成される部分には亜鉛メッキがなされる。以下、支柱支持金具113、係留金具13、中間吊り金具14など、金属によって形成される部分を金具という。
図2に示すように、本実施形態の生簀用枠体1は、下方の一部が海中部Bに潜り、他の部分は海面Aより上に出る。海水の飛沫が届きにくい部分である海塩粒子帯部Dは比較的腐食が起こりにくいが、海水の飛沫がかかる部分である飛沫部Cは腐食が起こりやすい。
従って、少なくとも飛沫部Cに位置する金属である係留金具13、中間吊り金具14、及び支柱支持金具113は腐食を見込み、腐食代の分だけ厚く形成される。
ここで、飛沫部Cにおける鋼材の腐食速度は、約0.272mm/yrであると実測されている。
金属部分に施される亜鉛メッキは、飛沫部Cにおいての防食寿命が約5年とされている。
従って、本実施形態においては、防食速度に基づいて算出される腐食代の分だけ金属部分の厚さを、強度及び剛性を基準とした設計板厚より厚くする。
具体的には、10年の耐用年数を得ようとする場合、以下の式(1)により金属部分の厚さを、設計板厚より腐食代分だけ厚くする。
金属部分の厚さ=設計板厚+腐食代
=設計板厚+(想定寿命−亜鉛メッキの防食寿命)×防食速度
=設計板厚+(10−5)×0.272mm ・・・(1)
=設計板厚+(想定寿命−亜鉛メッキの防食寿命)×防食速度
=設計板厚+(10−5)×0.272mm ・・・(1)
なお、腐食代の分だけ厚くする代わりに、飛沫部Cの金属部分を耐水性の樹脂によってライニングしたりコーティングしたりすることもできる。
また、金属部分にステンレスを用いて耐食性を確保することもできる。
以上述べたように、本実施形態の生簀用枠体1は、鋼管によって形成される枠体115と、枠体115の全長にわたって枠体115の表面に隙間なく密着するように設置される浮体100と、浮体100から露出し、少なくとも海水の飛沫部の金属部分が、強度及び剛性を基準とした設計板厚より防食速度に基づいて算出される腐食代の分だけ厚い金具(例えば、係留金具13、中間吊り金具14、及び支柱支持金具113)とを備える。
従って、本実施形態によれば、耐食性に優れ、長期使用に耐える生簀用枠体1を提供することができる。
1 生簀用枠体
10 枠体部
11 支柱部
12 上枠
13 係留金具
14 中間吊り金具
100 浮体
103 表面補強材
112 支柱
113 支柱支持金具
114 ボルト
115 枠体
116 網
117 ジベル
A 海面
B 海中部
C 飛沫部
D 海塩粒子帯部
10 枠体部
11 支柱部
12 上枠
13 係留金具
14 中間吊り金具
100 浮体
103 表面補強材
112 支柱
113 支柱支持金具
114 ボルト
115 枠体
116 網
117 ジベル
A 海面
B 海中部
C 飛沫部
D 海塩粒子帯部
Claims (4)
- 鋼管によって形成される枠体と、
前記枠体の全長にわたって前記枠体の表面に隙間なく密着するように設置される浮体と、
前記浮体から露出し、少なくとも飛沫部にある金属部分が、強度及び剛性を基準とした設計板厚より防食速度に基づいて算出される腐食代の分だけ厚い金具と、を備える生簀用枠体。 - 前記金具は、
前記浮体から露出し、少なくとも海水の飛沫部にある金属部分が、樹脂によってコーティングされる請求項1に記載の生簀用枠体。 - 前記金具は、
前記浮体から露出し、少なくとも海水の飛沫部にある金属部分が、ステンレスによって形成される請求項1に記載の生簀用枠体。 - 前記浮体は、
樹脂によってコーティングされる請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の生簀用枠体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018242037A JP2020103047A (ja) | 2018-12-26 | 2018-12-26 | 生簀用枠体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018242037A JP2020103047A (ja) | 2018-12-26 | 2018-12-26 | 生簀用枠体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2020103047A true JP2020103047A (ja) | 2020-07-09 |
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---|---|---|---|
JP2018242037A Pending JP2020103047A (ja) | 2018-12-26 | 2018-12-26 | 生簀用枠体 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2020103047A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6903811B1 (ja) * | 2020-12-08 | 2021-07-14 | マルハニチロ株式会社 | 生簀 |
-
2018
- 2018-12-26 JP JP2018242037A patent/JP2020103047A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP6903811B1 (ja) * | 2020-12-08 | 2021-07-14 | マルハニチロ株式会社 | 生簀 |
JP2022090823A (ja) * | 2020-12-08 | 2022-06-20 | マルハニチロ株式会社 | 生簀 |
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