以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
<システムの構成>
(全体構成)
図1は、ボール推奨システムの全体構成を説明するための図である。図1を参照して、ボール推奨システム1000は、ゴルファがボール54を打撃する際のスイングを解析し、当該ゴルファに適したゴルフボールを示す情報を提示する。具体的には、ボール推奨システム1000は、ボール推奨装置10と、センサ装置20とを含む。
ゴルフクラブ50は、シャフト52と、シャフト52の一端に設けられたヘッドと、シャフト52の他端に設けられたグリップとを含む。ゴルフクラブ50は、ゴルファ自身が用意したもの、他の者が用意したもの等、いずれのゴルフクラブであってもよい。なお、ボール54も、ゴルファ自身が用意したもの、他の者が用意したもの等、いずれのゴルフボールであってもよい。
ボール推奨装置10は、スマートフォンで構成される。ただし、ボール推奨装置10は、種類を問わず任意の装置として実現できる。例えば、ボール推奨装置10は、ラップトップPC(personal Computer)、タブレット端末、デスクトップPCなどの機器であってもよい。
ボール推奨装置10は、Bluetooth(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)、赤外線通信などの無線通信を利用してセンサ装置20と通信する。なお、ボール推奨装置10は、USB(Universal Serial Bus)などの有線通信を利用してセンサ装置20と通信可能に構成されていてもよい。
図2は、センサ装置20の外観を示す図である。具体的には、図2は、図1中のセンサ装置20の拡大図である。センサ装置20は、グリップの上端部から、例えば、約12インチ〜15インチに位置する部分にセンサ装置20の重心が位置するようにシャフト52に装着される。ゴルフクラブ50は、グリップの端部から、例えば、14インチのところで重量バランスがとれており、この部分に重り等を装着してもゴルフクラブ50全体の重量バランスに大きな影響がない。このため、上記の位置にセンサ装置20を装着することで、センサ装置20が装着される前後において、ゴルフクラブ50の特性が大きく変化することが抑制される。
センサ装置20は、加速度センサと、角速度センサと、歪センサとを含む。センサ装置20は、各センサにより検出されたセンサデータ、およびセンサデータに基づく演算結果等をボール推奨装置10に送信する。ボール推奨装置10は、センサ装置20から各種情報を受信して、ゴルファのスイング解析等の各種処理を実行する。
(ハードウェア構成)
図3は、ボール推奨装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図3を参照して、ボール推奨装置10は、主たる構成要素として、プロセッサ102と、メモリ104と、タッチパネル106と、ボタン108と、ディスプレイ110と、無線通信部112と、通信アンテナ113と、メモリインターフェイス(I/F)114と、スピーカ116と、マイク118と、通信インターフェイス(I/F)120とを含む。また、記録媒体115は、外部の記憶媒体である。
プロセッサ102は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Multi Processing Unit)といった演算処理部である。プロセッサ102は、メモリ104に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、ボール推奨装置10の各部の動作を制御する。より詳細にはプロセッサ102は、当該プログラムを実行することによって、後述するボール推奨装置10の処理(ステップ)の各々を実現する。
メモリ104は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、フラッシュメモリなどによって実現される。メモリ104は、プロセッサ102によって実行されるプログラム、またはプロセッサ102によって用いられるデータなどを記憶する。
タッチパネル106は、表示部としての機能を有するディスプレイ110上に設けられており、抵抗膜方式、静電容量方式などのいずれのタイプであってもよい。ボタン108は、ボール推奨装置10の表面に配置されており、ユーザからの指示を受け付けて、プロセッサ102に当該指示を入力する。
無線通信部112は、通信アンテナ113を介して移動体通信網に接続し無線通信のための信号を送受信する。これにより、ボール推奨装置10は、例えば、LTE(Long Term Evolution)などの移動体通信網を介して所定の外部装置との通信が可能となる。
メモリインターフェイス(I/F)114は、外部の記録媒体115からデータを読み出す。すなわち、プロセッサ102は、メモリインターフェイス114を介して外部の記録媒体115に格納されているデータを読み出して、当該データをメモリ104に格納する。プロセッサ102は、メモリ104からデータを読み出して、メモリインターフェイス114を介して当該データを外部の記録媒体115に格納する。
記録媒体115としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカード、FD(Flexible Disk)、ハードディスクなどの不揮発的にプログラムを格納する媒体が挙げられる。
スピーカ116は、プロセッサ102からの命令に基づいて音声を出力する。マイク118は、ボール推奨装置10に対する発話を受け付ける。
通信インターフェイス(I/F)120は、例えば、ボール推奨装置10とセンサ装置20との間でデータを送受信するための通信インターフェイスであり、アダプタやコネクタなどによって実現される。通信方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)、無線LANなどによる無線通信あるいはUSBを利用した有線通信である。
図4は、センサ装置20のハードウェア構成を示すブロック図である。図4を参照して、センサ装置20は、主たる構成要素として、各種処理を実行するためのプロセッサ202と、プロセッサ202によって実行されるプログラム、データなどを格納するためのメモリ204と、加速度センサ206と、角速度センサ208と、ボール推奨装置10と通信するための通信インターフェイス(I/F)212と、センサ装置20の各種構成要素に電力を供給する蓄電池214と、LED(light emitting diode)216とを含む。
加速度センサ206は、互いに直交する3軸方向の加速度(以下「加速度情報」とも称する。)を検出する。角速度センサ208は、互いに直交する3軸まわりの角速度(以下「角速度情報」とも称する。)を検出する。
図5は、ローカル座標系およびグローバル座標系を説明するための図である。図5を参照して、センサ座標系(ローカル座標系)におけるx軸はシャフト52の長手方向に設定され、y軸およびz軸はそれぞれ任意に設定される。絶対座標系(グローバル座標系)におけるZ軸は鉛直方向に設定され、Y軸はゴルファのスイング方向に設定され、X軸はY軸およびZ軸の垂直方向に設定される。
再び、図4を参照して、歪センサ210は、シャフト52の打球方向およびトウダウン方向の各歪み量を検出する。具体的には、歪センサ210は、シャフト52に装着された2つの歪ゲージ(打球方向用歪みゲージ)および歪ゲージ(トウダウン用歪みゲージ)を含む。
<システムの動作概要>
図6は、ボール推奨システム1000の動作概要を説明するためのフローチャートである。ここでは、図1に示すように、ゴルファが地面に置かれたボール54をゴルフクラブ50で打撃する場面を想定する。ここでは、ゴルファがスイングするゴルフクラブ50は、例えば、7番アイアンである。なお、ゴルフクラブ50は、6番アイアン等の他の番手であってもよいし、ドライバー等のウッドであってもよい。ボール推奨装置10およびセンサ装置20は、互いに通信可能な状態であるとする。
図6を参照して、ゴルフクラブ50のシャフト52に取り付けられたセンサ装置20は、加速度情報、角速度情報を時系列に検出する(ステップS100)。具体的には、センサ装置20は、サンプリング周期(例えば、1ms)ごとにセンサ座標系(ローカル座標系)における加速度情報および角速度情報を検出する。センサ装置20は、検出した加速度情報および角速度情報をボール推奨装置10に送信する(ステップS110)。
ボール推奨装置10は、センサ装置20から取得した加速度情報および角速度情報に基づいて、スイング期間におけるゴルフクラブ50のヘッドスピードおよび姿勢情報を算出する(ステップS120)。具体的には、ボール推奨装置10は、インパクト時(すなわち、打球時)におけるゴルフクラブ50のヘッドの姿勢角を算出する。姿勢角は、インパクト時におけるライ角、アタック角、シャフトリーン角、およびフェース角(より詳細には、後述する相対フェース角)を含む。なお、本願明細書において、「インパクト時」とは、インパクトと同時またはインパクト時刻から所定の時間(例えば、1/1000秒程度)だけ前(すなわち、インパクト直前)の時点を意味する。
例えば、シャフトリーン角は1/1000秒前のデータを用いて算出され、アタック角は2/1000秒前から1/1000秒前までの期間のデータを用いて算出されてもよい。あるいは、5/1000秒前から1/1000秒前の期間のデータを用いて回帰曲線を求めることでインパクト時のシャフトリーン角およびアタック角を求めてもよい。
図7は、ライ角、アタック角、シャフトリーン角、フェース角およびスイングパス(入射角)を説明するための図である。図7では、地面(例えば、水平面)上の一方の軸をBx軸、Bx軸に垂直な地面上の他方の軸をBy軸、Bx軸およびBy軸に垂直な方向をBz軸とする座標系を定義する。地面に対し垂直方向から見たときの方向(−Bz方向)を平面視と称する。また、Bx軸をターゲットライン方向と定義する。ターゲットライン方向は、例えば、平面視における打球の目標方向である。具体的には、図7(a)は、インパクト時のライ角を示す図である。図7(b)は、インパクト時のアタック角およびシャフトリーン角を示す図である。図7(c)は、インパクト時のフェース角およびスイングパスを示す図である。
図7(a)を参照して、インパクト時のライ角は、地面(図中のBxBy平面)に対する、ゴルフクラブ50のシャフト52(具体的には、シャフトセンターライン)の角度θ1として定義される。
図7(b)を参照して、インパクト時のアタック角は、地面に対して垂直な仮想垂直面(図中のBxBz平面)に投影された、ゴルフクラブ50のヘッドのスイング軌跡に接するインパクト時の接線方向(スイングライン方向)と、当該仮想垂直面に投影されたターゲットライン方向とが成す角度θ2として定義される。換言すると、インパクト時のアタック角θ2は、インパクト時における地面に対するスイング軌道の方向の角度である。
本実施の形態では、スイングラインの傾きが負の値の場合(図7(b)に示す場合)にはアタック角θ2が負の値、スイングラインの傾きが正の値の場合にはアタック角θ2が正の値とする。具体的には、ヘッドがボールに対して斜め下方向に入射するダウンブローの場合にはアタック角θ2<0°であり、ヘッドがボールに対して水平に入射するレベルブローの場合にはアタック角θ2=0°であり、ヘッドがボールに対して斜め上方向に入射するアッパーブローの場合にはアタック角θ2>0°である。
図7(b)を参照して、インパクト時のシャフトリーン角は、ターゲットライン方向に垂直な仮想面J1に対するシャフト52の角度θ3として定義される。換言すると、インパクト時のシャフトリーン角θ3は、インパクト時における地面に対して垂直な仮想面J1に対するシャフト52の角度である。本実施の形態では、シャフトセンターラインの傾きが正の値の場合(図7(b)に示す場合)にはシャフトリーン角θ3が負の値、シャフトセンターラインの傾きが負の値の場合にはシャフトリーン角θ3が正の値とする。
図7(c)を参照して、インパクト時のフェース角は、ターゲットライン方向に直交する仮想面J2に対するゴルフクラブ50のフェース面の角度θ4として定義される。本実施の形態では、フェース面の傾きが正の値の場合(図7(c)に示す場合)にはフェース角θ4が正の値、フェース面の傾きが負の値の場合にはフェース角θ4が負の値とする。
インパクト時のスイングパス(入射角)は、スイングライン方向に対するターゲットライン方向との成す角度θ5として定義される。本実施の形態では、スイングライン方向の傾きが正の値の場合(図7(c)に示す場合)にはスイングパスθ5が負の値、スイングライン方向の傾きが負の値の場合にはスイングパスθ5が正の値とする。
フェース角θ4は、ヘッドの打撃点への入射方向(スイングライン方向)と関係なく向きが固定されているターゲットライン方向を基準とするフェース面の傾きを表わしている。一方、スイングライン方向を基準としたフェース面の傾きを表わす相対的なフェース角(以下、「相対フェース角」とも称する。)は、フェース角θ4からスイングパスθ5を減算した角度である。なお、相対フェース角は、フェーストゥパス角とも呼ばれる。
再び、図6を参照して、ボール推奨装置10は、ステップS120で算出された姿勢情報およびヘッドスピードに基づいて、ゴルファが所有するドライバーでボール54を打撃したと仮定した場合の当該ドライバーの姿勢情報およびヘッドスピードを算出する(ステップS130)。
図8は、異なるクラブ間のシャフトリーン角およびアタック角の関係を示す図である。図8を参照して、ステップS120において、ゴルフクラブ50(7番アイアン)でボール54を打撃したときのシャフトリーン角が−3.0°、アタック角が−1.0°と算出されたとする。この場合、各姿勢角用の所定の関係式を用いると、ドライバー(1番ウッド)でボール54を打撃したと仮定したときのシャフトリーン角が6.0°、アタック角が2.0°と算出される。なお、各姿勢角用の所定の関係式は、ゴルファが所有するドライバーのスペック情報(例えば、クラブ長さ等)に応じて定義される。
同様に、ステップS120において、7番アイアンでボール54を打撃したときのヘッドスピードが38m/sと算出されたとする。この場合、ヘッドスピード用の所定の関係式を用いると、ドライバーでボール54を打撃したと仮定したときのヘッドスピードが45m/sと算出される。なお、ヘッドスピード用の所定の関係式は、ゴルファが所有するドライバーのスペック情報に応じて定義される。
再び、図6を参照して、ボール推奨装置10は、ゴルファが所有するドライバーのスペック情報、ステップS130で算出された姿勢情報およびヘッドスピードに基づいて、当該ドライバーで打撃されたボール54の最大弾道高さを算出する(ステップS140)。
最大弾道高さは、打球初期条件によって決定される。主な打球初期条件は、ボール初速、打ち出し角、バックスピンである。ボール初速、打ち出し角、およびバックスピンが三次元弾道シミュレーション関数(弾道方程式)に入力されることにより、予測最大弾道高さが算出される。三次元弾道方程式は、実測およびシミュレーションの組み合わせによって作成される。
ボール初速は、各種情報が、予め定められたボール初速予測関数に入力されることにより算出される。各種情報は、ドライバーのスペック情報(例えば、クラブの長さ、クラブの質量、重心深度、左右方向慣性モーメント、上下方向慣性モーメント、反発係数、すべり係数)と、インパクト時のヘッドスピード(すなわち、ステップS130で算出されたヘッドスピード)、インパクト時のアタック角(すなわち、ステップS130で算出されたアタック角)、およびインパクト時のロフト角を含む。ドライバーのスペック情報は、ボール推奨装置10のメモリ104に予め格納されている。
なお、インパクト時のロフト角は、ドライバーのロフト角(オリジナルロフト角)と、インパクト時のシャフトリーン角(すなわち、ステップS130で算出されたシャフトリーン角)とに基づいて算出される。ボール初速予測関数は、シミュレーションによって作成される。
打ち出し角は、上記各種情報が、予め定められた打ち出し角予測関数に入力されることにより算出される。打ち出し角予測関数は、シミュレーションによって作成される。
バックスピンは、上記各種情報が、予め定められたバックスピン予測関数に入力されることにより算出される。バックスピン予測関数は、シミュレーションによって作成される。
ボール推奨装置10は、タッチパネル106を介してユーザからの指示を受け付けて、ゴルファに適したゴルフボールを推奨するための画面を表示する(ステップS150)。
<各処理の詳細>
以下、ボール推奨システム1000で実行される各処理の詳細について説明する。
(静止検出)
ここでは、スイング直前の静止状態の検出方式について説明する。ゴルファがゴルフクラブをスイングする際には、概ね以下のような手順で行なわれる。具体的には、ゴルファは、ゴルフクラブを握り、アドレスの姿勢をとった後、スイング動作を行なって、ゴルフボールを打球する。
ボール推奨装置10は、センサ装置20から取得したセンサデータ(例えば、加速度情報および角速度情報)に基づいて、時系列にスイング解析情報(例えば、姿勢情報、ヘッドスピード等)を算出する。例えば、スイングの準備中(例えば、ワッグル動作中)をスイング開始時点に設定すると、積分誤差等が蓄積されて適切なスイング解析情報が得られない可能性があるため、スイング直前の静止状態(すなわち、スイング開始時点)を精度よく検出する必要がある。
図9は、静止検出方式を説明するための図である。図9における横軸は時刻T(s)を示しており、縦軸は、互いに直交する3軸まわり(センサ座標系)の角速度(deg/s)および合成角速度を示している。
図9に示すグラフには、ゴルファがゴルフクラブ50をスイングしてボール54を打撃したときの角速度情報が示されている。ボール推奨装置10は、インパクト時刻から所定時間(例えば、0.5秒)だけ前の時刻から時間を遡って、合成角速度Wが基準閾値Th(例えば、20deg/s)未満になる時刻t1を算出する。
x軸まわりの角速度ωx、y軸まわりの角速度ωy、z軸まわりの角速度ωzとすると、合成角速度Wは以下の式(1)で表される。
次に、インパクト時刻について説明する。インパクト時にはセンサ装置20の加速度センサ206の信号がボールを打った衝撃によって過渡応答するため、加速度が急激に変化する。そこで、ボール推奨装置10は、合成加速度ACの単位時間当たりの変化量が閾値(例えば、500)以上になった時刻をインパクト時刻として算出する。
x軸方向の加速度ax、y軸方向の加速度ay、z軸方向の加速度azとすると、合成加速度ACは以下の式(2)で表される。
ボール推奨装置10は、算出した時刻t1よりも時間Ta(例えば、0.2秒)だけ過去の時刻t2から、時刻t1よりも時間Tb(例えば、−0.1秒)だけ過去の時刻t3までの期間Tcを、ゴルファが静止している期間(静止期間)として算出する。
(姿勢角の算出)
ボール推奨装置10は、加速度情報および角速度情報に基づいて、センサ装置20の姿勢情報を算出する。ここで、センサ装置20の姿勢情報である方向余弦行列Rqは以下の式(3)のように表わされる。
図5に示すように、センサ座標系(ローカル座標系)におけるx軸はシャフト52の長手方向に設定されている。そのため、センサ装置20の姿勢情報(すなわち、方向余弦行列Rq)を用いてゴルフクラブ50の姿勢角を算出できる。具体的には、方向余弦行列Rqの各成分を用いて、ゴルフクラブ50のライ角A_LIE、シャフトリーン角A_SL、およびフェース角A_FAは、それぞれ以下の式(4)、式(5)および式(6)のように表わされる。
ボール推奨装置10(のプロセッサ102)は、静止期間Tcにおける時系列の加速度情報(3軸方向の加速度)を平均化し、当該平均化された加速度情報に基づいて、センサ装置20の初期姿勢である方向余弦行列Rq0を算出する。プロセッサ102は、方向余弦行列Rq0および上述した式(4)〜(6)を用いて、ライ角A_LIE、シャフトリーン角A_SL、およびフェース角A_FAの初期値(すなわち、初期姿勢角)を算出する。プロセッサ102は、図9中の時刻t3をスイング開始時刻に設定する。
プロセッサ102は、スイング開始時刻からインパクト時までのスイング期間における方向余弦行列Rqを時系列に算出する。概ね以下のような流れで方向余弦行列Rqが時系列に算出される。
センサ座標系の加速度情報が、方向余弦行列Rqを用いてグローバル座標系の加速度情報(加速度ベクトル)に変換される。続いて、センサ装置20からゴルフクラブ50のヘッド中心へのベクトルr(センサ座標系)が、方向余弦行列Rqを用いてグローバル座標系に変換される。
次に、3軸周りの角速度に基づいて、センサ座標系の回転単位ベクトルuおよび単位当たりの回転角αが算出される。方向余弦行列Rqを用いてセンサ座標系の回転単位ベクトルuがグローバル座標系に変換され、グローバル座標系に変換された回転単位ベクトルugおよび回転角αを用いて、グローバル座標系の角速度ベクトルωgが算出される。
次に、回転単位ベクトルugにロドリゲスの回転公式を用いて、変換行列Rが求められる。そして、変換行列Rを用いて方向余弦行列Rqを回転させた方向余弦行列Rq1が算出される。方向余弦行列Rq1を用いて、上述した処理が繰り返される。これにより、方向余弦行列Rqが時系列に算出される。
一方、プロセッサ102は、グローバル座標系の加速度情報(加速度ベクトル)を時間積分して、グローバル座標系のセンサ装置20の速度情報(速度ベクトルV)を算出する。プロセッサ102は、グローバル座標系の速度ベクトルV、角速度ベクトルωg、およびセンサ装置20からヘッド中心へのベクトルrとに基づいて、ヘッド速度ベクトルVhを算出する。ヘッド速度ベクトルVhのX成分、Y成分およびZ成分をVhx、Vhy、Vhzとすると、ヘッドスピードVhsは、以下の式(7)で表される。
速度ベクトルVの各成分を用いて、ゴルフクラブ50のアタック角A_AT、スイングパスSWPは、それぞれ以下の式(8)、式(9)のように表わされる。
そして、インパクト時の方向余弦行列Rqiと、式(4)および(5)とに基づいて、インパクト時のライ角Lc、シャフトリーン角SLc、フェース角FAcが算出される。インパクト時の速度ベクトルVと、式(8)および(9)とに基づいて、インパクト時のアタック角ATc、スイングパスSWcが算出される。インパクト時の相対フェース角Frcは、フェース角FAcからスイングパスSWcを減算した値に相当する。
(フィッティング)
ここでは、ゴルファに適するゴルフボールがフィッティングされるまでの流れについて説明する。以下の説明では、ボール推奨装置10のユーザは、フィッターであると仮定する。また、ゴルフクラブ50は、7番アイアンであるとする。
フィッターは、ディスプレイ110に表示されたアイコンを選択して、スイング解析用のアプリケーションの起動指示を行なう。ボール推奨装置10は、起動指示を受け付けるとログイン画面を表示して、所定のユーザIDおよびパスワードの入力を受け付ける。ボール推奨装置10は、ログイン認証が成功した場合、トップ画面1200を表示する。
図10は、トップ画面の一例を示す図である。図10を参照して、トップ画面1200は、ウッドの計測値入力を受け付けるボタン1202と、アイアンの計測値入力を受け付けるボタン1204と、過去の測定履歴を表示するためのボタン1206とを含む。本実施の形態では、ボタン1204が選択される場合について説明する。
ボール推奨装置10は、ボタン1204の選択を受け付けると、センサ装置20との通信を確立する。典型的には、ボール推奨装置10およびセンサ装置20は、ペアリング接続される。ボール推奨装置10は、ペアリング接続が完了すると、ゴルファに関する各種情報の入力画面を表示する。ボール推奨装置10は、入力画面において、タッチパネル106を介して、ゴルファの名前、年齢、性別、メールアドレス、身長、利き手、平均スコア、平均ラウンド数、およびフィッターの名前等の情報を受け付ける。フィッターが入力画面において所定のボタンを選択すると測定画面が表示される。
図11は、測定画面の一例を示す図である。図11を参照して、測定画面1300は、測定結果が表示される結果領域1302と、測定を開始するための開始ボタン1304と、測定をキャンセルするためのボタン1306と、ウッドシャフトの推奨画面に遷移するための遷移ボタン1308と、アイアンシャフトの推奨画面に遷移するための遷移ボタン1310とを含む。
ボール推奨装置10は、開始ボタン1304を受け付けると、「静止して下さい」、「ショットして下さい」等のメッセージをゴルファに報知する。ゴルファは、当該メッセージに従って、センサ装置20が装着されたゴルフクラブ50を用いて、アドレスの姿勢をとった後、スイング動作を行なってゴルフボールをショットする。
ボール推奨装置10は、センサ装置20から受信した各種情報に基づいて、スイング解析処理を実行し、当該解析結果を測定結果として表示する。具体的には、結果領域1302には、インパクト時の「ヘッドスピード」と、スイング中の最大しなり量を示す「スイングテンポ」と、インパクト時の「前反り角度」と、インパクト時の「トウダウン量」と、インパクト時の「しなり係数」と、インパクト時の「ライ角」と、インパクト時の「シャフトリーン角」と、インパクト時の「アタック角」と、インパクト時の「相対フェース角」とが表示される。ヘッドスピード、ライ角、シャフトリーン角、アタック角および相対フェース角については、上述の方式を用いて算出される。なお、顧客への説明を容易化するため、相対フェース角については、単に「フェース角」と表示されている。
スイングテンポ、前反り角度、トウダウン量、およびしなり係数の各測定値は、歪センサ210を用いてセンサ装置20により算出される。スイングテンポ、前反り角度、トウダウン量の算出方法については、例えば、特開2010−187749号公報に開示されている。また、しなり係数の算出方法については、特開2010−187749号公報において、ベンディングポイント想定値の算出方法として開示されている。
図11には、ゴルファにより1回目のスイング動作の解析が実行され、各測定結果が表示されている場面を示している。ゴルファによりスイングが行われるごとに、測定結果が追加される。また、各測定結果の平均値も表示される。ゴルファのスイングが終了すると、フィッターは、遷移ボタン1310を選択する。
図11に示す測定結果に基づいて、アイアンシャフト推奨画面(図示しない)ではゴルファに適したアイアンシャフトが推奨され、アイアンヘッド推奨画面(図示しない)ではゴルファに適したアイアンヘッドが推奨される。ゴルファは、推奨されたアイアンシャフトおよびアイアンヘッドを所定の選択画面にて選択する。さらに、ゴルファは、グリップ選択画面において、グリップを選択する。そうすると、フィッターの指示に従って、図12に示すアイアンの確認画面が表示される。
図12は、選択したアイアンの確認画面の一例を示す図である。図12を参照して、確認画面1450は、選択されたアイアンのモデル、番手、シャフト、およびグリップを表示する領域1454と、選択されたゴルフボールを表示する領域1456と、ゴルフボールの選択画面を表示するためのボタン1458と、トップ画面へ戻るためのボタン1460と、前の画面へ戻るためのボタン1462と、アイアンの選択画面に戻るための遷移ボタン1464と、ウッドの選択画面に遷移するための遷移ボタン1466と、完了ボタン1468とを含む。
図12を参照して、確認画面1450では、ゴルフボールが未選択の状態であるため、領域1456にはグレースケールでボール名が表示される。具体的には、後述する推奨方式に従って、ボール推奨装置10によって推奨されるボール名(すなわち、ボールA2)が示されている。フィッターがボタン1458を選択すると、ゴルフボールの選択画面が表示される。
図13は、ゴルフボールの選択画面の一例を示す図である。典型的には、ボール推奨装置10は、ボタン1458の選択を受け付けると、選択画面1530をポップアップ表示する。図13を参照して、選択画面1530は、ゴルファに推奨されるゴルフボールのタイプを示す領域1532と、ゴルファに対して推奨されるゴルフボールを示す領域1534と、ゴルフボールを選択するための選択領域1536とを含む。
具体的には、領域1532には、予め用意された複数のボールA1〜A3の各々がスピンがかかり難い(スピン量の少ない)ボールなのかスピンがかかり易い(スピン量の多い)ボールなのかを示す情報、およびその打感がソフトなのかハードなのかを示す情報が表示される。例えば、ボールA2は、比較的スピンがかかり易く、打感がソフトなタイプのゴルフボールである。
領域1534には、ヘッドスピードおよび最大弾道高さに基づいて、ゴルファに適したゴルフボールを推奨するためのグラフ30が示されている。グラフ30は、ゴルフボールの飛距離に関する第1の指標であるドライバーのヘッドスピードを横軸、当該飛距離に関する第2の指標であるゴルフボールの最大弾道高さを縦軸とするグラフである。
本願発明者が鋭意検討した結果、ドライバーのヘッドスピードと、当該ドライバーで打撃されたゴルフボールの最大弾道高さとの関係性が、当該ゴルフボールの飛距離に大きく影響を与えることが判明した。そこで、3種類のヘッドスピードおよび3種類の弾道高さ設定に従って、ゴルフロボットにボールA1〜A3を試打させて、弾道計測器を用いて各ボールA1〜A3の飛距離を実測した。この飛距離の実測結果に基づいてボールA1〜A3の適性が評価された。
図14は、複数のゴルフボールの評価結果を示す図である。図14を参照して、ヘッドスピードは、SLOW(例えば、38m/s)、STANDARD(例えば、43m/s)およびFAST(例えば、47m/s)の3種類のいずれかに設定される。最大弾道高さは、HIGH、MIDおよびLOWの3種類のいずれかに設定される。
図14では、例えば、ヘッドスピード「SLOW」および最大弾道高さ「HIGH」の設定でゴルフロボットにボールA1〜A3の各々を試打させた場合、3つのボールA1〜A3のうちボールA2が最も飛距離が大きかったことを示している。他の例として、ヘッドスピード「FAST」および最大弾道高さ「MID」の設定でゴルフロボットにボールA1〜A3の各々を試打させた場合、ボールA1が最も飛距離が大きかったことを示している。
図14の評価結果によると、ヘッドスピードが「SLOW」から「STANDARD」であり、かつ最大弾道高さが「MID」から「HIGH」の場合、3つのボールA1〜A3のうち飛距離を最大化する(飛距離が最も伸びる)ゴルフボールは、ボールA2であることが示唆されている。また、ヘッドスピードが「SLOW」から「STANDARD」であり、かつ最大弾道高さが「LOW」から「MID」の場合、飛距離が最も伸びるゴルフボールはボールA3であることが示唆されている。ヘッドスピードが「FAST」であり、かつ最大弾道高さが「MID」の場合、飛距離を最大化するゴルフボールは、ボールA1であることが示唆されている。
上記評価結果に続いて、本願発明者は、過去数万人のゴルファに試打してもらった際に計測した各種パラメータを用いて、各ボールA1〜A3について弾道シミュレーションを行なった。そして、弾道シミュレーション結果により、「ヘッドスピードおよび最大弾道高さ」の組み合わせごとに、3つのボールA1〜A3から最大飛距離となるボールを特定してプロットした。その結果を図15に示す。
図15は、複数のゴルフボールのシミュレーション結果を示す図である。図15を参照して、3つのボールA1〜A3のうちボールA1が最大飛距離となる座標(ヘッドスピード,最大弾道高さ)を示すプロット点は、領域Ea1に密集している。また、ボールA2が最大飛距離となる座標を示すプロット点は領域Ea2に密集しており、ボールA3が最大飛距離となる座標を示すプロット点は領域Ea3に密集している。
領域Xa1は、ボールA1が最大飛距離となる全座標の平均値を中心とする所定半径の円である。領域Xa2は、ボールA2が最大飛距離となる全座標の平均値を中心とする所定半径の円である。領域Xa3は、ボールA3が最大飛距離となる全座標の平均値を中心とする所定半径の円である。
上記シミュレーション結果によると、ヘッドスピードが大きく、かつ最大弾道高さが中弾道である領域(すなわち、領域Ea1)においては、飛距離を最大化するゴルフボールはボールA1であることが示唆される。最大弾道高さが大きい領域(すなわち、領域Ea2)においては、飛距離を最大化するゴルフボールはボールA2であることが示唆される。ヘッドスピードが比較的遅く、かつ最大弾道高さが比較的低い領域(すなわち、領域Ea3)では、飛距離を最大化するゴルフボールはボールA3であることが示唆される。
したがって、図15のシミュレーション結果は、図14の評価結果と概ね同じ傾向を示しており、妥当性を有すると考えられる。
再び、図13を参照して、グラフ30には、図15のシミュレーション結果に基づいてボールA1〜A3に対応する領域Xa1〜Xa3が描画されている。具体的には、領域Xa1は、ボールA1〜A3をドライバーで打撃したときに、ボールA1の飛距離が最大化される(例えば、ボールA1の飛距離が残りのボールA2,A3の飛距離よりも大きくなる)、ヘッドスピードおよび最大弾道高さ(の組み合わせ)を示す領域である。領域Xa2およびXa3についても同様である。
したがって、3つのボールA1〜A3のうち、ボールA1は、ドライバーのヘッドスピードが速く、低弾道から中間弾道のショットを打つ傾向のあるゴルファにとって、最も飛距離が伸びるボールである。ボールA2は、ドライバーのヘッドスピードが比較的速く、高弾道ショットを打つ傾向のあるゴルファにとって、最も飛距離が伸びるボールである。ボールA3は、ドライバーのヘッドスピードが比較的遅く、低弾道から中間弾道のショットを打つ傾向のあるゴルファにとって、最も飛距離が伸びるボールである。
グラフ30中の円領域1541は、ゴルファによるドライバーのヘッドスピードおよび最大弾道高さの算出結果に基づいて描画される。具体的には、ボール推奨装置10は、センサ装置20から受信した各種情報に基づいて、ゴルファがゴルフクラブ50(ここでは、7番アイアン)でボール54を試打したときのスイングを解析して、インパクト時のヘッドスピードと、ボール54の最大弾道高さを算出する。
ボール推奨装置10は、算出されたヘッドスピードおよび最大弾道高さに所定の関係式を適用して、ゴルファがドライバーでボール54を試打したと仮定した場合の当該ドライバーのヘッドスピードおよびボール54の最大弾道高さを算出する。ボール推奨装置10は、算出されたヘッドスピードおよび最大弾道高さに基づいてグラフ30上に円領域1541を表示する。
円領域1541(グラフ30中のハッチング部分)は、算出されたヘッドスピード(例えば、45.2m/s)と、算出された最大弾道高さ(例えば、33.9yard)とからなる点を中心とする所定半径の円である。円領域1541は、ゴルファに適したゴルフボールを示唆する情報となる。
領域Xa1〜Xa3は、それぞれボールA1〜A3の飛距離が最大化される、ヘッドスピードおよび最大弾道高さ(の組み合わせ)を示す領域である。そのため、領域Xa1〜Xa3のうち、円領域1541に最も近い領域に対応するボールが、飛距離を伸ばすという観点からゴルファに最も適しているといえる。より詳細には、グラフ30において、領域Xa1〜Xa3の各中心点のうち、円領域1541の中心点に最も近い中心点を有する領域Xa2に対応するボールA2が、ゴルファに最も適したゴルフボールとなる。なお、領域Xa1〜Xa3および円領域1541の各々の半径の大きさは、表示の便宜上任意に設定されるものであり、推奨するゴルフボールを判断する際に考慮されるものではない。
ボール推奨装置10は、ゴルファに推奨するゴルフボールがボールA2であると判断し、選択領域1536において、ボールA2の部分のみを太線で囲む強調表示を行なう。これにより、ボール推奨装置10によって推奨されるゴルフボールは、ボールA2であることが理解される。フィッターは、ゴルファがボールA2を選択することに同意した場合には、ボタン1546を押下してゴルフボールの選択画面1530を閉じる。ゴルファがボールA2を選択することに同意しなかった場合には、フィッターはその他のボールを選択し、ボタン1546を押下してゴルフボールの選択画面1530を閉じる。選択画面1530を閉じると、図16に示す確認画面が表示される。なお、図13の例では、選択領域1536において、ボールA1に対応するボタンがチェックされているため、ボールA1が選択された状態である。
図16は、選択したアイアンの確認画面の他の例を示す図である。図16に示すように、確認画面1450の領域1456において、フィッターが推奨するボールとして「ボールA1」が選択されたことを示す情報が表示される。これは、フィッターとゴルファとの相談の結果、最終的にボールA1が選択されたことを示している。具体的には、フィッターがボールA1を選択し、ボタン1546を押下してゴルフボールの選択画面1530を閉じた場合に図16に示す確認画面が表示される。
なお、ゴルファに適したゴルフボールを推奨するためのグラフは、図13中のグラフ30に限られず、他のグラフであってもよい。
図17は、ゴルフボールの選択画面の他の例を示す図である。図17を参照して、領域1534Aは、ゴルファに適したゴルフボールを推奨するためのグラフ30Aを含む。グラフ30Aは、図15のシミュレーション結果に基づいて、ボールA1〜A3にそれぞれ対応する領域Ya1〜Ya3に分割されている。領域Ya1は、ボールA1〜A3をドライバーで打撃したときに、ボールA1の飛距離が残りのボールA2,A3の飛距離よりも大きくなる、ヘッドスピードおよび最大弾道高さ(の組み合わせ)を反映した領域である。領域Ya2およびYa3についても同様である。
グラフ30Aにおいて、最大弾道高さが高い方向および低い方向を、それぞれ上方向および下方向と称し、ヘッドスピードが速い方向および遅い方向を、それぞれ右方向および左方向と称する。この場合、領域Ya1は、曲線601よりも下方向、かつ曲線602よりも右方向で規定される領域である。領域Ya2は、曲線601よりも上方向、かつ曲線602よりも上方向で規定される領域である。領域Ya3は、曲線602よりも下方向で規定される領域である。
グラフ30A中の円領域1541は、図13中の円領域1541と同一であり、ゴルファによるドライバーのヘッドスピードおよび最大弾道高さの算出結果を示している。例えば、領域Ya1〜Ya3のうち、円領域1541の中心を含む領域に対応するボールがゴルファに最も適したゴルフボールであることを示唆している。より詳細には、円領域1541は領域Ya1および領域Ya2に含まれているが、円領域1541の中心は領域Ya2に含まれている。そのため、領域Ya2に対応するボールA2が、ゴルファに最も適したゴルフボールとなる。
図18は、ゴルフボール選択画面に表示されるさらに他のグラフを示す図である。図18を参照して、グラフ30Bは、グラフ30,30Aとは異なり、最大弾道高さの1軸のみで描画されている。具体的には、グラフ30Bは、図13中の円領域1541において、ドライバーのヘッドスピードの算出値(例えば、45.2m/s)に対応する最大弾道高さを横軸としたグラフである。そのため、領域1610は、ヘッドスピードの算出値(例えば、45.2m/s)に対応する最大弾道高さを示す領域を示している。
また、領域Za1は、ボールA1〜A3をドライバーで打撃したときに、ボールA1の飛距離が最大化される、ヘッドスピードの算出値に対応する最大弾道高さを示す領域である。領域Za2およびZa3についても同様である。
図18によると、ボールA1が中弾道ショット、ボールA2が高弾道ショット、ボールA3が低弾道ショットに適していることが示されている。領域1610は、ゴルファのショットが高弾道であることを示しているため、ボールA2がゴルファに最も適したゴルフボールとなる。
<機能構成>
図19は、ボール推奨装置10の機能ブロック図である。図19を参照して、ボール推奨装置10は、主たる機能構成として、情報入力部150と、静止期間算出部152と、姿勢算出部154と、ヘッドスピード算出部156と、弾道算出部158と、推奨部162とを含む。これらは、基本的には、ボール推奨装置10のプロセッサ102がメモリ104に格納されたプログラムを実行し、ボール推奨装置10の構成要素へ指令を与えることなどによって実現される。なお、これらの機能構成の一部または全部は、ハードウェアで実現されていてもよい。また、ボール推奨装置10は、メモリ104で実現される情報格納部160をさらに含む。
情報入力部150は、ゴルフクラブ50に取り付けられたセンサ装置20により検出された加速度情報および角速度情報の入力を受け付ける。なお、情報入力部150は、センサ装置20により算出された「スイングテンポ」、「前反り角度」、「トウダウン量」、および「しなり係数」の入力を受け付けてもよい。典型的には、情報入力部150は、通信インターフェイス120を介して、センサ装置20から送信されるこれらの情報を受信する。ただし、情報入力部150は、タッチパネル106(やボタン108)を介して、これらの情報の入力を受け付けてもよい。
静止期間算出部152は、上述の(静止検出方式)に従って、静止期間を算出する。静止期間算出部152は、角速度情報に基づく合成角速度Wが基準閾値Thに到達する時刻t1を算出する。より詳細には、静止期間算出部152は、合成加速度ACを算出し、合成加速度ACの単位時間当たりの変化量が閾値以上に到達した時刻をインパクト時刻として算出する。静止期間算出部152は、インパクト時刻から所定時間だけ前の時刻から時間を遡って、合成角速度Wが基準閾値Th未満になる時刻t1を算出する。
静止期間算出部152は、時刻t1よりも時間Ta(例えば、0.5秒)だけ過去の時刻t2から、時刻t1よりも時間Tbだけ過去の時刻t3までの期間Tcを、ゴルファが静止している静止期間として算出する。
姿勢算出部154は、上述の(姿勢算出方式)に従い、加速度情報および角速度情報に基づいてゴルフクラブ50の姿勢情報を算出する。具体的には、姿勢算出部154は、スイング期間の開始時から終了時(インパクト時)までの姿勢情報を算出する。特に、姿勢算出部154は、インパクト時のゴルフクラブ50の姿勢情報として、少なくともシャフトリーン角SLcおよびアタック角ATcを算出する。なお、姿勢算出部154は、インパクト時のゴルフクラブ50の姿勢情報として、ライ角Lc、フェース角FAcおよびスイングパスSWcを算出してもよい。
ここで、センサ装置20がドライバーに取り付けられている場合(例えば、ゴルフクラブ50がゴルファのドライバーである場合)には、姿勢算出部154は、ゴルフクラブ50の姿勢情報をゴルファのドライバーの姿勢情報として弾道算出部158に出力する。
一方、センサ装置20がゴルファのドライバーとは異なる他のゴルフクラブに取り付けられている場合(例えば、ゴルフクラブ50がゴルファのドライバーではない場合)を想定する。この場合、姿勢算出部154は、算出されたゴルフクラブ50の姿勢情報(ここでは、シャフトリーン角SLcおよびアタック角ATc)に姿勢角用の所定の関係式を適用して、ゴルファが当該ドライバーでゴルフボールを打撃したと仮定した場合の当該ドライバーの姿勢情報を算出する。例えば、図7に示すように、ドライバーに対応するシャフトリーン角SLcおよびアタック角ATcが算出される。姿勢算出部154は、算出した当該ドライバーの姿勢情報を弾道算出部158に出力する。
ヘッドスピード算出部156は、加速度情報および角速度情報に基づいて、スイング期間のゴルフクラブ50のヘッドスピードを算出する。特に、ヘッドスピード算出部156は、インパクト時のヘッドスピードを算出する。
ここで、センサ装置20がゴルファのドライバーに取り付けられている場合には、ヘッドスピード算出部156は、ゴルフクラブ50のヘッドスピードをゴルファのドライバーのヘッドスピードとして弾道算出部158に出力する。
一方、センサ装置20がゴルファのドライバーとは異なる他のゴルフクラブに取り付けられている場合には、ヘッドスピード算出部156は、算出されたゴルフクラブ50のヘッドスピードにヘッドスピード用の所定の関係式を適用して、ゴルファが当該ドライバーでゴルフボールを打撃したと仮定した場合の当該ドライバーのヘッドスピードを算出する。ヘッドスピード算出部156は、算出した当該ドライバーのヘッドスピードを弾道算出部158に出力する。
弾道算出部158は、ゴルファのドライバーのスペック情報、当該ドライバーのインパクト時の姿勢情報、および当該ドライバーのインパクト時のヘッドスピードに基づいて、当該ドライバーで打撃されたゴルフボールの最大弾道高さを算出する。
上述したように、弾道算出部158は、ドライバーのスペック情報と、インパクト時のアタック角およびシャフトリーン角と、インパクト時のヘッドスピードとを用いて、打球初期条件であるボール初速、打ち出し角、バックスピンを算出する。ドライバーのスペック情報は、少なくともクラブの長さおよびロフト角を含む。弾道算出部158は、ボール初速、打ち出し角、バックスピンを弾道方程式に入力することにより、最大弾道高さを算出する。
情報格納部160は、予め用意された複数のゴルフボール(例えば、ボールA1〜A3)の各々について、ドライバーで当該ゴルフボールを打撃したときに当該ゴルフボールの飛距離が最大化される、ドライバーのヘッドスピードおよび当該ゴルフボールの最大弾道高さ(の組み合わせ)を示す情報D1を格納する。
情報D1は、グラフ30における領域Xa1〜Xa3を規定するための情報を含む。すなわち、情報D1は、領域Xa1〜Xa3の各々に対応するヘッドスピードおよび最大弾道高さの組み合わせを示す情報を含む。同様に、情報D1は、グラフ30Aにおける領域Ya1〜Ya3を規定するための情報、およびグラフ30Bにおける領域Za1〜Za3を規定するための情報を含む。
推奨部162は、複数のゴルフボールの各々についての情報D1を情報格納部160から読み出す。推奨部162は、ヘッドスピード算出部156により算出されたドライバーのヘッドスピードおよび弾道算出部158により算出された最大弾道高さと、複数のゴルフボールの各々についての情報D1とに基づいて、複数のゴルフボールの中からゴルファに適したゴルフボールを推奨する。
具体的には、推奨部162は、複数のゴルフボールの中からゴルファに適したゴルフボールを推奨するための画面(例えば、グラフ30〜30Bのいずれかを含む画面)をディスプレイ110に表示する。この画面は、複数のゴルフボールの各々についての情報D1と、算出されたヘッドスピードおよび算出された最大弾道高さに基づく情報D2が示されるグラフ(例えば、グラフ30〜30B)を含む。情報D2は情報格納部160に格納されてもよい。
当該画面がグラフ30を含む場合、ボールA1〜A3の各々についての情報D1に対応する領域Xa1〜Xa3、および情報D2に対応する円領域1541がグラフ30に表示される。当該画面がグラフ30Aを含む場合、ボールA1〜A3の各々についての情報D1に対応する領域Ya1〜Ya3、および情報D2に対応する円領域1541がグラフ30Aに表示される。当該画面がグラフ30Bを含む場合、ボールA1〜A3の各々についての情報D1に対応する領域Za1〜Za3、および情報D2に対応する領域1610がグラフ30Bに表示される。
推奨部162は、複数のゴルフボールの各々の情報D1と情報D2との位置関係に基づいて、複数のゴルフボールの中からゴルファに適したゴルフボールを推奨する。
図13の例の場合、推奨部162は、領域Xa1〜Xa3のうち円領域1541に最も近い領域Xa2に対応するボールA2をゴルファに最も適したゴルフボールとして推奨する。図17の例の場合、推奨部162は、領域Ya1〜Ya3のうち円領域1541の中心を含む領域Ya2に対応するボールA2をゴルファに適したゴルフボールとして推奨する。図18の例の場合、推奨部162は、領域Za1〜Za3のうち領域1610と重畳する範囲が最も大きい領域Za2に対応するボールA2をゴルファに適したゴルフボールとして推奨する。
<利点>
本実施の形態によると、ドライバーで打撃されたゴルフボールの飛距離の指標として、ドライバーのヘッドスピードおよび最大弾道高さという互いに連動して変化しにくいパラメータを用いたため、より精度よくゴルファに適したゴルフボールを推奨することができる。
本実施の形態によると、ゴルファのスイングを解析することによりドライバーのヘッドスピードおよび最大弾道高さを算出している。そのため、打球が安定しない初中級レベルのゴルファであっても、ヘッドスピードおよび最大弾道高さを適切に算出できるため、試打回数を少なくすることができる。
本実施の形態によると、ゴルファに適したゴルフボールを推奨するためのグラフがディスプレイに表示されるため、ゴルファは、どのゴルフボールが自分に適しているのかを即時に把握できる。また、複数のグラフを用いることにより、多面的にゴルファに適したゴルフボールを推奨することができる。
<変形例>
上述した実施の形態では、ゴルフクラブ50に取り付けられたセンサ装置20からの情報を用いてゴルファに適したゴルフボールを推奨する構成について説明したが当該構成に限られない。例えば、公知の弾道計測器を用いて取得したドライバーのヘッドスピードおよび所定のゴルフボールの最大弾道高さに基づいてゴルファに適したゴルフボールを推奨する構成であってもよい。
図20は、変形例に従うボール推奨装置10Aの機能ブロック図である。図20を参照して、ボール推奨装置10Aは、主たる機能構成として、取得部170と、情報格納部160と、推奨部162Aとを含む。
ゴルファがドライバーを用いてゴルフボールを打撃した場合、公知の弾道計測器は、インパクト直後のゴルフボールの各パラメータを測定することにより、当該ドライバーのヘッドスピードと、当該ドライバーで打撃された所定のゴルフボールの最大弾道高さとを算出する。あるいは、弾道計測器は、インパクト直前のヘッドの測定結果(例えば、ヘッドスピード、シャフトリーン角、およびアタック角)から当該ドライバーのヘッドスピードと、当該ドライバーで打撃された所定のゴルフボールの最大弾道高さとを算出する。
取得部170は、弾道計測器により算出されたヘッドスピードおよび最大弾道高さを、当該弾道計測器から取得(受信)する。通信方式としては、無線通信および有線通信のいずれであってもよい。
推奨部162Aは、取得部170により取得されたヘッドスピードおよび最大弾道高さと、複数のゴルフボールの各々についての情報D1とに基づいて、複数のゴルフボールの中からゴルファに適したゴルフボールを推奨する。ゴルフボールの推奨方式については上述した実施の形態と同様である。
上記変形例において、弾道計測器が、インパクト直後のゴルフボールの各パラメータの測定結果に基づいてヘッドスピードおよび最大弾道高さを算出する構成によると、ゴルファが初中級者の場合には打球が不安定であるため、ゴルフボールを精度よく推奨するためには試打回数が多くなる可能性がある。しかし、この点を無視すれば概ね上述した実施の形態と同様の利点を有する。
一方、上記変形例において、弾道計測器が、インパクト直前のヘッドの測定結果に基づいてヘッドスピードおよび最大弾道高さを算出する構成によると、上述した実施の形態と同様の利点を有する。
<その他の実施の形態>
(1)上述したボール推奨装置は、図19に示す機能と図20に示す機能とを有していてもよい。具体的には、ボール推奨装置は、センサ装置20から受信した情報を用いて、ドライバーのヘッドスピードとゴルフボールの最大弾道高さとを計算する構成と、弾道計測器からこれらを直接受信する構成とを有していてもよい。
換言すると、ボール推奨装置は、センサ装置20から受信した情報を用いた計算により、ヘッドスピードと最大弾道高さとを取得する構成であってもよいし、弾道計測器から受信することによりこれらを取得する構成であってもよい。
ボール推奨装置がセンサ装置20からの情報を用いた計算によりヘッドスピードと最大弾道高さとを取得する場合、ボール推奨装置の取得部の機能は、図19中の情報入力部150、静止期間算出部152、姿勢算出部154、ヘッドスピード算出部156、および弾道算出部158の機能に対応する。一方、ボール推奨装置が弾道計測器からヘッドスピードと最大弾道高さとを受信することにより取得する場合、ボール推奨装置の取得部の機能は、図20中の取得部170の機能に対応する。
(2)上述した実施の形態において、特許第6342034号に示すように、歪センサ210により検出される歪み情報を用いて、ゴルフクラブの姿勢情報を補正する構成を採用してもよい。
(3)コンピュータを機能させて、上述したような制御を実行させるプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、ROM、RAMおよびメモリカードなどの一時的でないコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
プログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。
また、本実施の形態にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。
(4)上述の実施の形態として例示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。