{実施形態}
以下、実施形態に係る配線部材の固定構造について説明する。図1は、実施形態に係る配線部材の固定構造1を示す斜視図である。図2は、実施形態に係る配線部材の固定構造1を示す平面図である。図3は、実施形態に係る配線部材の固定構造1を示す側面図である。
配線部材の固定構造1は、サイレンサ10と、配線部材20と、固定用部材40と、を備える。配線部材の固定構造1において、固定用部材40によって配線部材20がサイレンサ10に固定されている。
サイレンサ10は、防音等を目的として車両に配設される部材である。以下では、サイレンサ10が、例えば車両においてフロアマットとボディとの間に配設されるフロアサイレンサであるものとして説明する。具体的には、サイレンサ10は、本体部11と、被差込部14を含む。
本体部11は、主面12を有する。本体部11の一部に、被差込部14が形成されている。被差込部14は、主面12と交差する差込面15と、差込面15とは反対側に設けられた外面16とを有する。ここでは被差込部14は、主面12より外方に突出する突部17として形成されている。突部17は、例えば直方体状に形成される。直方体状の突部17のうち相互に反対側を向く一対の側面が差込面15及び外面16とされる。
サイレンサ10は、防音性を有する材料によって板状に形成されている。ここでは、サイレンサ10は、発泡ポリウレタン等の樹脂発泡体のチップに、接着剤(バインダ)を塗布するなどして混在させたものを蒸気雰囲気下で圧縮させつつ一体に固着させることによって形成されるものとして説明する。かかる接着剤としてはウレタンチップ用接着剤などチップの素材に応じた周知の接着剤を用いることができる。
もっとも、サイレンサ10の製造方法は上記したものに限られない。例えば、サイレンサ10は、ポリウレタン等の樹脂材料を発泡させつつモールド成形して形成されるものであってもよいし、不織布を材料として形成されるものであってもよい。また例えばサイレンサ10は、無数の繊維状部材が圧縮されて形成されるものであってもよい。この場合、無数の繊維状部材は絡み合って結合されていてもよいし、接着剤等によって固着されていてもよい。係る繊維状部材は、天然繊維であってもよいし、化学繊維であってもよい。
図3に示す例ではサイレンサ10の本体部11は平坦に形成されているが、ボディの形状に沿わせること、又は部分的にかさ上げすること等を目的として厚み方向に凹凸を呈する部分を有していてもよい。
配線部材20は、車両に搭載された部品につながれて、当該部品に及び/又は当該部品から電気又は光を伝送する部材である。配線部材20は、サイレンサ10の主面12に沿って配設されている。配線部材20は、偏平に形成された配線体を含む。以下では、配線体がシート材付配線体22であるものとして説明する。シート材付配線体22は、複数の線状伝送部材24と、シート材30とを含む。
線状伝送部材24は、電気又は光を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材24は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線24であってもよいし、裸導線、シールド線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材24としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。
ここでは線状伝送部材24は、電気又は光を伝送する伝送線本体と、伝送線本体を覆う外皮とを有する。以下では、線状伝送部材24が一般電線24(以下、単に電線24と呼ぶ)であるものとして説明する。つまり電線24は、伝送線本体としての芯線と、伝送線本体を覆う外皮としての絶縁被覆とを有する。
芯線は、1本又は複数本の素線で構成される。素線は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導体で形成される。芯線が複数本の素線で構成される場合、複数本の素線は撚られていることが好ましい。絶縁被覆は、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)などの樹脂材料が芯線の周囲に押出成形されるなどして形成される。ここでは電線24は、横断面が円形のいわゆる丸電線である。
複数の電線24は、シート材30の主面12上に配設されている。シート材30上における電線24の経路は、適宜設定されていればよい。図1に示す例では、電線24は、シート材30上において直線状に配設されているが、曲がって配設されていてもよいし、直線状部分と曲げの部分との両方を有するように配設されていてもよい。また図1に示す例では、複数の電線24は、基材上に並設されているが、複数の電線24の少なくとも一部が異なる経路で延びていてもよい。
電線24の端部には、例えばコネクタが設けられ、当該コネクタが、配線部材20の接続先である部品などに設けられた相手側コネクタに接続される。係るコネクタは、例えば電線24の端部がハウジングの電線収容部に収容されて形成される。図1に示す例では、電線24の端部がシート材30の外方に延出しているが、電線24の端部がシート材30上に位置していてもよい。この場合、ハウジングは、シート材30に直接固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。
シート材30は、複数の電線24を偏平な状態に保つ。ここでは、シート材30上に電線24が配設される。そして電線24とシート材30とは、固定手段によって固定されている。電線24とシート材30との固定手段として、ここでは溶着が採用されている。つまり、電線24とシート材30とのうち少なくとも一方が樹脂材料を有し、この樹脂材料が溶けて相手側に接合される。
係る溶着手段としては、特に限定されるものではなく、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。
シート材30を構成する材料は、特に限定されるものではない。シート材30を構成する材料は、例えば、PVC、PE、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂を含むものであってもよいし、アルミニウム又は銅などの金属を含むものであってもよい。しかしながら、電線24とシート材30とが溶着されて固定されている場合、電線24の絶縁被覆とシート材30とが同じ樹脂材料など溶着に向く材料で形成されていることが好ましい。
シート材30は、織布、編布、不織布などの繊維を有するものであってもよいし、押出成形または射出成形などによって繊維を有さずに結合されて形成されたものであってもよい。後者の場合、シート材30は、発泡成形された発泡体であってもよいし、発泡成形されずに充実な断面を有するように成形されたものであってもよい。
またシート材30は、1層構造を有するものであってもよいし、複数層構造を有するものであってもよい。シート材30が複数層構造を有するものである場合、例えば、樹脂層と樹脂層とが積層されていることが考えられる。また例えば、樹脂層と金属層とが積層されていることが考えられる。また例えば、金属層と金属層とが積層されていることが考えられる。シート材30が、樹脂層と樹脂層とが積層されて構成されているものである場合、繊維を有する層同士又は繊維を有しない層同士が重ねられてもよいし、繊維を有する層と繊維を有しない層とが重ねられてもよい。
シート材30が複数層構造を有するものである場合、別々に成形されたシート状部材を貼り合わせてシート材30が成形されてもよいし、一の押出成形または射出成形などによってシート材30が成形されてもよい。
図1乃至図3に加えて図4及び図5を参照しつつ、固定用部材40について説明する。図4は、固定用部材40を示す斜視図である。図4は、固定用部材40を示す斜視図である。図5は、固定用部材40をサイレンサ10に固定する様子を示す説明図である。
固定用部材40は、配線部材20をサイレンサ10に固定するための部材である。固定用部材40は、サイレンサ10に差し込まれることによってサイレンサ10に固定される。固定用部材40は、配線部材20に取付けられる。これらより、固定用部材40は、配線部材20をサイレンサ10に固定する。具体的には固定用部材40は、差込部42を含む。ここでは固定用部材40は、延出部44と固定部46と連結部48とをさらに含む。
図4に示す例では、差込部42が一の板状に形成されている。また、延出部44と固定部46とが連なって差込部42よりも長尺な一の板状に形成されている。そして、差込部42よりも短尺な板状の連結部48が差込部42の一端部と、延出部44と固定部46との間の部分とを繋げている。
別の見方をすると、固定用部材40は、第1、第2、第3の板状部分を含む形状に形成されている。第1板状部分の端部と第2板状部分の中間部とが第3板状部分のよって繋げられている。第2板状部分は、第1板状部分よりも長尺に形成されている。また第3板状部分は、第1板状部分よりも短尺に形成されている。また第1板状部分と第2板状部分とが平行とされている。また第3板状部分が第1板状部分及び第2板状部分に直交している。
このような形状に形成された固定用部材40において第1板状部分が差込部42とされる。また第2板状部分のうち第3板状部分と連結されている部分よりも一端側(第1板状部分側)の部分が延出部44とされる。また第2板状部分のうち第3板状部分と連結されている部分よりも他端側の部分が固定部46とされる。また第3板状部分が連結部48とされる。
差込部42は、差込面15から被差込部14に差し込まれている。ここでは、差込部42は被差込部14を貫通している。つまり差込部42の長手方向に沿った寸法は、被差込部14のうち差込面15と外面16との間の寸法よりも長尺である。
以下では、差込部42が被差込部14に差し込まれている方向を差込方向と称する。差込部42の差込方向は、差込面15に交差する方向である。被差込部14が外面16を有する場合、差込方向は、差込面15と外面16とを結ぶ方向である。
なお係る配線部材の固定構造1が車両に配設された状態で、差込方向は、水平成分のみを含むものであってもよいし、鉛直成分のみを含むものであってもよいし、両者を含むものであってもよい。差込方向が水平成分を含む場合、その水平成分の方向は、車両の前後方向に当たる方向であってもよいし、車両の左右方向に当たる方向であってもよいし、車両の前後方向及び左右方向と交差する方向に当たる方向であってもよい。
また以下では、差込部42のうち差込面15から外方に延出する部分を第1部分42aとする。また差込部42のうち被差込部14の内部に位置する部分を第2部分42bとする。また差込部42のうち外面16から外方に延出する部分を第3部分42cとする。第1部分42aは、連結部48に連なる部分であり、差込部42の基端部に当たる部分である。第2部分42bは、第1部分42aと第3部分42cとをつなげている部分である。第3部分42cは、自由端とされた部分であり、差込部42の先端部に当たる部分である。
差込部42の先端(ここでは第3部分42cの先端)は、穴が形成されていない被差込部14に穴を形成しつつ差込可能な先細り形状に形成されている。
延出部44は、差込部42が被差込部14に差し込まれる前の状態で、差込部42と平行に対向している。延出部44は、差込部42が被差込部14に差し込まれた状態で、被差込部14の外方に延出している。延出部44の先端は、差込部42が被差込部14に差し込まれた状態で、被差込部14を越えて延出している。つまり延出部44の長手方向に沿った寸法は、被差込部14のうち差込面15と外面16との間の寸法よりも長尺である。なお、図4に示す例では、延出部44の長手方向に沿った寸法は、差込部42の長手方向に沿った寸法よりも短尺であるが、同じであってもよいし、延出部44の方が長尺であってもよい。
固定部46は、固定用部材40を配線部材20に取付けるのに用いられている。ここでは固定部46がシート材付配線体22のシート材30に接合されることによって、固定用部材40がシート材付配線体22に取付けられている。つまりここでは固定用部材40が配線体に接合されている。
より詳細には、シート材30は電線24が配設される電線配設部32の側方に延出する固定片34を有している。そして、固定部46が固定片34に接合されている。この際、シート材30のうち電線24が配設される面が固定部46と接合されている。また固定部46のうちサイレンサ10側の面がシート材30と接合されている。
固定用部材40とシート材30との接合方法は、特に限られるものではなく、種々の接合方法を採用することができる。例えば、固定部46と固定片34とは溶着されていてもよいし、接着剤、粘着テープ等によって接合されていてもよい。また例えば、固定部46に形成された係止部が固定片34に形成された被係止部に係止される係止構造によって固定部46と固定片34とが接合されるものであってもよい。また例えば固定部46と固定片34とはネジ、ピン、リベットなどによって接合されていてもよい。
もっともシート材30及び固定用部材40のそれぞれにおける接合位置は上記したものに限られない。例えばシート材30において、電線配設部32が固定用部材40に接合されていてもよい。またシート材30において電線24が配設される面とは反対側の面が固定部46と接合されていてもよい。この場合、シート材30に対して電線24がサイレンサ10側に位置する。また例えば固定用部材40において、延出部44がシート材30に接合されていてもよい。
また固定部46がシート材30に接合される場合でも、その接合態様は上記したものに限られない。例えば固定部46において、サイレンサ10側の面とは反対側の面がシート材30と接合されていてもよい。また例えば固定部46が、現状の位置にあるものに替えて差込部42と同一平面内に延びる位置に形成されていてもよい。この場合の固定用部材は、固定用部材40において、差込部42と延出部44とが入れ替わった形状とされる。また例えば固定部46が現状の位置にあるものに加えて差込部42と同一平面内に延びる位置にも形成されていてもよい。この場合の固定用部材は、固定用部材40において差込部42を構成する板状部分が連結部48よりも先に延出した形状とされ、側面視においてH字状をなす。この場合、2つの固定部46で配線体を挟むことも考えられる。また例えばシート材付配線体22が電線24を挟む2枚のシート材30を含み、固定部46が当該2枚のシート材30に挟み込まれていてもよい。
固定用部材40は、差込状態維持部50を含む。差込状態維持部50は、差込部42が被差込部14に差し込まれた状態を維持する。ここでは差込状態維持部50は、内側羽部52と、外側羽部54と、挟持部56と、幅広部58とを含む。
内側羽部52は、差込部42の第3部分42cから外面16に向けて突出するように形成されている。つまり内側羽部52は、差込部42の第3部分42cのうち延出部44側の面から突出しており、第2部分42bに向かうにつれて差込部42から離れるように形成されている。内側羽部52の先端部は、差込部42に対して離れている。内側羽部52は、その先端部が差込部42に近づくように弾性変形可能である。特に差込部42が被差込部14に差し込まれる際に、内側羽部52が被差込部14に当接して、その先端部が差込部42に近づくように弾性変形可能である。このとき内側羽部52は第3部分42cと共に被差込部14の内部を貫通する。
外側羽部54は、延出部44のうち外面16を越えて延出する先端側から外面16に向けて突出する。つまり外側羽部54は、延出部44の先端部のうち差込部42側の面から突出しており、延出部44の基端部に向かうにつれて延出部44から離れるように形成されている。外側羽部54の先端部は、延出部44に対して離れている。外側羽部54は、その先端部が延出部44に近づくように弾性変形可能である。特に差込部42が被差込部14に差し込まれる際に、外側羽部54が被差込部14に当接して、その先端部が延出部44に近づくように弾性変形可能である。このとき外側羽部54は、延出部44の先端部と共に被差込部14の外側を通って被差込部14を越えて外面16側へ移動する。
なお図4に示す例では、外側羽部54が内側羽部52よりも外面16側に位置するように形成されているが、このことは必須の構成ではない。内側羽部52が外側羽部54よりも外面16側に位置するように形成されていてもよいし、両者が同じ位置に形成されていてもよい。
挟持部56は、被差込部14を挟持する部分である。挟持部56は、差込部42と延出部44とによって構成されている。より詳細には、ここでは差込部42と延出部44と平行である。また連結部48のうち差込部42と延出部44とを結ぶ方向に沿った寸法が、差込面15の高さ寸法よりも短尺である。これらより、差込部42と延出部44とが被差込部14を挟持して挟持部56を成している。
幅広部58は、差込部42の第3部分42cに形成されている。幅広部58は、差込部42の第2部分42bよりも幅広に形成されている。ここでは、幅広部58から差込部42の先端にかけて先細り形状とされている。幅広部58は、差込部42が差し込まれる被差込部14の穴よりも大きいことによって、被差込部14に引っ掛かることが可能となる。
例えば、予め被差込部14に穴が形成されていない場合、被差込部14は、差込部42よりも柔らかく形成されていることが考えられる。この場合、差込部42が差し込まれることによって差込部42の先端の先細り形状によって被差込部14に穴が形成される。当該穴が形成される際、当該穴の周縁部が弾性変形することによって当該穴が広がることが考えられる。つまり差込部42が差し込まれる際、被差込部14には幅広部58よりも小さい穴が形成されつつ、当該穴の周縁部が弾性変形することによって幅広部58が通過可能となるように広がることが考えられる。そして、幅広部58の通過後は穴の周縁部が弾性復帰することによって幅広部58よりも小さくなり、幅広部58が外面16に引掛り可能となる。
なお図4に示す例では、内側羽部52の先端が幅広部58よりも外面16側に位置するように形成されているが、このことは必須の構成ではない。幅広部58が内側羽部52の先端よりも外面16側に位置するように形成されていてもよいし、両者が同じ位置に形成されていてもよい。
かかる固定用部材40は、金属又は樹脂等を材料として、例えば金型を用いた射出成形などによって形成された一体成形品であることが考えられる。固定用部材40が樹脂を材料として成形される場合であって、予め穴が形成されていない被差込部14に差込部42が挿し込まれる場合、差込部42は被差込部14よりも硬質に形成されているとよい。
配線部材の固定構造1を車両に適用するに当たり、固定用部材40を配線部材20に取付ける工程(a)と、固定用部材40をサイレンサ10に差し込む工程(b)と、配線部材20をサイレンサ10に対して配策する工程(c)と、サイレンサ10を車両に組付ける工程(d)とが行われることが考えられる。なお、工程(a)乃至工程(c)は、配線部材の固定構造1を製造する工程である。
これらの工程(a)乃至工程(d)の手順は特に限定されるものではなく、工程(a)乃至工程(d)は任意の順に行われればよい。しかしながら、工程(a)乃至工程(c)の後に工程(d)が行われることが好ましい。つまり、固定用部材40によって配線部材20がサイレンサ10に固定されて、これらが一体化した配線部材の固定構造1(サイレンサモジュール)となった状態で、当該サイレンサモジュールが車両に組付けられることが好ましい。これにより、サイレンサ10及び配線部材20の車両への組付工程を容易化できる。
以上のように構成された配線部材の固定構造1によると、サイレンサ10の被差込部14に固定用部材40を差し込むと共に配線部材20に固定用部材40が取付けられることによって、固定用部材40を介して配線部材20をサイレンサ10に固定することができる。これにより、配線部材20とは別に形成されたサイレンサ10に配線部材20を容易に固定可能である。
また差込部42の先端が先細り形状に形成されているため、予めサイレンサ10に穴を形成せずに済む。これにより、サイレンサ10の加工が容易となる。また、サイレンサ10の防音性の低下を抑制できたりする。
また差込状態維持部50が内側羽部52を含むため、被差込部14から抜かれる向きの力が差込部42にかけられた際、内側羽部52が外面16に引っ掛かることによって、差込部42が抜けにくくなる。
また差込状態維持部50が外側羽部54を含むため、被差込部14から抜かれる向きの力が差込部42にかけられた際、外側羽部54が外面16に引っ掛かることによって、差込部42が抜けにくくなる。
また挟持部56が被差込部14を挟持することによってサイレンサ10と固定用部材40との間の摩擦力が大きくなる。このため、被差込部14から抜かれる方向の力が差込部42にかけられても、差込部42が抜けにくくなる。また挟持部56が被差込部14を挟持することによって、固定用部材40とサイレンサ10とががたつき難くなる。
また差込状態維持部50が幅広部58を含むため、被差込部14から抜かれる向きの力が差込部42にかけられた際、幅広部58が外面16に引っ掛かることによって、差込部42が抜けにくくなる。
被差込部14が主面12より外方に突出するように形成されているため、被差込部14の部分においてサイレンサ10に厚み方向に貫通する孔が形成されたり、厚みが薄くなったりすることを抑制できる。
また配線体と固定用部材40とを接合することによって配線部材20に固定用部材40を取付けることができる。
また車両組付前に配線部材の固定構造1が形成されてサイレンサモジュールとなった状態で、当該サイレンサモジュールを車両に組付けることによって、サイレンサ10及び配線部材20の車両へ容易に組付けることができる。
{変形例}
図6は、配線部材の固定構造1の変形例を示す部分分解斜視図である。
変形例に係る配線部材の固定構造101において、配線部材120の形状及び配線部材120への固定用部材40の取付態様が上記配線部材の固定構造1における配線部材20の形状及び配線部材20への固定用部材40の取付態様とは異なる。
具体的には、配線部材120の形状に関し、複数の線状伝送部材24が結束部材126によって束ねられて配線部材120とされている。ここでは複数の線状伝送部材24が丸断面形状に束ねられて配線部材120とされている。
結束部材126の種類、及び結束部材126によって複数の線状伝送部材24を束ねる方法は特に限定されるものではない。例えば、粘着テープが複数の線状伝送部材24の周りに荒巻又は二重巻などの態様で螺旋状に巻き付けられて複数の線状伝送部材24が束ねられることが考えられる。また例えば、保護シート材がすし巻き状又は合掌合せ状に巻き付けられて複数の線状伝送部材24が束ねられることが考えられる。また例えば、複数の線状伝送部材24がコルゲートチューブなどの筒部材に収容されて束ねられることが考えられる。また例えば、線状伝送部材24に対して長手方向に沿って間隔をあけた複数箇所でその周囲に粘着テープ又は結束バンド等が巻き付けられて複数の線状伝送部材24が束ねられることが考えられる。
また配線部材120への固定用部材40の取付態様に関し、結束部材60によって固定部46と複数の線状伝送部材24とが結束されている。これにより固定用部材40が配線部材120に取付けられている。
係る結束部材60としては、特に限定されるものではない。結束部材60は、固定用部材40とは別に設けられていてもよいし、固定用部材40と一体化されていてもよい。結束部材60が固定用部材40と別に設けられた部材である場合、係る結束部材60として例えば粘着テープ、結束バンド等が採用されることが考えられる。また、結束部材60が固定用部材40と一体化されている場合、係る結束部材60として例えばバンド部とバンド固定部とを含む結束バンド構造が固定用部材40の固定部46に設けられていることが考えられる。
結束部材60は、複数の線状伝送部材24を束ねる結束部材126のある位置に重ねられるように巻き付けられていてもよいし、複数の線状伝送部材24を束ねる結束部材126のない位置に巻き付けられていてもよい。
また変形例に係る配線部材の固定構造101において、被差込部114の形状が上記配線部材の固定構造1における被差込部14の形状とは異なる。
具体的には、被差込部114の差込面115は主面12から凹むように形成されている。より詳細には、サイレンサ110の本体部11の主面12に凹部118が形成され、その凹部118の内側面の一つが差込面115とされる。そしてサイレンサ110の本体部11のうち凹部118の側方部分であって、差込面115に連なる部分が被差込部114とされる。
この凹部118は、固定用部材40における差込部42を含む板状部分と同じかそれよりも長尺に形成されていることが好ましい。これにより、凹部118に差込部42を含む板状部分を収容した状態で、差込部42を被差込部114に差し込むことが可能となり、もって差し込み作業が容易となる。またこの凹部118は有底であり、サイレンサ110の本体部11を貫通する貫通孔ではないことが好ましい。つまり差込面115が貫通孔の内周面でないことが好ましい。これによりサイレンサ110の防音性能の低下を抑制することができる。
なお実施形態に係る差込面15と、変形例に係る差込面115とが組み合わされてもよい。つまり差込面は、差込面15のように本体部11の主面12から外側に突出する部分と、差込面115のように本体部11の主面12に対して内側に凹む部分との両方を有していてもよい。
さらに図6に示す例では、凹部118に対して間隔をあけて別の凹部119が形成されている。以下では凹部118を第1凹部118、凹部119を第2凹部119と称する。
第1凹部118、第2凹部119の間の部分に差込部42が差し込まれる。つまり図6に示す例では、第1凹部118のうち第2凹部119側に位置する内側面が差込面115とされる。また第2凹部119のうち第1凹部118側に位置する内側面が外面116とされる。そして第1凹部118と第2凹部119との間の部分が被差込部114とされる。
この第2凹部119は、被差込部114を貫通して外方に突出する幅広部58、内側羽部52が第2凹部119内に収まる大きさに形成されていることが好ましい。これにより、幅広部58及び内側羽部52が外面116に引っ掛かり易くなる。
以上のように構成された配線部材の固定構造101によると、配線部材120として、複数の線状伝送部材24の束を用いることができる。この際、結束部材60によって配線部材120に固定用部材40を取付けることができる。
また凹部118によって被差込部114が形成されているため、主面12の外方に突出する部分の突出寸法を小さく抑えることができる。
{その他の変形例}
これまで偏平な配線体がシート材付配線体22であるものとして説明したが、このことは必須の構成ではない。偏平な配線体は、複数の芯線が一の被覆で一括被覆されたいわゆるFFC(フレキシブルフラットケーブル)、又はベースとなる絶縁フィルムに貼り合わされた導体箔に回路が形成されたいわゆるFPC(フレキシブルプリント基板)などであってもよい。
また偏平な配線体がシート材付配線体22である場合でも、その構成は上記したものに限られない。線状伝送部材24の形状に関し、例えば、線状伝送部材24の外形が断面角形状に形成されていてもよい。この場合、シート材30と線状伝送部材24との接触面積を容易に増やすことができる。また線状伝送部材24とシート材30との固定手段に関し、例えば、線状伝送部材24とシート材30とが、熱又は溶剤等によって少なくとも一方の樹脂が溶かされて接合されていてもよい。係る接合手段は、溶着、融着、溶接等の公知の接合手段を用いることができる。また例えば、線状伝送部材24とシート材30とが、接着剤、粘着テープ等によって接合されていてもよい。また例えば、線状伝送部材24が縫糸によってシート材30に縫い付けられていてもよい。またシート材付配線体22が、上記シート材30とは反対側から線状伝送部材24を覆うカバーを有していてもよい。
これまで線状伝送部材24が、差込方向と平行に延在しているものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。線状伝送部材24は、差込方向と交差する方向に延在していてもよい。例えば配線部材20がシート材付配線体22の場合、固定用部材40が図1に示す例に対して向きを変えてシート材30に取付けられるとよい。また例えば配線部材20が線状伝送部材24の束の場合、固定部46の延在方向が差込方向と交差する方向である固定用部材を用いて固定部46と線状伝送部材24の束とが結束部材60によって結束されるとよい。
これまで被差込部14に予め穴が形成されていないものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。被差込部14に予め穴が形成されていてもよい。この場合、差込部42の先端は先細り形状に形成されていない場合もあり得る。
これまで差込状態維持部50として内側羽部52、外側羽部54、挟持部56、幅広部58が設けられているものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。内側羽部52、外側羽部54、挟持部56、幅広部58以外の差込状態維持部50が設けられていてもよい。また内側羽部52、外側羽部54、挟持部56、幅広部58のうち1つ又は複数が省略されていてもよい。
これまで一の配線部材20に一の固定用部材40が取付けられるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。一の配線部材20に複数の固定用部材40が取付けられていてもよい。一の配線部材20に複数の固定用部材40が取付けられている場合、差込方向が全て同じ方向となるように取付けられていてもよいし、差込方向が異なる方向となるものを含むように取付けられていてもよい。また一の配線部材20に複数の固定用部材40が取付けられている場合、複数の固定用部材40がすべて同じサイレンサ10の本体部11に差し込まれるものであってもよいし、複数の固定用部材40の一部が異なるサイレンサ10の本体部11に差し込まれるものであってもよい。また一の配線部材20に複数の固定用部材40が取付けられている場合、一の配線部材がシート材付配線体22として形成された部分と、線状伝送部材24の束として形成された部分とを有し、これらの部分にそれぞれ固定用部材40が取付けられていることも考えられる。
同様にこれまで一のサイレンサ10の本体部11に一の固定用部材40が差し込まれるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。一のサイレンサ10の本体部11に複数の固定用部材40が差し込まれていてもよい。一のサイレンサ10の本体部11に複数の固定用部材40が差し込まれる場合、一の被差込部14に複数の固定用部材40が差し込まれてもよいし、複数の固定用部材40がそれぞれ別の被差込部14に差し込まれてもよい。また一のサイレンサ10に複数の固定用部材40が差し込まれる場合、差込方向が全て同じ方向であってもよいし、差込方向が異なる方向となるものを含んでいてもよい。また一のサイレンサ10に複数の固定用部材40が差し込まれる場合、複数の固定用部材40がすべて同じ配線部材20に取付けられていてもよいし、複数の固定用部材40の一部が異なる配線部材20に取付けられるものであってもよい。
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。