JP2020089989A - 筆記具 - Google Patents

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久人 羽賀
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Abstract

【課題】毛細管力を利用して線を描く筆記具であって中芯及びその外周にアウターを備える筆記具において、インク供給の途切れを防止してカスレを生じにくくすることができ、さらに筆記面との間の摩擦抵抗を低減できる筆記具を提供する。【解決手段】本発明の筆記具は、インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部内に空気を送り込むことにより当該インク収容部からインクを送出する空気置換機構と、前記空気置換機構によって送出されたインクを毛細管力によって吸引し、吸引したインクを先端から送出し、筆記面に付着させるための中芯と、中芯の外周を覆うアウターと、を備える筆記具であって、前記インクが、(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーと、塩基性染料、油溶性染料又はロイコ色素とを含有する着色樹脂微粒子を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、特に毛細管力(あるいは毛細管現象)を利用して線を描く筆記具とそのインクに関する。
従来から、サインペンやマーキングペンのような毛細管力を利用した筆記具が知られている。一般に、毛細管力を利用して線を描く筆記具では、同じ筆記荷重で用いていても、インク残量の違い、すなわち筆記具の使い始めと繰り返し使用後あるいは使い終わりとの間で線の幅に差が出てしまうことがあり、安定して同一の幅の線を描くことが困難である。特許文献1には、斯かる問題を解決する筆記具として、中芯及びその外周にアウターを有しており、中芯とアウターとの間の毛細管現象を利用してインクを供給する筆記具が開示されている。
国際公開第2017/115843号パンフレット
しかしながら、上述の中芯及びその外周にアウターを有する筆記具では、特に中芯とアウターとの間の毛細管現象を利用してインクを供給するにあたり、インクの供給が途切れてカスレが生じる場合があり、改良の余地があることが明らかとなった。
そこで本発明は、毛細管力を利用して線を描く筆記具であって中芯及びその外周にアウターを備える筆記具において、インク供給の途切れを防止してカスレを生じにくい筆記具を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題に加え、更に筆記面との間の摩擦抵抗を低減できる筆記具を提供することを課題とする。本発明はまた、毛細管力を利用して線を描く筆記具であって、線の太さに変化を持たせることができ、かつ筆記具を繰り返し使用した後においても、カスレを生じることなく安定して使い初めとほぼ同一な幅の線を描くことができる筆記具を提供することを課題とする。
本発明者らが上記課題について鋭意検討したところ、毛細管力を利用して線を描く筆記具であって中芯及びその外周にアウターを備える筆記具において、特定のインクを用いることで、インク供給の途切れを防止してカスレを改善できること、さらに筆記面との間の摩擦抵抗を低減できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下を含む。
[1]インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部内に空気を送り込むことにより当該インク収容部からインクを送出する空気置換機構と、前記空気置換機構によって送出されたインクを毛細管力によって吸引し、吸引したインクを先端から送出し、筆記面に付着させるための中芯と、中芯の外周を覆うアウターと、を備える筆記具であって、前記インクが、(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーと、塩基性染料、油溶性染料又はロイコ色素とを含有する着色樹脂微粒子を含む、筆記具。
[2]前記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーが、(メタ)アクリル酸シクロアルキルである[1]に記載の筆記具。
[3]前記インクの摂氏25℃、大気圧下における表面張力が38.5mN/m以上である、[1]又は[2]に記載の筆記具。
[4]前記筆記面と前記アウターとの間の摩擦係数が0.3未満である、[1]〜[3]のいずれかに記載の筆記具。
[5]前記着色樹脂微粒子がロイコ色素を含有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の筆記具。
[6]前記筆記具がキャップを備え、前記キャップの前方側端部にゴム状物体を備える、[1]〜[5]のいずれかに記載の筆記具。
本発明によれば、毛細管力を利用して線を描く筆記具であって中芯及びその外周にアウターを備える筆記具において、インク供給の途切れを防止してカスレを生じにくくすることができ、さらに筆記面との間の摩擦抵抗を低減できる筆記具を提供することができる。
また、本発明によれば、筆記具を繰り返し使用しても使い始めとほぼ同一な幅の線を、カスレを生じることなく描くことができる筆記具を提供することができる。
図1(a)及び図1(b)は、キャップによりサインペンの前方を覆っている状態を示し、図1(c)は、図1(b)の状態の断面図を示す。 図1(c)の要部拡大図である。 中芯の長手方向断面図である。 コレクターを示す図面であり、図4には、コレクターを三方向から見た図面を示している。 継手を示す図面であり、具体的には、図5は、継手の斜視図、側面図、及び断面図を示す。 アウターを示す図面であり、具体的には、図6は、アウターの斜視図、側面図、及び断面図を示す。 中芯の変形例を示す断面図である。 中芯の更なる変形例を示す断面図である。 アウターの変形例を示す斜視図である。 アウターの更なる変形例を示す断面図である。 インナーキャップの変形例を示す側断面図である。 インク保持部の変形例を示す側断面図である。 筆記部と筆記面との接触状態を示す図である。 筆記部と筆記面との接触状態を示す図である。
<筆記具(構造)>
本発明の筆記具は以下の構成を有する。
インクを収容するインク収容部と、
前記インク収容部内に空気を送り込むことにより当該インク収容部からインクを送出する空気置換機構と、
前記空気置換機構によって送出されたインクを毛細管力によって吸引し、吸引したインクを先端から送出し、筆記面に付着させるための中芯と、中芯の外周を覆うアウターと、を備える筆記具であって、
前記インクが、(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーと、塩基性染料、油溶性染料又はロイコ色素とを含有する着色樹脂微粒子を含む、筆記具。
本発明において「筆記具」本体の構造は、インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部内に空気を送り込むことにより当該インク収容部からインクを送出する空気置換機構と、前記空気置換機構によって送出されたインクを毛細管力によって吸引し、吸引したインクを先端から送出し、筆記面に付着させるための中芯と、中芯の外周を覆うアウターと、を備えていればいずれのものであってもよい。種類としては例えば、サインペン、マーキングペンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
先にインク以外の構成について説明する。インクについては後述する。
以下、図面を参照して、本発明の筆記具本体の構造について、一実施形態であるサインペンを例として説明する。なお、本明細書において、サインペン及びその構成部品についての「前方」とは、サインペンの軸方向において中芯が設けられている側をいい、「後方」とはその反対側をいうものとする。
図1は、本発明の実施形態によるサインペンを示し、より具体的には、図1(a)及び図1(b)は、キャップによりサインペンの前方を覆っている状態を示し、図1(c)は、図1(b)の状態の断面図を示す。図2は、図1(c)の要部拡大図を示す。
図1乃至図2に示すように、サインペン1は、サインペンの本体と、本体3に取り付けられるキャップ5とを備えている。
サインペンの本体3は、使用時に、使用者が把持できるように全体的に筒形状を有しており、前方側軸筒7と、後方側軸筒9とを備えている。前方側軸筒7の後方端部、及び後方側軸筒9の前方端部には、それぞれネジ山が設けられており、両者を螺合することにより前方側軸筒7と後方側軸筒9とが互いに固定されている。そして、前方側軸筒7と後方側軸筒9とを螺合して固定することにより、内部に、サインペンの筆記のための各構成部品を収容する空間が形成される。また、前方側軸筒7と後方側軸筒9とを螺合ではなく、圧入による固定方法でも良い。その場合、組立の衝撃でアウター31が破損するのを防止するため圧入力は300N未満が望ましい。なお、以下では、前方側軸筒7と後方側軸筒9との内部に形成される空間を、単に「内部空間」と称して詳細な説明を行う。
キャップ5は、サインペンの本体3の前方側に着脱可能に取り付けられるように構成されており、サインペンの先端を封止することによりインクの乾きを防止する。キャップ5は、インナーキャップ5cと、嵌合部5bとを備えている。インナーキャップ5cは、後述するサインペンのアウター31、及び中芯29を完全に封入するように、本体3と嵌合するように構成されている。また、キャップ5自体は、嵌合部5bを介して、所定の嵌合力、例えば10N以上60N未満の嵌合力で本体3に着脱可能に取り付けられる。キャップ5の嵌合力を10N以上60N未満とすることにより、キャップ5の保管時の脱落とキャップ5を取り付けた際の衝撃でアウター31が破損するのを防止することができる。
また、キャップ5の前方側端部にはゴム状物体5dが備えられ、後方側には径方向に突出する筆記具1の転がり防止のための突起5eが形成され、前記ゴム状物体5dと前記突起との間にはキャップ5の内面と外面とを連通する誤飲等での窒息防止のための通気孔5fが形成されている。
ゴム状物体5dについて図2を用いて詳細に説明する。ゴム状物体5dは、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等の比較的軟質のゴム材質やスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物、市販されている消しゴム等、特にポリプロピレン樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーの混合物、またはポリプロピレン樹脂及びポリプロピレン系熱可塑性エラストマーの混合物からなり、その配合比率がそれぞれ重量比で1:1〜1:4であり、JIS K6251に規定されたデュロメータ硬度Aが70°〜90°となる材質、かつJIS S 6050−2002に規定する鉛筆描線の消し能力(消字率)が70%未満のものである可塑剤を含有しない低摩耗性の弾性材料を用いて略円筒状に形成される。ゴム状物体5dを前記のように構成することでインクを熱変色性とした場合でも、摩擦具として機能し紙面等に筆記した描線を手動による摩擦動作でも快適に変色することができる。また、電子端末を対象とした入力ペンとしても用いることができる。また、キャップ5の突起5eも前記記載された材料で形成し、摩擦具等としてもよい。
ゴム状物体5dは、キャップ5側に後方から前方に向けて拡径された外向突起5gを形成し、キャップ5頂部には内向突起が形成された取付穴5hを形成し、前記外向突起5gを前方から取付穴5hを乗り越えて嵌合することにより、10N以上の嵌合力が得られ確実な取り付けを確保できることに加え、キャップ5への取り付け作業が容易とすることができる。また、ゴム状物体5dは、径方向中心に前方から後方にかけての貫通孔5jが形成され、ゴム状物体5dの擦過使用時での過大な荷重を変形により吸収して擦過対象物の摩耗を回避できると共に誤飲等による窒息を防ぐことができる。
内部空間の後方側には、インクを収容するためのインク収容部11が配置されており、内部空間の前方側には、インク収容部11内のインクを用いて筆記を行うための筆記部13が配置されており、さらに、インク収容部11と、筆記部13との間には、インク収容部11内のインクを筆記部13に供給するためのインク供給部15が設けられている。
インク供給部15は、複数のフィンが外周に形成された略筒状のコレクター17を備えている。コレクター17は、インク収容部11内のインクと、外部から吸入した空気を置換することにより、インク収容部11内のインクを、インク収容部11から送出するようになっている。コレクター17の先端は、縮径して形成されており、先端保持部19をなしている。コレクター17の後方端部は、インク収容部11の前方端部と接している。コレクター17の先端保持部19は、継手21の後方端部から継手の内側に嵌入されている。
筆記部13は、中芯29と、中芯29の外周を覆うアウター31とを備えている。本発明の筆記具は、筆記荷重に応じて、描線幅を調整することができる。図2、図13及び図14を用いてかかる機能と構造との関係について説明する。筆記荷重を小さくした場合は、インク収容部11内のインクが、インク供給部15のコレクター17及びコレクター芯23を通して、筆記部13の中芯29に到達する。この時、中芯29は後ろに後退しない為、アウターは筆記面に当たらず、中芯29のみが筆記面に接する為、比較的細い線を描くことができる(図13)。一方で、筆記荷重を大きくした場合は、中芯29は後ろに後退し、中芯29及びアウター31が共に筆記面に接することで、中芯29とアウター31の隙聞に毛細管力が作用し、比較的太い線を描くことができる(図14)。この時のインクの種類によっては供給が途切れてカスレが生じることがあるが、本発明の特定のインクを用いることによりかかるカスレを防止できる。インクについては後述する。
また、本発明の実施形態では、先端のインク流出部分が潰れにくい為、筆記具の使い始めと、繰り返し使用後あるいは使い終わり(インク残量の違い)との間の描線幅の変化率が少ない。より具体的には、先端のインク流出部分である中芯29にある程度の荷重がかかると、中芯29は後退しアウター31が筆圧を受けることになる為、中芯29が潰れにくい。またアウター31によって、太い線を筆記することが可能な為、中芯29は比較的強度の強い細い芯が使用可能となる。これらの効果により、繰り返しの筆記においても、同じ筆記荷重で用いた場合、使い始め時に描いた線の幅に対する、使い終わり時に描いた線の幅の変化率が20%未満、より好ましくは10%未満とすることができる。
また、筆記時に筆記面から中芯29に加わる力をアウター31によって受けることができる。より、具体的には、筆記部の摩耗量が多くなる強い筆圧で筆記した場合、中芯29が後退し、筆圧を緩和することが可能であり、さらに、中芯29が後退し、アウター31も筆記面にあたることで、アウター31で筆圧を受けることが可能となる。これにより、筆記部13の摩耗を抑制することができる。
また、筆記部13に過度な荷重がかかっても、アウター31によって荷重を受けることができる。より、具体的には、誤って筆記部13をぶつけてしまう等の過度な荷重が筆記部13にかかっても、アウター31がインク流出部の中芯29の外周部を保護している為、中芯29には負荷がかからない。
図3は、中芯の長手方向断面図である。中芯29は、ポリアセタール等の樹脂素材を押出形成することにより形成されている。樹脂素材は、ホモポリマーであってもよく、他のモノマー成分との共重合物(コポリマー)であってもよい。熱安定性の向上の観点、及びカスレの抑制の観点からは、上記樹脂素材は、コポリマーであることが好ましい。中芯29内には、毛細管現象により、インク収容部11内のインクを前方端部に向けて誘導するための通路(インクが流れる領域)が形成されている。上記中芯の通路は、長手方向に垂直な方向の断面積が、0.20mm2以上であることが好ましい。断面積が上記下限以上であると、インクの供給をより途切れにくくすることができ、カスレが起こりにくくなる。中芯の曲げ強度の観点からは、上記断面積は1mm2未満であることが好ましい。なお、上記断面積は、中芯の成型用金型の形状を変化させることなどにより調整することができる。
このような中芯29を含む筆記部13の弾性限界点は、7.0N以上であることが好ましい。また、筆記部13に対して長手方向に荷重を加えた際の座屈強度は、7.0N以上であることが好ましい。筆記部13の弾性限界点又は/及び座屈強度を7.0N以上とすることで、筆圧の強い人の筆記でも筆記部13が変形せずに書き続けることができる。また、筆記部13の摩耗量は、筆記角度が65度、筆記荷重が50g、かつ筆記速度が4.2m/minの筆記条件において100mの線を描いたときに0.3mm未満であることが好ましい。また、中芯の材料の気孔率や通路の形状等によって、弾性限界点や座屈強度、摩耗量を変更することもできる。中芯29は、設計の容易さ及び筆記時の摩耗を抑制する観点から、後述するアウター31と同じ材質から構成されていることが好ましい。
本発明の筆記具は、インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部内に空気を送り込むことにより当該インク収容部からインクを送出する空気置換機構と、前記空気置換機構によって送出されたインクを毛細管力によって吸引し、吸引したインクを先端から送出し、筆記面に付着させるための中芯と、中芯の外周を覆うアウターと、を備えており、特定のインクを用いていれば良いが、他の好ましい態様及び筆記具(サインペン)中の他の部分の好ましい態様についても以下説明する。しかしながら、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
好ましい実施態様において、本発明の筆記具は、インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部内に空気を送り込むことにより当該インク収容部からインクを送出する空気置換機構と、前記空気置換機構によって送出されたインクを毛細管力によって吸引し、吸引したインクを先端から送出し、筆記面に付着させるための中芯と、中芯の外周を覆うアウターと、を備え、さらに特定のインクを含む筆記具であって、筆記荷重50gと筆記荷重200gで交互に繰り返し筆記した際の筆記前と筆記後の線の幅の変化率が10%未満である上記筆記具である。
図4は、コレクターを示す図面であり、図4には、コレクターを三方向から見た図面を示している。図4に示すように、コレクター17は、前方側の貯留部17aと、後方側のダミー部17bと、貯留部17aとダミー部17bとの間の仕切り部17cと、を備えている。
貯留部17aの外周には、貯留部17aの軸線に沿って延び、周方向に沿って所定の幅を有するインク誘導溝17dと、複数のフィン17eの間に形成された主要部インク一時保留溝17fとが設けられている。更に、貯留部17aには、貯留部17aの外周と内部空間の間を連通して延びる孔17gが設けられている。
インク誘導溝17dは、軸方向に配列された、複数のフィン17eを同一形状に切り欠いて形成されており、貯留部17aを軸方向視したときに、貯留部17aの外周から凹んだ、所定形状の溝をなしており、主要部インク一時保留溝17fと連通している。インク誘導溝17dの幅は、主要部インク一時保留溝17fの幅より狭く形成されている。このように、インク誘導溝17dの幅を、主要部インク一時保留溝17fの幅より狭くすることにより、インク誘導溝17dにおけるインクとの界面張力が主要部インク一次保留溝17fの界面張力よりも大きくなる。このため、インク誘導溝17dにインクを存在させつつインク誘導溝17dを介して主要部インク一次保留溝17fへのインク流入又は排出を確実に行うことができる。
筆記時のインクの出しやすさは、インク誘導溝17dの幅と、フィン17e同士の間隔に依存するものである。そして、本発明においては、インク誘導溝17dの幅を、0.1〜0.2mmとすることが好ましい。インク誘導溝17dの幅が小さいほうが、コレクター17の毛管力が作用し易くなる一方で、0.1mm未満となり、幅が小さすぎるとインクがコレクター17からのインクの供給が不安定となり、排出されにくくなる。また、フィン17e同士の間隔は、インク誘導溝17dの幅に応じて決定され、0.1〜0.6mmの範囲で、インク誘導溝17dの幅よりも大きく設定される。フィン17e同士の幅が0.6mmよりも大きいと、貯留部17aにインクを貯留できなくなり、また、フィン17e同士の幅が0.1mmよりも小さいと、貯留部17aにインクが残ってしまい、インクを使い切れないおそれがある。
ダミー部17bの外周には、軸方向に延びるインク導入溝17hと、複数のフィン17iの間に形成された延設部空気溝17jとが設けられている。ダミー部17bは、キャップ5を下向きで開けた際に、インクがコレクター17の貯留部17a内に流入してしまうのを防止する。より具体的には、キャップ5を下向きで開けると、キャップ5により密閉されていた先端の空間内は減圧され、これにより、インクがコレクター17の貯留部17a内に流入しようとする。そして、コレクター17の後側にダミー部17bを設けることにより、インクはダミー部17bの外周フィン17iの間に流れ込み、コレクター17の貯留部17aにインクは流入しない。
また、貯留部17の孔17gは、筆記部13を可動させた際、コレクター17及び、インク収容部11内の空間が加圧され、ペン先からインクが噴き出すのを防止するためのものである。より具体的には、貯留部17の内外を連通する孔17を形成することにより、筆記部13を可動させた際、コレクター17及び、インク収容部11内の空間が加圧されたとしても、インクが孔17gを通して外側に排出されるため、コレクター17及び、インク収容部11内の圧力が高まるのを防止することができる。孔17gの開口面積は、0.4〜1.2mm2であることが好ましい。
また、コレクター17は、ポリエステルファイバー製の棒状のコレクター芯23を備えている。コレクター芯23は、軸方向に延びており、後方端部がインク収容部11内部に摺動可能に配置され、前方端部が継手21を越えて延びている。コレクター芯23は、コレクター17の内周面との間に、0.02〜0.2mmの隙間をあけて配置されている。コレクター17とコレクター芯23との間に0.02〜0.2mmの隙間を設けることにより、両者の間の摺動性を確保しつつ、筆記時に隙間に大量の空気が入り込むのを防止することができる。そして、コレクター芯23の後側端は、コレクター17の後側端よりも突出して延びている。コレクター芯23は、インクの供給安定性と、吸入性を両立するために、気孔率が30〜60%の材料によって構成されていることが好ましく、45%であることが最も好ましい。
継手21は、筆記部13とインク供給部15との間を接続するための部材である。
図5は、継手を示す図面であり、具体的には、図5は、継手の斜視図、側面図、及び断面図を示す。図5に示すように継手21は、円筒状の筒状部分35と筒状部分35の外側に配置されたアンカー部分37と、アンカー部分37に対して筒状部分35を保持する保持部分39とを備えている。
筒状部分35は、内部にコレクター芯23及び中芯29を固定できる内部形状を有している。具体的には筒状部分35の内径は、その後方側において、比較的太いコレクター芯23を受け入れて固定する後方内径部35aと、コレクター芯23が固定されている箇所よりも前方側において、比較的細い中芯29を受け入れて固定する前方内径部35bとで構成されている。固定方法としては、中芯29、コレクター芯23を筒状部分35に挿入し、中芯29とコレクター芯23が挿入されている箇所の外側からポンチする方法や、中芯29の外径を前方内径部35bの内径よりも大きくし圧入する方法やそれ以外の固定方法であってもよい。中芯29と前方内径部35bの密閉性が必要な場合は圧入方法が好ましい。また、中芯29の強度が弱く、組立時に潰れる懸念がある場合などは中芯29に力のかかりにくい、ポンチすることで固定することが好ましい。
アンカー部分37は、その内径が、筒状部分35の外径より大きいリング形状を有しており、筒状部分35の長手方向中央よりも後方側に配置されている。より具体的には、アンカー部分37の内径は、筒状部分35の外径よりも大きく、かつ筒状部分35との間には、空間が形成されており、その空間内に先端保持部19が差し込まれる。そして、空間内に先端保持部19が差し込まれると、先端保持部19の外周と、アンカー部分37の内周とが嵌合し、アンカー部分37は、先端保持部19に対して固定される。なお、先端保持部19内には、円筒形状の空間が形成されており、この円筒形状の空間の内径は、筒状部分35の外径よりも大きく、先端保持部19と筒状部分35とを同軸に配置したときに、筒状部分35と先端保持部19とが接触しないようになっている。
保持部分39は、アンカー部分37の外周から、筒状部分35の外周にかけて、前方に向かって先細るように伸びる円錐筒形状を有している。そして、先端保持部19に対して固定されたアンカー部分37と、その他の部材に対して固定されていない筒状部分35との間に保持部分39を配置し、アンカー部分に対して筒状部分35を懸架することにより、筒状部分35及び筒状部分35に固定される筆記部13の中芯29、及びコレクター芯23を、前方側軸筒7に対して固定されたアウター31に対して軸方向に移動可能に懸架することができる。これにより、筆記時に中芯29に加わる圧力を吸収することができる。
継手21を構成する筒状部分35、アンカー部分37は例えば熱可塑性樹脂によって形成されている。また、保持部分39は、例えば熱可塑性エラストマーによって形成されている。具体的には、SBS、SEBS、SEPS等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。これらのうち、ISO7619に準拠したデュロメータA硬度が20〜60のものは、筆圧とクッション性の応答のバランスが良い。更に、保持部分39の強度を調整することにより、継手21によるクッション性を調整することができる。また、熱可塑性エラストマーは、弾性変形を開始する変曲点の直前までは、荷重の変化に対して敏感に伸縮するため、例えば、保持部分39の厚みや組成等を調整して、変位量に対する荷重の変曲点を約1Nとすることにより、筆記時の荷重に対して非常に敏感に伸縮する、クッション性の優れた継手21を形成することができる。そして、筒状部分35と、保持部分39との間には、クッション時に両者が剥がれないようにするために、両者の間にある程度の密着性が必要となる。この密着性を実現するためには、筒状部分35と、保持部分39とを、同系統の樹脂材料で構成することが好ましく、選択可能な材料の組み合わせとしては、AS(スチレン系樹脂)とSEBS(スチレン系エラストマー)の組み合わせ、ポリプロピレン(ポリオレフィン系樹脂)とEPDM(ポリオレフィン系エラストマー)との組み合わせ、及びPBT(ポリエステル系樹脂)とポリエステル系エラストマーとの組み合わせがある。
この中でも、保持部分39は、ISO7619に準拠したデュロメータA硬度が20〜60度であることが好ましく、30〜50度であることがより好ましい。保持部分39のデュロメータA硬度をこの範囲にすることにより、低い筆圧でも適切に作動し、中芯29に加わる圧力を吸収することができる。
そして、上記継手21を用いることにより、サインペン全体のクッション力を、0.1〜10N、好ましくは0.1〜7N、より好ましくは0.1〜5Nの範囲とすることが好適である。これは、クッション力を低くし過ぎると、筆記時に常にアウター31が紙面等の筆記面に接触しながらの筆記になるため、細い筆記描線を書くことが難しいからである。一方で、クッション力を高くし過ぎると、筆記時にアウター31を紙面等の筆記面と接触させながら筆記することができなくなる。
図6は、アウターを示す図面であり、具体的には、図6は、アウターの斜視図、側面図、及び断面図を示す。アウター31は、略円錐型に形成された合成樹脂製の円錐筒体であり、前方に向かって先細りとなるテーパー形状を有する。アウター31は、書き味及び押し書きでの筆記感を阻害しないために、一定の強度を有する、例えばポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートのような合成樹脂で形成されていることが好ましい。アウター31は、一般的な合成樹脂により構成することができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、AS樹脂、PMMA樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。これらのうち、書き味、特に摩擦が強く作用する押し書きでの筆記感を阻害せず、筆記による摩耗が少ない耐久性が高いポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートで形成されていることが好ましい。アウター31に一定の強度を持たせることにより、アウター31の耐久性を向上させることができる。また、アウター31の表面は、滑らかな表面とすることが好ましく、これにより、筆記時に紙面等の筆記面との間の摩擦抵抗を少なくすることができ、筆記感を向上させることができる。以上の観点から、アウター31の材質は、自己潤滑性樹脂であることが好ましく、特に結晶性の高いポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。自己潤滑性を高める観点からは、上記の樹脂にシリコーンオイルを配合して得られる樹脂組成物の使用が好ましい。上記シリコーンオイルは、例えば15万cSt以上の粘度を有する、ジメチルポリシロキサン、及びそのメチル基の一部が水素、フェニル基、ハロゲン化フェニル基、ハロゲン化アルキル基、フルオロエステル基等で置換されたジメチルポリシロキサンが挙げられる。
筆記時における、筆記面とアウター31との間の摩擦係数は、ヘイドン値0.15以上、0.30未満であることが好ましい。もっとも、本発明においては、上記インクが上記構成を備えているため、上記摩擦係数を低減させることが容易となる。摩擦係数が低減する機構は定かではないが、従来のインクよりも流動性が増加し、結果として摩擦係数が低減するものと考えられる。本発明のヘイドン値は、表面性測定器(HEIDON−14D 新東科学株式会社製)を使用して測定される。測定条件としては、旧JIS P3201に準拠(化学パルプ100%を原料に抄造された上質紙、坪量範囲40〜157g/m2、白色度75.0%以上)の筆記用紙に対して、アウター31を、荷重50g、筆記角度60度、及び筆記速度5cm/secの条件で、鋭角方向に10cm直線動作させる。なお、本発明において、測定数はn=5の平均とした。
また、アウター31は、後方側に形成された後方挿入孔41と、後方挿入孔41から先端側に連通し、後方挿入孔41よりも小径の前方挿入孔43を有する。後方挿入孔41には、継手21の前方端が挿入され、前方挿入孔43からは、継手21の前方端に固定されたホルダー27が突出する。組立に際しては、アウター31は、前方挿入孔43に中芯29が挿入され、後方挿入孔41に継手21の前方端が挿入された状態で、前方側軸筒7の前方端に固定される。これにより、アウター31内の中芯29は、継手21によって、アウター31内で軸方向に移動可能に保持される。アウター31の先端、特に前方挿入孔43近傍の厚みは、0.02〜0.2mmとすることが好ましい。アウター31の先端の厚みをこの範囲とすることにより、耐久性を維持しながら、筆記時のインクの排出性を確保することができる。
また、アウター31は、その軸方向中央部分にリング状の段45を備えており、段45よりも後方側は、前方側軸筒7の先端の筒状空間の内径よりも小さい外径を有し、アウター31の後方側を前方側軸筒7内に嵌合できるようになっている。
図7は、中芯の変形例を示す断面図である。図7に示すように、変形例に係る中芯129は、繊維状の中芯129の軸と同軸上に延びる樹脂製の芯棒131を有する。芯棒131は、円形断面を有しており、インク収容部から中芯129の前方端まで、中芯129を貫通して延びている。そして、インク収容部内のインクは、中芯129を通ってインク収容部から中芯129の前方端まで流れる。中芯129は熱融着芯や焼結芯のような多孔質体であってもよい。また、芯棒131は中芯129よりも硬い繊維芯や押出成形芯のような流路が形成されているものでも良い。更に、中芯129は芯棒を有さず、通常の繊維芯や熱融着芯、焼結芯のような多孔質体であっても良い。
図8は、中芯の更なる変形例を示す断面図である。図8に示すように、変形例にかかる中芯133は、外周に、複数の通路135が形成されている。複数の通路135は、中芯133の外周において、中芯133の後方端から前方端に向けて延びている。また、複数の通路135は、周方向に等間隔に配置されている。そして、インク収容部内のインクは、複数の通路135を通してインク収容部から中芯133の前方端まで流れる。
図9は、アウターの変形例を示す斜視図である。図9に示すように、アウター137の前方側の円錐形状の外表面には、複数の溝139が形成されている。アウター137の長手方向に沿って延びており、周方向において等間隔に配置されている。複数の溝139の毛細管力により、インクが溝139まで染みわたることで、より広い幅の描線を筆記することも可能である。
また、図10は、アウターの更なる変形例を示す断面図である。図10に示すように、アウター141の前方側の前方挿入孔内に形成された複数の溝表面に沿って長手方向に延びており、周方向において等間隔に配置されている。複数の溝143の毛細管力により、インクが溝143まで染みわたり、常に筆記部にも液が保持されていることにより、筆記時にインクが途切れにくくなる。なお、アウターは、図9に示す溝139及び図10に示す溝143の両方を備えていてもよい。
また、図11は、キャップの変形例を示す側断面図である。図11に示すようにインナーキャップ145の内部には、インク保持部147が設けられている。インク保持部147は、インナーキャップ145内のペン先と対向する位置に形成された、ペンの軸から放射状に延びる複数の溝149によって構成されている。ペン先と対向する位置に複数の溝149を形成することにより、キャップを閉めている状態で落下等により、ペン先からインクが漏れたとしても、溝149によってインクを保持することができる。
また、図12は、インク保持部の変形例を示す側断面図である。図12に示すようにインナーキャップ151の内部には、繊維芯、スポンジ、熱融着芯、焼結体等の多孔質体からなるインク吸収部153が形成されている。インク吸収部153は、キャップを閉じた際に、ペン先と対向する位置に配置されるように、インナー149内に固定されている。このような多孔質体からなるインク吸収部151を設けることによっても、インクの漏れを防止することができる。
<インク>
インク収容部11は、内部に所定のインクを収容しており、筆記部13内のインクが不足した際に、毛管力により、適宜筆記部13にインクを供給できるように構成されている。
インク収容部11内に収容されるインクは、(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーと、塩基性染料、油溶性染料又はロイコ色素とを含有する着色樹脂微粒子を含む。上記着色樹脂微粒子を用いることにより、表面張力の調整が容易になり、特に毛細管力を用いる本発明の筆記具においてカスレを防止することができる。すなわち、インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部内に空気を送り込むことにより当該インク収容部からインクを送出する空気置換機構と、前記空気置換機構によって送出されたインクを毛細管力によって吸引し、吸引したインクを先端から送出し、筆記面に付着させるための中芯と、中芯の外周を覆うアウターと、を備える筆記具において、中芯とその外周のアウターの隙間における毛細管力(毛細管現象)を利用する場合に、インクの供給が途切れてカスレが生じやすくなるが、上記着色樹脂微粒子を用いると、前記インク供給の途切れを防止してカスレを改善し、滑らかな書き心地を実現することができる。
本明細書において、塩基性染料とは、水性媒体中でアミノ基、アミノ基から誘導された形の広義なアミノ基及び複素環窒素などの分子内の窒素原子が、酸性化合物(例えば鉱酸:塩酸、硫酸、酢酸など)によって、4級化することによりカチオン性を示す構造を有する染料をいう。
油溶性染料とは、水に実質的に不溶である一方、有機溶剤には溶解する染料をいう。水に実質的に不溶とは、具体的には25℃における水への溶解度(水100gに溶解できる染料の質量)が1g未満であるものをいう。
本明細書において、ロイコ色素とは、有色と無色の性質を有する2種の化学種に可逆的に変化できる色素であり、前記可逆的変化は、熱、光あるいはpH等の公知のメカニズムにより行うことができる色素である。ロイコ色素を用いることにより、例えばインクに熱変色性を付与することができる。熱変色性の例としては、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、所定温度(例えば−5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーは、(メタ)アクリル酸の環状骨格を有する炭化水素基のエステル構造を有するモノマーであれば特に限定されない。環状骨格としては、芳香族環、脂肪族環のいずれであってもよい。上記モノマーとしては例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸4−tert−ブチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。中でも、表面張力の調整をより容易にし、インクをより途切れにくくする観点から、上記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーは、(メタ)アクリル酸シクロアルキルであることが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルであることがより好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸又はアクリル酸を意味するものとする。
上記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーの含有量は、上記着色樹脂微粒子を構成する全ポリマー成分に対して、30質量%以上であることが好ましい。上記含有量が上記範囲内であると、表面張力の調整がより容易になり、インクをより途切れにくくすることができる。なお、本発明において、「全ポリマー成分」とは、着色樹脂微粒子を構成する重合成分をいい、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマー、後述する他の重合性モノマー成分及び架橋剤の合計量をいう。上記含有量は、30〜95質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。
また、上記着色樹脂微粒子を構成するポリマー成分のうち、上記他の重合性モノマー成分の含有量は、上記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーと後述する架橋剤との合計量の残部となるものである。他の重合性モノマー成分は、上記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーと反応可能な単官能化合物であれば特に限定されない。他の重合性モノマー成分としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸グリセリル、スチレン、メチルスチレン、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−スルホエチルナトリウム、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−テトラメチレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール−ポリブチレングリコール−モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。他の重合性モノマー成分の含有量は、本発明の効果を更に発揮せしめる点、分散性の点、反応性の点から、全ポリマー成分に対して5〜85質量%とすることが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート又はアクリレートを意味するものとする。
上記架橋剤としては、上記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーと反応可能な多官能化合物であれば特に限定されないが、トリアリルイソシアネート、イソシアヌル酸トリアリル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリグリセリン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本発明において、多官能化合物とは、2官能以上の化合物を意味するものとする。上記架橋剤の含有量は、上記全ポリマー成分に対して、0〜50質量%が好ましく、0.1〜25質量%がより好ましい。上記着色樹脂微粒子は、得られる着色樹脂微粒子の耐熱性、機械的特性、加水分解性、対候性が向上する観点からは、架橋剤としてトリアリルイソシアネートを含むことが好ましい。
以下、塩基性染料又は油溶性染料を含有する着色樹脂微粒子と、ロイコ色素を含有する着色樹脂微粒子とについてそれぞれ説明することとする。
上記塩基性染料としては、例えば、ジ及びトリアリールメタン系染料;アジン系(ニグロシンを含む)、オキサジン系、チアジン系等のキノンイミン系染料;キサンテン系染料;トリアゾールアゾ系染料;チアゾールアゾ系染料;ベンゾチアゾールアゾ系染料;アゾ系染料;ポリメチン系、アゾメチン系;アザメチン系等のメチン系染料;アントラキノン系染料;フタロシアニン系染料等が挙げられる。上記塩基性染料は、水溶性の塩基性染料であることが好ましい。
具体的には、C.I.ベーシックイエロー(−1、−2、−9、−80等)、C.I.ベーシックオレンジ(−1、−2、−7、−34等)、C.I.ベーシックレッド(−1、−2、−3、−53等)、C.I.ベーシックバイオレット(−1、−2、−3、−39等)、C.I.ベーシックブルー(−1、−2、−5、−88等)、C.I.ベーシックグリーン(−1、−4、−6、−10等)、C.I.ベーシックブラウン(−1、−2、−4、−15等)、C.I.ベーシックブラック(−1、−2、−7、−8等)等のCOLOR INDEXに記載されている各No.の各色の染料を用いることができる。
上記塩基性染料の市販品としては、黄色塩基性染料としてAIZEN CATHILON YELLOW GLH(保土谷化学工業社製)等、赤色塩基性染料としてAIZEN CATHILON RED BLH及びAIZEN CATHILON RED RH(保土谷化学工業社製)、Diacryl Supra Brilliant Red 2G(三菱化学社製)並びにSumiacryl Red B(住友化学社製)等、青色塩基性染料としてAIZEN CATHILON TURQUOISE BLUE LH(保土谷化学工業社製)等、緑色塩基性染料としてDiacryl Supra Brilliant Green 2GL(三菱化学社製)等、茶色塩基性染料としてJanus Brown R(日本化学社製)及びCATHILON BROWN GH(保土谷化学工業社製)等が挙げられる。
上記油溶性染料としては、モノアゾ、ジスアゾ、金属錯塩型モノアゾ、アントラキノン、フタロシアニン、トリアリールメタン等が挙げられる。また、酸・塩基性染料等の官能基を疎水基で置換した造塩タイプ油溶性染料も使用することができる。
具体的には、黄色系としてC.I.ソルベントイエロー114、116;オレンジ系としてC.I.ソルベントオレンジ67;赤色系としてC.I.ソルベントレッド122、146;青色系としてC.I.ソルベントブルー5、36、44、63、70、83、105、111;黒色系としてC.I.ソルベントブラック3、7、27、29等を用いることができる。
上記油溶性染料の市販品としては、青染料SBNブルー701(保土谷化学工業社製)、青染料オイルブルー650(オリエント化学工業社製)、青染料サビニールブルーGLS(クラリアント社製)、赤染料SOC−1−0100(オリエント化学工業社製)、オイルブラック860、オイルピンク314、オイルイエロー3G、バリファストピンク2310N、同レッド3312、同イエローCGHNnew、同イエロー1108、同ブラック3803(オリエント化学工業社製)等が挙げられる。
上記塩基性染料又は油溶性染料は、発色性、十分な描線濃度を得る点、安定性等の点から、全ポリマー成分に対して、15質量%以上であることが好ましく、15〜50質量%であることがより好ましく、15〜40質量%であることがより好ましい。
上記インクの製造法としては、例えば、上記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーに、必要に応じてその他の重合性モノマーを混合し、上記塩基性染料又は油溶性染料を溶解し、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素などを重合開始剤として、また還元剤を更に併用した重合開始剤とし、更に上記架橋剤や必要に応じて重合性界面活性剤(乳化剤)を用いて乳化重合する方法が挙げられる。上記染料の溶解は、重合と同時に行ってもよく、重合後に行ってもよい。
本発明において、上記乳化重合の際には、上記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーとして(メタ)アクリル酸シクロヘキシルと、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートモノマー又はジシクロペンテニル(メタ)アクリレートモノマーとを混合して乳化重合することも好ましい。上記モノマーを用いて得られる分散液は、分散液中の水分が揮発しても安定性が損なわれにくく、更に安定性に優れたものとなる。また、本発明において、上記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーのほかに、エポキシ基、ヒドロキシメチルアミド基、イソシアネート基等の反応性架橋基を有するモノマーや2つ以上のビニル基を有する多官能性モノマーを適宜配合して架橋してもよい。
上記重合性界面活性剤としては、上記乳化重合に通常用いられる重合性界面活性剤であれば特に限定されないが、アニオン系又はノニオン系等の乳化剤が挙げられ、具体的には、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)−アルキルエーテル硫酸アンモニウム、エーテルサルフェート、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル、ポリアクリル酸アンモニウム、スチレン−マレイン酸コポリマーアンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。上記重合性界面活性剤の市販品としては、例えばアデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40、SE−10N(ADEKA社製)、ラテムルS−180、S−180A、S−120A(花王社製)、エレミノールJS−20(三洋化成工業社製)及びアクアロンKH−10(第一工業製薬社製)等が挙げられる。これらの重合性界面活性剤は、上記モノマー全量に対して0〜50質量%が好ましく、0.1〜50質量%がより好ましい。
上記塩基性染料又は油溶性染料を含有する着色樹脂微粒子の平均粒子径は、使用する(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマー等の重合性モノマーの種類、量、重合条件等により変動するが、20〜300nmが好ましく、40〜150nmがより好ましく、60〜110nmが更に好ましい。上記平均粒子径の範囲内であると、筆記具のペン芯において目詰まりすることなく、インクを途切れにくくすることができるとともに、保存安定性に優れたものとなる。なお、上記平均粒子径は、散乱光強度分布によるヒストグラム平均粒子径であり、上記塩基性染料又は油溶性染料を含有する着色樹脂微粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置(FPAR1000(大塚電子社製))にて測定したD50の値である。
上記ロイコ色素を含有する着色樹脂微粒子は、摩擦熱等の熱により変色するもの、例えば有色から無色、有色から有色、無職から有色等となる機能を有するものであれば特に限定されず、種々のものを用いることができ、少なくともロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物をマイクロカプセル化したマイクロカプセル粒子が挙げられる。本発明においては、上記マイクロカプセル粒子の膜壁が、(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーを含む重合性モノマーで構成されている。
上記ロイコ色素としては、電子供与性染料で、発色剤として機能するものであれば特に限定されない。具体的には、発色特性に優れるインクを得る点から、トリフェニルメタン系、スピロピラン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、ローダミンラクタム系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系等従来公知のものが挙げられる。
具体的には、6−(ジメチルアミン)−3,3−ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1(3H)−イソベンゾフラノン、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−エチルイソアミルアミノフルオラン、2−メチル−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(3’−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、メチル−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン、クロロ−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン、3−メトキシ−4−ドデコキシスチリノキノリン等が挙げられる。
これらのロイコ色素は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。
上記顕色剤としては、上記ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となるものであり、例えば、フェノール樹脂系化合物、サリチル酸系金属塩化物、サリチル酸樹脂系金属塩化物、固体酸系化合物等が挙げられる。
具体的には、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、ヘキサフルオロビスフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等が挙げられる。
用いる顕色剤の使用量は、使用される色彩濃度に応じて任意に選択すればよく、特に限定されないが、通常、上記ロイコ色素1質量部に対して0.1〜100質量部程度の範囲内で用いることが好ましい。
上記変色温度調整剤は、上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールする物質である。用いることができる変色温度調整剤は、従来公知のものを用いることができる。具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類等が挙げられる。
具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジカプリレート(C715)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジラウレート(C1123)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジミリステート(C1327)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタンジミリステート(C1327)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジパルミテート(C1530)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジベヘネート(C2143)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエチルヘキシリデンジミリステート(C1327)等が挙げられる。
用いる変色温度調整剤の使用量は、所望されるヒステリシス幅及び発色時の色彩濃度等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、通常、ロイコ色素1質量部に対して1〜100質量部程度の範囲内で用いることが好ましい。
上記ロイコ色素を含有する着色樹脂微粒子は、上記ロイコ色素と、必要に応じて顕色剤及び変色温度調整剤とを含む熱変色性組成物をマイクロカプセル化することで製造することができる。
上記ロイコ色素を含有する着色樹脂微粒子の平均粒子径は、0.2〜5μmが好ましく、0.3〜3μmがより好ましい。上記平均粒子径が上記範囲内であると、十分な描線濃度が得られ、筆記性の低下、マイクロカプセル粒子の分散安定性の低下、振動によるインクバックを効果的に抑制することができる。上記ロイコ色素を含有する着色樹脂微粒子の平均粒子径は、90%径が8μm未満であることが好ましく、6μm未満がより好ましい。上記90%径が上記上限未満であると、上述した影響をより抑制することができる。なお、上記ロイコ色素を含有する着色樹脂微粒子の平均粒子径は、粒度分析計(マイクロトラックHRA9320−X100(日機装社製))にて、体積基準の平均粒子径(50%径)を測定(屈折率1.8)した値である。上記平均粒子径は、マイクロカプセル化法により変動するが、水溶液からの相分離法等では、マイクロカプセル粒子を製造する際の撹拌条件を好適に組み合わせることにより調整することができる。
上記マイクロカプセル化の方法としては、例えば界面重合法、insitu重合法、液中硬化被膜法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法等が挙げられる。
例えば、水溶液からの相分離法では、ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱撹拌して油滴状に分散させ、次いでカプセル膜剤として上記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーの溶液を徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより目的のロイコ色素を含有する着色樹脂微粒子を得ることができる。
上記ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の含有量は、用いるロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の種類、マイクロカプセル化法等により変動するが、ロイコ色素1に対して、質量比で顕色剤0.1〜100、変色温度調整剤1〜100であることが好ましい。また、カプセル膜剤は、カプセル内容物に対して、質量比で0.1〜1であることが好ましい。
上記ロイコ色素を含有する着色樹脂微粒子は、上記ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量等を好適に組み合わせることにより、各色の発色温度(例えば、0℃以上で発色)、消色温度(例えば、50℃以上で消色)を好適な温度に設定することができ、摩擦熱等の熱により有色から無色となることが好ましい。
上記ロイコ色素を含有する着色樹脂微粒子は、その比重が0.9〜1.3であることが好ましく、1.0〜1.2であることがより好ましい。上記比重が上記範囲内であると、上記着色樹脂微粒子の分散安定性が向上し、振動によるインクバックを抑制することができる。
本発明の筆記具は、上記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマー等の重合性モノマーに上記塩基性染料又は油溶性染料を溶解して乳化重合して得られる分散液、上記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマー等の重合性モノマーの重合後に上記塩基性染料又は油溶性染料を溶解して染色することにより着色樹脂微粒子が水に分散された分散液、又はロイコ色素が(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマー等の壁膜でマイクロカプセル化された着色樹脂微粒子が水に分散された分散液を少なくとも含むインクが搭載されていることが好ましい。本発明では、上記着色樹脂微粒子の使用により、毛細管力を用いて線を描く筆記具において、インク供給の途切れやすさを改善することができる。
上記インクは、上記分散液に加えて、更に水溶性有機溶剤を含んでもよい。上記水溶性有機溶剤としては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル1,3−ブタンジオール、2メチルペンタン−2,4−ジオール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、1,2,3−ヘキサントリオール等のアルキレングリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール等のグリセロール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のグリコールの低級アルキルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダリジノン等の少なくとも1種が挙げられる。
その他にも、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類等の水溶性溶剤を混合することもできる。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、サインペンやマーキングペン、ボールペン等の筆記具種により変動するが、インク全量に対して、1〜40質量%が好ましく、描線乾燥性を更に向上させる点から、10質量%未満であることがより好ましく、3〜8質量%であることが更に好ましい。
上記インクは、更に水(水道水、精製水、イオン交換水、蒸留水、純水等)を含んでもよい。水の含有量は、インク全量に対して30〜90質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。
また、上記着色樹脂微粒子の含有量は、筆記具種、流出機構(ペン芯、ボールペン)等により変動するが、固形分量で、インク全量に対して、1〜30質量%が好ましい。
前記インクの表面張力は、38.5mN/m以上であることが好ましい。もっとも、本発明においては、上記インクが上記構成を備えているため、上記表面張力を上述した範囲に調整することが容易となり、インクを途切れにくくすることができる。上記表面張力は、第二筆記部が作用する観点から、48mN/m未満であることが好ましい。なお、本発明では、上記表面張力は、協和界面科学社製の表面張力測定装置「CBVP−Z」を用いて、摂氏25℃、大気圧下(1atm)で測定した。
本発明において、初筆からの筆記距離1mにおけるインク流量は2〜3mgであることが好ましい。上記インク流量が上記2mg未満であると、インクが途切れやすくなり、上記インク流量が3mg以上であると、筆記した描線の乾燥に時間がかかり、筆記の際に手指等を汚しやすくなる。
上記インクは、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて防腐剤又は防黴剤、pH調整剤、消泡剤、増粘剤及び潤滑剤等を適宜使用してもよい。
防腐剤又は防黴剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2−ベンズイソチアゾリン3−オン、2,3,5,6−テトラクロロ−4(メチルフォニル)ピリジン、安息香酸やソルビン酸やデヒドロ酢酸のアルカリ金属塩、ベンズイミダゾール系化合物等が挙げられる。
pH調整剤としては、アンモニア、尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、トリポリリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸やリン酸のアルカリ金属塩、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。
増粘剤としては、合成高分子、セルロース及び多糖類からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。具体的には、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、架橋型アクリル酸重合体及びその塩、非架橋型アクリル酸重合体及びその塩、スチレンアクリル酸共重合体及びその塩が挙げられる。中でも、上記増粘剤は多糖類であることが好ましい。多糖類を使用することにより、インクバックに起因する筆記不良等の不具合を生じにくい。中でも、キサンタンガムが好ましい。
潤滑剤としては、リン酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリアルキレングリコール誘導体、脂肪酸アルカリ塩、ノニオン系界面活性剤、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のフッ素系界面活性剤、ジメチルポリシロキサンのポリエチレングリコール付加物等のポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
上記インクは、上記分散液と、水溶性溶媒、その他各成分を筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)インクの用途に応じて適宜組み合わせて、ホモミキサー、ホモジナイザーもしくはディスパー等の撹拌機により撹拌混合することにより、更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク中の粗大粒子を除去すること等によって調製することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
以下の構成を有する筆記具を作成した。
[中芯]外径:φ1.2mm、材質:ポリアセタール樹脂、断面積:0.37mm2
[アウター]材質:中芯と同材料
[インク1]下記製造例1に従って製造した。なお、以下の「部」は特に断りがない限り、質量部を表すものとする。
(製造例1)
2リットルのフラスコに、撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管、モノマー投入用1000mL分液漏斗を取り付け、温水槽にセットし、蒸留水340.5部、グリセリンモノメタクリレート(ブレンマーGLM、日油社製)5部、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム(アクリルエステルSEM−Na、三菱化学社製)5部、重合性界面活性剤(エーテルサルフェート、アデカリアソープSE−10N、ADEKA社製)20部及び過硫酸アンモニウム0.5部を仕込んで、窒素ガスを導入しながら、内温を50℃まで昇温した。
一方、(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーとして、メタクリル酸シクロヘキシル55部と、他の重合性モノマーとして、メタクリル酸n−ブチル35部とからなる混合モノマーに、油溶性染料として、サビニールブルーGLS(クラリアント社製)40部、架橋剤(トリアリルイソエシアヌレート、TAIC、日本化成社製)10部を混合した液を調製した。
この調製液を上記分液漏斗から温度50℃付近に保った上記フラスコ内に撹拌しながら3時間にわたって添加し、乳化重合を行った。更に5時間熟成した重合を終了し、着色樹脂微粒子の分散液を得た。
上記メタクリル酸シクロヘキシルの含有量は、着色樹脂微粒子を構成する全ポリマー成分に対して、50.0質量%、上記油溶性染料の含有量は全ポリマー成分に対して36.4質量%であった。また、着色樹脂微粒子の平均粒子径は、40nmであった。
得られた上記分散液と、下記に示す各成分を、下記に示す配合組成にて常法により混合しインクを得た。得られたインク1の表面張力は、25℃、1atmの条件で測定したところ、39.6mN/mであった。
インク組成:(全量100質量%)
着色樹脂微粒子の分散液:50質量%
pH調整剤(トリエタノールアミン):1質量%
水溶性有機溶剤(エチレングリコール):5質量%
イオン交換水:44質量%
(実施例2〜4、比較例1〜4)
中芯及びアウターの材質、中芯の断面積、及びインクを下記の表1の通り変更した以外は、実施例1と同様にして筆記具を製造した。表1中、「ホモポリマー」は、1種のモノマーのみから合成されたポリマーを示す。
他のインクは下記の表2の配合に従って、製造例1と同様にして合成した。
なお、製造例2では、染料が多い一方で(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーを用いない製造であったので、良好な重合ができなかった。上記油溶性染料の含有量は全ポリマー成分に対して、36.4質量%であった。得られた上記分散液を、上記と同様の配合組成にて常法により混合しインク2を得た。得られたインク2の表面張力は、25℃、1atmの条件で測定したところ、41.7mN/mであった。
(カスレの有無の評価)
ISO規格に準拠した筆記用紙に、フリーハンドで、直径2cm程度の円を連続して描くように20周螺旋筆記し、目視により筆記性を下記の基準で評価した。
なし:カスレを生じることなく筆記可能。
あり:カスレが生じる。
(摩擦係数の評価)
摩擦係数は、表面性測定器(HEIDON−14D 新東科学株式会社製)を使用して測定した。測定条件としては、旧JIS P3201に準拠(化学パルプ100%を原料に抄造された上質紙、坪量範囲40〜157g/m2、白色度75.0%以上)の筆記用紙に対して、アウター31を、荷重50g、筆記角度60度、及び筆記速度5cm/secの条件で、鋭角方向に10cm直線動作させた。測定数はn=5の平均とした。
以上の評価結果及び製造例を下記表1、表2及び表3に示す。
Figure 2020089989
Figure 2020089989
Figure 2020089989
表1に示されるように、本発明の筆記具は、インクとして(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーと、塩基性染料、油溶性染料又はロイコ色素とを含有する着色樹脂微粒子を含むことにより、特に毛細管力を用いて線を描く筆記具において、筆記時のインクのカスレを効果的に抑制できることが分かった。
1 サインペン
5 キャップ
11 インク収容部
29 中芯
31 アウター

Claims (6)

  1. インクを収容するインク収容部と、
    前記インク収容部内に空気を送り込むことにより当該インク収容部からインクを送出する空気置換機構と、
    前記空気置換機構によって送出されたインクを毛細管力によって吸引し、吸引したインクを先端から送出し、筆記面に付着させるための中芯と、中芯の外周を覆うアウターと、を備える筆記具であって、
    前記インクが、(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーと、塩基性染料、油溶性染料又はロイコ色素とを含有する着色樹脂微粒子を含む、筆記具。
  2. 前記(メタ)アクリル酸シクロヒドロカルビルエステルモノマーが、(メタ)アクリル酸シクロアルキルである、請求項1に記載の筆記具。
  3. 前記インクの摂氏25℃、大気圧下における表面張力が38.5mN/m以上である、請求項1又は2に記載の筆記具。
  4. 前記筆記面と前記アウターとの間の摩擦係数が0.30未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の筆記具。
  5. 前記着色樹脂微粒子がロイコ色素を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の筆記具。
  6. 前記筆記具がキャップを備え、前記キャップの前方側端部にゴム状物体を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の筆記具。
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